はじめよう!多職種連携 ~在宅ケアでの薬剤師の役割~ · ipwとipe...
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岩手県病院薬剤師会および岩手県薬剤師会合同研修会 特別講演
はじめよう!多職種連携~在宅ケアでの薬剤師の役割~
平成30年3月10日(土)16:00~
マリオス 18階 183会議室
医療法人財団老蘇会 静明館診療所
医師 大友宣
生活を支える視点への転換
•病気を治す医療
• 20世紀の医療
• 場所:主に病院
• 疾患:感染症や循環器疾患の急性期、治療期のがんなど
• 対象:若年~壮年
• 目標:治癒
• 急性期病院での多職種チーム治療
•生活を支える(医療)ケア
• 21世紀の(医療)ケア
• 場所:主に在宅、施設
• 疾患:生活習慣病、身体障害、認知症、ターミナル期のがんなど
• 対象:高齢者
• 目標:QOL(生活の質)
• 地域包括ケアシステムでの多職種連携
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今日の内容
•在宅ケアにおける多職種連携について
•医師との関わり方
•訪問薬剤指導のポイント
•服薬アドヒアランス
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在宅ケアにおける連携の特徴
•多職種間連携が鍵
•同職種連携も大切
•関係する事業所が多い
•療養者ごとに別々のチームが形成される
•様々な制度を利用する
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今日はこれだけは憶えましょう
IPWはIPEから
IPWはIPEから
IPWはIPEから
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IPWとIPE
• IPW:Interprofessional Work 多職種連携(実践)
• IPE:Interprofessional Education 多職種連携教育
•世界保健機関(WHO)1988年• 「健康のために協働していくには共に学ぶことが重要である」 「共に学ぶことにより、医療職者の態度の変化、共通した価値観の確立、チームの編成、問題の解決、ニーズへの対応、実践の変化、専門職の変化が期待される」
• IPW(実践)はIPE(教育)から
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多職種連携コンピテンシー
7Haruta J, Yoshida K, Goto M, et al. Development of an interprofessional competency framework
for collaborative practice in Japan. J Interprof Care. 2018. 30:1-8.
1.患者・利用者・家族・コミュニティ中心•患者・サービス利用者・家族・コミュニティのために、協働する職種で患者や利用者、家族、地域にとっての重要な関⼼事/課題に焦点を当て、共通の目標を設定することができる
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利用者「を」中⼼としたケア利用者「が」中⼼となるケア
利用者「を」取り囲む
サービスがたくさんあっ
て、利用者「を」対象に
する
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利用者「が」やりたいこ
とを、利用者「が」主体
となり決定し、取り囲む
サービスが支える
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共通目的
•目標をチームで共有する• 訪問診療、訪問看護、薬剤師、ケアマネジャー、ヘルパー、家族
⇓•本人、家族と話し合いながら、話し合ったことを共有する
•共通目的を見失ったらカンファレンス
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2.異職種間コミュニケーション
•患者・サービス利用者・家族・コミュニティのために、職種背景が異なることに配慮し、互いに、互いについて、互いから職種としての役割、知識、意見、価値観を伝え合うことができる。
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素朴なコミュニケーションのモデル
送り手 受け手メッセージ
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ロマンヤコブソンのコミュニケーションモデル
送り手 受け手接触
メッセージ
コード
文脈
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メッセージ
•コミュニケーションの内容
•書いてあること
•言ったこと
•簡潔で誤解のない文章にするように注意
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接触=
どのよう手段でコミュニケーションをとっているか完璧なものはない。最適なものを組み合わせ
•対面• 表情をみながら、細かなニュアンスを伝えることが可能、記録なし
•電話• 表情は分からない、口調はわかる、記録なし
•手紙• 記録が残り確実、即応困難
•ファックス• 記録が残る、すぐ見える、誤送信がある
•電子メール、クラウド型システム• 使わない事業所もある
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コード=送り手と受け手とに共通して持っている言葉
• 医療のコード(例)• 「○○さんはネッパツしてサチュレーションが低くてシーアールピーが高いから肺炎だと思う。マッショウでコウセイザイをおとそう」
• 介護のコード(例)• 「セイカツじゃダメだからシンタイに変更してもらわないと・・・サセキからケアマネに伝わるようにしといて」
• ウチの息子のコード(例)• 「デュエルマスターズ(カードゲーム)のチラシ」
FORBIDDEN~禁断の星~一撃2ブレイクのスピードアタッカー!!!殴るたびにコイツより小さい敵1体を破壊し、コイツより小さい味方1体を墓地からタダ出し!!!場に自分の「禁断フィールド」があれば、+90000され、3ブレイクとなる!!!・・・禁断フィールドって!!?
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文脈(コンテクスト)=背景、状況、境遇
•同じ言葉でも送り手と受け手の関係や、話している前後関係、社会的環境によって意味が違う
• 「このベッド高すぎますね」
• 「このままじゃ大変だよね」
• 「いまのところこのままで」
• 在宅では療養者や家族の文脈を理解しやすい
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3.職種としての役割を全うする
•互いの役割を理解し、互いの知識・技術を活かし合い、職種としての役割を全うする。
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それぞれの専門性が発揮される
•それぞれの役割をはっきりさせると仕事しやすい•医者の役割は?•看護師の役割は?•ヘルパーの役割は?•ケアマネジャーの役割は?•薬剤師の役割は?
•誰かが調整役となる•誰が調整役となるのが良いかは療養者の状態・在宅ケアチームのメンバーによる
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4.関係性に働きかける
•複数の職種との関係性の構築・維持・成⻑を支援・調整することができる。また、時に生じる職種間の葛藤に、適切に対応することができる。
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情報を共有する
• 相手が好む複数の方法を組み合わせる• 正式文書+ファックス+電話
• クラウド+対面
• 記録に残す• 対面や電話だけではなく、手紙やファックスや電子メールで内容を確認
• タイムリーに• 必要なときはすぐに
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普段からのコミュニケーション
•カンファレンスに参加して顔をあわせる•顔をあわせることに意味がある
•勉強会などに同席•デスカンファレンスなど症例カンファレンスを行う
• IPWはIPEから
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カンファレンスの持ち方
•目的を明確に•退院の調整
•意見を引き出す
•問題になっている何かを解決する
•時間は30分以内•病院の医者は30分も時間をかけられないことが多い
•診療所の医者も30分も時間を割けないことが多い
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5.⾃職種を省みる
•自職種の思考、行為、感情、価値観を振り返り、複数の職種との連携協働の経験をより深く理解し、連携協働に活かすことができる。
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6.他職種を理解する
•他の職種の思考、行為、感情、価値観を理解し、連携協働に活かすことができる。
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医療と介護の連携
=顔の見える関係+しくみ+文化
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診療所との関わり方診療所医師の一日(ほぼ訪問)• 8:00~8:30 書類作成、訪問診療準備
• 8:30~9:00 申し送り
• 9:00~ 午前の訪問診療
• 11:30ごろ クリニックへ 書類作成
• 12:00~13:00 昼休み
• 13:00~ 午後の訪問診療
• 16:00ごろ クリニックへ 書類作成、退院前カンファレンス、新規の家族面談など
• 19:00ごろ 医師会や市の会合など
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診療所との関わり方診療所医師の一日(外来+訪問)• 8:00~9:00 診療準備、書類作成など
• 9:00~13:00 午前の外来診療
(ゆっくり連絡をとることは不可能)
• 13:30~16:00 訪問診療
• 16:00~19:00 午後の外来診療
• 19:00~ 医師会の会合など
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診療所との関わり方診療所医師とのコミュニケーション
•診療所の医師は忙しい
•診療所職員でも話せる時間が少ない
•タイミングが悪いと話しにくい
•機嫌が悪いともっと話しにくい
•直接すぐに話すことは難しい
•診療所によって、医師によって対応がバラバラなので、個別に対策を考える
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TIPS(=チョットしたコツ)タイミングを図ろう!•タイミングがよければ話すことができる
•行動パターンを把握しておくことが重要
•周りの人(看護師、事務)に聞くとタイミングが分かる
•アポをとっておくとタイミングを気にしないでも良い
•話す時間は短い方が良い
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TIPS医師に直接連絡することを限定する
•医師に連絡しないでも解決することも多くある
•看護師や事務をフル活用
•周りを固めてから、重要なことだけをコミュニケーション
•事前準備:資料をわたしておく、ポイントを伝えておく
•内容:何についての意見が欲しいか明確にする
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TIPS何を言うか vs 誰が言うか
• 「何を言うか」はもちろん大事。それも大事が・・・
• 「誰が言うか」も重要
• 例1居酒屋で隣のおじさんが「明日世界が終わるかもしれない」と話している
• 例2アメリカ大統領が会見で「明日世界が終わるかもしれない」と話している。
• 相手に信頼してもらうには• 対策1:自分がアメリカ大統領になる
= 自分が信頼に足る人物となる
• 対策2:アメリカ大統領に言ってもらう
= 信頼がある人に言ってもらう
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TIPS他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる。
•医師にこのように診療を変えて下さいというのはかなり難しい
•他の職種でも相手を変えるのはなかなか難しい
•自分のやり方を変えて、上手くいくのであれば、それで良いことも多い
•(そうでもないことも多いけど・・・)
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病院との関わり方病院医師の一日(内科)• 8:00~9:00 病棟回診
• 9:00~14:00 外来や救急当番(ほぼ連絡をとることは不可能)
• 14:00~検査・処置(胃カメラとか治療とか)
• 16:00~委員会・カンファレンス
• 曜日によってシフトが違う
• 月木 外来+検査
• 水曜 外勤
• 火金 救急当番+検査
• 緊急入院があるとアドレナリンが多い?
• 時間が比較的ある曜日はある
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病院との関わり方病院医師の一日(外科)
• 9:00~12:00 外来
• 12:00~16:00 検査や手術
• 16:00~ 病棟業務 手術説明、委員会、カンファレンス
• 曜日によってシフトが違う
• 月 外来+手術
• 水 専門外来+検査
• 火金 手術
• 手術日はアドレナリンが多い?
• 手術前日の夕方と手術後はインフォームドコンセントをとっている
• 時間が比較的ある曜日はある
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病院との関わり方病院医師とのコミュニケーション
•病院の医師は忙しい
•病院職員でも話せる時間が少ない
•アドレナリンが多い時はコミュニケーションを避ける
•病院によって、病院の職員によって、病院医師によって、対応はバラバラなので個別に対策を考える
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TIPS 病院医師と直接会うより他の手段•病院医師と会うのはカンファレンス以外ほぼ絶望的?に難しい(これから改善されることが望まれるが・・・)
•他の職種(病棟看護師・MSW・退院調整看護師)とコミュニケーションをとって医師の意見を引き出す
•病院によって窓口が違う。病棟によっても違う場合もある。(病棟看護師・MSW・退院調整看護師等)
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TIPS『い』『ろ』『は』『に』『す』『めし』
•『い』『ろ』『は』『に』『す』『めし』は介護と医療の接点(共通言語)
•『い』:移動•『ろ』:ふろ•『は』:排泄•『に』:認知症•『す』:睡眠•『めし』:食事
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TIPSせっかちな人とコミュニケーションSBAR• 時間がない医療現場でのコミュニケーションで最近使われるようになってきているのがSBAR
• Situation状況
• Background背景
• Assessment評価
• Recommendation推奨
• を伝える。たとえば、• S うちの隣にケーキ屋ができた
• B 東京のパティシエだったらしい
• A おいしいケーキだと思う
• R 買いに行かない?
• たとえば
• S ◯◯さんデノタスチュアブルだけを飲んでいなくてたくさん余っています
• B 以前にはアルファロールは内服していました
• A アルファロールとカルシウム製剤だと飲めるかもしれません
• R 変更を検討できますか?
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訪問薬剤指導でのポイント
•薬
•患者
•多職種
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薬への関わり=通常の調剤の薬学的管理•重複がないか
•併用禁忌がないか
•肝腎機能に問題ないか
•患者の状態にあった調剤方法か
•剤形は適切か• 口腔内崩壊錠、貼付剤、粉砕、簡易懸濁法
•粉砕可能か、脱カプセル可能か
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患者への関わり=服薬アドヒアランスと治療ゴールの達成
•服用状況がよくなる管理方法• 一包化、服薬カレンダーを使うかどうか
• 使わない方が良いこともある
• 一包化への日付の印字
•期待された効果があるか
•副作用がないか
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多職種への関わり
•薬剤師のアセスメントを医師、歯科医師、ケアマネジャーへ報告する
•その他、訪問看護師、介護士、病院薬剤師などと必要に応じて連携する
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服薬アドヒアランス•服薬アドヒアランスについて皆さんはどのような評価をしていますか
•服薬アドヒアランス向上するためにどんなことをしていますか
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この表は衝撃的!でした
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どれで評価していますか
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在宅の方法=錠剤数計測がもっとも優れている
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薬剤師への期待
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病院薬剤師への期待
•在宅医療の現場を見学してください•在宅をしている調剤薬局•訪問診療している診療所
•退院時にどのような処方提案・処方設計をすると在宅での生活がしやすいかについて知識を得てほしい
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調剤薬局薬剤師への期待
•実質的な24時間対応を行う
•在宅医と信頼関係を築き、在宅での薬学的管理にさらに介入すること
•患者・家族とも信頼関係を築き、そこで得た情報、専門的意見を多職種と情報共有すること
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