へ.吸収、分布、代謝、排泄...ccr クレアチニン・クリアランス clt/f...

22
へ.吸収、分布、代謝、排泄 ............................................................................. 121 1.被験物質及びその定量法 ............................................................ 124 (1) 標識体 .......................................................................... 124 1) 被験物質 ........................................................................ 124 2) 定量法 .......................................................................... 124 (2) 非標識体 ........................................................................ 124 1) 被験物質 ........................................................................ 124 2) 定量分析法 ...................................................................... 124 2.点眼投与時の動物における成績 ...................................................... 125 (1) 吸収 ............................................................................. 125 (2) 分布 ............................................................................. 126 1) 点眼液濃度と眼組織内分布の検討(pH による影響).................................. 126 2) 組織内濃度 ...................................................................... 129 3) 眼球オートラジオグラフィー ...................................................... 135 (3) 代謝 ............................................................................. 136 (4)排泄 ............................................................................. 136 3.点眼投与時のヒトにおける成績 ...................................................... 137 4.GFLX の薬物動態及び薬物代謝(ガチフロ ® 錠承認時提出資料より) ...................... 138 (1) メラニンに対する親和性 ........................................................... 138 1) 経口投与時の有色ウサギにおける眼内動態 .......................................... 138 2) メラニン親和性(in vitro........................................................ 138 (2) 経口投与時の吸収、分布、代謝、排泄................................................ 139

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Page 1: へ.吸収、分布、代謝、排泄...Ccr クレアチニン・クリアランス CLT/F 見かけの全身クリアランス Cmax 最高濃度 CYP チトクロームP450 MIC 最小発育阻止濃度

へ.吸収、分布、代謝、排泄

総 括 ............................................................................. 121

1.被験物質及びその定量法 ............................................................ 124

(1) 標識体 .......................................................................... 124

1) 被験物質........................................................................ 124

2) 定量法.......................................................................... 124

(2) 非標識体 ........................................................................ 124

1) 被験物質........................................................................ 124

2) 定量分析法...................................................................... 124

2.点眼投与時の動物における成績 ...................................................... 125

(1) 吸収 ............................................................................. 125

(2) 分布 ............................................................................. 126

1) 点眼液濃度と眼組織内分布の検討(pH による影響).................................. 126

2) 組織内濃度...................................................................... 129

3) 眼球オートラジオグラフィー ...................................................... 135

(3) 代謝 ............................................................................. 136

(4)排泄 ............................................................................. 136

3.点眼投与時のヒトにおける成績 ...................................................... 137

4.GFLX の薬物動態及び薬物代謝(ガチフロ®錠承認時提出資料より) ...................... 138

(1) メラニンに対する親和性 ........................................................... 138

1) 経口投与時の有色ウサギにおける眼内動態 .......................................... 138

2) メラニン親和性(in vitro) ........................................................ 138

(2) 経口投与時の吸収、分布、代謝、排泄................................................ 139

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へ.吸収、分布、代謝、排泄の略号一覧表

略号 化学名(一般名) 構造式 由来

ガチフロキサシン

水和物

(±)-1-cyclopropyl-6-fluoro-1,4-dihydro-8-methoxy-7-(3-methyl-1-piperazinyl)-4-oxo-3-quinolinecarboxylic acid sesquihydrate

JAN:ガチフロキサシン水和物 r-INN:gatifloxacin

NNHN

COOHO

F

OCH3

1½ H2OH3C

原薬

エチレンジアミン体

7-[(2-aminoethyl)amino]-1-cyclopropyl-6-fluoro-1,4-dihydro-8-methoxy-4-oxo-3-quinolinecarboxylic acid

NHN

COOH

O

F

OCH3

H2N

代謝物

2-メチルエチレン

ジアミン体

(±)-7-[(2-aminopropyl)amino]-1-cyclopropyl-6-fluoro-1,4-dihydro-8-methoxy-4-oxo-3-quinolinecarboxylic acid

NHN

COOH

O

F

OCH3

H2N

CH3

代謝物

アミノ体

7-amino-1-cyclopropyl-6-fluoro-1,4-dihydro-8-methoxy-4-oxo-3-quinolinecarboxylic acid

NH2N

COOHO

F

OCH3

代謝物

略号 説明

CPFLX シプロフロキサシン

FLRX フレロキサシン

GFLX ガチフロキサシン

LFLX ロメフロキサシン

NFLX ノルフロキサシン

OFLX オフロキサシン

PFLX ペフロキサシン

AQCmax 房水内最高濃度

AUC0-t 0 から t時間までの濃度-時間曲線下面積

AUC0-∞ 0 から無限時間までの濃度-時間曲線下面積

Ccr クレアチニン・クリアランス

CLT/F 見かけの全身クリアランス

Cmax 最高濃度

CYP チトクローム P450

MIC 最小発育阻止濃度

NADPH 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸

pKa 解離定数

Rf 値 移動率

t1/2 半減期

t1/2β 消失相の半減期

TLC 薄層クロマトグラフィー

Tmax 最高濃度到達時間

V/F 見かけの分布容積

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- 121 -

へ.吸収、分布、代謝、排泄················································添付資料へ-1~8

以下にガチフロキサシン(GFLX)点眼液の吸収、分布、代謝、排泄に関する試験結果の要約

について記述した後、ガチフロ®錠承認時の提出資料を基に経口投与時の全身動態の概略を示す。

表へ-1 吸収、分布、代謝、排泄に関する試験一覧表

A.点眼投与時の動物における成績

試 験 項 目 動 物 種

(例数) 性 使用薬剤 投与量(投与期間) 資料番号

(1) 吸 収

0.3%14C-GFLX

点眼液

両眼に 50 µL ずつ点眼

0.3 mg / body

血漿中濃度 有色ウサギ

(3) ♂

14C-GFLX 静脈内投与

0.3 mg / body

ヘ-1

(2) 分 布

白色ウサギ

(4) ♂

0.1%(pH )、

0.3%(pH )、

0.5%(pH )

14C-GFLX 点眼液

右眼に 50 µL 点眼 へ-2

へ-3

白色ウサギ

(4) ♂

pH で比較

(0.1%、0.3%、0.5%

GFLX 点眼液)

50 µL を 15 分間隔 3 回点眼

1) 点眼液濃度と

眼組織内分布

白色ウサギ

(4) ♂

0.3%で比較

(pH 、 、 、 、

GFLX 点眼液)

50 µL を 15 分間隔 3 回点眼

へ-4

有色ウサギ

(3) ♂

0.3%14C-GFLX

点眼液 両眼に 50 µL ずつ点眼 ヘ-5

2) 臓器・組織内濃度

単回投与

反復投与 有色ウサギ

(3) ♂

0.3%14C-GFLX

点眼液

両眼に 50 µL/回ずつ点眼

(3 回/日、43 回) ヘ-6

3) 眼球オートラジオ

グラフィー

有色ウサギ

(1) ♂

0.3%14C-GFLX

点眼液 両眼に 50 µL ずつ点眼 ヘ-5

(3) 代 謝

眼組織中の

代謝物検索

有色ウサギ

(3) ♂

0.5%14C-GFLX

点眼液 両眼に 50 µL ずつ点眼 ヘ-7

(4) 排 泄

尿及び糞中排泄 有色ウサギ

(3) ♂

0.3%14C-GFLX

点眼液 両眼に 50 µL ずつ点眼 ヘ-5

B.点眼投与時のヒトにおける成績

試 験 項 目 性別 (例数) 使用薬剤 投与量(投与期間) 資料番号

血清中濃度

(反復または頻回) 成人男子(6)

0.3%、0.5% GFLX

点眼液

片眼に 2 滴/回で点眼

(4 回/日、4 時間間隔、

7 日間または

8 回/日、90 分間隔、3 日間)

ヘ-8

総 括

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1.点眼投与時の動物における成績

(1) 吸 収

有色雄性ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与(0.3 mg/body)したときの血漿中放射能

濃度は投与後0.8時間でCmaxを示したのち、4時間あるいは6時間まではt1/2が1.9時間で消失した。同

量を静脈内投与したときは投与後5分に111 ng eq./mLを示したのち、2時間まではt1/2が1.0時間であ

り、4時間から8時間まではt1/2が2.0時間で消失した。点眼及び静脈内投与したときのAUC0-∞の比

から算出した点眼投与時の吸収率は49%であった。

(2) 分 布

白色雄性ウサギに0.1%、0.3%または0.5%GFLX点眼液(それぞれpH 、 、 )を単回投与

したとき、角膜、結膜及び前房水におけるCmax及びAUC0-2hrは0.1%と0.3%の濃度間で投与量の増

加に伴う増加が認められたが、0.3%と0.5%の濃度間では投与量の増加に伴う増加は認められなか

った。白色雄性ウサギにpH に調整した0.1%、0.3% または0.5% GFLX点眼液を50 µLずつ15分間

隔で3回点眼投与したときのAQCmaxは点眼液濃度に依存して上昇した。また、pHの異なる

0.3%GFLX点眼液(pH 、 、 、 または )について同じ条件でAQCmaxを測定したとき、

点眼液のpHが酸性側から中性領域(pH 、 )へ高くなるに従いAQCmaxは上昇した。これらの

結果から、0.3%GFLX点眼液(pH )と0.5%GFLX点眼液(pH )との濃度及びpHの差に起因

する眼内移行性の増加と減少に及ぼす影響はそれぞれほぼ同じで互いに相殺されると考えられ、

0.3%GFLX点眼液は0.5%GFLX点眼液と同程度の眼組織内分布が期待できると考えられた。

有色雄性ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与したとき、メラニン非含有組織の組織内

放射能濃度は投与後2時間までにCmaxを示した。また、メラニンを含有する網・脈絡膜及び虹彩・

毛様体では投与後2及び8時間にCmaxを示した。Cmaxでは角膜、虹彩・毛様体及び網・脈絡膜で高い

放射能が確認された。メラニン含有組織からの消失は緩慢であり、投与後84日では網・脈絡膜及

び虹彩・毛様体でそれぞれCmaxの15%及び3%の放射能が確認された。一方、体組織では胃が投与

後0.5時間にCmaxを示し、その他の組織は投与後1時間にCmaxを示したが、その濃度は角膜や虹彩・

毛様体などの眼組織濃度と比較すると低い値であった。

有色雄性ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を1日3回、最高43回反復点眼投与したとき、メラニン含

有組織である虹彩・毛様体及び網・脈絡膜に放射能の蓄積が認められた。しかし、放射能は各組織

から経時的に着実に消失していることから、メラニンとの結合は可逆的であると推測された。

(3) 代 謝

有色雄性ウサギに0.5%14C-GFLX点眼液を両眼に単回点眼投与したとき、投与後1、4及び24時

間の血漿、角膜、結膜、虹彩・毛様体、前房水、網膜及び脈絡膜で確認された放射能のほとんど

はTLC上でGFLXと一致するRf値であり、GFLXは眼組織においてはほとんど代謝されないことが

確認された。

(4) 排 泄

有色雄性ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を両眼に単回点眼投与したときの投与後168時間まで

の尿及び糞中排泄率は35.1%及び62.3%であり、総排泄率は97.3%であった。

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0.3% 0.5%GFLX

4 1 2 1 4 7 90 1 8 1 2

3 GFLX

5 ng/mL

35.1% (168hr )62.3% (168hr )

100%

49%

0.0% (168hr )

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1. ·····················································································

1.被験物質及びその定量法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-1、2、4~8

(1) 標識体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-1、2、5~7

1) 被験物質

ガチフロキサシンの 14C標識体(14C-GFLX)の化学構造及び標識位置を図へ-2に示した。14C-GFLX

は 株式会社で合成したもの、あるいはそれを 株式

会社で精製したものを点眼液基剤または注射用生理食塩液(静脈内投与液用)に溶解して用いた。

なお、比放射能及び放射化学的純度は表へ-2 に示した。

図へ-2 14C-GFLX の化学構造及び標識位置

表へ-2 14C-GFLX の比放射能及び放射化学的純度

ロット番号 比放射能(MBq/mg) 放射化学的純度 添付資料

1.66 ≧97% ヘ-1、5、6

2.11 ≧98% ヘ-2

2.16 ≧97% ヘ-7

2) 定量法

放射能の測定は試料調製後、液体シンチレーションカウンターを用いて行った。放射能の検出限

界はバックグラウンド値またはその 2 倍とした。なお、単位については、放射能を GFLX(無水物)

に換算して、ng eq. of GFLX/g or mL と表示した。

(2) 非標識体・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-4、8

1) 被験物質

GFLX は杏林製薬株式会社で合成されたものを、点眼液基剤に溶解して用いた。

2) 定量分析法

ヒト血清及びウサギ前房水中未変化体の定量は高速液体クロマトグラフ法を用いて行った。定量

法の定量限界はそれぞれ ng/mL 及び ng/mL、定量範囲は ~ ng/mL 及び ~ ng/mL

であった。また、同時再現性(併行精度)の変動係数は %以下及び %~ %、相対誤差は %

~ %及び %~ %、日差(日間)再現性の変動係数は %以下及び %~ %、相対誤

差は %~ %及び ~ %であった。

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2. 点眼投与時の動物における成績··························································添付資料へ-1~7

(1) 吸収・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-1

有色雄性ウサギ(1群3匹)の両眼に0.3 % 14C–GFLX点眼液を50 µLずつ単回点眼投与(0.3 mg/100

µL/body)または14C-GFLX静脈内投与液(0.3 mg/0.5 mL/body)を単回静脈内投与したときの血漿中

放射能濃度推移を図へ-3に、薬物動態パラメーターを表へ-3に示した。単回点眼投与したときの

血漿中放射能濃度は投与後0.8時間にCmax 27 ng eq./mLを示したのち、4時間あるいは6時間まではt1/2

が1.9時間で消失した。また、静脈内投与したときは最初の測定時点である投与後5分に111 ng eq./mL

を示したのち、2時間まではt1/2 が1.0時間であり、4時間から8時間まではt1/2 が2.0時間で消失した。

点眼及び静脈内投与時のAUC0-∞の比から算出した点眼投与時の吸収率は49%であった。

図へ-3 単回点眼投与または静脈内投与したときの血漿中放射能濃度推移

表へ-3 単回点眼投与または静脈内投与したときの薬物動態パラメーター

点眼投与 静脈内投与

Cmax (ng eq./mL) 27±2 111±16

Tmax 0.8±0.3 hr 5 min #

t1/2 (hr) 1.9±0.2

(Tmax-4, 6 hr) *

1.0±0.2

(5 min-2 hr)*

2.0±0.1

(4-8 hr)*

AUC0-8hr (ng eq.・hr/mL) - 178±17

AUC0-finite (ng eq.・hr/mL) 78±20 -

AUC0-∞ (ng eq.・hr/mL) 92±19 186±17

投与量:0.3 mg/body、平均値±標準偏差、n=3

finite:最終定量時点、#:初回定量時点、*:算出時間範囲

0.1

1

10

100

1000

0 4 8 12 16 20 24

投与後時間 (時間)

放射

能濃

(ng

eq. of

GFLX /

mL)

i.v.

e.d.

静脈内投与

点眼投与

平均値+標準偏差、n=3

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- 126 -

(2) 分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-2~6

1) 点眼液濃度と眼組織内分布の検討(pHによる影響)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-2~4

抗菌力を示す最小発育阻止濃度(MIC)は抗菌薬を評価する重要な指標として広く用いられてい

る。しかし、生体における抗菌薬の有用性を評価するには MIC だけではなく、投与された薬物が感

染部位にどの程度の濃度で移行しているかを併せて検討することが重要となる。GFLX 点眼液は結

膜炎を始めとして眼瞼炎、麦粒腫などが対象感染症であることから、主に外眼部組織の薬物濃度を

知ることは非常に有用である。

一般に中性領域で水溶性が悪いフルオロキノロン点眼液は、pH を弱酸性とし溶液としても、点眼

後結膜囊内で中性になると析出してしまう事例が報告されている1)。そのため、結膜囊内や外眼部

組織では測定した薬物濃度値が再現性のない異常値を示すと考えられている。フルオロキノロン点

眼液の組織移行性の指標は外眼部組織内濃度が最適であるが、これらの組織内濃度は結晶析出など

により測定毎に大きく変動し、再現性が乏しいため、指標としては致命的問題が残されていた。こ

の欠点を克服するため、フルオロキノロン点眼液を投与したときは角膜を隔てた前房水中濃度を測

定し、薬物が眼組織内へ移行する速度と濃度のパラメーター(maximum concentration in the aqueous

(AQCmax))とすることが眼感染症学会において提案された2)。AQCmaxは結膜囊内から房水内への

移行性の良否を評価する一つのパラメーターであるばかりでなく、眼組織内への移行を反映してい

ると考えられている。また、細菌類は組織内で増殖しているから、このパラメーターは薬物が病巣

へ到達する時間と量を示すことになると考えられる。そこで、GFLX 点眼液の眼組織移行性はこの

AQCmaxを用いて評価することが適切であると判断した。

GFLX の調製可能で安定な点眼液濃度は 0.5%が上限であり、pH は 0.1%、0.3%及び 0.5%でそれぞ

れ 6.5、6.0 及び 5.5 である。これらの中から眼組織移行性の優れた製剤を選択するために、各点眼

液を投与したときの眼組織内分布及び点眼液濃度と pH が眼内移行性に及ぼす影響について詳細に

検討した。

① 0.1%、0.3%、0.5%点眼液の単回投与による眼組織内分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料ヘ-2、3

白色雄性ウサギ(1 群 4 匹)の右眼に 0.1%、0.3% または 0.5% 14C-GFLX 点眼液(それぞれ、pH6.5、

6.0、5.5)を 50 µL 単回点眼投与したときの投与後 0.25、0.5、1 及び 2 時間の前房水、角膜及び結

膜中放射能濃度を表へ-4 に示した。また、点眼液濃度と前房水の Cmax及び AUC0-2hr の関係を図

へ-4 に示した。前房水の Cmax及び AUC0-2hr は 0.1%と 0.3%の濃度間で投与量の増加に伴う増加

が認められたが、0.3%と 0.5%の濃度間では投与量の増加に伴う増加は認められなかった。また、

角膜及び結膜における点眼液濃度とCmax及びAUC0-2hrの関係は前房水とほぼ同様の推移を示した。

しかし、これらの点眼液の濃度と pH は各製剤毎に異なっているので、これら 2 つの因子の一方を

固定した点眼液を調製し、それぞれの影響を AQCmax を指標として評価することにした。

1) 河嶋洋一 他:オフロキサシンおよびレボフロキサシン点眼液の薬動力学的パラメーター.あたらしい眼科 12(5):791-794, 1995. 2) 三井幸彦 他:点眼液の薬動力学的パラメーターとしての AQCmaxの提案.あたらしい眼科 12(5):783-786, 1995.

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- 127 -

表へ-4 白色ウサギに0.1%、0.3%または0.5%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与したときの角膜、結膜及び

前房水中放射能濃度及びAUC0-2hr

放射能濃度(ng eq. of GFLX /g ) AUC0-2hr 時間 組織

濃度 pH0.25 時間 0.5 時間 1 時間 2 時間 (µg eq.・hr/g)

0 . 1 % 0 . 3 % 角 膜 0 . 5 %

0 . 1 % 結 膜 0 . 3 %

0 . 5 % 0 . 1 % 0 . 3 % 前 房 水 0 . 5 %

投与量:0.05 (0.1%)、0.15 (0.3%)、0.25 (0.5%) mg/body、平均値±標準偏差(スパースサンプリング)、n=4

図へ-4 白色ウサギに0.1%、0.3%または0.5%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与したときの

前房水のCmax及びAUC0-2hr

平均値+標準偏差(スパースサンプリング)、n=4

② 点眼液濃度と前房水中薬物濃度(AQCmax)の関係 ······································· 添付資料ヘ-4

白色雄性ウサギ(1 群 4 匹 4 眼)に pH を に固定して調製した 0.1%、0.3% または 0.5% GFLX

点眼液を 1 回 50 µL、15 分間隔で 3 回点眼投与したときの投与後 0.5、1、2 及び 4 時間の前房水中

GFLX 濃度を測定し、点眼液濃度と AQCmaxとの関係を図ヘ-5 に示した。0.1%、0.3%及び 0.5%

GFLX 点眼液の AQCmax はそれぞれ 0.995、2.73 及び 4.19 µg/mL であり、0.5%まで濃度に依存して

AQCmaxは上昇した。また、0.5%の AQCmaxは 0.3%の 1.5 倍であった。なお、0.1%、0.3% 及び 0.5%

GFLX 点眼液(pH6.0)の AUC0-4hr は、それぞれ 1.74、5.15 及び 8.22 µg・hr/mL であり、濃度に依

存して増加した。

0.1

1

10

0.1% 0.3% 0.5%

Cm

ax( µ

g eq

./g)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

4.5

5.0

AU

C0-2hr(µg

eq.

・hr/

g)

AUC0-2h

Cmax

0-2hr

max

濃度:

pH :

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- 128 -

図ヘ-5 点眼液濃度とAQCmaxの関係(pH 一定)

平均値±標準偏差、n=4

③ 点眼液pHと前房水中濃度(AQCmax)の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料ヘ-4

白色雄性ウサギ(1 群 4 匹 4 眼)に濃度を 0.3%に固定して調製した pH 、 、 、 または

の GFLX 点眼液を 1 回 50 µL、15 分間隔で 3 回点眼投与したときの投与後 0.5、1、2 及び 4

時間の前房水中 GFLX 濃度を測定し、点眼液 pH と AQCmaxの関係を図ヘ-6 に示した。pH 、 、

、 及び での 0.3%GFLX 点眼液の AQCmax はそれぞれ 1.80、1.82、2.73、3.18 及び 3.03 µg/mL

であり、点眼液の pH が酸性側から中性領域(pH 、 )へ高くなるに従い AQCmax は上昇した。ま

た、pH の AQCmax は pH の 1.5 倍であった。なお、pH 、 、 、 及び での 0.3%GFLX

点眼液の AUC0-4hr は、それぞれ 3.72、4.26、5.15、7.17 及び 7.00 µg・hr/mL であり、AQCmaxと良く

一致した結果であった。

図ヘ-6 点眼液pHとAQCmaxの関係(濃度0.3%一定)

平均値±標準偏差、n=4

0

1

2

3

4

5

6

0.0% 0.1% 0.2% 0.3% 0.4% 0.5% 0.6%

点眼液濃度

AQ

Cm

ax(

g/m

L)

濃度 AQCmax

(µg/mL)AUC0-4 hr

(µg・hr/mL)

0.1% 0.995 1.74 0.3% 2.73 5.15 0.5% 4.19 8.22

0

1

2

3

4

点眼液pH

AQ

Cm

ax( µ

g/m

L)

pH AQCmax

(µg/mL) AUC0-4 hr

(µg・hr/mL)

1.80 3.72 1.82 4.26 2.73 5.15 3.18 7.17 3.03 7.00

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- 129 -

薬物の生体膜透過過程に特殊な輸送系が関与しないかぎり、その透過性は脂溶性に従い、イオン

型薬物よりも分子型薬物の透過性の方が大きい1)とする pH-分配仮説に従う受動拡散によることが

知られている。

両性化合物である GFLX は、酸性では陽イオン型に、塩基性では陰イオン型に解離し、中性では

両性イオン型として存在する(図へ-7)。両性化合物は両性イオン型になった場合に最も分配係

数が高く生体膜の透過性が良いと考えられる。GFLX は pH ~ の範囲で最大の分配比を示して

おり(ガチフロ®錠承認時提出資料)、pH 及び で良好な眼内移行を示した結果と良く一致し

ていた。

陽イオン型 両性イオン型 陰イオン型

解離定数 :pKa1= 、pKa2= (電位差滴定法:ガチフロ®錠承認時提出資料)

図へ-7 ガチフロキサシンの解離様式

ウサギを用いた試験において、GFLX 点眼液は 0.3%(pH )から 0.5%(pH )へとその点眼液濃度

を増加させても、眼組織内分布は上昇しなかった理由は上記の通りである。また、同一の pH で GFLX

点眼液濃度を 0.3%から 0.5%へと増加させたとき、その AQCmaxは 1.5 倍上昇し、同一の濃度では点眼液

pH が から へ なったとき、AQCmaxは 1.5 倍上昇した(ヘ項 p.127, 128)。0.3% GFLX 点眼液

(pH )と 0.5% GFLX 点眼液(pH )との濃度及び pH の差に起因する眼内移行性の増加と減少に及

ぼす影響はそれぞれほぼ同じで互いに相殺されると考えられ、0.3% GFLX 点眼液は 0.5% GFLX 点眼液

と同程度の眼組織内分布が期待できると考えられた。

2) 組織内濃度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-5、6

① 単回点眼投与・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-5

有色雄性ウサギ(1 群 3 匹)の両眼に 0.3% 14C-GFLX 点眼液を 50 µL ずつ単回点眼投与したとき、

眼及び眼周辺組織内放射能濃度(右眼)を表へ-5 に、体組織内放射能濃度を表へ-6 に、また、

主要組織での放射能濃度推移を図へ-8 に示した。

角膜、結膜、外眼筋、強膜、前房水及び鼻粘膜は投与後 0.5 時間に、血漿、血液、水晶体、硝子

体、涙腺、副涙腺及び舌は投与後 1 時間に、水晶体(投与後 1 時間と同値)及び網・脈絡膜は投与

1) 新家真:点眼液の吸収と動態(眼内移行, 流出など).眼科診療プラクティス 11 眼科治療薬ガイド.文光堂:387-392, 1994.

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- 130 -

後 2 時間に、虹彩・毛様体は投与後 8 時間にそれぞれ Cmaxを示した。また、Cmaxは虹彩・毛様体、

角膜、網・脈絡膜、前房水、舌、強膜、結膜、鼻粘膜、涙腺、外眼筋、副涙腺、血漿、血液、水晶

体及び硝子体の順に高い値を示し、角膜及びメラニン含有組織である虹彩・毛様体及び網・脈絡膜

に高い放射能が確認された。投与後 24 時間では網・脈絡膜、虹彩・毛様体、水晶体及び強膜にそれ

ぞれ Cmaxの 56%、49%、22%及び 21%の放射能が認められたが、その他の組織では Cmaxの 6%以

下に減少した。また、投与後 84 日では網・脈絡膜、虹彩・毛様体及び強膜にそれぞれ Cmaxの 15%、

3%及び 2%の放射能が認められ、これら組織からの放射能の消失は緩慢であった。なお、網・脈絡

膜、虹彩・毛様体及び強膜の t1/2 はそれぞれ 38 日、21 日及び 17 日であった。

体組織では胃が投与後 0.5 時間に Cmaxを示し、その他の組織は投与後 1 時間に Cmaxを示したの

ち、投与後 24 時間で Cmaxの 4%以下となった。高濃度を示した組織は消化管、腎臓及び肝臓であ

ったが、角膜や虹彩・毛様体などの眼組織濃度と比較すると低い値であった。また、中枢神経系の

放射能は低かった。

表へ-5 有色ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与したときの眼及び眼周辺組織内放射能濃度

(1)

放射能濃度(ng eq. of GFLX /g or mL) 時間

組織 0.5 時間 1 時間 2 時間 4 時間 8 時間

血 漿 29±9 43±7 15±4 5±2 3±3

血 液 29±9 40±7 13±3 5±2 1±2

角 膜 6178±540 3948±1227 2183±202 903±179 276±156

結 膜 295±174 170±52 250±257 33±20 77*

強 膜 493±197 484±71 328±90 390±91 228±162

前 房 水 615±141 506±155 377±61 104±23 25±10

虹彩・毛様体 1458±105 2036±205 4247±1219 4706±1097 6492±3955

外 眼 筋 122±67 97±15 42±5 10±3 85±133

水 晶 体 13±6 23±6 23±4 13±8 13±8

硝 子 体 4±1 5±0 4±0 3±1 2±2

網 ・ 脈 絡 膜 487±316 551±73 841±394 800±71 636±146

涙 腺 75±6 129±32 49±23 12±2 30±34

副 涙 腺 37±8 49±4 25±16 7±3 18±24

鼻 粘 膜 130±53 67±17 46±31 9±2 16±4

舌 453±135 581±322 202±153 33±7 21±2

投与量 0.3 mg/body、平均値±標準偏差(スパースサンプリング)、n=3(*:n=2)

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- 131 -

表へ-5 有色ウサギに 0.3%14C-GFLX 点眼液を単回点眼投与したときの眼及び眼周辺組織内放射能濃度

(2)

放射能濃度(ng eq. GFLX /g or mL) 時間

組織 24 時間 7 日 28 日 84 日

血 漿 ND ND 1±2 ND

血 液 ND ND ND ND

角 膜 48±13 42±51 2±3 ND

結 膜 17±8 48±74 ND ND

強 膜 103±20 75±36 36±20 9±2

前 房 水 3±2 1±1 ND ND

虹彩・毛様体 3172±1096 1765±468 936±317 181±42

外 眼 筋 1±1 ND ND ND

水 晶 体 5±3 0±1 0±1 ND

硝 子 体 ND ND ND ND

網 ・ 脈 絡 膜 474±149 376±45 298±64 130±76

涙 腺 1±2 ND ND ND

副 涙 腺 ND ND ND ND

鼻 粘 膜 ND ND ND ND

舌 3±1 ND ND ND

投与量 0.3 mg/body、平均値±標準偏差(スパースサンプリング)、n=3、ND:検出されず

表へ-6 有色ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与したときの体組織内放射能濃度

放射能濃度(ng eq. of GFLX /g or mL) 時間

組織 0.5 時間 1 時間 4 時間 24 時間 7 日 28 日

血 漿 29±9 43±7 5±2 ND ND 1±2

大 脳 4±2 5±1 1±1 ND ND ND

小 脳 2±0 4±1 0±1 ND ND ND

心 臓 61±21 81±12 10±3 ND ND ND

肺 69±21 86±10 11±4 ND ND ND

肝 臓 234±71 349±58 37±12 4±2 ND ND

腎 臓 260±94 276±12 49±9 4±1 ND ND

皮 膚 18±7 38±7 5±1 1±1 ND ND

胃 150±129 122±23 30±18 2±2 ND ND

小 腸 467±96 829±555 21±7 3±1 ND ND

大 腸 53±14 91±58 41±11 4±1 ND ND

投与量 0.3 mg/body、平均値±標準偏差(スパースサンプリング)、n=3、ND:検出されず

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- 132 -

図へ-8 有色ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与したときの組織内放射能濃度推移

投与量 0.3 mg/body、平均値 (スパースサンプリング)、n=3

0.1

1

10

100

1000

10000

100000

0 4 8 12 16 20 24

投与後時間(時間)

放射

能濃

度(n

g eq.

of

GFLX /

g or

mL)

角膜結膜虹彩・毛様体網・脈絡膜強膜前房水血漿血液

0.1

1

10

100

1000

10000

100000

0 7 14 21 28 35 42 49 56 63 70 77 84

投与後時間 (日)

放射

能濃

度(n

g eq.

of

GFLX /

g or

mL)

角膜結膜虹彩・毛様体網・脈絡膜強膜前房水血漿

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- 133 -

② 反復点眼投与・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-6

有色雄性ウサギ(1群3匹)の両眼に0.3 % 14C-GFLX点眼液を50 µLずつ1日3回、最高43回反復点眼投

与したとき、1、10、22及び43回投与後1時間の組織内放射能濃度(右眼)を表へ-7に、43回反復

点眼投与後の組織内放射濃度(右眼)を表へ-8に示した。

10、22及び43回投与後1時間における各組織内放射能濃度は、水晶体、強膜、虹彩・毛様体及び網・

脈絡膜を除き、投与回数に伴う放射能濃度の上昇は認められなかった。水晶体及び強膜では22回と

43回投与後で同程度の濃度を示し、定常状態に達する傾向が確認された。一方、メラニンを多く含

有する虹彩・毛様体及び網・脈絡膜の放射能濃度は43回の投与回数では定常状態に達しなかった。し

かし、点眼回数の増加に伴う放射能濃度の上昇率は緩徐になっており、さらなる点眼回数の増加に

よる急激な放射能濃度の上昇は起こらないものと考えられる。

43 回投与後の組織内放射能濃度は網・脈絡膜、強膜及び虹彩・毛様体からの放射能の消失が他の組

織と比べ緩慢であり、投与後 84 日においてもそれぞれ Cmaxの 9%、5%及び 3%が確認された。なお、

網・脈絡膜、強膜及び虹彩・毛様体での t1/2 はそれぞれ 24 日、21 日及び 17 日であった。

14C-GFLXを反復点眼投与したとき、放射能は水晶体、強膜、虹彩・毛様体及び網・脈絡膜に蓄積ま

たは残留することが確認された。これらのうち、水晶体は眼循環から離れた組織であること1)、強

膜は付着する脈絡膜のメラニン組織が完全に除去できなかったことが原因と考えられる。メラニン

親和性が原因と考えられる虹彩・毛様体及び網・脈絡膜においても、放射能は経時的に着実に消失し

ていることから、その結合は可逆的であると考えられた。また、GFLXのメラニン親和性は他のキ

ノロン薬と比較して中程度以下であること(ヘ項p.138)、有色ウサギを用いた1日4回1カ月間反復

点眼投与毒性試験においても、1.0%GFLX溶液は眼に毒性を示さないこと(ニ項p.66)、イヌを用い

た1日10回1カ月間または1日4回3カ月間(最初の2日間は1日32回で次の5日間は1日16回)反復点眼

投与毒性試験においても、0.5%GFLX点眼液は軽度で可逆的な結膜充血以外、眼局所及び全身に毒

性を示さないこと(ニ項p.68)及びガチフロ®錠でヒトにおいてメラニンと関係すると考えられる副

作用は報告されていないこと(ガチフロ®錠承認時提出資料)などから、GFLXはメラニン親和性を

示すものの、0.3%GFLX点眼液の眼組織における安全性に問題はないと考えられる。

1) 岩田修造 編著:眼の構造と水晶体の位置.水晶体 その生化学的機構.メディカル葵出版:21-24, 1986.

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- 134 -

表へ-7 有色ウサギに0.3%14C-GFLX点眼液を単回または反復点眼投与後1時間の組織内放射能濃度

放射能濃度(ng eq. of GFLX /g or mL) 点眼回数

組織 1 回 10 回 22 回 43 回

血 漿 43±7 30±4 26±3 29±4

血 液 40±7 29±4 27±4 29±3

角 膜 3948±1227 4290±1315 4322±1387 3658±152

結 膜 170±52 227±90 209±68 227±30

強 膜 484±71 820±80 1540±136 1815±567

前 房 水 506±155 579±263 516±81 552±2

虹 彩 ・ 毛 様体 2036±205 26425±5811 31657±7439 40286±4254

外 眼 筋 97±15 65±10 56±9 74±7

水 晶 体 23±6 58±12 72±2 74±6

硝 子 体 5±0 7±1 6±5 9±2

網 ・ 脈 絡 膜 551±73 4682±1305 7321±2329 13144±1232

涙 腺 129±32 82±13 85±8 91±15

副 涙 腺 49±4 37±8 34±13 35±5

鼻 粘 膜 67±17 54±12 59±4 63±3

舌 581±322 231±70 314±89 391±80

肝 臓 349±58 235±14 216±12 239±15

皮 膚 38±7 32±5 37±4 42±8

投与量 0.3 mg/body/回、平均値±標準偏差(スパースサンプリング)、n=3

表へ-8 有色ウサギに 0.3%14C-GFLX 点眼液を 43 回反復点眼投与したときの組織内放射能濃度

放射能濃度(ng eq. of GFLX /g or mL) 時間

組織 1 時間 2 時間 4 時間 8 時間 24 時間 7 日 28 日 84 日

血 漿 29±4 17±4 7±6 ND ND ND ND ND

血 液 29±3 16±5 9±0 ND ND ND ND ND

角 膜 3658±152 1877±528 1097±142 394±71 396±230 102±25 22±8 ND

結 膜 227±30 231±182 157±49 72±57 107±44 45±25 17±9 ND

強 膜 1815±567 1297±115 1751±497 1098±280 1736±422 885±293 161±29 90±42

前 房 水 552±2 267±65 138±36 64±18 36±8 12±6 ND ND

虹彩・毛様体 40286±4254 42153±5675 40628±9810 37417±6251 32176±1828 17571±2534 4530±788 1308±269

外 眼 筋 74±7 42±21 24±4 9±3 ND 4±8 ND ND

水 晶 体 74±6 59±13 64±16 58±13 49±2 13±5 ND ND

硝 子 体 9±2 9±2 8±2 5±1 3±3 ND ND ND

網 ・ 脈 絡 膜 13144±1232 12557±1209 11745±3350 9525±2360 12690±8969 8734±2955 1531±694 1178±670

涙 腺 91±15 49±6 28±2 10±10 6±6 ND ND ND

副 涙 腺 35±5 21±6 15±2 2±3 5±4 ND ND ND

鼻 粘 膜 63±3 24±5 13±12 ND ND ND ND ND

舌 391±80 141±65 54±19 28±7 9±10 ND ND ND

肝 臓 239±15 132±44 102±4 47±20 37±15 5±4 2±3 ND

皮 膚 42±8 26±5 16±0 3±5 10±3 3±3 2±3 ND

投与量 0.3 mg/body/回、平均値±標準偏差(スパースサンプリング)、n=3、ND:検出されず

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3) 眼球オートラジオグラフィー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-5

有色雄性ウサギ(1群1匹)の両眼に0.3%14C-GFLX点眼液を50 µLずつ単回点眼投与したときの投与後1

及び168時間(7日)の眼球オートラジオグラムを図ヘ-9に示した。放射能は投与後1時間で角膜、眼瞼

及び虹彩・毛様体に高く分布し、網・脈絡膜及び結膜に低く分布していた。また、その他の組織に放射能

は認められなかった。投与後168時間ではメラニン含有組織である虹彩・毛様体及び網・脈絡膜に放射能

の分布が認められたが、その他の組織に放射能は認められなかった。

図ヘ-9 単回点眼投与したときの眼球オートラジオグラム

(B:脳、C:結膜、Cr:角膜、Ex:外眼筋、Ey:眼瞼、I:虹彩、L:水晶体、R:網・脈絡膜、S:強膜、V:硝子体)

B

Ey

ExL

I

Cr

V

R

S

C

V Ey

Cr

I

L

CR

B

Ey

ExL

I

Cr

V

R

S

C

Cr

V Ey

I

L

C R

1hr

168hr

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- 136 -

(3) 代謝・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料ヘ-7

有色雄性ウサギ(1 群 3 匹)の両眼に 0.5%14C-GFLX 点眼液を 50 µL ずつ単回点眼投与し、投与後 1、

4 及び 24 時間の血漿、角膜、結膜、虹彩・毛様体、前房水、網膜または脈絡膜組織(左眼)を 3 眼分

合わせて TLC 法にて代謝物分析した。各組織及び各時点で確認された放射能のほとんどが GFLX と

一致する Rf 値であり、GFLX は眼組織においてはほとんど代謝されないことが確認された。なお、

ラット、ウサギ、イヌまたはヒトに経口投与したときの尿、糞あるいは胆汁中で確認されたアミノ体、

エチレンジアミン体及び 2-メチルエチレンジアミン体(ヘ項 p.139,140)は確認されなかった。

(4) 排泄・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-5

有色雄性ウサギ(1群3匹)の両眼に0.3%14C-GFLX点眼液を50 µLずつ単回点眼投与し、尿及び糞中

排泄率を調べた(表へ-9)。投与後24時間までの尿及び糞中排泄率は30.8%及び54.7%であり、総排

泄率は85.5%であった。また、投与後168時間までの尿及び糞中排泄率は35.1%及び62.3%であり、総

排泄率は97.3%であった。投与後168時間におけるケージ洗浄液に放射能は認められなかった。

表へ-9 0.3%14C-GFLX点眼液を単回点眼投与したときの尿及び糞中排泄率

排泄率(%投与量比) 時間(hr)

尿 糞 計

0- 24 30.8±8.3 54.7±9.9 85.5±1.6

48 33.8±8.8 60.9±11.5 94.7±2.7

72 34.6±8.9 61.8±11.3 96.4±2.4

96 34.7±9.0 62.2±11.3 96.9±2.4

120 35.0±9.0 62.3±11.2 97.2±2.3

144 35.1±9.1 62.3±11.2 97.3±2.2

168 35.1±9.1 62.3±11.2 97.3±2.2

ケージ洗浄液 0.0±0.0

投与量 0.3 mg/body、平均値±標準偏差、n=3

ケージ洗浄液は投与後168時間に測定

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- 137 -

3. 点眼投与時のヒトにおける成績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・添付資料へ-8

健常成人男子(1 群 6 名)を対象として片眼に 0.3%または 0.5%GFLX 点眼液を、他眼にプラセボ点

眼液を反復点眼(4 時間毎に 1 回 2 滴、1 日 4 回、7 日間)または頻回点眼(90 分毎(1 日 8 回)に 1

回 2 滴、3 日間)投与した。採血は表へ-10 に示す採血時間に行い、血清中ガチフロキサシン濃度を

測定した。その結果、いずれの点眼方法及び時点においても定量限界(5 ng/mL)未満であった。従

って、健常成人男子に 100 mg を経口投与したときの最高血清中濃度 873 ng/mL(ガチフロ®錠承認時

提出資料)よりもはるかに低く、GFLX点眼液による全身への影響はほとんどないものと考えられた。

表へ-10 点眼方法及び採血時点

点眼方法 日数 時点

1日目 第1回点眼前(反復点眼開始前)

4日目 第4回点眼後0.5、1、2時間 反復点眼

7日目 第4回点眼後0.5、1、2時間

1日目 第1回点眼前(頻回点眼開始前) 頻回点眼

3日目 第8回点眼後0.5、1、2、12時間

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- 138 -

4. GFLXの薬物動態及び薬物代謝(ガチフロ®錠承認時提出資料より)

(1) メラニンに対する親和性

1) 経口投与時の有色ウサギにおける眼内動態

有色雄性ウサギに GFLX 30 mg/kg を 1 日 1 回 14 日間反復経口投与したときの眼内動態を表へ-11

に示した。メラニン非含有組織の硝子体、房水、結膜、角膜、網膜内層及び水晶体では低濃度で、

消失も速やかであった。また、強膜は脈絡膜に起因する残留が投与後 4 週間まで認められた。

一方、メラニン含有組織の脈絡膜・網膜色素上皮及び虹彩・毛様体では高濃度の薬物が検出され消

失も緩慢であった。脈絡膜・網膜色素上皮及び虹彩・毛様体の t1/2 はそれぞれ 12.1 及び 10.7 日であっ

た。

表へ-11 GFLX 30 mg/kg を有色ウサギに 14日間反復経口投与したときの眼組織内濃度

組織内濃度(µg/g or mL) 時間

組織 2 時間 24 時間 1 週間 4 週間 8 週間

硝子体 0.73±0.09 0.37±0.04 0.08±0.08 ND ND

房水 0.81±0.02 0.42±0.02 ND ND ND

結膜 1.26±0.21 0.58±0.06 0.22±0.22 ND ND

視神経 ND ND ND ND ND

強膜 7.11±0.43 6.91±0.92 2.21±0.15 0.99±0.08 ND

角膜 3.20±0.11 2.10±0.06 ND ND ND

網膜内層 10.1±2.5 8.32±2.04 1.48±1.48 ND ND

水晶体 0.85±0.04 0.77±0.05 ND ND ND

脈絡膜・網膜色素上皮 268±19 148±19 77.6±10.5 14.0±2.7 6.12±0.62

虹彩・毛様体 159±24 214±38 56.6±7.8 11.0±2.5 4.57±0.73

血清 2.07 0.30 ND ND (測定せず)

平均値±標準誤差(n=4)、血清は平均値(n=2)、ND:検出されず

2) メラニン親和性(in vitro )1)

牛眼から精製した酸不溶性メラニン 0.1 mg/mL に対する、GFLX と各種キノロン薬並びにクロロキ

ン、ベフノロールの結合率を表へ-12に示した。キノロン薬 1 µg/mLのメラニンに対する結合率は、

CPFX≧NFLX>PFLX>OFLX>LFLX>GFLX>FLRX の順であり、10 µg/mL では CPFX>PFLX≧

NFLX>OFLX>GFLX≧LFLX>FLRX の順であった。

表へ-12 In vitro における酸不溶性メラニンに対する GFLX 及び各種薬物のメラニン親和性

結合率(%) 薬物

1 µg/mL 10 µg/mL Gatifloxacin (GFLX) 66.9 36.9 Fleroxacin (FLRX) 51.6 27.4

Norfloxacin (NFLX) 87.8 57.8 Pefloxacin (PFLX) 82.3 58.8

Ciprofloxacin (CPFX) 88.4 62.2 Ofloxacin (OFLX) 78.1 41.1

Lomefloxacin (LFLX) 70.3 34.7 Chloroquine 99.1 96.9

Befunolol 91.6 71.8

各薬物は 20 mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中で 0.1 mg/mL の酸不溶性メラニンと 25℃、

24 時間インキュベートした。

1) 伊澤成 他:新キノロン系抗菌薬 gatifloxacin のメラニン親和性と有色ウサギにおける眼内動態.日本化学療法学会雑誌 47

(S-2):166-174,1999.

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(2) 経口投与時の吸収、分布、代謝、排泄

GFLX の吸収、分布、代謝及び排泄に関する概略を表へ-13 及び表へ-14 に示す。

表ヘ-13 GFLX の経口投与時の動物における全身動態(1)

GFLX をマウス、ラット、ウサギ、イヌ及びサルに経口投与したとき、速やかに吸収され、いずれの動物種におい

ても Tmaxは 2 時間以内であった。t1/2 は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ及びサルでそれぞれ 1.5、2.2、1.9、6.2 及び

2.5 時間と、大動物ほど高値を示し、これらは静脈内投与の t1/2βとほぼ一致した。バイオアべイラビリティは、それ

ぞれ 63、93、37、87 及び 116%で、ラット、イヌ及びサルではほぼ完全に経口吸収されることが窺われた。

GFLX 1、5、10 及び 15 mg/kg をイヌに経口投与したとき、Cmax、AUC0-∞が用量に比例して上昇し、一方、Tmax、

t1/2、CLT/F 及び V/F が用量に依存しないことから、GFLX は線形の体内動態を示すものと考えられた。

〔14C〕GFLX をラットに 1 日 1 回 14 日間反復経口投与したとき、血中濃度の上昇傾向や消失の遅延は認められな

かった。

GFLX をラットの各消化管ループ内に投与したとき、投与後 1 時間の胃、十二指腸、空腸、回腸及び結腸における

GFLX の吸収率は、それぞれ 6.9、89.1、92.2、62.9 及び 42.9%で、GFLX は小腸から良好に吸収され、胃からの吸収

は少ないことが示された。

マウス、ラット、イヌ、サル及び妊娠ウサギを用いた各種トキシコキネティクス試験において、用量にほぼ比例

した血清(血漿)中未変化体濃度の上昇が認められた。また、マウス、ラット、イヌ及びサルにおいて性差はみら

れず、反復投与により血清(血漿)中濃度が上昇する傾向も認められなかった。

〔14C〕GFLX をラットに単回経口投与したとき、放射能濃度は膀胱、腎臓、膵臓、前立腺、肝臓、顎下腺、脾臓、

精囊、胸腺、筋肉、リンパ節、肺及び心臓などで血漿中濃度より高く、脳及び脳脊髄液で血漿中濃度より低かった。

投与後 1 時間での組織/血漿濃度比は、膀胱で 11.90、腎臓で 6.97、膵臓で 6.50、肺で 1.86、脳脊髄液で 0.11 などで

あった。各組織中の放射能濃度は 72 時間後にはほぼ完全に消失し、また、14 日間反復経口投与したときは、192 時

間後にほぼ完全に消失して残留性は認められなかった。

GFLX は、イヌで脳脊髄液へ移行することが認められ、その定常状態時の脳脊髄液/血清濃度比は 0.42 であった。

GFLX は、類薬と同様にメラニン親和性を示し、有色ラット及びウサギのメラニン含有組織(虹彩・毛様体、網膜・

脈絡膜)では残留が認められた。

〔14C〕GFLX は、妊娠ラットの胎盤を通過して胎児へ移行することが確認されたが、胎児中放射能濃度は妊娠ラ

ットの血液中濃度とほぼ同程度であった。

GFLX の血清たん白結合率は動物(マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル)による種差はなく、15~27%と低値で

あった。

〔14C〕GFLX を経口投与したラットにおいて血清中ではほとんどが未変化体として存在した。

〔14C〕GFLX を経口投与したラット、ウサギ及びイヌの尿中においては、いずれも約 90%が未変化体として存在

し、そのほかに GFLX のグルクロン酸抱合体(M-1)が約 3%、アミノ体(M-4)が 1~2%、エチレンジアミン体(M-2)

及び 2-メチルエチレンジアミン体(M-3)がそれぞれ約 1%検出された。糞中でも未変化体が主で、M-2、M-3 及び

M-4 がそれぞれ 1~2%検出された。

胆管カニュレーションを施し、〔14C〕GFLX を経口投与したラットから採取した胆汁中では、54%が GFLX の抱

合体(M-1)であり、次いで GFLX が 18%、M-2、M-3 及び M-4 が非抱合体と抱合体を合わせてそれぞれ約 4%存在

した。

GFLX 10、90、270 mg/kg をラットに 1 日 1 回 7 日間連続経口投与したとき、対照群と比べ、肝重量、肝ミクロソ

ームたん白量、チトクローム P450 含量、チトクローム b5含量、NADPH-チトクローム還元酵素、アミノピリン N-脱

メチル化酵素、アニリン p-水酸化酵素及び 7-エトキシクマリン O-脱エチル化酵素の各活性に変化は認められなかっ

た。

GFLX を単回経口投与したときの尿中排泄率(0~48 時間)は動物種により異なり、マウス、ウサギ、イヌ、ラッ

ト、サルの順に大きく、それぞれ 22.5、24.2、37.4、42.4 及び 66.7%であった。

〔14C〕GFLX をラットに単回経口投与したとき、投与後 24 時間までに尿及び糞中にそれぞれ 41.9%及び 53.6%が

排泄された。投与後 192 時間までの総排泄率は 100.7%で、大部分の放射能は 24 時間以内に排泄された。

〔14C〕GFLX をラットに 1 日 1 回 14 日間反復経口投与したとき、投与期間中の 24 時間毎の尿及び糞中排泄率は

それぞれ 22.2~34.7%及び 68.2~84.3%とほぼ一定で、尿糞合わせて連日ほぼ 100%が排泄された。

〔14C〕GFLX をラットに単回経口投与したとき、投与後 24 時間で 32.2%が胆汁中に排泄され、その一部は腸肝循

環することが確認された。

〔14C〕GFLX 10 mg/kg を分娩後 10 日目の授乳中ラットに単回経口投与したとき、乳汁中に高い放射能濃度(乳汁

/ 血液中濃度比:3.5~7.4)が検出されたが、消失は速やかで 24 時間後では血液中濃度を下回り検出限界付近まで低

下した。

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表ヘ-13 GFLX の経口投与時の動物における全身動態(2)

ラット肝ミクロソームに GFLX(1×10-5、4.5×10-5、1×10-4、5×10-4 mol/L)を添加し、アミノピリン N-脱メチル

化酵素、アニリン p-水酸化酵素及び 7-エトキシクマリン O-脱エチル化酵素の各活性を測定した結果、いずれにも影

響は認められず、GFLX は薬物代謝酵素の阻害を引き起こしにくい薬物であることが示唆された。

ラット及びヒト肝ミクロソームを用いた in vitro 代謝実験で、GFLX は類剤と比較してテオフィリンの代謝を阻害

する作用は小さく、テオフィリンとの薬物相互作用が発現する可能性は少ないと考えられた。

ラットにおけるテオフィリンとの併用実験で、GFLX は 100 mg/kg(p.o.)までの用量でテオフィリンの血中動態及

び尿中排泄に影響を及ぼさなかった。

ヒトリンパ芽球由来チトクローム P450 発現系を用いた in vitro 試験で、GFLX は検討された最高濃度の 300 µmol/L

まで CYP1A2、CYP3A4 及び CYP2D6 の代謝活性を阻害しなかった。

表ヘ-14 GFLX の経口投与時のヒトにおける全身動態

健常成人男性志願者に GFLX 100、200、400、600 mg を単回服用させたとき、各用量での Cmaxはそれぞれ 0.873、

1.71、3.35、5.41 µg/mL、AUC0-∞は 7.00、14.5、32.4、53.5 µg・hr/mL と用量に比例して増加した。Tmaxは 1~2 時間、

t1/2 は 7~8 時間で、いずれも投与量によらず、一定であった。経口と静脈内投与時の AUC0-∞の比から算出したバイ

オアベイラビリティは、100 mg 投与で 103%、200 mg 投与で 90%であり、ほぼ完全に経口吸収されることが示され

た。また、健常外国人志願者に GFLX 400 mg を単回静脈内及び経口投与を行ったときのバイオアベイラビリティは

96%であった。

健常成人男性志願者に GFLX 300 mg を 1 日 2 回7日間服用させたとき、血清中濃度は 2~3 日でほぼ定常状態に達

した。定常状態における最高血清中濃度は 3.7 µg/mL、最低血清中濃度は 1.0 µg/mL と算出された。血清中からの消

失は速やかで、本薬の体内動態は反復投与時においても線形性が保たれ、蓄積性がないことが示唆された。

内科、泌尿器科、外科、皮膚科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、歯科口腔外科領域で GFLX 200 mg を単回服用さ

せた患者の服用後 2~4 時間の血清中濃度は加齢と共に上昇する傾向がみられた。

腎障害患者(60~79 歳)に GFLX 100 mg を単回服用させたとき、健常人と比べ、腎障害患者では AUC0-∞の上昇、

t1/2 の延長、並びに CLT/F 及び尿中排泄率の低下が認められ、それらは腎機能の低下が重度になるに従って強く現れ

る傾向がみられた。

肝障害の外国人患者(18~64 歳)と、年齢、性、体重を合致させた健常外国人に GFLX 400 mg を単回服用させた

とき、健常人と比べ、肝障害患者では Cmax及び AUC0-∞の上昇がみられたが、それぞれ 32%及び 23%とわずかな上昇

であった。t1/2 及び尿中排泄率には肝障害患者と健常人で差はなかった。

気道感染症の高齢者(74~86 歳、Ccr:30.2~61.6 mL/min)に GFLX 100 mg を単回服用させたとき、健常人と比

較して、高齢者では t1/2βの延長、Cmax及び AUC0-∞の上昇、並びに CLT/F 及び尿中排泄率の低下が認められた。

健常成人男性志願者に GFLX 200 mg または 400 mg を単回服用させたとき、涙液、唾液及び前立腺液中の GFLX

濃度は血清中濃度と同等かまたはやや低かった。

健常成人男性志願者に GFLX 200 mg を空腹時に単回服用させたときの血清たん白結合率は、平均 20%(遠心限外

濾過法)であった。

GFLX は尿中においてはほとんどが未変化体で、エチレンジアミン体及び 2-メチルエチレンジアミン体がそれぞれ

0.03%検出されたのみであった。

健常成人男性志願者に GFLX 100、200、400、600 mg を単回服用させたときの尿中排泄率(0~72 時間)は、用量

に関わらず 82~88%であった。また、尿中濃度のピークは 2~6 時間でみられ、以後漸減した。

健常成人男性志願者に GFLX 300 mg を 1 日 2 回7日間服用させたとき、累積尿中排泄率は最終投与後 24 時間で

77.7%、72 時間で 78.8%であり、ほとんどが最終投与後 24 時間以内に排泄され、反復服用による GFLX の消失の遅

延はないことが示唆された。

GFLX のヒト尿中における溶解度は、pH7.9 のとき最低値を示し、8.83 mg/mL であったが、臨床でこれまでに報告

されている最高尿中濃度(600 mg の単回経口投与時で 782~1570 µg/mL)の 5 倍以上であった。また、健常成人男

性志願者に GFLX 400 mg または 600 mg を単回、並びに 300 mg を 1 日 2 回7日間反復服用させたとき、いずれも尿

中に GFLX の結晶は認められなかった。

健常成人男性志願者に GFLX 400 mg を単回服用させたときの累積糞中排泄率は、24 時間で 2.2%、48 時間で 4.0%、

72 時間で 5.7%であった。