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姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
1
注意:この資料は「宇宙ステーション入門」の 6章を抜粋したものだが、内容が修正・追加されている。
第 6章 姿勢のキネマティクスとダイナミクス
キネマティクス(kinematics)とは、位置、速度、加速度、姿勢角、角速度、角加速度の関係であり、ダイナミク
ス(dynamics)とは、キネマティクスに加えて、質量や慣性モーメントなどの慣性量と力やトルクとの間の関係であ
る。これらから運動方程式を適正に導くことが解析の出発点となる。この章では、宇宙機の並進や姿勢の運動を
記述するために必要な、ベクトル、ダイアディック、座標変換、回転パラメータなどの基礎を説明する。特に、
宇宙工学では、例えば、図 6.1 に示すように、様々な目的で多くの座標系が定義され使用されるので、ベクトル
を表現する座標系(基底)を明確に表示する一方法について述べる。そして、姿勢運動の基礎的な動力学方程式
を導出する。
通信衛星方向
アンテナ座標系
ホイール座標系
機軸座標系
太陽方向
パドル座標系
手先座標系
地上局座標系
慣性座標系
図6.1 様々な座標系
6.1 ベクトルの表現
宇宙機の運動を記述ための力学的な量、即ち、位置、(角)速度、(角)加速度、(角)運動量などの物理量は3
次元ベクトルで表現でき、それらは観測手段によらずに不変であるが、表現の仕方に依存して見かけ上異なるの
で、これを明示する方法を述べる。
2つのベクトルa, bに対して、そのなす角をθとすると、次の演算が定義されている。
内積: θcosbaabba =⋅=⋅
外積: cbaabba θsin=×−=× , 1=c ,単位ベクトル cはa, bに直交し、その向きはaをb方向に回
したときの右ねじの進む方向
さて、宇宙機の運動を調べるために、原点O,右手系正規直交ベクトル 1a , 2a , 3a を定義する。これを、 { }( )a,O
座標系、{ }a 系、または A系などと書く。この右手系正規直交ベクトル(基底ベクトル)は次の2つの条件を満
たす。
内積: 0,1 211332332211 =⋅=⋅=⋅=⋅=⋅=⋅ aaaaaaaaaaaa 即ち、i,j=1,2,3として
≠
===
ji
jiijji
・
0
1δaa (6.1)
これは基底ベクトルの正規直交性を表し、 ijδ をクロネッカーのデルタ(Kronecker delta)と呼ぶ。
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
2
外積:
312231123
321213132
332211
,,
,,
0
aaaaaaaaa
aaaaaaaaa
aaaaaa
−=×−=×−=×
=×=×=×
=×=×=×
即ち、i,j=1,2,3として
kijk
k
kijkji aaaa εε ==× ∑=
3
1
(6.2)
ここで、次のレビ-チビタ(Levi-Civita)のイプシロン ijkε
( ) ( )( )( )( )
−=
−=
=
奇置換、
偶置換、
otherwise0
cyclic )3,1,2()1,2,3)(2,3,1)(3,1,2(,, 1-
cyclic)3,2,1(2,1,31,3,23,2,1,,1
kji
kji
ijkε (6.3)
と、同一添字(式(6.2)では k)に対して和をとるというアインシュタインの総和規約を用いた。この式(6.2)は基底
ベクトルが右手系であることを表している。
さて、任意の3次元ベクトルxは、基底ベクトル系 1a , 2a , 3a の一次結合により一意に表現できる。
iixxxx aaaax =++= 332211
{ } [ ]
=
=
3
2
1
321
3
2
1
321
a
a
a
aaa xxx
x
x
x
{ } xTa≡ { }aTx≡ (6.4)
より詳しくは下記のように書く。
{ } { }aax TTxx AA == (6.5)
ここで、( )T を( )の転置、ベクトル配列を
{ } { }T321
3
2
1
aaa
a
a
a
a =
=
と定義する。さらにベクトルxの{ }a 系(A系)で表現した成分(列)を
xx
3
2
1
A
x
x
x
=
=
と書き、左上付添字Aにより成分( )をA系で表す。即ち、 ( )A
特に基底ベクトルは上記の表記を用いると
{ } { } 3
TT
32
TT
21
TT
1 δ}{
1
0
0
,δ}{
0
1
0
,δ}{
1
0
0
}{ aaaaaaaaa =
==
==
= (6.6)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
3
と表される。但し、i=1,2,3として
[ ]321δ iiii δδδ= (6.7)
本章では以上に示したように,ベクトルを立体太文字、座標成分列を立体、座標成分を数字以外は斜体で表し、
列の場合は [ ]、ベクトル配列は区別して { }、行列の場合は ( ) で記すことにする。ベクトルxの基底をA系({ }a系)のように明示的に表現する方法は様々な基底が混在する系を機械的に処理するのに有効である。
さて、この記法を用いると、基底ベクトルの特徴を表す式(6.1), (6.2)は、
{ }{ } { } )matrixunit( :U
100
010
001
332313
322212
312111
321
3
2
1
T単位行列・ ≡
=
⋅⋅⋅
⋅⋅⋅
⋅⋅⋅
=⋅
=
aaaaaa
aaaaaa
aaaaaa
aaa
a
a
a
aa
(6.8)
{ } { } { }
{ }( ) { }[ ]aa
aa
aa
aa
aaaaaa
aaaaaa
aaaaaa
aaa
a
a
a
aa
≡−≡
−
−
−
=
×××
×××
×××
=×
=×
~
12
13
23
332313
322212
312111
321
3
2
1
T
0
0
0
(6.9)
と表される。最後の等式に使用した記号~(チルダ)や[ ]は3次元列を次のように反対称行列に変換する演算子
である:
[ ] [ ]TT
12
13
23
3
2
1
xxx~
0
0
0
x~x =−=−=
−
−
−
=→
=
xx
xx
xx
x
x
x
(6.10)
TT
12
13
23
3
2
1
x~x~x][
0
0
0
x][x =−=−=
−
−
=→
=
xx
xx
xx
x
x
x
(6.11)
ここに、行列 C に対して、 CCT = のとき対称行列(symmetric matrix)、 CCT −= のとき反対称行列
(anti-symmetric matrix)または歪対称行列(skew-symmetric matrix)と呼ぶ。例えば、
]δ[
000
001
010
δ~
],δ[
001
000
100
δ~
],δ[
010
100
000
1
0
0
δ~
332211 −=
−
=−=
−
=−=
−=
=
~
(6.12)
上記の関係を用いて、2つのベクトル { } xTax = , { } yTay = に対して、その内積と外積が次のように成分
表示される。
内積: { }{ } 332211
TTT yxyx yxyxyx ++=== aayx ・・ (6.13)
外積: { } { } { } { } { }
−
−
−
===×=×
1221
3113
2332
TTTTT y[x]yx~yx
yxyx
yxyx
yxyx
aaaaayx (6.14)
また、ベクトルxの大きさは
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4
xxx T ==⋅= xxx (6.15)
と表され、ベクトルxの{a}系の座標成分xは形式的に次のように求められる。
{ } { } { } { } xUxxT ==⋅=⋅=⋅ aaaxxa (6.16)
6.2 ダイアディック
3次元ベクトル 332211 aaax xxx ++= を拡張した次の形式をダイアディック(dyadic)と呼ぶ。
{ } { } { }
==
=
+++
==+++
++=
∑=
333231
232221
131211
T
3
2
1
333231
232221
131211
321
333323321331
3
1,
322322221221
311321121111
X,X
XXX
XXX
XXX
XXX
XXX
XXX
XXX
XXXXX
XXX
jiij
ji
jiij
aa
a
a
a
aaa
aaaaaa
aaaaaaaaaa
aaaaaaX
(6.17)
つまり、基底ベクトルの2つの対 jiaa (dyadと呼ぶ)の線形結合で表される2階テンソル量の一種である。これは、
ベクトル変換や宇宙機の慣性量(慣性テンソル、後述)を表すのに便利である。ベクトルとダイアディックの演
算について例を示そう。ベクトル { } xTaax == iix ,ダイアディック { } { }aaaaX XT== jiijX とする。
1) ダイアディックとベクトルの内積はベクトルになる。即ち、
{ } { } { } { } XxxXTTT
aaaaxX =⋅=⋅ (6.18)
2) ダイアディックとベクトルの外積はベクトルになる。即ち、
{ } { } { } { } { }aaaaaxX x~XxXTTT =×=× (6.19)
3) { } { }aax x~~ T= と定義すると、 { } yTay = として、
{ } { } { } { }{ } xyaxy
yxaaaayx
×==⋅
×==⋅=⋅
xy~~
yx~yx~~
T
TTT
(6.20)
{ } { }aax x~~ T= を外積ダイアディックと呼び、 xUUxx ×=×=~ とも書ける。また、
[ ] { } [ ]{ } { } { } TTTT ~x~x xaaaax === と定義すると、
[ ] [ ] yxxyxyyx ×=⋅×=⋅ , (6.21)
4) 任意の2つのベクトルの対
{ } { }aaxy TTxy= (6.22)
は成分が次のようになるダイアディックスである。
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5
[ ]
=
=
332313
322212
312111
321
3
2
1
Txy
yxyxyx
yxyxyx
yxyxyx
yyy
x
x
x
(6.23)
5) yzxyzxzyx ⋅=⋅=⋅ )( (6.24)
なぜなら、 yxT がスカラーであることに注意して
{ } { }( ){ } { } { } { } { } { } { }{ } { } y)z(xy)zx(
yzxyzxzyx
TTTT
TTTTTTTTT
aa
aaaaaaaaa
==
⋅=⋅=⋅ (6.25)
6) yIzyx ⋅=×× )( (6.26)
ここで、
zxzxzxzxxUzI ~~~][][~ ⋅−=⋅=⋅=−⋅= (6.27)
{ } { } { } { } 単位ダイアディクス:
100
010
001
UTT
aaaaU
== (6.28)
座標成分行列で表すと、
z~x~z~][[z]x~zx-xUzI TT −==== x (6.29)
7) ダイアディックXに対して、基底ベクトル配列を両側から内積すると成分行列が求められる。即ち、
{ } { } { } { } { } { } XUXUXTTT ==⋅⋅=⋅⋅ aaaaaXa (6.30)
ダイアディックは、より一般に、2つの異なる基底ベクトル{a},{b}によって
{ } { } jiijZ babaZ == ZT
とも定義でき、これは2階テンソルと同値である。さらに一般に
...... kjiijkA cbaA =
のような高階テンソルとしても定義される。
6.3 座標系間の関係
宇宙機の姿勢を知るために宇宙機の機体とともに動く基底座標系を定義する。即ち、宇宙機の初期姿勢{a}から
姿勢を変更して、つまり剛体回転して新しい姿勢{b}に移ったときの、2つの基底座標系{ }a と{ }b の姿勢関係を
求めるのである。この節では基底座標系{ }a と{ }b の関係について調べる。
任意のベクトルは基底ベクトル系で表現できることを用いると、{ }b 系の成分ベクトルである ib は1つのベク
トルであり、{ }a は1つの基底ベクトル系だから、 ib は{ }a により次のように一意に表現される。
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東工大・松永三郎
6
3332321313
3232221212
3132121111
aaab
aaab
aaab
CCC
CCC
CCC
++=
++=
++=
(6.31)
行列形式で書けば、
{ } { } { } { }aaabB/A
CCC
CCC
CCC
CC
333231
232221
131211
==
= (6.32)
ここで、B/ACC = を座標変換行列(または方向余弦行列DCM)とよぶ。右上付添字B/Aは、A系({ }a 系)か
らB系({ }b 系)に変換していることを意味する。この座標変換行列には剛体回転の情報が含まれている。さて、
式(6.31)1行目に 1a を内積すると 1111 C=ab・ となる。同様にして一般に、i,j=1,2,3として
ijjiijC θcos== ab・ (6.33)
ここで、 ijθ は ib と ja のなす角であり、方向余弦(Direction Cosine)を意味している。行列形式で書けば、
{ }{ } { } { } { }{ }{ }{ }
===T
T
T
AB
ab
ab
ab
abababab
・
・
・
・ ・ ・・
3
2
1
321
T/ )(C (6.34)
特に、上式の2つ目の等号から、座標変換行列AB /C の列成分は、A系基底ベクトルを B系で表した成分である
こと、最後の等号から、座標変換行列AB /C の行成分は、B系基底ベクトルを A系で表した成分であることが分
かる。即ち、 { } { } i
A
ii
B
i b,aTT
abba == とするとき、
==T
3
T
2
T
1
321
/
b
b
b
)aaa(CA
A
A
BBBAB (6.35)
逆に、A系とB系の役割を交換して、同様に、
{ } { } { }bba1// CC
−== ABBA
(6.36)
と表されるが、
{ }{ } { }{ }( ) T/TTT/ CC ABBA === abba ・ (6.37)
なので、座標変換行列は直交行列であることが分かる。
T1 CC =− (6.38)
即ち
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
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7
122122113311232113321322231231
321112312331131133223312133221
223132211321333123122332332211
,,
,,
,,
CCCCCCCCCCCCCCC
CCCCCCCCCCCCCCC
CCCCCCCCCCCCCCC
−=−=−=
−=−=−=
−=−=−=
これは基底の右手系直交性を表している。(6.35)式の表記を用いて、
2
~
131
~
323
~
21 a)a(a,a)a(a,a)a(a === (6.39)
または、 3212332332211 mllm CCCCCCC ε=−= などから、i,j=1,2,3として、
mqlpjpqilmjiij CCCC εε2
11 == − (6.40)
と書ける。さらに、Cの行列式の値は1となる。
1Cdet = (6.41)
なぜなら行列式の定義と右手系正規直交性(特に 1, 11132 =⋅=× aaaaa )により
[ ] 1aaa)a(a)a()a()a(
aaaCdet
1
T
13
~
2
T
1321
321321
321
333231
232221
131211
====
==
==
kjijki
kjijkikjiijk CCCCCC
CCC
CCC
CCC
ε
εε
座標成分間の関係については、 { } { } xxTT BA bax == と表すと、座標系間の関係式より、
{ } { } xCx /TT AABA bax == (6.42)
即ち
xCxCxx,Cx /T// BBABABAAABB === (6.43)
簡単な例を示そう。基底{ }a を1軸回りにθ 回転した基底を{ }b とすると、幾何学的関係から次式が容易に示
される。
{ } { } { }aab C
cossin0
sincos0
001
=
−
=
θθθθ
このCについて上記で示した関係は全て成立する。
さて、3つ以上の基底座標系がある場合も同様である。特に、第3の基底座標系{c}に対して、
{ } { } { } { }{ } { } { } { }{ } { } { } { }acca
bccb
abba
ACAC
BCBC
ABAB
//
//
//
C;:C
C;:C
C;:C
=→
=→
=→
の関係があるとき、次の座標変換行列の積公式が容易に証明できる。
ABBCAC /// CCC = (6.44)
したがって、
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8
xCCxCxCx //// AABBCAACBBCC === (6.45)
のように変換される。 UCCC /// === CCBBAAに注意せよ。
ダイアディックの変換についても同様にできる。例えば、 { } { } { } { }bbaaX XXTT BA == のとき、
{ } { } { } { }bbaaX BAAABA //TTXCCX == より、
T//// XCCXCCX ABAABBAAABB == (6.46)
ダイアディックの成分行列を正確に書くには、AAX などとすべきであるが、一般に基底対は1種類で表すことが
多いので、その場合は XA と書くことにする。
外積ダイアディックの成分行列についても、式(6.46)を満たさねばならない。即ち、
T//// Cx~CCx~Cx~ ABAABBAAABB == (6.47)
ところが、 xCx / AABB = 、 ( ) ( ) ~/~xCxx~ AABBB == なので、
( ) T////~/ Cx~CCx~CxC ABAABBAAABAAB ==
(6.48)
となることが分かる。証明は練習問題3を参照せよ。
6.4 角速度
この節では、座標変換行列を用いて角速度を定義する。そのためにまず基準系に関する時間微分を定義す
る。任意のベクトル { } { } xxTT BA bax == に対して、A系を規準とする時間微分を
t
A
d
dのように添字Aを付
けて表し、基底{ }a の時間微分に対して、
{ } 0d
d=a
t
A
(6.49)
と定義する。これは基底{ }a がA系に固定されていることを示す。また、一般のスカラー値変数に対しては通常
の時間微分として作用すると定義する。このとき、
{ }( ) { } { } { } { } xxd
dx
d
dx
d
dx
d
d
d
d TTTTTɺ
AAA
A
A
A
A
AA
tttttaaaaax ==+
== (6.50)
即ち、A系を規準とする時間微分とは、A系で表された成分が時間微分されることを意味する。同様に、B系で
の時間微分を { } 0d
d=b
t
B
とする。このとき、
{ }( ) { } { } xd
dx
d
dx
d
d
d
d TTT BB
A
B
AA
ttttbbbx +
== (6.51)
最終式第1項について
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
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{ } { }( ) { } { } BAABBABA
AA
tt
//T/T/TTCCCC
d
d
d
dɺɺ baab === (6.52)
ところが、 UCC // =BAABなので、それを時間微分することにより、
T//T/T///// )CC(CCCCCC BAABABBABAABBAAB ɺɺɺɺ −=−=−= (6.53)
からBAAB // CC ɺ が反対称行列であることが分かる。一般に、 33× 反対称行列
TWW −= について
−
−
−
=⇔
−=
⇔−=
0
0
0
WWW
3213
3221
1321
333231
232221
131211
333231
232221
131211
T
WW
WW
WW
WWW
WWW
WWW
WWW
WWW
WWW
であるから、 312212311312332 ,, ωωω ≡−=≡−=≡−= WWWWWW のように [ ]T321ω ωωω= を定
義することにより
ωaxisW,ω~
0
0
0
W
12
13
23
==
−
−
−
=
ωωωω
ωω (6.54)
と表示できる。ここで、axis Wは行列Wの軸を意味し次のように定義できる。
( ) jkijki W
WW
WW
WW
ε2
1axisW,
2
1axisW
1221
3113
2332
−=
−
−
−
= (6.55)
練習問題2も参照せよ。したがって、式(6.54) を式(6.53)に適用して
ABBBAAB /// ω~ω~CC ≡=ɺ (6.56)
と書ける。こうして、式(6.51)は
{ } { } xxωbbxtt
B
ABBAABB
A
d
dxxω~
d
d /T/T +×=+= ɺ (6.57)
と表される。但し、
{ } ABBAB /T/ ωbω = (6.58)
( )BAABABB /// CCaxisω ɺ= (6.59)
とした。これが A 系に対する B 系の角速度ベクトルである。また、 { } ABAAB /T/ ωaω = とすると、
{ } { } xxTT BA bax == より
{ } { } { } xCω~Cxω~xω~ ///T/T/T/ AABABBBABABBAABAAB abaxω ===× (6.60)
即ち
ABBAABBAABBAABABBBAABA ////////// CCCCCCCω~Cω~ ɺɺ === (6.61)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
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以上をまとめると、{ } { } { }aab CC / ≡= ABのとき、A系に対するB系の角速度ベクトルは
( )( )CCaxisωorCCω~
CCaxisωorCCω~
TT
TT
ɺɺ
ɺɺ
==
==AA
BB
(6.62)
として
{ } { } ωωTT/ ABAB abω == (6.63)
と求められる。ここで右上添字B/Aを簡単のため省略した。一般に角速度成分ωは時間に関する解析的な積分解
が存在しないので、擬座標(quasi-coordinates)と分類される。
また、式(6.57)から、特に ibx = とおくことにり、B系基底の微分関係式が得られる。
3,2,1,d
d / =×= it
i
AB
i
A
bωb (6.64)
以下、B系成分を考察するので左上添字も省略する。ωをCに対する角速度成分とするとき、次の運動学微分
方程式が成立する。
Cω~C −=ɺ (6.65)
即ち
231132332211223221111231
133331231233212211331121
332233133222231231221311
CCCCCCCCC
CCCCCCCCC
CCCCCCCCC
ωωωωωωωωωωωωωωωωωω
−=−=−=
−=−=−=
−=−=−=
ɺɺɺ
ɺɺɺ
ɺɺɺ
(6.66)
これは式(6.35)の表記を用いて次のようにも書ける。
ωa~aω,a~aω,a~aω~a 3322111 ===−= ɺɺɺ (6.67)
3つの座標変換{ } { }ab AB /C= 、{ } { }bc BC /C= 、{ } { }ac AC /C= に、それぞれ対応する角速度ベクトルをAB /
ω 、
BC /ω 、
AC /ω とする。このとき、次のような角速度ベクトルの連鎖法則が成立する(練習問題5参照)。
ABBCAC ///ωωω += (6.68)
一般に ABBCYZAZ ////
ωωωω +++= ⋯
特に、 ABBAABBAAA , ///// ωω0ωωω −==+=
但し、成分関係では、下記が成立することに注意すること。
{ } { } { }{ } { } ABBBCTBCCT
ABBTBCCTACCT
///
///
ωCω
ωωω
cc
bcc
+=
+=
などより、
ABBBCBCCACC //// ωCωω +=
ABBBABAA /// ωCω −=
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東工大・松永三郎
11
簡単な例を示す。基底{ }a を1軸回りにθ 回転した基底を{ }b とすると
−
==
θθθθ
cossin0
sincos0
001
CCB/A
であるので
~
T
0
0
00
00
000
sincos0
cossin0
000
cossin0
sincos0
001
CC
=
−=
−
−−
−
=
θ
θθ
θθθθθθθθ
θθθθ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺɺ
ɺɺɺ
即ち、角速度ベクトルが { } { } [ ]TTT00ω θɺbbω == となることが分かる。
備考:
ベクトルxの時間微分の成分を次の微分演算子Dを用いて定義する: ( ) xω~x // BABBABD += ɺx
これは、A系基準で時間微分し、その成分をB系で表わす、という意味である。このとき、
( ) x/
ɺAAA
D =x
( ) ( )xxACCBAB
DD///
C=
が成立する。特に、第2式は、成分D ( )がベクトルの変換に従うことを示している。
[証明]:
{ } { } ( ) { } ( )
{ } ( ) { } ( )
{ } ( ) { } ( ){ } ( )xb
xcc
xωxxωxωx
xbb
xωx
xbxaax
ACCBT
ACTCACCT
AC
C
ABBC
C
ABTBABBT
AB
B
AAAAABTAATATA
D
D
tt
D
t
DDt
//
//
///
//
/
////
C
xω~x
d
d
d
d
xω~x
d
d
0ω)Cxd
d
=
=+=
×+=×+×+=
=+=
×+=
====
ɺ
ɺ
∵ɺ
6.5 回転の表現
前節までは剛体回転を表す座標変換行列を9つの行列の各成分、即ち方向余弦で表したが、この節では剛体回
転を表す幾何学的な量と結びつける。一般に剛体回転の自由度は3である。なぜなら回転は座標変換行列で完全
に特徴づけられるが、その行列の3つの列を考えるとき、その大きさはそれぞれ1であること、互いが直交する
ことの6つの拘束条件があるからである。行についても同様なことを導けるので、結局、その独立なパラメータ
数は9個から6個を引いた3個である。つまり上記の数9は冗長である。本節では座標変換行列を9個より少な
い数のパラメータで表示する。
6.5.1 固有軸回転表示
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
12
任意の回転はある一軸回りの回転で表現できることをオイラー(Euler)の定理という。この事実を座標変換行列
が与えられたとして導こう。まず、その単位回転軸ベクトルを固有軸(eigen-axis)ベクトルと呼びλとする。そし
て、その軸回りの回転角を固有角(eigen-angle)と呼びθ とする。基底座標系として、回転前を{ }a 、回転後を{ }b と
し、その座標変換行列をCとする。即ち{b} = C{a}。もし固有軸が存在すれば、固有軸λの成分は変換Cによっ
てその値を変えないので、 { } λTaλ = とすると
CλλCλ}{λ}{ TT =⇒== baλ (6.69)
即ち、回転軸λの(実数値)成分列λを形式的に複素数列、sを複素数としたときの次の固有値問題
0U)λ(C or λCλ =−= ss (6.70)
の固有列(固有ベクトル)で、その固有値 sが実数 1になる場合に相当している。通常の手順により、固有値問
題の特性方程式
0U)det(C =− s (6.71)
を考察する。左辺を展開すると
( ){ }11trC)1(U)det(C 2 +−−−−=− ssss (6.72)
となる。ここでトレース演算 trCは行列Cの対角成分の和( 332211trC CCC ++= )(練習問題2参照)である。
したがって式(6.71)の解である固有値 sは
φ
φφie
i
±=
±=
,1
sincos,1s (6.73)
と求められる。ここで、
2
2
1trC1sin,
2
1trCcos
−−=
−= φφ (6.74)
とおいた。式(6.73)より確かに固有値 s は実数値1を持つ。また、純虚数値の偏角φ が回転角(固有角)θ に符号
を除いて一致することを後で示す。 これら固有値を用いて実数値固有列(実数固有ベクトル)λの表現式を求めることにより固有軸λが具体的に
得られるが、この手続きはやや煩雑なので、次のように、回転軸ベクトル { } { } λλTT
baλ == 、回転角θ を与え
たとき、座標変換行列 C を幾何学的に求めることにする。この変換( λθ と書く)により座標系{a}は{b}に移る
とする。2つのベクトルx, yは変換前に一致していたとして、yのみ座標系とともに回転したと仮定する。
仮定により、座標変換前は x}{ Tayx == である。図 6.2を参照して、座標変換後、{b}系から見た y の成
分は、変換前と変わらないので、
x}{ Tby = (6.75)
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13
θλ
⊥×xλ
⊥y
⊥xθ
////yx =
x y
λ
3b
3a
2b
2a1b
1a
⊥y⊥x
図6.2 回転軸 { } { } λλTT
baλ == 回りθ 回転の回転変換
さて、回転軸λ方向に関して、平行部分は添字//、垂直部分は添字⊥を用いて次のように書く:
⊥+= xxx // , ⊥+= yyy // (6.76)
このとき、幾何学的関係により
xλλλxλyx ・・ === )(//// , //xxx −=⊥ (6.77)
一方、図6.2より、
⊥⊥⊥ ×+= xλxy θθ sincos (6.78)
であるので、
xR
xxλxxxxλxxy
⋅≡
−×+−+=×++= ⊥⊥
AB /
//////// )(sin)(cossincos θθθθ (6.79)
ここでAB /R は回転変換ダイアディックで次の式で表される。
λλλUλλλUR~~
)cos1(~
sin~
sin)cos1(cos/ θθθθθ −++=+−+=AB (6.80)
但し、 Uλλλλ −=~~
を用いた。xとして 1a をとるとき、対応するyは 1b であるので、
}{}{ /
3
2
1
/
3
/
2
/
1
/
3
2
1
aR
a
a
a
R
aR
aR
aR
b
b
b
b ⋅=
⋅=
⋅
⋅
⋅
=
= ABAB
AB
AB
AB
(6.81)
式(6.79)を成分で表示すれば
{ } { } { } { }{ } [ ]xλ~sinλλ)cos1(Ucos
xλ~
sinxλλ)cos1(xcosx
TT
TTTTT
θθθ
θθθ
+−+=
+−+=
a
aaab (6.82)
上式は任意のxで成立するので
22
TT
λ])[cos1(λ][sinUλ~)cos1(λ
~sinU
λ~
sinλλ)cos1(Ucos}{}{C
θθθθ
θθθ
−++=−+−=
−−+=⋅= abB/A
(6.83)
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14
ここで、 Uλλλ~λ~
λ~ T2 −== を用いた。
逆に、座標変換行列 Cが与えられたとき、θ とλを求める。(6.83)式に対して演算 tr(練習問題 2参照)を施す
と
θθθ cos21λλ)cos1(cos3trC T +=−+= (6.84)
即ち
( ) ( )12
11trC
2
1cos 332211 −++=−= CCCθ (6.85)
これと式(6.74)より、座標変換行列 Cの固有値のうち、純虚数値の偏角φ�が回転角(固有角)θ に符号を除いて一
致することが分かる。また、式(6.83)に対して演算 axisを施すと
λsin)C(axis θ−= (6.86)
即ち、 ,...,0,0sin πθθ ±≠≠ のとき、
−
−
−
=−=
2112
1331
3223
sin2
1)C(axis
sin
1λ
CC
CC
CC
θθ (6.87)
,...,0,0sin πθθ ±== のとき、λは一意には決まらないが自明な変換である。
結果として、この座標変換行列Cを ( )θλC と書いて、次のようになる。
( ) ( )( ) ( ) ( )
( ) ( ) ( )( ) ( ) ( )
−+−+−−+
−+−+−+−
−+−−+−+
=
−+−=
θλθθλλθλθλλθλθλλθλθλθθλλθλθλλθλθλλθλθλθ
θθθθλ
cos1coscos1sincos1sin
cos1sincos1coscos1sin
cos1sincos1sincos1cos
cos1λλsinλ~
cosUC
2
3231132
321
2
2123
312213
2
1
T
(6.88)
特に、θの大きさが微小の場合、
( )
−
−
−
=−≅
1
1
1
λ~
UC
12
13
23
λ
θλθλθλθλθλθλ
θθ (6.89)
と近似できる。また、 ( ) ( ) ( )Tλλ1λ CCC θθθ =−=−に注意せよ。
回転軸ベクトルλλλλを固定(時間不変)した回転変換を単純回転変換と呼ぶ。その基本的変換として、λをそれぞ
れ [ ] [ ] [ ]T3
T
2
T
1 100,010,001 === δδδ とすると、各基底ベクトル方向に対応する1軸、2軸、3
軸回りの単純回転変換行列が求められる。
( ) ( ) ( )
−=
−
=
−
=
100
0cossin
0sincos
,
cos0sin
010
sin0cos
,
cossin0
sincos0
001321 θθ
θθθ
θθ
θθθ
θθθθθ CCC (6.90)
この関係は幾何学的にも容易に確かめられる。
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15
6.5.2 角速度の固有軸回転表示
座標変換行列AB /C の固有軸λ、角転角θ による表現は、
λ~
sinλλ)cos1(UcosC T/ θθθ −−+=AB (6.91)
であった。このときの角速度成分ABB /ω は、角速度の定義
BAABABB /// CCω~ ɺ= (6.92)
に式(6.91)を直接代入すれば次のように求まる(練習問題8参照)。
( )( )( )( )( )( )( )
−−+
−−+
−−+
=−−+=
θθθθθθθθθ
θθθcos1λλ-λλsinλλ
cos1λλ-λλsinλλ
cos1λλ-λλsinλλ
λλ~
cos1λsinλω
122133
311322
233211
ɺɺɺɺ
ɺɺɺɺ
ɺɺɺɺ
ɺɺɺB/AB (6.93)
ここでは上式を導く別法を示す。λは AB /C およびBA /C に共通な固有軸なので 0λ)UC( / =−BA
を時間微分
して
λCλ)UC( // BABA ɺɺ −=− (6.94)
AB /C を左より掛けて
ωλ~
λω~λ)CU( / =−=− ɺAB (6.95)
ここでB/ABωω= とおいた。一方、式(6.92)より運動学微分方程式
ω~CC // BABA =ɺ (6.96)
が成り立つので、両辺の trを取ると
θθθ sin2)1cos2(d
d)C(tr / ɺɺ −=+=
t
BA (6.97)
)ω~C(tr / BA= (6.98)
ところが、一般に対称行列TSS = 、反対称行列
TWW −= のとき 0tr(WS)tr(SW) == 、またT// CC ABBA =
の反対称行列部は λ~
sinθ なので、公式 yx2)y~x~tr( T−= に注意して(練習問題2参照)
ω~λsin2)ω~λ~(trsin)ω~tr(C T/ θθ −==BA
(6.99)
即ち、式(6.97), (6.99)より
ωλT=θɺ (6.100)
上式はABB /ωω= のλ方向成分がθɺであることを意味する。λ方向と垂直な成分を ⊥ω と書くと
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16
⊥+= ωλω θɺ (6.101)
式(6.95)より
⊥=− ωλ~
λ)CU( / ɺAB (6.102)
両辺にλ~を掛けると Uλλλ
~λ~ T −= より、 0ωλT =⊥ に注意して
⊥⊥ −==− ωωλ~λ~
λ)C(Uλ~ / ɺAB
(6.103)
したがって、式(6.101)は、式(6.91)と 0λλT =ɺ に注意して
λλ~)cos1(λsinλλ)C(Uλ
~λω / ɺɺɺɺɺ θθθθ −−+=−−= AB
(6.104)
となり、式(6.93)が証明できた。
また、逆の関係として、式(6.100)と次式が成立する。
ωλ~λ~
2cotλ
~
2
1λ
−=θ
ɺ (6.105)
特に応用上有用な単純回転のとき、 0λ =ɺ なので、式(6.104)より
λω θɺ= , λω θɺ= (6.106)
例えば、A系からB系への変換が各々、1軸、2軸、3軸回りの単純回転の場合、対応する角速度ベクトルは、各々、
1軸: ,δω 1θɺ= 11 abω θθ ɺɺ == 、2軸: ,δω 2θɺ= 22 abω θθ ɺɺ == 、3軸: ,δω 3θɺ= 33 abω θθ ɺɺ == となる。
また、4つの変数 [ ] θλλλ ,λT
321= の代わりに、3つの変数
[ ] [ ]T321
T
321 λv θλθλθλθ === vvv (6.107)
を用いると
vv
v~v~λ,v
v
v~v~Uv
v
vvλ,
v
vv,vvv
222
TTT
ɺɺɺɺɺɺ
ɺ −=
+===== θθθθ (6.108)
に注意して、
v~v~
v
2vsin2v~
v
vsinUv~
v
vsinvv
v
vcos1UvcosC
2
2
T
2
/ +−=−−
+=AB (6.109)
vv~v~
v
vsinvv~
v
2vsin2Uω
32
2
ɺ
−+−= (6.110)
ωv~v~
v
2vcot2v1v~
2
1Uv
2
⋅−++=ɺ (6.111)
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17
6.5.3 オイラー角
一般に3次元空間における物体の回転運動の自由度は3であるので、姿勢は3つのパラメータで表現できる。そこ
で基準系に固定された座標系を{ }a 、物体に固定された座標系を{ }b するとき、{ }a 系から{ }b 系への姿勢変換を、
3つの連続した単純回転変換で表現する。図6.3のように、{ }b 系を最初{ }a 系に一致しているとして{ }0b と書く。
1回目の座標変換 11λθ ( 1λ 回り 1θ 回転)をした後で{ }1b に移り、2回目の座標変換 22λθ 後に{ }2b 、そして3
回目の座標変換 33λθ によって{ }b に移ったとする。各座標変換の変換行列を、それぞれ 321 C,C,C とするとき、
各座標系間に以下の関係が成り立つ。
{ } { }0ba = { }1b { }2b { }b1C 2C 3C
C
{ }c { }dD
{ }a
11λθ 22λθ33λθ
λθ
E{ } { } Eλλ
TTcaλ ==
図6.3 3つの単純回転変換 図6.4 空間回転時の変換関係
{ } { }ab =0
{ } { } { }abb 1011 CC ==
{ } { } { }abb 12122 CCC ==
{ } { } { } { }aabb CCCCC 12323 ≡== (6.112)
上記の変換行列Cを求めよう。その準備として次の2つ関係に注意する。ある座標系{ }c が座標変換 λθ によって
座標系{ }d に移り、回転軸ベクトルが { } { } λλTT
dcλ == と表されるとき、その変換行列は ( )θλC となる。また
図6.4のように、{ }c 系が基準座標系{ }a と{ } { }ac E= の関係があって、λが{ }a 系で { } λTaλ = と表現されてい
る場合は、 { } { } EλλTT
caλ == となるので、変換行列は ( ) ( ) TλEλ EECC θθ = である。ここで次式を用いた。
( ) ( ) ( )( ) ( )θθθθ cos1EλEλsinEλcosUCT~Eλ −+−= ( ) TEEC θλ= (6.113)
さらに、次の2つの座標変換を考える。1つめは、3つの回転軸 iλ (i=1,2,3)をそれぞれ物体固定座標系{ } 1−ib を基
準に選んで変換する場合で、これを物体変換と呼び、対応する回転角を物体角と呼ぶ。2つめは、3つの回転軸
iλ (i=1,2,3)を常に元の座標系{ }a を基準に選ぶ場合で、これを空間変換、その回転角を空間角と呼ぶ。
このとき、座標変換 3,2,1,λ =iiiθ が物体変換または空間変換であるかによって、各変換行列Cが次のように
求められる。
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1) 物体変換: { } { } { } 3
T
232
T
121
T
01 λ,λ,λ bλbλbλ === のとき
( ) ( ) ( )3λ
32
λ
21
λ
1321 CC,CC,CC θθθ === (6.114)
( ) ( ) ( )1λ
2
λ
3
λ
123123 CCCCCCC θθθ== (6.115)
2) 空間変換: { } { } { } { } { } 312
T
23
T
321
T
12
T
21
T
1 λCCλ,λCλ,λ baλbaλaλ ===== のとき
( ) ( ) ( ) T
2
T
13
λ
123
T
12
λ
121
λ
1 CCCCCC,CCCC,CC 321 θθθ === (6.116)
( ) ( ) ( )3λ
2
λ
1
λ
123321 CCCCCCC θθθ== (6.117)
各回転軸の座標成分 iλ が物体変換と空間変換についてそれぞれ等しいとき、式(6.115), (6.116)より、形式的に回転
変換の順序を入れ替えたものに等しい。
{ }b 系の{ }a 系に対する角速度については、角速度の鎖法則を用いて
{ } { } ωωTT
332211
/ BAABbaλλλω ≡≡++= θθθ ɺɺɺ
となり、その座標成分は [ ]T321 θ θθθ ɺɺɺɺ = とすると次のように表される。
3) 物体変換: ( ) ( ) ( )( )θ λλC λCCω 323
λ
12
λ
3
λ 323 ɺ θθθ=B
( ) ( ) ( )( )θλCC λCλω 3
T
2
λT
1
λ
2
T
1
λ
1211 ɺθθθ=A
(6.118)
4) 空間変換: ( ) ( ) ( )( )θ λCC λCλω 32
λ
1
λ
21
λ
1211 ɺθθθ =B
( ) ( ) ( )( )θλλ CλCCω 32
T
3
λ
1
T
2
λT
3
λ 323 ɺ θθθ=A (6.119)
回転軸λを座標系の軸方向、即ち ia または ib などを選ぶと、 iδλ = となる。このとき独立な回転変換は、順
番を kji ,, とするとき、 kjji ≠≠ , でなければならないので、i-j-k, i-j-iの2種類に分類され、それぞれ6個の合計
12個ある。これらの角をオイラー角(Euler angle)と呼ぶ。例えば物体変換の場合
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )( )( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )( )θ δδC δCCω,CCC,,C
θ δδC δCCω,CCC,,CC
323123321
323123321
ɺ
ɺ
ij
i
i
jiBijiiji
kj
k
i
jkBijkijk
θθθθθθθθθ
θθθθθθθθθ
==
==≡ (6.120)
と表せる。組み合わせ方により、角度が 2/,0 π のいずれかの場合に特異点を持つ。
物体変換の1-3-1オイラー角は古くはオイラー(Euler)によりコマの運動の解析に用いられた。また3-2-1オイラ
ー角は宇宙機の姿勢運動表現によく使用される。この例を調べよう。図 6.5のように A系からB系への変換を 3
つの変換
ヨー変換 AAC ′→:)( 3
3 θ
ピッチ変換 AAC ′′→′:)( 2
2 θ (6.121)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
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19
ロール変換 BAC →′′:)( 1
1 θ
によって行う。このときA系からB系への座標変換行列は
( ) ( ) ( )
−+
+−
−
==
213132131321
213132131321
23232
3
3
2
2
1
1/
cccssscsscsc
csccssssccss
ssccc
CCCC θθθAB
B系に対するA系の角速度ベクトルは
{ } ωT332211
////baabωωωω =′+′′+=++= ′′′′′′ θθθ ɺɺɺAAAAABAB
(6.122)
となる。成分行列ωは
θ
ccs0
csc0
s01
δ)(C)(Cδ)(Cδω
211
211
2
332
2
1
1
221
1
11ɺɺɺɺ
−
−
=++= θθθθθθ (6.123)
と表される。但し、 [ ]T321θ θθθ ɺɺɺɺ = , 11 sins θ= , 11 cosc θ= などと定義した。逆に、
ω
cs0
cscc0
scssc
c
1θ
11
2121
21212
2
−=ɺ (6.124)
となる。これは 2/2 πθ = に特異点を持つ。練習問題7も参照せよ。
3θ
3θ
1θ
1θ
''
2a
2a
1a
'
1a
'
2a
( ) 33
'
33
/
3
3,C aaω θθθ ɺɺ ==′ AA ( ) ''
22
'
22
/
2
2 ,C aaω θθθ ɺɺ ==′′′ AA ( ) ''
1111
/
1
1 ,C abω θθθ ɺɺ ==′′AB
2b
3b
1
''
1 ba =
'
33 aa = ''
3a'
3a ''
3a
''
2
'
2 aa =
2θ
2θ
''
1a
'
1a
図6.5 3-2-1オイラー角変換
6.5.4 クォータニオン(オイラーパラメータ)
座標変換 λθ に対して、 [ ] 4
T
3 21 , q qqqq = を次のように定義する。
( ) ( ) ( ) ( )2/cos,2/sin,2/sin,2/sin 4312211 θθθθ ==== qλqλqλq (6.125)
ただし、この4個の変数には拘束条件が1個ある。
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20
[ ]T4
Tqq q= (6.126)
1qqqq2
4
2
3
2
2
2
1
2
4
TT =+++=+= qqqqq (6.127)
これをクォータニオンquaternion(オイラーパラメータEuler parameter)と呼ぶ。変数が4個と冗長であるが拘束
式(6.127)が 1個あるので自由度は 3である。オイラー角と異なり、数値的に特異点を回避しやすいことが分かっ
ている。座標変換行列は、
( ) ( ) ( ) 4
22
4
2 2/sin2sin,2/sin2cos1,1212/cos2cos qq θθθθθθ ==−−=−= に注意して、式(6.88),
(6.125)より、
( ) ( ) ( ) q~2qq2U12q~2qq2Uqq,qCC 4
T2
44
TT2
44 qqqqq −+−=−+−=≡
( ) ( ) ( )( ) ( ) ( )( ) ( ) ( )
+−−+
++−−
−++−
=2
2
2
141234213
4132
2
1
2
34312
42314321
2
3
2
2
2122
2212
2221
qqqqqqqqqq
qqqqqqqqqq
qqqqqqqqqq
(6.128)
TGH= (6.129)
ここで
( ) ( )qq~UG,qq~UH 44 −−=−+= qq (6.130)
は、3×4行列で、クォータニオンに関して線形である。式(6.128)より変数の加減乗演算のみで算出できるので計
算負荷が小さい。また、逆関係、
3322114 12
1trC1
2
1CCCq +++=+= (6.131)
( ){ } 3,2,1fortrC2C1axisCsign2
1=−+= iq iiii (6.132)
が成立する。ここで sign( )は( )内の符号(1または-1)を意味する。練習問題8も見よ。一方、角速度は式(6.93)
より次のようになる。
( )142332411 2 qqqqqqqq ɺɺɺɺ −−+=ω
( )243113422 2 qqqqqqqq ɺɺɺɺ −−+=ω (6.133)
( )341221433 2 qqqqqqqq ɺɺɺɺ −−+=ω
即ち
( )
( )44
4
4
4
3
2
1
3412
2143
1234
~2
qG2q
qq~U2
2ω
qqqqqq
q
q
q
q
qqqq
qqqq
qqqq
ɺɺɺ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
−−=
=
−−=
−−
−−
−−
=
(6.134)
拘束式(6.127)の時間微分も含めてまとめると
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
21
−−=
44
T
4 q
q
qq~U2
0
ω
q
ɺ
ɺ
(6.135)
逆に
−−−
−
−
−
==
−−−
−
−
−
=
−
−=
−
−=
−
+=
=
4
3
2
1
321
312
213
123
T
3
2
1
321
412
143
2 34
T
4
4
T
4
4
4
0ωω
ω0ωω
ωω0ω
ωωω0
2
1ωG
2
1
ω
ω
ω
2
1
qω
qω~ω
2
1q
0ω
ωω~
2
1
0
ω
q
qq~U
2
1qq
q
q
q
q
ωqqq
qqq
qqq
qqq
q
q
q Tɺ
ɺɺ
(6.136)
または
( )
( )332211
T
4
3
2
1
412
143
234
4
2
1ωq
2
1
2
1ωUq~
2
1q
ωωω
ωωω
qqqq
qqq
qqq
qqq
q
++−=−=
−
−
−
=+=
ɺ
ɺ
(6.137)
代わりに3個のパラメータ [ ]T321q qqq= のみで表現すると次の関係が得られる。
( )
( )ωUqq1q~
2
1q
qq~
qq1
q~q~U2ω
q~qq12q~q~2UqCC
T
T
T
−+=
−
−
+=
−−+=≡
ɺ
ɺ (6.138)
特異点は存在するが拘束条件を取り扱わなくてもよいという利点がある。
回転を表記する方法は他にも各種あり、その一部をAppendix Aに示す。特に、オイラー角やクォータニオンに
加えて、ケーリー・ロドリゲス パラメータ(Cayley Rodrigues parameter、またはオイラー・ロドリゲス パラメー
タ)や改良ロドリゲス パラメータ(modified Rodrigues parameter)などが宇宙機の姿勢運動表現によく使用され、問
題により最も都合のよいパラメータを選択することになる。例えば、姿勢変動が小さい場合、古典的なオイラー
角を用いることが多いが、計算効率を重視する場合、ケーリー・ロドリゲス パラメータを用いることもある。ま
た、姿勢変動が大きい場合、特異点を回避するために、4 個のクォータニオン(オイラーパラメータ)や、計算
効率を重視して改良ロドリゲス パラメータなどを使用することがある。
6.6 宇宙機の姿勢運動
6.6.1 角運動量
宇宙機を単一剛体とみなす。図6.6のように、{ }a を慣性系、{ }b を機体座標系とする。宇宙機上の参照点O周
りについて姿勢の運動方程式を求める。微小質量部分 md に働く外力を fd 、内力 f ′d をとすると、ニュートンの
運動式
ffR ′+= dddmɺɺ (6.139)
に対して、左からrを外積して、宇宙機全体で積分すると
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
22
O
V
m MRr =×∫ dɺɺ (6.140)
ここで
∫ ×≡V
O frM d (6.141)
は宇宙機に働く点O回りの全外トルクである。ここで、時間微分は慣性系Aに対して行い、簡単のために次の記
号を用いた: )( tA d/d=•
。また内力項は作用反作用の関係から打ち消しあうことを用いている。
慣性系 A
crr
P
md
O
{ }a oR
R
V
ρ
宇宙機
B{ }b 機体座標系
C
図6.6 システムの定義
点Cを宇宙機の質量中心とすると
C
V
mm rr =∫ d , 0ρ =∫V
md (6.142)
ここで、mは宇宙機の全質量である。
∫=V
mm d (6.143)
したがって、
ρrRrRR ++=+= COO (6.144)
を式(6.140)に代入することにより
OOCO m MRrh =×+ ɺɺɺ (6.145)
ここで Oh は点O回りの相対角運動量(relative angular momentum)である。
∫ ×=V
O mdrrh ɺ (6.146)
同様に、点O回りの絶対角運動量(absolute angular momentum, moment of momentum)を
∫ ×=V
O mdRrH ɺ (6.147)
と定義すると
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
23
OCOO m MrRH =×+ ɺɺɺ (6.148)
参照点Oが慣性系に対して静止( OR =一定)、または質量中心Cに一致 )0( =Cr するとき、
OO Mh = (6.149)
となって、式(6.145), (6.147)は、回転運動は並進運動と分離でき
OOO MhH == ɺɺ (6.150)
となる。この利点のために、解析では参照点Oとして質量中心Cを取ることが多い。実際には質量中心は計測量
ないしは時間の変動量であるため、推定しなければならないことに注意すること。
もし 0=OM ならば
constant== OO Hh (6.151)
即ち、角運動量は保存される。
並進運動については、式(6.139)を積分することにより、下記のようになる。
ffrR ==+ ∫V
CO mm dɺɺɺɺ (6.152)
ここで fは全外力ベクトルである。参照点Oとして質量中心Cを取ると
fR =Om ɺɺ (6.153)
備考備考備考備考:体積中心、質量中心、重心について
1)体積中心(図心, Center of Volume, CV, Center of Aera, CA)
∫∫∫ =⇔==V
CVCV
V
CV
V
VV
VVV d1
dd rrrrr
2)質量中心(Center of Mass, CM)
∫∫∫∫ =⇔===V
CMCM
V
CM
V
CM
V
Vm
mmVV d1
ddd ρρρ rrrrrr
ここで、一般に、 )(rρρ = である。特に、ρ =一定のとき、
CV
V
V
V
VCM
V
V
V
V
r
rr
r ===∫
∫
∫
∫d
d
d
d
ρ
ρ
3)重心(重力中心, Center of Gravity, CG)
∫∫ ×=×V
CG
V
VV dd grgr ρρ
ここで、一般に、 )(rρρ = 、 )(rgg = である。特に、ρ =一定のとき、
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
24
∫∫ ×=×VV
CG VV dd grgr
または、g =一定のとき、
CM
V
VCG
V
CG
V V
V
VV r
r
rgrgr ==⇔×=×∫
∫∫∫
d
d
ddρ
ρρρ
6.6.2 慣性ダイアディック
点Oを質量中心とする。このとき、宇宙機の角運動量ベクトルは
( )∫∫ ××=×==V
AB
V
mm dd /ρωρρρhH ɺ (6.154)
ここで、宇宙機は剛体と仮定して、 { } 0bρ == ttB dρρ/d/dT
とした。ベクトル積で展開して
( ) ( ) AB
VV
mm /dd ωIρρρUρωρρρωρH ⋅≡−⋅=⋅−⋅= ∫∫ (6.155)
ここに、I を慣性ダイアティックスと呼び、次式で定義する。
( )∫ −⋅=V
mdρρρUρI (6.156)
上式をB系表示する。 { } ρTbρ = 、 { } { }bbU UT= より
{ } { } { } { }( ) { } { }bbbbbbI IdρρUρρTTTTT =−= ∫
V
m (6.157)
上記の Iは慣性行列と呼ばれ、正定値対称行列である。
( ) 0dρ~ρ~dρρρUρII TTT >=−== ∫∫ mmV
B
( )( )
( )
=
+
−+
−−+
=
∫∫∫∫∫∫
333231
232221
131211
2
2
2
1
32
2
1
2
3
3121
2
3
2
2
d
dd
ddd
III
III
III
msym
mm
mmm
ρρ
ρρρρ
ρρρρρρ
(6.158)
また、次の不等式が成立する。
221133113322332211332211 ,,,0,0,0 IIIIIIIIIIII >+>+>+>>> (6.159)
剛体の質量中心C回りの慣性ダイアディックをI とすると、任意の参照点O回りの慣性ダイアディック OI は、
ρrr += C に注意すると
{ } ( )( ) { } OCCCCCCCCO mmm IrrUrrI)(d)(TTTT
bbrrUrrIrrrUrI =−+=−⋅+=−⋅= ∫ (6.160)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
25
と表現できる。ここにmは剛体の全質量である。これを慣性行列の平行軸定理と呼ぶ。この定理より、全体の慣
性行列は構成部分の慣性行列とその質量および位置関係から計算されることが分かる。また Iは正定値対称行列
であるので、3つの正実数固有値 )3,2,1( =iJ i と互いに直交する固有列 )3,2,1(d =ii が存在するので、右手系直
交行列 ( )321 dddD = が選べて、 DJID = 、即ち
( )321
3
2
1
T diag
00
00
00
JIDD JJJ
J
J
J
=
≡= (6.161)
と対角化できる。具体的には、{ } { }bc TD= なるC系を考えると、
{ } { } { } { } { } { }ccccbbI JIDDITTTT ===
となることから、この{ }c 系を慣性主軸座標系、 )3,2,1( =iJ i を主慣性モーメントと呼ぶ。
式(6.155)をB系表示すると
ABBBB /ωIH= (6.162)
即ち
3132121111 ωωω IIIH ++= , 3232221212 ωωω IIIH ++= , 3332321313 ωωω IIIH ++= (6.163)
さて、宇宙機の運動エネルギーT を求める。
rottranscc TTmmmT +=⋅+⋅=⋅= ∫∫∫ d2
1d
2
1d
2
1ρρRRRR ɺɺɺɺɺɺ (6.164)
ここで、 transT は質量中心の並進運動エネルギー
2
2
1ctrans mT Rɺ= (6.165)
rotT は質量中心回りの回転運動エネルギー
( )
jiij
rot
I
mmT
ωω2
1Iωω
2
1Hω
2
1
2
1
2
1d
2
1d
2
1
TT ===
⋅⋅=⋅=×⋅=×⋅= ∫∫ ωIωHωρρωρωρ ɺɺ
(6.166)
である。運動エネルギーは上記2つのエネルギーの和として表される。
6.6.3 姿勢運動の基礎方程式
宇宙機の姿勢の運動方程式は、AB /
ω を慣性系A系から測った機体固定座標系B系の角速度ベクトル、Iを宇
宙機の質量中心回り慣性ダイアディック、AB /
ωIH ・ = を質量中心回りの角運動量ベクトル、Mを宇宙機に働
く外力トルクとすると、次のニュートン・オイラー方程式より求められる。
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
26
MH
=t
A
d
d (6.167)
上式を変形して
MHωH
=×= AB
B
t
/
d
d (6.168)
MωIωωI =×+ ABABAB /// ・・ ɺ (6.169)
これを{ }b 系表示すると、 { } { } { } { } { } M,ω,,HTT/TT
bMbωbbIbH ==== ABⅠ として
MHω~H =+ɺ (6.170)
MIωω~ωI =+ɺ (6.171)
ここで剛体と仮定しているので 0I =ɺ を用いた。任意の参照規準の剛体運動方程式については、AppendixC を参
照されたい。
1) 一般に式(6.171)は展開すると次のようになる。
=
−
−
−
+
3
2
1
3
2
1
333231
232221
131211
12
13
23
3
2
1
333231
232221
131211
0
0
0
M
M
M
III
III
III
III
III
III
ωωω
ωωωω
ωω
ωωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.172)
31323321321221122121121333232131
23212213213113311313313323222121
12131132132332233232232313212111
)(
)(
)(
MIIIIIIIII
MIIIIIIIII
MIIIIIIIII
=+−−−−+++
=+−−−−+++
=+−−−−+++
ωωωωωωωωωωωωω
ωωωωωωωωωωωωω
ωωωωωωωωωωωωω
ɺɺɺ
ɺɺɺ
ɺɺɺ
(6.173)
2) {b}系が宇宙機の慣性主軸系のとき、即ち ( )321diagI JJJ= のとき式(6.188)は
3212133
2131322
1323211
)(
)(
)(
MJJJ
MJJJ
MJJJ
=−−
=−−
=−−
ωωω
ωωω
ωωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.174)
3) 姿勢の運動学方程式は姿勢表現によって異なる。座標変換関係は、{ } { }ab C= とする。姿勢の表現として、
例えば、ピッチ-ヨー-ロール系(2-3-1オイラー角、練習問題7参照)をとる。 1θ :ロール角、 2θ :ピッチ角、 3θ :
ヨー角、 [ ]T321θ θθθ= 、角速度 [ ]T321ω ωωω= 、 1111 sin,cos θθ == sc などとして
+−−+
++−
−
==
213213121321
213213121321
32332
2
2
3
3
1
1 )(C)(C)(CC
ccssscsscscs
cssscccssscc
csscc
θθθ (6.175)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
27
θ
ccs0
scc0
0s1
ω
131
131
3
ɺ
−
= (6.176)
ω
cccs0
sc0
sssc-c
c
1θ
3131
11
31313
3
−=ɺ (6.177)
の関係があるので、姿勢の運動方程式は、式(6.171)に式(6.176)を直接代入して2階常微分方程式に帰着させて、θ
について解くか、または式(6.171)と式(6.177)を連立した 1階常微分方程式とみなして、ωとθについて解くこと
になる。姿勢変動が大きいときには式(6.177)の特異点に注意する必要がある。
4) 姿勢の表現としてクォータニオンをとると次のようになる。
( ) ( ) ( )( ) ( ) ( )( ) ( ) ( )
+−−+
++−−
−++−
=2
2
2
141234213
4132
2
1
2
34312
42314321
2
3
2
2
2122
2212
2221
C
qqqqqqqqqq
qqqqqqqqqq
qqqqqqqqqq
(6.178)
qG2
2ω
4
3
2
1
3412
2143
1234
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
=
−−
−−
−−
=
q
q
q
q
qqqq
qqqq
qqqq
(6.179)
−−−
−
−
−
==
−−−
−
−
−
=
4
3
2
1
321
312
213
123
T
3
2
1
321
412
143
2 34
0ωω
ω0ωω
ωω0ω
ωωω0
2
1ωG
2
1
2
1q
q
q
q
q
ωqqq
qqq
qqq
qqq
ωωω
ɺ (6.180)
したがって、姿勢の運動方程式は、式(6.171)に式(6.179)を直接代入して2階常微分方程式に帰着させて、q に
ついて解くか、または式(6.171)と式(6.180)を連立した1階常微分方程式とみなして、ωと q について解くことに
なる。
他の姿勢表現を採用した場合も同様である。{ }b を慣性主軸座標系とすると、姿勢の運動方程式は式(6.174)と
簡単になるが一般に非線形である。運動の安定性や制御則のための解析には、次節で述べるような運動方程式の
線形化を行うことが多い。
6.6.4 周回軌道上宇宙機の姿勢運動方程式
図 6.7 のように、地球周回軌道を回る宇宙機の姿勢の運動方程式を求める。地球中心座標系をN系{ }n 、軌道
面基準回転系をA系{ }a 、機体固定系をB系{ }b とする。特に、 3a :地心方向単位ベクトル、 1a :進行方向単位
ベクトル、 2a :面外方向単位ベクトルと取り、局所垂直水平座標系(LVLH,Local Vertical Local Horizontal frame)
と呼ぶ。このとき、
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
28
座標変換関係式: { } { }ab C= (6.181)
軌道角速度: { } [ ]002
/ ffTNA ɺɺ −=−= aaω (6.182)
宇宙機の絶対角速度: 2
// aωω fABNB ɺ−= (6.183)
宇宙機の機体角速度: { } ABAB /T/ ωbω = (6.183)
2
//// aωωωω fABNAABNB ɺ−=+= (6.184)
である。但し、 fɺ は宇宙機位置の真近点離角 f の時間レートで軌道離心率 e が小さいとき、
{ })(cos21 pTtnenf −+≅ɺ と近似できる。ここからは簡単のために円軌道を考え e=0 として、 nf =ɺ とする。
ここでnは軌道の平均運動である。
3
CRn
µ= (6.185)
{n}
RC
軌道面
a1
a2
a3
b1
b3
b2
面外方向
進行方向
地心方向
図6.7 地球周回軌道上の宇宙機
1) 姿勢の表現として、ピッチ-ヨー-ロール系(2-3-1 オイラー系)をとると、式(6.175)-(6.177)が成立する。
{ } ω/ TNB bω = , { } ABBAB /T/ ωbω = とするとき、
{ } { } { } { } [ ] { } [ ]T31313
TT
322212
T
2
T
2
T
2
T
2 Cδaδ csccsCCC −===== bbbbaa (6.186)
−
−
−
=−=
31
31
3
131
131
3
2
/ θ
ccs0
scc0
0s1
aωω
cs
cc
s
nnABB ɺ (6.187)
+
−=
0
0
ω
cccs0
sc0
sssc-c
c
1θ
3131
11
31313
3
nɺ (6.188)
微小角近似が可能で、微小量 ω,θθ, ɺ の2次以上を無視できる場合、
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
29
{ } [ ]T1
T
2 10 θ−= ba (6.189)
[ ]T13231ω θθθθθ nnn +−−= ɺɺɺ (6.190)
[ ]T13231θ θωωθω nnn −++=ɺ (6.191)
となる。線形化された姿勢の運動方程式(6.171)は、式(6.190)を代入すると
331
2
2
2
2121
2
331
2
1 ,2,0,,00, ωωωωωωωωωωωω nnnn −≈−−≈−≈≈≈≈ に注意して、角速度ωを用
いた表示式を得る。
00
2
0
2
3
2
1
12
32
2
3
2
1
13122211
1232
33223231
3
2
1
333231
232221
131211
=
−
−
+
−
−
−−−
+
M
M
M
I
I
n
IIII
II
IIII
n
III
III
III
ωωω
ωωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.192)
さらに、姿勢角θのみで表す場合、 [ ]T13 0θω θθ ɺɺɺɺɺ −+= n に注意して
:yaw
:pitch
:roll
+−
−
−+−−
+
3
2
1
12332211
1232
33221132
3
2
1
333231
232221
131211
02
202
20
θθθ
θθθ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺɺ
ɺɺ
ɺɺ
IIII
II
IIII
n
III
III
III
0
3
0
3
0
0
0
3
2
1
12
32
2
3
2
1
221113
3212
313322
2 =
−
−
+
+−
−−
−
+
M
M
M
I
I
n
III
II
III
n
θθθ
(6.193)
{b}系が宇宙機の慣性主軸系のとき(と近似できるとき)、即ち ( )321diagI JJJ= のとき、
0)()(:yaw
0:pitch
0)()(:roll
3321
2
132133
222
1132
2
332111
=−−−+−+
=−
=−−++−−
MJJnJJJnJ
MJ
MJJnJJJnJ
θθθθ
θθθ
ɺɺɺ
ɺɺ
ɺɺɺ
(6.195)
となる。上記の式は、ピッチ角 2θ は比較的大きく、かつ他は微小近似できる場合にも適用できる。なお上式のn
を fɺと置き換えれば楕円軌道上の運動方程式となる。
ISSのように複雑な形状を持つ地球周回大型構造物の場合、外力トルクとして、まず第一に重力傾斜トルク(第
7章参照)を考慮しなければならない。それは1次近似で 33
23 aIaM ⋅×= n と表される。これはB系表示する
と { } { } { } { } [ ]T332313
T
3
T
3
T
3
T
3 Cδaδ CCCbbbaa ==== に注意して
=
−
−
−
==
3
2
1
33
23
13
333231
232221
131211
1323
1333
2333
2
33
2
0
0
0
3Iaa~3M
M
M
M
C
C
C
III
III
III
CC
CC
CC
nn (6.196)
となる。微小角近似できる場合
[ ] [ ] [ ]T12
T
213212132132
T
3332313 1a θθ−≈+−+−== ccssscsssccsCCC (6.197)
なので、式(6.196)は
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
30
−
+
−−
+−
+−
≈
0
3
0
0
0
3 13
23
2
3
2
1
2313
331112
213322
2
3
2
1
I
I
n
II
III
III
n
M
M
M
θθθ
(6.198)
となるので運動方程式(6.192)は以下のように導かれる。
=
−+
−−
−−
+
−
−
−−−
+
3
2
1
12
13
32
2
3
2
1
2313
331112
213322
2
3
2
1
13122211
1232
33223231
3
2
1
333231
232221
131211
3
2
0
0
0
3
2
0
2
d
d
d
I
I
I
n
II
III
III
n
IIII
II
IIII
n
III
III
III
θθθ
ωωω
ωωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.199)
ここで、[ ]T321 ddd は重力傾斜トルク以外の外力トルクである。上式は制御則を構築する際に使用される
ことがある。さらに式(6.193)より
+−
−
−+−−
+
3
2
1
12332211
1232
33221132
3
2
1
333231
232221
131211
02
202
20
θθθ
θθθ
ɺ
ɺ
ɺ
ɺɺ
ɺɺ
ɺɺ
IIII
II
IIII
n
III
III
III
( )( )
=
+−
−−−
−−
+
3
2
1
3
2
1
22112313
32331112
31213322
2
34
34
34
d
d
d
IIII
IIII
IIII
n
θθθ
(6.200)
{b}系が宇宙機の慣性主軸系のとき(と近似できるとき)、即ち ( )321diagI JJJ= のとき、
313233
2231
2
22
1132
2
33211
)(:yaw
)(3:pitch
)(3)(:roll
dJJnJ
dJJnJ
dJJnJJnJ
=−−
=−+
=−+−+
ωωθωθωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.201)
また、式(6.190)より角速度ωを消去して、姿勢角θのみで表すと
3321
2
132133
2231
2
22
1132
2
332111
)()(:yaw
)(3:pitch
)(4)(:roll
dJJnJJJnJ
dJJnJ
dJJnJJJnJ
=−−+−+
=−+
=−++−−
θθθθθθθθ
ɺɺɺ
ɺɺ
ɺɺɺ
(6.202)
次にピッチ角 2θ は比較的大きく、かつ他は微小近似できる場合、 2222 cos,sin θθ == cs
として、 [ ]T2212323a ccss θθ +−≈ なので、
( ) ( )( ) ( ) ( ) ( )
( )( ) ( )( )
+−+−++−+−
−++−+++−
−++−++−
≈
2
221222332213
2
222111222211
2
213
2
2
2
2132233113
2
232221212232
2
212
2
223222132233221
2
23322
2
3
2
1
3
sIcsIcsIsIIcsIIcI
scIcsIIsIcsIcsIcI
cIcsIcsIIcII
n
M
M
M
θθθθ
θθ(6.203)
と近似できる。特に慣性主軸系を取れば
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
31
( ) ( )( )
( ) ( )
−+−−
−−
−−−−
≈
3
2
22112221
2231
322321
2
232
2
3
2
1
3
θθ
θθ
sJJcsJJ
csJJ
csJJcJJ
n
M
M
M
(6.204)
に注意して運動方程式(6.195)は
( ) ( )
( ) 312221
2
3
2
221
2
132133
22231
2
22
132232
2
1
2
232
2
332111
)(331)()(:yaw
)(3:pitch
331)()(:roll
dcsJJnsJJnJJJnJ
dcsJJnJ
dcsJJncJJnJJJnJ
=−−+−−+−+
=−+
=−++−++−−
θθθθθ
θθθθ
ɺɺɺ
ɺɺ
ɺɺɺ
(6.205)
ISSのような形態の場合、トルク平衡姿勢TEA(第 8章)を取ると、重力傾斜トルクのピッチ成分によりピッ
チ角 2θ が大きくなるので、解析に式(6.205)等が用いられることがある。
2) 姿勢の表現として、クォータニオン(オイラーパラメータ)をとると、A系からB系への座標変換行列は式
(6. 178)となり、さらに
( )( )
( )
−
+−
+
−
−−
−−
−−
=−=≡
4132
2
3
2
1
4321
4
3
2
1
3412
2143
1234
2
//
2
21
2
2aωωω
qqqq
qqqq
n
q
q
q
q
qqqq
qqqq
qqqq
nABBNBB
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
(6.206)
−−−−
−−
+−
+−
=
−
−+
−−−
−
−
−
=
4
3
2
1
321
312
213
123
2
1
4
3
3
2
1
321
412
143
234
4
3
2
1
0
0
0
0
2
1
22
1
q
q
q
q
n
n
n
n
q
q
q
q
n
qqq
qqq
qqq
qqq
q
q
q
q
ωωωωωω
ωωωωωω
ωωω
ɺ
ɺ
ɺ
ɺ
(6.207)
重力傾斜トルクは、慣性主軸系のとき(と近似できるとき)
( )( )( )( )( )( )
( )( )( )
+−−
−−−−
−−+−
−=
4132423121
2
2
2
1423113
2
2
2
1413232
2
3
2
1
2
221
221
6
qqqqqqqqJJ
qqqqqqJJ
qqqqqqJJ
n
M
M
M
(6.208)
となるので、宇宙機姿勢の運動方程式は
( ) ( )( )( )( ) ( )( )( )( ) ( )( )( ) 34132423121
2
212133
2
2
2
2
1423113
2
131322
1
2
2
2
1413232
2
323211
12
2216
2216
dqqqqqqqqJJnJJJ
dqqqqqqJJnJJJ
dqqqqqqJJnJJJ
=+−−+−−
=−−−−+−−
=−−+−+−−
ωωω
ωωω
ωωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.209)
と導かれる。
6.6.5 周回軌道上宇宙機の姿勢安定性
6.6.4節の重力傾斜トルクが働いている場合の姿勢の安定性について調べる。ここでは式(6.202)が適用できる場
合の線形安定性を考える。
1) ピッチ軸回り姿勢運動の運動方程式は式(6.202)のピッチ軸成分より次式になる。
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
32
( ) 2231
22
22 )(3)(sin2 dJJnTtnenJ p =−+−− θθɺɺ (6.210)
この際、楕円軌道を考慮し、eは微小として 1次のオーダーまで取り入れた。重力傾斜トルク以外の外力を無視
すると、もし 31 JJ > ならば上式は以下のように積分できる。
( )αωθ +−+−
−= )(cos
13
)(sin2
2
2 pp
pTtA
k
Ttne (6.211)
ここで、 α,A は積分定数であり
2
2
31 3)(3
knJ
JJnp =
−=ω (6.212)
11, 2
2
31
2 ≤≤−−
= kJ
JJk (6.213)
と定義した。これより、ピッチ軸回り姿勢運動は角振動数 pω を持つ非減衰振動(ライブレーション libration)と
なるが、楕円軌道( 0≠e )の場合、 3/12 =k のときピッチ共鳴により発散する。またもし 31 JJ < ならばピッ
チ角が発散する不安定運動となる。
2) 式(6.202)のロール軸とヨー軸の運動方程式はeは微小として1次のオーダーまで取り入れても代わらないので、
それらをラプラス変換すると
( )
( )
=
+−−
−+
12
11
2
1
2
3
2
3
1
2
1
2
/)(
/)(
)(
)(
1
14
Jsd
Jsd
s
s
nksnsk
nsknks
θθ
(6.214)
ここで
1,1,, 31
3
123
1
32
1 ≤≤−−
=−
= kkJ
JJk
J
JJk (6.215)
これより特性方程式は次式になる。
( ) 0413 31
2
311
4
=+
+++
kk
n
skkk
n
s (6.216)
運動が(リアプノフ)安定になるための必要十分条件は、sが純虚数を持つこと、
( ) ( ) 04413,0,013 31
2
31131311 >−++>>++ kkkkkkkkkk
即ち
3131131 413,0 kkkkkkk >++> (6.217)
である。上記以外はロール角またはヨー角が発散する不安定運動である。
ピッチ安定条件 31 JJ > は 31 kk > と同値であること、および31
3121 kk
kkk
−−
= に注意すると、システムの安定性
は図6.8のようにまとめられる。ここで、以下の関係がある。
( ) ( ) ( )1313321 1:1:1:: kkkkJJJ −−−=
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
33
例として ISSのLVLH基準姿勢の安定性は、主慣性モーメントを概算で6
1 1023.126 ×=J 、6
2 1021.90 ×=J 、
6
3 1071.183 ×=J (単位2mkg ⋅ )とすると、 74.01 −=k 、 20.03 −=k となるので、ピッチおよびロール・ヨ
ー共に不安定である。したがって、LVLH基準姿勢を維持するためにはCMGによる姿勢制御が不可欠となる。
1k
3k
1-
1-1
1
ロール・ヨー発散
ピッチ発散
Lagrange安定領域
DeBra-Delp安定領域
31311 413 kkkkk =++
31 kk =
132 JJJ >>
ISS
213JJJ >>
3
31or
3
1
1
132 −
−==k
kkk
楕円ピッチ共鳴
リアプノフ安定
3/1
3/1−
3/1−
図6.8 周回軌道上宇宙機姿勢の重力傾斜安定領域
6.6.6 CMGを搭載した宇宙機の姿勢運動方程式
宇宙機の内部に姿勢制御器の一つである CMG(コントロール・モーメンタム・ジャイロ、第 7 章参照)を持
つ場合の姿勢の運動方程式を導く。宇宙機の質量中心回りの全角運動量Hは、
∑=
+⋅=N
i
GG i
1
/ *
HωIH (6.218)
と表される。ここで、ωは宇宙機構体の慣性系に対する角速度、IはCMGを固定したときの全系の質量中心回
りの慣性ダイアディック、*/GG i
H は i番目CMGのそれ自身の質量中心回りの角運動量である。
{ } ( )iiG
BG
G
i
iiii
GG ii
hδJωCJ/T/ *
++=+⋅+⋅= ɺɺ GhδIωIH (6.219)
ここに、{ }iG は i番目CMGのジンバル座標系、 iI は i番目CMGのジンバルとホイールを含んだ系の質量中心
回りの慣性ダイアディック、 GJ はそのiG 系成分行列、 iδ
ɺ はジンバル角のレートベクトル、 iδɺ はその
iG 系成分
列、 ih はホイールの回転軸方向の角運動量ベクトル、 ih はそのiG 系成分列である。Mを宇宙機に働く質量中
心回りの外乱トルクとすると、ニュートン・オイラーに従い、慣性系に対する時間微分を取ることにより、姿勢
の運動方程式は
∑=
+⋅×+⋅==N
i
GG i
tt 1
/ *
d
d
d
dHωIωωI
HM ɺ (6.220)
と求められる。但し、ドット・は{ }b 系での時間微分である。右辺最終項は
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
34
{ } ( ) ( ) ( )
+++++++−=
×+=
iiG
BG
Gi
BG
ii
BG
G
BG
iG
i
GGGGG
G
GG
iiii
iii
i
i
tt
hδJωCJδωChδJωCJωCδJ
d
d
d
d
/~
/
G
//~T
/// ***
ɺɺɺɺɺɺɺG
HωHH (6.221)
となる。ジンバル自身による寄与が無視できる場合、 IIII ∑=
≈+=≈≈N
i
ii
1
,0δ0,J ɺ とおけるので、運動方程式
は次式のように簡単に表現できる。
MhωhωIωωI =×++⋅×+⋅ ɺɺ (6.222)
ここで、 ∑=
=N
i
i
1
hh はCMG自身の全角運動量である。宇宙機に与えるべき制御トルクをuとすると、
uhωh
MuωIωωI
−=×+
+=⋅×+⋅ɺ
ɺ
(6.223)
と変形できる。外乱トルクを重力傾斜トルクとその他のトルクdに分解して、{ }b 系で表現すると、宇宙機姿勢
の運動方程式は次式になる。
+
+
+
=
−+
−−
−−
+
−
−
−−−
+
33
22
11
12
13
32
2
3
2
1
2313
331112
213322
2
3
2
1
13122211
1232
33223231
3
2
1
333231
232221
131211
3
2
0
0
0
3
2
0
2
du
du
du
I
I
I
n
II
III
III
n
IIII
II
IIII
n
III
III
III
θθθ
ωωω
ωωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.224)
CMGの運動方程式は次式である
−
−
−
=
+−
+−
+−
3
2
1
21123
13312
32231
u
u
u
hhh
hhh
hhh
ωωωωωω
ɺ
ɺ
ɺ
(6.225)
通常、宇宙機姿勢の運動方程式から望ましい姿勢運動を行わせるように制御トルク u を決定して、CMGの運
動方程式からその制御トルクuを発生するようにhɺが決まる。そのようにジンバル角 iδ を操作してhɺを制御する
ことになる。
文献
6.1 J.R. Wertz, Spacecraft Attitude Determination and Control, D. Reidel Publishing Company, 1980.
6.2 T.R. Kane, P.W. Likins and P.A. Levinson, Spacecraft Dynamics, McGraw-Hill, 1983.
6.3 P.C. Hughes, Spacecraft Attitude Dynamics, John Wiley & Sons, 1986.
6.4 R.E. Roberson and R. Schwertassek, Dynamics of Multibody Systems, Springer-Verlag, 1988.
6.5 M.H. Kaplan, Modern Spacecraft Dynamics and Control, Wiley, 1976.
6.6 M. Sidi, Spacecraft Dynamics and Control, Cambridge Univ. Press, 1997.
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
35
6.7 B. Wie, Space Vehicle Dynamics and Control, AIAA, 1998.
6.8 M. Geradin and A. Cardona, Flexible Multibody Dynamics, John Wiley & Sons, 2001.
6.9 M.D. Shuster, A Survey of Attitude Representations, J. Astronautical Sciences, Vol.41, No.4, 1993, pp.439-517.
6.10 木田隆, スペースクラフトの制御, コロナ社, 1999.
6.11 木田隆, 小松敬治, 川口淳一郎, 人工衛星と宇宙探査機, コロナ社, 2001.
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
36
Appendix A 各種の回転パラメータ
ここでは 6.5 節で述べたオイラー角やクォータニオン以外で、宇宙機の姿勢運動の解析や制御に使用される主
な回転パラメータについての関連事項をまとめる。
A.1 指数写像表示
オイラーの固有軸回転パラメータを λv θ= とおく。このとき座標変換行列は
⋯+++=
−==−==
22
/
λ~
2λ~
U
)][λexp()λ~
exp(])[vexp()v~exp(C
θθ
θθBA
(A.1)
⋯⋯ +++=−+−=
=−==−=
22
22
/
λ][2
λ][Uλ~
2λ~
U
)λ]exp([)λ~
exp(])[vexp()v~exp(C
θθ
θθ
θθAB
(A.2)
のように指数関数を用いて表される(練習問題9および下記参照)。また式(6.109)と比較せよ。
上式の導出(問題9回答):
ベクトルの原点を固定したとき、即ち、平行移動を無視して、回転運動(姿勢運動)のみを考えるとき、この
運動を球面運動と呼ぶ。このとき、ベクトルxに対して、変換前の姿勢を{a}、変換後の姿勢を{b}とするとき、
xCx
xCx
/
/
AABB
BBAA
=
=
但し、 T/T/ Csinλ
~λλ)cos1(cosUC ABBA =+−+= θθθ
上式をθで微分すると、仮定より xB はθに依存しないから、
xCd
dC
d
xdCx
d
dC
d
xd //
//
AABBAB
BABBAA
θθθθ=+=
であるが、
θθθ
sin)λλU(cosλ~
d
dC T/
−−=BA
より、
λ~
Cd
dC //
=ABBA
θ
即ち、次の微分方程式が得られる。
0xλ~
d
xd=− A
A
θ
境界条件は
xxUx)0(C)0(x / BBBBAA ==== θ
この解は、
x)λ~
exp(x BA θ=
のように指数形式で表される。逆に解いて、
x)λ]exp([x)λ~
exp(x AAB θθ =−=
これは即ち、
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
37
⋯+++=
=
22
/
λ~
2λ~
U
)λ~
exp(C
θθ
θBA
⋯⋯ +++=−+−=
=−=
22
22
/
λ][2
λ][Uλ~
2λ~
U
)λ]exp([)λ~
exp(C
θθ
θθ
θθAB
と表されることを意味する。これが座標変換行列の指数写像表示である。
A.2 ケーリー変換
Qを 3×3反対称行列、Cを 3×3(右手系)正規直交行列とするとき、任意の正規直交行列を反対称行列によ
ってパラメータ表示できる次の1対1変換をケーリー変換(Cayley Transform)と呼ぶ。
( )( ) ( ) ( )QUQUQUQUC11 −+=+−= −−
(A.3)
逆に
( )( ) ( ) ( )CUCUCUCUQ11 −+=+−= −−
(A.4)
式(A.3)を一般化した次の変換を高次ケーリー変換(Higher Order Cayley Transform)と呼ぶ。
( ) ( ) ( ) ( )mmmmQUQUQUQUC −+=+−= −−
(A.5)
但し、m=1,2,3,…このQからCの写像は1対1ではないので、その逆は一意には決定できず複数のCが存在する。
さて、実数 xに関する公式
,....3,2,1for,2
tanh12
tanh1 ==
−
+−
mem
x
m
x x
mm
(A.6)
が成り立つので、オイラーの固有軸回転パラメータ λv θ= に関する次の公式が成立する。
,....3,2,1for,2
vtanhU
2
vtanhU v ==
−
+−
memm
mm
(A.7)
ところが、 nB をベルヌーイ数として、公式
( ) ( )
( ) 2,
15
2
3!2
1221tanh 5
312
1
221 π<−+−=
−−= −
∞
=
−
∑ xxx
xxn
Bx n
n
n
nnn
⋯ (A.8)
( )( )∑
∞
=
−−=
1
1222
!2
122tan
n
nn
nn
xn
Bx (A.9)
が成り立つので
( ) ( )( )
( )( )
]tanλ[tan]λ[
]λ[!2
122]λ[
!2
1221]λtanh[
1
12
22
12
1
12
221
θθ
θθθ
==
−=
−−= ∑∑
∞
=
−−∞
=
−−
n
nn
nn
n
n
nn
nnn
n
B
n
B
(A.10)
即ち
]tanλ[]λtanh[]vtanh[ θθ == (A.11)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
38
したがって
[ ] [ ] [ ]( ) ,....3,2,1for,λexp
2tanλU
2tanλU
λλ ====
−
+−
mee
mm
mm
θ
θθ
θθ
(A.12)
上式は座標変換行列の指数写像表現と結び付けられることを示している。
A.3 ケーリー・ロドリゲス パラメータ
次の3個のパラメータ
2
tanλρθ
= (A.13)
をケーリー・ロドリゲス パラメータ(Cayley Rodrigues parameter)、または、オイラー・ロドリゲス パラメータと
呼ぶ。クォータニオンqに対して4
qρ
q= であることに注意せよ。このとき次のケーリー変換が成り立つ。
( )( ) ρ~]ρ[R,RURUC1 =−=+−= −
(A.14)
即ち
( )( ) ( )
( ) ( )
( )ωρρρ~U2
1ρ
ρρρρ~U2ρρ~Uρρ1
2ω
ρ~ρ~ρ~
ρρ1
2Uρ~22ρρUρρ1
ρρ1
1C
T
1T
T
T
TT
T
++=
++=−+
=
−+
+=−+++
=
−
ɺ
ɺɺ (A.15)
A.4 改良ロドリゲス パラメータ
次の3個のパラメータ
4
tanλθ
σ = (A.16)
を改良ロドリゲス パラメータ(modified Rodrigues parameter, MRP)と呼ぶ。41
q
q+=σ に注意せよ。このとき、次
の2次ケーリー変換が成立する。
( ) ( ) σσ ~][S,SUSUC22 =−=+−= −
(A.17)
即ち
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
39
( ) ( )
( )( )( )
( )
( )( ) ωσ~σ~σ~U2
σσ1
2
1ωσ~2σσ2Uσσ1
4
1σ
σσ~σ~σ~U2
σσ1
σσ1
8σσ~22σσUσσ1
σσ1
4ω
σ~σ~
σσ1
8σ~
σσ1
σσ14UC
TTT
T
2T
TT
2T
2T2T
T
++
+=++−=
−+
+
+=−+−
+=
++
+
−−=
ɺ
ɺɺ (A.18)
なお、4
tanλ44θ
σ = をCRV(Conformal Rotation Vector)と呼ぶ場合もある。
備考:
41
q
q+=σ
逆関係 3,2,11
2
1
122
2
4 =+
=+−
= iqq ii σ
σσσ
または 21
2q
σσ
+=
ここで、 σσσ T=2
シャドウ変数(shadow variable, or stereographic projection parameter):Sσ
2
41
q
σσ
σ−
=−−
≡q
S
このMRP Sσ は、もとのMRP σ と同じキネマティクス関係式を満たす。σ または
Sσ は、どちらかが、固有
回転角 deg180≤θ または deg180≤θ に対応するパラメータとなる。
4tanλ
θσ = より、
deg180
deg180
deg180
1
1
1
=
≥
≤
=
≥
≤
θθθ
σσσ
さらに、MRP σ は固有軸λ回りのθ 回転変換と見なせるが、MRP Sσ はその向きを逆向きにした回転変換と見
なせる(回転距離が短いか長いかの違い)。即ち、
πθθθπθ
σ 2,4
tanλ4
2tanλ −=′
′=
−=S
MRP σ は deg360±=θ で特異値を持つことに対応して、MRP Sσ は deg0=θ で特異値を持つ。このこと
から、お互いをスイッチして使用することにより、特異値を回避することができる。スイッチする条件として、
MRP σ の大きさを基準として取り、特に、大きさが1のときにスイッチすることが利点が多い。このとき、
12 == σσσ Tより、この表面(球面)で
σσ −=S
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
40
しかも、σ の大きさは1以下に制限される。
その他、下記が成立する。
( )
( )( )
( )Ctr1,2
Caxis,
2
CC~ +=+
=+−
= ζζζ
σζζ
σT
但し、 deg180,1 =−= θζ のときに、0/0の形の特異値が生じるので、その際は、オイラーパラメータや固有
回転表現を介して求めるなどの方法を取る。
式(A.18)より、
( )( ) ( )
( )( )22
22
2T2T
T
σ1
σ~σ14σ~8Uσ~σ~
σσ1
8σ~
σσ1
σσ14UC
+
−−+=
++
+
−−=σ
として、
( ) ( )σσ −= CCT
2つの回転変換(姿勢)に対応するMRPとして σσ ′′′, を取り、合成された回転変換(姿勢)をσ とすると、
( ) ( ) ( )σσσ ′′′= CCC
となるが、このとき、
( ) ( )
σσσσσσσσσσ
σ′′′−′′′+
′′′−′′′−+′′′−=
T21
~21122
22
さらに ( ) ( )
σσσσσσσσσσ
σT′+′+
′+′−−′−=′′
21
~21122
22
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )σσσσσσσ ′−=′=′=′′ −CCCCCCC)
1 T∵
A.5 高次ケーリーパラメータ
一般に、3個のパラメータ
,...4,3,2
tanλp == mm
m
θ (A.19)
を高次ケーリーパラメータ(higher order Cayley parameter)と呼ぶ。このとき高次ケーリー変換が成立する。
( ) ( ) mm
mmp~]p[Q ,QUQUC =−=+−= − (A.20)
θ が微小のとき mm 2/λp θ≈ と近似できる。mが大きいほど近似度は高くなる。さらに ∞→m のとき、高次
ケーリーパラメータはスケール変換を行えばオイラーの固有軸回転パラメータ λv θ= に収束する。即ち、
∞→m のとき、公式
x
mm
m
m
me
m
x
m
x
m
x=
−
+=
+−
∞→∞→ 21
21lim1lim (A.21)
より
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
41
[ ] [ ] [ ]( )λexp
2λU
2λUlim
2
vU
2
vUlim
λλ θ
θθ
θθ ===
−
+=
−
+−
∞→
−
∞→
ee
mmmm
mm
m
mm
m (A.22)
が成立することから、次のように収束することが分かる。
( ) ( ) [ ]( )
vλ2
2limλ2
tanλ2limp2lim
λexp]p[U]p[UlimC
===
=
=−+=
∞→∞→∞→
−
∞→
θθθ
θ
mm
mmm
mmm
m
m
m
m
mm
(A.23)
一方、特異点については
,...2,,...,222
tan ππθππθθ
mmmm
±±=⇔±±=⇔±∞=
(A.24)
なので、ケーリー・ロドリゲス パラメータでは πθ ±= 、改良ロドリゲス パラメータでは πθ 2±= 、高次ケー
リーパラメータでは πθ m±= のとき特異点になるが、オイラーの固有パラメータでは特異点になるのが
±∞→θ となって有限範囲では特異点にならない。
文献
A.1 M. Geradin and A. Cardona, Flexible Multibody Dynamics, John Wiley & Sons, 2001.
A.2 M.D. Shuster, A Survey of Attitude Representations, J. Astronautical Sciences, Vol.41, No.4, 1993, pp.439-517.
A.3 P. Tsiotras, J. L. Junkins and H. Schaub, Higher Order Cayley Transforms with Applications to Attitude Representations,
J. Guidance, Control, and Dynamics, Vol.20, No.3, May-June, 1997, pp.528-536.
A.4 P. Tsiotras, Asymptoic Properties of Higher Order Cayley Transforms, AIAA-98-4387, 1998.
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
42
Appendix B 座標変換行列 ( )θλC の別の求め方
1)固有値問題からの直接解法
ここでは、固有軸と固有角を与えられたときの座標変換行列 ( )θλC について、固有値問題を直接解くことで導
く。座標変換行列を ( )θλCC = として、次の固有値問題
0U)λ-(C or λCλ == ss (B.1)
の固有値は
( )( )( )
( )( )
( )( )
( ) ( )
( )[ ]11trC)1(
trCtrC1
Cdet
Cdet
U)-det(C
2
32
3
332211
2
332211
123
3
123231312
2
213132321
321
3
132213321
2
213132321321
332211
333231
232221
131211
+−−−−=
−+−=
−+++++−=
−+++
++−=
−+++
++−=
−−−=
−
−
−
=
sss
sss
sCCCsCCCs
sCCCs
CCCCCCs
sCCCs
CCCCCCsCCC
sCsCsC
sCCC
CsCC
CCsC
s
iijjkk
jiijikkikjjk
kjiijkikjjikkjiijk
jikikjkjiijkkjiijk
kkjjiiijk
εεεε
εεε
δδδεδδδδδδε
δδδεε
δδδε
となることから φies ±= ,1 (B.2)
であった。 ( )φiexps = に対応する(3)式の固有(複素)列をzとすると、その複素共役zは ( )φi−= exps に対応
する固有複素列である。実際、複素共役をとることにより、
( ) ( ) ( )( ) ( )zexpzCzexpCzzexpCz φφφ iii −=⇔=⇔= (B.3)
が成立するからである。 1×3 の実数列 32 λ,λ を用いて、
32 λλz i+= (B.4)
とすると、実数列 32 λ,λ の大きさは同じで、互いに直交しなければならないことが、次のようにしてわかる。恒
等式
( ) ( ) ( ) ( )( ) 0zz2exp1z2expCzCzCzCzzz TTTTT =−⇔=== φφ ii
を実数部分と虚数部分に分解して、それらを行列表現すると、
( ){ } ( ) ( ){ } 0λλλλλλλλ2sin2cos1 2
T
33
T
23
T
32
T
2 =++−−− ii φφ
より、
0λ2λ
λλλλ
2cos12sin
2sin2cos1
3
T
2
3
T
32
T
2 =
−
−−
−
φφφφ
(B.5)
となる。上式の行列式は
( )φφφ
φφ2cos12
2cos12sin
2sin2cos1det −=
−−
−
であるので、
ππφφ 2,,012cos ±±=⇔= (B.6)
でない限り、
3
T
32
T
2 λλλλ = , 0λλ 3
T
2 = (B.7)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
43
でなければならない。さらに、次の恒等式
( ) ( ) ( ) ( )( ) 0zλexp1zλexpCλCλCzCλzλ TTTTTT =−⇔=== φφ ii
が成立するので、前と同様にして、
0λλ
λλ
cos1sin
sincos1
3
T
2
T
=
−−
−
φφφφ
(B.8)
となり、
( ) πφφφφ
φφ2,00cos12
cos1sin
sincos1det ±=⇔=−=
−−
− (B.9)
でない限り、
0λλλλ 3
T
2
T == (B.10)
が成立する。(B.7),(B.10)式より、 32 λ,λλ, として、
1λλλλλλ 3
T
32
T
2
T ===
0λλλλλλT
33
T
22
T === (B11)
となるようにとることができる。これは即ち、 32 λ,λλ, を成分列に持つ行列
( )32 λλλD = (B.12)
が直交行列であることを意味する。
UDDDD TT == (B.13)
32 λ,λλ, は右手系でも左手系でもよいが、以下では右手系と仮定する。即ち、
233232 λλ~
λλ,λ~
λ,λλ~
λ === (B.14)
1Ddet =
とする。(B.3)式より、
( ) ( )
( )
−
=
−−=
φφφφ
φφφφ
cossin0
sincos0
001
λλλ
cosλsinλsinλcosλλλλλC
32
323232
即ち
( ) T1 DDCC φ= (B.15)
と書ける。上式をさらに変形すると、
( ) ( ) φφ sinλλλλcosλλλλλλCT
32
T
23
T
33
T
22
T −−++=
となるが
λ~λ~
λλUλλλλUλλλλλλ TT
33
T
22
T
33
T
22
T −=−=+⇔=++ (B.16)
( ) T
32
T
23
~
3232 λλλλλλ~
λ~
λλ~
λ −==⇔= (B.17)
に注意すれば、最終的に次式が得られる。
( )
( )θ
φφ
φφ
λ
T
TT
C
cosλ~λ~
sinλ~
λλ
sinλ~
cosλλUλλC
≡
−−=
−−+=
(B.18)
2)座標系のλ 軸回りθ 回転変換について、変換前の直交基底ベクトルを{ }a 、変換後を{ }b とするとき、
{ } ( ){ }ab θλC= となる座標変換行列(方向余弦行列) ( )θλC を求める。この行列を成分に持つダイアディクス
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
44
は、
{ } ( ){ } { } ( ){ }{ } { }ba
bbaaC
T
λTλTCC
=
== θθ (B.19)
と表現される。λ軸回りθ 回転変換を規定するために、図B1に示すような1軸がλ軸に一致する直交基底ベクト
ル{ } { }T32 ααλα = を考え、それが回転後に{ } { }T32 ββλβ = に変換されたとする。{ }a と{ }α の姿勢関係が、
ある方向余弦行列Dによって
{ } { }αa D= (B.20)
と表されるならば、回転変換後の姿勢関係は保存されるので、{ }b { }β との姿勢関係も、
{ } { }βb D= (B.21)
と表される。したがって、(B.19)式は、
{ } { } { } { } { } { } { } { }βαβaβαbaCTTTTT
UDD ==== (B.22)
{ } { }{ } { }{ } ( ){ }αCβ
ββλβ
ααλα
θ1
T
32
T
32
=
=
=
λλ
λ
θ3β
2β3α
2α
図B1 座標系のλ軸回りθ 回転変換
と変形される。さて、図B1より、
{ } ( ){ }αβ θ1C= (B.23)
の関係があるので、(B.22)式は
{ } { } { } { }{ }ααβαC θ1TTC== (B.24)
となるが、ここで、
( )
[ ]( )
( )θθθ
θθθ
θ
θθ
θθ
θ
θθθθθ
cos1δδsinδ~
Ucos
cos1001
0
0
1
sin
0
0
1
cos
100
010
001
000
000
00cos1
0sin0
sin00
000
cos00
0cos0
00cos
cossin0
sincos0
001
C
T
111
~
1
−+−=
−
+
−
=
−
+
−
+
=
−
=
(B.25)
と変形されることに注意すれば、回転変換ダイアディクス(B.24)式は
{ } ( )( ){ }ααC θθθ cos1δδsinδ~
cosUT
111
T −+−=
{ } { } { } { } { } { }( )θθθ cos1δδsinδ~
cosUT
11
T
1
TT −+−= αααααα
( )θθθ cos1λλsinλ~
cosU −+−= (B.26)
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
45
となる。ここで、
{ } { }{ } { }{ } { }ααU
ααλ
ααλ
U
δ~~
δδ
T
1
T
T
11
T
=
=
==
を用いた。したがって、 { } λTαλ = に注意すれば、{ }a 系で表示された座標回転変換行列は
( ) { } { }( ) θθθθθ
θ
sinλ~λ~λ~
cosλ~λ~
λλcos1λλsinλ~
cosU
C
TT
Tλ
+−=−+−=
⋅⋅= aCa (B.27)
と求められる。これは定義より{ }b 系表現でも同じである。
3)座標回転変換行列をダイアディクスを経由しないで直接求める。定義(B.19)式により、
( ) { } { }TλC ab ⋅=θ
であるが、(B.20), (B.21)式を代入すると、
( ) { } { } ( ) T1TTλ DDCDDC θθ =⋅= αβ (B.28)
となる。更に、(B.25)式を代入すると、
( ) ( )( )( )
( ) ( )( ) ( )θθθ
θθθ
θθθθ
cos1DδDδsinDδcosU
cos1DδDδsinDδ~
DcosDUD
Dcos1δδsinδ~
cosUDC
T
11
~
1
TT
11
T
1
T
TT
111
λ
−+−=
−+−=
−+−=
(B.29)
と変形される。ところが、
{ } { }{ } λ
Dδδ
T
1
T
1
T
a
aαλ
=
== (B.30)
であるので、最終的に、
( ) ( )θθθθ cos1λλsinλ~
UcosC Tλ −+−=
が得られる。
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
46
Appendix C 任意の参照点O規準の剛体の運動方程式について
任意の参照点Oを規準とした剛体の運動方程式は式(6.145)より
OO
A
CO
A
tm
tM
Rr
h=×+
2
2
d
d
d
d (C.1)
角運動量は、慣性ダイアディクスと角速度ベクトルを用いて AB
OO
/ωIh ⋅= (C.2)
と表されるから、式(C.1)の左辺は
AB
O
ABAB
OO
ABO
B
O
A
tt
////
d
d
d
dωIωωIhω
hh⋅×+⋅=×+= ɺ (C.3)
ここで、 OI はB系から見て不変と仮定した。したがって、任意の参照点Oを規準とした剛体の運動方程式を角
速度表示すると(角速度は擬座標であることに注意)
OO
A
C
AB
O
ABAB
Ot
m MR
rωIωωI =×+⋅×+⋅2
2///
d
dɺ (C.4)
{b}系の成分で表示すると
OO
B/A
COO Rm MCr~ωIω~ωI =++ ɺɺɺ (C.5)
ここに、平行軸定理により T
CCCO m r~r~II += (C.6)
ここで、
{ } { } { } { } { } { } { } O
B/AT
O
T
OO
T
OC
T
C
TAB
O
T
O RCR,M,r,ω,I /baRbMbrbωbbI ======
mは剛体の全質量
式(C.5)を用いた方が工学的に有用な場合があるし、一般的である。
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
47
練習問題
1 次式を示せ。
1) xy~xy~y]x[yx~ T=−== 2) TTTTT x~yx~yx][yy~x =−== 3) y~x][y][x~xUyyxy~x~ TT −=−=−= ,
TTT2 xxxUxx~x~x~ −==− 4) Uλλλ~λ~ T −= 但し 1λ = 5) [x]x[x],x~xx~
2323 −=−=
6) ( ) [ ] ( ) [ ]λ1λ,λ~
1λ~ 112112 −−−− −=−= nnnn
但し 1λ = 7) ~TT )yx~(xyyxx~y~y~x~ =−=−
8) ~TT )wy~x~(yxw~w~xy −=+
9) ( )( ) ( ){ }x~2xx2Uxx1xx1
1x~Ux~-U TT
T
1 −+−+
=+ −
2 列xの i成分を ix とし、 ii x=)x( と書く。同様に、行列Cの ij成分を ijC とし、 )((C) ijij C= と書く。次を
示せ。但し、同一添字に対して和をとるというアインシュタインの総和規約を用いている。
1)
krkqkp
jrjqjp
iriqip
pqrijk
δδδδδδδδδ
εε = 但し、 は行列式(determinant)
kqjrkrjqiqrijk δδδδεε −= , krijrijk δεε 2= , 6=ijkijkεε
2) kijkijkijkij xx εε =−= ]x[,x~ , jkijkjkijkix ]x[2
1x~
2
1εε =−= , ( ) kjijki yxε=yx~
3) 行列Cが反対称行列 CCT −= のとき、 0trC =
行列Cが対称行列 CCT = のとき、 0axisC =
4) 2TTT x)tr(xx,yx)tr(xy == , [ ] 0)axis(xxy,xxy~yx~)2axis(xy TT ===−=
5) 0tr[x]x~tr == , [ ]( )xaxis)x~axis(x)x~axis( T −=−== , y/2x~)y~x~axis(y,x2)y~x~tr( T =−= ,
( ) )yyx~axis(2/xyyyxy)x~axis(yy TTTT =−=
特に 1λλ 21 == のとき、 ( ) 2/cosλλ)λ~
λaxis(λ 211
T
22 γ−= 但し、 1
T
2 λλcos =γ
6) 対称行列TSS = 、反対称行列
TWW −= のとき、 0tr(WS)tr(SW) ==
7) Aは3×3行列、Wは3×3反対称行列のとき
[ ] )A(axis)W(axis2)WA(tr),W(axisAtr(A)U2
1)WA(axis T−=−=
特に、 ω~W = のとき、 [ ] )A(axisω2)Aω~(tr,ωAtr(A)U2
1)Aω~(axis T−=−=
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
48
8) Aは3×3行列、adj (A ) は正方行列A の余因子(adjoint)行列
( )( ){ }
( ) ( )( ){ } ( ) T~~~
T~
~TT
~TT
Ayx~AAyAx
yx~AadjAyAx
xAadjAx~A
,x~tr(A)x~AAx~x~A
=
=
=
=++
注意:)Adet(
)A(adjA 1 =−
3 3×3の右手系正規直交行列C、3次元列x, yとするとき、
TCx~Cy~Cxy =⇔= これより ( ) T~
Cx~CCx =
4 2回の連続した座標変換行列 ( ) ( )2λ
1
λ 21 C,C θθ を合成した座標変換行列 ( )θλC の固有回転角θ と固有回転軸
λについて、 21 λ,λ の方向余弦を 2
T
1 λλcos =γ とするとき、 )2,1(sin,cos === isc iiii θθ として、固有回
転角θ は
( )( ) γγθ cos2cos11cos21 21
2
212121 sscccccc −−−+++=+
または γθθθθθcos
2sin
2sin
2cos
2cos
2cos 2121 −=
固有回転軸λは
( ) ( ){ } ( ) ( ){ }( )( ){ } 212121
2212112121
λλ~
cos11
λcos11λcos11λsin2
γ
γγθ
ccss
csscsccs
−−−+
−−++−−+=
または 2
sin2
sinλλ~
2sin
2cosλ
2cos
2sinλ
2λsin 21
2121
221
1
θθθθθθθ++=
から求められることを示せ。
5 角速度の連鎖法則を証明せよ。
6 座標変換{ } ( ){ }ab θλC= について以下を示せ。
1) λを固定したとき(単純回転)の角速度成分は、 λω θɺ= となる。
2) 一般に、 0λ ≠ɺ のとき
~TTTTTTT )λλ~(λλλλ,λ
~λλλ
~λ~
λλ,λλλ~λ~,λλ
~λλ~,0λλ
~,0λλ,1λλ ɺɺɺɺɺɺɺɺɺɺɺ =−−=+=−====
であることから、 λλ~)cos1(λsinλω ɺɺɺ θθθ −−+= となる。
7 i軸回りθ 回転の座標変換行列を )(C θiとし、{ } { }ab )(C θi= とする。
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
49
1) 角速度ベクトルが、 { } { } iiii δδTT θθθθ ɺɺɺɺ babaω ==== となることを示せ、但し、 [ ]Tiiii 321δ δδδ=
である。
2) A系からB系への変換を、3つの変換:ピッチ軸変換 AA ′→:)(C 2
2 θ 、ヨー軸変換 AA ′′→′:)(C 3
3 θ 、
ロール軸変換 BA →′′:)(C 1
1 θ によって行うとき、A系からB系への座標変換行列C
+−−+
++−
−
==
213213121321
213213121321
32332
2
2
3
3
1
1 )(C)(C)(CC
ccssscsscscs
cssscccssscc
csscc
θθθ
A系に対するB系の角速度ωと角度レートθɺの関係
ω
cccs0
sc0
sssc-c
c
1θ,θ
ccs0
scc0
0s1
ω
3131
11
31313
3
131
131
3
−=
−
= ɺɺ
を確かめよ。ここで、 3311 cos,sin θθ == cs など、 [ ]T321θ θθθ= と定義した。また、2
3
πθ = のとき特
異になることを示し、その物理的意味を説明せよ。
3) )(C)(C)(C 313 ψθφ →→ の場合について同様に考察せよ。即ち、
313 aabω ɺɺɺ ′+′′+= φθψ
−=
ψθφ
θψψθψψθ
ɺ
ɺ
ɺ
10c
0scs
0css
ω , ω
scccs
0ssc
0cs
s
1
−−
−=
θθψθψθψθψ
ψψ
θψθφ
s
ɺ
ɺ
ɺ
を示せ。ここで ψψθθ cosc,sins == などである。特異になる場合を考察せよ。
8 クォータニオンについて下記に答えよ。
1) (6.131), (6.132)式が成立することを確認せよ。これは数値的観点から最適ではなく、次の方法がよいことが知ら
れている。その妥当性を確認せよ。
a) Cから次の4×4対称行列Sを構成する。
+−−
+−+−
++−−+
−−−+++
=
332211
3223332211
31132112332211
122131132332332211
1sym.
1
1
1
S
CCC
CCCCC
CCCCCCC
CCCCCCCCC
b) Sはクォータニオンの2次式で表現できることから、c) のように計算できる。
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
50
=
2
3
32
2
2
3121
2
1
342414
2
4
sym.
4S
q
qqq
qqqqq
qqqqqqq
c) ( )kkk
ii SmaxS ≡ として、 ijjq
qqi
ij
jiii ≠=== ,4,...,1for4
S,S
2
1
2) 2回の変換 ','q 4q と ","q 4q 後の姿勢を表すクォータニオンを 4,q q とすると、下記が成立することを示せ。
"q'q"',"q'q~"q''q"q T
44444 −=++= qqqqq
即ち、
q)qΞ(q)q(Ψ
"
"q
''q
'q'q~U'
'
'q
""q
"q"q~U"q
44
T
4
44
T
4
4
′⊗′′≡
′′′=′′′=
−
+=
−
−=
q
q
q
3) 例えばピッチ-ヨー-ロール角(2-3-1オイラー角、練習問題7参照)の間には、
( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )
−
−
+
+
=
2/sin2/sin2/sin2/cos2/cos2/cos
2/cos2/sin2/sin2/sin2/cos2/cos
2/sin2/cos2/sin2/cos2/sin2/cos
2/cos2/cos2/sin2/sin2/sin2/cos
321321
321321
321321
321321
4
3
2
1
θθθθθθθθθθθθθθθθθθθθθθθθ
q
q
q
q
( )( )4321
1
32
3
2
1
31421
22
3
2
1
32411
1 2sin,)(21
)(2tan,
)(21
)(2tan qqqq
qqqq
qqqq+=
+−
−=
+−
−= −−− θθθ
の関係があることを示せ。クォータニオンの物理的解釈を行う場合に用いられる。
4) オイラー角が微小の場合、 1,2
,2
,2
43
32
21
1 ≈≈≈≈ qqqqθθθ
であることを示せ。
5) ( )qq~U)qG( 4 −−= q , T
4
T ),(q qq= について、
14
13
T
44
TT
TT
xfor q)xG(x)qG(
0q)qG(
qqUqq)qG()qG(
Uqq)q)G(qG(
×
×
×
∀−=
=
−=
=
注意: ω)qG(
2
1q
q)qG(2ω,q)qG(2ω
T=
==
ɺ
ɺɺɺɺ
9 ベクトルxの回転運動のみを考える。基底座標系{b}をベクトルxとともに動く座標系とする。最初は{a}系と
一致しており、変換 )(Cλ θ 後に{b}に移ったとする。座標成分を xCx / BBAA = とおく。 xA をθで微分すると、
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
東工大・松永三郎
51
xB はθに依存しないことから、微分方程式 0xλ~
d
xd=− A
A
θが得られることを示せ。境界条件 x)0(x BA ==θ よ
り、この解は x)λ~
exp(x BA θ= , x)λ]exp([x)λ~
exp(x AAB θθ =−= となることを示せ。
10 外力トルクが働かない場合の宇宙機の角速度の解析解が楕円関数で表されることを示せ。姿勢をオイラー角
で表したとき、その解析解を求めよ。中間慣性主軸 ( )3212 JJJJ << 回りの回転運動が不安定であることを論ぜ
よ。
11 右手系直交基底ベクトル{ }e について
=×
=⋅
)2(
)1(
kijkji
ijji
eee
ee
εδ
である.(1)の時間微分を行うと、
0=⋅+⋅ jiji eeee ɺɺ , 0=⋅ ii eeɺ となるので
=⋅−=⋅ ijji eeee ɺɺ ji, に依存した定数 kijkωε=
とおける。例えば, 321 ee ⋅= ɺω である。以下を示せ。
1) kjijki eee ×= ε2
1
2) ieɺ を{ }e 系で表すと, jjii eeee )( ⋅= ɺɺ であることを用いて
ii eωe ×=ɺ
ここで、
{ } ωωωωω T
ii eeeeeω =++== 332211 :角速度ベクトル
3) 角速度ベクトルは次のようにも書ける:
321213132 eeeeeeeeeω ⋅+⋅+⋅= ɺɺɺ
12 慣性行列の平行軸定理
1) ある剛体の質量中心C回りの慣性ダイアディックI が
∫ −⋅= md)( ρρρUρI
と表されるとき,任意の参照点O回りの慣性ダイアディック oI は,
)(d)( cccco mm rrUrrIrrrUrI −⋅+=−⋅= ∫
と表現できることを示せ.ここで,参照点Oから測った点Cおよび微小
r
md
C
O
cr
{ }bρρρρ
{ }b
姿勢のキネマティクスとダイナミクス
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52
質量 md の位置ベクトルをそれぞれ, cr , rとし,点Cから測った微小質量 md の位置ベクトルをρとする.
即ち, ρrr += c また,mは剛体の全質量である.
2) { } ρTbρ = , { } c
T
c rbr = , { } { }bbI IT= , { } { }bbI o
T
o I= のとき,慣性行列 oI を求めよ.更に,
[ ]T321 ρρρρ = , [ ]Tc rrrr 321= のとき, oI の成分を書き下せ.
3) { } { }bc C= のとき, oI の{ }c 系で表した行列表現 o
C I を具体的に求めよ.但し,
{ } { }ccI o
CT
o I=
13 ダイアディックAが,ある基底{ }a によって, { } { }aaA AT= と表現されるとき,
( ) { } ( )
( ) ( )
=
=
Atrtr
Aaxisaxis
A
aAT
と定義する.これらは,座標変換に対して不変であることを示せ.
即ち,{ } { }ab C= に対して, { } { }bbA BT= となれば,
( ) { } ( ) { } ( )
( ) ( ) ( )
==
==
BA
BATT
trtrtr
axisaxisaxis
A
baA
となる.
14 nを任意の単位ベクトル( 1=⋅nn )とするとき,次のようにダイアディックを定義する.
nnURnnUP 2, −=−=
以下を示せ.
1) P ,Rは任意ベクトルaを法線ベクトルnに垂直な面方向に,それぞれ射影または反射させるダイアディック
であることを図を用いて説明せよ.
2) PPP =⋅ , URR =⋅ を満たすことを示せ.
3) 2つの単位ベクトル 1n , 2n について2つの反射ダイアディックを定義する.
111 2 nnUR −= , 222 2 nnUR −=
21 RRQ ⋅= は回転ダイアディックであることを説明し,その回転軸と回転角を 1n , 2n を用いて表せ.ここで,
一般に回転ダイアディックQは回転軸λと回転角θ を用いると,
( ) λλλUλλQ~
sincos θθ −−+=
となることを利用せよ.
4) 逆に,ある回転Qを与えたときに,3)のように2つの反射ダイアディックに分解できるための, 1n と 2n の条
件を求めよ.