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Application Note IN Cell Analyzer 2000 IN Cell Analyzer 2000 を用いた神経突起伸長測定 はじめに 神経細胞分化の測定は、アルツハイマー病、パーキンソン病、中枢神経損傷、脳卒中などの疾患を対象 とした薬剤を開発する上で重要です。また、神経突起伸長の測定は、化学物質誘発性神経毒性の評価 に用いられます。 本研究では、IN Cell Analyzer 2000 を用いて、様々な対物レンズ、蛍光および透過光撮影による神経 突起伸長の測定を行いました。 実験内容 サンプルおよび試薬 PC12 細胞、ラット海馬ニューロン初代細胞 *Dr Janet AnderlMillipore 社)よりご提供。 Neuro-2a 細胞(ATCC より入手) High-Content Analysis Kit for Co-Culture of Neurons and AstrocytesMillipore HCS222Neurite Outgrowth and Synaptic ActivityMillipore HCS226キットの詳細な情報は Millipore 社より入手できます(www.millipore.com )。 PC12 サンプル調整方法 増殖培地を加えた 96 ウェルプレートに、PC12 細胞を 2,000 Cells/well 播種しました。24 時間後、増殖 培地から NGF 100 ng/mL を含有する低血清培地と交換しました(一部にノコダゾールを添加)。NGF 有培地を 3 日毎に交換しながら細胞をさらに 6 日間培養しました。キットの推奨条件で試料を固定して 染色しました。 ラット海馬ニューロンの初代細胞サンプル調整方法 増殖培地を加えた 96 ウェルプレートに、ラット海馬ニューロンの初代細胞を 10,000 Cells/well 播種しま した。細胞を計 11 日間培養した後、キットの推奨条件下で試料を固定して染色しました。 マウス Neuro-2a サンプル調整方法 Eagle’s MEM/10% FBS を加えた 96 ウェルプレートに、マウス Neuro-2a 細胞を 2,000 Cells/well 播種し ました。一晩培養後、最終濃度 5 μM のレチノイン酸(Sigma)を添加した低血清(2%)培地に交換しまし た。さらに 4 日間の培養期間、定期的に 10×の明視野画像を取得しました。 1IN Cell Analyzer 2000 による撮影画像 A)ラット PC12 細胞。(B)ラット海馬ニューロン画像。10×対物レンズおよび 400 万画素ラージ CCD カメラを使用。 青:DAPI、緑:FITC-ßIII-tubulin、赤:Cy3-Synaptophysin A B 71-3431-11

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Page 1: IN Cell Analyzer 2000 を用いた神経突起伸長 … Note IN Cell Analyzer 2000 IN Cell Analyzer 2000 を用いた神経突起伸長測定 はじめに 神経細胞分化の測定は、アルツハイマー病、パーキンソン病、中枢神経損傷、脳卒中などの疾患を対象

Application Note IN Cell Analyzer 2000

IN Cell Analyzer 2000 を用いた神経突起伸長測定 はじめに

神経細胞分化の測定は、アルツハイマー病、パーキンソン病、中枢神経損傷、脳卒中などの疾患を対象

とした薬剤を開発する上で重要です。また、神経突起伸長の測定は、化学物質誘発性神経毒性の評価

に用いられます。 本研究では、IN Cell Analyzer 2000 を用いて、様々な対物レンズ、蛍光および透過光撮影による神経

突起伸長の測定を行いました。 実験内容 サンプルおよび試薬 PC12 細胞、ラット海馬ニューロン初代細胞 *Dr Janet Anderl(Millipore 社)よりご提供。 Neuro-2a 細胞(ATCC より入手) High-Content Analysis Kit for Co-Culture of Neurons and Astrocytes(Millipore HCS222) Neurite Outgrowth and Synaptic Activity(Millipore HCS226)

* キットの詳細な情報は Millipore 社より入手できます(www.millipore.com)。 PC12 サンプル調整方法

増殖培地を加えた 96 ウェルプレートに、PC12 細胞を 2,000 Cells/well 播種しました。24 時間後、増殖

培地から NGF 100 ng/mL を含有する低血清培地と交換しました(一部にノコダゾールを添加)。NGF 含

有培地を 3 日毎に交換しながら細胞をさらに 6 日間培養しました。キットの推奨条件で試料を固定して

染色しました。 ラット海馬ニューロンの初代細胞サンプル調整方法

増殖培地を加えた 96 ウェルプレートに、ラット海馬ニューロンの初代細胞を 10,000 Cells/well 播種しま

した。細胞を計 11 日間培養した後、キットの推奨条件下で試料を固定して染色しました。 マウス Neuro-2a サンプル調整方法

Eagle’s MEM/10% FBS を加えた 96 ウェルプレートに、マウス Neuro-2a 細胞を 2,000 Cells/well 播種し

ました。一晩培養後、最終濃度 5 μM のレチノイン酸(Sigma)を添加した低血清(2%)培地に交換しまし

た。さらに 4 日間の培養期間、定期的に 10×の明視野画像を取得しました。

図 1:IN Cell Analyzer 2000 による撮影画像 (A)ラットPC12細胞。(B)ラット海馬ニューロン画像。10×対物レンズおよび400万画素ラージCCDカメラを使用。

青:DAPI、緑:FITC-ßIII-tubulin、赤:Cy3-Synaptophysin

A B

71-3431-11

Page 2: IN Cell Analyzer 2000 を用いた神経突起伸長 … Note IN Cell Analyzer 2000 IN Cell Analyzer 2000 を用いた神経突起伸長測定 はじめに 神経細胞分化の測定は、アルツハイマー病、パーキンソン病、中枢神経損傷、脳卒中などの疾患を対象

●2 Application Note 71-3431-11

結果 IN Cell Analyzer 2000 をラージ CCD カメラと共に使用することにより、少ない画像枚数であっても解

析に十分な解像度で、ホールウェル画像の取得が可能になります。4×(0.2NA)画像の解像度が神経突起

伸長の解析に十分であるかどうかを、10×(0.45 NA)対物レンズと比較して検討しました(図 2)。 各濃度のノコダゾールを暴露して、神経突起の長さおよび細胞数の測定を行ったところ、各 4 視野ずつ

撮影した 4x レンズと 10x レンズの画像において、同等の測定値が得られました。また、その測定値は IN Cell Analyzer 1000 の 20x レンズを用いて 10 視野ずつ撮影を行った画像の解析結果と同等であること

が確認されました(図 3)。 続いて、ラット海馬ニューロンの初代細胞を用いて、アクリルアミド処理による様々な神経毒性反応を

評価しました。その結果、10×レンズによる画像から、アクリルアミド濃度依存的な、神経突起伸長および

シナプス形成の阻害が確認されました。 予備研究の際、マウス Neuro-2a 細胞を用いて、レチノイン酸添加により分化誘導し、その経時的な変

化を評価しました。4 日間の培養中、定期的にインキュベーターから取り出して、同一視野の 10x 明視野

画像を取得しました。得られた画像から解析を行ったところ、明視野であっても経時的な突起伸長を測

定することが可能であることが確認されました。

図 2:4x および 10x レンズによるラット PC12 細胞画像。 青:DAPI、緑:FITC-ßIII-tubulin、赤:Cy3-Synaptophysin。

(A),(B)は 4x レンズ 4 視野のスティッチ画像。(C),(D)は(A),(B)の一部拡大画像。(E),(F)は 10x レンズ画像の一部拡大。(A)

(C)(E)ノコダゾール 1 nM 処理細胞。(B)(D)(F)ノコダゾー

ル 10 μM 処理細胞。

図 3:PC12 細胞のノコダゾールに対する用量反応曲線。

(A)IN Cell Analyzer 2000 を用いて 4×および 10×で取得し

た画像と、IN Cell Analyzer 1000 を用いて 20×(0.45 NA)で取得した画像から得た 1 細胞あたりの神経突起の平均長。

(B)1 ウェルあたりの細胞数。3 ウェル平均値(±SEM)。

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●3 Application Note 71-3431-11

図 4:10×レンズを用いたラット海馬ニューロン画像。 (A)(B)の一部拡大画像。(B)10×画像の全視野。緑:FITC-ßIII-tubulin、赤:Cy3-Synaptophysin。(C)解

析ソフトウェア Investigator による画像認識の様子。青:細胞体、水色:ニューロン、黄:シナプス。

図 5:ラット海馬ニューロンのアクリルアミドに対する用量反応曲線。 (A)(B)IN Cell Analyzer 2000 の画像(10×レンズ部分視野)。(A)0.1mM アクリルアミド処理細胞、(B)

1mM アクリルアミド処理細胞。(C)1 細胞あたりの神経突起の長さおよびシナプス数の平均値。(D)4 視

野から得た 1 ウェルあたりの全細胞数。3 ウェル平均値(±SEM)。

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●4 Application Note 71-3431-11

図 6:10×レンズを用いた分化中の Neuro-2a 細胞明視野画像 薬剤添加後、様々な時点の明視野画像を示します。

図 9:Neuro-2a 細胞の分化の経時的変化 (A)各時点で同一画像野から得た IN Cell Investigator データの Spotfire 散布図。(X 軸)レチノイン酸(最終濃度 5 μM)添加後の時間。(Y 軸)細胞あたりの神経突起。各プロットは神経突起の合計長が 25 ミクロン(μm)を超える単

一細胞を示し、プロットの大きさは神経突起の分岐数を示します。(B)10×明視野画像の全視野。(C)解析ソフトウェ

ア Investigator による画像認識の様子。(赤)細胞体。(緑)神経突起。 まとめ ・ 神経突起伸長の測定に、4×レンズ画像を用いることができると確認されました。これにより、4 視野

撮影によるホールウェル画像から解析することが可能です。 ・ シナプスなどの細胞内構造の評価は、10×レンズ画像から高感度に解析できます。 ・ IN Cell Analyzer 2000 は、Millipore 社から提供されるようなハイコンテンツアナリシスに最適化した

アッセイキットと組み合わせることで、神経突起伸長測定のハイスループットな画像解析プラットフォ

ームの提供ができます。 ・ 明視野画像による神経細胞分化の評価が可能であり、非標識による生細胞の研究の予備的なデ

ータが示されました。 © 2011 GE ヘルスケア・ジャパン株式会社 本書の全部または一部を無断で複写複製することは、著作権法上の例外を除き、禁じ

られています。本書に掲載されている製品の名称、仕様などは改良のため予告なく変更される場合があります。掲載されている社

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