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2-1-1 第1章 品質工学 「品質工学」群の中には,タグチメソッドに関する解析手法を扱います.具体的には,パラメータ設計 のための計画,パラメータ設計,許容差設計の3つの方法を用意しています. 1-1.パラメータ設計を活用する前に 田口玄一氏が 1980 年にベル研究所において,LSIのウィンドウ寸法のバラツキを削減する実験で大きな成 果を収めた結果,「タグチメソッド」は世界中から注目されることになりました. そして,タグチメソッドの考え方と手法の多くは,1988 年から 1990 年にかけて品質工学講座全7巻が刊行され ると,国内の製造業に広く知れ渡るようになったのは皆さんご存じの通りです. 東京工業大学の宮川雅巳氏によると「タグチメソッドの中心はパラメータ設計と呼ばれ,伝統的な実験計画法 とは目的の異なる実験計画技法である」と述べられています.タグチメソッドの中心に,パラメータ設計の考え 方,方法論があることがわかります. さて,新製品開発や設計においては通常.設計のパラメータを因子として取り上げ(制御因子という),これを 理論や実験にもとづいて最適条件を探索するのがよくおこなわれます.しかしながら,ユーザはその製品をさ まざまな条件のもとで使用するので,製品機能を一定に保つためには,使用条件や環境条件,劣化状態(誤差 因子や信号因子という)のレベルや制御因子との交互作用を調べて,技術者は慎重に設計のパラメータを決 めなければなりません. このように,ユーザの使用環境条件の変動を積極的に考慮して,安定性のある製品設計,つまりロバスト (Robust)な設計をしようとする技術が「パラメータ設計」ということになります. 設計段階では,主としてシステム要素出力特性との関係式を利用して,パラメータの値を大幅に変化させた とき,内乱(ノイズ)による出力特性のばらつき方を調べ,内乱の影響の少ない水準を探します.この内乱に強い ものは外乱にも強いと考えられ,安定性のよい設計ということになります. そのため,製造あるいは使用の段階で特性に影響する制御不可能な要因を実験の場で因子として取り上げ, 評価する必要があります.そのような因子を誤差因子と呼びます. 誤差因子の水準変化によっておこる特性の変化が小さい条件を見出そうとするとき重要な役割を果たすの が,制御因子と誤差因子との交互作用ですが,パラメータ設計は,この交互作用を求めるための実験配置とそ の解析方法からなっていると言われます.制御因子と誤差因子の交互作用の解析を簡便にかつ効率的に行う ために,パラメータ設計では,制御因子で構成される各処理条件ごとに,外側のデータからSN比(signal-noise ratio)と呼ばれる統計量を計算します. 1-1. パラメータ設計を活用する前エンジニアード・システム (パラメータ設計での物の見方) ) 力信号M 出力特性 y ノイz1, z2, ・・・, zk y :システムの機能を表す出力 M :出力を変えるための入力信 x1,x2,・・・,xn : 設計パラメータ z1,z2,・・・,zk : システムの機能を システム (x1,x2,…,xn) ノイズ y

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2-1-1

品質工学

PART

第1章

第1章 品質工学

「品質工学」群の中には,タグチメソッドに関する解析手法を扱います.具体的には,パラメータ設計

のための計画,パラメータ設計,許容差設計の3つの方法を用意しています.

1-1.パラメータ設計を活用する前に

田口玄一氏が 1980 年にベル研究所において,LSIのウィンドウ寸法のバラツキを削減する実験で大きな成

果を収めた結果,「タグチメソッド」は世界中から注目されることになりました.

そして,タグチメソッドの考え方と手法の多くは,1988年から1990年にかけて品質工学講座全7巻が刊行され

ると,国内の製造業に広く知れ渡るようになったのは皆さんご存じの通りです.

東京工業大学の宮川雅巳氏によると「タグチメソッドの中心はパラメータ設計と呼ばれ,伝統的な実験計画法

とは目的の異なる実験計画技法である」と述べられています.タグチメソッドの中心に,パラメータ設計の考え

方,方法論があることがわかります.

さて,新製品開発や設計においては通常.設計のパラメータを因子として取り上げ(制御因子という),これを

理論や実験にもとづいて 適条件を探索するのがよくおこなわれます.しかしながら,ユーザはその製品をさ

まざまな条件のもとで使用するので,製品機能を一定に保つためには,使用条件や環境条件,劣化状態(誤差

因子や信号因子という)のレベルや制御因子との交互作用を調べて,技術者は慎重に設計のパラメータを決

めなければなりません.

このように,ユーザの使用環境条件の変動を積極的に考慮して,安定性のある製品設計,つまりロバスト

(Robust)な設計をしようとする技術が「パラメータ設計」ということになります.

設計段階では,主としてシステム要素と出力特性との関係式を利用して,パラメータの値を大幅に変化させた

とき,内乱(ノイズ)による出力特性のばらつき方を調べ,内乱の影響の少ない水準を探します.この内乱に強い

ものは外乱にも強いと考えられ,安定性のよい設計ということになります.

そのため,製造あるいは使用の段階で特性に影響する制御不可能な要因を実験の場で因子として取り上げ,

評価する必要があります.そのような因子を誤差因子と呼びます.

誤差因子の水準変化によっておこる特性の変化が小さい条件を見出そうとするとき重要な役割を果たすの

が,制御因子と誤差因子との交互作用ですが,パラメータ設計は,この交互作用を求めるための実験配置とそ

の解析方法からなっていると言われます.制御因子と誤差因子の交互作用の解析を簡便にかつ効率的に行う

ために,パラメータ設計では,制御因子で構成される各処理条件ごとに,外側のデータからSN比(signal-noise

ratio)と呼ばれる統計量を計算します.

1-1. パラメータ設計を活用する前に

エンジニアード・システム (パラメータ設計での物の見方)

システム (x1,

)

入力信号M 出力特性y

ノイズz1, z2, ・・・, zk y :システムの機能を表す出力

M :出力を変えるための入力信

x1,x2,・・・,xn : 設計パラメータ

z1,z2,・・・,zk : システムの機能を

システム

(x1,x2,…,xn)ノイズ

y

2-1-2

パラメータ設計の主な手順は以下の通りです.

1. テーマの分析

2. 目的機能の明確化(入力,出力)

3. 理想機能の定義(y = βM)

4. 計測特性は何か(信号因子とノイズの選択)

5. SN 比や感度を求める

6. 制御因子を決める

7. 直交表に制御因子を割り付けて、信号やノイズとの直積実験を行う

8. データ解析を行う(SN比や感度を計算)

9. 要因効果図を作成して最適条件と現行条件やベンチマーク条件を求める

10. 確認実験で,最適と現行の利得の再現性をチェックする,再現性が悪い場合は,特性値

やノイズ,制御因子の見直しをおこなう.

また,《許容差設計》の主な機能・制限は以下の通りとなります.

パラメータ設計は低コストの部品を使って,SN比で機能性の改善を行いますが,品質改善の目的は本

来コスト改善であるから,品質とコストのバランスを考えることが大切です.

許容差設計は「品質改善の成果をコスト改善に還元できる手法」とされます.

項目 概要

直交表 L12

L18

L36

わりつけ技法 ダミー法 2水準の因子を3水準の列にわりつける

組合せ法 2水準の因子を2つ組合せて3水準の列にわ

りつける

擬因子法(変身法) ある因子の水準によって別々な因子の組を実

験する

擬因子法(アソビ列法) 3水準,5水準,7水準などの因子を2水準系

の直交表にわりつけたり,7水準を3水準系に

わりつける

寄与率の表示 各要因の変動の寄与率を表示する

分散分析法 プーリング(自動) 入力された条件に基づいてプーリングを行う

プーリング(手動) 選択された要因をプーリングする

変動の分解 変動を一次効果と残り(二次効果)に分ける

欠測値の処理 欠測値の処理 逐次近似法により欠測値を推定する

参考文献:「パラメータ設計・応答曲面法・ロバスト最適化入門」:棟近雅彦監修,山田秀,立林和夫,

吉野睦著,日科技連出版社,2011年

「入門タグチメソッド」:立林和夫,日科技連出版社,2004年

1-1. パラメータ設計を活用する前に

2-1-3

品質工学

PART

第1章

1-2.パラメータ設計のための計画 2.1 パラメータ設計のための計画とは

■目的

「パラメータ設計のための計画」([手法選択]-[品質工学]--[パラメータ設計のための計画]では選択できるが,

パラメータ設計で利用できる実験計画表を印刷あるいはワークシート上に変数登録できる機能を有しています.

一方で,Excel 等で実験計画し,取得したデータ表をコピー&ペーストしたり,キーボードから入力し,パラメー

タ設計で解析できる機能を用意してあります.

ここでの手順は以下の通りです.

1.直交表の選択

2.内側因子(制御因子)の因子数と水準数,

3.わりつけの設定,

4.外側因子(信号因子,誤差因子)の水準数,繰り返し数の設定

5.パラメータ設計のための実験計画表の出力

6.ワークシートへの登録,あるいは印刷出力

をおこなえます.

本機能により出力された実験計画表は,実験を実施し,データ収集,そして,[パラメータ設計]で

解析をおこなうことができます.

ここで用意する実験計画表は,「パラメータ設計」(解析)で用意する実験計画表の種類と比べ少ないですが,

以下の直交表を用いて内側直交表の実験を計画することができます.

2水準系直交表 L8,L16,L32,L64

3水準系直交表 L9,L27,L81

混合系直交表 L12,L18,L36(3^13),L36(2^11×3^12)

また,多水準作成法,ダミー法により因子をわりつけることもできます(多水準作成法とダミー法を組み合わ

せることも可能です).

「実験の計画」の機能構成は下図のとおりです.

直交表の選択

因子・水準数

の設定

わりつけ 多水準の列指定

擬水準設定

外側因子の設定

多水準?

実験の計画

擬水準?

複数列にわりつけられた因子が存在

擬水準の設定が必要な因子が存在

ダイアログ

ウィンドウ

ランダマイズ

外側因子の設定

因子の設定

わりつけ

変数登録

手法メニュー

1-2. パラメータ設計のための計画

2-1-4

2.2 手法の選択

選択方法 [手法選択]-[品質工学]-[パラメータ設計のための計画]

2.3 パラメータ設計のための計画

ここでは,以下のような実験に対する計画表を出

力する場合を例にとり,操作手順を説明します.

取り上げる

因子

(水準数)

A(3水準),B(3水準),

C(3水準),

D(3水準),E(3水準)

わりつける

要因

A,B,C,D,E,A×B,A

×C,A×D

わりつける

直交表

L27

計測特性の種類 動特性

信号因子の

水準数

3(水準値:10,20,30)

誤差因子の

水準数

2

繰り返し数 1

2.3.1 直交表の選択

「直交表の選択」ダイアログで因子をわりつける直

交表を選択します.

直交表の種類を選択します.

選択された直交表の種類に含まれる直交表が

一覧表示されますが,パラメータ設計では通常,

混合型のL18を用いることが多くなります.

リスト上で使用する直交表を選択しクリック

します.

選択可能な直交表

2 水準系

直交表

L8,L16,L32,L64

3 水準系

直交表

L9,L27,L81

混 合 系

直交表

L12,L18,L36(3^13),L36(2^11×

3^12)

2.3.2 因子・水準の設定

「因子・水準の設定」ダイアログで,因子数,因子

記号,因子名,水準数,水準名の設定をおこないま

す.

①因子追加ボタン

因子を追加する場合はこのボタンを押します.

②因子リスト

左側のリストで選択されている因子の情報が

右側に表示されます.

因子を削除する場合は,リスト上で削除する因

子を選択後,このボタンを押します.

③因子記号・因子名

因子記号,因子名を設定します.

④水準数

水準数を設定します.

⑤水準名

水準名を変更したい水準を下のリストで選択

した後,「水準名」エディットボックスに変更後

の名称を入力します.

1-2. パラメータ設計のための計画

2-1-5

品質工学

PART

第1章

制限事項

No 項目 制限

1 追加可能な

因子数

1~min(選択した直交表列

数,26).

ただし,因子数が制限以内

であっても,各因子の水準

数の設定により選択されて

いる直交表にわりつけるこ

とができない場合は,[次

へ>]ボタンが押されたと

きにエラーが表示されま

す.

2 設定可能な

水準数

2 水準系直交表 ‥ 2~

min(直交表行数,24)

3 水準系直交表 ‥ 2~

min(直交表行数,24)

L12 ‥ 2

L18 ‥ 2~6

L36 ‥ 2~3

ただし,それぞれの因子の

水準数が制限以内であって

も,設定されている因子を

選択されている直交表にわ

りつけることができない場

合は,[次へ>]ボタンが

押されたときにエラーが表

示されます.

3 水準数の初

期値

2水準系直交表 ‥ 2

3水準系直交表 ‥ 3

L12 ‥ 2

L18 ‥ 3

L36 ‥ 3

4 因子記号

英文字1文字.

異なる因子には異なる記号

を割り当てて下さい.

5

因子名,水

準名の

初期値

因子名:因子記号+「因子」

(例:A因子)

水準名:因子記号+水準番

号(例:A1,A2)

2.3.3 わりつけ

「わりつけ」ダイアログで,「因子・水準の設定」ダ

イアログで設定した因子を「直交表の選択」ダイアロ

グで選択した直交表にわりつけます.

①列番号

わりつけをおこなう際に参考にするための成

分が表示されます.

②わりつけ

要因をわりつけます.

要因のわりつけは半角英文字でおこないます.

③因子(水準数)

「因子・水準の設定」ダイアログで設定した因

子が因子記号で表示されます.括弧内はその因子

の水準数を表します.

④線点図タブ

L16またはL32を選択した場合,線点図を標準

版と改良版から選択することができます.

⑤追加ボタン

このボタンを押すと異なる線点図が表示され

ます.

⑥線点図

わりつけをおこなう際に参考にするための線

点図が表示されます.

わりつけ方法

わりつけは因子記号(半角英文字)を用いておこ

ないます.例えば,A 因子(因子記号:A)の主効果

は「A」によりわりつけ,A 因子(因子記号:A)と B 因

子(因子記号:B)との交互作用は「AB」によりわりつ

けます.なお,誤差列は空白とします.

上図は,以下のように各要因をわりつけたことを

意味します.

要因 記号 わりつけた列

A因子の主効果 A 1列

B因子の主効果 B 2列

C因子の主効果 C 5列

D因子の主効果 D 8列

E因子の主効果 E 11列

A因子とB因子と

の交互作用

AB 3列,4列

A因子とC因子と AC 6列,7列

1-2. パラメータ設計のための計画

2-1-6

の交互作用

A因子とD因子と

の交互作用

AD 9列,10列

制限事項

No 項目 制限

1 成分の表

成分は,2 水準系直交表,3

水準系直交表に対してのみ

表示されます.

2 線点図の

表示

線点図は,以下の直交表に対

してのみ表示されます.

L8,L16,L32,L64,L9,L27,

L81

2.3.4 外側因子の設定

「外側因子の設定」ダイアログで,計測特性の種

類(動特性,静特性),信号因子の水準数(動特性

の場合のみ),誤差因子の水準数,繰り返し数,信

号因子の水準値(動特性の場合のみ)を設定しま

す.

なお,信号因子の水準値の入力は必須ではあり

ません.

① 特性値の種類

計測特性の種類を設定します.

②水準数

信号因子の水準数,誤差因子の水準数,繰り返

し数を設定します.

ただし,信号因子の水準数は動特性の場合のみ設

定することができます.

③信号因子の水準値

信号因子の水準値を入力します.

ただし,信号因子の水準値は動特性の場合のみ入

力することができます.

なお,信号因子の水準値の入力は必須ではありま

せん.

2.3.5 実験計画表の出力

以上の設定により,実験計画表が出力されます.

実験順序,直交表,実験特性値,わりつけ,信号

因子,誤差因子の,繰り返しの水準数,信号因子

の水準値が表示されます.

このパラメータ実験のための実験計画表を,ワー

クシートに変数登録することができます.

ワークシートへの出力1

ワークシートへの出力2

計画表における出力項目は以下のとおりです.

No 出力項

補足

1 実 験 順

ランダマイズすることが可能で

す.

2 各 因 子

の水準

各行が実験条件となります.制

御因子の水準が入力していま

す.

3

特 性 値

入 力 領

実験により得られた値を格納す

る領域です(ただし,本画面上

では値を入力することはできま

せん.計画表をワークシートに

登録し,ワークシート上で値を入

力して下さい).

なお,項目名の「M1N1R1」は,

信号因子の第 1 水準,誤差因子

の第1水準,繰り返しの1回目を

示します.

4 わ り つ

この情報は直交表のわりつけ

で,解析時に利用します.

5 水準数

上から,信号因子の水準数,誤

差因子の水準数,繰り返し数が

表示されます.

この情報は解析時に利用しま

す.

6

信 号 因

子 の 水

準値

この情報は解析時に利用しま

す.

ただし,計測特性が静特性の場

合はこの列は表示されません.

ランダマイズ

ツールボタン「ランダマイズ」により,実験順序

のランダマイズをおこなうことができます.

ツールボタン「ランダマイズ」を選択すると「ラン

1-2. パラメータ設計のための計画

2-1-7

品質工学

PART

第1章

ダマイズの指定」ダイアログが表示されますので,

「OK」ボタンを押します.

変数登録

メニュー「変数の登録」により,計画表をワーク

シートに登録することができます.

得られた計画表はワークシートに登録することを

お奨めします(ワークシートに登録せずに本画面を

閉じると,計画表は残りません).

2.4 多水準作成法、ダミー法

2.4.1 多水準作成法 2 水準系直交表,3 水準系直交表,L18 に以下の

ような因子をわりつける場合,多水準作成法によりわ

りつけをおこないます.

2 水準系直

交表

水準数が 2 より大きい因子をわ

りつける場合

3 水準系直

交表

L18

水準数が 3 より大きい因子をわ

りつける場合

このような場合,「実験の計画」では「多水準の列

指定」ダイアログが表示されますので,そのダイアロ

グ上で水準作成列を指定する必要があります.

例えば,L8 の 1 列,2 列,3 列を使用して 4 水準

の因子をわりつけ,水準作成列として 1 列,3 列を指

定した場合,以下のように 4 水準の列が作成されま

す.

1列 3列 4水準列

1 1 1

1 1 (1,1)→1 1

1 2 (1,2)→2 2

1 2 (2,1)→3 2

2 2 (2,2)→4 4

2 2 4

2 1 3

2 1 3

2.4.2 水準作成列の指定 「わりつけ」ダイアログにおいて多水準作成法によ

り因子がわりつけられた場合,「わりつけ」ダイアログ

の後に「多水準の列指定」ダイアログが表示されま

す.

「多水準の列指定」ダイアログでは,水準作成に

用いる列を指定します.

2.4.3 ダミー法

2 水準系直交表,3水準系直交表,L18,L36 に以

下のような因子をわりつける場合,擬水準を用いて

わりつけをおこないます.

2 水準系直

交表

水準数が 2n ではない因子をわり

つける場合

3 水準系直

交表

水準数が 3n ではない因子をわり

つける場合

L18 水準数が2,4,5である因子をわ

りつける場合

L36 3水準列に水準数が2である因子

をわりつける場合

このような場合,「実験の計画」では「擬水準設定」

ダイアログが表示されますので,そのダイアログ上

で擬水準の設定をおこなう必要があります.

2.4.4 擬水準の設定 「わりつけ」ダイアログ上で,ダミー法により因子が

わりつけられた場合,「わりつけ」ダイアログの後に

「擬水準設定」ダイアログが表示されます.

「擬水準設定」ダイアログでは,擬水準の設定を

おこないます.

水準作成に用いる列を

選択します(クリックし

ます).

「実験水準」列に,擬水

準設定後の水準番号を入

力します.

この例では第 3 水準を擬

水準とし,第 1 水準を重

複させています.

1-2. パラメータ設計のための計画

2-1-8

1-3.パラメータ設計 3.1 パラメータ設計とは

■目的

パラメータ設計は,劣化や使用環境条件の違いなどの影響が少なく,安定した品質が得られる設計上のパ

ラメータの水準値を求めることを目的としていますが,パラメータ設計では通常,次の 2 ステップで 適な条件

を求めます.

ステップ 1.誤差(ばらつき)を小さくするような設計上のパラメータを求める

ステップ 2.平均値を目標値にあわせるチューニング(調整)をおこなう

パラメータ設計では,ステップ 1 を実現するために,実験時には機能をばらつかせる原因である劣化や使用

環境条件の違いなどを誤差因子として積極的に取り上げ,解析時には SN 比(Signal to Noise ratio)を使用しま

す.

ここで,SN 比は,安定性を評価する測度であり,実験により得られたデータから計算されます.SN 比の計算

方法は,実験において扱う特性の種類(計測特性の種類)により異なりますが,どのような特性に対しても,望ま

しい状態の値が高くなるように定義されています.

パラメータ設計で扱う因子の種類は,SN 比を求めるための因子(信号因子,誤差因子)と SN 比の優劣を比

較する因子(制御因子)に大別されます.

制御因子,信号因子,誤差因子はそれぞれ以下の内容を持つ因子です.

制御因子 安定性の最良条件を選択するために取り上げる因子です.安定性を改善

するために取り上げる設計上,製造上の因子は全て制御因子となりま

す.

信号因子 出力を変化させる入力信号です.

誤差因子 ばらつきの原因になる内乱,外乱などすべての因子です.内乱とは,使

用部品が規格の中心から外れていたり,使用している間に劣化などによ

り本来持っている特性からずれたりすることです.また,外乱は使用環

境などです.

通常,制御因子は直交表にわりつけ,信号因子,誤差因子はその外側にわりつけて実験をおこないます.

本システムの解析手法「パラメータ設計」では,このような実験で得られたデータに対し,SN比・感度の計算,

要因効果図の表示,分散分析,推定,利得の計算などをおこなうことができます.

1-3. パラメータ設計

2-1-9

品質工学

PART

第1章

■機能構成

各機能別のシステム構成を以下に示します.

グループ タブ 備考

解析データ

実験データ

制御因子

誤差因子

データプロット 静特性(望目特性,望小特性,望大特性,機能窓

法)の場合のみ

信号因子 動特性の場合のみ

入出力図 動特性の場合のみ

SN 比・感度

計算過程

効果・推定

要因効果図

要因効果表

分散分析表

推定値・利得

チューニング

目標曲線

非線形の標準 SN 比の場合のみ

入出力図

係数の推定値

要因効果図

要因効果表

分散分析表

推定値・利得

パラメータ設計の機能構成図

パラメータ設計の主な手順は以下の通りです.

1.パラメータ設計条件の設定

内側計画表の種類

誤差因子のわりつけ

SN比・感度の設定

特性の種類とSN比の種類・オプション

信号因子の水準数・水準値の共通性

信号因子の水準値入力

2.解析データ(実験計画表)の入力,入出力図,計算過程の表示,パラメータの変更

3.要因効果図,特性値の推定,利得計算

なお,確認実験による再現性の確認は各自でおこなってください.

1-3. パラメータ設計

2-1-10

3.2 データ入力形式

(1)入力項目

「パラメータ」設計では,データ入力方法は3つあり

ます.

① キーボードを使って入力する.

② 本システムのワークシート上に既にあるデータ

表を取り込む.

③ Excel上のデータ表をコピー&ペーストする.

実験に必要な項目およびデータ表をご用意くだ

さい.なお,必須項目は「データの値」のみです.

入力

項目

変数

の型

変数の数

(列数)

サンプ

ル数(行

数)

実験

条件

質的

変数 ×

実験で取

り上げた

因子数

直交表

行数

デ ー

タ(特

性値)

量的

変数 ○

≪生デー

タの場合

信号因子

の水準数

×誤差因

子の水準

数×繰り

返し数

直交表

行数

≪SN 比の

場合≫

1~2(SN

比,感度)

わり

つけ

情報

サン

プル

× 1 直交表

列数

各因

子の

水準

量的

変数 × 1 3

信号

因子

の水

準値

量的

変数 × 1

信号因

子の水

準数

なお,実験条件およびデータ(特性値)は,直交

表の実験番号順に入力する必要があります.すな

わち,1 行目は実験番号1,2行目は実験番号2,‥,

となるように入力します.

(2)実験データの入力方法

① キーボード入力.

「解析データ」グループの「実験データ表」タブ

の画面上で,黄色く着色された部分に実験デ

ータを入力します.

なお,データは,実験番号,信号因子×誤差

因子×繰り返しなどの組合せを踏まえ,それら

の該当箇所に値を入力します.

② 本システムのワークシートから.

「実験データ表」タブのツールボタン「変数指

定」を押して,既にワークシート上にあるデータ

表(「パラメータ設計のための計画」で作成した

データ表も可)の変数を指定します.

③ Excel 上のデータ表から.

Excel のデータをコピーしてから,「実験データ

表」タブのツールボタン「データ貼付」をクリック

します. 温度上昇対策のためのパラメータ設計 ゼロ点比例式M=3(M1=5,M2=15,M3=25),N=2,内側の計画=L18M1 M2 M3

No. N1 N2 N1 N2 N1 N21 0.12 0.09 0.31 0.26 0.44 0.412 0.18 0.15 0.28 0.23 0.44 0.323 0.36 0.31 1.2 0.96 1.56 1.464 0.25 0.22 0.77 0.66 1.24 1.25 0.24 0.19 0.84 0.73 1.26 1.086 0.23 0.2 0.79 0.67 1.24 1.027 0.13 0.08 0.14 0.34 0.3 0.568 0.23 0.19 0.57 0.26 0.91 0.569 0.24 0.19 0.86 0.68 1.32 1.12

10 0.26 0.17 0.86 0.67 1.3 0.9811 0.06 0.04 0.23 0.28 0.37 0.2712 0.36 0.34 1.14 1.04 1.7 1.5813 0.21 0.12 0.77 0.6 1.18 1.0414 0.31 0.3 1.12 0.93 1.66 1.4215 0.1 0.04 0.33 0.24 0.56 0.4716 0.28 0.23 1.1 0.82 1.66 1.2417 0.27 0.23 0.83 0.72 1.3 1.0818 0.28 0.19 0.76 0.57 1.06 0.71

1-3. パラメータ設計

2-1-11

品質工学

PART

第1章

内側計画:直交表[L18(2^1×3^7)]列No 要因種類 因子名 第1水準 第2水準 第3水準

1 因子 遮へい板 なし あり2 因子 外装と吸気部の距離 20 40 603 因子 吸気部と熱源の距離 110 60 404 因子 開口部の高さ 30 15 05 因子 排気ダクトの高さ 30 15 06 因子 熱源上部の穴径 大 中 なし7 因子 熱源下部の穴径 なし 中 大8 因子 熱源と排気ダクトの距離 60 50 40

(参照:   「入門タグチメソッド」 第4章 「パラメータ設計,応答曲面法,ロバスト最適化入門」(日科技連出版社刊))

(3)実験条件の詳細説明

実験条件の各入力項目の入力方法は以下のとおり

です.

実験条件

実験で取り上げた因子の,各実験条件における

水準を質的変数に入力します.実験条件の入力は

必須ではありませんが,ワークシート上に実験条件

を入力し,解析時に「変数の指定」で実験条件を指

定すると,

変数名→因子名称,カテゴリ名→水準名称

となります.また,ダミー法により因子がわりつけられ

ている場合,ワークシートに入力された実験条件か

ら擬水準が自動的に設定されます(一度ワークシー

ト上に入力してしまえば,解析の度に因子名,水準

名の入力や擬水準の設定をせずにおこなうことがで

きます).

実験データ

≪元データの場合≫

実験の結果,得られたデータを量的変数に入力

します.

信号因子の水準を M1,‥,Mm,誤差因子の水

準を N1,‥,Nn,繰り返しを R1,‥,Rr とすると,列

に関するデータの入力順序は以下のようになりま

す.

M1 M2 ‥ Mm

N1 N2 ‥ Nn N

1

‥ N

n

‥ N

1

‥ N

n

R

1

‥ R

r

R

1

‥ R

r

‥ R

1

‥ R

r

R

1

‥ R

r

‥ R

1

‥ R

r

例えば,信号因子の水準数が 3(水準:M1,M2,

M3),誤差因子の水準数が 2(水準:N1,N2),繰り

返し数が 1 の実験において,実験 No.1 で以下のよ

うなデータが得られた場合,

信号因子

M1 M2 M3

誤差因

N1 400.5 799.6 1200.0

N2 425.2 850.3 1274.5

ワークシートの 1 行目に次のように入力します.

M1N1 M1N2 M2N1 M2N2 M3N1 M3N2

400.5 425.2 799.6 850.3 1200.0 1274.5

≪SN比データの場合≫

既に SN 比,感度に変換されているデータを基に

解析をおこなう場合は,SN比,感度をそれぞれ量的

変数に入力します(SN 比のみでも可).

わりつけ情報

直交表の列への各要因のわりつけをサンプル名

に入力します.わりつけ情報の入力は半角英文字で

おこないます(誤差列は空白とします).

わりつけの入力は必須ではありませんが,ワーク

シート上にわりつけを入力し,解析時に「変数の指

定」でわりつけ情報を指定すると,解析時のわりつ

け設定の手間を省くことができます(一度ワークシー

ト上に入力してしまえば,解析の度にわりつけの設

定を入力せずにすみます).

例えば,A 因子(因子記号:A),B 因子(因子記

号:B)を実験に取り上げ,A 因子の主効果,B 因子

の主効果,A 因子と B 因子の交互作用を L8 に以下

のようにわりつけた場合, 列番

号 1 2 3 4 5 6 7

わり

つけA B A×B 誤差 誤差 誤差 誤差

ワークシートの 1 つの変数(サンプル名)に以下のよ

うに入力します(交互作用は「AB」,誤差列は空白と

している入力していることにご注意下さい). わりつけ情報

A B AB

このように,A 因子(因子記号:A)の主効果であれ

ば「A」,A 因子(因子記号:A)と B 因子(因子記号:

B)の交互作用であれば「AB」(同様に,A×B×Cで

あれば「ABC」)を入力します.また,誤差列は空白

とします.

水準数

信号因子の水準数,誤差因子の水準数,繰り返し

数を量的変数に入力します.

入力は以下の順序でおこないます.

1 行目:信号因子の水準数(静特性の場合は「1」

を入力します)

2 行目:誤差因子の水準数

3 行目:繰り返し数

1-3. パラメータ設計

2-1-12

例えば,信号因子の水準数が 3,誤差因子の水

準数が 2,繰り返し数が 1 の場合,ワークシート上の

1 つの変数(量的変数)に以下のように入力します.

水準数

3

2

1

水準数の入力は必須ではありませんが,ワークシ

ート上に水準数を入力しておくことにより,解析時に

水準数をワークシートから取得することができます.

信号因子の水準値

信号因子の水準値を量的変数に入力します.

信号因子の水準値は,第 1 水準の値を 1 行目,

第 2 水準の値を 2 行目,‥,と入力します.

例えば,信号因子の水準数が3,水準値が10,20,

30の場合,ワークシート上の1つの変数(量的変数)

に以下のように入力します.

信号因子の水準値

10

20

30

信号因子の水準値の入力は必須ではありません

が,ワークシート上に信号因子の水準値を入力して

おくことにより,解析時に信号因子の水準値をワーク

シートから取得することができます.

≪参考:実験条件とわりつけ情報≫

ワークシート上に入力された「実験条件」および

「わりつけ情報」から,システムは以下の設定項目の

情報を得ることができます.

設定項目 実験条件 わりつけ情

主効果のわりつけ ○ ○

交互作用のわりつけ × ○

擬水準 ○ ×

因子名,水準名 ○ ×

因子記号 × ○

3.3 パラメータ設計

選 択

方法

[手法選択]-[品質工学]-[パラメー

タ設計]

3.3.1 パラメータ設計の条件設定

設計条件の入力は,「パラメータ設計の設定」画

面でおこないます.

1-3. パラメータ設計

2-1-13

品質工学

PART

第1章

ここでは,

① 内側因子の計画表設定

例:L18直交表(2^1×3^7)

② 誤差因子のわりつけ

例:誤差因子調合 2 水準

③ 特性の種類

例:動特性のゼロ点比例式

④ SN比・感度を選択

例:田口の SN 比

⑤ 信号因子の設定と水準値

例:水準数3で実験 No.によらず等しい

などの設定をおこないます.

なお,指定する項目の種類と選択肢などはリスト

ボックスより,目的の種類を選択してください.

主な設定項目と選択肢,特性の種類と設定項目

の対応については以下の通りです.

信号因子の入力例

1-3. パラメータ設計

2-1-14

1-3. パラメータ設計

2-1-15

品質工学

PART

第1章

3.3.2 解析データの入力

①タブ1:実験データ

パラメータ設計条件を入力すると,以下の実験デ

ータ入力シートが表示されます.画面右側のデータ

表が空白のままです.

この空白部分に①キーボード入力から あるいは

②変数の指定(ワークシート上の変数の取り込み)

③Excel表からのコピー&ペースト のいずれかの

方法で実験データを入力します.

実験データの入力前

実験データの入力後

この画面上には以下のツールボタンがあります.

データ貼付

Excel 表などの実験に収集されている実験デ

ータ表をそのままコピー&ペーストする場合に

用います.

該当するデータ表をコピーし,「データ貼付」

をクリックします.

変数の指定

ワークシート上のデータ表を変数ダイアログで

指定し,入力します

データクリア

実験データ表の数値をクリアする.

オプション

内側計画表や水準名称などを表示するかどうか

を変更することができる.

変数の登録

本画面のデータ表をワークシートへ登録する. 分析再設定

パラメータ設計の条件設定をやり直す. 水準名称・番号の変更表示

制御因子の水準名と番号の表示を切り替える.

1-3. パラメータ設計

2-1-16

② タブ2 制御因子

制御因子の名称,水準の変更などができます.

直交表の場合,同じ水準名を付けると擬水準とし

て扱われます.

③ タブ3 誤差因子

誤差因子の因子名,水準名を変更できます.

④ タブ4 信号因子

信号因子の因子名,水準値を変更することができ

ます.

⑤ タブ5 入出力図

実験番号ごとに,x軸を信号因子,y軸を観測され

た出力特性値としたグラフで,誤差因子・調合(水準

2)毎に回帰線が表示されます.

傾きが大きく,誤差因子の水準によって,ばらつ

きが小さく,傾きの違いが小さいことが求められます

(ゼロ点比例式:入力がゼロのとき出力がゼロになり,

信号因子の入力が増加する比例して出力があがっ

ていくことが理想である)

なお,通常はほとんどありませんが,下の例では

実験番号7のN1.N2の線の上下関係が他の実験

No.のそれと比べ,逆転しているので,原因調査を

含め注意する必要があるでしょう.

入出力図(凡例は誤差因子の水準)

⑥ タブ6 SN 比・感度

求められたSN比や感度の値を確認することができます.

1-3. パラメータ設計

2-1-17

品質工学

PART

第1章

⑦ タブ7 計算過程の出力

パラメータ設計でSN比や感度を求めるために必

要な統計量や途中の計算過程等を確認することが

できます.

補足:

基準点の設定方法

「入出力の関係式」として「基準点比例式」を選択

した場合,基準点(回帰直線が必ず通る点)を設定

する必要があります.

基準点の設定方法として 2 つの方法が用意されて

います.

設定

方法

内容

データ

から設

基準点とする信号因子の水準番号を

指定します.

指定された信号因子の水準の値と,

そこで得られたデータの平均値の組

が基準点となります.

例えば, ijky を信号因子の第i水

準,誤差因子の第j水準,繰り返し

のk回目で得られたデータとし,「基

準点とする信号因子の水準」として

第2水準(水準値M2)を指定した場

合,基準点は

kj jky

nrM , 2

1,2

となります(nは誤差因子の水準数,

rは繰り返し数).

値を入

基準点を値で指定します.

「基準点」が基準点のx座標,「出

力」が基準点のy座標となります.

3.3.3 効果・推定 「効果・推定」グループには,要因効果図,要因効

果表,分散分析表,推定値・利得のタブがあり,順に

選択できます.

「効果・推定」グループの全タブにツールボタン

「条件指定」があります.「条件指定」では, 適・現

行条件,推定使用,推定条件等を設定することがで

きます.

① タブ1 要因効果図

SN比と感度の要因効果図が表示され,画面上部

には, 適条件,現行条件,および利得におけるS

N比や感度が推定・表示されます.

ここで,要因効果図では,SN比の値や変化が大

きく,感度の値も大きい因子・水準を探します.

また,効果がやや小さい場合は,コスト上の制約

がなければSN比が高い水準を選択します.

ここでのSN比が大きい因子や水準が入出力関

係のノイズに対する強さをかえるパラメータであり,

感度は入出力の傾きを変えるパラメータと考えられ

ます.2段階設計によって動特性のパラメータを絞り

込みます.

本システムでは,現行条件および 適条件の水準

値がマーキングされてプロットされています. 例えば下記の要因効果図を見た場合,SN比の

向上に効果がある水準は,SN 比の値が大きい

A2B2C3D1E3F1G1H3 です.また,この,SN 比と感

度の要因効果図から, 適水準が相反する要因は

Dであることがわかります.

このDについては,感度が高くなる D3 にすると直

線性が悪くなり,ノイズに対しても弱くなることがわか

り,D1を選択することにしました.

また,画面上で 適条件,現行条件の変更を行う

ことができます.

要因効果図上で,該当するプロット点をクリックし,

それを 適水準にする,現行水準にするなどを指

定します.

1-3. パラメータ設計

2-1-18

感度の解析は,「外側因子の設定」として,特性値

の種類が,動特性,望目特性(静特性),SN 比デー

タの使用,などの場合に表示します. オプション

要因効果図の目盛,表示数,表示因子,装飾関

係(補助線など)の指定ができます.

② タブ2 要因効果表

要因効果図に表示されたSN比や感度の値が一

覧表示されます.

SN比と感度の表示切り替えは,画面上部のコン

ボボックスでおこないます.また,ツールボタン「条

件指定」で推定に使用する因子を変更することがで

きます.

③ タブ3 分散分析表

「分散分析表」を選択すると,その実験条件に

おける SN 比を求めるためにおこなった二乗和の

分解を,分散分析表の形式で表示します.

以下のツールボタンを指定することができます・

プーリング

分散分析表上で選択された要因をプーリングしま

す.

プーリングの解除

プーリングを解除し,初期状態に戻します.

プーリング方法

プーリングは,分散分析表上でプーリングした

い要因を選択してから(その要因の行をクリックし

ます),「プーリング」ボタンをクリックすることで,該

当する要因のばらつきを誤差にプーリングしま

す.

④ タブ4 推定値・利得

現行条件, 適条件,利得のSN比,感度を確

認することができます.

推定値・利得表で表示項目の変更,内側因子の

水準値の名称・番号変更を行うことができます.

ツールボタンには以下のアイコンがあります.

1-3. パラメータ設計

2-1-19

品質工学

PART

第1章

条件指定では

適・現行条件の確認

推定に使用する因子の指定

推定条件の設定

がおこなえます.

適・現行条件の確認・変更

適条件,現行条件の因子を確認,該当セルを

クリックすることで変更することができます.

推定に使用する要因指定

SN比や感度の推定に使用する因子・要因を指定

することができます.デフォルトは全ての因子です

が,「効果が大きい約半分の要因」 を選択すること

もできます.

一般の実験計画法では,分散分析表で有意な要

因を用いて,工程平均を推定することが多いですが,

タグチメソッドでは

① 実験した因子の中で効果が大きい方から半分

くらいの因子を使う

② 実験した全部の因子を使う

③ 分散分析表で検定有意な因子を使う

などが提唱されています.ここではこれらを実現す

ることができます.

推定条件の変更

推定条件を変更することができます.

ワンポイントアドバイス

<<確認実験による利得の再現性評価>>

タグメソッドでは,実験結果の再現性を非常に重

視しています.実験結果の再現性を確認するには,

適条件と参照条件(現行条件)でのSN比と感度

について,再現性をチェックします.

再現性が悪い場合には, 初に考えた理想機能

が間違っているか,あるいは,取り上げた制御因子

間に大きな交互作用が存在することが考えられるの

で,対策をとる必要があります.

また,利得の再現性については,推定利得の±3

db 以内が目安と言われていますが,この 3db は真

値で約2倍の差があることを意味しています.ただ,

利得の再現性については,実際の効果の大きさに

対する実用上の価値の大きさで判断すべきだとも言

われています.

3.3.4 チューニング

入力と出力の関係が直線的であることが前提でし

たが,目標線が非線形である場合は動特性の標準

SN比を扱います.

特性に標準SN比を用いる場合に「チューニン

グ」タブが表示されます.主な機能は「効果・推定」と

同様です.

まず,2段階設計の第1段階でおこなうロバスト設

計においては標準SN比を用います.

目標線に近づけることを狙わすに,ノイズの影響

が 小となるパラメータ値を決めます.

「効果・推定」タブの要因効果図で,SN比が 大

となる 適条件を探します.

次に,2段階設計の第2段階でおこなう目標曲線

へのチューニングをおこないます.

特性の種類として,動特性の標準SN比を用いる

場合,まず,パラメータ設計の設定で,標準条件の

設定をおこないます.

1-3. パラメータ設計

2-1-20

目標値の設定

チューニングでは信号因子の水準値に対して,

それぞれの目標線を設定します.

入出力図

ここでは,標準条件と目標条件について各実験

No.ごとに,信号因子,観測された出力特性の折れ

線グラフが表示されます.標準条件と目標条件のズ

レを確認できます.

係数の推定値

算出された係数β1,β2,SN 比を確認することがで

きます.

係数β1は,目標値と標準条件の出力値との間に

直線を当てはめたときの傾きの大きさを表して

います.

係数β2は,標準条件の出力値の,目標値に対

する直線関係からの 2 次的なずれの大きさを表しま

す.

要因効果図

適条件,現行条件,利得について,係数β1,

係数β2,SN 比を推定し,グラフを示します.

要因効果図から,制御因子ごとに SN 比,β1の

大きな水準,2次項係数β2が0に近い水準などか

ら選定し, 適条件を判断します.

もし,SN 比の 適水準とβ1,2次項定数β2の

適水準が大きく異なった場合には,ばらつきと直線

の歪みのどちらを重視するかで 適条件を選ぶこと

になります.

そして. 適条件が本当に再現するかどうかの確

認は利得の推定,確認実験を行い,推定利得は±

3db 以内を目安にします.利得が再現しなかった場

合は,実験は失敗したと判断されるので.基本機能

の考え方が間違っていなかったか,選んだ因子以

外に影響の大きな因子がないかどうか.実験にばら

つきがあるなどが考えられます.

参考文献:

「実践タグチメソッド」:渡部義晴編著

鷺谷武明ほか,日科技連出版社,2006年

1-3. パラメータ設計

2-1-21

品質工学

PART

第1章

1-4.許容差解析 4.1 許容差解析とは

■目的

許容差設計では各工程の作業条件やバラツキ原因について,それらの許容範囲を推定するため,誤差要

因の動特性への影響の大きさを把握します.

許容差設計がパラメータ設計と異なるのは,誤差要因自身で狭い範囲にコントロールしようとするものであり,

コストの上昇を招く可能性があるところです.

したがって,品質設計の対策としてはできるだけパラメータ設計で解決すべきですが,十分でないときには,

許容差解析で影響の大きい因子には狭い公差と許容範囲を与える必要があります.ただ,この場合,ばらつきに

よる損失の評価が大切となります.

■データ入力形式

解析に使用する変数は以下のとおりです.

・実験条件(質的変数) … 実験に取り上げた因子数分(必須ではない)

・特性値(量的変数) … 1 つ(必須)

データは直交表の行番号に関して昇順(実験番号順)に 1 行目から入力されているものとします.

(1)実験条件 取り上げた因子の各実験条件における水準を質的変数として以下のように入力します.

因子A 因子B 因子C 因子D 因子E 因子F 因子G 因子H

1 1 1 1 1 1 1 1

2 2 2 2 2 2 2 2

- 3 3 3 3 3 3 3

ただし,実験条件の入力は必須ではありません.なお,制限はパラメータ設計の場合と同様です.

実験条件が入力された場合,実験条件のサンプル数から直交表を特定し,条件から変数と直交表の列との

対応を判断しています.

そのため以下の制限条件(下記に該当しない場合はエラーとする)が必要です.

1)実験条件のサンプル数は全て等しくなければならず,12,18 もしくは 36 であること

2)実験条件は選択された直交表いずれかの列と合致すること(重複は不可,欠測も不可)

(2)特性値の入力

特性値の変数属性は量的変数で縦一列にデータを入力します.

N2

特性値

21.3

18.9

1-4. 許容差解析

2-1-22

4.2 手法の選択

選択方法 [手法選択]-[品質工学]-[許容差解析]

4.3 許容差解析

4.3.1 変数の指定

変数指定は許容差解析をおこなうための特性値1

つと実験条件(質的変数:静特性では外側因子,動

特性では信号因子)あるいはわりつけ情報(サンプ

ル)を指定します.

変数指定における制限は以下の通りです.

≪L12≫

サンプル名 : 0~1(わりつけ情報の入力が可能)

量的変数 : 1(特性値)

質的変数 : 0~11(実験条件:実験で取り上げ

た因子数分)

≪L18≫

サンプル名 : 0~1(わりつけ情報の入力が可能)

量的変数 : 1(特性値)

質的変数 : 0~8(実験条件:実験で取り上げた

因子数分)

≪L36≫

サンプル名 : 0~1(わりつけ情報の入力が可能)

量的変数 : 1(特性値)

質的変数 : 0~13(実験条件:実験で取り上げ

た因子数分)

4.3.2 直交表の選択

変数選択において質的変数(実験条件:外側

因子や信号因子)を選択しない場合には次に直交

表ダイアログが表示されます.

L12,L18,L36の中から直交表のタイプのボタ

ンをクリックします.

4.3.3 目標値の入力

目標値の入力有無を設定します.

4.3.4 わりつけの設定

外側因子の設定や動特性の場合に信号因子の

設定(質的変数の指定)を行うと,わりつけの画面

が表示されます.要因名の列に実際の因子名を入

力します.ただし,記号,わりつけ技法,水準のフ

ィールドの変更も可能です.ただし,列番に要因

名が入力されていない列は誤差列とみなされま

す.

<L18,L36の例>

[戻る]をクリックすると,一つ前の画面に戻ります.

SN 比が入力されている場合

→ 「直交表選択」ダイアログ

静特性の場合→ 「外側因子設定」ダイアログ

動特性の場合→ 「信号因子設定」ダイアログ

通常はわりつけ技法はすべて「なし」となっており,

1-4. 許容差解析

2-1-23

品質工学

PART

第1章

そのまま適用されます.水準数 2 の場合はこれを変

更できませんが,水準数が3の場合には,わりつけ

技法を「ダミー法」に変更することができます.

(1)「わりつけ技法」列の変更について

水準数が「3」である要因の「わりつけ技法」列上

でクリックすると,グリッドの表示内容が「なし」←→

「ダミー法」と入れ替ります.

なお,「ダミー法」が選択された場合,「水準数」は

自動的に「2」となります.

(2)ダミー法における「水準」列の設定

ある行に「わりつけ技法」の「ダミー法」が表示さ

れる場合「水準」列をクリックして水準の組み合せ

を変更します.「水準」列でクリックすると,表示内容

「(1,1,2)」→「(1,2,1)」→「(2,1,1)」→「(1,2,2)」→

「(2,1,2)」→「(2,2,1)」

の順で入れ替りますので,適当な組み合せをえら

びます.

なお,「わりつけ技法」列に「なし」が表示されて

いる場合は「水準」列は常に「空白」が表示されま

す.

(3)「記号」列

初期値A,B,C…で,変更は可能ですが,実際

の解決では使用されません.

<L12>の例

わりつけ技法はありません.

4.3.5 逐次近似法の設定

欠測値がある場合に,逐次近似法の設定ダイアロ

グが表示され,欠測値の近似計算を実行します.

なお,SN 比(もしくは感度)に欠測値がある場合,

右図のようなダイアログを表示し逐次近似法による

欠測値の推定を行なうかどうかの確認を行ないま

す.

4.3.6 許容差解析

実験した条件を設定すると,分散分析表を表示し

ます.

ここでは,要因のプーリングと解除,目標値の再入

力,水準値入力,変動の分解,分解の解除,初期化

(分散分析表を初期状態に戻す),オプション設定

などをおこなうことができます.

①要因のプーリング (有意な要因を識別)

②水準値入力 (3水準の場合のみ)

③変動の分解

ツールボタン 目標値入力 目標値入力ダイアログ

を表示する

プーリング 選択された要因のプ

ーリングを行う

プーリングの解除 プーリングを解除する

水準値の入力 要因の水準値を入力

する

変動の分解 選択された要因を「1

次効果」+「2次効果」

に分ける

分解の解除 変動が分解された要

因を元に戻す

要因名の設定 分解後の要因名の設

オプション オプションダイアログ

の表示

また,変動の分解及び分解の解除の手順は以下

の通りです.

要因の変動を1次効果と2次効果にわけて,その

大きさをみることができます.

1-4. 許容差解析

2-1-24

≪変動の分解の手順≫

本システムでは,分解の解除では,次のダイアログが表示されます.

メニュー「変動の分解」を選択 分解する要因の選

択ダイアログ

選択された要因の

変動を分解する

何もせず分散分析

表へ戻る

キャンセル

要因の

選択

No

Yes

メニュー「分解の

解除」を選択

分解を解除する要

因の選択ダイアロ

選択された要因の

分解を解除

何もせず分散分

析表へ戻る

キャンセル

要因の

選択

No

Yes

分解され何もせず分散分

析表へ戻る

Yes

No

1-4. 許容差解析

2-1-25

品質工学

PART

第1章

分解後の要因名指定ダイアログ

分解を解除する要因選択ダイアログ

変動の分解後の分散分析表

分散分析表におけるオプション設定

P値の表示 初期値はチェックあり

検定結果 初期値はチェックあり

寄与率 初期値はチェックあり

要因m 初期値はチェックあり

チェックがはずされた

場合,一般平均は修

正項 CF として取り扱

います.

1-4. 許容差解析