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2013 Microchip Technology Inc. DS01470A_JP - p.1 AN1470 概要 PIC16F150x が内蔵する CLC( 構成可能なロジックセ ) NCO ( 数値制御オシレータ ) を使うと、マンチェ スタ デコーダを構築できます。PIC16F150x は、低消 費電力XLP技術に対応したエンハンストコアを実装し たデバイスです。デコーダはファームウェアのサポー トをほとんど必要としないため、モジュールの初期化 後に必要な CPU サイクルはごくわずかです。データ とクロックを内部 SPI モジュールに供給し、最大 500 kbps でデータをキャプチャできます。 はじめに マンチェスタ エンコードは通信およびデータスト レージ アプリケーションで幅広く使われています。広 く採用されている理由は、その単純さと同期が取りや すいというメリットです。全てのビットで少なくとも 1 回は遷移が保証されているため、受信デバイスはク ロックとデータを復元できます。この方式は DC 成分 がゼロのため、誘導性または静電容量性の結合が可能 です。一般的なアプリケーションでは、データ送信に 使うマンチェスタ エンコーダと、受信に使うデコーダ が必要です。本書では、PIC16F が搭載する NCO CLC 周辺機能をマンチェスタ デコーダとして使う方 法を示します。従来のアルゴリズムでは CPU 時間を 使い過ぎて、アプリケーションの他のニーズに応える ための CPU 時間がほとんど残らない事もありました。 以下に示す手法では、 CPU クロックから独立して動作 するモジュールを使うとともに CPU 使用率がゼロで あるため、データのエンコード / デコードがアプリケー ションの処理を阻害しません。 エンコードの規格に応じて、データはビット期間の前 半または後半に得られます。業界で使われているマン チェスタ エンコード信号には 2 つの規格があります。 G.E. Thomas 方式マンチェスタ エンコード信号 ( 1) では、「0 」を Low から High への遷移、「1」を High から Low への遷移によって送信します。 1: マンチェスタ エンコードデータ (G.E. Thomas 方式 ) IEEE 802.3 準拠のマンチェスタ エンコード信号 ( 2) は、 G.E. Thomas 方式とは逆に「0 」を High から Low への遷移によって送信します。 2: マンチェスタ エンコードデータ (IEEE 802.3 準拠 ) 著者 : Jatinder Gharoo Brian Bailey Microchip Technology Inc. CLC NCO を使ったマンチェスタ デコーダ 注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。最新情報は必ずオリジ ナルの英語版をご参照願います。

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AN1470CLC と NCO を使ったマンチェスタ デコーダ

注意 : この日本語版文書は参考資料としてご利用ください。最新情報は必ずオリジナルの英語版をご参照願います。

概要

PIC16F150x が内蔵する CLC( 構成可能なロジックセル )とNCO (数値制御オシレータ )を使うと、マンチェスタ デコーダを構築できます。PIC16F150x は、低消費電力XLP技術に対応したエンハンストコアを実装したデバイスです。デコーダはファームウェアのサポートをほとんど必要としないため、モジュールの初期化後に必要な CPU サイクルはごくわずかです。データとクロックを内部 SPI モジュールに供給し、最大 500kbps でデータをキャプチャできます。

はじめに

マンチェスタ エンコードは通信およびデータストレージ アプリケーションで幅広く使われています。広く採用されている理由は、その単純さと同期が取りやすいというメリットです。全てのビットで少なくとも

1 回は遷移が保証されているため、受信デバイスはクロックとデータを復元できます。この方式は DC 成分がゼロのため、誘導性または静電容量性の結合が可能です。一般的なアプリケーションでは、データ送信に使うマンチェスタ エンコーダと、受信に使うデコーダが必要です。本書では、PIC16F が搭載する NCO とCLC 周辺機能をマンチェスタ デコーダとして使う方法を示します。従来のアルゴリズムでは CPU 時間を使い過ぎて、アプリケーションの他のニーズに応えるためのCPU 時間がほとんど残らない事もありました。以下に示す手法では、CPU クロックから独立して動作するモジュールを使うとともに CPU 使用率がゼロであるため、データのエンコード /デコードがアプリケーションの処理を阻害しません。

エンコードの規格に応じて、データはビット期間の前半または後半に得られます。業界で使われているマンチェスタ エンコード信号には 2 つの規格があります。G.E. Thomas 方式マンチェスタ エンコード信号 ( 図 1)では、「0 」を Low から High への遷移、「1」を Highから Low への遷移によって送信します。

図 1: マンチェスタ エンコードデータ (G.E. Thomas 方式 )

IEEE 802.3準拠のマンチェスタ エンコード信号 (図2)は、G.E. Thomas 方式とは逆に「0 」を High から Lowへの遷移によって送信します。

図 2: マンチェスタ エンコードデータ (IEEE 802.3 準拠 )

著者 : Jatinder GharooBrian BaileyMicrochip Technology Inc.

2013 Microchip Technology Inc. DS01470A_JP - p.1

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AN1470

構成可能なロジックセル

ここではPIC16F150xマイクロコントローラのCLCモジュールを使ったマンチェスタ デコーダの実装について説明します。構成可能なロジックセル (CLC) は、CPU 実行の制約を受けずに動作する、プログラマブルロジックを提供します。CLC を使うと、選択可能な単一出力ロジック機能を駆動する構成可能なゲートによって、他の周辺モジュール、入力ピン、レジスタビットからの信号を多重化できます。各 CLC モジュールの出力は、チップ内部で周辺モジュール、他の CLC モジュール、出力ピンに接続できます。以下の 8 つをはじめ、各種ロジック機能を構成できます。

• AND-OR

• OR-XOR

• AND

• S-R ラッチ

• セット / リセット付き D フリップフロップ

• リセット付き D フリップフロップ

• リセット付き J-K フリップフロップ

• セット / リセット付き透過ラッチ

図 3 にロジック機能を示します。各ロジック機能は 4入力 1 出力です。4 つの入力は、前段の 4 つのデータゲート出力です。

CLC コンフィグレーション ツール

CLC は、あらかじめプログラムしておく事も動的に構成する事もできる、複数の組み合わせおよび順序回路を収めた周辺機能です。柔軟性が高くパワフルな反面、構成と設定は複雑です。マイクロチップ社が提供するCLC コンフィグレーション ツールを使うと、モジュールの設定が簡単です。未接続の入力があるゲートは全てロジック0として読み出される事に注意してください。ゲートまたはラッチへロジック「1」を入力するには、

「0」を反転します。ツールのスクリーンショットは「補遺 A」 を参照してください。

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AN1470

図 3: CLC 機能

lcxg1

lcxg2

lcxg3

lcxg4

lcxq

lcxg1

lcxg2

lcxg3

lcxg4

lcxq

lcxg1

lcxg2

lcxg3

lcxg4

lcxq

S

R

Qlcxg1

lcxg2

lcxg3

lcxg4

lcxq

D Q

lcxg1

lcxg2

lcxg3

lcxg4

lcxqS

R

J Qlcxg2

lcxg3

lcxg4

lcxq

R

lcxg1

K

D Q

lcxg1

lcxg2

lcxg3

lcxg4

lcxqS

R

D Q

lcxg1

lcxg3

lcxq

R

lcxg4

lcxg2

LCxMODE<2:0>= 000

LCxMODE<2:0>= 010

LCxMODE<2:0>= 001

LCxMODE<2:0>= 011

LCxMODE<2:0>= 100

LCxMODE<2:0>= 110

LCxMODE<2:0>= 101

LCxMODE<2:0>= 111

LE

AND - OR OR - XOR

4-Input AND S-R Latch

1-Input D Flip-Flop with S and R 2-Input D Flip-Flop with R

1-Input Transparent Latch with S and RJ-K Flip-Flop with R

2013 Microchip Technology Inc. DS01470A_JP - p.3

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数値制御オシレータ (NCO)

図 4 に示す NCO モジュールは、16 ビット インクリメント レジスタを使って 20 ビット アキュムレータに加算し、入力周波数を分周するタイマです。NCO が最も効果を発揮するのは、固定デューティ サイクルで周波数精度と高分解能が必要なアプリケーションです。NCO には以下の特長があります。

• 16 ビット インクリメント機能

• 固定デューティ サイクル (FDC) モード

• パルス周波数 (PF) モード

• 出力パルス幅制御

• 複数のクロック入力源

• 出力の極性制御

• 割り込み機能

図 4: NCO のモジュール図

NCO の重要な特長の 1 つとして、アキュムレータがオーバーフローするごとにパルス出力を生成する機能があります。出力は指定されたクロック期間アクティブになります。クロック期間が終了すると、出力は非アクティブ状態に戻ります。

NxEN

LC1OUT

HFINTOSC

NCO1CLK

2

NxCKS<2:0>

(1)

FOSC

10

00

01

11

Increment

Buffer

AccumulatorOverflow

NCOx Clock

D Q

Q

S Q

Q

Overflow

R

NCOxOUT

16

20

20

Interrupt eventSet NCOxIF flag

NxPOL

NCOx Clock

0

1

NxPFM

To CLC, CWG

Ripple CounterReset

NxPWS<2:0>3

16

NCOx

NxOE

TRIS Control

Note 1: インクリメント レジスタは、最初に NCOx モジュールを無効化しなくとも値を変更できるように、ダブルバッファ構成を採用しています。ここでは参考のために示しています。このバッファにはユーザはアクセスできません。

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マンチェスタ デコーダ

このセクション以降で説明する手法は、図 1 に示したG.E. Thomas方式のマンチェスタ エンコードに基づくものです。この方法は柔軟であり、IEEE 802.3 に簡単に移植できます。最初の遷移に対しては、モジュールのアイドル状態、マイクロコントローラ ピンの電源投入時設定、最初の受信ビット ( エンコード方法に応じた遷移 ) に基づいて、複数の実装方法があり、検討が必要です。起動時とアイドル時の状態は、セクション「同期」で説明します。CLC モジュールは非常に柔軟

であり、各モジュールの入出力極性を個別に反転する事で、多様なシナリオに適用できます。NCO モジュールのアイドル状態もソフトウェアで制御できます。以下に説明する方法は、データが各ビット期間の前半で得られる事を前提としています。

G.E. Thomas 方式でエンコードされた以下のビットストリームを例として取り上げます ( 図 5)。

この信号は、図 6 に示すようにクロックラインとデータラインにデコードされます。

図 5: エンコードされたビットストリーム

図 6: データラインとクロックライン

このビットストリームで注目すべき点は2つあります。ビット値が各ビット期間の前半、ビット中間遷移より前に存在する事と、各ビット期間の中間で遷移が発生する事です。このビット中間遷移によって NCO をト

リガし、3/4 ビット期間を使ってオーバーフローさせる事で次のビット値をキャプチャできます ( 図 7)。この 3/4 ビット期間によって、最大± 1/4 ビット期間の誤差が許容されます。

図 7: データキャプチャ

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この構成からクロックを抽出するには、OR-XOR コンフィグレーションのCLCモジュールを使います(図8)。

図 8: クロックの抽出

これは実質的にはCLC OR-XORをクロック、D をデータとするマンチェスタ デコーダです。D からのデータキャプチャにクロック信号の立ち上がりエッジを使え

ば全てのビットがデコードされますが、最初の 1 ビットだけはデコードされません。この問題を解決できる方法は何通りかあり、セクション「同期」で説明します。

図 9: マンチェスタ デコーダ

上記のタイミング図 ( 図 9) は、以下のモジュール図 ( 図 10) の回路でデコードできます。この図では以下の 5 段を示します。

• 第 1 段 - 受信マンチェスタ信号

• 第 2 段 - NCO がトリガされた時に入力データをキャプチャする D フリップフロップ

• 第3段 - NCOの起動タイミングを与えるXORゲート

• 第 4 段 - NCO にクロックを供給し、3/4 ビット期間の全期間確実にクロッキングされるようにするAND-ORゲート

• 第 5 段 - 前ビットのビット中間遷移時に起動し、3/4ビット期間を生成する NCO

DS01470A_JP - p.6 2013 Microchip Technology Inc.

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図 10: デコーダ全体のモジュール図

PIC16F1509 への実装

PIC16F1509 への実装方法を説明します。特定のビット期間を生成する NCO と、組み合わせロジックを実装するための 4 つの CLC モジュールを内蔵しています。以下のセクションでは、このデバイスが内蔵するリソースを用いたこれらのモジュールの実装について説明します。

第 1 段 - D フリップフロップ (CLC4)

この段はクロック信号の立ち下がりエッジでマンチェスタ データをラッチします。この出力はマイクロコントローラに供給される復元データです。デコードされたデータはクロックの立ち下りエッジでサンプリングされていますが、クロックの立ち上がりエッジで安定して読み出す事ができます。データラインはクロックの立ち上がりエッジでは決して変化しないためです。

第 2 段 - XOR ゲート (CLC2)

マンチェスタ エンコードでは各ビットの中央での遷移が保証されているため、XOR ゲートによって、ビット中間遷移ごとに第 3 段で使う立ち上がりエッジを確保できます。これは、デコーダを各ビットの中央で同期させている事を意味します。

第 3 段 - NCO + AND-OR (CLC1)

PIC16F1509 はデータ値をキャプチャするための 3/4ビット期間の生成に使う NCO モジュールを内蔵しています。NCO は 3/4 ビット期間が経過した時点でパルスを出力するために、アクティブ Low のパルス周波数モードで使います。パルス幅は特殊機能レジスタで制御します。このモジュールには指定されたクロック速度でアキュムレータに一定の値を繰り返し加算するためのクロック源も必要です。これは CLC1 から供給されます。

これら 2 つのモジュールはデコーダ内で最も重要な要素です。これらは第 2 段から出力される立ち上がりエッジごとに固定長のパルスを生成します。第 2 段の出力が 0 に遷移した場合もオーバーフローするまでNCO がクロッキングを継続するように、NCO の出力を AND-OR ゲートに戻します。

デバイスは構成される際に、3/4 ビット長のパルスを 1つ出力します。これは、NCO をアクティブ Low 状態に移行させるために必要です。NCO はアクティブになると NCOCLK レジスタで設定された出力パルス幅クロックを待機します *。クロック源が供給された時点でアクティブパルスを終了し、カウントを再開します。

* 設計のヒント : NCO をクロック源から切り離してアクティブ状態に保持すると、NCO のデューティ サイクルを制御できます。

CLC4 CLC2 CLC1

Data InD

S

Q1

R

CLKNCO

OUT

Data Out

FOSC

Clock Out

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図 11 に、25 kHz のマンチェスタ データ入力の例を示します。25 kHz の場合のビット期間は 40 s です。これは、データをキャプチャし、NCO クロックを抽出さ

れるクロックの立ち上がりエッジに同期させるために、3/4 ビット期間として 30 s を生成する必要がある事を意味します。

図 11: ビットタイミング

NCO を構成するには、マイクロチップ社ウェブサイトに掲載しているPIC16F1509のデータシートの式25-1を参照してください。

式 1:

NCO はパルス周波数モードで使います。このモードでは、アキュムレータがオーバーフローするたびに、あらかじめ設定されたクロック周期数の間出力がアクティブになります。NCO をアクティブ (Low) 状態に保持するには、これらのクロックを NCO から切り離す事を忘れないでください。その後、クロックは次のパルスに加えられます。

16 MHz Internal Clock Fosc * Increment Value

220--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------=Foverflow

NCO Clock Frequency * Increment Value2n

------------------------------------------------------------------------------------------------------=

30us pulse 33.33 kHz =16 MHz * Increment Value

220------------------------------------------------------------------ Increment Value 2184 0x0888===

n = アキュムレータの幅 ( ビット )

DS01470A_JP - p.8 2013 Microchip Technology Inc.

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同期

ここまでの説明では、最初のエッジがビット中間遷移である事を前提としていました。問題は、最初のビット中間遷移から 3/4 ビット長が経過した時点では、既にデータの最初のビットを捉え損ねている事です。この問題には複数の解決方法があります。

まず最も簡単なのは、最初のビットが既知であるデータを受信する方法です。データを読み出した後で、このビットをマスクするだけで済みます。

もう 1 つは、最初にスタートビットを送信する方法です。スタートビットは、最初のビットが送信される1/2 ビット長前に発生させ、残りのデータがビット中間遷移に同期できるようにする必要があります。エンコードされたデータラインを既定値の状態に戻すために、ストップビットが必要になる場合があります。図12 に、デコーダ内の各段の波形タイミングを再度示します。スタートビットとストップビットがあるため、最初と最後のクロックにはデータが含まれません。ソフトウェア フィルタによって取り除く必要があります。これは、状態変化割り込み ( スタートビットでトリガ )機能を使ってからSPIまたはUARTに入力する事で実現できます。または Bit-Bang を使っても簡単です。

図 12: マンチェスタ デコーダ タイミング チャート

2013 Microchip Technology Inc. DS01470A_JP - p.9

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ハードウェア アプリケーション

CLC モジュールには各種入出力があります。図 13 に、デコーダを適切に動作させるために、3 つのモジュールをどのように接続するかを示します。

図 13: 外部ピン接続を含むモジュール図

まとめ

本書では CLC モジュールを使ったマンチェスタ デコーダの実装方法を説明しました。選択した実装方法では、NCO と 3 つの CLC モジュールを使いました。シリアルデータとクロックはデータ復元のために SPIモジュールまたは UART に供給するか、必要に応じてBit-Bang を使えます。選択した実装方法では、マンチェスタ デコードはごくわずかな CPU サイクルしか使わないため、他のタスクの処理が阻害される事はありません。バイトとバイトの間はデバイスをスリープに保持する事で省電力が可能です。

CLCモジュールを効率的に使えるアプリケーションは他にも数多く存在します。マンチェスタ エンコードおよび デコ ード はそ れら の一 例に 過ぎ ませ ん。PIC16F1509 上のエンハンスト ミッドレンジ 8 ビットコアは、マイクロチップ社の超低消費電力 XLP 技術を採用し、幅広いアプリケーションに適しています。

DS01470A_JP - p.10 2013 Microchip Technology Inc.

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参考文献

Wikipedia: http://en.wikipedia.org/wiki/Manchester_code

デバイス データシート : http://www.microchip.com/wwwproducts/Devices.aspx?dDocName=en553474

2013 Microchip Technology Inc. DS01470A_JP - p.11

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補遺 A

図 14: CLC 1 (AND-OR)

図 15: CLC 2 (D フリップフロップ )

DS01470A_JP - p.12 2013 Microchip Technology Inc.

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図 16: CLC4 (D フリップフロップ )

2013 Microchip Technology Inc. DS01470A_JP - p.13

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図 17: デコードされたデータ

DS01470A_JP - p.14 2013 Microchip Technology Inc.

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マイクロチップ社製デバイスのコード保護機能に関して以下の点にご注意ください。

• マイクロチップ社製品は、該当するマイクロチップ社データシートに記載の仕様を満たしています。

• マイクロチップ社では、通常の条件ならびに仕様に従って使用した場合、マイクロチップ社製品のセキュリティ レベルは、

現在市場に流通している同種製品の中でも最も高度であると考えています。

• しかし、コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在する事もまた事実です。弊社の理解では、こうした手法

はマイクロチップ社データシートにある動作仕様書以外の方法でマイクロチップ社製品を使用する事になります。このような

行為は知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。

• マイクロチップ社は、コードの保全性に懸念を抱いているお客様と連携し、対応策に取り組んでいきます。

• マイクロチップ社を含む全ての半導体メーカーで、自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はありません。コー

ド保護機能とは、マイクロチップ社が製品を「解読不能」として保証するものではありません。

コード保護機能は常に進歩しています。マイクロチップ社では、常に製品のコード保護機能の改善に取り組んでいます。マイクロ

チップ社のコード保護機能の侵害は、デジタル ミレニアム著作権法に違反します。そのような行為によってソフトウェアまたはそ

の他の著作物に不正なアクセスを受けた場合、デジタル ミレニアム著作権法の定めるところにより損害賠償訴訟を起こす権利があ

ります。

本書に記載されているデバイス アプリケーション等に関する

情報は、ユーザの便宜のためにのみ提供されているものであ

り、更新によって無効とされる事があります。お客様のアプ

リケーションが仕様を満たす事を保証する責任は、お客様に

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その他、本書に記載されている商標は各社に帰属します。

© 2013, Microchip Technology Incorporated, All Rights Reserved.

ISBN: 978-1-62077-099-3

DS01470A_JP - p.15

マイクロチップ社では、Chandler および Tempe ( アリゾナ州 )、Gresham ( オレゴン州 ) の本部、設計部およびウェハー製造工場そしてカリフォルニア州とインドのデザインセンターが ISO/TS-16949:2009 認証を取得しています。マイクロチップ社の品質システム プロセスおよび手順は、PIC® MCU および dsPIC® DSC、KEELOQ® コード ホッピング デバイス、シリアル EEPROM、マイクロペリフェラル、不揮発性メモリ、アナログ製品に採用されています。さらに、開発システムの設計と製造に関するマイクロチップ社の品質システムはISO 9001:2000 認証を取得しています。

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