恌必璘璦研究の動向と今後の展望 -徢理社会瓜側面 …...- 213 -...

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- 213 - の動向と今後の展望 -理会側面に焦点を当てて― 東京成大学臨床理学,16号,2016,213-220 資料 研究の動向と今後の展望 -理社会側面に焦点を当てて― 栗原 里美 1 郁夫 2 厚労働班によると,頻度の高い自覚状として腰,肩こり,関節といったの 訴えが上位を占め,保有者は全国に約1,700万人いると推計されている。は, 会活に支障をきたし,活の質(Quality of life: QOL)に影響をもたらすため,理・会 側面からの対が務とされている。は,時間の経過に伴い侵害受容や経障害 に因が加わり,その割合が増大していくことが多いと考えられていることから, 理・会側面に焦点を当てた理介入に関が寄せられ,その有効が指摘されている。そこ で本では,に大きく関与していると考えられる理・会要因に焦点を当てて, 治に対する現状を概観し,今後の展望について考察した。 キーワード:,理会要因,概観 はじめに 厚労働の国民活基調査(2013)によると, 頻度の高い自覚状として腰,肩こり,関節のよ うなの訴えが,女ともに上位を占め, 保有者は全国に約2,315万人いると推計されており, およそ5人に1人がにんでいることになる (吹・牛・竹下・佐浦・小川・勝俣・中,2010)。 みを原因から分類すると,外傷や炎に伴うみ が続く侵害受容,経系の常や損傷に伴う 経障害,理ストレスが主な原因と見られる 因に分類される。は,時間経過に伴 い侵害受容や経障害に因が加 わり,その割合が増大していくことが多いと考えられ ている(松原・沖・森岡,2011)。長時間繰り返され るみは,外出に支障をきたし(井上・牛・井上, 2012),入浴や排泄といった日常活動作への影響(中 村・西脇・牛・戸山, 2012) ,仕事,学業,家事を休 まざるをない状況(吹他,2012)など,多くの人々 の会機能に影響を及ぼしていることから,理会 側面からの対が務とされている。 近年,は,その併とされるうつの存在や (Magni, Caldieron, Silio, & Merskey, 1990),気分障 害,不安障害などの精の併率を高くさせると いう報告がある(McWilliams, Cox, & Enn, 2003)。 また,の因の1つとされる因は, 世保健機構(WHO)による及び関連保健問 題の国際統計分類(ICD-10, 1992/1994)で,身体表 現障害のうち持続身体表現障害に当し, DSM-5(APA, 2013/2014)では,身体状および 関連群のうちの「身体状のうち,6 ヶ月以上の 持続期間を持つ型」に当する。そしてこれらの 鑑別診断や理介入は内や精でおこなわ れており,その有効が指摘されている(笠原, 2010; 奥澤・富岡・細井・安野・星・須藤・久保,2011)。 そこで本では,の概観から, に大きく関与していると考えられる理会要因 に焦点を当てて,治に対する現状と今後の 展望について考察を行うことをとする。 慢性疼痛の症状,病因,疫学の概観 慢性疼痛の定義 みは,身体な危険を警告して,自己を保全する ためのシグナルとして有であると考えられており, 多くの場合,一過で損傷の治とともに次第に減弱, 消失していく。通常,このようなみがと呼 ばれている(山口・北島, 2006)。一方,みの原因 が軽減,あるいは除去されて,シグナルとしての役割 を果たさなくなった後にも存在する場合があり,この ようなみがと呼ばれている(村川・森山・ 柳本・中野・永・森・池・原,2008)。国際 学 会(International Association for the Study of Pain:以下,IASPとする, 1994)では,は“ の通常の経過あるいは創傷の治に要する妥当 な時間を超えて持続するみ”と定義されている。こ の定義について,ペイン報センター(2010)は“ど のくらい続くなど,場所などは特定されていないが, ある度の期間治を行うことでみが取れるものと 違い,長時間繰り返されるみであり,がんのみ以 外を指す”と述べている。このようには, が治した後も持続しているみで,多くの 東京成大学大学院理学 東京成大学理学部臨床理学

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Page 1: 恌必璘璦研究の動向と今後の展望 -徢理社会瓜側面 …...- 213 - 東京成徜大学臨床徢理学眸矤,16号,2016,213-220 恌必璘璦眸矤の動向と今後の展望

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慢性疼痛研究の動向と今後の展望 -心理社会的側面に焦点を当てて―東京成徳大学臨床心理学研究,16号,2016,213-220  資料

慢性疼痛研究の動向と今後の展望

-心理社会的側面に焦点を当てて―

栗原 里美1  石村 郁夫2

 厚生労働省研究班によると,頻度の高い自覚症状として腰痛,肩こり,関節痛といった慢性痛の

訴えが上位を占め,慢性疼痛保有者は全国に約1,700万人いると推計されている。慢性疼痛は,社

会生活に支障をきたし,生活の質(Quality of life: QOL)に悪影響をもたらすため,心理・社会

的側面からの対応が急務とされている。慢性疼痛は,時間の経過に伴い侵害受容性疼痛や神経障害

性疼痛に心因性疼痛が加わり,その割合が増大していくことが多いと考えられていることから,心

理・社会的側面に焦点を当てた心理的介入に関心が寄せられ,その有効性が指摘されている。そこ

で本稿では,慢性疼痛に大きく関与していると考えられる心理・社会的要因に焦点を当てて,慢性

疼痛治療に対する現状を概観し,今後の展望について考察した。

 キーワード:慢性疼痛,心理社会的要因,概観研究

はじめに

 厚生労働省の国民生活基礎調査(2013)によると,

頻度の高い自覚症状として腰痛,肩こり,関節痛のよ

うな慢性痛の訴えが,男女ともに上位を占め,慢性疼

痛保有者は全国に約2,315万人いると推計されており,

およそ5人に1人が慢性疼痛に悩んでいることになる

(矢吹・牛田・竹下・佐浦・小川・勝俣・畠中, 2010)。

 痛みを原因から分類すると,外傷や炎症に伴う痛み

が続く侵害受容性疼痛,神経系の異常や損傷に伴う神

経障害性疼痛,心理的ストレスが主な原因と見られる

心因性疼痛に分類される。慢性疼痛は,時間経過に伴

い侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛に心因性疼痛が加

わり,その割合が増大していくことが多いと考えられ

ている(松原・沖田・森岡, 2011)。長時間繰り返され

る痛みは,外出に支障をきたし(井上・牛田・井上, 

2012),入浴や排泄といった日常生活動作への影響(中

村・西脇・牛田・戸山, 2012),仕事,学業,家事を休

まざるを得ない状況(矢吹他, 2012)など,多くの人々

の社会機能に影響を及ぼしていることから,心理社会

的側面からの対応が急務とされている。

 近年,慢性疼痛は,その併病とされるうつの存在や

(Magni, Caldieron, Silio, & Merskey, 1990),気分障

害,不安障害などの精神疾患の併病率を高くさせると

いう報告がある(McWilliams, Cox, & Enn, 2003)。

また,慢性疼痛の病因の1つとされる心因性疼痛は,

世界保健機構(WHO)による疾病及び関連保健問

題の国際統計分類(ICD-10, 1992/1994)で,身体表

現性障害のうち持続性身体表現性疼痛障害に相当し,

DSM-5(APA, 2013/2014)では,身体症状症および

関連症群のうちの「身体症状症のうち,6 ヶ月以上の

持続期間を持つ慢性型」に相当する。そしてこれらの

鑑別診断や心理的介入は心療内科や精神科でおこなわ

れており,その有効性が指摘されている(笠原, 2010; 

奥澤・富岡・細井・安野・星・須藤・久保, 2011)。

 そこで本稿では,慢性疼痛研究の概観から,慢性疼

痛に大きく関与していると考えられる心理社会的要因

に焦点を当てて,慢性疼痛治療に対する現状と今後の

展望について考察を行うことを目的とする。

慢性疼痛の症状,病因,疫学の概観

慢性疼痛の定義

 痛みは,身体的な危険を警告して,自己を保全する

ためのシグナルとして有用であると考えられており,

多くの場合,一過性で損傷の治癒とともに次第に減弱,

消失していく。通常,このような痛みが急性疼痛と呼

ばれている(山口・北島, 2006)。一方,痛みの原因

が軽減,あるいは除去されて,シグナルとしての役割

を果たさなくなった後にも存在する場合があり,この

ような痛みが慢性疼痛と呼ばれている(村川・森山・

柳本・中野・福永・森田・池田・神原, 2008)。国際疼

痛 学 会(International Association for the Study of 

Pain: 以下,IASPとする, 1994)では,慢性疼痛は“急

性疾患の通常の経過あるいは創傷の治療に要する妥当

な時間を超えて持続する痛み”と定義されている。こ

の定義について,ペイン情報センター(2010)は“ど

のくらい続くなど,場所などは特定されていないが,

ある程度の期間治療を行うことで痛みが取れるものと

違い,長時間繰り返される痛みであり,がんの痛み以

外を指す”と述べている。このように慢性疼痛は,疾

患が治癒した後も持続している痛みで,多くの急性疾

1 東京成徳大学大学院心理学研究科

2 東京成徳大学応用心理学部臨床心理学科

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栗原 里美  石村 郁夫

患は数週間で治癒することから,治癒した後の1 ヶ月

後でも痛みが続いていれば,それは慢性疼痛と考える

のが妥当であり(村川他, 2008),Bonica(1990)は便

宜上,臨床的に3 ヶ月とすることを推奨している。

 また,IASP(1994)では,痛みは“実質的あるいは

潜在的な組織損傷に結びつく,あるいはそのような損

傷を表す言葉を使って表現される不快な感覚・情動体

験である”と定義されている。そして,平木(2012)

は“この定義で大事なことは,痛みを単なる感覚の異

常としてではなく,情動、すなわち精神心理的なもの

を伴っている”としていることである。さらに,“痛

みとは人さまざまであり,その人の性格,社会的背景

も含めて考えなければならないものである”と述べて

いる。このように痛みは,感覚としての側面だけでは

なく,持続する痛みへの不安や恐怖といった心理的側

面,あるいは痛みが生じることによる就業の制約,周

囲との人間関係といった社会的側面の要素が存在する

ことがうかがえる。 

 すなわち,慢性疼痛は,身体的な危険を警告して自

己を保全するためのシグナルとしての有用な役割を持

たない痛みとして存在し(村川他, 2008),不快な身体

感覚と不安な情動を常に混在させ,身体的要因および

心理社会的要因が複雑に組み合わさって構成されてい

るといえる(松原他, 2011)。このことから,患者の痛

みの訴えを,身体的側面だけでなく,精神的側面の両

面から診ていく必要性があると考えられる。

疼痛症状の特徴

 本邦における慢性痛の疼痛部位で最も多いのは,背

中下部が58.6%,次いで肩が38.7%,頭部が29.7%で

あった(服部, 2006)。さらに,原因別で見ると,疾患

名の特定できない腰背部痛が48.9%で最も多く,次い

で頭痛・片頭痛,関節炎,変形性関節症,椎間板ヘル

ニアの順であった(服部,2006)。また,菊地(2009)

の調査では,全腰痛のうち,椎間板ヘルニアなどの

診断名がつく腰痛は15%程度で,残りの85%は検査に

よって原因が特定できない非特異的腰痛であることが

報告されている。非特異的腰痛は、腰椎周辺の筋膜の

炎症や、椎間板が傷むなど,さまざまな要因が合わさ

ることで痛みが出現するが,この原因要素の一つに、

痛みに対する不安といった心理的要因や,社会的な関

わりや社会における自己の役割といった社会的要因

が関与していると考えられている(谷川, 2013; 住谷, 

2015)。

 以上の報告からみてとれるように,慢性疼痛は原因

を特定できないものが多くを占め,不快な身体感覚と

不安な情動を常に混在させ,身体的要因および心理社

会的要因が複雑に組み合わさって構成されていると考

えられる(松原他, 2011)。身体を診察することを主体

とした一般診療科においても,患者が安心して痛みの

治療が行えるよう,身体的側面だけではなく,心理社

会的要因の評価もおこない,適切な治療に導くことが

必要であると考えられる。

慢性疼痛における生物学的要因

 慢性疼痛の病因は,病態背景および患者個々の精神

的側面の違いなど,心身相関のさまざまな要因が関

連することから,その発生メカニズムの解明は遅れ

ているが,近年,機能的脳画像法(functional brain 

imaging)を用いて痛みという主観的感覚を研究する

動きが活発化してきた(大勝・久住・新井・新原・

大勝, 2011)。痛みは,外因性の痛み刺激(切り傷,打

撲,炎症等)が侵害受容器に入ることで信号が発生し,

脊髄内にある知覚神経を伝わって脊髄後角,シナプ

ス,ニューロン,脊髄視床路を順に通って大脳皮質の

視床に到達し,認識される(平木, 2012)。それに対し

てApkarian, Bushnell, Treede, & Zubieta(2005)は,

痛みの認知には視床以外の他の領域も関わりがあり,

前頭前野は痛みの情動,認知,記憶といった統合的な

面に関与し,慢性腰痛を抱えた人の痛みは,高度な思

考をつかさどる前頭葉が活動し,前頭葉の中でも前部

にあるストレスや不安といった,自分にとって好まし

くない感情を抱いたときに強く活性化する前帯状回が

活動することを明らかにした。実際,慢性疼痛には,

抗うつ薬など前頭葉に作用する薬や,思考を必要とす

る心理療法が有効であることからも,慢性疼痛の発生

拠点が思考のなかに存在し,心の動きによって起こる

痛みであるという仮説が成立すると平木(2012)は述

べている。

 このことから,慢性疼痛は,痛みそのものが疾患で

あるだけではなく,患者の思考や情動的側面が大きく

関与していると考えられる。慢性疼痛治療においては,

身体的側面だけでなく,持続する痛みへの不安や,対

人関係において生じるストレスなど,痛みの背景にあ

る心理的要因へのアプローチが重要であると考えられ

る。

慢性疼痛の疫学調査

 慢性疼痛保有率は,研究により種々の報告がされて

いる。諸外国および本邦で報告されている慢性疼痛保

有率の頻度をTable 1に示す。

 諸外国の調査では,先進国,発展途上国にある

WHO協力施設15施設に診察で訪れた18-65歳の男女

26,000人を対象にした調査では,慢性疼痛保有率は

22.0%(Gureje, Korff, Gater, & Gregory, 1998),欧

州の18歳以上の男女46,394人を対象にした調査では,

慢性疼痛保有率は19.0%であったことが報告されてい

る(Breivik, Collett, Ventafridda, & Gallacher, 2006)。

そして,両調査のサンプリング数や痛みの持続期間の

設定に異なる点はあるものの,互いに高い慢性疼痛保

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慢性疼痛研究の動向と今後の展望 -心理社会的側面に焦点を当てて―

有率を示している。

 本邦の調査では,服部(2006)の18歳以上の男女

18,300人を対象とした調査では,慢性疼痛保有率は

13.4%,矢吹他(2012)の20歳以上の男女47,000人を

対象とした調査では,慢性疼痛保有率は22.5%,中村

他(2012)の20歳以上の男女11,507人を対象とした調

査では,慢性疼痛保有率は15.4%であったことが報告

されている。各々の調査のサンプリング数や痛みの持

続期間の設定が3 ヶ月以上や6 ヶ月以上と異なる点は

あるものの,本邦でも諸外国と同様に13.4% -22.5%

と高率であり,年々増加傾向にあると考えられる。ま

た,矢吹他(2012)の調査では,慢性疼痛患者に治療

への満足度を調査した結果,およそ7割以上の患者が

現状の治療に満足していないことが報告されている。

さらに,中村他(2012)の調査では,身体及び精神面

の健康に関連したQOLについて,慢性疼痛の有無で

比較した結果,慢性疼痛が日常生活における身体活動

への影響のみならず,日常生活における精神的安定と

いった心の健康に大きな影響を与えていることが報告

されている。

 以上の報告からみてとれるように,慢性疼痛患者は

年々増加傾向にある一方,慢性疼痛の効果的な治療法

が確立されていないのが現状である。慢性疼痛は,身

体的側面のみならず,患者のQOLに影響を与えるこ

とから,慢性疼痛治療においては,身体的機能への対

処に加えて,痛みがあることによる日常生活の不自由

さといった心理的葛藤へのアプローチが必要であると

考えられる。

心理社会的側面から見た慢性疼痛研究

慢性疼痛による経済的損失

 慢性疼痛による社会機能への影響は,慢性疼痛保有

者のうち34.5-38.1%が,痛みによって仕事,学業,家

事を休まざるを得ない状況になった経験があるとの報

告(矢吹他,2012)や,慢性疼痛を経験した就業者の

うち約40%が仕事への影響を感じているといった報告

から,その症状に程度の差はあるものの,多くの人々

が慢性疼痛のために,社会機能に影響をおよぼしてい

ると考えられる。

 痛みによる労働損失の検討をおこなった調査では

(井上他,2012),慢性疼痛を経験した就業者が,過

去1年間に痛みのために仕事を休んだ日数から拡大推

計したところ,1年間の日本全体での労働損失は約1兆

8,000億円であったことが報告されている。

 また,中村他(2012)の調査では,慢性疼痛の治療

に要する費用(自己負担,入院や手術の一時金は除く)

は,月額3,000円代と5,000円代が11%と最多で,月額

10,000―15,000円が約8%も存在していたことや,治療

期間は1年以上が全体の7割を占めていることが報告さ

れている。

 さらに,米国国立衛生研究所(National Institutes 

of Health)の調査では,無効な治療やドクターショッ

ピングによる医療費の浪費,痛みに伴う就労困難な

どによる社会経済の損失は年間約650億ドル(9兆

円)におよぶと推計されている(INSTITUTE OF 

MEDICIN  OF  THE  NATIONAL  ACADEMIES,

2011)。

 以上の結果からみてとれるように,慢性疼痛は,世

界的にみても,就労困難による労働生産性の低下,医

療費の高騰など,社会経済に多大な損失を生み出して

いる。個人的苦痛としての臨床的側面のみならず,経

済的損失といった社会的側面からも対応が急務とされ

ている。

慢性疼痛における心理社会的要因

 欧米の臨床疫学的研究によると,慢性腰痛におけ

る社会的背景として,育った社会の文化(Breivik et 

al., 2006)や社会的孤立感によって痛み強さが異な

ることや(Linton,2000),仕事に対する満足度や対

人関係,失業といった職業上の問題(Boos, Rieder, 

Schade, Spratt, Semmer, & Aebi, 1995),交通事故の

賠償関係などが挙げられている(Jenewein, Moergeli, 

Wittmann, Buchi, Kraemer, & Schnyder, 2009)。ま

た,本邦の紺野・菊地(2007)の報告では,腰椎椎間

板ヘルニアで手術を受けるほど症状が強い患者では,

仕事による精神的ストレスが高く,仕事に対する満足

度が低いことが明らかにされている。

 人格の特徴と慢性疼痛との関係については,感情表

出が少なく,過剰適応に陥りやすい病像であるアレキ

シサイミア傾向が高いことを指摘する研究がある一方

で,自らの身体にのみ関心を向け,社会から身を引

いて身近な他者に執拗に疼痛を訴える自己愛的傾向

が高い患者の一群もいるという報告もある(Lumley, 

Asselin, & Norman, 1997; 松岡・水野・阿部・永岡・

Table 1 慢性疼痛保有率

筆者 年号 対象者 サンプル数 痛みの持続期間 慢性疼痛保有率

海外Gureje,et al. 1998 18-65歳の男女 26,000 不明 22.00%Breivik,et al. 2006 18歳以上の男女 46,394 6 ヶ月以上 19.00%

日本服部 2006 18歳以上の男女 18,300 6 ヶ月以上 13.40%

矢吹他 2012 20歳以上の男女 47,000 3 ヶ月以上 22.50%中村他 2012 20歳以上の男女 11,507 6 ヶ月以上 15.40%

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栗原 里美  石村 郁夫

小山・福永・中井, 2008)。

 さらに,慢性疼痛の維持要因である代表的な認知

要因として,痛み刺激や痛み経験を否定的にとら

え,痛みに対する恐怖を増大させる破局的思考があり

(Turner, Jensen, & Romano, 2000),破局的思考が痛

みの強さや生活障害の程度と関連していることが指摘

されている(細井,2008)。

 以上の研究からみてとれるように,慢性疼痛の病因

には生物学的な要因を背景として,心理社会的要因も

複雑に絡んでいるため(Chapman & Gavrin, 1999),

疼痛症状を訴える患者を診る場合には,医学的視点の

みならず,心理的要因にも配慮し,心身両面からアプ

ローチしていく必要性が求められている(山口・北島,

2006)。

他の精神疾患との関連

 米国でおこなわれた慢性疼痛における精神疾患の

併病率の調査では,疼痛のない市民に比して,気分

障害が2.2倍,パニック障害が3.4倍,心的外傷後ス

トレス障害が3.2倍などの併病率が報告されている

(McWilliams, Cox, & Enn, 2003)。これらの結果は,

慢性疼痛があるだけで精神疾患の有病率が高くなるこ

とを示しており,痛みを抱えた日常生活は辛く苦しい

ばかりでなく,精神状態の悪化ももたらすことが考え

られる。

 上記の精神疾患に対する鑑別診断は,心療内科や

精神科でおこなわれているが,一般診療科では,心

因性に対する抵抗感を持つ患者もいることや(笠原, 

2010),短い診察時間内(厚生労働省, 2014)でおこな

うことは困難であることが考えられる。また,医師や

他の医療従事者が,「この患者の疼痛は心因性の可能

性が高い」と感じていながらも,一般診療科と心療内

科や精神科との共有を取れていないのが実情である

(平木, 2012)。しかしながら,慢性疼痛患者が疼痛治

療のために受診する診療科は,整形外科が45%と最も

多く,心療内科は6.0%,精神科は3.9%であることか

ら(服部, 2006),器質的疾患がなく,心療内科や精神

科に紹介が必要と判断された場合は,そのタイミング

を逃さないためにも,鑑別診断のプロセスを,身体を

診察することを主体とした一般診療科においても,拡

充,共有する必要性が考えられる。それが,患者を適

切な治療と早い治癒へと導くのではないかと考えられ

る。

慢性疼痛に対する治療法の概観

慢性疼痛に対する治療法(薬物療法)

 通常,痛みに対してはNSAIDs(Nonsteroidal anti 

i-nflammatory drugs : 非ステロイド性抗炎症薬)や

オピオイド系鎮痛薬,鎮痛消炎を目的とした湿布薬,

麻酔薬の局注などの対症療法的対応が一般的である

(村上, 2008)。しかしながら,心理社会的要因が深く

関与する慢性疼痛に対しては,初期で軽症のうちは通

常の鎮痛薬,ステロイドなどで改善されることも多い

が,徐々に反応しなくなるとの報告もある(村上・松

野, 2010)。

 近年,慢性疼痛に対しては,三環系抗うつ薬や

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬),SNRI(選

択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害

薬)の有効性が注目されている(村上, 2008)。抗うつ

薬は,慢性疼痛の背景にある抑うつ,不安などの心理

的要因の治療に有効であるが(村上・松野, 2010),抗

うつ薬には下行性疼痛抑制系の伝達物質であるセロト

ニンやノルアドレナリンの働きを助ける作用があり,

結果的に下行性疼痛抑制系が賦活化され,鎮痛効果を

発揮するとされている(植田,2007)。また,慢性疼

痛患者の多くは強い不安を抱え,睡眠障害を呈してい

ることも少なくないため,これらの症状を軽減するた

めに抗不安薬や睡眠薬を投与されることもある(小山,

2010)。

慢性疼痛に対する治療法(非薬物療法)

 従来から本邦で行われてきた疼痛治療は,薬物療法,

手術,神経ブロック,電気刺激療法,鍼,理学療法な

どが,急性痛でも慢性痛でも同じように行われていた

(松原他, 2011)。しかし,慢性痛に対して薬物療法や

外科的治療の有効性が低いこと(Hoffman, Wheeler, 

& Deyo, 1993),理学療法のうち物理療法について慢

性痛に対する効果が疑問視されているといった状況を

受け(Gam & Johansen,1995),欧米では慢性痛治

療のコンセプトを生物医学的モデルから生物心理社会

的モデルに転換し,多角的治療が展開されるように

なった(松原他,2011)。現在では慢性痛のマネジメ

ントとして,運動療法(エクササイズ)や,心理社会

的要因の関与を配慮した認知行動療法による介入の

エビデンスレベルが高く,世界各国で推奨され定着

し始めている(Chou, Quseem, Snow, Casey, Cross, 

Shekelle, & Owens, 2007)。

  エ ビ デ ン ス レ ベ ル と は,EBM(Evidence-based 

Medicine:  根拠に基づく医療)という概念から生ま

れた,治療における科学的根拠の信頼度のことであ

り(Roger & Philipp, 2011),医療現場で行われてい

る治療に対して,さまざまな研究方法を用いてその治

療の効果を検討し,得られた結果に基づいて,その治

療に対するエビデンスレベルが設定される(長谷川, 

2004)。検討対象となる研究方法の緻密性と,治療の

効果が高いほど,その治療に対するエビデンスレベル

は高いとされ,科学的根拠の信頼性の高い治療として,

医療現場で推奨されている(長谷川, 2004)。

 世界各国で更新されている慢性腰痛患者への非侵襲

的な治療に対するエビデンスレベルによると,鍼療法,

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慢性疼痛研究の動向と今後の展望 -心理社会的側面に焦点を当てて―

認知行動療法,運動療法(エクササイズ),整形外科

医と心療内科医が連携して治療に臨む集学的リハビリ

テーション,脊椎マニュピレーションなどはエビデン

スレベルが高く,強く推奨されているが,牽引,干渉

波,低出力レーザー,経皮的末梢神経電気刺激,短波

ジアテルミー,超音波といった物理療法,腰椎支持と

いった装具についてはエビデンスが乏しく推奨しない

とされている(Table 2参照)。

 以上のことからみてとれるように,患者自らが積

極的に参加することを目的とした運動療法や(松原,

2013),心理社会的側面の評価を行いながら介入して

いく認知行動療法(笠原,2013)のエビデンスレベル

が高く,慢性的な痛みには,心理社会的要因の評価を

含んだ包括的な治療の必要性が考えられる。

慢性疼痛に対する心理学的アプローチ

 近年,慢性疼痛に対する心理学的アプローチにおい

ては,認知行動療法の有効性が示されている(Compas, 

Haaga, Keefe, Leitenberg, & Williams 1998)。例え

ば,行動の活性化と疼痛に関連した非適応的な思考を

より適応的な思考に変えることを目的とした認知行動

療法(John, 2007 伊豫・清水訳 2011)や,運動療法(エ

クササイズ)の実践・活動量の自己管理・痛み―行動

日誌の記録を遂行する認知行動療法リハビリテーショ

ン(松原他, 2011)など,さまざまな認知行動療法プ

ログラムが,患者の活動性と生産的な機能の向上,健

康行動の再構築のために開発,実践されている(児玉, 

2008)。

 認知と行動が改善されれば,結果的に痛みの軽減や

減薬・断薬のような生物医学的効果だけでなく,痛

みや鎮痛への執着を避け,ADL(Activities of Daily 

Living:日常生活動作)を向上させ,復職,復学,気

分やモチベーションの改善といった生物心理社会的な

効果が得られると考えられている(松原, 2009)。そ

して,Morley, Eccleston, & Williams(1999)は,対

象者を無作為に選択して実験を行う無作為化対照試験

により,認知行動療法の介入を行ったところ,疼痛の

緩和や前向きな認知などの領域で有意に大きな変化が

あったことから,慢性疼痛治療において認知行動療法

が効果的であることを報告している。

 また,近年,慢性疼痛に対する心理的介入法とし

て,アクセプタンス・コミットメント・セラピーやそ

の原理が適用された文脈的認知行動療法(Contextual 

Cognitive-Behavioral Therapy: 以下 CCBT)の研究

Table 2 慢性腰痛患者への非侵襲的な治療に対するエビデンスレベル(Chou et al., 2007)

介入 エビデンスレベル 純効果 推奨グレードアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤) 可 小 B鍼療法 可 適度 B認知行動療法 良 適度 Bエクササイズ(運動療法) 良 適度 B集学的リハビリテーション 良 適度 B非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 良 適度 B脊椎マニピュレーション 良 適度 Bオピオイド系鎮痛薬 可 適度 B短期間の個別教育 可 適度 Bベンゾジアゼピン系薬剤 可 適度 Bマッサージ 可 適度 Bヨガ 可 適度 B三環系抗うつ薬 良 小-適度 B/C抗てんかん薬 可 小 C腰痛教室 可 小 C安定したマットレス 可 有害性はない D牽引 可 有害性はない Dアスピリン(解熱鎮痛剤) 低 判定不可 Iバイオフィードバック(筋緊張の抑制) 低 判定不可 I干渉波 低 判定不可 I低出力レーザー 低 判定不可 I腰椎支持 低 判定不可 I短波ジアテルミー 低 判定不可 I骨格筋弛緩薬 低 判定不可 I経皮的末梢神経電気刺激(TENS) 低 判定不可 I超音波 低 判定不可 I

※推奨グレード A:強く推奨する,B:推奨する,C:推奨しない,D:推奨しない,介入効果なし,I:エビデンス不十分

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栗原 里美  石村 郁夫

が行われている(高橋・武藤, 2006)。伊藤(2009)は

このCCBT介入について,「痛みのコントロールこそ

が問題であることに気づくことと,痛みを抱えながら

もそれに囚われず,自分の人生に価値を見出して生活

することを促進すること」と述べている。Vowles & 

McCracken(2008)は,3 ヶ月以上持続している187

名の慢性疼痛患者に対して,3週間(一部4週間)の

CCBTプログラムを適用し,その効果を検討したとこ

ろ,うつや不安は顕著な効果を示し3 ヶ月後まで維持

され,身体的,心理社会的機能や痛みの程度について

も中程度以上に改善したことを報告している。

 しかしながら,本邦の医療保険制度上の問題や慢性

疼痛医療に対する理解の遅れから,慢性疼痛に対する

心理的介入を実践できる環境が整っていなことが指

摘されている(松原他, 2011)。また,認知行動療法は,

国際的にも慢性疼痛のもっとも重要な治療法として認

識されており,その有効性が実証されているにもかか

わらず,本邦においては,慢性疼痛患者が認知行動療

法を受けられるだけの十分な環境が整っていないのが

実情である(笠原, 2013)。

まとめと今後の展望

 本論文では,慢性疼痛に大きく関与していると考え

られる心理社会的要因に焦点を当てて,慢性疼痛治療

に対する現状を概観し,今後の展望について考察を行

うことが目的であった。定義や病因から,慢性疼痛は,

不快な身体的要因のみならず,持続する痛みへの不安

や恐怖といった心理的要因や,社会との関わりや社会

における役割といった社会的要因が複雑に組み合わ

さって構成されていることが示された。そのため,慢

性疼痛の治療法においては,従来の生物医学モデルか

ら,生物心理社会モデルへと転換され,心理社会的側

面の評価を行いながら,患者が持つ疼痛に関連した否

定的な思考を変え,活動性を向上させることを目的と

した認知行動療法による介入が,世界各国で推奨され

定着し始めている。

 本邦においても,慢性疼痛治療への関心は高まりつ

つあり,「慢性の痛みに関する検討会」が開催され(厚

生労働省,2010),医療体制の整備等の検討が行われ

ている。また,世界的にみても慢性腰痛ガイドライン

(Chou et al.,2007)といったEBMの導入により,慢

性疼痛治療が大きく変化しつつある。

 EBMと い う 概 念 か ら, 慢 性 疼 痛(Chapman & 

Gavrin, 1999)の治療においては,心理社会的要因の

関与を配慮した,NBM(Narrative-Based Medicine: 

物 語 と 対 話 に 基 づ い た 医 療 )(Greenhalgh, & 

Hurwitz, 2001)の大切さが示唆されており,患者と

治療者の信頼関係を前提とした,患者の語る自分自身

の物語と治療者との対話から,痛みの背景にある問題

にせまっていくことの大切さがうかがえる。こうした

点を踏まえ,今後の慢性疼痛研究においては,NBM

とEBMを両軸とした心身両面からアプローチする視

点がさらに深まることが求められている。

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