下水る下水が処理されるまで 次世代へつなぐ、 ·...

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27 特集 2 27 雨のほとんどが 下水へ 雨水は通常地面から地 下に、時間をかけて浸透 し地下水となりますが、 市の大部分は市街地。 地面が露出している場 所は少なく、雨水は下水 管に流れ込みます。 市の汚水・雨水処理は合流式 武蔵野市では家庭の生活排水(汚水)と雨水とを 一緒に流す「合流式下水道」を採用しています。 市では雨水をため、地中 に染み出させる家庭用の 雨水浸透ますの設置を促 進しています。 清瀬水再生センター(石神井川)へ 落合水再生センター(善福寺川)へ 森ヶ崎水再生センター (神田川)へ 森ヶ崎 水再生センター (野川)へ マンホールは 下水管への出入り口 下水管に流れ込んだ汚水・ 雨水は下水処理場へ。下水 管の修理・掃除はマンホー ルから。 市の汚水は地域ごとに3カ所の処理場(水再生センター)で処理され、 雨水は4カ所の川に流されています。 詳しくは P16へ 詳しくは P17へ 下水が処理されるまで 家庭 吉祥寺駅 武蔵野市役所 三鷹駅 武蔵境駅 あなたのお住まいの地域はどこですか? Musashino 14

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Page 1: 下水る下水が処理されるまで 次世代へつなぐ、 · 市の下水道の90%を占める「合流式」とは? 合流式の問題と課題 下水道には大きく合流式と分流式があります。市では90%を合流式によって整備しています。

次世代へつなぐ、

くらし支える下水道

武蔵野市では昭和27年という戦後の早い時期から下水

道の整備に努めてきました。しかし、長い歳月を経た今、

下水管の老朽化や構造的な問題など改善すべき課題が

あります。日ごろは気にすることのない下水道の仕組

みを学びながら、事業への理解をぜひ深めてください。

特集2

 

市の下水道整備が始まったのは昭和

27年のことです。当時の下水道は汚水

と雨水を一緒に流す「合流式」であっ

たため、現在でも市のほとんどがこの

方式となっています。市域は武蔵野台

地の尾根の部分に位置するため、下水

は発生する地域によって違う3方向へ

と流れ、3カ所の下水処理場(水再生

センター)を目指します。最終的な下

水の処理は、東京都の施設であるこ

の水再生センターで行います。

 

市内には下水処理場がないため、

すべての下水は市外へと流れていき

ます。また、市域のほとんどが住宅

地のため、大雨が降ると大量の雨水

が一気に下水管に流れ込み、水再生

センターへ送れない分が河川に流れ

込んでしまいます。これに対し市で

は、雨水をため込む雨水貯留浸透施

設を市内の小中学校の校庭の地下に

建設するとともに、家庭での雨水浸

透ます設置に補助金を支給するなど

対策を行っています。

■清瀬水再生センター■落合水再生センター■森ヶ崎水再生センター■

雨のほとんどが下水へ

雨水は通常地面から地下に、時間をかけて浸透し地下水となりますが、市の大部分は市街地。地面が露出している場所は少なく、雨水は下水管に流れ込みます。

市の汚水・雨水処理は合流式武蔵野市では家庭の生活排水(汚水)と雨水とを一緒に流す「合流式下水道」を採用しています。

市では雨水をため、地中に染み出させる家庭用の雨水浸透ますの設置を促進しています。

清瀬水再生センター(石神井川)へ

落合水再生センター(善福寺川)へ

森ヶ崎水再生センター(神田川)へ

森ヶ崎水再生センター(野川)へ

マンホールは下水管への出入り口下水管に流れ込んだ汚水・雨水は下水処理場へ。下水管の修理・掃除はマンホールから。

市の汚水は地域ごとに3カ所の処理場(水再生センター)で処理され、雨水は4カ所の川に流されています。

水再生センターで処理

詳しくはP16へ

詳しくはP17へ

下水が処理されるまで下水が処理されるまで家庭

吉祥寺駅

武蔵野市役所

三鷹駅武蔵境駅

あなたのお住まいの地域はどこですか?

Musashino 14

Page 2: 下水る下水が処理されるまで 次世代へつなぐ、 · 市の下水道の90%を占める「合流式」とは? 合流式の問題と課題 下水道には大きく合流式と分流式があります。市では90%を合流式によって整備しています。

■石神井川■善福寺川■野川■神田川

■清瀬水再生センター■落合水再生センター■森ヶ崎水再生センター■

東京の川を潤す「処理水」玉川上水の水は下水を再生した処理水が入っています。また、多摩川もその水量の半分が処理水。水もきれいになり、今ではアユが上ってきます。

市の下水は都内3カ所の水再生センターで浄化処理されます。

水再生センターへ下水は清瀬市下宿、新宿区落合、品川区森ケ崎にある都の水再生センターで処理。森ケ崎までは31キロあり、到着までは5〜6時間です。

下水を持ち上げるポンプ場

水再生センターで処理

下水は高い所から低い所へこう配をつけて流します。低い場所に集まった下水を高い所まで上げるのがポンプ場です。

大雨のときには下水も川へ集中豪雨などで雨水が多くなると処理場へ送れない下水は河川に流れ込みます。

下水のゴミを防ぐスクリーン排出口にはスクリーンが取り付けられ河川にはゴミが流れ出ないようにしてあります。

小中学校の校庭地下に雨水貯留浸透施設市内の18の小中学校の校庭に雨水を一時的にためる「雨水貯留浸透施設」の設置を進めています。

流れ込む下水が一定の水量を超えると分水堰を超え、河川へと流れていきます。堰は下水に混じるゴミを取り除きます。

詳しくはP18へ

詳しくはP16へ

詳しくはP17へ

分水堰

事業所

学校などの公共施設

せき

15 Musashino

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川へ流れ込む汚濁雨水集中豪雨などで一気に雨水が下水管に流れ込むとすべての下水を処理場に送れずに、川へ排出してしまいます。市は住宅地が多く水が浸透する土の地面があまり多くありません。汚水を川に流さないためにも、雨水や下水を一時的に貯留する施設が必要なのです。

オイルボールの漂着江東区のお台場海浜公園では河川に含まれる油分が丸く固まった「オイルボール」が漂着することがあります。下水が適切に処理されていない証です。

市の下水道の90%を占める「合流式」とは?

合流式の問題と課題

下水道には大きく合流式と分流式があります。市では90%を合流式によって整備しています。まずはそれぞれ特徴を見ていきましょう。

市のほとんどの地域の下水道が合流式。水環境や下流域への負荷を考えると改善が必要です。

【合流式の長所・短所とは?】雨水と汚水を同じ下水管で流す方式です。汚水・雨水が1系統の管でよいためコストが割安です。しかし、雨水が大幅に増えたときは、汚水の混じった雨水を川に流さなければなりません。

【分流式の長所・短所とは?】雨水と汚水を別々の管で流す方式です。汚水はすべて下水処理場へ送られますので、川には雨水しか流れ込みません。雨水と汚水の2系統が必要なので合流式よりもコストが割高です。

晴天時

雨天時

家庭や事業所の排水に含まれる油分が下水管に付着

雨の日に雨水と一緒に流れ出した油が固まり、漂着したオイルボール

合流式 分流式

下水処理場へ

河川へ

分水堰

Musashino 16

汚水

汚水雨水

河川河川

雨水

処理場

雨水吐き室

簡易処理

処理場高度処理

高度処理

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今年の夏休み期間中に設置された、第五小学校の雨水貯留浸透施設

ゲリラ豪雨と呼ばれる集中豪雨や台風によって浸水の被害が生

じる場合があります。これは短時間で大量の雨が降り、雨水

を受け入れる下水管の許容量をオーバーしてしまうためです。

かつては、畑や土の地面が雨を吸収し、蓄えてくれましたが、

今では市のほとんどの地域は市街地となり、アスファルトで覆わ

れているので、雨水は下水管に流れ込むしかないのです。

 合流式下水道の問題を改善するために、平成16年に下

水道法施行令が改正され、下記の3項目について平成

25年までの改善が義務づけられました。市では同年に「合

流式下水道改善計画」を策定し、取り組みをスタート。ま

た、下流域への下水そのものを抑制することが重要である

と考え、雨水や下水の貯留施設の整備を進めています。

目標❶ 汚濁負荷量の削減 合流式下水道の年間の「放流汚濁負荷量」を分流式下水道と同じくらい、またはそれ以下にする

目標❷ 公衆衛生上の安全確保 河川に設置された下水の排出口から未処理の下水を放流する回数を半減させる

目標❸ きょう雑物の削減 河川に設置された下水の排出口からきょう雑物が流出することを極力防止する

 

こういった課題を解決するため

に市では「雨に強い街づくり」を

推進。その柱として、平成18年

度から市内18の小中学校の校庭

に順次「雨水貯留浸透施設」を

設置しています。ビールケースを

積み重ねたような形状の構造物

が浸透式のシートで包まれ、地中

に埋められています。大雨が降る

と、校庭や屋上の雨が貯留浸透

施設にたまり、シートを

通して地下に染み込み

ます。現在設置済み

の9つの小中学校で

ためられる総量は

5千トンに及びます。

市内小中学校の校庭に

雨水貯留槽を設置

 

住宅でも取り組みは可能です。

敷地内に「雨水浸透ます」を設

置し、雨水をため込み地中に染

み込ませます。市では設置され

る方に助

成金を支

給してい

ます。

雨水浸透ます助成金を支給

雨水浸透ます

武蔵野市では下水道に関する改善目標を掲げています

市内での浸水被害状況(平成19年6月10日 吉祥寺北町)

市が算定した工事単価に設置した浸透ますの数量をかけた金額を助成しています。助成額の上限は敷地面積

(m2)に1,000円をかけた金額です。

目標❶

〜下水管に流れ込む雨水を減らす〜

※1 水環境に流入する陸域から排出される有機物やリンなどの汚濁物質の量※2 あるものの中に混じっている余計なもの

※1

※2

17 Musashino

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改善目標では、処理場へ送れ

ない下水が河川に流れ込む回数

を現在の半分に減らすことが義

務づけられています。

 

市では、吉祥寺東町1丁目の

法政高校跡地と吉祥寺ポンプ場

跡地に、雨天時に下水をため込

み、合流式下水道の問題を改善

する貯留槽を建設する計画に着

手しています。これらの貯留槽

が完成すれば、神田川や善福寺

川に未処理の下水が流れ込む回

数を半減できる見込みです。

 

東京都でも集中豪雨による雨

水の増大や合流式下水道の改

善を目的に品川区東大井1丁

目にある下水道施設「鮫洲ポ

ンプ所」に雨水貯留池を建設

しています。その貯留能力は

4万1000m3

に及びます。

 

大雨が降ったときは、下水の

一部が河川へと流れ出る場合が

あります。下水の排出口には、下

水に含まれるきょう雑物が河川

に流れ込むことを防ぐため、神

田川の3カ所、善福寺川の2カ

所に「スクリーン」が設置され

ています。

 

また、石神井川、野川につい

ては東京都が設置しています。河川への排出口に設置されたスクリーンがゴミの流出

を防止

鮫洲ポンプ所(品川区)に建設中の大型貯留池

〜下水から河川への

 ゴミの流入を防止〜

目標❸

〜下水による汚染から河川を守る〜

目標❷

所在地:吉祥寺東町4-18貯水量:約1,200m3

吉祥寺東町 ポンプ場跡地

所在地:吉祥寺東町1-23貯水量:約10,000m3

法政高校跡地

市内に建設予定の貯留槽

Musashino 18

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項目現行および23区の使用料との比較

使用量(m3) 現行 改定後 23区

基本使用料(月)

(基本水量)(10m3)400円

(8m3)450円

(8m3)560円

従量使用料/m3

9〜10 _50円 110円

11〜20 50円

21〜3060円

60円 140円

31〜50 65円 170円

51〜100 70円 75円 200円

101〜200 85円 90円 230円

201〜500 100円 105円 270円

501〜1000 130円 130円 310円

1001〜 180円 180円 345円

 市の下水道を整備する事業が始まったのは昭和27(1952)年のこと。35年後の昭和62(1987)年には普及率100%となりました。下水管の標準的な耐用年数は50年と言われています。平成20〜29年には全体の36.6%が、また平成30年〜39年には49.0%が更新の時期を迎えます。 また、市内の下水道の多くは、平成7(1995)年の阪神淡路大震災を機に定められた耐震基準に適合しておらず、大規模な地震が発生した場合には破損するおそれがあります。

更新のためのコストの発生昭27~36 昭37~46 昭47~56 昭57~平3 平4~13 平14~19 平20~29 平30~39 平40~49 平50~59 平60~69

0

20

40

60

80

100

120

140(km)

年 度

8.7%

36.6%

49.0%

3.3% 1.9% 0.5%

36.6%

49.0%

3.3% 1.9% 0.5%

8.7%

整備から更新へ

下水道管の敷設年度別整備延長と割合

下水道料金を改定します

武蔵野市の下水道管は老朽化しています

阪神淡路大震災では暗きょ(地中の水路)に約 1,150mm にわたる横ずれが生じた

大地震が発生したら下水道管が破損するおそれも…

 下水道は市民の暮らしを支えるライフラインです。しかし、これまでご紹介したとおり、構造的な問題による環境への負荷、集中豪雨による浸水被害、そして老朽化による道路陥没事故のおそれなど、改善すべき点がたくさんあります。 市ではこれらの課題を長期的な視野に立ちながら解決していくための財源を確保するため、下水道使用料金を改定します。実施は今年10月と来年4月の2段階に分けて行います。今後も良好な下水道を維持するために、経営努力を進め効率的な下水道事業を運営していきますので、市民の皆さんのご理解とご協力をお願いします。

問い合わせ都市整備部下水道課 ☎0422-60-1867

平成23年4月1日〜

19 Musashino