「消費税」で民主党が分裂...

「消費税」で民主党が分裂

★衆院採決で72人造反／ ★小沢元代表ら50人が離党届／ ★衆院の単独過半数は維持

税と社会保障の一体改革関連８法案は6月26日、衆院

本会議で民主、自民、公明３党と国民新党、たちあがれ

日本などの賛成多数によって可決され、参院に送られ

た。消費税増税法案では、民主党から小沢一郎元代

表や鳩山由紀夫元首相ら57人が反対に回り、欠席・棄

権を含む造反者は72人（民主党衆院議員289人の４分

の１）に上った。

造反議員のうち、小沢元代表ら50人（衆院38人、参

院12人）は７月２日、離党届をまとめて出した。消費

増税法案をめぐる民主党内の混乱は、与党第１党の分裂

に発展した。民主党はそれでも衆院の単独過半数を維持

できるが、党内には小沢グループの残留組や鳩山由紀夫

元首相ら消費増税反対派をなお抱え、野田佳彦首相は厳

しい政権運営を迫られる。

■ 小沢元代表近く新党を結成

離党届を提出後、小沢元代表は「政権交代の原点に立

ち返るために離党した」と宣言し、近く新党を結成する

考えを記者団に表明した。次期衆院選へ向け「反増税・

反原発」を掲げることになりそうだ。

民主党にとっては1996年結党の旧民主党時代も含め

初めての大きな分裂となった。2009年衆院選の大勝で

得た308議席から３年間で約60議席も減った。小沢グ

ループ内には離党に慎重議員も多く、約100人に上った

党内最大勢力も分裂する形になった。

民主党の衆院会派は289人、参院会派は104人だっ

た（７月１日現在）。国民新党と合わせた与党としては

衆院で293議席を持っていた。離党者は野田政権を衆院

で少数与党に転落させる55人には届かなかった。新党

きづなの９人と協力して衆院に内閣不信任決議案を出せ

る42人にも達していない。輿石東（こしいし・あず

ま）幹事長ら党執行部は、参院で19人以上が離党して

自民党を下回る「第２会派」に転落することも心配して

いたが、離党者はこれにも届かなかった。

■ 消費増税民主党の「反対」は57人

衆院で６月26日に可決された８法案の内訳は民主、

自民、公明３党の合意によって修正された消費税増税法

案など政府提出６法案と、３党が議員立法で提出した社

会保障制度改革推進法案と認定こども園法改正案。その

うち３法案の採決は各議員の記名投票となった。

消費税増税法案は賛成363票、反対96票だった。民

主党は216人が賛成、57人が反対、15人が欠席・棄権

した。欠席・棄権は、体調不良を理由に欠席を事前連絡

していた羽田孜（はた・つとむ）元首相を除いた人数。

賛成した自民党からも、中川秀直元幹事長が欠席し

た。共産、新党きづな、社民、みんな、新党大地・真民

主の各党は反対した。

●ニュースミニ解説発展編政治 2012年７月号

① 政党が「党議拘束」をかけないこともあるのだろうか？

② 民主党の〝生い立ち〟を調べてみよう。

③ 当初の会期末に〝駆け込み成立〟した法律はどのような問題点が指摘されているか。

ＴＯＰＩＣ

※このテーマについては、2012年度版ニュース検定公式テキスト発展編(２・準２級対応)の「野田政権の試練」（18～23㌻）、

「マニフェストのその後」（24～29㌻）を参考にしてください。

消費税増税法案

消費税率を現在の５％から2014年４月に８％へ、2015年10月には10％へと引き上げることが柱。実現すれば、1997年（税率３％から５％に引き上げられた）以来17年ぶりの増税となる。

消費税の増税は、高齢化によって膨らんだ社会保障費の財源を確保しつつ、先進国で最悪レベルの財政悪化に歯止めをかけるのが狙い。政府は10％への引き上

げで消費税収を年間13.5兆円増やし、すべて年金、医療、介護などの社会保障の財源に充てるとしている。

だが内閣府の試算では、税率を10％に引き上げても、政策にかかる経費を新たな借金をせずにまかなえるかどうかを示す指標「基礎的財政収支（プライマリーバランス）」を黒字化するには、2020年度時点で約16.6兆円足りない。不足分をすべて消費税で補うとすれば、さらに６～７％程度の引き上げが必要だ。

「消費税」で民主党が分裂採決結果と離党届の50議員


資料１

（写真左）衆議院で消費税増税法案に反対票を投じる民主党の小沢一郎元代表（写真右）法案の採決後、厳しい表情で議場を後にする野田佳彦首相＝ともに2012年６月26日午後

（2012年６月27日毎日新聞朝刊)

「離党届は受理せず、除名」の方向

民主党は２日の党役員会で、造反者の処分

問題を協議し、野田佳彦首相と輿石東（こし

いし・あずま）幹事長に対応を一任した。離

党届は受理せず、除籍（除名）処分とする方

向で検討する一方、ほかの造反議員には軽い

処分を示すことで離党者拡大を防ぐととも

に、政権運営への協力を求めるとみられる。

党にとどまって政権を揺さぶる鳩山由紀夫氏

らに厳しい処分を科すべきだとの意見もあ

り、民主党はさらなる分裂の危機が続く。

（2012年７月３日毎日新聞朝刊）

離党届を２人が撤回

小沢一郎・民主党元代表らが２日に提出した離党届

は事前にとりまとめていたもので、元代表側近の山岡

賢次副代表と広野允士（ひろの・ただし）参院議員が

党幹事長室に持参した際には52人分と発表された。

その後、辻恵（つじ・めぐむ）、階猛（しな・たけ

し）両衆院議員が「党にとどまる」として離党届を撤

回した。

両氏ともいったん離党届を預けたことは認めてお

り、「離党か、新党か」で揺れた小沢グループ内の混

乱を印象づけた。

（2012年７月３日毎日新聞朝刊）

（ともに2012年７月３日毎日新聞朝



資料２

① 政党が「党議拘束」をかけないこともあるのだろうか？

消費税の増税をはじめとする税と社会保障の一体改革関連８法案の採決に先立ち、野田佳彦首相や民主党幹部は

「当然、党議拘束がかかる」と強調し、造反の動きをけん制していた。

そもそも政党が党議拘束をかけないケースがあるのだろうか……。

■ 国会の採決で政党が党議拘束を外すのは極め

て異例だ。右の記事のように、臓器移植法改正

案の採決（2009年）では、共産党を除く各党が衆

院、参院のどちらでも党議拘束を外し、自由投

票にゆだねた（1997年の臓器移植法制定時にも

共産党を除く各党、各会派が党議拘束を外し

た）。その理由を考えてみよう。

（2009年７月10日毎日新聞夕刊）

党議拘束

国会などで採決される議案について、政党が事前に賛否を決め、所属議員の投票行動を拘束すること。党議拘束の方法は党則などで定められ、党議拘束に反した議員は何らかの処分を受けるのが一般的だ。



資料３

② 民主党の〝生い立ち〟を調べてみよう。

■政党や政治団体が政策の基本指針

を定める「綱領」を、民主党は持って

いない。それはどのような〝生い立

ち〟を背景にしていると考えられる

か。右の記事を参考にして、あなた

の見方を簡潔にまとめなさい。

（ともに2012年７月３日毎日新聞朝刊）



資料４


■2012年の通常国会（１月24日開会。当初の会期は６月21日までの150日間）は９月８日まで延長された。税と社会保

障の一体改革関連法案だけでなく積み残しの重要法案が数多く残っており、79日間という大幅延長となった。（→資

料８参照）。

その一方、当初の会期末を控えた６月20日、13法案（このうち、内閣提出法案は７本）が参院本会議で民主、自民、

公明３党などの賛成によって可決され、成立した。会期末の直前まで延長の方針が定まらないなか、民・自・公の３

党が、賛成で足並みがそろう法案の審議を急いだためだ。

たとえば、「原子力規制委員会」設置法案は、提出された15日中に衆院で可決され、参院環境委員会の審議も３日

だけだった。

このため、民・自・公３党以外の政党からは「３党による談合の押しつけだ」といった批判の声が上がった。

どのような法律が成立し、どのような問題点が指摘されているか、下の記事や資料５～６も参考にして、調べてみよ

う。

（２０１２年６月21日毎日新聞朝刊）



資料５


（2012年６月22日毎日新聞朝刊）

（２０１２年６月２１日

毎日新聞朝刊）



資料６


（2012年６月23日毎日新聞朝刊「社説」）

原子力基本法

原子力の研究、開発、利用に関する国の方針を示す法律。1955年に制定された。原子力の研究や開発、利用を平和利用に限ることと、民主・自主・公開の3原則をうたっている。

この原子力基本法によって、原子力委員会、原子力安全委員会、日本原子力研究所（原研）、動力炉・核燃料開発事業団（動燃）がつくられた。

ただし、動燃は1998年、核燃料サイクル開発機構（サイクル機構）に改組された。さらに原研とサイクル開発機構は2005年に統合され、日本原子力研究開発機構（原子力機構）となった。

◆改正原子力基本法（第２条に関係する部分のみ抜粋）

●改正前

（目的）

第１条この法律は、原子力の研究、開発及び利用を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。

（基本方針）

第２条原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。

●改正後

（目的）

第１条この法律は、原子力の研究、開発及び利用（以下「原子力利用」という。）を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。

（基本方針）

第２条原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。

２前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行うものとする。

「消費税」で民主党が分裂付録１暮らしどうなる／棚上げされた看板政策


資料７

（ともに2012年６月27日毎日新聞朝刊）

「消費税」で民主党が分裂付録２通常国会で山積する重要法案


資料８

（2012年６月23日毎日新聞朝刊「社説」）

（2012年６月22日毎日新聞朝刊）

「消費税」で民主党が分裂...

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