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木造軸組工法住宅の設計法に関する研究 平成 17 年 2 月 16 日 香川大学工学部 安全システム建設工学科 西岡 裕紀 指導教員 安全システム建設工学科 ___________________

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木造軸組工法住宅の設計法に関する研究

平成 17年 2月 16日

香川大学工学部 安全システム建設工学科

西岡 裕紀

指導教員 安全システム建設工学科 ___________________

Page 2: 木造軸組工法住宅の設計法に関する研究 - Kagawa Umatusima/ronbun-pdf/04nishioka...要旨 木造住宅の耐震診断は壁の量,偏心,重量などの簡単な方法で計算されているのが実情である.

要旨

木造住宅の耐震診断は壁の量,偏心,重量などの簡単な方法で計算されているのが実情である.

特に,壁はこれら3つの診断材料に深く関わってくる.これに関連して,木造軸組工法住宅では,

鉛直荷重を柱で,水平荷重を耐力壁で支える構造をしている.本研究では,2階建ての木造軸組

工法住宅を対象として,「木造住宅の耐震精密診断」に基づき耐震診断を行い,有限要素法に基

づいて数値解析を行うことにより,両者の耐荷力の比較を行った.既往の耐震診断については,

地盤と耐久性等の建物の状況に関する項目は無視し,建物の剛性に関する項目について診断を行

い,各階方向別の耐荷力を把握することができた.数値解析においては,まず対象とする住宅を

柱,梁,耐力壁で構成される3次元フレームモデルで表現し,鉛直荷重と地震荷重を載荷させる

ことで,各階方向別の荷重と変位の関係を導出した.荷重と変位の関係からは降伏耐力,終局耐

力を求めた.耐震診断による,建物の耐荷力と数値解析によって得られた降伏,終局耐力をもと

に各階方向別に比較を行った結果,耐震診断は終局状態を指標としている.

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目次

1. はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1.1 研究の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

1.2 木造住宅の耐震診断について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

2. 既往の木造住宅の耐震診断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

2.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

2.2 わが家の耐震診断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

2.2.1 A(地盤・基礎) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3

2.2.2 B(建物の形) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

2.2.3 C(壁の配置),E(壁の割合) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

2.2.4 D(筋かい) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

2.3 木造住宅の耐震精密診断・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

2.4 木造住宅の耐震精密診断における診断項目の評価方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

2.4.1 A(地盤・基礎) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

2.4.2 B×C(偏心) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

2.4.3 D×E(水平抵抗力) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11

2.4.4 F(老朽度) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

2.5 耐震精密診断による総合的な耐震判定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

3. 木造住宅の耐震精密診断による評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

3.1 対象とする住宅・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

3.2 剛心の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

3.3 重心の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

3.4 偏心率の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

3.5 水平抵抗力の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

3.6 総合評点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

4. 数値解析による木造住宅の耐震性能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

4.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

4.2 対象とする住宅のモデル化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

4.3 荷重の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

4.3.1 固定荷重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

4.3.2 地震荷重・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

4.4 荷重-変位曲線・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

5. 本研究で用いた数値解析手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

5.1 有限要素法とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

5.2 マトリックス法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

5.3 剛性方程式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

5.4 座標変換マトリックス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

5.5 全体剛性マトリックス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

5.6 弾性体の支配方程式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32

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5.6.1 つり合い方程式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32

5.6.2 ひずみ-変位関係式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

5.6.3 応力-ひずみ関係式・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37

5.7 ひずみエネルギー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40

5.8 仮想仕事の原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42

6. 数値解析による木造住宅の耐震性能・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44

6.1 概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44

6.2 数値解析による木造住宅のモデル化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44

6.3 固定荷重の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45

6.4 地震荷重の計算・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

6.5 数値解析結果による住宅の挙動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48

6.5.1 固定荷重による住宅の挙動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48

6.5.2 地震荷重による住宅の挙動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

6.6 荷重-変位曲線・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51

7. 耐震精密診断と数値解析結果の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54

8.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55

謝辞

参考文献

参考資料

参考資料1:住宅モデル概略図

参考資料2:x方向の地震荷重によるモデルの変形形状

参考資料3:y方向の地震荷重によるモデルの変形形状

参考資料4:荷重-変位曲線の比較

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1.はじめに

1.1 研究の目的 阪神・淡路大震災時では,住宅の約 20万戸が全壊・半壊という甚大な被害を受けた.中でも,木造住宅の被害が著しくみられた.老朽化や地盤条件の悪さ以上に,耐力壁の不足が主な倒壊の

原因と考えられる.耐力壁とは,構造用合板という耐力を計算にいれた材料を用いた内壁や外壁,

筋かいで構成される壁のことである.一般に木造住宅は築年数が長いものが多く,耐震規定が十

分に定められていない時代に建てられている.ちなみに,木造軸組工法住宅では,鉛直荷重を柱

で,水平荷重を耐力壁で支える構造をしている.つまり水平方向の剛性は耐力壁の配置や量によ

って決まるのである.耐震規定が整っていない時代に建てられた住宅には耐力壁が少ない,ある

いはバランスよく配置されていなかったために,木造住宅の被害が多くみられたのである.これ

に関連して,耐力壁の配置や量などで住宅の耐震診断を行うのが既往の耐震診断手法である.本

研究では,木造軸組工法住宅の梁,柱,耐力壁を取り入れた3次元フレームモデルを作成し,数

値解析を行うことにより既往の耐震診断との比較を行う. 1.2 木造住宅の耐震診断について 木造住宅の耐震基準が最初に設けられたのは,1920年に施工された市街地建築物法である.そ

の後耐震規定が設けられ,1950年に建築基準法が制定された.ここで床面積に応じた壁量の規定

や,壁倍率が決められた.それ以降の建築基準法の改正で防火規定や基礎構造の規定,偏心率計

算等の規定が盛り込まれ,これらをもとに日本建築防災協会が1979年に一般の人向けに「わが

家の耐震診断と補強方法」を,建築技術者の人向けに「木造住宅の耐震精密診断」を発行した.

どちらも診断項目は同じではあるが,後者は診断に専門的な計算を必要とするため前者に比べて

精度の高い耐震診断結果を得られる.本研究においては,後者の耐震診断に基づいて診断を行う.

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2.既往の木造住宅の耐震診断

2.1 概要

本研究では,木造軸組工法で構築された木造住宅を対象としている.木造軸組工法とは,木材

によって骨組みをつくるもので,日本で以前から用いられている木造建築工法である.柱・梁・

筋かい・土台が主な構造体である.図2.2.1は,木造軸組工法の概略図である.

既往の耐震診断には,「わが家の耐震診断」と「木造住宅の耐震精密診断」がある.それぞれ

の特徴を以下に記す.

「わが家の耐震診断」・・・・・・・・・・過去の地震被害・研究の成果・建築基準法の耐震規定をもと

に専門家でない人によって作成された耐震診断法.木造住宅

の概略的な耐震診断を行うことができる.

「木造住宅の耐震精密診断」・・・「わが家の耐震診断」によって概略的な診断がなされた木造

住宅の耐震性をより専門的観点から作成された耐震診断法

である.偏心や水平抵抗力を,壁量等をもとに計算する.

2.2 わが家の耐震診断

一般の人でも概略的な耐震診断が可能なのが表2.2.1の「わが家の耐震診断」である.木造軸

組工法においては,鉛直荷重を柱で支え,風や地震による水平荷重を耐力壁で抵抗する方法を採

っている.耐力壁とは,構造用合板や筋かいなどを組み合わせて構成された壁である.耐力壁に

ついては後で詳しく説明する.診断項目の中でも壁に関する項目が多いのは,耐震診断が水平荷

重に重点を置いているからだと考えられる.

土台

筋かい

GL

図 2.1.1 木造軸組工法

小屋組

屋根を支える骨組み

水平剛性も必要

軸組

柱・梁・筋かい・土台

で構成

基礎

上部からの荷重を

地盤に伝える

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表 2.2.1 わが家の耐震診断表

診断項目 評点

良い・普通 やや悪い 非常に悪い

鉄筋コンクリート造布基礎 1.0 0.8 0.7

無筋コンクリート造布基礎 1.0 0.7 0.5

ひびわれのあるコンクリート造布基礎 0.7

地盤・基礎

その他の基礎(玉石,石積,ブロック積) 0.6 診断適用外

整形 1.0

平面的に不整形 0.9 B

建物の形 立面的に不整形 0.8

つりあいのよい配置 1.0

外壁の一面に壁が1/5未満 0.9 C

壁の配置 外壁の一面に壁がない(全開口) 0.7

筋かいあり 1.5 D

筋かい 筋かいなし 1.0

1.8~ 1.5

1.2~1.8 1.2

0.8~1.2 1.0

0.5~0.8 0.7

0.3~0.5 0.5

壁の割合

~0.3 0.3

健全 1.0

老朽化している 0.9 F 老朽度

腐ったり,白蟻に喰われている 0.8

2.2.1 A(地盤・基礎)

この項目では,基礎の種類と地盤の状態によって評点をつけている.布基礎とは連続一体化

している基礎のことである.土台の移動や,浮き上がりを防止するためにアンカーボルトで土

台と基礎を連結する.布基礎の断面形状は上部からの荷重を分散するため逆T字型にして,底

面を広くとるようにする.外周部の布基礎は,床下の換気が充分にできるように床下換気口を

設ける.無筋コンクリートより鉄筋コンクリート評点が高いのは,単純に後者の方が強度が大

きいからである.玉石基礎とは,玉石の上に直接,大引きや根太を置く基礎のことをいう.大

引きとは,床組において,根太を受ける 10cm 程度の角材のことで,根太とは床版を受ける横

木のことである.根太には,大引きより小さい部材を用いる.図 2.2.1 の(a)がコンクリート

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布基礎,(b)が玉石基礎の一例である.

熱,外気温度,物質温度)

アルカリ骨材反応

乾 るいはモルタルが,乾燥環境下において変形して縮む現

2.2.2 B(建物の形)

れば,水平剛性が失われる.木造軸組工法では水平荷重に耐力壁で抵抗

2.2.3 C(壁の配置),E(壁の割合)

構造体である.壁は一般に内壁,外壁,筋かいの組み合

根太

玉石

床板

大引き

GL

防水シート 土台

布基礎 GL

(a)布基礎 (b)玉石基礎

図 2.2.1 基礎の一例

コンクリートのひび割れ発生原因には以下のようなものがある.

(1) 乾燥収縮,硬化収縮,プラスチック収縮 (2) 荷重,外力 (3) 温度変化(水和(4) 材料分離 (5) 塩害劣化,燥収縮は,硬化したコンクリートあ

象である.主な原因はコンクリート中の水分が乾燥により失われることにある.

平面的に不整形であ

する構造をとっているため,平面的に不整形な住宅では,耐力壁の配置の仕方が自然と悪くな

り水平剛性が失われる.立面的に不整形であれば,水平剛性も失われるが,それ以上に垂直剛

性が失われる.1階部分がないということは,立面方向で建物の剛性が不安定な状態を意味と

なり,1階にピロティや車庫があるような立面的に不整形な住宅では,その部分に荷重が集中

してしまい倒壊に至る.

壁は水平剛性を増すには欠かせない

わせで構成される.構造用合板という耐力を計算にいれた材料を用いた内壁や外壁,筋かいで

構成される壁は耐力壁である.対して,構造用合板も用いず,筋かいもない壁は非耐力壁であ

る.図2.2.2は耐力壁の構成図である.壁量は張間方向,桁方向ともに床面積や外壁の見積も

り面積に応じた一定量が必要になる.必要壁量は住宅の重量によって変化する.例えば,屋根

材にスレート葺のような軽い屋根を用いる場合と,瓦のように壁量が多い屋根を用いる場合で

は,後者の方が必要壁量は多くなる.また,2階建て以上の住宅では,2階よりも1階の方が

必要壁量は多くなる.1階部分には2階部分の重量も作用するからである.重量が重くなるほ

ど垂直剛性を確保する必要があるため,鉛直荷重を柱だけでなく,耐力壁も設置することで抵

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抗するようにしているのである.ちなみに,壁は多いほど剛性は増すが,バランスよく配置す

ることが重要になる.バランスが悪いと偏心が生じてしまうからである.

2.2.4 D(筋かい)

の柱と柱のあいだに斜めに入れる部材で,構造用合板同様,耐力壁として

筋かいとは,軸組

扱われる.筋かいには引張り筋かいと圧縮筋かいがある.図2.2.3は水平荷重Pを梁と柱の接

合部に作用させたときの軸力状態である.また,筋かいは左右から作用する水平力に抵抗させ

るために互いに異なる方向に2つの筋かいを組み込んで一対で各軸組の耐力をバランスよく

させる必要がある.このため,ハの字あるいは,Vの字になるようにいれる.図2.2.4に筋か

いの配置例を示す.図2.2.4における好ましくない筋かいの配置例は,水平荷重が作用した場

合に軸組を引抜こうとする力が働いてしまう例である.このことから,階毎にハの字とV字を

使い分けて筋かいを配置する必要があることが分かる.

図 2.2.2 耐力壁の構成

筋かい 内壁 外壁

図 2.2.3 圧縮筋かいと引張り筋かい

llhPN

22 +−=

llhPN

22 +=

lPh

l

Ph− l

Ph

lPh

lPh

P P

圧縮筋かい 引張り筋かい

P−

lPh

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2.3 木造住宅の耐震精密診

の耐震性について,より専門的な観点から診断を行うものである.診断においては,当該住宅

実地に調べることを前提としている.内容は,「わが家の耐震診断表」の各評点の求め方をよ

専門的にした「耐震精密診断表」による再診断と,総合評点に反映していない部分的な欠陥の

調査からなっている.表2.3.1が木造住宅の耐震精密診断表である.

表 2.3.1 木造住宅の耐震精密診断表

診断項目 評点

木造住宅の耐震精密診断とは,「わが家の耐震診断」によって概略的な診断がなされた木造

良い・普通 やや悪い 非常に悪い

鉄筋コンクリート造布基礎 1.0 0.8 0.7

無筋コンクリート造布基礎 1.0 5 0.7 0.

ひびわれのあるコンクリート造布基礎 0.7

地盤・基礎

その他の基礎(玉石,石積,ブロック積み) 0.6 診断適用外

B×C

B×Cの値は偏心率Re 求める.なお,著しく不整形な

ものは別途検討する.

を計算し,図2.4.4によって

D×E

水平抵抗力

D×Eの値を次式により求める.

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛+

+=× ∑ ∑ 25.0

Lll

5.11ED

r

TB βα (2.3.1)

健全 1.0

老朽化している 0.9 F

老朽度

腐ったり,シロアリに喰われている. 0.8

ハの字配置

Vの字配置

好ましい配置例 好ましくない配置例

図 2.2.4 筋かいの配置例

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2.4 木造住宅の耐震精密診断における診断項目の評価方法

(1) 地震時に,地盤が木造住宅を大きく揺らせるような揺れ方をすること. (2) 地震時に,地盤自体 を支持できなくなること.

上記のような悪い地 わらかい土が深く堆積しているところである.特に(2)に関し

ては,砂質地盤による液状化と傾斜地の崩壊が大きな る. 材

次の う

(

(

(3)

「わが家の耐震診断」と「耐震精密診断」における地盤の分類は表2.4.1のようになっている.

第 地

な で 良い・普通」の地盤に含めることにしている.第2種地盤で

沖積層や盛土の場合は震害例も目立つことから,やや悪い地盤としている.液状化の可能

性 る ,診断適用外となる.どんなに住宅の剛性を強く

し ,地盤と基礎がしっかり固定されていない状態では,耐震性は期待できない.

2.4.2に「わが家の耐震診断」による地

れ 省告示1793号(昭和55年)による地盤の分類を示す.

表 2.4.1 地盤の分類の比較

「耐震精密診断」

2.4.1 A(地盤・基礎)

基礎についての評価は「わが家の耐震診断」と変わらない.地盤の良否は木造住宅の震害を

大きく左右する.悪い地盤で木造住宅の被害が大きいのは,主に次のような理由によると考え

られる.

が破壊して,全体的または部分的に住宅

盤とは,や

被害を与え 地盤の判断 料としては

1) 地2) 県

なものがある.

盤調査図,ボーリング柱状図

・市等でつくっている地盤図

該地付近に住んでいる人々の見聞

2種

いの

盤でも関東ローム等の洪積台地等は,木造住宅の耐震性にとって,ほとんど問題が

,このあたりまでを「

があ

ても

ている建設

ような地盤条件の悪いところでは

盤の分類を,表2.4.3に耐震精密診断に利用さ

「わが家の耐震診断」

第1種 良い・普通

やや悪い 第2種

非常に悪い 第3種

表 2.4.2 「わが家の耐震診断」による地盤の分類

良い・普通の地盤 洪積台地または同等以上の地盤(下記以外のもの)

やや悪い地盤 30mよりも浅い沖積層,埋立地および盛土地で大規模な造成工事

(転圧・地盤改良)によるもの

非常に悪い地盤

30mよりも深い沖積層(軟弱層),海・川・池・沼・水田等の埋立

地および丘陵地で小規模な造成工事によるもの,液状化の可能性

があるところ

表 2.4.3 建設省告示第1793号(昭和55年)による地盤の分類

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岩盤,硬質砂れき層その他主として第三紀以前の地層によって構成

第1種地盤 されているものまたは地盤周期等についての調査若しくは研究の結

果に基づき,これと同程度の地盤周期を有すると認められるもの

第2種地盤 第1種地盤および第3種地盤以外のもの

腐植土,泥土その他これらに類するもので大部分が構成されている

沖積層(盛土がある場合においてはこれを含む)で,その深さがお

おむね 30m以上のもの,泥沼,泥海等を埋め立てた地盤の深さが 3

第3種地盤 m以上であり,かつ,これらで埋め立てられてからおおむね30年経

過していないものまたは地盤周期等についての調査若しくは研究の

結果に基づき,これらと同程度の地盤周期を有すると認められるも

2.4.2 B×C(偏心)

図 2.4.1 は構造物に地震力が働いた場合の変形図である. 階の重心に作用する.こ

のため,構造物は水平方向 ほか剛心まわりに回転する.重心とは構造物全体の重さ

の中心,剛心とは構造物に に対抗する力の 味する.重心は間取りや家具

の配置で決まる.剛心は筋かいや耐力壁の配置 まる.重心と剛心の距離を偏心距離

といい,偏心距離が大き ,部分的に過大な

変形 が が低下して構造物

の倒壊につながるのであ 合と

して定義され, 値 きくなる.ちなみに平成12年の建築

基準法改正によって,木 この

偏心 物 合板

等で構成された耐力壁の べることで偏心を評価することができる.なお,

平面的に著しく不整形なもの(例としては,中央部がくびれて,構造的な一体性を期待できな

いもの)や,立面的 震精密診断

の適用範囲外となる す.

地震力は

に変形する

おける水平力 中心を意

によって決

いほど構造物の変形量はおおきくなる.これにより

を強いられる部材 生じる.それらの部材の損傷により,その階の耐力

る.偏心率とは,重心と剛心のへだたりのねじり抵抗に対する割

が大きいほど偏心の度合いは大その数

造住宅においては『偏心率0.3以下であること』が規定された.

全体としてのまとまりのよさをみる項目である.筋かいや構造用

配置と住宅の重心を調

の項目は住宅の建

にスキップフロアのあるようなものは別途検討が必要なため耐

.図2.4.2に偏心率の求め方の図と,表2.4.4に偏心率を求める式を示

変形大

重心

剛心

偏心距離

地震力

変形小

図 2.4.1 地震力の作用

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lx

lyyg

ys

xs xg x

y

ex

ey

S

G

0

・ 座標軸は任意にとる

・ この図では大部分の壁を省略

S:剛心(xs,ys)

G:重心(xg,yg)

ex,ey:偏心距離

lx:x方向の耐力壁の長さ ly:y方向の耐力壁の長さ W:平面を長方形に分割した際の各長方形の面積に応じた重量

図 2.4.2 偏心率の求め方

表 2.4.4 偏心率を求める式

x方向の壁について y方向の壁について

座標軸から

∑∑ ⋅

=x

xs l

yly (2.4.1)

∑∑ ⋅

=y

ys l

xlx剛心までの

距離

(2.4.2)

座標軸から

∑∑ ⋅

=W

yWyg (2.4.3) 重心までの

∑距離

∑ ⋅=

WxW

x g (2.4.4)

gsy偏心距離 yye −= (2.4.5) gsx xxe −= (2.4.6)

弾力半径 ∑ xl∑ ∑ −−

=⋅

2s

2sx

xe

)x)yy(lr

(2.4.7)

∑∑ ∑ −+−

=⋅y

2sx

2sy

ye l)yy(l)xx(l

r+ y x(l

(2.4.8)

偏心率 xe

yxe r

eR

⋅⋅ = (2.4.9)

y⋅e

(2.4.10) xye r

R ⋅ = e

剛心の座標を求める式(2.4.1),(2.4.2)は耐力壁の断面 長さで除

したものである.重心の座標を求める式(2.4.3),(2.4.4 断面の重

心の求め方と考え方は同じで,平面を長方形に分割し ,

和を面積の和で除したも 重心位置(xg,yg)を求め のよ

うに表わすことができる.断面一次モーメントは一般に平面で考える値なので,これを立面的

に考えるためには係数をつける必要がある.式(2.4.11),(2.4.12)の 11,18という係数は,屋

根部分の単位面積あたりの重量と,2階部分の単位面積あたりの重量の違いを考慮するための

づけの係数である.式(2.4.11),(2.4.12)は係数が11で,これは軽い屋根の住宅の場合

の係数である.重い屋根の住宅の

一次モーメントを耐力壁の

)は,構造力学における部材

て その長方形の断面一次モーメントの

る式(2.4.3),(2.4.4)は以下のである.

おもみ

場合の係数は15になる.

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( ) ( )

( ) ( )∑ ∑

∑∑∑∑

∑ ∑∑∑ +⋅ 18yA11

∑∑

+

⋅=

⋅=

+

⋅=

i2i1

i2i2i1i1g

i2i1

i2i2i1i1

A18A11xA18xA11

WxW

x

A18A11yA

WyW

( .12)

1階,2階の平面を長方形に分割したときの各長方形の交点の座標

A1i,A2i:各長方形の面積

x方向,y方向に関して,偏心率Re・x,Re・yが求められれば,B×Cの値を図2.4.4によって

求める.図 2.2.4 のグラフを見ると,B×Cの値の範囲は 0.5~1.0 であるのが読み取れる.

Re・x,Re・yが計算によって得られる値であるのに対し,あくまでB×Cは評点とし

て得られる値であるからだと る.偏心距離がなければ建物の くなるわけで

はないので,B×Cの上限は1.0に設定されている.

2.4.3

E(水

平 抵

抗力)

造住

宅の

耐震

精密

診断

にお

けるD×Eは,地震時の水平力に対する抵抗力の大きさを表す.

+⋅

=gy2.4.11),(2.4

)y,y(x,x i2i1i2i1 :

これは偏心率

考えられ 剛性が強

D ×

x11x21 x12

y11

yy

G21

A21 12

図 2.4.3 重心の求め方

21

12

x0

G

y A11 A

11

G12 ・この例では,1階を2つの長方

形に分割し,2階はもともと長

方形であるとしている.

0.0

0.2

4

0.6

0.8

1.0

1.2

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

Re

B×C

50.0R33.31CBe +

図2.4.4 偏心率ReからB×Cを求める図

(0.15,1.0)

(0.45,0.50)0.

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この耐震精密診断法においては,この水平抵抗力が,耐力壁だけでなく,設計上耐力を評価さ

れていない壁によっても発揮されることを考慮している.D×Eの値は式(2.4.13)によって各

方向別に求める.

⎪⎬ ⎭

⎪⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧

++

=× ∑ ∑ qll

p TB βαE (2.4.13)

p:抵抗力の割合を る係数で1/1.5と定義.

:個々の耐力壁の倍率.表2.4.5参照.

:上記個々の耐力壁の実長

β:個々の無開口壁に貼られた面材等による等価的な倍率. 記αの

ところで数えた構造用合板等については,ここでは数えない.

lT:上記個々の無開口壁の実長

Lr:所要有効壁表の値.表2.4.7参照.

q:垂壁,腰壁などによるラーメン的な効果を表す係数で,0 5とする.

部材によって決まる.壁倍率が大きい

伝統的な壁の作り方で,小舞竹を組み合わせた壁下地に粘性のある

原料として,これに合成樹脂系接着剤を用いて,加熱し成型したものであ

.特徴としては表面が平らで,硬度が高く,切断,加工が容易,耐水性,耐磨耗性に優れて

いること等があげられる.

面材の倍率βは,耐力壁の倍率α

工された材料ではないので倍率が小さいのである.サイディングは外壁に貼る板状の材料で,

る.不燃材料が多く,防火構造

っこうを約 200℃で焼成し,パーライトなどを

混入して水で練り,これを心材に,両面を厚いボード用厚紙ではさみ,板状に成型したもので

ある.よく乾燥させた後に形状を整え,表面に仕上げ加工を施して製品とする.サイデ

同様,防火性,遮音性に優れている.

表 2.4.5 所要有効壁長Lr(m)

D Lr

評点に変換す

α

lB

表 2-4.6 参照.なお,上

.2

上記内容から分かるように,α,βの倍率は壁に用いる

壁ほど剛性は強い.よって剛性をあげるには,壁材に倍率の大きい材料を用いるのが効果的で

ある.土塗壁は日本建築の

混じりの粘土を塗りつけたものである.和風情緒のある空間を演出できるが,壁内部に筋か

いをいれにくく,地震への対応が難しい.構造用合板とは壁などの強度をつくりだすことがで

きる合板のことで,壁倍率2.5として筋かいの代用で使われることが多い.パーティクルボー

ドは木材の木片を主

に比べて小さいことがわかる.もともと耐力を期待して加

桧や杉の羽目板なども含むが,せっこうや金属の工業製品もあ

にも利用できる.せっこうボードは主原料のせ

ィング

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所要有効壁長Lr(m)

軽い屋根(鉄板,スレート葺等) 0.11A1+0.18A2

重い屋根(かや葺,瓦葺等) 0.15A1+0.18A2

A1,A2:それぞれ1階,2階の床面積(m2)

表 2.4.6 耐力壁の有効倍率α

壁の種類 倍率α

土塗壁

木ずり(片面) (断面12×75mm以上)

木ずり(両面) (断面12×75mm以上)

0.5

0.5

1.0

筋かい (鉄筋:径 9mm以上)

筋かい (三つ割:木材30×90mm以上)

筋かい (二つ割:木材45×90mm以上)

1.0

1.5

2.0

上記筋かいたすき掛け 各値の2倍

ただし5.0以下

構造用合板 (厚さ7.5mm 以上) 2.5

パーティクルボード (厚さ 12mm以上)

ハードボード (厚さ5mm以上)

フレキシブル板 (厚さ6mm以上)

せっこうボード (厚さ 12mm以上)

2.5

2.0

2.0

1.0

建設大臣が認めたもの 当該倍率

上記のものを常識的に組み合わせた壁 各値の和

ただし5.0以下

表 2.4.7 面材等による等価的な倍率β

面材等の種類 β

外壁

モルタル塗り

サイディング(巾の広いボード等)

その他(下見板貼等を含む)

1.0

0.5

0

羽目板貼

0.5

内壁 せっこうボード,ラスボード

その他(

0.5

0 プリント合板,スタイロベニヤ等を含む)

2.4.4 F(老朽度)

耐震精密診断におけるF(老朽 では,基礎の変形ならびに構 ・蟻害をと度)の項目 造材の腐朽

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りあげ う は 分が時間とともに劣化をき

たし, ことである.

基礎 って判断して差し支えない.

基礎が も調べて判断する.

構造 ついて調査する.腐朽部分

は,木材の色が茶褐色もしくは白色に変化しているので目視で判断 きる.断面欠

損量を知りた を材表面から押し込み,侵入深

シロ ことが多いので,ハンマー

により 定する.

以上 壁等で壁を破壊して調査が

するこ 目が一つでもあれば,評点

を0.8

(1) ド の間に著しい縦長の三角形の ている.

(2) ドアや窓の建付けが悪く,開閉が思うままにできない. (3) 窓(4) 建物の壁面が傾斜しているのが,肉眼で分かる. (5) 床面の傾斜が座っていて感じられる. (6) シロアリの成虫(4枚 た.

(7) 屋根の棟あるいは軒先が波打(8) モルタル塗 亀裂が入っている.

2.5 耐震精密診断による総合的な耐震判定

表 2.5.1 の木造住 ×(B×C)×(D×E)× の判定は,

わが家の耐震診断表 未満の場合は,補強改修等の対策を講じる必

要がある. 点 に応じた対 が必要であ

.ここでいう部分的な欠陥とは,評点に直接反映しない.本来なら欠陥の発見方法をここで示

べきだが,本研究では部分的な欠陥がないものとして研究を進めるため省略する.

3.木造住宅の耐震精密診断による評価

ている.ここでい 老朽化と ,建物の構造耐力上主要な部

健全時の状態を維持せず,構造耐力上欠陥とみなしうる現象の

については,亀裂の有無について調べる.亀裂は目視によ

布石積・玉石等の場合,亀裂とあわせて石のずれ,玉石の沈下

材の腐朽・蟻害は,主に建物外周ならびに浴室周りの土台に

することがで

いときは,ドライバー さを測る.

アリによる被害は,表面層を残して内部が被害を受けている

打診を行い,健全部と被害部との打撃音ならびに打撃感触で判

は,直接土台を露出させて調査する場合である.モルタル塗

とができないような場合は,以下により判定する.下記の項

としてよい.

アや窓を閉めたとき,枠と建具と 隙間を生じ

の敷居が著しく水平を欠いている.

羽のついたシロアリ)が浴室から飛び出し

っている.

壁に長い斜めの

宅の耐震精密診断表による総合評点A F

と同一とする.総合評点が1.0

総合評 が1.0以上でも部分的な欠陥がある場合には,それ 策

総合評点 判定

1.5以上~ 安全である

1.0以上~1.5未満 一応安全である

0.7以上~1.0未満 やや危険である

0.7未満 倒壊または大破壊

の危険がある

表 2.5.1 耐震精密診断総合評点表

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3.

れぞれ1階,2階の概略的な平面図であり,図3.1.3が立体図である.

図3

筋か 取り付けるもので,間柱は直

接荷 の役割をするものである.前述したように,壁

が内 な外壁のないモデルにすることで,

必要

1 対象とする住宅

図3.1.1,図 3.1.2がそ

.1.3において,柱と柱の間に交差して入っている部材が内壁を,Ⅴの字に入っている部材が

いである.間柱と,外壁は省略した.間柱とは,柱と柱の間に

重がかかるものではなく,壁の下地材として

壁だけで構成されることはないのだが,モデル1のよう

最低限の耐力を求めることにした.

1階自重:300kg/m

立面高さ:1.8m 面 積:6.48m2

2×6.48m2

=1944kg =19051.2N

図 3.1.2 住宅モデル1 2階平面図

内壁

筋かい

通し柱 1.8m

1.8m

1.8m

1.8m 1.8m 0.9m

立面高さ:1.8m 面 積:12.96m2

1階自重:300kg/m2×12.96m2

=3888kg =38102.4N

内壁

筋かい

住宅モデ 面図

1.8m

1.8m 通し柱

図 3.1.1 ル1 1階平

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筋かい

内壁

y x

z

図 3.1.3 住宅モデル1 立体図

2 剛心の計算

3.

③ ④

② ③ 2階

1階

4.1

3.2 0.5

0.5

4.1

0.5 2.3

剛心 剛心

図 3.2.1 剛心の計算

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まず,建物の強さの中心を求める剛心の計算を行った.図 3.2.1 における座標軸は任意でとり,

住宅モデルの座標(0,1.8,0)を基準として図 3.2.1 の xy座標の原点からの距離をそれぞれ 0.5とした.

(1)1階剛心の計算

x方向の剛心位置

y方向の剛心位置

(2)2階剛心の計算

x方向の剛心位置

心位置

3.3 重心の計算

重心の座標を求める式(2.4.3),(2.4.4)を利用した.構造力学における部材断面の重心の求め

方と考え方は同じで,平面を長方形に分割して,その長方形の断面一次モーメントの和を面積の

和で除したものである.モデルの住宅は重い屋根であるとする.ただし,本研究においては,重

心の位置を各階方向別に求めることにした.重心を求める式(2.4.3),(2.4.4)は建物全体の重心

置 求めようとしているが,剛心を求める式(2.4.1),(2.4.2)は建物全体としての剛心を求

める式で表現されていない 心距離を求める際に,重心 体として,剛心は各階

別々では不釣合いになっ 階方向別に求めることにした.よって式

(2.4.3),(2.4.4)の重みづけの係数は

通り y1 lx1 1 (y1-ys1) lx1(y1-ys1)2lx1・y

① 0.5 1.8 0.9 -2.4 10.368

② 4.1 3.6 14.76 1.2 5.184

x方向

∑ 5.4 15.66 15.552

通り x1 ly1 ly1・x1 (x1-xs1) ly1(x1-xs1)2

③ 0.5 1.8 0.9 -1.35 3.2805

④ 3.2 1.8 5.76 1.35 3.2805

y方向

∑ 3.6 6.66 6.561

通り y2 lx2 lx2・y2 (y2-ys2) lx2(y2-ys2)2

① 4.1 1.8 7.38 0 0

x方向

∑ 1.8 7.38 0

通り x2 ly2 ly2・x2 (x2-xs2) ly2(x2-xs2)2

③ 0.5 1.8 0.9 -0.9 1.458

④ 2.3 1.8 4.14 0.9 1.458

表 3.2.2 2階剛心の計算

表 3.2.1 1階剛心の計算

y方向

∑ 3.6 5.04 2.916

9.24.566.15y 1s ==

85.16.3

66.6x 1s ==

1.48.138.7y 2s ==

y方向の剛

4.16.3

04.5x 2s ==

の位 を

.偏 の座標は建物全

てしまうと考えたため各

無視する.

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表 3.3.1 重心の計算 A11 A12y

(1) 1階重心の計算

部分 面積 x方向の重心 y方向の重心

i A1i y1i A1i・y1i x1i A1i・x1i

1 9.72 2.3 22.356 1.85 17.982 A21

2 3.24 3.2 10.368 4.1 8413.2

∑ 12.96 32.724 31.266

i A2i y2i A2i・y2i x2i 2iA2i・x

x

0.5

0.5 3.

1 6.48 2.3 14.904 1.4 9.072

∑ 6.48 14.904 9.072 図 3.1 重心の計算

x方向の重心位置

52. 5296.12724.32

A15yA15

WyW

yi1

i1i11G ===

⋅=

∑∑

∑∑

( 係 略)

y方向の重心位置

以下 数を省

4125.296.12266.31

AxA

WxW

x 1G =∑

i1

i1i1 ===⋅

∑∑∑

(2) 2階重心の計算 x方向の重心位置

3.248.6904.14

AyA

WyW

yi2

i2i212G ===

⋅=

∑∑

∑∑

y方向の重心位置

4.148.6

072.9A

xAW

xWx

i2

i2i22G ===

⋅=

∑∑

∑∑

3.4 偏心率の計算

地震荷重は木造住宅の重心に作用し,剛心周りに回転する.剛心を支点,重心を重りと考えれ

ば理解しやすい.この重心と剛心の距離を偏心距離といい,偏心距離から弾力半径を求め,偏心

率を求めることができる.偏心率が大きいほど住宅の変形は大きくなる.

(1) 1階の偏心率

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375.0525.29.2yyex方向の偏心距離 1G1S1y =−=

y方向の偏心距離

−=

5625.04125.285.1=xx 1G =−=

x方向の弾力 径

e 1S1x −

半 ∑

∑ ∑ −+− yy=

1x

21s11y1s1x

l)xx(l)(

⋅ 1xer2

1l

02.24.5

561.6552.15 +==

y方向の弾力半径 ∑

∑ ∑ −+−=⋅

1y

21s11x

21s11y

1ye l)yy(l)xx(l

r

48.26.3

552.15561.6=

+=

x方向の偏心率 186.002.2375.0

re

R1xe

1y1xe ===

⋅⋅

227.048.2

5625.0reR

1ye

1x1ye ===

⋅⋅ y方向の偏心率

心率Re・x1,Re・y1を用いてB×C(偏心)の値を める.(0.5≦B×C≦1.0)

偏 求

50.0R33.3

1CBe +

1階x方向 893.050.0186.033.3

1CB =+×

796.01階y方向 50.0227.033.3

1=

+×=×

(2) 2階の偏心率

CB

x方向の偏心距離 8.12.21.4yye 2G2S2y =−=−=

04.14.1xxe 2G2S2x =−=−= y方向の偏心距離

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x方向の弾力半径 ∑

∑ ∑ −+−=⋅

2x

22s22y

22s22x

2xe l)xx(l)yy(l

r

27.18.1916.20

=+

=

y方向の弾力半径 ∑

∑ ∑ −+−=⋅

2y

22s22x

22s22y

2ye l)yy(l)xx(l

r

9.06.3

0916.2=

+=

417.127.18.1

re

R 2xe⋅x方向の偏心率 2xe

2y ===⋅

y方向の偏心率 09.0

0reR

2ye

2x2ye ===

⋅⋅

偏心率Re・x2,Re・y2を用いてB×C(偏心)の値を求める.(0.5≦B×C≦1.0)

50.0R33.3

1CBe +

2階x方向 191.050.0417.133.3

1=CB

+×=×

2階y方向

000.250.0033.3

1CB =+×

ここで,0.5≦B×C≦1.0なので2階x,y方向の評点B×Cは, 階x方向 5.0CB =× 2

2階y方向 0.1CB =× となる.

3.5 水平抵抗力の計算

D×E(水平抵抗力)は式(2.3.1)を用いて計算した.内壁にはせっこうボード壁倍率α=1.0を,

筋かいには三つ割壁倍率α=1.5を用いた.壁倍率については,表2.4.6を参照.D×Eの評点に

関しては,1階,2階をあわせて計算した.表2.4.5における所要有効壁長Lrに重みづけの係数

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がついているのが理由である.図 3.5.1 の平面図のx方向の壁の通りに①~③,y方向の壁の通

りに④~⑦の番号を割り振り,これをもとに各通り毎に∑αlBを求めて,x,y方向の水平抵抗力を求めた

1104.348.618.096.1215.0A18.0A15.0L 21r =×+×=+=

(1) x方向の壁 ① 内壁:1.8m 筋かい:1.8m

1.8=4.5m

② 内壁:3.6m 筋かい:1.8m .3m

③ 内壁:1.8m

∑αlB=1.0×1.8=1.8m

①+②+③

∑αlB=4.5+6.3+1.8=12.6m

図 3.5.1 水平抵抗力の計算

⑦ ⑥

④ ⑤

x

y

∑αlB=1.0×1.8+1.5×

∑αlB=1.0×3.6+1.5×1.8=6

867.225.01104.35.1

⎟⎠⎝

6.121ED =⎞⎜⎛ +=×

(2) ④ 内壁:1.8m

∑αlB=1.0×1.8=1.8m

⑤ 内壁:1.8m 筋かい:1.8m ∑αlB=1.0×1.8+1.5×1.8=4.5m

⑥ 内壁:1.8m 筋かい:1.8m

い:1.8m ∑αlB=1.0×1.8+1.5×1.8=4.5m

y方向の壁

∑αlB=1.0×1.8+1.5×1.8=4.5m

⑦ 内壁:1.8m 筋か

④+⑤+⑥+⑦

∑αlB=1.8+4.5+4.5+4.5=15.3m

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446..01104.3

3.155.1

1ED =⎟⎠⎞

⎜⎝⎛ +=×

325

.6 総合評点

1 が木造住宅の耐震精密診断による各階方向別の総合評点で る.A,Fの評点は1.0

定したため,総合評点の値が,B×C×D×Eの値である.全体的に総合評点の値が高

いの ,A,Fの項目を良好と仮定したのも原因ではあるが,建物自体の水平抵

抗力が大 本研究で用いた耐力壁は,どちらも壁倍率が1.0

を越えるもの り広くない分,水平抵抗力を求める式における所要有効

壁長Lrの値が さかったことが影響して水平抵抗力の値が大きくなったのだろう.建物の強さに

は,壁に 壁量を配置するかの方が重要になるということが分かっ

た.偏心の項 がなくバランスがとれているのに比べ,2階は耐力壁の

配置が偏って 計算ではB×Cの値が 0.5~1.0 におさまらなかった.水平抵抗力を各

とすれば,2階x方向の総合評点は 1/2,2階y方向の総合評点は約

2 倍になって 偏心はあくまで水平抵抗力の倍率程度に考える る.

水平抵抗力さえあれば,偏心の評点が悪くても総合評点では安全圏の評点を得ることができる.

A(地盤・基礎) B×C(偏心) ×E(水平抵抗力) F(老朽度) 総合評点

3

表3.6. あ

として仮

が分かる.これは

きいのが主な原因であると考えられる.

を用い,更に床面積があま

何の材料を用いて,どれだけの

目に関しては,1階は大差

いるために

階方向別に計算していた 約

いたと予想される. ことができ

総合評点 D

1階x方向 1.0 0.893 2.867 1.0 2.560

1階y 0.796 3.446 1.0 2.743 方向 1.0

2階x方向 0.500 2.867 1.0 1.434 1.0

2階y方向 .000 3.446 1.0 3.446 1.0 1

表 3.6.1 耐震精密診断による総合評点

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4.数値解析による木造住宅の耐震性能

1 概要

木造住宅の耐震性能は,対象とする木造住宅の降伏耐力,終局耐力を求めるこ

の手順を示す.図4.2.1の内壁モデル,外壁モデ 分かるように,壁は2本の線部材を

交差させることで面材に見立てる.これをブレー 置換とよぶ.置換された壁モデルに,柱,梁,

筋かいで構成された筋かいモデルを重ね合わせることで耐力壁モデルを表現した.なお,部材と

部材の接合部はピンで接合する.

4.

数値解析による

とで評価する.そのためには,数値解析によって荷重-変位曲線を導出しなければならない.こ

の章では荷重-変位曲線を導出するまでの過程を説明する.

4.2 対象とする住宅のモデル化

構造解析を行うにあたって住宅をモデル化する.木造軸組工法で設計された住宅は,鉛直荷重

を柱で支え,水平荷重を梁,筋かい,耐力壁で受け持つ構造をしている.本研究では,木造住宅

の柱,梁,筋かい,耐力壁をモデル化することで数値解析を行う.

まずは対象とする住宅の平面図と立面図を用いて3次元で座標を設ける.設けられた座標を線

でつなぐことで厚みのない部材のモデルができる.ここで,弾性係数E,降伏応力σ,ポアソン

比νを部材の種類ごとに定義して部材の性質を設定する.同時に,部材の断面形状を定義する.

以上が梁,柱,筋かいのモデル化の手順である.壁あるいは耐力壁は線材ではないので,面材に

見立ててモデル化する必要がある.例として筋かい,内壁,外壁で構成された耐力壁のモデル化

ルを見ると

図 4.2.1 耐力壁のモデル化

内壁モデル

筋かいモデル

外壁モデル

耐力壁モデル

等価

等価

等価

内壁

筋かい

外壁

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4.3 荷重の定義

一般に住宅に作用する荷重には下記のようなものがある.

重(屋根材,柱,梁,床,畳等)

(5)地震荷重(地震のときに生じる地震力)

のに対し,(4),(5)は短時間に作用する短期荷重

して地震荷重を載荷し,住

W1が1階の自重で,W2が2階の自重である.式(4.3.1)で定義したW1,W2を載荷すれば,

受ける鉛直荷重はW1+W2となる.自重を 1㎡あたり 300kgと定義しているが,これを梁に載荷するには,梁が面材ではなく棒材なので単位を変更しなければならない.例とし

て,図 4.3.2(a)のような平面図を考える.線で表されているのが梁である.梁の断面は高さ

210m とする.一 には断面高さが柱より高いものを用いる.各々の梁にかかる

分布荷重を計算するためには,図4.3.2(b)のように領域を区切る.梁にかかる荷重は梁に隣り

合う領域の面積にWをかけたものである.しかし,このままでは単位がkgとなり,分布荷重にならない.先ほど出した値を各梁の部材 布荷重を求めることができる.ちなみに,

本研究では分布荷重を,部材に密度を与えることで設定するので分布荷重を各梁の断面積で割

る必要がある.表4.3.1に分布荷重と密度の計算結果を示す.

(1)固定荷

(2)積載荷重(家具や人間の荷重のことで,変動するもの)

(3)積雪荷重(屋根,あるいはベランダに積もった雪による荷重)

(4)風荷重(台風や,暴風のときの風による圧力)

(1),(2)は継続的に作用する長期荷重である

である.(3)は地域により作用期間が異なる.住宅の安全を考えるときは,荷重の大きさと持続

性や繰り返しの影響も考える必要がある.

本研究では,鉛直方向の荷重として固定荷重を,水平方向の荷重と

のモデルを終局状態にもっていく.

4.3.1 固定荷重

固定荷重は鉛直方向に作用する荷重である.数値解析では固定荷重を分布荷重として1階,

2階梁部分に載荷する.梁に載荷した分布荷重は柱を通じて地盤に伝わる.住宅の自重は式

(4.3.1)で定義する.

22

21

m/kg300W

m/kg300W (4.3.1)

=

=

住宅の地盤が

m,幅105mm 般に梁

長で割れば分

W1

W1+W2

W2

W2

図 4.3.1 鉛直荷重の伝わり方

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0.9m 1.8m

4.3.2 地震荷重

地震荷重は水平方向に作用する荷重である.この荷重を柱と梁の接合部に作用させる.なお,

地震荷重はx方向,y方向別々に計算しなければならない.地震荷重Pは,式(4.3.2)で定義

する.Pは慣性の法則のF=mαのFをPに見立てて,住宅に地震荷重Pが作用しているように考える.図4.3.3は地震荷重を水平方向に載荷するときの立面図である.1階梁部分に載荷させる

地震荷重がP1+P で表されるのは,1階の柱部分にかかる荷重がW +W るからである. 2 1 2とな

22

11

WPWPαα

==

(4.3.2)

α:任意定数 W1,W2:固定荷重(=300kg/m2)

今,図4.3.5のようなモデルに地震荷重をx方向に載

荷する場合を考える.柱と梁の接合部は,A~Cの3点である.まず式(4.3.2)でα=10として

地震荷重Pを計算する.

N58800kg60003001030010WWPPP 2121 ==×+×=+=+= αα

点A,B,Cに作用する地震荷重をそれぞれPA,PB,PCとおくと

P1+P2

P2

図 4.3.3 地震荷重の定義

1.8

B C

F A EF A E

m

B C DD

G

H

I

分布荷重の求め方

梁 隣り合う領域領域の面積(m2) 荷重(kg) 部材長(m) 分布荷重(kg/m) 断面積(m2) 密度(kg/m3)0.6075 182.25 1.8 101.25 0.02205 4592

CD

0.8100 243.00 1.8 135.00 0.02205 6122FA AGF 0.2025 60.75 0.9 67.50 0.02205 3061CF FGHC,FIC

図 4.3.2

(a) (b)

表 4.3.1 分布荷重と密度

AB AGHBBC BHC 0.2025 60.75 0.9 67.50 0.02205 3061D CID 0.8100 243.00 1.8 135.00 0.02205 6122E DIE 0.8100 243.00 1.8 135.00 0.02205 6122EF EIE

1.4175 425.25 1.8 236.25 0.02205 10714

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A PPP = (4.3.3)

となる.PA,PB,P の値はx方向の面積率によって求め .図 .3. モデルを図4.3.4

のような領域に分割する.つまり,隣り合う接合部の中間地点で領域を区切り, ぞれの面

積を求める.各領域の面積を全面積で除した値が面積率である.面積率に地震荷 れ

A,PB,PCが求まる.

全体の面積Aは,

であり,各々の領域の A,AB,ACとすると,

A

m81.09.09.0A

m215.19.035.1A

m405.09.045.0A

=×=

=×=

=×=

となる.面積率を a,b,cとおくと

BP ++ C

る 4 5のC

それ

重Pを掛け

ばP

2m43.27.29.0A =×=

面積をA

2

0.45m

1.35m

0.9m

P2

C

2B A

PB

PC

図 4.3.4 領域の区切り方

33.0A

Ac

5.0A

Ab

167.0A

Aa

C

B

A

==

==

==

よって,P,P,PCは,以下のようになる.

A B

N19404cPPN29400bPP

N9820aPP

C

B

A

=×==×==×=

x

y

x

z

y

0.9m

1.8m

0.9m

図 4.3.5 面積率による固定荷重の計算

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4.4 荷重-変位曲線

モデル化した住宅に,数値解析によって式(4.3.1)で定義した固定荷重を載荷した状態で,梁

=1 と定義すれば,1 ステップ毎に 100Nが載荷されることになる.たときを構造物が大変形を起こしたとき,と仮定してそのときの荷重を

とする.例として,柱の長さを 1.8m,部材変形角 1/20radとしたときの変位は 180cm×9cmとなったときの荷重を終局耐力

とする.地震荷重を載荷する節点は数箇所存在するため,各々の節点の変位を平均する.載荷し

た地震荷重Pと各々の節点の変位の平均δの関係は,図 4.4.2 の になる.降伏点までが弾性

域であり,それを過ぎると塑性域となる.物体に力を与えても変形が元に戻る性質を弾性 ,

力を抜いても変形が元に戻らない性質を塑性という.降伏点における地震荷重をPyとし,これを

から読み取れない場合は 量的な方法として,荷重-

変位曲線に2本の接線を引き,接線の交点から変位軸に垂線を下ろし,グラフと交わる

を降伏点とし,そのときの荷重Pを降伏耐力とする.なお,終局耐力,降伏耐力ともにグラフを

基に目読によって算出する.降伏耐力は,接線の引き方にもよって大幅に値が変わってしまうた

め,精度は低い.終局点における荷重Puは対象とする構造 の最大耐力であり,すなわち

力である.終局とは,構造物の全体一部が,一つの剛体の構造体として転倒その他により安定を

失うことをいう.

柱の接合部に地震荷重Pを載荷する.地震荷重は式(4.3.2)によって定義する.なお数値解析

よる水平荷重Pは最終的に載荷される値である.これは,本研究で用いる数値解析手法が定義

れた荷重をステップつまり段階的に載荷する手法をとっているからである.例えば地震荷重P

000N,ステップの分割数を 10部材角が 1/20rad変位し

終局耐力

0.05=9cmである.よってこの場合は柱と梁の接合部の変位が

よう

といい

降伏耐力とする.降伏点が明確にグラフ ,定

点の耐力

物 終局耐

l rad

201

rad201l×

図 4.4.1 部材変形角と変位

δ

降伏点

終局点

δu

Py

Pu

δy

図 4.4.2 荷重-変位曲線

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図5.1.1 差分法

5.本研究で用いた数値解析手法

法であり,マトリックス法は構造力学等の分野をも含め

5. 剛性方程式

5.3.1 のようなバネのモデルを用いて

剛 方程式を考える.バネに加わる力をf,

節 の変位を u,ばね定数を k とする.フ

ックの法則を適用し,節点力と変位の関係

を める.

)u1=0の場合

=0なので,節点1に 点2に働く力と逆向きの力が働く.

=

==

12

221

kuf)-f(-kuf

(ⅱ)u2=0の場合

u2=0 のときは,節点2 節点1に働く逆向きの力が働く.

5.1 有限要素法とは

本研究で用いた数値解析は有限要素法に基づいて計算が行われてい

る.有限要素法は,微小要素の集合を用いて連続体力学における問題を,

数値的に解析するために用いる近似解析手法である.また他の近似法

として代表的なものには差分法がある.

差分法では,図5.1.1に示しているように各要素を格子状に区切るこ

とにより,差分近似していく.差分法では得られる差分式は簡単である

が,複雑な形状の境界の処理場合,格子点が境界上にないため困難であ

る.そこで図5.1.1の場合に,空間分割を四角形だけでなく三角形も許

すと,図5.1.2 のように境界の形状を容易に近似できる.

有限要素法ではこのように,2次元ならば三角形または四角形,3次

元の場合には四面体,五面体,六面体の各要素を用い対象領域を埋め尽

くす.そしてこの各要素を小さくすれば近似解を真値に近づけること

ができる.

5.2 マトリックス法

有限要素法はマトリックス法とも呼ばれるが,厳密にはマトリックス法の中

取り扱うのが有限要素

3

節点 1

f1

u1

図 5.3.1

k図

(ⅰ

u1 は節

⎩⎨⎧

⎩⎨⎧

===

)-f(-kufkuf

112

11

た総称である.

(5.3.1)

(5.3.2)

で連続体力学の分野を

図 5.1.2 有限要素法

節点 2

u2

f2

バネのモデル

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式(5.3.1),(5.3.2)を重ね合 の関係を表す式が得られる.

= ku-kuf (5.3.3)

(5.3.4)

剛性方程式は次の式で表

わせると,一般的なバネの変位と荷重

⎩ 212

式(5.3.3)をマトリックス表示にする.

⎬⎫

⎨⎧⎥⎤

⎢⎡−

−=⎬

⎫⎨⎧ 11

uu

kkkk

ff

 

⎨ +=211

ku-kuf

⎭⎩⎦⎣⎭⎩ 22

式(5.3.4)において,{f}=⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

2ff,[K]= ⎥

⎤⎢⎣

⎡−

−kkkk

  ,{δ}=⎭⎬⎫

⎩⎨⎧uuとすると

される.

1

2

1

{ } [ ]{ } (5.3.5) δ= Kf

式(5.3.5)における,{ }f が節点力ベクトル,[K]が剛性マトリックス表す.

,{δ}が変位ベクトルを

4 座標変換マトリックス

ックスを用い,局所

所座標系(p,v)を基準にして力の分解をし

⎩⎭⎩ pjpj)

の力の関係式は

⎧δ⎤⎡

vj

vi

vj

vi 00f 5.4.2)

ここでバネは材軸方向pにのみ剛性をもっている,つまり垂直方向vに変位しても力が生じな

ため式(5.4.2)の剛

式(5.4.1),式(5.4.2)を重ね合わせる.

⎪⎪⎩

⎪⎪⎧

δ

δδ

⎥⎥

⎡ −

⎪⎪⎭

⎪⎪⎩

vj

vi

pi

vj

vi

pi

0000

000k0k

f

f

(5.4.3)

式(5.4.3)は節点力と変位の関係を全体座標系でなく,局所座標系で表したものである.これ

を全体座標系で表すことを考える.

5.

θ

fpj,δpj

前で求めた剛性マトリ

座標系を全体座標系に変換する手法を考える.

図 5.4.1 は全体座標系(x,y)にあるバネをfvj,δvj

fviδvi

fpii

j

x

y

図 5.4.1 全体座標系と局所 標系座

δpi

たものである.

材軸方向pの力の関係式は

⎬⎫

⎨⎧δδ

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡−

−=⎬

⎫⎨⎧ pipi

kkkk

ff

(5.4.1

垂直方向v

⎭⎬⎫

⎩⎨δ⎥⎦

⎢⎣

=⎬⎨ 00f (

い 性マトリックスが0になるのである.

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬⎨δ⎥⎢−

=⎬⎨pj0k0kf

⎢⎪⎪

⎪⎪

pj 00f

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節点iでのp,vとx,yの力の関係は式(5.4.4)で表される.

cosfsinff xivi

yixipi (5.4.4)

節点jでも同様に考えて

cosfsinff yjxjvj

yjxjpj (5.4.5)

変位についても節点i,jでそれぞれ式が成り立つ.

θ+θ−=δ

θ+θ=δ

vsinu

sinvcosu

vipivi

⎪⎨ −=δ

θ+θ=

cosu

sinvcosu pjpj

.4),(5.4.5),(5.4.6),(5.4.7)をマトリックス表示にする.

⎪⎪⎧⎥⎤⎡ θθ

yj

yi

xi

fff

cossin00

0000sincosf

(5.4.8)

⎪⎪⎨⎥⎥⎥⎥

⎢⎣ θθ−

θθθθ

⎪⎪⎭

⎪⎪⎩

δ vj

pj

vi

pi

vj

pj

vuv

00sincos00

00cos (5.4.9)

ここで

⎪⎩

⎪⎨⎧

θ+θ−=

θ+θ= sinfcosff

yi

⎪⎩

⎪⎨⎧

θ+θ−=

θ+θ= sinfcosff

⎪⎩

⎪⎨ cos

vipipi (5.4.6)

⎧δ

⎪⎩ vjpjvj

式(5.4

θ+θ vsinvj

(5.4.7)

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎪⎨⎥⎥⎥

⎢⎢⎢

θθ−θθ

=

⎪⎪⎬

⎪⎪⎨

xjpj

vi

fsincos00

ff

⎢ θθ−⎪⎪pi

cossinf⎧

⎩⎦⎣⎭⎩ vj

⎧⎤⎢⎡−

θθ⎪⎫

⎪⎧δδpi u

sin00sincos

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎪⎢

⎢=⎬⎨δvi

⎩⎦cossin

{ }=f

⎪⎪⎭⎩ vj ⎭⎩ yj

⎪⎪⎬

⎪⎪

⎪⎪⎨

pj

vi

pi

fff ⎪

⎪⎪

⎪⎪⎨=

xj

xi

fff

f

⎫⎧f ⎫⎧f

,{ }

⎪⎪

⎪⎬

yi ,{ }=δ ⎪⎬

⎪⎨δ

vi ,{ } ⎪⎬

⎪⎨=

⎪⎬

⎪⎨δ

=δ viyi ,

⎪⎪⎭⎩ vj ⎭⎩⎭⎩ vjyj

⎪⎫

⎪⎪

⎪⎧

δ

δδ

pj

pi⎪

⎪⎪

⎪⎧

⎪⎪

⎪⎫

⎪⎪

⎪⎧

δ

δδ

pj

pi

xj

xi

vuvu ⎫

⎪⎪

[ ]⎥⎥⎥⎥⎢ 0000 ⎢ θ− sin

⎦⎢⎢⎢

−=

00000k0k

K

θθ−θθ

θ=

cossin00sincos00

00cos0

T

とおくと,式(5.4.3)は次式で表される.

⎤⎡ − 0k0k ⎡ θθ 0sincos

,[ ]⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢

{ }=f [ ]K { }δ

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(5.4.10)

また

{ } [ ]{ }{ } [ ]{ }δ=δ

=

T

fTf

.11)より次式が得られる.

(5.4.11)

となり,式(5.4.10),(5.4

[ ]{ } [ ][ ]{ }{ } [ ] [ ][ ]{ } [ ]{ }δ=δ=

δ=

KTKTf

TKfTT

(5.4.12)

[ ]K は全体座標系における剛性マトリックスであり,[ ]T は座標変換マトリックスである.

5.5 全体剛性マトリックス

前で求めた剛性マトリックス,座標変換マトリックスを用いて構造全体の剛性マトリックスを

考える.ここでは図5.5.1のようなバネのモデルを例にする.

座標変換マトリックス[T]を用いると,要素aについて,

π2

=θ なので

⎢⎢⎢⎢

⎣ −

−=

010010000001

T a (5.5.1)

要素bについて,

[ ]⎥⎥⎥⎥

⎤⎡ 0010

°=θ 30 なので

[ ]

⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢

−=

23

2100

21

2300

0023

21

0021

23

T b (5.5.2)

k

b

a

2

3

1

30°

90° x

y

図 5.5.1 バネのモデル

k

[ ] [ ] [ ][ ]TKTK 1−= より,各要素の剛性マトリックス

を求め,節点力と変位の剛性方程式を得る.

要素aについての剛性方程式は

⎪⎪⎬

⎪⎪

⎪⎪⎨

⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎡

−=

⎪⎪

⎪⎪⎬

⎪⎪

⎪⎪⎨

2

1

1

2x

1y

1x

vuvu

101000001010

0000

k

ffff

(5.5.3)

となる.同様にして要素bでは

⎪⎪⎭⎩⎦⎣⎭⎩ 22y

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⎪⎭⎪⎩⎥⎪⎩ 3v4444⎪

⎪⎪⎬

⎪⎪⎨

⎥⎥

⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢

−−

−−=

⎪⎪⎭

⎪⎬

⎪⎨

3

2

2

3y

3x uvu

1313

333341

43

41

43

4444

k

ff

(5.5.4)

ね合わせると全体の

⎤⎡−−

⎫⎧ 2x

3333

f

⎪⎪ 2yf

⎦⎣ 4444

この2式を重 剛性方程式となる.

⎪⎭⎪⎩⎥⎢⎪⎭⎪⎩ 33y v4444f ⎪

⎪⎪⎪⎪⎫

⎪⎪⎪⎪

⎥⎥

⎥⎥⎥

⎢⎢

−−

−−

−−

⎪⎧

3

1

1

3x

1x

u

uvu

41

43

41

4300

00

43

43

43300

000000

ff

荷重条件は,節点2にx方 るので

拘束条件は,節点1,3が拘束されているので

となる.これらの条件を式(5.5.5)に代入すると,全体の剛性方程式は次式となる.

⎧⎥⎥

⎢⎢ −⎫ 001010

⎪⎪⎬

⎪⎪⎨

⎥⎥⎥

⎢⎢⎢ −−+−=

⎪⎪⎬

⎪⎪⎨

2

2

2y

2x

v333341

43

411

4310k

ff

(5.5.5) ⎢⎢

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪ 1y 4f

向の荷重Fのみ働いてい

0vuvu 3311 ====

⎪⎭⎪⎩⎥

⎢⎣

0

44400

4444 ⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎥⎥

⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎡

−−

−−

−−+−

−−

=

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

0vu0

41313

333300

41

43

411

4310

43

43

43

4300

1010000000

k

ff0F

ff

2

2

3y

3x

1y

1x

(5.5.6

0f,Ff 2y2x ==

⎫⎧⎥ 000

)

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式(5.5.6)は未知項と既知項が混在していてわかりにくいので,式変形を行う.

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎦⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢

⎢⎢⎢

−−

−−

−−−

−−

=

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

0000vu

41

4300

41

43

43

4300

43

43

00101000000041

431053

4400

43

43

k

fff

0F

2

2

3y

3x

1y

1x (5.5.7)

既知部分の荷重ベクトルをfa,未知部分の荷重ベクトルをfbとおく.また,未知の変位ベクト

ルをδとおく.剛性マトリックスは4つの部分マトリックスに分ける.すると,式(5.5.7)は次

式 ように簡略化して表すことができる.

⎩⎨

⎤33 33

⎢⎢

⎪⎪

⎪⎪ 44

f44

f

のの

⎭⎬⎫⎧δ

⎥⎦

⎢⎣

=⎭⎬

⎩⎨ 0KKf bbba

abaa

b

a (5.5.8)

式(5.5.8)を分解して

(5.5.9)

(5.5.10)

式(5.5.9)より,未知変位δは

(5.5.11)

101000000041

431053

4400

43

43

k

fff

0F

2

2

3y

3x

1y

1x (5.5.7)

既知部分の荷重ベクトルをfa,未知部分の荷重ベクトルをfbとおく.また,未知の変位ベクト

ルをδとおく.剛性マトリックスは4つの部分マトリックスに分ける.すると,式(5.5.7)は次

式 ように簡略化して表すことができる.

⎭⎬

⎩⎨⎤⎡⎫⎧ KKf ⎫⎧

{ } [ ]{ }δ= aaa Kf

{ } [ ]{ }δ= bab Kf

{ } [ ] { }a1

aa fK −=δ

元の形に戻して 元の形に戻して

δ⎥⎦

⎢⎣

=⎭⎬

⎩⎨ 0KKf bbba

abaa

b

a (5.5.8)

式(5.5.8)を分解して

{ } [ ]{ }δ= aaa Kf (5.5.9)

{ } [ ]{ }δ= bab Kf (5.5.10)

式(5.5.9)より,未知変位δは

{ } [ ] { }a1

aa fK −=δ (5.5.11)

⎤⎡⎫⎧ KKf

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

⎥⎦⎢⎣ 44⎥⎥⎥

⎢⎢⎢

=⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

0F

k5k3

k4

k4

vu

2

2 (5.5.12)

よって

⎤⎡−

331

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

−=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

k3F3

k3F5

vu

2

2 (5.5.13)

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未知変位が求められたことにより,式(5.5.10)を計算して未知反力を求めることができる.

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢⎢

−−

−−

=

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎪⎩

⎪⎪⎨

2

2

2y

2x

1y

1x

vu

k41k

43

k43k

43

k000

ffff

(5.5.14)

計算して

⎪⎨

2y

2x

1y

1x

ffff

=

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

−=

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

−−

−−

3F3

F3

F30

kv41ku

43

kv43ku

43

kv0

22

22

2

⎪⎪⎭

⎪⎪⎬

⎪⎩⎪

(5.5.15)

5. 弾性体の支配方程式

一般に物体は外力が作用するとそれに比例した変形を生じ,外力を取り去るともとの形に戻る.

この性質を弾性といい,弾性の性質をもつ理想的な物体を弾性体とよぶ.弾性体に外力が作用す

る場合の,応力成分,ひずみ成分,変位成分の関係を示す式は弾性論の基礎となる方程式で,以

下の3つの式に分けられる.

つり合い方程式

ひずみ-変位関係式

応力-ひずみ関係式

5.6.1 つり合い方程式

つり合い方程式は力のつり合いを示すものである.外力を受ける物体内部の応力状態は,間

6

に固定した直交座標系x-y-zに関して定義された9個の応力成分

xzzxzyyzyxxyzyx ,,,,,,,, ττττττσσσ

で表される.外力が作用するもとでつり合い状態にある物体内部の各点の応力状態を示す9個

の応力成分は互いに無関

りに微小直方体を考え,微小直方体に作用する力とモーメントのつり合いを考えることで求め

図 5.6.1 に示すよ

係ではない.これらの応力成分の間の関係は,物体内部の1点のまわ

られる.

うな点Pまわりの微小直方体を考える.点Pの座標を(x,y,z)とする.

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微小直方体は点Pを1頂点とし,各 dx,dy

を含む3つの面X,Y,Zは,点Pを通る基準直交面なので,次のような応力が作用する.

面X(面積 dy×dz)

辺はx,y,z軸に平行で長さは ,dz である.点P

: )z,y,x(),z,y,x(),z,y,x( xzxyx ττσ

面Y(面積 dz×dx): )z,y,x(),z,y,x(),z,y,x( yxyzy ττσ

面Z(面積 dx×dy): )z,y,x(),z,y,x(),z,y,x( zyzxz ττσ

他の3つの面X’,Y’,Z’は,上記の基準直交面からそれぞれ dx,dy,dz だけ離れている

から,これらの面に作用する応力は,

面X’(面積 dy×dz): )z,y,dxx(),z,y,dxx(),z,y,dxx( xzxyx +++ ττσ

面Y’(面積 dz×dx): )z,dyy,x(),z,dyy,x(),z,dyy,x( yxyzy +++ ττσ

面Z’(面積 dx×dy): )dzz,y,x(),dzz,y,x(),dzz,y,x( zyzxz +++ ττσ

である.

dx,dy,dz などの2次以上の項が無視できる程度に微小であると仮定すると,テーラー展開し

て一 . 般に次式が成り立つ

dzzfdy

yfdx

xf)z,y,x(f)dzz,dyy,dxx(f

∂∂

+∂∂

+∂∂

+= (5.6.1)

図 5.6.1 外力を受ける微小直方体

+++

dx

dy

dz

dzτ

τ zyzx

∂+

dzzτ

τ zyzy ∂

∂+

dzzz

z ∂σ∂

z∂

P

dyyτ

τ yxyx ∂

∂+

dyyτ

τ yzyz ∂

∂+

dyyy

y ∂

σ∂+σ dx

xττ xz

xz ∂∂

+

dxxτ

τ xyxy ∂

∂+

dxxx

x ∂σ∂

xσxyτ

yzτ

yxτ

xzτ

zyτzxτ

面 Z’

面X

面Y

面X’

面 Z

面Y’

x

y

z

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式(5.6.1)より,面X’,Y’,Z’に作用する応力は

面X’:

( ) ( )

( ) ( )

( ) ( ) dxxxzxz ∂

z,y,xz,y,dx

,dxz,y,xz,y,dx

xz

x

∂+=+

+=+x

,dxx

z,y,xz,y,dx

xyxyxy

xx

∂∂∂

+=+

τ

τ

ττ

ττ

σσσ

面Y’:

)( ) (

( ) ( )

( ) ( ) dyy

z,y,xz,

,dyy

z,y,xz,dy,x

,dyy

z,y,xz,dy,x

yxyxyx

yzyzyz

yy

∂+=

∂+=+

∂y

dy,x +

∂++

τττ

τττ

σσ

面Z’:

( ) ( )

( ) ( )

( ) ( ) dzz

z,y,xdz,y,x

,dzz

z,y,xdz,y,x

,dzz

z,y,xdz,y,x

yzyzy

zxzxzx

zzz

z

∂+=+

∂∂

+=+

∂∂

+=+

τ

τττ

ττ

σσσ

となる.応力の定義より,応力にその作用する面の面積を掛けたものがその面に作用する力

図 5.6.1 作用するすべての力のつり合いを考える.図 5.6.2 はx-y面への投

影図である.x方向には応力による力と体積力Fxdxdydz(微小直方体の体積がdxdydzであるか

ら)が作用す 正負を考慮して力のつり合いは次式で表さ

れる.

である.さらに一般には,応力による力のほかに,微小直方体に作用する体積力がある.体積

力を単位体積当りの力で考え,そのx,y,z方向成分をそれぞれFx,Fy,Fzとする.

の微小直方体に

る.x軸の正方向を力の正方向とすれば,

0dxdydzF

dxdydzz

dxdzdyy

dydzdxxx ⎟

⎠⎜⎝ ∂

++ σ

dxdydxdzdydz

⎛ ∂

−−−

τ

x

zxzx

yxyx

x

zxyxx

=+

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

∂∂

++⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝ ∂

++⎞⎛ ∂ τττ

σ

ττσ

(5.6.2)

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式(5.6.2)の両辺を

dxdydzで割ると

0Fzyx ∂∂ xzxyxx =+

∂τ∂

+τ∂

+σ∂

(5.6.3)

が得られる.同様にしてy方向,z方向の力のつり合いより次の2式が得られる.

0Fzyx yzyyxy =+

τ∂+

σ∂+

τ∂ (5.6.4)

0Fzyx z

zyzxz =+∂σ∂

+∂

τ∂+

∂τ∂

(5.6.5)

これが力のつ

次にモーメントのつ ,(力)×(モー

ら力の作用点までの距離)で与えられる.モーメントを生じさせる力を図 5.6.3

に示す.点Pを通り,z軸に平行な直線をモーメントの軸としてかんがえてみる.

り合いを示すつり合い方程式である.

り合いを考える.モーメントはある軸を中心として考え

メントの軸か

dydzdxx ⎠⎝ ∂x

x ⎟⎞

⎜⎛ σ∂

dxdzdyyyx

yz ⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

τ∂+τ

dxdydzzzx

zx ⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

∂τ∂

xdydzσ dxzxτ

yxdxdzτ

x

面 Z’面Y’

面X

面Y

面X’

dx

dy

図 5.6.2 微小直方体の応力状態

面Z

図5.6.3 モーメントのつり合い

dy

面Z

面X

dxd

dxdzy

σ

yzxτ dxdyzxτdxdyzyτ dydzxyτ

dydzxσ

dxdy

dx

面Y P

dydzxσ dydzxσzyτ

dxdzy

σ

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この図はx-y面への投影図を示している.図では,面Ⅹ’,面Y’,面Z’における微小変

を省略しているため,面Ⅹ’,面Y’,面Z’に作用する応力は面X,Y,Zに作用する応

力と符号が反対で大きさは等しくなっている.これは,モーメントが力に微小長さを掛けたも

のであって,力よりも1次だけ高次の微小量となるからである.力のつり合いで2次以上の微

小量を省略して考えたので,モーメントのつり合いでも dx,dy,dz 以上

考える必要がある.左まわりのモーメントを正とすると,モーメントのつり合いは,その正負

を考えると,次式で表される.

の微小量を省略して

0dydxτ dzdx2

dxdxdy2

dydxdy

2dxdxdz

2dydydz

2dxdxdy

2dydxdy

2dxdxdz

2dydydz

yxxyzyzx

yxzyzxyx

=⋅−⋅τ+⋅τ−⋅τ−

⋅σ−⋅σ−⋅τ+⋅τ+⋅σ+⋅σ (5.6.6)

これより次式が得られる.

同様にしてPを通りx軸に平行な軸まわりのモーメント,Pを通りy軸に平行な軸まわりの

モーメントを考えることによって,次の2式が得られる.

以上より

dydz

yxxy τ=τ

xzzxzyyz τ=ττ=τ 、

0Fzzyzzx =+

∂++

∂ στzyx

,0Fzyx

,0Fzyx

yyzyxy

xzxxyx

∂∂

=+∂

∂+

∂+

=+∂∂

+∂

∂+

∂∂

τ

τστ

ττσ

(5.6.7)

が得られる.これをつり合い方程式といい,弾性論における第一の支配方程式である.

5.6.2 ひずみ-変位関係式

図 5.6.4 のような正方形ABCDに4つの

応力が働く場合について

うに四角形ABCDが応力を受けてA’B’

のx方向の距離はΔuだけ伸びたことになる.

これを単位あたりの長 なおすと

考える.図5.6.5のよ

C’D’に変形したとする.点Aから点A’の

移動量のx成分をu,y成分をvとする.点A

からx方向にΔxだけ離れた点B(x+Δx,

y)のx方向の変位量がu+Δuのとき,AB間

さに

(5.6.8)

σy

τyxCD

xyτ

σ

x A B

図 5.6.4 正方形ABCD xu

xu

x ∂∂

=∆∆

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となる.せん断応力も働いているので,

方向にも変形する.τyxによるせん断ひず

はΔu/Δy,τxyによるせん断ひずみはΔ

/Δxで表される.これら2つのせん断ひ

みの式は

yu

xv

yxxy ∂∂

+∂∂

=θ+θ=γ (5.6.9)

かの力についても同様に式が成り立つ. ほ

xw

zu

zw

zv

yw

yv

yx

x

zxz

yzy

xyx

∂∂

+∂∂

=γ∂∂

∂∂

+∂∂

=γ∂∂

∂+

∂=γ

∂=ε

(5.6.10)

式(5.6.10)をひずみ-変位関係式といい,弾性論における第2の支配方程式である.

uvu ∂∂∂

5.6.3 応力-ひずみ関係式

弾性体とはフックの法則が完全に成立する物体であるといってもよい.このとき応力とひ

みの関係は,

A B

A’

B’

C

C’

D

D’

u

v

x

図 5.6.5 変形した正方形

ひずみが小さい部分では応力はほぼひずみに比例している.これをフックの法則という.

εσ E=

で表される.Eは縦弾性係数またはヤング率

棒材を っ張ると軸方向には伸びるが,同時に断面は小さくなる.実験によれば,一様断

(5.6.11)

とよばれるものである.

面の棒が軸方向に引っ張られてεのひずみを生じるときは,これと直角の方向にε’なるひ

ずみが生じ

y

yz

xy νεε −=xz νεε −=

xx ,εσ

xx ,εσ

図 5.6.6 ポアソン効果

E

' σννεε −=−= (5.6.12)

の関係が成立し,これをポアソン効果とい

う.νはポアソン比とよばれる比例定数で

ある.図5.6.6に引張方向をx軸にとった

.11),(5.6.12)より

場合を示す.式(5.6

Ex

xzσ

ννεε −=−=

E

E1

xx

xx

σννεε

σε

−=−=

=

(5.6.13) y

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σ

σ

が得られる.式(5.6.13)はx方向の応力σxが単独でx,y,z方向に生じさせるひずみを示

たものであるから,一般の応力状態σx,σy,σzが同時に存在する場合のひずみは,σx,

y,σzのおのおのが単独に作用する場合の結果を重ね合わせることによって求められる.

y,σzについても式(5.6.13)の形の式を求め,それらを重ね合わせると,

( ){ }

( ){ }

( ){ }yxzz

xzyy

E1E

σσνσε +−=

式(5.6.14)はフックの法則として知られる式

とよばれる.

zyxx

,1

,E

σσνσε

σσνσε

+−=

+−=

(5.6.14)

を一般 したもので,一般化 たフックの法則

このとき,せん断応力とせん断ひ

1

化 し

ずみの間には,

( )

( )

( ) zxzx

yzyz

xyxy 12 ν+

12E

12E

E

γν

τ

γν

τ

γτ

+=

+=

=

(5.6.15)

の関係が成り立つ.せん断応力とせん断ひずみの関係と垂直応力と垂直ひずみの関係には相

互関係はない.せん断応力とせん断ひずみの間には比例関係が成立する.比例定数E/2(1+

次式

ように表すことができる.

ν)をGとおいて,これを横弾性係数またはせん断弾性係数とよぶ.よって式(5.6.15)は

zxzx

yzyz

xyxy

G1Gτγ =

1

G1

τγ

=

= (5.6.16)

ひずみ成分の関係が求められた.式(5.6.14),

τγ

これにより,6個の応力成分と6個の

(5.6.16)をマトリックス表示にすると

( )( )

( ) ⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎣

⎪⎭

⎪⎩ zx

yz

00000000

γ

⎢⎢

⎪⎪

⎪⎪ xy

⎢⎢⎢

++

+−

=

⎪⎪⎪

zx

yz

xy

z

y

x

z

y

12001200120000000000

E1

τττσσσ

νν

νν

ν

γγε

(5.6.17)

⎢⎡

−−−−

⎪⎫

⎪⎧ x

101

ννν

εε

−⎪⎪ 01ν

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式(5.6.17)係数マトリックスの逆マトリックスを解くことによって,次式が得られる.

( )( )( ) ( )

( )( )( ) ( )

( )( )( ) ( )

( )

( )

( ) zxzx

yzyz

12E

12E

γν

τ

γν

τ

+=

+=

xyxy

yxzz

y

zyxx

12E

12111E

12111E

12111E

γν

τ

εεν

νενν

νσ

νν

νννσ

εεν

νενν

νσ

+=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧ +

−+

−+−

=

⎭⎬⎫

⎩⎧

−−+−

=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧ +

−+

−+−

=

(5.6.18)

式(5.6.18)をマトリックス表示にすると

xzy εεε⎨ ++

( )( )( )

( )

( )

( )

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎬⎨⎥⎢ −−+=

⎪⎪⎬

⎪⎪⎨

z

xy

z21 γννν

ττ

(5.6.19)

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪⎧

⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢

⎢⎢

⎢⎢⎢⎢⎢⎢

−−

−−

−−

−−

⎪⎭

⎪⎪⎪⎪⎫

⎪⎩

⎪⎪⎪⎪⎧

zx

yz

xy

y

x

zx

y

x

122100000

012

21

0012

000

000111

0001

11

0001

2111E

γγ

εεε

νν

νν

ν

νν

νν

ννν

νν

ν

τ

σσσ

式(5.6.18),(5.6.19)を応力-ひずみ関係式とよび,弾性論における第3の支配方程式で

ある.式(5.6.19)の係数マトリックスを[D]とおき,これを応力-ひずみマトリックスとい

う.[D]は対称マトリックスである.また

⎥−− 11ννν

⎢⎪⎪ yz

0000

{ }=σ

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

z

y

x

τσσσ

,{ }

⎪⎪⎪⎪

zx

yz

xy

ττ

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪

z

y

x

γεεε

⎪⎪⎪⎪

zx

yz

xy

γγ

とおくと,式(5.6.19)は次のように表すことができる. { } [ ]{ }εσ D= (5.6.20)

または

{ } [ ] { }D= (5.6.21) σε 1−

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5 ひずみエネルギー

ある物体に外力fを加え,物体が外力の加わる方向にuだけ移動するとき,この外力

fがなす仕事Wは

(5.7.1)

f 定でなくuの関数なら

(5.7.2)

図 5.7.1 は仕事の定義を表した図

である.

図 4-7.2 のように,一端を固定したバネの他端に外

力fxを加える場合を考える.バネがuだけ伸びたとす

ると,バネになされた仕事は

.7

fuW =

が一

∫=u

0fduW

uf21dufW x

u

0 x == ∫

この仕事Wは,バネの弾性的変形に

に弾性変形によって貯えられた位置

弾性体では,弾性体になされた仕事

(5.7.4)

および

ずみ成分によってどのように表されるかを考える.例と

て引張試験のような一様な単軸状態で考えてみる.弾性

であるから図4-7.3のような荷重-変位線図が描ける

びが0からuになるときのひずみエネルギーは式(5.7.4

より,

(5.7.3)

より位置エネルギーとしてバネの内部に貯えられる.弾性体

エネルギーをひずみエネルギーといい,Uで表す.理想的な

Wは,ひずみエネルギーUとして貯えられるから,

u,f x

0 x

k

図 5.7.2 他端を固定したバネ

U

u u O

図 5.7.3 ひずみ

∫==u

0fduWU

となる.ここでひずみエネルギーUは,応力成分 ひ

.伸

)

エネルギー

uf21dufU x

u

0 x == ∫ (5.7.5)

となる.図5.7.4に示した微小体積を考える

と,x方向の長さはdxであり,σxの作用する断面積は

dydzなので,

となる.これを式(5.7.5)に代入することで,この微小体に

貯えられるひずみエネルギーΔUが求められる.

x

y

z

dxudydzf

x

xx

ε=σ=

dx

dz

xf

dy

u

xf

図 5.7.4 微小体積

fx

u

W

uOu

f

W

図 5.7.1 仕事の定義

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dxdydz21uf

21U xxx εσ==∆ (5.7.6)

全体積に貯えられるひずみエネルギーUは,ΔUを全体積について積分して求められる.

∫∫∫ ∫ εσ=εσ=V xxxx dV

21dxdydz

21U (5.7.7)

積分区間は全体積なので,体積積分の形で表すと次式のようになる.

∫=V

xx dV2

U σ (5.7.8)

断荷重fxyが作用してせん断変形uが生じ

る場合について考える.図5.7.5,5.7.6より

xyxy τ=

1 ε

次にせん

dyu xyγ=

dxdzf

なので,

∫∫∫=

=∆

1U

u21U xy

γτ dxdydz2

f

xyxy

∫ γτ= dV1

V xyxy2 (5.7.9)

となる.

一般化して

一般の応力状態でのひずみエネルギーは,以上

の結果を

( )∫ γτ+γτ+γτ+εσ+εσ+εσ=V yzyzxyxyzzyyxx dV

21U

zxzx

(5.7.10)

となる.応力ベクトル{σ},ひずみベクトル{ε}

{ }=σ

⎪⎪⎪⎪

⎭⎩ zx

⎪⎪⎪⎪

yz

xy

ττ

σ

⎪⎪⎪

⎬⎪⎪⎪

⎨z

y

x

τσσ

,{ }=ε

⎪⎪⎪⎪

yzγ⎪

⎪⎪

xy

γ

ε

⎭⎩ zx

とおくと,式(5.7.10)は応力ベクトルとひずみベクトル

⎪⎪⎪

⎬⎪⎪⎪

⎨z

y

x

γεε

の内積で表すことができる.

(5.7.11)

U

xf

図 5.7.5 ひ みエネルギーO ず

y

{ } { }dV21U

T

Vσε∫=

dx

dy

dzxyf

xyfx

z

u

xyγ

図 5.7.6 せん断変形

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5.8 仮想仕事の原理

仮想仕事の 働く幾つか原理とは,「1つの質点が,これに の力(体積力,表面力など)の作用の

もとでつり合い状態にあるとき,この質点に任意の微小な 想変位を与えても,質点に働いてい

の総和が0である.」これを式で表してみる.仮

質点に働く力のx,y,z方向の成分の

fy,Σfzとすれば仮想変位によってなす仕事はδuΣf δvΣ w fzなので,

仮想仕事の原理は,

(5.8.1)

成り立つ ,

(5.8.2)

が成立する.式(5.8.2)は質点に作用する力のつり合いを示している.

質点に 用のもとでつり合い状態にある弾性体についても成

立 に

よって,外力および内力のなす仕事の総和が0

理である.仮想仕事の原理は,仮想変位δu,δv,δw に対して,次式のように表すことができ

るすべての力がこの仮想変位によってなす仕事

想変位のx,y,z方向の成分をδu,δv,δwとし,

総和をΣfx,Σ x, fy,δ Σ

∑∑∑ =++ 0fwfvfu zyx δδδ

である.任意の仮想変位δu,δv,δwに対して式(5.8.1)が

∑ = 0f ,∑ = 0f ,∑ = 0f

ので

x y z

対する仮想仕事の原理は,外力の作

する.つり合い状態にある弾性体の各点に,任意の微小な仮想変位を与えたとき,仮想変位

であるというのが,弾性体における仮想仕事の原

る.

( ) ( )( )∫∫∫ τ+δγτ+δγτ+δεσ+δεσ+δεσ− zxzxyzyzxyxyzzyyxx

(5.8.3)の第1項は,仮想変位によって表面力が

∫∫=δγ

+δ+δ

0dxdydz

vPuP yx (5.8.3)

式 なす仕事,第2項は体積力がなす仕事,第3

項は内力がなす仕事を示している.Px,Py,Pzは単位面積あたりの表面力,Fx,Fy,Fzは単

位体積あたりの体積力, は仮想変位の各成分δu,δv,δwに対

応するひずみ成分である.

∫∫∫ δ+δ+δ+δ dxdydzwFvFuFdSwP zyxz

zxyzxyzyx δγδγδγδεδεδε 、、、、、

( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( )xzz

wzv

yw

yv

yu

xv

xu

zxz

yzy

xyx

∂+

∂=δγ

∂δ∂

=δε

∂δ∂

+∂δ∂

=δγ∂δ∂

=δε

∂δ∂

+∂∂

=δγ∂δ∂

=

積力ベクトル{F},仮想変位ベクト

ル{ トル{ε*},応力ベクトル{σ}を,

y

x

y

x

δδδ

δ

δδε

(5.8.4)

wu δ∂δ∂

単位体積あたりの表面力ベクトル{P},単位体積あたりの体

σ*},仮想ひずみベク

{ } { } { }⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

⎧=

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

⎧=

⎪⎭

⎪⎬

⎪⎩

⎪⎨

⎧=

wvu

,FFF

F,PPP

P *

zz

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{ } { } ,

zx

yz

xy

z

y

x

zx

yz

xy

z

y

x

*

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

=

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

⎪⎪⎪⎪

=

τττσσσ

σ

δγδγδγδεδεδε

ε (5.8.5)

とおくと,仮想仕事の原理はベクトルで表現することができる.

{ } { } { } { } { }{ } =σε−δ+δ ∗∗∗ 0dVdVFdSPTT

(5.8.∫ ∫∫ 6)

仮想仕事の原理は式(5.6.7)のつり合い方程式と等価である.よって下に示す関係が成り立つ.

つまり弾性体の支配方程式ではつり合い方程式のかわりに仮想仕事の原理が適用できるのであ

を付け加える必

要があるが,仮想仕事の原理の場合は外力に関 が

拘束変位だけでよい.

つり合い方程式

ひずみ-変位関係式

応力-ひずみ関係式

仮想仕事の原理

ひずみ-変位関係式

応力-ひずみ関係式

る.つり合い方程式の場合,境界条件として,外力および拘束変位に関する条件

する条件をふくんでいるため,加えるべき条件

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6. 数値解析による木造住宅の耐震性能

6.1 概要

第3章で既往の耐震診断によって耐震性能を評価した住宅を対象として数値解析を行った.ま

ず木造住宅における,柱,梁,耐力壁をモデル化した.次にモデル化された木造住宅に鉛直荷重

と地震荷重を載荷し,地震荷重を載荷した柱と梁の平均の変位と荷重の関係から荷重-変位曲線

6.2 数値解析による木造住宅のモデル化

対象とした住宅の部材と部材の接合部はピン接合であるとする.ピン接合を表現するためにモ

デリングにおいては,同一座標に節点を幾つか設けた.通し柱とは1階と2階とを通して使う長

い柱である.図6.2.1の中央の柱は通し柱でないため,梁との接合部に節点が数個設けられてい

る.地盤は,住宅を地面に拘束するためにモデリングしている.もちろん地盤と柱の接合部もピ

ン接合である.荷重を載荷した際に,同一座標に設けた節点が別々な動きをしないように,同一

座標節点が同じ動きをするようモデルを作成した. 部材にはスギを使用した.スギは針葉

まっすぐで長く,加工性に優れているため柱や梁等の構造材として用いられる.対して,ケヤキ

やナラ等の広葉樹は,材質が硬いので硬木と呼ばれ,堅くて加工が難しいものの,木肌に美しい

模様をもつものが多いため,建具の仕上げや家具などに使われる.弾性係数 E,降伏応力σ,ポ大きいスギを使用した.梁に

は固定荷重が作用するので,曲げモーメントが生じる.

よって,曲げモーメントが生じにくくなるのである.通し柱と1階梁との接合部は剛接合になる

を導出した.荷重-変位曲線から降伏耐力,終局耐力を求め,各階方向別の耐力を調べた.

樹である.針葉樹は材質が柔らかいので軟木とよばれ,

アソン比νは,表6.2.1の値を用いた.梁には断面の高さが幅より

梁の断面に幅より高さをもたせることに

ため,通常の柱より断面が大きいものを用いた.表6.2.2に部材断面の値を示す.

通し柱 通し柱

筋かい

地盤

図 6.2.1 デリング例

内壁

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表 6.2.1 部 の諸条件

部材材質 杉材

弾性係数E 80t/cm2

降伏応力 σ 340kg/cm2

ポアソン比 ν 0.4

表 6.2.2 部材断面

部材名称 断面形状(幅×高さ)(mm)

梁 105×240

通し柱 120×120

柱 ×105 105

筋かい 52.5×105

内壁 17.5×105

6.3 固定荷重の計算

固定荷重は式(4.3.1)に基づいて計算した.W1,W2は図5.2.1,5.2.2より,

2

2

m/N2.19051W

m/N4.38102W

=

=

2

1

2が2階梁に作用する固定荷重である.平面図を利

となる.W1が1階梁に作用する固定荷重,W

用して各々の梁に作用する固定荷重の値を計算したのが図6.3.1である.図6.3.1より,1階梁

には6種類,2階梁には2種類の密度の違う部材があることが分かる.

243 243

243

243

425.2

425.2

425.2

182.2

121.5 486

243 60.75

243 243 60.75 243

364.5

364.5 364.5

364.5

243 1階 2階 (単位は kg)

図 6.3.1 領域分割による梁にかかる固定荷重

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階 荷重(kg) 部材長(m) 部材断面積(m2) 密度(kg/m3)1 243.00 1.8 0.0252 53571 486.00 1.8 0.0252 107141 425.25 1.8 0.0252 93751 121.50 0.9 0.0252 5346

4 地震荷重の計算

地震荷重は式(4.3.2)に基づいて計算した.終局耐力は部材変形角が1/20radになったときの地

荷重でPuとした.今,柱の部材長は 1.8mなので,180×0.05=9.0cm なので,柱と梁の接合部が0cm変位したときの荷重である.降伏耐力は,荷重-変位曲線に2本の接線をひいて,その交から変位軸に垂線を下ろして,荷重 きの荷重であり,Pyとする.1階,

階梁部分に作用する荷重はP1+P2,P2で,例としてx方向のα=10,y方向のα=13として計算る.この値をもとに各階方向別に地震荷重を計算した.

x方向

y方向 PP

2

21

=+

(1) 1階x方向 地震荷重:58800N1階面積:12.96m2

6.

9.点 -変位曲線と交わったと

N

29400PN58800PP

2

21

==+

N38220PN76440=

N1102596.1243.258800P

N2940096.12

58800PB =×= 48.6

N1837596.1205.458800P

C

A

=×=

=×=

60.75 0.9 0.0252 26791 182.25 1.8 0.02522 243.00 1.8 0.0252 53572 364.50 1.8 0.0252 8036

14018

表 5.2.3 固定荷重の計算

A

4.05m2

6.48m2

2.43m2

B

C図 6.4.1 1階x方向

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1.62m2

3.24m2

1.62m2

D

F

E

(2) 2階x方向 地震荷重:29400N 2階面積:6.48 2

m

N507348.6

29440P

0048.624.329440P

N735048.662.129400P

F

E

D

==

×=

=×=

(3) 1階 y方向 地震荷重:76440N1階面積:12.96m2

147= N

62.1×

図 6.4.2 方向 2階x

3.24m2 4.86m2 3.24m2 1.62m2

図 6.4.3 1階y方向

H I J G

N955596.12

62.176440P

N1911096.1224.376440P

N2866596.1286.476440P

N1911096.1224.376440P

J

I

H

G

=×=

=×=

=×=

=×=

図 6.4.4 2階y方向

3.24m2 3.24m2

K L

(4) 2階y方向 地震荷重:38220N 2階面積:6.48m2

N1911024.338220P

48.624.3

K

=×=

48.6

N1911038220P

L

=×=

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6.5 数値解析結果による住宅の挙動

6.5.1 固 る住宅の挙動

図 6.5.1 は固定荷重W1=38102.4,W2=19051.2 が梁部分に作用しているときの住宅の変形およびz方向の変位を表した図である.地震荷重は載荷していない.固定荷重を梁部分に載荷し

ているため梁がたわんでいるのが読み取れる.図中におけるuzmaxが正方向への最大変位,uzminが

負方向への最大変位を表す.固定荷重による負方向への変位は最大でも 0.5cmとほとんど変位し かる.図6.5.2は固定荷重による軸力分布図である.木造軸組工法住宅に

おいて 負担するため全ての柱で圧縮の軸力が生じている.特に,最小軸力

Nminは,住宅の中央部に位置する柱なので軸力の値が卓越している.柱が圧縮されることによ

り,ブレース置換した内壁の斜材や梁に引張の軸力が発生していることもわかる.図 6.5.3 は固定荷重による曲げモーメントの分布図である.z方向の変位図におけるuzminの部分で最大曲

げモーメントが生じている.この梁部分が最も固定荷重の影響を受けているということ .

柱と梁の接合部で曲げモーメントが生じているのは,ピン接合によるものである.剛接合であ

るなら曲げモーメントは生じない.これら3つの図から固定荷重を負担する部材は柱と梁で

り,耐力壁はほとんど鉛直荷重の影響を受けないことが分かる.鉛直剛性を高めるには

梁の数を増やす,あるいは断面の大きい部材を用いるのが効果的だと考えられる.

定荷重によ

ていないことが分

は,鉛直荷重を柱で

である

,柱や

uz =-0.5cm

uzmax=2.94×10-4cm

図 6.5.1 固定荷重による住宅の変形及びz方向の変位

(m)

min

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図 6.5.2 固定荷重による軸力分布図

Nmin=-11.9kN

圧縮

引張

(N)

図 6.5.3 固定荷重による曲げモーメント分布図

Mmi =-0.6kN・m n

(N・m) Mmax=0.8kN・m

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6.5.2 地震荷重による住宅の挙動

(1)x方向の地震荷重による住宅の挙動

図 6.5.4 は地震荷重Pを左側面の軸組の柱と梁接合部に載荷したときの住宅の変形図で

ある.1階は中央部の軸組が全て開口になっているため他の軸組と比べてA点の変位が最

も大きい.2階はB点の変位が最も大きい.B点の軸組は耐力壁もなく,面積率で地震荷

重を設定しているために他の軸組より荷重が大きいのが要因である.C点も耐力壁がない

た変位が大きい.内壁を配置してある一番奥の軸組はほとんど変形してないことから耐力

壁が水平抵抗力として十分に機能していることが分かる.図 6.5.5 は変形形状を上から見

た図である.地震荷重が軸組と平行に載荷されているにも関わらず,住宅がまるで反時計

回りに回転するような変形をしている.これが前述した偏心である.偏心は耐力壁の配置

のバランスによって生じる.2階の軸組において,一番奥の軸組の水平剛性が他の軸組に

比べて高いために,そこを支点として反時計回りに回転しているのである.図 6.5.6 はx

方向の地震荷重による軸力分布図である.図 6.5.2 と比較すると,軸力が内壁や筋かいに

も働いていることが分かる.内壁はたすき掛け,筋かいはVの字で2本の斜材で1組とし

て構成されており,一方には圧縮力が,もう一方には引張力が働いている.y方向の内壁

や筋かいで軸力が生じているのは,偏心によるものであると考えられる.柱の軸力分布も

固定荷重のみが働いているときとは,全く別物になっている.これらから,水平剛性を高

めるに 量を増やすとともに,偏心が生じないように耐力壁を配置しなければな

らないことが分かる.なお,ここでは軸力分布図を住宅の挙動を調べることを目的として

用いるので,詳細な値は無視する.

は耐力壁の

uxmax

図 6.5.4 x方向の地震荷重による変形形状

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地震荷重

図 6.5.5 x方向の地震荷重による偏心

図 6.5.6 x方向の地震荷重による軸力分布図

圧縮

引張

(N)

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(

け 位していない.点Cの変位が最も卓越している.図

6.5.8がy方向の地震荷重による住宅の変形形状を上から見た図である.一見すると,点A,

数値解析結果から住宅の挙動を把握したことで,木造軸組工法住宅が鉛直荷重を柱と梁で,水

荷重を耐力壁で負担する架構をしていることが確認できた.耐力壁もむやみに量を増やすだけ

なく,バランスよく配置することで剛心と重心の距離,つまり偏心距離がなくなるので水平剛

を確保できる.

2)y方向の地震荷重による住宅の挙動

図6.5.7 はy方向の地震荷重による変形形状である.x方向に比べて変形量が少ない,つ

り水平剛性がx方向に比べて高いのである.特に2階の軸組は両方とも内壁,筋かいが設

られているため点A,Bはほとんど変

Bが変位しているように見えるが,実際変位しているのは1階の柱と梁の接合部である.点

Cのある軸組の水平剛性が低いためにそこで時計まわりの偏心が生じている.図6.5.9はy

方向の地震荷重による軸力分布図である.2階の軸組では,両方とも同じ軸力分布である.

これは耐力壁がバランスよく配置されているからである.軸力に偏りがないということは,

荷重が同じように伝わっていることを意味するので偏心が生じないのである.

図 6.5.7 y方向の地震荷重による変形形状

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A B

図 6.5.8 y方向の地震荷重による偏心

地震荷重

圧縮

(N)

引張

図 6.5.9 y方向の地震荷重による軸力分布図

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6.6

地震荷重は慣性力Fを便宜上Pに見立てて載荷したことは第4章で述べた.地震荷重P=αWにいて,今Wは1階,2階でそれぞれ定義されている.荷重-変位曲線より得られる降伏耐力Py,

局耐力Puを地震荷重の定義式に はめると,各階方向別にαの値が求められる.αは慣性の

則においては加速度であるが,単位を持たない倍率として考える.荷重-変位曲線は,初めは

性であるが,各部で塑性化するために系の剛性が低下し,塑性の挙動を示す.終局耐力Puは部変形角の考えに基づいて算出した.部材の変形角度が 1/20radに達したとき,住宅が大変形を

こすと仮定し,そのときの地震荷重Pを終局耐力Puとした.柱の部材長 1.8mに 1/20radを掛けと,9cmとなるので,柱と梁の接合部が 9cm変位したときの荷重である.Pyは荷重-変位曲線

接線をひいて算出した.各階方向別に荷重-変位関係を導出し終局耐力を求めるとすると,当

水平剛性の高い軸組ほど終局耐力Puが大きくなる.これは水平剛性が高い軸組においてはαの

が大きくなると言い換えることができる.つまりαが軸組の強さを表す指標となるのである.

6.6.1~図 6.6.4 は各階方向別の荷重-変位曲線であり,これらの図をもとにPy,Puを算出し

荷重-変位曲線

終 あて

0

100

200

300

400

500

600

700

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0δ(cm)

P(kN)

図 6.6.1 1階x方向における荷重-変位曲線

Pu=523kN

Py=135kN

0

100

200

300

400

500

600

700

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0δ(cm)

P(kN)

図 6.6.2 2階x方向における荷重-変位曲

Pu=82kN

Py=68kN

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(1)1階x方向

降伏耐力 Py=135kN

図 6.6.3 1階y方向における荷重-変位曲線

0

100

200

300

400

500

600

700

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0

δ(cm)

P(kN)

Pu=477kN

Py=175kN

図 6.6.4 2階y方向における荷重-変位曲線

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

2000

0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 5.00 6.00 7.00 8.00 9.00 10.00 11.00 12.00

δ(cm)

Py=430kN

Pu=1700kN

kN)

P(

96.2288.5

135WPy

y ===α

終局耐力 Pu=523kN

95.8888.5

523WPu

u ===α

(2)2階x方向 降伏耐力 Py=68kN

13.2394.2

68WPy

y ===α

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終局耐力 Pu=82kN

90.2794.2

82WPu

u

(3)1階y方向

降伏耐力 P

===α

y=175kN

76.88.5

175 29WPy

y

終局耐力 P

===α

u=477kN

12.8188.5

477WPu

u

(4)2階y方向

===α

降伏耐力 Py=430kN

26.14694.2

430WPy

y ===α

終局耐力 Pu=1700kN

23.57894.2

1700WPu

u ===α

表6.6.1に降伏時の倍率と終局時の倍率を示す.降伏時の倍率では2階y方向以外は似たよう

値をとっている.終局 も2階y方向だけが大きい倍率になっている.これは,2階

y方向は軸組のバランスがよく,内壁と筋かい,つまり耐力壁の水平抵抗力が十分発揮されて

るからだと考えられる.終局時にはx方向で1階,2階の倍率に差が出ている.1階x方向に

軸組が3組あり,耐力壁がある程度配置されているのに対し,2階x方向には内壁がひとつし

考えられる.

表 6.6.1 降伏時と終局時の倍率

降伏時の倍率αy 終局時の倍率αu

な 時の倍率で

か設けられていないため水平剛性が塑性域で発揮されていないのが原因だと

1階x方向 22.96 88.95

2階x方向 23.13 27.90

1階y方向 29.76 81.12 2階y方向 .26 578.23 146

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7.耐震精密診断と数値解析結果の比較

造住宅の耐震精密診断によって得られたB×C×D×Eの値と,数値解析によって得られたαyとαu

値の関係を図 7.1,7.2 に示した.まず2階y方向の数値解析による結果があまりにも大きい

は,耐力壁のバランスのとれた配置によるもの られる.耐震精密診断によるB×C(偏

)の項目では,評点が 1.0 で,これは2階のy方向の壁に対する重心と剛心がつりあっている

とを意味している.数値解析において終局耐力を求めるために,何度も地震荷重を定義し直し

のは2階のy方向だけである.2階x方向のαyとαuに大差が生じていないのはx方向の水平剛

があまりにも小さ 因ではないかと考えられる.耐震精密診断では安全であるという結

であったが,水平抵抗力の評点を建物全体,つまり1階と2階をあわせて算出したために安全

あるという診断結果が得られたのである.耐震診断と数値解析の結果の相互関係に着目して,

7.1と図7.2における近似直線を考える.耐震診断における建物の強さを表す評点のB×C×

×Eの値が大きくなれ ある.これはα=P/Wの関より,Wは定数なのでPの値が大きいほどαの値が大きくなるからである.図7.2はB×C×

×Eの値が大きくなると,αuの値も大きくなっている.結論として,壁量等の簡単な方法で計

されている既往の耐震診断は,木造住宅の降伏ではなく終局状態の耐力を指標として作成され

いる.

の だと考え

性 いのが原

D ば,数値解析によるαの値も大きくなるはずで

140

0

20

60

.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00

B×C×D×E(偏心×水平抵抗力)

40αu(

80

終局時の倍率)

100

120 1階x

0.00 0

方向

2階x方向

1階y方向

2階y方向

578kN

図 7.2 終局時の倍率αuとB×C×

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

0.00 0. 3.50 4.00

B×C×D×E(偏心×水平抵抗力)

αy(降伏時の倍率)

50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

1階x方向

2階x方向

1階y方向

2階y方向

146kN

図 7.1 降伏時の倍率αyとB×C×D×E

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8. まとめ

本研究では,「木造住宅の耐震精密診断」に従い,対象とする木造住宅の耐荷力を調べた.耐

精密診断においては地盤に関する項目と,老朽度に関する項目は耐荷力に影響しないため無視

とする木造住宅を柱・梁・耐力壁で構成される3次元フレームモデルを作成

を行い,各階方向別の降伏耐力,終局耐力を求めた.耐力壁

耐力の期待できる部材を用いた内壁や外壁,あるいは,筋かいの組み合

とである.耐震診断手法によって得られた耐荷力と数値解析によって得

耐震診断手法の精度がどの程度であるのか調べた.以下に研

究を進めていくなかで重要であると判断した事項についてまとめる.

(1) 木造軸組工法住宅における荷重分布 って住宅のモデルに固定荷重,地震荷重を載荷し,解析結果の変形形状,軸

ト分布図から荷重がどの部分で負担されているかを把握した.木造

においては自重による固定荷重を主に柱で,地震荷重を主に耐力壁で負担して

固定荷重により曲げモーメントが働き,地震荷重によって軸力が働く.耐震診

しているため,地震荷重を主に負担する耐力壁が耐震診断で果たす

(2) 偏心と

(3) 耐震精密診断と数値解析結果の関係 耐震精密診断における耐荷力の評点を横軸に,数値解析から得られる耐力をもとに導いた

倍率αを縦軸にとったグラフを描いた.相互に関係があるならば,耐荷力の評点が大きくな

れば,数値解析によるαの 係を満たしているのは終局時

の倍率αuである.これは,木造住宅の耐震精密診断は住宅の終局状態の耐力を指標として作

成されていること .

耐震性能を高めるには ランスよ することが最 的であるといえる.「木

住宅の耐震精密診断」 簡単な方 算できるが, 指標として作成

れているので,信頼できる耐震診断法であるといえる.

した.一方で,対象

し,有限要素法に基づいて数値解析

とは,構造用合板という

わせで構成された壁のこ

られた降伏,終局耐力を比較して,

数値解析によ

力分布図,曲げモーメン

軸組工法住宅

いる.梁には

断は,地震荷重を対象と

役割は大きい.

木造住宅の耐震精密診断の構成

木造住宅の耐震精密診断は地盤条件と老朽度からなる住宅の状況を診断する項目,

水平抵抗力からなる住宅の耐荷力を診断する項目で構成されている.偏心距離とは,重心と

剛心の距離であり偏心距離が大きいほど地震荷重が作用したときの変形が大きい.偏心と水

平抵抗力の項目に深く関わってくるのが耐力壁である.耐力壁の量が多いほど水平剛性は高

まるが,バランスを考えて配置しなければ重心と剛心がずれてしまい偏心が生じる原因とな

る.偏心が生じると,建物が回転するような力が働く.

値も大きくなるはずである.この関

を意味する

耐力壁をバ く配置 も効果

造 は壁量等の 法で計 終局時の耐力を

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謝辞

本研究を進めるに当たりまして,終始有益なるご指導,ご鞭撻をいただきました指導教官の松

島学教官に心より感謝いたします.また,同研究室の大学院生である,黒田裕伸先輩,伊澤純平

先輩には,研究だけでなく,様々な面でご迷惑をおかけしましたにもかかわらず,最後まで温か

な助言,激励をいただきました.そして,同研究室の同期生である岡孝二君,熊谷公輔君,田中

大博君とは共に協力して研究,実験を行い,友情を深めることができました.ここに感謝の意を

表します.

最後となりましたが,学生生活において惜しまぬご助力をいただきました安全システム建設工

学科の教官各位に,心より感謝いたします.

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参考文献

1) 羽切道雄:材料・計画から施工まで 図解でわかる木造建築の構造,株式会社 日本実業出版社 2004年 6月 1日 初版発行

2) 望月 洵:力学と構造フォルム-建築構造入門,株式会社 建築技術 1998年 7月 25日 初刷第1刷

3) [エクスナレッジムック]木造住宅【私家版】仕様書 架構編,株式会社 エクスナレッジ 2002年 1月 25日

4) 三好俊郎:有限要素法入門改訂版,培風館

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参考資料

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参考資料1 ル概略図

正面視点 背面視点 左側面視点 右側面視点 上面視点 下面視点

:住宅モデ

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参考資料 2:x方向の地震荷重によるモデルの変形形状

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参考資料 3: 変形形状

y方向の地震荷重によるモデルの

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参考資料 4:荷重-変位曲線の比較

1階x方向とy

0

100

200

300

400

500

600

700

0 2 4 6 8

δ(c

P(kN)

10 12 14 16 18 20

m)

1階x方向

1階y方向

方向の比較

2階x方向とy方向の比較

150

200

250

300

350

δ(

P(kN)

80.00 100.00 120.00 140.00

cm)

2階x方向

2階y方向

0

50

100

0.00 20.00 40.00 60.00

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x方向の比較

700

0.00 20.00 40.00 60.00 80.00 100.00 120.00 140.00

δ(cm)

P(kN)

600

0

100

200

300

400

500

1階x方向

2階x方向

y方向の比較

0

100

200

300

400

500

600

700

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

δ(cm)

P(kN)

1階y方向

2階y方向