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-1- 「キャリア教育」全体計画・年間指導計画 旭川小学校・旭川中学校 キャリア教育では,一人一人の児童生徒が,将来の社会的・職業的自立に向けて,現在 の学習と実社会とのつながりを意識し,目的をもって学ぶことができるようにすることが 大切である。 旭川小・中学校では,H27年度から両校が協働して進めている「小中連携・一貫教育」 における教育活動の核として,9年間を通し子どもが将来と今を見つめ,主体的に夢や希 望の実現に向かう「キャリア教育」を充実することで,児童生徒に自ら目的をもって学ぶ 「自主自律」の心を育てることにつながると考えた。 そこで,義務教育9年間を踏まえてキーワードに「自主自律」を据え,小中の課題等も 加味し,年度の重点目標を「自らの成果を実感できる子どもの育成」と共通化を図った。 さらに,重点目標を受けて小中の研究主題「主体的に夢や希望の実現を目指す子どもの育 成~キャリア教育の推進を通して~」と設定し実践を進めている。 年度の重点目標(H28) 【旭川小学校】 学びの自立を育み 【旭川中学校】 自主自律の学びをはぐくみ 具体的には,キャリア教育における「基礎的・汎用的能力」について確認するとともに, 義務教育9年間を踏まえ,学校教育全体の活動を通じて体系的に行われるようにすること が重要である。小中の学校教育目標,共通化を図った重点目標,児童生徒や地域の実態等 をもとに,全体計画を作成し,各教科等におけるキャリア教育に関する事項を洗い出して, 焦点化を図り,関連付けた年間指導計画等により,教育課程に位置付いた教育活動を展開 していきたい。 キャリア教育で身に付けさせたい力(「基礎的・汎用的能力」) 文部科学省は,各種答申を踏まえ,キャリ ア教育において身に付けさせたい力として「基 礎的・汎用的能力」を示した。「基礎的・汎用 的能力」は,「人間形成・ 社会形成能力」「自 己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キ ャリアプランニング能力」の4つの能力で構 成されている。 4つの能力の内容及び具体的な要素は下記 の通りとして確認した。 キャリア教育で身に付けさせたい力 「基礎的・汎用的能力」 人間形成・ 社会形成能力 自己理解・自己管理能力 課題対応能力 キャリアプランニング能力

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Page 1: 「キャリア教育」全体計画・年間指導計画€Œキャリア教育」全体計画.pdf · 「キャリア教育」全体計画・年間指導計画 旭川小学校・旭川中学校

- 1 -

「キャリア教育」全体計画・年間指導計画

旭川小学校・旭川中学校

1 は じ め に

キャリア教育では,一人一人の児童生徒が,将来の社会的・職業的自立に向けて,現在

の学習と実社会とのつながりを意識し,目的をもって学ぶことができるようにすることが

大切である。

旭川小・中学校では,H27年度から両校が協働して進めている「小中連携・一貫教育」

における教育活動の核として,9年間を通し子どもが将来と今を見つめ,主体的に夢や希

望の実現に向かう「キャリア教育」を充実することで,児童生徒に自ら目的をもって学ぶ

「自主自律」の心を育てることにつながると考えた。

そこで,義務教育9年間を踏まえてキーワードに「自主自律」を据え,小中の課題等も

加味し,年度の重点目標を「自らの成果を実感できる子どもの育成」と共通化を図った。

さらに,重点目標を受けて小中の研究主題「主体的に夢や希望の実現を目指す子どもの育

成~キャリア教育の推進を通して~」と設定し実践を進めている。

年度の重点目標(H28)

【旭川小学校】 学びの自立を育み

【旭川中学校】自主自律の学びをはぐくみ

具体的には,キャリア教育における「基礎的・汎用的能力」について確認するとともに,

義務教育9年間を踏まえ,学校教育全体の活動を通じて体系的に行われるようにすること

が重要である。小中の学校教育目標,共通化を図った重点目標,児童生徒や地域の実態等

をもとに,全体計画を作成し,各教科等におけるキャリア教育に関する事項を洗い出して,

焦点化を図り,関連付けた年間指導計画等により,教育課程に位置付いた教育活動を展開

していきたい。

2 キャリア教育で身に付けさせたい力(「基礎的・汎用的能力」)

文部科学省は,各種答申を踏まえ,キャリ

ア教育において身に付けさせたい力として「基

礎的・汎用的能力」を示した。「基礎的・汎用

的能力」は,「人間形成・ 社会形成能力」「自

己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キ

ャリアプランニング能力」の4つの能力で構

成されている。

4つの能力の内容及び具体的な要素は下記

の通りとして確認した。

キャリア教育で身に付けさせたい力

「基礎的・汎用的能力」

1 人間形成・ 社会形成能力

2 自己理解・自己管理能力

3 課題対応能力

4 キャリアプランニング能力

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特に,キャリア教育における「4領域8能力(例)」から「基礎的・汎用的能力」への

再構成及び転換の経緯を受け,「例えば~」として8能力を例示し関連を図った。

(1)人間関係形成・社会形成能力について

「人間関係形成・社会形成能力」は,多様な他 具体的な要素としては,

者の考えや立場を理解し,相手の意見を聴いて自 例えば,他者の個性を理解

分の考えを正確に伝えることができるとともに, する力,他者に働きかける

自分の置かれている状況を受け止め,役割を果た 力,コミュニケーション・

しつつ他者と協力・協働して社会に参画し,今後 スキル,チームワーク,リ

の社会を積極的に形成することができる力であ ーダーシップ等が挙げられ

る。 る。

(2)自己理解・自己管理能力について

「自己理解・自己管理能力」は,自分が「で 具体的な要素としては,

きること」「意義を感じること」「したいこと」 例えば,自己の役割の理解,

について,社会との相互関係を保ちつつ,今後 前向きに考える力,自己の

の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基 動機付け,忍耐力,ストレ

づき主体的に行動すると同時に,自らの思考や スマネジメント,主体的行

感情を律し,かつ,今後の成長のために進んで 動等が挙げられる。

学ぼうとする力である。

(3)課題対応能力について

「課題対応能力」は,仕事をする上での様々 具体的な要素としては,情

な課題を発見・分析し,適切な計画を立ててそ 報の理解・選択・処理等,本

の課題を処理し,解決することができる力であ 質の理解,原因の追究,課題

る。 発見,計画立案,実行力,評

価・改善等が挙げられる。

(4)キャリアプランニング能力について

「キャリアプランニング能力」は,「働くこ 具体的な要素としては,

と」の意義を理解し,自らが果たすべき様々な 例えば,学ぶこと・働くこ

立場や役割との関連を踏まえて「働くこと」を との意義や役割の理解,多

位置付け,多様な生き方に関する様々な情報を 様性の理解,将来設計,選

適切に取捨選択・活用しながら,自ら主体的に 択,行動と改善等が挙げら

判断してキャリアを形成していく力である。 れる。

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(5)4つの能力における留意点

これらの能力は,包括的な能力概念であり,必要な要素をできる限り分かりやすく提示

するという観点でまとめたものである。この4つの能力は,それぞれが独立したものでは

なく,相互に関連・依存した関係にある。このため,特に順序があるものではなく,また,

これらの能力をすべての者が同じ程度あるいは均一に身に付けることを求めるものではな

い。また,これらの能力をどのようなまとまりで,どの程度身に付けさせるのかは,学校

や地域の特色などの特性や子どもの発達の段階によって異なる。

2 全体計画の策定に当たって

上記の点から,重点目標等の小・中学校の方針や状況,地域の実態,児童生徒の実態,

教師や保護者の願い等を受け,両校の「小中連携・一貫教育についての考え方(キャリア

教育に関わる)」も参照して,小・中学校のキャリア教育における指導の重点「よりよい

生き方を目指すキャリア教育」を設定した。

さらに,指導の重点からキャリア教育における小中での目指す子ども像(目標)を洗い

出し,各発達段階に配慮した具体的な目標等を設定するとともに,教育活動全体で取り組

めるように,「キャリア教育全体計画」を策定した。

(1)キャリア教育における指導の重点と目指す子ども像(目標)

<小中連携・一貫教育についての考え方(キャリア教育に関わる)>

□旭 川 小 学 校□ □旭 川 中 学 校□

義務教育を終えた時の個々の姿を押 9年間を見通したキャリア教育

さえながら,各学年のキャリア教育を を進めることにより,将来に結び

進めることができる。 付く進路指導ができる。

キャリア教育の指導の重点 「よりよい生き方を目指すキャリア教育」

<目指す子ども像(目標)>

■旭 川 小 学 校■ ■旭 川 中 学 校■

自分及び他者の大切さに気付き,周囲の 自己理解を深めるとともに,社会の

人々にかかわりながら,学ぶことや働くこ 成員であることを認識し,自らの将来

との意義や役割を理解し,将来への夢や希 を切り開く計画とその実現へ努力する

望をもち努力する子どもを育てる。 態度を養う。

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(2)発達段階における目標の設定

小学校・中学校の目指す子ども像をもとに,9年間の発達段階に応じた目標やその具体

を設定した。

学年 目 標 目 標 の 具 体

小 自分のよさを理解し,他者と積極 ①小学校生活に適応することができる。

・ 的に関わりながら,自分の夢や目標 ②身の回りの事象への関心を高めることができ

低 の実現に向けた資質や能力を高めよ る。

学 うとする主体性を育てる。 ③自分の好きなことを見付けて,伸び伸びと活

年 動することができる。

小 自分を良く理解し,社会性を身に ①友だちと協力して活動する中でかかわりを深

・ 付けながら,夢や目標の実現を目指 めることができる。

中 して,自分自身が資質や能力を高め ②自分の持ち味を発揮し,役割を自覚すること

学 ようとする主体性を育てる。 ができる。

小 自分をよく理解し,将来について ①自分の役割や責任を果たし,役立つ喜びを体

高 の夢や希望,目的意識をもって主体 験することができる。

・ 的に生き方を考え,自己実現を図る ②集団の中で自己を生かすことができる。

中 ために見通しをもって計画をしよう ③中学校生活に適応することができる。

1 とする能力や態度を育てる。

中 自分をよく理解し,必要な進路情 ①肯定的自己理解と自己有用感を獲得すること

2 報を活用しながら,自分に適した進 ができる。

・ 路を主体的に選択し,将来にわたる ②興味・関心等に基づく勤労観・職業観を形成

3 自己実現を目指そうとする態度を育 することができる。

学 てる。 ③進路計画の立案と暫定的選択をすることがで

年 きる。

④生き方や進路に関する現実的探索をすること

ができる。

(3)教科等との関連

キャリア教育において,「4つの領域」で育成することが期待されている「能力・態度」

について,各教科,道徳,総合的な学習の時間,特別活動等の学習・活動など,教育課程

に位置付けながら,学校の教育活動全体で進めることが大切である。小学校・中学校学習

指導要領のキャリア教育との関連性を図り,各教科等におけるねらいや指導の重点項目を

確認していくことが重要である。

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3 年間指導計画の策定に当たって

指導計画の策定に当たっては,キャリア教育を通して育成することが期待される基礎的

・汎用的能力を構成する4つの能力のフィルターを通して教育活動をとらえ直し,関連を

図ることが大切である。

そこで,旭川小学校・旭川中学校「キャリア教育全体計画」をもとに,キャリア教育の

視点から学校の教育活動を振り返り,各教科,道徳,総合的な学習の時間,特別活動等の

相互の関連性や系統性がわかるように,各学年毎に年間指導計画を策定した。特に,9年

間のキャリア教育の重点となる題材・単元の系統表を作成し,小学校・中学校の指導の連

続性を図った。

(1)基本的な年間指導計画の作成手順

○児童生徒の学年等に応じた能力・態度の目標(具体)を決定する。

○キャリア教育の全体計画で設定した各能力・態度の目標(具体)に基づき,学

年別の年間指導計画等に記載する内容を検討する。

○各教科,道徳,総合的な学習の時間,特別活動等の取組等を相互に関連付けた

指導計画を作成する。

○各能力・態度の到達目標に応じた評価の視点等を検討する。

キャリア教育の視点から教育活動を洗い出し,児童生徒に身に付けさせたい力を念頭

に焦点化するなどして教育活動を体系的・系統的につなぎ,学年毎の重点目標や9年間

の教育活動全体を通じたつながり,学年間の系統性,評価などについて検討していくこ

とが重要と考える。

(2)年間指導計画作成の留意点

○9年間を見通して,児童生徒の発達等の段階に応じた目標や内容にする。

○各教科,道徳,総合的な学習の時間,特別活動及び学級の取組等,それぞれの

ねらいや内容を踏まえて関連付けを図る。

○児童生徒のキャリア発達を支援できるよう,具体的で体系的なものとする。

○各教科,道徳,総合的な学習の時間,特別活動等の取組等の小学校及び中学校

学習指導要領との関連を図る。

○評価の視点等を考慮し,評価方法を検討する。

○家庭や地域等との連携を考慮する。

(3)各教科等とキャリア教育との関連

「基本的な年間指導計画の作成手順」にもある通り,学習指導要領におけるキャリア教

育に関する事項を確認し,相互の関連性や系統性に留意の上,有機的に関連付け,創意工

夫ある教育活動を展開していきたい。

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①道徳との関連

道徳教育の全体計画に基づき,各教科,外国語活動,総合的な学習の時間及び特

別活動との関連に考慮し,実施時期,主題名,指導内容等を明らかにする。

小 学 校 中 学 校

「集団における役割と責任を果たすこと」 「個性を伸ばして充実した生き方を追究

「働くことの大切さを知り進んでみんなのた する」「自己が属する様々な集団の意義につ

めに働く」や「自己の生き方についての考え いての理解を深め,役割と責任を自覚し集

を一層深める」などの指導を考慮し関連を図 団の生活向上に努める」「勤労の尊さや意

る。 義の理解」「公共の福祉と社会の発展に努

める」等の指導を考慮し関連を図る。

②総合的な学習の時間との関連

学校行事や各教科等の学習に配慮することはもちろん,地域素材を十分に吟味す

るとともに,問題の解決や探求活動となるよう計画するよう配慮する。

小 学 校 中 学 校

「自己の生き方を考えることができる 「自己の生き方を考えることができる

ようにすること」を重点に,身近な働く ようにすること」を重点に,職業や進路

人や仕事にふれあうことでいろいろな職 に関する調査や話し合い,地域での職場

業や生き方があることを学んだり,体験 体験活動などを通して,生徒が自己の生

活動を通して仕事の大変さや仕事の喜び き方を具体的,実際的なものとして考え

を働く人と一緒に味わったりすることな ることができることを重視し関連を図る。

どを中心に関連を図る。

③特別活動との関連

各教科,道徳,外国語活動及び総合的な学習の時間などとの指導の関連を図る

とともに,家庭や地域の人々との関連,社会教育施設等の活用などを工夫してい

く。 小 学 校 中 学 校

仕事の分担処理など,日常生活や日常 社会の一員としての自覚と責任に関連

的な取組等に関する事項や,希望や目標 する事項や,学ぶことと働くことの意義

をもって生きる態度,勤労や生産,望ま の理解,主体的な進路の選択と将来設計

しい人間関係,働くことなどに関連する など学業と進路に関する事項などを考慮

事項等を考慮し関連を図る。 し関連を図る。

④各教科との関連

各教科の特性を踏まえ,小学校及び中学校学習指導要領におけるキャリア教育に

特に関連が深い目標・内容等を洗い出し,関連させていく。(参照:キャリア教育

の手引き)

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○ 年間指導計画例(小学校第5年生)

教育活動を相互に関連付けるために,

各教科,道徳,総合的な学習の時間,

生活科(1・2年),外国語活動(5

・6年),特別活動を設定した。

基礎的・汎用的能力(4能力)との関連を

示した。

1人間関係形成・社会形成能力

2自己理解・自己管理能力

3課題対応能力

4キャリアプランニング能力

※①~③の数字は,系統表の「基礎的・

汎用的能力」の具体的要素と関連させ

た。

キャリア教育における,他の題材・

単元と関連性の高い題材・単元を枠

で表した。

関連性の高い題材・単元

系統表に表した重点的な

題材・単元

系統表に表した直接「社

会的・職業的自立」につ

ながる題材・単元

時期や目標・内容等に配慮し,各題材や単

元を「矢印」でつないで関連性を図った。

なお,同時期に隣接して表した題材・単元

は関連しているものとして押さえた。