日本のエネルギー政策の現状と課題 - fujitsu · 高いチップ価格 vs...
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日本のエネルギー政策の現状と課題
バイオマスデー開催に際しての問題提起
2013年11月5日 富士通総研 梶山恵司
Copyright 2013FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
再生可能エネルギーの膨大なポテンシャル
すべての再生可能エネルギー源が豊富に存在。
世界でも有数の再生可能エネルギー賦存量。
風力、太陽光、バイオマス、地熱等々。
太陽光発電の稼働時間は1300時間(ドイツ1000時間)。
森林蓄積60億㎥でドイツの倍近い。
特に高いバイオマスのポテンシャル。
発電、熱ともに利用。
熱利用が基本。
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世界有数の蓄積にまで成長した日本の森林
森林蓄積 60億㎥ vs ドイツ 34億㎥。
年間成長量1億㎥以上。木材生産量2000万㎥以下。
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A重油,80円/l 灯油,90円/l チップ,12000円/トン
円/kWh 木質チップ価格は石油の半分以下
(注)燃料当たりの熱量は、A重油10.86kWh/l、灯油10.19 kWh/l、チップ3.24kWh/kgとして計算。
バイオマスエネルギー利用の基本
木質資源のカスケード利用により、最終的に燃やすしか用途のない部分を燃料として徹底利用=ゴミを宝に。
森林資源の付加価値を高めるとともに、資金の地域循環により新たな富を創造する。
資源利用者(発電・熱)もその恩恵を受ける。
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ドイツの木質チップ価格の推移
(水分35%) €/t
(出所)C.A.R.M.E.N
1万2000円
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日独の木質バイオマス利用の違い
高いチップ価格 vs 低い発電コスト+化石燃料の半分の熱利用のコスト。
木質バイオマス熱利用だけでも石油換算で1兆円超。
新しい富が地域に創出。
⇒林業、発電事業者・熱利用者、みなが恩恵を受ける。
低いチップ価格 vs 高い発電コスト+チップ価格が安くてもコストが下がらない熱利用。
⇒林業、発電事業者・熱利用者みなが疲弊しかねない。
ドイツ
日本
ゴミをエネルギーに変えるのではなく、資源をエネルギー利用。 Copyright 2013FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
大量に発生する残材
林地残材
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バーク
大量に発生する残材
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工場残材
大量に発生する残材
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日本の発電用チップ しかも一定の水分以下
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日本の発電用チップ原料
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ドイツの発電用燃料の例
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日本の木質バイオマス利用の問題
ホワイトチップ+乾燥度の高いものを要求。
⇒ボイラー技術の問題、FIT制度の問題。
⇒チップ生産の技術・システムの不在。
発電においては、熱電併給ではなく、発電のみ。
現場の状況にかかわりなく特定の技術・規模を押し付け(エンジニアリング不在)。
⇒燃料の最適利用を妨げ、コスト高となる要因。
⇒熱利用における稼働不具合の最大の要因。
償却できないボイラー設備価格。
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なぜ残材利用が進まないか-工場残材
発電用ボイラーはもっぱら国産。
異なる水分やバークに対応しにくい。
燃料として使うのは、ほとんどホワイトチップ。残材の価格でホワイトチップを調達。
特定の発電規模のものしか提供できない。
工場残材利用を抑制するFIT制度。
ドイツ、オーストリア、スイスのボイラーは、異なる水分や形状にも柔軟に対応しうる。
様々な規模にも対応。
残材利用を促進するFITの制度設計。
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林地残材収集の技術・理論のベンチマークがない。
林地残材収集の前提としての路網・作業システム不在。
なぜ残材利用が進まないか-林地残材
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発電だけではエネルギー効率はよくて20%台。
熱電併給にすれば、エネルギー効率は大幅に上昇。
FITでは、発電の売り上げは20年間固定。
将来の燃料価格上昇にそなえるためにも、熱電併給は不可欠。
熱電併給がない
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投資回収できないボイラー設備コスト(熱利用)
バイオマス価格は石油の半分以下。
それでも建設費が高すぎて償却できない(ドイツの3~5倍)。
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A重油,80円/l 灯油,90円/l チップ,12000円/トン
円/kWh 燃料別単位当たりエネルギー価格の比較
(注)燃料当たりの熱量は、A重油10.86kWh/l、灯油10.19 kWh/l、チップ 3.24kWh/kgとして計算。
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設計・施工体制の問題(エンジニアリング)
バイオマスは地域の実情(燃料・熱需要等)に合わせてコンセプトをつくり、設計するのが鉄則。
ドイツでは、多様なボイラーメーカーが様々な技術・規模の製品を提供。
バイオマス利用を支える各コンポーネントを提供するメーカーも多数存在。
エンジニアリング会社が、現地に合わせて最適設計、入札、施工、運営サポート。
日本ではボイラーメーカー、プラントメーカーが提案・設計・施工。
メーカーは、自分の提供できる技術を提案。
現場も鵜呑み状態。 Copyright 2013FUJITSU RESEARCH INSTITUTE
本日の構成
1.問題提起(なぜ、日独バイオマスデーか)・・・・・・・・・・・・ 梶山
2.ドイツの再生可能エネルギー政策 全般 ・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ Neitzel バイオマスを中心に ・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ Raßbach
3.林業とサプライチェーン バイオマスの林業への貢献とサプライチェーン・・・・・・ Hein 日本のサプライチェーンの問題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 酒井
4.バイオマス熱利用 熱利用の実際と地域における新しい富の創造・・・・・・・ Daebeler 日本のバイオマス熱利用の課題 ・・・・・・・・ ・・・ ・・・・・ 相川
5.バイオマス発電 日本のバイオマス発電の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 熊崎 FITによるバイオマス発電の政策誘導・・・・・・・・・・・・・・ Krautz
6.中小規模設備の技術動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Eggers/大友
7.研究開発と日独協力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ Lenz
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日独バイオマスデー
まとめ
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1.バイオマス利用の目的 Why Biomass?
ゴミを宝に変える現代版「錬金術」。
だが、タネもしかけもある。 Waste to Energy, Alchemy of 21th Century
地域における新しい富の創造。
ビジネスとしてのCO2の大幅な削減(CO2削減はコストではなく、ビジネスの源泉)+森林整備の促進。
⇒みんなが幸せになれるシステム。Co-Benefits
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2.みんなが幸せになるには Co-Benefits
ゴミを宝に Waste to Energy
林地残材を効率的に収集・運搬するシステム
Logistics, Supply Chain
バイオマスの多様性に対応する技術 Technology
⇒林業・バイオマス利用の理論の体系化とベンチマーク
Principle + Benchmarking
それを現場で実践するためのエンジニアリング Engineering
残材利用・エネルギーの効率利用(熱電併給等)へと誘導する制度 Political Framework, FIT
⇒ドイツの経験と照らし合わせれば、やるべきことはあきらか。
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3.「エンジニアリング」 Engineeringの重要性
バイオマスの現場は多様(入手可能なバイオマスの質・形状と量。熱需要のあり方)。
現場の実態を反映しない特定の技術を押し付けることは、現場に多大な負担を強いる。みんなが疲弊。
現場の実態を十分に反映したコンセプトづくりとそれにもとづく設備選定、設計・施工。
⇒メーカーとは独立したエンジニアリング会社の存在がきわめて重要。
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4.役割と日独協力・連携
行政(中央省庁)、自治体。
研究機関。
民間企業(プラントメーカー、設備機器サービス会社、エネルギー会社、NPO等々)。
金融機関。
⇒課題整理はほぼできたのでは。
具体的にいかに連携していくか。
ドイツにとっても日本市場は巨大なビジネスチャンス。
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