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農業水利施設の機能保全の手引き 「パイプライン」 参考資料編 平成21年7月

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Page 1: 「パイプライン」 参考資料編 - maff.go.jp参-3 (6)パイプラインの改定(平成21年3月) 水理検討においては、口径300mm以下、かつ設計水圧1.0Mpa以下の小口径管の定常水理計算

農業水利施設の機能保全の手引き

「パイプライン」

参考資料編

平成21年7月

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参考資料編

目 次

1.パイプラインの設計方法・規格の変遷 ·········································· 1

1.1 パイプラインの設計方法の変遷 ·········································· 1

1.1.1 土地改良事業計画設計基準の変遷 ·································· 1

1.1.2 土圧公式の変遷 ·················································· 6

1.1.3 基礎工法の変遷 ·················································· 8

1.1.4 パイプラインの耐震設計の変遷 ··································· 20

1.2 パイプラインの施工方法の変遷 ········································· 26

1.2.1 土木工事等共通仕様書の変遷 ····································· 26

1.2.2 管工事に関する共通仕様書の変遷 ································· 27

1.2.3 土木工事施工管理基準の変遷 ····································· 33

1.3 各種規格等の変遷 ····················································· 44

1.3.1 コア式プレストレストコンクリート管(PC) ······················· 44

1.3.2 遠心力鉄筋コンクリート管(RC) ································· 49

1.3.3 強化プラスチック複合管(FRPM) ································· 51

1.3.4 ダクタイル鋳鉄管(DCIP) ······································· 54

1.3.5 硬質ポリ塩化ビニル管(PVC) ···································· 58

1.3.6 ポリエチレン管(PE) ··········································· 60

2.パイプラインの主要な劣化と特徴 ············································· 63

2.1 パイプラインの性能低下要因と変状の現象 ······························· 63

2.2 パイプラインの外観変状写真 ··········································· 65

3.パイプラインの主要な機能診断調査手法 ······································· 73

3.1 現地調査手法の検討 ··················································· 73

3.2 パイプラインの主要な機能診断調査手法 ································· 75

3.3 パイプラインの機能診断調査方法の総括 ································· 91

4.機能診断調査に係る記録様式 ················································· 94

5.機能診断調査結果に基づく施設状態評価表 ···································· 109

6.パイプラインの主要な対策工法 ·············································· 114

6.1 パイプラインの対策工法 ·············································· 114

6.1.1 パイプラインの対策工法 ········································ 114

6.1.2 対策工法の設計における留意事項 ································ 118

6.2 水撃圧に着目した保全対策の検討 ······································ 119

7.農業水利ストックマネジメントの実施検討事例(パイプライン) ················ 122

参考文献

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参-1

1.パイプラインの設計方法・規格の変遷

1.1 パイプラインの設計方法の変遷

現在、供用されているパイプラインの機能診断を行う場合には、建設時点において適用された

設計・施工・材料に関する情報を知ることが重要である。このため、設計・施工に関する規格を

設計基準・協会規格等を参考に年代別に整理し、設計上の考え方を明らかにする。まず全体のイ

メージをつかむため、土地改良事業計画設計基準「パイプライン」の変遷(制改定年別)に整理

したものを表 1-1に示す。

1.1.1 土地改良事業計画設計基準の変遷

最初の土地改良事業計画設計基準(以下「設計基準」という。)は、昭和 27 年(1952)から昭

和 31 年(1936)にかけ整備されている。ここでは、水路工及びパイプラインの制改定経緯を主な

項目別に整理し説明する。

(1)水路工の制定(昭和 29 年 12 月 1 日)

水路工(第 5編)逆サイホン工(第 6章)に、「サイホンは一般に工場製遠心力コンクリート

円形管(JIS A5303)、または鉄筋コンクリート円形管(JIS A5302)を使用することが望ましい。

これらは、現地の条件たとえば水圧などを満足するものをカタログから選びさえすれば、いっ

さいの応力計算を省略できる。」と記載されている。また、暗キョ(第 7 章)には、「暗キョ幅員

上の土砂重量を垂直土圧にとる場合」、「ヤンセン公式」、「マーストン公式」及び「フリューリ

ングの公式」の土圧公式やヒューム管の構造計算例が記載されているが、水平土圧は考慮され

ていなかった。

(2)水路工(その 2)パイプラインの制定(昭和 48 年 3 月 1日)

「パイプラインは旧基準では扱われていなかった工種であるが、最近における農業のシステ

ム化あるいは水利用の合理化などから、急速な進展をみている工種であり、設計基準の制定が

強く望まれていたもので、水路工の全面改定を機に新たにこの工種を加えることとし、他の工

種にさきがけて作成したものである。」と述べられている。

この基準によれば、プレストレストコンクリート管、石綿管、ダクタイル管、鋼管、硬質塩

化ビニル管、ポリエチレン管がパイプラインに用いる管として推奨されている。また、遠心力

鉄筋コンクリート管、ロール転圧鉄筋コンクリート管のA形管は、ともに継手の水密性に問題

があり使用すべきでないとしていることや継手部の水密性を慎重に選定すべきこと、強酸性地

盤における石綿セメント管、コンクリート管の腐食や鋳鋼管類のさび、電食などに対する考慮

も必要としている。

埋設管の鉛直土圧の算式はマーストン公式、ヤンセン公式、フリューリング公式などがある

が、最も一般的に普及しているマーストン公式を適用している。また、水平土圧公式は、ラン

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参-2

キン公式、ブーシネスク公式、スパングラー公式等があるが不とう性管の場合はランキン公式、

とう性管については、スパングラー公式を適用している。埋設状態は「溝型」、「突出型」、

「中間溝型」に分類され、不とう性管ととう性管の場合の構造計算例が記載されている。

不とう性管に内外圧が同時に作用するときのひび割れ荷重と内外圧との関係式が示された

(表 1-2 参照)。可とう継手を持つ管(ゴム輪を用いる遠心力及びロール転圧鉄筋コンクリー

ト管、石綿セメント管、プレストレストコンクリート管、ダクタイル鋳鉄管)を用いて管路の

曲線設置をする場合には、各継手の設計曲げ角度は、その継手の最大許容曲げ角度の 1/2 以内

とするとしている。

また、各種管類の管厚計算式を示している。施工時の支台(いわゆる梯子胴木)を注意して

使用することを認めている。可とう継手を持つ管の曲線設置を許容している。通水試験と水圧

試験とを示し許容漏水量を提示している。

(3)水路工(その 2)パイプラインの改定(昭和 52 年 10 月 1 日)

構造設計に用いる管体の破壊条件と安全率やとう性管の許容たわみ率を定め、設計たわみ率

の検討を新たに規定している。設計たわみ率の計算式は、スパングラーの修正式に統一され、

土の受働抵抗係数 e′の標準値が示された。とう性管のうち、ダクタイル鋳鉄管と鋼管の内外

圧計算式が整理され、許容引張応力度を改定している。強化プラスチック複合管の管種選定を

内外圧合成式で行うことを説明している。不とう性管の管種選定に用いる基礎数値の一部見直

しを行っている。また、新たに地震に対する検討について、設計上の留意点を示している。

(4)水路工(その 2)パイプラインの改定(昭和 63 年 3 月 1日)

不とう性管の管種から、ロール転圧鉄筋コンクリート管及び石綿セメント管が除外された。

たわみ率から求める管厚計算式の変形遅れ係数についての考え方が変更された。また、大口径

のとう性管は、たわみ率のみで判断すると継手の機能及び必要な通水断面の確保ができない等

の不都合を生じることもあり、たわみ量の制限について更に検討が必要であるとされ、管種選

定にあたっては、管材の許容応力度から定まる管厚と設計たわみ量から定まる管厚をもとめ、

その両方を満足する管種を採用しなければならないとしている。また、耐震設計について新た

に項目が追加された。

(5)パイプラインの改定(平成 10 年 3 月 31 日)

基準書と技術書に分割された。とう性管の特に大口径管路、大規模な工事及び軟弱な粘性土

等の特殊な土壌以外に参考にして設計を行うことができる受働抵抗係数e′の標準値が削除さ

れ、基礎材の反力係数 e′を「原地盤、施工方法、基礎材による基準反力係数(e′0)」、「溝

幅による補正係数(αa)」、「基礎材の締固め度合いによる補正係数(αb)」及び「地下水

の影響による補正係数(αw)」を基に算定する方法が新たに示された(表 1-4)。また、複数

年にわたって口径 1,000 ㎜以上の管路の設計施工が継続する場合は、たわみ量試験により決定

するとされ、解析に必要な諸元、現地計測、計測データの整理及び検証について示されている。

また、変形遅れ係数が「荷重(活荷重を除く)による変形遅れ係数(F1)」と「活荷重による

変形遅れ係数(F2)」に分けられ整理された。また、耐震設計で液状化に対する具体的な対策

が新たに示された。

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参-3

(6)パイプラインの改定(平成 21 年 3 月)

水理検討においては、口径 300mm 以下、かつ設計水圧 1.0Mpa 以下の小口径管の定常水理計算

は、水理条件等が厳しい場合をのぞき、簡略式を用いてもよいこととした。また、非定常的な

水理現象の解析にあって、水撃圧を予測する手法は、計算等による方法を原則とするとした。

構造設計においては、口径 300mm 以下の小口径管では、硬質ポリ塩化ビニル管(VP、VU)に

おいて、設計の簡略化のため一定の条件下で構造計算を行わなくてよいものとした。また、「土

地改良施設 耐震設計の手引き(平成 16 年 3 月)」を踏まえて、適切な耐震設計の考え方が記載

された。施設の重要度区分に応じた照査・設計を行うとともに、応答変位法等の設計手法を用

いた対策と地盤変状等の事例から整理した地震応答対策の両面から設計・施工を実施すること

が示された。

また、技術書には「補修・補強」章を新たに創設し、補修・補強等の考え方、対策工法の選

定・設計等の留意事項及び施工後の検証について示された。

使用管種では、鋼板カラー継手 PC 管〔PCPA6〕が除外され、ポリエチレン管では高強度・高

密度の樹脂材料を使用した管種、及び強化プラスチック複合管では内挿用の管種が追加された。

(7)管種の変遷

表 1-5 は設計基準において、JIS またはその他の規格に基づいて製造・販売されている既製

管の中で、農業用パイプラインによく使用される管として示されている管種を制改定年別に整

理したものである。ただし、空欄の管種が当時存在しなかったことを示すものではない。

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参-4

表 1-1 土地改良事業計画設計基準パイプラインの変遷

①昭和 48 年 3月

制定

②昭和 52 年 10 月

改定

③昭和 63 年 3月

改定

④平成 10 年 3月

改訂(基準書・技術書)

④平成 21 年 3月

改訂(基準書・技術書)

一般事項

管 口 径 記述なし φ300~φ2000 φ2000 以下 φ3000 以下 ←

使 用 静 水 頭 - 100m 以下 ← ← ←

管 種 RC・PC・ACP・CIP・DCIP

・SP・PVC・PE

CIP の削除、

FRPM の追加 ACP の削除

水理設計

シ ス テ ム 水理ユニットの導入

設 計 流 速 標準値 ←

自然圧:

許容流速の平均値

2m/s 以下

ポンプ圧送:

標準値

自然圧・ポンプ圧送:

許容流速の平均値

原則 2m/s 以下

水 理 現 象 定常・非定常の導入

水 撃 圧 - 原則:計算による

方法

原則:経験則による

方法 ←

原則:計算による

方法

土 被 り

( 標 準 )

耕地:0.6m 以上

農道・私道:

管径 450 ㎜以下

1.0m 以上

管径 500 ㎜以上

1.2m 以上

公道下:管理者と協議

公道下:

「一般には 1.2m 以上」

の記述追加

管路保護:0.6m 以上

公道・軌道・河川下等:

管理者と協議

公道下:1.2m 以上

農道・私道:1.0m 以上

管路保護:0.6m 以上

公道・軌道・河川下等:

管理者と協議

公道及び道路構造令に

準拠する農道下

:1.2m 以上

道路構造令に準拠しな

い農道下

:1.0m 以上

鉛 直 土 圧 マーストン公式

矢板施工の追加

とう性管:埋戻し深さ

2m以下は垂直土圧

公式を適用

簡易立て込み矢板工の

追加

水 平 土 圧

不とう性管:

ランキン公式

とう性管:

スパングラー公式

設計たわみ率の規定:

スパングラーの修正式

に統一

e’の標準値の削除

新たな方法の導入

基 礎 工 法

複合配管の項を追加

良好地盤の場合削除

ハシゴ胴木の削除

複合配管の管間隔の

算出式・表を追加

耐震設計 記述なし 液状化地盤さける 液状化・沈下対策として砕石基礎採用

重要度区分に応じた

照査・設計

地震応答対策検討

設計技術の

特 徴

CIP(鋳鉄管)は基準

制定時点で殆ど使用

されず

変形遅れ係数(F=1.5)

FRPM 管普及

変形遅れ係数(F=1.0)

浅埋設工法

施設周辺の環境との

調和を配慮

小口径管の簡略化

補修・補強の考え方を

追加

施 工 通水試験記述 管体の埋設追加 施工管理追加

管 理 管理を追加

①S48 年 3 月制定 :第 3部設計第 5編水路工(その 2)第 15 章パイプライン

②S52 年 10 月改定 :設計 水路工(その 2)パイプライン

③S63 年 3 月改定 :設計 水路工(その 2)パイプライン

④H10 年 3 月改定 :設計「パイプライン」基準書・技術書

⑤H21 年 3 月改訂 :設計「パイプライン」基準書・技術書

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参-5

表 1-2 不とう管のひび割れ荷重と内外圧との関係式の変遷

基準 昭和 48 年 昭和 52 年 昭和 63 年 平成 10 年 平成 21 年

許容内圧の算定式 (PH/PC)n+(HP/HC)=1 ここで PC:内圧が 0のとき、破壊又はひびわれが

発生する外圧(kgf/㎝)(kN/m)

HC:外圧が 0のとき、破壊又はひびわれが 発生する内圧(kgf/㎝2)(MPa)

PH:内圧が HPのとき破壊又はひびわれが 発生する(許容)外圧(kgf/㎝)(kN/m)

HP:外圧が PHのとき破壊又はひびわれが 発生する(許容)内圧(kgf/㎝2)(MPa)

n :管の種類や構造等により決まる係数 n=1.5

特記事項 安全率 S(1.5)を式中に組み込んだ。 PC→PC/S、HC→HC/S

○ ○ ○ ○

表 1-3 不とう管の管種選定の選定手段

昭和 48 年 昭和 52 年 昭和 63 年 平成 10 年 平成 21 年

ひびわれ荷重 計算式による PC 管協会規格 JIS A5333、

PACA2,6 JIS A5333、

PACA2,6,8 JIS A5373、

PACA2,8

ひびわれ内圧 計算式による PC 管協会規格 JIS 及び

PACA 規格

JIS 及び

PACA 規格

JIS 及び

PACA 規格

特記事項 管種選定図添付 管種選定図添付 管種選定図添付 添付なし 添付なし

表 1-4 受働抵抗係数(反力係数)e’の見直し

昭和 52 年改定 平成 10 年基準改訂以降

受働抵抗係数

(反力係数)e’ アメリカ開拓局基準の準用 国内施工現場の観測記録

適用土質分類 統一土質分類(ASTM) 日本統一土質分類法

(反力係数の国内基準化に対応)

表 1-5 土地改良事業計画設計基準 パイプライン使用管種

制改定年 管 種 昭和 29 年 昭和 48 年 昭和 52 年 昭和 63 年 平成 10 年 平成 21 年

遠心力鉄筋コンクリート管 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ロール転圧鉄筋コンクリート管 ○ ○ コア式プレストレストコンクリート管 ○ ○ ○ ○ ○ 大口径プレストレストコンクリート管 ○ ○ ○ 鋼板カラー継手 PC(DSPC) ○ ○ 高外圧用プレストレストコンクリート管 ○ ○ 石綿セメント管 ○ ○ 鋳鉄管 ○※

ダクタイル鋳鉄管 ○ ○ ○ ○ ○ 鋼管 ○ ○ ○ ○ ○ 硬質ポリ塩化ビニル管 ○ ○ ○ ○ ○ ポリエチレン管 ○ ○ ○ ○ ○ 強化プラスチック複合管(FRPM) ○ ○ ○ ○

注)○は、それぞれの制改定年における設計基準で、一般にパイプラインに用いる管種として示されているものである。 ただし、鋳鉄管※は昭和 48年制定の設計基準において、「現在直管はほとんど使用されていない。」としている。

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参-6

1.1.2 土圧公式の変遷

(1)布設の状態

設計基準では、埋設管にかかる土圧は、その布設の状態及び不とう性管か、とう性管かで伝

達される力が異なるので、それぞれに応じた土圧公式を適用するものとし、管の布設の状態を

図 1-1のように区分している。

溝 型

溝 型 幅広溝型 完全突出状

突出状態 不完全突出状

埋設管 突出型 完全溝状

溝状態 不完全溝状

その他 矢板施工

図 1-1 布設の状態

※1 昭和 48 年制定の設計基準では「中間溝形」とし、別の形状として取り扱われている。 ※2 昭和 52 年改定の設計基準では「特殊なケース」としている。

(2)土圧公式の適用条件

平成 10 年改訂の設計基準では、土圧公式の適用条件として小口径管の水平土圧の取り扱いが

なくなるとともに、簡易立て込み矢板についての記述が追加された。また、平成 21 年改訂の設

計基準では、逆突出形の鉛直土圧公式において沈下比の標準値γsdについての表が追加された。

a. 第 3 部設計第 5編水路工(その 2)第 15 章パイプライン(昭和 48 年 3 月 1日制定)

不とう性管:管径 600 ㎜以下の小口径管及び支持角 180°以上の固定支承の場合は水平土

圧について無視して差支えないとしている。

と う 性 管:小口径管(鋼管、ダクタイル鋳鉄管は 250 ㎜以下、塩化ビニル管、ポリエチ

レン管は 125 ㎜以下)及び支持角 180°以上の固定支承の場合は埋戻し土及

び盛土による水平土圧は無視して差支えないとしている。

b. 設計 水路工(その 2)パイプライン(昭和 52 年 10 月 1 日改定)

不とう性管:管径 600 ㎜以下の小口径管及び支持角 180°以上の固定支承の場合は水平土

圧について無視して差支えないとしている。

と う 性 管:小口径管(鋼管、ダクタイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管は 250 ㎜以下、

塩化ビニル管、ポリエチレン管は 125 ㎜以下)及び支持角 180°以上の固定

支承の場合は埋戻し土及び盛土による水平土圧は無視して差支えないとし

ている。

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参-7

c. 設計 水路工(その 2)パイプライン(昭和 63 年 3 月 1日改定)

不とう性管:口径 600 ㎜以下の小口径管は水平土圧について無視して差支えないとしてい

る。

と う 性 管:小口径管(鋼管、ダクタイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管は 250 ㎜以下、

硬質塩化ビニル管、硬質ポリエチレン管は 125 ㎜以下)及び支持角 180°以

上の固定支承の場合は埋戻し土及び盛土による水平土圧は無視して差支えな

いとしている。

d. 設計 「パイプライン」(平成 10 年 3 月 31 日改定)

小口径管の水平土圧に対するただし書きの記述がなくなり、土圧の分布の図も水平土圧を

考慮しないケースが削除された。

簡易建て込み矢板について、「最近簡易建て込み矢板により土留めを行う場合が多いが、

この場合並びに片側矢板・片側素堀りの場合においても矢板施工とみなして土圧の算定を

行う。」という記述がされている。

e. 設計 「パイプライン」(平成 21 年 3 月改定)

参考として示される逆突出形の鉛直土圧公式において、この場合の沈下比の標準値γsdの

表について、沈下比の標準値γsdは不とう性管が-0.3、とう性管が 0としている。

表 1-6に設計基準から土圧公式の変遷の概要を整理したものを示す。

表 1-6 土圧公式の変遷

基準 昭和 48 年 昭和 52 年 昭和 63 年 平成 10 年 平成 21 年

溝形(マーストン公式) ○ ○ ○ ○ ○

突出形 ( 〃 ) ○ ○ ○ ○ ○

中間溝形( 〃 ) ○

矢板施工 ○ ○ ○ ○

水平土圧(ランキン公式) ○ ○ ○ ○ ○

溝形(マーストン公式) ○

突出形 ( 〃 ) ○

中間溝形( 〃 ) ○

H≦2.0m (垂直土圧公式) ○ ○ ○ ○

H>2.0m

溝形(マーストン公式) ○ ○ ○ ○

突出形( 〃 ) ○ ○ ○ ○

矢板施工(垂直土圧公式) ○ ○ ○ ○

水平土圧(スパングラ―公式) ○ ○ ○ ○ ○

特記事項 ①矢板施工を考慮

②埋め戻し深さが 2mまでは、垂直土圧公式を用いる。

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参-8

1.1.3 基礎工法の変遷

「基礎工法」、「基礎・埋戻し材料」及び「設計支持角」の変遷を設計基準の記載内容により

整理した。

(1)基礎工法

設計基準に記載されている基礎工法の変遷の概要を整理したものを表 1-7に示す。

表 1-7 設計基準に示した基礎工法の変遷

昭和 48 年 昭和 52 年 昭和 63 年 平成 10 年 平成 21 年

岩盤の場合 ○ ○ ○ ○ ○

良好地盤の場合 ○ ○ ○ 削除 削除

普通地盤の場合 ○ ○ ○ ○ ○

軟弱地盤の場合 ○ ○ ○ ○ ○

(ハシゴ胴木の記述) ○ ○ ○ 削除 削除

大きな荷重を受ける 場合

○ ○ ○ ○ ○

管軸方向に地盤が変化する場合

留意事項 ○ ○ ○ ○

構造物との接続部分 の場合

留意事項 ○ ○ ○ ○

盛土中の配管の場合 ○ 削除 削除 削除 削除

コンクリート基礎の場合 なし なし なし ○ ○

傾斜に沿って管体を布設の場合

留意事項 ○ ○ 削除 削除

複合配管の場合 なし なし なし ○ ○

このうち、a.良好地盤(S48、S52、S63)、b.普通地盤(S48、S52、S63、H10、H21)、c.岩盤

(S48、S52、S63、H10、H21)、d.軟弱地盤(S48、S52、S63、H10、H21)、e.f.大きな荷重を受

ける場合(S48、S52、S63、H10、H21)について、設計基準をもとに変遷を表 1-8に整理した。

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参-9

表 1-8(a) 基礎工法の変遷(良好地盤の場合)

昭和 48 年 3月

①良好な地盤の定義:地盤が良好な砂質土の場合には基礎地盤をそのまま利用する土基礎とす

る。

②基礎材料:良質の埋戻土

昭和 52 年 10 月

①良好な地盤の定義:地盤が砂利、砂質あ

るいは十分締まった粘土質等の良好な地

盤。

②基礎材料:原則として工事中に発生する

土砂のうち良質なものを使用するものとす

る。

昭和 63 年 3月 ①良好な地盤の定義:地盤が砂利、砂

質あるいは十分締まった粘土質等の

良好な地盤。

②基礎材料:原則として工事中に発生

する土砂のうち良質なものを使用す

るものとする。ただし、転石がある場

合には管体に局部的な集中荷重が生

じるので注意することが必要である。

平成 10 年 3月 記述なし

平成 21 年 3月 記述なし

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参-10

表 1-8(b) 基礎工法の変遷(普通地盤の場合)

昭和 48 年 3月

普通の地盤に管を敷設する場合は十分に締固めた砂(または良質土)でサンドベッドを設け

る。

昭和 52 年 10 月

直接管体を布設すると、不等沈下が起こる可能性が予測される地盤の場合は砂(または良質

土)で十分締固めた基床を設けその上に管体を布設しなければならない。

昭和 63 年 3月

直接管体を布設すると、不等沈下が起こる可能性が予測される地盤は砂又は良質土で十分締

固めた基床を設けその上に管体を布設しなければならない。

平成 10 年 3月

直接管体を布設すると、不等沈下が起こる可能性が予測される地盤は、砂または良質土で十分締固めた基床を設け、その上に管体を布設する。

平成 21 年 3月

直接管体を布設すると、不等沈下が起こる可能性が予測される地盤は、砂、砂礫又は良質な

地盤材料で十分締固めた基床を設け、その上に管体を布設する。

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参-11

表 1-8(c) 基礎工法の変遷(岩盤の場合)

昭和 48 年 3月 岩盤の場合には余堀を行い、砂(または良質土)で置換し、

十分締固めた基床(サンドベッド)を設ける。

基床厚の標準は次のとおりとする。

盛土高7m以下 基床厚 30 ㎝以上

盛土高7m以上 1m増す毎に4㎝ずつ基床厚を増加

昭和 52 年 10 月 管体の布設地盤が岩盤など堅固な場合、管

体を直接地盤の上に布設すると、管材部と地

盤との間に不陸が生じ管体に局部的な集中

反力が生じ、管体が折損したり破裂したりな

どの事故をひき起こすことがあるので余堀

を行い、砂(または良質土)で置換し十分締

固めた基床を設ける。

昭和 63 年 3月 管体の布設地盤が岩盤等堅固な場合、管

体を直接地盤の上に布設すると、管材部と

地盤の間に不陸が生じ管体に局部的な集中

反力が生じ、管体の折損及び破壊等の事故

を引き起こすことがあるので、余堀を行い、

砂または良質土で置換し、十分締固めた基

床を設ける。

平成 10 年 3月 管体の布設地盤が岩盤等堅固な場

合、管体を直接地盤の上に布設する

と、管材部と地盤の間に不陸が生じて

管体に局部的な集中反力が発生し、管

体の折損及び破壊等の事故を引き起

こすことがあるので、砂または良質土

で置換し十分締固めた基床を設ける。

平成 21 年 3月 管体の布設地盤が岩盤等堅固な場

合、管体を直接地盤の上に布設する

と、管材部と地盤の間に不陸が生じて

管体に局部的な集中反力が発生し、管

体の折損、破壊等の事故を引き起こす

ことがあるので、砂又は良質土で

300mm 以上置換し十分締固めた基床を

設ける。

なお、口径が 300mm 以下の小口径管

では該当口径に相当する基床厚とし、

最小基床厚は100mm以上確保するもの

とする。

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参-12

表 軟弱地盤の目安

表 1-8(d) 基礎工法の変遷(軟弱地盤の場合)

昭和 48 年 3月

1)軟弱地盤は原則として砂で置換する。軟弱地盤

が深い場合は通常管外径の2~3 倍の幅を持つ基

床(サンドベッド)を設ける。この場合の施工支持

角は大口径では 180°、小口径では 90°以上を原則

とする。基床厚は管外径×0.3~0.5(㎝)、ただし、

50 ㎝以上とする。

2)砂置換の困難な場合などにはハシゴ胴木基礎

を用いることがある。この工法は胴木で不等沈下

を防止しようとするものであるが、枕木やクサビ

に荷重が集中しやすいので注意を要する。大きな

荷重を受ける管の基礎としては適当でない。

昭和 52 年 10 月

軟弱地盤は原則として砂で置換する。また軟弱層

が深い場合の基礎工法は、図によるものとする。ま

た、この場合不等沈下を防止するためハシゴ胴木を

用いる場合もあるが、この場合胴木に直接管体を接

触させると集中反力が生じるので、胴木と管体の間

に砂(または良質土)をクッション材として施工す

る必要がある。

とう性管を布設する場合は水平土圧が基床幅に影響されるので、その面からも基礎工法を検討する

必要がある。

昭和 63 年 3月 軟弱地盤は原則として砂で置換する。また軟弱層

が深い場合の基礎工法は、図によるものとする。ま

た、この場合不等沈下を防止するためハシゴ胴木を

用いる場合もあるが、この場合胴木に直接管体を接

触させると集中反力が生じるので、胴木と管体の間

に砂(または良質土)をクッション材として施工す

る必要がある。

とう性管を布設する場合は水平土圧が基床幅に

影響されるので、その面からも基礎工法を検討する

必要がある。

更に、軟弱地盤の場合原地盤の支持力の検討も別途行うことが必要である。

平成 10 年 3月

パイプラインにおける軟弱地盤は表を目安とし、

原則として砂で置換する。また、軟弱層が深い場合

の基礎工法は図によるものとする。

軟弱地盤の基礎工は、管体の支持と軟弱地盤の改

良(置換)を考慮して基床厚を決めているが、管体

の均等支持に必要な基床厚は普通地盤と同じとす

る。

平成 21 年 3月

パイプラインにおける

軟弱地盤は表を目安とし、

原則として砂で置換する。

また、軟弱層が深い場合の

基礎工法は図によるもの

とする。

軟弱地盤の基床厚とし

ては、均等支持に必要な基

床厚が確保できれば支障

はないが、普通地盤におけ

る基床厚以上とし、施工性

を考慮した基床厚とする。

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参-13

表 1-8(e) 基礎工法の変遷(大きな荷重を受ける場合)

昭和 48 年 3月 大きな荷重を受ける管や敷設傾斜度が大きい場合には、コンクリート基礎が一般に用いられ

る。コンクリート基礎は若干の鉄筋で補強すれば最も完全な基礎工となる。

昭和 52 年 10 月 不とう性管が大きな荷重を受ける場合やその布設傾斜角度が大きい場合には、コンクリート

基礎が一般に用いられる。コンクリート基礎は若干の鉄筋で補強すれば最も完全な基礎工とな

る。

しかし、とう性管の場合には基礎境の管体の部分に応力が集中するので、コンクリート基礎

などはできるだけ避けるようにしなければならない。

図:未掲載

昭和 63 年 3月 不とう性管が大きな荷重を受ける場合やその布設傾斜角度が大きい場合には、コンクリート

基礎が一般に用いられる。コンクリート基礎は若干の鉄筋で補強すれば最も完全な基礎工とな

る。

しかし、とう性管の場合には基礎境の管体の部分に応力が集中するので、コンクリート基礎

などはできるだけ避けるようにしなければならない。

図:未掲載

平成 10 年 3月 不とう性管が大きな荷重を受ける場合やその布設傾斜角度が大きい場合には、コンクリート

基礎が一般に用いられる。コンクリート基礎は若干の鉄筋で補強すれば最も完全な基礎工とな

る。

しかし、とう性管の場合には基礎境の管体の部分に応力が集中するので、コンクリート基礎

などはできるだけ避けるようにしなければならない。

※コンクリート基礎の場合

一般に大きな荷重を受ける場合や、布設傾斜角度が大きい場合にはコンクリート基礎を用いる。なお、管単体の縦断方向中央部には打継目を設けてはならない。打継目は管の接合部を中

心として一定間隔をとって設けるのがよい。

とう性管を固定支承にすることはとう性管の特性を損なうことになることから、固定支承と

する場合は、急傾斜地のズリ落ち防止及び短区間の横断部補強など経済性から考えてやむを得

ない場合のみ採用するのが一般的であり、施工支持角は 180°以上とする。ただし、硬質塩化

ビニル管及びポリエチレン管の施工支持角は 360°とし、強化プラスチック複合官の場合は傾

斜地 180°以上、その他の場合は 360°とする。

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参-14

表 1-8(f) 基礎工法の変遷(大きな荷重を受ける場合)

平成 21 年 3月 不とう性管が大きな荷重を受ける場合やその布設傾斜角度が大きい場合には、コンクリート

基礎が一般に用いられる。コンクリート基礎は若干の鉄筋で補強すれば最も完全な基礎工とな

る。

しかし、とう性管の場合には基礎境の管体の部分に応力が集中するので、コンクリート基礎

などはできるだけ避けるようにしなければならない。

※コンクリート基礎の場合

一般に大きな荷重を受ける場合や、布設傾斜角度が大きい場合にはコンクリート基礎を用

いる。なお、管単体の縦断方向中央部には打継目を設けてはならない。打継目は管の接合部を

中心として一定間隔をとって設けるのがよい。

とう性管を固定支承にすることはとう性管の特性を損なうことになることから、固定支承

とする場合は、急傾斜地のズリ落ち防止、短区間の横断部補強など経済性から考えてやむを得

ない場合のみ採用するのが一般的であり、施工支持角は 180°以上とする。ただし、硬質ポリ

塩化ビニル管及びポリエチレン管の施工支持角は 360°とし、強化プラスチック複合官の場合

は傾斜地 180°以上、その他の場合は 360°とする。

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参-15

(2)基礎及び埋戻し材料

昭和 52 年 10 月の設計基準より強化プラスチック複合管が登場したことにより、土の受働抵

抗係数(e′)の記述が追加された。このことより、管体の基礎及び埋戻し材料としての適性が

統一分類法の土質区分により示された。また、平成 10 年 3 月の設計基準では、管の種類・口径

により使用できる最大粒径が示された。平成 21 年 3 月の設計基準では、再生骨材を使用する場

合にあっては環境への影響を検討することとしている。表 1-9に変遷を整理したものを示す。

ここで、土質分類は昭和 52 年 10 月及び昭和 63 年 3 月制改定の設計基準では、統一土質分類

法(合衆国工兵隊及び開拓局)、平成 10 年 3 月及び平成 21 年 3 月改訂の設計基準では日本統

一土質分類法(JGS M 111-1996)を適用していることに注意する必要がある。

表 1-9(a) 基礎材の変遷

昭和 48 年 3月 基礎及び埋戻し材料についての記述はない。

※基礎材料については、設計支持角で材料を規定している。

昭和 52 年 10 月 管体の基礎及び埋戻し材料は、原則的に砂または良質な土砂を用いるものとする。これ

を統一分類法により表示すると表となる。

区分

適性 管体の基礎材料※ 埋戻し材料※※

良好 SW GW GP SW SP

良 GW GP GM GC SP GM GC SM SC

SM SC CL ML ML-CL

やや良 ML 粗粒部分が 25%以下の

CL ML ML-CL

(注)①※管体を支持する部分(設計支持角の変遷を参照)

※※管体に水平土圧を及ぼす部分(土の受動抵抗係数(e′))

②砂れきを用いる場合、砂れきが管体に直接触れないようにしなければならない。

昭和 63 年 3月 昭和 52 年 10 月改定版の注意事項のみの変更

(注)① ※管体を支持する部分(設計支持角の変遷を参照)

※※管体に水平土圧を及ぼす部分(土の受動抵抗係数(e′))

② 砂れきを用いる場合、れきが管体に直接触れないようにしなければならない。

③ 管体の基礎及び埋戻し材料には、管体及び継手に悪影響を及ぼすものを使用してはならな

い。

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参-16

表 1-9(b) 基礎材の変遷

平成 10 年 3月 管体の基礎及び埋戻し材料は、原則的に砂または良質な土砂を用いるものとする。管体

の基礎及び埋戻し材料に関する留意事項は、次のとおりとする。

① 管体の基礎材料には、管体及び継手に悪影響を及ぼすものを使用してはならない。

② 基礎及び埋戻し材料に礫質土を用いる場合、直接管体に礫が触れて集中荷重(点支持)

にならないように配慮しなければならない。基礎材料として使用できる最大粒径は次の

とおりとする。

コンクリート管類、鋼管、ダクタイル鋳鉄管、 ・・・・40 ㎜

500 ㎜以上の強化プラスチック複合管

500 ㎜未満の強化プラスチック複合管 ・・・・・・・・20 ㎜

③ 管体の埋戻しにおいて、現場発生土が埋戻し材料として不適な場合、良質土(購入土

等)で埋戻する。

なお、とう性管の施工支持角は、スパングラー(Spangler)水平土圧の理論(管側材料

は同一材料)及び設計の簡素化のため 2θ′=360°とする。

平成 21 年 3月 管体の基礎及び埋戻し材料は、原則として砂・砂礫又は良質な地盤材料を用いるものと

する。管体の基礎及び埋戻し材料に関する留意事項は、次のとおりとする。

① 管体の基礎材料には、管体及び継手に悪影響を及ぼすものを使用してはならない。

② 基礎及び埋戻し材料に礫質土を用いる場合、直接管体に礫が触れて集中荷重(点支持)

にならないように配慮しなければならない。また、再生骨材を使用する場合にあたっては、

「建設汚泥リサイクル指針」等を参考に環境への影響を検討する。

コンクリート管類、鋼管、ダクタイル鋳鉄管、 ・・・・40 ㎜(C-40、RC-40 相当)

500 ㎜以上の強化プラスチック複合管

500 ㎜未満の強化プラスチック複合管 ・・・・・・・・20 ㎜(C-20 相当)

注 1) 40mm を超える粒径を一部含む材料(C-40、RC-40)については、研究結果からその利用に

おける安全性が確認されている

注 2) C-20ha 市場性から入手できない地域があるので注意する。

③ 硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管の基礎材は砂質土を基本とする。

④ 管体の埋戻しにおいて、現場発生土が埋戻し材料として不適な場合、良質土(購入土

等)で埋戻しする。

なお、とう性管の施工支持角は、スパングラー(Spangler)水平土圧の理論(管側材料

は同一材料)及び設計の簡素化のため 2θ′=360°とする。

(3) 設計支持角

基礎反力算出のための設計支持角の考え方の変遷を設計基準から整理したものを表 1-10 に

示す。ここで、土質分類は昭和 48 年 3 月、昭和 52 年 10 月及び昭和 63 年 3 月制改定の設計基

準は、統一土質分類法(合衆国工兵隊及び開拓局)、平成 10 年 3 月及び平成 21 年 3 月改訂の

設計基準では日本統一土質分類法(JGS M 111-1996)を適用していることに注意する必要があ

る。

なお、コンクリート基礎の設計支持角は、「水路工(その 2)パイプライン(S48.3)」制定

以降「コンクリートの巻立て角をもって設計支持角とする。」という記述に変更はない。

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参-17

表 1-10(a) 設計支持角の変遷

昭和 29 年 12 月

設計基準 第 3部設計第 5編水路工第 7章暗キョ P.12~

ヒューム管を主体として、以下のケースの計算例を記載

基礎を設けない場合 集中荷重を受ける場合 反力が1点に作用する場合

反力が等分布の場合

等分布荷重を受ける場合

基礎のある場合 集中荷重を受ける場合 ※コンクリート基礎

等分布荷重を受ける場合

昭和 48 年 3月 P.46 表-15-3.11

a.土基礎の設計支持角の標準値

土質 締固め程度 支持角(2θ°)

不とう性管 とう性管

粒度分布の良い砂れき 普通の締固め 90 90

砂質粘土ローム 十分な締固め 90 90

締固めなし 60 60

シルト質ローム 締固めなし 30 60

b.砂基礎の設計支持角

土質 締固め程度 150°未満 150°以上

砂 十分な締固め 概ね 30°減 120

締固めなし 概ね 60°減 90

昭和 52 年 10 月 P.69 表-3.4.3

締固めた土基礎の設計支持角

施工支持角(°)

土質分類

不とう性管 とう性管

90°

以上

120°

以上

180°

以上

90°

以上

120°

以上

180°

以上

粒度分布の

良い砂れき

GW、GP、

GM、GC - 90 - 90

砂 SW 60※ 90 120 60※ 90 120

SP - 90 - 90

砂質ローム SM、SC - 60 - 60

シルト質

ローム ML - 30 - 60

※は特に大口径の場合のみ検討されるものである。

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参-18

表 1-10(b) 設計支持角の変遷

昭和 63 年 3月 P.98 表-4.4-3

締固めた土基礎の設計支持角

施工支持角(°)

土質分類

不とう性管 とう性管

90°

以上

120°

以上

180°

以上

90°

以上

120°

以上

180°

以上

砂れき GW、GP、

GM、GC - 90 - 90

砂 SW 60※ 90 120 60※ 90 120

SP - 90 - 90

砂質ローム SM、SC - 60 - 60

シルト質

ローム ML - 30 - 60

※は特に大口径の場合のみ検討されるものである。

平成 10 年 3月 P.284 表-9.4.3

土基礎の設計支持角

施工支持角(°)

土質分類・

日本統一分類

(中分類)

不とう性管 とう性管

120°

以上

180°

以上

360°

以上

礫質土 G、GS 90 120

GF 90 90

砂質土

S、SG のうち

小分類にお

いて、 SW、

SW-G、SGW

90 120 120

S、SG のうち

小分類にお

いて、 SP、

SP-G、SGP

90 90

その他の S、

SG、SF 60 90

φ300 ㎜以下の小口径管において基礎材に ML、CL を使用する場合の設計支持角は、

不とう性管:30°

と う 性 管:60°

とする。ただし、この場合でも管底部より下の基礎材料は、礫質土、砂質土を使用する。

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参-19

表 1-10(C) 設計支持角の変遷

平成 21 年 3月 P.195 表-9.4.3

土基礎の設計支持角

施工支持角(°)

土質分類・

日本統一分類

不とう性管 とう性管

120°

以上

180°

以上

360°

以上

礫質土

・砕石 {G}、{GS}、{GF} 90 120 120

砂質土

{S}、{SG}のうち小分類において、

(SW)、(SW-G)、(SGW) 90 120 120

{S}、{SG}のうち小分類において、

(SP)、(SP-G)、(SGP) 90 90 90

その他の{S}、{SG}のうち小分類に

おいて、(S-F)、(SF-G)、{SF} 60 90 90

1)φ300 ㎜以下の小口径管において基礎材に ML、CL を使用する場合の設計支持角は、

不とう性管:30°

と う 性 管:60°

とする。ただし、この場合でも管底部より下の基礎材料は、礫質土、砂質土を使用する。

2)日本統一土質分類の分類記号は、{ }が中分類、( )が小分類を示す。

細粒分 5%未満の粗粒土の細分類は、W が粒径幅の広い均等係数 UC≧10、P が分級された

UC<10 を示す。

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参-20

1.1.4 パイプラインの耐震設計の変遷

パイプライン施設における耐震設計に関して、設計基準に記述されている内容を制改定年別

に示す。また、耐震設計法の変遷を設計基準等から整理したものを表 1-11に示す。

表 1-11 土地改良事業計画設計基準等に見る耐震設計の変遷(パイプライン)

(1)第 3部設計第 5編水路工(その 2)第 15 章パイプライン(昭和 48 年 3 月 1日制定)

記述なし。

(2)設計 水路工(その 2)パイプライン(昭和 52 年 10 月 1 日改定)

地震に対する検討で、「斜面や軟弱地盤地帯等を通る重要なパイプラインは、必要に応じて

地震に対する検討を行うことが望ましい。この場合特に、地下に埋設する構造物の耐震設計理

論は体系的に確立されていないので、地震による被害を軽減するための対策(免震設計)を検

討することを基本とする。」とし、「軟弱地盤を避ける。やむを得ない場合は地震被災時の対

策(送水停止機構の設置など)を考えておく。」、「可とう継手を多く設け、全体的に伸縮に

富む構造(柔構造)にする。」や「曲管部の半径は大きく、特に中心角は 60°以上になるよう

に配慮する。」といった被害を軽減する工法を採用する立場を基本として計画設計を行うとし

ていた。参考として、地震波動によって生ずるひずみとパイプの設計についての検討例が示さ

れている。

また、地盤の液状化について、「地下水位が高く地表面に近い位置にある地盤」、「比較的

均一な砂からなる砂層」、「深さが 5m以下の N値が 10 以下である地盤」の条件を満たす砂地

盤は、マグニチュード 7.2~8.4、震度Ⅴ~Ⅵ(気象庁震度階)程度の地震を受けると液状化し

パイプラインに大きな被害が生ずる恐れがあるので、パイプライン(特に重要な幹線)は、こ

のような地盤を通すことはできる限り避けることが望ましいとしている。

48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

耐震化対策(レベル1地震動)

○応答変位法○地震応答対策

耐震化対策(レベル2地震動)

○応答変位法○地震応答対策

液状化対策

○簡易判定法・FL値法 ・粒度とN値による判定

○詳細な判定法・全応力解析 ・有効応力解析

耐震化対策(レベル1地震動)

耐震化対策(レベル2地震動)

液状化対策

○S53.6.12 宮城県沖地震 ○H7.1.17 兵庫県南部地震 ○H16.10.23 新潟県中越地震

※土地改良事業計画設計基準

①S48年3月制定 :第3部設計第5編水路工 (その2) 第15章パイプライン

②S52年3月改訂 :設計  水路工 (その2) パイプライン

③S63年3月改訂 :設計  水路工 (その2) パイプライン

④H10年3月改訂 :設計  「パイプライン」 基準書・技術書

⑤H21年3月改訂 :設計  「パイプライン」 基準書・技術書

○応答変位法 ○応答変位法

 ○簡易判定法  ・FL値法  ・粒度とN値による判定 ○詳細な判定法  ・全応力解析  ・有効応力解析

 ○応答変位法

 ○応答変位法

○記述なし ○免震設計

○記述なし○液状化する地盤を避ける○液状化の判定基準

○液状化の判定:簡便法 ※必要に応じてより詳細な検討

○液状化の判定:簡便法 ※必要に応じてより詳細な検討○対策工法を提示

           年 度 項 目

パイプライン設計基準※

耐震設計指針等

参考基準(上下水道分野)

地震災害等

設計基準

耐震設計指針等

①S48年制定 ②S53年改訂 ②S63年改訂 ④H10年改訂 ⑤H21年改訂

⑥S57年 土地改良事業設計指針「耐震設計」 ⑦H16年 土地改良施設耐震設計の手引き

⑧H9年 水道施設耐震工法指針・解説

⑨H9年 下水道施設の耐震対策指針と解説

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参-21

(3)設計 水路工(その 2)パイプライン(昭和 63 年 3 月 1日改定)

地震に対する検討で、「斜面や軟弱地盤地帯等を通る重要なパイプラインは、必要に応じて

地震に対する検討を行うことが望ましい。この場合特に、地下に埋設する構造物の耐震設計理

論は体系的に確立されていないので、地震による被害を軽減するための対策工法を採用するこ

とを基本とする。」とし、対策工法を示している。

昭和 57 年 11 月に作成された土地改良事業設計指針「耐震設計」の記載内容を踏まえ、応答

変位法による管路の耐震設計法が示された。

また、液状化の検討について、「埋戻し土が砂質土であっても近代的工法により密に締固め

れば完全液状化の発生はほとんど考えられない。しかし、緩い砂質地盤に埋設される場合には

液状化の可能性について検討し、適切な対策を講ずる必要がある。地盤が液状化し、管路に大

きな被害が生じる恐れのある場合、特に大口径断面で重要な幹線はこのような地盤を避けるこ

とが望ましい。」としている。地盤の土質調査、試験により土の粒度・密度、支持力(N値)、

地下水位、相対密度等を把握するほか、地震調査等により当該地点の最大加速度を推定して簡

便法で行うこととし、簡便法による検討の結果、液状化の可能性に対する判定が明確でない場

合には、必要に応じてより詳細な検討を行うとし、液状化の可能性の予測方法の分類を示して

いる。

(4)設計 「パイプライン」(平成 10 年 3 月 31 日改定)

地震に対する検討で、「農業用パイプラインの耐震性については地震による被害を軽減する

ための対策を骨子とした設計・施工を実施することを基本とする。」、「上水との供用管路や

地域営農上重要度の高い幹線、民家に接し二次被害のおそれがあるパイプライン・ファームポ

ンド等については、必要に応じて従来の震度法による耐震設計に加えて規模の大きい地震動を

想定した耐震設計を行うことも検討する。」としている。

「計画設計上の基本方針」、「耐震化対策の調査」、「パイプライン系の構造的なウィーク

ポイント」、「パイプラインの耐震化対策」、「免震(耐震)性向上のための方策」が示され、

パイプラインの耐震化対策では、地震動に対応する場合と地盤変状(地盤の永久変位)に対応

する場合の 2ケースに分けて考える必要があるとしている。

地震動による地盤の動きが小さいと想定される場合には、応答変位法を用いた耐震計算で管

路の安全性を評価できるとしている。一方、被災の事例では管路は地盤の大きな永久変位を受

けて被災していることから、応答変位のみで管路の安全性を評価するのは難しいため、地盤変

状の事例などからパイプライン系全体のウィークポイントを整理し、対策工法を検討しなけれ

ばならないとしているが、従来の震度法による耐震設計に加えて規模の大きい地震動を想定し

た耐震設計についての具体的な記述はされていない。

また、地盤の液状化に関する検討では、具体的な対策が示され、「埋戻し砂の密度を高める」、

「砕石など液状化抵抗力の高い材料を埋戻し材として用いる。」、「コンクリートスラストブ

ロックなどの重量の大きい構造物を軽量化する。」、「マンホールなどの構造物の下部地盤の

支持力を高める。」、「曲管背面の埋戻し範囲を十分確保して、地盤の支持力を高める。」と

いう具体的な方法が示されている。

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参-22

(5)土地改良施設耐震設計の手引き(平成 16 年 3 月発刊)

管路施設を含め土地改良施設の大規模地震動(レベル 2)の耐震設計を取りまとめたもので、

構造物の重要度区分と保持すべき耐震性能、地震動の評価及び地震動の影響や耐震設計法が示

された。パイプラインに関しては、資料編に耐震設計例(応答変位法)が示されている。

また、液状化の検討についても、判定方法や安全性の検討方法が記載されている。

(6)設計 「パイプライン」(平成 21 年 3 月改訂)

「土地改良施設耐震設計の手引き」を踏まえ、パイプラインにおける耐震設計の考え方が記

載された。一般事項で、「農業用パイプラインの耐震性については地震による被害を軽減する

ための対策を骨子として、応答変位法や地盤の液状化判定などの設計手法を用いて検討する対

策と、設計手法は確立してないものの過去の被災事例などから有効と考えられる対策の両面か

ら設計・施工を実施することを基本とする。」、「パイプラインの重要度区分に応じて保持す

べき耐震性能を設定し、震害を受けた場合の影響を最小限とするような設計上の配慮が不可欠

である。」としている。

パイプラインの耐震対策では、地震動に対応する場合と、地盤変状(地盤の永久変位)に対

応する場合の 2 ケースに分け、さらに、地震動及び地盤変状に対応する対策は、それぞれ耐震

設計手法が確立しており数値化が可能な対策と、耐震設計が確立されていないが有効な対策に

分けて考える必要があるとしている。耐震設計手法が確立しており数値化が可能な対策につい

ては、施設の重要度に応じた地震動レベルにて検討を行い、耐震設計手法が確立されていない

が有効な対策については、施設の重要度区分に関わらず、パイプラインの屈曲部、土質の変化

点、液状化の予想される土質等において検討を行うものである。

重要度区分と保持すべき耐震性能では、施設規模・周辺土地利用等を考慮して重要度区分を

設定し、耐震設計に用いる地震動からパイプラインの保持すべき耐震性能を示している。

具体的な設計手法としては、応答変位法を用いた検討、及び地盤変状に対する検討において、

変位に伴う安全性の照査方法について詳細な設計手順を示している。

また、耐震設計手法として確立していない地盤変状などに対しては、地震応答対策の内容と

して、「地震動による地盤・構造物の挙動の違いによる被災」、「現地盤の液状化」、「埋戻

し土の液状化」、「地すべり、斜面崩壊、地盤沈下の起こりやすい地盤」ごとに対策を考慮す

るポイントと具体的な対策例を示している。さらに、「地質、地形の急変部」、「液状化を生

じる砂地盤等」、「液状化を生じるサンドベット」、「附帯構造物(異形管スラストブロック

を含む)との接合部付近の管路」などの被災事例から見た設計上の留意点と対策を示している。

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参-23

【参考】設計上の留意点(不とう性管)

(1)設計内水圧と水撃圧

鉄筋コンクリート管をパイプラインとして使用する場合は、大きな水撃が発生する様な水路

には不適等であり、一般的に自然流下によるオープンタイプの水路が主体となる。実際に使

用できる静水圧は、遠心力鉄筋コンクリート管については最大 0.2~0.3MP としている。

S53 年の農業土木学会地方講習会テキスト(パイプラインの設計資料:設計基準の解説)で

は、「遠心力鉄筋コンクリート管の最大の特長は耐久性と経済性に優れていることであり、

低圧管路としては有利な管である。ただ継手の信頼性に欠けるうらみがあるために、一応設

計基準では参考値として最大静水圧を 0.2MP とした。」とある。

しかし、S63 年の土地改良事業計画設計基準においては、使用静水圧の上限に関する記載は

ない。

(2) 不とう性管の外圧荷重

昭和 53 年の講習会テキストには、「外圧荷重として土圧、活荷重、(路面荷重)の他、埋

戻しによる側圧(ヒューム管の場合は、主動土圧のみ)がある。」と記載されている。

また、「以前は、管の自重や水重は、側圧による曲げモーメントが、それぞれ相殺するとい

う考え方が一般的であった。」とも記載されている。

昭和 63 年の設計基準では、「土圧、路面荷重、軌道荷重、管体の自重、管内水重、基礎反

力、その他の荷重」としている。内水圧は、管の全断面に引張力を生じさせるものであり、

その性格が異なることから、内水圧以外のものを外圧と称している。

次に外圧と称する荷重を比較したものを表 1-12に示す。

(3) 突出型施工・溝型施工――鉛直土圧とマ-ストン公式

鉛直土圧公式は、いずれの年度もマーストン公式を採用しているが、S48 では矢板施工の場

合の公式は提示されていなかった。

溝 型 Wv=Cd・w・(B2/Dc)―――マーストン公式

鉛直土圧 突 出 型 Wv=Cc・w・Dc――――――マーストン公式

矢板施工 Wv=w・H・(Bb/Dc)

水平土圧 Ph=K・w・h――――――――――――――ランキン公式

ここに、Wv:鉛直土圧(kgf/cm2),(kN/m2)

Ph:水平土圧(kgf/cm2),(kN/m2)

B :管頂に於ける溝幅(cm),(m)

Bb:矢板中心溝幅(cm),(m)

w :埋戻し土または盛土の単位体積重量(kgf/cm2),(kN/m2)

Cd:溝形の場合の土圧係数

Cc:突出形の場合の土圧係数

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参-24

表 1-12 管の設計に用いる荷重(外圧)

荷 重 区 分 S52 基準 S63 基準 H10 基準以降

方向 方向 方向 常時 施工時

土圧 鉛直 ○ 鉛直 ○ 鉛直 ○ ○

水平 ○ 水平 ○ 水平 ○ ○

活荷重

路面荷重

群衆荷重 鉛直 ○ 鉛直 ○ 鉛直 ○ -

水平 - 水平 - 水平 ○ -

自動車荷重 鉛直 ○ 鉛直 ○ 鉛直 ○ -

水平 - 水平 - 水平 ○ -

軌道荷重 鉛直 ○ 鉛直 ○ 鉛直 ○ -

水平 - 水平 - 水平 ○ -

その他の上載荷重

上載荷重 鉛直 ○ 鉛直 ○

水平 ○ 水平 ○

宅地荷重

鉛直 ○ -

水平 ○ -

雪荷重

鉛直 ○ -

水平 ○ -

ブルドーザ荷重(パイプラ

インの施工機械)

鉛直 ○ 鉛直 ○

水平 - 水平 -

施工時荷重(パイプライン

布設後の施工機械)

鉛直 - ○

水平 - ○

管体の自重 △ △ 鉛直 △ △

管内水重 △ △ 鉛直 ○ -

基礎反力 ○ ○ 鉛直 ○ ○

その他荷重

地震力 □ □

鉛直 □ -

水平 □ -

流水による遠心力 □ □

鉛直 □ -

水平 □ -

温度変化による荷重 □ □

鉛直 □ -

水平 □ -

浮力 □ □ 鉛直 □

縦断方向 □ □

鉛直 □ -

水平 □ -

(注1)○印は、荷重として配慮すべきもの。 (注2)△印は、加算する必要はない。(Pc、Hc の値に含まれる)

(注3)□印は、必要に応じ計上する。 (注4)-印は、荷重として配慮しなくて良い。

H10 年以降の設計基準では、検討すべき荷重について詳細に区分され、明確にされている。

また、路面荷重の水平方向についての配慮は、H10 年の以前の施設には配慮されていない。

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参-25

(4) 基 礎

H10 年以降の基準では、不とう性管の管体基礎の施工支持角は、120°以上と明示しているが、

S63 年の基準では、基礎材料(土質)の区分により設計支持角が定められ、施工支持角を 90°

~120°の範囲で定められていた。(表 1-13、表 1-14参照)

表 1-13 H10・H21 締め固めた土基礎の設計支持角(°)

施 工 支 持 角

土 の 分 類

H10 基準 H21 基準

120°以上 180°以上 120°以上 180°以上

礫質土

・砕石

G Gs 90 90 90 120

GF

砂質土

S,SG のうち小分類において

SW、SW-G、SGW 90 120 90 120

S,SG のうち小分類において

SP、SP-G、SGP 90 90 90 90

その他の S、SG、SF 60 60 60 60

表 1-14 S63 締め固めた土基礎の設計支持角(°)

施 工 支 持 角

土 の 分 類 90°以上 120°以上 180°以上

粒度分布の良い砂礫 GW、GP、GM、GC - 90

砂 SW 60 90 120

SP - 90

砂質ローム SM、SC - 90

シルト質ローム ML - 90

なお、基礎材料がコンクリートの場合は、巻立て角度が設計支持角としている。

(5)不とう性管種選定

管種選定で、不とう性管に内外圧が同じに作用する場合は次の式が成立するとされている。

この式は、S48 年から変わっていないが、安全率(S)が S52 年の基準から配慮されている。

{PH/(Pc/S)}n+{Hp/(Hc/S)}=1

ここに、Pc:内圧が 0の時、破壊又はひび割れが発生する外圧(kgf/cm),(kN/m)

Hc:外圧が 0の時、破壊又はひび割れが発生する内圧(kgf/cm2),(MPa)

PH:内圧が Hp の時、破壊又はひび割れが発生する(許容)外圧(kgf/cm),(kN/m)

Hp:外圧が PH の時、破壊又はひび割れが発生する(許容)内圧(kgf/cm2),(MPa)

S:安全率 1.5 以上(安全率は、S52 年の基準から配慮されている。)

n:管の種類や構造によって決まる係数 n=1.5 を採用

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参-26

1.2 パイプラインの施工方法の変遷

わが国の主な農業水利施設は、開水路型式で耐久性に富む、安価なコンクリートライニングや

三面張水路で作られており、管路型式の施工実績は少ない状況であったが、①施設の老朽化、②

水路周辺の都市化の進展に伴いう機能障害の進行、③更に安定取水の阻害及び維持管理の増大、

④家庭雑排水等の流入による水質が悪化など、社会的及び経年的な状況の変化により、管路施設

の施工実績は増大してきた。

管路施設の施工実績が進むにつれ、管材の製造技術や管種と規格の変遷によって、施工方法は

変化を遂げている。

管路施設の機能診断を行う場合、どのような施工がなされたのかを知ることが第一歩である。

このため、ここでは過去の施工方法・施工管理方法等に関する内容を、共通仕様書及び施工管理

基準等を主体に整理し述べることとする。

なお、施工方法の整理においては、管路施設の機能・性能を念頭に置き整理する。

1.2.1 土木工事等共通仕様書の変遷

土木工事等共通仕様書(以下「共通仕様書」という。)は、農林水産省所管の国営土地改良事

業、国営海岸保全事業及び国営地すべり対策事業に関する土木工事の請負契約書及び設計図書の

内容について、統一的な解釈及び運用を図るとともに、その他必要な事項を定め、契約の適正な

履行の確保を図るためのもので、昭和 50 年(1975)に初めて制定され、数回の改正が行われている。

管水路工に関する共通仕様書の主な制改定の状況は、表 1-15のとおりである。

表 1-15(a) 土木工事等共通仕様書の制改定(1/2)

制改定

年月日

管 類 布 設 工 の 共 通 仕 様 書 規 定 項 目 及 び 内 容

(第 1 節)

一般・通則

(第 2 節)

運搬保管

(第 3 節)

掘削

(第 4 節)

基礎工

(第 5 節)

布設接合

(第 6節)

埋戻し

(第 7 節)

通水試験

制定

(1975)

昭和 50 年

3 月 27 日

RC、PC 等の

管類に適用

一般事項、

段積み制限

(1.2m以下、

2段積制限)

一般事項

土基礎、砂

基礎、枕木、

梯子胴木基

礎、コンク

リート基礎

一般事項、ゴム

リング接合(回

転式、定着式)、

スペーサ

一 般 事

項、管頂

60cm 締

固方法

継目試験(テスト

バンド)、漏水試

第1回

改定

(1980)

昭和 55 年

3 月 3 日

ACP、DCIP、

SP、PVC、FRPM

を追加

段 積 制 限

は、特別仕

様書又は監

督職員の指

示事項とし

削除

特に改定

なし

特に改定な

不良箇所の手直

し又は再施工の

記述を追加。締

付接合、溶接接

合、TS 接合、パ

ット溶着を追加

特 に 改

定なし

継目試験(テスト

バンド)の記述を

削除し、漏水試

験、水圧試験を記

第2回

改定

(1987)

昭和 62 年

3 月 9 日

特に改定な

段積制限の

規定が復活

(1.5m以下、

2段積制限)

特に改定

なし

特に改定な

し 特に改定なし

特 に 改

定なし

試験方法を規定

(継目試験の記述

が復活)継目試験

(テストバンド)、

水張り試験、水圧

試験

第3回

改定

(1992)

平成 4年

10月 30日

ACP を削除

し、PE を追

特に改定な

特に改定

なし

特に改定な

し 特に改定なし

特 に 改

定なし 特に改定なし

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参-27

表 1-15(b) 土木工事等共通仕様書の制改定(2/2)

制改定

年月日

管 類 布 設 工 の 共 通 仕 様 書 規 定 項 目 及 び 内 容

(第 1 節)

一般・通則

(第 2 節)

運搬保管

(第 3 節)

掘削

(第 4 節)

基礎工

(第 5 節)

布設接合

(第 6節)

埋戻し

(第 7 節)

通水試験

第4回

改定

(1995)

平成 7年

12月 19日

特に改定な

特に改定な

特に改定

なし

特に改定な

し 特に改定なし

特 に 改

定なし 特に改定なし

第5回

改定

(1999)

平成 11 年

3 月 31 日

特に改定な

特に改定な

特に改定

なし

特に改定な

SP、DCIP のマク

ロセル腐食防止

の記述を追加

特 に 改

定なし 特に改定なし

第6回

改定

(2002)

平成 14 年

3 月 27 日

特に改定な

特に改定な

特に改定

なし

特に改定な

し 特に改定なし

特 に 改

定なし

特別仕様書又は

監督職員の指示

事項とし削除

第7回全面改定により、共通仕様書の編成方法が土木工事と施設機械が分離。

「共通偏」「工事別偏」に改定されるとともに、工事別工種の見直(管水路工事として次のとおり規定)

第7回

全面

改定

(2005)

平成 15 年

5 月 20 日

(第 1 節)

適用

(第 2 節)

一般事項

(第 3 節)

土工

(第 4 節)

構造物撤去

(第 5 節)

管体基礎工

(第 6 節)

管体工

PVC、FRPM、DCIP、

SP、バルブ、可と

う管、鋼製継輪

及び管水路の付

帯構造物に適用

適用基準、一般

事項(運搬・保

管、布設接合、

枕木・梯子胴木

基礎、構造物

工)を記述

第 1 偏

共通編

施工共通事項

と同様の記述

第 1 偏

共通編

施工共通事項

と同様の記述

砂基礎、砕石基

礎、コンクリー

ト基礎を規定

管 種 別 (PVC 、

FRPM、DCIP、SP)

に布設方法を

規定、弁設置工

を追加

(第 7 節)

分水弁室工

(追加規定)

(第 8 節)

排泥弁室工

(追加規定)

(第 9 節)

空気弁室工

(追加規定)

(第 10 節)

流量計室工

(追加規定)

(第 11 節)

制水弁室工

(追加規定)

(第 12 節)

減圧水槽工

(追加規定)

(第 13 節)

スラストブロック工

(追加規定)

(第 14 節)

付帯工

(追加規定)

(第 15 節)

法面工

(追加規定)

(第 16 節)

耕地復旧工

(追加規定)

(第 17 節)

道路復旧工

(追加規定)

(第 18 節)

水路復旧工

(追加規定)

1.2.2 管工事に関する共通仕様書の主な変遷

土木工事等共通仕様書における管水路工事の施工方法に関する主な変遷は、次のとおりである。

(1)管種の適用範囲

昭和 50 年(1975)制定における管種の適用範囲は、「工場製造の遠心力鉄筋コンクリート管、

コア式プレストレストコンクリート管等の管類を使用する工事に適用」と規定されている。

その後、第 1回改定(昭和 55 年(1980))で石綿セメント管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管、硬質塩

化ビニル管、強化プラスチック複合管が追加され、現在までに埋設されている主な管種全般に

適用されることとなる。なお、石綿は空気中に飛散すると人体に影響を及ぼすことが判明した

ため、第 3回改定(平成 4年(1992)において石綿セメント管の適用を削除している。また、ポリ

エチレン製品の普及によりポリエチレン管が追加された。

全面見直改定された第 7 回改定(平成 15 年(2003))では、「第 1 節:適用」において適用範囲

を「硬質塩化ビニル管、強化プラスチック複合管、ダクタイル鋳鉄管、鋼管の布設及びバルブ、

可とう管、鋼製継輪の据付け、管水路の付帯構造物を設置する工事」と規定され、遠心力鉄筋

コンクリート管及びプレストレストコンクリート管の適用は削除となっている。また、管種別

の布設工として、「第 6節:管体工」が規定され、硬質塩化ビニル管、強化プラスチック複合管、

ダクタイル鋳鉄管、鋼管の布設について、具体的な記述が行われている。

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参-28

(2)管類の運搬及び保管

昭和 50 年(1975)制定では、管類の運搬及び保管方法が規定されている。主に一般事項として

記述され、「落下衝撃の防止と管両端接合部の破損防止、運搬中の管体保護、集積場所での段

積制限(小口径管(350mm 以下)の積高 1.20m 以下制限、中口径管(1,000mm 以下)の 2段積制限)

及び角材の敷設」等が規定されている。

その後、集積場所での段積制限については、第1回改定(昭和 55 年(1980))において「特別仕

様書及び監督職員の指示事項」の記述に改定され、特別仕様書等で規定することとなるが、第

2回改定(昭和 62 年(1987)で復活し、「集積場所での段積制限(呼び径 500mm 以下の積高 1.50m

以下制限、呼び径 600~1,000mm 以下の 2段積制限)と規定されている。

全面見直改定された第 7 回改定(平成 15 年(2003))では、「第 2 節:一般事項」で規定されて

いるが、記述内容については特に改定されていない。

(3)管水路工事の掘削

昭和 50 年(1975)制定では、管水路工事における掘削について、主に一般事項が規定されてい

る。管布設に必要な幅員確保と適切な法勾配、過堀箇所の良質土の入替えと適切な転圧、掘削

完了後の基盤確認(監督職員)等が記述され、第 7回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定さ

れるまで、記述内容については特に改定されていない。

全面見直改定では、「第 3節:土工」で規定されているが、記述内容は「第 1偏:共通編-第 3

章:施工共通事項-第 3節:土工」として整理された。

(4)管路の基礎工

昭和 50 年(1975)制定では、管路の基礎工を次のように規定している。

a. 土基礎

管床は、不陸整正及び石レキを除去し、管全長均一に支持すること。

管接合部の鉛直荷重の集中を生じさせない。

基礎の形状、締固め及び基礎材料は、図面又は特別仕様書に規定。

管との空隙がないよう突棒等で十分填充し突固めること。

b. 砂基礎

管床部は管布設前、管側部は管布設後に十分締固めし沈下を防止。

締固め方法は、ランマー等による突固め、水締め等を入念に施工。

c. 枕木及び梯子胴木基礎

枕木基礎は正確にレベル調整後し管布設し、くさびを打込んで位置を保持。

管底部が枕木に接しないよう土基礎及び砂基礎を施工すること。

梯子胴木基礎は、各部材を釘、鍄等で強固に連結。胴木は地盤の連続的な支持を得ら

れるよう相欠き又は重ね構造とする。

d. コンクリート基礎

管底等の管外周面に完全に行きわたるよう、十分に突固めること。

枕材はコンクリート製ブロック又これと同等品以上。

打設の原則は基礎の全断面を一回に打設することとするが、分割する場合は基床上面

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参-29

に施工継目を設け、上層コンクリートが管低部に十分行きわたらせること。

その後、第 7回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定されるまで、記述内容については特

に改定されていない。なお、第 7 回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定で、「第 5 節:管

体基礎工」で次のとおり規定されている。なお、枕木及び梯子胴木基礎については「第 2節:

一般事項」で規定されているが、記述内容は特に改定されていない。

a. 砂基礎

管床の不陸整正と締固めを行い、砂基礎が管全体を均一に支持すること。

管床部は管布設前、管側部は管布設後に十分締固めし沈下を防止。

継手堀りは、各管種に合わせた幅及び深さを確保し、管接合後、基礎材と同様の材質

で締固めること。

b. 砕石基礎

施工については、砂基礎の規定に準じて行うこと。

鋼管、鋼製継輪、鋼製可とう管の場合は、塗装の保護を行うこと。

c. コンクリート基礎

管低等の管外周面に完全に行きわたるよう、十分に突固めること。

管の仮支持に使用する埋殺し枕材等は、基礎コンクリートと同等以上の耐久性と強度

を有すること。

基床に施工継目を設け分割打設する場合は、管継手と同一ヶ所に継目を施工すること。

(5)管類の布設接合

昭和 50 年(1975)制定では、管類の布設接合の一般事項とゴムリング接合(回転式、定置式)

及びスペーサについて、次のとおり規定されている。

a. 一般事項

原則、底位部から高位部へ向かって施工すると規定されている。なお、特殊な管の接

合については、管製造業者の現地指導を受ける旨の記述がされている。

継手の許容曲げ角度以内で曲線布設する場合は、管を正規の状態で接合後、徐々に所

定の角度に曲げること。

b. 回転式ゴムリング接合

ゴムリングのはめ込みは、よじれのないように行うこと。

接合は原則として、管ソケットにスピゴットを差し込む方向へ進むこと。

c. 定置式ゴムリング接合

定着式は接合直前に取付け、使用直前まで暗所で保管すること。

ゴムリングを所定の位置に固定する場合は、工場において接着させること。

ゴムの劣化を防止するための適当なブラックテープ等をゴムリングの周囲に巻き付け

て保護すること。

枕木基礎は正確にレベル調整後し管布設し、くさびを打込んで位置を保持。

d. スペーサ用ゴム板

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参-30

スペーサは、管路勾配が大きい場合等に必要により接着すると規定されている。

スペーサ用ゴム坂規格 厚さ : 8mm 以上(スピゴット端面)

面積 : 管厚の 1/2 寸法角以上

硬度 : 80±5 度

第 1 回改定(昭和 55 年(1980))においては、一般事項に不良箇所の手直し又は再施工の記述

が追加され、ゴムリング接合に次の接合方法が記述追加された。

a. 締付けゴムリング接合

接合については、回転式ゴムリング接合に準ずること。

ボルトの締付けは、ゴムリングが均等になるよう徐々に仮締付けし、最後に規定トル

クで締付けを行うこと。

b. 溶接接合

溶接はアーク溶接を原則とするが、溶接方法、溶接手順、溶接機、溶接棒等の詳細は

監督職員との協議によることとする。

管相互のゆがみを矯正し、仮溶接を最小限に止め、本溶接の際は完全にはつりとるこ

ととし、その他溶接に関する一般的事項を規定している。

溶接部の判定項目は以下のとおりとし、JIS 3104 の 3 級以上とする。

ア)亀裂 イ)溶込み不足 ウ)ブローホール エ)アンダーカット オ)スラグの巻込み

カ)不整な波形及びつぼ キ)肉厚の過不足 ク)融合不良

c. TS 接合(接着剤接合)

管外周をヤスリ、ナイフ等で 2mm 程度面取りを行うこと。

接着剤は受口と差込口に刷毛で均一に塗布すること。

接合後は一定時間挿入状態を保持し、抜け出し防止を行うこと。

d. パット溶着接合

管端面は直角、平滑し仕上げ、芯合せを行うこと。

第 5 回改定(平成 11 年(1999))においては、一般事項にマクロセル腐食防止として「鋼管、

ダクタイル鋳鉄管のマクロセル腐食(コンクリート/土壌)を防止するため、設計図書により施

工しなければならい。」と記述が規定された。

その後、第 7 回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定で、「第 2 節:一般事項」で一般的

な布設接合が記述され、「第 6節:管体工」で各種接合方法が管種別に規定されているが、記

述内容については特に改定されていない。

(6)管路の埋戻し

昭和 50 年(1975)制定では、管頂 60cm までの埋戻し、締固め方法、及び、管両側の空隙又

は締固め不十分の箇所が生じないよう十分行う旨の記述がされている。

その後、第 7回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定されるまで、記述内容については特

に改定されていない。なお、第 7 回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定で、「第 3 節:土

工」で規定されているが、記述内容は「第 1偏:共通編-第 3章:施工共通事項-第 3節:土工」

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参-31

として整理された。

(7)管水路の漏水試験(通水試験)

昭和 50 年(1975)制定では、継目試験及び漏水試験が次のとおり規定されている。

a. 継目試験(テストバンド)

継目は、テストバンドによる漏水試験を行い、記録の上、提出すること。

水圧は、設計使用水圧(=設計内水圧-設計水撃圧)とし、5分間放置し、80%以下となら

ないこと。

規定に合格しない場合は、監督職員の指示する方法により処置を講ずること。

b. 漏水試験(水張試験)

管路への注水は、計画通水量の 1/5~1/10 の範囲内で徐々に行うこと。

注水完了後、24 時間経過したのちに補充し、更に 24 時間経過後の減水量を漏水量と

して測定すること。

漏水量の測定は、原則として量水計付ポンプとするが、水量を測定できる適当な容器

を使用する場合は、監督職員の承諾を得ること。

漏水量は、水位復元に必要は全注水量の 24 時間当たり平均値とする。なお、試験水位

が設計水位よりも低いサイホン部は、次式により修正すること。

Q = 修正漏水量

Q = Q’× H / H’ Q’= 漏 水 量

H = 設計水頭

H’= 試験水頭

許容漏水量は、24 時間当たり、サイホン延長 1km 当たり、内径 1cm 当たり、コンクリ

ート管で 150 ㍑とする。

第 1 回改定(昭和 55 年(1980))においては、名称を漏水試験から通水試験と改定され、継目

試験(テストバンド)の記述は削除され、水圧試験の規定が追加されている。

なお、水圧試験は漏水試験の終了後行うものとし、手押しポンプによる加圧が規定されて

いる。また、漏水試験の許容漏水量については、管種別に表 1-16のとおり具体的に記述され

ている。

表 1-16 管種別許容漏水量

管 種 24 時間当たり、サイホン延長 1km 当たり、

内径 1cm 当たり許容漏水量(標準)

コンクリート管 100 ~ 150 ㍑/日

石綿セメント管、鋼管、

ダクタイル鋳鉄管 50 ~ 100 ㍑/日

プラスチック管 25 ㍑/日

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参-32

第 2 回改定(昭和 62 年(1987))において、継目試験(テストバンド)の規定が復活され、漏水

試験が水張り試験に名称変更されているが、継目試験及び水圧試験を含めて記述内容は特に

改定されていない。

その後、第 6回改定(平成 14 年(2002))で「通水試験については、特別仕様書又は監督職員

の指示事項とし、規定から削除」されるまでは、記述内容については特に改定されていない。

(8)適用諸基準

第 7 回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定で、「第 2 節:一般事項」に適用すべき諸基

準の記述が規定された。主に、設計基準・設計「パイプライン」、コンクリート標準示方書、

更に材料規格(JWWA 規格、WSP 規格、FRPM 規格、JDPA 規格、JIS 規格)が記述された。

(9)管路の付帯施設

第 7回改定(平成 15 年(2003))の全面見直改定で、管路の各種付帯施設の規定が次のとおり

追加されている。なお、記述内容は「第 1偏:共通偏」に主に規定されている。

ア)弁室(分水弁、排泥弁、空気弁、流量計、制水弁)、イ)減圧水槽、

ウ)スラストブロック、エ)付帯工、オ)法面工、カ)耕地復旧工、キ)道路復旧工、

ク)水路復旧工

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参-33

1.2.3 土木工事施工管理基準の変遷

土木工事施工管理基準(以下「管理基準」という。)は、農林水産省所管の国営土地改良事

業、国営海岸保全事業及び国営地すべり対策事業に係る直轄工事について、その施工にあたっ

ての「工事の工程管理、出来形管理及び品質管理の適正化を図る」ため、請負者が実施する施

工管理の基準を定めたもので、昭和 49 年に実施要領が定められ、数回の改正が行われている。

主な制改定の状況は次のとおりである。

(1)東海農政局管理基準(案):昭和 47 年(1972)5 月作成

平成 47 年(1972)以前は、各事業所が作成した個別基準や管製作メーカーの指標を参考にした

ものを用いて運用されており、各事業所、各現場において不均一なものとなっていたが、請負

者の工事施工に対する意識の高揚と、施設管理の煩雑化の防止を図るため、昭和 47 年(1972)

に東海農政局制定施工管理基準(案)を作成し、工事請負者に提示している。この基準(案)の

管水路(二次製品)に関する記述は、以下のとおり規定されている。

a. 出来形管理

直接測定による出来形管理は、基準高、中心線のズレ、施工延長が規定されている(表1-17)。

表 1-17 出来形管理項目(昭和 47 年)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

基準高 ±20 管毎及び 50m 毎に測定 ±30

中心線のズレ +100 概ね 50m 毎に測定 +100

施工延長 ±0.1%

(150m 未満±150)概ね 50m 毎に測定

±0.1%

(150m 未満-150)

b. 撮影記録による管理

写真管理としては、工事着手前、工事中、工事完成後を、施工時期、施工順序に沿って整

理することが規定され、全景については着手前と完成後が同一位置から撮影するよう記述さ

れている。

c. 品質管理

品質管理としては、土質試験に関して道路工に規定されている盛土試験(含水比、単位堆積

重量試験、CBR 試験又は平板載荷試験)、切土試験(直接剪断試験)が管水路(二次製品)に適

用され、測定基準は特別仕様書に明示することが規定されている。

材料(二次製品)関係については、遠心力鉄筋コンクリート管の試験項目が規定されている

(表 1-18)。

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参-34

表 1-18 品質管理項目(昭和 47 年)

項 目 試験項目 測 定 基 準

RC

形状、寸法、外観 呼び径毎に 200 本に 1組又は、端数を 1組とする

ひび割れ荷重 φ600mm 未満、200 本に 1組

破壊荷重 φ600mm 以上、200 本に 1組

曲げ試験 1,000 個に 1組又は、端数を 1組とする

(2)管理基準の制定(昭和 49 年(1974)4 月 23 日制定)

全国的な統一の流れを受けて、各局で作成していた施工管理基準を統合し、東海農政局で制

定したものにジョイント間隔の測定、写真による管理と材料試験としてプレストレストコンク

リート管等を追加し、昭和 49 年度に統一基準として「農林水産省構造改善局制定の施工管理基

準」が制定された。

この管理基準の管水路(二次製品)に関する記述は、以下のとおり規定されている。

a. 出来形管理

直接測定による出来形管理は、基準高、中心線のズレ、施工延長が規定されている(表1-19)。

表 1-19 出来形管理項目(昭和 49 年)

項 目 管理基準(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

基準高 ±20 概ね 50m 毎に測定 ±30

中心線のズレ +130 概ね 50m 毎に測定

曲線部は 10m 毎に測定+150

ジョイント間隔

管径毎に規定

+2、-6 ~

+4、-12

管毎に測定

管径毎に規定

+5、-6 ~

+26、-12

施工延長 ±0.1%

(200m 未満±200) 概ね 50m 毎に測定

±0.1%

(200m 未満-200)

b. 撮影記録による管理

写真管理としては、工事着手前及び工事完成後が同一位置から撮影、施工状況、施工法及

び仮設関係については適宜撮影、品質管理実施状況、工場製作状況並びに部分完成後明視が

困難な部分についても適宜撮影するよう規定されている。

なお、管水路(二次製品)の撮影基準は、施工 50m~100m につき 1ヵ所撮影である。

c. 品質管理

管水路(二次製品)における土質試験に関しては、特に規定されていない。

材料(二次製品)関係については、遠心力鉄筋コンクリート管及びプレストレストコンクリ

ート管の試験項目が規定されている(表 1-20)。

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参-35

表 1-20 品質管理項目(昭和 49 年)

項 目 試験項目 測 定 基 準 備 考

RC JIS 規定の項目 200 本に 1組又は、端数を 1組とする

PC JIS 規定の項目 30 本に 1組

d. 出来形測定標準図

管水路(二次製品)の出来形測定の標準図(図 1-1)が記述されている。

図 1-1 出来形測定標準図(昭和 49 年)

(3)第 1回改定(昭和 52 年(1977)4 月 1 日改定)

管種・管級の細分化により、埋設管周辺の土質を確認することが必要となり、基礎部や埋設

土の密度測定の実施を追加し、施工管理基準の第 1回の改定を行っている。

a. 出来形管理

管水路(二次製品)の中心線のズレの管理基準値及び規格値が改定された(表 1-21)。

表 1-21 出来形管理項目(昭和 52 年)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

中心線のズレ ±65 に改定 特に改定なし ±100 に改定

施工延長 - 概ね 50m 毎に測定 ±0.1%

(200m 未満-200)

b. 撮影記録による管理

管水路(二次製品)の写真管理としては、特に改定されていない。

c. 品質管理

管水路(二次製品)の品質管理としては、土質試験に関して水路工(インバート下の盛土)に

規定されている盛土試験(付固め試験、土粒子の比重試験、含水量試験、締固め密度の測定)

が適用されこととなる(表 1-22)。

E:基準高

B:基礎材幅

b:ジョイント開き

E1

b

E1

B2

E4

E2 E3

B1

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参-36

表 1-22 品質管理項目(昭和 52 年) (改定追加)

試験項目 試験方法 試 験 基 準 規 格 値

突固め試験 JIS A 1210 着手前 1 回及び盛

土材変更特に 1回

1)乾燥密度で規定する場合

最大乾燥密度の 90%を 10 回に 1 回以

上の確率で下回らないこと。

2)飽和土で規定する場合

85%~95%の範囲を 10 回に 1 回以上の

確率で外れないこと。

3)空隙率で規定する場合

2%~10%の範囲で10回に1回以上の確

率で外れないこと。

土粒子の比重試験 JIS A 1202

含水量試験 JIS A 1203 延長200m毎に1回、

測定箇所は横断方

向に 3点 締固め密度の測定 JIS A 1214 他

管水路(二次製品)材料関係については、特に改定はされていない。

d. 出来形測定標準図

管水路(二次製品)の出来形測定の標準図(図 1-2)に、コンクリート基礎が記述されている。

図 1-2 出来形測定標準図(昭和 52 年)

(4)第 2回改定(昭和 55 年(1980)3 月 31 日改定)

硬質塩化ビニル管、強化プラスチック複合管の使用が多くなったため、新たに「管水路(ダク

タイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管)」、「管水路(硬質塩化ビニル管)」及び「管水路(砂

基礎)」の管理基準を規定追加する改定が、第 2 回の改定で行っている。なお、「管水路(二次

製品)」は、特に改定していない。

a. 出来形管理

ア) 管水路(ダクタイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管)の管理基準値は、表 1-23 のとお

り規定された。

表 1-23 ダクタイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管の出来形管理項目(昭和 55 年)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

基準高 ±20 概ね 50m 毎に測定 ±30

中心線のズレ ±65 概ね 50m 毎に測定

曲線部は 10m 毎に測定 ±100

ジョイント間隔

DCIP

+14,0 ~ +22,0

FRPM

+10,-5~ +25,-20

管毎に測定

DCIP

+19,0 ~ +31,0

FRPM

+33,-33~+128,-125

施工延長 - 概ね 50m 毎に測定 ±0.1%

(200m 未満-200)

E:基準高

B:基礎材幅

T:基礎コン厚さ

D:ジョイント開き

E2

D

E2

B1

T T

B1

E1

B2

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参-37

イ) 管水路(硬質塩化ビニル管類)の管理基準値は、表 1-24のとおり規定された。

表 1-24 硬質塩化ビニル管類の出来形管理項目(昭和 55 年)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

基準高 ±30 概ね 50m 毎に測定 ±50

中心線のズレ ±80 概ね 50m 毎に測定

曲線部は 10m 毎に測定 ±120

ウ) 管水路(砂基礎)の管理基準値は、表 1-25のとおり規定された。

表 1-25 砂基礎の出来形管理項目(昭和 55 年)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

基準高 ±20

概ね 50m 毎に測定

±30

基礎厚さ ±20 -30

基礎幅 ±65 -100

b. 撮影記録による管理

ダクタイル鋳鉄管、強化プラスチック複合管及び硬質塩化ビニル管並びに砂基礎の管理基

準の追加に伴い、写真管理についても管水路(二次製品)の撮影基準と同様の規定(施工 50m

~100m につき 1ヵ所撮影)が追加記述されている。

c. 品質管理

土質試験の規定に水路工(管水路)が、表 1-26のとおり追加された。

表 1-26 土質試験の品質管理項目(昭和 55 年)(改定追加)

試験項目 試験方法 試 験 基 準 規 格 値

突固め試験 JIS A 1210 水路工(インバー

ト下の盛土)の規

定と同様の基準

水路工(インバート下の盛土)の規定と

同様の基準 土粒子の比重試験 JIS A 1202

粒度試験 JIS A 1204

締固め密度の測定 JIS A 1214 他

延長 200m 毎に 1

回、測定箇所は横

断方向に 5点

1)乾燥密度で規定する場合

最大乾燥密度の 85%を 10 回に 1 回以

上の確率で下回らないこと。

2)相対密度で規定する場合

0.4を10回に1回以上の確率で下回ら

ないこと。

材料(二次製品)関係については、硬質塩化ビニル管、強化プラスチック複合管及びダク

タイル鋳鉄管の試験項目が表 1-27のとおり追加規定されている。

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参-38

表 1-27 二次製品の品質管理項目(昭和 55 年)(改定追加)

項 目 試験項目 測 定 基 準 備 考

硬質塩化ビニル管 JIS k 6741

JIS K 6742 1,000 本に 1組

強化プラスチック複合管 FRPM K 111 100 本に 1組

ダクタイル鋳鉄管

JIS 規定の項目

JDPA 規定の項目

JWWA G 110

小口径 200 本に 1組

大口径 30 本に 1組

d. 出来形測定標準図

管水路(砂基礎)の出来形測定の標準図(図 1-3)が出来形管理基準に明示されることとな

る。

図 1-3 出来形測定標準図(昭和 55 年)

(5)第 3回改定(昭和 60 年(1985)2 月 12 日改定)

とう性管の埋設深さ、砂基礎形状の測定位置を明示し、第 3回の改定を行っている。

a. 出来形管理

管水路(硬質塩化ビニル管類)の管理基準値に、埋設深さ及び施工延長の規定が表 1-28のと

おり追加改定されている。なお、管水路(砂基礎)の管理基準値の基礎厚さについては、基準

高の管理により厚さ管理が可能となることから、今回の改定により削除されている。

また、管水路(砂基礎)の管理基準値は、表 1-29のとおり変更改定された。

表 1-28 硬質塩化ビニル管類の出来形管理項目(昭和 60 年) (改定追加)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

埋設深さ +65、-35 概ね 50m 毎に測定 -50

施工延長 - 概ね 50m 毎に測定 ±0.1%

(200m 未満-200)

E2

D

E:基準高

B:基礎材幅

T:基礎コン厚さ

D:ジョイント開き

○:締固め試験

E2

B2

E1

E2 E3

B1

T2

T1 ○ ○

○ ○

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参-39

表 1-29 砂基礎の出来形管理項目(昭和 60 年) (変更改定)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

高さ ±20 概ね 50m 毎に測定

±30

幅 ±65 -100

b. 撮影記録による管理

写真管理としては、特に改定されていない。

c. 品質管理

土質試験の規定に関しては、特に改定されていない。

材料(二次製品)関係については、管種の見直しに伴う改定が行われているが、遠心力鉄筋

コンクリート管、プレストレストコンクリート管については、特に改定されていない。

d. 出来形測定標準図

管水路(硬質塩化ビニル管)の出来形測定の標準図(図 1-4)に、埋設深さ H が追加表示さ

れた。

図 1-4 出来形測定標準図(昭和 60 年)

(6)第 4回改定(昭和 63 年(1988)3 月 28 日改定)

とう性管のたわみによる管理方法とゴム輪の位置測定を追加明示(表 1-30)し、第 4回の改

定を行っている。

a. 出来形管理

管水路(二次製品)の管理基準値に、埋設深さ及び施工延長の規定が追加改定されている。

また、管水路(鋼管)の管理基準値の規定(表 1-31)及び強化プラスチック複合管のたわみ率

が追加された。

E2

D

E:基準高

B:基礎材幅

T:基礎コン厚さ

D:ジョイント開き

○:締固め試験

E2

B2

E1

E2 E3

B1

T2

T1 ○ ○

○ ○

○ H

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参-40

表 1-30 管水路(二次製品)の出来形管理項目(改定追加)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

ゴム輪位置 管種毎に規定

-9 ~ -11 管毎に測定(4 ヵ所) -

表 1-31 管水路(鋼管)の出来形管理項目 (改定追加)

項 目 管理基準値(mm) 測 定 基 準 規格値(mm)

基準高 ±20 概ね 50m 毎に測定 ±30

中心線のズレ ±30 概ね 50m 毎に測定

曲線部は 10m 毎に測定 ±45

施工延長 - 概ね 50m 毎に測定 ±0.1%

(200m 未満-200)

b. 撮影記録による管理

管水路(鋼管)の写真管理としては、管水路(二次製品)等の撮影基準と同様に、施工 50m~

100m につき 1ヵ所撮影と規定されている。

管水路の埋設とう性管に関しては、たわみ量測定箇所 2 ヵ所に 1 ヵ所の割合で撮影するこ

とが、改定により追加記述されている。

c. 品質管理

土質試験の規定に水路工(管水路)の締固め密度の測定において、相対密度で規定する場合

の記述が 40%以上に変更改定されている。

材料(二次製品)関係については、特に改定されていない。

d. 出来形測定標準図

管水路(二次製品)のゴム輪位置の測定箇所が標準図(図 1-5)に明示されることとなる。

図 1-5 出来形測定標準図(昭和 63 年)

E2

D

E:基準高

B:基礎材幅

T:基礎コン厚さ

D:ジョイント開き

○:締固め試験

●:ゴム輪測定

E2

B2

E1

E2 E3

B1

T2

T1 ○ ○

○ ○

● ●

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参-41

(7)第 5回改定(平成 2年(1990)9 月 12 日改定)

たわみ計算において管の厚みを配慮するよう明記された。

a. 出来形管理

強化プラスチック複合管のたわみによる測定計算に、「管厚を考慮すること」が明示さ

れた。

b. 撮影記録による管理

写真管理については、特に改定されていない。

c. 品質管理

特に改定されていない。

d. 出来形測定標準図

特に改定されていない。

(8)第 6回改定(平成 7年(1995)8 月改定)

管体周辺の締め固め基準をプロクター密度で表示している。

a. 出来形管理

特に改定されていない。

b. 撮影記録による管理

特に改定されていない。

c. 品質管理

水路工(管水路)の土質試験について、「締固め密度の測定」を「現場密度の測定」に名

称変更し、表 1-32のとおりプロクター密度に変更改定がなされた。

表 1-32 土質試験の品質管理項目(平成 7年)(変更改定)

試験項目 試験方法 試 験 基 準 規 格 値

現場密度の測定 JIS A 1214

延長 200m 毎に 1

回、測定箇所は横

断方向に 5点

1)プロクター密度で規定する場合

締固めⅠ:プロクター密度の 85%程度

締固めⅡ:プロクター密度の 85%以上

2)相対密度で規定する場合

相対密度が 40%以上とする

材料(二次製品)関係については、表 1-33のとおりロットの変更が行われている。

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参-42

表 1-33 二次製品の品質管理項目(平成 7年)(変更改定)

項 目 試験項目 測 定 基 準 備 考

遠心力鉄筋コンクリート管 JIS 規定の項目 管口径毎に規定

100 本~500 本に 1組

プレストレストコンクリート管 JIS 規定の項目 50 本に 1組

硬質塩化ビニル管 JIS k 6741

JIS K 6742 1,000 本に 1組

強化プラスチック複合管 FRPM K 111 200 本に 1組

ダクタイル鋳鉄管

JIS 規定の項目

JDPA 規定の項目

JWWA G 110

小口径 200 本に 1組

大口径 30 本に 1組

d. 出来形測定標準図

特に改定されていない。

(9)第 7回改定(平成 11 年(1999)11 月改定)

管の基礎としての位置付けが 360°に変更される改定が行われた。

a. 出来形管理

砂基礎を 360°巻きに改定されるが、基準値等は特に改定されていない。

b. 撮影記録による管理

特に改定されていない。

c. 品質管理

水路工(管水路)の土質試験について、砂基礎が 360°巻きとなったことから、表 1-34のと

おり現場密度の測定の規定が改定されている。

表 1-34 土質試験の品質管理項目(平成 11 年)(変更改定)

試験項目 試験方法 試 験 基 準 規 格 値

現場密度の測定 JIS A 1214

延長 200m 毎に 1

回、測定箇所は横

断方向に 3点

締固めの規定

締固めⅠ: 85%程度

締固めⅡ: 90%以上

締固め度=

現地乾燥密度/最大乾燥密度

d. 出来形測定標準図

砂基礎の 360°巻きに伴い、測定箇所の標準図(図 1-6)を変更している。

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参-43

図 1-6 出来形測定標準図(平成 11 年)

(10)第 8回改定(平成 14 年(2002)3 月 27 日改定)

中心線のズレ等に若干の変更があるが、基準値等に特に改定は行われていない。

(11)第 9回改定(平成 15 年(2003)3 月 25 日改定)

砂基礎等に若干の変更があるが、基準値等に特に改定は行われていない。

(12)第 10 回改定(平成 17 年(2005)3 月 28 日改定)

施工管理基準の全面見直しが行われ、新たな農村振興局制定の施工管理基準として現在に

至っている。

なお、管水路に関する規定に関しては、特に改定された事項はない。

E2

D

E:基準高 B:基礎材幅 D:ジョイント開き ○:締固め試験 ●:ゴム輪測定

E2

B2

E2 E3

B1

○ ○

● ●

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参-44

1.3 各種規格等の変遷

農業用パイプラインは、新管種の開発、在来管種の改良による安全性・機能性・経済性等、性

能の向上に伴って導入量が増加し、さらにはパイプラインの役割も広がってきた。ここでは、不

とう性管で、コア式プレストレストコンクリート管(PC)及び遠心力鉄筋コンクリート管(RC)、

とう性管で強化プラスチック複合管(FRPM)、ダクタイル鋳鉄管(DCIP)、硬質ポリ塩化ビニル

管(PVC)及びポリエチレン管(PE)を対象に、規格の変遷をみる。

1.3.1 コア式プレストレストコンクリート管(PC)

プレストレストコンクリート管に関するJIS規格の変遷を表1-35に示す。規格の種類としては、

JIS 規格の他、日本工業用水協会(JIWA)規格、日本水道協会(JWWA)規格、PC 管協会規格等が

ある。

JIS 規格は特に用途を限定したものではなく、使用実績の多い製品に関する仕様を規定したも

のである。JIWA は工業用水用の管材として、JWWA は水道用管材として用途に応じた仕様が規定さ

れたもので、JIS 規格の浸透に伴い自然消滅している。PC 管協会規格は、使用実績が多くないサ

イズや新しい技術内容に関する民間規格であり、JIS 規格を補足するものである。これらの規格

は、基本的な規定項目内容については JIS 規格と整合がとれていると考えてよい。

表 1-35 規格の変遷(PC)

20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 2 4 6 8 10 12 14 16 18

JISの制定・改正

試験水圧

(kg/cm2)

JISS形

JIWAJWWAS形

カバーコートの厚さ (mm)

ゴム輪のJIS種別

内圧設計方法

管の種類(適用呼び径:試験水圧により呼び径が異なる)

項 目          年 度

JIS A 5333 コア式プレストレストコンクリート管の変遷

JIWA:日本工業用水協会JWWA:日本水道協会

PC管協会規格PCPA-2:大口径PC管PCPA-5:PC管用継手押輪継手PCPA-6:鋼板カラー継手PC管

協会PCPA

・PCPA-2 S形 2種 :2100 3,4,5種:2100~2400

・PCPA-5 押輪形 500~2400

・PCPA-6 DS形 1種:500~1650 2種:500~2100 3種:500~26004,5種:500~3000

制定1971 改正1979 改正1983 改正2000

JIWA制定1964 JWWA制定1978

JIWA:2~21 JIS:18(1種),14(2種),10(3種),6(4種),4(5種)

 1種 :500~1500 2種 :500~1800 3,4,5種:500~2000

1種 :500~1650 2,3,4,5種 :500~2000

JIWA 21 :500~1350 17.5:500~1500 14 :500~1800 11,9.5,8,6,4,2: 500~2000

JWWA1,2,3,4種:500~1500

2種2号乙 Ⅰ類A・50

外圧換算内圧方式 内圧・外圧同時評価方式

JIS移行 JIS移行

PCPA-2制定1980,改定1988

PCPA-5制定1981,PCPA-6制定1981,改正1985

20 20以上 25以上

JIS JIS

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参-45

(1) JIS 規格

①JIS 制定以前

プレストレストコンクリート管は 1956(S31)年、わが国において実用化されてから次第に

発達してきたが、初期の頃(昭和 35 年頃まで)には表 1-36に示す製造方式のものが存在した。

JIS が制定される段階においては、各メーカー規格で運用されていたが、製造方式はコア式

プレストレストコンクリート管が主流となった。

表 1-36 昭和初期の PC 類と製造方法等

管種名 製造方法等

プレストレストコンクリートスチールシ

リンダー管

パイプの外側にシリンダー(薄肉鋼板製で 2~3mm 厚)を用

い、その外側に PC 鋼線を巻きつけたもの。

コア式プレストレストコンクリート管 ノンシリンダーのコアコンクリートパイプの外側にPC鋼線

を巻きつけ、カバーコートを施したもの。

立型振動加圧方式プレストレストコンク

リート管

プレテンション方式にて円周方向プレストレスを導入した

もの。

ケミカルプレストレストコンクリート管 膨張材による膨張力を鋼材で拘束することにより、化学的

なプレストレスを導入したもの。

②1971(S46)年制定

昭和 44 年におけるプレストレストコンクリート管の生産量は 52,800t に達し、主として工業

用水や農業用水に大量に使用されている状況であったが、形状、寸法並びに品質がまちまちで

設計面、製造面の不合理があったため JIS 化要望となった。原案作成は、JIWA へ委託され、コ

ア式プレストレストコンクリート管のみが適用範囲となった。

③1979(S54)年改正

外圧強さを新たに規定。従来は、外圧を内圧に換算して内圧評価による設計が行われていた

が、内外圧の組合せ荷重による設計方式の採用が多くなり、これに対応したものである。

④1985(S60)年改正

従来の圧力管としての用途以外として、下水道や道路用暗渠などの外圧管として使用される

用途の増加に対応し、内圧管と外圧管を明確に区分した。また、ソケット形をS形と呼称する

とともに呼び径を一部追加した。

⑤2000(H12)年改正

JIS 規格の統合、性能規定化の一環として「プレキャストコンクリート・プレストレストコ

ンクリート製品」に統合し、新たに破壊外圧強度を規定した。

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参-46

(2)日本工業用水協会(JIWA)規格、日本水道協会(JWWA)規格

①JIWA 規格

日本で始めて公的規格として 1964(S39)年に制定した。制定時は、ロール転圧成形、遠心

力成形、振動加圧成形を適用範囲としていたが、1967(S42)年の改正で振動加圧成形が削除さ

れた。試験水圧は、2kgf/cm2~21kgf/cm2(0.2MPa~2.0MPa)の 9 種類であり、設計は外圧を内圧

に換算して設計内圧と合計する方式である。最終的には JIS 規格に移行した。

②JWWA 規格

水道用の規格制定要望に応えて 1978(S53)年に制定。管の種類としては試験水圧 6kgf/cm2

以上の 4種類。カバーコートの厚さを 25mm 以上と新たに規定。最終的には JIS 規格に移行。

(3)PC 管協会規格

①PCPA-2 大口径プレストレストコンクリート管

JIS 規格の呼び径範囲を超える大口径管(最大呼び径 2400)であって、1980(S55)年制定時

は内圧管のみを対象としたが、その後の改正で外圧管も対象としている。

②PCPA-5 プレストレストコンクリート管用押輪継手

S 形プレストレストコンクリート管において、軟弱地盤の不等沈下に対応する管中心保持性

を付与するとともに、地震時の継手の抜け出しなどの抵抗性を高めた離脱防止性能を付与した

継手で、1981(S56)年に制定された。

③PCPA-6 鋼板カラー継手プレストレストコンクリート管(DSPC)

両端差し口付きのプレストレストコンクリート管であり、鋼板カラーの長さを長くして継手

の可とう性能を向上させたプレストレストコンクリート管として 1981(S56)年に制定された。

継手部の外径が本体と同等であるため、取り扱いや施工が容易などの特徴を有している。

(4)カバーコートの厚さ

カバーコートは PC 鋼線の腐蝕保護のために設けられたもので、水セメント比が約 25%のモ

ルタルを回転するコアパイプに高速で吹付けて、密実なモルタル層としたものである。モルタ

ルの圧縮強度は 350kgf/cm2(35N/mm2)以上であり、密度の目安は 2.2g/cm3、透水性に関しては

コアコンクリートより劣っている。

カバーコートの厚さに関し、1960(S35)年頃の規格が統一されていなかった時期においては、

AWWA(アメリカ水道規格)を参考に 5/8in(=16mm)との記録が見られる。日本で初めての公的規

格となる 1964(S39)年制定の日本工業用水協会規格では、20mm として規定されている。ただ

し、この規定に対しては許容差が規定されていないため、目標数値の意味合いになっていたと

考えられる。

その後、1971(S46)年制定の JIS 規格では 20mm 以上と規定され、最小厚さが定義されてい

る。さらに、1978(S53)年制定の日本水道協会規格においては、PC 鋼線を保護する重要な部

分との考えから 25mm 以上と規定され、1979(S54)年に JIS も同様に改正され現在に至ってい

る。

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参-47

S形C形NC形

外圧管 高圧1,2,3種 1,2,3,4,5種

 1,2,3,4,5種

PC管

内圧管 S形

 1,2,3,4,5種DS形PCPA-6

(5)内圧に対する設計方法

当初の内圧に関する設計方法は、外圧荷重を内圧換算し、管のひびわれ内圧強度に対して所

定の安全率を確保する設計手法である。これに関連し、管の規格強さとしては試験水圧のみが

規定されている。

その後、1979(S54)年改正の JIS で、新たに外圧強さが規定され、内圧と外圧を同時に評価

する設計手法に移行した。

(6)コア式プレストレストコンクリート管(PC)の規格

プレストレストコンクリート管は、日本工業規格(JIS)と PC 管協会規格(PCPA)があり、

図 1-7のような種類があり、水利施設用の内圧管の特徴は表 1-37のとおりである。

図 1-7 PC の種類と規格

プレストレストコンクリート管は、当初、内圧管としての用途が多いことから、内外圧用の

標準タイプとなる S形でスタートした。その後、継手の変形性能を向上させた DS 形(鋼板カラ

ー継手)が登場し、軟弱地盤地域の内圧管として採用された。最近では、内圧管としての使用

実績が減少し,外圧管の使用が主となっている。外圧管では、S 形以外に遠心力鉄筋コンクリ

ート管と類似したいんろう継手タイプの C形、NC 形がある。

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参-48

表 1-37 材料(製品)の特徴(コア式プレストレスとコンクリート管内圧管の構造)

管 体 継手(標準形,回転接合方式,ロール転圧成形)

S形

継手(標準形,固定接合方式,遠心力成形) 継手(押輪形)

特徴

ゴム輪を圧縮して接合するもので,特に継手部の精度が高く、かつ継手部の長さもあるので、水密

性及び可とう性に富み、施工も簡単である。管体の成形方法により継手が固定化されている。

押輪形は、継手部の隙間にクサビゴムを押付けることにより管の中心保持性を高める。

さらに、曲げ及び引抜き抵抗を与えゴム輪の圧縮率の平均化を図るとともに、継手部からのゴム輪

の飛び出しを防いで水密性を保持している。

DS形

管 体 継 手

特徴

管端部に溝を設けてゴム輪を固定し、受口管体と別個の鋼製カラーを用いた継手である。標準形、

押輪形に比べ重量も軽く、寸法の精度、施工性及び水密性、可とう性に優れ高圧管路用継手として

信頼度が高いとされている。

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参-49

1.3.2 遠心力鉄筋コンクリート管(RC)

遠心力鉄筋コンクリート管はヒューム管とも呼ばれている。遠心力鉄筋コンクリート管に関す

る JIS 規格の変遷を表 1-38に示す。遠心力鉄筋コンクリート管においては、JIS の制定が早いこ

とから社会的な浸透が図られており、内圧管に関して JIS 規格を補足する協会規格はない。

表 1-38 JIS の変遷(RC)

(1)JIS 規格

①1950(S25)年制定

第 2 次世界大戦の前後、鉄管に代わる遠心力鉄筋コンクリート管の需要が上下水道で伸びは

じめてきた時期の 1941(S16)年に、日本水道協会規格「下水道用鉄筋コンクリート管臨時規

格」が制定されていた。その後、1949(S24)年に工業標準化法が制定され、前記規格の改正と

いう意味合いを踏まえて、1950(S25)年に制定された。管の形状はA形のみ。また、同時期に、

遠心力製法でない手詰めの鉄筋コンクリート管に関しても、JIS A 5303「鉄筋コンクリート管」

として制定されているが、外圧用である。

②1956(S31)年改正

圧力管に関して,従来の試験水圧レベルを 5 種類から 8 種類へ拡充。試験水圧 6kgf/cm2(0.6MPa)

以上で呼び径をやや拡大した。

③1965(S40)年改正

圧力管に関して、従来の A形管に加えて B形管を新たに規定した。

20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 2 4 6 8 10 12 14 16 18

JISの制定・改正

内圧管の名称

試験水圧

(kg/cm2)

A形

B形

NC形

ゴム輪のJIS種別

内圧設計方法

管の種類(適用呼び径:試験水圧により呼び径が異なる)

項 目        年 度

JIS A 5303 遠心力鉄筋コンクリート管の変遷(内圧管)

制定1950 改正1956 改正1965 改正1972 改正1979 改正1985 改正1993 改正2000

圧力管 内圧管

2・4・6・8・10 1・2・3・4・5・6・8・10 2・4・6

2・4:75~1800 6:75~ 700 8:75~ 400 10:75~ 300

1・2・3・4:75~1800   5:75~1000   6:75~ 800   8:75~ 600   10:75~ 400

 2:150~2000 4:150~2000 6:150~ 800

2:150~1800 4:150~1800 6:150~ 800

1・2・3・4・5: 75~ 900 6:75~ 800 8:75~ 60010:75~ 400

 2:150~2000 4:150~2000 6:150~ 800

2:150~1350 4:150~1350 6:150~ 800

2:1500~3000 4:1500~3000

2種2号乙 Ⅰ類A・50

内圧評価方式 内圧・外圧同時評価方式外圧換算内圧方式

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参-50

④1972(S47)年改正

圧力管に関して、従来の試験水圧レベルを 3種類の 2キロ管、4キロ管、6キロ管に集約した。

また、呼び径の範囲として、150mm 未満を削除し、最大径を 2000mm まで追加した。ゴム輪の仕

様が初めて規定された。さらに、圧力管の種別の選定において、従来は外圧について具体的に

考慮されていなかったが、外圧荷重を考慮すべきと記載されている。

⑤1979(S54)年改正

従来の外圧に対する管の名称は普通管としていたが、用途に応じた名称として外圧管に変更

され、これに関連し圧力管を内圧管と名称変更した。また、内圧管に対する外圧強さが新たに

規定され、内圧・外圧同時考慮による管種選定の実施が記載されている。

⑥1985(S60)年改正

管種として、継手性能を向上させた NC 形を新たに規定した。別規格であった JIS A 5332「ロ

ール転圧鉄筋コンクリート管」との規格統合が行われ、適用範囲としてロール転圧製造が追加

された。また、B形の呼び径範囲を小口径から中口径までとし、1350mm 以下に縮小した。

⑦1993(H5)年改正

内圧管に関する変更としては、A形管の呼び径 2000mm が削除された。

⑧2000(H12)年改正

JIS 規格の統合、性能規定化の一環として JIS A 5372 「プレキャスト鉄筋コンクリート製品」

に統合された。

(2)ロール転圧鉄筋コンクリート管 (JIS A 5332) の規格

①1968(S43)年制定

遠心力鉄筋コンクリート管と同様の形状寸法のヒューム管を、ロール転圧製造により製造し

たものである。圧力管の内容としては、試験水圧は 1,2,3,4,5,6kgf/cm2(0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,

0.6 MPa)の 6 種類であり、A形、B形が規定された。なお、B形においては、呼び径 500 以上で

管の有効長 4000mm が存在している。

②1977(S52)年改正

圧力管に関して、従来の試験水圧レベルを 3種類の 2キロ管、4キロ管、6キロ管に集約した。

また、固定ゴム輪方式となる A 形、B 形と回転ゴム輪方式となる B-Ⅱ形を明確に区別した。B-

Ⅱ形に関しては、継手の水密性に優れることから、農業用水圧力管路に使用されたとされてい

る。

③1985(S60)年改正

別規格であった JIS A 5303「遠心力鉄筋コンクリート管」との規格統合が行われ、JIS A 5332

は廃止された。なお、統合された規格内容において、B-Ⅱ形は移行されず、その後民間団体(LS

管協議会)規格として継承された。

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参-51

(3)内圧に対する設計方法

当初の内圧に関する設計方法は、外圧荷重を無視し、内水圧に関して安全率を 2、衝撃水圧

に関して安全率を 1として適切な圧力管を選定する方法である。1972(S47)年の JIS 改正では、

当初のプレストレストコンクリート管の内圧設計と同様に外圧荷重の内圧換算を推奨している

と判断される。

その後、1979(S54)年の JIS 改正において、内圧管の外圧強さが規定され内圧・外圧の同時

評価を行う設計手法に移行した。

1.3.3 強化プラスチック複合管(FRPM)

強化プラスチック複合管に関する JIS 規格の変遷を表 1-39 に示す。わが国においては、1964

年(昭和 39 年)に研究開発に着手し強化プラスチック複合管(FRPM)の製造に成功した。

強化プラスチック複合管の本格的な生産・販売が開始されたのは、1970 年(昭和 45 年)であ

る。規格の制定経過を見ると、1973 年(昭和 48 年)に強化プラスチック複合管協会規格(FRPM)、

1974 年(昭和 49 年)に下水道協会規格(JSWAS)、1984 年(昭和 59 年)に日本工業規格(JIS)

がそれぞれ制定されている。

表 1-39 JIS の変遷(FRPM)

(1) JIS 規格

①1984(S59)年制定

強化プラスチック複合管は、公共事業体や民間等の工事に広く使用されてきつつあったが、

その形状、寸法、品質特性等について必ずしも明確にされたものではなかったため、これらを

統一することを生産者並びに使用者から強く要望があり、JIS 化されることとなった。

20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 2 4 6 8 10 12 14 16 18

JIS A 5350

試験水圧

(kg/cm2)

A形

B形

C形

T形

D形

ゴム輪のJIS種別

内圧設計方法

管の種類(適用呼び径:試験水圧により呼び径が異なる)

項 目     年 度

強化プラスチック複合管規格の変遷

強プラ管協会規格

FRPM K-111

昭和 59 年制定 平成 3年改正 平成 13 年確認

制定・改訂 5回(FW 成形 3社) 改訂 6回(FW 成形 3社、遠心力成形 1社)

3~17 27(1 種管)、21(2 種管)、14(3 種管)、10(4 種管)、5(5 種管)

100~ 2000

100~

2000

200~

2000

200~

1000

200 ~ 3000

200~

700

200~

2200

200 ~

2400 200 ~ 3000

200~

3000 500 ~ 3000

400~

2400 200 ~ 2400

2 種 1 号乙、2号乙、1種 2号乙 Ⅰ類

内圧・外圧考慮

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参-52

②1991(H3)年改正

制定後 7年が経過し、その間に継手の形状変更、呼び径の拡大、SI 単位化がなされてきたた

め改正が行われた。

③2001(H13)年確認

前回改正より 10 年が経過したため、内容を確認し変更がないことが確認された。

(2)強化プラスチック複合管協会規格

①1973(S48)年制定「規格記号なし」

同年、フィラメントワインディング(FW)成形で製作していた 3社により協会が設立された。

各社仕様が異なったため、統一するために内圧管、外圧管を包含した規格が制定された。(最

大呼び径 2000mm、試験水圧 17kgf/cm2(0.17Mpa))

②1976(S51)年制定「K-111」農業用規格

農業用として内圧管の規格を制定した。基本事項はほぼ上記の規格と同じである。(最大呼

び径 2000mm、試験水圧 27kgf/cm2(0.27Mpa))

③1979(S54)~ 1985 年(S60)4 回改訂「K-111」

FW 成形 3社による規格として、継手の形状変更、呼び径の拡大に伴い、改訂が実施された。

基本性能についての変更はない。

④1985(S60)~ 2004 年(H16)6 回改訂「K-111」

FW 成形 3社に加え、遠心力成形 1社が加わり、両成形法による規格の統一、および、継手の

形状変更、呼び径の拡大、SI 単位化に伴い、改訂が実施された。基本性能についての変更はな

い。

⑤ 平成 18 年(2006)~平成 19 年(2007)「K-1111」FW 成形品、「K-2111」遠心力成形品

成形法による寸法及び継手関係の違いを明確にするとともに、性能設計への移行を見据え規

格分離が行われた。

⑥ 内挿用途管材の規格化

平成 17 年度に、内挿用の管材の規格が制定された。近年、管路の改築やシールド二次覆工に

強化プラスチック複合管を用いられる事例が急増しており、今まで各社メーカー規格で、管厚

さや受口外径を小さくした管材を開発し、市場に供給してきた。これの統一規格として強化プ

ラスチック複合管協会規格が制定された。

「K-1111L」FW 成形品。「K-2111L」遠心力成形品。

(3)強化プラスチック複合管(FRPM)の規格

強化プラスチック複合管は、図 1-8のような種類があり、その特徴は表 1-40のとおりである。

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参-53

図 1-8 FRPM の種類と規格

表 1-40 材料(製品)の特徴(強化プラスチック複合管)の構造

管体・継手

B形

FW成形法により製造され、継手部のゴム輪が管の挿口部外面に接着剤によってあらかじめ接着されている構造のもの。

C形

FW成形法により製造され、継手部のゴム輪が管の受口部内面に接着剤によってあらかじめ接着されている構造のもの。

T形

FW成形法により製造され、継手部のゴム輪が管の受口部内面に配管前に装着する構造のもの。

D形

CC 成形法により製造され、継手部のゴム輪が管の受口内面に設けられた溝にあらかじめ装着されている構造で、受口深さが FW成形法のものより短く設定され、カラー両端がともに屈曲する機構のもの。

外圧 1種

外圧 2種

内圧 1種

内圧 2種

FW 成形法:B形、C形

CC 成形法:D形 外圧管

FRPM

内圧 3種

内圧 5種

内圧管

内圧 4種

FW 成形法:B形、C形、T形

CC 成形法:D形

FW 成形法:B形、C形

CC 成形法:D形

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参-54

1.3.4 ダクタイル鋳鉄管(DCIP)

ダクタイル鋳鉄管に関する JIS 規格の変遷を表 1-41に示す。

わが国における鋳鉄管の使用は、明治初期から始まっている。当時はヨーロッパからの輸入品

が使用されていたが、明治 20 年から鋳鉄管の国産が開始された。その後の鋳造技術の進歩に合わ

せ、鋳鉄管の材質は、普通鋳鉄、高級鋳鉄からダクタイル鋳鉄へと変わっており、直管の製造方

法は、置注鋳造法から遠心力鋳造法へと変化してきている。

また、大正 3 年には、わが国最初の鋳鉄管規格が制定され、以後、様々な規格の制定、改正及

び廃止を経て現在に至っており、現在では、JIS 規格の他、日本水道協会(JWWA)規格、日本下

水道協会(JSWAS)規格、ダクタイル鋳鉄管協会(JDPA)規格が制定されている。

表 1-41 JIS の変遷(ダクタイル鋳鉄管)

(1) JIS 規格

ここでは、ダクタイル鋳鉄を材質とした直管の規格である「ダクタイル鋳鉄管(JIS G 5526)」

の変遷について記載する。

20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 2 4 6 8 10 12 14 16 18

A形

B形

C形

K形

T形

ゴム輪のJIS種別

内圧設計方法

ダクタイル鉄管協会(JDPA G 1027)

日本下水道協会(JSWAS)

代表的な継手形式

試験水圧

ポリエチレンスリーブ規格

JIS G 5526 ダクタイル鋳鉄管の変遷

         年 度項 目

日本水道協会(JWSA、JWWA)

JISの制定・改正(JIS G 5526)

制定1974 改正1998

JIS G 5526(MPa)

75~ 300:6.0 350~ 600:5.0 700~1000:4.01100~1500:3.01600~2600:2.5

2種 Ⅰ類、Ⅲ類

内圧・外圧考慮

改正1977 改正1982 改正1989

JWWA G 105改正1965,1967,1971

JWWA G 110制定1973

JWWA G 113制定1982 改正1990,1992,1999,2000,2001,2004,2005

JSWAS G-1制定1984 改正1992,1997,1999,2000,2001,2003,2004

JDPA G 1027制定1981 改正1982,1984,1989,1995,1999,2004

200~1500 75~1500

200~

1500

200~1500

75~1500

75~1500

75~500

400~1500

75~350

75~2600

JWSA G 105制定1961

75~250 75~2000

JWSA G 105(kgf/cm2)1種:252種:183種:12

JWWA G 105(kgf/cm2)

~ 300 1種:60 2種:-- 3種:50 350~ 600 1種:50 2種:45 3種:40 700~1000 1種:40 2種:40 3種:351100~ 1種:30 2種:30 3種:30

JIS G 5526(kgf/cm2)

75~ 300:60 350~ 600:50 700~1000:401100~1500:301600~2600:25

JDPA Z 2005制定1975 改正1981,1983,1984,1989,1992,1994,1997,2000,2001 廃止2008

JWWA K 158制定2005

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参-55

・JIS 制定以前

ダクタイル鋳鉄管の JIS 規格制定に至るまでの経緯を表 1-42に示す。

表 1-42 ダクタイル鋳鉄管の JIS 規格制定に至るまでの経緯

年 度 経 緯

明治 05 年 輸入鋳鉄管が国内で初めて使用される。

明治 20 年 普通鋳鉄管を国内で生産開始する。

昭和 05 年 高級鋳鉄管が生産開始する。

昭和 23 年 ダクタイル鋳鉄がアメリカで発明される。

昭和 29 年 日本で初めてダクタイル鋳鉄管を生産開始する。

昭和 36 年 ダクタイル鋳鉄管が日本水道協会規格となる。

昭和 49 年 ダクタイル鋳鉄管が日本工業規格となる。

・1974(S49)年制定

昭和 46 年に制定された JWWA 規格が JIS 規格として制定された。

表 1-43 JIS G 5526 ダクタイル鋳鉄管(1974)

呼び径 mm 製造方法 接合形式

075 ~ 0500 遠心力鋳造

A 形

400 ~ 1500 K 形

・1977(S52)年改正

国際単位系(SI)導入に伴い、昭和 49 年の規格が改正された。

・1982(S57)年改正

昭和 52 年の規格の名称を変更し、水道用以外の用途にも使用できるよう汎用性のある規格に

改正された。

表 1-44 JIS G 5526 ダクタイル鋳鉄管(1982)

呼び径 mm 管の種類 接合形式

075 ~ 2600

4 管種及び

中間管種を

追 加

K 形

075 ~ 0350 A 形

075 ~ 2000 T 形

700 ~ 2600 U 形、UF 形

300 ~ 0900 KF 形

100 ~ 0450 SⅡ形

500 ~ 2600 S 形

075 ~ 2600 - フランジ形

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参-56

表 1-45 JIS G 5526(1982)の主要な規定項目

引張強さ kgf/mm2 伸び % 試験片

420 以上 10 以上 供試管より必要な長さ

・1989(H 元)年改正

昭和 57 年の規格の直管及び異形管の機械的性質を同一にし、直管のへん平試験が削除され、

改正された。また、SI 単位への移行及び US 形、PI 形、PⅡ形が追加された。

表 1-46 JIS G 5526(1989)の主要な規定項目

引張強さ kgf/mm2 伸び % 硬さ HB へん平試験 試験片

420 以上 10 以上 230 以下 削 除 供試管より長さ 50mm 以上

・1998(H10)年改正

ISO2531 との整合を図り、平成元年の規格が改正された。ただし、形状、寸法(外径、管厚

等)、継手の種類及び機械的性質の伸びは、普及率、地理的条件(地震国等)等を考慮して整

合されなかった。

表 1-47 JIS G 5526(1998)の主要な規定項目

区 分 項 目 内 容

直管、異形管

接合形式 A 形削除、呼び径 75mm SⅡ形追加

硬 さ 疑義が生じた場合に測定

黒鉛球状化率 規定を削除

直 管

形状、寸法

及び

その許容差

有効長及び呼び径 75~250mm K 形管の外径(D2

寸法)許容差を変更、質量の許容差を削除、呼

び径 75~250mm T 形管の受口部 P 寸法を変更

外 観 真直度の規定値及び測定方法を追加

試 験

引張試験にバッチ試験及び工程管理試験を規

定し、一組の本数及び試験片の直径を変更、水

圧試験に保持時間を追加

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参-57

(2)日本水道協会(JWSA、JWWA)規格、日本下水道協会(JSWAS)規格

・JWSA、JWWA 規格

1961(S36)年に、「水道用遠心力ダクタイル鋳鉄管(JWSA G 105)」が制定され、呼び径

200~1500 の遠心力鋳造によって製造された直管(A形、B形、C形)について規定された。1964

(S39)年には、日本水道協会の英文略称の変更により JWSA から JWWA に改正されており、その

後も、呼び径の拡大、継手形式の追加や廃止、接合部品の変更等に対応した数回の改正を経て、

現在の JWWA G 113(水道用ダクタイル鋳鉄管)に至る。

・JSWAS 規格

1984(S59)年に、下水道用ダクタイル鋳鉄管規格として「下水道用ダクタイル鋳鉄管(JSWAS

G-1)」が制定された。基本的には JIS 規格と同じであるが、塗装仕様、管の種類等に違いがあ

る。日本水道協会規格と同様に、呼び径の拡大、継手形式の追加や廃止、接合部品の変更等に

対応した数回の改正を経て、現行規格に至る。

(3)日本ダクタイル鉄管協会協会(JDPA)規格

ここでは、農業用水用パイプラインとして使用されるダクタイル鋳鉄管の規格である「農業用

水用ダクタイル鋳鉄管(JDPA G 1027)」の変遷について記載する。

・1981(S56)年制定

農業用水用に使用するダクタイル鋳鉄管について、「ダクタイル鋳鉄直管及びダクタイル鋳

鉄異形管(農業用水用)」が制定された。本規格では、ダクタイル鋳鉄直管の管厚区分を細分

化し、薄肉管も規定して農業用水用に適した規格として制定された。接合形式は、K形、A形及

び T形が規定された。

・1982(S57)年改正

JIS G 5526・5527(ダクタイル鋳鉄管・ダクタイル鋳鉄異形管)、JIS G 5502(球状黒鉛鋳

鉄品)及び JIS K 6353(水道用ゴム)の改正に伴い規定内容が見直された。

・1984(S59)年改正

JIS A 5314(ダクタイル鋳鉄管モルタルライニング)及び JIS G 5528(ダクタイル鋳鉄管内

面エポキシ樹脂粉体塗装)の改正に伴い規定内容が見直された。また、規格名称が「農業用水

用ダクタイル鋳鉄管」と変更された。

・1989(H 元)年改正

昭和 63 年 3 月土地改良事業計画設計基準「設計水路工(その2)パイプライン」の改定に伴

い、管厚規定が見直された。

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参-58

・1995(H7)年改正

国際単位系(SI)の導入、機械的性質の JIS G 5526・5527(ダクタイル鋳鉄管・ダクタイル

鋳鉄異形管)との整合、JWWA K 139(水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料)の適用に対応し

規定内容が見直された。

・1999(H11)年改正

平成 10 年の JIS G 5526・5527(ダクタイル鋳鉄管・ダクタイル鋳鉄異形管)の改正に伴い

規定内容が見直された。

・2004(H16)年改正

管の許容差の見直し、関連 JIS の改正に伴う規定内容の整合及び管種を追加し、規定内容が

見直された。

1.3.5 硬質ポリ塩化ビニル管(PVC)

硬質ポリ塩化ビニル管に関する公的及び団体規格の変遷を表 1-48に示す。

わが国における硬質ポリ塩化ビニル管は、その優れた耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度など

によって主に工業用途を中心に 1951 年頃から使用され、需要の増加及び使用者要求から、1954

年に JIS K6741(硬質塩化ビニル管)が制定され、その後、水道管、電線管などの別途規格化及

び農水・下水用途の大口径化を経て 50 数年経過した管材であり、農業用途の管網整備に最も使用

されている管材である。

様々な規格の制定、改正及び廃止を経て、現在では、JIS 規格の他、日本水道協会(JWWA)規

格、日本下水道協会(JSWAS)規格、塩化ビニル管・継手協会規格等が制定されている。

表 1-48 JIS 及び公的規格の変遷(硬質ポリ塩化ビニル管)

20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 2 4 6 8 10 12 14 16 18

硬質塩化ビニル管(農業用)の変遷

         年 度項 目

日本水道協会(JWWA K-127)

JISの制定・改正(JIS K6741)

ゴム輪のJIS種別

管厚さ設計方法

塩化ビニル管継手協会規格(AS24)

日本下水道協会(JSWAS)

試験水圧(JIS K6741)

接続形式

管の種類と設計圧力

制定1954

改正1999

1種A

内圧・外圧考慮

改正1968 改正1975 改正1984

制定1976

制定1984

改正

1957

改正1958

改正1960改正1965

改正

2004

JWWA K-127制定1983

改訂1990 改訂1997 改訂2002

改訂1981 改訂2002

VP 25kgf/cm2VU 12.5kgf/cm2

30kgf/cm2(現状区分でVP相当)

VP150以下 30kgf/cm2VP200以上 20kgf/cm2VU 10kgf/cm2

VP 25kgf/cm2VU 12.5kgf/cm2

VP 2.5MPaVM 2.0MPaVU 1.5MPa

規定せず

接着、ゴム輪規定せず

VP 10kgf/cm2VM 8kgf/cm2VU 5kgf/cm2

VP 規定せずVU 規定せず

内圧考慮

VP 1.0MPaVM 0.8MPaVU 0.5MPa

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参-59

(1) JIS 規格

ここでは、最も基本となっている JIS K 6741(硬質ポリ塩化ビニル管)の変遷について記載

する。

・JIS 制定

・1954(S26)年制定

口径はインチ設定で 3/8、1/2、3/4、1、1 1/4、1 1/3、2、2 1/2、3、4 を設定し、当時の

技術段階において最良の試験方法を取り入れた。

・1957(S32)年改正

口径のインチ拡大で 5、6を追加した。

・1958(S33)年改正

試験方法の追加を行った。

・1960(S35)年改正

インチ呼びをミリメートル呼びに改正した。

・1965(S40)年改正

① 口径 200~300 の管を追加

② 薄肉管として VU 管を追加し、既存の種類を VP 管とした。

・1968(S43)年改正

① 口径の削除(呼び 28、35)

② VU 管に呼び径 300、350、400、450、500 を追加した。

③ 厚さの許容差を ISO 規格と同じく+X、-0 の形にした。

・1975(S50)年改正

① VP10 を削除し、VU600、700 及び 800 を追加した。また、VP200、250 の従来管は呼び圧力

10kgf/cm2 に満たないのでこれを厚くし、かつ、VP300 を追加した。

② 片受直管を規定した。

・1984(S54)年改正

① ビカット軟化温度試験を新たに規定した。

② 受口を圧力輸送及び無圧輸送用のゴム輪受口及び接着受口に分け、寸法を付図に示した。

・1999(H11)年改正

① 国際単位系(SI)を JIS に導入するために行った改正であり、SI 単位系を規格値とし従

来単位を参考として( )付で付記した。

② UM 管(呼び径 350、400、450、500)を追加した。

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参-60

・2004(H16)年改正

① 従来からの 5 年定期見直しを契機として、旧規格発行後に改正された ISO/IEC Guide21

:1999(国家規格への国際規格の採用)の編集方針に基づき、国際規格との整合化を図

った。

② ISO3633 及び ISO4435 を対応規格としてきたが、この規格製品は、圧送用としても使用

されることから、ISO4422-2 の水道用途以外の部分を新たに追加した。

③ 呼び径 800 は、1975 年規格制定以来生産実績が無く、他のプラスチック管の代替が可能

であるため削除した。

④ 管の種類に ISO 規格に規定のある IDVP、ISVP、IWVP を追加した。

・2007(H19)年改正

ISO 規格との整合化をより高めた規定内容とし、2004 年に改正された。

特に規格票の様式及びその作成方法は、従来から JIS Z 8301(規格票の様式及び作成方法)

に基づき実施されてきたが、この JIS Z 8301 は ISO/IEC Directives-Part2 との整合化を図

るため 2005 年に大規模な改正が行われた。旧規格に関する規定内容の変更は前に述べている

が、編集上変更が多岐にわたってなされている。特に今回の改正は、硬質ポリ塩化ビニル管

及び継手の6規格の改正を同時に実施したため、材質及びその他特性並びに形状印字に関す

る以外の規定については内容の共通化を図り、検査又は適合性評価が適切に行えるようにし

た。

1.3.6 ポリエチレン管(PE)

ポリエチレン管に関する公的及び団体規格の変遷を表 1-49に示す。

1953 年ころから製造を開始されたポリエチレン管は、耐食性、可とう性、耐衝撃性、耐寒性、

電気絶縁性などに優れており、軽量で取り扱いが容易であることから 1959 年に JIS K6761(一般

用ポリエチレン管)規格が制定された。同様に水道用途に使用される管材として JIS K6762(水

道用ポリエチレン2層管:旧水道用ポリエチレン管)が制定された。

現在では、JIS 規格の他、日本水道協会(JWWA)規格、日本下水道協会(JSWAS)規格が制定さ

れている。

(1) JIS K6761 規格

ここでは、最も基本となっている JIS K 6761(一般用ポリエチレン管)の変遷について記載

する。

・1956(S31)年制定

口径はインチ設定で 1/4、3/8、1/2、3/4、1、1 1/8、1 1/4、1 1/2、2、2 1/2、3 を設定

した。

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参-61

表 1-49 JIS 及び公的規格の変遷(ポリエチレン管)

20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 42 44 46 48 50 52 54 56 58 60 62 2 4 6 8 10 12 14 16 18

管厚さ設計方法

下水道用PE管継手協会規格(PA11)

日本下水道協会(JSWAS K14)

試験水圧(JIS K6761)

接続形式

原料の種類(JWWA K144)(JWWA K14)

原料の種類(JIS K6761)

試験水圧(JWWA K144)(JWWA K14)

ポリエチレン管の変遷

         年 度項 目

日本水道協会(JWWA K-144)

JISの制定・改正(JIS K6761)

制定1959

改正1995改正1962 改正1971 改正1979

制定2000

制定1996

制定1997

改訂2000

3/4以下      20kgf/cm27/8以上1 1/4以下 14kgf/cm21 1/2以上     10kgf/cm2

EF接合

内圧考慮

改正1998 改正2004

改訂2004

kgf/cm2     1種管 2種管3/4以下       18  301以上1 1/4以下   13  221 1/2以上3以下    10  164以上6以下     6  138以上       4.5  10

kgf/cm2     1種管 2種管20          19  3025以上30以下    14  2240以上75以下     10  16100以上150以下   6  13200以上       4.5  10

MPa       1種管 2種管20         1.9  2.925以上30以下    1.4  2.240以上75以下     1.0  1.6100以上150以下   0.64  1.3200以上      0.44  1.0

PE100

水圧試験廃止

1種管 PE50又は低密度ポリエチレン2種管 PE80、PE100又は高密度ポリエチレン

1種管 PE502種管 PE803種管

PE63、PE80、PE100

規定せず

2.5MPa

・1962(S37)年改正

① 管の種類を比較的柔軟性を持つ1種管と比較的コワさを持つ2種管に分け、口径の拡大を行った。

・1971(S46)年改正

① 国際単位系を取り入れた修正を行った。

・1979(S54)年改正

① 浸せき試験の規格値の単位を mg/cm2 にした。

② 呼び径のインチ表示を mm 表示へ変更し、口径の拡大を行った。

③ 引張試験方法の変更を行った。

・1995(H7)年改正

① 国際単位系(SI)を主、従来の単位系を従とする併記方式を採用した。

・1998(H10)年改正

① 国際規格との対応のため ISO4427:1996 との整合化を行った。

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参-62

② 管の種類を表 1-50のように原料の種類で定義した。

表 1-50 ポリエチレン管の原料の種類

管の種類 原料の種類

1種管 PE50、低密度又は中密度ポリエチレン

2種管 PE80、PE100 又は高密度ポリエチレン

③ 1種管の口径を削減(200、250、300)した。

・ 2004(H16)年改正

ISO/IEC Guide21:1999(国家規格への国際規格の採用)の編集方針に基づき、国際規格と

の整合化を図った。

③ 管の種類を3種管にし、ISO4427 に規定する寸法を追加した。

④ 管の種類を表 1-51のように材料の分類を密度から MRS に基づく分類とした。

表 1-51 ポリエチレン管の原料の種類

管の種類 原料の種類

1種管 PE50

2種管 PE80

3種管 PE63、PE80、PE100

⑤ 性能及び試験方法は、可能な限り対応国際規格と整合させた。

⑥ 対応国際規格の寸法は、本体に規定した。

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参-63

2.パイプラインの主要な劣化と特徴

2.1 パイプラインの性能低下要因と変状の現象

パイプラインの性能低下は、施設の内部要因、外部要因、その他の要因に影響されて進行し、一般

的に、図 2-1に示すような性能低下の原因と変状の現象・状態との関係をもつ。また、一般的なパイ

プラインの変状の特徴を表 2-1に示す。 パイプラインの変状の要因は、立地(埋設)条件及び配管設計条件によって異なり、要因の推定にあたっては、変状の現象・状態の多くが複数の原因からなることに注意をする必要がある。管体の性能

低下メカニズムは、管種別に大きく異なることから、管の構造材質の区分(コンクリート系、鉄鋼系、

樹脂系)に応じて整理するとよい。構造材質区分ごとの主たる性能低下要因は、コンクリート系管路

では、外部要因による継手部の機能低下と侵食性因子によるコンクリート系材料の劣化、鉄鋼系管路

では、鋼材腐食に伴う劣化変状、及び樹脂系管路では、外部要因による継手部の機能低下と管体亀裂

である。 また、パイプラインは管路と附帯施設の機能が一つのシステムとして有機的に結合していることか

ら、附帯施設の変状や分水バルブ等の機器の現場における操作管理の実態によっては、管路の性能低

下の原因となる場合があることにも留意する。

図 2-1 一般的なパイプラインの性能低下とその原因

過剰水圧・負圧

内面腐食・錆

外面腐食・錆

継手のゆるみ

赤 水

流水騒音・振動

用水供給の低下

変状の原因

過載荷重

漏水による地盤の空洞化

異物の混入

水 質

内面層経年劣化

(摩耗・塗膜劣化)

外面層経年劣化

(中性化・塗膜劣化)

施工不良

品質不良

変形・たわみ

支持力条件劣化

不同沈下

管厚の減少

貫通孔

接合部の劣化

ひび割れ

地盤の緩み

沈下・蛇行

断面閉塞

変状の現象・状態 性能の低下

耐荷性の低下

管体破損

通水性低下

漏 水

周辺環境の低下

地盤空洞化の原因

バルブ類の性能低下

土壌の腐食性

(腐食性土壌・電食)

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参-64

表 2-1 パイプラインの変状の特徴

変状の種類 変状の原因、内容 影響

漏水

漏水は以下のような要因により発生する。

・管体亀裂、破損、腐食孔。

・継手部(接合部)の緩みや劣化。特に不同沈下箇所

や分岐管、弁類接合部は弱点になりやすい。また、

継手タイプが古いもの、例えばゴム輪を使わないタ

イプは漏水を起こしやすいので、どのような継手を

使用しているか事前に把握しておくとよい。

用水が無効に流失する。

漏水箇所の地盤が緩み、管路の耐

久性、耐荷性の低下を促進させる

恐れがある。

通水性能の

低下

錆こぶや管体の変形・たわみ等により通水断面不足や

粗度低下等が生じ、通水性能が低下する。

現象としては通水量の低下、水圧の低下などとして現

れる。

なお、土砂やごみ、藻類などの異物の混入、あるいは

水理システム上の問題(空気連行等)による通水性能

の低下も多いので、管路の性能低下を原因としたもの

と区別する必要がある。

通水性能はパイプラインの基本

的な要求性能であり、これが大き

く阻害された場合、受益者に与え

る影響は大きいので、日常的に通

水性能の異常の有無の把握に努

める必要がある。

管体破損

管路の支持条件の変化や腐食による管強度の低下か

ら、周方向の管路折れや軸方向割れにより、管体が破

損する。

高水圧が加わる管路では、さらにその危険性が増大す

る。

管路の破損規模が大きい場合、周

辺地盤の陥没や崩壊による二次

災害を引き起こす危険性がある。

ひび割れ

過剰水圧や自動車荷重、あるいは不同沈下などによる

荷重の集中化等を原因として管体にひび割れが発生す

る。

ひび割れの方向(縦断方向、横断方向)によって、管

体に加わる荷重の分布状態を類推することが必要であ

る。なお、コンクリート管では、鉄筋コンクリート構

造物と同様に、中性化や塩害といった劣化によっても

ひび割れが発生する。

漏水や管体破損を誘引する。

変形・たわみ

管体の支持条件の変化(地下水や漏水による砂基礎の

流失、埋設土の空洞化等)や自動車荷重等の上載荷重

の増大等によって変形、たわみを生じる。

通水性能の低下やひび割れ、管体

破損の原因になる。

継手部・接合部

の変状

不同沈下や支持力不足により継手部に偏圧が加わる場

合に継手の緩みが発生する。 施工不良による継手の緩

みもある。

腐食性土壌に埋設されている場合、ゴム輪がバクテリ

アに侵食され、高水圧に継手性能が追従できない場合

に継手部・接合部の変状が生じる。

漏水の原因となる。ゆるみの状態

がひどい場合は、管の抜け出しに

より二次災害の危険性もある。

沈下・蛇行 不同沈下や地盤の緩み、地震により管路の沈下・蛇行

が生じる。

通水性能の低下、管体強度の低下

の原因になる

管内面腐食

腐食性の用水が通水されている場合に内面の腐食が発

生する。 また、内面塗膜が流水摩耗等によって経年劣

化した場合も内面腐食を起こしやすい。

通水性能の低下、錆こぶ、貫通孔

などを発生させる。 管厚が減少

し、耐荷性が低下する。

管外面腐食 埋設管の地下水質や土壌の腐食性によって外面腐食が

発生する(PC管のカバーコートモルタル等の腐食)。

管厚の減少により耐荷性が低下

する。

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参-65

2.2 パイプラインの外観変状写真

表 2-2 パイプラインの外観変状写真リスト

工 種 番号 管 種 変状の現象・状態 変状の要因

パイプライン

① 鋼 管 管内面腐食 内面塗装膜の損傷

② 鋼 管 管内面腐食・赤水 腐食性の水質

③ 鋼 管 内面塗膜層の剥離 摩耗

④ 鋼製異形管 管内面腐食 内面塗装膜の損傷

⑤ ダクタイル鋳鉄管 管外面腐食 土壌の腐食性

⑥ ダクタイル鋳鉄管 管外面腐食・ピンホール漏水 C/S マクロセル

⑦ PC管 管体破損 地下水の腐食性

⑧ PC管 管外面腐食 地下水の腐食性

⑨ PC管 管外面腐食 地下水の腐食性

⑩ PC管 PC鋼線破断 地下水の腐食性

⑪ PC管 ひび割れ 不同沈下

⑫ PC管 継手の変状 -

⑬ 制水弁・空気弁 弁体腐食 腐食性の水質

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参-66

① 管内面腐食

変状の要因 内面塗膜層の損傷

工種・部位 鋼 管

② 管内面腐食・赤水

変状の要因 腐食性の水質

工種・部位 鋼 管

③ 内面塗膜層の剥離

変状の要因 摩 耗

工種・部位 鋼 管

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参-67

④ 管内面腐食

変状の要因 内面塗膜層の損傷

工種・部位 鋼製異形管

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参-68

⑤ 管外面腐食

変状の要因 土壌の腐食性

工種・部位 ダクタイル鋳鉄管

⑥ 管外面腐食・ピンホール漏水

変状の要因 C/S マクロセル

工種・部位 ダクタイル鋳鉄管

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参-69

⑦ 管体破損

変状の要因 地下水の腐食性

工種・部位 PC管

カバーコートモルタルの化学的腐食

→ PC鋼線の腐食 → 破断

⑧ 管外面腐食

変状の要因 地下水の腐食性

工種・部位 PC管

カバーコートモルタルの化学的腐食

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参-70

⑨ 管外面腐食

変状の要因 地下水の腐食性

工種・部位 PC管

カバーコートモルタルの化学的腐食

⑩ PC鋼線破断

変状の要因 地下水の腐食性

工種・部位 PC管

カバーコートモルタルの化学的腐食

→ PC鋼線腐食 → 破断

⑪ ひび割れ

変状の要因 不同沈下

工種・部位 PC管

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参-71

⑫ 継手(接合部)の変状

変状の要因 ―

工種・部位 PC管

ガスケットの剥離

継手部の開き(抜き出し)

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参-72

⑬ 弁類の腐食

変状の要因 腐食性の水質

工種・部位 制水弁・空気弁

制水弁の腐食・錆

空気弁の腐食・錆

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参-73

3.パイプラインの主要な機能診断調査手法

3.1 現地調査手法の検討

現地調査は、事前調査・現地踏査で得られた結果及び施設の重要度や経過年数等を踏まえ、適

切な調査範囲において実施するもので、施設性能の低下状態やその要因について定量的な調査を

行う。現地調査は、1) 漏水試験や水圧と流量の調査といった地上部から間接的に実施可能な定量

調査(間接的定量調査)と、2)管内部から近接目視や計測・試験等の直接的な定量調査(直接的

定量調査)を必要に応じて組み合わせた調査とする。また、3)現地調査による調査結果だけでは

判定できず、さらに詳細な調査が必要であると判断された場合には、専門家や試験研究機関など

による調査(詳細調査)を実施する。

調査手法の検討にあたっては、管種の特徴に合わせた調査方法を選択するとともに、類似地区

の事故事例や使用・劣化環境条件も参考にする必要がある。具体的には、事前調査・現地踏査で

得られた資料をもとに使用環境条件と事故要因の関連性を整理した「事故リスク相関表」を用い

て、事故リスクと施設の重要度を勘案して、性能低下要因に応じた調査手法を選択するとよい(表

3-1、表 3-2)。

表 3-1 事故リスク相関表(鉄鋼系管路)と対応する調査手法

管体漏水歴(直近10年)

あり、又は条件類似箇所であり(偶発的外力によるものを除く)

◎ ◎ ◎ ◎ ◎

20年未満 △ △ △ △

20~40年未満 △ △ △ ○ △

40年以上 △ ○

コンクリート構造物15m以内にコンクリート構造物との

接触あり○

外面塗膜装・埋戻材料

瀝青質系塗膜装、埋戻材料が発生土・砕石

△ △ △

内面塗装 塗装なし(溶接部含む) ○

流量 所定水圧下の流量減少 ○

腐食性が疑われる土壌 ○

地下水位が管体付近まである △ △ △ △

異種金属接触あり △

通気差あり(砂/粘土、湿潤状態等) △

1km以内に直流電気鉄道等迷走電流の可能性あり

管対地電位測定

電位勾配測定管対地電位測定

ANSI土壌調査

管内目視調査

(事故履歴を

詳細分析)

埋設環境

◎・○がある場合や、○・△、○等で重要度が高い施設等で行う調査手法の例

供用年数

                            漏水要因

       使用・劣化環境

C/Sマクロセル腐食

電食土壌

ミクロセル腐食

管内劣化(発錆等)

異種金属通気差等マクロセル腐食

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参-74

表 3-2 事故リスク相関表(コンクリート系・樹脂系管路)と対応する調査手法

管体破損歴(直近10年)

あり、又は条件類似箇所であり(偶発的外力によるものを除く)

◎ ◎ ◎

継手漏水歴(直近10年)

あり、又は条件類似箇所であり(偶発的外力によるものを除く)

20年未満 △

20~30未満 △ △

30~45年未満 △ ○

45年以上 △ ○ △

使用水圧 使用水圧0.3MPa以上 △ △

バルブ急閉の可能性あり △ △

日常的空気連行の可能性あり △ △

地盤沈下等による管への影響あり ○

設置位置が谷地形 △

地下水位が管体付近まである △

有機物を含む土壌を通過して供給 ○

地下水水質調査

位置絞込管内調査(テストバンド等)

供用年数

◎・○がある場合や、○・△、○等で重要度が高い施設等で行う調査手法の例

                           漏水要因

       使用・劣化環境

カバーコート

腐食(PC)

継手漏水管体破損(RC)

管体破損(FRPM)

(事故履歴等を詳細分析)

管理上の問題等

地盤・地形条件

地下水

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参-75

3.2 パイプラインの主要な機能診断調査手法

パイプラインの機能診断調査における主要な現地調査項目及びその内容を以下に示す。

調査項目 調査内容及び調査方法

適用管種

C P

DCIP

FRPM

Ⅰ.間接的

定量調査

(地上からの

調査)

① 漏水量調査

水張り試験、もしくは2点間流量測定などにより漏水量を測定 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

② 漏水調査(漏水位置特定等)

漏水音、相関法等によって間接的に漏水を確認する調査手法 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

③ 管内粗度調査(流量・圧力)

流量と圧力を同時測定し、ヘーゼン・ウイリアム公式の流速係数 C を求める ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

④ C/Sマクロセル腐食調査

コンクリート構造物の貫通部近傍で管対地電位分布等を測定する ○ ○

⑤ 電食調査

外部電気設備からの漏洩電流を地表面電位勾配等により判定する ○ ○

⑥ 土壌調査(ミクロセル腐食等調査)

埋設管近傍の土壌を採取し、室内試験により腐食性因子を測定する

○ ○ ○ ○

要ボーリング等

⑦ 地下水水質調査

埋設管近傍の地下水を採取し、腐食性因子を測定する

○ ○ ○ ○

既存井活用または要ボーリング

⑧ 管内カメラ調査

管内カメラ、水中カメラ等による管内状況調査

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

小口径、断水不能箇所等

Ⅱ.直接的

定量調査

(管内からの

調査)

① ひび割れ状況

管内目視によるひび割れ状況調査

管の変状劣化を定性的に把握

○ ○ ○ ○

② 蛇行、沈下の状況

管内縦断測量により、蛇行、沈下を調査 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

③ たわみ量測定

縦横比の簡易測定でよい ○ ○ ○ ○

④ 内面塗装・腐食状況

管内目視による腐食状況調査 ○ ○

⑤ 発錆状況

管内目視調査による発生状況調査 ○ ○

⑥ 継ぎ手間隔

管内から継手間隔をゲージで測定 ○ ○ ○ ○ ○ ○

⑦ 管厚測定

デプスゲージ又は超音波計による測定 ○ ○ ○

⑧ 堆積物の状況

堆砂・ゴミの有無、量の状況確認 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

⑨ 継ぎ目試験

テストバンドによる継手の水密性検査 ○ ○ ○ ○ ○ ○

Ⅲ.詳細調査

(試掘等調査)

①試掘による管外面目視調査

埋設管まで試掘し、外面の腐食状況を目視する

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

要試掘

②管体の力学試験

供試管を採取し各種力学実験を行う

○ ○ ○ ○

要試掘

③クリープ試験

経年管のクリープ強度と設計基準強度を比較し、物理的な劣化の評

価を行う

○ ○ ○

要試掘

④管体の化学試験

力学実験に用いた供試管の化学試験を行う

○ ○ ○

要試掘

⑤継手ゴム輪劣化試験

ゴム輪を採取し、物性試験を行う

○ ○ ○ ○ ○ ○

要試掘

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参-76

注)現場条件により調査に制約を受ける場合の取扱い

現場条件により調査に制約を受ける要因としては、①パイプラインの口径の大小等施設構造に

よる制約、②通年通水を行う必要があり断水出来ない等利水状況による制約などがあり、現場条

件を勘案し、合理的かつ経済的な手法で、調査を行う必要がある。以下に、調査の制約を受ける

場合の取扱い例を示す。

1)施設構造による制約

a.パイプラインの口径

パイプラインの口径が 800mm 未満の場合などは、管内に進入出来ないため、直接的な調査

ができないことがある。

このような施設の機能診断は、事前調査、現地踏査時に当該施設の重要度や経過年数、事

故・補修履歴、日常管理上の不具合等について施設管理者から聞き取り調査等を行い、現地

調査で実施可能な診断項目や調査手法の検討を行う。

管内状況の確認が必要となった場合は、「管内カメラ」等を活用した間接的な調査を実施

するが、この際、調査費用と得られる結果とのバランスについても十分検討する。

b.その他施設構造の制約

その他、施設構造による制約がある場合の事例として、ファームポンドへの流入口が気中

にある場合(例えば、ポンプ場からファームポンドまでの管路区間の水張り試験が困難とな

る等)、急傾斜管路、酸素欠乏など作業環境の危険性がある場合(管内調査が困難、仮設費

用が増高等)などといったことが想定される。

なお、事後保全の方が経済的に有利と判断される小口径パイプライン、末端配管等の場合

は、現地調査の対象外とするなど、施設の重要度に応じた調査を実施することが望ましい。

2)利水状況による制約

a.通年通水

上水道・工水道との共同施設である場合又は地区の営農体系から通年通水である場合は、

断水又は落水を伴う調査が出来ないことがある。

このような場合には、事前調査、現地踏査時に施設管理者から、施設の重要度、経過年数、

事故・補修履歴、管理状況等を聞きとり、現地調査の実施の可否等について検討する。

管内調査等が必要と判断される場合は、調査費用と得られる結果とのバランスを考慮した

上で、間接的な調査手法を検討する。また、断水が可能ではあるものの、期間の制約を受け

る場合は、あらかじめ施設管理者と調査可能期間(時間)の確認を行い、直接的・間接的調

査を必要に応じて組み合わせるなど、効率的な診断項目や調査手法の検討を行う。

b.管路内の落水等

非かんがい期は、通水を前提とした調査(流量、圧力計測)が出来ないことやパイプライ

ンへの充水作業(受電契約、取水方法等)に制約があることから、事前調査時に通水期間、

通水条件などを確認することが必要である。かんがい期であっても必要な現地調査を実施出

来ない場合は、施設管理者から事故・補修履歴、水管理・保守上の課題、バルブ等の操作実

態(開閉速度、操作時の異常音・振動等)などの情報を聞き取り、調査を補完する。

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参-77

Ⅰ.間接的定量調査(地上からの調査)

Ⅰ-① 水張り試験

1)目的

パイプラインの性能低下の最も基本的な兆候の一つである漏水について、その量をユニッ

ト等の単位で把握することを目的とする。

2)調査方法

○調査方法1:水張り試験

水張り試験による漏水量調査は、調査対象区間を制水弁により完全に遮断し、その時の減

水量(水槽)によって把握する(水張り試験)。なお、適当な位置に水槽がない場合は、空

気弁等に圧力計を設置して減水量を把握する方法もある。

水を再度注入してから行う試験は、管内充水作業に多大な労力がかかること、充水後最低

24 時間以上経過した安定状態でないと試験ができないことなどから、かんがい期中、または

かんがい期直後の管内に充水している時期に実施するのが望ましい。

区間漏水量は、下図に示すように上流側から暫時バルブを開放し、漏水量の差から求める。

図 3-1 水張り試験による漏水量の計測

測定漏水量 Q

=区間漏水量 ΔQ

測定漏水量 Q 区間漏水量 ΔQ2=Q2-Q

測定漏水量 Q

減水量 Δ

減水量 Δ

測定漏水量 Q 区間漏水量 ΔQ3=Q3-Q

測定漏水量 Q

バ ル ブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ開

バルブ開

バルブ開

バルブ閉バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

バルブ閉

減水量 Δ

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参-78

試験水圧は静水圧とすることが望ましいが、やむを得ず静水圧より低い試験水圧を用いる

場合は、次式により修正する。

Q=Q’ H/H’

Q : 修正減水量(ℓ )

Q’: 測定減水量(ℓ )

H : 静水頭(m)、 H’:試験水頭(m)

○調査方法2:2点間流量測定

2 点間流量の差より漏水量を求める。流量計は、既存施設の取り付け流量計がない場合、

既設管の外周に取り付ける超音波流量計が一般的であり、制水弁工等の管路が露出している

場所を選定して計測する。ただし、流量計設置箇所では、直管の長さが一定以上必要なため、

測定可能な場所が限定される。

流量計の代替計測器として空気弁等から管内に流速センサーを挿入する方式もあるが、微

流速での検知精度があまり高くないので、漏水調査には不向きである。

いずれにせよ、2点間流量測定による漏水量調査は、水張り試験に比べ精度が落ちるので、

水張り試験が出来ない路線において参考程度の取扱とするのが望ましい。

図 3-2 流量測定方法(流量計を用いる場合)

a)弁室などで十分なスペースが確保できる露出配管部の計測が原則である。

b)超音波流量計は、音に敏感なことから、騒音が生じやすい曲管やテーパー管等の異形管や

バルブが近くにあると正確な流量が計測できない。そのために、流量計を設置する箇所は、

上流側 10×口径、下流側 5×口径の直管部が必要であ

る。

c)管が腐食している場合や塗装が剥げ落ちている場合は、

計測ができない場合がある。

d)保温材が巻かれている管体では計測ができない。

なお、制水弁位置に小口径のバイパス管を取り付け、電

磁流量計を設置する方式がある。固定施設になるので、日

常管理での必要度を考慮して導入を検討する必要がある。

図 3-3 バイパス流量計方式

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参-79

○漏水量算定方法

漏水量は、口径 1cm、延長 1km 当り 1日の漏水量として整理する(表 3-3 参照)。

漏水量=測定漏水量×24 時間/(測定時間T×口径cm×管路延長km)

なお、下表に示す許容漏水量を超える漏水量が認められる場合は、漏水箇所の特定を行い、

補修対策の検討を行う必要がある。

表 3-3 口径 1cm、延長 1.0km、1 日当りの標準許容漏水量(ℓ /日・cm・km)

管種 許容漏水量 備考

コンクリート管類 100~150 ソケットタイプ

ダクタイル鋳鉄管、硬質塩化ビニル管

強化プラスチック複合管

50~100

ソケットタイプ等

鋼管、硬質塩化ビニル管、ポリエチレン管 25 溶接、接着継手等

土地改良事業計画設計基準・設計「パイプライン」p.447

表 3-4 区間別漏水量の整理例

番 号 路線名 管 種 延長

(m)

口径

(mm)

漏水量

m3/hr ℓ /日 ℓ /日・

cm・km

許容漏水量

ℓ /日・cm・km

1 導水管 PC3 種 657 φ1600 0.08 1,920 18 100~150

2 1 号送水路 FRPM3 種 1,254 φ1200 0.05 1,200 8 50~100

3 2 号送水路 FRPM 3 種 1,850 φ800 0.27 6,480 44 50~100

4 3 号送水路 DCIP3 種 965 φ1000 0.38 9,120 95 50~100

5 第 1 号幹線 DCIP2 種 1,765 φ800 0.12 2,880 20 50~100

6 第 1 号―2幹線 DCIP2 種 386 φ600 0.09 2,160 93 50~100

7 第 1 号―3幹線 DCIP2 種 876 φ600 0.35 8,400 160 50~100

8 第 1 号―4幹線 DCIP3 種 556 φ500 0.05 1,200 43 50~100

9 第 2 号幹線 FRPM3 種 2,456 φ900 0.08 1,920 9 50~100

10 第 2 号―2幹線 FRPM3 種 1,125 φ600 0.12 2,880 43 50~100

3)留意点

水張り試験において、オープンの水槽で減水量を把握する場合は、降雨や蒸発量を考慮す

る必要があるかどうかを検討する。また、制水弁が老朽化していた場合などのケースでは、

弁を全閉しても完全に遮水出来ていないケースもあるので、結果の分析に当たってはそれら

の可能性も念頭においておく必要がある。

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参-80

Ⅰ-② 漏水探知〔断水不要、対象:全管種〕

1)目的

漏水量試験において許容値以上の漏水が確認された場合等において、漏水箇所を特定する

ため漏水探知を実施する。

2)調査方法

目視では確認できない埋設管の漏水箇所を、漏水音によって間接的に確認する調査手法で

ある。漏水音による漏水探知の手法としては、(a)路面に探知器を置いて漏水音を確認する路

面音聴、(b)複数の場所にセンサーを設置して漏水音が到達する時間差から漏水地点を割り出

す相関調査、(c)パイプラインの埋設位置近くまで音聴棒を差し込み、パイプライン付近の地

中の漏水状況や噴射音から漏水の有無を確認する手法等があり、複数の手法を組み合わせる

ことなどにより漏水箇所を絞り込むことが可能になる。農業用パイプラインにおいては付帯

施設の間隔が大きいので、(a)、(b)による手法が望ましいと考えられる。また、新たな手法

も開発されてきているので、それらの手法による調査も検討してもよい。

3)留意点

漏水音等による漏水探知は、漏水量が少ない場合は漏水音が小さいために発見が困難にな

る。また、現地での調査は騒音の少ない夜間作業となることが多い。

調査手法等により各種制約があるため、それらを十分に把握した上で調査・分析を行う。

Ⅰ-③. 管内粗度(流量・圧力)の調査方法

1)目的

管内に全面的な発錆や大量の土砂付着等があった場合、通水性能が低下する。それらは管

内粗度の低下として現れるので、これを把握することにより管内劣化状況を推定する。

2)調査方法

流量と圧力を同時に計測し、これよりウイリアム・ヘーゼン公式の流速係数C(管路の粗度

係数)を求めるもので、パイプラインの通水機能の経年変化を把握することができる。漏水

が生じている区間では流量と圧力の関係が正確に計測できないので、漏水調査を先行し、対

象区間で漏水が生じていないことを確認してから調査を実施するのが望ましい。

調査は、下図に示すように 2 タイプの方法があり、高精度圧力計、電磁流量計を用いる方

法(Aタイプ)と、圧力センサー、流速センサーを用いる方法(Bタイプ)がある。いずれ

も空気弁等の取り外し可能な施設を利用して計測機器を設置する。

【Aタイプ】

① 電磁流量計を分放流口に設置しなければならないので、計測箇所の制約を受けやすい。

② 電磁流量計の代わりに可搬式の超音波流量計を所定の管路に巻きつける方式の場合は、

流量測定位置の制約が少なくなるが、電磁流量計に比べて測定値の誤差が大きくなる。

③ 弁室等の露出配管部で、かつ埋設部を含めて口径の 10 倍以上の直管部が確保されて

いることが必要である。

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参-81

【Bタイプ】

空気弁箇所であればどこでも計測可能である。流量計は大口径になると急に価格が高くな

るので、流量計の代わりに流速計を用いる。流量計に比べると計測精度は落ちるが、管内

粗度の相対的な経年変化を把握することを目的とすれば流速計でも十分対応可能である。

図 3-4 Aタイプ;高精度圧力計〔2箇所〕と電磁流量計(1箇所)による計測

図 3-5 Bタイプ;圧力センサーと流速センサーにより連続した箇所を同時計測

管路の流れは、流速が遅いときは層流、流速が速いときは乱流となり、流れの性格が大き

く変化するが、流速が十分な直管部分を通ったあとでは、管路内の流速分布は中心対称の

流れとなり、流速が大幅に変わっても、平均流速点の位置はあまり変化しないという性質

を持っている。平均流速は管壁から管直径の 12%の位置に発生することが分かっており、

流速計をその地点に挿入すれば、おおむね平均流速を知ることができる。逆に言えば、こ

の地点に流速計を設置できない場合、流量変動によって平均流速から乖離したデータとな

ってしまうので、ある程度測定誤差が生じることは避けられない。

・データの分析

計測された圧力データと流量(あるいは流速)データを用い、次式よりウイリアム・ヘ

ーゼン公式の流速係数を求める。

Q C=

0.279・D2.63・I0.54

ここに C:流速係数

Q:流量(m3/s)

D:管内径(m)

I:動水勾配 = 圧力差(m)/測定区間延長(m)

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参-82

測定計測時間や測定回数などは、使用する計測機器に依存するので、計測機器の使用方

法に従う。

3)留意点

管内粗度は設計流量(最大流量)と同程度の流量が流れている時でなければ正しい数値を

得られない。したがって、かんがいピーク時に安定した流量で調査が可能で、かつ経年的な

把握が可能な施設では有効と考えられるが、それ以外の施設では有効なデータを得ることが

難しい。管内粗度調査の実施可否の検討に当たっては、これらの点に十分留意する。

Ⅰ-④ C/S マクロセル腐食調査〔断水不要、対象:SP〕

1)目的

鋼管における漏水要因の大部分を占める C/S マクロセル腐食の可能性を判定する。

2)調査方法

分水工や制水弁室等構造物付近で、管対地電位調査等の配管と鉄筋の電気的接触(メタル

タッチ)の調査や土壌比抵抗率の調査等を行い、C/S(コンクリート/土壌)マクロセル腐食

を生じる可能性について調査する。

調査結果を総合して C/S マクロセル腐食の可能性が高いと判断される場合は、パイプライ

ン周囲の開削調査実施の可否を含め、詳細調査を検討する。

○ C/S マクロセル調査の例

・管対地電位の測定(P/S)(鉄筋からリード線を取り出せない場合)

・配管と鉄筋の電位差及び抵抗測定(鉄筋からリード線が取り出せる場合)

・仮通電試験

・土壌比抵抗率の測定

・各種土壌調査(Ⅰ-⑥ミクロセル腐食調査と兼ねて行う)

それぞれの詳細の調査方法や判断基準については、日本水道鋼管協会規格「マクロセ

ル腐食防食指針」(平成 20 年 3 月 14 日改正)等を参考とする。

3)留意点

これらの調査は、メタルタッチの有無や土壌の状態を把握するのみの調査であり、マクロ

セル腐食の可能性の大小を判定するだけに留まるものである。よって、たとえこれらの調査

結果が基準値を超えていたとしても、マクロセル腐食が進んでいないケースも多いことに留

意する必要がある。

Ⅰ-⑤ 電食調査〔断水不要、対象:SP〕

1)目的

外部電気設備からの漏洩電流による電食の可能性を判定する。

2)調査方法

直流電気鉄道や電気防食施設の近傍で地表面電位勾配測定(S/S)や管対地電位測定(P/S)を

行い、測定結果から電食の可能性を評価する。

3)留意点

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参-83

電食調査に先行して直流電気鉄道や電気防食施設等の調査を行う必要がある。

Ⅰ-⑥ 土壌調査(ミクロセル腐食等調査)〔断水不要、対象:SP、DCIP〕

1)目的

鉄鋼系管路のミクロセル腐食や通気差マクロセル等の要因となる土壌等の状態を把握す

る。

2)調査方法

土壌の腐食評価については、埋設管周辺の土壌を採取して室内試験により土壌の腐食性因

子(比抵抗、PH 値、酸化還元電位、水分、硫化物等)を測定し、土壌比抵抗率測定結果と合

わせて腐食性の有無を判断する。これらの結果は、DIN-50929 またはアメリカ国家規格 ANSI

A21.5 で評価する。

また、埋設管周辺の地下水の状態(乾湿をまたぐ管:Ⅰ-⑦と兼ねて行う)や土壌の構成(異

種土壌を跨ぐ管)等についても可能ならば把握し、通気差マクロセルの可能性を検討する。

詳細の調査方法や判断基準については、日本水道鋼管協会規格「マクロセル腐食防食指針」

(日本水道鋼管協会:平成 20 年 3 月 14 日改正)、鋼管路の診断及び更新・更生計画策定マニ

ュアル((財)水道技術研究センター:平成 15 年 12 月 6 日)等を参考とする。

3)留意点

調査区間は埋設管の施工年および埋戻土の土質が同じ範囲で選定するのが望ましい。

Ⅰ-⑦ 地下水調査

1)目的

管外面の腐食の要因となる地下水について、水位や水質等を把握する。

2)試験方法

埋設管近傍の地下水を採取し、各種パラメータを分析する。

主なパラメータは、侵食性遊離炭酸、硫酸イオン、塩素イオン、PH、酸化還元電位、含水

比、硫化物の有無、硫黄含有量などがある。また、併せて土壌調査を実施した場合は、これ

らの結果を結合して、環境要因による劣化の有無を推測する。

なお、PC 管のカバーコートモルタルの劣化が懸念される箇所として、水質については侵食

性遊離炭酸 20mg/l 以上、硫酸イオンまたは塩素イオンが 200mg/l 以上を目安としている事例

がある。(水島ら、水土の知 76-3,pp.35~39,2008)

3)留意点

サンプル採取は極力誤差の少ない手法で行う。

地下水の供給源や、年間を通じた水位の変動にも留意する必要がある。

Ⅰ-⑧ 管内カメラ調査〔断水、対象:全管種、小口径パイプライン〕

1)目的

小口径や断水が出来ないパイプライン等、管内直接目視が出来ない施設において、管内

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参-84

の状況を把握する。

2)調査方法

カメラを管内に挿入し、管内状況(モルタルや内面塗装の劣化、発錆状況、堆積物)や

管内排水直後の外水の管内への漏水状況、継手の状況等を観察する。

3)留意点

カメラ調査については、視界はかなり限定され、観察できる範囲も限定されることが多

いため、概略の把握に留まるケースが多い。また、水が濁っている場合は、観察が困難で

ある。

管内カメラ調査の実施可否の検討に当たっては、これらの点に十分留意されたい。

Ⅱ.直接的定量調査(管内からの調査)

口径φ800 ㎜以上の管路で、断水調査が可能な場合は、管内面調査の実施を検討する。なお、

得られる調査結果と費用のバランスを十分に考慮して実施の可否を決定する。

調査位置は、分水工や調圧水槽等、調査員が管内に進入しやすい場所を選定するとよい。な

お、酸欠対策には十分な注意を払うことが必要である。

写真 3-1 管内面調査

Ⅱ-① ひび割れ状況調査方法

1)目的・調査方法

管内目視によりひび割れ状況の調査を行う。対象とする調査箇所は、予め選定した現

地(定点)観測地点について実施する。ひび割れ調査は管路内の目視によりひびわれ程

度、形状、範囲を調査するものである。管路内面に発生しているひび割れ、剥離、剥落

を観察し、ひび割れ状況をデジタルカメラで撮影する。ひび割れの形状についてはスケ

ッチし図面に記録する。また、ひび割れ幅はクラックゲージで測定し記録する。

表 3-5 ひび割れ調査内容・方法

調査項目 調査方法 対象管種

ひび割れ状況 写真撮影 RC,PC、ACP、FRPM

ひび割れの形状 スケッチ、写真撮影 〃

ひび割れ幅 ゲージ 〃

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参-85

2)留意点

パイプラインにおいてひび割れが発見されることはまれであるが、ひび割れがあった場合

は、即破損事故につながる可能性があるため、注意深く観察する必要がある。

Ⅱ-② 蛇行、沈下調査方法

1)目的・調査方法

蛇行、沈下状況調査は、管路内の目視により蛇行、沈下が発生していないか調査する

ものである。残留水の一部滞留など、明らかな変状が見られた場合は図面上に記録し、

個別調査(測量)の対象とする。

Ⅱ-③ たわみ量調査方法

1)目的・調査方法

縦横比を直接計測して、たわみ量を計測する。たわみ量は、埋設管路の内径をメジャー等

で縦横 2ヶ所計測し、基準口径と埋設管の内径の差により算出される(図 3-6参照)。たわみ

量より、基準口径に対するたわみ率を算出し、たわみ量の経年変化を記録する。なお、たわ

み率 5%を超える箇所を特定し、水理機能(通水機能)上の問題がないかどうか、構造的な

問題がないかどうかの個別調査を実施する。

図 3-6 たわみ量の測定

次式でたわみ量・たわみ率を算定する。

水平たわみ量 = [2R -(Dh+t)](mm)

鉛直たわみ量 = [2R -(Dv+t)](mm)

水平たわみ率 = 水平たわみ量/2R×100(%)

鉛直たわみ率 = 鉛直たわみ量/2R×100(%)

R:管厚中心半径を示す。

Ⅱ-④ 内面塗装・腐食調査方法

1)目的・調査方法

L/2 L/2

Dh

Dv

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参-86

管路表面に発生している析出物、錆汁、鉄筋露出、漏水、浮き、豆板等を観察し、腐食状

況をデジタルカメラで撮影、腐食箇所を図面に記録し、腐食範囲(1 ㎡当りの腐食面積)の

経年変化を記録する。腐食状況が明確な場合は個別調査を実施する。

Ⅱ-⑤ 発錆状況調査方法

1)目的・調査方法

塗膜全体の面積に対する塗装欠陥(ふくれ、割れ)を含む錆の発生面積の割合(%)を目

視により調べ、塗膜の劣化度合を評価する。発錆状況調査において、結果の評価に用いられ

る指標は次のとおりである。

表 3-6 錆の標準図面積換算表

錆発生面積の率 1m2における錆発生面積

0.03% 3cm2(約 1.7cm角の錆)

0.3% 30cm2(約 5.5cm角の錆)

3% 300cm2(約 17.5cm角の錆)

5% 500cm2(約 22.4cm角の錆)

10% 1,000cm2(約 32.0cm角の錆)

表 3-7 錆の評価点

評価 発生状況

発生面積 外観状況

経過

観察

0~0.03%

異常なし。誰が見ても外観的に錆が認められないか、錆

らしきものがあっても無視し得る程度のもの

0.03~0.3%

僅かに錆が見られる。錆が観察される部分以外の塗膜の

防食性能はほぼ維持されていると思われる状態。

個別

調査

実施

0.3~5.0%

明らかに錆が見られる。誰が見ても発錆部分が多く何ら

かの処置を施さなければならない状態。

>5.0%

見かけ上ほぼ前面にわたって錆がみられる。

早急に塗料を塗り直さなければならない状態。

Ⅱ-⑥ 継手間隔調査方法

1)目的・調査方法

継手間隔は、管路内部からジョイント間隔、ゴム輪の位置を管路の継手部にスケール、

フィラーゲージを当てて計測し、継ぎ手間隔の経年変化を記録する。継ぎ手間隔の経年変

化を記録するとともに、「土地改良工事施工管理基準」に定められた基準値を超えている

場合は個別調査を実施する。

2)留意点

継手間隔の経年変化の把握により、管の変位の有無等が把握出来るが、継手間隔の広さが

漏水に直結するものではないことに留意して結果を取り扱う必要がある。

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参-87

Ⅱ-⑦ 管厚測定〔対象:SP、DCIP、RC〕

1)目的

腐食性土壌に埋設された SP,DCIP や、侵食性遊離炭酸を多く含む地下水に晒される PC 管

等、管厚の減少等の劣化が懸念される管を中心として、腐食深さを測定して残存管厚を算出

することにより、管体劣化診断と耐荷機能評価に反映させる。

2)調査方法

PC 管に対する調査は、管内面から超音波探査器で管厚を測定し、カバーコートモルタルの

腐食状況を算定する。管内作業となるので、大口径でかつ断水が必要である。

鋼系管路においては、パイプラインの一部を掘削して管表面の腐食部分の錆を削り取り、

管外面から腐食深さを測定器具(デプスゲージ、超音波厚さ計等)により測定し、規格管厚

と使用年数から残存管厚や破孔期間を算定する。

3)留意点

パイプラインの一部の測定値から全パイプラインの腐食状況を推定することになるので、

試験箇所の選定や箇所数に留意する必要がある。

鉄鋼系管路においては、管の劣化メカニズムとして、管全体の厚さが一様に薄くなって漏

水するのではなく、一部の孔食が進んで漏水するというケースが多いことに留意して結果を

取り扱う必要がある。

Ⅱ-⑨ 継目試験〔対象:SP を除く管種〕

1)目的

PC 管等で最も多い漏水要因となっている継手に対し、水密性の検査を行う。

2)試験方法

管の内面からテストバンドをセットして静水圧まで加圧し、5 分間放置した後の水圧が 80

%以下に低下すれば水密性不良と判定する。

3)留意点

管内面からの試験になるので管径φ900 ㎜以上で、分割したテストバンドが人孔管から搬

入できる施設でなければならない。

なお、得られる調査結果と費用のバランスを十分に考慮して実施の可否を決定する。

図 3-7 テストバンドの機構の概略

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参-88

Ⅲ.詳細調査(試掘等調査)

詳細調査には掘削や供試管の採取を伴い、一定の断水期間が必要となる調査項目が含まれる。

また、管種により調査項目が異なるので、施設全体の機能状況を踏まえた上で、より有効な調

査を実施する必要がある。

Ⅲ-② 管体の力学試験〔対象:ACP、PC、RC、FRPM〕

1)目的

管体の力学試験は、管体の強度低下が懸念される場合に実施する。力学試験の結果は、耐

荷機能評価等に反映させる。

2)試験方法

調査対象区間のパイプラインを掘削して供試管を採取し、ACP は旧 JIS A 5301 に準じた曲

げ試験、水圧破裂試験、環片圧壊試験を実施する。PC および RC は JIS A 5303 の外圧試験を

実施する。FRPM 管については、外圧試験(JIS A 5350)、内圧試験、管体ガラス繊維配向性確

認試験、ガラス繊維使用量確認試験等を行う。

3)留意点

供試管は調査対象区間を代表させる箇所から採取するのが望ましい。ACP の供試管の採取、

試験にあたっては、以下の ACP に係る工事、廃棄に関する法令等を遵守する必要がある。ま

た、供試管の採取に際しては、採取後の復旧方法も念頭に置く必要がある。

【ACP に係る工事、廃棄に関する法令等】

・全国生活衛生関係主管課長会議資料(厚生省水道環境部、S63.2.2)による指導要領

・都道府県水道担当係長会議資料(厚生省水道整備課、S63.5.24)による指導要領

・「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」

・アスベスト(石綿)廃棄物の処理について(通知)(環水企第 317 号、衛産第 34 号、

S62.10.26)

・アスベスト(石綿)廃棄物の処理について(通知)(衛産第 35 号、S.62.10.26)

Ⅲ-③ クリープ試験〔対象:SP、DCIP、FRPM〕

1)目的

管体の長期耐圧性能を調査する代表的な試験(ISO 1167 に規定)であり、品質特性評価に

用いる。また、経年管のクリープ強度と設計基準強度を比較して、強度低下の程度を判断す

ることが可能である。経年管のクリープ強度を調査し、ブランク品のクリープ線図に対して

平行移動できれば寿命を推定することが可能である。ただし、疲労強度で言われているマイ

ナー側(累積損傷側)の成立が前提となる。

2)調査方法

試験は、ISO 1167 内圧クリープ試験に準拠して行う。評価対象である管材のクリープ破壊

時間が、ブランク品の基準クリープ線図と同等であれば物理的な劣化は生じていないと評価

できる。

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参-89

ⅰ) 試験装置は下図に示すとおり恒温水槽と制御装置により、設定温度と内圧下限値を

保つように制御される。

ⅱ) 長さ約 80cm 以上の管状試験片に 20℃の温度の水または不活性ガスを封入し、所定

の時間内で管が破壊するように設定応力に相当する内圧を負荷し破壊時間を求める。

図 3-8 内圧クリープ試験装置

Ⅲ-④ 管体の化学試験〔対象:ACP、PC、RC〕

1)目的

管体の化学試験は中性化または管材劣化が懸念される場合に実施する。化学試験の結果は

ACP、PC、RC とも管体劣化診断に反映させる。PC、RC における塩化物イオン含有量は力学試

験における強度低下原因の推定に用いる。

2)試験方法

管体の力学試験に用いた供試管で化学試験を行う。中性化試験は1%フェノールフタレイ

ン溶液(JIS K 8001)を用いて中性化深さの測定を行う。中性化深さは ACP と RC では管体断

面を PC はカバーコートモルタルを対象とする。PC はカバーコートモルタル厚も測定する。

ACP における比重および吸水率試験は JIS A 1110 に準じ、PC と RC の塩化物イオン含有量は

JCI-SC4 による。

3)留意点

供試管は調査対象区間を代表させる箇所から採取するのが望ましい。ACP の供試管の採取、

試験にあたっては、前述の関係法令等に留意する。

Ⅲ-⑤ 継手ゴム輪の劣化試験〔対象:SP を除く管種〕

1)目的

継手部のゴム輪の劣化は水密性不良の原因になるので、ゴムの物性やバクテリアによる食

害等を調査して劣化の程度を評価し、パイプラインの機能評価における継手ゴム劣化診断に

反映させる。

2)試験方法

供試管からゴム輪を採取し、ゴム材質の分析や引張、老化試験等の物性試験(JIS K 6353)

を行う。ゴム材質に天然ゴムが使われている場合には、バクテリアによる食害の恐れがある

ので、目視調査やゴム重量の減少量を測定して食害の有無を判定する。

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参-90

3)留意点

バクテリアによる食害調査は、目視調査以外に施工当時のゴム輪を再現して同一埋設環境

下に放置して食害の有無を確認する方法もあるが、これには時間と労力が伴うので、採用に

際しては十分な検討が必要である。

JIS K 6353 水道用ゴムの 1982 年の改正において、天然ゴムに対する微生物(バクテリア)

による損傷事例を踏まえ、微生物抵抗性の高い合成ゴムの使用が望ましいとされている。

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参-91

3.3 パイプラインの機能診断調査方法の総括

現地調査における詳細調査は、施設種類、求められるデータ、精度に応じて適切な選択が必要

となる。パイプラインに適用される機能診断手法をとりまとめたものを以下に示す。

表 3-8 パイプラインの機能診断調査方法総括表(1/3)

RC PC ACP DCIP SP PVC FRPM

①-1  曲げ試験  旧JISA5301  曲げ強度(N/m2) ○φ50~φ300

程度

①-2  水圧破裂試験  旧JISA530  JISK6742  引張強度(N/m2) ○ ○φ50~φ300

程度

①-3  環片圧壊試験  旧JISA5301  圧壊強度(N/m2) ○φ50~φ300

程度

①-4  外圧試験  JISA5372  JISA5373  ひび割れ荷重,破壊荷重(kN/m2) ○ ○ -

①-5  引張試験  JISK6742、JISK6743、JISG6502  引張強度(kN/m2) ○ ○ -

①-6  靱性試験  BS3505  破壊靱性値(Mpa√m) ○ -

①-7  偏平試験  JIS6742 外径の1/2まで偏平させた時の異

 常の有無○ -

①-8  ビカット軟化温度試験  JISK7206

 ビカット軟化度(VST)

 :針状圧子が表面から1㎜侵入

 した時の伝熱媒体の温度

○ -

①-9  ゲル化度測定  ゲル化度(%) ○ -

①-10  内圧試験  JISA5372 JISA5373  漏水、ひび割れの有無 ○ ○ ○ -

②-1  中性化試験 フェノールフタレンJISK8001  中性化率(%) ○ ○ ○ ○ -

②-2  比重および吸水率試験  JISA1110 表乾比重(%) 絶乾比重(%)

 吸収率(%)○

φ50~φ300

程度

②-3  塩化物イオン含有量  JCI-SC4  塩化物イオン濃度 ○ ○ -

③-1  音聴調査  漏水箇所 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

φ50~φ600

土破り2.0m

未満

③-2  相関式調査  漏水箇所 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

③-3 管路選別調査

 (リークゾーンテエスト工法) 漏水箇所 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

③-4  水圧調査  漏水箇所 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

④-1  腐食深さ (デプスゲージによる方法)  腐食深さ、最大浸食度 ○ ○ -

④-2  管厚測定 (超音波厚み計による方法)  管厚、最小残存管厚比 ○ ○ -

④-3  管厚測定 (γ線管厚測定センサーによる方法)  管厚、最小残存管厚比 ○ ○ ○鋼管はt=20㎜

以下

④-4  腐食深さ (型取りゲージによる方法)  腐食深さ、最大浸食度 ○ -

⑤-1  土壌調査

 pH、土壌の種類や色、土壌抵抗

 率、Redox(酸化還元)電位、含水

 比、硫化物の有無、硫黄含有率、

 土の密度、土の粒度

○ -

⑤-1-1  pH  pH ○ -

⑤-1-2  土壌抵抗率 (土壌箱による方法)  土壌抵抗率(Ω㎝) ○ -

⑤-1-3  土壌抵抗率 (土壌箱による方法)  土壌抵抗率(㎝) ○ -

得られるデータ

制約条件

(適応口径、

土破り、管厚

等)

適 応 管 種

③漏水探知調査

④管厚測定調査

⑤ミクロセル腐食調査

①管体の力学試験

②管体の化学試験

番号 調査項目および試験方法

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参-92

表 3-9 パイプラインの機能診断調査方法総括表(2/3)

RC PC ACP DCIP SP PVC FRPM

⑥-1  管対地電位 (pipe-to-soil potential : P/S)  管対地電位 (mV) →電位勾配 ○ -

⑦-1  地表面電位勾配S/S  地表面電位勾配 (mV/m) ○ -

⑦-2  仮通電テスト

 所要防食電流、塗膜抵抗測定、絶縁

 性のチェック、塗装損傷部、接触箇

 所、陽極効果範囲

○仮電力が得ら

れる場所

⑦-3  レール対地電圧(R/S)  レール対地電圧 ○ -

⑧-1  クリープ試験 (PVC) ISO1167  クリープ破壊時間 ○ -

⑨-1  流量・圧力測定  流速係数 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

⑩-1  ビデオカメラ調査 管内状況、外水の管内への漏水、継

 目間隔、たわみ、たるみ、蛇行○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ φ200以上

⑩-2  内視鏡調査 管内状況、外水の管内への漏水、継

 目間隔、たわみ、たるみ、蛇行○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ φ200以上

⑩-3  調査ロボット調査 管内状況、外水の管内への漏水、継

 目間隔、たわみ、たるみ、蛇行○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ φ200以上

⑩-4  CCDカメラ調査 管内状況、外水の管内への漏水、継

 目間隔、たわみ、たるみ、蛇行○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ φ200以上

⑪継目調査

⑪-1  水圧試験(テストバンド)  水密性の判定 ○ ○ ○ ○ ○ ○ φ900以上

⑪-2  胴付間隔 ・ x 線による方法  胴付間隔 (mm) ○ -

⑪-3  胴付間隔 ・ 超音波による方法  胴付間隔 (mm) ○ -

⑪-4  胴付間隔 ・ テレビカメラによる方法  胴付間隔 (mm) ○ -

⑪-5  溶接継目 x 線透過試験  きずの分類 ○ -

⑪-6  接着状況調査(超音波センサーによる方法)  接着率 (%) ○ -

⑪-7  接着強度試験  接着強度 (KN/m2) ○ -

⑪-8  現場溶接部の超音波探傷試験 ○ -

⑫-1  継手ゴム輪の劣化試験  JISK6353

 引張試験 (KN/m2)、伸び率 (%)、

 硬さ (Hs) 、永久伸び率、

 ゴム質、バクテリアによる食害の有無

○ ○ ○ ○ ○ ○ -

⑬-1  管内圧力変化試験  水撃圧 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

⑭-1  ひび割れ状況調査  ひび割幅 (mm) ○ ○ ○ ○ φ800以上

⑮-1  空洞調査 (地中レーダー探査装置)  漏水による空洞 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

制約条件

(適応口径、

土破り、管厚

等)

⑩管内カメラ調査

⑫継手ゴム輪の劣化試験

⑥C/Sマクロセル腐食調査

⑦電食調査

⑧クリープ試験

⑨管内粗度調査

適 応 管 種

⑬管内圧力変化試験

⑭ひび割状況調査

⑮漏水・湧水状況調査

番号 調査項目および試験方法 得られるデータ

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参-93

表 3-10 パイプラインの機能診断調査方法総括表(3/3)

PC RC ACP DCIP SP PVC FRPM

⑯  たるみ、蛇行、沈下状況調査  管路のたるみ、蛇行、沈下 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ φ800以上

⑰  たわみ量測定  たわみ(㎜)、たわみ率(%) ○ ○ ○ ○ φ800以上

内面  膜厚 (㎜) ○ ○φ800以上

t=15~20mm

外面  膜厚 (㎜) ○ t=15~20mm

内面  付着残存率 (%) ○ ○ φ800以上

外面  付着残存率 (%) ○ ○ -

内面  付着力 (kN/m2) ○ ○ φ800以上

外面  付着力 (kN/m3) ○ ○ -

内面  抵抗 (Ω) 、容量 (F) ○ ○ φ800以上

外面  抵抗 (Ω) 、容量 (F) ○ ○ -

⑱-5  塗膜装損傷調査 (車輪電極法)  電位を検出→損傷箇所 ○ ○ -

⑲-1  防錆性試験  腐食の有無 ○ ○ φ800以上

⑲-2  錆の発生程度の調査  発錆発生面積率 (%) ○ ○ φ800以上

⑳  継手間隔調査  継手間隔(㎜) ○ ○ ○ ○ φ800以上

21  堆砂 ・ ゴミ状況調査  堆砂 ・ ゴミの量 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ φ800以上

22-1  漏水量調査  漏水量 (m3/日 ・ km ・ cm) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

22-2  水張試験  減水量 (1/日 ・ km ・ cm) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

23  土壌調査  ⑤-1と同様 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

24-1  水質調査

 pH、水温、抵抗比(Ω ・ cm)、塩素イ

 オン含有量(mg/1)、硫酸イオン含有

 量(mg/1)、蒸発残留物(mg/1)、アル

 カリ度(mg/1)、酸度(mg/1)、カル

 シウム硬度(mg/1)、残留塩素濃度測定、

 鉄分溶出測定

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

25-1  断面閉塞調査 (γ線による方法)  通水断面比 ○ ○

t=20mm以下

普通鋳鉄φ500

以下

高級鋳鉄φ900

以下

25-2  断面閉塞調査 (x線による方法)  通水断面比 ○ ○ φ500以下

25-3  断面閉塞調査 (堀上管による方法)  通水断面比 ○ ○ -

26-1  外観目視調査 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

27 埋設状況調査

27-1  地中レーダー探査  埋設位置、埋設深度の確認 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ -

27-2  金属管探査  金属管の位置、埋設深度の確認 ○ ○ -

27-3  非金属管探査  非金属管の位置 ○ ○ ○ ○ ○ -

26 外観調査

⑱-1  膜厚の測定

⑱-2

⑱-3

⑱-4

 付着力調査 (碁盤目試験)

 付着力調査 (引張付着力試験)

 ISO4624、 DIN532332

 塗膜劣化度調査

 (インピーダンス試験)

22 漏水調査

23 土壌調査

24 水質調査

25 通水断面積調査

番号 得られるデータ

制約条件

(適応口径、

土破り、管厚

等)

適 応 管 種

⑱内外面塗装 ・ 腐食状況調査

調査項目および試験方法

⑯たるみ、蛇行、沈下状況調査

⑰たわみ量測定

⑲発錆状況調査

⑳継手間隔調査

21 堆砂 ・ ゴミ状況調査