日本消化器病学会 胆石症診療 ガイドライン2016(...

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日本消化器病学会 胆石症診療ガイドライン 2016(改訂第 2 版) Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Cholelithiasis 2016(2nd Edition

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日本消化器病学会胆石症診療ガイドライン 2016(改訂第 2版)

Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Cholelithiasis 2016(2nd Edition)

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日本消化器病学会胆石症診療ガイドライン作成・評価委員会

は,胆石症診療ガイドラインの内容については責任を負うが,実際

の臨床行為の結果については各担当医が負うべきである.

胆石症診療ガイドラインの内容は,一般論として臨床現場の意思

決定を支援するものであり,医療訴訟等の資料となるものではな

い.

日本消化器病学会 2016 年 1 月 1 日

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— iv —

日本消化器病学会は,2005 年に当時の理事長であった跡見 裕先生の発議によって,Evidence-Based Medicine(EBM)の手法に則ったガイドラインの作成を行うことを決定し,3年余をかけ,2009〜2010 年に消化器 6疾患のガイドライン(第一次ガイドライン)を完成・上梓した.6疾患とは,胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,肝硬変,クローン病,胆石症,慢性膵炎であり,それまでガイドラインが作成されていない疾患で,日常臨床で診療する機会の多いものを重視し,財団評議員に行ったアンケート調査で多数意見となったものが選ばれた.2006 年の第 92 回日本消化器病学会総会の際に第 1回ガイドライン委員会が開催され,文献検索範囲,文献採用基準,エビデンスレベル,推奨グレードなど EBM手法の統一性についての合意と,クリニカルクエスチョン(CQ)の設定など基本的な枠組みが合意され,作成作業が開始された.6疾患のガイドライン作成では,推奨の強さのグレード決定にMinds(Medical Information Network Dis-tribution Service)システムを一部改変し,より臨床に則した日本消化器病学会独自の基準を用いた.また,ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)が当時,社会的問題となっており,EBM専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員の COIを公開した.菅野健太郎前理事長のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として行われたガイドライン作成は先進的な取り組みであり,わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価できる.日本消化器病学会は,その後,6疾患について「患者さんと家族のためのガイドブック」も編集・出版し,治療を受ける側の目線で解説書を作成することによって,一般市民がこれら消化器の代表的疾患への理解を深めるうえで役立ったと考えている.第一次ガイドライン作成を通じて,日本消化器病学会は消化器関連の Common Diseaseに関

するガイドラインの必要性と重要性の認識を強め,さらに整備する必要度の高い疾患について評議員にアンケートを行い,2011 年から機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,NAFLD/NASHの 4疾患についても,診療ガイドライン(第二次ガイドライン)の作成を開始した.一方では,これら 4疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年には,第一次ガイドラインも作成後 5年が経過するため,いわゆる Sunset Rule(日没ルール:作成から長期経過したガイドラインは妥当性が担保できないため,退場させる取り決め)に従い,先行 6疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行うこととなった.2011 年 11 月 9日に 6疾患の第1回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.改訂版では第二次ガイドライン作成と同様,国際的主流となっている GRADE(The Grading of Recommendations Assessment,Development and Evaluation)システムの考え方を取り入れて推奨の強さを決定することとした.このシステムは,単にエビデンスに基づいて推奨の強さを決めるのではなく,患者さんへの有益性,費用まで考慮し,たとえ比較対照試験であってもその内容を精査・吟味してエビデンスレベルを決定するなど,アウトカムにとって有用かどうかを重視する立場に立っており,患者さんの立場により則したガイドライン作成に有用と考えられた.また,完成後に改訂版は Journal

of Gastroenterologyに掲載することが予定されており,世界的趨勢である GRADEシステムの考え方を取り入れることで国際的ガイドラインとしての位置づけを強化する狙いもあった.

日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

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日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

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最新のエビデンスを網羅した改訂版は,初版に比べて内容的により充実し,記載の精度も高まるものと期待している.最後に,ガイドライン委員会の前担当理事として多大なご尽力をいただいた木下芳一理事,

渡辺 守理事,ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生,刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい.

2016 年 1月

日本消化器病学会理事長

下瀬川 徹

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委員長 三輪 洋人 兵庫医科大学内科学消化管科委員 荒川 哲男 大阪市立大学消化器内科学

上野 文昭 大船中央病院木下 芳一 島根大学第二内科西原 利治 高知大学消化器内科坂本 長逸 日本医科大学,医療法人社団行徳会下瀬川 徹 東北大学消化器病態学白鳥 敬子 東京女子医科大学消化器内科杉原 健一 光仁会第一病院田妻  進 広島大学総合内科・総合診療科田中 信治 広島大学内視鏡診療科坪内 博仁 鹿児島市立病院中山 健夫 京都大学健康情報学二村 雄次 愛知県がんセンター野口 善令 名古屋第二赤十字病院総合内科福井  博 奈良県立医科大学福土  審 東北大学大学院行動医学分野・東北大学病院心療内科本郷 道夫 公立黒川病院松井 敏幸 福岡大学筑紫病院消化器内科森實 敏夫 日本医療機能評価機構山口直比古 日本医学図書館協会個人会員吉田 雅博 国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院人工透析・一般外科芳野 純治 藤田保健衛生大学渡辺 純夫 順天堂大学消化器内科渡辺  守 東京医科歯科大学消化器内科

オブザーバー 菅野健太郎 自治医科大学

統括委員会一覧

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— vii —

協力学会:日本消化器内視鏡学会,日本胆道学会

■ 作成委員会委員長 田妻  進 広島大学総合内科・総合診療科副委員長 海野 倫明 東北大学肝胆膵外科委員 五十嵐良典 東邦大学医療センター大森病院消化器内科

乾  和郎 藤田保健衛生大学坂文種報德會病院消化器内科内山 和久 大阪医科大学一般・消化器外科甲斐 真弘 宮崎市郡医師会病院外科露口 利夫 千葉大学消化器内科真口 宏介 手稲渓仁会病院消化器病センター森  俊幸 杏林大学消化器・一般外科山口 幸二 藤元総合病院外科良沢 昭銘 埼玉医科大学国際医療センター消化器内科

■ 評価委員会委員長 二村 雄次 愛知県がんセンター副委員長 藤田 直孝 みやぎ健診プラザ委員 窪田 敬一 獨協医科大学第二外科

正田 純一 筑波大学疾患制御医学専攻分子スポーツ医学田端 正己 松阪中央総合病院外科峯  徹哉 東海大学消化器内科

作成協力者 大塚 英郎 東北大学肝胆膵外科鈴木  裕 杏林大学消化器・一般外科田場久美子 埼玉医科大学国際医療センター消化器内科三好 広尚 藤田保健衛生大学坂文種報德會病院消化器内科横山 政明 杏林大学消化器・一般外科

胆石症診療ガイドライン委員会

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1.改訂の目的初版「胆石症診療ガイドライン」は 1983 年から 2007 年に発表された文献エビデンスをもと

に,「1.疫学・病態」,「2.診断」,「3.治療(胆囊結石,総胆管結石,肝内結石を独立して項目立て)」,「4.予後・合併症」の章立てにより作成し,2009 年に刊行された.しかしながら,項目によっては検索期間中のエビデンスに乏しく,古典的なものを参照せざるを得ないものも多く,特に「1.疫学・病態」の章はその傾向が強かった.その後,内視鏡関連のデバイスなど医療機器の進歩は目覚ましく,疫学研究成果も国内外で加わってきたこともあり,新たな情報をもとにガイドラインの改訂にふさわしい時期を迎えたことから,日本消化器内視鏡学会や日本胆道学会の協力のもとに実臨床に即した「胆石症診療ガイドライン 2016(改訂第 2版)」を作成することとした.

2.改訂ガイドライン作成の実際1)診療ガイドライン改訂委員会の設立日本消化器病学会主導の診療ガイドライン作成は,2011 年 7 月 1日の統括委員会において先

行 6疾患(胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,クローン病,肝硬変,胆石症,慢性膵炎)の改訂が決定され,同年 11 月 9日の第 1回改訂委員会から本格的に作業が開始された.胆石症診療ガイドラインについては,2012 年 7 月 27 日に第 1回[改訂]胆石症作成・評価合同委員会,2012年 9 月 21 日に第 2回[改訂]胆石症作成・評価合同委員会を経て,委員会の陣容と作業工程を共有した.2)作成方法�今回の改訂では GRADEシステムを採用して文献検索とその評価が行われた.委員会の構成メンバーは半数が新たに加入するとともに,作成委員会と評価委員会も初版の構成から役割分担を刷新して客観性の担保に配慮した.

�まず第一に,CQを「1.疫学・病態」12 件,「2.診断」6件,「3.治療」20 件,「4.予後・合併症」5件に整理した.「3.治療」はさらに,「胆囊結石」9件,「総胆管結石」4件(内視鏡的治療はさらに 6項目に細分化),「肝内結石」7件に項目立てを行った.

�次に,文献検索は初版の検索に加えて,2007 年以降 2012 年 6 月までの文献に関して検索が行われ,構造化抄録が作成されたのちに RCTについてはバイアスリスク表を参考にしてエビデンスレベルを決定した.さらに検索期間外(1982 年以前,2012 年 7 月以降)の文献も必要に応じて加えたうえで検索期間外であることを明記した.

�CQに対するステートメントの作成に際しては,関連する文献全体のエビデンスレベル(総体)の決定と推奨の強さの決定は作成委員会で議論を行い,そのうえで推奨の強さを示すとともに投票による最終合意率を明記した.

�それらを総括するフローチャートを,「1.診断」,「2.胆囊結石症治療」,「3.総胆管結石症治療」,「4.肝内結石症治療」ごとに作成した.

�その間,作成メンバーの一部に異動も発生して分担の見直しなどもあり,計 11 回という多

胆石症診療ガイドライン作成の手順

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胆石症診療ガイドライン作成の手順

— ix —

数の作成委員会を経て全体像が確定した(2012 年 11 月 21 日:第 1回,2013 年 5 月 24 日:第 2 回,2013 年 10 月 23 日:第 3 回,2014 年 3 月 13 日:第 4 回,2014 年 5 月 29 日:第5 回,2014 年 7 月 24 日:第 6 回,2014 年 8 月 26 日:第 7 回,2014 年 10 月 9 日:第 8回,2014 年 10 月 25 日:第 9 回,2015 年 4 月 10 日:第 10 回,2015 年 4 月 25 日:第 11回).

�最終工程として,評価委員会のチェックを経て修正した最終版を 2015 年 7 月 28 日〜8月11 日の期間で日本消化器病学会ホームページに掲載して,広く会員からパブリックコメントを求めたのち必要に応じて修正を加えた.

3.改訂ガイドラインの特徴目覚ましい進歩を遂げつつある内視鏡的治療や外科手技について診療現場環境に応じた柔軟

な選択肢が担保されるようにガイドライン改訂を行った.実臨床が必ずしも画一的ではない多様性を有することに配慮しつつ,フローチャートの形式で診療の手順も提示した.改訂診療ガイドラインの適切な活用による診療対応が期待される.

4.おわりに今回の改訂に際して,作成副委員長の海野倫明先生はじめ,五十嵐良典先生,乾 和郎先生,

内山和久先生,甲斐真弘先生,露口利夫先生,真口宏介先生,森 俊幸先生,山口幸二先生,良沢昭銘先生の各作成委員の先生方,評価委員長の二村雄次先生,評価副委員長の藤田直孝先生,窪田敬一先生,正田純一先生,田端正己先生,峯 徹哉先生の各評価委員の先生方,会議の調整や実際の運用など様々な事務作業にご尽力いただきました日本消化器病学会事務局ならびに南江堂の関係者のみなさまに心より感謝申し上げます.

2016 年 1月

日本消化器病学会胆石症診療ガイドライン作成委員長

田妻 進

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— x —

1.エビデンス収集初版で行われた系統的検索によって得られた論文に加え,今回新たに以下の作業を行ってエ

ビデンスを収集した.それぞれのクリニカルクエスチョン(CQ)からキーワードを抽出し,学術論文を収集した.

データベースは,英文論文はMEDLINE,Cochrane Libraryを用いて,日本語論文は医学中央雑誌を用いた.新規 CQについては 1983 年〜2012 年 6 月末,変更 CQについても同期間を文献検索の対象期間とし,初版と同じ CQについては 2008 年〜2012 年 6 月末を文献検索の対象期間とした.また,2012 年 7 月以降 2015 年 3 月までの重要かつ新しいエビデンスについては,検索期間外論文として文献に掲載した.各キーワードおよび検索式は日本消化器病学会ホームページに掲載する予定である.収集した論文のうち,ヒトに対して行われた臨床研究を採用し,動物実験や遺伝子研究に関

する論文は除外した.患者データに基づかない専門家個人の意見は参考にしたが,エビデンスとしては用いなかった.

2.エビデンス総体の評価方法1)各論文の評価:構造化抄録の作成各論文に対して,研究デザイン 1)(表1)を含め,論文情報を要約した構造化抄録を作成した.

さらに RCTや観察研究に対して,Cochrane Handbook 2)やMinds診療ガイドライン作成の手引き 1)のチェックリストを参考にしてバイアスのリスクを判定した(表2).総体としてのエビデンス評価は,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and

Evaluation)システム 3〜22)の考え方を参考にして評価し,CQ各項目に対する総体としてのエビデンスの質を決定し表記した(表3).2)アウトカムごと,研究デザインごとの蓄積された複数論文の総合評価

(1)初期評価:各研究デザイン群の評価

本ガイドライン作成方法

表 1 研究デザイン各文献へは下記9種類の「研究デザイン」を付記した. (1)メタ (システマティックレビュー /RCTのメタアナリシス) (2)ランダム (ランダム化比較試験) (3)非ランダム (非ランダム化比較試験) (4)コホート (分析疫学的研究(コホート研究)) (5)ケースコントロール (分析疫学的研究(症例対照研究)) (6)横断 (分析疫学的研究(横断研究)) (7)ケースシリーズ (記述研究(症例報告やケース・シリーズ)) (8)ガイドライン (診療ガイドライン) (9)(記載なし) (患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見は, 参考にしたが,エビデンスとしては用いないこととした)

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本ガイドライン作成方法

— xi —

�メタ群,ランダム群=「初期評価 A」�非ランダム群,コホート群,ケースコントロール群,横断群=「初期評価 C」�ケースシリーズ群=「初期評価 D」

(2)エビデンスレベルを下げる要因の有無の評価�研究の質にバイアスリスクがある�結果に非一貫性がある�エビデンスの非直接性がある�データが不精確である�出版バイアスの可能性が高い

(3)エビデンスレベルを上げる要因の有無の評価�大きな効果があり,交絡因子がない�用量–反応勾配がある�可能性のある交絡因子が,真の効果をより弱めている

(4)総合評価:最終的なエビデンスの質「A,B,C,D」を評価判定した.

表 2 バイアスリスク評価項目

選択バイアス

(1)ランダム系列生成詳細に記載されている

か(2)コンシールメント

組み入れる患者の隠蔽化がなされているか

実行バイアス (3)盲検化

検出バイアス (4)盲検化

症例減少バイアス

(5)ITT解析ITT 解析の原則を掲げて,追跡からの脱落者に対してその原則を遵守しているか

(6)アウトカム報告バイアス

 (解析における採用および除外データを含めて)(7)その他のバイアス

告・研究計画書に記載されているにもかかわらず,報告されていないアウトカムがないか

表3 エビデンスの質A:質の高いエビデンス(High)   真の効果がその効果推定値に近似していると確信できる.B:中程度の質のエビデンス(Moderate)   効果の推定値が中程度信頼できる.   真の効果は,効果の効果推定値におおよそ近いが,それが実質的に異なる可能性もある.C:質の低いエビデンス(Low)   効果推定値に対する信頼は限定的である.   真の効果は,効果の推定値と,実質的に異なるかもしれない.D:非常に質の低いエビデンス(Very Low)   効果推定値がほとんど信頼できない.   真の効果は,効果の推定値と実質的におおよそ異なりそうである.

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— xii —

3)エビデンスの質の定義方法エビデンスレベルは海外と日本で別の記載とせずに 1つとした.またエビデンスは複数文献

を統合・作成した統合レベル(body of evidence)とし,表3の A〜Dで表記した.4)メタアナリシスシステマティックレビューを行い,必要に応じてメタアナリシスを引用し,本文中に記載し

た.

また,1つ 1つのエビデンスに「保険適用あり」の記載はせず,保険適用不可の場合に,解説の中で明記した.

3.推奨の強さの決定以上の作業によって得られた結果をもとに,治療の推奨文章の案を作成提示した.次に,推

奨の強さを決めるためにコンセンサス会議を開催した.推奨の強さは,①エビデンスの確かさ,②患者の希望,③益と害,④コスト評価,の 4項目

を評価項目とした.コンセンサス形成方法は,Delphi変法,nominal group technique(NGT)法に準じて投票を用い,70%以上の賛成をもって決定とした.1回目で,結論が集約できないときは,各結果を公表し,日本の医療状況を加味して協議の上,投票を繰り返した.作成委員会は,この集計結果を総合して評価し,表4に示す推奨の強さを決定し,本文中の囲み内に明瞭に表記した.推奨の強さは「1:強い推奨」,「2:弱い推奨」の 2通りであるが,「強く推奨する」や「弱く

推奨する」という文言は馴染まないため,下記のとおり表記した.また,投票結果を「合意率」として推奨の強さの下段に括弧書きで記載した.推奨の強さを決定できなかった場合や,疫学・病態などの,CQおよびステートメント内容が推奨文章ではない場合は,推奨の強さを「なし」と記載した.

4.本ガイドラインの対象1)利用対象:一般臨床医2)診療対象:成人の患者を対象とした.小児は対象外とした.

5.改訂について本ガイドラインは改訂第 2版であり,今後も日本消化器病学会ガイドライン委員会を中心と

して継続的な改訂を予定している.

表 4 推奨の強さ推奨度

1(強い推奨)“ 実施する ” ことを推奨する“実施しない ”ことを推奨する

2(弱い推奨)“ 実施する ” ことを提案する“実施しない ”ことを提案する

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本ガイドライン作成方法

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6.作成費用について本ガイドラインの作成はすべて日本消化器病学会が費用を負担しており,他企業からの資金

提供はない.

7.利益相反について1)日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員・各ガイドライン作

成・評価委員と企業との経済的な関係につき,各委員から利益相反状況の申告を得た(詳細は「利益相反に関して」に記す).

2)本ガイドラインでは,利益相反への対応として,協力学会の参加によって意見の偏りを防ぎ,さらに委員による投票によって公平性を担保するように努めた.また,出版前のパブリックコメントを学会員から受け付けることで幅広い意見を収集した.

8.ガイドライン普及と活用促進のための工夫1)フローチャートを提示して,利用者の利便性を高めた.2)書籍として出版するとともに,インターネット掲載を行う予定である.

・日本消化器病学会ホームページ・日本医療機能評価機構 EBM医療情報事業(Minds)ホームページ

■引用文献1) 福井次矢,山口直人(監修).Minds診療ガイドライン作成の手引き 2014,医学書院,東京,20142) Higgins JPT, Green S (eds). Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions version 5.1.0:

The Cochrane Collaboration http://handbook.cochrane.org/(updated March 2011)[最終アクセス 2015年 3 月 11 日]

3) 相原守夫,相原智之,福田眞作.診療ガイドラインのための GRADEシステム,凸版メディア,弘前,2010

4) The GRADE* working group. Grading quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2004;328: 1490-1494 (printed, abridged version)

5) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength ofrecommendations GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recom-mendations. BMJ 2008; 336: 924-926

6) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strengthof recommendations: What is "quality of evidence" and why is it important to clinicians? BMJ 2008; 336:995-998

7) Schünemann HJ, Oxman AD, Brozek J, et al; GRADE Working Group. Grading quality of evidence andstrength of recommendations for diagnostic tests and strategies. BMJ 2008; 336: 1106-1110

8) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE working group .Rating quality of evidence and strength ofrecommendations: incorporating considerations of resources use into grading recommendations. BMJ2008; 336: 1170-1173

9) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strengthof recommendations: going from evidence to recommendations. BMJ 2008; 336: 1049-1051

10) Jaeschke R, Guyatt GH, Dellinger P, et al; GRADE working group. Use of GRADE grid to reach decisionson clinical practice guidelines when consensus is elusive. BMJ 2008; 337: a744

11) Guyatt G, Oxman AD, Akl E, et al. GRADE guidelines 1. Introduction-GRADE evidence profiles and sum-mary of findings tables. J Clin Epidemiol 2011; 64: 383-394

12) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 2. Framing the question and deciding on impor-tant outcomes.J Clin Epidemiol 2011; 64: 295-400

13) Balshem H, Helfand M, Schunemann HJ, et al. GRADE guidelines 3: rating the quality of evidence. J ClinEpidemiol 2011; 64: 401-406

14) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al. GRADE guidelines 4: rating the quality of evidence - study limita-

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tion (risk of bias). J Clin Epidemiol 2011; 64: 407-41515) Guyatt GH, Oxman AD, Montori V, et al. GRADE guidelines 5: rating the quality of evidence - publication

bias. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1277-128216) Guyatt G, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 6. Rating the quality of evidence - imprecision. J

Clin Epidemiol 2011; 64: 1283-129317) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 7. Rating the

quality of evidence - inconsistency. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1294-130218) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 8. Rating the

quality of evidence - indirectness. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1303-131019) Guyatt GH, Oxman AD, Sultan S, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 9. Rating up the

quality of evidence. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1311-131620) Brunetti M, Shemilt I, et al; The GRADE Working. GRADE guidelines: 10. Considering resource use and

rating the quality of economic evidence. J Clin Epidemiol 2013; 66: 140-15021) Guyatt G, Oxman AD, Sultan S, et al. GRADE guidelines: 11. Making an overall rating of confidence in

effect estimates for a single outcome and for all outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: 151-15722) Guyatt GH, Oxman AD, Santesso N, et al. GRADE guidelines 12. Preparing Summary of Findings tables-

binary outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: 158-172

— xiv —

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— xv —

日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員と企業との経済的な関係につき,下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た.

胆石症診療ガイドライン作成・評価委員には診療ガイドライン対象疾患に関連する企業との経済的な関係につき,下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た.申告された企業名を下記に示す(対象期間は 2011 年 1 月 1日から 2014 年 12 月 31 日).企業名は 2015 年 12 月現在の

名称とした.非営利団体は含まれない.

1.委員または委員の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産を共有する者が個人として何らかの報酬を得た企業・団体役員・顧問職(100 万円以上),株(100 万円以上または当該株式の 5%以上保有),特許権使用料(100 万円以上)

2.委員が個人として何らかの報酬を得た企業・団体講演料(100 万円以上),原稿料(100 万円以上),その他の報酬(5万円以上)

3.委員の所属部門と産学連携を行っている企業・団体研究費(200 万円以上),寄付金(200 万円以上),寄付講座

※統括委員会においては日本消化器病学会診療ガイドラインに関係した企業・団体,作成・評価委員においては診療ガイドライン対象疾患に関係した企業・団体の申告を求めた

統括委員および作成・評価委員はすべて,診療ガイドラインの内容と作成法について,医療・医学の専門家として科学的・医学的な公正さを保証し,患者のアウトカム,Quality of lifeの向上を第一として作業を行った.利益相反の扱いは,国内外で議論が進行中であり,今後,適宜,方針・様式を見直すものである.

表 1 統括委員と企業との経済的な関係(五十音順)

1.エーザイ株式会社,大塚製薬株式会社2.味の素製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパ

ン株式会社,株式会社医学書院,エーザイ株式会社,MSD株式会社,大塚製薬株式会社,オリンパスメディカルシステムズ株式会社,杏林製薬株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,ファイザー株式会社

3.旭化成メディカル株式会社,味の素製薬株式会社,あすか製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパン株式会社,エーザイ株式会社,MSD株式会社,大塚製薬株式会社,小野薬品工業株式会社,花王株式会社,株式会社カン研究所,杏林製薬株式会社,協和発酵キリン株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,株式会社 JIMRO,株式会社ジーンケア研究所,ゼリア新薬工業株式会社,センチュリーメディカル株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,株式会社ツムラ,東レ株式会社,ファイザー株式会社,ブリストル・マイヤーズ株式会社,株式会社ミノファーゲン製薬,持田製薬株式会社,株式会社ヤクルト本社,ユーシービージャパン株式会社

表 2 作成・評価委員と企業との経済的な関係(五十音順)

1.なし2.エーザイ株式会社,大鵬薬品工業株式会社,中外製薬株式会社3.エーザイ株式会社,MSD株式会社,大塚製薬株式会社,協和発酵キリン株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,株式会社ヤクルト本社,ヤンセンファーマ株式会社

利益相反に関して

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— xvi —

第1章 疫学・病態 (1)疫学(2)リスクファクター(3)成因(4)自然史(5)胆道炎(6)胆道癌

第2章 診断(1)症状(2)病歴・診察(3)検査 

第3章 治療 (1)胆囊結石(2)総胆管結石(3)肝内結石

第4章 予後・合併症(1)予後(2)長期合併症

本ガイドラインの構成

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— xvii —

フローチャート

問診・身体所見 CQ 2-1CQ 2-2

血液・生化学検査,腹部単純X線検査,US CQ 2-3

CT(DIC-CTを含む),MRCPCQ 2-4CQ 2-5CQ 2-6

ERCP,EUS,IDUS,PTC CQ 2-5CQ 2-6

*:診断が不確実な場合や病態に応じていずれかを選択する

【フローチャート1:診断】

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— xviii —

無症状CQ 3-1

胆囊壁評価困難胆囊壁肥厚

CQ 3-2

CQ 3-3CQ 3-7CQ 3-8CQ 3-9

CQ 3-5浮遊結石(直径15mm未満)X線陰性あるいはCT値<60HU胆囊機能正常

CQ 3-6単発結石(直径20mm未満)X線陰性純コレステロール胆石 (CT値<50HU,特徴的US像)胆囊機能正常

CQ 3-3CQ 3-8急性胆囊炎合併

原則治療 適応基準を遵守した選択

*:PTGBD,PTGBA,ENGBDなど

有症状 (Mirizzi 症候群,胆囊穿孔,内胆汁瘻を含む)

胆囊摘出術(腹腔鏡下が第一選択)

溶解療法

ESWL

早期の胆囊摘出術または

胆囊ドレナージ*

経過観察

【フローチャート2:胆囊結石症治療】

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— xix —

総胆管結石症

内視鏡的あるいは外科的総胆管結石除去術(胆囊結石合併例には一期的あるいは二期的胆囊摘出術)

CQ 3-10CQ 3-11

CQ 3-12-3

CQ 3-12-1CQ 3-12-2CQ 3-12-5CQ 3-12-6CQ 3-13

CQ3-12-4急性胆管炎合併あり

内視鏡的胆道ドレナージまたは一期的内視鏡的総胆管結石除去術

胆石性膵炎合併あり

急性膵炎の治療

急性胆管炎なし急性胆管炎あり

内視鏡的乳頭括約筋切開術による

総胆管結石除去術

  * :無症状例,過去に有症状であった待機例を含む ** :不成功の場合,経皮的胆道ドレナージを考慮する*** :施設によっては経皮的胆道ドレナージを選択する

***

***

【フローチャート3:総胆管結石症治療】

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— xx —

肝内結石

胆道再建術の既往

肝萎縮・肝内胆管癌合併

外科手術(胆道再建・肝切除など)

なし

胆管狭窄

なし

なし

不成功の場合

肝切除

症状

不成功の場合

肝切除

あり

あり

CQ 3-20

CQ 3-17

CQ 3-17

経口的内視鏡経皮的内視鏡

CQ 3-16CQ 3-18CQ 3-19CQ 3-20

  * :ESWL,EHLなど併用 ** :発癌予防の観点からUDCAの投与を考慮する

あり

経口的内視鏡経皮的内視鏡

CQ 3-16CQ 3-18CQ 3-19

不成功の場合

あり

経口的内視鏡経皮的内視鏡

CQ 3-16CQ 3-18CQ 3-19 CQ 3-14

CQ 3-15CQ 4-5

CQ 3-17

* **

経過観察

なし

【フローチャート4:肝内結石症治療】

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クリニカルクエスチョン一覧

第1章 疫学・病態

❶疫 学CQ 1-1 わが国の胆石保有率は増加しているか? …………………………………………………2

❷リスクファクターCQ 1-2 胆石症のリスクファクターは? ……………………………………………………………4

❸成 因CQ 1-3 コレステロール胆石の成因は?……………………………………………………………10CQ 1-4 ビリルビンカルシウム石の成因は?………………………………………………………12CQ 1-5 黒色石の成因は?……………………………………………………………………………13CQ 1-6 総胆管結石の成因は?………………………………………………………………………15CQ 1-7 肝内結石の成因は?…………………………………………………………………………16

❹自然史CQ 1-8 胆囊結石の自然史は?………………………………………………………………………18

❺胆道炎CQ 1-9 急性胆囊炎発生のメカニズムは?…………………………………………………………20CQ 1-10 急性胆管炎発生のメカニズムは?…………………………………………………………22

❻胆道癌CQ 1-11 胆囊結石症は胆囊癌のリスクファクターか?……………………………………………24CQ 1-12 肝内結石症は肝内胆管癌のリスクファクターか?………………………………………26

第2章 診 断

❶症 状CQ 2-1 胆石症の症状は?……………………………………………………………………………30

❷病歴・診察CQ 2-2 胆石症の診断に有用な病歴聴取,診察所見は?…………………………………………31

❸検 査CQ 2-3 胆石症の一次検査は?………………………………………………………………………32CQ 2-4 胆囊結石が疑われたときに次に行う検査は?……………………………………………34CQ 2-5 総胆管結石が疑われたときに次に行う検査は?…………………………………………37CQ 2-6 肝内結石が疑われたときに次に行う検査は?……………………………………………42

第3章 治 療

❶胆囊結石CQ 3-1 無症状胆囊結石は治療すべきか?…………………………………………………………46

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CQ 3-2 有症状胆囊結石の治療は?…………………………………………………………………48CQ 3-3 手術では腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択か? 開腹の適応は?………………………50CQ 3-4 腹腔鏡下胆囊摘出術における合併症は?…………………………………………………54CQ 3-5 胆石溶解療法の適応は?……………………………………………………………………57CQ 3-6 ESWLの適応は?……………………………………………………………………………60CQ 3-7 Mirizzi症候群の治療は? …………………………………………………………………63CQ 3-8 急性胆囊炎合併例の治療は?………………………………………………………………65CQ 3-9 胆汁性腹膜炎併発例,胆囊周囲膿瘍併発例の治療は?…………………………………68

❷総胆管結石CQ 3-10 無症状総胆管結石は治療すべきか?………………………………………………………71CQ 3-11 総胆管結石の治療は?………………………………………………………………………73CQ 3-12-1 内視鏡的治療:1)ESTと EPBDの選択基準は? ………………………………………75CQ 3-12-2 内視鏡的治療:2)胆管ステント留置の適応は? ………………………………………77CQ 3-12-3 内視鏡的治療:3)胆管炎合併例の治療は? ……………………………………………78CQ 3-12-4 内視鏡的治療:4)胆石性膵炎合併例の治療は? ………………………………………79CQ 3-12-5 内視鏡的治療:5)Roux-en-Y吻合や BillrothⅡ法胃切除後例の治療は?……………81CQ 3-12-6 内視鏡的治療:6)胆囊結石合併例の治療は? …………………………………………83CQ 3-13 外科的結石除去術の方法は?………………………………………………………………85

❸肝内結石CQ 3-14 無症状肝内結石は治療すべきか?…………………………………………………………88CQ 3-15 薬物療法の適応は?…………………………………………………………………………89CQ 3-16 ESWLの適応は?……………………………………………………………………………91CQ 3-17 肝切除術の適応は?…………………………………………………………………………92CQ 3-18 経皮的内視鏡治療(PTCS)の適応は? ……………………………………………………95CQ 3-19 経口的内視鏡治療の適応は?………………………………………………………………97CQ 3-20 胆道再建後の肝内結石に対する治療は?…………………………………………………99

第4章 予後・合併症

❶予 後CQ 4-1 胆囊結石に対する胆囊摘出術後の経過観察は必要か? ………………………………102CQ 4-2 胆囊摘出は消化吸収機能を低下させるか? ……………………………………………103

❷長期合併症CQ 4-3 胆囊摘出術後の長期合併症は何か? ……………………………………………………104CQ 4-4 総胆管結石治療後の長期合併症は何か? ………………………………………………106CQ 4-5 肝内結石治療後の長期合併症は何か? …………………………………………………109

索引 ………………………………………………………………………………………………………113

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— xxiii —

AOSC acute obstructive suppurative cholangitis 急性閉塞性化膿性胆管炎 CCK cholecystokinin コレシストキニンCDCA chenodeoxycholate ケノデオキシコール酸CTC CT cholangiographyDHCA dehydrocholic acidDIC drip infusion cholangiography 経静脈性(点滴)胆道造影EBS endoscopic biliary stenting 内視鏡的胆管ステンティングEHL electric hydraulic lithotripsy 電気水圧式衝撃波結石破砕術EML endoscopic mechanical lithotripsy 内視鏡的機械的破石術ENBD endoscopic nasobiliary drainage 内視鏡的経鼻胆管ドレナージENGBD endoscopic nasobiliary gallbladder drainage 内視鏡的経鼻胆囊ドレナージEPBD endoscopic papillary balloon dilatation 内視鏡的乳頭バルーン拡張術EPLBD endoscopic papillary large-balloon dilation 内視鏡的乳頭大径バルーン拡張術ERCP endoscopic retrograde cholangiopancreatography 内視鏡的逆行性胆道膵管造影法EST endoscopic sphincterotomy 内視鏡的乳頭(括約筋)切開術ESWL extracorporeal shock wave lithotripsy 体外衝撃波結石破砕療法EUS endoscopic ultrasonography 超音波内視鏡検査IDUS intraductal ultrasonography 管腔内超音波検査LC laparoscopic cholecystectomy 腹腔鏡下胆囊摘出術MRCP MR cholangiopancreatography MR胆道膵管造影POCS peroral cholangioscopy 経口胆道内視鏡PTBD percutaneous transhepatic biliary drainage 経皮経肝胆道ドレナージPTC percutaneous transhepatic cholangiography 経皮経肝胆管造影PTCCS percutaneous transhepatic cholecystoscopy 経皮経肝胆囊内視鏡検査PTCS percutaneous transhepatic cholangioscopy 経皮経肝胆道鏡検査PTCSL percutaneous transhepatic cholangioscopic lithotripsy 経皮経肝胆道鏡的結石除去術PTGBA percutaneous transhepatic gallbladder aspiration 経皮経肝胆囊吸引PTGBD percutaneous transhepatic gallbladder drainage 経皮経肝胆囊ドレナージRCT randomized controlled trial 無作為化比較試験UDCA ursodeoxycholate ウルソデオキシコール酸US ultrasonography 超音波検査

略語一覧

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1.疫学・病態

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— 2 —

Clinical Question 1-11.疫学・病態 ― ❶疫学

解説

わが国における胆石全体の保有者は,厚生労働省「国民基礎調査」に基づく推計総患者数より,平成 2年度までは増加している 1).その後も肥満人口の増加やアルコール消費量の増加など胆石形成のリスクファクターと考えられている因子の動向から胆石保有率は増加していると推測されるが,最近 15 年間は全国的な疫学調査が行われておらず,詳細は不明である.2013 年に日本胆道学会が行った調査では,2013 年 8 月の 1ヵ月間の調査期間中に集積された胆石症は回答施設 56 施設 611 症例であり(胆道 2014; 28: 612-617 a)[検索期間外文献]),1996 年の日本胆道学会胆石調査プロジェクトで報告された 890 施設 3,713 例 2)に比較すると,施設あたりの症例数は増加していた.胆囊結石 71.0%,総胆管結石 14.1%,肝内結石 3.5%で,1996 年の各 78.8%,19.7%,1.5%とほぼ同様の内訳であったが,男女比は胆囊結石,肝内結石で逆転し(おのおの 1:0.90,1:0.83),全体でも男性に多くなっている(1:0.87).胆石の種類別の推移としては,2004年の報告ではコレステロール胆石は横ばい状態,色素胆石ではビリルビンカルシウム石が減少して黒色石が増加していたが 3),2013 年の調査では胆囊結石においてはコレステロール混成石と黒色石が増加傾向にあり,総胆管結石ではコレステロール胆石が増加しており,落下結石の増加が示唆された a).

世界的にはインディアン系民族の胆石保有率が高率である(図1)4).さらにアフリカ大陸における黒人で 5%以下,米国黒人で 14%と胆石保有率が大きく異なることから生活習慣が寄与することが推測される.欧米での胆石保有率 20%に対してアジア諸国では比較的低く,日本では5%程度とされている 4).腹部超音波検診による胆石発見率は 2〜3%であり,加齢とともに増加する(日本消化器がん検診学会雑誌 2012; 50: 415-420 b)[検索期間外文献]).肝内結石症に関しては,厚生労働省「肝内結石症に関する調査研究」および「難治性の肝・

胆道疾患に関する調査研究」のもとで 6回の全国調査が施行された結果,2003 年までは減少傾向であったが 5),2013 年には再度増加に転じ,胆道手術後の二次性の割合が増えている(J Hepa-tobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 617-622 c)[検索期間外文献]).

わが国の胆石保有率は増加しているか?

CQ 1-1 わが国の胆石保有率は増加しているか?

ステートメント

● 胆石全体の保有率は増加していると推測され,胆囊結石,肝内結石では男女比が逆転し全体でも男性に多くなっている.肝内結石の保有率は年次的に減少していたが,2013 年には増加(主に胆道手術後の二次性)に転じている.

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図 1 世界各国の胆石保有率(文献 4より引用)

— 3 —

①疫学

文献

1) 厚生統計協会.患者調査に基づく推計総患者数,傷病小分類 年次別.厚生の指標 1993; 39: 29-35(横断)2) 谷村 弘,内山和久.[胆石調査プロジェクト報告]全国胆石症 1996 年度調査結果.胆道 1997; 2: 113-140

(横断)3) Tsunoda K, Shirai Y, Hatakeyama K. Prevalence of cholesterol gallstones positively correlates with per

capita daily calorie intake. Hepatogastroenterology 2004; 51: 1271-1274(ケースコントロール)4) Stinton LM, Shaffer EA. Epidemiology of gallbladder disease: cholelithiasis and cancer. Gut Liver 2012; 6:

172-187(横断)5) 二村雄次.厚生省特定疾患肝内結石症調査研究班,平成 8年度報告書,1997: p11-19(横断)

【検索期間外文献】a) 日本胆道学会学術委員会.胆石症に関する 2013 年度全国調査結果報告.胆道 2014; 28: 612-617(横断)b) 田妻 進,三宅弘明.検診における胆道疾患の取り扱い―胆石症診療ガイドラインに基づく胆道がんへの

取り組み.日本消化器がん検診学会雑誌 2012; 50: 415-420(ケースシリーズ)c) Suzuki Y, Mori T, Yokoyama M, et al. Hepatolithiasis: analysis of Japanese nationwide surveys over a

period of 40 years. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 617-622 (横断)

AmericanIndians 64~73%

CanadianIndians 62%

MexicanAmericans 27%

Norway22%

Sweden11~25%

Denmark 22~30%

Poland 20%

Italy 14%

China 5%

Japan 5%

Taiwan 5~12%

Thailand 4%

Rumania 13%

India 10~22%

WhiteAmericans 17%

BlackAmericans 14% Sub-Saharan

BlackAfricans <5%

MalpucheIndians 49%

Maoris(Easter Island) 29%

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— 4 —

Clinical Question 1-21.疫学・病態 ― ❷リスクファクター

胆石症のリスクファクターは?

CQ 1-2 胆石症のリスクファクターは?

ステートメント

● 5F[Forty(年齢),Female(女性),Fatty(肥満),Fair(白人),Fecund・Fertile(多産・経産婦)]は胆石症の代表的なリスクファクターである.

● 脂質異常症,食生活習慣,急激なダイエット,胆囊機能低下,腸管機能低下も胆囊結石形成に関連する因子であるが,ヘリコバクター属菌の関連性は低い.

解説

胆石症のリスクファクターとして,年齢 1〜4, (J Chronic Dis 1966; 19: 273-292 a)[検索期間外文献]),肥満 1〜9, a),家族歴 1, 2, 10, a)があげられてきた.50〜60 歳代の年齢層 1〜4, a),肥満傾向の女性 1〜9, a),中心性肥満の男性 11〜13)にリスクが高い.欧米の調査では女性の胆石保有率は各年齢層において男性の 2〜3倍であること,妊娠 6, 14),ホルモン補充療法 15),経口避妊薬の使用 15, 16)が胆石形成のリスクを高めることより,女性であることや女性ホルモンは胆石形成に関連するリスクファクターとしてあげられ,妊娠や妊娠回数に影響を受ける 14).さらに胆石の保有率が明らかに白色人種である欧米人が有色人種であるアジア人に比して高値である 1).以上より,5F[Forty(年齢),Female(女性),Fatty(肥満),Fair(白人),Fecund・Fertile(多産・経産婦)]は胆石症の代表的なリスクファクターである.加えて,関連する遺伝子解析も報告されてきており,遺伝的要因もリスクファクターとして明らかになりつつある 17, 18).ただし,Female(女性)については疫学的には変化しつつあると推測される(CQ 1-1 参照).

脂質異常症(特にⅣ型,高トリグリセリド血症)や非アルコール性脂肪性肝疾患患者では,健常人に比較して胆石の保有率が高く 3, 19,(Lancet 1975; 1 (7905): 484-487 b)[検索期間外文献]),胆囊収縮機能の低下 20),肝コレステロール合成の上昇や腸管における胆汁酸吸収の異常によりコレステロール過飽和胆汁が生成されることが原因と考えられている 21, 22,(J Lipid Res 1979; 20:107-115 c)[検索期間外文献]).一方,脂質代謝改善薬(フィブラート,スタチン)や魚油は,胆囊収縮機能や胆汁脂質組成(コレステロール過飽和胆汁)を改善させて胆石形成のリスクを低下させる可能性がある 20, 23〜25).食生活習慣として,1日の摂取総カロリー数 8, 26〜29),炭水化物 29〜31),糖質 29〜31),動物性脂肪の過剰

摂取 28, 29),身体活動の低い生活 29, 32, 33),夜間の長時間にわたる絶食 29, 34)などが胆石生成のリスク増加の因子として報告されている.一方,リスク低下の因子として,果実,野菜 35),ナッツ 36),多価不飽和脂肪酸 37),植物性蛋白 38),食物繊維 28, 34),カフェイン 39),適度な飲酒(アルコール)8, 28, 40〜42),適度な運動 33, 43)などが報告されている.飲酒と胆石形成リスク低下に関する報告は多く 8, 28, 40, 41),

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— 5 —

②リスクファクター

英国の前向きコホート研究でも男性に特に同様の結果が報告されている 44).一方,喫煙に関しては胆石の発生への影響は否定的である 42).肥満者において,胃バイパス術後 45〜48)や低カロリーダイエット 49)による急激な体重減少,

あるいはダイエット期間中における体重の変動 9)は,胆石形成に関与する.消化管手術による術後の低栄養も胆石発生の要因となる 50).急激な体重減少に関連した胆石発生の因子として,胆汁中粘液糖蛋白量の増加によるコレステロール結晶析出時間の短縮化 51, 52),脂肪摂取量の減少に関連した胆囊収縮機能の低下 48)が関与すると推測される.また,肥満者の低カロリー食による急激な体重減少に関連した胆石形成に対して,少量の脂肪摂取 48)や胆汁酸製剤のウルソデオキシコール酸(UDCA)の服用 53〜55)は有効である.近年,肥満者に対する手術が普及しており,手術後の胆石形成リスクも報告されているが,予防的な手術は推奨されていない 56).胆石症患者では健常者に比較して胆囊収縮機能ならびに胆汁排泄機能が低下しており,胆汁

の十二指腸への排泄が遅延している 57〜63).胆囊収縮機能の低下は脂質異常症 20),減量ダイエット 49),完全経静脈栄養 64),迷走神経切離術後 64, 65),脊髄損傷,ホルモン療法などにより惹起され,胆囊温存療法(胆石溶解療法や体外衝撃波療法)における結石再発のリスクファクターでもある 66, 68).胆囊収縮機能の減弱はコレシストキニン(CCK)に対する胆囊平滑筋の収縮反応の低下によるものと推測されている 59, 63, 65).胆囊収縮機能の低下は,循環胆汁酸プールの減少,腸肝循環サイクルの亢進による一次胆汁酸であるコール酸から二次胆汁酸であるデオキシコール酸の増加を引き起こし,肝から胆汁へのコレステロールの過剰分泌を誘発する 63, 68).胆囊収縮機能の低下は胆石の種類を問わず胆囊結石形成のリスクとなる 69).さらに,腸管機能の低下も胆囊結石形成に関連すると考えられている.胆石症患者では健常者に比較して食物の小腸および大腸通過時間が遅延している 68, 70〜72).食物の腸管通過時間の遅延は,腸内細菌叢の変化 71)や小腸における胆汁酸吸収の低下 71)に関連した胆汁酸組成の変化(二次胆汁酸であるデオキシコール酸の増加)を引き起こし 71〜76),肝から胆汁へのコレステロールの過剰分泌を誘発する.また,循環胆汁酸プールの減少によると考えられる胆汁脂質組成(コレステロール飽和度の増加)の変化 68, 72, 74, 75)を引き起こすと考えられ,コレステロール胆石の形成のリスクとなる.胆汁酸製剤である UDCA 76)やcisapride 77)の投与は,食物の小腸および大腸通過時間の遅延を改善することが報告されており,胆石形成のリスクを低下させる可能性がある.以上のことより,胆囊機能や腸管機能の低下は胆囊結石形成に関連する因子であると考えられる.胆石症や胆道癌患者の胆道系組織 78〜85),胆汁中 78, 79, 81, 84〜88)や胆石 80, 85, 89)にヘリコバクター属菌

(Helicobacter pylori や bilis)の存在が報告され,腸管由来のヘリコバクター属菌と胆道系疾患との関連性が示唆されている 79).しかしながら,その解析結果は,PCRを中心とする分子生物学的手法を用いたものであり,ヘリコバクター属菌の培養には成功していない点 81, 88),また,ヘリコバクター属菌の検出状況には地域差がある点 78〜88),ヘリコバクター属菌は病的胆道系組織のみならず正常組織や胆汁にも存在する点 78, 82, 86, 89)より,現時点では,胆道系において,ヘリコバクター属菌が生菌として感染しているとは考えにくく,最近の報告も一定の結論を得ていない 90).したがって,ヘリコバクター属菌が胆囊結石形成に関与している可能性は低いと考えられる.

以上より,脂質異常症,食生活習慣,急激なダイエット,胆囊機能低下ならびに腸管機能低下は,胆囊結石形成に関連する因子である.

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— 6 —

1.疫学・病態

文献

1) Kratzer W, Mason RA, Kächele V. Prevalence of gallstones in sonographic surveys world wide. J ClinUltrasound 1999; 27: 1-7(メタ)

2) Walcher T, Haenle MM, Kron M, et al. Pregnancy is not a risk factor for gallstone disease: results of a ran-domly selected population sample. World J Gastroenterol 2005; 11: 6800-6806(横断)

3) Loria P, Lonardo A, Lombardini S, et al. Gallstone disease in non-alcoholic fatty liver: prevalence andassociated factors. J Gastroenterol Hepatol 2005; 20: 1176-1184(横断)

4) Pacchioni M, Nicoletti C, Caminiti M, et al. Association of obesity and type II diabetes mellitus as a riskfactor for gallstones. Dig Dis Sci 2000; 45: 2002-2006(横断)

5) Stampfer MJ, Maclure KM, Colditz GA, et al. Risk of symptomatic gallstones in women with severe obesi-ty. Am J Clin Nutr 1992; 55: 652-658(コホート)

6) Barbara L, Sama C, Morselli Labate AM, et al. A population study on the prevalence of gallstone disease:the Sirmione Study. Hepatology 1987; 7: 913-917(横断)

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— 7 —

②リスクファクター

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— 8 —

1.疫学・病態

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66) 山口 厚,田妻 進,西岡智司,ほか.胆囊結石症治療のガイドライン作成に向けて―胆囊結石症治療における胆囊温存療法の位置付け―ESWL治療後の再発と胆摘術後症状の検討から.胆道 2004; 18: 108-113

(ケースコントロール)67) Pauletzki J, Althaus R, Holl J, et al. Gallbladder emptying and gallstone formation: a prospective study on

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terol gallstone disease and its correlation with de novo syntheses of cholesterol and bile acids in liver, gall-bladder emptying, and small intestinal transit. Hepatology 1995; 21: 1291-1302(ケースコントロール)

69) Sugo T, Hakamada K, Narumi S, et al. Decreased postprandial gallbladder emptying in patients withblack pigment stones. World J Gastroenterol 2008; 14: 2825-2831(ケースコントロール)

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(ケースコントロール)73) Veysey MJ, Thomas LA, Mallet AI, et al. Prolonged large bowel transit increases serum deoxycholic acid: a

risk factor for octreotide induced gallstones. Gut 1999; 44: 675-681(ケースコントロール)74) Marcus SN, Heaton KW. Intestinal transit, deoxycholic acid and the cholesterol saturation of bile: three

inter-related factors. Gut 1986; 27: 550-558(非ランダム)75) Hussaini SH, Pereira SP, Veysey MJ, et al. Roles of gall bladder emptying and intestinal transit in the

pathogenesis of octreotide induced gall bladder stones. Gut 1996; 38: 775-783(ランダム)76) Colecchia A, Mazzella G, Sandri L, et al. Ursodeoxycholic acid improves gastrointestinal motility defects

in gallstone patients. World J Gastroenterol 2006; 12: 5336-5343(非ランダム)77) Veysey MJ, Malcolm P, Mallet AI, et al. Effects of cisapride on gall bladder emptying, intestinal transit,

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— 9 —

②リスクファクター

and serum deoxycholate: a prospective, randomised, double blind, placebo controlled trial. Gut 2001; 49:828-834(ランダム)

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89) Monstein HJ, Jonsson Y, Zdolsek J, et al. Identification of Helicobacter pylori DNA in human cholesterolgallstones. Scand J Gastroenterol 2002; 37: 112-119(横断)

90) Yakoob J, Khan MR, Abbas Z, et al. Helicobacter pylori: association with gall bladder disorders in Pak-istan. Br J Biomed Sci 2011; 68: 59-64(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) Friedman GD, Kannel WB, Dawber TR. The epidemiology of gallbladder disease: observations in the

Framingham Study. J Chronic Dis 1966; 19: 273-292(ランダム)b) Einarsson K, Hellstrom K, Kallner M. Gallbladder disease in hyperlipoproteinemia. Lancet 1975; 1 (7905):

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解説

コレステロール胆石は約 70%がコレステロール結晶からなる 1).コレステロールは通常は不溶性であるが,胆汁酸・リン脂質と混合ミセルを形成し胆汁中に溶解している.胆汁中でのコレステロールの溶解能は,この 3者の相対的濃度関係により決定される 2).また,生体では胆汁の濃縮,胆汁酸の疎水性,リン脂質のアシル鎖の不飽和度などがコレステロールの結晶化を促進させる 3).コレステロールの生合成に関与するHMG-CoA還元酵素阻害薬の投与を中止すると,コレステロールの胆汁への分泌は増加し飽和度が高くなることが示されている 4).コレステロールや胆汁酸,リン脂質の胆汁内排泄は,細胆管側に存在する ATP-binding cassette trans-

porters(ABC transporter)により調節されている.胆汁酸は ABCB11,リン脂質は ABCB4,コレステロールは ABCG5,ABCG8 が重要な役割を担っている 1).その他にも,コレステロールの生体内での輸送経路を制御する様々な因子が明らかになっている 5).コレステロール過飽和胆汁は,特に胆囊内でムチンゲルとビリルビンとともに結晶化し胆泥

を形成する 6).この胆泥が凝集し結石へ成長すると考えられている.胆囊収縮能の低下はコレステロール結石の重要な成因のひとつである.微細な結晶が存在し

ても胆囊が良好に収縮する状態では容易に腸管内に流出するため,結石とはならないと考えられている 7).胆石症の高リスク群である妊娠・肥満・急激な体重減少・糖尿病・完全静脈栄養などの際には,胆囊収縮能はしばしば低下する 1).正常の胆囊は十二指腸から分泌されるコレシストキニン(CCK)により収縮するが,胆囊結石症の患者は CCKへの反応が消失していると報告されている 8).ソマトスタチンアナログ投与時には CCK分泌が低下し,高トリグリセリド血症では CCKの感受性が低下し,胆囊収縮能が低下し胆囊結石の高リスク群とされる 9).

コレステロール胆石の成因として細菌感染も注目されており,コレステロール胆石内から PCR

法により細菌の存在が証明されつつある 10).また,疫学的調査や家系内調査などによりコレステロール胆石に遺伝的因子が関与していることが明らかとなっている.特に,コレステロールの輸送経路や胆汁分泌を制御する因子の遺伝子異常や多型性が胆石形成に与える影響が解明されてきている.これまでに,ABCG5,ABCG8 11),FXR,LXR,LDLR,CYP7A1,ApoB-100,ApoE,

Clinical Question 1-31.疫学・病態 ― ❸成因

コレステロール胆石の成因は?

CQ 1-3 コレステロール胆石の成因は?

ステートメント

● コレステロール胆石の成因は,古典的には,胆汁中コレステロールの過飽和,結晶化,胆囊収縮能の低下の 3 つが成因と考えられている.最近の知見ではコレステロール胆石への細菌感染の関与,遺伝子異常などの遺伝的背景の関与が示唆されている.

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③成因

CCKAR,NPC1L1 などの関与が想定されており,更なる研究が精力的になされている 5, 12).( ※ABC: ATP-binding cassette, FXR: farnesoid X receptor, LXR: liver X receptor,LDLR: low density lipoprotein receptor,CYP7A1:cholesterol 7α-hydroxylase,CCKAR:cholecystokinin-A receptor,NPC1L1:Niemann-Pick C1 like 1.)

文献

1) Portincasa P, Moschetta A, Palasciano G. Cholesterol gallstone disease. Lancet 2006; 368: 230-2392) Carey MC. Pathogenesis of gallstones, Am J Surg 1993; 165: 410-4193) Venneman NG, van Erpecum KJ. Pathogenesis of gallstones. Gastroenterol Clin N Am 2010; 39: 171-1834) Muraca M, Baggio G, Vilei MT, et al. Effect of withdrawal of pravastatin on biliary lipid composition in

humans. Atherosclerosis 1996; 123: 133-137(ランダム)5) Zanlungo S, Rigotti A. Determinants of transhepatic cholesterol flux and their relevance for gallstone for-

mation. Liver Int 2009; 29: 323-330(ケースシリーズ)6) Ko CW, Sekijima JH, Lee SP. Biliary sludge. Ann Intern Med 1999; 130 (4 Pt 1): 301-3117) Jonkers IJ, Smelt AH, Ledeboer M, et al. Gall bladder dysmotility: a risk factor for gall stone formation in

hypertriglyceridaemia and reversal on triglyceride lowering therapy by bezafibrate and fish oil. Gut 2003;52: 109-115(非ランダム)

8) Moschetta A, Stolk MF, Rehfeld JF, et al. Severe impairment of postprandial cholecystokinin release andgall-bladder emptying and high risk of gallstone formation in acromegalic patients during SandostatinLAR. Aliment Pharmacol Ther 2001; 15: 181-185(ケースシリーズ)

9) Stewart L, Grifiss JM, Jarvis GA, et al. Biliary bacterial factors determine the path of gallstone formation.Am J Surg 2006; 192: 598-603(ケースシリーズ)

10) Kawai M, Iwahashi M, Uchiyama K, et al. Gram-positive cocci are associated with the formation of com-pletely pure cholesterol stones. Am J Gastroenterol 2002; 97: 83-88(ケースシリーズ)

11) Stender S, Frikke-Schmidt R, Nordestgaard BG, et al. Sterol transporter adenosine triphosphate-bindingcassette transporter G8, gallstones, and biliary cancer in 62,000 individuals from the general population.Hepatology 2011; 53; 640-648(横断)

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Clinical Question 1-4

ビリルビンカルシウム石の成因は?

1.疫学・病態 ― ❸成因

CQ 1-4 ビリルビンカルシウム石の成因は?

ステートメント

● ビリルビンカルシウム石の成因は,細菌感染による不溶性ビリルビンカルシウム析出が関与していると考えられている.

解説

ビリルビンカルシウム石は胆石中に細菌を高率に認める 1, 2).結石内の表面や内部から,Escherichia coli,Klebsiella sp,Enterococcus,Enterobactor sp,Pseudomonas aeruginosa などの様々な細菌が検出される 2).これら細菌は β グルクロニダーゼ,ホスホリパーゼ A2,胆汁酸加水分解酵素を産生する.β グルクロニダーゼはビリルビングルクロナイドを加水分解し,遊離ビリルビンとグルクロン酸に分解する.ホスホリパーゼ A2 はリン脂質からパルミチン酸やステアリン酸を産生し,胆汁酸加水分解酵素は抱合型胆汁酸から非抱合型胆汁酸を産生する.これらの産生物は不溶性のカルシウム塩をつくり,さらに胆管内のムチンや細菌の死骸とともに析出し,ビリルビンカルシウム石となると考えられている 3).胆汁の細菌感染は,胆管狭窄や胆汁うっ滞に伴うことが多いため,胆囊からの落下結石,胆

管寄生虫感染,傍乳頭憩室,さらに Caroli症候群などの先天性胆道疾患などがビリルビンカルシウム石形成の背景因子としてあげられる 4).

文献

1) Stewart L, Grifiss JM, Jarvis GA, et al. Biliary bacterial factors determine the path of gallstone formation.Am J Surg 2006; 192: 598-603(ケースシリーズ)

2) Leung JW, Liu YL, Lau GC, et al. Bacteriologic analyses of bile and brown pigment stones in patients withacute cholangitis. Gastrointest Endosc 2001; 54: 340-345(ケースシリーズ)

3) Carey MC. Pathogenesis of gallstones. Am J Surg 1993; 165, 410-4194) Vítek L, Carey MC. New pathophysiological concepts underlying pathogenesis of pigment gallstones. Clin

Res Hepatol Gastroenterol 2012; 36: 122-129

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— 13 —

解説

色素胆石は,ビリルビンカルシウム石と黒色石に分類される.ともにビリルビンを主成分とするが,黒色石は重合化および酸化されている.ビリルビンカルシウム石と異なり,黒色石は無菌状態の胆囊内で形成される 1, 2).従来は全胆石の 6〜10%を占めるに過ぎなかったが,近年ビリルビンカルシウム石の減少に伴い増加してきている 3).黒色石の主成分である黒色色素の本態はビリルビン誘導体の重合体やビリルビン金属錯体で

あることは明らかにされているが,その成因はいまだ十分に解明されていない.黒色石の主原因は,溶血性疾患(サラセミア,遺伝性球状赤血球症,鎌状赤血球症,心臓弁置換後)や非抱合型ビリルビンの病的腸肝循環(Crohn病患者や回盲部切除患者)などから生じる高ビリルビン血症である.肝硬変でも胆汁成分の変化に伴い,黒色石の合併が認められる.溶血によりヘモグロビン代謝の亢進により増加した非抱合型ビリルビンが重合を受け,Cuや Feとの金属錯体を形成し黒色石を形成することが考えられている 3, 4).Crohn病患者や回盲部切除患者などでは,胆汁酸の再吸収障害と非抱合型ビリルビン再吸収増加によりビリルビンの腸肝循環が増大することが一因と考えられている 5).

最近,体質性黄疸のひとつである Gilbert症候群の原因遺伝子 UDP-glucuronosyltransferase

1A1(UGT1A1)の変異が黒色石形成に影響すると,複数の施設から報告されている 6〜9).鎌状赤血球症患者においても,UGT1A1 プロモーターの遺伝子多型により血清ビリルビン値や黒色石合併頻度に差があることが報告されている 6, 7).

文献

1) Carey MC. Pathogenesis of gallstones. Am J Surg 1993; 165: 410-4192) Vítek L, Carey MC. New pathophysiological concepts underlying pathogenesis of pigment gallstones. Clin

Res Hepatol Gastroenterol 2012; 36: 122-129

Clinical Question 1-51.疫学・病態 ― ❸成因

黒色石の成因は?

CQ 1-5 黒色石の成因は?

ステートメント

● 黒色石は,無菌状態の胆囊で形成される.黒色石の黒色色素はビリルビンあるいはビリルビンカルシウムの重合体であり種々の重金属を有している.黒色石の主原因は,溶血性疾患あるいは腸疾患による非抱合型ビリルビンの再吸収増加による非抱合型高ビリルビン血症である.

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— 14 —

1.疫学・病態

3) 鈴木範美.黒色胆石の成因とその臨床.日本消化器外科学会雑誌 1984; 17: 517-5264) Ise H, Moriyasu N, Suzuki N, et al. Pathogenesis of black stones. J Hep Bil Pancr Surg 1997, 4: 412-4165) Vitek, L, Carey MC. Enterohepatic cycling of bilirubin as a cause of ‘black’ pigment gallstones in adult life.

Eur J Clin Invest 2003; 33: 799-8106) Martins R, Morais A, Dias A, et al. Early modification of sickle cell disease clinical course by UDP-glu-

curonosyltransferase 1A1 gene promoter polymorphism. Hum Genet 2008; 53: 524-528(横断)7) Milton JN, Sebastiani P, Solovieff N, et al. A genome-wide association study of total bilirubin and

cholelithiasis risk in sickle cell anemia. PLoS One 2012; 7 (4): e34741(横断)8) Buch S, Schafmayer C, Völzke H, et al. Loci from a genome-wide analysis of bilirubin levels are associated

with gallstone risk and composition. Gastroenterology 2010; 139: 1942-1951(横断)9) Van Erpecum KJ. Pathogenesis of cholesterol and pigment gallstones: an update. Clin Res Hepatol Gas-

troenterol 2011; 35: 281-287

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Clinical Question 1-61.疫学・病態 ― ❸成因

総胆管結石の成因は?

CQ 1-6 総胆管結石の成因は?

ステートメント

● 総胆管結石は胆囊結石の落下を除外すると,胆道感染に起因するものがほとんどである.そのためビリルビンカルシウム石の頻度が高い.

解説

総胆管結石はその成因から 3種類に分類される.総胆管原発の結石,胆囊結石の落下によるもの,肝内結石の落下によるものである.胆囊結石や肝内結石の落下を除いた原発性の総胆管結石では多くが胆道感染を伴っており,ビリルビンカルシウム石であることが多い.総胆管結石症患者の胆汁中の細菌感染率(105 コロニー以上)は,胆管炎がない場合で 36%,胆管炎がある場合では 83%と極めて高かった.一方,胆囊結石症患者では 3%,健常者では 0%であり,総胆管結石と胆汁細菌感染には相関がみられた 1).また,胆石中の異物を検査した結果,54 例中 6例(11.1%)に異物がみつかり,4例は以前の手術に用いられた縫合糸であったが,残り 2例は開腹既往はなかったが繊維成分が確認され,胆管内異物が総胆管結石の成因の可能性が報告されている 2).また,傍乳頭憩室がある症例は総胆管結石の頻度が高いことから成因のひとつと考えられる 3).胆汁中細菌感染が認められる場合,平均胆管径は 15.0mmであるが,感染が認められない場合は 9.7mmで,胆汁感染の増加に胆管径の関与が示唆されている 4).胆囊結石として胆囊摘出術を受ける患者の10〜20%に総胆管結石が合併すると報告されている

ことから,胆囊結石の落下による総胆管結石も成因として10%程度は推測される(CQ 3-10 参照)5).

文献

1) Csendes A, Mitru N, Maluenda F, et al. Counts of bacteria and pyocites of choledochal bile in controls andin patients with gallstones or common bile duct stones with or without acute cholangitis. Hepatogastroen-terology 1996; 43: 800-806(ケースシリーズ)

2) Prochazka V, Krausova D, Kod’ousek R, et al. Foreign material as a cause of choledocholithiasis.Endoscopy 1999; 31, 282-285(ケースシリーズ)

3) Kim MH, Myung SJ, Seo DW, et al. Association of periampullary diverticula with primary choledo-cholithiasis but not with secondary choledocholithiasis. Endoscopy 1998; 30: 601-604(ケースシリーズ)

4) 大屋敏秀,村上英介,高亀亜希,ほか.総胆管結石症における胆汁中細菌感染と結石再発の関連性についての考察.胆道 2008; 22: 617-623(ケースコントロール)

5) Joyce WP, Keane R, Burke GJ, et al. Identification of bile duct stones in patients undergoing laparoscopiccholecystectomy. Br J Surg 1991; 78: 1174-1176(横断)

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解説

肝内結石は総胆管結石と同様に細菌感染を伴うことが多く,ビリルビンカルシウム石が多いが,近年その発症数は減少してきている.症例対象研究から,生活環境の衛生条件や幼少時の健康状態,大腸菌などの細菌感染,回虫や肝吸虫などの寄生虫疾患の既往,HTLV-1 感染などの関与が示唆されている 1〜4).そのほか,胆管周囲の分泌腺の粘液過剰産生や肝内胆管の走向異常が,肝内結石症に関与していることが示唆されている 2, 5).肝内結石は,先天性胆道拡張症,特に肝内胆管の拡張を伴う戸谷分類のⅣ-A型に併存するこ

とが多く 6, 7),逆行性感染や先天性の膜様狭窄あるいは索状狭窄による胆汁うっ滞がその形成に関与すると考えられている 2, 8).最近は,胆道再建後(特に胆道拡張症術後)に発生する肝内結石が増加する傾向にあり(CQ 1-1 参照)(J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 617-622 a)[検索期間外文献]),二次性の肝内結石として取り扱われている(フローチャート4参照).肝内結石はビリルビンカルシウム石のなかでもコレステロール含量が多く,胆管膜における

リン脂質の輸送担体(MDR3)の遺伝子変異やムチン遺伝子(MUC)の表現型に関する特徴が報告されている 9).近年,コレステロール胆石の肝内結石症の報告も散見される.人種の違いではなく,衛生環境の改善や食の欧米化などの生活習慣の変遷がその一因とされている 2).肝内コレステロール胆石形成メカニズムとして疾病肝全体のコレステロール合成の亢進と胆汁酸合成の低下により肝胆汁がコレステロール過飽和状態であることが示されている 2, 9).そのほか,肝内胆管上皮細胞の TGF-β 1/smad2/3 signaling pathwayが結石形成に関与している可能性も報告されている 10).肝内結石の再発や胆管狭窄が多い原因のひとつに慢性増殖性胆管炎が存在することが報告さ

れており,結石が完全に除去され,胆道狭窄が改善されても,残存する慢性増殖性胆管炎が治療後の結石再発や胆道狭窄再発のリスクになることが示唆されている 11).

Clinical Question 1-71.疫学・病態 ― ❸成因

肝内結石の成因は?

CQ 1-7 肝内結石の成因は?

ステートメント

● 肝内結石の成因は総胆管結石の成因と基本的には同様であり,細菌感染と胆汁うっ滞がその主な成因である.

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③成因

文献

1) 八坂貴宏,佐野信也.Case-control studyからみた肝内結石症の成因.胆と膵 2007; 28: 483-489(ケースコントロール)

2) Tsui WM, Lam PW, Lee WK, et al. Primary hepatolithiasis, recurrent pyogenic cholangitis, and orientalcholangiohepatitis: a tale of 3 countries. Adv Anat Pathol 2011; 18: 318-328(ケースシリーズ)

3) Choi D, Lim JH, Lee KT, et al. Gallstones and clonorchis sinensis infection: a hospital-based case-controlstudy in Korea. J Gastroenterol Hepatol 2008; 23: e399-e404(横断)

4) Momiyama M, Wakai K, Oda K, et al. Lifestyle risk factors for intrahepatic stone: findings from a case-control study in an endemic area, Taiwan. J Gastroenterol Hepatol 2008; 23 (7 Pt 1): 1075-1081(ケースコントロール)

5) Balandraud P, Gregoire E, Cazeres C, et al. Right hepatolithiasis and abnormal hepatic duct confluence:more than a casual relation? Am J Surg 2011; 201: 514-518(ケースコントロール)

6) Shimotakahara A, Yamataka A, Kobayashi H, et al. Massive debris in the intrahepatic bile ducts in chole-dochal cyst: possible cause of postoperative stone formation. Pediatr Surg Int 2004; 20: 67-69(ケースシリーズ)

7) Uno K, Tsuchida Y, Kawarasaki H, et al. Development of intrahepatic cholelithiasis long after primaryexcision of choledochal cysts. J Am Coll Surg 1996; 183: 583-588(ケースシリーズ)

8) 金子健一郎,安藤久實.先天性胆道拡張症と肝内結石.胆と膵 2003; 23: 759-762(ケースシリーズ)9) 正田純一,田中直見,加納雅仁,ほか.肝内コレステロール石の生成の特徴―疾病肝でのコレステロー

ル・胆汁酸代謝からの検討.胆と膵 1996; 17: 615-621(ケースシリーズ)10) Zhao L, Yang R, Cheng L, et al. Epithelial-mesenchymal transitions of bile duct epithelial cells in primary

hepatolithiasis. J Korean Med Sci 2010; 25: 1066-1070(ケースコントロール)11) Li FY, Cheng NS, Mao H, et al. Significance of controlling chronic proliferative cholangitis in the treatment

of hepatolithiasis. World J Surg 2009; 33: 2155-2160(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) Suzuki Y, Mori T, Yokoyama M, et al. Hepatolithiasis: analysis of Japanese nationwide surveys over a

period of 40 years. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 617-622(横断)

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解説

胆囊結石症患者を無治療にて経過観察すると,追跡調査前の 1年間に疼痛発作を経験した有症状患者では,調査前に疼痛発作を経験しなかった無症状患者に比較して,より高頻度に症状が出現する 1, 2).有症状胆囊結石における平均 40 日間の手術待機中に,入院が必要なほど強い疼痛を認めたのは 5%程度であるが,その 1/3 は過去にも重篤な症状を呈している.しかし,大多数の胆囊結石の疼痛は長く続かず,穏やかな自然経過をとることが多いとされる 3).無症状胆石の転帰に関しては,毎年 2%が軽い症状を,1.3%が中等度,0.2%が重篤な症状を

示す 4).平均 8.7 年の経過観察で 10%に軽い症状が出現したとの報告もあるが,年間 1〜3%に重篤な症状を示す 5).重篤な症状は急性胆囊炎・急性胆管炎・高度黄疸・膵炎などによるが,そのなかで最も頻度の高いものは急性胆囊炎である 6).

無症状胆石における症状発現頻度に関しては,糖尿病などの背景疾患の有無,地理的あるいは人種的に差異がある 2, 4).症状の発生に関しては,男性よりも女性に 7),やせた患者よりも肥満した患者に多い 3, 8).無症状胆石の有症状化率は発見されてから最初の 1〜3年が最も高い 6, 7).肝硬変症など慢性肝疾患に合併した無症状胆石に関しても,合併症の頻度は低く,外科的治療なしに安全に管理することが可能だったとされている 9).

無症状胆石に手術を施行するかしないかに関する RCTはない.近年,腹腔鏡下胆囊摘出術が安全に施行できるといっても,90%以上の無症候性胆石患者が臨床的に「無症状」のままなので,腹腔鏡下胆囊摘出術を予防的にルーチンに施行することは勧められない 10).原則的に無症状胆石に対しては経過観察とする.

文献

1) Thistle JL, Cleary PA, Lachin JM, et al. The natural history of cholelithiasis: the national cooperative gall-stone study. Ann Intern Med 1984; 101: 171-175(コホート)

2) Del Favero G, Caroli A, Meggiato T, et al. Natural history of gallstones in non-insulin-dependent diabetes

Clinical Question 1-81.疫学・病態 ― ❹自然史

胆囊結石の自然史は?

CQ 1-8 胆囊結石の自然史は?

ステートメント

● 胆囊結石例では,少数例に重篤な症状,あるいは合併症を発症する.

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④自然史

mellitus: a prospective 5-year follow-up. Dig Dis Sci 1994; 39: 1704-1707(コホート)3) Epari KP, Mukhtar AS, Fletcher DR, et al. The outcome of patients on the cholecystectomy waiting list in

Western Australia 1999-2005. ANZ J Surg 2010; 80: 703-709(横断)4) Attili AF, De Santis A, Capri R, et al. The natural history of gallstones: the GREPCO experience: The

GREPCO Group. Hepatology 1995; 21: 655-660(コホート)5) Festi D, Reggiani ML, Attili AF, et al. Natural history of gallstone disease: expectant management or active

treatment? results from a population-based cohort study. J Gastroenterol Hepatol 2010; 25: 719-724(コホート)

6) Friedman GD. Natural history of asymptomatic and symptomatic gallstones. Am J Surg 1993; 165: 399-404(メタ)

7) Friedman GD, Raviola CA, Fireman B. Prognosis of gallstones with mild or no symptoms: 25 years of fol-low-up in a health maintenance organization. J Clin Epidemiol 1989; 42: 127-136(コホート)

8) Angelico F, Del Ben M, Barbato A, et al. Ten-year incidence and natural history of gallstone disease in arural population of women in central Italy: The Rome Group for the Epidemiology and Prevention ofCholelithiasis (GREPCO). Ital J Gastroenterol Hepatol 1997; 29: 249-254(コホート)

9) Dunnington G, Alfrey E, Sampliner R, et al. Natural history of cholelithiasis in patients with alcoholic cir-rhosis (cholelithiasis in cirrhotic patients). Ann Surg 1987; 205: 226-229(ケースシリーズ)

10) Supe A. Asymptomatic gall stones-revisited. Trop Gastroenterol 2011; 32: 196-203(コホート)

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Clinical Question 1-91.疫学・病態 ― ❺胆道炎

急性胆囊炎発生のメカニズムは?

CQ 1-9 急性胆囊炎発生のメカニズムは?

ステートメント

● 胆囊結石による急性胆囊炎は,胆石が胆囊管に嵌頓し閉塞をきたすことによって発生する.胆囊内胆汁のうっ滞が胆囊粘膜を傷害し,引き続いて炎症性メディエーターが活性化することによる.

● 急性無石胆囊炎は,主に胆囊内胆汁うっ滞によるものと胆囊壁の血流障害によるものに大別される.

解説

90%以上の急性胆囊炎の原因は胆囊内の胆石による 1).最も重要な要素は胆囊管の閉塞であり,その後,胆囊粘膜内のホスホリパーゼ A2 の活性化とプロスタグランジンを介して炎症が惹起される.胆石疝痛の患者にジクロフェナクを投与し,プロスタグランジン産生を抑制することで急性胆囊炎への移行を防止した無作為試験からも,急性胆囊炎の発症メカニズムにはプロスタグランジンが重要な役割を担っていると考えられる 2).発症当初は痛みのみであるが,胆囊は腫大・緊満し,壁肥厚が認められ,やがて胆囊周囲に

滲出液を伴う.急性胆囊炎の初期の病態には胆囊胆汁への細菌感染の頻度は少なく,約半数の症例にとどまることから,細菌感染の関与は少ないものと考えられている 3).炎症も当初は無菌性であるが,放置すると多くは腸桿菌や腸球菌属,嫌気性菌などの感染を受ける.さらに進行すれば胆囊壁は壊死し壊疽性胆囊炎となる.ガス産生菌の感染を受けると胆囊壁や粘膜内にガスが形成される(気腫性胆囊炎).適当な治療が施行されないと穿孔して腹膜炎となる 1).

急性無石胆囊炎は 10%前後とまれである 4, 5).その成因は様々であるが,胆囊内胆汁うっ滞によるものと胆囊壁の血流障害によるものに大別される.前者は重症外傷や熱傷,胸腹部手術後の過大侵襲に起因する脱水状態によるものや 4),胃切除術後や長期経静脈栄養,長期臥床による胆囊収縮能低下による胆汁過濃縮が原因となる 6).後者は胆囊管や胆囊頸部の捻転や腫瘍などによる機械的な血流障害,動脈硬化に起因するアテローム血栓や高脂血症による胆囊虚血などがあげられているが 4),臨床的には両者が混在していると考えられる.さらにはアレルギーによるもの 7),A型肝炎ウイルス(HAV)や Epstein-Barrウイルス(EBV)8)などのウイルス感染,サルモネラ菌,チフス菌などの細菌感染や菌血症による急性胆囊炎 5)が報告されている.

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— 21 —

⑤胆道炎

文献

1) Strasberg SM. Clinical practice: acute calculous cholecystitis. N Engl J Med 2008; 358: 2804-2811(メタ)2) Akriviadis EA, Hatzigavriel M, Kapnias D, et al. Treatment of biliary colic with diclofenac: a randomized,

double-blind, placebo-controlled study. Gastroenterology 1997; 113: 225-231(ランダム)3) Csendes A, Becerra M, Burdiles P, et al. Bacteriological studies of bile from the gallbladder in patients with

carcinoma of the gallbladder, cholelithiasis, common bile duct stones and no gallstones disease. Eur J Surg1994; 160: 363-367(コホート)

4) Barie PS, Eachempati SR. Acute acalculous cholecystitis. Gastroenterol Clin North Am 2010; 39: 343-357(メタ)

5) Huffman JL, Schenker S. Acute acalculous cholecystitis: a review. Clin Gastroenterol Hepatol 2010; 8: 15-22(メタ)

6) Crichlow L, Walcott-Sapp S, Major J, et al. Acute acalculous cholecystitis after gastrointestinal surgery. AmSurg 2012; 78: 220-224(ケースシリーズ)

7) Fox H, Mainwaring AR. Eosinophilic infiltration of the gallbladder. Gastroenterology 1972; 63: 1049-1052(ケースシリーズ)

8) Iaria C, Arena L, Di Maio G, et al. Acute acalculous cholecystitis during the course of primary Epstein-Barrvirus infection: a new case and a review of the literature. Int J Infect Dis 2008; 12: 391-395(ケースシリーズ)

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Clinical Question 1-10

急性胆管炎発生のメカニズムは?

1.疫学・病態 ― ❺胆道炎

CQ 1-10 急性胆管炎発生のメカニズムは?

ステートメント

● 急性胆管炎の多くは,結石による胆管閉塞と胆汁中の細菌増殖(胆汁感染)により起こる.

解説

急性胆管炎は,胆管結石症・悪性疾患などによる胆管閉塞または狭窄と,胆汁への感染がある場合に発症する 1).胆管結石は急性胆管炎の主要な原因のひとつである 2, 3).急性胆管炎の起炎菌として,Escherichia coli,Klebsiella,Enterobacter などが高頻度で分離される.また,嫌気性菌としては Clostridium,Bacteroides などがしばしば分離される 4〜6).胆道感染は通常収縮能が低下した乳頭から逆行性に細菌が侵入するが,ときに経門脈的に肝

細胞類洞から Disse腔を通って胆道に侵入する.健常人では胆汁中に細菌が侵入しても胆管炎を併発しない.これは胆汁酸や胆汁中に分泌される IgAが抗菌作用を持つからである 7).しかし,胆道閉塞や胆汁うっ滞により IgA分泌が減少し,Kupffer cell機能が低下すると急性胆管炎が起こる.さらに,胆道内圧が 20 cmH2Oを超えると(正常は 7〜14 cmH2O),cholangiovenousrefluxが進行して循環血液内に細菌を含んだ胆汁が流入して菌血症となり,いわゆる急性閉塞性化膿性胆管炎(acute obstructive suppurative cholangitis:AOSC)となる 4, 8).また,医原性急性胆管炎は ERCPや EST後,乳頭形成術や胆管消化管吻合術後にしばしば観察される 7).

文献

1) Feldman M, Frieman LS, Sleisenger MH (eds). Gastrointestinal and Liver Disease, 7th Ed, Saunders,Philadelphia, 2002: p1085(ケースシリーズ)

2) Gigot JF, Leese T, Dereme T, et al. Acute cholangitis: multivariate analysis of risk factors. Ann Surg 1989;209: 435-438(横断)

3) Lipsett PA, Pitt HA. Acute cholangitis. Surg Clin North Am 1990; 70: 1297-1312(ケースシリーズ)4) Maluenda F, Csendes A, Burdiles P, et al. Bacteriological study of choledochal bile in patients with com-

mon bile duct stones, with or without acute suppurative cholangitis. Hepatogastroenterology 1989; 36:132-135(ケースシリーズ)

5) Sinanan MN. Acute cholangitis. Infect Dis Clin North Am 1992; 6: 571-599(ケースシリーズ)6) Csendes A, Mitru N, Maluenda F, et al. Counts of bacteria and pyocites of choledochal bile in controls and

in patients with gallstones or common bile duct stones with or without acute cholangitis. Hepatogastroen-terology 1996; 43: 800-806(ケースシリーズ)

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⑤胆道炎

7) Lee JG. Diagnosis and management of acute cholangitis. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2009; 6: 533-541(ケースシリーズ)

8) Csendes A, Hurdiles P, Diaz JC, et al. Bacteriological studies of liver parenchyma in controls and inpatients with gallstones or common bile duct stones with or without acute cholangitis. Hepatogastroen-terology 1995; 42: 821-826(横断)

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Clinical Question 1-111.疫学・病態 ― ❻胆道癌

胆囊結石症は胆囊癌のリスクファクターか?

CQ 1-11 胆囊結石症は胆囊癌のリスクファクターか?

ステートメント

● 胆囊結石症が胆囊癌のリスクファクターとする明らかなエビデンスは今のところない.しかし,胆囊癌患者では胆囊結石の合併が高率であるため,注意深い胆囊壁の観察が必要である.

解説

胆囊癌患者では有意に胆囊結石保有率が高いとされ 1〜6),10 編の論文(コホート研究 3編,症例対象研究 7編)のメタアナリシスでは,胆石の保有は相対危険度(relative risk)4.9 と最も強い胆囊癌のリスクファクターであったと述べている 2).2,583 例の長期観察結果(観察期間中央値13.3 年)によると,5例に胆囊癌の発生を認め,男性においては相対危険度 8.3 と健常人に比べて発生率が高かったと報告している 3).性,年齢,地域をマッチさせた一般人との比較においても,胆石と胆囊癌は有意に関連があると報告され 4),剖検例の検討で胆石保有者の胆囊癌合併率は胆石非保有者のそれより 6倍高いという報告もある 1).英国の大規模なケースコントロールスタディでも胆囊癌のリスクとして肥満,喫煙,糖尿病などがあげられているが,胆石保有が最も高リスク群としている 5).

胆囊結石と胆囊癌の因果関係については,胆石保有期間が長い(高齢者)ほど,胆囊癌の発生率が高い 7),結石が 3 cm以上と大きく,結石量(数と体積)が多いほど胆囊癌の発生率が高い 8〜11),胆石があると胆囊粘膜の dysplasiaやmetaplasiaの発生率が高い 12),有症状の胆囊結石に胆囊癌発生率が高い 13)などが報告されており,胆石による胆囊粘膜への長期間の刺激が胆囊癌発生の原因となっている可能性が示唆されている.こうした胆石と胆囊癌発生との関連については性差については多産系の女性に多いとされ 14),人種差 15)を示唆する報告もある.しかしながら,胆囊結石症が胆囊癌のリスクファクターとする明らかなエビデンスは今のところない.

文献

1) Kimura W, Shimada H, Kuroda A, et al. Carcinoma of the gallbladder and extrahepatic bile duct in autop-sy cases of the aged, with special reference to its relationship to gallstones. Am J Gastroenterol 1989; 84:386-390(横断)

2) Randi G, Franceschi S, La Vecchia C. Gallbladder cancer worldwide geographical distribution and risk fac-tors. Int J Cancer 2006; 118: 1591-1602(メタ)

3) Maringhini A, Moreau JA, Melton LJ 3rd, et al. Gallstones, gallbladder cancer, and other gastrointestinal

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⑥胆道癌

malignancies: an epidemiologic study in Rochester, Minnesota. Ann Intern Med 1987; 107: 30-35(コホート)

4) Ahrens W, Timmer A, Vyberg M, et al. Risk factors for extrahepatic biliary tract carcinoma in men: med-ical conditions and lifestyle: results from a European multicentre case-control study. Eur J GastroenterolHepatol 2007; 19: 623-630(コホート)

5) Grainge MJ, West J, Solaymani-Dodaran M, et al. The antecedents of biliary cancer: a primary care case-control study in the United Kingdom. Br J Cancer 2009; 100: 178-l80(ケースコントロール)

6) Zou S, Zhang L. Relative risk factors analysis of 3,922 cases of gallbladder cancer. Zhonghua Wai Ke ZaZhi 2000; 38: 805-808(横断)

7) Serra I, Yamamoto M, Calvo A, et al. Association of chili pepper consumption, low socioeconomic statusand longstanding gallstones with gallbladder cancer in a Chilean population. Int J Cancer 2002; 102: 407-411(ケースコントロール)

8) Lowenfels AB, Walker AM, Althaus DP, et al. Gallstone growth, size, and risk of gallbladder cancer: aninterracial study. Int J Epidemiol 1989; 18: 50-54(横断)

9) Diehl AK. Gallstone size and the risk of gallbladder cancer. JAMA 1983; 250: 2323-2326(ケースコントロール)

10) Csendes A, Becerra M, Rojas J, et al. Number and size of stones in patients with asymptomatic and symp-tomatic gallstones and gallbladder carcinoma: a prospective study of 592 cases. J Gastrointest Surg 2000; 4:481-485(コホート)

11) Roa I, Ibacache G, Roa J, et al. Gallstones and gallbladder cancer-volume and weight of gallstones are asso-ciated with gallbladder cancer: a case-control study. J Surg Oncol 2006; 93: 624-628(ケースコントロール)

12) Yamagiwa H. Mucosal dysplasia of gallbladder: isolated and adjacent lesions to carcinoma. Jpn J CancerRes 1986; 80: 238-243(横断)

13) Scott TE, Carroll M, Cogliano FD, et al. A case-control assessment of risk factors for gallbladder carcinoma.Dig Dis Sci 1999; 44: 1619-1625(ケースコントロール)

14) Alvi AR, Siddiqui NA, Zafar H. Risk factors of gallbladder cancer in Karachi-a case-control study. World JSurg Oncol 2011; 9: 164(ケースコントロール)

15) Lowenfels AB, Lindstrom CG, Conway MJ, et al. Gallstones and risk of gallbladder cancer. J Natl CancerInst 1985; 75: 77-80(ケースコントロール)

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Clinical Question 1-121.疫学・病態 ― ❻胆道癌

肝内結石症は肝内胆管癌のリスクファクターか?

CQ 1-12 肝内結石症は肝内胆管癌のリスクファクターか?

ステートメント

● 肝内結石症は肝内胆管癌を合併する頻度が高く,また治療後の経過観察期間中に肝内胆管癌を発症することも多く,肝内胆管癌のリスクファクターと考えられる.

解説

日本における全国疫学調査では,肝内結石症 2,375 例のうち 4.2%に肝内胆管癌の合併を認め 1),その頻度は 4.0〜12.5%であり,90%以上が結石存在部位に一致している 2〜6).台湾での検討では肝内胆管癌が合併する頻度は 5%7),6.8%8)と報告されている.また,古川ら 9)は,無症状で治療されなかった肝内結石症を経過観察し,2.5%に肝内胆管癌の発生を認めている.Chijiiwaら 3)

は,肝内結石症初回治療後経過観察中の肝内胆管癌発生を 109 例のうち 8例(7.3%)に認め,8例のうち 7例は初回治療後 2〜14 年(平均 8年後)の発生であったと報告している.日本の検討では胆道手術歴があり病悩期間が長い肝内結石症例に肝内胆管癌の合併が多く認められた 1, 6).一方,中国の大規模なケースコントロールスタディでは,肝内結石症に肝内胆管癌が発生するリスクファクターとして,喫煙,癌の家族歴,10 年以上の病悩期間の 3因子を報告している 10).肝内結石症に合併した肝内胆管癌の 3年生存率は 0〜11.8%と報告されている 5, 6).組織学的にも肝内結石症では過形成,異型性が認められ 2),繰り返す胆管炎や胆汁うっ滞が原

因と推測されているが,ビリルビンカルシウム石だけでなくコレステロール胆石でも同様に癌の発生があるとの報告もある 3).胆管上皮の異型病変は平坦型異型病変(BilIN)および乳頭状異型病変(IPNB)に分類される 11).肝内結石症からの発癌は大部分が前者であり,平坦あるいは微小乳頭状の胆管上皮異型病変が認められ,これらを多段階発癌の前癌病変として BilINと定義されている 12).これらは細胞の重層化,多層化,核/胞体比の増加,核濃染などをもとに判断した異型度により 3段階に分類され,BilIN-3 は carcinoma in situ であり,浸潤性胆管癌に進展するとされる 13).一方,IPNBはしばしば胆管拡張を伴い,粘液の過剰産生を示す症例も多い.IPNB-1 は境界病変あるいは良性病変を示し,IPNB-2 は高分化型の乳頭状腺癌であるいは絨毛状腺癌である.IPNBは通常型腺癌または粘液癌への移行が知られている 12).肝内結石症の胆管上皮には BilINや IPNBの早期,初期病変が認められ,多段階発癌様式で通常型の管状腺癌へ進展すると考えられている 14).

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⑥胆道癌

文献

1) 内山和久,谷村 弘,大西博信,ほか.肝内結石症に合併する肝内胆管癌.臨床外科 1997; 52: 199-202(ケースシリーズ)

2) Ohta T, Nagakawa T, Ueda N, et al. Mucosal dysplasia of the liver and the intraductal variant of peripher-al cholangiocarcinoma in hepatolithiasis. Cancer 1991; 68: 2217-2223(ケースシリーズ)

3) Chijiiwa K, Yamashita H, Yoshida J, et al. Current management and long-term prognosis of hepatolithia-sis. Arch Surg 1995; 130: 194-197(ケースシリーズ)

4) Kubo S, Kinoshita H, Hirohashi K, et al. Hepatolithiasis associated with cholangiocarcinoma. World J Surg1995; 19: 637-641(ケースシリーズ)

5) Uchiyama K, Onishi H, Tani M, et al. lndication and procedure for treatment of hepatolithiasis. Arch Surg2002; 137: 149-153(ケースシリーズ)

6) 森 俊幸,鈴木 裕,阿部展次,ほか.わが国における肝内結石症の変遷.胆と膵2007; 28: 479-482(ケースシリーズ)

7) Chen MF, Jan YY, Wang CS, et al. A reappraisal of cholangiocarcinoma in patient with hepatolithiasis.Cancer 1993; 71: 2461-2465(ケースシリーズ)

8) Jan YY, Chen MF, Wang CS, et al. Surgical treatment of hepatolithiasis: long-term results. Surgery 1996;120: 509-514(ケースシリーズ)

9) 古川正人,佐々木 誠,大坪光次,ほか.肝内結石症例の自然経過.胆と膵1998; 19: 1021-1027(ケースシリーズ)

10) Liu ZY, Zhou YM, Shi LH, et al. Risk factors of intrahepatic cholangiocarcinoma in patients with hepa-tolithiasis: a case-control study. Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2011; 10: 626-631(ケースコントロール)

11) 高村博之,佐藤保則,中沼安二,ほか.肝内結石症と肝内胆管癌.肝胆膵画像2010; 12: 173-182(ケースシリーズ)

12) Zen Y, Aishima S, Ajioka Y, et al. Proposal of histological criteria for intraepithelial atypical/proliferativebiliary epithelial lesions of the bile duct in hepatolithiasis with respect to cholangiocarcinoma: preliminaryreport based on interobserver agreement. Pathol Int 2005; 55: 180-188(ケースシリーズ)

13) 中沼安二,佐藤保則,佐々木素子,ほか.慢性胆管上皮障害からみた肝内胆管癌のハイリスク因子.肝・胆・膵 2008; 57: 27-33(ケースシリーズ)

14) 中沼安二,原田憲一,木村 康,ほか.肝内結石症と肝内胆管癌―実態と発癌の病理学的検討.胆と膵2010; 31: 185-192(ケースシリーズ)

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2.診 断

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解説

胆石症においては胆道痛という特徴的な腹痛がみられることはよく知られているが,一方で無症状胆石も多く存在するとされる.胆石症で手術を施行した 1,500 例での腹痛の発現頻度について,心窩部痛 38.0%,右季肋部痛 23.5%,両者を訴えた例を 13.9%に認めた一方で,疼痛のない症例が胆囊結石で 24.3%,総胆管結石,肝内結石ではそれぞれ 7.5%,8.9%であったと報告されている 1).2013 年に行われた日本胆道学会による全国胆石症調査では,治療を受けた胆石症症例(胆囊結石 439 例,総胆管結石 151 例)の初発症状について,腹痛・背部痛(胆囊結石 57.1%,総胆管結石 63.9%),発熱(胆囊結石 9.5%,総胆管結石 24.3%),悪心・嘔吐(胆囊結石 7.5%,総胆管結石 10.4%),黄疸(胆囊結石 3.3%,総胆管結石 16.7%),症状なし(胆囊結石 34.9%,総胆管結石 24.3%)と報告されている(胆道 2014; 28: 612-617 a)[検索期間外文献]).

文献

1) 松代 隆,阿部慎哉,林 仁守.腹痛を診る―肝・胆・膵疾患.Pharma Medica 1989; 7 (11): 81-86(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) 日本胆道学会学術委員会.胆石症に関する 2013 年度全国調査結果報告.胆道 2014; 28: 612-617(横断)

Clinical Question 2-12.診断 ― ❶症状

胆石症の症状は?

CQ 2-1 胆石症の症状は?

ステートメント

● 胆石症では特徴的な腹痛のほか,発熱,黄疸,悪心・嘔吐などの症状を認めることがあるが,無症状であることも少なくない.胆道痛を考えさせる腹痛については,胆石の存在を念頭に置いて診療にあたることが適切と考えられる.

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解説

胆石発作は胆道仙痛と呼ばれる,胆囊の収縮に伴う発作性の疼痛である.心窩部から右季肋部の疼痛で,右肩に放散することがある.食後に発症することが多く,誘発因子として脂肪食があげられる.診察に際し聴取すべきなのは,CQ 1-2 に記載されている「5F」や脂質異常症,食生活習慣な

ど胆石症とかかわる各種因子,およびそれに関連して糖尿病などの生活習慣病やメタボリックシンドロームの既往である.さらに,胆囊結石の高リスクとして,上部消化管手術(食道 1),胃 2)),肝硬変 3),急激な体重減少,原発性副甲状腺機能亢進症 4),溶血性貧血,心臓弁膜症弁置換術後,などの既往歴の有無も聴取する.身体所見を取るときには,肥満,やせといった栄養状態,妊娠の有無などに注意する必要がある.Murphy徴候は,胆石症,胆囊炎の腹部所見として重要である 5).なお,Murphy徴候とは,吸

気時に右季肋部を押さえると痛みのために呼吸が止まることである 6).また,胆石症では自発痛がまったくない場合でもいくつかの圧痛点を有することが知られて

いる.これらの圧痛点は 22〜57%の陽性率を示す 7).

文献

1) Tsunoda K, Shirai Y, Wkai T, et al. Increased risk of cholelithiasis after esophagectomy, J Hepato-Biliary-Pancreat Surg 2004; 11: 319-323(ケースシリーズ)

2) 桜庭 清,添野武彦,伊藤誠司.Medical Technologyの進歩と胆石症,尿路結石症―胃切除と胆石.最新医学 1988; 43: 1753-1757(ケースコントロール)

3) Maggi A, Solenghi D, Penzeri A, et al. Prevalence and incidence of cholelithiasis in patients with liver cir-rhosis. Ital J Gastroenterol Hepatol 1997; 29: 330-335(ケースシリーズ)

4) Broulik PD, Haas T, Adamek S. Analysis of 645 patients with primary hyperparathyroidism with specialrefenrences to cholelithiasis. Intern Med 2005; 44: 917-921(ケースコントロール)

5) Mills LD, Mills T, Foster B. Association of clinical and laboratory variables with ultrasound findings inright upper quadrant abdominal pain. South Med J 2005; 98: 155-161(ケースコントロール)

6) Aldea PA, Meehan JP, Sternbach G. The acute abdomen and Murphy’s signs. J Emerg Med 1986; 4: 57-637) 松代 隆,阿部慎哉,林 仁守.腹痛を診る―肝・胆・膵疾患.Pharma Medica 1989; 7 (11): 81-86(ケー

スシリーズ)

Clinical Question 2-22.診断 ― ❷病歴・診察

胆石症の診断に有用な病歴聴取,診察所見は?

CQ 2-2 胆石症の診断に有用な病歴聴取,診察所見は?

ステートメント

● 病歴を聴取する際には,胆石と関連があるとされる因子(CQ 1-2 参照)について聴き取りをする.診察では,特に腹部所見,腹痛・圧痛の有無,発熱,黄疸の有無を確認する.

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Clinical Question 2-32.診断 ― ❸検査

胆石症の一次検査は?

CQ 2-3 胆石症の一次検査は?

ステートメント

● 血液・生化学検査,腹部単純 X 線検査,腹部超音波検査(US)を施行する.

解説

血液・生化学検査は,胆囊結石では,胆囊炎の併発がないと異常が出ることは少ないが,総胆管結石では肝機能異常を伴うことが多い.胆囊摘出術を行う前に総胆管結石の有無を検討しておく必要があり,画像診断とともに肝機能検査を行う.急性胆石性胆囊炎患者において,γ -GTPが異常な症例では総胆管結石が多く認められ,90U/L

以上では 3例に 1例の割合で総胆管結石が認められるとの報告がある 1).胆囊結石に伴った総胆管結石で,γ -GTP,ALP,総ビリルビン,AST,ALTなどを測定すると

感度が高いと報告されている 2〜6).腹部単純 X線検査は,カルシウム含量の多い色素胆石(ビリルビンカルシウム石,黒色石)は,

X線陽性結石として認められるが,カルシウム成分の少ないコレステロール胆石は写らない.腹部超音波検査(US)は,胆石の診断に広く用いられている.超音波の物理的特性から考えて当然のことと理解されている部分があるためか,胆囊結石について USの診断能を論じた報告は少ない.「音響陰影を伴う高エコー域」を診断基準として用いた場合,高い精度結石の診断が可能と考えられる(図1).胆管結石に関しては他の検査法や手術成績との比較から診断能を比較した報告が多数みられる.USでの胆管結石描出率は 25〜75%である(図2)7〜12).総胆管結石が疑われた症例で tissue harmonic imaging(THI)を用いた腹部 USでは,感度 86%,特異度 87%で,正診率 86%と報告されている 13).

文献

1) Peng WK, Sheikh Z, Pterson-Brown S, et al. Role of liver function tests in predicting common bile ductstones in acute calculous cholecystisis. Br J Surg 2005; 92: 1241-1247(コホート)

2) Yang MH, Chen TH, Wang SE, et al. Biochemical predictors for absence of common bile duct stones inpatients undergoing laparoscopic cholecystectomy. Surg Endosc 2008; 22: 1620-1624(コホート)

3) Chan T, Yaghoubian A, Rosing D, et al. Total bilirubin is a useful predictor of persisting common bile duct

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— 33 —

③検査

stone in gallstone pancreatitis. Am Surg 2008; 74: 977-980(コホート)4) Anderson K, Brown LA, Daniel P, et al. Alanine transaminase rather than abdominal ultrasound alone is

an important investigation to justify cholecystectomy in patients presenting with acute pancreatitis. HPB(Oxford) 2010; 12: 342-347(コホート)

5) Videhult P, Sandblom G, Rudberg C, et al. Are liver function tests, pancreatitis and cholecystitis predictorsof common bile duct stones? results of a prospective, population-based, cohort study of 1171 patientsundergoing cholecystectomy. HPB (Oxford) 2011; 13: 519-527(コホート)

6) van Stantvort HC, Bakker OJ, Basselink MG, et al. Prediction of common bile duct stones in the earlieststage of acute pancreatitis. Endoscopy 2011; 43: 8-13(コホート)

7) 木村克己,藤田直孝,李 茂基.超音波検査の総胆管結石描出能.超音波医学 1990; 17: 420-426(コホート)

8) Sugiyama M, Atomi Y. Endoscopic ultrasonography for diagnosing choledocholithiasis: a prospectivecomparative study with ultrasonography and computed tomography. Gastrointest Endosc 1997; 45: 143-146(コホート)

9) Gross BH, Harter LP, Gore RM, et al. Ultrasonic evaluation of common bile duct stones: parospective com-parison with endoscopic retrograde cholangiopancreatography. Radiology 1983; 146: 471-474(コホート)

10) Laing FC, Jeffrey RB Jr. Choledocholithiasis and cystic duct obstruction: difficult ultrasonographic diagno-sis. Radiology 1983; 146: 475-479(コホート)

11) Cronan JJ. US diagnosis of choledocholithiasis: a reappraisal. Radiology 1986; 161: 133-134(コホート)12) O’Connor HJ, Hamilton I, Ellis WR, et al. Ultrasound detection of chledocholithiasis: prospective compari-

son with ERCP in the postcholecystectomy patient. Gastointest Radiol 1986; 11: 161-164(コホート)13) Ripolles T, Ramirez-Fuentes C, Martinez-Perez MJ, et al. Tissue harmonic sonography in the diagnosis of

common bile duct stones: a comparison with endoscopic retrograde cholangiography. J Clin Ultrasound2009; 37: 501-506(コホート)

図 1 胆囊結石(コレステロール胆石)図 2 腹部 US

総胆管結石を認める.

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解説

胆囊結石に対する腹部 USの有用性は高い(CQ 2-3 参照).超音波の音響陰影のパターンから胆石成分を推定し,特に小結石では胆石溶解療法の適応を決定するのに有用である 1).また,大結石では ESWLの適応の決定に使用されている 2).CTの診断能は装置の改良とともに向上している.CTでの胆石の描出はカルシウム含量に左

右され,純コレステロール(カルシウム含量 0.8%以下)を除く胆石は描出される.したがって,CT値から胆石の質的診断がある程度可能である 3)(図1).これによって胆石溶解療法や ESWL

の適応を決める 4).超音波検査で描出しにくい肥満患者に胆囊造影 CTが有用であると報告されている 5).

Clinical Question 2-42.診断 ― ❸検査

胆囊結石が疑われたときに次に行う検査は?

CQ 2-4 胆囊結石が疑われたときに次に行う検査は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● CT(DIC-CT を含む)を行うことを推奨する. 1(100%) C

● MRCP を行うことを提案する. 2(100%) C

図 1 胆囊結石,総胆管結石(ビリルビンカルシウム石)

a b

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③検査

経静脈性(点滴)胆道造影(DIC)は ERCPやMRCPの普及に伴って一時は行われなくなっていたが,MD-CTの普及により,DIC-CTとして使われるようになっている.また,DICで胆囊が描出される(図2)ことで,正常胆囊機能と診断し,胆石溶解療法の適応判定に利用する.MRCPにおいて,総胆管結石に関する論文は多数あるが,胆囊結石の診断に関する論文は少

ない.結石が大きくなれば描出される(図3)が,小結石では難しいと思われる.MRCPで胆囊結石を胆囊内の filling defectが少なくとも 2方向の画像にて描出されているものと定義し,胆囊頸部に存在し嵌頓しているものを嵌頓結石とすると,急性胆囊炎の 45 例にMRCPを施行し,18%に嵌頓結石を認めている 6).また,胆囊周囲の高信号の程度が急性胆囊炎の重症度とドレナージの適応に有用である.

図 2 DIC.胆囊が描出される(正常胆囊機能)

図 3 腹部 MRI

a b

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2.診断

文献

1) 土屋幸浩,矢澤孝文,近藤福男,ほか.胆囊結石の超音波診断と胆石の種類.胆と膵 1986; 7: 1219-1226(コホート)

2) 三上 繁,土屋幸浩,夏木 豊,ほか.USからみた胆石種類の質的診断.胆と膵 1991; 12; 1199-1204(コホート)

3) Barakos JA, Ralls PW, Lapin SA, et al. Cholelithiasis: evaluation with CT. Radiology 1987; 162: 415-418(コホート)

4) 松本泰二,天野康雄,桐渕義康.CTからみた胆石種類の質的診断.胆と膵1991; 12: 1205-1212(コホート)5) Neitlich T, Neitlich J. The imaging evaluation of cholelithiasis in the obese patient-ultrasound vs CT chole-

cystography: our experience with the bariatric surgery population. Obes Surg 2009; 19: 207-210(コホート)

6) 伊藤 啓,藤田直孝,野田 裕,ほか.急性胆囊炎に対するMRCPの意義.日本消化器病学会雑誌 2000;97: 1472-1479(コホート)

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解説

腹部 USは非侵襲的であり,施行することが勧められるが,総胆管結石の描出の感度が低い(CQ 2-3 参照)1, 2).そのため,CT,MRCP,EUSなどの他の検査を施行することが勧められる.急性胆石性膵炎 167 例では,USまたは CTで総胆管拡張 51 例(31%)と総胆管結石 15 例(9%)を認め,ERCPでは 89 例(53%)に総胆管結石を認めたと報告されている 3).腹部 CT検査では,感度 77.3%,特異度 72.8%であり,冠状断面像再構築(図1)しても診断能は有意な差はなく,5mm未満の小結石の診断能は 56%と低かった 4).排出性胆道造影(DIC)を用いた CTでは直接胆道造影に匹敵する診断能が報告されている 5〜7)(図2).総胆管結石に対する CTC(CT cholangiogra-phy)の診断能に関する研究では,6文献 266 例の成績から,感度 65〜100%,特異度 84〜100%であり,ERCPと比較的良好な一致率であったと報告されている 8).診断的 ERCPに比べMRCPの有用性が高いという報告がある.結石診断能,良悪性の鑑別診

断能はやや劣っているが,MRCPの臨床的,経済的効果は ERCPに比べて大変優れている 9).MRCPにおける総胆管結石の診断(図3)は,10 文献の比較から,感度 80〜100%,特異度 83〜100%,正診率 81.3〜95%以上と報告されている 10).しかし,MRCPでは 5mm以下の小結石では診断能が不良であったと報告されている 11).EUSは,総胆管結石の診断能は高くやや非侵襲的な検査である 12)(図4).解像力が最も優れ

ており,MRCPや DIC-CTなどの他の検査で診断がつかない場合に利用するとよい.しかしな

Clinical Question 2-52.診断 ― ❸検査

総胆管結石が疑われたときに次に行う検査は?

CQ 2-5 総胆管結石が疑われたときに次に行う検査は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● CT(DIC-CT を含む)を行うことを推奨する. 1(100%) A

● MRCP を行うことを推奨する. 1(100%) A

● CT や MRCP で結石が認められないときに,EUS を行うことを推奨する.

1(82%) A

● 治療を前提に ERCP を行うことを提案する. 2(100%) B

● 治療を前提に IDUS を行うことを提案する. 2(73%) B

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— 38 —

2.診断

図 1 腹部 CT(冠状断面).総胆管結石 図 2 DIC-CT画像.総胆管結石

図 3 MRCP像.総胆管結石(←)

a b

図 4 EUS像.総胆管結石

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— 39 —

③検査

がら,EUSの診断能は術者により差があるので,十分に技術を習得した専門医が行う必要がある.27 文献 2,673 例の検討では,EUSは感度 95%,特異度 95%と報告されている 13).急性胆石性膵炎 38 例の検討で,EUSと ERCPはともに感度 96%で,特異度は EUS 85%,ERCP 92%でEUSと ERCPの間に有意な差はなかった 14).EUSは胆管拡張のない小結石の診断能が高かったと報告されている 15).ERCPによる胆管結石の診断報告は数多くみられる(図5).各種検査法の診断能を比較する

試験で gold standardとされていることも多い.ERCPでは小結石の診断に難があることが指摘されている.また,胆道造影不能が 10%弱にみられることが問題である.治療への移行を前提に施行されることが多い.診断能以外には偶発症(膵炎,穿孔,出血,胆道感染症など)やコストの問題がある.胆石性膵炎症例で総ビリルビン値が 4mg/dL以上の症例に ERCPを施行することが,不必要な ERCPを減らすと報告されている 16).総胆管結石が疑われる症例では,EUSを先行することで,診断的 ERCPの検査数および内視鏡手技の偶発症を減らすと報告されている 17, 18).IDUSは,総胆管結石の診断に優れている.IDUSは,ERCPに比較して小結石の診断に有用

性が高い 19, 20)(図6).IDUSは感度 90%,特異度 98%,正診率 91%で,EUSは感度 92%,特異度 100%,正診率 95%と有意差がなく,ERCP,ESTに移行できる利点があると報告されている 21).ERCPで結石陰性 111 例のうち 47 例(42.3%)に小結石,胆泥を認め,5mm以下の結石や胆泥の診断に有用とされている 22).PTCS 23)や EST 24)などの総胆管結石治療後の遺残結石の治療診断に IDUSは優れている.しかし,IDUSも ERCPと同様に術後膵炎などの偶発症が認められる.

図 5 ERCPa:総胆管結石b:破砕c:結石除去後

a b c

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— 40 —

2.診断

文献

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12) Zare M, Kargar S, Akhondi M, et al. Role of liver function enzymes in diagnosis of choledoholithiasis in

図 6 IDUS像.小さな総胆管結石

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— 41 —

③検査

biliary colic patients. Acta Med Iran 2011; 49: 663-666(コホート)13) Tse F, Liu L, Barkun AN, et al. EUS: a meta-analysis of test performance in suspected choledocholithiasis.

Gastrointest Endosc 2008; 67: 235-244(メタ)14) Stabuc B, Drobne D, Ferkolj I, et al. Acute biliary pancreatitis: detection of common bile duct stones with

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stone in gallstone pancreatitis. Am Surg 2008; 74: 977-980(コホート)17) Petrov MS, Savides TJ. Systematic review of endoscopic ultrasonography versus endoscopic retrograde

cholangiopancreatography for suspected choledocholithiasis. Br J Surg 2009; 96: 967-974(メタ)18) Karakan T, Cindoruk M, Alagozlu H, et al. EUS versus endoscopic retrograde cholangiography for

patients with intermediate probability of bile duct stones: a prospective randomized trial. GastrointestEndosc 2009; 69: 244-252(ランダム)

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21) Wehrmann T, Martchenko K, Riphaus A. Catheter probe extraductal ultrasonography vs. conventionalendoscopic ultrasonography for detection of bile duct stones. Endoscopy 2009; 41: 133-137(コホート)

22) 香川幸一,古川善也,坂野文香,ほか.胆管領域における管腔内超音波検査(IDUS)の基本走査と診断的意義.胆と膵 2011; 32: 685-689(コホート)

23) Tamada K, Ohashi A, Tomiyama T, et al. Comparison of intraductal ultrasonography with percutaneoustranshepatic cholangioscopy for the identification of residual bile duct stones during lithotripsy. J Gas-troenterol Hepatol 2001; 16: 100-103(コホート)

24) 五十嵐良典,志村純一,浮田雄生,ほか.内視鏡的総胆管結石治療後の遺残結石診断に対する細径超音波プローブの有用性.消化器内視鏡 2001; 13: 1043-1047(コホート)

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— 42 —

解説

胆管癌を伴った肝内結石症の論文を多く認めるが,肝内結石の診断に関する論文は少ない.腹部 USでは,無音響陰影(AS)を認めれば,診断が可能であるが,ASを認めない結石もあ

り,診断能が低い 1).CTでは,肝内胆管の拡張を伴うと診断が可能であるが,コレステロール系の結石は胆汁と同じ濃度で診断が難しく,カルシウム成分を多く含む結石では診断が可能である 1).造影なしと造影ありの CTを組み合わせることで肝内結石の診断は感度 73%,特異度98%と報告されている 2).DIC-CTは胆管の走行を診断できることにより,有用と考えられる.MRCP(図1)は感度および特異度で ERCPより優位に優れていると報告されている 3).色素系

の結石では,常磁性体の金属キレートが含有され,高信号で描出されることより,MRIで脂肪抑制の T1 強調画像が有用である 4).また,DHCAを付加したMRCPで高率に肝内結石を描出できる 5).肝内結石症の診断について,ERCPや PTCまたは PTBDの有用性を報告した論文は少ない.

ERCPや PTCまたは PTBD(図2)は侵襲的であり,診断に有用であるが,治療を前提に行う必要がある(胆と膵 2013; 34: 1159-1164 a)[検索期間外文献]).

文献

1) Lim JH. Oriental cholangiohepatitis pathologic,clinical, and radiologic features. AJR Am J Roentgenol1991; 157: 1-8

Clinical Question 2-62.診断 ― ❸検査

肝内結石が疑われたときに次に行う検査は?

CQ 2-6 肝内結石が疑われたときに次に行う検査は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● CT(DIC-CT を含む)を行うことを推奨する. 1(100%) C

● MRCP を行うことを推奨する. 2(100%) C

● 治療を前提に ERCP を行うことを提案する. 2(82%) C

● 治療を前提に PTC を行うことを提案する. 2(73%) C

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— 43 —

③検査

2) Lee JK, Kim TK, Byun JH, et al. Diagnosis of intrahepatic and common duct stones: combined unenhancedand contrast-enhanced helical CT in 1090 patients. Abdom Imaging 2006; 31: 425-432(コホート)

3) Kim TK, Kim BS, Kim JH, et al. Diagnosis of intrahepatic stones: Superiority of MR cholangiopancreatog-raphy over endoscopic retrograde cholangiopancreatography. AJR Am J Roengenol 2002; 179: 429-434(コホート)

4) 竹原康雄.画像診断 update 検査の組み立てから診断まで―疾患 肝・胆・膵,消化管 主要疾患の診断―胆石症・胆管結石症・肝内結石症.日本医師会雑誌 2001; 40: S264-S265(ケースシリーズ)

5) Sakai Y, Tsuyuguchi T, Yukisawa S, et al. A new approach for diagnosis of hepatolithiasis: magnetic reso-nance cholangiopancreatography: potential usefulness of dehydrocholic acid (DHCA) administration inthe evaluation of hepatolithiasis. Hepatogastroenterology 2008; 55: 1801-1805(横断)

【検索期間外文献】a) 佐田尚宏,遠藤和洋,小泉 大,ほか.肝内結石の画像診断.胆と膵 2013; 34: 1159-1164

図 1 MRCP像.術後症例の肝内結石像 図 2 PTBD造影.肝内結石像

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3.治 療

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— 46 —

解説

無症状胆囊結石の手術適応については古くから議論されているが,無症状胆囊結石を手術したほうがよいか,手術しないほうがよいかに関する RCTは行われていない 1).無症状胆囊結石に対する手術は議論が多く,手術により生命を脅かすあるいは生活を変化させる合併症が起こりうることから,無症状胆石に対する胆囊摘出術は慎重に選択するべきである 2).特に,糖尿病患者,小児,臓器移植患者には勧められない 2).無症状の胆囊結石症例を経過観察した場合,有症状化や胆囊癌の発症が問題となる.胆囊頸

部や胆囊管への嵌頓で年に 2〜3%の胆石患者が疼痛発作をきたし,繰り返す 3).無症状胆囊結石患者のうち約 4%で胆囊炎,黄疸,膵炎,胆囊癌を発生し,年に 0.3%で急性胆囊炎が,0.2%で閉塞性黄疸が,0.04%から 1.5%で急性膵炎が,まれではあるが胆石イレウスが起きる 2, 3).また,無症状例の経過観察では,年 2〜4%で有症状化するリスクがあるとの報告もあり 4, 5),有症状化のリスクファクターとして,複数胆石,胆囊造影陰性,若年者,などがあげられている 6).一方,胆囊結石症例の自然経過観察では,有症状群に比べ無症状群で有症状化率が有意に低く,無症状例では無症状で経過することが多いという報告がある 7).多施設の横断的調査では,平均観察期間 8.7 年で 453 例(78.1%)が無症状のまま,61 例(10.5%)が軽度の症状,66 例(11.4%)が重度の症状が出現との結果であり,症状があってもなくても良性の自然経過をたどるとされている 8).有症状化してからでも手術を安全に実施できるが,腹腔鏡下胆囊摘出術の結果を比較した場

合,無症状例では手術時間,出血量は有意に少なく,開腹移行率(1.57% vs. 4.6%)や合併症率(4.72% vs. 8.80%)も低かったと報告されている 9〜11).

胆囊結石が胆囊癌発生のリスクファクターとなるかについての詳細は他項(CQ 1-11 参照)に譲るが,明確な証拠はなく,胆囊癌と胆石との関連性については結論が出ていないとする意見が多い 2).一方,3 cm以上の胆石,磁器様胆囊で胆囊癌のリスクが高いとする報告 3)や高齢の女性

Clinical Question 3-13.治療 ― ❶胆囊結石

無症状胆囊結石は治療すべきか?

CQ 3-1 無症状胆囊結石は治療すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 胆囊壁を十分に評価できる無症状例は治療を行わないことを提案する.

2(100%) C

● ただし,肝機能障害や胆囊癌発生の可能性を考慮して年に 1 回の腹部超音波検査などによる経過観察を行うことを推奨する.

2(100%) C

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— 47 —

①胆囊結石

では関連性があるとの報告 12)がある.病理組織学的検討では,胆囊粘膜の幽門腺化生,腸上皮化生,異型上皮,癌は年齢とともに進行しており,化生–異型–癌のシークエンスが胆囊でも認められている 13).これは,無症状症例でも認められたことから,胆囊癌発生母地となる可能性はある.しかしながら,経過観察例での胆囊癌発生頻度は年 0.01〜0.02%と低く 14),5 年以上の経過観察で 0.3%程度 15)であることから,胆囊癌の予防を目的に手術を勧めることはない 14).以上から,胆囊壁が腹部超音波検査で十分に評価できる症例では治療を行う必要はないが,

年に 1回の経過観察が推奨される.しかし,充満結石例,胆囊造影陰性例,癌の疑いのある壁肥厚例などは,無症状であっても患者と相談したうえで手術適応を決定することが好ましい.

文献

1) Gurusamy KS, Samraj K. Cholecystectomy for patients with silent gallstones. Cochrane Database Syst Rev2007; (1): CD006230(メタ)

2) Gurusamy KS, Davidson BR. Surgical treatment of gallstones. Gastroenterol Clin North Am 2010; 39: 229-244(ガイドライン)

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asymptomatic gallstones. Br J Surg 2004; 91: 734-738(コホート)6) 工藤卓也,有山 襄,須山正文.無症状胆石の取り扱い―無症状胆石の経過と治療方針.胆と膵 1998; 19:

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温存療法の意義.胆道 2004; 18: 114-118(ケースシリーズ)8) Festi D, Reggiani ML, Attili AF, et al. Natural history of gallstone disease: Expectant management or active

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10) 矢野浩司,衣田誠克,岩澤 卓,ほか.無症状胆石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術.Dig Endosc 2003; 15:190-195

11) 藤本圭一,松代 隆,山口 尚.社会復帰からみた無症状胆石の手術の可否.日本災害医学会会誌 1989;37: 760-765

12) Mlinaric-Vrbica S, Vrbica Z. Correlation between cholelithiasis and gallbladder carcinoma in surgical andautopsy specimens. Coll Antropol 2009; 33: 533-537(ケースコントロール)

13) Meirelles-Costa AL, Bresciani CJ, Perez RO, et al. Are histological alterations observed in the gallbladderprecancerous lesions? Clinics (Sao Paulo) 2010; 65: 143-150(ケースシリーズ)

14) Miyazaki M, Takada T, Miyakawa S, et al. Risk factors for biliary tract and ampullary carcinomas and pro-phylactic surgery for these factors. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2008; 15: 15-24(ガイドライン)

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— 48 —

解説

何らかの症状を呈した胆囊結石例に対する治療の基本は胆囊摘出術であり,特に急性胆囊炎発症例では胆囊摘出術が第一選択である.急性胆囊炎の原因は 90〜95%が胆石で,重症でない胆囊炎患者のうち 8〜10 週で 2%の再発

がある 1).また,急性胆囊炎患者で胆囊摘出術を受けたものと受けていないものを比較した RCT

があり,受けていない群では 1.5〜4 年の期間で 11%が急性胆囊炎を発症し,24%(8/33)の患者が胆囊摘出術を受けたとされている 1).胆石発作を起こした患者を 137 例を経過観察群(69 例)と胆囊摘出術群(68 例)に分けた検討では,半分は症状がなくなり,半分は手術を受けたという結果であった 2).ただし,振り分けの時点で痛みが強い患者はその後の発作を経験するリスクが高かった 2).このように,いったん症状が出現したあとで症状がなくなってしまうこともあるが,かつて症状を有した胆石症例 720 例の無症状期間をみると,10 年以上が 41 例(5.7%),20 年以上が 26 例(3.6%)であり,高齢者の胆石では長期間の無症状期を経て急激に重篤な状態で再発する例もまれでない 3)ことから,手術が望ましい.

年齢に関して,75 歳以上で急性胆囊炎をきたして腹腔鏡下胆囊摘出術を受けた胆囊結石患者100 例の検討で,偶発症発生率が全身で 24 例,局所で 9例の計 33%あり,入院死亡率が 8%と高かったことから,高齢で有症状胆石患者には予防的な胆囊摘出術を勧める 4).また,胆石手術患者で 70 歳以上と 70 歳未満の比較では,急性胆囊炎合併率(高齢者 23.2%,非高齢者 12.0%),併存疾患(高齢者 30%,非高齢者 9%),緊急手術ないしは早期手術(高齢者 22%,非高齢者 4%),胆管結石合併頻度(高齢者 47%,非高齢者 16%),胆汁中細菌検出率(高齢者 80%,非高齢者33%),術後合併症(高齢者 25%,非高齢者 9%),死亡率(高齢者 2.4%,非高齢者 0.6%)と高齢者胆石の特徴が明らかにされており,高齢者胆石症も重篤な併存疾患がなければ手術適応となるが,できるだけ急性胆道炎や閉塞性黄疸を伴わない間欠期の手術が望ましい 5).

胆囊総胆管結石症例では総胆管結石に対する内視鏡的治療を行ったあと,胆囊摘出術を勧め

Clinical Question 3-23.治療 ― ❶胆囊結石

有症状胆囊結石の治療は?

CQ 3-2 有症状胆囊結石の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 何らかの症状を有する胆囊結石例は胆囊摘出術を行うことを推奨する.

1(100%) B

● ただし,手術を希望しない場合で適応があれば経口溶解療法あるいは ESWL を行うことを提案する.

2(100%) B

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— 49 —

①胆囊結石

るかどうかについて議論の分かれるところである.胆囊結石患者 61 例の検討では,12 例(19.7%)で 1年以内に胆道痛が出現し,11 例で胆囊摘出術が必要となった.胆石径が 10mm以上あるいは急性膵炎合併例で胆囊摘出術を受ける率が高かったことから,総胆管結石除去後の胆囊胆石患者のうち,結石径が 10mm以上あるいは急性膵炎合併例は胆囊摘出術を強く勧めるべきである 6).手術以外の治療法について,ウルソデオキシコール酸(UDCA)による治療は有症状患者でも

胆道痛や手術,急性胆囊炎発生のリスクを有意に低下させたと報告されており,有症状患者で手術をしない症例のうち,溶解療法の適応があるときは UDCAが勧められる 7).また,ESWLによる治療は,有症状患者でも溶解療法との併用で 87%に完全消失が得られていることから 8),適応を選べば高い消失率が得られる治療法である 9, 10).

文献

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5) 今成朋洋,山本登司.高齢者胆石症.消化器科 1986; 4: 619-624(ケースコントロール)6) Lee KM, Paik CN, Chung WC, et al. Risk factors for cholecystectomy in patients with gallbladder stones

after endoscopic clearance of common bile duct stones. Surg Endosc 2009; 23: 1713-1719(ケースシリーズ)7) Tomida S, Abei M Yamaguchi T, et al. Long-term ursodeoxycholic acid therapy is associated with reduced

risk of biliary pain and acute cholecystitis in patients with gallbladder stones: a cohort analysis. Hepatol-ogy 1999; 30: 6-13(コホート)

8) Tsuchiya Y, Takanashi H, Haniya K, et al. An early gallstone clearance following repeat piezoelectriclithotripsy. J Gastroenterol Hepatol 1994; 9: 597-603(ケースシリーズ)

9) 榊原健治,平松秀樹,岡本憲和,ほか.水中スパーク方式による胆囊結石破砕療法について―とくに消失例の検討と現在の問題点について.胆道 1990; 4: 168-175(ケースシリーズ)

10) 山口 厚,田妻 進,西岡 智,ほか.胆囊結石症治療のガイドライン作成に向けて―胆囊結石症治療における胆囊温存療法の位置付け―ESWL治療後の再発と胆摘術後症状の検討から.胆道 2004; 18: 108-113

(ケースコントロール)

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— 50 —

3.治療 ― ❶胆囊結石

手術では腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択か?開腹の適応は?

Clinical Question 3-3

CQ 3-3 手術では腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択か? 開腹の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

手術では腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択か?● 腹腔鏡下手術に十分な経験を有する施設では,腹腔鏡下胆囊摘出術

が第一選択の術式であり,行うことを推奨する.

1(100%) A

開腹の適応は?● 術前に胆囊癌合併を疑う場合は,開腹手術を行うことを提案する.

2(100%) B

開腹の適応は?● 術中に胆囊癌合併を疑う場合は,開腹手術に移行することを提案す

る.

2(100%) B

開腹の適応は?● 高度炎症例で解剖学的関係が明瞭にできない場合は,開腹術で開

始,もしくは術中に開腹手術に移行することを提案する.

2(100%) B

解説

有症状胆囊結石症例に対する治療の基本は胆囊摘出術である.腹腔鏡下胆囊摘出術は開腹胆囊摘出術と比較しても死亡率と合併症発生率は同等であり 1, 2),入院期間は腹腔鏡下胆囊摘出術のほうが有意に短いため,腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択の術式として普及している(図1)3〜6).また,腹腔鏡下胆囊摘出術から開腹胆囊摘出術への移行率は 3.6〜8%であり,その理由は技術的困難,胆道損傷,麻酔の問題,器械の不良,などであったと報告されている 7〜10).男性,60歳以上,上腹部手術既往,糖尿病,術前心血管疾患の有無,著明な炎症(急性胆囊炎),結石の胆囊頸部への嵌頓例,胆囊周囲膿瘍,壁肥厚,術中胆囊癌判明例,ALPの上昇,白血球上昇,などが認められる例で開腹移行率が高かった(図2)7〜12).多変量解析により,特に急性胆囊炎,胆囊壁肥厚は開腹移行への有意な因子であったと報告されているが 13, 14),これらの因子があったとしても腹腔鏡下胆囊摘出術の適応外とはならない.胃切除術後の腹腔鏡下胆囊摘出術の是非についても,総胆管結石合併例や急性胆囊炎症例は手術時間が長くなるが,開腹移行率や合併症発生率も胃切除術の既往がない症例と同等であり,腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択となりうる 15, 16).近年,単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術が普及しつつあり,いくつかの RCTが行われている 17, 18).単

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— 51 —

①胆囊結石

孔式は従来の腹腔鏡下胆囊摘出術に比べ,有意に手術時間が長かったが,出血量や術後疼痛,合併症発生は同等であった 17).また,術後の QOLが高く,早期に社会復帰可能であったが,従来法より高いコストであった 18).開腹手術の適応となる症例は胆囊癌合併が疑われる症例が第一にあげられる.術中胆囊損傷

図 1 小結石充満a:USb:CT

a b

図 2 高度胆囊炎a:USb:CT

a b

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— 52 —

3.治療

に伴う腹膜播種や port site recurrenceなどの問題があり,術前から胆囊癌合併が診断された場合は,はじめから開腹手術を施行するべきである 19〜21).また,術中に胆囊癌合併と診断された場合はすぐに開腹へ移行すべきである.また,Mirizzi症候群に関しては,TypeⅠでは腹腔鏡下胆囊摘出術は施設のリソース次第で選択可能であるが,TypeⅡでは開腹手術が推奨される(CQ 3-7 参照).高度炎症例で解剖学的関係が明瞭にできない場合は,腹腔鏡で手術開始しても構わないが,合併症を引き起こす前に開腹術に移行すべきである.妊娠例について,現在は胎児への影響も少ないと考えられ,侵襲の少ない腹腔鏡下胆囊摘出術の適応外とはならない 22)が,症例に応じて臨機応変に対応すべきである.術者の経験,麻酔医の経験にも影響されるが,腹腔鏡下手術に十分な経験を有する施設では

胆囊結石例に対して腹腔鏡下胆囊摘出術が第一選択の術式となる.ただ,高度炎症例で解剖学的関係が明瞭にできない場合は開腹移行せざるを得なくなる場合が多く,合併症を引き起こす前に開腹術に移行すべきである.

文献

1) Keus F, de Jong JA, Gooszen HG, et al. Laparoscopic versus open cholecystectomy for patients with symp-tomatic cholecystolithiasis. Cochrane Database Syst Rev 2006; (4): CD006231(メタ)

2) Keus F, Gooszen HG, van Laarhovan CJ. Open, small-incision, or laparoscopic cholecystectomy forpatients with symptomatic cholecystolithiasis: an overview of Cochrane Hepato-Biliary Group reviews.Cochrane Database Syst Rev 2010; (1): CD008318(メタ)

3) Barkun JS, Barkun AN, Sampalis JS, et al. Randomised controlled trial of laparoscopic versus mini chole-cystectomy: The McGill Gallstone Treatment Group. Lancet 1992; 340: 1116-1169(ランダム)

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5) Shamiyeh A, Wayand W. Current status of laparoscopic therapy of cholecystolithiasis and common bileduct stones. Dig Dis 2005; 23: 119-126(非ランダム)

6) Hendolin HI, Paakonen ME, Alhava EM, et al. Laparoscopic or open cholecystectomy: a prospective ran-domised trial to compare postoperative pain, pulmonary function, and stress response. Eur J Surg 2000;166: 394-399(ランダム)

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8) Roviaro GC, Maciocco M, Rebuffat C, et al. Complications following cholecystectomy. J R Coll Surg Edinb1997; 42: 324-328(横断)

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10) Simopoulos C, Botaitis S, Polychronidis A, et al. Risk factors for conversion of laparoscopic cholecystecto-my to open cholecystectomy. Surg Endosc 2005; 19: 905-909(横断)

11) 中川国利,高橋祐輔,深町 伸,ほか.腹腔鏡下胆囊摘出術における開腹移行の検討.胆と膵 2011; 32:247-251(横断)

12) 徳山泰治,長田真二,眞田雄市,ほか.腹腔鏡下胆囊摘出術の開腹移行症例の検討.日本外科系連合学会誌 2009; 34: 562-565(ケースコントロール)

13) Alponat A, Kum CK, Koh BC, et al. Predictive factors for conversion of laparoscopic cholecystectomy.World J Surg 1997; 21: 629-633(ケースコントロール)

14) Rosen M, Brody F, Ponsky J. Predictive factors for conversion of laparoscopic cholecystectomy. Am J Surg2002; 184: 254-258(ケースコントロール)

15) Sasaki A, Nakajima J, Nitta H, et al. Laparoscopic cholecystectomy in patients with a history of gastrecto-my. Surg Today. 2008; 38: 790-794(ケースコントロール)

16) Kim J, Cho JN, Joo SH, et al. Multivariable analysis of cholecystectomy after gastrectomy: laparoscopy is afeasible initial approach even in the presence of common bile duct stones or acute cholecystitis. World J

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— 53 —

①胆囊結石

Surg 2012; 36: 638-644(ケースコントロール)17) Sinan H, Demirbas S, Ozer MT, et al. Single-incision laparoscopic cholecystectomy versus laparoscopic

cholecystectomy: a prospective randomized study. Surg Laparosc Endosc Percutan Tech 2012; 22: 12-16(ランダム)

18) Bucher P, Pugin F, Buchs NC, et al. Randomized clinical trial of laparoendoscopic single-site versus con-ventional laparoscopic cholecystectomy. Br J Surg 2011; 12: 1595-1702(ランダム)

19) Lundberg O, Kristoffersson. Open versus laparoscopic cholecystectomy for gallbladder carcinoma. J Hepa-tobiliary Pancreat Surg 2001; 8: 525-529(ケースシリーズ)

20) Wakai T, Shirai Y, Yokoyama N, et al. Early gallbladder carcinoma does not warrant radical resection. Br JSurg 2001; 88: 675-678(ケースコントロール)

21) Ouchi K, Mikuni J, Kakugawa Y, et al. Laparoscopic cholecystectomy for gallbladder carcinoma: results ofJapanese survey of 498 patients. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002; 9: 256-260(ケースコントロール)

22) 森 俊幸,阿部展次,正木忠彦,ほか.腹腔鏡下胆摘術より開腹手術を勧める胆囊疾患は? 胆と膵 2005;26: 315-320(ケースシリーズ)

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— 54 —

3.治療 ― ❶胆囊結石

腹腔鏡下胆囊摘出術における合併症は?

Clinical Question 3-4

CQ 3-4 腹腔鏡下胆囊摘出術における合併症は?

ステートメント

● 腹腔鏡下胆囊摘出術の術中合併症として,胆管損傷,出血,他臓器損傷などがあり,術後合併症には,後出血,胆汁漏,創感染,肩痛や皮下気腫などがある.

解説

日本内視鏡外科学会の第 12 回全国アンケート調査結果(日本内視鏡外科学会雑誌 2014; 19:499-632 a)[検索期間外文献])によると,2013 年における全胆囊摘出術に占める腹腔鏡下胆囊摘出術の割合は 83.0%と,胆石症の標準術式となり,開腹は上部手術既往例や高度の胆囊炎,胆囊癌が疑われる症例のみに適応とする施設も多い.したがって,合併症率を開腹と腹腔鏡で単純には比較できないが,現状ではほぼ同等とされる 1, 2).むしろ手術部位感染(SSI)は開腹症例に多いと報告されている 2).胆石症の 1990〜2013 年に施行された腹腔鏡下胆囊摘出術 452,936 例(単孔式 19,597 例を含む)

の解析では,術中合併症として,胆管損傷は 2,876 例(0.63%),開腹止血を要した出血が 2,349 例(0.51%),他臓器損傷 1,185 例(0.26%)などが報告されている a).その他,高度炎症による解剖不明例や手術既往による癒着,総胆管結石や他疾患発見による開腹移行例が 16,231 例(3.6%)あった(表1).器具の不具合による合併症や偶発症もこの 2年で 31 例報告され,特に内視鏡外科用クリップによるトラブルが 17 例(55%)と最も多かった.胆管損傷は総胆管を胆囊管と誤認することによる切開ないし切離,操作中の損傷によることが多く 3),出血は胆囊動脈,胆囊床

(中肝静脈の枝),肝動脈からの出血が多い 1〜3, a).これらの合併症は,術者の技術的レベル,炎症や癒着の程度,無理な手術の続行などに起因することが多い 3〜7).

術後合併症は前述のアンケート調査結果 a)では,後出血のため開腹止血を要した症例が 389例(0.09%),術後に判明した胆管損傷 977 例(0.21%)が報告されている.後出血は,胆囊動脈,胆囊床(中肝静脈)からの出血が多い a).胆汁漏は術中に気づかなかった胆道損傷(特に熱損傷による遅発性の穿孔),胆囊管にかけたクリップの不具合または逸脱による胆汁流出,まれではあるが Luschka管の開存などが原因となる 3).胆囊癌の port site recurrenceは 1990〜2013 年に 35例報告されており,慎重な適応が望まれる a).日本内視鏡外科学会の第 8回全国アンケート調査結果 8)によると,その他に術後肩痛や創感染,皮下気腫,呼吸器合併症などが報告されているが,いずれもその頻度は 2%以下であった.1990〜2003 年に 22 例の腹腔鏡下胆囊摘出術後死亡例の報告があった 8).直接手術手技に関連する死因として,気腹針やトロッカーによる大血管損傷 3例,胆管損傷 3例,十二指腸損傷(疑い)1例などがあり,その他の死因として術後肺塞栓

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— 55 —

①胆囊結石

8 例,術後膵炎 1例などがあった.

文献

1) Keus F, Gooszen HG, Van Laarhoven CJ. Systematic review: open, small-incision or laparoscopic cholecys-tectomy for symptomatic cholecystolithiasis. Aliment Pharmacol Ther 2009; 29: 359-378(メタ)

2) Halilovic H, Hasukic S, Matovic E, et al. Rate of complications and conversions after laparoscopic andopen cholecystectomy. Med Arh 2011; 65: 336-338(ケースコントロール)

3) Zha Y, Chen XR, Luo D, et al. The prevention of major bile duct injures in laparoscopic cholecystectomy:the experience with 13,000 patients in a single center. Surg Laparosc Endosc Percutan Tech 2010; 20: 378-383(ケースシリーズ)

4) Vecchio R, MacFadyen BV, Latteri S. Laparoscopic cholecystectomy: an analysis on 114,005 cases of UnitedStates series. Int Surg 1998; 83: 215-219(ケースシリーズ)

5) Huttl TP, Hrdina C, Kramling HJ, et al. Gallstone surgery in German university hospitals: development,complications and changing strategies. Langenbecks Arch Surg 2001; 386: 410-417(ケースシリーズ)

6) Rosen M, Brody F, Ponsky J. Predictive factors for conversion of laparoscopic cholecystectomy. Am J Surg

表1 腹腔鏡下胆囊摘出術に起因した合併症~2009 2010 2011 2012 2013 計

術中(術後)出血 2,349(389) 胆囊動脈 769(47) 28(3) 25(3) 40(1) 41(6) 903(60) 胆囊床 738(105) 42(8) 42(14) 57(7) 48(4) 927(138) 肝動脈 109(5) 6(0) 14(1) 5(0) 9(2) 143(8) その他 345(138) 9(16) 9(15) 9(5) 4(9) 376(183)術中(術後)に判明した胆管損傷 1,899(977) 総胆管 1,116(365) 52(9) 67(9) 62(12) 80(18) 1,377(413) 肝管 276(130) 23(10) 22(7) 27(15) 24(11) 372(173) その他 116(314) 8(20) 12(16) 9(20) 5(21) 150(391)術後胆管狭窄 198 総胆管 134 3 5 3 6 151 肝管 29 4 4 0 5 42 その他 4 0 0 0 1 5術中・術後に判明した他臓器損傷 1,185 消化管 611 16 34 33 36 730 血管 124 5 3 6 6 144 肝 196 15 19 17 7 254 その他 46 2 2 2 5 57出血,胆管損傷,他臓器損傷以外の開腹移行例 16,231 局所炎症のため 9,201 670 720 717 707 12,015 既往手術による癒着 2,101 134 138 148 154 2,675 総胆管結石が判明 598 17 18 10 11 654 他疾患発見 391 17 14 15 14 451 その他 360 26 17 19 14 436該当期間中の総腹腔鏡下胆囊摘出術症例数

349,668 23,761 25,001 26,697 27,809 452,936(文献 a より引用)

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— 56 —

3.治療

2002; 184: 254-258(ケースシリーズ)7) Panpimanmas S, Kanyaprasit K. Complications of laparoscopic cholecystectomy and their management.

Hepatogastroenterology 2004; 51: 9-11(ケースシリーズ)8) 内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第 8回集計結果報告.日本内視鏡外科学会雑誌2006; 11: 527-628

(横断)

【検索期間外文献】a) 内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第 12 回集計結果報告.日本内視鏡外科学会雑誌 2014; 19: 499-

632(横断)

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Clinical Question 3-53.治療 ― ❶胆囊結石

胆石溶解療法の適応は?

CQ 3-5 胆石溶解療法の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 胆汁酸製剤による経口溶解療法は胆囊機能正常例の X 線陰性コレステロール胆石に対して有効であり,行うことを提案する.

2(100%) A

解説

有症状の胆囊結石に対する各種の治療法について,医学判断学の手法により解析された結果,非手術療法は生活の質の面で優れていると評価されている 1).特に,X線陰性のコレステロール胆石に対する胆汁酸製剤による経口溶解療法の有効性がメタアナリシスから検証されている 2).ウルソデオキシコール酸(UDCA),ケノデオキシコール酸(CDCA)を併用して 6ヵ月間投与すると,直径 15mm未満の胆石における完全溶解率は 52〜62.8%,UDCA単独で 24〜38%と報告されている 2, 3).その溶解機序は胆汁コレステロール溶存度の向上であるが 4),安全性や有効性の面で UDCAが CDCAより優れている 5, 6).CDCAは下痢の出現を比較的高頻度に認め,さらに一過性の肝機能障害や血清脂質値に影響

を及ぼすことがあるため,一般臨床において使用される頻度は減少している 7).経口胆石溶解療法は,X線透過性コレステロール胆石に対して,胆囊機能が保たれていれば有効である(図1).さらに,胆石の CT画像(CT値 60HU未満)から溶解効果が予測できる 8〜10).したがって,腹部X線撮影で X線陰性,USおよび排泄性胆道造影で直径 15mm未満の浮遊する多発結石で,CT値 60HU未満が確認される症例が最適である.浮遊結石は経口造影剤が発売中止となった現在,経静脈性胆道造影にて確認する.ただし,治療効果には限界があり,石灰化が明らかな胆石や色素胆石,胆囊機能が廃絶している場合,溶解効果は期待できない.

胆汁酸製剤の用法用量としては,UDCA 7〜11.1mg/体重 kg/日あるいは 600mg/日を毎食後あるいは就寝前と様々な報告があるが 5, 6, 11, 12),日本では UDCA 600mg/日の投与が実際的である.CDCAを併用する場合には,CDCA 300mg/日を毎食後投与する.6〜12 ヵ月投与して溶解効果を画像診断で評価する.一方,UDCAは胆囊収縮に影響して胆囊容積を増大させることから疝痛の軽減も期待される 13, 14).UDCAによる完全溶解率は高いとはいえないが,副作用は少なく安全な治療法といえる 15).また,UDCAによる治療は手術のリスクを有意に下げ,胆道痛や急性胆囊炎発生率を下げることから,有症状患者で手術をしない症例のうち溶解療法の適応があるとき UDCAはひとつの選択肢になると思われる 16).溶解効果は脂質異常症治療薬シンバスタチンの併用により向上する 17).一方,メンソール,

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3.治療

アスピリンの併用は無効である 18, 19).溶解療法では再発が問題となる.溶解後 12 年間の累積再発率は 61%と報告されているが,50 歳以下では UDCA継続投与で 16%に抑制できる 20).一方,急激な体重減少や長期の中心静脈栄養に伴う胆石形成には,UDCAは明らかな効果を認めない 21, 22).胆石症に対する溶解療法は有効だが,臨床試験は比較的古いものが多く,日本の診療現場の

実状に合った再評価が必要である.

文献

1) 羽生泰樹,松井亮好,林 恭平.医学判断学による胆囊結石治療法の評価―患者の生活の質および費用効果の観点から.日本消化器病学会雑誌 1993; 90: 2895-2908(メタ)

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図 1 胆石溶解薬の適応と限界a:治療前b:12ヵ月後c:24ヵ月後

a b c

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— 59 —

①胆囊結石

medical dissolution of gallstones: a double-blind, randomized, dose-response study, and comparison withchenodeoxycholic acid. Hepatology 1984; 4: 308-314(ランダム)

7) 菅野啓司,田妻 進.胆膵治療における薬物療法のすべて―予防的投与から治療まで―胆石症.胆と膵2009; 30: 653-656

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9) Pereira SP, Veysey MJ, Kennedy C, et al. Gallstone dissolution with oral bile acid therapy: importance ofpretreatment CT scanning and reasons for nonresponse. Dig Dis Sci 1997; 42: 1775-1782(ケースコントロール)

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(ケースコントロール)11) Lanzini A, Facchinetti D, Pigozzi MG, et al. Best-buy regimen of ursodeoxycholic acid for patients with

gallstones. Scand J Gastroenterol 1991; 26: 551-556(ケースコントロール)12) Jazrawi RP, Pigozzi MG, Galatola G, et al. Optimum bile acid treatment for rapid gall stone dissolution.

Gut 1992; 33: 381-386(ケースコントロール)13) Forgacs IC, Maisey MN, Murphy GM, et al. Influence of gallstones and ursodeoxycholic acid therapy on

gallbladder emptying. Gastroenterology 1984; 87: 299-307(ケースコントロール)14) Festi D, Frabboni R, Bazzoli F, et al. Gallbladder motility in cholesterol gallstone disease: effect of

ursodeoxycholic acid administration and gallstone dissolution. Gastroenterology 1990; 99: 1779-1785(ケースコントロール)

15) 澁川成弘.膵胆道領域の治療における私のこだわり:なぜそうするのか―胆囊結石症に対する経口胆石溶解剤療法.胆と膵 2009; 30: 135-138

16) Tomida S, Abei M Yamaguchi T, et al. Long-term ursodeoxycholic acid therapy is associated with reducedrisk of biliary pain and acute cholecystitis in patients with gallbladder stones: a cohort analysis. Hepatol-ogy 1999; 30: 6-13(コホート)

17) Tazuma S, Kajiyama G, Mizuno T, et al. A combination therapy with simvastatin and ursodeoxycholicacid is more effective for cholesterol gallstone dissolution than is ursodeoxycholic acid monotherapy. JClin Gastroenterol 1998; 26: 287-291(非ランダム)

18) Lueschner M, Leuschner U, Lazarovici D, et al. Dissolution of gall stones with an ursodeoxycholic acidmenthol preparation: a controlled prospective double blind trial. Gut 1988; 29: 428-432(ランダム)

19) Tuncer I, Harman M, Mercan R, et al. The effects of ursodeoxycholic acid alone and ursodeoxycholic acidplus low-dose acetylsalicylic acid on radiolucent gallstones. Turk J Gastroenterol 2003; 14: 91-96(ランダム)

20) Villanova N, Bazzoli F, Taroni F, et al. Gallstone recurrence after successful oral bile acid treatment: a 12-year follow-up study and evaluation of long-term postdissolution treatment. Gastroenterology 1989; 97:726-731(非ランダム)

21) Marks JW, Stein T, Schoenfield LJ. Natural history and treatment with ursodiol of gallstones formed dur-ing rapid loss of weight in man. Dig Dis Sci 1994; 39: 1981-1984(ランダム)

22) Tsai S, Strouse PJ, Drongowski RA, et al. Failure of cholecystokinin-octapeptide to prevent TPN-associatedgallstone disease. J Pediatr Surg 2005; 40: 263-267(ランダム)

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— 60 —

適応基準:1.X線陰性のコレステロール胆石(CT値 50HU未満,純コレステロール胆石に特徴的な US

像を認める結石が最適)2.胆囊機能が正常(経静脈性胆道造影で胆囊が描出される)

解説

コレステロール胆石に対する体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)は有効な治療法である(図1).有症状の胆囊結石に対する ESWLは医学判断学手法によるメタアナリシスの結果,費用対効果の面では腹腔鏡下胆囊摘出術に劣るが,患者の生活の質を加味した生存期待値(QALE)で評価すると腹腔鏡下胆囊摘出術に勝る 1).開腹胆囊摘出術との RCTでは小型胆石(体積 4 cm3 未満)に対する費用対効果は同等であるが 2),単発の胆石であれば治療後 5年間の生存期待値においてESWLが胆囊摘出術に勝るとされる 3).一方,再発率や完全胆石除去率の点では胆囊摘出術が明らかに勝っている 4).したがって,費用対効果,患者満足度の観点から選択されるべきである.ESWL治療成績に関する報告は国内外から多数あり 5〜13),5〜10 年の長期成績 14〜17)から適応

を評価すると,①単発,②直径 20mm未満,③石灰化のない純コレステロール胆石(特徴的なUS像,X線透過性,CT値 50HU未満)に対して ESWLを実施した場合,1年後の消失率は 63〜90%である 5〜15).日本で比較的頻度の高い石灰化コレステロール胆石についても ESWL施行後 1年間で消失率 60%との報告もある 18).ただし,治療効果には限界があり,石灰化が明らかな胆石や色素胆石,胆囊機能が廃絶している場合,消失効果は期待できない.ESWLによる胆石治療には胆汁酸製剤 UDCAが投与され,破砕片消失に有効である 19〜21).一

方,ESWLでは再発が問題となる.10 年再発率は 54〜60%と推定されており 22, 23),胆囊機能が低下している場合に再発率が高い 24).また,UDCA投与が再発の抑制に有用とされている 17, 18).ESWL後の経過観察中,36%に胆囊摘出術が実施されたという報告があり 25),胆囊結石の第

一選択ではない.しかしながら,手術の高リスク例やMirizzi症候群 26, 27)における選択肢のひとつとしての価値はある.

Clinical Question 3-63.治療 ― ❶胆囊結石

ESWL の適応は?

CQ 3-6 ESWLの適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● ESWL は胆囊機能正常例の石灰化のないコレステロール胆石に対して有効であり,行うことを提案する.

2(100%) B

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— 61 —

①胆囊結石

文献

1) 羽生泰樹,松井亮好,林 恭平.医学判断学による胆囊結石治療法の評価―患者の生活の質および費用効果の観点から.日本消化器病学会雑誌 1993; 90: 2895-2908(メタ)

2) Nicholl JP, Brazier JE, Milner PC, et al. Randomised controlled trial of cost-effectiveness of lithotripsy andopen cholecystectomy as treatments for gallbladder stones. Lancet 1992; 340: 801-807(ランダム)

3) Bass EB, Steinberg EP, Pitt HA, et al. Cost-effectiveness of extracorporeal shock-wave lithotripsy versuscholecystectomy for symptomatic gallstones. Gastroenterology 1991; 101: 189-199(ケースコントロール)

4) Strasberg SM, Clavien PA. Overview of therapeutic modalities for the treatment of gallstone diseases. AmJ Surg 1993; 165: 420-426(ケースシリーズ)

5) Sackmann M, Delius M, Sauerbruch T, et al. Shock-wave lithotripsy of gallbladder stones: the first 175patients. N Engl J Med 1988; 318: 393-397(ケースシリーズ)

6) Dyrszka H, Patel S, Sanghavi B, et al. Sonographic gallstone patterns are of value in predicting the out-come of biliary lithotripsy. Am J Gastroenterol 1991; 86: 1626-1628(ケースシリーズ)

7) Elewaut A, Crape A, Afschrift M, et al. Results of extracorporeal shock wave lithotripsy of gall bladder

図 1 胆囊結石に対する ESWLa:ESWLの患者体位と破砕装置の位置関係b:ESWL前.純コレステロール胆石に特徴的な US像を呈する胆囊結石c:ESWL後,破砕片が胆囊内に充満

a

b

c

c

胆囊胆囊

胆石胆石

音響陰影音響陰影

破砕片破砕片

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— 62 —

3.治療

stones in 693 patients: a plea for restriction to solitary radiolucent stones. Gut 1993; 34: 274-278(ケースシリーズ)

8) Tsuchiya Y, Ishihara F, Kajiyama G, et al. Repeated piezoelectric lithotripsy for gallstones with and with-out ursodeoxycholic acid dissolution: a multicenter study. J Gastroenterol 1995; 30: 768-774(ランダム)

9) 埴谷一夫,土屋幸浩,大藤正雄.胆囊胆石体外衝撃波破砕療法における治療効果の予測因子に関する研究.胆道 1995; 9: 44-53(ケースシリーズ)

10) Ell C, Schneider HT, Benninger J, et al. Significance of computed tomography for shock-wave therapy ofradiolucent gallbladder stones. Gastroenterology 1991; 101: 1409-1416(ケースコントロール)

11) 杉浦信之,阿部朝美,税所宏光.胆囊結石症治療のガイドライン作成に向けて―胆囊結石症における胆囊温存療法の意義.胆道 2004; 18: 114-118(ケースシリーズ)

12) 榊原健治,平松秀樹,岡本憲和,ほか.水中スパーク方式による胆囊結石破砕療法について―とくに消失例の検討と現在の問題点について.胆道 1990; 4: 168-175(ケースシリーズ)

13) 山口 厚,田妻 進,西岡智司,ほか.胆囊結石症治療のガイドライン作成に向けて―胆囊結石症治療における胆囊温存療法の位置付け―ESWL治療後の再発と胆摘術後症状の検討から.胆道 2004; 18: 108-113

(ケースコントロール)14) Sackmann M, Pauletzki J, Sauerbruch T, et al. The Munich Gallbladder Lithotripsy Study: results of the

first 5 years with 711 patients. Ann Intern Med 1991; 114: 290-296(コホート)15) Tsumita R, Sugiura N, Abe A, et al. Long-term evaluation of extracorporeal shock-wave lithotripsy for

cholesterol gallstones. J Gastroenterol Hepatol 2001; 16: 93-99(ケースシリーズ)16) 三好広尚,服部外志之,高 勝義,ほか.胆囊結石に対する体外式衝撃波結石破砕療法の長期経過観察成

績.日本消化器病学会雑誌 2001; 98: 1349-1356(ケースシリーズ)17) Rabenstein T, Radespiel-Troger M, Hopfner L, et al. Ten years experience with piezoelectric extracorporeal

shockwave lithotripsy of gallbladder stones. Eur J Gastroenterol Hepatol 2005; 17: 629-639(ケースシリーズ)

18) Uchiyama F, Otsuka K, Kai M, et al. Extracorporeal shock wave lithotripsy: elimination of densely calci-fied gallstones and gallstones with calcified rims. Eur J Gastroenterol Hepatol 2000; 12: 305-312(ケースシリーズ)

19) Schoenfield LJ, Berci G, Carnovale RL, et al. The effect of ursodiol on the efficacy and safety of extracorpo-real shock-wave lithotripsy of gallstones: The Dornier National Biliary Lithotripsy Study. N Engl J Med1990; 323: 1239-1245(ランダム)

20) Sackmann M, Ippisch E, Sauerbruch T, et al. Early gallstone recurrence rate after successful shock-wavetherapy. Gastroenterology 1990; 98: 392-396(ケースシリーズ)

21) Tsuchiya Y, Takanashi H, Haniya K, et al. An early gallstone clearance following repeat piezoelectriclithotripsy. J Gastroenterol Hepatol 1994; 9: 597-603(ケースシリーズ)

22) Janssen J, Johanns W, Weickert U, et al. Long-term results after successful extracorporeal gallstonelithotripsy: outcome of the first 120 stone-free patients. Scand J Gastroenterol 2001; 36: 314-317(ケースシリーズ)

23) Carrilho-Ribeiro L, Pinto-Correia A, Velosa J, et al. A ten-year prospective study on gallbladder stonerecurrence after successful extracorporeal shock-wave lithotripsy. Scand J Gastroenterol 2006; 41: 338-342

(ケースシリーズ)24) Ochi H, Tazuma S, Kajihara T, et al. Factors affecting gallstone recurrence after successful extracorporeal

shock wave lithotripsy. J Clin Gastroenterol 2000; 31: 230-232(ケースシリーズ)25) Adamek HE, Rochlitz C, Von Bubnoff AC, et al. Predictions and associations of cholecystectomy in

patients with cholecystolithiasis treated with extracorporeal shock wave lithotripsy. Dig Dis Sci 2004; 49:1938-1942(コホート)

26) Shim CS, Moon JH, Cho YD, et al. The role of extracorporeal shock wave lithotripsy combined with endo-scopic management of impacted cystic duct stones in patients with high surgical risk. Hepatogastroen-terology 2005; 52: 1026-1029(ケースシリーズ)

27) Benninger J, Rabenstein T, Farnbacher M, et al. Extracorporeal shockwave lithotripsy of gallstones in cysticduct remnants and Mirizzi syndrome. Gastrointest Endosc 2004; 60: 454-459(ケースシリーズ)

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— 63 —

解説

Mirizzi症候群は,胆囊頸部の結石による圧排,炎症による総肝管狭窄をきたした病態であり,通常の胆囊結石症手術に比べ合併症が多いことで知られる.国,地域によりその頻度に差があり,チリでは胆囊摘出術の 5.7%(327/5,673)を占めているが 1),北米では 0.18%(36/21,450)〜0.35%(16/4,589)に過ぎず 2, 3),本疾患に対する外科医の手術習熟度にも差がある.Mirizzi症候群は圧排狭窄を示す古典的な typeⅠと胆囊胆管瘻を形成した typeⅡ〜Ⅳに大別される 1).胆囊胆管瘻が総胆管に占める割合により 1/3(typeⅡ),2/3(typeⅢ),全周(typeⅣ)に細分化されている(Csendes classification).胆囊胆管瘻が大きくなるほど胆管再建は難しく胆管切除や Roux-

en-Y法による胆管空腸吻合術など複雑な術式が必要となる 1, 4).術前診断が困難なことも本病態の特徴である.腹部 USでの術前診断能は 20%に過ぎないが,

MRCPでは 83.3%(10/12)の診断が可能であったとされる 4).胆囊炎 39 例を対照群としてMirizzi症候群 13 例の術前診断能を検討した研究では,MRCPと CTの組み合わせが CT単独よりも有意に優れていた 5).しかし,他の疾患による圧排所見をMirizzi症候群と誤診した偽陽性例が 3例もあり,本疾患の診断には今なお限界がある.Mirizzi症候群に対する腹腔鏡下胆囊摘出術のシステマティックレビューによれば術前診断率が高いと有意に開腹変更率が低いことが示されている 6).このレビューでは type別で開腹変更率に差を認めていないが,一般的にtypeⅠは腹腔鏡下胆囊摘出術の適応になりうるとされ,typeⅡ以上では胆管再建の必要性や胆囊消化管瘻合併の頻度が高くなるため開腹胆囊摘出術が望ましいとされている 1, 2, 4).ERCPはMRCPに比べ侵襲的であるが診断能は高く,内視鏡的ドレナージによる減黄処置も

施行可能である.ENBD(図1)を組み合わせることでMirizzi症候群 50 例中 43 例に腹腔鏡下胆囊摘出術を完遂できたことが報告されている 7).ESWLと ERCPとの組み合わせが結石除去に有効とする報告もあるが小数例にとどまる 8).経口胆道鏡下砕石術による typeⅡMirizzi症候群に対する良好な結石除去成績が報告されているが施設のリソースの違いが大きく一般的な手技と

3.治療 ― ❶胆囊結石

Mirizzi 症候群の治療は?

Clinical Question 3-7

CQ 3-7 Mirizzi 症候群の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 開腹胆囊摘出術,十分な経験を有する施設では腹腔鏡下胆囊摘出術を行うことを提案する.

2(91%) C

● 内視鏡的胆道ドレナージは胆道閉塞の解除に有用であり,行うことを提案する.

2(100%) C

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— 64 —

3.治療

はいえない 9).

文献

1) Beltran MA, Csendes A, Cruces KS. The relationship of Mirizzi syndrome and cholecystoenteric fistula:validation of a modified classification. World J Surg 2008; 32: 2237-2243(コホート)

2) Erben Y, Benavente-Chenhalls LA, Donohue JM, et al. Diagnosis and treatment of Mirizzi syndrome: 23-year Mayo Clinic experience. J Am Coll Surg 2011; 213: 114-119(コホート)

3) Mithani R, Schwesinger WH, Bingener J, et al. The Mirizzi syndrome: multidisciplinary management pro-motes optimal outcomes. J Gastrointest Surg 2008; 12: 1022-1028(コホート)

4) Zhong H, Gong JP. Mirizzi syndrome: experience in diagnosis and treatment of 25 cases. Am Surg 2012;78: 61-65(コホート)

5) Yun EJ, Choi CS, Yoon DY, et al. Combination of magnetic resonance cholangiopancreatography and com-puted tomography for preoperative diagnosis of the Mirizzi syndrome. J Comput Assist Tomogr 2009; 33:636-640(ケースコントロール) 

6) Antoniou SA, Antoniou GA, Makridis C. Laparoscopic treatment of Mirizzi syndrome: a systematicreview. Surg Endosc 2010; 24: 2237-2243(メタ)

7) Zheng M, Cai W, Qin M. Combined laparoscopic and endoscopic treatment for Mirizzi syndrome.Hepatogastroenterology 2011; 58: 1099-1105(コホート)

8) Benninger J, Rabenstein T, Farnbacher M, et al. Extracorporeal shockwave lithotripsy of gallstones in cysticduct remnants and Mirizzi syndrome. Gastrointest Endosc 2004; 60: 454-459(ケースコントロール)

9) Tsuyuguchi T, Sakai Y, Sugiyama H, et al. Long-term follow-up after peroral cholangioscopy-directedlithotripsy in patients with difficult bile duct stones, including Mirizzi syndrome: an analysis of risk fac-tors predicting stone recurrence. Surg Endosc 2011; 25: 2179-2185(コホート)

図 1 Mirizzi 症候群(typeⅡ)に対する ENBD造影

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解説

日本腹部救急医学会が主体となり,「急性胆管炎・胆囊炎の診療ガイドライン」が 2005 年に発表され,2013 年にはその改訂版が国内外に発信された(急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2013 a),J Hepatobiliary Pancreat Sci 2012; 19: 578-585 b),J Hepatobiliary Pancreat Sci 2013;20: 47-54 c)[検索期間外文献]).このなかで急性胆囊炎の重症度を評価し,その重症度に応じた治療指針について方向性が示されている.軽症例では発症 72 時間以内の早期の胆囊摘出術が推奨され 1),重症例では胆囊ドレナージにて全身状態の改善を図り,後日に待機的な胆囊摘出術を行うことが勧められている 2).近年,本ガイドラインの妥当性についての検討が散見され 3〜5),今後の大規模な前向き研究の調査が待たれる.また,高齢者や手術の高リスク群患者の取り扱いについて課題が残る 6).敗血症の合併や高リスクの疾患を有する場合,施設の都合で早期手術が不可能な場合,患者

が手術を拒否する場合,など何らかの理由で早期手術が施行できない際,胆囊ドレナージは急性胆囊炎に対して有用な治療手技となる.胆囊ドレナージとしては,PTGBD(超音波または CT

ガイド下に胆囊を穿刺しチューブを留置し持続的に排膿する方法,図1),PTGBA(超音波ガイド下に 1回穿刺により内容を吸引し抗菌薬を注入し抜去する方法),ENGBD(内視鏡的経乳頭的に胆囊内にチューブを挿入する方法,図2)があげられる.通常,PTGBDが選択されることが多く,PTGBAと比較して胆囊内感染胆汁が粘稠な場合に

効果が優れると報告されている 7).しかし,PTGBDはチューブの逸脱,瘻孔が完成するまで抜去できない,などの欠点がある 8, 9).その点,PTGBAは手技的に簡便で,チューブ留置の必要もないことから高齢者で自己抜去の心配がないという利点がある 9).また,ENGBDはやや難易度の高い手技で完遂率は 80%前後との報告が多く,効果的で安全な手技であるが,現時点では腹水貯留例や出血傾向のある症例で考慮されるべき位置づけとなっている 10).すなわち,胆囊ド

Clinical Question 3-83.治療 ― ❶胆囊結石

急性胆囊炎合併例の治療は?

CQ 3-8 急性胆囊炎合併例の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 早期の胆囊摘出術を行うことを推奨する. 1(100%) A

● 併存疾患や全身状態から手術リスクが高い例や臓器障害を伴う重症例では胆囊ドレナージを行い,全身状態改善後に胆囊摘出術を行うことを推奨する.

1(100%) B

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— 66 —

3.治療

レナージとしては,まず第一に PTGBDを行うことを推奨するが,手技の簡便さから PTGBA,逆に手技の安全性から ENGBDを行うことが提案される.それらの選択は施設の状況に応じて選択されるべきである.

図 1 PTGBDa:USb〜d:手技の手順

a

b c d

図 2 ENGBDa〜d:手技の手順

a b c d

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①胆囊結石

文献

1) Banz V, Gsponer T, Candinas D, et al. Population-based analysis of 4113 patients with acute cholecystitis:defining the optimal time-point for laparoscopic cholecystectomy. Ann Surg 2011; 254: 964-970(横断)

2) Riall TS, Zhang D, Townsend CM Jr, et al. Failure to perform cholecystectomy for acute cholecystitis inelderly patients is associated with increased morbidity, mortality, and cost. J Am Coll Surg 2010; 210: 668-677(横断)

3) Lee SW, Yang SS, Chang CS, et al. Impact of the Tokyo guidelines on the management of patients withacute calculous cholecystitis. J Gastroenterol Hepatol 2009; 24: 1857-1861(横断)

4) 飯田義人,福永正氣,津村秀憲,ほか.ガイドラインにのっとった急性胆囊炎に対する腹腔鏡下手術の検討.日本腹部救急医学会雑誌 2010; 30: 437-441(ケースコントロール)

5) 吉田雅博,高田忠敬,真弓俊彦,ほか.急性胆管炎,胆囊炎診療ガイドラインのアンケート調査報告―内容,普及度,臨床への影響調査.日本腹部救急医学会雑誌 2008; 28: 475-480(横断)

6) Moyson J, Thill V, Simoens Ch, et al. Laparoscopic cholecystectomy for acute cholecystitis in the elderly: aretrospective study of 100 patients. Hepatogastroenterology 2008; 55: 1975-1980(横断)

7) Ito K, Fujita N, Noda Y, et al. Percutaneous cholecystostomy versus gallbladder aspiration for acute chole-cystitis: a prospective randomized controlled trial. AJR Am J Roentgenol 2004; 183: 193-196(ランダム)

8) Borzellino G, de Manzoni G, Ricci F, et al. Emergency cholecystostomy and subsequent cholecystectomyfor acute gallstone cholecystitis in the elderly. Br J Surg 1999; 86: 1521-1525(横断)

9) Akhan O, Akinci D, Ozmen MN. Percutaneous cholecystostomy. Eur J Radiol 2002; 43: 229-23610) 山下宏章,佐野 仁,夏目まこと,ほか.胆囊疾患に対する内視鏡的経鼻胆囊ドレナージ術の有用性と問

題点.肝胆膵治療研究会誌 2008; 6: 5-11(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) 急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会(編).急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2013,

医学図書出版,東京,2013(ガイドライン)b) Yokoe M, Takada T, Strasberg SM, et al. New diagnostic criteria and severity assessment of acute cholecys-

titis in revised Tokyo Guidelines. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2012; 19: 578-585(ガイドライン)c) Miura F, Takda T, Strasberg SM, et al. TG13 flowchart for the management of acute cholangitis and chole-

cystitis. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2013; 20: 47-54(ガイドライン)

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Clinical Question 3-93.治療 ― ❶胆囊結石

胆汁性腹膜炎併発例,胆囊周囲膿瘍併発例の治療は?

CQ 3-9 胆汁性腹膜炎併発例,胆囊周囲膿瘍併発例の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 緊急手術(胆囊摘出術,腹腔ドレナージ術)を行うことを推奨する. 1(100%) B

● 手術リスクが高い例や全身状態不良例では緊急胆囊ドレナージを行い,全身状態改善後に胆囊摘出術を行うことを推奨する.

1(100%) B

解説

急性胆囊炎の周囲への波及による胆囊周囲膿瘍や,胆囊壊死に伴う胆汁性腹膜炎を併発した急性胆囊炎は,「急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2013 a)[検索期間外文献]」の重症度判定基準では中等症以上の胆囊炎に分類され,絶食,輸液,鎮痛薬,抗菌薬投与などの初期治療を行っても臓器障害(循環障害,中枢神経障害,呼吸機能障害,腎機能障害,血液凝固障害など)を伴う重症急性胆囊炎となり,生命の危険を及ぼす可能性がある.そのため,「急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2013」a)の急性胆囊炎診療バンドルでは胆汁性腹膜炎,胆囊周囲膿瘍などの重篤な局所合併症を伴った中等症胆囊炎では,全身状態を管理しつつ,緊急手術(胆囊摘出術,腹腔ドレナージ術)を行うことが推奨されている.また,重症例では,初期治療とともに臓器サポートを直ちに行いながら,緊急胆囊ドレナー

ジを行い,有石症例では全身状態改善後に胆囊摘出術を行うとなっている a).胆囊穿孔と胆汁漏出に対して合併症のため手術のリスクが高いと判断され経皮的治療を行った 4症例の報告 1)では,胆囊内カテーテルおよび肝下面の胆囊のそばにサンプチューブが留置され 48 時間で解熱し,白血球増多も 4日で正常化した.1例のみ 1ヵ月後に胆囊摘出術を受けたが,他の 3例は胆囊摘出手術を勧められたが拒否し無症状であった.一方,全身麻酔のリスクのある急性胆囊炎患者に対して経皮経肝胆囊ドレナージを行った 21 例の報告 2)では,17 例では toxemiaが軽快したが,3例は軽快せず 48 時間以内に敗血症で死亡した.同様に,高齢あるいは重篤な他の疾患を合併した急性胆囊炎患者に対して,手術の代替として経皮的胆囊外瘻を造設した 18 例の報告 3)

では,16 例は処置後直ちに症状が改善したが,1例は腹膜炎症状が続くため開腹胆摘し,1例は手技の合併症による大腸穿孔で開腹した.Akhanら 4)は文献を引用し,画像ガイド下の経皮的胆囊瘻造設は無石,有石胆囊炎,胆管炎,胆道閉塞の減圧と造影に有用で,結石溶解療法や結石除去のルートも提供し成功率は 95〜100%とされ,胆囊穿孔については,経皮的胆囊外瘻は高リスク患者の急性胆囊炎と胆囊穿孔の処置として受け入れられているとしている(図1,図2).

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①胆囊結石

以上より,手術リスクが高い例や全身状態不良例では緊急胆囊ドレナージを行い,全身状態改善後に胆囊摘出術を行うことが勧められる.高齢者,特に基礎疾患を有する高齢者の急性胆囊炎では施設の対応能力や患者の状態を考慮した注意深い対応が必要である 5).

文献

1) van Sonnenberg E, D’Agostino HB, Casola G, et al. Gallbladder perforation and bile leakage: percutaneoustreatment. Radiology 1991; 178: 687-689(ケースシリーズ)

2) Melin MM, Sarr MG, Bender CE, et al. Percutaneous cholecystostomy: a valuable technique in high-risk

図 1 急性胆囊炎a:胆囊穿孔b:肝床部への炎症波及

a b

図 2 急性胆囊炎a:胆囊壁の肥厚b:胆囊頸部の結石(矢印)と肝床部への炎症波及

a b

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— 70 —

3.治療

patients with presumed acute cholecystitis. Br J Surg 1995; 82: 1274-1277(ケースシリーズ)3) Vauthey JN, Lerut J, Martini M, et al. Indications and limitations of percutaneous cholecystostomy for

acute cholecystitis. Surg Gynecol Obstet 1993; 176: 49-54(ケースシリーズ)4) Akhan O, Akinci D, Ozmen MN. Percutaneous cholecystostomy. Eur J Radiol 2002; 43: 229-236(ケースシ

リーズ)5) 鈴木 修,小池 伸,原田 信,ほか.ガイドラインの検証と普及(1)急性胆道炎(2)急性膵炎―外科治

療からみた高齢者急性胆道炎における問題点.日本腹部救急医学会雑誌2011; 31: 505-510(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) 急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン改訂出版委員会(編).急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン 2013,

医学図書出版,東京,2013(ガイドライン)

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— 71 —

解説

総胆管結石には多くは黄疸や腹痛がみられ,急性胆管炎を合併することも多い.たとえ無症状であっても,急性胆管炎の合併により重症化して致命的になる可能性がある.したがって,一般的に総胆管結石は,いずれ胆管炎(発熱,右季肋部痛など)を生ずるので 1),総胆管結石の治療を行うことが勧められ,すべてが治療の対象となる 2).そのために無症状総胆管結石の自然史はほとんど解明されていない.無症状総胆管結石は検診などで発見されることが多いと思われる.有症状胆囊結石として胆囊摘出術を受ける患者の 10〜20%に総胆管結石が合併すると報告されている 3).Sarliら 4)は総胆管結石を有する胆囊結石群(74 例)と総胆管結石を有しない胆囊結石群(74 例)の 2群に分けスコアを比較検討した.スコアとしては,腹部 US所見,痛みの既往,AST,ALPなどをあげ,これら全体のスコアで総胆管結石の有無を推測できるとし,非常にスコアが高く総胆管結石併存の可能性が高ければ(この予測の特異性は 93%であり,正診率は92%であった),ERCPやMRCPを行うべきであるとしている.Jendresenら 5)は有症状胆囊結石のため待機的胆囊摘出予定の 180 例の患者のうちMRCPにて 26 例(14%)に総胆管結石を認めたと報告している.Horwoodら 6)は有症状胆囊結石に対して腹腔鏡下胆囊摘出を行った連続する 501 例中 166 例で総胆管結石が疑われ,うち 64 例で胆管造影にて結石が陽性であったと報告している.また,総胆管結石の疑われなかった 335 例中 3例(0.9%)で術後に有症状となり遺残総胆管結石がみつかり,結石除去術を要したと述べている.このように胆囊結石の場合,総胆管結石の併存の有無を検討し,総胆管結石の存在が判明した症例では胆管炎がなくとも積極的に治療を行うべきである.

ただし,高齢,ADL不良,重篤な基礎疾患などの患者の状態や施設,主治医の治療方針などによっては経過観察とする場合もありうる.

Clinical Question 3-103.治療 ― ❷総胆管結石

無症状総胆管結石は治療すべきか?

CQ 3-10 無症状総胆管結石は治療すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 無症状の総胆管結石では胆管炎などを発症するリスクがあり,治療することを提案する.

2(100%) A

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— 72 —

3.治療

文献

1) Johnson AG, Hosking SW. Appraisal of the management of bile duct stones. Br J Surg 1987; 74: 555-560(メタ)

2) 杉山政則,鈴木 裕,阿部展次,ほか.鏡視下手術時代の消化器手術適応―胆道―胆石症の手術適応.臨床消化器内科 2008; 23: 475-480

3) Joyce WP, Keane R, Burke GJ, et al. Identification of bile duct stones in patients undergoing laparoscopiccholecystectomy. Br J Surg 1991; 78: 1174-1176(横断)

4) Sarli L, Costi R, Gobbi S, et al. Asymptomatic bile duct stones: selection criteria for intravenous cholan-giography and/or endoscopic retrograde cholangiography prior to laparoscopic cholecystectomy. Eur JGastroenterol Hepatol 2000; 12: 1175-1180(非ランダム)

5) Jendresen MB, Thorboll JE, Adamsen S, et al. Preoperative routine magnetic resonance cholangiopancre-atography before laparoscopic cholecystectomy: a prospective study. Eur J Surg 2002; 168: 690-694(コホート)

6) Horwood J, Akbar F, Davis K, et al. Prospective evaluation of a selective approach to cholangiography forsuspected common bile duct stones. Ann R Coll Surg Engl 2010; 92: 206-210(ケースコントロール)

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— 73 —

3.治療 ― ❷総胆管結石

総胆管結石の治療は?

Clinical Question 3-11

CQ 3-11 総胆管結石の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 内視鏡的総胆管結石除去術または外科的総胆管結石手術を行うことを推奨する.

1(100%) B

解説

総胆管結石の治療には内視鏡的治療,外科的治療(開腹手術,腹腔鏡下手術),経皮経肝的治療があげられる.胆囊結石を合併する総胆管結石症に対する内視鏡的治療(胆囊摘出術との組み合わせ,二期的

治療)と外科的手術(一期的手術)を比較したメタアナリシス(12 の RCT,1,357 例)では結石除去率,死亡率,合併症率に差を認めなかった 1).このメタアナリシスの外科的手術には開腹手術(7つの RCT),腹腔鏡下手術(5つの RCT)が含まれ,サブ解析でも差を認めていない.胆囊摘出術と総胆管結石治療を同時に行えば二期的治療に比較し入院期間は短縮するが結石除去率に差はない 2, 3).しかしながら,日本胆道学会学術委員会で行われた前向き全国調査(胆道 2014; 4:612-617 a)[検索期間外文献])によれば,外科的総胆管結石治療は腹腔鏡下手術 1例と開腹下総胆管切開術 2例の計 3例(3/77,3.9%)に行われたに過ぎない.同様に日本内視鏡外科学会のアンケート調査でも二期的治療が多く行われている 4).施設により得意な方法(内視鏡的治療,外科的治療)を選択すべきであるが,日本での現状は内視鏡的治療(二期的治療)が主たる治療法である.なお,胆囊摘出後例における外科手術(腹腔鏡下手術を含む)と経乳頭的内視鏡的治療を比較

した RCTやメタアナリシスはない.前述の日本の前向き調査 a)によれば胆囊摘出後例 66 例中47 例(71.2%)に経乳頭的内視鏡的治療が行われ,外科的治療は 5例(7.6%)のみであった.

文献

1) Clayton ES, Connor S, Alexakis N, et al. Meta-analysis of endoscopy and surgery versus surgery alone forcommon bile duct stones with the gallbladder in situ. Br J Surg 2010; 93: 1185-1191(メタ)

2) Alexakis N, Connor S. Meta-analysis of one- vs. two-stage laparoscopic/endoscopic management of com-mon bile duct stones. HPB (Oxford) 2012; 14: 254-259(メタ)

3) Gurusamy K, Sahay SJ, Burroughs AK, et al. Systematic review and meta-analysis of intraoperative versus

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— 74 —

3.治療

preoperative endoscopic sphincterotomy in patients with gallbladder and suspected common bile ductstones. Br J Surg 2011; 98: 908-916(メタ)

4) 日本内視鏡外科学会.内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第 12 回結果報告.日本内視鏡外科学会雑誌 2014; 19: 495-640(コホート)

【検索期間外文献】a) 日本胆道学会学術委員会.胆石症に関する 2013 年度全国調査結果報告.胆道 2014; 4: 612-617(コホート)

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Clinical Question 3-12-13.治療 ― ❷総胆管結石

内視鏡的治療:1)ESTと EPBD の選択基準は?

CQ 3-12-1 内視鏡的治療:1)ESTと EPBDの選択基準は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● EST と EPBD の選択基準に厳密な差はない.一般的には EPBDは結石径 1cm 以下,出血傾向がある場合に行うことを提案する.

2(73%) B

解説

ESTと EPBDを比較したWeinbergら 1)による 2009 年のシステマティックレビューでは総胆管結石除去率に差を認めていたが,2011 年の Liuら 2)によるメタアナリシスでは有意差はない.しかし,どちらの解析でも EPBDでは内視鏡的機械的破石術(EML)を行う頻度が有意に高く,EPBDは結石径が小さいものがよい適応と考えられる.術後早期合併症による死亡率に差はないが,出血は ESTに多く(図1),膵炎は EPBDに多い.したがって,非代償性肝硬変や抗凝固薬を内服しているなど凝固能異常を有する患者に EPBDはよい適応となるが(図2),膵炎のリスクは高くなることを説明する必要がある.ESTと EPBDの長期予後では総胆管結石再発(急性胆管炎)には有意差はないが,2009 年のシ

ステマティックレビューでは胆囊炎発症率は EPBDが ESTに比し有意に低い(1.3% vs. 5.0%[RR

図 1 EST(胃切後 B-Ⅱ法再建例)a〜c:手技の手順

a b c

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— 76 —

3.治療

0.29,95%CI 0.10〜0.81])ことが指摘されている.EPBDは ESTよりも治療後胆道感染が低率となる可能性があるものの,治療時の結石径,結石除去に要する砕石術なども含めて選択すべきである.大きな結石に対する内視鏡的治療法として 12〜20mm径のラージバルーンを用いた内視鏡的

乳頭拡張術(EPLBD)が臨床導入されている 3).多くは small ESTを行ったうえで EPLBDを施行しているが,EPLBD単独の報告もある.ESTと EPLBDの RCTに関するメタアナリシスによれば,結石除去率に差はなく(97.35% vs. 96.35%),大きな結石では EMLの使用率にも差を認めていない.術後の出血は EPLBDで有意に少なく(OR 0.15,95%CI 0.04〜0.50,p=0.002),膵炎,穿孔,胆管炎に差を認めなかった 4).ただし,EPLBDは臨床導入から間もない手技であり重篤な合併症の報告数が少なく,慎重に行うべきである(出版バイアスを考慮すべきである).

文献

1) Weinberg BM, Shindy W, Lo S. Endoscopic balloon sphincter dilation (sphincteroplasty) versus sphinc-terotomy for common bile duct stones. Cochrane Database Syst Rev 2006; (4): CD004890(メタ)

2) Liu Y, Su P, Lin S, et al. Endoscopic papillary balloon dilatation versus endoscopic sphincterotomy in thetreatment for choledocholithiasis: a meta-analysis. J Gastroenterol Hepatol 2012; 27: 464-471(メタ)

3) Stefanidis G, Viazis N, Pleskow D, et al. Large balloon dilation vs. mechanical lithotripsy for the manage-ment of large bile duct stones: a prospective randomized study. Am J Gastroenterol 2011; 106: 278-285(ランダム)

4) Feng Y, Zhu H, Chen X, et al. Comparison of endoscopic papillary large balloon dilation and endoscopicsphincterotomy for retrieval of choledocholithiasis: a meta-analysis of randomized controlled trials. J Gas-troenterol 2012; 47: 655-663(メタ)

図 2 EPBDa〜d:手技の手順

a

b

cd

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解説

急性胆管炎に対しては内視鏡的短期ステント留置(EBS,ENBD)が行われる 1).高齢者や重篤な合併症を有する患者において胆管結石除去が困難な場合になされた長期ステント留置は,重篤な胆管炎による死亡率が高いことが知られている 2).このため長期ステント留置は生命予後が限られた症例に限定されるべき方法である.一方,機械砕石術でも除去することができない困難結石に対して長期ステント留置による結石サイズの縮小効果が報告されており,3〜6ヵ月後に再度結石除去を行うことにより 73.7〜95.6%で完全結石除去が可能となったとされる 3〜7).結石除去困難例でステント留置となった場合も再治療により完全結石除去に成功する可能性があり,結石除去を再度試みることは有用である.ステントや内服薬剤の違いで RCTが行われているが有効なものはない 4〜7).

文献

1) Sharma BC, Agarwal N, Sharma P, et al. Endoscopic biliary drainage by 7 Fr or 10 Fr stent placement inpatients with acute cholangitis. Dig Dis Sci 2009; 54: 1355-1359(ランダム)

2) Williams EJ, Green J, Beckingham I, et al. Guidelines on the management of common bile duct stones(CBDS). Gut 2008; 57: 1004-1021(ガイドライン)

3) Fan Z, Hawes R, Lawrence C, et al. Analysis of plastic stents in the treatment of large common bile ductstones in 45 patients. Dig Endosc 2011; 23: 86-90(ケースシリーズ)

4) Pisello F, Geraci G, Li Volsi F, et al. Permanent stenting in “unextractable” common bile duct stones in highrisk patients: a prospective randomized study comparing two different stents. Langenbecks Arch Surg2008; 393: 857-863(ランダム)

5) Katsinelos P, Kountouras J, Paroutoglou G, et al. Combination of endoprostheses and oral ursodeoxy-cholic acid or placebo in the treatment of difficult to extract common bile duct stones. Dig Liver Dis 2008;40: 453-459(ランダム)

6) Lee TH, Han JH, Kim HJ, et al. Is the addition of choleretic agents in multiple double-pigtail biliary stentseffective for difficult common bile duct stones in elderly patients? a prospective, multicenter study. Gas-trointest Endosc 2011; 74: 96-102(ランダム)

7) Han J, Moon JH, Koo HC, et al. Effect of biliary stenting combined with ursodeoxycholic acid and terpenetreatment on retained common bile duct stones in elderly patients: a multicenter study. Am J Gastroen-terol 2009; 104: 2418-2421(ランダム)

Clinical Question 3-12-23.治療 ― ❷総胆管結石

内視鏡的治療:2)胆管ステント留置の適応は?

CQ 3-12-2 内視鏡的治療:2)胆管ステント留置の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 急性胆管炎例や結石治療待機例の胆管炎予防のために行うことを提案する.

2(100%) B

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Clinical Question 3-12-33.治療 ― ❷総胆管結石

内視鏡的治療:3)胆管炎合併例の治療は?

CQ 3-12-3 内視鏡的治療:3)胆管炎合併例の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 内視鏡的胆管ドレナージ術または内視鏡的総胆管結石除去術を行うことを推奨する.

1(100%) B

解説

急性胆管炎に対しては短期ステント留置(EBS,ENBD)が推奨される(J Hepatobiliary Pancre-at Sci 2013; 20: 71-80 a)[検索期間外文献]).ESTを付加せずに EBSのみで胆管炎に対する治療を行い,結石治療は待機的に施行すれば安全であるが,在院日数は延長する 1).一方,一期的に EST

後に結石完全除去まで施行すれば ENBDなどのドレナージを行う必要はないとされている 2).ただし,結石遺残が疑われる場合には胆管炎予防に短期ステント留置が必要であり,術者の技量次第で判断すべきである.ドレナージ方法の比較では外科的開腹手術よりも EST+ENBDは有意に死亡率が低いことが

報告されている.経皮経肝胆管ドレナージと内視鏡的ドレナージを直接比較したエビデンスはないが経皮経肝胆管ドレナージ留置に伴う侵襲や偶発症が存在する.しかし,施設により得意な方法(経皮経肝胆管ドレナージあるいは経皮経肝胆囊ドレナージ)を選択してもよい.また,播種性血管内凝固症候群(DIC)などによる出血傾向があれば,内視鏡的ドレナージ術が第一選択となる.

文献

1) Lee JK, Lee SH, Kang BK, et al. Is it necessary to insert a nasobiliary drainage tube routinely after endo-scopic clearance of the common bile duct in patients with choledocholithiasis-induced cholangitis? aprospective, randomized trial. Gastrointest Endosc 2010; 71: 105-110(ランダム)

2) Ueki T, Otani K, Fujimura N,et al. Comparison between emergency and elective endoscopic sphincteroto-my in patients with acute cholangitis due to choledocholithiasis: is emergency endoscopic sphincterotomysafe? J Gastroenterol 2009; 44: 1080-1088(ケースコントロール)

【検索期間外文献】a) Itoi T, Tsuyuguchi T, Takada T, et al. TG13 indications and techniques for biliary drainage in acute cholan-

gitis (with videos). J Hepatobiliary Pancreat Sci 2013; 20: 71-80(ガイドライン)

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Clinical Question 3-12-43.治療 ― ❷総胆管結石

内視鏡的治療:4)胆石性膵炎合併例の治療は?

CQ 3-12-4 内視鏡的治療:4)胆石性膵炎合併例の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 胆管炎合併例には早期に ERCP を行い,適応があれば EST を行うことを提案する.

2(100%) B

解説

胆石性膵炎に対するルーチン早期 ERCP(with or without EST)を保存的治療(選択的 ERCPを含む)と比較した 2012 年のメタアナリシス 1)(5つの RCT,サブ解析に 2つの RCTを追加)では死亡率,局所および全身性合併症に差を認めなかった.胆管炎患者を含む試験では早期ルーチン ERCPにより,死亡率(RR 0.20,95%CI 0.06〜0.68),局所および全身性合併症(RR 0.45,95%CI 0.20〜0.99;RR 0.37,95%CI 0.18〜0.78)が有意に低下した.胆管閉塞患者を含む試験では,早期ルーチン ERCPは,局所および全身性膵炎合併症を有意に減少した(RR 0.54,95%CI0.32〜0.91).胆管炎を合併しない胆石性膵炎における早期 ERCPの有用性を検討したメタアナリシス 2)(2つの RCT)では合併症に差を認めず(RR 0.95,95%CI 0.74〜1.22),死亡率は早期ERCPに高い傾向を認めた(RR 1.92,95%CI 0.86〜4.32).従来のメタアナリシス 3)では重症例における早期 ERCPの有用性が支持されていたが最近では否定的結果となっており,急性胆管炎または胆管閉塞併発患者において早期 ERCPが有効とされる.ただし,胆管炎の診断に必須である炎症反応(発熱やWBCの上昇など)が膵炎に由来するか,合併する胆管炎に由来するかを厳密に区別することは難しい.したがって,画像診断で胆管閉塞や胆管結石があり,肝障害の遷延や黄疸などを伴っていれば急性胆管炎合併例として早期 ERCPを行うべきである.

胆石性膵炎の再発予防には胆囊摘出術が有効であるが,その手術時期については発症早期に行うべきか待機的に行うべきかで議論がある.胆石性膵炎 998 例(1つの RCTと 8つのコホート研究)を解析したメタアナリシス 4)では,待機中に 95 例(18%)が胆道イベントで再入院,その内訳は胆石性膵炎 43 例,急性胆囊炎 17 例,疝痛発作 35 例であった.早期と待機手術で手術合併症に差を認めなかった.胆囊摘出術は胆石性膵炎の鎮静化後に速やかに行われるべきである.唯一の RCT 5)は軽症胆石性膵炎に対して 48 時間以内の腹腔鏡下胆囊摘出術群(25 例)と保存的治療群(25 例)を比較し,早期腹腔鏡下胆囊摘出術群で在院日数が有意に短いが(3.5 日 vs.

5.8 日),開腹移行率や周術期合併症に差を認めなかった.

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3.治療

文献

1) Tse F, Yuan Y. Early routine endoscopic retrograde cholangiopancreatography strategy versus early con-servative management strategy in acute gallstone pancreatitis. Cochrane Database Syst Rev 2012; (5):CD009779(メタ)

2) Uy MC, Daez ML, Sy PP, et al. Early ERCP in acute gallstone pancreatitis without cholangitis: a meta-analysis. JOP 2009: 10: 299-305(メタ)

3) Ayub K, Imada R, Slavin J. Endoscopic retrograde cholangiopancreatography in gallstone-associated acutepancreatitis. Cochrane Database Syst Rev 2004; (4): CD003630(メタ)

4) van Baal MC, Besselink MG, Bakker OJ, et al. Timing of cholecystectomy after mild biliary pancreatitis: asystematic review. Ann Surg 2012; 255: 860-866(メタ)

5) Aboulian A, Chan T, Yaghoubian A, et al. Early cholecystectomy safely decreases hospital stay in patientswith mild gallstone pancreatitis: a randomized prospective study. Ann Surg 2010; 251: 615-619(ランダム)

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3.治療 ― ❷総胆管結石

内視鏡的治療:5)Roux-en-Y 吻合や BillrothⅡ法胃切除後例の治療は?

Clinical Question 3-12-5

CQ 3-12-5 内視鏡的治療:5)Roux-en-Y 吻合やBillrothⅡ法胃切除後例の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 内視鏡的治療を行うことを提案する. 2(100%) C

解説

Roux-en-Y吻合や BillrothⅡ法胃切除例は,通常の十二指腸内視鏡で乳頭まで到達することが困難なため,経皮経肝的胆道鏡 1)による治療が一般的であったが,ダブルバルーン(図1)ある

図 1 ダブルバルーン内視鏡による胆管結石除去術a〜e:手技の手順

a b c

d e

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3.治療

いはシングルバルーン小腸内視鏡の導入により十二指腸乳頭への到達が可能となった.スコープ長の長い小腸内視鏡での ERCPは使用可能な処置具が限られることや鉗子起上装置がないことなどより,通常の ERCPに比べ技術的難易度が高い.また,術後癒着例では挿入時の穿孔などの合併症もありうる.報告はすべてケースシリーズであり,乳頭到達率,処置成功率は Roux-

en-Y吻合で 62〜100%,54〜100%2〜5),BillrothⅡ法胃切除例で 89〜100%,89〜100%である 6〜10).ケースシリーズの症例数は少なく(Roux-en-Y吻合:6〜32 例,BillrothⅡ法胃切除:9〜43 例),重篤な合併症の報告はないが,出版バイアスの影響も否定できない.このため専門施設で慎重に施行されるべき手技である.腹腔鏡補助で Roux-en-Y吻合の輸入脚へ挿入した十二指腸内視鏡で施行した ERCP(LA-

ERCP)による治療法が報告されている 5, 11, 12).ダブルバルーン内視鏡との比較研究 5)では乳頭到達率(100% vs. 72%,p=0.005),治療成功率(100% vs. 59%,p<0.001)とも LA-ERCPが優れていたとされるが,一般的な手法とはいえない.

文献

1) Jeong EJ, Kang DH, Kim DU, et al. Percutaneous transhepatic choledochoscopic lithotomy as a rescue ther-apy for removal of bile duct stones in Billroth II gastrectomy patients who are difficult to perform ERCP.Eur J Gastroenterol Hepatol 2009; 21: 1358-1362(ケースシリーズ)

2) Itoi T, Ishii K, Sofuni A, et al. Long- and short-type double-balloon enteroscopy-assisted therapeutic ERCPfor intact papilla in patients with a Roux-en-Y anastomosis. Surg Endosc 2011; 25: 713-721(ケースシリーズ)

3) Itoi T, Ishii K, Sofuni A, et al. Large balloon dilatation following endoscopic sphincterotomy using a bal-loon enteroscope for the bile duct stone extractions in patients with Roux-en-Y anastomosis. Dig Liver Dis2011; 43: 237-241(ケースシリーズ)

4) Neumann H, Fry LC, Meyer F. Endoscopic retrograde cholangiopancreatography using the single balloonenteroscope technique in patients with Roux-en-Y anastomosis. Digestion 2009; 80: 52-57(ケースシリーズ)

5) Schreiner MA, Chang L, Gluck M, et al. Laparoscopy-assisted versus balloon enteroscopy-assisted ERCPin bariatric post-Roux-en-Y gastric bypass patients. Gastrointest Endosc 2012; 75: 748-756(ケースコントロール)

6) Itoi T, Ishii K, Itokawa F, et al. Large balloon papillary dilation for removal of bile duct stones in patientswho have undergone a billroth ii gastrectomy. Dig Endosc 2010; 22 (Suppl): S98-S102(ケースシリーズ)

7) Lin CH, Tang JH, Cheng CL, et al. Double balloon endoscopy increases the ERCP success rate in patientswith a history of Billroth II gastrectomy. World J Gastroenterol 2010; 16: 4594-4598(ケースシリーズ)

8) Nakahara K, Horaguchi J, Fujita N, et al. Therapeutic endoscopic retrograde cholangiopancreatographyusing an anterior oblique-viewing endoscope for bile duct stones in patients with prior Billroth II gastrec-tomy. J Gastroenterol 2009; 3: 212-217(ケースシリーズ)

9) Choi CW, Choi JS, Kang DH, et al. Endoscopic papillary large balloon dilation in Billroth II gastrectomypatients with bile duct stones. J Gastroenterol Hepatol 2012; 27: 256-260(ケースシリーズ)

10) Kim GH, Kang DH, Song GA, et al. Endoscopic removal of bile-duct stones by using a rotatable papillo-tome and a large-balloon dilator in patients with a Billroth II gastrectomy (with video). GastrointestEndosc 2008; 67: 1134-1138(ケースシリーズ)

11) Gutierrez JM, Lederer H, Krook JC, et al. Surgical gastrostomy for pancreatobiliary and duodenal accessfollowing Roux en Y gastric bypass. J Gastrointest Surg 2009; 13: 2170-2175(ケースシリーズ)

12) Lopes TL, Clements RH, Wilcox CM. Laparoscopy-assisted ERCP: experience of a high-volume bariatricsurgery center (with video) Gastrointest Endosc 2009; 6: 1254-1259(ケースシリーズ)

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3.治療 ― ❷総胆管結石

内視鏡的治療:6)胆囊結石合併例の治療は?

Clinical Question 3-12-6

CQ 3-12-6 内視鏡的治療:6)胆囊結石合併例の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 腹腔鏡下胆囊摘出術と内視鏡的総胆管結石除去術を併用して行うことを推奨する.

1(100%) B

解説

EST後に腹腔鏡下胆囊摘出術施行する二期的治療と胆管結石除去を腹腔鏡下胆囊摘出術と同時施行する一期的治療を比較したメタアナリシスでは,結石除去率,合併症,死亡率に差を認めず,腹腔鏡下胆囊摘出後に内視鏡的結石除去する二期的治療と一期的腹腔鏡下治療を比較した解析でも入院期間以外には差を認めなかった 1).9つの RCT(933 例)を対象としたメタアナリシスでは一期的腹腔鏡下治療と内視鏡的結石除去を二期的に行う治療との比較で,結石除去率,合併症率,死亡率などに差を認めなかった 2).このメタアナリシスでは費用の比較は国や地域の差で計算方法が異なるので解釈ができないとされ,施設のリソースと専門医の存在の有無で治療方針を決定すべきだとしている.日本胆道学会学術委員会で行われた前向き全国調査(胆道2014; 4: 612-617 a)[検索期間外文献])によれば胆囊結石合併総胆管結石症に対して行われた治療は内視鏡的結石除去術(±胆囊摘出術)が多く(81.8%,63/77),日本における診療は二期的治療が主体であった.一方,一期的腹腔鏡下治療は 1.3%(1/77)にとどまっていた.腹腔鏡下胆囊摘出時に経胆囊管的に十二指腸乳頭へ誘導したガイドワイヤーによるランデブー

テクニック ESTと胆囊摘出後に行う ESTを比較した RCTでは合併症や結石除去率に差を認めなかったが,術後高アミラーゼ血症はガイドワイヤーによるランデブーテクニック ESTが低率であったと報告されている 3).術前 ESTとランデブーテクニックによる術中 ESTを比較したメタアナリシス(4つの RCT,532 例を対象)では結石除去率に差を認めなかったが,EST後合併症は術中 ESTが有意に低率であり入院期間も短かったことが報告されている 4).術中ランデブーテクニックは胆管へのカニュレーションが容易になり膵炎をはじめとする合併症低減が期待できるが,①手術時間が延長する,②手術室に内視鏡専門医が待機しなければならないなど,施設のリソースにゆとりがないと行えない手技である.EST後に有石胆囊を温存すると長期的に胆囊炎などの合併症を生じることが知られており,

胆囊摘出術が推奨されている 5).80 歳以上の高齢者と若年者を比較したコホート研究 6)では,高齢者は胆囊炎の頻度が低率であり胆囊摘出術は不要かもしれない,と結論されている.メタアナリシス(5つの RCT,662 例)7)では,胆囊温存例に死亡率が高く胆石関連合併症も高率な

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3.治療

ため予防的胆囊摘出術が推奨されている.しかし,死亡例には胆石関連以外の死因が含まれており,患者背景因子のバイアス関与が疑われる.EST後のコホート研究では胆囊温存例におけるリスクファクターは胆道気腫であるとされるが,死亡リスクに関与するデータは示されていない 8, 9).EST後胆囊温存は長期的に胆石関連合併症を伴うことは明らかであるが,死亡率に関与するかどうかは不明である.

文献

1) Phillips EH, Toouli J, Pitt HA, et al. Treatment of common bile duct stones discovered during cholecystec-tomy. J Gastrointest Surg 2008; 12: 624-628(メタ)

2) Alexakis N, Connor S. Meta-analysis of one- vs. two-stage laparoscopic/endoscopic management of com-mon bile duct stones. HPB (Oxford) 2012; 14: 254-259(メタ)

3) Tzovaras G, Baloyiannis I, Zachari E, et al. Laparoendoscopic rendezvous versus preoperative ERCP andlaparoscopic cholecystectomy for the management of cholecysto-choledocholithiasis: interim analysis of acontrolled randomized trial. Ann Surg 2012; 255: 435-439(ランダム)

4) Gurusamy K, Sahay SJ, Burroughs AK, et al. Systematic review and meta-analysis of intraoperative versuspreoperative endoscopic sphincterotomy in patients with gallbladder and suspected common bile ductstones. Br J Surg 2011; 98: 908-916(メタ)

5) Boerma D, Rauws EA, Keulemans YC, et al. Wait-and-see policy or laparoscopic cholecystectomy afterendoscopic sphincterotomy for bile-duct stones: a randomised trial. Lancet 2002; 360: 761-765(ランダム)

6) Yasui T, Takahata S, Kono H, et al. Is cholecystectomy necessary after endoscopic treatment of bile ductstones in patients older than 80 years of age? J Gastroenterol 2012; 47: 65-70(コホート)

7) McAlister VC, Davenport E, Renouf E. Cholecystectomy deferral in patients with endoscopic sphincteroto-my. Cochrane Database Syst Rev 2007; (4): CD006233(メタ)

8) Fujimoto T, Tsuyuguchi T, Sakai Y, et al. Long-term outcome of endoscopic papillotomy for choledo-cholithiasis with cholecystolithiasis. Dig Endosc 2010; 22: 95-100(コホート)

9) Kageoka M, Watanabe F, Maruyama Y, et al. Long-term prognosis of patients after endoscopic sphinctero-tomy for choledocholithiasis. Dig Endosc 2009; 21: 170-175(コホート)

【検索期間外文献】a) 日本胆道学会学術委員会.胆石症に関する 2013 年度全国調査結果報告.胆道 2014; 4: 612-617(コホート)

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Clinical Question 3-133.治療 ― ❷総胆管結石

外科的結石除去術の方法は?

CQ 3-13 外科的結石除去術の方法は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 開腹下と腹腔鏡下の総胆管結石除去術の選択基準に厳密な差はなく,いずれの場合も術中胆道鏡による胆管遺残結石の検索を行うことを推奨する.

1(100%) B

解説

開腹下手術が標準であったが,腹腔鏡下手術が導入され,腹腔鏡下手術も行われるようになっている.腹腔鏡での総胆管結石の治療については,コホート研究や個人のシリーズが報告されている 1〜10).開腹移行率は 1.4〜13%1〜10)で,経胆囊管結石除去と総胆管切開とでは 60〜70%1〜10)

は胆囊管経由での結石除去が行われていた.これらの報告はいずれも,腹腔鏡による一期的総胆管結石の治療は経口内視鏡を併用した二期的治療に劣らず,ほとんどの総胆管結石症例で腹腔鏡手術が可能としている.また,2012 年の開腹総胆管切開(118 例)と腹腔鏡下総胆管切開(138 例)の前向き検討(Surg Endosc 2012; 26: 2165-2171 a)[検索期間外文献])では,腹腔鏡下が術中出血(20mL vs. 285mL,p<0.01),入院日数(4.2±1.8 日 vs. 12.6±4.5 日),術後合併症(9/139[6.5%]vs. 15/118[12.7%],p<0.01),創感染(1/138[0.7%]vs. 7/118[5.9%],p<0.01)と開腹下手術より腹腔鏡下手術が優れていた.しかし,Claytonら 11)の内視鏡と外科手術のメタアナリシスでの開腹手術と腹腔鏡下手術のサブグループ解析では,結石除去率,死亡率,合併症率に差はなかった.

日本で 2014 年に発表された第 12 回内視鏡外科手術に関するアンケート調査(日本内視鏡外科学会雑誌 2014; 19: 495-640 b)[検索期間外文献])では回答のあった 372 施設では,全例に腹腔鏡下の結石除去を行う施設が 18 施設(5%),症例により腹腔鏡下の結石除去を行う施設が 1,214 施設(58%),全例に開腹下の結石除去を行う施設が 140 施設(38%)で日本では約 40%が開腹下に総胆管結石除去を行っており,腹腔鏡下総胆管結石除去術が普及しているとは言いがたい.

以上のように,腹腔下結石除去術については,開腹率が低くほとんどの症例で腹腔鏡下の総胆管結石除去術が可能と報告されている.しかし,これは腹腔鏡を得意とする専門の施設でのデータに基づくもので,腹腔鏡下総胆管結石除去を行うには手術機械の準備と医師の経験が必要である.日本では約半数の施設で開腹下に総胆管切開術がなされており,実臨床ではいまだ意味があることを示している.

開腹手術による総胆管結石の治療法は総胆管切開術(一期的縫合閉鎖もしくは胆管ドレナー

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3.治療

ジ)となる.腹腔鏡下手術を用いた総胆管結石の治療法には,経胆囊管的に結石を摘出する方法と総胆管を切開して結石を除去する方法がある.経胆囊管法は総胆管結石の径が小さく,数が少なく,3管合流部より十二指腸側に結石が存在するときに限って行われる.それ以外は胆管切開法が適応となるが,胆管径が 10mm以下の例では術後胆管狭窄の危険より総胆管切開には慎重であるべきである.総胆管切開時には通常の胆道検索に加え,術中胆道鏡による胆石遺残検索を行うことが原則である 12)(図1).総胆管切開では,開腹手術と同様,切開後にドレナージせず一期的縫合する方法と Cチューブドレナージ,Tチューブドレナージなどのドレナージを挿入する方法とがある.チューブを挿入することで,術後造影が可能となり,胆汁瘻が少なく,チューブのルートより遺残結石の除去が可能となる.Tチューブは胆汁瘻などの重篤な合併症が多いとの報告もあるが,遺残結石の除去はより容易である.一期的縫合と Tチューブ挿入とは一期的縫合で入院期間が短いこと以外には,術中出血,術後合併症,創感染に関して明確な差は出ていない.

文献

1) Riciardi R, Islam S, Canete JJ, et al. Effectiveness and long-term results of laparoscopic common bile ductexploration. Surg Endosc 2003; 17: 19-22(ケースシリーズ)

2) Petelin JB. Laparoscopic common bile duct exploration. Surg Endosc 2003; 17: 1705-1715(ケースシリーズ)3) Martin IJ, Bailey IS, Rhodes M, et al. Towards T-tube free laparoscopic bile duct exploration: a method-

ologic evolution during 300 consecutive procedures. Ann Surg 1998; 228: 29-34(コホート)4) Paganini AM, Feliciotti F, Guerrieri M, et al. Laparoscopic common bile duct exploration. J Laparoendosc

Adv Surg Tech A 2001; 11: 391-400(コホート)5) Millat B, Atger J, Deleuze A, et al. Laparoscopic treatment for choledocholithiasis: a prospective evaluation

in 247 consecutive unselected patients. Hepatogastroenterology 1997; 44: 28-34(コホート)6) Thompson MH, Tranter SE. All-comers policy for laparoscopic exploration of the common bile duct. Br J

Surg 2002; 89: 1608-1612(コホート)

図 1 術中胆道鏡 X線(a)と胆道鏡(b)での総胆管結石

a b

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②総胆管結石

7) Tokumura H, Umezawa A, Cao H, et al. Laparoscopic management of common bile duct stones: transcys-tic approach and choledochotomy. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002; 9: 206-212(コホート)

8) Ebner S, Rechner J, Beller S, et al. Laparoscopic management of common bile duct stones. Surg Endosc2004; 18: 762-765(コホート)

9) Waage A, Stromberg C, Leijonmarck CE, et al. Long-term results from laparoscopic common bile ductexploration. Surg Endosc 2003; 17: 1181-1185(ケースシリーズ)

10) Lezoche E, Paganini AM, Carlei F, et al. Laparoscopic treatment of gallbladder and common bile ductstones: a prospective study. World J Surg 1996; 20: 535-541; discussion 542(コホート)

11) Clayton ES, Connor S, Alexakis N, et al. Meta-analysis of endoscopy and surgery versus surgery alone forcommon bile duct stones with the gallbladder in situ. Br J Surg 2006; 93: 1185-1191(メタ)

12) Campagnacci R, Baldoni A, Baldarelli M, et al. Is laparoscopic fiberoptic choledochoscopy for commonbile duct stones a fine option or a mandatory step? Surg Endosc 2010; 24: 547-553(ランダム)

【検索期間外文献】a) Grubnik VV, Tkachenko AI, Ilyashenko VV, et al. Laparoscopic common bile duct exploration versus open

surgery: comparative prospective randomized trial. Surg Endosc 2012; 26: 2165-2171(ランダム)b) 北野正剛,山下裕一,白石憲男,ほか.内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第 12 回集計結果報告.

日本内視鏡外科学会雑誌 2014; 19: 495-640(コホート)

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解説

肝内結石は症状の有無にかかわらず治療を行うことが勧められるが,胆道再建術の既往のない無症状の末梢型(胆管二次分枝より末梢側の胆管のみに結石が存在する症例)の肝内結石症で胆管拡張・狭窄を伴わないものは有症状に転化する可能性は少ない.すなわち,治療を行わず,腹部 USや,MRIなどの低侵襲な検査での定期的な経過観察が可能であるとの報告もある 1).経過観察中に腫瘍性病変が疑われた場合,肝萎縮や狭窄胆管を認めた場合には,精査を要する 2).限局性肝内胆管狭窄が認められる症例は,無症状であっても悪性所見の否定のために各種診断モダリティに加え,生検を視野に ERCPによる精査が必要である(HPB 2012; 14: 425-434 a)[検索期間外文献]).年齢,performance status,全身状態,結石の存在部位を考慮したうえで慎重に治療法を選択すべきである 3).

文献

1) 土屋慎,露口利夫,酒井裕司,ほか.当院における末梢型肝内結石の診療―無症状症例の取扱い.胆と膵2007; 28: 505(コホート)

2) 高屋敷吏,木村文夫,清水宏明,ほか.胆石症をめぐる新しいコンセンサスと展望―肝内結石症に対する肝切除術における肝外胆管切除・胆道再建術の適応とその長期成績.消化器内科2011; 53: 227-231(コホート)

3) Herman P, Perini MV, Pugliese V, et al. Does bilioenteric anastomosis impair results of liver resection inprimary intrahepatic lithiasis? World J Gastroenterol 2010; 16: 3423-3426

【検索期間外文献】a) David Yeo, Marcos Vincius Perini, et al. Focal intrahepatic strictures: a review of diagnosis and manage-

ment. HPB 2012; 14: 425-434

3.治療 ― ❸肝内結石

無症状肝内結石は治療すべきか?

Clinical Question 3-14

CQ 3-14 無症状肝内結石は治療すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 肝萎縮や悪性所見を示唆する所見がなければ,画像検査などで定期的に経過観察を行うことを提案する.

2(100%) C

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解説

肝内結石に対する薬物療法の有用性に関する報告は少なく,また,大規模検討もみられないため,明確な結論を出すことは困難である.肝内結石の結石分類では色素胆石(ビリルビンカルシウム石)が多く,コレステロール胆石は

5〜10%と報告されている 1).ただし,ビリルビンカルシウム石でも胆管結石に比べてコレステロールの含有量が多いとされており,コレステロール過飽和胆汁が肝内結石形成の要因のひとつと考えられている.このことから有効性の可能性がある薬剤として,高脂血症薬であるフィブラート製剤,イン

チンコウ湯,コレステロール胆石症の経口溶解薬として使用されているウルソデオキシコール酸(UDCA)があげられている 1).このなかで,UDCAは,胆汁のコレステロール過飽和を伴うCaroli症候群の肝内結石で 25%に完全消失,75%で部分溶解を認め臨床的寛解を維持したとの報告がある 2).また,MDR3 遺伝子の欠損を伴う肝内結石例でも,全例で UDCA治療にて再発が防止できたと報告されており 3),コレステロール過飽和胆汁に伴う肝内結石に対しては UDCA

が有効である可能性があるが,いずれも少数例の検討であり,今後の症例蓄積,前向き検討が必要である.

一方,厚生労働省研究班で施行されたコホート調査において,胆管癌合併を目的変数とすると,統計学的にはマージナルであるが,UDCA内服がハザード比 0.253(p=0.064)と発癌のリスクを下げる因子として抽出された(J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 617-622 a)[検索期間外文献]).内服量や内服期間など,検討を要する点もあるが,肝内胆管癌発生は肝内結石症の予後規定因子であり,肝内結石症例に対しては発癌予防の観点から UDCAを投与する有用性が示されている.

CQ 3-15 薬物療法の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 結石溶解療法として有効性が証明されている薬剤はなく,投与しないことを提案する.

2(100%) D

Clinical Question 3-153.治療 ― ❸肝内結石

薬物療法の適応は?

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3.治療

文献

1) 正田純一,田中直美,跡見 裕.肝内結石の変遷ならびに内科的処置.肝・胆・膵 2006; 52: 773-7822) Ros E, Navarro S, Bru C, et al. Ursodeoxycholic acid treatment of primary hepatolithiasis in Caroli’s syn-

drome. Lancet 1993; 342: 404-406(ケースシリーズ)3) Rosmorduc O, Hermelin B, Poupon R. MDR3 gene defect in adults with symptomatic intrahepatic and

gallbladder cholesterol cholelithiasis. Gastroenterology 2001; 120: 1459-1467(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) Suzuki Y, Mori T, Yokoyama M, et al. Hepatolithiasis: analysis of Japanese nationwide surveys over a

period of 40 years. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014; 21: 617-622(コホート)

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Clinical Question 3-163.治療 ― ❸肝内結石

ESWL の適応は?

CQ 3-16 ESWLの適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 胆管狭窄がないか軽度の場合には,経口的あるいは経皮的内視鏡治療との併用で行うことを提案する.

2(100%) D

解説

肝内結石に対する ESWL単独での治療成績の報告はほとんどなく,経乳頭的内視鏡治療あるいは PTCS治療との併用で用いられている 1〜4).ESWLの目的は,結石を破砕・細片化し,内視鏡的治療にて除去可能な状態にすることである.したがって,肝内胆管に狭窄を有する場合には,結石の破砕に成功しても完全結石除去ができないことが予想されるため適応は慎重に決定する必要がある.肝内結石に対する ESWLのフォーカシングは困難なことが多く,通常は ENBDチューブある

いは PTBDチューブから造影剤を注入し,標的を決定させる 1〜3).破砕効果については 60〜90%であり,併用治療での完全結石除去率は 60〜100%と報告され

ている 1〜3).ESWLによる破砕効果は,結石の種類により異なり,コレステロール胆石では 92%と高いのに対し,ビリルビンカルシウム石では 36%と低いとの報告がある 3).併用治療でのESWLによる合併症の報告はほとんどない.

文献

1) Ellis RD, Jenkins AP, Thompson RPH, et al. Clearance of refractory bile duct stones with extracorporealshockwave lithotripsy. Gut 2000; 47: 728-731(ケースシリーズ)

2) Sackmann M, Holl J, Sauter GH, et al. Extracorporeal shock wave lithotripsy for clearance of bile ductstones resistant to endoscopic extraction. Gastrointest Endosc 2001; 53: 27-32(ケースシリーズ)

3) 杉浦信之,阿部朝美,斉藤博文,ほか.胆石症に対する ESWLの役割.内科 2005; 95: 261-264(ケースシリーズ)

4) 古川正人,酒井 敦,宮下光世,ほか.ESWLが有効であった肝内結石症の 1例.胆と膵2001; 22: 783-786(ケースシリーズ)

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Clinical Question 3-173.治療 ― ❸肝内結石

肝切除術の適応は?

CQ 3-17 肝切除術の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 肝内胆管癌合併例,肝萎縮例は肝切除術を行うことを提案する. 2(100%) C

● 胆道再建の既往がない有症状の左葉例は,肝切除術を行うことを提案する.

2(100%) C

解説

肝内結石症に対する肝切除術の成績は結石除去+T-チューブ留置や胆管空腸吻合術という他の外科的治療,経皮経肝胆道鏡的結石除去術(PTCSL),ERCPなどの非手術的治療と比べ,結石遺残率,結石再発率ともに良好である 1〜6).しかし,肝内結石の病態は多彩であり,おのおのに応じた治療が望ましい.肝内胆管癌合併(疑)例ではリスクが許せば肝切除術を行う.肝内結石症における肝内胆管癌

の合併は 5.3〜12.9%と高率であり 7〜9),臨床上最も重要な予後規定因子である 10).しかし,術前診断が不可能な症例や高度進行例も多いため,肝内結石症例においては常に胆管癌合併を念頭に置く必要がある.肝萎縮例も胆管癌の合併が高頻度であり手術適応である.日本の全国調査の結果では,肝内

胆管癌合併例のうち 88%が胆管癌発生部位と萎縮肝葉が一致していた 11).そのため,萎縮肝は肝切除術を選択すべきである(図1).肝内結石症は左葉に多い.肝内結石症調査研究班で行われたコホート調査では胆道再建の既

往がない原発性肝内結石症を対象に Cox回帰分析を行うと,左葉症例は有意な発癌のリスク因子であり,肝切除術は有意に発癌のリスクを下げる因子であった 11).左葉切除術は右葉切除術よりも手術手技も容易かつ安全に施行できるため,有症状の場合には肝切除術の適応となりやすい 4, 11).また,近年は鏡視下手術が注目され,開腹手術と同等の短期成績が報告されている 12〜14).しかし,日本では外側区域切除のみが保険適応であり,適応は慎重に判断すべきである.

両葉型では肝切除術を行うべきか迷う場合が少なくない.肝切除術の成績を片葉型と比べると,完全結石除去率や再発率,合併症発生率などの成績は一定ではなく 15〜17),残肝機能などを考慮して適応を判断すべきである.また,肝切除術には他治療併用も有用である 18).結石存在部位の切除のみでは肝切除範囲は不十分である.肝切除の適応となる症例の多くに

胆道狭窄や胆道拡張が存在する.胆道狭窄や胆道拡張の残存は結石再発や胆道癌発生のリスク

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③肝内結石

となるため,これらを含めた切除が必要である 2, 16).その際,肝門部・肝外胆管癌や膵・胆管合流異常の合併例,胆道狭窄が肝門部や肝外胆管に及んでいる場合は肝外胆管切除+胆道再建が必要になるが,それ以外の症例では肝外胆管切除や胆道再建は避けるべきである 19).

近年,肝内結石症に対して肝移植を行った症例が報告されている.多数例の報告が少なく,長期成績も不明な点が多いため,現状では重度の肝硬変症例や両葉にびまん性の肝内結石で肝切除術を含めた他のあらゆる治療が適応にならない症例に対してのみ考慮すべきである 20)(保険未収載).

文献

1) Cheon YK, Cho YD, Moon JH, et al. Evaluation of long-term results and recurrent factors after operativeand nonoperative treatment for hepatolithiasis. Surgery 2009; 146: 843-853(ケースシリーズ)

図 1 肝切除適応例a:CT.萎縮した肝左葉b:MRCP.左肝管内に結石を認める.c:切除した肝左葉d:ビリルビンカルシウム石

a b

c

d

肝内結石

中肝静脈

萎縮した肝左葉

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— 94 —

3.治療

2) Chen CH, Huang MH, Yang JC, et al. The treatment of isolated left-sided hepatolithiasis. Hepatogastroen-terology 2008; 55: 600-604(ケースシリーズ)

3) Chen ZY, Gong RX, Luo YL, et al. Surgical procedures for hepatolithiasis. Hepatogastroenterology 2010;57: 134-137(ケースシリーズ)

4) 内山和久,山上裕機.肝内結石症に対する手術―残・再発結石予防のための治療法の選択.外科 2008; 70:950-954(ケースシリーズ)

5) Al-Sukhni W, Gallinger S, Pratzer A, et al. Recurrent pyogenic cholangitis with hepatolithiasis: the role ofsurgical therapy in North America. J Gastrointest Surg 2008; 12: 496-503(ケースシリーズ)

6) Nuzzo G, Clemente G, Giovannini I, et al. Liver resection for primary intrahepatic stones: a single-centerexperience. Arch Surg 2008; 143: 570-574(ケースシリーズ)

7) 鈴木 裕,森 俊幸,杉山政則,ほか.肝内結石症の診断と治療.Annual Review消化器 2011: 286-292(ケースシリーズ)

8) Clemente G, Giuliante F, De Rose AM, et al. Liver resection for intrahepatic stones in congenital bile ductdilatation. J Visc Surg 2010: 147; e175-e180(ケースシリーズ)

9) 甲斐真弘,千々岩一男,永野元章,ほか.肝内結石症 116 例の治療および長期予後の検討.消化器内科2011; 53: 219-226(ケースシリーズ)

10) Uenishi T, Hamba H, Takemura S, et al. Outcomes of hepatic resection for hepatolithiasis. Am J Surg 2009;198: 199-202(ケースシリーズ)

11) 森 俊幸,鈴木 裕,阿部展次,ほか.肝内結石症に対する治療―手術治療.消化器外科 2011; 34: 1757-1765(ケースシリーズ)

12) Yoon YS, Han HS, Shin SH, et al. Laparoscopic treatment for intrahepatic duct stones in the era oflaparoscopy: laparoscopic intrahepatic duct exploration and laparoscopic hepatectomy. Ann Surg 2009;249: 286-291(ケースシリーズ)

13) Lai EC, Ngai TC, Yang GP, et al. Laparoscopic approach of surgical treatment for primary hepatolithiasis:a cohort study. Am J Surg 2010; 199: 716-721(コホート)

14) Tu JF, Jiang FZ, Zhu HL, et al. Laparoscopic vs open hepatectomy for hepatolithiasis. World J Surg 2010;16: 2818-2823(ケースシリーズ)

15) Li SQ, Liang LJ, Hua YP, et al. Bilateral liver resection for bilateral intrahepatic stones. World J Gastroen-tarol 2009; 15: 3660-3663(ケースシリーズ)

16) Yang T, Lau WY, Lai EC. Hepatectomy for bilateral primary hepatolithiasis: a cohort study. Ann Srug2010; 251: 84-90(コホート)

17) Li SQ, Liang LJ, Peng BG, et al. Outcomes of liver resection for intrahepatic stones: a comparative study ofunilateral versus bilateral disease. Ann Surg 2012; 255: 946-953(ケースシリーズ)

18) 高屋敷吏,清水宏明,木村文夫,ほか.肝内結石症.日本臨牀 2010(別冊): 431-434(ケースシリーズ)19) 高屋敷吏,木村文夫,清水宏明,ほか.肝内結石症に対する肝切除術における肝外胆管切除・胆道再建術

の適応とその長期成績.消化器内科 2011; 53: 227-231(ケースシリーズ)20) Chen ZY, Yan LN, Zeng YY, et al. Preliminary experience with indications for liver transplantation for

hepatolithiasis. Transplant Proc 2008; 40: 3517-3522(ケースシリーズ)

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Clinical Question 3-18

経皮的内視鏡治療(PTCS)の適応は?

3.治療 ― ❸肝内結石

CQ 3-18 経皮的内視鏡治療(PTCS)の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 肝萎縮がなく,胆管狭窄がないか軽度の場合には行うことを提案する.

2(100%) D

解説

肝内結石に対する PTCSを用いての完全結石除去は,胆道再建術の既往の有無にかかわらず電気水圧式衝撃波結石破砕術(EHL)を併用することで 80〜96.7%と高率で可能と報告されている 1〜4)(図1).不成功の原因としては,肝内胆管狭窄があげられており,特に高度狭窄例では完全結石除去率は 58%まで低下すると報告されている 2).Takadaら 5)は肝内結石に対し,術中・術後に経総胆管経由での胆道内視鏡治療を 86 例に施行し 59 例(69%)に成功し,特に胆管狭窄がない例では 98%に成功したと報告している.一方,結石再発率については 35〜53%との報告があるが 1〜3, 6),遺残結石率が 10〜20%程度あ

図 1 PTCSによる肝内結石除去a:経皮経肝胆道造影.b:経皮経肝的に胆道鏡を挿入.c:PTCS下に結石を除去.

a b c

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— 96 —

3.治療

り 3, 4),胆管狭窄がなく完全結石除去し得た例では 3%との報告もある 5).したがって,完全結石除去を目指すことが重要であり,かつ術後の長期間の経過観察が必要である.また,胆管狭窄を有する例で再発率が高く,再発までの期間が短いとの報告 1)があり,胆管狭窄を有する例に対する PTCSの有用性は限定的であるほか 7),肝内胆管拡張例や Child B・Cの進行肝硬変例では再発率が高いことが報告されており 1, 2),適応を慎重に決定する必要がある.合併症として胆道出血,胆管炎,肝膿瘍,PTBD瘻孔損傷などがあり,発生率は 1.6〜13.2%

と報告されている 1〜4, 8).完全結石除去までの平均治療回数は 3.9〜6 回を要し 1〜3),入院期間が長くなることも課題である.

文献

1) Huang MH, Chen CH, Yang JC, et al. Long-term outcome of percutaneous transhepatic cholangioscopiclithotomy for hepatolithiasis. Am J Gastroenterol 2003; 98: 2655-2662(ケースシリーズ)

2) Lee SK, Seo DW, Myung SJ, et al. Percutaneous transhepatic cholangioscopic treatment for hepatolithiasis:an evaluation of long-term results and risk factors for recurrence. Gastrointest Endosc 2001; 53: 318-323

(ケースシリーズ)3) 神垣充宏,佐々木民人,芹川正浩,ほか.肝内結石に対する経皮的胆道鏡下截石.消化器内科 2011; 53:

212-218(ケースシリーズ)4) 三好広尚,乾 和郎,芳野純治.経皮経肝胆道鏡による結石治療のコツ.Gastroenterol Endosc 2011; 53:

1818-18275) Takada T, Uchiyama K, Yasuda H, et al. Indications for the choledochoscopic removal of intrahepatic

stones based on the biliary anatomy. Am J Surg 1996; 171: 558-561(ケースシリーズ)6) Chen CH, Huang MH, Yang JC, et al. The treatment of isolated left-sided hepatolithiasis. Hepatogastroen-

terology 2008; 55: 600-604(ケースシリーズ)7) 甲斐真弘,千々岩一男,永野元章,ほか.肝内結石症 116 例の治療および長期予後の検討.消化器内科

2011; 53: 219-226(ケースシリーズ)8) Ozcan N, Kahriman G, Mavili E. Percutaneous transhepatic removal of bile duct stones: result of 261

patients. Cardiovasc Intervent Radiol 2012; 35: 621-627(ケースシリーズ)

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3.治療 ― ❸肝内結石

経口的内視鏡治療の適応は?

Clinical Question 3-19

CQ 3-19 経口的内視鏡治療の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 肝萎縮がなく,胆管狭窄がないか軽度の場合には行うことを提案する.

2(100%) D

● 胆道再建後例に対して行うことを提案する. 2(90%) D

解説

肝内結石に対する経口的内視鏡治療の適応は,胆道再建術の既往の有無で異なる.胆道再建術の既往がない場合には,胆管に狭窄を認めない例が経乳頭的内視鏡治療の適応と

なる(図1).ただし,総胆管結石を伴わない肝内結石に対する経乳頭的内視鏡治療の多数例の検討はなく,

報告の多くは総胆管結石合併例である 1〜3).Tanakaらは,総胆管結石合併肝内結石 57 例に対しESTを行い,完全結石除去は 3例の自然排石を含む 24 例(42.1%)と報告している.さらに,その後の長期経過では完全結石除去例では後期合併症は認めなかったのに対し,遺残結石の 10 例に後期合併症(胆管炎 7例うち 2例死亡,肝膿瘍 3例)を認めており,Ikedaらも総胆管結石合

図 1 肝内結石に対する経乳頭的内視鏡治療a〜b:ESWLとの併用で結石除去に成功.

a b

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3.治療

併肝内結石に対する EST後の長期成績にて 3例が肝膿瘍で死亡したと報告している.したがって,EST後の肝内結石残存は続発性胆道感染症の高リスク因子であり,種々の追加治療により完全に除去すべきであり,かつ治療後の経過観察を慎重に行う必要がある 1, 3).一方,胆道再建後の肝内結石は,バルーン内視鏡の開発により内視鏡治療例が増加してきて

いる 4, 5)(図2).Shimataniらは,膵頭十二指腸切除術後の胆管空腸吻合例に発生した肝内結石7例に対し,ショートタイプのダブルバルーン内視鏡を用い,全例で吻合部に到達し,完全結石除去に成功したと報告している 4).ただし,吻合部までの経路が長く,スコープのチャンネル径にも制限があるなど手技的難度は高く,熟練者の施行が望まれる.肝内結石に対する経口的内視鏡治療は増加していくことが予想されるが,その長期成績は今

後の検討課題である.

文献

1) Tanaka M, Ikeda S, Ogawa Y, et al. Divergent effects of endoscopic sphincterotomy on the long-term out-come of hepatolithiasis. Gastrointest Endosc 1996; 43: 33-37(ケースシリーズ)

2) Ikeda S, Tanaka M, Matsumoto S, et al. Endoscopic sphincterotomy: long-term results in 408 patients withcomplete follow-up. Endoscopy 1988; 20: 13-17(ケースシリーズ)

3) Fujita R, Yamamura M, Fujita Y. Combined endoscopic sphincterotomy and percutaneous transhepaticcholangioscopic lithotripsy. Gastrointest Endosc 1988; 34: 91-94(ケースシリーズ)

4) Shimatani M, Matsushita M, Takaoka M, et al. Effective “short” double-balloon enteroscopy for diagnosticand therapeutic ERCP in patients with altered gastrointestinal anatomy: a large case series. Endoscopy2009; 41: 849-854(ケースシリーズ)

5) Tsujino T, Yamada A, Isayama H, et al. Experiences of biliary interventions using short double-balloonenteroscopy in patients with Roux-en-Y anastomosis or hepaticojejunostomy. Dig Endosc 2010; 22: 211-216

(ケースシリーズ)

図 2 胆道再建後の肝内結石に対するバルーン内視鏡治療a:バルーン内視鏡にて胆管空腸吻合部に到達.b:造影にて肝内胆管に結石を認める.c:内視鏡的に結石を除去.

a b c

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解説

胆道再建後の肝内結石は再発率が高く 1),胆管炎や肝膿瘍,肝内胆管癌を合併する.胆管炎症例に対するドレナージ処置には経口的内視鏡と経皮的アプローチがあるが,一般的に PTBDが適応となることが多い.しかし,胆管拡張を認めない症例もあり熟練した手技の習得が必要となる.炎症が軽快したのちにドレナージチューブのサイズアップを行い,EHLによる経皮経肝胆道鏡的結石除去術(PTCSL)施行の準備をする(CQ 3-18 参照).一方,経口的内視鏡はバルーン内視鏡の開発により治療例が増加し,有用性が報告されつつある.ただし,技術的難度が高く,熟練者による施行が望まれる.ESWLは単独での治療報告はほとんどなく,経口的内視鏡処置や PTCSとの併用で用いられる 2).肝内結石症に対する肝切除術は病変胆管を含む肝内結石を完全に除去できれば,再発もまれであり経過も良好である(図1)3).また,萎縮肝葉は胆管癌の発生母地となる可能性が高く,萎縮肝葉切除は合理的な治療法である 4).

文献

1) 甲斐真弘,千々岩一男,大内田次郎,ほか.長期経過からみた肝内結石症の治療方針.胆と膵2007; 28: 509(ケースシリーズ)

2) 杉浦信之,阿部朝美,斉藤博文,ほか.胆石症に対する ESWLの役割.内科 2005; 95: 261-264(ケースシリーズ)

3) Vetrone G, Ercolani G, Grazi GL, et al. Surgical therapy for hepatolithiasis: a western experience. J AmColl Surg 2006; 202: 306(ケースシリーズ)

4) 甲斐真弘,千々岩一男,永野元章,ほか.胆石症をめぐる新しいコンセンサスと展望―肝内結石症 116 例の治療および長期予後の検討.消化器内科 2011; 53: 219-226(コホート)

Clinical Question 3-203.治療 ― ❸肝内結石

胆道再建後の肝内結石に対する治療は?

CQ 3-20 胆道再建後の肝内結石に対する治療は?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 肝内胆管癌合併例(疑診例)では肝切除術を行うことを提案する. 2(100%) C

● 経口あるいは経皮的内視鏡治療を行うことを提案する. 2(100%) D

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3.治療

図 1 胆道再建後の肝内結石症例a:DIC-CT.肝内胆管後区域枝が造影されない(矢印).b:ダイナミック CT.後区域枝に結石が充満(矢印).c:切除肝割面d:摘出肝内結石

a b

cd

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4.予後・合併症

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— 102 —

解説

良性胆道疾患に対する胆囊摘出術は良好な治療成績を得ていると一般には考えられる 1, 2).開腹胆囊摘出例でアンケート調査を行えた 229 例では 26 例(11.4%)に遠隔時愁訴を認めたが,16 例では画像,血液所見に異常はなく,愁訴の 14 例は腹痛であり,術後合併症・遠隔成績ともに極めて満足するものであった 2).しかし,術後に術前と同様な症状が持続するか,あるいは,術前にはなかった新たな症状が

出現することがある.胆囊摘出後症候群と一般にはいわれている症状をどこまで有意にとるか,定義の問題があり,その頻度は数%から 22%と様々である 2〜5).胆囊摘出術は現在,腹腔鏡下が多いが,長期合併症としては腹腔内落下結石による腹腔内膿

瘍,術中胆管損傷による胆管狭窄,遺残胆管結石,結石再発などがある 6).胆石症の患者は胆囊摘出術施行の有無にかかわらず,胆石のない患者と比べて一般的に死亡

率が高く,とりわけ心疾患,癌による死亡率が高いと報告されている 7).

文献

1) Vetrhus M, Soreide O, Eide GE, et al. Pain and quality of life in patients with symptomatic, non-complicatedgallbladder stones: results of a randomized controlled trial. Scand J Gastroenterol 2004; 39: 270-276(ランダム)

2) 森田章夫,小野山裕彦,宮崎直之.胆囊摘出後症候群についての検討.日本臨床外科学会雑誌 1992; 53:1560-1565(ケースシリーズ)

3) 田妻 進.胆囊結石症に対する UDCA溶解療法の特性―胆囊摘出と胃・十二指腸機能の変化―胆囊温存の意義.Progress in Medicine 2001; 21: 92-93(横断)

4) Vetrhus M, Berhane T, Soreide O, et al. Pain persists in many patients five years after removal of the gall-bladder: observations from two randomized controlled trials of symptomatic, noncomplicated gallstonedisease and acute cholecystitis. J Gastrointest Surg 2005; 9: 826-831(メタ)

5) Mertens MC, Roukema JA, Scholtes VP, et al. Trait anxiety predicts unsuccessful surgery in gallstone dis-ease. PsychosomMed 2010; 72: 198-205(ケースシリーズ)

6) 石和直樹,山本裕司,田中聡一,ほか.腹腔鏡下胆囊摘出術後の晩期合併症.外科2000; 62: 329-332(ケースシリーズ)

7) Ruhl CE, Everhart JE. Gallstone disease is associated with increased mortality in the United States. Gas-troenterology 2011; 140: 508-516(コホート)

Clinical Question 4-14.予後・合併症 ― ❶予後

胆囊結石に対する胆囊摘出術後の経過観察は必要か?

CQ 4-1 胆囊結石に対する胆囊摘出術後の経過観察は必要か?

ステートメント

● 胆囊結石に対する胆囊摘出術後(総胆管結石がない場合)の経過観察は必ずしも行う必要はない.

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解説

胆囊摘出後の消化吸収機能の低下を証明する大規模な RCTやメタアナリシスは,いまだ報告されていない.肝における胆汁酸生合成の低下や回腸末端での胆汁酸の吸収障害がない限り,胆囊を摘出しても腸肝循環の回数が増加することによって胆汁酸プールサイズは保たれ 1),脂質 2)

や脂溶性ビタミンの消化吸収障害は起こらないとされている.日常診療上,胆囊摘出後の患者に軟便・下痢などの消化器症状がみられることがある.胆囊

摘出後 1〜2ヵ月に排便回数が有意に増加しており,排便習慣の変化がみられたものの,3ヵ月以降では,6%に間欠的な下痢がみられるのみと報告されている 1).胆囊摘出後は腸肝循環の回数が増加することにより,腸内細菌による二次胆汁酸の生成が増加する.主な二次胆汁酸であるデオキシコール酸は大腸粘膜からの水分泌を増加させるとされ,結果的に糞便の水分量が増加し,軟便や下痢をきたすと考えられる 3〜7).すなわち,胆囊摘出後,腸肝循環の回数が増加し,二次胆汁酸の増加により糞便中の水分が増加し,下痢をきたすことがあると考えられる.こうした排便習慣の変化と消化吸収障害は別個に考える必要がある.

文献

1) Sauter GH, Moussavian AC, Meyer G, et al. Bowel habits and bile acid malabsorption in the months aftercholecystectomy. Am J Gastroenterol 2002; 97: 1732-1735(ケースシリーズ)

2) 岡橋 誠,堀内 至,日野文明.胆囊摘出後における脂肪吸収能の変化.日本臨床代謝学会記録 1984; 21:86-87(横断)

3) Arlow FL, Dekovich AA, Priest RJ, et al. Bile acid-mediated postcholecystectomy diarrhea. Arch InternMed 1987; 147: 1327-1329(ケースシリーズ)

4) Fromm H, Tunuguntla AK, Malavolti M, et al. Absence of significant role of bile acids in diarrhea of a het-erogenous group of postcholecystectomy patients. Dig Dis Sci 1987; 32: 33-44(ケースコントロール)

5) Sciarretta G, Furno A, Mazzoni M, et al. Post-cholecystectomy diarrhea: evidence of bile acid malabsorp-tion assessed by SeHCAT Test. Am J Gastroenterol 1992; 87: 1852-1854(ケースシリーズ)

6) Suhr O, Danielsson A, Nyhlin H, et al. Bile acid malabsorption demonstrated by SeHCAT in chronic diar-rhea, with special reference to the impact of cholecystectomy. Scan J Gastroenterol 1988; 23: 1187-1194

(ケースコントロール)7) Porr PJ, Szantay J, Rusu M. Post-cholecystectomy syndrome and magnesium deficiency. J Am Coll Nutr

2004; 23: 745S-747S(横断)

CQ 4-2 胆囊摘出は消化吸収機能を低下させるか?

ステートメント

● 胆囊摘出が消化吸収機能を低下させることを示した明らかなエビデンスはない.

Clinical Question 4-24.予後・合併症 ― ❶予後

胆囊摘出は消化吸収機能を低下させるか?

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Clinical Question 4-34.予後・合併症 ― ❷長期合併症

胆囊摘出術後の長期合併症は何か?

CQ 4-3 胆囊摘出術後の長期合併症は何か?

ステートメント

● 胆囊摘出術後の長期合併症として,腹腔内落下結石による腹腔内膿瘍,術中胆管損傷による胆管狭窄,遺残胆管結石,結石再発, 遺残胆囊管腫瘍などがある.

解説

胆囊摘出術後の長期合併症には,腹腔内落下結石による腹腔内膿瘍,術中胆管損傷による胆管狭窄,遺残胆管結石,結石再発などがある 1).胆囊管遺残に関連した合併症としては,遺残胆囊管結石 2〜7),遺残胆囊管・消化管瘻 8〜10),遺残胆囊管腫瘍(癌,腺筋腫,神経腫)11〜17),遺残胆囊管よりの胆汁漏出 18)などの報告がある.しかしこうした長期合併症の頻度は極めて少ない.胆囊摘出術と各種の癌との関連性については,これまで大腸癌 19),乳癌 20)や膵癌 21)との関連

は明らかではないと報告されてきたが,大腸癌 22),膵癌 23)について関連ありとする報告もある.

文献

1) 石和直樹,山本裕司,田中聡一,ほか.腹腔鏡下胆囊摘出術後の晩期合併症.外科2000; 62: 329-332(ケースシリーズ)

2) Benninger J, Rabenstein T, Farnbacher M, et al. Extracorporeal shockwave lithotripsy of gallstones in cysticduct remnants and Mirizzi syndrome. Gastrointest Endosc 2004; 60: 454-459(ケースシリーズ)

3) 後藤 崇,谷口正次,山本 淳,ほか.術中 ENBDチューブ造影が有用であった腹腔鏡下遺残胆囊摘出術の 2例.日本内視鏡外科学会雑誌 2004; 9: 433-438(ケースシリーズ)

4) Barnett JL, Scheiman JM, Elta GH. The cystic duct remnant: an unusual case of a biliary intraluminal fillingdefect. Am J Gastroenterol 1988; 83: 1189-1191(ケースシリーズ)

5) Rozsos I, Magyarodi Z, Orban P. The removal of cystic duct and gallbladder remnant by microlaparoto-my. Acta Chir Hung 1997; 36: 297-298(ケースシリーズ)

6) Walsh RM, Ponsky JL, Dumot J. Retained gallbladder/cystic duct remnant calculi as a cause of postchole-cystectomy pain. Surg Endosc 2002; 16: 981-984(ケースシリーズ)

7) Vyas FL, Nayak S, Perakath B, et al. Gallbladder remnant and cystic duct stump calculus as a cause ofpostcholecystectomy syndrome. Trop Gastroenterol 2005; 26: 159-160(ケースシリーズ)

8) Woods MS, Farha GJ, Street DE. Cystic duct remnant fistulization to the gastrointestinal tract. Surgery1992; 111: 101-104(ケースシリーズ)

9) Flis V, Horvat M. Cystic duct remnant duodenal fistulization as a cause of misconceived endoscopicsphincterotomy and the consequent massive bleeding. Endoscopy 1995; 27: 465(ケースシリーズ)

10) 葦沢龍人,青木達哉,中村龍治,ほか.腹腔鏡下胆囊摘出術 5年後に遺残胆囊管結腸瘻をきたした 1例.日本臨床外科学会雑誌 2001; 62: 1726-1729(ケースシリーズ)

11) 鈴木宏育,尾関 豊,関野孝史,ほか.胆摘後の遺残胆囊管を中心とした胆囊癌の 1例.胆と膵 1994; 15:

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— 105 —

②長期合併症

355-360(ケースシリーズ)12) 吉田直文,猪俣 斉,畠山純一,ほか.胆囊摘出後,遺残胆囊管に腺筋腫を認めた 1例.北海道外科雑誌

2002; 47 (2): 8-10(ケースシリーズ)13) Topazian M, Salem RR, Robert ME. Painful cystic duct remnant diagnosed by endoscopic ultrasound. Am

J Gastrotenterol 2005; 100: 491-495(ケースシリーズ)14) 市橋成夫,渡邊祐司,奥村 明,ほか.遺残胆囊管に生じた Traumatic Neuromaの 1例.胆道 2009; 70:

133-136(ケースシリーズ)15) 竹島 薫,山藤和夫,辻 忠男,ほか.胆摘後に発生した遺残胆囊管癌の 1例.倉敷中央病院年報 2008;

23: 783-788(ケースシリーズ)16) 森本幸治,前田敦行,金本秀行,ほか.遺残胆囊管癌の 1例.日本消化器外科学会雑誌 2008; 41: 105-110

(ケースシリーズ)17) 安田晃一,金宮義哲.上部消化管内視鏡検査を契機に発見された遺残胆囊管癌の 1例.日本臨床外科学会

雑誌 2010; 71: 1837-1841(ケースシリーズ)18) Berger H, Weinzierl M, Neville ES, et al. Percutaneous transcatheter occlusion of cystic duct stump in

postcholecystectomy bile leakage. Gastrointest Radiol 1989; 14: 334-336(ケースシリーズ)19) Kaibara N, Wakatsuki T, Mizusawa K, et al. Negative correlation between cholecystectomy and the subse-

quent development of large bowel carcinoma in a low-risk Japanese population. Dis Col Rec 1986; 29: 644-646(コホート)

20) Adami HO, Meirik O, Gustavsson S, et al. Cholecystectomy and the incidence of breast cancer: a cohortstudy. Br J Cancer 1984; 49: 235-239(コホート)

21) Ye W, Lagergren J, Nyren O, et al. Risk of pancreatic cancer after cholecystectomy: a cohort study in Swe-den. Gut 2001; 49: 678-681(コホート)

22) Shao T, Yang YX. Cholecystectomy and the risk of colorectal cancer. Am J Gastroenterol 2005; 100: 1813-1820(コホート)

23) Lin G, Zeng Z, Wang X, et al. Cholecystectomy and risk of pancreatic cancer: a meta-analysis of observa-tional studies. Cancer Causes Control 2012; 23: 59-67(メタ)

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— 106 —

Clinical Question 4-44.予後・合併症 ― ❷長期合併症

総胆管結石治療後の長期合併症は何か?

CQ 4-4 総胆管結石治療後の長期合併症は何か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 総胆管結石治療後の長期合併症として胆管結石再発,急性胆管炎,急性胆囊炎などがみられる.胆道癌(胆管癌,胆囊癌)の発癌の報告もまれにみられる.また,EST や EPBD などの治療法による長期合併症の違いも報告されており,留意すべきである.

なし B

解説

総胆管結石に対する治療法として,今日では内視鏡的治療が標準的治療法として広く普及している.内視鏡的治療には ESTと EPBDがある.また,手術治療として腹腔鏡下あるいは開腹下の総胆管結石除去術があり,経胆囊管的結石除去と総胆管切開結石除去がある.手術治療としての乳頭形成術や胆管消化管吻合術は減少している.長期合併症としては治療法によってその頻度や程度は異なるが,結石再発,急性胆管炎,急性胆囊炎,胆道系(胆管癌,胆囊癌)の発癌などが報告されている.それぞれの治療法の長期予後に関して,症例集積研究(ケースシリーズ研究)を中心に多くの報告がなされてきた.また,コホート研究やランダム化比較試験(RCT),メタアナリシスでの報告もみられる.長期予後に関して retrospectiveに検討された多数のケースシリーズ 1〜14)の結果をまとめると,

ESTでは,結石再発 8.4〜13.2%,急性胆囊炎 6.2〜7.5%(有石胆囊温存 16〜22%),急性胆管炎1.8%,肝膿瘍 1.2%,胆道癌 0〜1.9%であった.EPBDでは,結石再発 7.1〜8.8%(有石胆囊温存 14%),急性胆囊炎 5.0%(有石胆囊温存 7.7%),急性胆管炎 4.5〜5.5%であった 15〜17).腹腔鏡下総胆管結石除去術での結石再発は 2.6〜7.6%18, 19)で,腹腔鏡下経胆囊管的結石除去術に限ると結石再発は 0〜2.3%であった 20, 21).開腹下総胆管切開+Tチューブドレナージでの結石再発は10.3%22)であった.総胆管結石に対する EPBDと ESTとを比較した 1件のメタアナリシス 23)では,EPBDは EST

に比して短期的には結石遺残や急性膵炎のリスクが高いが,長期的な胆道感染症のリスクは低いとしている.また,ESTについて胆囊摘出と胆囊温存で長期予後を調べたメタアナリシス 24)

では,腹痛,黄疸,急性胆管炎の出現率や死亡率などが胆囊温存群で有意に高く,ESTに際しての胆囊摘出術の有用性を示唆している.Tanakaらの RCT 25)では EPBD群,EST群それぞれ 16 例に対し平均 61 ヵ月の観察期間で結

石再発がそれぞれ 6.3%:26.7%,急性胆囊炎が 0%:6.7%で,EST群に結石再発が多いとして

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— 107 —

②長期合併症

いる.Ochiらの RCT 26)では結石再発は EST群が 5.6%,EPBD群が 3.9%,急性胆管炎は EST

群が 3.7%,EPBD群が 3.9%で有意な違いを認めなかったが,急性胆囊炎は EST群が 18.5%(有石胆囊では 29.4%),EPBD群が 3.3%(有石胆囊では 4.5%)で,有石胆囊における急性胆囊炎発症率は EST群が有意に高かった.また,Yasudaら 27)により報告された日本の多施設共同の EST

と EPBDの RCTによる比較検討結果では,結石再発が EST群で 17.4%,EPBD群で 8.0%と両群間で有意差を認めたと報告しており,再発のリスクファクターとしては傍乳頭憩室と有石胆囊温存をあげている.内視鏡治療後の長期予後において胆道癌の発生率は EST群で 0〜3.1%,EPBD群で 0〜0.4%

と報告されている 10, 12, 14, 15, 17, 26).また,Karlsonら 28)は population-based cohort studyによりEST後の 992 例を対象に中央値 9年の観察を行った結果,発癌のリスクは増加しないと報告している.現時点では ESTと EPBDのいずれにおいても発癌との明らかな因果関係は証明されていない.しかし,とりわけ若年者に対する内視鏡的治療後の長期経過については留意する必要がある.

文献

1) Schreurs WH, Juttmann JR, Stuifbergen WN, et al. Management of common bile duct stones: selectiveendoscopic retrograde cholangiography and endoscopic sphincterotomy: short- and long-term results.Surg Endosc 2002; 16: 1068-1072(ケースシリーズ)

2) Sugiyama M, Atomi Y. Risk factors predictive of late complications after endoscopic sphincterotomy forbile duct stones: long-term (more than 10 years) follow-up study. Am J Gastroenterol 2002; 97: 2763-2767

(ケースシリーズ)3) Tanaka M, Takahata S, Konomi H, et al. Long-term consequence of endoscopic sphincterotomy for bile

duct stones. Gastrointest Endosc 1998; 48: 465-469(ケースシリーズ)4) 平田信人,藤田力也.内視鏡的治療の長期予後.Gastro 1992; 2: 47-50(ケースシリーズ)5) 田中雅夫,小川芳明,成 富元.総胆管結石症の治療における内視鏡的乳頭切開術,外科的総胆管切開術

および外科的乳頭切開術の意義の比較検討.日本外科学会雑誌 1992; 93: 1119-1122(ケースシリーズ)6) 安田健治朗,中島正継,趙 栄済.ESTの長期成績―内科的立場からみた長期予後.消化器内視鏡1990; 2:

621-626(ケースシリーズ)7) Hammarstrom LE, Stridbeck H, Ihse I. Long-term follow-up after endoscopic treatment of bile duct calculi

in cholecystectomized patients. World J Surg 1996; 20: 272-276(ケースシリーズ)8) 明石隆吉,清住雄昭,相良勝郎,ほか.胆石症診療の新展開―時代とともに変わってきた治療法―胆石症

の治療―胆囊結石を合併した総胆管結石の治療方針.内科 2005; 95: 279-284(ケースシリーズ)9) 増田 淳,樋口次男.総胆管結石に対する最新の治療戦略―内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)による総胆

管結石の治療と長期予後.臨床消化器内科 2001; 16: 1255-1260(ケースシリーズ)10) Kageoka M, Watanabe F, Maruyama Y, et al. Long-term prognosis of patients after endoscopic sphinctero-

tomy for choledocholithiasis. Dig Endosc 2009; 21: 170-175(ケースシリーズ)11) Tsujino T, Kawabe T, Isayama H, et al. Management of late biliary complications in patients with gallblad-

der stones in situ after endoscopic papillary balloon dilation. Eur J Gastroenterol Hepatol 2009; 21: 376-380(ケースシリーズ)

12) Fujimoto T, Tsuyuguchi T, Sakai Y, et al. Long-term outcome of endoscopic papillotomy for choledo-cholithiasis with cholecystolithiasis. Dig Endosc 2010; 22: 95-100(ケースシリーズ)

13) 宇野耕治,安田健治朗,森川宗一郎,ほか.胆管結石に対する各種治療法の成績と選択―内視鏡的乳頭括約筋切開下切石術(EST-L)の長期成績.胆と膵 2010; 31: 247-250(ケースシリーズ)

14) 上田城久朗,明石隆吉,清住雄昭,ほか.胆石症をめぐる新しいコンセンサスと展望―ESTによる胆管結石治療後の長期成績.消化器内科 2011; 53: 172-177(ケースシリーズ)

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— 108 —

4.予後・合併症

ズ)16) Ueno N, Ozawa Y, Aizawa T. Prognostic factors for recurrence of bile duct stones after endoscopic treat-

ment by sphincter dilation. Gastrointest Endosc 2003; 58: 336-340(ケースシリーズ)17) Ohashi A, Tamada K, Wada S, et al. Risk factors for recurrent bile duct stones after endoscopic papillary

balloon dilation: long-term follow-up study. Dig Endosc 2009; 21: 73-77(ケースシリーズ)18) Yasuda I, Fujita N, Maguchi H, et al. Long-term outcomes after endoscopic sphincterotomy versus endo-

scopic papillary balloon dilation for bile duct stones. ANZ J Surg 2008; 78: 492-494(コホート)19) 長谷川 洋,坂本栄至,小松俊一郎,ほか.胆管結石に対する各種治療法の成績と選択―胆管結石症に対

する腹腔鏡下一期的治療の短期,長期成績.胆と膵 2010; 31: 299-303(ケースシリーズ)20) Paganini AM, Guerrieri M, Sarnari J, et al. Thirteen years’ experience with laparoscopic transcystic com-

mon bile duct exploration for stones: effectiveness and long-term results. Surg Endosc 2007; 21: 34-40(ケースシリーズ)

21) 徳村弘実,松村直樹,野村良平.総胆管結石症に対する腹腔鏡下手術.胆道2012; 26: 40-45(ケースシリーズ)

22) Uchiyama K, Onishi H, Tani M, et al. Long-term prognosis after treatment of patients with choledo-cholithiasis. Ann Surg 2003; 238: 97-102(ケースシリーズ)

23) Weinberg BM, Shindy W, Lo S. Endoscopic balloon sphincter dilation (sphincteroplasty) versus sphinc-terotomy for common bile duct stones. Cochrane Database Syst Rev 2006; (4): CD004890(メタ)

24) McAlister VC, Davenport E, Renouf E. Cholecystectomy deferral in patients with endoscopic sphincteroto-my. Cochrane Database Syst Rev 2007; (4): CD006233(メタ)

25) Tanaka S, Sawayama T, Yoshioka T. Endoscopic papillary balloon dilation and endoscopic sphincteroto-my for bile duct stones: long-term outcomes in a prospective randomized controlled trial. GastrointestEndosc 2004; 59: 614-618(ランダム)

26) Ochi Y, Mukawa K, Kiyosawa K, et al. Comparing the treatment outcomes of endoscopic papillary dila-tion and endoscopic sphincterotomy for removal of bile duct stones. J Gastroenterol Hepatol 1999; 14: 90-96(ランダム)

27) Yasuda I, Fujita N, Maguchi H, et al. Long-term outcomes after endoscopic sphincterotomy versus endo-scopic papillary balloon dilation for bile duct stones. Gastrointest Endosc 2010; 72: 1185-1191(ランダム)

28) Karlson BM, Ekbom A, Arvidsson D, et al. Population-based study of cancer risk and relative survival fol-lowing sphincterotomy for stones in the common bile duct. Br J Surg 1997; 84: 1235-1238(コホート)

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4.予後・合併症 ― ❷長期合併症

肝内結石治療後の長期合併症は何か?

Clinical Question 4-5

CQ 4-5 肝内結石治療後の長期合併症は何か?

ステートメント 推奨の強さ(合意率)

エビデンスレベル

● 肝内結石治療後の長期合併症は結石再発が最も多く,次いで急性胆管炎,肝膿瘍,肝内胆管癌などが認められる.胆管癌のリスクファクターとしては胆道再建の既往と肝萎縮が報告されている.また,肝内結石症は治療後であっても肝内胆管癌の合併に注意をする必要がある.

なし C

解説

日本の全国調査では,肝内結石症は胆囊結石症,総胆管結石症に比べると頻度は少なく,胆石症全体に占める割合は 0.6%程度である 1).しかし,本症は病因や病態が複雑で治療困難例や治療後の長期合併症も多く,厚生労働省難治性疾患克服研究事業のひとつとして調査研究対象となっている疾患である.肝内結石症は新規症例数の減少や症例の平均年齢の上昇とともに病型の年次的変化もある.1970 年代には肝内型が 20.6%であったが,2006 年調査では 54.9%と増加を認めた 1).病型の変化に伴い治療法の変遷もみられる(胆道 2013; 27: 788-794 a)[検索期間外文献]).外科的治療の症例は減少し,非手術的治療[経皮経肝的(PTCSL),経乳頭的(ERCP),POCS]の割合が増加している.外科的治療では肝切除術が 50%を超えており,非手術的治療では PTCSLが最も多い.肝内結石治療後の長期合併症は病型や治療法によりその出現頻度は異なるが,日本における

最新の疫学調査の結果 a),結石再発が最も多く,次いで急性胆管炎,肝膿瘍,肝内胆管癌などであった.初回治療後の遺残・再発は全体で 18.6%に認められた a).遺残・再発率は以前の調査結果と比べて違いを認めず,治療成績の明らかな向上はみられていない 1).日本以外からの報告では,結石再発率は 0〜18%と報告されている 2〜5).治療後 5年以内の結石再発率は肝切除術が5.6%で,PTCSLの 11.6%に比べて有意に低率であった 6).その他の報告でも結石の完全除去のみならず,慢性持続性の胆汁うっ滞や急性胆管炎が一括して解除できる肝切除術が根治的であり,経皮経肝的あるいは経乳頭的治療法に比べて結石再発率は低い 3, 7〜9).しかし,一般的に病巣が片葉に限局し,かつ片葉萎縮がある場合は肝切除術の適応となるが,両葉型や肝萎縮がない場合には PTCSLを中心にした治療が選択されることが多い.また,胆管狭窄が肝門部に及ぶ例や胆道拡張症あるいは肝内胆管癌合併例などでは胆道再建術が行われることもある.胆道再建術の有用性の報告 10)もみられるが,術後の結石再発率や急性胆管炎,肝膿瘍などの合併症発生率が高率で予後不良例が多いこと 6, 9, 11),胆道再建そのものが肝内結石の誘因になりうることや検

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— 110 —

4.予後・合併症

査や治療手技が制約されることなどから全国的にも胆道再建術は減少してきている.肝内結石症の長期予後を規定する主要な因子は,肝内胆管癌の合併,結石遺残や再発,胆管

狭窄を誘因とする急性胆管炎や肝膿瘍などの重症感染症,および胆汁性肝硬変に伴う肝不全である.特に肝内胆管癌の合併は予後を不良にする重要な因子である.肝内結石を合併した肝内胆管癌は進行例が多く予後不良である 9, 12).肝内胆管癌の合併率は肝内結石症の 4.8〜12.9%と高頻度であり 1, 3, 9, 13〜18),常に発癌に対する注意が必要である.多変量解析では胆道再建の既往と肝萎縮が胆管癌のリスクファクターとして報告されている(胆道 2013; 27: 700-704 b)[検索期間外文献]).胆管癌発生部位の多くは肝萎縮部位と一致する.したがって,胆管癌合併という観点から萎縮肝は可能な限り切除すること,胆道再建は治療法として推奨されないことが示唆されている.肝内結石症の自然経過については,診断時無症状で経過観察された原発性肝内結石症 122 例

を最長 15 年(平均 10 年 1ヵ月)経過観察したところ 14 例(11.5%)に症状の発症を認め,症状は肝膿瘍,急性胆管炎,落下結石,肝内胆管癌併発であった.有症状化例のほとんどに肝萎縮を認め,肝内胆管癌の合併は有症状化例の 21.4%であった 12).

発癌予防の観点から UDCAの投与を考慮する(CQ 3-15 参照).

文献

1) 跡見 裕.肝内結石症に関する調査研究.厚生労働科学研究補助金(難治性疾患克服研究事業)総合研究報告,2008: p1-10(横断)

2) Yoon YS, Han HS, Shin SH, et al. Laparoscopic treatment for intrahepatic duct stones in the era oflaparoscopy- laparoscopic intrahepatic duct exploration and laparoscopic hepatectomy. Ann Surg 2009;249: 286-291(ケースシリーズ)

3) Cheon YK, Cho YD, Moon JH, et al. Evaluation of long-term results and recurrent factors after operativeand nonoperative treatment for hepatolithiasis. Surgery 2009; 146: 843-853(ケースシリーズ)

4) Lai EC, Ngai TC, Yang GP, et al. Laparoscopic approach of surgical treatment for primary hepatolithiasis:a cohort study. Am J Surg 2010; 199: 716-721(コホート)

5) Tu JF, Jiang FZ, Zhu HL, et al. Laparoscopic vs open left hepatectomy for hepatolithiasis. World J Gas-troenterol 2010; 16: 2818-2823(ケースシリーズ)

6) 厚生労働省「難治性の肝.胆道疾患に関する調査研究」班(編).肝内結石症の診療ガイド,2011: p32-59(ガイドライン)

7) 内山和久,山上裕機.術後胆道合併症の防止とその対策―良性疾患―肝内結石症に対する手術―遺残・再発結石予防のための治療法の選択.外科 2008; 70: 950-954(ケースシリーズ)

8) 藤本竜也,露口利夫,横須賀 収.胆石症をめぐる新しいコンセンサスと展望―肝内結石に対する経口胆道鏡の有用性の検討.消化器内科 2011; 53: 206-211(ケースシリーズ)

9) 甲斐真弘,千々岩一男,永野元章,ほか.胆石症をめぐる新しいコンセンサスと展望―肝内結石症 116 例の治療および長期予後の検討.消化器内科 2011; 53: 219-226(ケースシリーズ)

10) 高屋敷吏,木村文夫,清水宏明.ほか.胆石症をめぐる新しいコンセンサスと展望―肝内結石症に対する肝切除術における肝外胆管切除・胆道再建術の適応とその長期成績.消化器内科2011; 53: 227-231(ケースシリーズ)

11) Uchiyama K, Kawai M, Ueno M, et al. Reducing residual and recurrent stones by hepatectomy for hepa-tolithiasis. J Gastrointest Surg 2007; 11: 626-630(ケースシリーズ)

12) 古川正人,佐々木 誠,大坪光次,ほか.肝内結石症研究の最前線―肝内結石症例の自然経過.胆と膵1998; 19: 1021-1027(コホート)

13) Otani K, Shimizu S, Chijiiwa K, et al. Comparison of treatments for hepatolithiasis: hepatic resection ver-sus cholangioscopic lithotomy. J Am Coll Surg 1999; 189: 177-182(ケースシリーズ)

14) Cheung MT, Kwok PC. Liver resection for intrahepatic stones. Arch Surg 2005; 140: 993-997(ケースシリーズ)

15) Chen DW, Tung-Ping Poon R, Liu CL, et al. Immediate and long-term outcomes of hepatectomy for hepa-

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— 111 —

②長期合併症

tolithiasis. Surgery 2004; 135: 386-393(ケースシリーズ)16) 山川達郎.胆と膵疾患の長期予後―胆道疾患―胆石症―肝内結石症治療後の長期予後―内視鏡的治療.肝・

胆・膵 1999; 38: 211-216(ケースシリーズ)17) 内藤 剛,亀田智統,鈴木克彦,ほか.胆と膵疾患の長期予後―胆道疾患―胆石症―肝内結石症の外科的

治療における長期予後.肝・胆・膵 1999; 38: 217-221(ケースシリーズ)18) 清水康一,太田哲生,三輪晃一.胆と膵疾患の長期予後―胆道疾患―胆道悪性腫瘍の長期予後―肝内結石

併存肝内胆管癌術後.肝・胆・膵 1999; 38: 311-316(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) 大屋敏秀,田妻 進,菅野 啓司,ほか.肝内結石症診療の現状と問題点.胆道 2013; 27: 788-794(横断)b) 鈴木 裕,森 俊幸,横山政明,ほか.肝内結石症における肝内胆管癌合併の危険因子.胆道 2013; 27:

700-704(ケースシリーズ)

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— 113 —

欧文索引

AAOSC(acute obstructive suppurative cholangitis)22

BBillrothⅡ法 81

CCaroli症候群 89CCK 10CDCA 57CT 34, 42

DDIC-CT 35, 42

EEBS 77, 78EHL 95EML 75ENBD 77, 78ENGBD 65EPBD 75EPLBD 76ERCP 37, 79EST 39, 75, 83, 97ESWL 49, 60, 91EUS 37

IIDUS 39

MMirizzi症候群 63MRCP 35, 37, 42Murphy徴候 31

PPTCS 39, 95

PTCSL 99, 109PTGBA 65PTGBD 65

RRoux-en-Y吻合 81

Ttissue harmonic imaging(THI) 32

UUDCA 49, 57, 89UGT1A1 13

和文索引

あ医原性急性胆管炎 22

うウルソデオキシコール酸 49, 57, 89

か開腹 50, 85肝切除術 92肝内結石 16, 26, 42, 109肝内胆管癌 26

き気腫性胆囊炎 20急性胆管炎 22急性胆囊炎 20, 48, 65, 68急性閉塞性化膿性胆管炎 22急性無石胆囊炎 20

け経過観察 102経口的内視鏡治療 97外科的結石除去術 85外科的総胆管結石手術 73

索 引

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— 114 —

索 引

ケノデオキシコール酸 58

こ黒色石 13コレシストキニン 10コレステロール胆石 10, 60

し消化吸収機能 103診察所見 31シンバスタチン 57

そ総胆管結石 15, 37, 71, 73, 106

た体外衝撃波結石破砕療法 60胆管ステント留置 77胆汁性腹膜炎 68胆石性膵炎 79胆石保有率 2胆石溶解療法 57胆道再建後 99胆囊癌 24胆囊結石 18, 24, 34胆囊周囲膿瘍 68胆囊収縮能 10胆囊摘出術 48, 103, 104

ち長期合併症 104, 106

て電気水圧式衝撃波結石破砕術 95

な内視鏡的総胆管結石除去術 73, 83

ひ病歴聴取 31ビリルビンカルシウム石 12

ふ腹腔鏡下胆囊摘出術 50, 54, 83

む無症状肝内結石 88無症状総胆管結石 71無症状胆囊結石 46

や薬物療法 89

ゆ有症状胆囊結石 48

りリスクファクター 4

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2009 年 11月25日 第 1 版第 1刷発行2010 年 2 月10日 第 1 版第 2刷発行2016 年 2 月10日 改訂第 2版発行

胆石症診療ガイドライン 2016(改訂第 2版)

編集・発行 一般財団法人日本消化器病学会理事長 下瀬川 徹〒104-0061 東京都中央区銀座 8-9-13 K-18ビル8階電話 03─3573─4297

印刷・製本 日経印刷株式会社

制作 株式会社 南 江 堂〒113-8410 東京都文京区本郷三丁目42 番 6 号電話 (出版)03─3811─7236 (営業)03─3811─7239

落丁・乱丁の場合はお取り替えいたします.転載・複写の際にはあらかじめ許諾をお求めください.

The Japanese Society of Gastroenterology, 2016Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Cholelithiasis 2016(2nd Edition)