p-41 キャビテーションを考慮したベンチュリ管内...

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SATテクノロジー・ショーケース 2020 マイクロバブルは単位体積当たりの表面積が大きい, 浮力が小さいといった様々な性質があり洗浄分野や医療 分野など,幅広い分野における利活用が期待されている. マイクロバブルの発生手法は様々あるが,ベンチュリ管と 呼ばれる縮小拡大管はその簡単な構造においてマイクロ バブルを生成できることから大きく注目を集めている.しか しながら, ベンチュリ管内の流動は複雑であり,気泡崩壊 のメカニズムについて研究が進められている.これまでに, 管内の圧力分布に加えて,キャビテーションにより発生し た蒸気が気泡崩壊に寄与する可能性が示唆されている [1] そこで本研究では,管内のキャビテーション現象が気泡 崩壊に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,高速度 カメラを用いた可視化計測と管内圧力分布の計測により 得られる圧力損失からキャビテーションの発生を評価する. そして,画像処理を用いて生成気泡径を算出し,キャビテ ーションが生成気泡に及ぼす影響を評価する. 1.キャビテーション現象の可視化 ベンチュリ管内の流動の様子を高速度カメラで観察した. 1に液相の入口見かけ流速 3.0 m/s,気相流量比 β = 0での可視化結果を示す.喉部付近でキャビテーショ ンによる気泡が発生していることがわかる.可視化によりキ ャビテーションの発生を定性的に評価することができた. 2.キャビテーションの評価 本研究では,キャビテーションの発生を式(1)(2)に示す 損失係数とキャビテーション数により定量的に評価する. ここで, は入口圧力 は出口圧力, は蒸気圧, は喉部流速である.なお流速は均質流仮定により導い た.図2に算出した損失係数の結果を示す.キャビテーシ ョン数が3以上の領域では損失係数は一定値(Lco)を示す. しかし,キャビテーション数が低下すると,損失係数が急 激に増大し,屈曲点が生じる.この点が,キャビテーション 初生の条件であると考えられる [2] 3.キャビテーションによる気泡の微細化 3 1.65, 3.0 m/sβ = 0.016での管出入り口にお ける気泡径分布を示す.損失係数によって得られたキャビ テーションの発生条件において,より活発な気泡の微細 化が生じていることがわかる. [1]藤井らベンチュリ管内気泡流における気泡崩壊と流 動特性”, 混相流, Vol. 33, 2019, No.1, p.46-54 [2] Mingda Li et. “Study of Venturi tube geometry on the hydrodynamic cavitation for the generation of microbubbles”, Minerals Engineering, Vol.132, 2019, p.268-274 1 キャビテーション現象の可視化( 3.0 m/sβ = 01)ベンチュリ管 2)マイクロバブル 3)キャビテーション 木戸 直樹 (筑波大学大学院) 阿部 (筑波大学) 昌俊 (合同会社アプテックス) 代表発表者 問合せ先 3 0 5 - 8 5 7 3 1 - 1 - 1 F 3 F 3 2 6 T E L 0 2 9 - 8 5 3 - 5 1 1 3 F A X 0 2 9 - 8 5 3 - 5 4 8 7 M A I L k a n e k o @ k z . t s u k u b a . a c . j p 2 損失係数によるキャビテーション発生条件の評価 3 流入出気泡径分布(β = 0.016 1 2 2 1 1 2 2 2 P-41 43

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Page 1: P-41 キャビテーションを考慮したベンチュリ管内 …...SATテクノロジー・ショーケース2020 はじめに マイクロバブルは単位体積当たりの表面積が大きい,浮力が小さいといった様々な性質があり洗浄分野や医療

SATテクノロジー・ショーケース2020

■ はじめに マイクロバブルは単位体積当たりの表面積が大きい,

浮力が小さいといった様々な性質があり洗浄分野や医療分野など,幅広い分野における利活用が期待されている. マイクロバブルの発生手法は様々あるが,ベンチュリ管と呼ばれる縮小拡大管はその簡単な構造においてマイクロバブルを生成できることから大きく注目を集めている.しかしながら, ベンチュリ管内の流動は複雑であり,気泡崩壊のメカニズムについて研究が進められている.これまでに,管内の圧力分布に加えて,キャビテーションにより発生した蒸気が気泡崩壊に寄与する可能性が示唆されている[1] . そこで本研究では,管内のキャビテーション現象が気泡

崩壊に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,高速度カメラを用いた可視化計測と管内圧力分布の計測により得られる圧力損失からキャビテーションの発生を評価する.そして,画像処理を用いて生成気泡径を算出し,キャビテーションが生成気泡に及ぼす影響を評価する. ■ 活動内容 1.キャビテーション現象の可視化 ベンチュリ管内の流動の様子を高速度カメラで観察した.

図1に液相の入口見かけ流速 𝑗𝑗𝐿𝐿 = 3.0 m/s,気相流量比β = 0での可視化結果を示す.喉部付近でキャビテーションによる気泡が発生していることがわかる.可視化によりキャビテーションの発生を定性的に評価することができた. 2.キャビテーションの評価 本研究では,キャビテーションの発生を式(1)(2)に示す

損失係数とキャビテーション数により定量的に評価する.ここで,𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖は入口圧力,𝑃𝑃𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜は出口圧力,𝑃𝑃𝑣𝑣は蒸気圧,𝑣𝑣𝑜𝑜ℎは喉部流速である.なお流速は均質流仮定により導いた.図2に算出した損失係数の結果を示す.キャビテーション数が3以上の領域では損失係数は一定値(Lco)を示す.しかし,キャビテーション数が低下すると,損失係数が急激に増大し,屈曲点が生じる.この点が,キャビテーション初生の条件であると考えられる[2].

3.キャビテーションによる気泡の微細化 図3に𝑗𝑗𝐿𝐿 =1.65, 3.0 m/s,β = 0.016での管出入り口にお

ける気泡径分布を示す.損失係数によって得られたキャビテーションの発生条件において,より活発な気泡の微細化が生じていることがわかる.

■ 参考文献

[1]藤井ら“ベンチュリ管内気泡流における気泡崩壊と流動特性”, 混相流, Vol. 33, 2019, No.1, p.46-54

[2] Mingda Li et. “Study of Venturi tube geometry on the hydrodynamic cavitation for the generation of microbubbles”, Minerals Engineering, Vol.132, 2019, p.268-274

図1 キャビテーション現象の可視化(𝑗𝑗𝐿𝐿 = 3.0 m/s,β = 0)

機械・エンジニアリング

キャビテーションを考慮したベンチュリ管内 混相流場における気泡微細化技術

■キーワード: (1)ベンチュリ管 (2)マイクロバブル (3)キャビテーション ■共同研究者: 木戸 直樹 (筑波大学大学院) 阿部 豊 (筑波大学) 池 昌俊 (合同会社アプテックス)

代表発表者 金子 暁子(かねこ あきこ) 所 属 筑波大学 システム情報系

構造エネルギー工学域

問合せ先 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1

筑波大学第三エリア F 棟 3F326 室 TEL:029-853-5113 FAX:029-853-5487 MAIL:[email protected]

図2 損失係数によるキャビテーション発生条件の評価

図3 流入出気泡径分布(β = 0.016)

𝐿𝐿𝑐𝑐 = 𝑃𝑃𝑖𝑖𝑖𝑖 − 𝑃𝑃𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜

12𝜌𝜌𝑣𝑣𝑜𝑜ℎ

2 (1) 𝜎𝜎𝑑𝑑 =

𝑃𝑃𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜𝑜 − 𝑃𝑃𝑣𝑣12𝜌𝜌𝑣𝑣𝑜𝑜ℎ

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