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1 http://www.shizuoka.ac.jp/ 422-8529 TEL 054-238-5179 FAX 054-237-0089 2~3 RT-PCR 1 ACS Analytical Chemistry Press Release 054-238-4887 054-238-4887 [email protected]

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Page 1: Press Release3 プローブ1にそれぞれデング1〜4型のウイルスを混合してから4種類プローブを 添加 する と、デングウイルス血清型に応 じ

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平成30年10月11日

静岡県庁社会部

各報道機関 御中

国立大学法人静岡大学

学長 石井 潔

高感度かつ迅速なデングウイルスの4つの血清型の判別・検出方法の開発

〜フェムトモールレベルの検出〜

国立大学法人 静岡大学 ウェブサイト http://www.shizuoka.ac.jp/ ○広報室 〒422-8529 静岡県静岡市駿河区大谷836 TEL:054-238-5179 FAX:054-237-0089

静岡大学グリーン科学技術研究所グリーンケミストリー研究部門朴研究グループは、

デング熱・デング出血熱の原因となるデングウイルスの高感度検出法を開発しました。年間約

1億人のデング熱、約25万人のデング出血熱を発症させるデングウイルスは世界的な

脅威であり、感染拡大を防ぐためには早期発見が重要です。現在、診断には 2~3 時間の

検出時間で、ウイルスの有無だけ検出する RT-PCR 法や特異的抗体を用いた検出法が行

われていますが、血清型の判別は、出来ません。血清型まで判別するためにはプラーク

減小法や遺伝子検査等、1 週間以上時間がかかる検査法しかありません。

本研究では、デングウイルスに結合する特殊な複合ナノ材料を作製し、デングウイル

スを結合させます。そこで、血清型を判別するために、同じ血清型にのみ結合する異な

る蛍光色素をラベルした4種類のプローブと検体遺伝子を反応させると同一血清型のみ

結合し、反応したプローブのみの蛍光を発しますので血清型を判別できます。さらに、

微分パルスボルタンメトリーを用いて電流を測定するとウイルスの定量化も可能です。

これらの測定検出は数分程度で行え、血清型と定量化を同時に、かつ迅速に行う研究成果

は世界初です。

本研究は、静岡大学、台湾国立精華大学との共同研究で、バイオセンサーの分野で著

名な国際学術誌アメリカ化学会 ACS Analytical Chemistry に掲載される予定です。

Press Release

お問い合わせ先

部局名 グリーン科学技術研究所

担当者 朴 龍洙

電話番号 054-238-4887

FAX番号 054-238-4887

メールアドレス [email protected]

Page 2: Press Release3 プローブ1にそれぞれデング1〜4型のウイルスを混合してから4種類プローブを 添加 する と、デングウイルス血清型に応 じ

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高感度かつ迅速なデングウイルスの4つの血清型の判別・検出方法の開発

〜フェムトモールレベルの検出〜

【論文情報】

題名:Femtomolar detection of dengue virus DNA with serotype identification ability

雑誌名:ACS Analytical Chemistry

著 者:Ankan Dutta Chowdhury1, Akhilesh Babu Ganganboina2, Fahmida Nasrin3, Kenshin Takemura3,

Ruey-an Doong4, Doddy Irawan Setyo Utomo5, Jaewook Lee1, Indra Memdi Khoris5, Enoch Y. Park1,3,5

1 静岡大学グリーン科学技術研究所、2国立精華大学生命工学・環境科学科、3静岡大学創造科学

技術大学院、4国立精華大学環境工学研究所、5 静岡大学総合科学技術研究科、

【本研究のポイント】

金ナノ粒子とグラフェンの複合ナノ材料の表面に塩基アデニンを修飾します(プローブ 1)。

ここに、検体(デングウイルス)から単離した一本鎖 DNA の末端に塩基チミンを共有結合させ、

プローブ 1 と混合すると、検体 DNA のチミンとプローブ1の塩基アデニンが相補的結合をしま

す(検体 DNA-プローブ1)。一方、予めデングウイルスの 4 血清型に対応する一本鎖遺伝子に

それぞれ異なる蛍光色素を結合させたプローブ 2(4 種類)を用意し、このプローブ 2 と検体

DNA-プローブ1を混合すると、デングウイルスの遺伝子に対応するプローブ2が相補的に結合

します。ここで、未反応のプローブ2を遠心分離してから蛍光を測定すると、血清型が判別で

きます。何故ならプローブ2(4種類)にはそれぞれ異なる蛍光吸収波長を持つため、蛍光吸

収波長から判別可能です。

ウイルスの量を図るためには、未結合一本鎖 DNA にメチレンブルーを結合させ、微分パルス

ボルタンメトリーを用いて電流を測定することで、ウイルスを定量化できます(予め検量線を

作成する必要がある)。これらは、1ミリリットル以下の溶液で十分で、測定時間も数分程度

で済み、迅速に血清型とウイルス量が判明します。

【研究の背景】

デング熱・デング出血熱の原因となるデングウイルスは、年間約1億人のデング熱、約25

万人のデング出血熱を発症させる世界的な脅威です。デングウイルスは、蚊(ネッタイシマカ、

ヒトスジシマカ)によって媒介され、ヒトから蚊、蚊からヒトへと感染還を形成しています。

他の感染症と異なる点は、1 型〜4 型の血清型が存在し、例えば 1 型に免疫があっても、2 度目

の感染に他の血清型に感染した場合、重病化する確率が高くなる(抗体依存性感染増強)と言

われています。従って、血清型を含めたデングウイルスの診断は極めて重要です。海外渡航で

感染し、国内に持ち込む輸入病例が増えつつあり、国立感染症研究所によると 2014 年夏季に

は 150例以上の国内流行が既に発生したそうです。

しかし、現在行われている RT-PCR 法による遺伝子検出やデングウイルス特異的抗体の検出

による診断には、時間と労力がかかり、より簡便で迅速な検出法が求められています。

【研究の成果】

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プローブ 1 にそれぞれデング 1〜4 型のウイルスを混合してから 4 種類プローブを添加する

と、デングウイルス血清型に応じた異なる蛍光吸収波長を示します(図 1 の下段左)。これで

蛍光波長のピークから血清型が判明できます。その後、メチレンブルーを添加すると遺伝子の

塩基とメチレンブルーが結合し、電気化学的変化で電流が流れます。DNA はメチレンブルーと

結合すると酸化還元電位が変化します。電流の値は DNA に結合したメチレンブルーの量に依存

し、多くのプローブ 2 が結合するほど電流値が減ります(図 1 の下段右)。このようにウイル

スを定量します。

この原理の検証のため、デング 3型ウイルスの人工遺伝子を用いて、他のウイルスサンプル

と比較すると、デング3型のみ高い蛍光強度を示し(図2A)、逆に電流値は一番低いことが分

かりました(図2B)。これによってデングウイルスのみ検出することが証明されました。

また、実際の臨床サンプルデング3型ウイルスから単離した遺伝子を用いて(図3A)、一連

の作業を行った結果、デング3型の判別(図3B)ができ、また1フェムトモルレベルの微量な

ウイルスを検出することができました(図3C)。

今後、この検出系の安定性を検証しウイルスの発生現場、オンサイトでの検出が可能になる

よう改良を重ね、実用化を目指したいと思います。

図 1.デングウイルスの血清型判別及び検出方法。複合ナノ粒子に検体ウイルスの一本鎖 DNA

を加え、さらに、血清型判別用プローブ2を反応させた後、蛍光による血清型の判別及び電

気化学的にウイルスを定量化するシステム。

電気化学的ウイルスの定量

蛍光による血清型の判別

プローブ1

DENV DNA

プローブ2

Methyelene blue

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図 2.人工デング3血清型ウイルスの検出例。図1の原理に基づき、人工デング3血清型ウイ

ルスの一本鎖 DNA を測定した結果、高い蛍光(A)と低い電流(B)を測定することがきまし

た。

図3.デング3血清型ウイルス臨床サンプルの検出例。臨床サンプルから遺伝子を単離して

一本鎖にし、本検出系のプローブ1と2を添加し(A)、高い蛍光(C)と電流(C)を測定す

ることがきました。デングウイルスの量が少ないほど高い電流値を示しました。

-0.50 -0.45 -0.40 -0.35 -0.30 -0.25 -0.20 -0.15 -0.104

6

8

10

12

14

16

18

20

22 No target DNA

Dengue 3

Dengue 3 - double mismatch

Dengue 3 - single mismatch

Zika virus

Norovirus

Influenza virus

completely mismatch

C

urr

ent

(−A

)

Voltage (V)

500 525 550 575 600 625 650 675 700

Dengue 3 (RhB)

Dengue 3 - single mismatch

Dengue 3 - double mismatch

Zika virus

Norovirus

Influenza virus

Completely mismatch

Inte

nsit

y (a

.u)

Wavelength (nm)

0

20

40

60

80

100

Den

gue 3

Com

pletely

Nor

oviru

s

Influ

enza

Zika

Den

gue 3

% C

han

ge

in s

ign

al

Analytes

Fluorescence signal

DPV signal

mism

atch

single m

ismat

ch

Den

gue 3

doubl

e mism

atch

(A) (B)

(C)

Re-dispersion

MBWE

CE

RE

DPV metric

Quantification

Fluorometric

Serotype detectionPCR

Clinically isolated

Dengue RNA

-0.5 -0.4 -0.3 -0.2 -0.1 0.0

6

8

10

12

14

16

18

20

22

Probe

10-fold diluted Dengue 3

Dengue 3

C

urr

ent (0

A)

Voltage (V)

10-15 10-14 10-13 10-12 10-11 10-10 10-9 10-8 10-7 10-60.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1.0

−/I

i

DNA Concentration (M)

600 625 650 6750

500

1000

1500

2000 Dengue 3

10-fold diluted Dengue 3

Inte

nsi

ty

Wavelength (nm)

Centrifugation1

2

(A)

(B) (C)