social security visionthe 21st centurythe 21st century social security vision 資 料 第 部 第...

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連合� 21世紀社会保障ビジョン〔ダイジェスト版〕� 2003年1月� 編集・発行●日本労働組合総連合会� 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11� TEL●03-5295-0523(生活福祉局)� FAX●03-5295-0546� E-mail●[email protected]ホームページ●http://www.jtuc-rengo.or.jp/� 印刷●(株)コンポーズ・ユニ� ●この冊子は再生紙を使用しています。� 日本労働組合総連合会� 「安心・公正・連帯」にもとづく福祉社会への総合戦略� 連合� 21 世紀社会保障ビジョン〔ダイジェスト版〕� RENGO The 21st Century Social Security Vision

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Page 1: Social Security VisionThe 21st CenturyThe 21st Century Social Security Vision 資 料 第 部 第 部 第 部 第 部 ビ ジ ョ ン の ポ イ ン ト 連合 21世紀社会保障ビジョ

連合�21世紀社会保障ビジョン〔ダイジェスト版〕�2003年1月�編集・発行●日本労働組合総連合会�〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11�TEL●03-5295-0523(生活福祉局)�FAX●03-5295-0546�E-mail●[email protected]�ホームページ●http://www.jtuc-rengo.or.jp/��印刷●(株)コンポーズ・ユニ��●この冊子は再生紙を使用しています。�

日本労働組合総連合会�

「安心・公正・連帯」にもとづく福祉社会への総合戦略�

連合�21世紀社会保障ビジョン�

〔ダイジェスト版〕�

RENGOThe 21st Century

Social Security Vision

Page 2: Social Security VisionThe 21st CenturyThe 21st Century Social Security Vision 資 料 第 部 第 部 第 部 第 部 ビ ジ ョ ン の ポ イ ン ト 連合 21世紀社会保障ビジョ

資 料�

第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

ビジョンのポイント�

第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

連合 21世紀社会保障ビジョン〔ダイジェスト版〕�「安心・公正・連帯」にもとづく福祉社会への総合戦略�

 連合が提案する「21世紀社会保障ビジョン」のポイント�� 連合が、「安心・公正・連帯にもとづく福祉社会への総合戦略」として提起した「21世紀社会保障ビ

ジョン」のポイントは、以下の点にある。�

①社会保障制度は、21世紀の日本の経済社会にとって不可欠である。連合がめざす社会像を示し、社

会保障の理念である「社会連帯」にもとづいて、国民に「安心」を保障・給付する年金、医療、介護・

福祉など社会保障のトータル像を提起した。�

②国民・利用者による「参加と責任の分かち合い」を基本とした制度運営への改革(「社会保障基金」

の創設など)をめざす。�

③サービス利用の「自己選択権」を重視し、医療、介護保障は社会保険方式を基本に、高齢者にも一定

の負担を求めるため、年金は現行の給付水準を維持する。�

④年金の給付水準の維持、医療サービスの質的向上、介護サービスの拡充、子育て支援の整備・充実

を前提に、給付と負担の将来推計を行った。その結果、2025年で勤労者世帯の税・社会保険料の

負担は、年収の20%前後と十分に負担可能である。�

⑤社会保障は、「助け合い」(社会連帯)のシステムであり、この「連帯」こそ労働組合の「原点」と「力」

である。社会保障改革の担い手は労働組合であり、労働組合の社会的・歴史的責務でもある。�

 はじめに�� 連合は、2002年10月に連合「21世紀社会保障ビジョン」を確認しました。「ビジョン」本体は、資

料編も含めて110頁あまりに及ぶものです。この「ビジョン」の内容について、組織内において1人で

も多くの組合員のみなさんに理解を深めていただき、ともに「ビジョン」の実現に向けて取り組みを行

っていきたいと考え、今回、「ビジョン」の内容のエッセンスについて、よりわかりやすく解説したダイジ

ェスト版を作成しました。�

 今後、より多くの方々にこのダイジェスト版をご活用いただければ幸いです。�

2003年1月 �

連合生活福祉局�

はじめに��連合が提案する「21世紀社会保障ビジョン」のポイント��連合「21世紀社会保障ビジョン」が描く2025年の姿��第Ⅰ部 めざすべき社会とビジョンの基本理念� 社会保障ビジョン策定の背景と位置づけ� 21世紀にめざすべき社会“安心、そしてチャレンジへ”�

「めざす社会」への戦略課題�

社会保障の基本理念とその具体化�

�第Ⅱ部 制度改革のデザインに向けて� 制度改革のデザインに向けた前提条件�

将来の給付と負担のイメージ�

社会保障の運営主体としての「社会保障基金」構想�

[コラム] 国民負担率の国際比較、及び政策指標とする場合の問題点�

�第Ⅲ部 各制度の改革の具体像� 医療保障 患者と医師の信頼にもとづく安心の医療を確立する�

介護保障 介護を必要とするすべての人をカバーする介護保障制度�

社会福祉 すべての人の自立生活と社会参加を支援する社会福祉制度�

児童福祉・子育て支援 安心して子どもを産み育てられ、子どもが健やかに育つ環境の整備�

雇用保障 失業や労災にあっても安心してくらせる社会�

年  金 社会連帯のしくみで、安心の老後をみんなで支える年金制度�

�第Ⅳ部 社会保障改革と労働組合の役割��資料� 用語解説�

[参考データ] 国民負担率の将来推計�

P.3

P.3

P.4

P.6

P.8

P.12

P.20

P.21

CONTENTS

2 3

RENGO The 21st Century Social Security Vision

Page 3: Social Security VisionThe 21st CenturyThe 21st Century Social Security Vision 資 料 第 部 第 部 第 部 第 部 ビ ジ ョ ン の ポ イ ン ト 連合 21世紀社会保障ビジョ

連合「21世紀社会保障ビジョン」が描く2025年の姿�「安心・公正・連帯」にもとづく福祉社会への総合戦略�連合「21世紀社会保障ビジョン」が描く2025年の姿�「安心・公正・連帯」にもとづく福祉社会への総合戦略�

資 料�

第 部�

第 部�

資 料�

第 部�

第 部�

第 部�

ビジョンのポイント�

ビジョンのポイント�

ビジョンのポイント�

労働を中心と した福祉社会�

社会保障= 「安心」の給付�

4 5

RENGO The 21st Century Social Security Vision

出生�

●ライフサイクルと社会保障(例示)�

(成長期)�

医療・介護保障・社会福祉�

労災補償・雇用保険�

児童福祉� 子育て支援�

(障害・遺族年金)� 年 金�

就職� 結婚� 出産� (子育て期)� 退職� (老齢期)�

労働を中心と した福祉社会�●あらゆる人に暮らしの安心を保障●働くこと(仕事)の意義と価値を�●子どもを安心して産み育てられ、�●完全雇用と社会保障の完全適用�

する社会�尊重し合う社会�子どもが健やかにのびやかに育つ社会�を保障する社会�

基本理念を具体化する制度改革�●財政構造改革による公共投資から福祉・社会保障分野への資源配分の変更�●住民から制度の管理運用を委託された存在としての行政機能の再定義�●負担と給付及び再分配のあり方についての合意形成�●地方分権の推進による地域の独自性の保障�

社会保障の基本理念�●すべての住民を対象とする「普遍主義」�●「必要」と「選択」にもとづく「利用と契約」へ�●負担者・受給者の「参加と責任分担」�●世代間・世代内の助け合い:「社会連帯」�

●患者本位で質の高い医療サービスの確立�●医師と患者の信頼回復と医療情報の公開�●公正で信頼できる医療保険制度の確立(患者2割負担で統一)�●安心できる高齢者医療制度の創設�

病気にかかったら�

医   療�

医療と介護の�分離・連携強化�

障害者福祉の�

介護保障への統合�

年金と雇用の接続�

自立支援のための�雇用政策との連携�

児童福祉と社会福祉の�連携�

●安心して子どもを産み育てられる地域・社会・職場の整備�●児童虐待対策の強化と地域・社会での子育て支援�●誰でもいつでも受けられる多様な保育サービスの拡充�●児童手当は中学卒業まで、子ども1人月額1万円�

子どもがいきいきと育つために�

児童福祉・子育て支援�

●すべての要介護者・障害●給付対象者を全年齢へ�●利用料は介護給付費用�●24時間介護体制の確立�●介護サービスの拡充と�

者に対する総合的介護保障�拡大�の1割を基本��質の向上�

●利用者本位の社会福祉●バリアフリー、ノーマラ●生活保護基準の法定化�●ホームレスなどの自立�

制度�イゼーションの社会整備��支援策の整備�

介護が必要に  なったときは�

介   護�

誰もが自由に安心 して暮らせるために�

   社会 福祉�

●少子高齢化でも維持可能な安定的な制度の確立�●普遍主義による「皆年金」の確立�●老後生活の柱としての適正水準の確保�●賦課方式への移行�●退職年金から老齢年金への転換�

定年退職したときは�

年   金�

●失業しても安心な失業給付・再就職支援サービスの拡充�●雇用安定のための社会的な体制・環境整備�●労災補償の拡充と迅速な給付体制の確立�●職場における総合的な予防措置の拡充�

労災補償制度における業務上の予防・事後対策と医療予防の健康対策との連携や一体的運営�

失業や労災にあったときは�

雇用に関わる社会保障�

社会保障をトータ ルに行う運営主体�

「社会保障基金」 (中央政府から独立した第三者機関)�

社会保障= 「安心」の給付� あらゆるライフスタイルとライフステ ージを包み込む社会的セーフティネット�

Page 4: Social Security VisionThe 21st CenturyThe 21st Century Social Security Vision 資 料 第 部 第 部 第 部 第 部 ビ ジ ョ ン の ポ イ ン ト 連合 21世紀社会保障ビジョ

第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

めざすべき社会とビジョンの基本理念�めざすべき社会とビジョンの基本理念�

 社会保障制度は、人が生まれ・育ち・活動し・老いて

いく生涯の生活設計に欠くことのできない「公共の財

産」(社会的共同事業)である。21世紀の日本社会を

持続可能なものとするためには、社会保障を経済と社

会全体を支える柱と位置づけて、「社会連帯」の理念

にもとづく制度の再構築が不可欠である。�

 しかし、2000年の年金改正や2002年の医療保

険改正などのように、最近の制度見直しは、個別制度

の枠内での財政論に終始し、「理念なき」給付削減と

保険料・自己負担アップを繰り返している。これらが、

社会保障の機能を弱体化させ、国民の不信・不安感を

助長し、「社会保障の危機」を招いている。�

 「社会保障の危機」の克服には、�

①社会のニーズに対応して福祉・社会保障への資源

配分そのものを高める「改革的アプローチ」�

②社会保障を「負担」として捉える発想からの脱却�

③社会保障が経済の活力を支えるとともに経済の活

力が社会保障を支える「能動的役割」�

の視点(3基軸)に立った改革こそが必要である。�

 これらの観点から、「21世紀社会保障ビジョン」は、

まず、連合がめざす社会像(労働を中心とした福祉社会)

と、社会保障の位置・役割を明示した。その上で、くら

しのセーフティネットたりうる社会保障が拠って立つ基

本理念を明確にし、2025年を射程においた社会保障

の全体像と、医療、介護・福祉、年金制度等のあるべき

姿を具体的に提起した。すなわち、「労働を中心とし

た福祉社会」の実現に向けた、「安心・公正・連帯にも

とづく社会保障の総合戦略」の提起である。�

 なお、ビジョンの考え方、各制度のあり方については、

今後の経済社会情勢等の動向を踏まえ、5年後を目途

に見直しを行うことにしている。�

社会保障ビジョン策定の背景と位置づけ�

「めざす社会」を実現するためには、次のような戦略課題があり、具体的な行動と価値観の変革が必要となる。�

「めざす社会」への戦略課題�

社会保障の基本理念とその具体化�

(1)雇用不安と老後不安を取り除き、あらゆる人にくらしの「安心」を保障する社会�� ●人々のくらしを脅かしている「雇用」と「老後」の2つの不安を取り除き、家族と企業に依存してきた「日本型福祉」から、平等に開かれた社会的セーフティネットを基礎に、あらゆる人にくらしの「安心」を保障する社会をめざす。�

�(2)働くことの意義と価値を等しく認め合い尊重し合う社会�� ●社会の活力の源泉は労働にあり、人は働くことを通じて社会との関わりと達成感を自己確認できる。「経済のために人間があるのではなく、人間のために経済がある」社会、「産業と労働の人間化」をめざす。働き方は違っても、働くこと(仕事)の意義と価値を尊重し合う社会をめざす。�

�(3)子どもを安心して産み育てられ、子どもが健やかにのびやかに育つ社会�� ●子どもを安心して産み育てられるため、少子化対策を国全体で実効あるものにする。次代を担う子どもの姿は大人の姿を映す鏡であり、今、その子どもたちが人として生きる道を見失いつつある。大人が将来不安と競争に翻弄される状態を脱し、「仕事」をくらしの中に回復させ、自信と目標を取り戻し、家庭や学校、地域社会を通じて、子どもが健やかにのびやかに育つ社会をめざす。�

(1)生活時間を変える� ●働く時間、働くための自己啓発の時間、家庭や地域でくらす時間、これらの時間の固有の価値を踏まえ、生涯にわたる時間配分(生涯労働時間)を一人ひとりが自分で決められるゆとりを確保する。��

(2)生活空間を変える� ●「モノの空間」であるとともに「人の空間(コミュニケーション空間)」でもある生活空間を、地域でくらす人々が共同社会として協働して治めていく「自主決定の空間」に編み直す。育児・介護の社会化は、この生活空間(地域コミュニティの自主的活動)の中で達成される。��

(3)土地を公共的な財産とし、利権から解放する� ●土地投機は、住宅や公共投資を利権に変え、くらしに負担を強い、環境を破壊してきた。土地を投機と利権から守り、公共的・社会的な財産として社会の中に位置づける。それを基礎にくらしを支える社会基盤づくりと住宅政策を進め、「福祉のまちづくり」で地域社会を再構築する。��

(4)「競争力至上主義」から決別する� ●過度なコスト競争と利潤追求が労働条件の向上をおさえ、消費を停滞させ、円高とコスト再切下げ競争の悪循環をもたらした。この過度な「競争力至上主義」から決別し、日本の技術力・競争力をゆとりと均衡ある社会とくらしを支える力に転じる。��

(5)「男中心」のシステムから脱却する� ●子どもや高齢者、女性、障害者を「弱者」として隔離し、青壮年男性に長時間労働を強い家庭や地域から遠ざけてきたシステムは、大きな亀裂と歪みが生じている。このシステムのもとでの働き方や、制度・慣行を変え、男女が助け合いながらそれぞれの人生を自由に選べる関係に編み直す。�

 社会保障は、われわれがめざす社会の基礎であり、基準でもある。深刻な危機に直面している日本の社会保障を再構築するには、明確な理念が必要である。すなわち、社会保障を「不安の配分」からすべての人に「安心」を給付するシステムに再構築するための基本理念は、次の4つにまとめられる。�

(1)社会保障の4つの基本理念� ①すべての住民を対象とする「普遍主義」�  ●特定の「弱者」に対する「選別主義」からすべての住民を対象にした「普遍主義」への転換� ②「措置制度」からの脱却�  ●行政権力による「措置制度」から受給者本人の「必要」と「選択」にもとづく「利用と契約」への転換� ③負担者・受給者の「参加と責任分担」�  ●負担者と受給者による制度運営への主体的な「参加と責任の分かち合い」による合意形成� ④世代間・世代内の助け合い:「社会連帯」�  ●世代間・世代内の「助け合い」(社会連帯)を基本としたシステム(社会的共同事業)���(2)基本理念を具体化する主な4分野の制度改革� ①資源配分の変更=財政構造改革により公共事業から福祉・社会保障に資源配分を変更する。� ②行政機能の再定義=行政は制度の管理運用を国民・住民に委託された存在として、行政責任を負う。� ③社会的合意=社会保障の負担と給付の水準、再分配機能について、「安心の給付」の観点から社 会的合意形成をはかる。� ④地方分権の推進=住民・利用者の参加、福祉サービスの供給における地域の独自性を保障する。�

 21世紀の社会保障の基本的な役割は、人々のくらしに「安心」を保障することにある。安心が保障されて初めて、人は意欲を持ってチャレンジができ、社会も活力を発揮することができる。社会保障を基盤としたわれわれが「めざす社会」は、次の3つの柱で構想される。�

21世紀にめざすべき社会“安心、そしてチャレンジへ”�

6 7

RENGO The 21st Century Social Security Vision

Page 5: Social Security VisionThe 21st CenturyThe 21st Century Social Security Vision 資 料 第 部 第 部 第 部 第 部 ビ ジ ョ ン の ポ イ ン ト 連合 21世紀社会保障ビジョ

第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

制度改革のデザインに向けて�制度改革のデザインに向けて�

(1)改革は2025年を射程に� 今回の「社会保障ビジョン」は、2025年を射程にしている。これは、給付と負担の水準を含め、各制度の全体像を展望する基礎となる人口構成および労働力率が推計できる範囲は、2025年が限界であるためである。2025年以降も高齢化が進むと見込まれるが、半世紀も後の社会のあり方は、推計や予測よりも総合的な社会改革のテーマとして、別に検討しなければならない。��(2)人口変動と社会保障� 社会保障の負担だけを切り離して世代間の負担を比較することはできない。後続世代は、先行世代よりも軽くなる負担(親の扶養・仕送り)もあるし、先行世代が受け取れなかった給付(教育、住宅・社会基盤、生活水準など)を受ける面もある。負担の内容は、世代ごとに異なっており、世代間・世代内の理解と協力による助け合いが社会保障の役割である。さらに、生産性上昇と技術革新、女性や高齢者の就業率アップは、社会保障の基盤の安定化にとって、重要な要素である。加えて、女性や高齢者の貢献を正当に評価するシステムを構築することが「高齢社会の活力」の基本であり、賃金をはじめ均等待遇の条件整備が必要である。また、福祉・社会保障分野の財・サービスは市場原理だけでは合理的に分配されにくいため、適切な供給と配分をする公的機能が必要である。サービス供給主体が民間であっても、「社会的共通財」として社会的な基準を担保することが必要である。��(3)社会保障の財政方式(税方式と保険方式)� 財政方式のあり方について、「税方式」か「保険方式」かの選択は、それぞれの制度の特性に応じて決定すべきものである。また、「税方式」でもその財源を直接税に求めるか、間接税に求めるかは一律に論じることはできない。この「ビジョン」で税方式を提案する場合も、「税方式」が「保険方式」より原理的に優れているためではなく、年金・医療・介護・福祉など、それぞれの制度の特性に応じて適切なあり方を検討した結果である。��(4)社会保障の基盤に関わる主な課題� ●社会保険の完全適用�  制度自体がパート・派遣労働など多様な就業形態に対応していないため、未適用など社会保険の空洞化現象が進んでいる。全ての働く人に社会保険が適用されることが、社会保険の基盤強化になる。�

� ●「世帯単位」と「個人単位」�  就業構造や家族形態の変容などを背景に、社会保障の「世帯単位」から「個人単位」への再構築が求められている。他方、単純な「個人単位」化は、単身女性高齢者の年金水準を引き下げるなど不均衡を広げる危険性もはらんでいる。必要な人に必要な給付を確保する観点から、具体的な制度設計を考えることが必要である。�

� ●社会保障と完全雇用�  社会保障の持続性を支える基礎は経済の活力であり、その活力を担うのは人である。高齢者や女性を含む全ての人々に就業機会を保障する社会であってこそ、社会保障も持続可能なものとなる。�

 医療、介護、年金制度、子育て支援等、それぞれの制度改革を前提に、税と社会保険料の負担を推計した。��(1)社会保険料は労使で26%程度� 現行制度のままでは、2025年の社会保険料率(年金・医療・介護保険料)は、年収ベースで36.4%(現在労使で22%)まで高まる。連合「ビジョン」では、2025年でも26.2%に抑えられる。これは、医療制度の改革による医療費抑制、基礎年金の税方式化(年金目的間接税3%の創設)などのためである。��(2)家計負担は年収の20%程度� 勤労者世帯(4人世帯)の実際の家計負担は、年収500万円~700万円層の場合、2025年で、税金と社会保険料の負担割合が年収の20%前後(現在16%~18%)となる。この程度であれば、負担可能な水準であり、連合「社会保障ビジョン」の実現性を数量的にも実証している。�

制度改革のデザインに向けた前提条件� 将来の給付と負担のイメージ(2025年のシミュレーション)�

〔試算の前提〕�①基礎年金の税方式化(1/2一般財源、1/3年金目的間接税、1/6事業主負担)、基礎年金と報酬比例年金の2階建て方式。�②高齢者医療は「突き抜け方式」とし、70歳以上の自己負担は1割、公費負担は5割(現行3割)に引き上げ、70歳未満の自己負担は2割に統一する。1人あたり老人医療費を若人の5倍から3倍までに圧縮する。�③介護保険は、被保険者を20歳以上(現行40歳)、給付対象を全年齢に拡大、給付水準を1.5倍に引き上げる。�④児童手当は、月額1万円(現行5千円)に引き上げ、義務教育終了まで支給する。�

現行消費税率(国+地方:%)�

目的間接税(税率:小計)�

 基礎年金分 �

 高齢者医療分�

 介護保障分�

合 計(消費税+目的間接税)�

現役の保険料(労使分/年収比)�

 厚生年金�

 医療保険分(政管健保)�

 介護保険(公費1/2の場合)�

 雇用保険料�

所得税等の増加分(税率換算分)�

 児童手当引き上げ相当分�

所得税の平均税率(含児童手当分)�

住民税の平均税率�

5.0%�

-�

-�

-�

-�

5.0%�

21.98%�(標準報酬:28.3%)�

13.58%�(標準報酬:17.35%)�

6.5%�(標準報酬:8.5%)�

0.7%�(標準報酬:0.9%)�

1.2% �

12.4%�

7.7%�

5.0%�

3.0%�

3.0%�

なし�

なし�

8.0%�

26.2%�

14.6%�

8.7%�

1.7%�

1.2%�

0.6%程度�

0.6%程度�

13.0%�

7.7%

5.0%�

5.0%�

36.4%�

20.3% �

13.4% �

1.5%�

1.2% �

12.4% �

7.7%

2000年度�

現行制度�

2025年度�

現行制度�連合「ビジョン」�

社会保険料率(本人分:%)�

社会保険料額(万円)�

所得税・住民税額(万円)�

児童手当の税相当分(万円)�

小 計(万円)�

可処分所得(万円)�

消費税率(%)�

消費税負担額(万円)�

A:総負担額(万円)�

年収に対する負担率(A/年収)�

11%�(標準報酬:14.2%)�

55�

11.3�

0�

66.3�

433.7�

5%�

15.2�

81.5�

16.3%�

18.2%�

91.0�

6.9�

0�

97.9�

402.1�

5%�

14.1�

112.0�

22.4%

13.1%�

65.5�

10�

0.3

75.8

424.2�

8.0%�

23.8�

99.6�

19.9%

2000年度�

現行制度�

2025年度�

現行制度�連合「ビジョン」�

年収500万円�

社会保険料率(本人分:%)�

社会保険料額(万円)�

所得税・住民税額(万円)�

児童手当の税相当分(万円)�

小 計(万円)�

可処分所得(万円)�

消費税率(%)�

消費税負担額(万円)�

A:総負担額(万円)�

年収に対する負担率(A/年収)�

11%�(標準報酬:14.2%)�

77�

31.1�

0�

108.1�

591.9�

5%�

20.7�

128.8�

18.4%�

18.2%�

127.4�

22.7�

0�

150.1�

549.9�

5%�

19.2�

169.3�

24.2%

13.1%�

91.7�

28.6�

1.0

121.3

578.7�

8.0%�

32.4�

153.7�

22.0%

年収700万円�

8 9

現役労働者(4人世帯、片働き夫婦、子ども2人)の�将来負担(2025年)�

勤労者世帯(4人世帯、片働き夫婦、子ども2人)の�家計負担/年収500万円、700万円の場合�

RENGO The 21st Century Social Security Vision

完全雇用�

社会保険の�完全適用�

高齢社会の活力�

特性に応じた�財政方式�

Page 6: Social Security VisionThe 21st CenturyThe 21st Century Social Security Vision 資 料 第 部 第 部 第 部 第 部 ビ ジ ョ ン の ポ イ ン ト 連合 21世紀社会保障ビジョ

第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

制度改革のデザインに向けて�制度改革のデザインに向けて�

 社会保障の各制度改革にあたっては、加入者・利用者である国民・住民が運営に主体的に「参画して責任も分かち合う」こと、サービス利用は必要に応じた「自己選択権」の保障を基本とする。� 現在の社会保障制度の基本は、中央政府が運営主体(保険者)であり、当事者である加入者や利用者が、直接その運営にかかわるしくみがない。これからの社会保障は、国民が主体として直接制度運営に参画し、責任を分かち合い、透明性を高めていくことが不可欠である。その制度改革の集大成として構想したのが、「社会保障基金」(仮称)である。� この「社会保障基金」は、雇用労働者を対象とする社会保険(年金、健保)、労働保険(雇用保険、労災保険)、公務員共済を一体的に扱い、政府から独立した第三者機関(法律に基づく公的機関)として位置づけ、ここが直接管理運営を行う。この「社会保障基金」の管理運営には、当事者である労・使をはじめ関係者の代表が参画し、民主的に運営する。地域差が大きい医療保険については、地方ごとに三者構成(公・労・使)による運営機関を設ける。� 一方、介護・福祉など地域を基本とする地域福祉サービスは、住民に最も身近な地方自治体が制度の実施主体となり、住民・利用者の参画を制度化する。�

「国民負担率」(国民所得に対する租税・社会保障負担の比率)が50%を超えると経済・社会の活力がなくなるという議論がある。また、

この比率による国際比較も行われ、北欧諸国ほど高い比率となっているが、この「国民負担率」という概念には、以下のような問題がある。�

(1)国民負担率を算出する場合、分母となる国民所得(NI)は、以下の式のようにGDP(国内総生産)から間接税を差し引くため、間接

税(消費税等)の比率が高い国ほど国民負担率が高くなる。そのため、消費税率が25%程度の北欧や、15%程度のEU諸国は、国

民所得率は50%以上と高めになり、国際比較の指標としては不適当である(算出技術的問題)。�

   ○国民負担率=(税負担+社会保障負担)/国民所得(NI)�   ○国民所得(NI)=GDP-純間接税(間接税-補助金)-固定資本減耗+海外からの要素所得��

(2)国民負担率を下げても公的負担(社会保険料+租税)

が私的負担に振り替わるだけで、社会全体の負担は変

わらない。また、「負担の重さ」を考えるならば、給付も

加味して検討すべきであり、税・社会保障負担率から社

会保障給付率を差し引いた「純負担率」という考え方

もある。つまり、公民の役割分担はシステム全体の効

率性やサービス・保障内容の適切さなどを総合的に判

断して議論すべきであり、国民負担率という一指標の

みから、政策のあり方を論じるのは適当ではない。�

(3)したがって、国民負担率の上限を「50%」とする論拠

は希薄である。国民負担率が50%を超えた国が経済

的に行き詰まっているという検証もなく、(1)(2)の問

題を考慮すれば、「50%」という数値を社会保障政策

の目標、規模の上限とするような議論は再検討が必要

である。また、国際比較を行う場合は、国民所得比では

なく、対GDP比による負担率のほうが、より適切である。�

 (P22、23参照)�

国民負担率の国際比較、及び政策指標とする場合の問題点�

10 11

社会保障基金(イメージ図)�

RENGO The 21st Century Social Security Vision

中央政府�

使用者�

現役世代�高齢世代�

地方運営機関�(健保)�

国 保�地方政府�(地方自治体)�

社会保障基金�●中央政府から独立した第三者機関�●法律に基づく公的機関�●労使の代表による運営参画�

医療� 医療�

医療� 医療�介護・社会福祉�子育て支援�

給 付�

社会福祉・介護�

生活保護�

生活保護�

年金�雇用・労災保険・年金�

民間雇用労働者�公務員�

自営業者等�

拠出金(税・社会保険料)�

交付金�

国民負担率�

社会保障の運営主体としての「社会保障基金」構想�

企業負担�

勤労者負担�

自己負担�(私的負担)�

国民負担率�

企業負担�

勤労者負担�

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第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

各制度の改革の具体像〔医療保障〕�各制度の改革の具体像〔医療保障〕�

現状と課題�現状と課題�

2025年の姿�2025年の姿�

患者と医師の信頼にもとづく安心の医 療を確立する�

●医療への信頼回復と患者本位の医療体制が確立� されている�①インフォームド・コンセント(説明と同意)、セカンドオピニオンが制度化されている。�②患者・遺族の申請によるカルテ・レセプトの開示は制度化されている。個人情報は保護され、被保険者証は個人別の電子カードになっていて、病歴・薬歴、検査情報が盛り込まれている。患者の苦情処理機関が自治体などに設置されている。�③第三者機関によって医療機関や医師が評価され、情報公開によって、患者は、医療機関や医師を選択している。�④医療ミス・事故の原因を徹底究明するため、どの医療機関にも専門教育を受けた「安全管理者」が配置されている。�⑤リビング・ウィルが定着しており、終末期医療は患者の尊厳と生存権が尊重されている。��●予防・健康づくりを重視した保健医療サービスが� 確立されている�①地域では医師、産業医・産業保健スタッフ、保健師・保健補導員が多く配置され、連携している。生活習慣病などの予防や、健康づくりが推進されている。�②保健所や市町村保健センターをはじめ、大規模スーパーや駅ビルなどにも健康相談所が設置されて、誰もが気軽に相談している。�③高齢者は増加したが、老人医学や予防医学の進歩により、健康な老人が増え、健康寿命は大幅に伸びている。��●質の高い医療サービスを提供できる体制が整備� されている�①診療所や中小病院は家庭医として初期医療を、大学病院・国公立病院は高次医療をと、医療機関の機能分担と連携がはかられている。�②国の責任で無医地区は解消され、小児・救急医療体制が確立している。高額医療機器の計画的配置により、無駄な検査はなくなっている。�

③ベッド数は適正化され、医師・看護師など医療従事者は、患者の立場で親切・丁寧な治療を行ってくれる。差額ベッド代は安く良好な入院環境にある。入院期間は現在より大幅に短縮されている。�④介護保障制度の充実で、長期入院(社会的入院)は解消されている。�⑤医師の育成は国の責任で行っており、研修医はアルバイトせずに研修に専念でき、地域医療を担える医師が多くなっている。��●公正で納得できる医療保険制度となっている�①診療報酬体系は、出来高払いではなく、「包括・定額払い」になり、医療費の不正請求などは大幅に減った。�②医薬分業が進み、近所の薬局でも必要な薬は入手できる。薬剤師は、薬や副作用について丁寧に説明している。薬や医療機器・材料の価格設定過程が透明で国民にもわかりやすくなっている。�③保険者は統合され、権限は格段に強化されている。医療機関との費用交渉・契約、不正請求や医療事故を起こした医療機関への立入調査も行える。また、医療情報の提供や、健康づくりによって医療費は大幅に減少している。�④健康保険と国民健康保険の2本立てとなっている。どちら

も患者窓口負担は家族も含め2割、乳幼児は無料、老人は1割、難病は低額負担によって、病気になっても心配のない生活を送っている。�⑤保険医には定年制が導入されている。すべての保険医療機関には明細のわかる領収書発行が義務づけられている。�

�●安心できる高齢者医療制度が実現されている�①老人保健制度は廃止され、「退職者健康保険制度」が創設されている。被保険者期間が通算で25年を超えると、退職者とその家族が加入できる。保険料は現役も含めた平均保険料を納めるが、事業主負担に相当する分は、各保険者が負担する。窓口負担は現役と同じ2割で、70歳以上は1割になっている。�②全被用者健保の代表者や労使代表で構成する第三者機関の管理運営機関が中央と都道府県に設置されている。この機関は健康づくりも推進している。�③国保と被用者保険の財政調整は、高齢者の加入比率に応じて、公費で行われている。�④健康寿命が伸び、病院へ通う高齢者は大幅に減少している。飲みきれないほどの薬を出す医療機関も減り、老人医療費は減少している。�

●患者の医療への不信、患者と医師の信頼関係が� 動揺している� ●病気の原因や治療内容・薬などについて説明が不十分、あるいは説明がなく、患者にとって不安。医者に質問をしたり、別な医者の紹介を依頼したら嫌がられるのではないか。�

 ●医療ミスや事故にあわないだろうか。自分のカルテやレセプトを見たいが言い出しにくい。�

 ●病気になった時、どの医療機関や医者に診てもらえばいいのかわからない。子どもが急病の時、どの救急病院へ行けばいいのか、たらい回しにされないか。�

 ●患者の方を見ず、コンピュータだけ見ていたり、何を聞いてもわからない医師がいる。医師の教育はキチンと行われているのか。��●医療資源の配分が非効率であり、無駄が多い� ●診療所と大病院の役割がはっきりしていない。軽いケガでも大病院へ行ってしまう。ドクターショッピングの横行。�

 ●看護師さんなど医療従事者はいつも忙しそう、労働条件は大丈夫か、医療ミス・事故につながらないか。�

 ●救急医療体制が不十分、僻地や離島では未だに無医地区がある。�

 ●介護保険ができても、長期入院(社会的入院)が解消されないのはなぜか。��●医療保険制度への不信の高まり� ●窓口で払うお金の計算方法がわからない。同じような治療を受けたのに、医療機関によって窓口で払う金額が違う。�

 ●入院したら、差額ベッド代や医者へのお礼など、どのくらいお金がかかるのか。�

 ●健康保険の保険料はどこまで上がるのか。� ●保険者が大小5,000以上もあり、権限が小さく、保険者機能が発揮されていない。 �

 ●将来高齢者が増えていくが、その医療費を支えられるのか。保険制度が破綻するのではないか。�

12 13

老人医療費の膨張により増えつづける国民医療費�

病院・診療所の連携イメージ�

退職者健康保険制度(仮称)のイメージ�

0

5

10

15

20

25

30

35

0

1

2

3

4

5

6

8

7

(兆円)� (%)�

1995 96 97 98 99

8.99.7

(34.1%)�(33.1%)�

27.0

7.1

28.5

7.3

(35.4%)�

10.3

29.8

7.8

(36.5%)�

10.9 (38.2%)�

30.9

8.1

11.8

2000年度�

30.4

8.0

(37.2%)�11.3

国民医療費の国民所得に対する割合(%)�

29.1

7.4

国民医療費(兆円)�

老人医療費(兆円)�

二〇〇〇年度の介護保険の創設により医療費の一部(約1.7兆円)が介護保険に移行�

国 保�

退職者医療制度�

老人保健制度�

被用者健保� 国 保� 被用者健保�政管健保�組合健保�共済など�( )�

出所/連合生活福祉局作成�

出所/与党協「21世紀の国民医療」(1997年)�

(退職)� (退職)�

(70歳)�

2割�

無料�

1割�

(3歳)�

退職者�健康保険�制度�

退職者が加入する�

紹介�紹介�

支援��紹介�

患者負担�

大 病 院 � 大 病 院 �

中小病院� 中小病院・診療所�地域医療�支援病院�診 療 所 �

RENGO The 21st Century Social Security Vision

現行制度�現行制度� 改革案�改革案�

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第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

各制度の改革の具体像〔介護保障〕� 各制度の改革の具体像〔社会福祉〕�各制度の改革の具体像〔介護保障〕� 各制度の改革の具体像〔社会福祉〕�

現行制度�現行制度�

現状と課題�現状と課題�

2025年の姿�2025年の姿�

現状と課題�現状と課題�

2025年の姿�2025年の姿�

2025年の介護保障制度�2025年の介護保障制度�

介護を必要とするすべての人を�カバーする介護保障制度�

すべての人の自立生活と社会参加を�支援する社会福祉制度�

●過酷な家族介護、老老介護、介護者による高齢者虐待等の問題から、「介護の社会化」を掲げて介護保険制度が導入されたが、家族、とくに女性への負担

は依然として重く、介護の社会化は達成されていない。�●現行制度は、高齢者のみが対象だが、介護は、疾病等の回復過程や障害児・者の自立支援においても必要で、一定年齢には限らない。介護保障は、すべての年齢や理由による介護に総合的に対応する必

●年齢や理由を問わず、あらゆる介護が保障される�①市町村が制度運営の責任主体となり、高齢者だけでなく、障害児・者も含めて、年齢や理由を問わず介護が必要なすべての人が対象となっている。�②サービス給付は対人サービスを基本に、これまでの障害児・者福祉の関連費用をあてて、移送などのサービスメニューがさらに拡充している。�

③要介護認定は、現行方式を基本に、高齢者の状態がより的確に反映されるように改善されている。��●制度の財政は、「保険方式」とする�①保険料徴収の対象は、現行の「40歳以上」から、「20歳以上」に引き下げられ、所得に比例した定率の保険料となっている。市町村国保加入者や年金受給者は、半額が国の負担となっている。�

②利用料は1割定率負担で負担上限がある。20歳未満の障害児の利用料は無料となり、国と自治体が負担する。�③「介護費用支援制度」が新設され、低所得者の負担が軽減されている。�

●総合的な介護サービス体制が確立している�①市町村ごとに、現在の「基幹型在宅介護支援センター」が再編された中立的な第三者機関の「地域総合介護支援センター」が設置されている。要介護認定の訪問調査、介護予防、24時間介護相談、家族介護者の支援等を行う地域の介護システムの拠点となっている。��●住民が、制度の運営をチェックする�①市町村ごとに、苦情相談窓口、サービス評価機関、高齢者や障害者の契約や金銭管理に関する権利擁護制度や「福祉オンブズマン」がある。�②住民や利用者代表が構成する「介護サービス運営協議会」が設置され、住民みずからが、制度運営のチェックを行っている。��●サービスが充実し、質の高い在宅介護が行われている�①すべてのケアマネジャーは、「地域総合介護支援センター」に所属して、独立・中立の立場から、地域の福祉サービスを総合的にコーディネートしている。�②ヘルパーの大幅な増員や研修制度の充実、移送・配食などのサービスメニューの充実がはかられ、24時間在宅介護が実現している。�

●これまで、行政が決めていた高齢者や障害者の福祉サービスは、本人が選び、契約することになった。しかし、サービス整備が不十分であるうえ、社会的に弱い立場にある人々が、きちんと選択と契約を行

える環境整備や支援策が不十分である。�●行政の担当者や窓口も分野ごとに異なり、利用者にはわかりにくい。�●利用者への権利侵害に対しては、権利擁護制度が十分に対応しきれていない。�●就労意志のある障害者の雇用・就労が進んでいない。�●生活保護は、行政運用が不適切なことも多く、保護基準以下の生活を余儀なくされる人も多い。�

●利用者本位の社会福祉が実現している�①従来の縦割り行政の弊害がなく、1人のケースワーカーが、医療、介護、保育、年金など福祉サービス全体をコーディネートできる体制となっている。�②障害を理由とした欠格条項・条例は完全に撤廃され、視聴覚障害者の情報アクセス手段の確保やITの活用等、コミュニケーション施策が充実しており、障害者の社会参加が支援されている。�③成年後見制度・地域福祉権利擁護事業が使いやすく改善され、サービスの質の評価制度やオンブズマンの設置等により、利用者の権利擁護がはかられている。��●地域で総合的な社会福祉が推進されている�①だれもが地域でともにくらす社会をめざし、「脱施設」がすすめられ、地域のなかに、各人の特性に応じた生活や労働の場が整備されている。�

②働く意志のある障害者が、可能な限り就労できるように、国・自治体や事業者によって、職場環境やサポート体制が整備されているとともに、就労困難な障害者に対しては、税方式化した障害基礎年金の水準の引き上げなどによって、所得の保障が行われている。�③福祉サービスの実施主体は地域(市町村)である。現在の「地域福祉計画」を発展させた、まちづくり等も含む総合的な「地域福祉プラン」が策定され、関連政策と相互連携した施策が推進されている。��●利用しやすく自立につながる生活保護制度になっ ている�①最後のセーフティネットである生活保護は、だれもが安心して利用でき、自立につながる制度となっている。受給抑制のみを目的とした厳格すぎる申請受付や資産・扶養調査等、制度の理念を逸脱した運用はなくなっている。�②扶養義務の範囲は、夫婦と18歳以下の子どもまでである。�

14 15

2025年の介護保障制度� 総合的な地域福祉プラン�

障害者福祉�

障害者福祉サービス�(介護サービスを含む)�

介護サービス�

保険料徴収�

障害者福祉サービス�(介護サービスを含まず)�

介護サービス�

保険料徴収�

介護保険制度�

高齢者介護�

高齢者介護��

若年障害者介護�

(障害児介護)�

40歳�

0歳� 0歳�

20歳�

65歳�

介護保障制度(全住民対象)�

地域福祉計画�

老人保健�福祉計画�

障害者�計 画�

介護保険事業計画�

児童育成�計  画�

保健・医療�福祉のまちづくり(交通・住宅等のバリアフリー)�

就労、教育、ホームレス等�

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第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

各制度の改革の具体像〔雇用保障〕�各制度の改革の具体像〔児童福祉・子育て支援〕�各制度の改革の具体像〔児童福祉・子育て支援〕� 各制度の改革の具体像〔雇用保障〕�

現状と課題�現状と課題�

2025年の姿�2025年の姿�

現状と課題�現状と課題�

2025年の姿�2025年の姿�

安心して子どもを産み育てられ、�子どもが健やかに育つ環境の整備�

失業や労災にあっても安心して�くらせる社会�

●止まらない少子化� 2001年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数)は、1.33と過去最低であり、依然減少傾向にある。家庭・職場・地域を含め、「子どもを産みたいけれど、産めない」社会環境が課題となっている。��●子どもを産み育てにくい社会環境�①子育ての孤立化� 核家族化の進行などで、育児に関する手助けや助言もないまま、母親が1人で子育てを行っている。「どうやって子育てしたらいいか、わからない」「24時間子育てに追われ、自分の時間がない」など、育児への負担感は非常に大きい。こうした「子育ての孤立化」が児童虐待の発生に結びつくなど、深刻な状況となっている。�

②需要に追いつかない保育ニーズへの対応� 「日曜日も出勤だが、子どもを預かってくれない」「仕事を探したいけれど、子どもを預かってくれない」など保育所へ子どもを預けたい保護者のニーズは増大かつ多様化しているが、地域では対応し切れていない。保育所の待機児童は、2002年4月現在で2万5千人を超えており、潜在的な待機児童も含めると10万人以上とも言われている。�③仕事と家庭の両立が難しい職場環境� 子どもを持つ保護者にとって職場生活と家庭生活を両立できる体制の整備は何よりも重要だ。しかし、例えば育児休業取得率では、女性が56%、男性が0.42%と大きな差があるなど、男女がともに家庭生活を担える状況にはほど遠い。�

●地域の中で、子どもが健やかに育つ環境が整備� されている� 「買い物途中に、子育てについて知りたいこと、聞きたいことを気軽にたずねられる」---「子育ての孤立化」を防ぎ、子どもを持つ保護者が必要に応じていつでも子育てサービスを受けられるように、「子育てネットワーク」など、地域全体で子育てを支援できる体制が整備されている。��●仕事と子育ての両立を支援する環境が整備されている� 労働時間の短縮が進み、子どもを持つ保護者がゆとりをもって仕事と子育てを両立している。また、短時間勤務、フレックス勤務など多様な勤務制度の整備が義務づけられ、育児休業の取得しやすい環境整備や子育てに関わる休暇が制度化されている。�

●安心して子どもを保育所に預けられる体制となっ ている� 「急な残業でもちゃんと預かってくれる」「希望通りの保育所に希望する時期から入園できる」---保育を希望する者がいつでも保育サービスを受けられる体制が確保されており、保育所の開所時間、保育体制などは地域の保育ニーズに応じて整備されている。学童保育は、保護者が希望すれば誰でも利用できる。また、施設や人員配置基準が設けられ安心して預けられるようになっている。��●安心して子育てができる経済的支援がある� 児童手当の支給対象は義務教育終了までの子どもを育てている保護者であり、子ども1人あたり月額1万円の支給となっている。�

●経済の低迷により、失業率は5%を超え、雇用の先行き不安感が増大している。雇用面でのセーフティネットの重要性が増している。�

●雇用保険による各種給付金は、今後の事態に対して不十分である。年金支給開始年齢が引き上げられ、定年後の雇用が確保されず、生活不安が高まっている。�

●社会保険の適用を受けないパート・派遣等の労働者が増大している。�

●雇用リストラで職場の労働は過密となり、ストレスを高め、身体的過労に加え、精神面での健康が蝕まれている。産業や働き方の変化に、労働災害補償が対応できていない。�

●職場における災害防止や疾病予防が不十分である。また、労働災害の認定が厳しく、過労死などの認定は困難である。�

●年金と雇用がリンクしていなかったり、失業中の社会保険料の取り扱いなど、雇用・失業対策と社会保障施策が連携していない。�

●雇用のセーフティネットが強化されている�①失業しても、手厚い失業給付の支給や再就職支援サービスを受けることができ、生活不安を抱くことなく再就職活動ができる。一定期間以上の長期失業者は、社会保険料が免除される。就業形態は多様化しているが、どのような働き方や転職をしても、雇用保険は適用される。�②雇用安定のため、企業の枠を超えた社会的能力評価システムや均等待遇が確立され、労働契約および解雇ルールが制度化されている。�③ワークシェアリングの定着で、女性、高齢者の雇用が増加している。��●他の社会保障施策と密接に連携している�①年齢による雇用差別禁止法が制定され、年金と雇用のリンクがはかられている。65歳までは定年延長や継続雇用が制度化されている。�

②育児休業や介護休業の給付が充実し、保育施策や介護保険制度の拡充とあいまって、育児や介護を理由に退職する労働者はほとんどいない。��●職場での健康管理が総合的に実施されている�①労働災害を防止するため、すべての職場に安全衛生委員会が設置されている。産業医の役割と権限が強化され、産業医制度が社会的に周知されている。�②地域と職場の連携した疾病予防、健康づくりの取り組みによって、労働災害は減少している。とくに、メンタルヘルス対策の推進で、過労死は大幅に減少している。�③労働災害の認定は、柔軟・弾力的に行われており、補償も充実している。�

16 17

高止まりする完全失業率�

1

0

2

3

4

5

6

1970

1.1

1975

1.9

1980

2.0

1985

2.6

1990

2.1

1995

3.2

2001�1月�

4.7

2001�6月�

5.0

2000

4.7

2002�1月�

5.2 5.25.4 5.4 5.45.7 5.6 5.6

2002�6月�

5.5

2002�10月�

5.5(%)�

(年度)�

出所/総務庁(省)統計局「労働力調査報告」�

【支給対象】��小学校入学前までの子どもを�育てている保護者�(所得制限あり)��【手当額】��第一子   月額5千円�第二子   月額5千円�第三子以上 月額1万円�

【支給対象】��義務教育終了までの子どもを育てている保護者�(所得制限なし)��【手当額】��子ども1人につき 月額1万円�

現行制度�現行制度� ビジョン�ビジョン�PTA�

NPO�

児童館�町内会�

ボランティア�

子育ての孤立化� 児童虐待�

病 院�

保健所�

児童相談所�

保育所�

幼稚園�

学 校�

子育て家庭�子ども�

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第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

各制度の改革の具体像〔年金〕�

●年金制度に対する不信感・不公平感が増大している。� ●「将来、自分の年金はもらえないのではないか。」制度改革の度に、保険料が引き上げられ、年金額が削減される。このままでは、将来年金はなくなってしまうのではないか。�

 ●「そもそも、自分は将来いくら年金がもらえるのか。」年金額の計算の仕方やこれまでの制度改正に関する経過措置など、制度が複雑すぎて、誰も自分の年金がわからない。�

 ●「高齢者の方が得で、若い人は損。」� 本来、「世代と世代の助け合い」の社会連帯のしくみなのに、世代間の損得勘定だけが強調されている。�

 ●「わたしは働いて保険料を払ってるのに、専業主婦が保険料を払っていないのはおかしい。」� ライフスタイルの違いにより、異なる負担と給付のあり方に不公平感が生じている。��●「保険方式」では「皆年金」は達成されない。現在の制度では、専業主婦を除き、原則保険料を払わなければ年金がもらえないしくみとなっているため、「皆年金」とはなっていない。��●年金制度を支える人が少なくなり、その分加入者の負担が増えている。�

 ●「どうせもらえないなら、保険料を払いたくない。」本来、強制加入のはずなのに、保険料が自主納付の

国民年金では、保険料の不払いが約4割となっている。�

 ●「会社の経営も大変だから、年金保険料を払う余裕はない。」� 年金保険料の事業主負担を逃れるため、厚生年金から脱退する企業が増加している。�

 ●「同じ職場で働いているのに、パートだと厚生年金に入れない。」� 働き方の多様化で、現在の加入要件では厚生年金が適用されない雇用労働者も増加している。��●制度運営の透明性に問題がある。� ●「年金の運用では巨額の赤字を出しているらしい。」運用結果の責任を誰がとるかはっきりしないまま、市場運用の結果、大事な年金積立金が目減りしている(2001年度までの運用結果で約3兆円の累積赤字)。そもそも積立金が多すぎる(高齢化のピーク時で3~4年分)。��●老後生活への不安が増大している� ●「自分の老後生活はどうなるのか。」� 将来の年金の姿が明確でないため、老後生活への不安も強い。�

 ●「定年後、年金がもらえるまで、どうやって生活しよう。」定年後の就労を希望する人すべての雇用が確保されないまま、年金の支給開始年齢の引上げが実施

●年金制度に対する不公平感が解消され、信頼が回復している。�①基礎年金は全額税金でまかなわれており、保険料不払い問題が解消し、みんなで支える公平な制度になっている。�②社会連帯を基本とする「世代と世代の助け合い」のしくみについて、すべての世代で合意形成がされている。��●すべての人に基礎年金が支給されており、真の「皆年金」を実現している。�①所得にかかわりなく、18歳以降5年以上日本に住んでいる人は、誰でも基礎年金を受給できる。��●年金制度が安定した持続可能な制度となり、安心して老後生活を送ることができる。�①基礎年金を税方式化することで、保険料負担は報酬比例年金の分だけの15%程度となり、十分負担可能な水準となっている。�

②老後の生活費の基本部分が、公的年金で生涯にわたり保障(現役世代の手取り年収の55%)されており、安心して老後生活を送ることができる。そのため、基礎年金は7万円に引き上げられている。�③現役世代の年収と高齢世代の年金をそれぞれ税・社会保険料負担を除いた手取り額で比較しているため、経済的な変動に応じて、自動調整されるしくみとなっている。��●年金の積立金は、高齢化のピーク時でも1年程度であり、運用は元本確保・安定運用を基本としている。�

�《年金改革の姿》��●2025年の望ましい年金改革の姿は「定額基礎年金+定率報酬比例年金」の「2階建て」方式�

①定額と報酬比例の組み合わせで、現役時代の賃金格差が圧縮される。�②老後の格差拡大に歯止めが掛けられる。�

各制度の改革の具体像〔年金〕�

現状と課題�現状と課題� 2025年の姿�2025年の姿�

社会連帯のしくみで、安心の老後をみ んなで支える年金制度�

給 付 水 準:40年加入の片働き世帯モデルの場合、24万円(手取額21万円)�       現役時代の手取り年収比で55%の手取り年金�       ※平均的な受給額は23万円(手取り20万円)程度�基 礎 年 金:18歳以後40年日本に居住した場合 月額7万円�       ※現行6.7万円を3千円(報酬比例部分の5%カット相当分)引き上げる�報酬比例年金:賃金水準と加入期間に応じて支払われる(現行の年金算定方式に準じる)�

18 19

空洞化する国民年金 (2001年3月末)�

定額基礎年金+定率報酬比例年金の「2階建て」方式�

7,148万人�

公的年金加入者 7,049万人�

第1号被保険者 2,154万人�(自営業者等)�

保険料納付者�

厚生年金保険(民間サラリーマン等)3,219万人�+�

共済組合(公務員等)523万人�

第2号被保険者 3,742万人� 第3号被保険者�1,153万人��

第2号被保険者の�被扶養配偶者�

*1:第1号被保険者には、任意加入(29万人)を含む。免除者は法定免除者と申請免除者・学生納付特例者の合計�*2:1998年10月15日現在(平成10年公的年金加入状況等調査より)�*3:1999年3月末(平成11年国民年金被保険者実態調査より。未納者とは、第1号被保険者のうち、過去2年間1月も保険料を�  納付しなかった者)�

*1

(     )�(        )�

未納者�265万人�

第1号被保険者(未加入者含)(2,253万人)に対する割合�・未加入+未納+免除者(869万人) 38.6%�

免除者�505万人�

第1号未加入者�99万人�

*2

*3

出所/社会保険庁�

報酬比例年金�

基礎年金�夫   7万円�

妻   7万円�

10.3万円�

基礎年金+報酬比例年金=24.3万円�

(18歳以後40年日本に居住した場合)�

40年間男子の全被保険者の平均額に�相当する賃金を得た場合�(              )�

RENGO The 21st Century Social Security Vision

保険料14.6%�労使折半/年収ベース�

厚生年金の負担の内訳(2025年)�

厚生年金保険料�(報酬比例部分)�

基礎年金�全額国庫負担�(税方式)�

社会保障税�(現行の事業主負担相当分)�

年金目的間接税�(2025年で3%程度)�

直接税�国庫負担1/2�(現行国庫負担1/3)�

6-�1

3-�1

2-�1

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資 料�

第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

<医  療>�●インフォームド・コンセント� 医師が患者に対し、前もって治療の内容や効果、危険性、費用などについて十分でわかりやすい説明をし、患者が納得し同意をした上で、その医療行為を行わなければいけない、というもの。一般的に「説明と同意」と解説されている。��●セカンドオピニオン� 病状、治療方法、手術、入退院の可否などに対して、主治医以外の医師の診断を求めること。��●研修医� 現在、医師国家試験を受験し合格した後、臨床研修指定病院において2年間の臨床研修が努力義務として求められている。この研修を受けている医師を研修医という。研修医の身分は全く保障されない場合が多く、アルバイトをしなければ生活できない。経験が少ない研修医が深夜の救急医療を支えている場合も多く、医療事故の可能性が高いことなどが社会問題となっている。2004年4月から、最低2年間の研修が義務づけられる。��●健康寿命� 通常の平均寿命は、出生時から何年生きられるかの期間であるが、健康寿命とは、痴呆や寝たきりにならず、健康で自立した生活ができる期間をいう。わが国の2002年の平均寿命は男77.9歳、女84.7歳であるが、健康寿命は男71.4歳、女75.8歳である。��●出来高払いの診療報酬体系� 出来高払いの診療報酬体系とは、個々の診療行為ごとに点数(1点=10円)が設定されていて、提供した医療サービスの点数を積み上げたものが診療報酬として医療機関に支払われる方式をいう。この方式では、治療や検査を行った分だけ医療機関に支払われることから、より多くの医療を提供するインセンティブが生じる。逆に言えば、必要にして十分な医療を効率的に提供しようとするインセンティブが働かないため、過剰な診療を誘発する欠点が指摘されている。��●包括・定額払いの診療報酬体系� 疾病分類に従って、あらかじめ定まった額を払う。先進諸国の多くが、病院での支払い方式として採用している。包括・定額払い方式は、医療機関に効率的な医療提供を促すインセンティブがある半面、粗診・粗療を招くおそれが否定できないと、指摘されている。「医療の質」の確保が大前提である。��●地域医療支援病院� かかりつけ医などから紹介患者への対応、地域の医療従事者の研修、救急医療の提供、医療機器の共同利用などを行い、地域の医療機関の機能分担と連携をはかる観点から開設された病院。以前の「総合病院」にかわり98年から医療法で規定された。救急医療体制、原則200床以上、患者紹介率80%以上などの開設要件を満たし、都道府県知事が承認する。全国で39施設(2002年1月現在)が承認されている。��<介  護>�●在宅介護支援センター� 老人福祉法に規定されているケアマネジメント機関。地域の全高齢者とその家族が相談・援助の対象。基幹型と地域型があり、基幹型は、原則として市町村ごとに1カ所整備され、市町村が直接運営する。業務内容は、「地域ケア会議」の開催、介護サービス機関の指導、介護情報の提供など。��<福  祉>�●地域福祉計画� 社会福祉事業法等の改正(2000年6月)により、社会福祉法に新たに規定された事項。市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画からなる。内容は、①地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項、②地域における社会福祉事業の健全な発達に関する事項、③地域福祉活動への住民の参加の促進に関する事項、などについて、一体的に定める。地域住民の意見を十分に反映させながら策定する計画とされ、今後の地域福祉を総合的に推進する上で大きな柱になる。��●成年後見制度� 民法施行以来の「禁治産・準禁治産制度」を改正するものとして、2000年4月に施行。①本人の意思とは関わりなく法律の規定により保護をはかる「法定後見制度」と、②本人が判断力を有する間に保護者を選び事務の執行を依頼しておく「任意後見制度」とがある。��●地域福祉権利擁護事業� 痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者等の判断力が不十分な人に対し、福祉サービス利用の手続きや利用料の支払い、日常的金銭管理、苦情解決等の相談・助言・代行等を行う制度。実施主体のほとんどは、都道府県社会福祉協議会。実際の実施・運営は、基幹的な市町村社会福祉協議会に委託する。利用は、本人(判断力の低い人)の申請と契約の締結が前提であるため、現実的に利用対象に限定があり、施設利用者も利用できない。�

用語解説�社会保障改革と労働組合の役割�

 社会保障は、「助け合い=社会連帯」の制度だが、これは労働組合の役割そのものである。社会保障の歴史は、職域の助け合いのシステムを次第に国の制度へと高めてきたものである。しかし、これまで労働組合は企業内福利厚生を重視してきたため、官公庁と大企業では手厚い制度が実現したが、未組織労働者の働く現場には、社会保障さえ適用されない人たちが増えている。� こうした「日本的二重構造」が労働者の生活面までも規定し、社会的な格差を生んでいる。くらしに安心を保障する福祉・社会保障の将来を展望するためには、「助け合いのネットワーク」を再構築し、「社会連帯」をもう一度建て直すことが必要である。� 社会保障改革は社会のあり方そのものを問い直すテーマであり、労働組合が存在意義をかけて取り組むべき課題である。労働組合の原点に立ち戻り、自らの組織、体質、行動を根本から見直し、社会に開かれた組織と運動の姿を確立することが求められている。�これこそが21世紀の労働組合の存在意義を問う試金石である。そのための具体的な課題は以下のとおりである。��(1)多くの中小企業労働者の現実に基準を置き、年金・医療・介護など公的な社会保障制度の役割を強化する。社会保障費の使途について十分にチェックし、利用者が制度運営に積極的に参画することでサービスの改善をはかる。�

(2)パート・臨時・派遣などすべての労働者に社会保険を完全適用する。そのため、事業所単位での加入を前提とした制度を見直し、個人でも加入できる制度にする。�

(3)企業内の福利厚生施設が維持できなくなったときは、安易に手放すのではなく、地元経済界や行政などと協力して、健康づくりや安全衛生活動の施設として社会化する。�

(4)労金、労済など職域での自主福祉事業は、各地の退職者連合・市民団体・NPO組織などとの積極的な連携により、地域での助け合いのネットワークに再構築する。�

(5)労働組合や事業団体の活動は、「公助」と「自助」の間の「共助」の領域であり、その役割をさらに拡充するとともに、育児など新たな福祉分野に拡大する。�

(6)各地の市民団体・NPO組織と具体的に連携し、新しい地域コミュニティをつくる。産業別組織は地方連合会を積極的に支え、各職場からの地域への参加を支援する。�

社会保障改革と労働組合の役割�

社会保障の改革に向け�労働組合の「原点」に立ち戻る�

20 21

地 域 住 民 �

市民団体�・�

NPO組織�地方自治体�

退職者連合�

全労済�

ろうきん�

構成組織�

単 組�

地方連合会�

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第 部�

第 部�

第 部�

第 部�

資 料�

ビジョンのポイント�

●試算の前提�(1) 現行制度での社会保障給付費と負担の将来見通し:厚生省推計(2010年以降は、基礎年金の国庫負担を1/2として試算)。�

(2) 名目賃金上昇率:年率2.5%、物価上昇率:年率1.5%、運用利回り4%�

(3) 国民所得の伸び:2010年度まで2.5%、2011年度以降2.0%(厚生省推計)。GDPの伸びも同率とした。�

(4) 人口推計:2002年の新推計(中位推計)。�   2025年の65歳以上人口は3,473万人。�(5) 2025年の基礎年金給付費:連合「ビジョン」は、給付水準を4%アップさせ、賃金スライドを復活した場合で46兆円と推計。�

(6) 2025年度の国民医療費:72兆円(厚生労働省の新推計:給付費63兆円)。これを前提に老人1人あたり医療費を若人の3倍に抑制した場合、高齢者の医療給付費を25.1兆

円として試算した。�(7) 2025年の介護給付費:政府見通し(21兆円)の1.5倍として31.5兆円で推計。�

(8) 2025年の「その他の給付」:介護給付の拡充により福祉に関わる給付費(現行制度)から介護給付費への移行分として8兆円を控除した。�

(9) 国民負担率は、消費税率の引き上げに伴う国民所得の減少により、その分高くなることを考慮する必要がある。�

(10) 社会保障給付以外の支出に係わる公費負担の国民所得比�  (租税負担率)は、過去数年間の水準20%程度が将来も一定として試算。2000年度は、税収減により、この負担率が低下している。�

 社会保障の給付と負担について、社会保障給付費の国民所得比および国民負担率による国際比較では、2000年(現行方式)の日本の値は、諸外国の値の中で、アメリカに次いで低くなっている。日本の2025年(現行方式)の値は、イギリス(1996年)より高くなるが、それでも現在のドイツ、フランス、スウェーデンと比べれば国民所得比、国民負担率ともに低く見込まれている。連合ビジョンによる2025年の値は、この2025年の日本の現行制度の値よりも低くなる、という推計結果となっている。�※国民負担率で国際比較を行う際の問題点については、P11のコラムを参照�

22 23

社会保障の給付と負担の国際比較�

(注1)日本の2025年の数値は、2002年5月に改訂した「社会保障の給付と負担の見通し」による。�(注2)アメリカには、現役世代を対象とした一般的な公的医療保障制度はない。�(注3)日本の潜在的国民負担率(国民負担率+財政赤字対国民所得比)は、2002年で約47%。�

0

50

社会保障給付費の�国民所得比(%)�

国民負担率(%)�20 30 40 50 60 70 80

45

40

35

30

25

20

10

5

15

日本〔連合ビジョン〕�(2025年)�

アメリカ(1995年)�

イギリス(1996年)�

ドイツ(1996年)�

スウェーデン(1996年)�

フランス(1996年)�

日本〔現行方式〕�(2000年)�

日本〔現行方式〕�(2025年)�

33%�(53%)�

31%�(51%)�

21%�(37%)�

18%�(35%)�

30%�(48%)�

38%�(56%)�41%�(65%)�

46%�(70%)�

【参考データ】「国民負担率」の将来推計�

①2000年度の社会保障負担率(対国民所得比)は14.4%、租税負担率(対国民所得比)が22.5%で、国民負担率(対国民所得比)は36.9%である。�②旧厚生省の推計では、「社会保障以外の支出に関する公費負担の対国民所得比(「租税負担率」)が現在の水準(2割程度)で変化しないものとして」、2025年度の国民負担率を51%程度(社会保障負担率20.5%、租税負担率30.5%)としていた。�③なお、厚生労働省は2025年度の国民医療費を新たに72兆円(従来81兆円)と推計しており、これを前提にすれば、国民負担率は50%程度(社会保障負担率、租税負担率19.5%、30.2%)になる。�④また、国際比較をする場合は、対GDP比が適切であるため、このGDPに対する比率で見れば、38%程度(「社会保障負担率」23%、「租税負担率」15%)となる。�

(注:なお、近年のマイナスの名目経済成長率などを踏まえて、2002年5月に厚生労働省が新たに推計した結果は、2025年で52.5%程度(社会保障負担率32.5%程度:対国民所得比)となっている。)�

 厚生労働省の推計を参考にして、連合「社会保障ビジョン」が描く制度改革を前提に、2025年の国民負担率を推計した結果。��●制度体系� 年金制度は2階建て方式で基礎年金は税方式、高齢者医療は「突き抜け」方式(1人あたり老人医療費は若人の3倍に抑制)、介護は社会保険方式(公費負担1/2、保険料負担は20歳以上)とする。��●推計結果�①2025年の社会保障負担率が16%程度、社会保障給付以外の租税負担率を現行の20%程度とすれば、租税負担率は35%程度(社会保障に係わる租税負担率約15%)となり、合計の国民負担率は、51%程度(対国民所得比)となる。�②国民負担の対GDP比では、2025年で38%程度(「社会保障負担率」23%、「租税負担率」15%)となり、現行制度の場合とほぼ変わらない。�

【参考データ】「国民負担率」の将来推計�

社会保障負担と�「国民負担率」についての将来推計�

 連合ビジョンが描く社会保障の給付と負担水準、及び「国民負担率」の将来推計について、旧厚生省の試算をもとに、各種の前提条件をおいて推計を行った。その結果は、対GDP比で38%程度(対国民所得比51%)と、現行制度を前提とした負担水準とほぼ同じと推計される。�

[現行制度の場合](基礎年金の国庫負担を1/2として推計)� [連合「社会保障ビジョン」の場合]�

社会保障給付費(A)�

基礎年金�

高齢者医療�

介護�

小計(B)�

その他(年金、医療、福祉等)�

対国民所得比(A/E)�

社会保障に係わる負担�

社会保険料負担(C)�

公費負担〔租税負担:D〕�

国�

地方�

国民所得(E:兆円)�

目的消費税額(兆円)�

社会保障負担総額の負担率�

①社会保険料の負担率(C/E)�

(イ)社会保障に係わる租税負担率(D/E)�

(ロ)社会保障給付以外の租税負担率�

②租税負担率〔(イ)+(ロ)〕�

国民負担率(①+②)�

「国民負担」の対GDP比率�

国内総生産(GDP:兆円)�

2000年度�

(政府推計)�

現行制度�

78

14

9

4

27

51

20.5%�

77

55

22

18

5

383

20.1%�

14.4%�

5.7%�

16.8%�

22.5%�

36.9%�

28.3%�

499

2025年度�

(政府推計)�

現行制度�

199

38

37

21

96

103

30.2%�

196

128

68

53

15

660

29.7%�

19.5%�

10.2%�

20%�

30.2%�

50%�

38.1%�

860

2025年度�

(連合推計)�

連合「ビジョン」�

200

46

25

32

103

97

31%�

200

104

96

65

31

645

15

30.9%�

16.1%�

14.9%�

20%�

34.9%�

51%�

38%�

860

社会保障負担と「国民負担率」の将来推計(粗い試算)�

●現行制度は政府見通しをもとに、� 国民医療費は72兆円で試算�

(単位:兆円)� 上段:社会保障給付費の国民所得比(%)�(下段:国民負担率(%)        )�