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SUTタスクフォース・意見取りまとめ(要旨)
平成29年8月24日
国民経済計算体系的整備部会長/SUTタスクフォース座長
宮川 努
本年6月から4回開催されたSUTタスクフォース会合を受け、新しいSUT・産業連関表の整備
に向けた基本的な方針・方向性を、以下の点について整理・取りまとめた上で、本年8月23日の国
民経済計算体系的整備部会に報告・了承された。
Ⅰ.SUT・産業連関表の基本構成の考え方(資料2-2)
(1)基準年SUT・産業連関表の基本構成を早期に固め、基礎統計の調査設計に反映する。
・基準年SUT・産業連関表の基本構成(具体的には、生産物・産業の概念、表章部門の考え方、
部門の改廃ルール、部門数)の大枠を早期に固め、その方針を、経済センサス活動調査、投入
調査、ビジネスサーベイなど基礎統計の調査設計に反映させる。その際には、関連府省の協
力を受けて、産業連関表、関連する基礎統計の実情をしっかり把握し、できるだけ定量的な分
析をベースに検討を行う。
・具体的には、2019年度実施予定の経済センサスの試験調査や、その後着手する投入調査の
調査設計を念頭に、基本構成の大枠を2018年度末までに決定する。
・なお、基本構成の大枠を決定した後も、サービスの生産物分類の策定など並行して検討されて
いる事項や、基礎統計の試験調査等の成果を随時フィードバックする。そのうえで、基本構成を
必要に応じて見直し、基準年SUT・産業連関表の詳細な構成を最終的に決定し、併せて、基準
年SUT・産業連関表の作成方法を固めていく、との逐次的な決定プロセスを踏むこととする。
・基本構成の検討では、最終型である2025年表を念頭に置きつつ、基礎統計の整備状況等を勘
案し、2020年表から段階的に反映する。
(2)基準年SUTと中間年・年次SUTの双方で、同一の定義・概念に基づき各種調査により基礎と
なるデータを適正に収集した上で、適切な加工を行い、両者が整合的となるような作成手法を
用いることができるように、基準年SUTと中間年・年次SUTをできる限りシームレスな設計とする。
・新しいSUT・産業連関表においても、経済センサスや投入調査などが基準年を対象に詳細に
調査されることを踏まえ、基準年を詳細に推計する「ベンチマーク・アプローチ」を、引き続き採
用する。
・もっとも、GDP統計の精度向上には、基準年SUTだけでなく、SNA年次推計の元となる中間
年・年次SUTの精度向上も重要である。そのため、基準年SUTと中間年・年次SUTの双方で、
同一の定義・概念に基づき各種調査により基礎となるデータを適正に収集した上で、適切な加
工を行い、両者が整合的となるような作成手法を用いることができるように、基準年SUTと中間
年・年次SUTをできる限りシームレスな設計とする。具体的には、①基準年SUTと中間年・年
次SUTの作業上の部門構成を近づける(中間年・年次SUTの部門数を増やす)こと、 ②ビジ
ネスサーベイなど年次の基礎統計を強化することが必要である。また、将来的な課題として、基
礎統計の利用に支障がない範囲で基準年SUTの公表時期の早期化を検討する。
資料2-1
2
・この実現に向けて、2018年度の可能な限り早期に、基準年SUTに関し、内閣府からGDP統計
の精度向上に必要となる事項について具体的な要望の提示を行い、それを踏まえ基礎統計や
統計ニーズも含め検討を行い、基準年SUT・産業連関表の基本構成を決定する。同時に、中
間年・年次SUTの基本構成を並行して検討し、2018年度末までに大枠を固めることが必要であ
る。SUTの作成方法についても、同様の対応を行い、基準年SUTと中間年・年次SUTにおけ
る整合性を確保する。
(3)基準年SUT・産業連関表の部門については、部門分類概念の整合性を前提としつつ、産業
構造の変化に加え、(i)公表計数に対するわかりやすい説明、(ii)基礎統計の制約(報告者負
担、調査の制約)などを踏まえ、ユーザーのニーズにも配慮して、適切な改廃を実施する。
・基準年SUT・産業連関表の部門については、部門分類概念の整合性を前提としつつ、サービ
ス化の進展など産業構造の変化に加え、 (i)公表計数に対するわかりやすい説明、(ii)基礎
統計の制約(報告者負担、調査の制約)の観点から、ユーザーのニーズにも配慮して、適切な
改廃を実施する必要がある。
・具体的な部門については、上記の観点を踏まえ、国内生産・需要額の大きさ、産業における生
産技術の類似性、生産物の用途の類似性、産業・生産物の成長性、国際比較可能性について、
一定の客観的ルールを設定して検討を行う。
・調査技術面では、分類や調査単位の見直し、業種別調査票の設計など調査技術の工夫によ
って改善できる余地がある。一方で、調査への協力が得られにくくなっている中、報告者の負担
を抑制する必要性が高まるなど、調査事項等の拡充を行いづらくする要因もある。
・GDP統計の精度向上には、SUT・産業連関表(投入・産出構造)の精緻化だけではなく、統計
の調査対象のカバレッジ拡大など様々な観点からの取り組みが必要である。産業連関表のSU
T体系への移行に際しても、限られた統計リソースの適切な配分を考える必要がある。
Ⅱ.建設・不動産、医療・介護、教育分野等の統計整備(資料2-3)
本年8月におけるとりまとめでは、建設・不動産、医療・介護、教育分野について、産出先内
訳の年次の把握が難しいこと等の現状を踏まえ、以下の項目ごとに、基礎統計に関する「課題」
の整理を行った上で、以下の課題の対応のための統計整備等について、SUTタスクフォース
会合で9月以降、引き続き検討する。
① 生産額のカバレッジ・精度 ⇒ 基準年及び中間年の各年の双方の課題
② 産出先内訳の精度 ⇒ 基準年のみの課題
③ 中間投入構造の精度 ⇒ 基準年のみの課題(重要度の高い部門は中間年の各年も対象)
(建設・不動産)
「住宅建築」「非住宅建築」「不動産仲介・管理業」「不動産賃貸業」において、①生産額のカバ
レッジ・精度に関する課題があると考えられる。特に不動産のマージン等の課題は重要である。
(医 療)
①生産額の精度では、業務統計でカバーされていない保険外診療に課題があると考えられる。
③中間投入構造においては、詳細な投入構造の把握に課題があると考えられる。特に、中間
投入の5割を占める医薬品に係る投入額の精度向上は、GDPの精度向上に重要であり、年次
ベースでの中間投入額の把握が必要と考えられる。
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(社会福祉・介護)
「社会福祉(国公立)」において、基礎統計の不足から、③中間投入構造の精度に関して、課題
があると考えられる。
(教 育)
基礎統計の不足から、③中間投入構造の精度に関して課題があると考えられる。特に、 「学校
教育(国公立)」の統計整備が必要と考えられる。
Ⅲ.議論の過程において明らかになった統計委員会として取り組むべき事項(資料2-4)
SUTタスクフォース会合の審議において、指摘された3つの課題について報告する。
(1)基礎統計の改善
・産業連関表のSUT体系への移行に際し、関連する基礎統計の精度向上が不可欠である。基
準年の基礎統計である経済センサスに加えて、2019年に創設される中間年・年次の基礎統計
であるビジネスサーベイの精度改善の重要性は極めて高い。ビジネスサーベイは、工業統計、
商業統計、サービス産業基本統計〈仮称〉等により構成されるGDP統計の推計等に必要な項
目を産業横断的に把握する統計である。
・国民経済計算体系的整備部会ならびにSUTタスクフォース会合においては、GDPならびに、
基準年SUT・産業連関表、中間年・年次SUTの精度向上の観点から、基礎統計の改善に向け
てさらに取り組みを行う予定であるが、諮問審議を行う各部会においても、同様の観点から基
礎統計の改善に向けた検討をお願いしたい。
・これは、建設・不動産、医療・介護、教育分野(5分野)の統計整備についても同様であり、諮問
審議に加え、統計棚卸し、統計精度の観点からのPDCAスキームなど、あらゆる機会を捉えて、
精度改善への働きかけをお願いしたい。
・また、基礎統計作成府省におかれては、関連統計に関しては、諮問審議にかかる前の事前検
討段階で、統計委員会(国民経済計算体系的整備部会、SUTタスクフォース)への前広な情報
提供をお願いしたい。早い段階からの双方向のコミュニケーションが統計調査の精度向上を通
じて、GDPの精度向上に繋がるものと期待される。
(2)行政記録情報の一層の活用
・SUTタスクフォース会合に参加された有識者からは、欧米各国のSUT推計において、幅広く行
政記録情報を活用して、推計精度を向上させている事例が紹介された。日本においても、法人
番号の通知状況等といった行政記録情報を活用し、事業所母集団DBのカバレッジ拡大を図る
といった進展がみられるが、なお、諸外国と比べて活用が遅れていることは否めない。これが、
基礎データの不足や報告者負担の増大を招く一つの要因である。引き続き、行政記録情報の
活用拡大に向けて、働きかけを続ける必要がある。
(3)リソースの確保
・産業連関表のSUT体系への移行に際しては、関連する基礎統計や産業特性を含めて、その
分野を熟知した経験豊かな専門家が必須である。有能な人材を確保し、見直し業務に従事させ
ることで、長期的な視点で専門家を育成していくことが不可欠である。この点に関して強いメッ
セージを発する必要がある。
SUTタスクフォース・意見取りまとめ(1)
ー SUT・産業連関表の基本構成の考え方 ー
2017年8月24日
国民経済計算体系的整備部会・部会長
SUTタスクフォース座長
宮川 努
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資料2-2
はじめに
• 統計改革推進会議「最終とりまとめ」では、産業連関表の供給・使用表(SUT)体系への移行を実現し、併せて基礎統計の精度向上やカバレッジ拡大を通じて、GDP統計の精度向上を図ることが提示された。SUTタスクフォースは、新しいSUT・産業連関表の「整備方針」の策定を主導し、関係する基礎統計を精査し、統計整備を促進することをマンデートとしている。
• 6月から4回開催されたSUTタスクフォース会合の審議を受け、新しいSUT・産業連関表の整備に向けた基本的な方針・方向性を、以下の4点に整理した。
➀ 基準年SUT・産業連関表の基本構成を早期に固め、基礎統計の調査設計に反映する。
② 基準年SUTと中間年・年次SUTの双方で、同一の定義・概念に基づき各種調査により基礎となるデータを適正に収集した上で、適切な加工を行い、両者が整合的となるような作成手法を用いることができるように、基準年SUTと中間年・年次SUTをできる限りシームレスな設計とする。
③ 基準年SUT・産業連関表の部門については、部門分類概念の整合性を前提としつつ、産業構造の変化に加え、(i)公表計数に対するわかりやすい説明、(ii)基礎統計の制約(報告者負担、調査の制約)などを踏まえ、ユーザーのニーズにも配慮して、適切な改廃を実施する。
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はじめに(続き)
④ 建設・不動産、医療・介護、教育分野については、精度向上を図るため、統計整備の充実を図る。
• 本稿では、以下、上記のうち➀~③の3つの点について、取り上げる。④建設・不動産、医療・介護、教育分野の統計整備については、各分野における個別統計に亘る内容を含み、分量がかさむため、別途作成する資料「SUTタスクフォース・意見取りまとめ(2)」において、整理している。このほか、審議の過程で明らかになった統計委員会として取り組むべき事項を、資料 「SUTタスクフォース・意見取りまとめ(3)」としてまとめている。
• 本稿で整理した基本的な方針・方向性については、必要な部分について、次期「基本計画」に係る答申に盛り込むこととする。また、 9月以降のタスクフォース会合において、基本的な方針・方向性の具体化に向けて、引き続き、審議を行うこととする。
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1.基準年SUT・産業連関表の基本構成を早期に固
め、基礎統計の調査設計に反映する
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(1)基本的な方針・方向性
• 基準年SUT・産業連関表の基本構成(具体的には、生産物・産業の概念、表章部門の考え方、部門の改廃ルール、部門数)の大枠を早期に固め、その方針を、経済センサス活動調査、投入調査、ビジネスサーベイなど基礎統計の調査設計に反映させる。その際には、関連府省の協力を受けて、産業連関表、関連する基礎統計の実情をしっかり把握し、できるだけ定量的な分析をベースに検討を行う。
• 具体的には、2019年度実施予定の経済センサスの試験調査や、その後着手する投入調査の調査設計を念頭に、基本構成の大枠を2018年度末までに決定する。
• なお、基本構成の大枠を決定した後も、サービスの生産物分類の策定など並行して検討されている事項や、基礎統計の試験調査等の成果を随時フィードバックする。そのうえで、基本構成を必要に応じて見直し、基準年SUT・産業連関表の詳細な構成を最終的に決定し、併せて、基準年SUT・産業連関表の作成方法を固めていく、との逐次的な決定プロセスを踏むこととする。
• 基本構成の検討では、最終型である2025年表を念頭に置きつつ、基礎統計の整備状況等を勘案し、2020年表から段階的に反映する。 5
(2)基本的な方針・方向性の考え方と背景①
• ①企業の報告者負担の抑制や、②基礎統計をはじめとした統計関係府省のリソースの制約、③SUT体系への移行スケジュールのタイトさを考慮すると、「基礎統計作成府省に最大限の努力を求め、その結果を受けて、基準年SUT・産業連関表の基本構成を決定する」よりも、「基準年SUT・産業連関表の基本構成を先に決定する」との決定プロセスを採用することが、一連の改革を効率的に進めるには、適切である。
ーー 統計改革推進会議「最終とりまとめ」において、 「官民の統計に関するコス
トを3年間で2割削減」の実施を求められるなか、報告者負担に対してより配慮を行う必要に迫られている。統計調査の充実と、どのようにバランスさせるかが大きな課題である。
-- 各府省では、リソース(予算・人員)の計画的な拡充に努める方針であるが、発射台となる現時点の水準は諸外国に比べかなり少ないことや、リソース(特に専門的人材)の充実には時間を要することを考慮する必要がある。
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(2)基本的な方針・方向性の考え方と背景②
・ SUT体系への移行においては、経済センサス-活動調査や投入調査につ
いて、2021年、2026年に抜本的な改善を段階的に実施することが、精度向上のために不可欠。早めのタイミングで、基準年SUT・産業連関表作成部署と基礎統計作成府省が連携して、調査設計を行う必要がある。また、中間年・年次SUTの基礎統計となるビジネスサーベイ(2019年創設予定)についても、同様である。そのためには、基準年(および中間年・年次)SUTの基本構成の大枠が早期に固まっている必要がある。
• SUT体系への移行では、現在の推計方法を再設計することで、新しいSUT・産業連関表の精度向上を図ることが柱となっている。このため、基本構成の検討に際しては、関連府省からの情報提供を受けて、産業連関表、年次SUT、関連する基礎統計の実情をしっかり把握し、現実を踏まえた精度向上を目指すことが重要である。そのうえで、可能な範囲で定量的な分析を行い、基本構成を検討する。
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2.基準年SUTと中間年・年次SUTの基本構成
をできるかぎりシームレスなものとする
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(1)基本的な方針・方向性
• 新しいSUT・産業連関表においても、経済センサスや投入調査などが基準年を対象に詳細に調査されることを踏まえ、基準年を詳細に推計する「ベンチマーク・アプローチ」を、引き続き採用する。
• もっとも、GDP統計の精度向上には、基準年SUTだけでなく、SNA年次推計の元となる中間年・年次SUTの精度向上も重要である。そのため、基準年SUTと中間年・年次SUTの双方で、同一の定義・概念に基づき各種調査により基礎となるデータを適正に収集した上で、適切な加工を行い、両者が整合的となるような作成手法を用いることができるように、基準年SUTと中間年・年次SUTをできる限りシームレスな設計とする。具体的には、①基準年SUTと中間年・年次SUTの作業上の部門構成を近づける(中間年・年次SUTの部門数を増やす)こと、 ②ビジネス
サーベイなど年次の基礎統計を強化することが必要である。また、将来的な課題として、基礎統計の利用に支障がない範囲で基準年SUTの公表時期の早期化を検討する。
• この実現に向けて、2018年度の可能な限り早期に、基準年SUTに関し、内閣府からGDP統計の精度向上に必要となる事項について具体的な要望の提示を行い、それを踏まえ基礎統計や統計ニーズも含め検討を行い、基準年SUT・産業連関表の基本構成を決定する。同時に、中間年・年次SUTの基本構成を並行して検討し、2018年度末までに大枠を固めることが必要である。SUTの作成方法についても、同様の対応を行い、基準年SUTと中間年・年次SUTにおける整合性を確保する。
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(2)基本的な方針・方向性の考え方と背景①
• 統計改革推進会議「最終取りまとめ」では、生産面を中心に見直したGDP統計への整備を重視している。現行SNAにおける年次の生産面推計では、基準年の産業連関表の情報を用いて、中間年の中間投入構造を推計している部門が存在するほか、年次SUTの産業部門数(推計用ベース)が約100と諸外国の年次SUTの産業部門数と比べて粗くなっている。
ーー 年次SUT作成に用いている、産業連関表付帯表である産業別商品産出表(V表)の産業部門数は125にとどまっており、年次SUTの詳細化の制約となっている。
• 基準年SUTに加え、中間年・年次SUTの精度向上を図るため、基準年SUTと中間年・年次SUTが、同一の定義・概念に基づき各種調査により基礎となるデータを適正に収集した上で、適切な加工を行い注、両者が整合的となるような作成手法を用いて作成できるように、基準年と中間年・年次SUTの基本構成をできる限りシームレスな設計とする。そのために、基準年SUTと中間年・年次SUTの作業上の部門構成を近づける(中間年・年次SUTの部門数を増やす)。
注:基礎データやそれを直接利用して表作成をする段階で副次的生産活動の調整を無理に行わない等。10
(2)基本的な方針・方向性の考え方と背景②
• 中間年・年次SUTの精度向上のためには、中間年・年次SUTの基礎統計の充実も極めて重要である。現状、年次の基礎統計には、様々な制約があり、基準年SUTと同等の精度を確保するのは難しい。中間年・年次SUTの精度向上のためには、2019年に創設されるビジネスサーベイにおいて、その円滑な立ち上がりに配慮しつつ、基準年における基礎統計との差異を縮めていく必要がある。
• こうした一連の対応を図ることで、中間年・年次SUTの強化を図り、事業所母集団DBやビジネスサーベイの充実など、統計調査の改善の成果を、迅速にGDP統計の精度向上に反映することを目指すべきである。
• 基準年SUTについて、GDP統計の精度向上の観点から具体的な要望の提示を内閣府が行う。また、中間年・年次SUTの基本構成や作成方法の検討・開発において、内閣府が主導的な役割を果たすことが不可欠である。
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3.基準年SUT・産業連関表の部門につい
ては、適切な改廃を実施する
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(1)基本的な方針・方向性
• 基準年SUT・産業連関表の部門については、部門分類概念の整合性を前提としつつ、サービス化の進展など産業構造の変化に加え、 (i)公表計数に対するわかりやすい説明、
(ii)基礎統計の制約(報告者負担、調査の制約)の観点から、ユーザーのニーズにも配慮して、適切な改廃を実施する必要がある。
• 具体的な部門については、上記の観点を踏まえ、国内生産・需要額の大きさ、産業における生産技術の類似性、生産物の用途の類似性、産業・生産物の成長性、国際比較可能性について、一定の客観的ルールを設定して検討を行う。
• 調査技術面では、分類や調査単位の見直し、業種別調査票の設計など調査技術の工夫によって改善できる余地がある。一方で、調査への協力が得られにくくなっている中、報告者の負担を抑制する必要性が高まるなど、調査事項等の拡充を行いづらくする要因もある。
• GDP統計の精度向上には、SUT・産業連関表(投入・産出構造)の精緻化だけではなく、統計の調査対象のカバレッジ拡大など様々な観点からの取り組みが必要である。産業連関表のSUT体系への移行に際しても、限られた統計リソースの適切な配分を考える必要がある。
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(2)基本的な方針・方向性の考え方と背景①
• サービス化の進展など産業構造の変化に対応するため、サービス業の捕捉に力を入れる必要がある。
• 統計調査を実施するに際して、統計調査の分類が粗すぎると、GDP統計の精度向上を図るための、部門別の投入・産出・需要構造の安定性の確保が困難になる。一方、細かすぎると、報告者負担が重くなり、無回答や誤りが増え、正確さが達成されないリスクがある。この釣り合いを考え、生産物や産業の部門を適切な細かさにして、GDP統計の精度向上を図ることが重要である。
• 具体的な部門構成や部門数の設定においては、国内生産・需要額の大きさ、産業における生産技術の類似性、生産物の用途の類似性、産業・生産物の成長性、国際比較可能性の観点から、定量的な分析を行いつつ、検討を行うことが必要である。
• 調査技術面では、生産物分類の整備、産業分類の見直し、記入しやすい調査単位への見直し・業種別調査票・プレプリントの導入などの検討が必要である。一方で、こうした改善には、業種別調査票を設計・審査を行う人材の確保・育成、プレプリントのための正確な情報の入手、円滑な調査協力に資する企業との関係構築が必要であること、調査設計によっては報告者負担の増加を招くリスクがあることに留意する必要がある。
• GDP統計の精度向上には、統計の調査対象のカバレッジ拡大と投入・産出の精緻化をバランスよく図っていくことが大切である。
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(2)基本的な方針・方向性の考え方と背景②
• 報告者負担の抑制の観点では、サービスを中心とする詳細な生産物分類の策定、副業による生産物の捕捉、投入調査の精緻化など、SUT体系移行に伴う詳細な「実測データ」へのニーズ増大が、先行きの負担増加の懸念材料である。また、部門数の6割を占める製造業では、現行の産業連関表における投入額推計で、実測データに基づいていない推計事例も一定程度みられる。基礎統計に関する影響については、関係府省からの実情報告を含め、今後、さらに検討を行う。
• GDP統計の精度向上は、様々な観点から取り組む必要があるが、特に、統計のカバレッジ拡大については、ローリング調査やプロファイリング調査を通じた事業所母集団DBの充実、さらに経済センサス等各種統計調査の回収率向上などが必要であり、そのためには一定のリソースが必要である。
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SUTタスクフォース・意見取りまとめ(2)
ー建設・不動産、医療・介護、教育分野等の統計整備ー
2017年8月24日
国民経済計算体系的整備部会・部会長
SUTタスクフォース座長
宮川 努
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資料2-3
1. 5分野等の統計整備に関する考え方
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(1)はじめに• 第1回タスクフォース会合において、8月におけるとりまとめでは、建設・不動産、医療・介護、教育分野(以下「5分野」と表記)の統計整備に係る課題の共有化を図ることとされている。
• 今回は、前回までの議論を踏まえ、課題の案を提示。産出先内訳の年次の把握が難しいことなどの現状を踏まえ、以下の項目ごとに、基礎統計に関する「課題」の整理を行った。
• 9月以降、これらの課題の対応のための統計整備を審議することとしたい。
① 生産額のカバレッジ・精度
⇒ 基準年及び中間年の各年の双方の課題
② 産出先内訳の精度
⇒ 基準年のみの課題
③ 中間投入構造の精度
⇒ 基準年のみの課題(重要度の高い部門は中間年の各年も対象) 3
(2)課題の概要①
(建設・不動産)
• 「住宅建築」「非住宅建築」「不動産仲介・管理業」「不動産賃貸業」において、①生産
額のカバレッジ・精度に関する課題があると考えられる。特に不動産のマージン等の課
題は重要である。
(医 療)
• ①生産額の精度では、業務統計でカバーされていない保険外診療に課題があると考
えられる。
• ③中間投入構造においては、詳細な投入構造の把握に課題があると考えられる。特
に、中間投入の5割を占める医薬品に係る投入額の精度向上は、GDPの精度向上に
重要であり、年次ベースでの中間投入額の把握が必要と考えられる。4
以下の課題の対応のための統計整備について、タスクフォースで引き続き検討する。
(3)課題の概要②
(社会福祉・介護)
• 「社会福祉(国公立)」において、基礎統計の不足から、③中間投入構造の精度に関して、課題があると考えられる。
(教 育)
• 基礎統計の不足から、③中間投入構造の精度に関して課題があると考えられる。特に、 「学校教育(国公立)」の統計整備が必要と考えられる。
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(3)課題の概要③経済センサス・ビジネスサーベイとの関係
• タスクフォースでは、「5分野についても、他の分野と同様に経済センサスやビジネス
サーベイの拡充で対応すべきではないか」との意見をいただいた。
• これらの分野は、国土交通省、厚生労働省、文部科学省が所管する既存統計の整備
を優先した上で、対応が難しい場合には、「経済センサス」「ビジネスサーベイ」「産業連
関構造調査(投入調査)」の整備・拡充を検討することが考えられる。
• ただし、内閣府から要望があった年次の費用項目の調査充実については、多くのケー
スで既存統計ではカバーするのは困難と考えられることから、サービス産業基本統計<
仮称>における対応を検討することも考えられる。その際には、同統計の円滑な実施
(2019年創設)、既存統計との調査事項の重複排除などの報告者負担、実査可能性に
配慮する必要がある。
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建設・不動産、医療・介護、教育分野の概要
分 野 含まれる基本分類(列部門) 中間投入額 付加価値額 国内生産額
建 設住宅建築(木造、非木造)、非住宅建築(木造、非木造)、建設補修、公共事業関連5部門
28.8兆円 23.7兆円 52.5兆円
不動産不動産仲介・管理業、不動産賃貸業、住宅賃貸料、帰属家賃
13.8兆円 57.4兆円 71.2兆円
医 療入院医療、入院外医療、歯科医療、調剤、その他の医療サービス
19.5兆円 23.2兆円 42.8兆円
社会福祉・介護社会福祉(国公立、非営利、産業)、介護(施設サービス、施設サービスを除く)
3.8兆円 10.3兆円 14.1兆円
教 育学校教育(国公立、私立)、社会教育(国公立、非営利)、その他の教育訓練機関(国公立、産業)
3.8兆円 18.9兆円 22.7兆円
合 計 69.7兆円 133.6兆円 203.2兆円
7(注)中間投入額、付加価値額、国内生産額は、「2011年産業連関表」の値。
2. 各分野における統計整備の課題
(1)建設 (2)不動産 (3)医療
(4)社会福祉・介護 (5)教育
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本節は、9月以降のタスクフォースにおける統計整備に係る審議のたたき台として、座長の指示により、統計委員会担当室において整理したもの。
(1)建 設(課 題) 生産額と産出先内訳に課題
生産額
① 「住宅建築」「非住宅建築」の推計に用いる「建築着工統計」の工事費予定額により推計される工事実施額、工事費予定額を着工ベースから出来高ベースへの変換に用いる建築工事の進捗パターン、各々の精度に課題があると考えられる。
② 「建設補修」の推計に用いる「建設工事施工統計」のカバレッジや精度に課題があると考えられる。
産出先内訳
③ 「建設補修」では、固定資本形成に計上すべき投資分が、現行は中間投入に計上されている。
(見直しの方向性)
① 「建築着工統計」の工事費予定額により推計される工事実施額については、「補正調査」の見直しにより、精度向上を図る方針。工事の進捗率パターンについては、早期に「建設工事進捗率調査」を実施し、見直しを図る方向で検討する。このような見直し結果を、できるだけ早期に出来高ベースの統計(「建設総合統計」)に反映させることが必要である。また、進捗パターンを機動的に見直すために「補正調査」の活用も検討する。
②③ 2016年度実施の「建築物リフォーム・リニューアル調査」見直しの成果を、「2015年産業連関表」に反映し、建設補修の精度向上を図る。 「建設工事施工統計」についても、精度向上に向けた見直しを検討する(「見直しの方向性」①②③のうち、下線部分は、国民経済計算体系的整備部会で議論)
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建設:見直しの方向性
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(1) 建築物リフォーム・リニューアル調査の見直し (2016年度の調査結果:受注高) 単位:兆円
計 住宅 非住宅
計 15.7 5.6 10.1
増築、一部改築
建築工事届あり 0.7 0.1 0.6
建築工事届なし 0.4 0.2 0.2
建築工事届不明 0.2 0.0 0.1
改装・改修 12.3 4.5 7.7
維持・修理 2.2 0.7 1.5
(出所)国土交通省・国民経済計算体系的整備部会提出資料(2017年3月10日)、建築物リフォーム・リニューアル調査
(2)不動産(課 題) 生産額に課題
① 「不動産仲介・管理業」において、非住宅に関する仲介手数料と中古住宅・非住宅の買取再販事業における売買マージンが、現行「産業連関表」では計上されていない。
② 「不動産仲介・管理業」における分譲住宅の販売マージン(販売手数料)および「不動産賃貸業」における非住宅不動産の賃料収入の推計精度に課題がある。
(見直しの方向性)
① 非住宅の売買取引の仲介手数料については、登記情報等から得られる不動産取引件数や価格情報に関するデータなどを用いた推計を検討し、可能な部分については「2015年産業連関表」における反映を目指してはどうか。
② 分譲住宅の販売マージンについては、 「産業連関構造調査(不動産投入調査)」や企業決算データの活
用、非住宅不動産の賃料収入については、よりカバレッジが広い「法人土地・建物基本調査」(賃貸面積比率、空室率等)などの活用、によって、精度向上を図ることを検討することが望ましい。
• なお、上記の既存データによる対応が難しい場合には、「経済センサス」での調査項目の追加(仲介手数料収入、売買・販売マージン)なども、検討の視野に入れてはどうか。
• また、上記➀、②については、中間年の生産額推計が困難となる可能性がある。その際には、「ビジネスサーベイ」での調査項目の追加などを検討する。 11
不動産の課題:カバレッジと推計精度
不動産管理 不動産賃貸
住宅 ○ ○
非住宅 ○ △⇒④
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不動産仲介 不動産売買賃貸取引 売買取引
住 宅新 築
○○ △⇒③
中 古 ○ ×⇒②
非住宅 ○ ×⇒➀ ×⇒②
宅地 - ○ -
宅地以外の土地 - × -
(1)不動産仲介・売買(「不動産仲介・管理業」に含まれる)
(2)不動産管理・賃貸(「不動産仲介・管理」「不動産賃貸業」「住宅賃貸料」に含まれる)
×⇒現行推計では未計上 △⇒推計精度に課題あり
• 不動産証券化の拡大に伴い、不動産会社から証券化ビークルへの不動産売却額が増加⇒ 非住宅(オフィス、商業施設、倉庫等)・住宅の売買取引
(左表で×の部分)に影響を与えている可能性がある。
• この結果、不動産の生産活動において、売買取引マージンが、徐々に重要になってきている。
(出所)国土交通省「不動産証券化の実態調査」
不動産:推計方法の見直し:考えうる選択肢
➀ 非住宅の売買取引の仲介手数料収入
<推計方法> (生産額)=(非住宅売買取引件数)×(取引価格)×(仲介手数料率)
• 「非住宅取引件数」⇒「登記移転情報」 「取引価格」⇒「不動産取引価格情報」などの活用。
② 中古住宅・非住宅の買取再販事業における売買マージン
<推計方法> 未定
• 対象事業に特化した取引件数、および売買マージン率を捕捉する方法について検討する。
③ 住宅の新築住宅の売買(分譲販売)マージン
<推計方法> (生産額)=(新築住宅分譲戸数)×(分譲販売価格)×(分譲販売マージン率)
• 「分譲販売マージン率」⇒現行は仲介手数料率のみ推計。 「産業連関構造調査(不動産投入調査)」や企業決算データ等を用いて、分譲事業者の販売マージン率の推計についても検討してはどうか。
④ 非住宅の不動産賃貸収入
<推計方法> (生産額)=(非住宅建物床面積)×(賃貸面積比率)×(平均賃料)×(1-空室率)
• 「賃貸面積比率」「空室率」⇒現行は民間データからの推計。カバレッジがより広い「法人土地・建物基本調査」のデータを活用してはどうか。 「平均賃料」⇒よりカバレッジの広い代替データ(推計も含めて)を検討してはどうか。
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(1) カバレッジの拡大
(2) 生産額推計の精度向上
(3)医 療(課 題)生産額と中間投入構造に課題 生産額
① 基準年については「経済センサス - 活動調査」で捕捉している保険外診療は、一部の公立病院分がカバーされておらず、推計精度に課題がある。
② 中間年については、現状、保険外診療を捕捉する適切な統計は存在しない。
中間投入構造
③ 「医療経済実態調査(医療機関等調査)」 「病院経営実態調査」とも、費用項目の区分が粗く、詳細な投入構造の把握は困難。特に中間投入に占めるウエイトが大きい医薬品の精度確保が重要であり、GDPの精度向上のためには、年次ベースでの中間投入額の把握が必要である。
④ 「入院医療」「入院外医療」における詳細な投入内訳の推計精度に課題がある。
(見直しの方向性)
①② 2年ごとに実施されている「医療経済実態調査(医療機関等調査) 」は、国公立病院をカバーするなど
カバレッジ面で優れていることから、基準年のみならず中間年推計における利活用に向けて、利用できない年次の補完について検討する。これを踏まえて、回収率の状況等も含めて、多角的に検証を進める。併せて、必要に応じて年次統計の整備等について検討を行う。
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(3)医 療(続き)③ ①における「医療経済実態調査(医療機関等調査) 」の利活用に向けた検証及び内閣府から示された年
次推計における医療分野の課題を踏まえ、当該調査の目的との整合性や調査項目が増えることによる回答率への影響を踏まえつつ、 「医療経済実態調査(医療機関等調査) 」「産業連関構造調査(投入調査)」「ビジネスサーベイ」における調査項目見直しや拡充について検討する。
④ 病院・診療所は入院と入院外に区分したデータを保有しておらず、現在の部門分類に対応する投入調査は困難である。このため、推計精度の確保の観点から、当面の対応としてレセプトデータ(「社会医療診療行為別統計」)などを活用した費用項目の推計見直しについて検討を進めるとともに、SUT体系への移行後における実測可能性のある部門分類の設定や、それに対応した費用項目の調査のあり方についても検討を行う。
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医療の生産額
保険診療分 保険外診療分
生産額の基礎統計および推計方法
「国民医療費」
「医療費の動向(概算医療費デー
タベース)」
「経済センサス」から推計
基準年 ○ ○
中間年 ○△
(基礎統計が不十分)
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医療5部門国内生産額
うち保険診療分
うち
保険外診療分
2000年 33.4兆円 30.3兆円 3.2兆円
2005年36.4兆円(+ 8.9%)
32.9兆円(+ 8.6%)
3.6兆円(+12.5%)
2011年42.8兆円(+17.4%)
38.3兆円(+16.6%)
4.5兆円(+24.5%)
(注)保険診療分は、年度ベースの国民医療費を暦年換算したもの。保
険外診療分は、国内生産額から保険診療分を控除したもの。 カッコ内は、各々2005年の2000年対比、2011年の2005年対比の増加率である。
(1) 医療(保険診療分、保険外診療分)の生産額の推移 (2) 医療の生産額の推計方法
• 医療5部門の国内生産額の伸び率は、全体の国内生産額(2000年:950兆円→2005年:967兆円<+1.8%>→2011年:930兆円<▲3.8%>)対比高くなっている。特に保険外診療分の伸びは高い。基準年における保険外診療分の生産額の精度向上(国公立病院の取り込み)を図る、中間年における保険外診療分の生産額を捕捉する、各々のニーズは次第に高まってきている。基礎統計において、対応を検討することが望まれる。
医療の中間投入構造(1)
資料名 対象年 名称 金 額
産業連関表 2011年 医薬品 9.72兆円
中医協・薬価専門部会提出資料
(2016年8月24日)2011年度
薬剤費(包括分除く)
8.44兆円
塩崎臨時委員・経済財政諮問会議提出資料(2014年10月21日)
2011年度
薬剤費(包括分含む)
9.29兆円
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中間投入額 構成比
1 医薬品 9.7兆円 49.7%
2その他の対事業所サービス
1.7兆円 8.4%
3 医療 1.3兆円 6.8%
4 業務用機械 0.7兆円 3.4%
5 保健衛生 0.5兆円 2.3%
6洗濯・理容・美容・浴場業
0.4兆円 2.2%
7 物品賃貸サービス 0.3兆円 1.7%
8 情報サービス 0.3兆円 1.4%
中間投入合計 19.5兆円 100.0%
(2)各種資料による医薬品投入額・薬剤費の比較
(1)「2011年産業連関表」による中間投入構造
比較対象年次:2011年 入院 入院外 調剤
産業連関表:医薬品費/国内生産額 15.8% 16.5% 70.6%
社会医療診療行為別調査:薬剤料比率 10.2% 34.3% 73.7%
同:薬剤料比率(うち投薬分) 2.8% 26.2% ー
(3)各種資料による医薬品投入比率(入院、入院外、調剤)の比較
• 医療の中間投入のうち約5割が医薬品である。
• 医薬品の投入額・投入比率は、資料によってばらつきがある。入院・入院外に区分すると、さらにかい離は拡大。推計精度に課題があることを示唆。
(出所)厚生労働省「平成23年社会医療診療行為別調査結果の概況」(注)購入者価格ベース、分類は統合中分類(108部門)
医療の中間投入構造(2)
医療経済実態調査 介護経営概況調査
給与費 4項目 5項目
医薬品費 1項目 1項目
給食材料費 1項目 1項目
診療材料費・医療消耗器具備品費
1項目 1項目
その他の材料費 × 1項目
委託費 1項目 7項目
経費 1項目 11項目
賃借料・修繕費 4項目 5項目
減価償却費 2項目 5項目
その他とも計 16項目 40項目18(出所)有識者議員・経済財政諮問会議提出資料(2016年11月25日)
• 医薬品は急速に価格が下落する一方で、中間投入額は増加を続けている(実質ベースでは大幅に増加)。2年ごとの薬価改定の影響から、中間投入額も改定年は横ばい、非改定年は増加するなど変化率の振れは大きい。精度向上には、中間年・年次においても、医薬品について中間投入に係る情報を捕捉する必要。
(「医療経済実態調査」と「介護経営概況調査」との比較)
• 「介護経営概況調査」では、委託費(派遣、給食委託、送迎、清掃委託など)や経費(光熱水費、消耗品費、通信費など)において、詳細な調査を行っている。「医療経済実態調査」においても、同様の調査項目の詳細化に向けた検討が望まれる。
(4)社会福祉・介護(課 題)中間投入構造に課題
中間投入構造
① 社会福祉(国公立)では、費用項目のデータが入手できないことから、社会福祉(非営利)に対する「産
業連関構造調査(投入調査)」で代用して推計している。
② 介護については、従来、基礎データが不足していたが、このほど、「介護事業経営実態調査」(3年ごと
実施)に加え、「介護事業経営概況調査」(3年ごとに実施し、残る2年分の計数を把握)の見直しを実施し
たことから、「2015年産業連関表」の推計では、投入構造についてより詳細な把握が可能となる見込み。
(見直しの方向性)
① 社会福祉(国公立)についても社会福祉(非営利)と同程度の細かさで費用構造を把握できるよう、行政
記録情報のさらなる活用の可能性を検証するとともに、報告者自身の計数把握状況や負担等に配意しつ
つ、社会福祉(国公立)への投入調査の新規実施を検討する。
② 「介護事業経営概況調査」を用いて、「2015年産業連関表」の推計を行い、その精度を検証する。さら
に、中間年推計における利活用に向けて、利用できない年次の補完について検討する。これを踏まえて、
回収率の状況等も含めて、多角的に検証を進める。併せて、必要に応じて年次統計の整備等について
検討を行う。19
介護事業経営実態調査・介護事業経営概況調査の概要
20(出所)厚生労働省ホームページ
• 「介護事業経営実態調査」「介護事業経営概況調査」は、サービス供給者種類別に費用項目を詳細に調査している(いずれも標本調査:抽出率に違いがある)。
• 回答負担が重いこともあって、有効回答率は47~48%と低くなっている。費用項目の調査結果が、「2015年産業連関表」の投入構造の基礎データとして利用可能かどうか、精度面の検証が必要である。
(5)教 育(課 題)中間投入構造に課題
中間投入構造
① 費用総額は適切に捕捉されているが、費用の詳細な内訳は十分には把握できていない。特に、学校教育の大半を占める公立学校に対する「地方教育費調査」では、人件費、教育活動費、管理費(修繕費、その他)、補助活動費、資本的支出(土地、建築費、設備・備品費、図書購入費)との粗い項目区分にとどまっており、「産業連関表」における投入品目との対応付けが困難である。
-- 「地方教育費調査」において、対応付けが可能なのは、修繕費⇒建設補修、図書購入費⇒新聞・出版、程度にとどまり、例えば光熱費も把握不可能。このため、「2011年産業連関表」では、学校教育(国公立)の中間投入額の14%が分類不明に配分されている。
(見直しの方向性)
① 私立学校は、学校会計規則で詳細な決算データの作成を義務付けられているほか、国立学校では、「学校基本調査」により、ある程度詳細な項目の調査が実施されている。 「地方教育費調査」においても、
教育委員会の報告者負担に配慮しつつ、調査項目の拡充を検討するのが望ましい。その際には、調査対象サンプルを限定した特別調査(産業連関構造調査<投入調査>等)の実施も選択肢となりうる。
ーー 光熱費や石油消費量については、「エネルギー消費統計調査」(資源エネルギー庁)の活用も可能。
ーー いずれも困難な場合には、国立学校や私立学校のデータを用いた代替推計の採用が考えられる。21
学校教育の基礎統計:費用に関する調査項目の比較
対象となる学校
公立学校国公立大学・国立学校
私立学校私立学校の個別決算
学校法人「学習院」(2016年度)
基礎統計の名称 地方教育費調査 学校基本調査 今日の私学財政 決算開示項目 構成比
人件費 ○ ○ ○ ○ ー
中間投入
項目
業務委託費 × × × ○ 28%
消耗品費 × ○ ○ ○ 20%
修繕費 ○ ○ ○ ○ 16%
光熱水費 × ○ ○ ○ 8%
通信運搬費 × × × ○ 6%
旅費交通費 × ○ ○ ○ 4%
図書購入費 ○ ○ ○ ○ 4%
賃借費 × × × ○ 2%
印刷製本費 × × ○ × n.a.22
(注)学校法人「学習院」の列における構成比は、決算の「事業活動支出」のうち、中間投入としてカウントされる支出(54億円)に対する構成比である。
• 「地方教育費調査」等で、学校法人「学習院」の決算並みの調査が実施されれば、中間投入額の相当部分をカバーできる公算。ただし、精度向上には、ウエイトの大きい業務委託費(清掃、警備、建物・設備管理、労働者派遣等を含む)や消耗品費(紙、文房具、トナーなど)について、さらに内訳を細分化して把握する必要がある。
SUTタスクフォース・意見取りまとめ(3)
ー 議論の過程において明らかになった
統計委員会として取り組むべき事項 ー
2017年8月24日
国民経済計算体系的整備部会・部会長
SUTタスクフォース座長
宮川 努
1
資料2-4
• SUTタスクフォースの審議において、指摘された3つの課題について報告する。
(1)基礎統計の改善
• 産業連関表のSUT体系への移行に際し、関連する基礎統計の精度向上が不可欠である。基準年の基礎統計である経済センサスに加えて、2019年に創設される中間年・年次の基礎統計であるビジネスサーベイの精度改善の重要性は極めて高い。ビジネスサーベイは、工業統計、商業統計、サービス産業基本統計〈仮称〉等により構成されるGDP統計の推計等に必要な項目を産業横断的に把握する統計である。
• 国民経済計算体系的整備部会ならびにSUTタスクフォースにおいては、GDPならびに、基準年SUT・産業連関表、中間年・年次SUTの精度向上の観点から、基礎統計の改善に向けてさらに取り組みを行う予定であるが、諮問審議を行う各部会においても、同様の観点から基礎統計の改善に向けた検討をお願いしたい。
• これは、建設・不動産、医療・介護、教育分野(5分野)の統計整備についても同様であり、諮問審議に加え、統計棚卸し、統計精度の観点からのPDCAスキームなど、あらゆる機会を捉えて、精度改善への働きかけをお願いしたい。
2
• また、基礎統計作成府省におかれては、関連統計に関しては、諮問審議にかかる前の事前検討段階で、統計委員会(国民経済計算体系的整備部会、SUTタスクフォース)への前広な情報提供をお願いしたい。早い段階からの双方向のコミュニケーションが統計調査の精度向上を通じて、GDPの精度向上に繋がるものと期待される。
(2)行政記録情報の一層の活用
• タスクフォース会合に参加された有識者からは、欧米各国のSUT推計において、幅広く行政記録情報を活用して、推計精度を向上させている事例が紹介された。日本においても、法人番号の通知状況等といった行政記録情報を活用し、事業所母集団DBのカバレッジ拡大を図るといった進展がみられるが、なお、諸外国と比べて活用が遅れていることは否めない。これが、基礎データの不足や報告者負担の増大を招く一つの要因である。引き続き、行政記録情報の活用拡大に向けて、働きかけを続ける必要がある。
(3)リソースの確保
• 産業連関表のSUT体系への移行に際しては、関連する基礎統計や産業特性を含めて、その分野を熟知した経験豊かな専門家が必須である。有能な人材を確保し、見直し業務に従事させることで、長期的な視点で専門家を育成していくことが不可欠である。この点に関して強いメッセージを発する必要がある。
3
出典:総務省ホームページ
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/toukei/kaigi/02shingi05_02000150.html
http://www.soumu.go.jp/main_content/000504205.pdf
http://www.soumu.go.jp/main_content/000504206.pdf
http://www.soumu.go.jp/main_content/000504207.pdf
http://www.soumu.go.jp/main_content/000504209.pdf