title 誘電摩擦理論による電解質溶液の輸送性質の研...

148
Title 誘電摩擦理論による電解質溶液の輸送性質の研究( Dissertation_全文 ) Author(s) 伊吹, 和泰 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 1989-03-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k4183 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

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Title 誘電摩擦理論による電解質溶液の輸送性質の研究(Dissertation_全文 )

Author(s) 伊吹, 和泰

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 1989-03-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k4183

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

一文一

44--w川

G一一大

一一↓尽

学位申請論文

伊吹和泰

主 論 文

誘電摩擦理論 による電解質溶液の輸送性質の研究

伊 吹 和 泰

1988,12,

1

目 次

■⊥

2

L

20

&

1、

2、

40

L

2、

2、

2,・

31

3、

31

30

31

3

-0

21

&

4、

41

4

5

11

&

51

6

緒 論

電解質溶液の輸送係数

極限モル電気伝導度

イオンの回転相関時間

粘度B係 数

誘電摩擦理論の展開

Navier-Stokes方 程 式

Navier-Stokes方 程 式 に よ る 摩 擦 係 数 の 計 算

Stokes-Einsteinの 関 係

電 解 質 系 に 於 るStokes-Einsteinの 関 係

初 期 の 誘 電 摩 擦 理 論(Boyd-Zwanzig理 論)

溶 媒 の 速 度 場 の 取 り 込 み(Zwanzig,Clarkの 理 論)

Hubbard-Onsager方 程 式

Hubbard-Onsager方 程 式 によ る摩 擦係数 の計 算

並 進摩 擦 係数

回転摩 擦 係 数

粘 度B係 数

Hubbard-Onsager方 程 式 に基 づ く誘電 摩 擦理 論 の テ ス ト

電 気伝 導度

回転相 関 時 間

粘 度B係 数

結 論

1.異 方 的 な誘 電体 中で の電気 的応 力 テ ンソル

2.一 様 流 中の イオ ンの周 りの速 度場 にっ いて の旺ubbard-Onsager方 程 式 の解

と並 進摩 擦 係数 の 数値 計算

3.二 っ の誘 電 緩和 時 間 を持っ系 に対 す る旺ubbard-Onsager理 論 の拡張

参考文 献

謝 辞

計 算 に使 用 した物性 値 及 び その 出典

一2

1.緒 論

物 理 化 学 に於 る電 解 質溶 液 論 の重要 性 にっ いて は、今 さ らこ こで繰 り返 す必 要 はな

い 。van'tHoff、Arrhenius、Ostwaldと い った 巨人 た ちの研 究 に よ って 、物 理 化学 と

い う学 問 そ の ものの 誕生 に も大 き く寄与 した分 野 で あ る 。これか らここで問 題 にす る

輸送 性質 の分 野で は 、Kohlrauschに よる電 気伝導度 の実験 的研究が と くに有名 で あ る。

彼 の名 の も とに呼 ば れ る希薄 溶 液 の電 気伝 導度 の濃 度 依存 性の 法則 は、活 量 係数 の濃

度依 存 性 の問題 と並 ん で、今 世紀 初 頭 に於 け る理 論 的 な興味 の 中心 的対 象 で あ った 。

連続 体 モ デルを 用 いて イオ ン=イ オ ン間 の静 電 的相 互作 用を 考慮 し、その 問題 を 一挙

に解 決 したのが 一Debye-HU'ckeユ 理 論[1】 、及 び そ れ に基 づ くOnsagerの 伝 導度 理 論[2」

で あ る 。これ らの 理論 は、実 験 と定量 的 に見事な 一致 を 示 し、現 在 に於 て もな お その

重 要 性 を失 ってい な い 。分 子 論的 な裏 付 けを 欠 いて い た とは い え、 この理 論が 希薄 溶

液 の イ オ ン=イ オ ン相 互作 用 の問 題を 解決 したとい っ て も過 言で はな い だ ろ う 。そ の

後 、 これ らの法 則 はMayer[3】 、R6sib。is【4】 を始 め とす る人 々に よ って分 子 論 的 に さ

らに詳 し く研 究 さ れ た 。そ して 、あ とには二 っの 大 きな問題 が残 され た 。パ ラ メー タ

として残 されて い るQca送 係 数 の無 限希釈 量 を理 論的 に計 算 す る こ とと、O濃厚 溶 液の 性

質 を説 明 す る こ とで あ る。後 者 の 問題 にっ い ては 、 まだ まだ模索 の 段階 で あ る 。本 研

究 で は前者 の問 題 を取 り扱 うが 、 これ は イオ ン=溶 媒 相 互作用 の解 明 とい う根 本的 な

問題 で あ るにもか か わ らず 、現 状 は定量 的 な理解 か らは程遠 い。 当然 、分子 論 的 に輸

送係 数 を計 算す る こ とが 、最 終 的な 目標 と して設 定 され るべ きで あ るが 、 その 前段階

と しての連 続体 モ デ ル に も未 だ不 十分な 点が ある 。そ とで 、現 在 最 も進 ん だ連 続体 モ

デル に よって無 限希 釈 の輸 送 係数 を計算 し、モデ ル の妥 当性 と限 界 とを 明 らか にす る

のが 本研 究 の 目的 で あ る。

連続 体 モ デル とは 、溶質 を 一定 の形 を 持 っ た剛体 とみ な し、溶 媒 は 、分 子 の集 団 で

あ るこ とを全 く忘 れ 、構造 の な い連続 体 とみ な して取 り扱 うモデ ル であ る。そ の中 で

も 、溶質 を剛 体球 とみ な すの がSphere-in-c。ntinUUmモ デ ル で 、溶液 化 学 にお け る最

も簡 単 な モデ ル とい え よ う。 この モ デル の適応 範 囲 は非常 に広 く、 イオ ンの 水和 のエ

ネ ルギ ー な どの静 的 な 問題 か ら、拡散 係数 や粘度 の よ うな動 的性 質 、更 に は化学 反応

に まで及 ぶ 。この モ デ ルの利 点 は何 よ りも まつそ の簡単 さ にあ る 。そ して一旦 このモ

デ ル の立 場 に立 っ て し ま うと、 巨視 的 な方 程 式(例 えば 、流 体 力学 のNavier-St。kes

方 程 式)に 従 って任 意 性 な く計 算 を進 め てい くこ とが 出来 る。勿 論 、 このモ デ ルは現

実の 不 当な 簡単化 に基 づい て お り、本 来 は溶質 分子 の サ イズ と質 量 とが溶 媒 分子 に比

一3

べ て 非常 に大 きい極 限で のみ 妥 当で あ る 。 しか し、溶 媒 と溶 質 とが 同程度 の サ イズの

場合 に適 用 して も、 あ まり現 実 か らはか け離 れて いな い結 果 を予 言 す る。 これ らの理

由か ら、現 在 で も連続 体 モ デル は広 く利 用 され てい る 。我 々が これ か ら考 え る電解 質

溶液 の動 的挙動 にっ い ては 、溶液 中の イオ ンの比較 的 ゆ っ くり した運 動を取 り扱 うの

で 、現 在 で も多 くの場 合 には線 形 化 したNavier-Stokes方 程 式 に基 づ く連続 体 モ デ ル

が使 用 され てい る 。 しか し、 この モデ ル は 、イオ ン と溶媒 との電 気的 な相互 作 用を 無

視 して い るので 、電 解 質溶液 の特徴 を表 わす こ とが 出来 な い こ とは明 らか で あ る。 そ

こで本 研 究 で は、Hubbard-Onsager方 程 式 【5,6】に基 づ く誘 電摩 擦 モ デルを使 用 す る 。

この モ デ ル は、1960年 代 に始 まる この 分野 で の理 論 的研 究の 到達 点 であ るが 、今 まで

実験 との比 較が 十分 にな され て いなか った 。

こ こで 問題 にす る量 は、無 限希 釈 に於 る イオ ンの モル 電気 伝 導度 、回転 相関 時間 、

及び 粘度 の濃度 依 存性 のB係 数 で あ る 。これ らは、 イオ ンに固定 した座 標 か ら眺め れ

ば 、溶 媒 の 並進 ・回転 ・変 形 の運 動 にそ れぞ れ対 応 して いる 。 この こ とか らも分か る

よ うに 、 これ ら三っ の量 は互 いに深 く関 わ って い る と考 え られ るが 、その事 実 を十分

考慮 に入れ て理 論 と実験 との比較 を行 な った例 は まだな い。その意味か ら、本研究 は、

電解 質 溶 液 の連 続体 モ デル に対 す る初 め て の系統 的 か っ網羅 的 な テス トで あ る 。

以下 の章 の構 成 は、次 の とお りであ る。2章 で は、上記 の輸送係数の定義 を与 える 。

3章 で は 、誘 電 摩擦 理 論の歴 史 を簡単 に紹 介 し、旺ubbard-Onsager理 論 の重 要 性 と革

新性 を 明 らか にす る 。4章 で は 、具 体 的 に ここで用 い る誘 電摩 擦理 論の 内容 を述べ 、

摩擦 係 数 を計算 す る 。5章 は理 論 と実験 との比 較 、6章 は結 論 で あ る。

一4一

2.電 解質溶液の輸送性質

2,1,極 限 モ ル 電 気 伝 導 度

電 解 質 溶液 に電 圧 をか け る と、通 常 のOhmの 法 則 に従 って 電流 が 流 れ る。 この 時 の

単 位長 ざ.単 位 断 面積 あた りの 電 気抵 抗 の逆 数 は、導 電 率 と呼 ばれ る。溶 液 の導電 率

κか ら溶媒 の導電 率 κsを 差 し引 き、電解 質 の濃 度cで 割 っ た量 が 、 モ ル電 気 伝導 度

Aで あ る。

K『 κSA=(2,1.1)

C

この モル 電気伝 導度 を濃度 ゼ ロ に外 挿 した値が 、極 限 モ ル電気 伝 導度A。 で あ る。

希 薄 溶液 の電 気伝 導 度の 測定 の歴 史 は大 変古 く、前世 紀 の終 わ りには 、以 下 に述べ

るKohlrauschの 二 っの 法則 が 実験 的 に知 られ てい た.

Kohlrauschの イ オ ン独立 移動 の 法則 に よれば 、電 解質 の極 限 モル 電 気伝 導度 は、 そ

れぞ れ の イオ ンの寄 与 に分 割 す る こ とが で きる。

λ+。=AOt.o(2,1。2)

t+o十t-o=1(2,L3)

λ、。は 陽 イオ ンの極 限 モル電 気伝 導度 、t.。,tOは 、 それ ぞ れ陽 イオ ン及 び陰 イオ

ンの 無 限希釈 に於 る輸率 で あ る 。輸率 は測 定 可能 な量 な の で 、この 分割 は任 意 性 な く

行 な うこ とが 出来 る 。これ は 、電 気伝 導度 を研 究 す る う えで の大 きな利 点 で あ る。

イオ ンの極限モ ル電 気伝 導度 は 、イオ ンの 易動度U(単 位電 場がか か った時の速 さ)

と次 の よ うな関係 にあ る 。

λo=Fu〔211,4)

FはFaraday定 数 で あ る 。外 部の 電 場 に よって イ オ ンにか か る力 と、 イ オ ンが 一定 の

速度 で 並進 す る時 の摩 擦 力 との 釣 合 いで 易動度 が決 まる とす れ ば 、イオ ンの電 荷 をe

と して 、次 の関 係が 成 り立 っ 。

lFeIλo=(2。1、5}

ζT

ζτは イオ ンの並 進 に対 す る摩 擦 係 数 で あ る 。こ の式 は、拡 散係 数 につ い ての よ く知

られ たEinsteinの 関 係 の一 変 形 で あ る 。本 研 究で は 、以 後 この式 を とお して極 限 モル

電 気伝 導 度 と理 論 的 に計算 され る摩擦係 数 とを結 び付 け る。

無 限希 釈 の極 限 に於 る電 解 質 の モル電 気伝導 度 の濃 度 依存性 は 、Kohlrauschの 法 則

5

とよば れ 、次 の よ うに表 わ され る。

A=AO-Sci/2〔2,L6)

Sは 定 数 で あ るがLOnsager【2】 に よって理 論 的 に計算 され た 。Onsagerの 理 論 の 詳 細

は この論 文 の 目的 と直接 の関 連 はな いが 、彼 の用 い たモ デル は 、の ちにふ れ る初期 の

誘電 摩 擦 理 論の モデ ル との類 似 点が多 いの で 、 ここ に紹 介 してお く。

い ま、 溶媒 を 誘電 率 ε。の連 続 体 と し、イ オ ンを 点電 荷 とす る。Debye-Hifckel理 論

に よれ ば 、平衡 状 態 に於 て、電 荷eの 中心 イオ ンの周 囲 に は 、Debye長 さ κ噂iで特 徴

づ け られ る総 電 荷 一eの 球対 称 の イ オ ン雰 囲 気が あ る 。Debye長 さは 、 次 の よ うに定

義 され る 。

4πκ2=Σnie、2(2.1,7}

ε。kT

kはBoltz皿ann定 数 、Tは 絶 対温 度 、n汲 びe1は 、そ れぞ れiイ オ ンの 数密 度 と電

荷 で あ る 。 κは濃 度 の 平 方根 に比例 す る 。Onsagerに よれば 、 イオ ンが 外 部の 電場 の

影 響 で並 進 す る時 には 、イオ ン雰 囲気 か ら二 種類 の 力が働 く。一っ は、 中心 イ オ ンの

並 進 に対 してイ オ ン雰 囲気の 動 きが瞬 間的 に追随 で きず 、両 者の 関係 に非 対称 が生 じ

るため に働 く力 で あ る 。これ は緩 和効 果 と呼 ば れ てい る 。(初 期 の 誘電摩 擦 の モデ ル

は 、 この イオ ン雰 囲気 を溶媒 の電 気分 極 に置 き換 えた もので 、溶 媒緩 和モ デ ル とも呼

ば れ て い る。)も う一 っ は、電 場 に従 って イオ ン雰 囲気 が 中心 イオ ンとは逆 の 方向 に

動 くため 、 中心 イオ ンが それ に よ って作 られ る溶 媒 の流 れ に逆行 す る効果 に よ るもの

で 、電 気 泳動効 果 と呼ばれ て い る 。この 二 っの効 果 の オーダ ー ・エ ス テ ィメー シ ョン

を してお こ う 【71。

電 気 ポ テ ンシャル が あ る瞬 間 に変化 した時.イ オ ン雰 囲気が 新 しい平 衡へ 向 か う過

程 を特 徴 づ ける時間 を イオ ン雰囲 気の緩 和 時間 τ と呼ぶ が 、 それ はお おむ ね 、イ オ ン

が 拡 散 に よ ってDebye長 さ程 度 移 動す るの に要 す る時 間 とみ なす こ とが 出来 る 。拡 散

方程 式 を次 の よ うに書 き直せ ば 、 その オ ーダ ーを 知 る こ とが 出来 る 。

dcd2c△x2△x2-=D→ △t==

dtdx2DγkT

Dは イオ ンの拡 散係 数 、 γは並 進摩擦 係 数 の逆数 で あ る 。(γ を 易動度 と呼ぶ こと も

あ る。 さ きに述 べ た定 義 とはlel倍 だ け違 って い る。)拡 散 係数 と摩 擦係 数 との 関

係 には 、後 に述べ るEinsteinの 関 係を用 い た。簡 単 の た めすべ ての イオ ンの 易動度 は

等 しい どす る と、 イオ ン雰 囲気 の緩和 時間 は次の よ うにな る 。

一6一

1τ=

γkTκ2

こ の 時 間 の 問 に 、 中 心 イ オ ンは 外 部 電 場Eの も とで 距 離 δ だ け 動 く 。

eEδ=Euτ=

kTκ2

δ と κ 一iと の 比Qが 一系 の 非 対 称 性 を 特 徴 づ け るパ ラ メ ー タ に な る 。

eEQ=

kTκ

(2,1,8)

(2,119)

(2,1,10)

イオ ン雰 囲気 を 中心 イオ ンか ら κ一tの距 離 にある 一eの 電荷 で置 き換 え る と、イオ ン

雰 囲 気が 中心 イオ ン に加 え る力 は 一e2κ2/ε 。と近 似 出来 る 。系 の 非 対 称性 に よ っ

て 中心 イ オ ンに加 え られ る外場 方 向の 力 △fRは 、 この 力 のQ倍 程度 で あ る 。

-e2K2-e2K△fRニQ=eE(2,1111)

ε。 εokT

これが 緩 和効果 に よ る力 で あ る 。

電 気 泳 動効果 にっ い ては 、次 の よ うに考 える 。イオ ン雰 囲気 を 、半径 が κ己の剛体

球 で あ る とみ なす 。外 部電 場Eに よっ てそ れが動 く速 さvは 、次 の章 で 述べ るStokes

則 を 使 えば 、次 の よ うに書 け る。

一 κeE

v=(2.L12)6π η。

η。は溶 媒 の粘度 で あ る 。 イオ ン雰 囲 気 の 中の溶 媒 は これ と同 じ速 さで 動 い て いる と

す れ ば 、 中心 イ オ ンが この流 れ に逆 ら うため に余分 に受 け る力 △fEは 、 これ に摩 擦

係数 を掛 けたもの にな る。

一 κ

(2,1,13)△fE=-eE6π η 。γ

こ れ が 、 電 気 泳 動 効 果 に よ る 力 で あ る 。

イ オ ン に か か る 全 て の 力fは

f=eE十 △fR十 △fE

E=1の 場 合 の 力fにFγ を 掛 け れ ば モ ル 電 気 伝 導 度 が 出 る 。

e2λOFeλ ~ λo-(十)κ

εokT6π ηo

(2、1、14}

{2,1、15)

κ はct/2に 比 例 す る の で 、Kohlrauschの 法 則 を 導 く こ とが 出 来 た 。 こ の 式 か ら分 か

る よ う に 、 係 数Sは 常 に正 で あ る 。

一7一

その 後 、ct/2よ りも高次 の項 の 計算 がFuossとOnsager【7 ,81に よってな され た。 イ

オ ン会 合 の効 果 を無 視 した場 合 、彼等 の結 果 は次 の よ うな 関数 にな る。

A=A。-Sc1/2十Eclogc十Jc(2 1L16)

S,E,」 は理論 的 に計 算 出来 る係数 で、Jに は イオ ン ・サ イズのパ ラ メータを 含む 。

この よ うに 、十分 希 薄 な溶液 の 電気伝 導 度 を測 定 すれ ば 、Kohlrauschの 二 っ の法則

によっ て、無限希 釈 に於 るイオ ンのモル電 気伝導度 を任意 性な く求め るこ とが 出来 る。

この 事 実 と高 い実験 精 度 とは 、動 的な イオ ン=溶 媒 相 互作 用 を考 える上 で 、電 気伝 導

度 が 非 常 に有用 で あ る ことを示 してい る 。 しか も、簡単 な電 解 質 にっ いて みれ ば 、現

在 まで に蓄積 され た実験 デ ー タ は膨 大で あ り、モ デル の広範 囲で系 統的 な テ ス トが 可

能な 状況 に あ る。

2,2,イ オ ン の 回 転 相 関 時 間

偏 光Ra田an分 光法 や 、MNRに よっ て、溶 液 中 で の あ る種 のイ オ ンの 回転 運 動を 観ノ ぷ

測 す る こ とが 出来 る 。例 えば 、Ra皿an散 乱 の 帯形 解 析 か ら、次 の よ うな 回転相 関 関 数

を得 るこ とが で きる 【9,10】。のう  

Gr(t}=<(3[u(0)・u(t)]2-1)/2>(2.2,1)

こ こで 宣 は、分 子 の方 向を 表 わす単 位ベ ク トル で あ る 。〈 〉は、平衡 で の ア ンサ ンブ

ル 平 均 を 表 わ す 。 この相 関関 数 の特性 時 間 が イオ ンの 回転 相 関時 間 τRで あ る 。 この

量 は また 、NMRの ス ピ ン=格 子緩 和 時 間T、 と も関係 付 け られ るlll】 。回転 拡 散 の

モ デル が 成立 す る とす れば 、回転相 関関 数 は指数 関 数的 に減 衰 し、回転相 関 時間 と回

転摩 擦 係 数 ζRと は 、次 の よ うな関 係 で結び 付 け られ る 。

1ζRτR=={2,212}

6DR6kT

ここで 、DRは 回転 拡散 係 数 であ る 。

測 定 され る回転 相 関 時間 は 、も とも とイオ ンの もの な ので 、電 気伝導 度 の場合 の よ

うに各 イ オ ンの寄 与 に分 割 す る必 要 はな い 。 しか し、濃度 には 当然依存 し、 さ らにそ

の濃度 依 存 性 は対 イオ ンによ って変化 す る 。故 に、 さ まざ まな 対 イオ ンにつ い て濃 度

を変 えて 回転相 関 時 間を測 定 し、無限希 釈 の極 限 で は対 イオ ンに依 存 しな い とい う仮

定 の も とに外挿 を行 な い無 限 希釈 量を求 め る。但 し、無 限希 釈 量 を求め るの に十分 な

程 度 め希 薄 な溶 液 につ いて 、濃 度 と対 イオ ンを系統 的 に変 化 させ た測定 は 、比較 的最

近 のNMRに よ るMasudaら の研 究[12-151が 、お そ ら く初 め ての例 で あ り、 回転相 関

8

時 間 の濃 度依存 性 の 法 則は 、実 験 的 にも理 論 的 に も確 立 され て いな い 。よ っ て、無 限

希釈 へ の外 挿 はあ る程度 の任意性 を伴 うこ とを まぬがれ得 な い。但 し、ご く最近 にな っ

て 、RamanとNMRと を 併用 して回転 相 関 時 間の 濃 度 依存 性 の関 数形 を 実験 的 に明 ら

か に しよ うとい う試 み が な され てい る[16、17】 。 その結 果 に よ る と、濃 度 が 十分 薄 い

場 合 に は、 回転 相 関 時 間は濃 度 に対 して一次 関数 的 に変化 す る 。

こ の よ うに、 イオ ンの回転運 動 にっ いて は研 究の歴 史 も浅 く、こ れか らな すべ きこ

豊が山 積 してい る 。 しか し、 ここで はデ ー タの存 在 す る限 りに於 て 、並 進 ・粘 度 との

関連 に注意 しな が ら考 察 をす すめ て い く。

2,3,粘 度B係 数

粘 度 は 、流体 が変 形 す る時 にか か る応 力 と関係 した量 で あ る。流 体の速 度 場が.流

れ と垂 直な 一方 向 にの み一定 の 速度 勾 配を 持 っ よ うな ものの場 合 、速度 勾 配 の方 向 に

垂 直な単 位 面積 にか か る流 れの 方 向の応 力 を σとすれ ば 、速度 勾 配 と応 力 との関係 は

次の よ うな に表 わ され る。

dVyσ=η(213,1)

dx

この 比例 係数 ηが 粘 度 であ る 。 よ り精密 な定 義 は 、流体 力学 方 程 式 と関連 して後 に述

べ る 。

電解 質 希薄溶 液 の粘 度 の濃 度依 存性 は 、次 のJ。nes-D。le式 【18】で表 わ され る こ とが

実験 的 に知 られ て い る。ηニ1十Aci/2十Bc(213,2)

ηo

ηは溶 液 の粘度 、 ηoは 純溶 媒 の粘 度 で あ り、A、Bは 定 数 で ある 。

J。nes-Dole式 の 関数 形 は 、Debye-Hifckel理 論を ヒ ン トに して 見 出 され た もので あ る

が 【191、その こ とか ら も予測 され るよ うに、A係 数 はOnsager理 論 と類似 の理 論 にょ っ

て計 算 出来 る。 この計 算 は 、FalkenhagenとD。leに よって初 め てな され た 【20-221。 電

気伝 導度 の場 合 の よ うに、 その オーダ ー ・エ ステ ィ メー シ ョンを してお こ う 。

こ こで は、電荷eを 持 っ た中心 イオ ンは静 止 して お り、溶 媒 のy方 向 の速 度 は中心

イオ ンを原 点 と して αxで 与 え られ る とす る 。イオ ン雰 囲 気 は、 中心 イオ ンか らx方

向へ κ一1だけ離 れ た位 置 にあ る電 荷 一eの ひ とっ の イ オ ンで 置 き換 え る。 イオ ン雰 囲

気 の緩 和 時 間 τ(伝 導 度の 場 合 と同 じ)の 間 にイオ ン雰 囲 気が 動 く距 離 δは次 の よ う

9一

に な る 。  δ ニ(2,313}

γkTκ3

す る と 、 系 の 非 対 称 性 を 表 わ す 比Qは 、 Q=(2.3,4}

γkTκ2

とな る 。 よ っ て 、 緩 和 効 果 に よ っ て 中 心 イ オ ン に か か るy方 向 の 力 △fRは

e2α△fRニ(21305)

εoγkT

で あ る 。溶 液 中 のす べ ての イオ ンを考 慮 に 入れ る必 要 が あ るの で 、 まつ これ に濃度 を

か け る 。次 に、体 積 力 を面積 力 に変 え る必 要 が あ るの で 、特 性長 さ κ弓を か け る。す

る と、緩和 効 果 によ る応 力 △ σ良は、

e2αNc△ σR==● ● 一(21316)

εoγkT1000κ

とな る 。NはAvogadro数 で あ る 。N/1000は 単位 を そ ろえ るため に掛 けた 。粘 度 に対

して は 、電 気泳 動効 果 の存在 が 考 え られ な いので 、全 応 力 σは次の よ うにな る 。

σ=ηoα 十 △ σR(2,3,7}

よっ て溶 液 の粘度 ηは

ηe2Nc~1十 ・ ・ 一(2,3,8)

ηoεoγkTη01000κ

摩擦 係 数 を極 限 モル 電 気伝導 度 か ら求 め れば 、A係 数 を理論 的 に計 算出来 る。 これ か

ら分 か る よ うに、A係 数 は常 に正で あ る 。

粘 度B係 数 にっ い ては 、イオ ン=イ オ ン相 互作用 の寄 与 は十分 小 さい こ とが 理論 的

に知 られ て お り[23】 、イオ ン=溶 媒相 互 作用 の み によ って決 まる と考 えて差 し支 えな

い。本 研 究 で問題 にす るの は 、 このJones-Dole式 のB係 数 で あ る。(イ オ ン対 の生 成

が無 視 出来 な い場合 には 、それ を考慮 に入 れ たJones-Doユe式 の拡張 形を用 い るこ とも

ある 。)B係 数 は 、A係 数 とは異 な り、そ の符号 が正 に も負 に もな りうる 。

Jones-Dole式 のB係 数 は電解 質 にっ いて の もので あ るが 、これ を各 イオ ンの寄 与 に

分割 す る こ とが 一般 に行な われ て いる 【24】。但 し、粘 度 の場合 には電気伝 導度 の輸 率

に相 等 す る量が 存在 しな いの で 、この分 割 に は任 意 性が っ きま とう。水溶 液 系 にっ い

て一 般 に受 け入 れ られ て い る分 割法 は 、各温 度 で カ リウ ム ・イオ ンと塩化 物 イオ ン と

のB係 数 が 等 しい とお くもの で ある 【25】。

10一

電解 質 溶 液の 粘度 につ い て も測 定 の歴 史 は古 く、 あ ま り系 統 的 とはい えな いが 、現

在 まで に存在 す るデー タは相 当 な量 にの ぼ る 。

一一11一

3.誘 電摩擦理論の展開

3、1.Navier・ ・St。kes方 程 式 【26,271

この 章 で は 誘電 摩 擦理 論 の歴 史を 概観 し、本 研 究 で と りあげ るHubbard-Onsager理

論の 重 要性 と革 新 性 を明 らか にす る 。その ため には、誘 電摩擦 理 論 以前の 連 続体 モデ

ル に触 れ る必 要が あ る。連 続体 モ デル で は 、イオ ンを 剛体 とみな し、周 囲の 流体 の並

進 ・回転 ・変形 にっ い ての摩 擦係 数を 、 巨視 的な方程 式か ら計算 す る 。その 方程 式 と

して最 も簡単 で 、最 も一般 に使用 され て い るのが 、粘 性 流体 の ゆ っ くり した運 動を取

り扱 う、線形 化 され たNavier-St。kes方 程式(Stokes方 程 式)で あ る 。

粘性 を伴 わな い理 想流 体 の運 動方程 式 は 、Eulerの 方程 式 で ある 。

 ∂V→ →

+(v・ ▽)V]=一 ▽P{3.1.1)ρ[

θt

ここで 、 ρは流 体 の密 度 、寺 は速度場 、pは 圧力 場 で あ る。左 辺 の括弧 内 は 、守の 実

質微 分 とよば れ 、流 体 要素が 流 されて い るこ とを 考慮 に入れ た時 間微分 で あ る。この

式か らは 、流 体 中を 一定速 度 で運動 す る物 体 には力が 働 かな い こ とが導 か れ る。よ く

知 られ たd'Alembertの 背理 で あ る 。摩擦 係 数が値 を 持 っ ため に は、圧 力の 他 に粘性 応

力の効 果 を取 り入れ る必要 が あ る 。

式{3,1,1}に 粘 性応 力 の効 果 を取 り入れ るため に、St。kesは 次 の よ うな考察 を行 な っ

た。ある点雲から微小距離 δネ離れた位置における流体の速度守{霊+δ も を考 える。

簡単のために、流体 は非圧縮性であるとし、速度勾配は十分 に小 さ く、Taylor展 開の

第二項以下は無視出来 るもの とする。

寺 〔"+δ も 舳+〔 暮}・ ・δ"〔3・1・2}

(d守/dB),は 、3に お け る速度勾 配 テ ンソル で あ る。 この 速度勾 配 テ ンソル を

対称 部 分symと 反 対 称部 分antに 分 ける 。

守{袖 舳+{壽)・ 一・δ雲+{暮}・ … δネ

(3,1,3}

右 辺第 一 項 は流体 の 並 進を表 わす 。第 三項 は 回転 で あ る 。す る と、流 体 の変 形 のみ を

表 わす部 分 は第 二項 とな る 。 よって粘性 応 力 は 、速 度 勾 配テ ンソルの対称 部 分 に比 例

す る と考 え、 そめ 比 例 定数 η。を粘 度 と呼 んだ 。圧 力 の 部分 を加 え る と流 体 力学 的 応

一12一

カ テ ン ソ ル6',の ユk成 分 は 次 の よ う に 書 け る 。

∂Vi∂VkσH,ik=ηo(十)一 δ1kP(3,1,4)

θXk∂Xi

δikはKroneckerの δで あ る 。 こ の 応 力 テ ン ソ ル の 発 散 と慣 性 力 とが 釣 合 う と して 導

か れ た方 程 式が 一 粘 性 流 体 の 運 動 方 程 式 で あ るNavier-St。kes方 程 式 で あ る 。

 、[∂V  一+(v・ ▽)⇒]=▽.まH

θtう

=一 ▽P+ηo▽2v(3,115)

この よ うな考 え方 を すれ ば 、本 研 究で取 り上 げ る輸送 係数 は、 それぞ れ イ オ ンの周

囲の流 体 の 並進 ・回転 ・変 形 と結 び付 いて お り、すべ て の運 動 を網 羅 して い る とい う

こ とが 出来 る。

このNavier-Stokes方 程 式 は非線 形 の方程 式 で あ るが,ゆ っ く り した定 常 流 に対 し

て は、次 の ような線 形 の方 程 式 に近似 す るこ とが 出来 る。 ▽pニ ηo▽2v(3、1、6)

こ の 近 似 はSt。kes近 似 と呼 ば れ 、 こ の 方 程 式 は 線 形 化 さ れ たNavier-Stokes方 程 式 、

あ る い は 単 にStokes方 程 式 と 呼 ば れ る 。Stokes近 似 が 成 立 す る た め に は 、Reynolds数

と呼 ば れ る 無 次 元 量Reが 十 分 に小 さ くな け れ ば な らな い 。

ρuユRe=(3.1,7)

り70

u、1は それぞ れ 、系 を特 徴 づ ける速 さ と長 さ とで あ る 。Reyn。1ds数 は 、慣 性 力の粘

性 力 に対 す る比 で あ る 。水 中の カ リウム ・イオ ンの並 進 にっ い て、 易動度 と結 晶 イオ

ン半 径 とか らReynolds数 を求 め る と、10"9程 度 とな り、St。kes近 似 が成 立 す るこ と

が 分 か る。水 中の硝 酸 イオ ンの 回転 にっ いて は10弓1程 度 で あ り、 この近 似 が 完全 に

成 り立 っ状 況で は な いか も知 れ な いが 一定 性 的な議論 には問題 はな い と思 われ る。変

形 の 場合 に は、速 度 勾 配が 十 分 に小 さけれ ばReynolds数 も小 さい 。

3,2,Navier-Stokes方 程 式 に よ る 摩 擦 係 数 の 計 算[26-28]

こ の 節 で は 、 線 形 化 さ れ たNavier-Stokes方 程 式 か ら摩 擦 係 数 を 導 く 。 こ こ で は 、

必 ず し も文 献[26-28]の と お りの 方 法 で は な く 、 後 にHubbard-Onsager方 程 式 か ら摩 擦

係 数 を 導 く場 合 と 同 様 の方 法 を 用 い る 。

一13

イ.並 進摩擦係数の計算

→ 一

並 進 の摩 擦係 数 を 求 め るに は、 は じめ に、一定 速度Uで 並 進 す る流 体 の流 れの 中で

静止 して い る半径Rの 球 の周 りの速度 場 を計 算 す る 。

軸 対 称 な速度 場 の 一般 的 な形 は 、次 の よ うな もの で あ る 。

→1→ →v=一 ▽ ×(f(r)u×[r')(3、211)

2

 Uは 無 限 遠 点で の流 体 の速 度 で あ る 。座 標 の原点 は球 の 中心 に とる 。

こ こでSt。kes方 程 式(3,1,6)の 回転 を とる 。勾 配 の回 転 は 恒等 的 にゼ ロ だか ら、圧

力の項 は落 ち る 。 

0=▽2(▽ ×v)

式(3。2,1)を(3、2,2)に 代 入 す る と 、f(r)に 関 す る 次 の 方 程 式 を 得 る 。

d4f8d3f8d2f8df

O=十 一 十 一 一

dr4rdr3r2dr2r3dr

こ の 解 は 次 の 形 に 書 け る 。

bc

f(r)=a-一 十

rr3

a,b,cは 球 の 表 面 に於 け る境 界 条 件 か ら求 め る こ とが 出 来 る 。

f(。 。)=、1

f(R)=0

γVt2=σtVt(atr=R)→

(3,2,2}

(3,2,3}

{3,2,4)

(3,2,5)

(3,2。6)

{3,2,7)

最 初 の条 件 は 、無 限 遠点 での速 度がUに な るこ とを保障 す る 。二 番 目の条件 は、球

の表 面 で速 度の 法線 成 分がゼ ロ にな るこ と、す な わち球 と溶 媒 との間 に空 隙が 生 じた

り溶 媒 が 球 に侵 入 し た り しな い こ とを意 味 す る 。この 条 件 はKinematic条 件 と呼 ば れ

てい る 。三番 目の条 件 は球表 面 で の滑 りの 条件 で あ る。 γは球 表面 と溶 媒 との摩擦 係

数 、Vtは 速度 の接線成 分 、 σ、は応 力 テ ン ソル の接線 成 分で あ る 。(接 線成 分 は この

場合 、球 座 標 で表 わ した時 の θ成 分 にな って い る 。)式(3,2,7}は 、球 表 面 での 摩 擦

によ る単位 時間 あ た りのエ ネ ルギ ー散逸 の 式で あ る 。Vt、 σtを それぞ れ 書 き下す と

次の よ うにな る 。

rdfマt・=-u[一 十f(r)]sinθ(3.2,8)

2dr

14

rd2fdfσt=-uηo[一 十 】sinθ(3,2,9)

2dr2dr

こ れ を 使 え ば 、 式(3,2,7)は 次 の よ う に書 き換 え る こ とが 出 来 る 。

rdfrd2fdf

γ[一 一一]r=Rニ ηo[一 一 十]rニR(312,10)2dr2dr2dr

γ→ 。。の 条 件 はstick、 γ →0の 条 件 はslipと 呼 ば れ る 。 っ ま りstlcヒ 条 件 は 球 の 表 面

で 溶 媒 が 止 ま っ て い る こ とを 表 わ し、Slip条 件 は 球 表 面 を 溶 媒 が 摩 擦 な く滑 る こ とを

表 わ す 。 そ の 意 味 で 、 γ はSlipパ ラ メ ー タ と呼 ば れ る 。マ ク ロ な 現 象 で は 普 通Stick

条 件 を 使 用 す るが 、 水 中で の 気 泡 の 運 動 な ど を 考 え る場 合 に はSlip条 件 を 使 用 す る 。

イ オ ンの 電 気 伝 導 度 を 考 え る場 合 の よ う に 、 溶 媒 分 子 の サ イ ズ が 球 と同 程 度 の 場 合 に

は 、Slipの 条 件 の 方 が 現 実 的 で あ る と思 わ れ る 。 二 つ の 境 界 条 件 の も とで 積 分 定 数 を

求 め る 。

a=1,b=3R/2,cニR3/2{forStick}(3、2,11)

a=1,b=R,cニ0(forSlip)(3,2,12}

式(3,2,1)、(3,2,4)、(3,2,11~12)で 表 わ され る速 度 場 をStokes場 、 ま た はStokes

流 と呼 ぶ 。 これ で 速 度 場 が 得 られ たの で 次 に圧 力 場pを 求 め る 。 圧 力 場 を 求 め る に は

Stokes方 程 式 の 発 散 を と る 。

▽2P=0(3.2、13}

但 し 、次 の 非 圧 縮 性 の 条 件 を 利 用 し た 。 ▽ ・v=0(3.2、14}

圧 力 はr→ 。。で 一 定 値p。 に な る 。 速 度 場 が 分 か っ て い る の で 、St。kes方 程 式 を 満

た すLaplace方 程 式 の 解 を 求 め る と

→ 這 ・F=Po-bηo十 …(312、15}P〔r}

r3

こ こ でbは 、 式(3、2,11~12)で 与 え ら れ る もの と 同 じで あ る 。 こ れ か ら応 力 テ ンソ ル

 

を 求 め 、球 に働 く力Fを 計 算 す る 。 この と き並 進 の 摩 擦 係数 ζTは 次 の よ うに定義 さ

れ る 。   F=ζ τu(312,16}

結 果 は よ く 知 ら れ て い る よ う に 、

ζ ↑=6π ηOR(forStick}{3.2,17)

=4π ηoR(forSlip}{3、2、18)

こ れ は 普 通Stokesの 法 則 と 呼 ば れ て い る 【29]。

一15一

この結 果 はf(r}をrで 展 開 した時 のr'tの 係 数 に一4π η。をか けた もの にな って

い る 。球 にか か る力 は 、Gaussの 法則 に よ って 、球 を 囲 む 閉 曲面 にっ い ての 面積 分 と

して計 算 で きるが 、閉 曲面 は任 意 に大 き く取 る こ とが 出来 るの で 、速度場 のr-1に 関

す る最 低 次 の項 で 摩 擦係 数が 決 まる。 この 関係 は 、後 の章 でHubbard-Onsager理 論 か

ら摩 擦係 数 を計 算 す る際 に も利 用 す る。

ロ.回 転 摩擦 係数

次 に 、一定 の角 速度 Ωで 回転 す る剛体 球 の周 りの 溶媒 の速 度 場 を求 め 、 回転摩擦 係

数 を計 算 しよ う。 この場合 、系 の対称 性 か ら考 え て圧 力勾 配 はゼ ロで あ る 。っ まり、

Stokes方 程 式は次 の よ うにな る 。 ▽2vニ0(3,2,19)

速 度 場 は 次 の 形 に書 け る 。→ → →v=f(r}Ω ×r(3,2.20)

こ の 形 の 速 度 場 で は 、Kinematic条 件 は 自 動 的 に 満 た さ れ て い る 。 式(3,2,20)を(3,

2,19)に 代 入 す る と 、 次 の 方 程 式 が 得 ら れ る 。

d2f4'df

十 一=0(3、2,21)

dr2rdr

こ の 解 は 、

b

f(r)=a十(3,2、22)

r3

a,bは 、 無 限 遠 で 溶 媒 の 速 度 が ゼ ロ に な る とい う条 件 と球 表 面 で のSlip-Stickの 条

件 か ら決 め る 。

f(oo)=0(3,2.23}

f(R}=s(3、2.24}

こ こで は簡 単 の た め 、sと い うslipパ ラ メー タ を用 い た 。sニ1の 場 合 がstick条 件 、

s=0がSlip条 件 で あ る 。以 上 の 条 件 か らf{r)を 求 め る と、

R3

f(r)=s(3,2,25}r3

 

これ か ら応力 テ ンソルが分 か るので 、球 にか か る トル クTが 計 算 で きる 。回転 摩擦

係数 ζRの 定義 は 、→'→T=、 ζBΩ(3,2,26⊃

16

守=一 ▽ ×[f(r)マo× 参]3

これ をStokes方 程 式 に代 入 す る とf(r}に 関 す る 方 程 式 が 得 られ る 。

d4fl2d3f24d2f24df十 一一一一 十 一 一 ・一一 ・ 一一=O

dr4rdr3r2dr2r3dr

こ の 方 程 式 の 解 は 、 次 の よ う に 書 け る 。

bcf(r)=a-一 十 一一

r3r5/

定 数a,b,cを 決 定 す る ため の 条 件 は 、 次 の と お りで あ る 。

f(。 。)=1

f{R)=O

f,(R)=0(forStick}

4f'〔R)十Rf口(R)=0(forSlip)

最 初 の 条 件 は無 限 遠 で の 速 度 が 守 。に な る と い う条 件 で あ り 、

よ う に な る 。

a=1,b=5R3/2,c=3R5/5(forStick}

a=1,bニR3,c=0(forSlip)

で あ る か ら 、 回 転 摩 擦 係 数 は 次 の よ う に な る 。

ζR=8π η 。R3s(3、2127)

この 関 係 も 、Sしokesの 法 則 と呼 ば れ て い る 。 直 観 的 に も明 らか な よ うに 、Slip条 件 で

は 球 の 回 転 に対 して 摩 擦 力 は 働 か な い 。

ハ.粘 度B係 数

粘 度 のB係 数 を 求 め る時 に使 用 す る速 度 場 は 、 球 が な い 時 っ ぎ の よ うな も の で あ る 。

守。=菱 ・F(3、2、28)

αは 、 速 度 勾 配 テ ン ソ ル で 、 定 数 テ ン ソ ル で あ り対 称 で あ る とす る 。 こ の テ ン ソ ル の

対 角 和 は 、溶 媒 の 非 圧 縮 性 の 条 件(3,2,14)か らゼ ロ で な け れ ば な らな い 。 以 下 の 計 算

を 行 な う に あ た っ て 、 凄の 成 分 につ い て は 、 一一re性 を 失 う こ とな し に 、 α 。。=αxz=

αで 、 他 の 成 分 はゼ ロ とみ な す こ とが 出 来 る 。半 径Rの 球 が 原 点 に置 か れ た と き に は 、

速 度 場 は 次 の 形 で 与 え られ る と す る 。

1

(3,2。29)

〔3、2、30}

〔3.2,31}

(3.2、32)

(3,2。33}

(3、2,34)

{3.2.35)

次 の も の はKinematic条

件 で あ る 。 次 のSlip-Stick条 件 は 、 式(3,2、7)と(3・2・29}か ら 導 い た 。 定 数 は っ ぎ の

(3,2、36}

(3.2137}

一17一

さ て 、 球 の な い 場 合(f=1)の 応 力 テ ン ソ ル のzx成 分 σ。は

do=2ηoα(3 ,2、38)

で あ る 。 球 が あ る と き に は 、 こ れ に摂 動 が 加 わ る 。

σ=σo十3-,(312139)

S・ ・t∫ ・・dV(一}

σ'は 、 式(3,2,31}のrに 依 存 す る部 分 か ら くる 応 力 で あ る 。 平 均 を と る体 積 を 、 巨

視 的 な 粘 度 と対 応 が っ け られ る程 度 に 大 き く と る 。体 積 分 を 面 積 分 に変 え れ ば 、r-t

に つ い て 最 低 次 の 項 の み で σ'が 決 ま る こ とが 分 か る 。 この 積 分 を 実 行 し た あ と 、溶

液 中 の す べ て の イ オ ンを 考 慮 に 入 れ る た め に 濃 度 を 掛 け る 。 濃 度 と し て体 積 モ ル 濃 度

cを 使 え ば 、結 果 は っ ぎ の よ う に な る 。

_VNcσ=σo十 σ,

1000

4Nc=2ηoα[1十 一 πb・](3 12.41)

31000

こ れ よ り 、B係 数 を 得 る こ とが 出 来 る 。

4NB=一 πb・ 〔3、2.42}

31000

こ こ でbは 、 式(3、2,36~37}で 与 え られ る も の で あ る 。 こ の 式 はEinsteinに よ っ て 初

め て 導 か れ た[30,31】 。Einsteinの 理 論 に よ っ て予 想 さ れ るB係 数 は 、常 に正 で あ る 。

3,3,Stokes-Eifisteinの 関 係

Stokes則 を 溶液 中で の分 子 の 輸送 現 象 に応 用 したの はEinstein【31,321で あ る 。彼

は 、拡 散係 数 と摩 擦係 数 とを結 び 付 け る関係 を導 い た 。こ こで それ を紹介 して お こ う

[33】。

外 力fの 中 にあ る溶 液 を考 える 。簡 単 に ため に 、外 力 は一定 で あ るとす る 。溶 質 の

流 れ の密 度Jは 外 力 による もの と拡散 によ る もの との和 であ る 。Fickの 第 一 法則 を使

えば 、

θCJ=cγf-D-(3、3,1}

θX

cは 溶質 の濃度 、 γは摩擦 係 数 の逆数 、Dが 拡 散係 数 で ある 。平衡 状態 で は流 れ はゼ

18一

ロ で あ る 。平 衡 で の 濃 度 をc。 とす れ ば 、次 の 関 係 が 得 られ る 。

θCoCoγf=D(3。3.2)

∂X

と こ ろ で 、 平 衡 で の 溶 質 の 分 布 は 、 外 場 の ポ テ ン シ ャ ル(-fx)に よ るBoltz屈ann

分 布 に 従 う 。

fxCo=Cexp(一 一)(3,3,3)

kT

Cは 規 格 化 の た め の 定 数 で あ る 。 式(3,3,2)と(3,3,3)と を 組 み 合 わ せ れ ば 、 次 の 関 係

が 得 られ る 。

D・=γkT(3,3,4}

この 式 は 、Einsteinの 関係 と呼 ば れ て い る 。 この 式 で 、摩 擦 係 数 がStokes則 で 与 え ら

れ る と し た もの が 、Stokes-Einsteinの 関係 で あ る 。

kT

Dニ(4≦y≦6)(3,3,5)

yπ η。R

誘 電 摩 擦 理 論 の 話 を 始 め る 前 に 、 こ のStokes-Einsteinの 関 係 が 、 分 子 レベ ル の 現

象 に対 して ど の 程 度 適 用 出 来 るの か を み て お こ う 。

表3,3,1に 、25℃ に於 る 純 液 体 の 自 己 拡 散 係 数 の 実 測 値 か ら計 算 し た 並 進 摩 擦 係

数 と 、Stokes則 と を 比 較 し た 。 分 子 の 半 径 は 、分 子 が 球 で あ る と仮 定 し て 、vander

Waals体 積 か ら 見 積 も っ た 。 モ デ ル の 単 純 さ に も か か わ らず 、 理 論 と 実 験 と の 一 致 は

良 好 で あ る 。

次 に 、 剛 体 球 系 の 自 己 拡 散 係 数 と粘 度 に っ い て の 、Alderら[341に よ る計 算 機 実 験

の 結 果 を 、 図3,3,1に 示 し た 。 こ こ で は 、 自 己 拡 散 係 数 か ら 計 算 し た並 進 摩 擦 係 数 と

粘 度 か ら計 算 したSlip条 件 に 於 るStokes則 との 比 を 、 充 填 率 ξの 関 数 と して プ ロ ッ ト

し た 。 こ こ で も 、 系 の 密 度 が 高 く な っ た 場 合 に は 、 理 論 と実 験 とが よ い 一 致 を 示 し て

い る 。

計 算 機 実 験 で は 、分 子 の 速 度 自 己相 関 関 数c。(t)か ら拡 散 係 数 を 計 算 す る 。

   Cv(t)=〈v{0)・v(t)〉 〔3,3,6)

Alderら の結果 を み る と、 この相 関関 数 は連続 体 モ デル か ら予想 され る指 数 関 数 的 な

減 衰 を示 していな い 。 また 、分 子 の 中心 間 の最近 接距 離 は分 子 の直 径 に等 しいか ら、

Stokes抵 抗 を計 算 す る際の 半 径 に は、分 子 の直径 を用 い るほ うが 自然で あ る よ うに思

われ る。 これ ら二 つの 問題 点 に もかか わ らず 、分子 の 半径 か ら計 算 したStokes抵 抗 が

実験 但 を よ く再現 して いる こ とは 、非 常 に興 味深 い 。

一19

図3,312と 図3,3.3は 、そ れぞ れ 四塩化 炭 素及 び メタ ノール 中で の簡単 な 中性 分子 の

並進 摩 擦係 数 の実 測値(拡 散 係 数 か ら計 算 したもの)を 、溶 質 の 半径 の関 数 と してプ

ロ ッ トした もの で あ る 。図 中の 二 本 の 直線 がSlipとStickの 場 合 のStokes則 によ る摩

擦係 数 で あ る 。こ こで も また 、理 論 と実験 との一致 は よ い。 ただ し、溶質 が 小 さ くな

る に従 っ て 、実測 の摩 擦係 数 はSt。kes則 か ら予想 され る もの よ りも小 さ くな る傾 向が

あ る。

溶液 の誘電緩 和 時 間 を説 明す るため に 、Einsteinの 関 係 と回転 に対す るSt。kes則 を

用 い た式 は、Debyeの 関 係[35]と 呼 ば れ てい る 。誘 電緩和 時間 τDと は 、周 波数 を ω と

した と きの系 の複 素 誘 電 率 ε(ω)が 、次 のDebyeの 式で 表 わ さ れ る と した と きの特 性

時間 で あ る 。

ε0一 εOOε(ω)ニ ε。。+(3,3,7)

1十iω τD

ε。と ε。。は 、そ れぞ れ静 的及 び高 周波 数 の誘 電率 で あ る。

誘 電緩 和 時間 τDと 回転摩 擦係 数 の 間 のDebyeの 関係 は次 の とお りであ る 。

1ζRτD==(3,3,8)

2DR2kT

D,は 回転 拡散 係 数で あ る 。Ra皿anやNMRに よる回転 相 関時 間 とは見 て い る相 関関数

が異 な るの で 、係 数 が違 って い る。

表3,3,2に は 、25℃ に於 るい くっ かの純 液 体 の誘 電緩 和 時間 か ら計 算 した 回転摩

擦係 数 と 、vanderWaals体 積 か ら見 積 もっ た半径 と粘度 と を用 い てStokes則 か ら計

算 したも の とを 比較 した。アル コール系 でず れが 見 られ るが 一多 くの場 合 、実験値 は

St。kes則 の 許容 す る範 囲 に入 って いる 。

粘 度B係 数の場 合 、溶 質 と溶 媒が 同 じ程度 の大 き さの測 定 は あ ま り例 が な い 。N一

メチル ア セ トア ミ ド中 での例(表3,3,3)で み て み ると、Einsteinの 理 論 か ら計算 さ

れ た値 は すべ て正 で あ るが 、実 験値 には正 の もの も負の もの もあ り、理 論 と実験 との

一致 は あ ま り良 くな い 。

この よ う に、粘度 の場 合 に多少 の 問題 が 残 るものの 、Navier-Stokes方 程 式 に基 づ

く連 続体 モデル は 、溶液 中 の溶 媒分 子 と同 じ程度 の 大 きさの 中性 分子 の輸送 係 数 に対

して比較 的 よい予 測 を 与 える 。

20

表3・3・1各 種 の 純 液体 の 自己拡 散係 数 か ら計 算 した並 進摩 擦係 数 とStokes則 との比

較(25℃ 、1気 圧)

溶 媒 ηo(cP)rw(A) ζT.exPζs(10-9Pc皿)

(10-9Pcm}StickSユip

メタ ノー ル

ア セ トン

ニ トロ メタ ン

クロ ロベ ンゼ ン

ニ トロベ ンゼ ン

四塩 化 炭素

0,891

0,555

0,304

0,632

0,755

1、83

0、923

1,50

2,05

2,49

2,30

2,84

2,92

2,73

1,64

1,66

1,03

1,96

2,29

5,71

2,94

2

」仕

3

4

4

5

1

4

7

0

0

57

2

2

1

2

4

01

4

1,68

1,43

0,95

1,82

2,69

6,71

3,17

1.0

のu\%

o OO

o

0。。.1σ2σ3σ4σ5

図3,3,1,剛 体 球 系 の 自 己 拡 散 係

数 か ら計 算 し た並 進 摩 擦 係 数 ζ丁

と 、 粘 度 と 半 径 か ら計 算 した

Stokes抵 抗(Slip}と の 比 。 ξは 充

填 率 。 ξ=4πR3n/3。

nは 数 密 度.

ξ

21一

8

N6

守9

)4

←u

2

∩)

O

Stick

4

30

20

1StipCα

CH鍵

23 

R(A)

4 5

図3,3,2,四 塩 化炭 素 中 での 中

性分 子 の並 進 摩擦 係数 の 溶質 半径 依

存性 。25℃ 、1気 圧 。○ は実測 値

(拡 散 係数 か ら計 算 した もの)。 実

線 はStokes則 。数 字 は テ トラ アル キ

ル ・スズ を一 っ の アルキ ル基 の炭 素

数 で表 わ してい る 。半径 はvander

Waals半 径 。

1

5

E4

ど939)

ホ'2

1

OO

Xe

o()KrCH4

Stたk

3自

1声1ipEt4C

CC14

1 23 

R(A)

4 5

図3,3.3,メ タ ノー ル 中 で の 中 性

分 子 の 並 進 摩 擦 係 数 の 溶 質 半 径 依 存

性 。25℃ 、1気 圧 。 ○ は 実 測 値 。

実 線 はSt。kes則 。 数 字 は テ トラ ア ル

キ ル ・ス ズ を 一 っ の ア ル キ ル 基 の 炭

素 数 で 表 わ して い る 。 半 径 はvan

derWaals半 径 。

一22一

表3,3,2各 種 の純 液 体 の誘 電 緩和 時 間 か ら計算 した回転 摩擦 係 数 とStokes則 との比

較(25℃ 、1気 圧)

溶 媒 η 。(cP)rw(A) ζR,。 。P

(10-25Pcm3)

ζs(Stick)

(10-25Pcm3}

ホル ム ア ミ ド

メ タノ ール

アセ トン

アセ トニ トリル

0,891

3,13

0,555

0,304

0,341

1,50

2,16

2,05

2,49

2,24

6,75

32,1

39,3

2,55

3,21

8,48

79t3

12,0

11,8

9,63

表3,3,3N一 メ チ ル ア セ トア ミ ド中 で の 中 性 分 子 の 粘 度B係 数(35℃ 、1気 圧)

溶 質 rw(A) B

(cm3mo1-1)

BE(cm3皿01  ↓l

St玉ckSlip

CCユ4

n-Ct2H2θ

Me3Etc

Et4C

王{20

2,73

3,72

3,00

3,404

1,50

一〇,033

-0,051

-O,130

-0,096

0,025

0,13

0,32

0,17

0,25

0,021

0,051

0,13

0,068

0,099

0,009

一23一

3、4t電 解 質 系 に 於 るStokes-・Einsteinの 関 係

誘 電 摩 擦 理 論 の 重 要 性 を 理 解 す る た め に は 、 溶 質 分 子 が 中 性 で は な く イ オ ンで あ る

場 合 に 、Navier-Stokes方 程 式 に 基 づ く連 続 体 モ デ ル が ど の 程 度 実 験 を 再 現 す る か を

み て お く必 要 が あ る 。

Einsteinの 関 係(3,1,5)と 並 進 に対 す るStokes則 〔3,2,17~18)と を 結 び 付 け る と 、

電 気 伝 導 度 にっ い て のStokes-Einsteinの 関 係 を 得 る 。

lFelλo=(4≦y≦6)(314,1}

yπ ηOR

この 関 係 か ら直 ち に 、 あ る一 っ の イ オ ン にっ い て 、次 の よ う な 法 則 が 導 か れ る 。

lFelλoηo=ニ ー 定(3,4、2}

yπR

この 法 則 は 、 初 めWalden[36】 に よ って 実験 的 に発 見 され た 。左 辺 の 量 はWalden積 と呼

ば れ て い る 。 表3,4,1に 、 い くっ か の 代 表 的 な 溶 媒 中 で の 簡 単 な イ オ ン のWalden積 を

あ げ た 。 こ の 表 か ら分 か る よ う に 、Walden則 は厳 密 に 成 り立 っ 法 則 で は な い 。Walden

以 降 の 研 究 で は 、 む しろ さ ま ざ まな 条 件 の も とで のWalden積 の 変 化 が 議 論 さ れ て きた 。

こ の よ う に 、 電 解 質 溶 液 の 電 気 伝 導 度 に 対 す るSt。kes-・Einsteinの 関 係 は 、 実 験 と あ

ま り良 い 一 致 を 示 さな い 。

伝 導 度 に 対 す るStokes。Einsteinの 関 係 の 問 題 点 を も う一 っ あげ て お こ う 。図3、4,1

は 、 メ タ ノ ー ル 中 で の 簡 単 な イ オ ンの 伝 導 度 の 実 測 値 か ら式(2,L5}を 使 っ て 計 算 し

た並 進 摩 擦 係 数 を 、結 晶 イ オ ン半 径 に 対 し て プ ロ ッ ト した も の で あ る 。二 本 の 直線 は

Stokes則 を あ らわ す 。一 見 して 明 らか な よ うに 、 並 進 摩 擦 係 数 の イ オ ン半 径 依 存 性 は 、

理 論 と 実 験 とで 定 性 的 に も一 致 して い な い 。 実 験 値 で は 、 イ オ ン 半 径 が 増 せ ば 一 旦 摩

擦 係 数 が 減 少 し極 小 を へ て 増 加 に転 じ る の に 対 して 、St。kes則 は イ オ ン半 径 に っ い て

単 調 な 挙 動 しか 示 さ な い 。 こ れ は 、 メ タ ノ ー ル に 限 らず 他 の 溶 媒 で も み られ る 一 般 的

な 現 象 で あ る 。 図3,4、2に は 、 メ タ ノ ー ル=水 混 合 溶 媒 系 に 於 る 一 価 イ オ ンの 並 進 摩

擦 係 数 の 溶 媒 組 成 依 存 性 を 示 し た 。実 験 値 に も理 論 値 に も極 大 が あ り、 一 見 し た と こ

ろ で は 、定 性 的 に よ く一 致 し て い る よ う に 見 え るが.よ く見 る と 、 メタ ノ ー ル が 増 え

る に従 っ て 、 理 論 と実 験 と の ず れ が 大 き くな っ て い る 。 同様 の 現 象 は 、 粘 度B係 数 に

於 て も み ら れ る 。 図314,3は 、 メ タ ノ ー ル 中 で の 粘 度B係 数 の イ オ ン 半 径 依 存 性 に っ

い て 、 実 測 され た粘 度B係 数 とEinsteinの 式(3,2、42)に よ る 理 論 値 とを 比 較 し た も の

で あ る 。 実 験 値 は 少 々 ば らっ い て い るが.小 さ な イ オ ン で の 理 論 と 実験 との ず れ は 明

一24

白で あ る 。メ タノ ー ル=水 混 合 溶 媒 の 場合(図3,4,4)に は 、理 論 と実 験 とのず れ は

さ らに明 白で あ る。Einstein理 論 では 、B係 数 は溶 媒組 成 に依 存 しないが 、実験 値 は

メタ ノー ル が増 える に従 って大 き くな ってい る 。/

()この 理 論 と実験 とのず れ は 、イ オ ンの 溶 媒和 を使 って説 明 され て きた 。っ ま り、小

さな イオ ンほ ど表 面 電荷 密度 が 大 きい ため に溶媒 を 強 く引 き付 け、有効 な 半径 が 大 き

くな る とい う説 明 で あ る 。混 合溶 媒 の場 合 に は、誘 電率 が小 さ くな るほ ど電 場 が強 く

な り、強 く溶 媒和 す る と考 え られ て い る 。 この考 えの 上 に たっ て 、Stokes-Einstein

の 関係(3,4,1)と 実測 の電 気伝 導度 とか ら求 め たイ オ ン半径 をSt。kes半 径 とい う。 し

か し、 この議論 は現象 の定 性 的な 説明 に とど まって お り、理論 に よ って説 明 され るべ

き量 を 、電 気伝 導 度 その もの か らStokes半 径 に置 き換 え たにす ぎな い。 ま た、Stokes

-Einsteinの 関係 が 成 り立 っ こ とを前 提 と してい る点 で、 この 議 論 は物 理化 学 的 に意

味を な さ な い。

これ らのNavier-Stokes式 に基 づ く理論 の 問題 点を 、連 続 体 モ デル の範 囲 内 で解 決

しよ う とす るのが 誘 電 摩擦理 論 で あ る。勿 論 、非常 に簡 単 なモ デル の上 に たっ 理論 な

ので 、 実験 値を 完全 に定量 的 に説 明す る こ とは望 むべ くもな いが.電 解 質 の特 徴で あ

る電荷 の効 果を取 り込 む こ とに よって 、現象 の定 性 的な 説明 は 十分 っ け られ る もの と

期 待 さ れ る 。誘電 摩 擦 理論 の歴 史 は、1920年 のB。rnの 論 文[371に まで さか のぼ るこ と

が で きるが 一彼 の論 文 は、1960年 代 以 降の理 論 の発展 と直接 的な 関 連が薄 いの で 、 こ

こで は触 れ ない こ と に しよ う%近 年 に於 る誘電摩 擦 理論 の発 展 の直 接の きっか けは・

Fuoss【38】 に よっ ても た らされ た 。

FuOSSは 、比 較 的大 きな イオ ン(テ トラブ チル ア ンモ ニ ウム ・イオ ンな ど)に っ い

て 、混合 溶 媒 中で のWaユden積 と静 的誘 電 率 との溶 媒組 成依 存 性の 類似 性 か ら、誘 電 率

と伝 導度 との関 係 を論 じて い る。 そこで 彼 は 、次 の よ うに誘 電摩 擦 のモ デル を説 明 し

た 。溶液 中 にイオ ンが 静止 してい る時 には、溶 媒の双極 子 は平均 と してイオ ンに向か っ

て配 向 してお り、 そ こ に力は働 か な い 。 イオ ンが 並進 して い る場 合 には、溶 媒 の双極

子 の 配向 が イオ ンの運 動 に瞬 間的 に追 従 出来 ず,お くれ を生 じる 。 この 時 イオ ンに働

く電 気 的 な 力が 誘電 摩擦 力 で あ る。先 に も述 べ た よう に 、 このモ デ ル は 、Onsagerの

伝導 度 理 論の な か の緩 和 効 果 と よ く似 て い る 。FuOSSの 議論 は定 性 的な もの に止 ま っ

てい るが.か れ はStokes則 に対 す る補 正 と して、次 の よ うな 半経 験 式を 提案 した。

ζT=yπ ηo(R+β/ε 。)(4≦y≦6)(3,4、3)

βは 、経 験 的 に決 ま る係 数 で あ る 。 この 式 をみ る と、FUOSSが 有 効 半径 の増 大 とい う

考 え方 に とらわれ て い た こ とが わか るg誘 電 摩擦 理 論 に於 け るFUOSSの 貢 献 は、決 し

一25

て この 式 を提 出 した こ とで は な く、誘 電摩 擦 の モデ ル を言葉 で正 確 に描 き、 その後 の

理論 的研 究 に直 接の 動機 を 与 え た ことで あ る 。

表3、4,1代 表 的 な 溶 媒 中 で の 一 価 カ チ オ ン のWalden積(25℃ 、1気 圧)

水 MeOHEtOH AC AN FA NMF

ηo(cP) 0,8900t551110870,3030、3413,31 1,65

Na+

K+

Cs+

Et,N"

Bu4N+

0,447

0,665

0.688

0,287

0,172

0,249

0,289

0,355

0,334

0,215

0,221

0,257

0、288

0,318

0,214

0,235

0。239

0,253

0,271

0,201

0,262

0.285

0、298

0.289

0,209

O、334

0。422

0.459

0,365

01226

0,356

0,365

0,406

0,432

0,170

AC:ア セ トン 、AN=ア セ トニ ト リル 、A:ホ ル ム ア ミ ド

NMF3N一 メチ ル ホ ル ム ア ミ ド

一26一

5

^4

∈りo-3

99

)2

1

00

Li'4

。NざSti・k3

0Cro

Kやo●B⊂2

c`。 ●」1。o

Stip

5

図3,4,1、 メ タノ ール 中で の一.価イ

オ ンの 並進 摩 擦係 数 の イオ ン半径 依

存性 。25℃ 、1気 圧 。Oく ●は実

測 値(極 限 モル 電 気伝導 度 カモう計算

したもの)。 実 線 はStokes則 。数 字

はテ トラア ルキ ル ア ンモニ ウム ・イ

オ ンを一 っの アル キル基 の炭 素数 で

表 わ してい る 。半 径 は結 晶 イオ ン半

径 。

1 23 

R(A)

4

4

 

∈り

叩⊆~2ね

Nざ

K◆

K◆1'一 一 刷隔、、ノ  

/Nざ \ 、、

り/'へ \ \ こ'\、!、 、 、 、

、 、、、、

、 、、 、

O

∩U

●20406080100

MeOH(mot。 ノ。)

図3,4,2,メ タ ノ ール=水 混合 溶媒

中で のNa"イ オ ン とK◇ イオ ンとの

並 進摩 擦係 数 の 溶媒 組成 依 存 性 。

25℃ 、1気 圧 。実線 は実測 値 。破

線 はStokes則{Slip}g

一27一

o.4

σ2

(pL。∈

.n∈

)

・D

0

コやL6iK←C「

,9..C9・Bビ

●1-

o

Rげ

Stick

Stip ol

30

02

4

0 1 23 

R(A)

4 5

図3・4・3・ メタ ノー ル 中 での一 価

イオ ンの粘度B係 数 イオ ン半 径依存

性 。25℃ 、1気 圧 。O、 ● は実 測

値 。実 線 はEinstein理 論 。数 字 はテ

トラアル キ ル ア ンモニ ウ ム ・イオ ン

を 一 っの アル キ ル基 の炭 素 数 で表 わ

して い る。

O.4

(

tCOE・2

のε

三薗

0

Li◆

o

o

o

κ 口

0 20406080100

MeOH(mol。Z。)

図3,4、4、 メ タ ノ ー ル 二水 混 合 溶 媒

中 で のLi+イ オ ン とK+イ オ ン との

粘 度B係 数 の 溶 媒 組 成 依 存 性 。25

℃ 、1気 圧 。 実 線 は 実 測 値u破 線 は

Einstein理 論(Slip)。

一28 一

3,5,初 期 の 誘 電 摩 擦 理 論(Boyd-Zwanzig理 論)

lFUOSSの 指 摘 に刺 激 を受 け て 、電 気 伝 導度 に対 して最 初 に誘 電 摩 擦 の理 論 を 作 り上

げ たの はB。yd[39】 で あ る。 そ して 、それ を追 いか け る よ うにZwanzigの 理 論[40】 が 出

た 。 この二 人の理 論 は 、互 い に違 う方 法 か ら同 じ結 論 を導 き出 して い る 。二 人の方 法

に共 通 してい る こ とは 、流 体 力学 的な 効 果(溶 媒 の流 れ によ って生 み出 され る効果)

を舗 して、純 粋 に電 磁気学 的 あ るいは誘 電体 論 的 に問題 を解 いて い る点 で あ る。 し

か し、 それ によっ て却 って誘電 摩 擦の イ メ ージを 明確 に捕 まえ る こ とが 出来 る 。この

理 論 の 中で 大事な 役 割 を果 た してい るの は 、後 に述 べ るHubbard-Onsager理 論[5,61に

於 てPolarizationDeficiencyと 呼 ば れ て い る量 と基本 的 に は同 じ量 で あ り、 また理

論 と実験 との比 較 で用 い る残 余 摩擦 係 数 の概念が 述 べ られ て い るの は注 目 に値 す る。

Zvanzigの 計 算 の方 針 を 説 明 す る と次 の よ うで あ る。 まつ,電 場 の 周 波 数 ω に依 存

す る誘 電 率 ε〔ω}を 持 っ連 続 体 を考 える 。そ して 、その 連続 体 の 中を 一定 速度 で運 動

す る電 荷 を持 っ た球(イ オ ン)に よって作 り出 され る分 極Pを 計算 す る 。誘 電緩和 に

は有 限 の 時間が か か るの で 、動 い てい る イオ ンの周 りに作 られ る分 極 は 、止 まって い

るイ オ ンの まわ りの分 極 とは異 な ったもの にな る 。(こ の 、分極 の 平衡 か らのず れが

Polarizati。nDeficiencyで あ る 。)次 に誘 電 体 の分 極 が イ オ ンに及 ぼ す電 場(反 作

用場)及 び それ に よ る力 を計 算 す れば 、 イオ ンに働 く誘 電摩 擦 力が 分 か る 。その表 式

で速 度 にかか る係 数 が 誘電 摩 擦 によ る並 進摩 擦係 数 で あ る。全 体 の 摩擦 係 数 は この誘

電摩 擦の摩擦係 数 に粘 性摩擦 の摩擦 係数(Stokes則)を 足 したもの として表 わ され る。

具 体 的 に理論 の 中 味 を 見 て い く代 わ りに、Onsagerの 伝導 度 理 論 の例 に倣 って オ ー

ダー ・エ ス ティメ ー シ ョンを して お こ う。 まつ 、イ オ ンは 中心 に電 荷eを 持 っ 半径R

の分 極 しな い剛体 球 で あ る とす る 。溶 媒 の複 素誘 電 率 ε{ω}はDebyeの 式で 表 わ さ れ

る とす る 。イオ ンの 速度 をuと した とき、誘 電緩 和 時 間 τDの 間 に イオ ンが 動 く距 離

δは 、

δ=uτD(3,5,1}

この δ とイ オ ン半 径Rと の 比Qが,系 の 非対 称性 を特 徴 づ け る。

UτDQ={3、5,2)

R

誘電 体 中 での電 気 的 な応 力 の オ ーダ ー は 、ED/4π で 決 まる 。Eは 電 場 、Dは 電 気

変 位 で あ る。DとEと の関係 は 、

D=E十4πP(3,5,3)

一29

Pは 電 気分極 で あ る。い ま興味が あ るの は、誘電緩 和 に よる系 の非対称性 のみなの で 、

Dの な かの 配向分 極PD(分 極 の 中か ら ε。。の 寄与 を除 い たもの)だ けを問題 にす る 。

ε0一 ε◎QPD=E(3、5、4)

Eに 誘 電 率 ε。のC。ulomb場 を 用 い 、 イ オ ン に か か る 力 を イ オ ン表 面 で の 応 力 σを 使 っ

て 近 似 す る 。

e2(εo一 ε◎o)σ=(3.5.5)

4π ε02R4

こ れ は単 位 面 積 あ た りの 力 な の で 、表 面 積 を か け て イ オ ン に か か る 力fを 求 め る 。

e2(εO一 ε00)f=(3,5,6}

ε02R2

こ れ にQを か け た も の が 、 誘 電 摩 擦 に よ る 力 △fで あ る 。

e2{ε 。 一 ε。。)τD△f=u(3t5,7)

ε02R3

よ っ て 誘 電 摩 擦 に よ る並 進 摩 擦 係 数 △ ζは

e2(εO一 ε◎0)τD

△ ζ ~(3,5,8)ε02R3

これ か ら分 か る よ う に 、 誘 電 摩 擦 に よ る 摩 擦 係 数 は 常 に 正 で あ る 。 正 確 な 計 算 の 結 果

は 、 こ れ と は フ ァ ク タ ー が 違 う 。 そ れ を 使 え ば 、 全 体 の 並 進 摩 擦 係 数 ζTは 次 の よ う

にな る 。

2e2(εo一 ε◎○)τD

ζT=yπ η。R+(3.5.9)3ε。2R3

こ の 式 に よ っ て 、 図3,4,1に み られ る よ うな 、 並 進 摩 擦 係 数 の イ オ ン半 径 に 対 す る

極 小 の 存 在 を 説 明 す る こ とが 出 来 る 。 こ れ は 定 性 的 には 大 きな 進 歩 で あ っ た 。 しか し、

定 量 的 な 面 で い え ば 、 この 式 は 小 さな イ オ ン の摩 擦 係 数 を桁 違 い に 大 き く見 積 も っ て

し ま う 。

こ の よ う に 、B。yd-Zwanzigの 理 論 で は 、 有 効 半 径 の 増 大 とい う見 地 を 離 れ て 、初 め

て摩 擦 係 数 そ の も の の 増 大 を 問 題 に し た 。 並 進 摩 擦 係 数 のStokes則 か ら のず れ は 、残

余 摩 擦 係 数 と呼 ば れ て お り 、Nakaharaら 【41】に よ っ て 導 入 さ れ たが 一 そ の 考 え方 の 萌

芽 は こ のBoyd-Zwanzigの 理 論 に あ っ た と い え よ う 。

Zwarizigは 、 イ オ ンの 並 進 に つ い て の ほ か に 、 溶 液 中 で 回 転 す る双 極 子 に つ い て も 、

誘 電 摩 擦 に よ る摩 擦 係 数 を 計 算 した[42】 。後 者 の 計 算 は 、後 にNeeとZwanzigに よ る誘

30一

電 緩 和 の 理 論 【43】へ と発 展 して ゆ く。 しか しな が ら 、 回 転 す る球 形 イオ ンに対 して は 、

Boyd-Zwanzigの モ デ ル で は 誘 電 摩 擦 は 働 か な い 。

イ オ ンの 周 りの 溶 媒 の 変 形(粘 度 の 問 題)に つ い て は 、B。yd・・Zwanzigの モ デ ル で 誘

電 摩 擦 が 働 く と 考 え ら れ る 。 だ が 、並 進 に つ い て のZwanzigの 計 算 は 静 止 流 体 中 を 運

動 す る イ オ ンを 取 り扱 っ て お り、 そ の ま ま の 形 式 で 問 題 を粘 度B係 数 に移 行 させ る こ

とは 出 来 な い 。結 局 、 粘 度 に対 す る誘 電 摩 擦 理 論 は 、 理 論 の 中 に 溶 媒 の 速 度 場 の効 果

が 取 り入 れ られ る まで は導 か れ る こ とが な か っ た 。 しか し、 そ の オ ー ダ ー ・エ ス テ ィ

メ ー シ ョ ン は簡 単 な の で 、 こ こ で 行 な っ て お こ う 。

Jones-Dole式 のA係 数 を 算 出 し た 時 と同 じ速 度 場 を 考 え る 。誘 電 緩 和 時 間 τDの 間

に イ オ ン と接 し て い た溶 媒 が 動 く距 離 δ は

δ=αRτD(3。5、10)

よ っ て 、 系 の 非 対 称 性 を表 わ す 比Qは

Q=α τD(315.11)

誘 電 摩 擦 に よ る 力 △fは

e2(εO一 ε◎○)τD△f=α(3,5,12)

4π ε。2R2

以 前 と同 様 に 、 濃 度 を 掛 け 、 特 性 長 さRで 割 れ ば 、 誘 電 摩 擦 に よ る応 力 △ σが 出 る 。

e2(ε 。 一 εoO)τDN△ σ=・ 。cα(3.5,13)

4π ε。2R31000

誘 電 摩 擦 に よ るB係 数 の 増 分 △Bは

e2(εO一 ε◎O)τDN△B~ ・(3、5,14)

4π ηoε 。2R31000

こ れ にEinsteinの 理 論 に よ るB係 数 を 加 え れ ば 、 全 体 のB係 数 が 出 る 。

Boyd-Zwanzigの 誘 電 摩 擦 の モ デ ル は 、vanderZwanとHynes[441に よ っ て 電 荷 移 動

反 応 に対 す る溶 媒 効 果 の 計 算 に も 応 用 さ れ て い る 。

3,6,溶 媒 の 速 度 場 の 取 り込 み(Zvanzig,Clarkの 理 論)

Boyd-Zwanzig理 論 は 、先 に も述 べ た よ うに、定性 的 には大 きな 成功 を収 め たが 、定

量 的 に は あ ま り成 功 とはい えな か った 。 この 理論 は 、摩 擦係数 のStokes則 か らのず れ

(残 余 摩擦 係数)を 過 大 に評 価 す る傾 向が あ り、 実験 との不 一致 は 、イオ ンが 小 さ く

な る ほ ど甚 しくな る 。 それ は 、Boyd-・Zwanzigの モ デ ルで は溶媒 の 速度 場が 無視 され て

一31一

い るか らで ある 。イ オ ンを止 め て考 え た時 、B。yd・・Zwanzigの モデ ル は、溶 媒 の速 度 を

位 置 によ らず一 定 とみ な してい る 。 しか し、実際 には イオ ンの 電荷 を取 り去 っ た場合

で さ え、Stokes則 の所 で 見 た よ うに溶 媒 の速 度 は位 置 に依存 す る 。具 体 的 に いえば 、

イオ ン近 傍 で は遠 い所 に比 べ て速 度が 遅 い 。す る と 当然 周 りの 分極 のず れ は今 まで考

えて い た よ りも小 さ く、誘 電摩 擦 力 も小 さい筈 で あ る。.そこで 、イオ ンの電荷 が 溶媒

の流 れ に影 響 を与 えな い とい う近 似の も とに 、流 れ の影 響 を分 極 に取 り込 む こ とが 考

え られ た 。 それがZwanzigの 理 論[45】 で あ る 。以 下 にその 計 算 を示 すが 、先 に い って

しまえば 、結 果 は式 〔3,5,8}と 大 きな 変化 はな い 。 ただ、 流 れ の影 響 を取 り込 む事 に

よっ て 、誘電 摩擦 理 論 に も とつ い た電 解質 溶 液 の粘度 のB係 数 の理 論 的計算 【46】を可

能 に した点 で 、Zwanzig理 論 の改良 は画 期的 な進 歩 で あ っ た。

で は具 体 的な 中味 に入 ろ う。電 場が 時 間 に依存 す る時 、電 気 変位Dと 電 場Eと の関

係 は 、 その応 答 を表 わ す減 衰 関数K(t}を っか えば次 の よ うに書 け る。

B(婁 ・t}=∫ 〕♂(t-・ 画 言 ・ ・)d・ 〔一}

K(t}は 複素誘電率 と次のような関係にある。

・(ω)=∫lg・(t}・x・ 〔iωt}dt(一)

い ま、電 場 中 にあ る誘電 体(溶 媒)に 定常 的 な流 れが あ る と しよ う。す る と電場 も

定 常 的 にな り直接 時 間 には依存 しな くな るが 、式(3。6.1)が 局 所 的な 方程 式 で はな く

な るの で 、 壱(釣 はF(s)を とお して時 間 に依 存 す る よ うにな る 。 き 〔s}とは 、時刻t

に 玄に い るべ き流 体 要 素が 時刻sに い る位 置で あ る。 蒼(?(s))を 時 間 にっ いて展 開

   

し、 流 体 の 速 度v(r)に っ い て 一一一一次 の 項 ま で と る こ と に す る 。

宣(F(,)}=k(釣 一{t-。)G(婁}・ ▽ 査。{釣 〔3.6,3)

こ こ で 冠 。は 守=0の 時 の 電 場 で あ る 。 この 式 を(3.6,1)に 代 入 し 、Debyeの 式(3.3、7}

で 複 素 誘 電 率 が 与 え ら れ る とす れ ば 次 の 式 を 得 る 。

6(F)=。 。E(F}一{。 。 一 。 。。}τ 。e(2)・ ▽ 壱 。(あ(3.6.4)

 

E。 に ク ー ロ ン 場 を 使 う と、 電 気 ポ テ ン シ ャ ル φ に っ い て 次 の 関 係 が 得 られ る 。

▽ ・φ=γ ▽ ・(?(F)・ ▽ ▽r-・)(3.6,5}

γ=e(εo一 εoO)τD/ε02{3.616}

こ の 式 で 、溶 媒 の 速 度 場 にSt。kes場 を 用 い て 、 イ オ ンの 内 と外 と の ポ テ ン シ ャ ル を 計

算 す る 。 イ オ ン内 部 に つ い て は 、 式(3・6・5)の 右 辺 は ゼ ロ で あ る 。 イ オ ン の表 面 で は 、

通 常 の 電 磁 気 学 的 な 境 界 条 件 を 用 い る 。 イ オ ン 内 部 で の ポ テ ン シ ャル か ら 、 イ オ ンの

一32一

電 荷 に よ るC。ulombポ テ ン シ ャ ル(e/r)を 差 し 引 け ば 、 イ オ ン に 対 す る反 作 用 場

の ポ テ ン シ ャル に な る 。 そ れ に よ っ て イ オ ン にか か る 力 が 誘 電 摩 擦 力 で あ る 。 計 算 を

行 な う と 、 誘 電 摩 擦 に よ る 並 進 摩 擦 係 数(残 余 摩 擦 係 数)△ ζ は 次 の よ う に な る 。

'e2(ε 。 一 ε。。}τD△ ζ=S(3.6.7}

R3ε ◎(2εo十1)

S=3/8{forStick)

3/4(forSlip}

先 に も 書 い た よ う に 、 こ の 結 果 は(3,5,8}と 大 きな 変 化 は な い 。StickとSlipと で は 違

う 結 果 を あ た え るが.こ れ は 周 りの 速 度 場 の 違 い に よ る 。Stickに 比 べ てslipは 、 イ

オ ン 近 傍 で 溶 媒 が 速 く動 くた め 、PolarizationDeficiencyが 大 き くな り、 残 余 摩 擦

係 数 が 大 き くな る 。 こ れ は 次 に 述 べ るHubbard-Onsager理 論 の 場 合 で も 同 様 で あ る 。

Zwanzigの 理 論 を 粘 度B係 数 の 計 算 に応 用 し た の はClark[461で あ る 。Clarkの 理 論

で は 、 ま つ 式(3,6,5~6}とEinsteinの 速 度 場 とか ら イ オ ン内 外 の 電 気 ポ テ ン シ ャ ル を

計 算 し 、 イ オ ン に か か る電 気 的 応 力 を 見 積 も る 。 そ の 応 力 を 大 き な 体 積 に っ い て平 均サ

す るの だが 、 この場 合 、 イオ ン外部 で の全応 力が.イ オ ン内部 の もの と釣 合 ってい る

こ とを利 用す る 。イオ ン内部の電 気的応 力のZX成 分 σE,。。は、次 の式で 計算 出来 る。

EzEx

σE,zx=

e4π

誘 電 摩 擦 に よ るB係 数 の 増 分 は 、 最 終 的 に 次 の よ う に な る 。

e2(ε0,一 ε ◎0}τD

△B=S

ηoε 。{3εo十2}R

S=5/12{forStick}

2/3(forslip}

(3,6,8}

(3,6、9)

球 形 イ オ ンの 回転 に対す る誘 電 摩擦 係数 は、 このモ デ ルを使 って も出 て こな い。

こ こで 、ZwanzigとClarkの 理 論 が 、実 際 に実験 値 とどの程度 の 一致 を示 す の かを み

てお こ う 。図3,6,1は メタ ノー ル 中の 電 気伝 導度 の実測 値 か ら計算 した並進 摩 擦係 数

の イオ ン半 径依 存 性 を 、Zwanzig理 論 に よる もの と比 較 した もの で あ る 。 これを 見 て

明 らか な よ うに 、小 さな イオ ンの摩擦 係 数の 理論 値 は 、実験値 に比べ て桁 違 い に大 き

い 。図3,6,2に は メタノー ル=水 系 にお け る並進摩 擦 係数 の溶媒 組成依存 性 を示 した 。

これ を み れば 、溶媒 の誘電 率 が小 さ くな るほ ど理 論 によ る過 大評 価が 大 き くな るこ と

が 分 か る。図3,6,3~4に は、粘度B係 数 につ いて、い まの二 っ の場合 をプ ロツ トした。

程 度 の 違 い はあ るが 、粘度 の場合 に も伝 導度 と同様 の こ とが い え る。

33

500

400

§300ユ

?⊆~

200

100

0

Zwanzig

Stick

/Stip

Stokes

LO.}イ}o--

Li'NδK'+

1234

01 2345 り

R(A)

図3,6,1,メ タ ノ ー ル 中 で の 一 価 イ

ォ ン の 並 進 摩 擦 係 数 の イ オ ン 半径 依

存 性 。25℃ 、1気 圧 。 ○ 、 は 実 測

値 。 実 線 はZwanzig理 論 。破 線}ま

St。kes則 。 数 字 は テ トラ ア ル キ ル ア

ン モ ニ ウ ム ・イ オ ンを 一 っ の ア ル キ

ル 基 の 炭 素 数 で 表 わ し て い る 。

120

O

O

8

ム耳

(Eり詮

-。一)よ

Nざion

S[ip

Zwanzig

Stick

ObsStokes

/00 50100

MeOH(md。 ノ。)

図3,6,2,メ タ ノー ル 二水 混 合 溶

媒 中 で のNatイ オ ンの 並 進 摩 擦 係

数 の 溶 媒 組 成 依 存 性 。25℃ 、1気

圧 。 ○ は 実 測 値 。実 線 はZwanzig理

論 。 破 線 はStokes則 。

一34一

1.O

O.8(

T

Eo,6

σ)

こO.4

00

02

O

αarkStick

》//4

C§//K→C「

蝶 ≒締ン/!

!!!oノ ノ

Einstei・ ,/ニ ニ//2-一 一 一 一`二 一'0

1

23む

R(A)

4 5

図3、6,3,メ タ ノ ー ル 中 で の 一 価

イ オ ンの 粘 度B係 数 の イ オ ン半 径

依 存 性 。25℃ 、1気 圧 。 ○ 、 ●

は 実 測 値 。 実 線 はCユark理 論 。破

線 はEinstein理 論 。数 字 は テ トラ

ア ル キ ル ア ン モ ニ ウ ム ・イ オ ン を

一 っ の ア ル キ ル 基 の 炭 素 数 で表 わ

して い る 。

O 1

1.2

80

40

(T]。∈

の∈三

oD

Li"iOn

Obs

Clark

Stick

Slip

Einstein

0 50

MeOH(mol。1。)

100

図3,6,4,メ タ ノ ー ル=水 混 合 溶

媒 中 で のLユ+イ オ ンの 粘 度B係

数 の 溶 媒 組 成 依 存 性 。25℃ 、1

気 圧 。○ は 実 測 値 。 実 線 はClark

理 論 。破 線 はEinstein理 論 。

一35一

3.7Eubbard-・Onsager方 程 式

Zwanzi9の 理 論 は、Boyd-Zwanzigの 理論 に比べ れば 、溶 媒 の速 度場 の 効 果が 取 り入

れ られ た分 だ け、確 か に残余 摩 擦係 数が 小 さ く見積 も られ てい る 。 しか し、 それで も

過 大評 価 が 改善 されな か っ た とい うこ とは 、溶 媒 の取 り込 み方 に まだ問題 が あ るもの

と考 え られ る。イ オ ンの周 囲の 溶媒 は 、 イオ ンが 作 り出す非常 に強 い電 場 の 中 にあ る

ため に 、 イオ ンに強 く引 き付 け られ る。 その ため 、イ オ ンの周 囲 の速度 場 は 、Stokes

場 よ りも さ らに ゆ っ く り したも の にな る筈 で あ る 。従 ってPolarizationDeficiency

が 小 さ くな り、誘電 摩 擦力 も小 さ くな る 。速度場 が 変化 す るので 、粘性 摩 擦 力 も もは

やSt。kes則 で表 わ す こ とは 出来 な くな る.溶 媒 の運 動方程 式 にイ オ ンの電場 の効果 を

取 り込 む こ とが 出来 れ ば 、その 方程 式 を解 くこ とに よって 、この効 果 を定量 的 に議 論

す る こ とが 出来 る。 イオ ンの電 気伝 導度 を計 算 す る ため に、 この方 程式 を 初め て導 い

たの がHubbardとOnsager[5,6】 で あるvこ の モデ ル は 、連続 体 モデ ル の範 囲 内で動 的

な溶 媒 和 を 考慮 した とい え るだ ろ う。

電 場 中 に於 る誘 電流 体 の運 動 方 程 式を 導 くため には 、Navier-Stokes方 程 式 を導 く

時 に考 え た粘性摩 擦 に よる応 力 の ほか に、電 気的 な応 力 を加 え る。電 気 的 な応 力 は、コ

Maxwel1の 応 力 テ ンソル σEで あ る。

6'。,tj=(D、EJ+E、D、-E・Bδ 、,)/8π{31711}

Maxvell応 力 テ ン ソ ル の こ の 形 は 、 壱 とBと を 結 び 付 け る 誘 電 率 が 異 方 性 を 持 っ て い

る 時 の 一 般 的 な 形 で あ るが 、 誘 電 流 体 が 流 れ て い る場 合 、誘 電 緩 和 の 影 響 で 誘 電 率 は

等 方 的 で は な くな る の で こ の 形 の もの を 用 い た 。(溶 液 化 学 に於 て は 、Maxwel1の 応

力 テ ン ソ ル は あ ま りな じみ が な い の で 、付 録1で そ の 導 出 を して お く 。)こ れ を 使 っ

てNavier-Stokes式 を 拡 張 す る と

∂弓 → →__十(v・ ▽)v}=▽ ・1デH十 ▽ ・~デE(317,2)ρ{

θt

ゆ っ く り し た運 動 の み を 取 り扱 う こ と に して 、Stokes近 似 を 用 い る 。

0==▽ 。~デH十 ▽ ●~ヲE(3.7、3}

こ の 式 の 右 辺 第 一 項 はNavier-・Stokes式 の 場 合 と 同 じで あ る 。 第 二 項 は 倉 、DSを 使 っ

て表わさなければならない。

8π ▽.8。=(s・ ▽)E+{首.▽}6+宜{▽.B)+6(▽.冒}

一 ▽(首 ・6}(3 .7,4}

36

ここで 次 の よ うな量 を 定義 す る。→ → →P*=ZDE-PD(3,7.5)

ε〇一ε◎oXD=(3、76)

 

こ のP'がP。larizationDefユciencyで あ る 。JuDは 、 分 極 の 配 向 部 分 に 対 す る 分 極 率 、

 

PDは 分極 の 配向 部分 で あ る 。

こ こ で 、Polarizati。nDeficiencyを 正 確 に 説 明 し て お こ う 。 分 極 言 の 中 に は 、 電

場 の 時間的な変 動 に瞬 間的 に付 いて ゆ く部分 と、少 し遅れ て付 いてゆ く部分 とが ある 。

先 の 部 分 は電子分 極 と呼ば れ 、分 子内 での 電 子の変 位 にお もに関係 して い る 。後 の部

分 は 配 向分 極 と呼ば れ 、分子 が全 体 と して向 きを変 え るこ とに由来 す る 。分 子の配 向

は 、電 子の 変位 に比 べ て非常 に長 い時 間が か か る。複 素誘 電率 を表 わすDebyeの 式(3,

3、7)で い えば 、 ε。。の部 分が 電 子分 極 を表 わ し、分 数 の部分 が 配向 分極 を 表 わす 。そ

れを 静 的 な分 極 率 に焼 き直せ ば 、配 向分 極 の分 極 率 は 式(3,7.6}の よ う にな る 。す る う  

と式(3,7,4)でx,Eは 、 電 場 に 変 動 が な い 時 の 配 向 分 極 を 表 わ す 。PDは 実 際 の 配 向

   

分 極 だが 、平衡 で はX,Eに な る。P"は 誘 電緩和 の 原動 力 で あ る。 そ して、誘 電摩 擦づ

理 論 に於 て もPが 中心 的な役割 を は たす 〆イオ ンに対す る誘電摩 擦 を考 え る時 には、

電 場 の 変 動 は溶媒 の 流 れ によ っ て引 き起 こ され る こ とは 、Zwanzig理 論 の とこ ろで 見

た とお りで あ る。溶媒 に定 常 的 な流 れが あ る時 に は、電 場等 は 時間 に依 存 しな いが 、づ

定 常 的 にP"が 作 り出 され る。 これ に よって誘 電摩 擦が 生 じる 。

こ こ で 、 式(3,7,4)を 宜 と 宣"で 表 わ す こ と に す る 。 次 の よ うなMaxwel1の 関 係 に 注

意 す る 。

6=E+4π づ   う

=ε ◎OE十4πPD

ロら ロら=εoE-4πP*

 ▽ ・Dニ0

 ▽ ×Eニ0

す る と 、Maxwel1テ ン ソ ル の 発 散 は 次 の よ う に な る 。     ら

8π ▽ ・ σE=2εo(E・ ▽)E う り  り  

-4π[(P*・ ▽)E十(E・ ▽)P*】

 +(ε 。E-

(3,7,7)

(3,78)

(3,7,9)

4π β つ(→ ▽ ・E)一 ▽(B・-rl)(317110}

こ こで 、速 度vの 二 乗が 含 まれ る項 は 、速 度が 十 分遅 い と して無 視 す る 。 この近 似

は、St。kes近 似 に対応 してい る。この近似 を行な うため に、Eを 二 つの部分 に分 ける。

一37一

→ → 一ウE=Eo十E,(3,7.11)

菅。は 、溝 の流 れ が な 購 の醐 で 、言 ・は溶媒 の 流 れ によ る樋 を 劾 す .壱 ・は

速 度 に対 して 一次 の 項 まで を とる こ とにす る。 この 分 け方 か らみ ると、 宣唇の定 義 は

次 の よ うな 意味 を 持 っ 。  の   PD=Po_p*(317,12)

葺・は 、溶媒 の流 れ が な い 時 の配 向分 極 、 言*溶 媒 の流 れ に よ る摂 動 を表 わ す 。養 は

やは り速度 に対 して一次の項 までを とる。さらに次の関係 に注意する。

2(→E・ ▽)fl=▽(E・)(3,7、13)

 ら  ら▽ ・Eニ(4π/εo)▽ ・P'(3,7114)

す る と

コ の づ  や  ウ

8π ▽ ・ σE=-4π[(P"・ ▽)Eo十(Eo・ ▽)Pタ

 う  タ

ーEo(▽ ・Pつ]十 ▽(scaユar)(3 .7.15)

ス カ ラ ー の 部 分 は 分 極 圧 力 と呼 ば れ る 量 で 電 気 的 な 圧 力 を 表 わ す が 、Navier-Stokes

式 の 圧 力 の 中 に 含 め て 考 え れ ば よ いの で 、 こ こで 正 確 な 形 を 書 き下 す必 要 は な い 。最

糸冬白勺に 二ま、

▽ ・8。=[怠 。×(▽ ×pt・)+E。(▽ β ・)]/2+▽(,cal、,)

(3,7、16)

こ れ を 式{3,7,3)に 代 入 す る 。流 体 力 学 的 応 力 テ ン ソル の 発 散 は 、既 にlavier-Stokes

式 の 導 出 の 際 に 利 用 し た 。         づ

ηo▽2vニ ▽p-(1/2)[Eo×(▽ ×Pつ 十Eo(▽Pつ1

〔317.17)

こ れ がHubbard-Onsager方 程 式 で あ り、 電 場 中 に於 る 誘 電 流 体 の ゆ っ く り した 運 動

に 対 す る運 動 方 程 式 で あ る 。圧 力 の 中 には 、先 ほ どの分 極 圧 力 も含 まれ て い る 。 も し、

   

Pをvを 使 っ て表 現 す る こ とが 出来 れ ば 、式(3,7,17)を 解 い て速度 場 を求 め る こ と

が 出 来 る 。      づ

P*をvを 使 っ て表 現 す る に は 、 まずPDの 時 間 変 化 をvを 使 っ て 表 現 す る 。 流 体 内

で と あ る 量xの 時 間 変 化 を 表 わ す の は 、 実 質 微 分 で あ る 。

dxθx→一=一 十(v・ ▽)x(3 17、18}

dtθt

 

こ こで 、xをPDと 置 けば よい訳 だが 、その ま までは流 体 全 体 が 剛体的 に回転 した と

きに も宣Dに 時 間変 化が あ るこ と にな る 。そ こで 、剛体 的 な 回転 に対 して、時 間変 化

を 持 た な い よ うにす る ため に 、次 の よ うな 式を利用 す る 。

一38一

∂宣・+(→V・ ▽)軋+三 蒼,×(▽ ×薪)

∂t2

誘電 緩 和がDebye型 の緩 和(指 数 関 数 的減衰)の 場 合 、昼Dの 時 間変 化 は緩和 時間 と次

の関 係 にあ る。

   ≧ 。 ∂PD+(→V・ ▽)F

、+1β,×(▽ ×e)(3,7.19)τD∂t2

この 式を 線形化 す る ため に、周波 数 ωの 周期 電場 を 仮定 し、ふ たたび速 度 に対 して

二 次 の項 を無 視 す る 。りP二

iω β,+(→V・ ▽)F.+⊥ β.×(▽ ×1)(3,7,2e}τ62

 ら  

こ の 式 の 回 転 と 発 散 を と れ ば 、 式 〔3,7,7}の ▽ ×P"と ▽ ・P'が 分 か る 。 但 しMax'stel1

の 関 係(3.7、7~9)を 考 慮 に 入 れ る と 、   ▽ ×P肇 二 ▽ ×PD(3.7、21)

▽ ・iS・ ・ 一 ε9▽.FD(3,7,22)

ε ◎o

 う  ラ

これ らか ら▽ ×P乍 と▽Pと を書 き下す こ とが 出来 る。

▽ ×P・ 一 τD▽ ×[(v.▽)P.+⊥ β。×(▽x炉)]

1十iω τD2

(3.7,23)

▽.さ ・=τD▽.[(e.▽)P.+⊥P。 ×(▽ ×e)]1十iω τL2

(3,724}

τL=(ε ◎○/εo)τD(3,7、25)

この τLは 、縦 緩 和 時間 と呼 ば れ て い る 。普 通 の 誘 電緩 和 時 間が 、電 場 の変 化 に対

す る電 気 変位 の応 答 を 特徴 づ け る時間 で あ るの に対 して 、縦 緩 和 時間 は 、電 気 変位 の

変 化 に対 す る電 場 の 応答 を 特徴 づ けて い る。

式(3,7,17)、(3,7,23~24)を 組 み 合 わ せ れ ば 、 寺 に っ い て の 方 程 式 が 得 られ る 。次

の 章 で は 、 この方 程 式 を解 い て各 種 の摩 擦 係 数 を求 め る 。Hubbard-Onsagerの 方 程 式

を使 えば 、球形 イオ ンの 回転 に対 す る摩 擦 係数 も、完 全 なSlip条 件 で な い限 り計 算 す

るこ とが 出来 る 。そ れ は、 この 方程 式が 溶媒 中の電 気 的 な反 作用 場 を計 算 して い るの

では な く、電 場 の効 果 によ る溶媒 の速 度 場 の変化 を計 算 して い るか らで あ る 。 この こ

とか らも 、Hubbard-Onsager方 程 式 の重 要性 が 分 か る 。

一39一

Hubbard-・Onsager方 程 式 に基 づ く誘 電 摩 擦 理 論 は 、現 在 に お け る 連 続 体 モ デ ル の 到

達 点 で あ る 。 そ の 後 、 電 気 的 な 境 界 条 件 【47】や 、誘 電 飽 和 の 効 果 の 取 り込 み[481な ど 、

Hubbard-Onsager理 論 を 改 善 す る 試 み が な さ れ た が 、定 性 的 に も 定 量 的 に も あ ま り大

き な 変 化 は な く 、 む し ろ 問 題 を 複 雑 化 し た の み に止 ま っ て い る 。Zwanzigよ り以 前 の

理 論 で は 、 基 礎 方 程 式 の 一 っ と し て 、 常 にNavier-Stokes方 程 式 を 用 い て い た.し か

し、 そ の よ うな 理 論 で は 、 電 解 質 溶 液 の 特 徴 で あ る イ オ ンの 電 荷 の 効 果 が 十 分 には 取

り扱 え な か っ た こ と は 、 す で に 述 べ て き た とお りで あ る 。Hubbard・-Onsager方 程 式 に

よ っ て 、 初 め て電 解 質 溶 液 の 特 徴 を 表 現 し た基 礎 方 程 式 が 出 現 し た 。 こ れ は 、 中 性 分

子 に於 るStokes-Einsteinの 関 係 の 出 現 に も 対 比 さ れ るべ き重 大 な 進 歩 で あ る 。

40

4・Hubbard-Onsager方 程 式 に よ る摩 擦 係 数 の 計 算

41L並 進摩 擦係 数

こ の 章 で は 、Hubbard-Onsager方 程 式 を 実 際 に解 い て 、球 形 イ オ ン に 対 す る各 種 の

摩 擦 係 数 を 計 算 す る 。以 下 の 計 算 で は 、B。yd-Zvanzig理 論 の 時 と同 様 の 、 次 の よ う な

モ デ ル を 用 い る 。 イ オ ンは 、 半 径Rの 分 極 しな い 剛 体 球 で 、 そ の 中心 に 点 電 荷eを も

つ 。 溶 媒 は 、 均 一 な 非 圧 縮 性 の 連 続 体 で 、 粘 度 ηoとDebyeの 式{3,3,7)で 表 わ さ れ る

複 素 誘 電 率 ε 〔ω)と を も っ 。溶 媒 の 流 れ が な い と きの 電 場 はCoul。mb場 で あ る 。

そ れ で は 、 ま つ 一 様 流 の な か で 静 止 し た イ オ ンの 周 りの 速 度 場 を 求 め よ う 。 この 計

算 は 、Hubbard[6}に よ っ て行 な わ れ た 。Hubbard-Onsager方 程 式 を 解 く手 順 は 、 さ き

にSt。kes則 を 導 い た 時 と 同 様 で あ る 。 速 度 場 の 関 数 形 は 、 式(3,2,1)で 与 え られ る 。

こ の 式 と 、 式(3.7,17}t(3.7,23~24)と を 組 み 合 わ せ 、 冒 。にC。ulomb場 を 入 れ れ ば 、

f(r}に 対 す る次 の よ うな 方 程 式 が 得 られ る 。

d4fd3fd2f

(r7+αr3)+8r6+[8rs-(12α+2βr}]dr.dr3dr2

df+[-8r4+(24α+4β)]=0〔4、1,1)

dr

e2(ε 。一 ε。。)τDα ニ()(4.1,2}

16π ηoε021十iω τD

1十1ω τD

β=α()(4、L3}1十 ユ ω τL

こ の 方 程 式 の 解 はHubbardに よ っ て 求 め られ て い る 。 そ こ か らは 、Stokes則 の 時 と 同

じ境 界 条 件 を 使 っ て 速 度 場 を 決 定 で きる 。(そ の 計 算 は 煩 雑 な の で 、付 録2に 譲 る 。)

電 気 伝 導 度 の測 定 は 、普 通 、 非 常 に遅 い 交 流 電 場 で 行 な わ れ る の で 、 こ こ で は ω →0

の 極 限 に の み 興 味 が あ る 。 こ の 場 合 、 雌 ≧ら一士 分 遠 ぬ一所 で の 速 度 場.は 、Stokes場

と同 じ形 に 表 わ す こ とが 出 来 る 。

RHORHO3f(r)=1-St-一 一一 十S2(4、L4)

rr3

e2(εO一 ε ◎○)τD

RH。4=(4、115)

16π ηoε02

RH。 は 、 且ubbard-Onsager半 径 と 呼 ば れ る 長 さ の デ ィ メ ン ジ ョ ン を 持 っ た パ ラ メ ー タ

一41一

で 、 粘 性 摩 擦 と誘 電 摩 擦 の カ ップ リ ング を 特 徴 づ け る 。 こ の 式 か ら分 か る よ う に 、 流

体 力 学 的 応 力 テ ン ソ ル は 、r-2で 減 衰 して い くの に対 し て 、 電 気 的 応 力 テ ン ソル は 、

EDの オ ー ダ ー な の で 、r-4で 減 衰 して い く 。 よ っ て 、 イ オ ン にか か る全 部 の 力 を 計

算 す る 際 に 、 イ オ ンを 囲 む 閉 曲 面 を 十 分 大 き く とれ ば 、 電 気 応 力 テ ン ソル の 寄 与 が 無

視 で き て 、流 体 力 学 的 応 力 テ ン ソ ル の み か ら計 算 出来 る こ と に な る 。っ ま り、 並 進 摩

擦 係 数 は 、 式(4,3,4)のStを 決 め れ ば 分 か る こ と に な る 。結 果 は 次 の形 に 書 け る 。

ζT=4π ηOS、RH。

=xηORHO(4.1、6)

xは 、 イ オ ン表 面 で のSlipパ ラ メ ー タ と 、R/R.。 の み で 決 ま る 。

図4,1,1に 、 計 算 さ れ た無 次 元 の 並 進 摩 擦 係 数xをR/R,。 の 関 数 と し て プ ロ ッ ト

した 。 こ の 図 で 注 目 す べ き点 は 、Zwaflzigよ り以 前 の 誘 電 摩 擦 理 論 で は 、 摩 擦 係 数 は

イ オ ン 半 径 が ゼ ロ の 極 限 で 発 散 して い た の に対 して 、Hubbard-Onsager方 程 式 に よ る

摩 擦 係 数 は 有 限 の 値 を 持 っ て い る こ とで あ る 。 さ ら に 、摩 擦 係 数 の イ オ ン 半 径 に対 す

る依 存 性 を み る と 、Stickの 場 合 とSlipの 場 合 とで 定 性 的 に 違 っ た結 果 を 与 え て い る 。

っ ま り 、Slipの 場 合 に は極 小 を 持 っ がLStickの 場 合 に は 単 調 増 加 で あ る 。Stokes則

に よ る 摩 擦 係 数 は 単 調 増 加 で あ り 、 一 方 、 誘 電 摩 擦 に よ る摩 擦 係 数 は単 調 減 少 と考 え

られ る か ら 、Stokes則 の傾 きの 違 い に よ っ て 二 っ の 効 果 の 拮 抗 が 見 え 隠 れ して い る も

の と思 わ れ る 。Zwanzig以 前 の 理 論 で は 、誘 電 摩 擦 の 効 果 を 大 き く見 積 も り過 ぎ て い

た の で 、 こ の よ うな 効 果 は お お い隠 さ れ て い た 。

電 気 伝 導 度 に対 す るHubbard-Onsager理 論 の テ ス トは 未 だ 十 分 に は 行 な わ れ て い な

いが 、 そ の 原 因 の 一 っ に 、理 論 の 使 い に くさ が あ げ られ る 。現 状 で はxの 値 は 表 に し

て与 え ら れ て い る だ け で 、 実 際 の イ オ ン に つ い て 計 算 し よ う とす る と、 内 挿 を 行 な わ

な け れ ば な らな い 。 そ れ で は 大 変 不 便 な 上 に 表 の 数 値 が 不 正 確 で あ った た め 、正 確 な

内挿 は 行 な え な か っ た 。 そ こ で 、本 研 究 で は こ れ らの 不 便 を 克 服 す る た め に 、xの 値

を 適 当 な 多 項 式 に あ て は め た 。 用 い た多 項 式 は 次 の 形 で あ る 。

yRR,。x=十 ΣaJ()j〔4,1.7)

R,。R

こ れ は 、 残 余 摩 擦 係 数 をR,。/Rで 展 開 し た形 に な っ て い る 。係 数 は次 の と お りで あ

る 。

y6π,a、 ・ 。2,2145,a2-6,9579,

a3-2,7296,a40,33777(forStick}

y4π,a1:-2、7866,a2:816216,

一42一

a3:-3,3425,a40,39550(forSliP}

こ の 係 数 は 、R/R,。 が0,3~300の 範 囲 で300点 を 選 ん で 計 算 した 正 確 なxの 値 を も

とに 、 最 小 自 乗 法 で 求 め た もの で あ る 。Slipの 場 合 に はR/RH。>0,3の 範 囲 、Stick

の 場 合 に はR/R,。>Oi35の 範 囲 で 、xの 値 をL2%以 内 の 誤 差 で 再 現 で き る 。 こ の

イ オ ン 半径 の 範 囲 は 、水 の 場 合 、 リチ ウ ム ・イ オ ンよ り大 き い イ オ ンを カ ヴ ァ ーす る 。

こ れ よ り小 さ いR/R,。 に対 して はSlip条 件 の み に つ い て次 の 係 数 を え た 。

y=4π,ao15,610,a-1=-11.3031

a_2-12,056,a_3ニ14.08i,a_4-3,2824

こ の 係 数 は 、R/R,。 が0~2の 範 囲 で200点 を 選 ん で 計 算 した 正 確 なxの 値 を も と

に 、 最 小 自 乗 法 で 求 め た も の で あ る 。R/R。 。<L9の 範 囲 でxの 値 を1%以 内 で 再

現 す る 。

Hubbard-Onsager方 程 式 か ら計 算 し た 速 度 場 が 、St。kes流 と 実 際 に ど れ ぐ ら い 違 う

の か を 見 る た め に 、水 中 の リチ ウ ム ・イ オ ンの 周 りの 速 度 場 を 、 二 っ の 場 合 で 比 べ て

み よ う 。 図4,1,2は 、 イ オ ン の 中心 を とお り流 れ に垂 直 な 面 上 で の 溶 媒 の 速 度 を 表 わ

した も の で あ り 、 無 限 遠 点 で の 速 度 が 同 じ に な る よ う に 描 い て あ る 。予 想 さ れ た と お

り、Hubbard-Onsagerの 速 度 場 は 、St。kes流 に 比 べ て 非 常 に 遅 い 。特 にSlip条 件 の 場

合 で み れ ば 、Hubbard-Onsagerの 速 度 場 は 、 イ オ ン表 面 で の 摩 擦 が な い に も か か わ ら

ず 、 イ オ ンの 近 傍 で ほ とん ど 止 ま っ て い る 。 この よ う に 、 溶 媒 の 流 れ に対 す る イ オ ン

の 電 荷 の 影 響 は 、決 して無 視 す る こ と は 出 来 な い 。

一43一

×

23

20

17

14

0

1/

H&ickノ/s象 懐

/!/HO!

/Slip/!/

//1/ノ ノStokes!/Slip

0.5 1.0 1.5

図4,1,1、Hubbard-Onsager理 論 に

よ る 、 無 次 元 の 並 進 摩 擦 係 数 。 破 線

OまStokes貝 〔∫。

R/RHO

Stick

NS

HO

SEip

図4,L2,一 様 流 の 中 に 置 か れ た 球

形 イ オ ンの 周 りの 速 度 場 。 イ オ ンの

中 心 を 含 む 断 面 を 溶 媒 が 通 過 す る と

きの 速 度 。25℃ 、1気 圧 に お け る

水 中 のLi+イ オ ンの 場 合 。NSは

Stokes方 程 式 か ら計 算 し た も の 。

HOはHubbard-Onsager方 程 式 か ら

計 算 した もの.

44

412,回 転 摩 擦 係 数

Hubbard-Onsager方 程 式 に よ るイ オ ンの 回 転 摩 擦 係 数 の 計 算 は 、Felderh。f【49}に よ っ

て 行 な わ れ た 。 こ の 場 合 も 、 イ オ ンの 周 りの 溶 媒 の 速 度 場 を 求 め る手 順 は 、 回 転 に対

す るStokes則 の 場 合 と同 じで あ る 。速 度 場 の 関数 形 は 式(3,2120)で 与 え られ る 。 こ の

 式 と 、 式(3、7,17}、(3、7、23~24)を 組 み 合 わ せ 、E。 にC。uiomb場 を 入 れ る 。 ω=0と

す れ ば 、f(r)に 対 す る 次 の よ う な 方 程 式 が 得 られ る 。境 界 条 件 は 式(3,2、23~24)で

あ る 。

RHO4d2f4df

(1十}十 一=0(412、1)r4dr2rdr

この 方 程 式 の 解 は 次 の よ うな もの で あ る 。

f(・}=3A(・ ・}∫?y÷R-4{412,2}

qo=RHO/R(4,2,3)

sR3

A(q。)={4,2,4)

1-sJ(qo}

J〔 ・・)=・-3∫ ∵ ≒.4{4・215}

回 転 摩 擦 係 数 は 次 の よ うに な る 。

ζRニ8π ηQA(q。}〔412,6}

図4、2,1に は 、 並 進 の 場 合 と同 じ よ う に 、 次 の 形 で 表 わ したsニ1(Stick)の 場 合 の

無 次 元 の 摩 擦 係 数xをR/R,。 に 対 して プ ロ ッ ト し た 。

ζR=xη 。R,。3(4,217)

回転 の 摩 擦 係 数 は 、 イ オ ン半 径 に 対 して 単 調 に変 化 す る 。 こ の 場 合 も 、Stokes則 の 場

合 と同 じ よ う に 、 完 全 なSlip条 件 で は 摩 擦 係 数 は ゼ ロ で あ る 。

図4,2,2に は 、水 中 の リチ ウ ム ・イ オ ン に っ い てHubbard-Onsager方 程 式 か ら 計 算 さ

れ た 速 度 場 を 、St。kes則 の 場 合 と比 較 し た 。 誘 電 摩 擦 を 考 慮 した 場 合 、 溶 媒 が イ ォ ン

に強 く引 き付 け られ て 回 転 して い る こ と が み て とれ る 。

一45一

100

×

80

60

40

20

00

HOF

Stokes

O.5 1.0 1.5

図4,211、Hubbard-Ofisager-

Feユderhof理 論 に よ る 、 無 次 元 の 回

転 摩 擦 係 数 。

RIRHO

Stick Stip

、Stokes

図4,2,2,一 定 速 度 で 回 転 す る球 形

イ オ ン の 周 りの 溶 媒 の 速 度 場 。 イ オ

ン の 中 心 を 含 み 回 転 軸 に 垂 直 な 面 上

で の 速 度 。25℃ 、1気 圧 に お け る

水 中 のLユ+イ オ ンの 場 合 。Stokes

はStokes方 程 式 か ら計 算 し た もの 。

HOFはHubbard-Onsager方 程 式 か

ら計 算 し た も の 。

、 、HOF

一46一

4,3,粘 度B係 数

粘 度B係 数 の 計 算 も 、 手 順 はEinsteinの 理 論 の と き と同 じで あ る 。以 下 の 計 算 は 、

本 研 究 に於 て 初 め て な さ れ た 。 式(3,2,29)と 式(3,7、17}、(3,7,23~24)を 組 み 合 わせ 、 E。 にCoulomb場 を 入 れ る 。 ω=0と す れ ば 、f(r)に 対 す る 次 の よ うな 方 程 式 が 得 ら

れ る 。

d4fd3fd2f

(p8十p4}十(12p?十4p3)十(24p6-22p2)dp4dp3dp2

df-24p5十108f(p)ニ0(4、3、1)

dp

P=r/RHO(403,2)

境 界 条 件 は 、式(3,2,32~35)で 与 え られ る 。 こ の 方 程 式 を 次 の よ うな 方 法 で 数 値 的 に

解 き 、 粘 度B係 数 を 求 め る 。

まつ 、 イ オ ンか ら十 分 に 離 れ た位 置p、Nよ り遠 い位 置 で の 速 度 場 は 、Einsteinの 理

論 の も の と同 じ形 で あ る とす る 。

StS2

f〔p}=1-十(413,3)

P3P5

この 形 の 速 度 場 の 流 体 力 学 的 応 力 テ ン ソ ル は 、r'3で 減 衰 す る の で 、電 気 的 応 力 テ ン

ソル の 減 衰 よ り も速 い 。 よ っ て 、 こ の 仮 定 は 妥 当 な もの で あ る 。P、Nよ り内 側 の 位 置

で は 、f(p)は 四 っ の 一 次 独 立 な 関 数flの 一一次 結 合 で 表 わ さ れ る と す る 。

f(p>=ΣClf、(413、4}

vp、Nで 、f、 の ゼ ロ 次 か ら三 次 まで の 微 係 数 に適 当 な 初 期 値 を 与 え て 、Runge-Kutta法

に よ っ て 微 分 方 程 式 を 数 値 的 に解 く。 四 っ の 一 次 独 立 な 初 期 値 ベ ク トル を 与 え れ ば 、

そ れ か ら得 られ た 四 つ の 特 殊 解f1は 一 次 独 立 で あ る.境 界 条 件 か ら決 め るべ き定 数

は 、S1二 っ 、C1四 つ の 合 計 六 つ で あ る 。 式(3、2、32}は 、 自 動 的 に 満 た さ れ て い る 。

よ っ て 、境 界 条 件 は 、 式(3,2、33~35)と 位 置pエNに 於 る ゼ ロ 次 か ら三 次 ま で の 微 係 数

の 連 続 性 で あ る 。 六 っ の 定 数 が 分 か れ ば 、Einsteinの 理 論 の 場 合 と同 じ よ う に 、粘 度

B係 数 は 次 の 関 係 か ら計 算 で き る 。

4NB=一 πRH。3S⊥ ・

31000

N=xR,。3・(4,3,5)

1000

一47一

x=y十exp[2,631十 ΣaJ()j]

R,。3R,。

係 数 は 次 の と お り で あ る 。

y・10π/3,at=-71206×10層3,a2--0、5227、

a30.1615,a。 。0,01736

y4π/3,al:0,07468,a2-O,5910,

a30,1819,a4-0,01745

この よ うな摩 擦係 数 の計 算 方法 は 、電 気 伝導 度 の理 論 に誘電 飽 和 の効果 を 取 り入 れ る

際 に 、Stilesら[481に よ って初 め て用 い られ た。

図4,3,1に は 、式(4,3,5)で 定 義 され た無 次 元 のB係 数xをR/R,。 に対 してプ ロ ッ

トした 。並 進摩 擦 係 数 の場合 と同 じく、B係 数の 場合 に も、イ オ ン半径が ゼ ロの極 限

で有 限 の値 を と って い る。 ただ し、有 限 の イオ ン半径 に対 して は 、Slip条 件 の 時 に見

られ る極小 が 非常 に浅 い 。

並進 摩 擦係 数 の場 合 と同様 に 、こ こで も、理論 値 を再現 す るため の式 を 出 してお こ

う。用 い る関数形 は 、次 の もの で ある 。

R3R(4,3,6)

(forStick)

(forSユip)

この 係 数 は 、0.1<R/R,。<5,0の 範 囲 で50点 を選 ん で 計 算 した 値 か ら最 小 自乗 法

で 求 め た 。 こ の 式 は 、sしickの 場 合R/R,。 ≧o,7、slipの 場 合 に はR/R、 。≧o、1、

の 範 囲 で 正 確 な 計 算 の 結 果 を4%以 内 で 再 現 す る 。

以 上 の よ う に 、Hubbard-Onsager方 程 式 か ら 、 球 形 イ オ ン に対 す る各 種 の 摩 擦 係 数

を 導 く こ とが 出 来 た 。次 の 章 で は 、 こ れ らの 摩 擦 係 数 が 、 実 験 値 を どの 程 度 再 現 して

い るの か を み て い く 。

一48一

30

25

×

20

15

10

0

ノ/、

1////

Stickl

//

!/

/ノ

Slip乙 ⊥ 一一一一一//

O.5 1.o 1.5

図4、3,1,Eubbard-Onsager方 程 式

を 用 い て計 算 した 、無 次 元 の 粘 度B

係 数.

RIRHO

一49一

5.Hubbard-Onsasger方 程 式 に 基 づ く誘 電 摩 擦 理 論 の テ ス ト

この章 で は 、先 の 章 で且ubbard-Onsager方 程 式 か ら導 いた 摩擦 係 数が 、溶媒 分 子 と

あ ま り大 きさの違 わな いイオ ンにっ いての実験 値を どの程度再 現す るのかをみ てい く。

理論 の テ ス トに は、簡 単な球 形 イオ ン にっ いて 、現在 あ る限 りの 出来 るだ け多 くの実

験条 件 で のデ ー タを利 用 す る 。現在 まで にこの理 論 の テ ス トを行 な った例 と しては 、

電 気伝 導 度 にっ い て、 さ まざ まな溶 媒 中で イオ ン半径 依 存 性 を調 べ たEvansら 【50】の

もの と 、同 じく電 気伝 導度 にっ い て、水 中で の アル カ リ金属 イオ ンの挙動 を 、過冷 却

領域 や 重水 中を含 む種 々の条件 の もとで 調べ たNakaharaら 【41,51-55]の ものが ある 。

前者 は 、Walden積 を 使 っ たテ ス トで あ るが 、理論 の妥 当性 と限界 にっ いての 十分 な評

価が な され てい る とは い えな い 。後者 は 、残 余摩 擦係 数 を使 った テス トであ り、理 論

の妥 当性 と限界 とが注 意深 く議論 され てい る 。 しか し、彼 らの テ ス トは 、水 素結合 に

よ る構 造 性が 常 に問 題 にな る水溶 液系 に限 られ てお り、理 論 に対 して一般 的 な評価 を

下す に は適 さな い 。電 気伝導 度以 外の 二 っの 性質 にっ い ては 、今 まで に誘 電摩 擦理 論

が テ ス トされ た例 は な い 。 よって 、 こ こで 行 な うテ ス トは 、Hubbard-Onsagerの 誘 電

摩 擦理 論 に対す る初 め ての 、そ して広 範 囲 で系統 的 な テ ス トで あ る。

理 論 の テス トを行 な う際 には、摩擦 係数 の 計算 に任 意 性が 含 まれ ない とい う連続 体

モデ ル の利 点を 尊重 す る意 味か ら、ア ジ ャス タブ ル ・パ ラメー タの 導入 は一 切行な わ

な い 。溶 媒 の性 質 は 、実測 され たもの か 、 あ るい は実測 値が な い場 合 には 、実験的 に

妥 当な方 法 によ って 内外 挿 され たものを 用一い る 。ミ クロな誘 電率 、 ミクロな粘 度 な ど

の定 義不 明 な量 は持 ち込 まな い 。イオ ンの 半径 に は、結 晶 イオ ン半 径か 、 また は分 子

模 型 か ら予 測 され たものを用 い る。連続 体 モデ ル とい う非常 に粗 いモデ ル に対 して 、

この よ うに厳 しい制約 を課 してテ ス トを行 な うので 、理 論 と実験 とが完全 に定 量 的 に

一致 す る こ とは望 むべ くもな い 。 しか し、 も しも理 論が 妥 当な もので あ るな らば 、実

験条 件 の さ まざ まな変 化 に対 して 、定 性 的 に は正 しい摩 擦係 数 の変 化が予 言 され る筈

で あ る 。

5,1、 電 気 伝 導 度

電 気伝 導 度 にっ いて理論 の テ ス トに用 い るイオ ンは 、アル カ リ金属 イオ ン、ハ ロゲ

ン化 物 イ オ ン、 テ トラ アルキ ル ア ンモ ニ ウム ・イ オ ンとい う代表 的 な一価 の球 形 イオ

ンで あ る。理論 値 を 計算 す る際の 、イオ ン表 面で の境 界 条件 にはSlip条 件 を用 いる 。

一50一

完 全 に球 形 で は な い テ トラ ア ル キ ル ア ン モ ニ ウ ム ・イ オ ンに 対 して は 、 こ の 条 件 は あ

ま り妥 当 で な い か も しれ な いが 、 単 原 子 イ オ ン に 対 し て は 自 然 な 選 択 で あ る 。

電 気 伝 導 度 を 議 論 す る際 に は 、 古 くか らWaユden積 η。λoが 用 い られ て き た 【36]。 こ

れ は 、Stokes-Einsteinの 関 係 に 基 づ い て 、伝 導 度 の 中 の 粘 度 に依 存 す る 部 分 を 補 正

して 、 な く して し まお う と い う 目 的 で あ る 。 しか し 、 先 に も み た よ う に 、 伝 導 度 に対

して はStokes-Einsteinの 関 係 は成 立 しな い の で 、 粘 度 を 掛 け た だ け で 粘 度 の 効 果 が

補 正 で き る か ど うか は 、甚 だ 疑 問 で あ る 。 同 じ連 続 体 モ デ ル で あ るHubbard-Onsager

理 論 の 結 果 で は 、 η 。λoは 表 面 的 に は 粘 度 に 依 存 しな い が 一Hubbard-Onsager半 径 を

とお して 、な お 幾 分 粘 度 に 依 存 して い る 。 ま して 実 測 の 伝 導 度 と も な れ ば 、 ど の よ う

な 因 子 に 支 配 さ れ て い るか は さ だ か で は な く、 粘 度 を 掛 け る こ と に よ っ て さ ら に問 題

を 複 雑 化 す るお そ れ も あ る 。 よ っ て 、 こ こ で はWalden積 は 用 い な い 。

こ こ でWaユden積 に 代 わ っ て 理 論 の テ ス トに用 い る 量 は 、 先 に も 述 べ た残 余 摩 擦 係 数

△ ζで あ る 。実 験 値 に 対 して は 、 そ れ は 次 の よ う に 定 義 され る 。

iFel△ ζ=-4π ηOR(5,L1}

λo

理 論 値 に 対 して は 次 の よ うに な る 。

△ ζ=・ η。(xR,。-4πR)(5,1.2}

残 余 摩 擦 係 数 は 、全 体 の 摩 擦 係 数 か らSt。kes則 のSlip条 件 の 摩 擦 係 数 を 差 し 引 い た

も の で あ る 。Hubbard-・Onsager方 程 式 は 、 イ オ ン の 電 荷 が ゼ ロ に な っ た 場 合 に は 、 線

形 化 さ れ たlavier-Stokes方 程 式 に 一 致 す る の で 、 残 余 摩 擦 係 数 は 誘 電 摩 擦 に よ る 摩

擦 係 数 の 増 分 を 表 わ して い る 。 た だ し、 上 の よ うにStokes則 のSlip条 件 を 使 っ て 定 義

し た 場 合 に は 、残 余 摩 擦 係 数 は イ オ ン の 表 面 が 完 全 にSlipで は な い 効 果 を も含 む 。 実

験 値 に っ い て も 、 液 体 中 で の 中 性 分 子 の 拡 散 係 数 が,Stokes-Einsteinの 関 係 で あ る

程 度 近 似 で き る こ と か らみ て 、 参 照 系 と してStokes則 のSlip条 件 を 選 び 、 そ こ か ら の

ず れ を 議 論 す る こ と に は 十 分 意 味 が あ る 。

イ.イ オ ン半径依 存 性

で は最 初 に、各 種 の 溶媒 中 に於 る残 余 摩擦 係数 の イオ ン半径 依 存性 を 見 てみ よ う。

図4,1,1を み て分 か る よ うに 、Hubbard-Onsager理 論 か ら予想 され る残 余摩 擦 係 数は常

に正 で 、 イオ ン半 径 がゼ ロの極 限で有 限 の値 を持 ち 、イ オ ン半径 が 大 き くな る に従 っ

て単 調 に減少 して ゆ く 。残余 摩 擦 係数 の 大 きさは 、イ オ ン半径 だ けで はな く、粘度 と

・-51一

Hubbard-onsager半 径 に依 存 す るか ら、溶媒 に よって違 った値が 予想 され る。

具 体 的 な 中身 に入 る 。代 表 的 な非プ ロ トン性 溶媒 であ るアセ トンお よび アセ トニ ト

リル 中 で の残 余 摩擦 係 数 の結 晶 イオ ン半径 依 存 性 を 、図5.1,1に 示 した 。全 体 に理 論

値 は残 余 摩 擦係 数 を過 小 に評 価 してい るが.そ の ず れは 大 きな もの ではな く、実験 値

のオ ーダ ー を再 現 して い る。 そ して、 アル カ リ金 属 イオ ン とハ ロゲ ン化 物 イ オ ン とに

つ いて み れば 、実験 値 もイ オ ン半径 の増 大 に伴 って残 余 摩擦係 数 が減少 してお り、理

論 と定 性的 に一致 して い る。つ まり、Hubbard-Onsager理 論 は 、Zyanzig理 論 に比べ て、

は るか に よ く実験 と一致 す る。 これ は 、溶 媒 の速 度場 に対す るイオ ンの電荷 の 効果 が

如何 に重要 で あるか を物 語 って い る。ただ 、実験 値 にお いては アニ オ ン とカチ オ ンと

が 明 らか に 一本 の 曲線 にの らな いがLこ れ はHubbard-Onsager理 論か ら説明 す るこ と

は出来 な い 。 しか し、溶媒 の分 子 と しての性 格 を全 く無 視 した連 続体 モデ ルで 、これ

だけ の実 験 との 一致 が 見 られ るとい うこ とは 、理 論が 成 功を お さめ てい る とい って さ

しっ か えな い。テ トラ アル キ ル ア ンモ ニ ウム ・イ オ ンにっ いて は 、実験値 の イオ ン半

径 依 存性 に反転 が み られ 、理 論の予 測 と くい ちが って い る。 この違 いは 、イ オ ン表 面

で の境 界 条 件がSlipか らStickに 移 り変 わ って い くため にお こ るの か.あ るいは連 続

体モ デ ルの 破綻 を 表 わ してい るのか 、ど ち らであ るか は 、この 図の みか らで は判 断 出

来な い 。

図5,1,2で は 、 三種 の ア ル コー ル 中で の 一一一価 イ オ ンの残 余 摩 擦係 数の イオ ン半径 依

存性 を 示 した 。全 体 的 な傾 向 は先の図 と同様 で 、アル カ リ金 属 イ オ ンとハ ロゲ ン化 物

イオ ン と にっ いて は理論 と実験 とが定 性 的 に一致 す るが 、5Lhラ アルキ ル ア ンモニ ウ

ム ・イオ ンにっ い ては 問題が あ る。この 図か らは さ らに、残 余 摩擦 係数 の溶 媒依 存性

がHubbard-Onsager理 論 によ って驚 くほ ど見事 に再現 で きてい る ことがわ か る。一方 、

先 の図 で 見 られ なか っ た問題 点 と して 、実験 値 にお ける負の残 余 摩擦係 数の 存 在が あ

げ られ る 。負の残 余 摩擦 係 数 は誘電摩 擦 理論 か らは全 く予想 されな いが 、図3,3、2~3

をみ て分 か る よ うに 、非常 に小 さな中性 分子 の拡 散 にっ いて も見 られ る現象 で ある 。

図5,L3に 示 した水 の場 合 で は 、実験 値 に存 在 す る負の残 余摩 擦係 数 が さ らに明 ら

か に現 われ る。 この図 で は 、ハ ロゲ ン化 物 イ オ ン とテ トラ メチ ル ア ンモニ ウム ・イ オ

ンとが 負 の 残余 摩擦 係 数 を持 っが 、さ らに温度 を 下げ る と、セ シウム ・イオ ンも負 の

残摩 擦 係 数 を持 つ よ うにな る こ とが既 に知 られて い る[51]。 この 負の残余 摩擦 係 数 を

説 明で きな い こ とは、誘電摩 擦理論 の大 きな欠 点で ある と思 われ る。残余摩 擦係数 は、

全 体 の摩 擦 係数 か らStokes則 の摩 擦係 数を 差 し引 くこ とに よ って、 いわば 人工 的 に作

り出 され た量 で あ るか ら、 その 正 負は議論 す る価 値 のな い問 題 で ある とい う考 え方 も

一52一

有 りうるが 、こ こで は それ は と らな い 。何故 な ら、 メタ ノール や水 で み るか ぎ り、負

の 残余 摩 擦係 数 を持 っ よ うな 中間 サ イズ の イオ ンの 多 くは、後 で示 す よ うに負の粘 度

B係 数 を持 ってい る 。負のB係 数 の意 味 す る とこ ろは 、電解 質 を加 える こ とに よ って

溶 液 の 粘 度が 下が る とい う非常 に現 実 的な 問題 で あ る 。そ して 、図4、3.1で み た よ う

に、 誘電 摩擦 理論 は負 のB係 数 を 説明 す る こ とは出来 な い。残余 摩擦 係 数 と粘 度B係

数 とを関 係付 けてみ る限 り、負 の残 余摩 擦 係数 は理 論 の もっ 大 きな 欠点 に関 係 してい

る とみ る ほかは な い 。 ところで 、負の残 余 摩擦 係数 に関 しては 、水素 結 合 に よ る水溶

液 の構 造 性 に関連 して 、二 つの 説 明が な され てい る 。一 っは 、 中間 サイ ズの イオ ンは

電 荷の効果 が あ まり大 きくな いので近傍 に水分子 を強 く引 き付 け ることが な く、か えっ

て周 りの水 の構造 性 を破 壊 す る とい うもの で あ る 【56,57]。 この説 明 には定 量 性が 全

くな く、満足 で きる もの とは い えな い。 も う一っの 説 明 は、 中間 サ イズ の イオ ンは水

の構 造が作 って いる空孔 の中 にあ り、 その空 孔をす るす る とす り抜 けて い くこ とによ っ

て、非 常 に小 さな 摩擦 で並 進 して い く とい う 「空 孔 くぐ り抜 け 」機 構 の存 在 を想定 す

るもの で あ る1511。 この説 明 も また定量 的 で はな く、 さ らに粘度B係 数 との 関連が 不

明 の ま ま に残 され て い る 。負 の残 余 摩擦 係数 は、水 素結 合系 で粘 性 は高 いが 充填率 が

水 よ りは るか に大 き くて空 孔 の存 在が 考 えに くいグ リセ ロー ル で も見 られ るこ とか ら

み て[58]、 さ らに一般 的な 説 明が 望 まれ る 。

図5,L3で は また、 テ トラ アル キル ア ンモニ ウム ・イオ ンで の残余 摩 擦 係 数 の反 転

が よ り明確 に現 わ れ る 。疎 水基 の 周 囲の 水 は 、バル クの 水 に比べ て よ り構造 化 して い

る と いわれ てお り、水 溶液 中 での テ トラアル キル ア ンモ ニ ウム ・イオ ンの挙 動 は、 こ

の 「疎 水 性 」とか らめ て議 論 され るのが 常 であ る 【571。 しか し、残 余摩 擦係 数 の イオ

ン半径 依 存性 を 見 る限 り、テ トラアル キ ル ア ンモ ニ ウ ム ・イオ ンの 「異常 性 」は 、程

度 の差 こ そあれ非 プ ロ トン性 の溶 媒 で も見 られ る こ とか らみ て 、 よ り一般 的な 説明 が

必 要 で あ る と思 われ る 。

図5,1,4は 、誘電 率 の 高 い溶 媒 と して、 ホル ム ア ミ ドとN一 メチ ル アセ トア ミ ドの

例 を示 した。 これ らの溶媒 で は 、水で 見 られ たよ うな 理論 の 問題 点が 、 さ らに拡大 さ

れ て い る 。

一53一

2

C「1-

Li+NざK「C`BF一 1234

1(E

りユ

∩)

へ∠

①-ε

Uぐ

0

、、、 、

'\ 、 ●●●

Acetone

、\、、

\ ●●、、

、 、

Acetonitrile

012345む

R(A)

RげC「1-

Li'NざKやCξBr1234

15、

y5,Ll,ア セ トン、 アセ トニ トリ

ル 中で の一 価 イオ ンの残 余 摩擦 係数

の イオ ン半 径依 存 性 。25℃ 、1気

圧 。実線 は実 測値 。破 線 はHO理 論

(Slip}。 数 字 は テ トラア ル キル ア ン

モニ ウム ・イ オ ンを一っ の アル キル

1基 の炭素 数 で表 わ して い る 。

0(E

の'9

)

5

o

\\\\\\

\、、

、\

\\\

\、

\こ認

栖目\

\\

OH\ 

\ \ \\ \

   \ 、

、 、、へ

MeOH\ 、

o 1 23

 

R(A)

4 5

図5、L2,メ タ ノ ー ル 、 エ タ ノ

ー ル 、1一 プ ロ パ ノ ー ル 中 で の 一 価

イ オ ンの 残 余 摩 擦 係 数 の イ オ ン半 径

依 存 性 。25℃ 、1気 圧 。 実 線 は 実

測 値 。 破 線 はHO理 論(slip)。 数 字

は テ トラ ア ル キ ル ア ンモ ニ ウ ム ・イ

オ ンを 一一っ の ア ル キル 基 の 炭 素 数 で

表 わ して い る 。

一54一

4

(∈

2①-9

)

uぐ

0

Li' Water

oNa\3

\\\\\

\K+2

αB、1-1

4

23む

R(A)

4 5

図L:5・一,3iL水 中での 一価 イオ ンの残

余 摩 擦係 数 の イオ ン半径 依存 性 。

25℃ 、1気 圧 。実 線 は実 測値 。破

線 はHO理 論(Slip)。 数字 は テ トラ

アル キ ル ア ンモニ ウム イオ ンを 一

つ の アル キル 基 の炭素 数 で表 わ して

い る 。

o 1

C「1-

LrレNざK←CξBr 1234

51

21

宕9りFA

都 、どNMF\

3

o

遮、

図5,L4,ホ ル ムア ミ ド、N一 メチ

ル ホ ル ムア ミ ド中で の一価 イ オ ンの

残 余摩 擦係 数 の イ オ ン半 径依 存性 。

25℃ 、1気 圧 。実線 は実 測値 。破

線 は且o理 論(Slip)。 数 字 は テ トラ

ア ルキ ル ア ンモ ニ ウム ・イ オ ンを 一

っ の アル キル 基 の炭 素数 で表 わ して

い る 。

一3

0 1 23 

R(A)

4 5

一55一

ロ.温 度 依存 性

Eubbard-Onsager理 論 か ら計算 され る残 余 摩 擦 係数 は 、先 にも述 べ た よ うに溶 媒 の

粘度 とHubbard-Onsager半 径 に依存 す る 。 しか し、以 下で取 り上げ るすべ ての溶 媒で 、

Hubbard-Onsager半 径 の温 度 、圧 力 に よる変 化 は 小 さ い 。よ っ て、残余 摩 擦 係数 の 理

論値 の 温 度 、圧 力 に よ る変化 は 、粘 度 の変 化 に支 配 され る 。こ こで取 り上 げ るすべ て

の溶媒 の 粘度 は 、温 度上 昇 と とも に減少 す るので 、残 余摩 擦係 数 も同様 の変 化 をす る

こ とが 期 待 され る。(水 溶液 中の アル カ リ金属 イ オ ン にっ い て は、既 にTakisawaら に

よる理 論 の テ ス トが あ る[51】 。)

非 プ ロ トン性溶 媒 中 で イオ ンの電 気伝 導度 の温度 依存 性 を測 定 した例 は非 常 に少 な

く、図5,1,5に 上 げ たアセ トニ トリル 中で の テ トラ アル キル ア ンモ ニ ウ ム イオ ンの

場合 が 、 こ こで取 り上 げ るこ との 出来 る唯 一 の もの で あ る。図 を見 て分か るよ うに 、

理 論値 も実 験値 も残 余摩 擦係 数 は常 に正 で 、温 度上 昇 に伴 っ て減少 す る。 スケール を

大 き くとって あるの で定量 的な 一致が悪 いよ うに見 えるが 、図5,1,1で 分 か るよ うに 、

定量 的 な 一致 も悪 くはな い 。

図5。1、6~8は 、 それ ぞれ メタ ノール 、エ タ ノールL1一 プ ロパ ノール中 での 一価 カ

チオ ンの残 余摩 擦係 数 の温度 依 存性 で あ る 。メタ ノール 中で のMe4N'イ オ ンを除 い

て 、正 の値 を持 ち温 度係 数 が 負 とい う残 余摩 擦係 数 の挙 動 は理 論 と実験 とで 一致 して

い る。図 には示 され ていな いが 、ハ ロゲ ン化 物 イオ ンも各溶媒 中で同様の挙動 をす る。

っ まり、電 気伝導 度 の温度 変化 をみ る うえで も、Hubbard-Onsager理 論が 有用で あ る 。

しか し、テ トラ アル キル ア ンモ ニ ウム ・イオ ンにつ いての イ オ ン半径 依存 性 の問題

点 は、温 度 を変 え るこ とに よって は解 消 されな い 。理 論 の予 想 で は、残 余摩 擦係 数 の

温 度係 数 は イオ ンを大 きくす る にっれ て小 さ くな るが 、実験 値 では 、大 きな イオ ンで

の イオ ン半 径依存 性 の 逆転 に伴 って温 度 係数 も また増加 す る よ うにな る。っ ま り、大

きな イ オ ンに対 す る理 論の 問題 点 は、低温 にな る ほ ど ます ます激 しくな る。

メタ ノー ル 中で のMe。N+イ オ ンに関 す る実験 値 は 、理論 値 とは反対 に負の値 を 持

ち正 の温 度係 数 を 持 っ 。 この傾 向 は 、図5,L9に 示 した水溶 液 の場 合 に は さ らに明 確

にな る 。水 溶液 中 で はハ ロ ゲ ン化物 イオ ンも負 の残 余摩 擦係 数 を もち、そ の温度 係数

は正 で あ る 。さ らに 、水 溶液 中のセ シ ウム ・イ オ ンの場 合を みれ ば 、残余 摩 擦係 数が

正の値 を持 っ場合 に も正 の温 度 係数 を持 ち得 る ことが 分 か り、新 たな問題 を 提起 して

い る 。この よう に、 メタノ ール及 び水 中 に於 る中間 サ イズの イ オ ンの挙 動 は、温 度 依

存 性 を見 た場合 にもHubbard-・Onsager理 論か らは説 明で きな い 。/ただ 、図5,1・9を み る

一56一

と、実 験値 も理 論 値 も温 度が 高 くな る につれ て あ る一 定 の値 に近 づ いて い く ように見

える 。中 間サ イ ズの イ オ ン につ いて も同様 で あ る。っ ま り、温度 が 高 くな る と実験 と

理 論 とが 定性 的 に一 致 す る よ うにな る 。 これ は 、高 温 にな るほ ど溶 媒分 子 の ラ ンダ ム

な運 動 が 激 し くな り、平 均化 が お こって 、連続 体 モデ ルの妥 当性 が 増 す もの と考 え ら

れ る 。

とこ ろで 、水 溶 液 中 での リチ イ ウム ・イオ ンは 、温度 変化 に対 してWalden積 が一 定

に保 たれ る例 と して知 られ て い る 。Hubbard-Onsager理 論 の立 場か ら見れ ば 、 これ は

Hubbard-Onsager半 径 が 温 度 に依 存 しな い結果 で あ る。水 溶 液 中で の 中 間サ イ ズの イ

オ ンのWalden積 は温 度 に依存 す るが,こ れ はや は り理論 の破綻 を表 わ して い る とい え

るだ ろ う。

O.2

(

§0.

?

ε 。・1

0

Me4N†

Et4N'

Me4N→

Et4N+

o 1020

Temp.(。C)

図5,L5,ア セ トニ トリル 中で の テ

トラ メチ ル、 及 び テ トラェ チル ア ン

モ ニ オ ウム ・イ オ ンの残 余摩 擦係 数

の温度 依存 性 。1気 圧 。実 線 は実験

値 。破 線 はHO理 論{Slip)。

一57一

6

4(∈

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2

⑦-。こ

uぐ

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汰   、、 、、、 、      

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、 、

黙2蛆 .

一30 一1010

Temp.(。C)

30

図5,L6,メ タノール 中で の一価

カチ オ ンの残 余 摩擦係 数 の温 度依存

性 。1気 圧 。実 線 は実験値 。破 線 は

HO理 論(Slip)。

12

ハ  

ムヨ

(∈U8

uぐ

O

Nざ 一

\ロレ へ

K\ 、、\ 、 、

、、 、、

Csゆ 一 \ \ 、、・ \ \\ \

\ 一 \;

P曳Nξ

25

図5,L7,エ タ ノール 中で の一価

カチ オ ンの残 余 摩擦係 数 の温度依 存

性 。1気 圧 。実線 は実験 値 。破 線 は

HO理 論(Slip)。

。5 515

Temp.(。C)

一58一

20

 

 り

(E。詮

)Uぐ

O

Nざ

Theor

q\Nざ

蓬i綜 ≒Et4N→

10 2510

Temp.(。C)

25

図5,L8,1一 プ ロパ ノー ル 中で の

一価 カ チオ ンの残余摩 擦 係 数 の温 度

依 存性 。1気 圧 。実線 は実 験 値 。破

線 はHO理 論(Slip}。

4

(∈

2の5。こ

uぐ

0

Bu4N'

Li'

P・評へ

Li'/\ 、\

K+

諜i三癖2040

Ternp、(。C)

図5,1,9,水 中での 一価 カチ オ ン

の残 余摩擦 係 数 の温度 依存 性 。1気

圧 。実線 は 実験値 。破 線 はHO理 論

(Slip)。

Q

一59一

ハ.圧 力依存 性

温 度 変 化 の場 合 と同 じく圧 力変 化 の場 合 も、残 余 摩擦 係数 の 変 化 は粘 度 の変 化 で き

ま る。多 くの液体 で は 、圧 力 が上 が れば 粘度 が増 加 す るの で 、残 余摩擦 係 数 も増加 す

る こ とが 予想 され る 。 しか し水 は例外 で 、室 温 以 下で は圧 力上 昇 と ともに 、は じめ一

旦 粘度 が 減少 したあ と、後 に増 加 に転 じる 。この よ うな意 味か ら、水 中 と他 の 溶媒 中

との残 余 摩 擦係 数 の圧 力依 存 性 の 違 い には興 味が持 たれ る 。(水 溶液 中の アル カ リ金

属 イオ ンにっ いて は 、既 にTakisawaら によ る理 論 の テス トが あ る 【41,53]。)

図5,LlOは 、 アセ トン中 での 一 価 カチ オ ンの残余 摩 擦係 数 の圧 力依存 性 で あ る。一

見 して明 らか な よ うに、理 論 と実 験 との定 性 的な 一致 は大 変 よ い 。何 か結 論 的な こ と

を い うため には 、実験 的な デ ー タが不 足 して いる こ とは否 め な いが 、イ オ ン半径 、温

度 の場 合 と合 わせ て考 える と、 アセ トン 、アセ トニ トリル とい っ た非 プ ロ トン性 の溶

媒 にっ い て は 、Hubbard-Onsager理 論 と実験 との定 性 的 な 一致 は非常 に よい ♂ この事

実 は 、Hubbard-・Onsager理 論の 有用 さを示 す と と もに、 非 プ ロ トン性 溶 媒が 一電気 伝

導度 を考 え る うえで の参照 系 にな り得 る こ とを示 唆 して いる 。

図5,1,11は 、 メタ ノール 中で の一価 カチ オ ンの残 余 摩 擦係 数の 圧 力依存 性 で あ る。

アル カ リ金 属 イオ ンに対 して は、 アセ トンの場合 と同様 に、理論 と実験 とが 定性 的 に

よ く一 致 してい る。 しか し、 テ トラアル キ ル ア ンモ ニ ウム ・イオ ン にっ い ては 、や は

り問題 が あ る 。Me。N+イ オ ンは 負の残 余摩 擦係 数 を も ち、理 論の 予測 とは反対 にそ

の圧 力 係 数 は負で あ る 。Bu。N+イ オ ンの残 余摩 擦係 数 は、正 の値 を持 っが 、圧 力係

数 は理 論 値 に比べ て非 常 に大 きい 。っ ま り、大 きな イオ ンに対 す る理論 の 問題 点は 、

圧 力を 上 げ る こ とによ って さ らに大 き くみ えて くる 。これ は、 温度 を下 げ た場合 とよ

く似 て い る 。

図5,1,12は 、水 中 での一 価 カチ オ ンの残 余 摩擦係 数 の圧 力依 存性 で あ る 。先 にも触

れ たが 、残余 摩擦 係数 の理 論値 は 、他 の溶 媒 とは反 対 に、圧 力 を上 げ る とわず か に小

さ くな っ て い く。図 を みる と、 リチ ウム ・イオ ンにつ いては 、実 験値 も理 論値 と同 じ

変 化 を してい る 。こ こで も また 、小 さな イ オ ン}と対 して は 、Hubbard-Onsager理 論 が

成 功 して い る といえ る。 しか し、セ シ ウム ・イオ ンにな ると 、実 験値 は理 論値 とは反

対の圧 力係 数 を持 っ 。 この傾 向 は 、温 度が 下が る に したが って甚 しくな る こ とが知 ら

れ て い る[53]。 よ って、伝 導 度 の圧 力依 存性 を 見 た場 合 にも 、中間 サイ ズの イオ ンに

理 論 の問題 点が あ る。水 中の テ トラアルキ ルア ンモ ニウム ・イオ ンの残余摩 擦係数 は、

すべ て理論 の予 測 とは反対 に、正 の圧 力 係 数 を持 って い る。残 余摩 擦係 数 の変化 が粘

60一

度 と平 行 で な い とい うことは 、 これ らの イオ ンの挙 動 が 、連 続 体 モデ ル の範 囲 内で イ

オ ン表 面 の境 界条 件 を変 え るだ けで は説 明 され得 な い こ とを示 して いる 。

4

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1図5,1,10,ア セ トン 中 で の 一 価

カ チ オ ンの 残 余 摩 擦 係 数 の 圧 力依 存

性 。30℃ 。実 線 は 実 験 値 。破 線 は

HO理 論(Slip)。

10002000

Press.(bar)

一61一

6

4

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8。一)

uぐ

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撃u4ド

Me4Nや

O Bu4N'

Me4N'

図5,1,11,メ タ ノー ル 中で の 一 価

カチ オ ンの残 余 摩擦係 数 の 圧 力依存

性 。25℃ 。実 線 は実験 値 。破 線 は

HO理 論(Slip)。

10002000Press.(bar)

4

2

(∈り氏

。二

uぐ

Li'

Li'

0

Pr4N

Et4N

K?

Me4N'

図5,1、12,水 中で の 一価 カチ オ ン

の残余 摩擦 係 数 の圧 力依 存 性 。25

℃ 。実線 は実験 値 。破線 はHO理 論

(Slip)。

10002QQQ

Pressure(bar)

一62一

二.混 合 溶媒

一 つの 溶媒 にっ い て温度、圧 力 を変化 させ た場合 には 、何度 も述 べ てい る よ うに、

Hubbard-Onsager半 径RH。 の変 化が 小 さか った 。R.。 は 、Hubbard-Onsager理 論 に於 て

溶媒 を特徴 づ ける重 要な パ ラ メー タで あ るか ら、理 論 の妥 当性 を広範 囲 に テス トす る

ため には 、R.。 が 大 き く変 化 す るよ うな系 に理論 を 適用 してみ る必 要が あ る。 その 一

つ の例 と して、既 に図5,1,2で アル コ ール 系 につ い て残 余摩 擦 係数 に対 す る溶媒 効 果

を調 べ たがLそ こで は理論 が 非常 な成 功 をお さめ て い た 。こ こで は さ らに、RH。 を 連

続 的 に変 え るこ とので きる系 と して、混 合 溶 媒系 を と りあげ 、残余 摩擦 係 数の 溶媒組

成 依存 性 を 調べ る 。

混合 溶 媒 の複素 誘 電率 を測 定 す ると、一 般 には成 分 の数 に対応 して 、複 数 の誘 電緩

和 時間 が 現 われ る 。理 論は 、緩和 時 間が 一 っ の場 合 にっ いての み定 式化 され て い るの

で 、混 合 溶媒系 に適用 す るに は、表 式を 拡 張 す る必 要が ある 。その ような拡 張 は、付

録3で 行 な った 。結 果 だけを のべ る と、R,。 の定 義 を変 えるだ けで 、その他 の部分 は

今 まで と全 く同 じよ うに計算 す れば よ い ヅ

図51L13は 、 メタ ノール=水 系 にお け る一価 カチ オ ンの残余 摩擦 係数 の溶 媒 組成 依

存 性 で あ る 。R,。 は 、 メタ ノ"一一・ル が増 える に従 って単 調 に増加 す るが 、粘度 は メタ ノ

ール30皿 。1%付 近 に極 大 を 持 っ .残 余摩 擦 係数 の理 論値 は 、小 さな イ オ ンに対 して

は極 大 を もっが 一 イオ ンが 大 き くな る にっれ て極 大が 消 え、 メタノール 分 率 に対 して

単 調 に増 加 す るよ うにな る 。実験 値 は 、組 成 に対 す るデ ータ点が 少 な いが 、理 論 との

一致 は良 好 であ る γ

図511,14~15は 、そ れぞ れ エ タ ノー ル=水 系 で の一価 カチオ ンの 残余摩 擦 係 数の溶

媒組 成 依存 性 の理 論値 及 び実 験値 で あ る 。R,。 と粘 度 との挙 動 は メタ ノール=水 系 の

場合 と同様 な ので 、 この場 合 も、残余 摩 擦係 数 の理 論値 は、小 さな イオ ンで 極 大が あ

り、イ オ ンが大 き くな る と単 調増 加 に変 わ る。組 成 に対 す る大 まか な変化 を み れば 、

実験 と理 論 との 一致 は良好 で あ る 。メ タ ノール=水 系 で も同 様 だが 、特 に小 さな イオ

ンの 残 余 摩擦 係 数 の組 成 に対 す る極 大 は 、Zwanzigの 理 論 か らは予想 され なか った も

ので あ り、 ここで も ま た、溶 媒 の 速度 場 に対 す る電荷 の 効果 の重 要性が 認 識 され る。

混 合 溶媒 系 にお い て もHubbard-Onsager理 論 が小 さな イ オ ンの挙動 を よ く説 明 して い

る とい え るだ ろ う。 しか し、混 合 溶媒 の場 合 にも中間 サ イズ の イオ ン には問題 点が あ

る 。中間 サ イズ の イ オ ンの 実験 値 を み る と、 メタ ノー ル数 皿。1%付 近 に理論 か らは予

想 され な い極小 が み られ、 イオ ンが 大 き くな るに従 って それが 甚 し くな る 。図5,L16

一63一

にハ ロゲ ン化 物 イ オ ンの場合 を 示 したが 、 こ こで も同様 の傾 向の 問題 点が 見 られ る 。

ただ 、組成 に対 す る大 まか な変 化 は理論 と一致 して い る とい え る 。

図511,17は 、同 じ くエ タノー ル=水 系 にお け るテ トラ ァル キル ア ンモ ニ ウム ・イオ

ンの残 余 摩 擦 係 数 の溶 媒 組成 依 存 性 の実験 値 で あ る。 この 図 に は 、式(5、1,1)の よ う

にStokes則 のSlip条 件 を使 って定義 した残余 摩擦係 数だ けではな く、次の式 の よ うに、

Stick条 件 の もの を使 って定義 した量 も同 時 に示 した。

lFei△ ζ(stick}ニ ー6π ηoR(51L3)

λo

この よ うな量 は 、大 きな イ オ ンの 挙動 を 、表面 で の境 界条 件 のSlipか らのず れで 説

明 で きるか 否か にっ いての知 見 を得 る ため に示 した 。 しか しなが ら、 どち らの場 合 を

とって み て も残 余摩 擦 係数 の溶 媒組成 、 イオ ン半径 に対 す る変化 は複雑 で あ り、 これ

らの イ オ ン に対 して は、何 か連続 体 モデ ル を離 れ た説 明が 必要 で ある こ とを示 唆 して

い る。

ア ル コー ル=水 系 は、極性 二極 性 の組 み合 わせ だ っ たが 、次 に非極性 二極性 の組 み

合 わせ の 例 と して 、 ジオキ サ ン=水 系 を取 り上げ る。非極性 二極 性 の組 み 合 わせ の場

合 には 、 イオ ンに対 す る選択 的溶 媒和 の 効果 が問 題 にな るが 、以 下 で行 な う理 論値 の

計 算 で は 、 その よ うな 効果 は無視 す る 。選 択 的溶媒 和 の効果 は 、大 まか にみ れば組 成

の ス ケ ール を延 び縮 み させ る よ うな もの と期 待 され る 。その よ うな効 果 は 、組 成 の広

い範 囲 にお いて定 性 的 な変化 の みを問 題 にす る際 には、議 論の 内 容 を変 え るよ うな も

の には な らな い と思 われ るか らで ある 。 さ らにい えば 、誘電 摩 擦 理論 で取 り扱 って い

る誘 電 摩 擦 も粘 性摩 擦 も、イオ ンと溶媒 との 長距離 の相 互作 用 に よって決 まるので 、

イオ ン最 近 傍の 問題 には あ ま り大 きく左右 されな い こ とが期 待 され る 。

図5,1。18~19は 、 それぞ れ ジオキサ ン=水 系 で の一価 カチ オ ンの残余 摩 擦係 数の 溶

媒組 成 依 存 性の 理論 値及 び 実験値 で あ る.こ の系 で は 、R,。 は ジオ キサ ンが増 える と

とも に単 調 に増加 し、粘度 は ジオキ サ ン80wt%付 近 に極 大を もつ 。予 想 され る残 余

摩 擦係 数 は 、み て い る組成 範 囲 で は、全 ての イオ ンに対 して ジオ キサ ン分 率 ととも に

単 調 に増 加 す る 。図 を み る と、Bu。N+イ オ ンの場 合 をのぞ いて 、理論 と実験 との 定

性 的な 一 致 は良好 で あ る。この系 の場 合 、 中間サ イズ の イオ ンの 問題 点 は 、あ まり明

確 に は見 えて いな い よ うに思 われ る。それ は 、図5,L20に 示 したハ ロゲ ン化物 イオ ン

の場 合 か ら もい える こ とで あ る。

以 上 に み た よ うに 、RH・ が 大 き く変 化 す る よ うな 系 に つ て も、Hubbard-Onsager理

論 は 、特 に小 さな イオ ンの挙 動 を よ く再現 して い る。

一64一

4

1

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2

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/K文,,'

7/

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図5,Ll3,メ タ ノー ル=水 混 合

溶媒 中で の一価 イォ ンの残 余摩擦 係

数 の溶 媒組成 依 存 性 。25℃ 、1気

圧 。実線 は実 験値 。破線 はHO理 論

{Slip}。

8

ハQ

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(∈り8

b

uぐ

0 20406080100

MeOH(mol。1。)

Q

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oMe4N\

=-Cs'

20406080100

EtOH(mol。1。)

図5,1,14,エ タ ノー ル=水 混 合 溶

媒 中 で の 一 価 カ チ オ ンの 残 余 摩 擦 係

数 の 溶 媒 組 成 依 存 性 。25℃ 、1気

圧 。HO理 論(Slip}の 予 測 値 。

12

9。Liノ

1

!1!/

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①凸9

)

Uぐ

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一3

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慮ハだ

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20406080100

EtOH(mo(。t。)

図5,1,15,エ タ ノー ル=水 混合 溶

媒 中 で の一価 カチ オ ンの残余 摩擦 係

数 の 溶媒 組成 依 存性 。25℃ 、1気

圧 。実線 は 実験 値 。破線 はHO理 論

(Sユip}。

65一

6

3

 り

 

つり

(∈

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uぐ

o

Theoretica{

一3

0

CrBr

幽C「

Br

\r

図5,1,16,エ タ ノ ー ル=水 混 合 溶

媒 中 で の 一 価 ア ニ オ ンの 残 余 摩 擦 係

数 の 溶 媒 組 成 依 存 性 。25℃ 、1気

圧 。上 はHO理 論(slip)。 下 は 実 験

値 。

204060

EtOH(mol。 ノ。)

80100

4

2

0

0

(

§

①-。こ

一4

一8

0

204060

EtOH(moL。 ん)

80 100

図5,1,17,エ タ ノ ー ル=水 混 合

溶 媒 中 で の テ トラ ア ル キ ル ア ンモ ニ

ウ ム ・イ オ ンの 残 余 摩 擦 係 数 の 溶 媒

組 成 依 存 性 。25℃ 、1気 圧 。 実 験

値 。 並 進 摩 擦 係 数 か らStokes則Slip

を 引 い た場 合(上)と 、Stokes則

Stickを 引 い た場 合(下)。

一66一

∩Vr

6

4

2

(∈9設

uく

0

Oi。xane(m。1・X。)

5102030

o

o

Li'

Nざ

ウK

Rb'Bu

4N◆

0 204060

Dioxane(wt。!。)

80

図5,1,181ジ オ キサ ン=水 混 合溶

媒 中 で の一価 カ チオ ンの残 余 摩擦 係

数 の溶 媒組成 依 存 性 。25℃ 、1気

圧 。HO理 論(Slip)の 予測 値 。

0

Dioxane(mo[。/。)

5102030

8

6

4

E。亀

のる

Uぐ

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N♂

2

K'

o

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Cs'

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OBu4N'

204060

Dioxane(wt。1。)

80

図5,1,19、 ジオキ サ ン=水 混 合溶

媒 中 での 一価 カチ オ ンの 残 余摩擦 係

数 の溶 媒組 成 依存 性 。25℃ 、1気

圧 。実 験値 。

一67一

05

Theoretica[2

Dioxane(mol。/。)

10

§ 。

84』 墜雌

冒2

0

0 20

Bド

203Q

Br-C「

ヒC

6040

Dioxane(wt。 ノ。)

80

図5,1,20,ジ オ キサ ン=水 混 合 溶

媒 中で の一価 アニ オ ンの残 余摩擦 係

数 の溶媒 組成 依 存性 。25℃ 、1気

圧 。上 はHO理 論(Slip}。 下 は実験

値 。

一68一

5,2、 回 転 相 関 時 間

溶 液 中で の 回転相 関 時間 の測 定 の歴 史 は 、 まだ非 常 に浅 い 。無 限希釈 量が 求 め られ

る程 度 の 希薄 な溶 液 にっい て 、あ る程 度 条 件 を変 化 させ て測 定が 行 な われ た例 は 、N

MRに よるMasudaら 【12-15】の もの しか な い。 ここで は、彼 らの結果 を使 って 、電荷 、

温度 、溶 媒 の 効果 を み る 。用 い るイ オ ンは オ キ ソ ・ア ニ オ ン(ClO、 、SO42-、

PO・3つ で あ る 。 これ らの イオ ンは 、大 き さが ほぼ 等 しく、正 四面 体 構 造 で近 似 的り

には球 と見なす こ とが 出来 る。 こ こで は 、 半径 を2.4Aと して理 論値 を 計算 した。

回転摩 擦 係数 を計 算 す る際 には、 イオ ン表 面 で の境 界条 件が と くに重 要 にな る 。並

進 運 動 を考 える場合 には 、連 続 体 モデ ル の許 容 す る最小 の摩 擦係 数 は有 限 の値 を持 ち

slip条 件 の 場合 で あ た え られ た 。 これ は 、 た とえ イオ ンの表 面 で摩 擦が な い(slip条

件)と き にも、 イオ ンが並 進 す る ときに溶 媒 を押 しの け るこ とに よ って速 度 場 を作 り

出す か らで あ る 。そ して 、図4,1,1で み られ る よ うに 、イ オ ン半 径依 存 性 に違 い は あ

る に して も 、残 余 摩 擦 係 数 とい う形 で 見 る限 りは 、StickもSlipも 本 質 的 な違 いは な

か っ た とい って いい 。それ とは反 対 に 、 回転運動 の場 合 には 、 イオ ン表面 で の摩 擦 に

よっ ての み溶媒 の運 動 が生 じる 。 よっ て、sユip条 件 の 時 には摩 擦係 数 はゼ ロで あ る。

物理 的 に、摩擦係 数 は負 にはな り得 な いか ら、実験 値がSlip条 件 の場合 を 下 回 る こ と

はな く、連続 体 モデ ル の許容 範 囲 は上 限 のみ が決 め られ る。 よ って以 下で は 、理論 の

許容 す る最 大値 とい う意 味 で 、Stick条 件 の 場合 の みを 示 す 。 とこ ろで 、 オキ ソ ・ア

ニ オ ンは 完全 な球 形 で はな いの で 、境 界 条 件 は完全 なSlipで は あ りえな い 。 しか し、

完 全 なStickと 考 え るの も不 自然 で あ り、境 界条 件 を 特 定 す るこ とが で きな い 。この

二っ の意 味で こ こで の議論 は、電 気伝 導 度 の場合 よ りもさ ら に定 性 的 にな らざ るを得

な い 。

図5,2.1は 、重 水 中 での オキ ソ ・アニ オ ンの 回転 摩 擦係 数 の温度 依 存 性 で あ る 。重

水 の場合 もR.。 はあ まり温度 に依 存せず 、理論値 の温 度変化 は粘度 で決 まる 。 しか し、

RH。 は イオ ンの電 荷 に依 存 す るの で 、予想 され る摩擦 係 数 は電 荷 の絶対 値 が 大 き くな

るほ ど大 き くな る 。価 数Z、 プ ロ トンの電 荷eと してRH。 を 書 くと次 の よ うにな る。

Z2e2(εo一 εoo)τDRHO=[]1/4(5,2,1}

16π ηoε02

よ って 、R,。 は電 荷 の平方 根 に比 例 す る 。実験 と理 論 とを比 べ る と、各 イオ ンにっ い

て摩擦 係 数 の温度 依 存 性 は よ く一致 して い る 。電荷 依 存 性 にっ い て は、傾 向 は 一致 し

てい るが 一実験値 は理 論値 よ りも はるか に大 き く電 荷 に依 存 して い る。 これ に は二 種

一69一

類 の 説 明が 可能 で あ る。ひ とっ は 、すべ ての イオ ンに対 して誘 電摩 擦理 論 が 妥 当な 結

果を あ た えるが 、表 面 で の境 界条 件が 電 荷 に依存 す る と考 え る もの 。も うひ とっは 、

理論 の 破綻 が 見 え てい る と考 え るもの で あ る。先 に述べ たよ う に、連続 体 モ デ ルの許

容す る回転 摩擦 係 数 の最小 値 はゼ ロだが 、物 理 的 に負の 摩擦 係数 はあ りえな いの で 、

実験 値 が 理論 の許 容範 囲 を 下 回 るこ とはあ りえな い 。だか ら、 この 図の み か らで は 、

うえの 二 っ の説明 の どち らが 重 要な もの な のか判 断 す る こ とは 出来 な い 。そ こで 、軽

水 中で のClO。 イオ ンとSO。2冒 イオ ン との 並進 摩擦 係 数 の温度 依存 性 を図5,2,2に

示 した 。 図を み て分 か る よ うに 、SO42一 イオ ンは正 の 残余 摩 擦 係数 を 持 ち、理 論 が

妥 当な説 明を与 え るこ とが 期待 され るが.ClO。 イオ ンは負の残 余摩擦 係数 を もち,

理論 の 妥 当性 に問題が あ るこ とが わか る 。ちな み に、軽 水中25℃ にお け る二 っの イ

オ ンの粘 度B係 数 を み る と、C10・ イ オ7は 負(-0・08)、SO42,イ オ ン は

正(+0.21)で あ る 。これ らの結 果 をみ る と、C10。 イオ ンの非 常 に小 さな 回

転摩 擦係 数 は 、理 論の 破綻 と結び 付 けて解 釈 す るのが 自然で あ る。SO42一 イオ ンは 、

イオ ン半 径 は中間 サ イ ズだが 、電 荷が 大 きいので表 面 電荷密 度 が 大 き く、小 さなイ オ

ン と同 様 の振 舞 をす る 。この よ うに考 えれば 、回転摩 擦係 数 の結 果 を、伝 導度 の場合

と矛 眉 な く説 明 す る こ とが 出来 る 。

図5,2,3はSO。2一 イオ ンの 回転 相 関時 間を 重水 中 と重 メタ ノー ル 中 とで 比較 したも

の であ る 。重 メタノール の物 性値 は、普通の メタノール の もので代用 した。 ここで は、

Stokes則 に従 った整理 の仕 方 と して よ く使 わ れ る、 η。/Tに 対 して相関 時間 をプ ロ ヅ

トす る とい う方法 を とっ た。 この 方法 を使 う と、St。kes則 は溶媒 に よ らず に一 本の 直

線 にな る 。 これ は伝 導度 に対 す るWaiden則 に相 当す るが 一実験 的 に成立 して いな い こ

とは図か ら明 らか であ る。実験 値は同 じイオ ンにっ いて溶媒 ごとに違 う直線を 与 える。

ただ 、 それぞ れが 直線 にな るの で 、あ たか もSt。kes則 が 成立 す るかの よ う に考 え られ

て き た 。 しか しこの 直線性 は、誘 電摩擦 理 論 の立場 か らみ れば単 にRH。 の温 度 変化が

小 さ い こ との結 果 で あ り、Stokes則 が成 立 して い るの で はな い 。図をみ て分 か るよ う

に、 回転相 関 時間 の溶 媒依存 性 は、誘電 摩 擦理 論 に よ ってみ ご とに説明 され て いる 。

しか し、図 には示 さなか っ たが 、C10。 イオ ンの 回転 相 関時 間 は重水 中 と重 メタノ

;鑑 夏璽謄 碧鍵 高ニニ謡奪灘 二濃 £欝 繍 灘 宏い とす る立 場 を支 持 す る。

70

10

8

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5

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10 2030

Temρ.(。C)

40 50

図5,2,1,重 水 中での オ キ ソ ・ア ニ

オ ンの 回転 摩 擦係 数の 温度 依存 性 。

1気 圧 。実線 は実 験値 。破 線 は

HOF理 論(Stick)。

6

4

(∈り色

①b

1

\8

N\\こ\

\ミ\、 \ 、\、 、\ \     もへ    へ

\ \ ・・rミ・ミミ\ 、、 、、 、、 、   

           ミロ  ヘ へ、ぐ 、 、_、 ミミ、、、、Sti(=k

\ ミこ\ 奪 ミ ・・1

.'、 ミ こ \ 。α。4'瑛 眺 ミz=1

2SlipO

oQ102Q

丁e而 ρ.(℃)

3Q

図5,2,2,軽 水 中で のオ キ ソ ・アニ

オ ンの並進 摩 擦係 数 の温 度 依存 性 。

1気 圧 。実線 は実験値 。破 線 はHO

理 論 。

一71一

20

16

2

8

1(u。e

(沼

。)∬

4

Q

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ノノノ!/ノ

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ノノ  ボー

,_4r'Stokes

,一 二 二・一'のノー一'1

200

160図5、2,3,SO42一 イ オ ンの 回 転 摩

擦 係 数 の 重 水 中 と重 メ タ ノ ー ル 中 と

宕 の 比 較 。1気 圧 。 実線 は 実 験 値 。破  ユ

汐 線 はSt。kes則 及 びHOFの 理論 値

8(Stick}o

ε80∬

40

2

,・1T4(1。-5P,旦1)

0

8

一72一

5,3,粘 度B係 数

旺ubbard-Onsager方 程 式 に基 づ く誘 電 摩擦 理 論 の テス トと して、次 に粘 度B係 数 を

取 り上 げ る。ここで用 いるイオ ンは、電気伝 導度の場 合 と同様 、アルカ リ金属 イオ ン、

ハロゲ ン化 物 イオ ン、テ トラ アルキ ル ア ンモニ ウム ・イオ ンで あ る。

B係 数 を議 論 す る際 には 、実測 され る電解 質 のB係 数 を 、各 イ オ ンの 寄 与 に如何 に

分割 す るかが 問題 にな る 。誘 電摩 擦理 論 で は 、電 荷 の絶 対値 と イオ ン半 径 とが 等 しけ

れば 、予想 され るB係 数 も等 しくな る 。 しか し一 この よ うな 方法 で は 、上 記 の イオ ン

のB係 数 を矛盾 な く求 め る こ とは出来 な い 。 これ は 、電 気伝 導度 か ら見 積 も っ た残 余

摩 擦 係 数 の イオ ン半径 依存 性が 、アニ オ ンとカチ オ ンとで同 じ曲線 には の らな い こ と

と対応 してい る。粘度B係 数 の場 合 には、伝導度 の輸率 にあ た る量が存在 しな い以上 、

この分 割 は、あ る程度 の任意性 を持 ち込 んで行な わな けれ ばな らな い。お そ ら く、 もっ

とも一般 的 な分割 法 は 、カ リウム ・イ オ ン と塩 化物 イ オ ンとのB係 数 が等 しい とお く

もの であ る 【25]。この 方法は 、特 に水 溶液系 で盛 んに用 い られ ている 。この ほか 、 もっ

と大 きな イオ ンを分 割 に使 う場合 もあ る 。(例 えば 、テ トラ フ ェニル ほ う素 イ オ ン と

テ トラ フェ ニル りんイ オ ンな ど。)し か し、分割 法 の妥 当性 を 議論 す る には 、定量 的

で微 妙 な 問題が 含 まれ るので 、 こ こで は これ以上 触 れ な い こ とにす る。定 性 的 な問題

の みを 議 論す る場 合 に は、 どの よ うな 分割 法 で も大差 な いこ とが 期 待 され るので 、以

後 で は 、常 にデー タ を 引用 した原 論文 の分 割 法を そ の まま踏 襲 す る 。原 論 文 で分割 が

行な わ れ て いな い場 合 には 、カ リウム ・イオ ンと塩化 物 イオ ン とのB係 数が 等 しい と

お く。

イ.イ オ ン半径 依 存性

式(4,3.5}か ら分 か る よ うに 、B係 数 の 理論 値 はR・ 。とイ オ ン半径 の み に依存 し、

直 接粘 度 に は依 存 しな い 。これ は 、B係 数 が 相 対 粘度(η/ηo)を 使 っ て定 義 さ れ

てい る こ とによ る 。理 論値 は常 に正 で 、slip条 件 の 場 合 には極 小 を経 たあ とイオ ン半

径の 増 大 と とも に増加 す る 。 この極小 は非常 に浅 いの で 、小 さな イ オ ンに対 して は 、

B係 数 の 理 論値 は イオ ン半径 に依存 しな い とみ て さ しっ か えな い 。Stick条 件 の場 合

には 、単 調 増加 で あ る 。

図5,3、1は 、 アセ トニ トリル 中で の 一価 イオ ンの粘 度B係 数 の イオ ン半径 依存 性 で

あ る 。実 験値 は常 に正 で あ り、深 い極 小 を持 っ 。定量 的 な 一致 は 伝導度 の場 合 に比 べ

一73一

て よ くな いが 、小.登.なイオ ンにっ いて は実 験値 の イオ ン半径 依 存性 は小 さ く、定性 的

に理 論 と一致 して い る とみ て よい だろ う。っ ま り、粘度B係 数 を考 える う えで も誘 電

摩擦 理 論 は有用 で あ る。 しか し、 中間 サ イズ で見 られ る極小 は 、理 論の 予想 に比べ て

大変 に深 い 。っ ま り、B係 数 を 見 た場 合 には 、非プ ロ トン性 溶媒 中で も、理 論 か らは

予想 され な い挙動 が 、 中間 サ イズ のイ オ ン にみ られ る 。

図5,3,2は 、メ タノール 中 での一価 イ オ ンの粘 度B係 数 のイ オ ン半径 依存性 で あ る。

この場 合 も定 量 的 には よ くな いが 、定 性 的 には理論 の予 想 どお り、小 さな イオ ンのB

係数 の イオ ン半径 依存 性 は小 さい 。 しか し、先 と同様 に中間 サ イズ の イオ ンで のB係

数 の極 小 も、理論 か ら予想 され るよ り随分深 い 。さ らに メタ ノール 中で は 、Me。N↓

イオ ンは負 のB係 数 を持 っ 。負 のB係 数 を予 想 で きな い ことがt理 論 の大 きな欠 点 と

考 え られ るこ とは 、既 に述べ た とお りで あ る。図5,3,3の 水 の場 合 では 、理 論 の 問題

点が さ ら に明確 にな る。

ここで、粘度B係 数 と他 の二っ の量 との性格 の違 い にっ いて述べ てお く必要 が ある 。

い ま まで 見 て きた電 気伝導 度 と回転相 関 時間 とは、輸 送係 数 その もの であ り、物理 的

に必ず 正 で な ければ な らな い 。 しか し、粘 度B係 数 は 、粘 度 とい う輸送 係数 が 電解 質

を加 え る とい う摂 動 に対 して どの よ うに応 答 す るか を表 わす量 で あ り、輸送 係 数 その

もの で はな い 。 よって 、負の 値 を も と り得 る 。連 続体 モ デル で は、電気 伝導 度 と回転

相 関時間 とを それぞ れ並進 、回転の摩 擦係数 か ら計算 した ように、粘度B係 数 も また、

溶媒 の変 形 に伴 う摩 擦係 数 と して計算 した 。摩擦係 数 は負 にはな り得な いか ら、 この

モ デ ルでB係 数 を計算 するの は も とよ り無 理 な部分 が あ る 。その意 味で 、粘 度B係 数

には モデ ル の持 っ問題 点が 、最 も端 的 に現 われ る 。それが 、実 験値 に見 られ る負のB

係数 で あ る。反 対 にい えば 、 この ような 問題 が あ るに もかか わ らず 、小 さな イ オ ンの

挙 動 を あ る程 度 説明 で き る とい うこ とは 、Hubbard-Onsager方 程 式 に基 づ く誘 電摩 擦

理 論が 非 常 な成 功 を お さめて い る と結 論づ け るこ ともで きる 。

ところで 、B係 数 と他 の二 つの量 の場 合 とでは 、性格 を異 に した量 をみ ているので 、

理論 の 適応 限界 に も異 な る部分 が あ るが 一 どち らの量 もイオ ン=溶 媒 間 の動 的 な相 互

作用 を 取 り扱 って い るの だか ら、共通 す る部 分 も多 いはず で あ る。小 さな イオ ンの挙

動 は理 論 で うま く説 明で きるが 、中間 サ イズ の イオ ンにつ い ては 問題が あ る とい うの

が 一 その共 通 す る部分 で あ る/そ して ・その 共通 点を 見 出す ため に は・伝 導 度 をそ の

ままの形 で用 いず 、 負の値 も と り得 る残 余 摩擦 係 数の 形 のに書 き直 した こ とが 、大変

役 に立 って いる 。

一74一

O.6

40

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ρ・∈

ε

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『!ノ〃

1 23 

R(A)

4 5

図5、3,Lア セ トニ トリル 中で の一

価 イ オ ンの 粘度B係 数 の イオ ン半 径

依存 性 。25℃ 、1気 圧 。○ 、● は

実験 値 。実線 は我 々の理 論 。破線 は

Einstein理 論 。数字 は テ トラ アル キ

ル ア ンモニ ウ ム ・イオ ンを 一 っの ア

ルキ ル基 の炭 素数 で表 わ して い る。

0.8

一 〇6

T

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O,4cつ

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23 

R(A)

4 5

図5,3121メ タ ノ ー ル 中 で の 一 価 イ

オ ン の 粘 度B係 数 の イ オ ン 半 径 依 存

性 。25℃ 、1気 圧 。 ○ 、 ● は実 験

値 。 実 線 は 我 々 の 理 論 。破 線 は

Einstein理 論 。 数 字 は テ トラ ア ル キ

ル ア ン モ ニ ウ ム ・イ オ ン を 一 っ の ア

ル キ ル 基 の 炭 素 数 で表 わ し て い る 。

0 1

一75一

O.4

20

(㌔

E

ρ・∈

)

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O.0

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O 1 23 

R(A)

4 5

図5、3,3,水 中 で の 一 価 イ オ ンの 粘

度B係 数 の イ オ ン半 径 依 存 性 。25

℃ 、1気 圧 。OL● は 実 験 値 。実 線

は我 々 の 理 論 。破 線 はEinsteiil

理 論 。 数 字 は テ トラ ア ル キ ル ア ン モ

ニ ウ ム ・イ オ ンを 一 っ の ア ル キ ル 基

の 炭 素 数 で 表 わ して い る 。

一76一

ロ ・ 温 度 依存 性

既 に述 べ たとお りRH。 の温 度 依存 性 は小 さいの で 、理 論か ら予 想 され るB係 数の 温

度 変化 は小 さい 。以 下 に取 り上 げ る溶 媒 中で の理 論値 は 、 メタノ ール の場 合 で温 度 上

昇 と とも にわず か に減少 す る他 は 、すべ て温度 上昇 とと もにほ んの わず か 増 加 す る 。

非 プ ロ トン性溶 媒 中 でB係 数 の温度 依 存 性が 測定 され た例 はな いので 、 ここ では ま

つ メタ ノ ール の場 合 か ら始 め る.図5,3,4は メタ ノー ル 中で のKIのB係 数 の 温度 依

存性 で あ る。 ここで のB係 数 は、 イオ ンの 寄与 に分 割 していな い 。実験 値 は理 論値 と

同様 に 、温度 と とも にわず か に減 少 す る 。

図5,3,5は 水 中 での 一価 イオ ンのB係 数 の温度 依存 性 で あ る 。小 さな リチ ウム ・イ

オ ンで は 、温度 係 数 は あ ま り大 き くな いが 、理論 の 予想 に反 して 、温 度 上昇 と とも に

B係 数 の 実験値 は減 少 す る 。B係 数が 負 に な るよ うな イオ ンで は 、温 度上 昇 と とも に

B係 数 の 実験値 は 増加 す るが 、 その温 度係 数 は理 論 の予想 よ りもは るか に 大 き い。カ

リウム ・イオ ンの場 合 を見 る と分 か る よう に、 この 大 きな正 の温度 係数 は 、必 ず しも

負 のB係 数 に対応 して いな い 。類似 の 現象 は 、伝 導度 か ら計算 した残 余摩 擦 係数 の場

合 にも み られ た 。Et。N+イ オ ンのB係 数 の 大 きな負 の温度 係数 も 、理 論 か らは全 く

説 明 す る こ とが で きな い 。 この よ うに、水 溶液 で は 、誘電摩 擦 理 論 と実験 との 一致 は

よ くな い 。特 に、 リチ ウム ・イ オ ンの挙 動 も説 明で きな いこ とは 、B係 数 の イ オ ンへ

の分 割 方 法 な どの 微妙 な問題 を 含 んで い る に して も 、理論 の新 たな問題 点 で あ る 。こ

の 点 にっ い ては 、あ とで議 論 す る 。

図5。3,6~7は 、そ れぞ れホ ル ム アミ ド、N一 メチ ル アセ トア ミ ド水 中で の 一価 イ オ

ンのB係 数 の温度 依 存 性で あ る。 どち らの場 合 も 、温 度 係数 は大 き くな いが 、小 さな

イオ ンのB係 数 の 実験 値 は 、温 度 上昇 と と もに減 少 す る傾向が あ り、水 の場 合 と同様

の問題 点が あ る 。

以 上 見 て きた よ う に、Hubbard-Onsager方 程 式 に基 づ く誘 電摩 擦理 論 で は 、粘 度B

係数 の温 度依存 性 を う ま く再 現 で きな いこ とが わか っ た 。ただ し、 こ こで注 意 しな け

れ ば な らな い こ とは 、B係 数 の温 度依 存性 を 調べ るテ ス トは 、理 論 に と って非 常 に厳

しい もの で あ る とい う ことで あ る。連続 体 モ デル は非 常 に簡単 な モ デル で あ り、B係

数 を決 定 す る全 ての 因子が 考 慮 され てい る わ けで はな い 。も しも誘電摩 擦 理 論が 、B

係数 を 決定 す る因 子 の なかで 最 も重要 な もの を う ま く近 似 してい た と して も 、理 論 か

ら予 想 され る変 化 がゼ ロの場 合 には、他 の あ ま り重 要 で ない因 子 に よ ってB係 数 の 温

度 変 化が 支配 され て し まう。そ してそ の場 合 には 、実験 的 に見 られ る温 度 係 数 は あ ま

一77一

り大 きな もので はな い だ ろ う。その意 味で 、B係 数 の温 度 依存 性が 説 明で きな いこ と

が 、 す ぐに理 論 の重要 性 を否定 す るもの で はな い 。B係 数 の温度 変 化 は 、イオ ンが 溶

媒 の構 造 性 を破壊 す るか 、生 成 す るか を見分 け るため の基準 と して使 われ て い る 【25、

56】。構造 生成 、構造破 壊 の効果 は 、連 続体 モ デル では考慮 されて いな い因子 だか ら 、

ここで の結 果を 見 る限 り、B係 数 の温 度 係数 か らその よ うな 効 果を 議論 す るの は不 自

然 な こ とではな い 。 ただ し、構造 生成 、構 造 破壊 の 効果 はあ ま りに感覚 的 に議 論 され

てお り、 も っ と定量 化 す る試 みが 待 たれ て い る 。

こ こで 、伝導 度 との対応 を 考 える と、大 きな 問題 点が 一っ あ る 。残余摩 擦 係数 の温

度 依 存 性 は誘電 摩擦 理論 で説 明 で きたが 一粘 度B係 数の 温度 依存 性 は説 明で きな い。

この 違 い は 、何 によ るものな の だ ろ うか.こ れ は 、残 余摩 擦係 数 と粘度B係 数 の性 格

の違 い に よ る。残余 摩擦係 数 は摩 擦係 数 の次 元 を持 ち 、 その 理論 値 は粘度 に直接依 存

した 。そ して、 その 温度変 化 は粘 度 の大 きな温度 変化 に支配 され てい た。一方 、粘 度

B係 数 は 、変形 の摩 擦係 数(粘 度)を 濃度 と粘度 とで割 った次 元 を 持ち 、 そ@理 論 値

は粘 度 に 直接依 存 しな い 。っ ま り、残 余摩 擦 係数 と粘 度B係 数 とは 、直接 対応 す る量

で はな い 。伝導 度 の場合 に粘 度B係 数 と直接 対応 す る よ うな量 を 求 め る とす れば 、そ

れ は残余 摩 擦係 数 を粘度 で割 った よ うな量 にな る 。その 二っ の量 を 実際 に比べ てみ よ

う。 こ こで は、 さ らに対応 関 係が 直接 的 にな るよ うに 、残 余B係 数 △Bを 次 の式の よ

うに定 義 して用 い る 。

4N△B=B-一 πR3・(5.3.1)

31000

図5,3,8は 、水 中の 一価 イオ ン にっ い て、△ ζ/ηoと △Bと の 温度依 存性 を 比較 し

たもの で あ る。二 っの図 は 、驚 くほど よ く似 てお り、実験 的 に も これ らの 量が 対応 し

た量 で あ るこ とが わか る。 リチ ウム ・イ オ ンの△ ζノ η。の実 験値 は、子 細 にみ ると、

温 度 上昇 ととも にわずか に減少 してお り、や は り理論 の予想 とは逆 であ る 。 しか し、

温 度 係数 は ほ とん どゼ ロで あ り理 論 と一致 して い る とみ て さ しっ か えな い 。粘 度B係

数の 場合 も 、イオ ンの寄与 に分 割 す る際 に生 じる大 きな誤 差 の こ とを考 え る と、あ ま

り理 論 に厳 しい評 価 を 下すべ きで はな い 。

一78一

0.6

(

、 ・・5

ぐっε

ξ 。・4)

mO.3

3545

Temp.(。C)

図5,3,41メ タ ノ ー ル 中 で のK工 の

粘 度B係 数 の 温 度 依 存 性 。1気 圧 。

実 線 は 実 験 値 。 破 線 は 我 々 の 理 論

(Slip}。

25

O.4

O.3

(

、o.2

葦o'i

α〕0

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t

/Et4N令

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Li+ア

+

,

K

I

1図5、3,5,水 中 で の 一 価 イ オ ンの 粘

度B係 数 の 温 度 依 存 性 。1気 圧 。 実

線 は 実 験 値 。 破 線 は我 々 の 理 論

(Slip)。

020406080

Temp.(。C)

一一79一

O.乙

(

02

pL。E

①ξ

)m

0

 うLl。一

εモ「<Li◆ 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一

図5・316,ホ ル ムア ミ ド水 中での

一価 イオ ンの 粘 度B係 数 の 温度 依存

性 。1気 圧 。実線 は実験 値 。破線 は

我 々の理 論 〔Slip)。

25 35

Temρ.(。C)

45

1.O

0.8

20・6

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OD

O.2

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LIo\

Nざ

K→o-一 一一一一一一一一一一一一一一6

C§(}一 く)

C「

Br(〉-o

r

図513・71N一 メチル ア セ トア

ミ ド水 中で の一価 イオ ンの粘度

B係 数 の温 度 依存性 。1気 圧 。

実 線 は実 験 値 。破 線 は我 々の理

論(Slip)。

03555

Temp(。C)

一80一

O.3

 

㌔O陰2Liや

σ)EO・1

3 Lit

oコO .<コ

ーQ.1

一〇.2

0

(a)~Nざ

K済1/

4

宕3

い隔り

巨2

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0

一1

102Q3040500

Temp.(。C)

Li'

(b)

Na(〉 一 一一.ny-..一 ・-o-一 一一一一 一一 一一一・一 一 〇

Li'一

K・(一己:-1-Q-一 一 ← 一 一 一 ゆ

10203Q∠}050

Temp.(。C)

図5,3、8、 水 中 で の △Bと △ ζ/η 。の 温 度 依 存 性 の 比 較 。1気 圧 。 実 線 は 実 験 値 。

破 線 は 我 々 の 理 論(Slip)。

一一81一

ハ.混 合 溶媒

高 圧 下 で電解 質 溶液 の粘 度B係 数が 測定 され た例 は まだな い の で 、次 に混 合 溶媒 の

効 果 に移 る。

混 合溶媒系 は 、RH。 が溶媒組 成 とともに大 き く変化 す るので 、温度変 化の場合 と違 っ

て、B係 数 の理 論 値 も大 き く変化 す る 。よ って 、小 さな イオ ンの挙 動は理 論 に よって

う ま く説 明 され る こ とが期 待 され る。

図5,3,9は メ タノ ール=水 系 で のア ル カ ワ金 属 イ オ ンのB係 数 の溶 媒組 成 依 存性 で

あ る。理 論 値 は、 イオ ン半径 には依存 せず 、 メタ ノー ルが 増 え る に従 って単 調 に増加

す る。実 験 値を み る と、 リチ ウム 。イオ ンのB係 数 は理論 の予 想 どお り単 調 に増加 し

て い る 。他 の二 っ の イ オ ンで は 、 メタノ ール20mol%付 近 に理 論か らは予 想 され な

い極 小 を 持 っが.全 体 と して メタ ノール分 率が 増 え る と ともに増 加す る傾 向 は 、理 論

と一致 して いる 。二 っ の イオ ンに現 われ た極 小 は 、中間 サ イズ の イオ ンに対 す る理 論

の問題 点の 現 われ で あ る。類 似 の現象 は、エ タ ノール=水 系 での残 余摩 擦 係数 を調 べ

た際 に既 にみ られ た。

4

2

0

0

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)oコ

O.O

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_____一 一 一 五

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△\Cs'

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∠!

//

!

K'

0 20406080100

MeOH(mol。1。)

図5,3,9,メ タ ノール=水 混 合溶 媒

中で の 一価 カ チオ ンの粘 度B係 数 の

溶 媒組 成 依存 性 。25℃ 、1気 圧 。

○ は実測 値 。実線 は実験 値 。破線 は

我 々の理 論 〔Slip}。

82

6.結 論

この 章 で は、今 までの結 果 を ま とめ よ う。

溶 液 中 で の簡 単 な イオ ンの動 的 挙動 を 、連 続体 モ デル によ って ど こまで説 明 で きる

のか 、そ のモ デル の妥 当性 と限 界 とを知 る こ とが 本研 究 の 目的で あ った 。 こ こでい う

連続 体 モ デル とは 、イ オ ンの 特 徴 で あ る電 荷 の効 果 を取 り入 れ た誘電摩 擦 の モ デルで

あ り、 そ の 中で も特 に 、溶 媒 の 速度場 に対 す る電荷 の効 果を考 慮 したHubbard・ ・Onsagr

方程 式 に基 づ く理 論 で あ る。そ して 、注 目 して い る量 は、溶媒 の 並進 、 回転 、変形 に

対 応 して 、 イオ ンの電 気伝 導度 、 回転相 関 時 間、粘 度B係 数 であ る。

まつ 理論 に基 づ い て各種 の 摩 擦係数 を計 算 し、その 後 実験 値 との比較 を行 な った 。

並 進 摩擦 係 数 はHubbard、 回転摩 擦 係数 はFelderhofに よる表 式 を用 いたがL粘 度B係

数 にっ い ては 、本研 究 で初 め てEubbard-Onsager方 程 式 に基 づ く表 式 を 導 い た 。得 ら

れ た摩擦 係 数 は、 どの 場合 も電 荷 の効 果 を 無視 した場 合 よ りも大 きいが 、 イ オ ン半径

が 大 きな極 限で 両者 は一致 す る。実験 値 との比 較 は 、アル カ ワ金属 イオ ン、 ハ ロゲ ン

化 物 イ オ ン、テ トラ アルキ ル ア ンモ ニ ウム ・イオ ン、 オキ ソ ・アニ オ ン につ いて 、デ

ータ の許 す 限 り系 統 的 に行 な った 。

結 果 につ いて特 に ま とめ て お くべ き点 は 、次の よ うな もの で あ る 。(1)Hubbard-

Onsager方 程 式 に基 づ く誘 電摩 擦 理 論 と先行 す る連 続体 モ デル の理 論(Navier-Stokes

方程 式 に基づ く理 論 やZwanzig、Clarkの 理 論)と は 、 どの点が 決 定 的 に違 っ たのか 。

(2)伝 導度 、 回転相 関時 間 、粘度B係 数 の全 て に共 通 した 、理 論 の妥 当性 と限界 と

は どの よ うな もの か 。(3)三 っ の量 にみ られ る相違 点 は何 かfi

まつ 第 一の点 か ら見 てゆ こ う 。Stokes則 やElnsteinの 理論 を電 解質 溶 液 に適用 す る

際の 欠 点 は次の 二 点で ある 。摩 擦係 数 の イオ ン半径 依 存 性 に見 られ る極小 の存在 を 説

明で きな い こ と。摩 擦 係数 の 粘度 以外 の量(例 えば誘 電 率)に 対 す る依 存性 が 説明 で

きな いこ と。この二 っ の問 題 につ いて は 、電荷 の効 果 を考 慮 した誘電 摩擦 理 論 によ っ

て解 決 され た。

それ で は、ZwanzigやClarkの 理 論 とHubbard-Onsager式 に よ る理論 との違 い はな に

か 。一つ は定量 的な 問題 で あ る 。前 者 の理 論 は 、イ オ ン半径が 小 さい場 合や 溶媒 の誘

電 率が 小 さな場合 に は、実 験値 よ りも数 桁 大 きい摩 擦 係数 を予 測 して しま うが 、後者

の理 論 は 、常 に実 験 値 と同 じオー ダ ー の値 を予 測 で きる 。も う一 っ は定性 的 な 問題 で

あ る。前 者 のモデ ル で は 、球 形 イ オ ンが 回転 す る時 に は、 た とえ表面 で の境 界 条件が

Stick条 件 で あ って も 、イ オ ン に誘 電 摩 擦 は は た らか な いが ・後 者 のモ デ ル で は 、完

一83

全 なSlip条 件で な い限 り誘 電摩 擦 が は た ら く/実 験 的 に は、 回転相 関 時間 が イオ ンの

表 面電 荷 密 度や 溶媒 の 誘電 率 に依 存す るこ とか らみ て 、誘電 摩擦 の効果 が あ る と考 え

られ る 。以 上二 つ の 点 か ら、Hubbard-Onsager式 に よる理 論 はZwanzigやClarkの 理 論

よ りも進 歩 した もの で あ るこ とが 分 か る。 これ ら二 っ の点 は 、 と もに溶 媒 の速 度場 に

対す る電 荷 の効 果 を考 慮 す るこ とが 一溶 液 中の イ オ ンの挙動 を 考 える うえで不 可 欠で

ある こ とを示 して い る 。

第 二 の 点 に移 ろ う。理 論 と実験 との比 較 で は、伝 導度 か ら計 算 した残 余 摩擦 係数 、

回転摩 擦係 数 、粘 度B係 数 とい う三っ の量 をみ て きたが 、共 通 して いえ る点 は次 の よ

うに ま とめ られ る。表 面電 荷密 度 の高 い イオ ン(Li+、Na+やPO。3-、SO。2つ

の挙 動 は 、Hubbard-Onsager式 に よ る誘電 摩擦 理 論 で定 性 的 に説 明で き る。 しか し、

中 間サ イズ の イオ ン(Cs+や ハ ロゲ ン化 物 イ オ ン、ClO。 一)は 多 くの場 合 理 論 が

許容 す るよ りも低 い値 の摩 擦 係数 を もち 、 さ まざ まな条件 の変 化 に対 す る依存 性 を み

ても 、 これ らの イオ ンの挙動 を 理論で 説明 す るこ とはで きな い 。 これは っ ま り、イ オ

ンの 価数 を固定 して考 えれば 、イ オ ン半径 が小 さ くな るほ ど誘 電 摩擦理 論 の妥 当性 が

高 くな る とい うこ とで あ る 。連 続体 モデ ル は 、本 来 、溶媒 分 子 に比べ て溶 質分 子が 非

常 に 大 きい とい う条 件 の下 で妥 当なもの なの で 、 この結 果 は少 々奇 異 に感 じられ る 。

しか し、 この理 由 は次 の よ うに考 えるこ とが で きる。 イオ ンが小 さ くな る と電 荷 の効

果 が 大 き くな るので 、イ オ ンの挙 動は イオ ン=溶 媒 間の 電気 的 な相互 作用 に支配 され

るよ うにな る。 この相 互作 用 は長 距離 の ものな ので 、誘 電摩 擦 理論 で十 分近 似 で きる

種 類 の もの で あ る。 イオ ンが 大 き くな る と、電 気的 な効 果が 小 さ くな って支 配的 で な

くな る。す る と、粘 性 摩擦 に対 して考 え られ る連 続 体 モデ ルの 破綻 が表 に現 われ て く

る。現 に 、水 中で の並 進運 動 に対 して、理論 的 な摩 擦係 数 の 中の残 余摩 擦係 数 の割 合

を計 算 す る と、 リチ ウ ム ・イオ ンで は65%に のぼ るも に対 して 、セ シ ウム ・イオ ン

で は10%程 度 にす ぎな い 。 この よう に考 える と、 もっ と大 きな イ オ ンの 挙動 は 、再

び連 続 体 モデ ルで 説 明 され る こ とが期 待 され る。実際 、高 分子 にっ いて は盛 ん に連 続

体 モデ ルが 使用 され て い る。 しか し、本研 究 で扱 っ たイ オ ンの 中で は最 も大 きな もの

で あ る テ トラア ルキ ル ア ンモニ ウム ・イオ ンの挙 動 は、 連続 体 モデ ルで は説 明で きな

い 。

これ ら連続 体 モデ ル の持 っ 問題 点は 、溶 媒 の構 造性 を か らめ て議 論 され る こ とが 多

いが 、 それ らの議 論 はあ ま りに 直感的で あ り、定量 的な 理論 の 出現 が待 たれ てい る 。

理 論 的な 方 面で い えば 、分 子 運動 論の立 場 か ら連 続体 モデ ルの 問題 点 を考 察 した例 も

あ り[59,601、 発展 が期 待 され る 。

一84

第 三 の 点 に移 る 。上 での べ たよ うな 溶 液 中の イオ ンの 挙動 は 、三 つの 量 で驚 くほ ど

一致 して い たが、 三っ の量 の相 違 点 もあ る。 それ は 、理 論の 限界 の 見 え方 の違 いで あ

る。回 転相 関時 間 をみ た場 合 に は 、理 論 の許 容す る範 囲が 広 い こ ともあ っ て 、理論 の

限界 が 明確 にはな らな か っ た。伝 導度 の場 合 には 、残 余摩 擦係 数 を とるこ と に よって

中間 サ イ ズの イオ ンや テ トラ アル キル ア ンモ ニ ウム ・イオ ンの問題 点 を指 摘 す るこ と

が で きたが.非 プ ロ トン性溶 媒 中では 、 イオ ンの大 き さにかか わ らず 理論 が成 功 をお

さめ て い た 。 しか し、粘度B係 数 に目を転 じると、理 論 の限界 は非 常 に は っ き りと現

われ た。B係 数 の温 度 変化 は理 論 で説 明 で きず 、非 プ ロ トン性溶 媒 中 で も理論 と実験

との 一致 の よ くな い部分 が あ っ た 。特 に、実験値 に見 られ る負 のB係 数 を 予測 で きな

い こ とは 、モデ ル その もの の持 っ 大 きな問 題 点で あ る。 この こ とは 、今 後 の分 子論 的

な研 究が 、粘度B係 数 の解 明 に主 眼を お い てな され るべ きで ある こ とを示唆 してい る

よ うに思、え る。

以 上 見 て きた よ う に、Hubbard-Onsager方 程 式 に基 づ く誘 電摩 擦 理論 は 、溶液 中で

の 小 さ な イオ ンの挙 動 を比較 的 よ く説 明す るこ とが で き た。 これ は 、モ デル の 単純 さ

に比べ れ ば 大 きな成 功 とい え る 。 しか し、 ここで は 同時 に、連 続 体 モデ ル の持 っ問 題

点 も 明確 にな った 。っ まり、本研 究 は 、 このモデ ル の有用 性 を評 価 す る と とも に、今

後 の理 論 的研 究が 対象 とすべ き問題 点を 明 らか に した とい える 。

一85一

付 録1.異 方 的 な誘 電体 中で の電 気 的応 力 テ ン ソル[61]

旺ubbard-Onsager方 程 式 を導 くと きに用 いた 、異 方 的な誘 電 体 中 での 電 気 的応 力 を

表 わすMaxwellの テ ン ソル は 、溶 液化 学 の 分野 で はあ ま りな じみ が な いので 、 こ こで

その 導 出を してお こ う。以 下 、テ ンソル で 同 じ添 え字が 二度 出 て きた時 に は、 その添

え字 に関 して和 を と るもの とす る。

異 方 的 固体 の 、厚 さhの 一様 な平行 層 を考 える 。その層 の表 面 には 、伝導 面 が張 り

付 いて い て 、適 当な電 荷分 布 が あ り、あ る方 向 の一様 な電 場を 固体 内 に及 ぼ してい る 

とす る 。今,層 の上面 が無 限小量 ξだ け仮想変 位 した としよ う。応 力テ ンソル を σlk、

 上面 の 法 線 ベ ク トル をnと 書 けば 、上 面 の単 位 面積 にか か るi方 向 の力 は σiknkだ

か ら、仮 想 変位 に よ る仕事 は σiknkξ 、と表 わされ る 。変位 の 際 に、伝導 面 の各 点 の

ポ テ ンシ ャル は不 変 に保 たれ 、変 形 は等温 的 で あ る とす る。 この仕 事は 、層 の単 位面

積 あ た りの 自由エ ネ ルギー の変 化 に等 しい 。静電場 の 単位体積 あ た りの 自 由エ ネル ギ

ー は 、次 の ものが よ く知 られ て い る。→ →

E・dD

dU=(AI,1}

一も 「レ

E・D

U=(A1,2)

 

しか し、 これ はDを 独 立変 数 に したものな の で 、伝 導面 のポ テ ンシ ャルが 一定 とい う 

過 程 に は 使 え な い 。 そ こで 、Eを 独 立 変 数 と す る よ うな 自由 エ ネ ル ギーFをLegendre

変 換 に よ っ て導 入 す る 。   E・dD

dF=一 一(Al,3)

冒.宣F=一(A1.4)

仕 事 と 自 由 エ ネ ル ギ ー 変 化 の 関 係 は 次 の よ う に な る 。

61knkξi=δ(hF)

=Fδh十hδF(A1 ,5)

上 の 関 係 を 使 え ば 、     り

σ 、、n、 ξ1=-E'Dδh-h旦.δfi(A1,6)

8π4π

  う  

δhはn・ ξで あ る 。 δEは 、次 の 二 つ の 効 果 の 和 で あ る 。 一 つ は 、空 間 の あ る与 え

一86一

られ た点 に於 るポ テ ンシ ャル変 化 によ るもの 。も う一っ は 、変 形 によっ て結 晶軸が 電

場 に対 して 回転 す る ため に生 じるもの で あ る。 まつ前 者 を見積 もる 。物 質要 素 の変 位 

をuと 書けば、空間のある点でのポテ ンシャル変化 δφは、物質要素のポテンシャル

が不変に保 たれるので、

δ φ=一 宣 ・▽ φ=宣.冒(Al,7}

 

Eは 変化 前 の一 様 な電 場 で あ る。 とこ ろで 、変形 は一様 に起 こるの で、層 の 下面 か ら

 の距 離zを 使 えば 、変 位uは 次 の よ うに書 き直 す こ とが で きる。

→Z→u=一 ξ(Al,8)

h

 

よ っ て 、 ポ テ ン シ ャル 変 化 に よ る δEは 、

   → ξ ・E

δEp。tentia1=一 ▽ δ φ=一 ▽z

h

式 → →=一 一(ξ ・E)(A1 .9)

h

次 に 回転 の効果 に うっ る。物 質 が δδ回転 した時の 変位 這は 、動 径 ベ ク トル 言を使 っ

て次 の よ うに書 け る 、→ → →

u=δ θ ×r

両辺 の 回転 を とれ ば

   ▽ ×u=2δ θ

よ っ て 、 結 晶 軸 に対 し て電 場 が δ ∂回 転 し た と きの δ 宣 は

(sfi,。 、。、_=一 δ ∂ × 慮=一(→ ▽ ×u)× 蒼/2

1→ → →・=・E×(n× ξ)

2h

全体 の δEは 、

δ 首=-1fi(9.e)+1e×(言 ×ぎ)h2h

1→ → → → → →=一 一一一一[n(E・ ξ)+ξ(E・n)]

2h

式(Al,6)と(Al,13)を 組 み 合 わ せ る 。

σ 、、n、 ξi=2(D、E、+D、E_首.宣 δ 、、)n、 ξ 、

こ れ か ら、 電 気 的 応 力 テ ン ソ ル σE,ikが わ か る 。

(Al,10}

(A1,11}

(A1,12)

(A1,13}

(Al,14}

一87一

(ALI5)言 づ δ1、)DkEi

88

十(DtEk

1

=6E,tk

付 録2・ 一様 流 中の イオ ンの周 りの速 度 場 につ い て のHubbard-Onsager方 程 式 の解

と並進 摩 擦 係数 の 数値 計算

イ オ ン の 並 進 摩 擦 係 数 を 計 算 す る た め のHubbard-Onsager方 程 式 の 解 は 、Hubbardに

よ っ て 既 に 、 無 限 級 数 の 形 で 与 え ら れ て い る 囹 。 こ こ で は 、 ま つ そ れ を 示 し た 後 、

彼 の 方 法 に 随 っ て 摩 擦 係 数 の 数 値 計 算 を 行 な う 。

式(4.1.1)を 解 く た め に 、Hubbardは ま つ 次 の よ う な 変 数 変 換 を 行 な っ た 。

r4df

z==一 一,F(z)=(A2、1}

αdr

す る と(4,1,1)は 次 の よ う に な る 。

ddd

[z1/2〔-z-ao}(z-bo)F(z)

dzdzdz

dd-z-1/2(z-a)(・z-b)F(z)]=0(A2

、2}

dzdz

ao=-1,bo=1/4

a={1+[49+8(β/α)]t/2}/8

b={1-[49十8(β/α)]1/2}/8

こ れ を 解 く と 次 の 解 が 得 ら れ る 。

lzl〈1の と き

F(z}=ΣCyzyΣD(y.k}zk(k=O,1,2,1、,1)(A2,3}

ア=1/2,a,b

(y-←k十1}(y十k-(1/4})

D(yJk十1)=D(y,k)(A2、4}

(y十k十1-a)(y十k十1-b)

lzi>1の と き

F(z}=ΣCyzyΣD〔y、k}zk(k=O,-L-2口,)(A2、5}

y'=一 一1/2,-1,1/4

(y十k十1-a)(y十k十1-b)

D(Ysk)=D(y,k十1)(A2、6)

(y十k十1)(y幽 十k-(1/4)}

f(r)を 求 め る に は 、F(z)を 積 分 す れ ば よ い 。

f(・)=∫F(・)dr=(÷/4∫F(・)z-3・ ・d・{A217}

積 分 定 数Cyを 求 め る 境 界 条 件 は 、Stokes則 を 導 く時 に 利 用 し た時 と 同 じで 、 式(3、2,

一89一

5~7)で 与 え られ る 。その条 件 はF(z)及 びzを 使 う と次 の よ うにな る。

f(。 。)=1

f(z。)=O

F(z。)=O

dF(z。)

F(Zo)十2Zo

dZo

Zo=-R4ノ α

(forstick)

=0(forslip>

(A2,8}

(A2,9)

(A2,10)

{A2,11)

(A2,12)

(A2,7)の 積 分 を 行 な っ た 時 一 積 分 定 数 が 一 っ 加 わ る が(C。)そ れ を 計 算 す る た め の

条 件 はz。 → 。。の 極 限 でF(z)が 収 束 す る と い う 条 件 で あ る 。 積 分 定 数 が 求 め ら れ れ

ば 、f{r》 に 於 け る1/rの 係 数 か ら 摩 擦 係 数 が 求 め ら れ る こ と はSt。kes則 の 場 合 と

同 様 で あ る 。 漸 化 式 の 形 で は 計 算 に 不 便 で あ る た め 、 直 接 計 算 可 能 な 形 に 改 め て 境 界

条 件 を 適 用 す る 。

イ.lzl>1

0=f(z。)

=!-

』Lz-kし82i-12i-1

(一α)L/4C-1/2z-1/4[1÷ Σ 一 一H〔 十a)〔 一 十b}1

4k十1(2i-1}(4i十3)22

1Z'k4_(_α)t/AC -⊥z層3/4卜 十Σ 一 一H(i十a}(1十b月(A2,13)

34k十3i(4i十5)

z『k82i-12i-1

0=C-1/2z-t/?【A,十 ΣA2rl(一 十a)(一 十b月

4k十1(2i-1}(4i十3)22

Z-k4

十C-tZ'i【Bエ 十ΣB211(i十a){1十b)1(A2,14}

4k十3i(4i十5)

A±=A2=Bs=B2==1(forstick)

A1==0,A2==-2k,B1==-1,B2==-2k-1(forsliP}

Hはiニ1~k、 Σ はk=1~ 。。で あ る.式(A2,8)の 条 件 か らc。=1、 収 束 の 条 件

か らCt/4=0で あ る 。f(r}に 於 け る1/rの 係 数 は 、

(1/rの 係 数)={一 α)1/2C-1/2(A2、15}

よ っ て 、 上 の 級 数 を 十 分 高 次 ま で 計 算 し て 連 立 一 次 方 程 式 を 解 け ば 、 摩 擦 係 数 を 求 め

る こ と が 出 来 る 。

ロ.lz。1<1の 場 合

0=f(z。}

一90一

(一α)t/44zk((1/2)十i}(i-(3/4})=Co十{Ct/2z3/4[一 十 ΣIII

(〔1/2)-a十i}〔(1/2}-b十 玉}43(3/4)十k

lzk(a十i){a-(5/4)十i)

十Caza+(1/4>[÷ Σrl]

a+(工/4)a十(1/4)十ki(a-b十i}

1zk(b十i)(b-(5/4)十i)

十Cbzb+q/4)[十 Σ 工1】}

b十(1/4)b十(1/4)十ki(b-a十i}

(A2,16)

((1/2)十i)(1-(3/4〕)0・=C1/2zi/2[A,十 ΣA2zkII】

(〔1/2)-a十i)((1/2)-b十1)

(a十i}(a-(5/4)十i)十Caza【Bt十 ΣB2zk工II

i(a-b十i)

(b十i)(b-(5/4)十i)十Cbzb【D1十 ΣD2zk工1】(A2,17)

i(b-a十i)

Aユ==Ai=Bi=B2==D1=D2==1(forStick)

At=2,A2=2(k十{1/2}}十1,B,=2α 十1,B,=2(k十 α}十1,

Dt=2β 十1,D2=2(k十 β)十1(forSlip)

こ こ で もllはi=1~k、 Σ はk=1~ 。。で あ る 。

z。 の 絶 対 値 が1に 押 さ え ら れ て い る の で 、z。 → 。。の 条 件 二 っ は そ の ま ま の 形 で 適

用 す る こ と は 出 来 な い 。 解 析 接 続 に よ っ てIz。1>1に 級 数 を 拡 張 し 、C,の そ れ ぞ

れ の 系 列 が,Iz。1>1とlz。1<1と で ど の よ う に つ な が っ て 行 く の か を 調 べ る

必 要 が あ る 。Hubbardは 、Barnesの 周 ロ 鎚 で 解 析 接 続 を 行 な い 、 次 の 二 つ の

R

条 件 を え た 。

r((3/2}-a}r{(3/2)-b}

0=2t/2Ci/2(-1)曽1/4

17「(3/2}工 「(1/4)

Cal「 〔1十a-b)(-1)■a+(1/a)

sinπ(a-(正/4}}r(a÷1}r(a-(1/4})

Cbr(1十b-a}〔-1)-b+〈1/4)

十(A2、18)

sinπ(b-(1/4)}r(b十1)r(b-(1/4}}

0=1十C。

(一 α)t/4πr(3/4}r{-1/2)r((3/2}-a}r((3/2}-b}

十[2i/2C⊥/2←1)-3/4

417((3/4}-a}r((3/4)。b}r〔3/2)r(1/4}

一91一

Car(1十a-b)(-1}-a-〈t/4)十

sinπ(a十(1/4))r(a十1}r(a・ 一〔1/4)}

Cb工「〔1十b-a)(-1}-b噂(i/4>十1(A2,19)

sinπ(b十(1/4))r(b十1)r(b-(1/4))

(A2,18)の 条 件 がFの 収 束 、(A2,19)がf{。 。)=1の 条 件 で あ る 。解 析 接 続 の 式 か ら は

又f(r}に 於 け る1/rの 係 数 を 知 る こ とが 出 来 る 。

811

(1/rの 係 数)=一 一(一 一a)(一 一b)(一 α)1/2Ct/2(A2,21)322

こ う して 、Iz。1<1の 場 合 と同 様 に 摩 擦 係 数 を 計 算 す る こ とが で き る 。

で は 次 に 、並 進 摩 擦 係 数 の 数 値 計 算 を 行 な う 。電 気 伝 導 度 の 測 定 は 、 通 常1000Hz程

度 の 比 較 的 遅 い 交 流 電 場 で 行 な わ れ る 。従 っ て 摩 擦 係 数 の計 算 は ω →0の 極 限 で 行 な

う 。Hubbardも 、摩 擦 係 数 の 数 値 計 算 を 行 な っ て い るが 、 彼 は級 数 が 収 束 す る の に 十

分 な 次 数 の 計 算 を 行 な っ て い な い た め 、 定 性 的 に 間 違 っ た結 果 を 与 え て い る部 分 も あ

る 。 よ っ て 、 こ こで は 、 十 分 高 次 まで 計 算 し た結 果 を しめ す 。 こ の よ うな 、 摩 擦 係 数

の 再 計 算 は 、Felderhof【621に よ っ て も行 な わ れ て い る 。

各 イ オ ン 半 径 に於 け る摩 擦 係 数 の 数 値 を 示 す 前 に 、 点 電 荷 に 対 す る摩 擦 係 数 を 計 算

し よ う 。lz。i→0の 極 限 で の 摩 擦 係 数 は イ オ ン表 面 で の 境 界 条 件 に よ らず 、 次 の

よ う に な る 。

32r(3/2)r〔1/4}r(〔3/4}-a)r〔(3/4}-a}

ζT=21/2r(3/4)1コ(-1/2}1=「((3/2}-a}1"((3/2)-b)

ηoαi/4X(A2、22}

1-[sinπ(a-(1/4}}/sinπ(a十(1/4)}1

ω →0に す る と

ζT,,。i。t=15.604η 。RH。(A2,23}

こ こ で 、 ガ ンマ 関 数 の 値 は 関 数 表 【63】の も の を用 い た 。 式(A2,23)の 値 は 、 旺ubbardに

よ る値 お よ びFelderhofに よ る再 計 算 値(15,624η 。RH。)と は 違 っ て い る 。 こ れ は 計

算 方 法 の 違 い に よ る も の と思 わ れ る 。Hubbardの 値 を 用 い た 場 合 、 我 々 の 、有 限 の イ

オ ン 半 径 の 場 合 の 摩 擦 係 数 の 計 算 結 果 の 外 挿 値 との 不 一 致 が 大 き くな る の で 、 以 後 は

我 々 の 計 算 結 果 を 採 用 す る 。

各 イ オ ン 半 径 に於 け る摩 擦 係 数 は次 の 手 順 に随 っ て 、 マ イ ク ロ ・コ ン ピ ュ ー タ で 計

算 し た 。 摩 擦 係 数 は(4,L6)の 形 で 与 え られ る の で 、xを 計 算 す れ ば 溶 媒 の 性 質 に よ

らな い 形 で 表 現 す る こ とが 出 来 る 。そ れ に は 、 式(A2115>、(A2.21}で 分 か る よ う に 、

一92一

連 立 方程 式 を解 い てCyを 求 め れ ば よ い 。 とこ ろがLCyの そ れぞ れ の係 数 はz。 に 関

す る無 限 級 数 にな っ て いる ため 、 この 級数 の 計算 を何 次 まで行 な うか に よ って計算 の

精度 が 大 き く左右 され る。そ こで まつ 、k=ユ で 級数 を 打 ち切 った時のxを 求 め 、次

にk=2で 打 ち切 っ た時のxを 求 め る 。そ して二 つ のxの 差 を み る 。同様 に してkを

順 々 に大 き く して行 き 、k=n-1の 時 とk=nの 時 とでxの 値 の 差が10-4を 越 え

な くな っ た時、 そのXを 結果 と して採用 した。

こ う して求 め たxを 図A2,1に 示 す 。図A2,王 に於 て、 白丸 がHubbardに よ る計 算 値 、

黒丸 が 我 々 の結 果 で あ る。我 々 は、実 際 には 、図 にプ ロ ツ トした よ りも狭 い間 隔で 計

算 を行 な った 。特 にSlip条 件 の場 合 に、Hubbardの 計 算値 に はR/R頁 。=1付 近 に顕

著 な極 大 が 見 られ 、級数が 収 束 す るの に十 分 な計算 を 行 な って いな い こ とが 明 らかで

ある 。我 々 の計 算 結 果 は,R/RH。=1付 近 には特 異 点を もたず 、十分 な 次 数 の計 算

が行 な えて いる 。

25

22

19

×

16

1

/

1

/

1

HOStick!

/s辮

//

/醤 、plノ!

1/

/○/ノ ノ1/

/O/!1/Stokcs

1∠。/Slipノ!

図A2,1,旺ubbard-Onsager理 論 に よ

る無 次 元 の 並 進 摩 擦 係 数 。 ○ は

Hubbardに よ る計 算 結 果 。 ● は我 々

の 計 算 結 果 。

()

3σ5

R/RHO

1.0 15

一93一

付 録3.二 っ の 誘 電 緩 和 時 間 を 持 っ 系 に 対 す るEubbard-・Onsger理 論 の 拡 張

混合溶 媒系 で は一般 に成 分の数 に対応 して複数 の誘 電緩 和時間が 現われ る 。 しか し、

Hubbard-Onsager理 論 の表 式 は誘電緩 和 時間が 一っ の場合 に しか書 き下 され て いな い 。

そ こで 、理 論 の拡 張 を行 な う必 要が あ る 。 ここで は二 っの誘 電 緩和 時 間を 持 っ系 に対

す るHubbard-Onsager理 論 の 表 式を求 め る 。この よ うな理 論 の 拡張 が可 能 な こ とは 、

既 にFelderhof【47】 に よ って指 摘 され て い るが 、未 だ正 確 な 表 式 は書 き下 され て い な

か っ た 。

ここで 取 扱 う系 は 、複 素 誘電 率 が次 の よ うなDebyeの 式 の 重 ね合 せ で表 わ され る系

で あ る 。

εo一 εcεc一 ε○○ε(ω)=ε 。。++(A3.1)

1十iω τt1十iω τ2

こ の 場 合 、 遅 い 緩 和 過 程 、 速 い緩 和 過 程 そ れ ぞ れ に対 す る配 向 分 極 を 定 義 す る こ とが

で き、全体 の配 向分極 βは その 重ね合 せ にな る。     P=Pエ 十P2(A3.2}

静 的 分 極 率 は

ε〇 一 εCεC一 ε◎Oλ=i=,X2=(A3,3)

4π4π

そ れ ぞ れ の 過 程 のPolarizati。nDeficiencyも 分 極 と 分 極 率 か ら 定 義 出 来 る が 一 全 体

のPolarizationDeficiency'は そ の 重 ね 合 せ に な る 。

F*==β't+β.2==(→ →Z,E-Pt)+(x2K-P2)

わ す こ とが 出来 る 。

ま ず 、 式(3,7,19)に 対 応 す る 式 は次 の よ う にな る 。

   ウ

P㌔ θP⊥ → → 工 → →一=十(v・ ▽)Pt十 一Pt×(▽ ×v)

τ1θt2

つ づP率2

=∂P・+(→V・ ▽)β 、+!P、 ×(▽ ×e)

τ2∂t2

3,7節 と同 様 に周 期電 場 を仮 定 して線 形化 を行 な う 。

 P㌔

=iω β 、+(→V・ ▽)F.t+三 β 。t×(▽ ×e)

τt2

(A3,4)づ

これ だ けの事 が 分 か れば 、3,7節 で 見 たの と全 く同 じ方 法 でP*をvの 関 数 と して表

(A3,5}

(A3,6}

(A3,7}

一一94一

 eL'.iωF、+(e.▽)F

.、+lp。 、×(▽ ×e)(A318)τ22

但 し、

P。 、=X、Fl。,宣 。2=X、 怠 。(A3,9}

冒 。はCoulomb場 で あ る 。 こ こ で 、P。larizationDeficiencyの 回 転 と 発 散 と を 求 め る 。

全 体 の そ れ は 、 そ れ ぞ れ の 重 ね 合 せ で あ る 。再 びMaxwel1の 関 係 式(3,7,7~9)を 用 い

る と次 の 関係 が 得 られ る 。その 場 合 、式(3,7.7)のP*に は全 体 のP'を 入れ な けれ ば

な らな い こ とに注 意 す る。

▽ × β ㌔=一 ▽ ×i凱,▽ × 宣 ・、=一 ▽ × β2(A3,10)

→ → ε0一 εC→▽.p・1=_▽.p1十 ▽ ・P挙(A3.11)

εQ

▽.F・,ニ ー ▽.宣 、+ε.一 ε 。。 ▽.β(ム3,正2)

εo

 

これ か らP'の 回転 、発 散を 計算 す る 。

▽ × が=τ エ ▽x[(e.▽)P.、+!P。 、×(▽ ×G)]1十iω τ 、2

+τ2▽ ×[→(v・ ▽)P.、+1宣 。2×(▽ ×il3)]

1十iω τ22

(A3113}

→ ε 。(1+iω τ ・)τ ・ → →!→ →=▽ ・[(v・ ▽)PQ1十 一POt×(▽ ×v月▽ ・P*

γ2

+ε ・(1+1ω τ ・)τ・ ▽.[(G.▽)P.、+1,・.、 ×(▽ ×e)]

γ2

(A3,14}

γ ニ εo十iω ε ±τ エ ー ω2ε ◎○ τtτ2十iω{εo一 εc十 εcolτ2

{A3.15)

こ の 式 を 使 っ て 以 前 と 同 様 に 式(3,7,17)をf(r)に 関 す る 方 程 式 に 改 め る 。 計 算 を

行 な う と 緩 和 時 間 が 二 つ の 場 合 も 式(4,Ll)に 帰 着 す る 。 但 し 、 α,β の 定 義 は 次 の

よ う に 改 め る 必 要 が あ る 。

e2(εO一 εC}τ1(εC一 εCO)τ2

α=[+]

16π ηoε021十iω τt1十iω τ2

(A3,16)

一95一

e2

β=[(ε 。 一 ε 。}(1+iω τ 、)τi

16π ηoεoγ

+(εc一 ε 。。}(1+iω τ 、)τ 、j(A3,17)

さ てR,。 は ω →0の 極 限 に 於 け る α 及 び β の4乗 根 で あ る か ら 、 次 の よ う に な る 。

e2R。 。={[(ε 。 一 ε。)τ よ+{ε 。 一 ε。。)τ 、]}1/4

16π η0ε02

(A3,18)

即 ち 、Hubbard-Onsager理 論 を 二 っ の 誘 電 緩 和 時 間 を 持 っ 系 に 拡 張 す る に は 、R.。

の 定 義 を 変 え る だ け で 、 摩 擦 係 数 の 数 値 は 誘 電 緩 和 時 間 が 一 っ の 場 合 と 同 じで あ る こ

とが 分 か っ た 。

一96一

謝 辞

研究を遂行するにあたって、常に指導と助言をいただいた、京都大学理学部の廣田

裏教授な らびに中原勝助教授 に感謝の意を表 します 。また、多 くの刺激的な議論を し

ていただいた、京都大学理学部化学教室物理化学研究室 、及び金属物性学研究室の方

々にも感 謝 します 。

一97

参考文献

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A

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一98一

1

1

6

7

00

2

2

ハリ白

0り

0

1

2

貸り

3

[

-

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3

4

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究リ

qU

{

工53[

1

1

6

7

8

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1

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3

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3

4

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「「[」

1

1

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-」

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3

」伎

に」

にU

ワー

8

4

4

4

4

4

」士

4

[

[

194[

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一99一

!05

1

1

1

1

り4

受リ

4

FO

5

5

5

[

[

[

1

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ピ0

5

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[

[

1

0

1

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6

[

∩8自

qり

6

δhU

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一100一

計 算 に使用 した物 性 値及 び その 出典

A1.イ オ ン及 び 中性 分子 の 半径

A2.溶 媒 の物 性

A3.拡 散 係 数

A4.極 限 モル 電 気伝導 度

A5.回 転相 関 時 間

A6,粘 度B係 数

101一

A1. Radiiofionsandmolecules.

TableA1.1. IGnica,b)R

adii.

Ionロ

R(A> Ionむ

R(A) 工on

むR(A)

Li+

Na÷

1(+

Rb+

Cs+

0.60

0.95

1.33

1.48

1.69

Me4N+

Et4N+

Pr4N+

Bu4N+

3.47

4.00

4.52

4.94

l

r

[

C

B

1.81

1。95

2.16

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一102一

TableA1.2. vandera)W

aalsVolumes.

Molecule3V

W(cm

一一1

)mol MoleCU■e ・VW(・m3m・ ・一一1)

MeOH

acetone

aCetOnitrile

formamide

nitromethane

chlorobenzene

nitrobenzene

21.7

39.0

28.5

25.5

30.5

57.8

62.6

CCl4

Me3Etc

E七C4

n-dodecane

51。4

68.2

98.9

129.6

a)A.Bondi,J.Phys.Chem.旦 旦,441(1964).

TableA1.3. van dera,b>W

aa!sradii.

Moleculeむ

Rw(A) Moleculeむ

Rw(A)

Ar

Kr

Xe

CH4

1.88

2.02

2.16

1.89

MeSn4

EtSn4

PrSn4

BuSn4

3.40

3.55

3.94

4。26

a)A.Bondi,J・

b)D。F.Evans,

Chem.旦,461

Phys.Chem.旦 旦,441

T-Tominaga,andC.

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(1964).

Chan,J.Solut.

一一103一

A2Physicalpropertiesofsolvents.

TableA2。1。Physicalpropertiesofvarious

250Cand 1bar.a)

solventsat

Solvent ηo(cP) ε0 ε◎o τD〈ps)む

(A)RHO

water

methanol

b)ethanol

c)1-propanol

acetone

acetonitrile

folmamide

NMFd)

0.890

0.551

1.087

1.97

0.303

0.341

3.130

1.65

78,3

32,6

24.3

20.4

20.6

36.0

109.5

182。4

5.2

5,6

4,4

3.9

1.9

2.0

3.0

10

8.2

47.7

170

340

3.1

3.9

39.0

172

1.50

3.17

3.94

4.21

2.13

1.93

1.48

2.23

a)

b)

c)

d)

D.F.Evans,T.TQminaga,J.B.Hubbard,andP・G・

Wolynes,J.Phys.Chem. .83,3669(1979).

SeereferencesinTab.A2.4.

SeereferencesinTab.A2.5.

N-methylforma皿ide;S.J.Bass,W-1.Nathan,R・M・

Meighan,andR.H.Cole,J.Phys.Chem.旦8,,509(1964>.

一104一

TableA2.2.

temperatures

Physicalpropertiesofacetonitrileatvarious

atlbar.a>

Temp.(OC) ηo(cp) ε0 RH。(9)b)

0

0

0

噌⊥

ハ乙

0.444

0.398

0.359

40.09

38.37

36.74

1.88

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b)ε 。。andτD/ηoareassu皿edt・beindependent・f

temperature,

TableA2.3.

temperatures

Physicalpropertiesof

a)atlbar.

methanolatvarious

Temp・

(OC)η ・(。P)b) ε0 ε◎o τD(ps)

(A)RHO

一25

0

30

1.240

0.791

0.505

44.4

37.7

31.9

6.9

6.4

6.0

186

95

47

3.383

3.32

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-105一

Ta『bleA2.4.

temperatures

Physicalproper七iesof

a)atlbar.

ethanolatvarious

Temp.(OC) η・(。P)b) εO ε◎o τD(ps)

TRHO(A)

5

『0

『Q

-↓

ワ臼

1、620

1,324

1.094

27.6

25.9

24.4

4.2

4.4

4,5

318

236

170

4.08

4.02

3.93

a)D.Bertolini,M.Cassettari,andG.Salvetti,J.Chem.

Phys.ヱ8 ,,365(1983).

b)J.Bar七hel,R.Wach七er,andH.-J.Gores,in"Modern

AspectsofElectrochemistryH,ed.byB.E.ConwayandJ.

O,M.Bockrisワ(Plenum,NewYork,1979),Vol.13,Chap.1.

TableA2.5.Physicalproper七iesof1-propanolatvarious

t。mperaturesatlbar.a)

Temp・

(。C>η ・(。P)b) ε0 ε◎o τD(ps)

(A)RHO

O

FO

-占

9畠

2.84

1.97

22.6

20.4

3。9

3.9

550

340

4,25

4.21

a)D.Bertolini,M.Casse七tari,andG。Salvetti,J.Chem.

Phys.ヱ 旦,365(1983).

b)J.Barthel,R.Wachter,andH.-J.Gores,in"Modern

AspectsofElectrochemistry",ed。byB.E.ConwayandJ.

O,M.Bockris,(Plenum,NewYork,1979),Vol.13,Chap.1.

-106一

TableA2.6.

七emperatures

Physicalproperties

a>at、1bar.

OfWa七eratVariOUS

Temp・

(OC>ηo(cP) ε0 εoo

むτD(P・)RHO(A)

0

0

0

0

0

4⊥

2

3

4▲

1.787

1.306

1.002

0.798

0.653

88.3

84.1

80.4

76.8

73.2

4.46

4.1

4.23

4.2

4.16

17、9

12。6

9。3

7.2

5.8

1.49

1,50

1。50

1.50

1.51

a>N.Takisawa,J.Osugi,andM。

ヱ至L,51.45(1982).

TableA2・ ヱ_LPhysicalproperties

temperaturesatlbar一

Nakahara,J.Phys.Chem.

ofheavywatera七various

Temp・

(OC》η ・(。P)a)

b)ε

0

c)ε◎o τD〈P・)c)RH。(9)

0

0

0

14

ウ】

△エ

1.668

1.248

0.785

83.8

79。9

72.8

4.35

4.00

3.45

16.0

11.9

7.3

1.49

1.51

1.54

a)

b)

c》

R.HardyandR.Cottington,J・Res・Na七1・Bur・Std・

(U.S.)全 旦,573(1949)。

G.A.Vidulich,D.F.Evans,andR.L.Kay,J。Phys.

Chem.ヱ ユ,657(1967).

E.H.GrantandR.Shack,Trans,FaradaySoc.1篁 旦,

1519(1968).

-107-

,1

TableA2.8.

te皿peratures

Physicalpropertiesof

atlbar.

formamideatvarious

Temp・

(。C)η ・(。P)・)

b)ε

0・D(・ ・)b)RH。(a)c)

PO

EO

5

2

3

4

3.40

2.68

2.17

108.2

106.3

101.4

Qり

噌⊥

8

Qり

3

n∠

1.47

1.48

1.54

a)"Kagakubinran(HandbookofChemis七ry)ft,ed.bythe

ChemicalSocietyofJapan(Maruzen,Tokyo,1984).

b)S.J。Bass,W.1。Nathan,R.M.Meighan,andR.H.Cole,

J.Phys.Chem。 旦旦,509(1964).

c)ε。。i・assum・dt・b・ind・pendent・ft・mp・ ・ature・

TableA2・9.PhysicalpropertiesofN-methylacetamideat.

varioustemperaturesatlbar・

Temp・

(OC)η・(。P)a)

b)ε

0・D(P・)b> RH。(9)c)

「O

FD

3

FO

3.385

2.152

172

144

327

173

2.22

2.21

a)P.

J.

b)S.

J.

c)εoo

T.Thompson,M.Durbane,J.T・Turner,andR・H・Wood,

SQIu'ヒ.Chem・ 旦,955(1980).

J.Bass,W.1.Nathan,R.M.Meighan,andR.H.Cole,

Phys.Chem.旦 旦,509〈1964).

(ニ10)isassumedtobeindependentofte皿perature.

一108一

TableA2.10. Physical

at30・C.a)

ProPertiesofacetoneatvarious

pressures

?E8ラ9,h2) ηo(cP) ξ0 RH。(K)b)

1

260

520

780

1040

1560

2070

0.295

0.355

0.407

0.457

0.504

0.607

0.713

20.25

21.01

21.61

22.11

22.54

23.28

23.88

2.14

2.12

2.11

2.10

2。09

2・Q7

2.06

a)E.Inada,Rev.Phys.Chem.Jpn.1旦g78(1978).

b)ε ◎oandτD/ηoareassumedtobeindependentoftemperature

andpressure.直

一109一

TableA2.11.Physical

pressuresat250C.

propertiesofmethanola七various

Press.(bar) η ・(。P>・)

b)ε

0RH。(X)c>

1

500

1000

1500

2000

0.544

0.668

0.800

0.923

1.037

32.65

1

34.37

35.62

36.68

37.58

3.16

3.15

3.12

3.10

3.09

a)

b)

c)

J.D.Isdale,A.J-Easteal,andA.Woolf,Int.J。

Thermophys。 旦,439(1985).

K.R.SpinivasanandR.L.1(ay,J.Solut・Chem・ 全,299

(1975).

ε◎DandτD/ηoareassumedto「beindependentofpressure・

一110一

TableA2.12.

pressures

Physical

a>at250C.

propertiesofwateratvarious

ぞE8ラ9tl2) ηo(cP) ε0 τD(ps)む

(A)R正{O

1

250

500

750

1000

0.890

0.885

0.883

0.884

0。886

78.5

79.4

80.2

81.1

81,9

8.37

7.9

7.54

7.31

7.18

1.51

1.49

1.47

1.45

1.44

a)「M.Nakahara,T.Tδrδk,N.Takisawa,andJ.Osugi,

J.Chem。Phys.ヱ 旦,5145(1982)。

一111一

TableA2.13..

at250Cand

Physical

a)1bar.

propertiesofmethanol-wa七ermix七ures

MeOH(mol%) η ・(。P)b) ε0 εOQ

むτD(P・)RHO(A)

0

50

70

90

100

0.890

1。320

0.980

0.696

0.544

78.3

49.6

42.2

36.1

32.8

5.2

4.1

5.3

6.2

6.1

8.2

31.6

42.6

53.3

52.9

1.50

2.12

2.54

3.00

3.24

a>D.Ber七 〇rini,M.Casse七ti,andG.Salvetti,J.Chem・

Phys.ヱ8,365(1983).

b)J.D.Isdale,A.J.Easteal,andA.Woolf,Int・J。

Thermophys.S,439(1985).

。112一

TableA2.14.

at250Cand

Physical

a)1bar.

propertiesofethanol-watermixtures

EtOH(mol%) η ・(。P)b)

c》ε

0εC ε◎o

むτ1(P・)τ2(P・)RHO(A>

0

0

0

0

0

0

0

0

0

2

3

4

5

6

7

8

01

0.890

2.354

2.334

2.163

1.952

1.750

1.565

1.401

1.087

78.5

55.8

47.7

41.4

36。7

33.0

30.3

28.1

24.3

78。5

53.3

35.7

28.2

20.7

16.2

10.1

7.4

4.4

5

4

7

8

7

0

0

6

4

.

.

.

5

5

4

4

4

5

5

4

4

124

111

101

100

111

118

132

170

8.4

22

25

31

33

40

48

60

1.51

1。70

2.06

2。25

2.47

2.73

3.03

3.31

3.93

a)

b)

c)

D,E.Buck,U.S.Govt.Res.Develop.Rept.皇 旦,59

(1965).

R.L.KayandT.L.Broadwater,J.Solut.Chem.旦,57

(1976).

G.且k。 。1δf,J.Am.Ch。m.S・c.墾,4125(1932).

一113一

Tab工eA2。15.Physical

at250Candlbar.

propertiesofdioxane-watermixtures

Dl辮eη ・〈・P)a)ε0 εC ε◎o

むτ1(P・ 〉 τ2(P・)RHO(A>

0

4

4

3

5

5

8

6

1

2

3

4

5

6

7

b)

.2b)

.gb)

.2『b)

.2b)

.7c)

.oc)

.5c)

O.890

1,167

1.395

1.574

1.815

L969

1.958

1.806

78.5

68.7

58.0

47.9

39.1

31.2

21.4

14.2

5.5

5.2

4.8

5.5

5・Q

4.7

4.4

4.0

3.6

3.2

3.0

8.3

9。5

11,1

12.7

14.3

21.0

24.0

23.5

2.3

2.7

2。9

1.50

1.50

1.55

1.63

1.70

1.90

2.12

2.31

a)

b)

c)

R.L,KayandT.L.Broadwater,Electrochim.Ac七a16,

667(1971).

.J.B.Hasted,G.H.Haggis,

Soc.47,577(1951).

S.K.GargandC.P.Smyth,

(1965).

andP.Hutton,Trans.Faraday

J.Chem.Soc.蔓,2959

一114・ 一

A3. DiffsionConstants。

TableA3.1.

250Cand

Selfdiffsionconstantsinpureliquidsat

1bar.a・b)

Liquidc)

ηo(cp) D〈10-5。m2。-1) Liquid ηo D

water

MeOH

acetone

CCl4

0.891

0.555

0.304

0.923

2.51

2.48

4.0

1.4

nitromethane

chiorobenzene

nitrobenzene

0.632

0.755

1。830

2.10

1.80

0.72

)

)

a

b

c)

D.E.O,Reilly,J。Chem.Phys.≦L旦,5416(1968).

D.E.O,ReillyandE.M.Pe七erson,J.Chem.Phys.1墾 Σ,

2155(1971).

'響JSMEDataBook:ThermophysicalPropertiesofFluids'㌧

ed.bytheJapanSocietyofMechanicalEngineers(JSME・

Tokyo,1983)

一115一

TableA3.2.Diffusionconstantsofneutralmoleculesin

carb。n。t。trachl。rideandm。than。lat25・Candlbar.a)

Molecule一5

D(10

CCl4

cm2s-1)

MeOH

Molecule D(IO"5。m2。-1>

CCI4MeOH

Ar

Kr

Xe

CH4

CCl4

3.79

2.86

2.50

3.08

1.30

3.63

2.92

4.55

2.25

Et4C

MeSn4

EtSn4

PrSn4

BuSn4

1.22

1.06

0.83

0.70

1.87

2.06

1.66

1.38

1.18

a)D.F.Evans,TTominaga,H・T・

J.Chem.Phys.74,1298(1981).

Davis,andC.Chen,

一116一

A4. Li皿itingionicconductances.

TableA4.1.

■nvar■OUS

Limitingionicconductancesofmonovalen七ions

a)solventsat250Candlbar.

Solventb)M

eOHd)c)AN

acetonee)FA f)NMF

ηo(cp) 0.5513 0.303 0.3409 3.31 1.65

Li+

Na+

K+

Cs+

Me4N+

Et4N+

Pr4N+

Bu4N+

Cl-

Br-

1一

39.55

45.17

52.44

60.83

68.73

60.50

46.08

38.94

52.36

56.45

62.78

77.49

78.74

83.52

96.93

89.49

75.09

66.40

121.2

118.94

117.99

69.3

76.9

83.6

87.3

94.5

84.8

70.3

61.4

100.7

102.4

9.03

10.10

12.75

13.87

13.41

11.03

8.12

6.83

17.12

17.17

16.73

21.56

22.13

24.59

35.46

26.19

13.94

ユO.3

19.7

21.56

22.76

a)Forwater,EtOH,and1-PrOH,seeTabs.A4.11,6,and5,

respec'ヒively・

b)R.L.KayandD.F.Evans,J.Phys.Chem.ヱ ≦≧,2325

(1966).

c》D.F.Evans,J,Thomas,J,A,Nodas㌧ansセ 【・A・Matesich,

」.Phys.Chem.ヱ 互,1714(1971).

d)Acetonitrile;C・H・Springer,J・F・CoetzeeワandR・L・

-117一

e)

f)

Kay,J.Phys.Chem.ヱ 旦,471(1969).

Fて)rmamide;J。Tho皿asandD。F.Evans,

3812(1970).

N-methylformamide;R.D.SinghandR.

soc・Jpn・ ≦L旦,2088(1972).

J、Phys.Chem.ヱ ー生,

Gopal,Bull。Chem.

TableA4.2.Limi七ingionicconductancesoftetramethy工 一and

tetraethylammoniumior}sinacetonitri!eatvarious

t。mperat。 。ea七1bar.a)

Temp・

(OC)

一5 5 15 25

ηo(cP> 0.471 0,420 0.378 0.343

MeN+4

EtN+41

69。00

62.06

77.24

69.56

85。75

77.30

94.45

85.23

a)」.Barthel,U.Strδder,L.Iberl,andH.

Bunsenges.Phys.Chem.旦 旦,636(1982>.

Hammer,Ber・

一118一

TableA4.3.

inmethanol

Limitingionicconductances

atvarioustemperaturesat1

ofmonovalentions

a)bar

Temp・

(OC)

一15 一5 5 15 25

ηo(cP) 1。026 0.860 0.729 0.625 0 、541

Na+

K+

MeN+4

PrN+4

BuN+4

Cl-

Br-

1『

23.07

27。21

38.19

24.77

20.62

28.07

30.63

34.29

27.74

32.67

44.97

29.46

24.61

33.34

36.30

40.55

32。97

38.68

52.33

34.61

29.01

39-12

42.48

47.34

38.72

45.25

60.22

40.15

33.77

45.46

49.25

54.75

45.05

52.42

68,68

46.15

38.94

52.36

56.60

62.74

a)J.Barthel,M。Krell,L.Iberl,andF。

J.Electroanal.Chem.214,485(1986).

Feuerlein,

一119一

TableA4,4.

inethanol

Limitingionicconductancesofmonovalentions

a七vari。u。t。mperaturesatlbar.a),

Temp,

(OC)一5 5 15 25

ηo(cP) 2.006 1.620 1.324 1.094

Na+

K+

Cs+

Pr4N+

Br一

工一

10.85

12.48

14.47

12.59

12。94

14.84

13.52

15.57

17.91

15.57

ユ6.02

18.29

16.64

19.18

21.89

19.01

19.65

22.31

20.23

23.34

26.43

22.93

23.88

26.99

a)J.Barthel,R.Neueder,F.Fererlein,F.

L.Iberl,J.Solut.Chem。 ユ旦,449(1983).

Strasser,and

一120一

TableA4.5.

in1-propanol

Limiting、ionicconductances

at250Candat100Catl

ofmonovalentions

a)bar、

Temp・

(OC)25 10 25 10

ηo(cP) 2.840 1.967 2.840 1.967

Na+

1(+

Rb+

十Et

4N

7.16

8.37

8.77

10.50

10.60

12.37

12。87

15.29-

Pr4N+

Bu4N+

Br一

工一

8.56

7.54

8.31

9.51

12.58

10.97

12.05

13.70

a)J.Barthel,R.Wachter,G.Schmeer,

J.So工ut.Chem.15,531(1986).

andH.Hilbninger,

一121一

TableA4.6.Limitingionicconductancesofsome

wateratvarioustemperaturesatlbar.

A.Alkalimetal,七etraalkylammonium,andhalide

■ons■n

.a)■ons.

Temp・

(OC)10 25 45

η 。(cP) 1.306 0.890 0.596

十Li

Na+

K+

Cs+

Me4N+

EtN+4

Pr4N+

Bu4N+

Cl

Br

26.37

34.93

53.08

56.50

30.93

21.90

15.33

12.56

54.33

56.15

55.39

38.66

50.20

73.55

77.29

44.42

32.22

23.22

19.31

76.39

78.22

76.98

58.02

73.83

103,61

107.56

65.01

47。95

35.78

30.40

108。96

110.69

108.76

一122一

B.Oxo.'b)

anユons.

Temp・

(OC)O 18 25

ηo(cP) 1.787 1.053 0.890

CIO4

2-SO

4

39.6

20.5

58.8

34.2

67.36

40.01

a)R.1」.Kay,in「,Wa七er▼ ㌧ed.byF.Franks,〈Plenum,New

York,1973>,Vol.3,Chap.4f

b)R.A.RobinsonandR.H.Stokes,"Electrolyte

Solu七ions,㌧(Butterworths,London,1959)・

一123一

TableA4.7.

inacetoneat

A.Alka工imetal

Limitingionicconductancesofmonovalent

vari。u。pressuresat30・C.a)

ions.b)

サ■ons

Pぞ蹴m2)

1 260 520 780 1040 1560 2070

ηo(cp) 0.925 0.355 0.407 0.457 0.5040.6070.713

Li+

Na+

K+

Cs+

78.6

82.6

84.1

89.2

69.3

73.0

74.6

79.1

62.3

65.6

66.8

71.4

56.3

59.2

60.5

64.5

51.4

54.3

55.4

59.1

43.7

46.3

47.2

50.4

37.8

39。8

40.8

43.6

B.Tetraalkylammonium.c)■ons.

Press.

(bar)1 138 276 413 551

η 〈cp) 0.295 0.328 O.358 0.388 0.414

MeN+4

..EtN+4

PrN+4

91.1

86.8

70.2

83.8

80.1

64.4

78.0

74.2

60。0

72.4

68。9

56.1

68.2

65.0

52.7

一124一

TableA4。7.B.(continue)

Press,

(bar)689 827 965 1103

ηo(cp) 0.440 0.465 0.491 0.516

十Me4N

十Et

4N

十P「4N

64.0

61,0

49。7

61。3

57.9

47.3

57.5

57.6

44.7

55.2

51.8

42.4

a)Becausetheexperi皿entaldataisnotavailable,itis

asumedthattransferencenumbersareindependentof

temperatureandpressure・

b>E.工nada,Rev.Phys.Chem.Jpn.歪 旦,72(1978).

c)W。A.AdamsandK.J.Laidler,Can。J.Chem.璽 Σ,1977

(1968).

一125一

TableA4.8.

inmethanol

I」imitingionicconductancesofmonovalentions

a)atvariouspressuresat250C.

Press.

(bar)1 500 1000 1500 2000

ηo(cp> 0.544 0.668 0.800 0.923 1.037

N

N

4

△凸

i

a

e

U

L

N

K

M

B

39.55

45.17

52.44

68.73

28.94

33.95

38.29

45。65

55.97

31.61

29.13

32,84

39.86

49.31

26.14

25.83

29.07

35.88

43.34

22.31

23.96

26.25

32.92

38.94

19.75

a)B.Watson

ed.byF。

Chap・4・

andR.L.Kay,citedinR.L.Kay,in"Water",

Franks,(Plenum,NewYork,1980),Vol.3,

一126一

TableA4.9.Limitingionicconductancesof

inwateratvariouspressuresat250C.

A.Alkalim。tali。n。.a)

mOnOValentiOnS

P欝 こm2)

1 250 500 750 1000

ηo(cp) 0.890 0.885 0.883 0.884 O.886

Li+

K+

Cs+

38.67

73.51

77。27

39.22

73.73

77.13

39.63

73.82

76.80

39.93

73.76

76.32

40.14

73.58

75.71

P罐 ラこm2)

1250 1500 1750 2000

ηo(cp) 0.892 0.900 0.910 0.920

Li+

K+

Cs+

40.29

73.29

75.00

40.40

72.89

74.25

40.50

72.41

73.47

40.61

71.85

72.70

一127一

B。Tetraalkylammonium.b)■ons.

Press.

(bar>1 500 1000 1500 2000

ηo(cp) 0.890 0.883 、O.887 0.901 0.922

Me4N+

EtN+4

PrN+4

44.42

32.22

23.22

43.51

3L62

22.89

42.34

30,89

22.42

41.47

30.12

21.97

39.67

29.18

21。47

a)M.Nakahara,T.Tδrδk,N.Takisawa,andJ.Osugi,

J。Chem・Phys・,ヱ 旦,5145(1982).

b)R.L.Kay,in"Water",ed.byF.Franks,(Plenum,New

York,1980),Vol.3,Chap.4.

TableA4.10.LimitingiQnicconductancesofmonovalentions

inmethanol-watermixturesat250Candlbar一

Methanol

(mol%)0 50a,b) 100

η ・(cP> 0.890 1,32 0。544

Na+

K+

Cl暉

50.2

73.6

76.4

29.6

38.1

37.1

45.2

52.4

52.4

a)H.F.SchiffandR.Gordon,

(1648).

b)1」.W.Shemilt,J.A。Davis,

Phys.⊥ 旦,340(1948)。

J.Chem.Phys.ユ 旦,366

andA.R.Gordon,J.Chem.

一128一

TableA4.11.Limitingionic

inethanol-watermixturesat

conductancesofmonovalentions

a)250Candlbar.

Ethanol

(mol%)0 5 10 15 20 30 40

ηo(cP> 0.890 1.390 1.890 2.205 2.354 2.334 2.163

十Li

Na+

K+

Cs+

Me4N+

Et4N+

PrN+4

BuN+4

Cl

Br

38.7

50.2

73.6

77.3

44.4

32.2

23.2

19.3

76.4

78.2

77.0

25.5

36.2

52.0

54.6

31.4

22.6

16.0

13.4

51.2

52.2

5ユ.3

19。2

28.9

39.5

41.5

24。5

17.9

12.6

10.6

38.1

38.9

37.8

16.4

24.2

33.1

34.3

21.5

16.2

11.6

9.8

32.0

32.2

31.5

15.1

21.7

29.0

29.9

19.8

15.5

11.3

9.6

28.7

28.8

13.9

24,6

25.6

18。5

15.4

11.7

9.8

25.4

26.4

13.2

19.4

22.3

23.1

18.7

16。0

12.4

10.5

23.7

25.3

一129一

TableA4.11. (continue)

Ethanol

(mol%)50 60 70 80 90 100

ηo(cP》 1.952 1.750 1.565 1.401 1.248 1,087

十Li

Na+

Cs+

Me4N+

Et4N+

Pr4N+

Bu4N+

Cl

Br

13.1

21.6

22.0

19.1

17.0

13.5

11。6

22.9

24.6

13.3

18.7

21.5

22.2

ユ9.5

17.8

14.8

12.9

22.6

24.3

13.7

21.9

22。6

20.4

19.1

16.0

14.2

22.5

24.4

14.3

22.3

23.6

22.3

21.1

17.3

15.6

22.3

24.3

15.6

22.8

24.7

25.3

24.3

19.6

17.1

22.0

24.0

17.1

20.3

23.6

26.5

29。7

29.3

23.1

19.7

21.9

23.8

27.0

a)R.L.KayandT.

(1976),

L.Broadwater,J.Solut.Chem.至 」57

一130一

TableA4.12.Limitingionic

indioxane-watermixturesat

A.Li七hiu皿i。n.a・b)

conductancesofmonovalentions

250Candlbar、

D畿 禦eη・(・P) λo

Dl瀦eη・(・P> λo

0.0

18.8

45.9

65,1

0.890

1.268

1、845

1.976

38.67

28.95

19.27

17.11

69.8

75.6

78,4

1.928

1.827

1.761

16.71

16.01

ユ5.76

B.S。diumi。n.a・ ・)

Dl3謝eη・(・P) λo

D畿 禦eη・(・P) λo

0。0

34.2

53.7

60.5

0,890

1.598

1.953

1.992

50.21

29.65

22.90

21。60

70.6

73.5

77.7

79.9

1.917

1.871

1.778

1.721

19.71

ユ9.20

17.30

16.25

C.P。tassiu皿i。n.a・d)

Dioxaneηo(cP)(wt%) λo

D畿 射eη・(・P) λo

0.0

22.2

43.65

56,7

0.890

1。330

1.803

1.977

73.55

50.06

33.37

27。58

61.7

69.9

75.5

78.8

1.991

1.928

1.874

L755

25.80

23.22

21.23

19.59

一131一

D.Rubidium.a,e)■on.

Dioxane

(wt%)ηo(cP> λo

Dioxaneηo(cP>(wt%) λo

0.0 0.890 77.28 70.5 1.920 23.43

36.2 1.636 39.56 77,5 1。786 20.27

61.9 1.987 26.34 80,1 1.720 19。48

E.Cesium.a,f)■on.

Dioxane

(wt%) ηo(cP) λ 。Dioxane、

ηo(cP)(wt%〉 λo

0.0 0.890 76.73 70,5 1.921 22.49

47.5 1.862 33.04 75.5 1.827 20.71

64.4 1.980 24.77 78.8 1.756 18.68

F,Chloride,9)■on.

Dioxane λo

(wt%)

Dioxane λo

(wt%)

0 76.39 70 22.8

20 51.2 82 19.0

45 35.0

一132一

G.Bromide.h)■on.

Dioxane

(w七%)ηo(cP) λo

Dioxane

(wt%〉 ηo〈 ・P)λo

0.0

22.2

45.6

56.4

0.890

1.330

1.835

1.972

78.22

50.05

33.93

29。82

63.0

70.2

78.7

1.983

1.923

1.758

27.35

24.70

18.93

H.Iodide.i)■on.

Dioxane

(w七%)ηo(eP> λo

Dioxane

ηo(cP)(wt%) λ。

0.O

22.1

44.6

57.1

0.890

1.328

1.820

1.982

77.43

46.12

31.53

28.49

63.7

70.7

75.2

78.5

1.986

1.922

1.839

1.754

27.49

26.26

24.98

22.2

工.Tetrabuthylammonium.j)■on.

Dioxane

(wt%) ηo(cP) λoDl謝e

η・(・P> λo

0.0

10

20

30

35

40

0.890

1.087

1.288

1.508

1.620

1.729

19.31

16.79

14.73

13.09

12.46

11.90

45

50

55

60

65

70

1.828

1.909

1.965

1.991

1.979

1.922

11.45

11.23

11.19

11.33

11。66

12.15

一133。

J.LimitingionicconductancesofsomeiQnsin

k)dioxane-water皿ixturesat250CandlbarafterKayetal.

Dioxane

(wt%)9。41 17.18 30。05 46.28

ηo(cp) 1.075 1.234 1.510 1.851

K+

Bu4N+

Cl-

'Br

65.51

16.73

64.41

65.29

54,33

14.86

55.74・

55.98

43.37

13.43

44.84

32.09

34.51

34.86

a)ThelimitingionicconductancesforClareinterpolated

fromTab.A4.12.F.

b)T-L.FabryandR。M.Fuoss,J.Phys.Chem..68,971

(1964).

c)R・W-KμnzeandR・M・Fuoss,J・Phys・Chem・ 型 乙,911

(1963).

d)J.E,LindandR.M.Fuoss,J,Phys.Chem。1墜 Σ,999

(1961).

e)R.W.KunzeandR.M.Fuoss,J.Phys.Chem.旦 ヱ,914

(1963).

f)J.JusticeandR.M.Fuoss,J・Phys・Chem・Sヱ,1707

(1963>.

9)(a)B.B.OwenandG.W・Waters,J・Am・Che皿 ・Soc・S.ltL・

2371〈1938),(b)H.S.HarnedandE・C・Dreby,J・A皿 ・

Chem.Soc.旦L,3113(1939)・

h>J,E.LindJr.andR。M.Fuoss,J.Phys.Chem.旦L6,1727

-134一

(1962);λof。rRb+arei。t。 。p。rat。df。 。mT。b.A4.ユ2.D.

i)・J.E.LindJr.andR.M.Fuoss,J.Phys.Chem.璽 Σ,1414

(1961);λ 。f。rC。+areinterp。 。at。df・ 。mT・b.A4.12.E.

」)P-L.Mercierandc.A.Kraus,Proc.Natl.Acad・sci.≦L1,

む レ1033(1955);λforBr-areinterpola七edfromTab・

A4.12.G.

k)R.L.KayandT.L.Broadwateエ ㍉Electrochi皿.Actaユ 旦,

667(1971).

一135一

A5.Rotationalcorreletiontimes.

TableA5,1.Rotationa工correlationtimesofoxoan■ons■n

heavywatera七vari。u。t。mp。 。atureatlb。 。.a'・b)

A.Perchlorateion.

一L『T

emp・

(OC)τR(ps)

Temp・

(OC)τR(ps)

3.5

4.0

7.1

10.0

15.2

17.0

22.1

1.12

1.13

1.06

0.99

0.93

0.89

0.84

28.3

33.7

35.7

43.0

50.0

64.3

65,2

0.77

0.73

0.69

0.64

0.59

0.58

0.49

B.Sulfateion.

Temp・

(OC)τR(ps)

Temp。

(OC)τR(ps)

5.0

6.5

7。7

10.0

15.1

19.2

20.7

5.08

4.95

4.73

4.37

3.89

3.55

3.35

28。9

32.7

38.2

48.2

53.0

66.7

84.2

2。83

2.51

2.36

2.06

1。90

1.51

1.18

一136一

C・Phosphateion.

Temp・

(OC)τR(ps>

Te皿P・

(OC)τR(ps)

4,7

5.2

8.2

10.2

14.7

18.8

21.6

34.4

33.1

29.0

27.7

23.4

20。2

17.8

28.3

33.9

37.0

46.5

53.3

67,2

84.5

15,4

13。4

12.7

10。1

9,3

6.0

4.8

a)Y.Masuda,M.Sano,andH.Yama七era,

3086(1985).

b)Y.Masuda,privatecommunication

J.Phys。Chem.旦 ≦≧,

一137一

TableA5.2。Rotationalcorrelationtimesofoxoanionsin

.a,b)heavyInethanolatvarioustemperatureatlbar.

A.Perchlorateion.

Temp・

(OC)τR(ps)

Temp・

(OC)τR(ps)

一41 .7

-39 .2

-33.3

-25 .7

-14.6

。6 .2

1.53

1.47

1.36

1.22

1.08

0.95

4.3

11.7

30.0

38.9

47。8

0.84

0.79

0.71

0.66

0。62

B.Sulfateion.

Temp。

(OC)τR(ps)

Temp・

(OC>τR(ps)

一42 .0

-37.3

-31。5

-25、1

-19。9

」17.8

-7.3

17.7

16。0

14.1

12.2

10.9

10.5

8.35

一4 .4

4.7

6.7

15.4

29.0

42.3

51.7

7.97

6.99

6.64

5.88

4.87

3,77

3.48

a)Y.Masuda,M・Sano,

3086(1985)6

b)'Y.Masuda,private

andH。Yamatera,J.Phys.Chem.旦 旦,

communica七ion

-138一

A6. ViscosityBcoefficient.

TableA6.1.

VariOUSSOIVentS

ViscosityBcoefficientof

at250Candlbar.

nOmOValentiOnSin

Solvent wa七 。。a)M。OHb)f)

acetonitrile

1」i+

Na+

K+

Rb+

Cs+

MeN+4

EtN+4

PrN+4

BuN+4

Cl曙

Br-

1一

0.1495

0.0863

-0.0070

-0 。045

0,1175

0.3807

1.092

1.396

-0.0070

-0.032

-0.0685

0.3gc)

0.36d)

0.38a)

0.26c)

0.38c)

-0.01e)

0.12e)

0.30e)

0.4ge)

0.38a)

0.36e>

0.2ge)

2

1

0

Pb

FD

戸D

0

0

0

q

9

2

2

6

【◎

4

3

9臼

0

0

0

0

a)

b)

)

c)

R.H.StokesandR.Mills,四ViscosityofelectrQlyteand

RelatedProperties",(Pergamon,London,1965).

ForthedivisionoftheBcoefficientsofelec七rolyte

int。thei。nicc。ntributi。n。,weassu皿 。thatB(K+)・

B(Cl),

R.A.Stairs,in"ThermodynamicBehaviorofElectrolyte

inMixedSolvents工 工",ed.byW.F。Furter,(American

ChemicalSociety,Washington,D.C.,1979)Chap。 工工.

-139一

d)

e)

f)

J.B.BareandJ.F.Skiner,」.Phys。Chem.ヱ 隻,434

(1972).

R。L.Kay,T.Vituccio,C.Zawoyski,andD.F.Evans,

J.Phys,Chem。70,2336(1966).

D.S.GillandM.S.Chauhan,Z.Phys.Chem.(N.F.)140,

149(1984)、

TableA6.2.ViscosityBcoefficientsofK工

vari。u。t。mperaturesatlb。 。.a・b)

inmethanolat

Temp・

(OC)B

Temp・

(OC>B

[0

0

『Q

ウ一

3

3

0.444

0.416

0.408

0

【0

0

4

△』

5

0.405

0.401

0.399

a)H.T.BriscoeandW.T.Rinehart,J.Phys.Chem.巫 Σ,

387(1942).

b)Werecalcu!atetheBcoefficientsaccordingtothedata

-3

intheconcen七ra七ionrangeofc≦O。5moldm.

一140一

TableA6.3.ViscisityBcoefficients

wateratvarioustemperaturesat1

ofmonovalentionsin

bar.a)

Temp・

(OC》5 15 25 35 45 55

Li+

Na+

K+

MeN+4

EtN+4

Cl-

Br-

1一

0.166

0.075

-0.041

0.126

0.409

-O .041

-0 .080

-0.130

O.153

0.083

-0 .021

0.116

0.370

-0.021

-0.056

-0.102

0.144

0.085

-0.007

0、116

0.340

-0 .007

-0 .040

-0.083

0.135

0.083

0。004

0.113

0.318

0.004

-0 .026

-O.067

0。129

0.082

0。013

0.109

0.297

0.013

-0.014

-0 .054

0.125

0.081

0.020

0.109

0.282

0。020

-0。004

-0 .047

一141一

TableA6.3。 (continue)

Temp・

(OC)65 75 85 95

Li+

Na+

K+

十Me4N

十Et

4N

CI-

Br-

1鱒

0.122

0.083

0.025

0.108

0.272

0.025

0.004

-0.038

0.121

0.085

0.030

0.107

0.262

0.030

0.Q11

-0.028

0.119

0.085

0.036

0.107

0.255

0.036

0.015

-0.023

0.117

0.087

0.039

0.106

0.253

0.039

0.021

-0.016

a)D.J.P.

(1980).

OutandJ.M・Los,」 ・Solut.Chem・ 旦,19

一142一

TableA6.4.

formamide

ViscisityBcoefficientsofmonovalent

a)atvarioustemperaturesatlbar・

■ons■n

Temp・

(OC)25 35 45

Li+

K+

Cs+

Cl-

Br-

1一

0.309

0.195

0.146

0-169

0,127

0.097

O.282

0.179

0.137

0。166

0.125

0.091

0.263

0.161

0.125

0.164

0.124

0.103

a)N.MartinusaロdC.A.Vincent,

Trans.1.ヱ ヱ,141(1987),

J.Chem.Soc.,Faraday

一143一

TableA6.5.ViscisityBeoefficientsofmonovalentionsin

a)N-methylacetamidea七varioustemperaturesatlbar .

Temp・

(OC)35 55 35

Li+

Na+

K+

Cs+

Cl-

Br喝

1噌

0。880

0.714

0.753

0.632

0.243

0.173

0.095

0,835

0.694

0.743

0.614

0.219

0.145

0.133

CCl4

n-CH1226

Me3Etc

Et4C

water

一 〇.033

-O .051

-O .130

-O。096

0.025

a)P・T.Thompson,M.Durbano,J。L.

J.Solut.Chem.旦,955(1980),

Turner,andR.H.Wood,

一144一

Ta『bleA6.6.VJscosityBcoefficientsofmonovalentions

inm。than。1-wat。rmixturesat25、 ・Candlba。.a)

A.P。tassiu皿and。hl。rid。i。n.b)

MeOH

(mol%)B

MeOH

(mol%)B

0.0

10.0

29.9

40.1

一〇.0070

-0 .008

-0.020

-0.037

51.0

64.1

80.1

100

0.091

0.113

0.281

0.356

B.Lithiumi。n.・)

MeOH

(mol%》B

MeOH

(mol%)B

2

0

0

9

3

5

ハb

ρ○

0.211

0.286

0.267

0.287

81

90

100

0.338

0.339

0.407

C.Cesiumi。n.c)

MeOH

(mol%)B

MeOH

(mol%)B

10。0

22.9

40.1

51.0

一〇.054

-O .066

0.049

0.093

64.1

80.1

89.7

100

0.134

0.142

0.254

0.399

一145一

a》R.A.Stairs,in"ThermodynamicBehaviorofElectrolyte

inMixedSolventsII'㌧ed。byW.F.Fur・ しer,(American

ChemicalSociety,Washington,D.C.,1979)Chap.II.

b)ForthedivisionoftheBcoefficientsofe!ectrolyte

int。th。i。nicc。nt。ibuti。n。,weassum。th。tB(K+)・

B(Cl).

c>BforClareinterpolatedfromTab・A6・6・A・

一146一