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特集 抗凝固薬・抗血小板薬の 処方意図 抗凝固薬・抗血小板薬の 処方意図 抗凝固薬使い分けの実際 抗血小板薬使い分けの実際 周術期の抗血栓薬の 中止・再開と継続の考え方 新薬くろ~ずあっぷ グラナテック点眼液0.4% 処方監査や疑義照会で検査値を使いこなす ネフローゼ症候群の薬剤適正使用に 臨床検査値を活用しよう 初収載 ジェネリックガイド 付録 薬局ヒヤリ・ハットなくし隊がゆく まさかの半錠処方で 「分2」を見落とし 調剤と情報:Rx Info 第21巻 第8号 平成27年6月1日発行(毎月1日発行)平成7年6月19日 第三種郵便物認可 ISSN 1341-5212 7 2015 Vol.21 No.8

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特集

抗凝固薬・抗血小板薬の処方意図抗凝固薬・抗血小板薬の処方意図•抗凝固薬使い分けの実際

•抗血小板薬使い分けの実際

•周術期の抗血栓薬の中止・再開と継続の考え方

新薬くろ~ずあっぷ

グラナテック点眼液0.4%

処方監査や疑義照会で検査値を使いこなす

ネフローゼ症候群の薬剤適正使用に臨床検査値を活用しよう

初収載 ジェネリックガイド

付録

薬局ヒヤリ・ハットなくし隊がゆく

まさかの半錠処方で「分2」を見落とし

調剤と情報:Rx Info 第21巻 第8号 平成27年6月1日発行(毎月1日発行)平成7年6月19日 第三種郵便物認可 ISSN 1341-5212

72015

Vol.21 No.8

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12

18

24

抗凝固薬使い分けの実際  後藤 聖司,矢坂 正弘

抗血小板薬使い分けの実際 遠井 素乃,北川 一夫 

周術期の抗血栓薬の中止・再開と継続の考え方  後藤 信哉

今月の話題

9 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針  日本薬剤師会

47 処方・調剤・保険請求のQ&A  日本薬剤師会

特 集

抗凝固薬・抗血小板薬の処方意図

CONTENTS

2015Vol.21 No.8

7

日本薬剤師会監修の頁

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31

聞いて納得! 薬剤師注目の急上昇ワード⑤医薬分業の過去とこれから(前編)  渡辺 徹 

37 新薬くろ~ずあっぷ172

グラナテック点眼液0.4% 大浜 修

75 処方監査や疑義照会で検査値を使いこなす⑩ネフローゼ症候群の薬剤適正使用に臨床検査値を活用しよう  林 八恵子,利川 恵理子,塚本 有子,三宅 健文

83

医薬品適正使用のための症例からみたファーマシューティカルアセスメント②浮腫(むくみがある)―後編― 立野 朋志,尾上 洋 

89

薬剤師によるケアロードマップ―計画的・継続的ケア支援ツール―⑩中耳炎・副鼻腔炎ケアロードマップ 竹内 里哉,早川 達 

100 薬局ヒヤリ・ハットなくし隊がゆく58

まさかの半錠処方で「分2」を見落とし! 澤田 康文

108 一歩上をいく! エキスパートの仕事③精神安定剤使用時の他疾患の初期症状を見逃さない

3 Reportクラウド型お薬手帳で全薬局が患者情報収集

―五島市が医療情報共有システムを導入― 

108 悠You閑Can④薬剤師は今も町の科学者で… 久保 鈴子

61 広告企画 薬剤師をサポートする情報提供のいま

以外は,じほう編集の頁

Book Review

118 2025年の薬局・薬剤師

52 Rx news 54,56 ときのことば 127 日本薬剤師研修センターだより 50 次号予告 136 『調剤と情報』ご愛読者アンケート&プレゼント

111 欧米に学ぶ医薬分業の本質と薬剤師の医療薬学業務の展望 ̶前編̶ 赤穗 榮一 

119 ギモンを解決! 気になる薬のQ&A④アジスロマイシン  田中 尚美,堀 美智子

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 入院から外来,外来から再入院という医療の流れ

において,抗血栓薬に関する最新の知識・情報は,

薬局・薬剤師の大きな武器となりえます。術前の休

薬や術後の再開のタイミングなど,医師のねらいや

考えを把握することは抗血栓療法に貢献するうえで

必要不可欠。NOACの登場や,血栓由来の生活習

慣病増加を背景に,その重要性はますます高まって

います。

 本特集では,それぞれの抗凝固薬・抗血小板薬

がどのように選択され使い分けられているのか,ま

た,周術期において医師がどのような考えのもと処

方を行っているのかを解説します。

■ 抗凝固薬使い分けの実際 ……………… 12

■ 抗血小板薬使い分けの実際 …………… 18

■ 周術期の抗血栓薬の中止・再開と継続の考え方 …………… 24

特集

抗凝固薬・抗血小板薬の処方意図

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抗凝固薬・抗血小板薬の処方意図特 集

12 調剤と情報 2015.7(Vol.21 No.8)(990)

はじめに

わが国では人口の急速な高齢化とともに心 房 細 動 患 者が増 加し,2000年時点で72.9万人(推定)であり,近い将来100万人を超えると推計されている1)。超高齢社会における健康寿命の延伸のため,心房細動に起因した心原性脳塞栓症の発症予防が重要な課題となっており,その予防に抗凝固療法を行う必要がある。抗凝固薬としては60年にわたり使

用されてきたワルファリンの有用性は確立しているが,ワルファリン特有の問題点により実臨床で適切に投薬,管理されていないケースもみられる。ワルファリン療法の管理が容易で

ない点を改善する観点から,非ビタミンK阻害抗凝固薬(non-vitamin K antagonist oral anticoagulant;NOAC)が開発された。わが国では2011年以降,4種類のNOACが次々と登場し臨床で使用されている。本稿ではワルファリン,NOACの

特徴,および実臨床での使用法について症例を交えて概説する。

ワルファリンの特徴

1 メリットワルファリンは,ビタミンK依存

性凝固因子(Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ)の肝

臓における産生を抑制することで抗凝固作用を発揮する。ワルファリンの最大のメリットは,過去60年の使用経験があり,これまでの研究成果により心房細動患者の脳梗塞を有意に減少させることが示され,その有効性が確立されていることである2)。またPT-INRなど血液中の凝固線溶系のマーカーを測定することにより,抗凝固作用の程度を確認することが可能である(目標PT-INR:70歳未満2.0~3.0,70歳以上1.6~2.6)。そのほか,安価であること,出血

時や抗凝固作用が過度に増強した際に凝固能を回復させるための対処法(第Ⅸ因子複合体,新鮮凍結血漿およびビタミンK投与)が確立していることもメリットとして挙げられる(第Ⅸ因子複合体は保険適用外)。

2 デメリット一方,デメリットとしては,ワルファリンの代謝に関わる遺伝子多型によって効果の個人差が大きい薬剤であり,患者によって投与量を調整する必要があることが挙げられる。また服用から効果発現までに時間がかかり,維持投与量の決定には1~2週間程度を要する。ワルファリン投与によりビタミンK依存性凝固阻害蛋白であるプロテ

インCおよびS活性が低下するため,その十分な抗凝固作用を発現するまでの間,一過性に過凝固状態となり,脳梗塞発症リスクを増加させることが知られている3)。そのため,脳梗塞発症リスクの高い症例では,ワルファリンが十分な抗凝固能を発揮するまで,ヘパリンなど効果発現の速い注射製剤の併用を考慮する必要がある(ヘパリンでの橋渡し療法)。さらに,いったん投与量を決定しても相互作用を有する薬剤が多く,食事の影響(ビタミンKを含む食品で効果減弱など)でも効果が変動するため,少なくとも月1回の定期的な凝固能検査(PT-INR測定など)が必要である。

脳梗塞発症リスクの評価

ワルファリンは治療域や安全域が狭く,逸脱すると脳梗塞および出血性合併症の危険性が増加し,特にワルファリン服用中の出血は増大し,頭蓋内出血を来した際は致死的となることがある。心房細動患者における脳梗塞発症

リスクの評価にはCHADS2スコア(表1),CHA2DS2-VAScスコア(表2)を用い,抗凝固療法の必要性について検討する。CHADS2スコアは脳梗塞の高リスク患者の抽出に優れてお

抗凝固薬使い分けの実際九州医療センター脳血管・神経内科 後藤 聖司,矢坂 正弘

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ネフローゼ症候群の薬剤適正使用に臨床検査値を活用しよう

75調剤と情報 2015.7(Vol.21 No.8) (1053)75

出があるため,血中のアルブミンが低値になる。

LDLコレステロール値 (基準値:120mg/dL未満)

 以前は総コレステロール250mg/dL以上であったが,現在は削除されている。ネフローゼ症候群では脂質異常症が起こるため,総コレステロール,LDLコレステロールが上昇する。

ネフローゼ症候群の病態と治療

1.ネフローゼ症候群とは

 ネフローゼ症候群は原疾患(膜性腎症,糸球体腎炎など)により,糸球体に障害が起こり,多量の蛋白質が尿中に漏れ出て,血液中の蛋白質が減少し,むくみなどの症状が現れる疾患(症候群)である。血清アルブミンが低下することにより,血漿膠質浸透圧が低下し血漿中の水分は組織間(サードスペース)に移行し浮腫が起きる。まぶたの腫れ,手足のむくみ,腹の張った感じなどの症状がある。診断基準を表2に示す。

はじめに

 今回はネフローゼ症候群に注目し,その診断方法や薬剤適正使用に対する臨床検査値の活用について,①ネフローゼ症候群に使用する薬剤と治療指標,②CYP3A4やP糖蛋白質に関連した相互作用――が理解できるよう事例を紹介しながら解説する。

臨床検査値をチェック!

蛋白尿(基準値:100mg/日以下)

 慢性糸球体腎炎の活動性の指標となる値(表1)。検尿で+,-などの程度を調べることもできるが,より正確な診断をするためには蓄尿(24時間)が必要となる。ネフローゼ症候群では1日3.5g/日以上とされている。蛋白尿の選択指数(selectivity index ; SI)はIgGとトランスフェリン(tf)のクリアランス(C)比(CIgG/Ctf)で算出される。SIが0.2未満の症例はステロイド反応性が期待される。

血清アルブミン値(Alb)(基準値:3.8~5.3g/dL)

 アルブミンは血清に含まれている蛋白の主成分である。ネフローゼ症候群では糸球体から大量のアルブミンの漏

「処方監査や疑義照会で検査値を使いこなす」

ネフローゼ症候群の薬剤適正使用に臨床検査値を活用しよう

近江八幡市立総合医療センター薬剤部 林 八恵子,利川 恵理子,塚本 有子西陣病院薬剤部・医薬品情報室 三宅 健文

第10回

表1 蛋白尿の見方

尿Prot/Cr(g/gCr)

1日尿蛋白量(g/kg/日)

随時尿蛋白(mg/dL)

随時尿蛋白定性

早朝尿蛋白定性

0.1 0.002 6 (-) (±)

0.2 0.004 12 (±) (+)

0.5 0.01 30 (+) (2+)

1.5 0.03 90 (2+) (3+)

5 0.1 300 (3+) (4+)

表2 ネフローゼ症候群診断基準

1. 蛋白尿:1日3.5g/日以上が持続する(随時尿において尿蛋白/尿Cr比が3.5g/gCr以上の場合もこれに準ずる)

2. 低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0g/dL以下。血清総蛋白量6.0g/dL以下も参考になる

3. 浮腫4. 脂質異常症(高LDLコレステロール血症)

注1) 上記の尿蛋白量,低アルブミン血症(低蛋白血症)の両所見を認めることが本症候群の診断の必須条件である。

注2)浮腫は本症候群の必須条件ではないが重要な所見である。注3)脂質異常症は本症候群の必須条件ではない。注4)卵円形脂肪体は本症候群の診断の参考となる。

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83調剤と情報 2015.7(Vol.21 No.7) (1061)

1.STEP1,STEP2の再確認 前回の内容およびファーマシューティカルアセスメントを再確認しましょう。 STEP1の聴き取りにより,右のファーマシューティカルアセスメントPOINTを得ることができました。 まず,「①体重の増加」ですが,これは「④むくみ(浮腫)がある」が関係していると考えられます。 また,「②血圧が高い」,「③全身倦怠感」,「⑤整形外

●はじめに●

ファーマシューティカルアセスメントとは,「適切な薬物療法を実施・提案するために,薬剤師が行う聴き取り・フィジカルイグザミネーション・検査データや他職種から得た情報やデータなどを活用し,薬学的視点をもって包括的に評価すること」を指して,筆者らが提唱している概念です。難しいように感じるかもしれませんが,実際には薬剤師が日常の服薬支援で行っていることを言

葉に表したもので,決して難しいものではありません。薬局窓口でできることは,当然在宅医療の現場でも行えます。逆もしかりです。ファーマシューティカルアセスメントを行う流れの例を示します。

患者の状態をしっかりと把握し,問題点を抽出する(聴き取り・コミュニケーション)

フィジカルイグザミネーション・検査データや他職種から得た情報やデータなどを活用する(情報を活用する)

薬学的視点をもって包括的に評価する(アセスメントを行う)

アセスメントを活用する(疑義照会や服薬支援)

前回に続き,今回はSTEP

3 およびSTEP

4 について紐解いていきます。

STEP

1STEP

2

STEP

3STEP

4

薬学的視点をもって包括的に評価する(アセスメントを行う)

STEP

3

★患者の状態をしっかりと把握する ①体重の増加(ここ2週間) ②血圧が高い ③全身倦怠感 ④むくみ(浮腫)がある ⑤整形外科で処方されている

ファーマシューティカルアセスメントPoint

浮腫(むくみがある)-後編-第2回

薬剤師フィジカルアセスメント 研究会(P-PAL)津山調剤薬局株式会社 立野 朋志株式会社ファーマシィ 尾上 洋

医薬品適正使用のための

ファーマシューティカルアセスメント症例からみ

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中耳炎・副鼻腔炎ケアロードマップ

89調剤と情報 2015.7(Vol.21 No.8) (1067)

中耳炎・副鼻腔炎ケアロードマップ砂川市立病院薬剤部 竹内 里哉

北海道薬科大学薬物治療学分野 早川 達

薬剤師によるケアロードマップ─計画的・継続的ケア支援ツール─ 10

 2014年6月施行の改正薬事法および薬剤師法では,薬剤師は「患者またはその看護に当たっている者に対し,必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」(下線筆者)とされた。処方せんに基づく情報提供義務から,服用後の有効性・安全性確保までの管理・指導義務を求められたのは大きなパラダイムシフトである。しかし,服薬指導に必要な情報は数多くあるが,それらの情報をどのタイミングでどのように利用するかの観点で述べたものは少ない。そこで,本連載は薬局薬剤師が継続的に患者ケア(情報収集,指導,確認)をするための時間軸を取り入れた「ケアロードマップ」を疾患ごとに提示し,それを解説するものである。 これは,薬剤師の日常業務に少しだけ計画性と継続性をもたせて指導と確認を行うことによって,患者ケアの向上に役立ててもらうことを趣旨としている。これから治療を開始する初回来局の患者には,「中耳炎・副鼻腔炎ケアロードマップ」に従って,各種情報,製薬企業提供の資材・支援ツールなどを利用しながら,できる範囲で時系列的に指導・確認を継続していただきたい。経過途中の患者であってもケアの要素は一緒である。この場合も適宜指導・確認をしていっていただきたい。その結果として,6カ月後ないしは1年後の患者コンプライアンスの向上と良好な臨床効果が得られることを期待する。 ぜひ,日常業務に少しだけ「患者を思う気持ち」を加えて,「中耳炎・副鼻腔炎ケア」に参画する薬剤師の1人となっていただきたい。患者のために! 私たちの未来のために!

中耳炎

1.要因と症状 急性中耳炎は「急性に発症した中耳の感染症で,耳痛,発熱,耳漏を伴うことがある」と定義され,急性とは,「本人の訴えあるいは両親や保護者により急性症状が発見され,その48時間以内に受診した場合」である1)。起因は気道ウイルスや細菌(特に肺炎球菌,インフルエンザ菌,モラクセラ・カタラーリスが7割を占める,図1)である。近年の研究では,中耳貯留液からペニシリン耐性黄色ブドウ球菌(PRSP)やβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)などの薬剤耐性菌が検出されており,起因菌の抗菌薬への耐性獲得が懸念されている。 急性中耳炎の大半は上咽頭から耳管を経由して病原体が増殖し,炎症が波及する。つまり急性上気道炎に続発し,小児に多い。書籍によっては急性上気道炎の一種と記述されている5)。感冒様症状(鼻汁過多,咳,痰,発熱など)の後に耳痛を生じ,鼓膜穿孔により耳漏を生じることがある。また,伝音難聴を来す。

2.治療 急性中耳炎の重症度は,鼓膜所見と臨床症状により軽症,中等症,重症の3段階に分けられる。治療は抗菌薬と鼓膜切開を主とするが,軽症であれば抗菌薬を投与せずに経過観察し,症状が緩解しない場合に抗菌薬の投与を考慮することが推奨されている。

インフルエンザ菌(33%)

肺炎レンサ球菌(31%)

モラクセラ・カタラーリス(12%)

黄色ブドウ球菌(9%)

化膿レンサ球菌(2%)

緑膿菌(1%)

その他(12%)

図1 中耳炎の起因菌

(小児急性中耳炎診療ガイドライン2013より)

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連載名+連載回数薬局ヒヤリ・ハットなくし隊がゆく 第58回

100 調剤と情報 2015.7(Vol.21 No.8)(1078)

ケース1 情報伝達不十分でガバペンの処方意図が不明!

発生場面は?カテゴリー① 処方設計・チェックと治療のチェック

処方内容は?患者:81歳の女性,内科

Rp.

ガバペン錠300mg 6錠

1日3回 毎食後 14日分

カロナール細粒20% 6g

1日3回 毎食後 14日分

デパケンシロップ5% 8mL

1日2回 朝夕食後 14日分

ワーファリン錠1mg 1錠

1日1回 朝食後 14日分

ワーファリン錠0.5mg 1錠

1日1回 朝食後 14日分

ほかに併用薬としてアローゼン顆粒,ガスター錠,ツム

ラ抑肝散があった。

薬局ヒヤリ・ハットなくし隊がゆく

まさかの半錠処方で「分2」を見落とし!

第58回

隊長 東京大学大学院薬学系研究科育薬学 澤田 康文

何が起こった? 施設へ新入所のてんかん既往のない患者にガバペン

(ガバペンチン)が処方されていた。

▶▶どのような経緯で起こった?

 患者は新たに施設に入所することになった。施設の担当看護師より,当該施設の薬を管理している当薬局に「施設スタッフのシフトの関係上(施設のシステムの問題上),ガバペンを投与するのが,9:30・13:30・16:00となり,3時間くらいしか間隔が空かないが問題ないか?」との問い合わせがあった。 入所時の看護記録によると,患者にはてんかんの既往歴はなく(デパケンは脳梗塞後遺症の発作予防のために処方されていることを医師に確認済み),ガバペンが何のために処方されているのか不明であった。投与量も高齢者の使用量としては多いため,確認する必要があると思い,施設の担当医師に腎機能や処方意図などを含めて問い合わせを行った。 施設の担当医師は,患者が入院していた病院の前担当医師よりガバペンの処方意図について聞いていなかったので,確認後に折り返し連絡をもらうことになった。ま

 薬局,患者宅(在宅)において,医薬品が関係したインシデント・アクシデントの例は枚挙にいとまがありません。これら

の原因として,薬剤師や医師などの医療従事者の薬学的知識,技能・技術と医療従事者としての態度の問題や,医療施設

における薬剤関係のシステムの問題などが考えられます。結果的に多種多様なトラブルが発生しています。その発生場面を

大きくカテゴリー分類すると,①処方設計・チェックと治療のチェック,②一般調剤業務,③患者への指導・説明―な

どに分けることができます。今回も,これらカテゴリーにおいて発生した代表的事例を紹介しましょう。

  ● ケース1:情報伝達不十分でガバペンの処方意図が不明!

  ● ケース2:まさかの半錠処方で「分2」を見落とし!

  ● ケース3:海外から購入したピルと血栓症の関係は?