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シミュレーションチーム Manufacturing Process Simulation Team VCAD 凝固・熱収縮連成シミュレーションによる鋳造解析 VCAD casting simulation software by coupled thermo-mechanical analysis 大浦 賢一 , 永井 , 永瀬 重一 †† , 牧野内 昭武 , Cristian TEODOSIU Kenichi OHURA , Yutaka NAGAI , Jyuichi NAGASE †† Akitake MAKINOUCHI , Cristian TEODOSIU VCAD システム プログラム, センター, †† (株)永 e-mail : [email protected] Abstract Coupled thermo-mechanical simulation software ”V-Shrink” which predicts the casting defects, such as shrink- age, porosity and warpage, is developed by the authors within VCAD System Research Program. For the precise prediction of the casting defects by the coupled simulation, it is important to take into account the complex phe- nomena depending on mechanical and thermal factors, such as the constitutive law of the high temperature metal, the heat transfer coecient at the metal-mold interface and the restrictions imposed by the mold wall. We report 2 topics from our activities of the coupled simulation for the casting process. One is the example that by taking into account the air-gap depency of the heat transfer coecient, thd ability of the shrinkage defect prediction is improved in case of an aluminum wheel casting. The other is the example that by modifying the temperature dependency discription of yield stress, the ability of the warpage prediction is improved in case of an L-shape sand mold casting. 1 緒言 VCAD システム プログラム シミュレーション プロセス FEMミュレーションソフト ェア ってい [1–4]Fig.1 Coupled thermo-mechanical analysis and the prediction of defect in casting している シミュレーション みを, Fig.1 す.ここ シミュレーション いて に引け するこ がそ ある, が大き ぼす られている.しかし がら, 大きさ 態に依 するため, シミュレーション シミュレーション して 確に するこ あった.こ よう ケース シミュレーション から 態を きるため, 態に依 した モデル わせるこ した シミュレーション り, らびに する ある.一 シミュレーション に対 して, えるこ ・ひずみ らびに させるこ きる. よう により, シミュレーション [1, 3, 5, 6] われている が, シミュレーション ある, 態依 [7, 8][9, 10]あるい ,これら されてい い. プログラム シミュレー ションソフト ェア”V-Shrink” [1]態依 モデル による [2]プロセス による モデル [3, 4]びに シミュレーションによる いる. した シミュレー ションソフト ェア”V-Shrink” ,引け ,そり する. VCAD System Research 2009 49

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加工成形シミュレーションチームManufacturing Process Simulation Team

VCAD凝固・熱収縮連成シミュレーションによる鋳造解析 

VCAD casting simulation software by coupledthermo-mechanical analysis 

大浦 賢一 ∗,永井 寛 †,永瀬 重一 ††,牧野内 昭武 ∗, Cristian TEODOSIU ∗

Kenichi OHURA ∗, Yutaka NAGAI †, Jyuichi NAGASE†† Akitake MAKINOUCHI ∗, Cristian TEODOSIU ∗

∗ 理化学研究所 VCADシステム研究プログラム, † 埼玉県産業技術総合センター, ††(株)永瀬留十郎工場e-mail : [email protected]

Abstract

Coupled thermo-mechanical simulation software ”V-Shrink” which predicts the casting defects, such as shrink-age, porosity and warpage, is developed by the authors within VCAD System Research Program. For the preciseprediction of the casting defects by the coupled simulation, it is important to take into account the complex phe-nomena depending on mechanical and thermal factors, such as the constitutive law of the high temperature metal,the heat transfer coefficient at the metal-mold interface and the restrictions imposed by the mold wall. We report2 topics from our activities of the coupled simulation for the casting process. One is the example that by takinginto account the air-gap depency of the heat transfer coefficient, thd ability of the shrinkage defect prediction isimproved in case of an aluminum wheel casting. The other is the example that by modifying the temperaturedependency discription of yield stress, the ability of the warpage prediction is improved in case of an L-shapesand mold casting.

1 緒言

理化学研究所 VCAD システム研究プログラム加工成形シミュレーションでは,鋳造プロセスの不良予測が可能な有限要素法(FEM)凝固・熱収縮連成シミュレーションソフトウェアの研究開発を行っている [1–4].

Fig.1 Coupled thermo-mechanical analysis and the

prediction of defect in casting

開発している連成シミュレーションの枠組みを,Fig.1に示す.ここで,凝固シミュレーション部分では,温度解析の結果を用いて最終的に引け巣不良を予測することがその目的である,温度解析の精度に鋳物-鋳型界面の熱伝達係数が大きな影響を及ぼすことは良く知られている.しかしながら,熱伝達係数の大きさは界面の接触状態に依存するため,従来の凝固シミュレーションでその局所性や時間依存性を凝固シミュレーションの入力条件として正確に決定することは困難であった.このようなケースで,

連成シミュレーションは熱変形解析の結果から接触状態を直接計算できるため,接触状態に依存した熱伝達モデルと組み合わせることで,熱伝達係数の局所性や時間依存性を考慮した凝固シミュレーションが可能となり,温度場予測ならびに最終的な不良予測の精度が向上する点が特徴である.一方,熱変形シミュレーションでは,材料挙動の温度依存性に対して,高精度な温度場を与えることが可能な点で,応力・ひずみ場ならびに最終的な不良予測の精度を向上させることができる.このような特徴により,近年,凝固・熱収縮連成シミュレーションの研究 [1, 3, 5, 6]が行われているが,連成シミュレーションの特色である,鋳物-鋳型界面の熱伝達係数の接触状態依存性 [7,8],鋳物・鋳型の妥当な材料構成則や構成則の温度依存性 [9,10],あるいは,これらの因子と不良予測との関連の包括的な研究は十分にはなされていない.本研究プログラムでは,独自の連成シミュレーションソフトウェア”V-Shrink”の開発を行い [1],接触状態依存熱伝達モデルの実験による現象理解と定式化 [2],実プロセスへの適用による不良予測結果への材料構成則・熱伝達モデルの影響調査 [3,4],ならびに連成シミュレーションによる鋳造不良予測の高度化に取り組んでいる.本稿では,開発した凝固・熱収縮連成シミュレーションソフトウェア”V-Shrink”の概要と,引け巣不良予測への適用事例,そり不良予測への適用事例を紹介する.

VCAD System Research 2009 49

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加工成形シミュレーションチームManufacturing Process Simulation Team

2 連成シミュレーションプログラム”V-Shrink” の

数値解析手法

本連成シミュレーションの凝固解析は,潜熱を考慮した熱伝導解析を FEMで定式化したものである.相変態にともなう凝固潜熱は,等価比熱法または仮想熱流法で導入される.また,温度場の解析結果より計算される引け巣予測クライテリアは,温度勾配法,固相率勾配法,G/

√R法 [11]を実装している.

熱変形解析は,静的陽解法 FEM弾塑性シミュレーション”ITAS-3D” [12] をベースとしており,増分形の Updated Lagrangean仮想仕事原理式に熱弾塑性材料構成則(4)式を導入し,時間積分に陽解法を用いて定式化されている.本手法により,鋳物-鋳型接触界面の状態変化を安定的に解析することができる.

2.1 熱伝達モデル

鋳物-鋳型界面の熱伝達係数は,接触面に発生するエアギャップや接触圧力などの接触状態に依存することが良く知られている [7,8]が,V-Shrinkでは,熱伝達係数の接触状態依存性として,エアギャップ量依存モデル,ならびに接触圧力依存モデルを取り扱うことが可能である.鋳物-鋳型界面におけるエアギャップ量依存熱伝達モデルは,大浦ら [1] の提案による以下の式を用いる.

1heff(δw)

=1

hcast+

1hmold

+δwkair

(1)

ここで,heff は鋳物-鋳型間の有効熱伝達係数であり,その逆数である熱抵抗が,鋳物表面の熱伝達係数 hcast,鋳型表面の熱伝達係数 hmold,熱伝導率 kair

のガスが充満する幅 δwのエアギャップに起因する熱抵抗の直列結合としてモデル化されている.(1)式は,Susacらの実験結果 [2] との比較検証によって,熱伝達係数のエアギャップ量依存性が適切に表現されていることが確認された.

Fig.2 Air-gap dependency ofheat transfer coefficient

固体同士の接触熱伝達係数は,ミクロギャップによる非接触部位と接触部位の熱伝達の平均としてモデル化できる.表面温度 1000℃を超えるような鉄系合金の場合は,ふく射の影響が重要であるが,アルミニウム合金のような場合はふく射の影響は小さく,接触熱伝達係数の大きさは真の接触面積割合に大きく依存すると考えられる.したがって,接触熱伝達係数の接触圧力依存性は,真の接触面積割合に

よってもたらされるものとしてモデル化が可能である.しかしながら,高温状態の接触圧力を測定するのが困難な点,真の接触面積は接触圧力の影響だけでなく,界面の材料強度やその温度依存性に影響を受ける複雑な現象のため,鋳造時の熱伝達係数の接触圧力依存性に関する信頼性の高いデータは存在しない.したがって,V-Shrinkに実装した熱伝達係数の接触圧力依存性は,(2)に示す簡略な式を用いた.

heff(p) = ap+ h0 (2)

Fig.3 Contact pressure dependency ofheat transfer

coefficient

2.2 材料構成則

高温時の材料変形挙動の温度依存性を考慮した弾塑性構成則を用いる.本研究では,Swift硬化則に温度依存項を加えて定式化を行った.

Y = C(ϵ0 + ϵp)nϕ(T) (3)

∆σ̊ = Cep : ∆D + ∆σ∗ (4)

ここで,

∆σ∗ =

(−Cep : β +

3µg0σ

∂Y∂T

σ′)∆T (5)

であり,温度変化による応力増分 ∆σ∗ は,線膨張係数による等方的な収縮(膨張),弾性係数の温度依存性,降伏応力の温度依存性によって生じる項である.

Fig.4 Elastoplastic hardening law taking intoac-

count the temperature dependency of yield stress

3 アルミニウムホイール鋳造の引け巣不良予測へ

の適用事例

3.1 解析モデル

アルミニウムホイールの簡略化モデルを用いて,凝固シミュレーションにエアギャップ量依存熱伝達

VCAD System Research 200950

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加工成形シミュレーションチームManufacturing Process Simulation Team

モデルを導入し,引け巣不良の予測精度が向上することを示す.本検討では,Fig.5に示す軸対称モデルを用いて検討を行う.このモデルは,実物と比べて以下の簡略化が行われている.

• 全体の形状モデルは軸対称モデルとする• 金型は一体形状で,冷却回路等を持たない• 凝固シミュレーションの鋳型内・鋳物内の初期温度は一様である

したがって,この簡略化モデルを使用して現実の問題を解いた場合には,定量的な精度の点では問題が残る.しかしながら,少なくともリム部は軸対称形状であり,熱伝達モデルに影響を与える接触状態の変化は,主にその形状的な特徴によりもたらされるため,熱伝達モデルの定性的な影響は十分再現されると考えられる.

Fig.5 Profile of aluminum wheel model

3.2 解析結果

まず,連成シミュレーションによるエアギャップ生成,ならびにアギャップ量依存性による熱伝達係数の局所的な変動を,Fig.6に示す.グラフの測定位置は,リム・ディスク交差部(7,8,9,10)と,リム中央部(11,12)である.エアギャップの生成には,ディスク部の径方向応力ならびにリム部のフープ応力による,中心軸に向かう締め付けと,リム幅方向への収縮の両方の作用が働いており,リム・ディスク交差部でのエアギャップ生成挙動は,大変複雑である.例えば,11の位置では締め付けによってエアギャップは発生しないが,それ以外の場所ではいずれもエアギャップが発生している.しかしながら,エアギャップ発生の時刻が異なることで,Fig.7に示すような温度分布の相違を生じており,このことが最終的に,Fig.8に示す引け巣予測クライテリアの分布の相違につながっていることが示された.

4 砂型鋳造品のそり不良予測への適用事例

大型部品を鋳造で製造する場合に発生するそり不良は大きな問題であり,現場では鋳型に逆ぞりを付けることで対策を行っている.しかしながら,逆ぞり量の予測は高度な経験が要求される困難な作業で

あり,年々高まるコスト削減要求に対応するためにも,そり量の高精度な予測手法の開発が期待されている.連成シミュレーションは,この課題を解決するための有力な手法の一つであるが,連成シミュレーションを割れ,残留応力などの内部応力予測に適用した研究と比べて,形状変化(そり)の問題を検討した事例は少なく,そり発生のメカニズムや,数値シミュレーションの各因子の重要度に関する検討は十分ではない.本検討事例は,凝固・熱収縮連成シミュレーションで L 字平板鋳物のそり解析を実施し,3次元形状測定器による実製品の測定データとの比較検証を行ったものである.鋳造プロセスを数値シミュレーションするために,物理モデルを適切に定式化することは重要であるが,金属の力学的挙動の強い温度依存性や,砂型の熱的・力学的挙動の温度依存性,鋳物・鋳型間の熱伝達係数の接触状態依存性(エアギャップ量依存性,接触圧力依存性)などは,いずれも複数の要因が重なりあった複雑な現象であり,モデル化は容易ではない.本研究では,上記の現象を詳細に取り扱うことはせずに,できるだけシンプルなモデルを用いることとし,解析結果と実測との比較検討により,簡略化した仮定の妥当性について検証を行うこととした.

Fig.9 Experiment of sand mold casting

4.1 L字平板鋳物

比較検証に用いる L 字平板鋳物の形状を Fig.10に示す.L 字平板鋳物の大きさは,平板部が 450mm×160mm,縦壁部の高さが50mm,板厚が 10mmである.押湯は L 字プレート上面に配置し,さらに発熱スリーブで保温することで,縦壁部の高さ方向に大きな温度勾配を生じさせることを意図している.本モデルは,球状黒鉛鋳鉄 FCD400,ならびに珪砂・アルカリフェノール鋳型で実物の作成を行っており,R熱電対による鋳物・鋳型温度の測定と,非接触 3次元測定器による鋳物の形状測定を実施する.解析用メッシュは,形状の簡略化と解析時間の節約を目的として,湯口方案の省略を行い,鋳型外形も実際に使用した鋳枠より小さいサイズである.本

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Fig.6 Variation of the air-gap thickness and the heat transfer coefficient

Fig.7 Comparion of temperature distribution betweenwith and without air-gap effect

Fig.8 Comparion of porosity prediction criteria

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モデルでは,薄肉製品のために凝固時間は比較的短かく,鋳物-鋳型接触界面から鋳型への入熱が鋳型外表面まで伝わる時間を考慮すると,鋳型外表面からの冷却の影響は無視することができる.

Fig.10 Geometry of the L-plate sand mold casting

with riser

4.2 降伏応力の温度依存性パラメータ

(3)式の降伏応力の温度依存性を表すパラメータϕ(T)として 2種類のモデルを用いる.1つは,室温下で ϕ = 1,固相線温度直下で ϕ = 0.01とし,中間を線形で補間した線形モデルであり,もう 1つは,(6)式に示す,クリープ構成則や粘塑性構成則の典型的な形を参考にした対数モデルである.

ϵ̇ = A(σ) exp(− Q

RT

)(6)

4.3 そり量の実測との比較

x = 0,x = 160の位置で高さ(z座標値)を比較することで,そり量の比較検討を行う.Fig.11に,解析結果と実験結果の比較を示す.x = 0の位置では,そり量の絶対値は 0.5mmと小さいものの,解析結果と実測値が良く一致していることが示された.特に,降伏応力の温度依存性に対数モデルを使った場合には,測定結果との差は非常に小さい.一方,x = 160mmの位置では,実測ではほとんどそりが見られないにもかかわらず,解析では 0.5-1.3mmのそりが発生することが示された.特に,降伏応力の温度依存性に線形モデルを用いた場合には,測定結果との差が大きく,解析精度が低いことが示された.

5 考察

平板部に発生するそりの主要因は,縦壁部の上下位置でのひずみの差であると考え,押湯直下位置で上面から 5mmの位置にある点 Aと,上面から 40mmの位置にある点 Bにおいて,温度,応力,ひずみの履歴を調査する.まず,点 A,点 Bの温度履歴の比較を,Fig.12右に示す.これより,200sec以降で点A の温度は点 B と比べて常に 150-200℃ほど高く,

また,冷却によって同じ温度に達するまでの時間差は約 400秒あることがわかる.次に,応力とひずみの長手方向成分の履歴を Fig.13に示す.t = 2000sec以前では,点 A では引張応力が,点 Bでは圧縮応力が作用しており,縦壁部に曲げモーメントが作用していることがわかる.また,点 A におけるひずみの長手方向成分は,点 Bにおけるひずみの長手方向成分より常に大きく,曲げ変形が発生していることを示している.

Fig.12 Comparison of temperature history at the

upper und lower position of the vertical wall region

しかしながら,Fig.13に示すひずみには,弾性成分と塑性成分の両方が含まれている.室温冷却時にそりが残留するためには塑性ひずみの発生が重要であり,塑性ひずみがなければ室温冷却時に一様に収縮するだけである.したがって,Fig.14に,塑性ひずみの生成を検証するための,点 A と点 Bにおける相当塑性ひずみ,相当応力,降伏応力の履歴を示す.これより,点 A では 300secから 600secの間で相当塑性ひずみが大きく上昇しているが,一方で同じ時刻の点 Bの相当塑性ひずみは非常に小さいことが示されている.これは,Fig.12が示すように,点 A の温度は点 Bの温度より常に高いため,降伏応力が低い点 A では点 Bの変形に引きずられて塑性ひずみが発生するためである.本検討により,そり発生の原因が,局部的な冷却速度の違いによる熱収縮量の差と降伏応力の差に起因する塑性ひずみ生成にあるというそり発生メカニズムが良く再現されていることが示された.

6 結言

本研究プログラムで開発した凝固・熱収縮連成シミュレーションプログラムを,実問題に適用し,連成シミュレーションによって高精度な引け巣予測,そり予測が可能となることを示した.今後は,連成シミュレーションにおける重要な物理モデルである,高温の鋳物材料構成則,砂型の材料構成則,鋳物-鋳型界面の接触圧力依存性の検討と,最終的な不良予測結果への相関の検討を行って行きたい.最後に,本研究を遂行するにあたって多大なる助力をいただいたアルミニウムホイール製造メーカーの小濱氏に,この場を借りて心より謝意を表する.

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加工成形シミュレーションチームManufacturing Process Simulation Team

Fig.11 Warpage comparison along the edgeof x = 0 andx = 160

Fig.13 Comparison of the longitudinal stress andstrain history at the upper und lower position of the vertical wall region

Fig.14 History of equivalent stress,plastic strain and yield stress at point A and point B

参考文献

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VCAD System Research 200954