vol 36 o ・アジア...

43
Mizuho Bank, Ltd., Hong Kong Corporate Banking Division No.1 China ASEAN Research & Advisory Department C C C O O O N N N T T T E E E N N N T T T S S S B B B r r r i i i e e e f f f s s s & & & E E E d d d i i i t t t o o o r r r i i i a a a l l l T T T o o o p p p i i i c c c s s s 日台アライアンスの現状と今後の展開 ··················· 3 中国・平潭総合実験区 ································ 7 ~中台経済交流のプラットホーム~ R R R e e e g g g i i i o o o n n n a a a l l l B B B u u u s s s i i i n n n e e e s s s s s s Thailand 現状の軍政下におけるタイの税務・会計 ·················· 11 V Vietnam 法人税法改正に伴う事業拡張と税優遇に関する議論 ········ 15 Malaysia マレーシアにおける移転価格税制························ 19 India 5 50 0仲介サービスにかかるサービス税の改正点················ 22 ~2014 年インド予算案より~ China 1 15 5上海自由貿易区の最新動向 ···························· 25 China 外商投資項目の認可および届出管理弁法」の新傾向解説 ···· 32 Hong Kong オフショア所得の取り扱い ······························ 35 ~Advance Ruling Case No.54 の考察~ M M M a a a c c c r r r o o o E E E c c c o o o n n n o o o m m m y y y アジア経済概況 ···································· 38 Vol. 3 3 6 6 October 2014

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Page 1: Vol 36 O ・アジア 2014...台湾企業との連携・提携によるアジア展開、いわゆる「日台アライアンス」だ。日本企業が企画・開発し、コス

Mizuho Bank, Ltd., Hong Kong Corporate Banking Division No.1China ASEAN Research & Advisory Department

華華華南南南・・・アアアジジジアアアビビジジネネススリリポポーートト

CCCOOONNNTTTEEENNNTTTSSS BBBrrriiieeefffsss &&& EEEdddiiitttooorrriiiaaalll

TTTooopppiiicccsss 日台アライアンスの現状と今後の展開 ··················· 3 中国・平潭総合実験区 ································ 7

~中台経済交流のプラットホーム~

RRReeegggiiiooonnnaaalll BBBuuusssiiinnneeessssss TThhaaiillaanndd

現状の軍政下におけるタイの税務・会計 ·················· 11 VViieettnnaamm 法人税法改正に伴う事業拡張と税優遇に関する議論 ········ 15 MMaallaayyssiiaa マレーシアにおける移転価格税制························ 19 IInnddiiaa イインンドドのの税税制制 [[5500]]

仲介サービスにかかるサービス税の改正点················ 22 ~2014 年インド予算案より~

CChhiinnaa 解解説説・・中中国国ビビジジネネスス法法務務 [[1155]] 上海自由貿易区の 新動向 ···························· 25 CChhiinnaa 外商投資項目の認可および届出管理弁法」の新傾向解説···· 32 HHoonngg KKoonngg オフショア所得の取り扱い ······························ 35

~Advance Ruling Case No.54 の考察~

MMMaaacccrrrooo EEEcccooonnnooommmyyy アジア経済概況 ···································· 38

VVooll.. 3366OO cc tt oo bb ee rr

22001144

Page 2: Vol 36 O ・アジア 2014...台湾企業との連携・提携によるアジア展開、いわゆる「日台アライアンス」だ。日本企業が企画・開発し、コス

South China - Asia Business Report Vol.36

Briefs

TTTooopppiiicccsss 日日日 台台台 アアアララライイイアアアンンンスススののの現現現 状状状 ととと今今今 後後後 ののの展展展 開開開

日本企業によるアジア投資のトレンドが中国から ASEAN へと向かう中、ひそかに注目を集めているのが

台湾企業との連携・提携によるアジア展開、いわゆる「日台アライアンス」だ。日本企業が企画・開発し、コス

ト管理や大量生産にたけた台湾企業が製造した上で、双方の販路を活用する――という、バリューチェーン

の中での分業・統合、あるいは台湾企業の強みである中国ビジネスのノウハウやネットワークを活用した中

国市場の開拓などがこれにあたる。

日本企業と先を争って、アジアでの製造拠点設置や市場開拓を進める台湾企業といかに連携し、ウィン

-ウィンの関係を築いていくのか。その現状や可能性について考察する。

平平平 潭潭潭 総総総 合合合 実実実 験験験 区区区 ~~~中中中 台台台 経経経 済済済 交交交 流流流 のののプププラララッッットトトホホホーーームムム~~~

台湾に も近い中国、福建省の平潭総合実験区。当地は

広東省深圳市の前海や同珠海市の横琴とともに、香港、マカ

オ、台湾における先進・先行的な経済発展を活用し、その優

位性を取り込むことで、国内周辺地域への発展波及・促進を

目的に設立された“実験区”の一つである。

台湾との経済連携強化を柱に開発が進む平潭では、台湾

に進出した日系企業を含む台湾企業に向けた各種優遇策が

適用され、一部を除き、台湾系以外の外資企業も同様の優遇策を享受することができる。着々と開発が進

む平潭の現状と優遇策について解説する。

Oct. 2014 | 1

RRReeegggiiiooonnnaaalll BBBuuusssiiinnneeessssss

現状の軍政下におけるタイの税務・会計

政情不安が続いてきたタイでは、5月の軍政発足で

ようやく内政が落ち着きを取り戻しつつある。これとと

もに、法人税や付加価値税率の低減措置は1年間の

延長が決まるなど、同国に投資する日系企業に安心

感が広がる半面、内政混乱により減少した税収を補う

べく、外資投資に適用される優遇措置の取り止めや

徴税の厳格化が懸念されている。タイにおける軍事政

権の誕生に伴う税務、会計面への影響を概説する。

法人税法改正に伴う事業拡張と税優遇に関す

る議論

今年1月から施行された改正法人税法の関連通達、

Circular 78 および Decree 218 について解説する。事

業拡張と税優遇について規定したこれら通達では、こ

れまで物議を醸してきた事業拡張時の適用可否につ

いて一定条件下での優遇付与や適用継続を認めるな

ど、外資投資に配慮した内容となっている。ただし、新

規投資の定義など未だ不明瞭な部分も多いことから、

企業は専門家の判断を仰ぐことも含め適切な解釈が

求められそうだ。

マレーシアにおける移転価格税制

マレーシアでは近年、移転価格にかかる根拠法令

やガイドラインの整備・改訂が進められている。同国

の移転価格税制では、すべての関係会社間取引は独

立企業間価格で実行されるべきとの原則に基づき、

国内のみならず、クロスボーダーでの取引にも適用さ

れる。ここでは、移転価格文書作成・保管、さらに調

査・申告にかかる留意点をまとめる。

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 2

インドの税制 [50] 仲介サービスにかかるサービス

税の改正点~2014 年インド予算案より~

2014 年インド予算案で示された間接税にかかる改

正について説明する。今般改正により、日本→インド

への物品販売にインド子会社が仲介サービスを提供

し、日本からコミッションを受け取る場合、当該サービ

スを受ける日本側にサービス税がかかる。コミッション

ビジネスがある場合は、納税義務を負うインド子会社

も含め、取引実態の確認や契約見直しが急がれよう。

解説・中国ビジネス法務 [15] 上海自由貿易区の

新動向

設立から丸1年を迎えた上海自由貿易区について、

これまでの経緯と規制緩和のポイント、および 新動

向について概説する。中国国内で進む各種規制緩和

で、同区のメリットを疑問視する声もあるが、未だ外資

規制が厳しい分野では、同区での先行・試験的な開

放措置の魅力は大きく、今後もその政策動向に注目

する必要があると考えられる。

「外商投資項目の認可および届出管理弁法」の新

傾向解説

国家発展改革委員会が今年6月に公布した「外商

投資項目の認可および届出管理弁法」では、外資投資

に対し認可制から届出制への移行、下級部門への管理

権限委譲など、手続きの簡素化が図られた。ここでは従

前の暫定弁法と比べ、その背景と影響をまとめる。

オフショア所得の取り扱い~Advance Ruling Case

No.54 の考察~

香港では課税ルールの特徴として、居住者・非居住

者を問わず、香港に源泉のある所得についてのみ納

税義務が生じるとし、香港外での事業活動による所得

(オフショア所得)には課税しないとしている。しかし、何

を持って香港内での事業所得とするかについては明

確にされておらず、税務当局のスタンスも厳しいもの

になりつつある。このほど発表された裁定事案を例に、

オフショア所得認定にかかる 新動向を説明する。

MMMaaacccrrrooo EEEcccooonnnooommmyyy

アジア経済概況~輸出主導で、緩やかな経済成長を

維持~

2014年2Qのアジア経済は堅調な輸出を受け、総じ

て加速した。ただし、ASEAN やインドで緊縮財政によ

る内需抑制がみられるほか、中国の景気支援策も選

択的金融緩和にとどまっている。14 年下期から 15 年

にかけてのアジア経済は緩やかな成長を維持すると

みられるものの、各国の政治情勢などのリスクを注視

する必要があろう。

Editorial 中国上海市で自由貿易試験区が設立されてから1年。国内の経済構造改革に向けた先行・試験的な開放

措置の実現を――と、各方面の注目を集めた同区であるが、なかなか期待通りの規制緩和は進んでいない

ようだ。一方、上海に続けと、広東省や天津市などで第2の自由貿易試験区設立実現を目指す動きが活発

化しており、政府の認可も秒読み段階とも伝えられる。

中国が経済成長を維持していくために、構造改革は不可欠であるが、一朝一夕には実現できないのも事

実。世界トップクラスの経済力を持つとはいえ、まだまだ中国には発展途上の部分も少なくない。枠組みを作

り、法・規制を整えた試験区で、国内産業を育成・保護しつつ、外資の力を取り込みながらいかに持続的成

長を実現するのか。政府の本気度とその手腕が問われるのは、これからだろう。

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Oct. 2014 | 3

昨昨今今、、日日本本のの直直接接投投資資先先ととししてて中中国国ののみみななららずず、、東東南南アアジジアアがが注注目目をを集集めめてていいるる。。一一方方、、中中

国国おおよよびび東東南南アアジジアア各各国国ににおおいいてて、、日日本本企企業業とと先先をを争争っってて、、製製造造拠拠点点のの設設置置やや市市場場開開拓拓をを進進

めめてていいるるののがが台台湾湾企企業業ででああるる。。本本稿稿でではは、、日日本本企企業業がが台台湾湾企企業業ととととももににここれれららのの地地域域ででビビジジネネ

スス展展開開ででききるるののかか、、そそのの現現状状やや可可能能性性ににつついいてて考考察察すするる。。

中国から ASEAN へのシフト進める日本企業

グローバルベースでの日本による対外直接投資

はここ数年、アジアを中心として北米、欧州とも高

い水準で推移している。アジアにフォーカスした対

外直接投資動向では、特に ASEAN への投資が

2011 年以降、急激に伸びている(図表1)。

JETRO が実施したアンケート調査によれば、10

年度以降、約7割の日本企業が、海外における事

業規模拡大を検討していると回答している。その理

由としては、海外での需要の増加と国内での需要

の減少を挙げる企業が も多く、日本国内市場の

縮小を背景に、成長の柱を海外に求める企業が、

今後も増えていくものと思われる。

日本企業が今後、中期的に事業規模の拡大を

図る国・地域については、販売機能の拡充、生産

機能の拡充、共に ASEAN が高水準

で推移している。特に販売機能では

12 年から、生産機能(高付加価値

品)についても13年にASEANが中国

を 上 回 っ た こ と は 、 日 本 企 業 の

ASEAN シフトの動きが現れたものと

いえる。

次に、日本企業による第三国・地

域間のFTAの状況を見ると、 も利

用社数の多い地域はASEAN-中国、

次にASEAN域内となっており、台湾-

中国のケースは4番目に位置してい

【図表1】日本による対外直接投資純額推移(アジア諸国・地域)

-10

20

50

80

110

140

170

200

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(億米ドル)

台湾

中国

インド

ASEAN(除くシンガポール)

出所:財務省、JETRO データより、みずほ銀行台北支店作成

日日台台アアラライイアアンンススのの現現状状とと

今今後後のの展展開開 足立 高徳 みずほ銀行 台北支店ビジネスソリューション課 課長

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 4

る(図表2)。11 年のECFA1アーリーハー

ベスト発効以降、ECFAを活用した台湾

から中国への展開が台湾内外で話題

になったが、活用しているのは母数 126

社の内、21.4%にすぎず、開放品目が

アーリーハーベストに限定されているこ

とが伸び率低迷の背景に挙げられよ

う。

以上のアンケート結果を踏まえ、日

本企業によるアジア投資のトレンドをま

とめると、中国は生産拠点としても消費

市場としても重要な地域として捉えられ

ている一方、人件費の高騰や政治リス

クをヘッジするため、中国への一極集

中を避ける動きがあり、リスク分散の対応策として、

ASEAN 諸国への投資が拡大しているものと考えら

れる。

1 台湾と中国の両岸経済協力枠組協議。

日台関係の現状

さて、台湾への日本企業による投資動向を見る

と、上述の通り ASEAN 諸国が投資先として注目を

集める一方で、台湾への投資も金額ベースでは横

ばいが続いているが、件数は右肩上がりで推移し

ており、11 年の 441 件から、12 年には

619 件、13 年は 616 件と大きくその記録

を塗り替え、高水準を維持している(図

表3)。業種別では、07 年を境にサービ

ス業を中心とした非製造業の台湾への

投資が拡大している(次頁図表4)。

また、台湾を初の海外投資先として

選択する企業が多いという特徴もある。

背景としては、台湾の人々の日本に対

する関心が高いこと、親日的であること、

台湾をアジア展開のテストマーケットと

して捉えていること等があるものと推察

される。日台間の人の往来も年を追う

【図表3】日本による台湾投資推移(金額・件数)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1963 1968 1973 1978 1983 1988 1993 1998 2003 2008 2013(年)

(100万米ドル)

0

100

200

300

400

500

600

(件)

金額(左目盛)

件数(右目盛)

第3次ブーム

第1次ブーム

第2次ブーム

出所:台湾経済部投資審議委員会データより、みずほ銀行台北支店作成

【図表2】日本企業による第三国・地域間の FTA 利用状況

56.0%

63 .0%

45 .9%

31 .1%

56 .3%

47 .5%

41 .8%

21 .4%

29 .7%

46 .7%

35 .1%

8.0%

37.0%

13.5%

13.3%

14.6%

14.8%

19.8%

16.7%

13.5%

16.0%

15.7%

36.0%

25.9%

29.7%

40.0%

22.9%

29.5%

30.8%

54.8%

49.0%

31.9%

43.9%

7.4%

10.8%

15.6%

6.3%

8.2%

7.7%

7.1%

7.7%

5.4%

5.3%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

韓国-EU(n=25)

タイ-豪(n=27)

韓国-米国(n=37)

ASEAN-豪-NZ(n=45)

NAFTA(n=48)

タイ-インド(n=61)

ASEAN-インド(n=91)

中国-台湾(n=126)

ASEAN-韓国(n=155)

AFTA(n=257)

ASEAN-中国(n=376)

利用している 利用を検討中 利用していない 無回答

出所:JETRO「2013 年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」

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South China - Asia Business Report Vol.36

ごとに増えており、13 年は台湾→日本

が 221 万人、14 年も1月から7月までの

累計で 167 万人と、昨年の 75%に達し

ている(日本政府観光局推計値)。なお、

13 年の日本から台湾への渡航者数は

142 万人であり、台湾から日本への渡

航者数が、日本からの渡航者数を上回

っている。

日台アライアンスの可能性

かかる状況下、日台間の緊密性を生

かし、日系企業の中国およびアジアにお

けるビジネス展開策として、台湾企業との

連携・提携によるビジネスモデルが、いわゆる「日台

アライアンス」である。近時は、この「日台アライアン

ス」が成功モデルとして多くのメディアに取り上げられ、

関心を集めているが、ここでは二つのケースを紹介し

たい。

【図表4】製造・非製造業別の件数と1件あたり投資金額推移

6636691013118389813752799

174

166198

1315853

186

442453

241

207208

239

170

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(年)

(1,000米ドル)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500(件)

1件当たり投資金額(左目盛)

製造業件数(右目盛)

非製造業件数(右目盛)

出所:台湾経済部投資審議委員会データより、みずほ銀行台北支店作成

第一に、バリューチェーンのなかで台湾企業との

分業や統合を行うケースである。つまり、技術力に

強みを持つ日本企業が企画・開発を担当し、コスト

コントロールや大量生産にたけた台湾企業が製造

を担当し、販売は双方の販路を活用するといった

例である。第二に、中国のゲートウェーとして台湾

を活用するケースだ。中国ビジネスのノウハウやネ

ットワークのような台湾企業の強みを活用して、台

湾市場のみならず、中国市場を狙っていく例がこれ

【図表5】日台アライアンスの狙い(イメージ)

共通の文化と同一の言語に由来する中国市場における台湾企業の強み

+日本との親和性、補完関係

台湾企業の販売網、ビジネスノウハウを活用した中国国内市場の開拓(食品・飲料分野が典型)

共通の文化圏と同一の言語

企画・開発

調達

製造

販売

サービス

台湾企業はコストコントロール力が

強く、バリューチェーンにおいてはOEM方式で日系企業と垂直分業

することが従来の典型。

バリューチェーンにおける分業や統合バリューチェーンにおける分業や統合 中国へのゲートウェー中国へのゲートウェー

近年は台湾企業の世界におけるプレゼンスの上昇と、日本企業を取り巻く環境も急激に変動していることを背景に、製造のみならず高付加価値分野(企画・開発、サービス、川上[素材]etc)まで提携を深化させる事例が増加。。

提携分野

Oct. 2014 | 5

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 6

にあたる(図表5)。

近では中国における台湾企業、いわゆる「大

陸台商」を通じた中資系企業への販売、すなわち

中国の内需を取り込む動きがあり、食品、衣料品に

代表される B to C 分野でも増えている。

たとえば、米調査会社ニールセンの統計データ

によると、13 年の中国本土におけるRTD2茶飲料市

場では、台湾頂新グループ傘下の食品大手、康師

傅がシェア 44.1%で首位、同じく台湾食品大手の統

一企業集団がシェア 24.6%で2位となり、両社のシ

ェアを合わせると 68.7%に達したという。台湾系の

好調ぶりが目立つ一方、台湾系以外の外資企業が

中国本土のRTD茶飲料市場で苦戦を強いられてい

ることについて、業界では、広大な地方都市での販

売網の弱さ、中国の食文化に対する理解不足、後

発参入などを不振要因として挙げており、同様に中

国でのB to Cビジネスを目指す日本企業にとって、

台湾企業との提携は十分、検討に値するものと考

えられよう。

さて、日台アライアンスは台湾と中国ビジネスに

限定されたものなのだろうか。東南アジアにおける

日台アライアンスも、その有効性は高い可能性が

あると思われる。中国の人件費上昇トレンドを受け、

日本企業が東南アジアの生産拠点としての優位性、

現地市場の可能性を重視しつつあるのは既に述べ

た通りだが、台湾企業も既に東南アジア諸国で多

額の投資を行っており、産業によっては一定の事

業基盤を構築している。日本企業の持つ技術力や

経営管理力と台湾企業の持つビジネスセンス、華

僑ネットワーク、これらが補完関係となって、日台ア

2 Ready-To-Drink の略。一般に、購入後そのまま飲める缶

やペットボトル入り飲料のことを言う。

ライアンスが多くの中国ビジネスを成功に導いてき

たように、今後増加していくと思われる東南アジア

事業においても、この日台アライアンス・ビジネスモ

デルの移植によって、日台で協力し、リスクを乗り

越え、ともに成長していく――。そのような日台間で

のウィン-ウィンの関係構築の可能性を期待した

い。

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Oct. 2014 | 7

South China - Asia Business Report Vol.36

中中華華人人民民共共和和国国のの建建国国以以来来、、「「港港・・澳澳・・台台」」((香香港港・・ママカカオオ・・台台湾湾))はは歴歴代代政政府府にに重重視視さされれたた特特

別別地地域域ででああるる。。香香港港ととママカカオオににつついいててはは中中国国にに返返還還さされれたた後後、、外外国国とともも、、国国内内のの省省・・自自治治区区とともも

異異ななるる「「特特別別行行政政区区」」ととししてて現現在在ままでで、、中中国国政政府府かからら政政治治、、経経済済ななどど各各方方面面でで特特別別措措置置をを享享受受

ししてていいるるののはは周周知知のの通通りりだだ。。他他方方、、台台湾湾ににつついいててはは歴歴史史的的背背景景ののほほかか、、既既にに中中国国にに返返還還さされれたた

香香港港・・ママカカオオととはは異異ななるる部部分分がが多多くく、、一一概概ににはは比比較較ででききなないいもものののの、、中中台台双双方方にによよるる両両岸岸経経済済

協協力力枠枠組組協協議議((EEccoonnoommiicc CCooooppeerraattiioonn FFrraammeewwoorrkk AAggrreeeemmeenntt==EECCFFAA))ななどどをを通通じじてて近近年年、、経経

済済的的連連携携のの強強化化がが図図らられれてていいるる。。

ここのの台台湾湾企企業業ととのの経経済済交交流流ののププララッットトホホーームムととししてて 22001111 年年、、台台湾湾のの対対岸岸にに位位置置すするる福福建建省省

にに設設立立さされれたたののがが平平潭潭総総合合実実験験区区((以以下下、、平平潭潭))ででああるる。。本本稿稿でではは、、平平潭潭のの特特徴徴やや足足元元のの開開発発

状状況況、、ままたた今今後後のの可可能能性性ににつついいてて、、現現地地視視察察をを踏踏ままええ紹紹介介すするる。。

中国各地で進む“実験区”の開発

改革・開放から 30 年を経て、一定の経済発展を

実現した中国は近年、安定的かつ持続的発展に向

けた国内の経済構造改革にかかる施策を次々と打

ち出している。このうち、香港やマカオを含め、先行

的に経済発展を遂げた一部地域を活用し、その優

位性を取り込むことで、国内周辺地域への発展波及

を目的に設立された“実験区”が、平潭のほか、広

東省深圳市の「前海深港現代サービス業協力区」、

同珠海市の「横琴新区」などである(次頁表1)。

このうち、平潭については台湾との経済連携強化

に主眼を置き、電機・電子部品を中心とするハイテク

産業やサービス産業を中心に、先行する台湾企業お

よび関連企業の誘致を目指しているのが特徴だ。

平潭総合実験区の優位性

(ア) 台湾に も近い中国

平潭は福建省内では 大、中国国内でも5番目

の面積 372km2 を誇る平潭島に設けられており、地

理的には台湾に も近い中国大陸となる(地図)。

同省の省都・福州市までは直線距離で 70km にす

ぎないほか、中国国

務院が 09 年に決定

した、台湾との関係

強化を目指す国家

的戦略地域「海峡西

岸経済区」の中心部

にある。

平平潭潭総総合合実実験験区区

~~中中台台経経済済交交流流ののププララッットトホホーームム~~

游游 君君婭婭 みずほ銀行 香港営業第一部

中国アセアン・リサーチアドバイザリー課

広東省広東省

福建省福建省

江西省江西省

浙江省浙江省

上海市上海市

香港香港

台台 湾湾

平潭平潭

安徽省安徽省

広東省広東省

福建省福建省

江西省江西省

浙江省浙江省

上海市上海市

香港香港

台台 湾湾

平潭平潭

安徽省安徽省

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 8

(イ) 平潭の対外交通状況

台湾との連携強化に向け、平潭では陸、海、空の3

方面から、立体的な交通網の構築が計画されている。

このうち陸路では、平潭西南部と大陸を連結する

平潭海峡大橋(写真)が 11 年に開通済みで、福州

市までは車で 1.5~2時間程度となっている。さらに

目下、福州長楽空港と平潭を結ぶ高速道路が建設

中であるほか、高速鉄道も 13 年 10 月に着工してお

り、開通すればわずか 30 分で連結されるという。ま

た、あくまで中国側の構想ではあるものの、同路線

を延長し、北京、福州、平潭と海底トンネル経由で

台湾を結ぶ「京台高速鉄道」を敷設するという壮大

な青写真も描かれているようだ。

対岸の台湾とは既に定員 760~800 人のフェリー

が1日1~2往復、週6日運航しており、台中までの

所要時間は1.5時間、台北までは2.5~3時間となっ

ている。他方、貨物については、吉釣港で第2、第3

バースが 10 月にも稼動予定となっており、将来的

には9バースまで増設される見込み。同港周辺は、

保税加工、保税物流などが可能な税関特別監督管

【表1】 平潭、前海、横琴の主要項目比較

名名称称 平平潭潭総総合合実実験験区区 前前海海深深港港

現現代代ササーービビスス業業協協力力区区 横横琴琴新新区区

所所在在地地 福福建建省省福福州州市市平平潭潭 広広東東省省深深圳圳市市前前海海 広広東東省省珠珠海海市市横横琴琴

面面積積 337722kkmm22

1155kkmm22 110066kkmm22

国国務務院院承承認認 22001111 年年 22001100 年年 22000099 年年

目目標標

主主にに台湾台湾ととのの連連携携ななどどでで、、

22002200 年年ままででにに経経済済融融合合をを通通

じじたた国国際際観観光光、、貿貿易易特特別別区区

のの形形成成をを目目指指すす

主主にに香港香港ととのの連連携携ななどどでで、、

22002200 年年ままででにに区区内内GGDDPP規規模模

11,,550000 億億元元をを目目指指すす

主主ににマカオマカオととのの連連携携ななどどでで、、

22002200 年年ままででにに人人口口 2288 万万人人、、

区区内内GGDDPP規規模模 552200 億億元元をを目目

指指すす

主主要要産産業業 ハハイイテテクク産産業業、、ササーービビスス業業、、

旅旅行行業業

金金融融業業、、先先進進的的物物流流業業、、専専

門門ササーービビスス業業ななどど

現現代代ササーービビスス業業、、レレジジャャーー産産

業業、、教教育育産産業業、、RR&&DD ななどど

主主なな

優優遇遇策策

*企業所得税減税(15%)*企業所得税減税(15%)

**外外国国人人材材のの個個人人所所得得税税減減免免

**税税関関特特別別通通関関政政策策((上上海海自自

貿貿区区にに類類似似すするる管管理理方方式式))

*企業所得税減税(15%)*企業所得税減税(15%)

**外外国国人人材材のの個個人人所所得得税税減減免免

**先先進進物物流流企企業業ににつつきき営営業業税税

のの差差額額徴徴収収

*企業所得税減税(15%)*企業所得税減税(15%)

**ママカカオオ・・香香港港高高級級人人材材のの個個人人

所所得得税税減減免免

**税税関関特特別別通通関関政政策策((上上海海自自

貿貿区区にに類類似似すするる管管理理方方式式))

主主なな

ププロロジジェェククトト

外資に対するネガティブリス外資に対するネガティブリス

ト管理モデル導入ト管理モデル導入

外資に対するネガティブリス外資に対するネガティブリス

ト管理モデル導入ト管理モデル導入

人人民民元元業業務務のの試試行行・・先先行行的的

解解禁禁

ママカカオオ大大学学移移転転、、大大型型テテーーママ

パパーークク建建設設、、漢漢方方産産業業園園建建

設設ななどど

(注) 中国政府が先行・優先的に規制緩和・開放を進めている同様の特別地域としては、他に広州市の南沙新区や上海の

自由貿易試験区があるが、特定の地域との連携を目指したものではないため、ここでは割愛した。

(資料) 各区管理委員会へのヒアリング、ウェブサイト等よりみずほ銀行作成

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 9

理地域となる予定であるほか、空路についても、上

述の福州長楽空港に加え、島内に新たな空港の建

設が予定されているという。

平潭の優遇政策

ハード面でのインフラ整備と並行して、政策・規

制・政府の投資誘致等のソフト面においても 13~

14 年にかけ、財政部、税務総局、平潭管理委員会

から一連の優遇政策が発表されている。

中でも企業所得税については平潭、前海、横琴が

そろって、財政部から優遇措置を付与されているが、

対象となるプロジェクトは前海の21項目に対し、平潭

は 127 項目が承認されている。規模や重点誘致産業

が異なるため一概には言えないものの、平潭は他の

実験区と比べても、中央政府からの強力な支援措置

が享受可能といえるほか、その他にもさまざまな優

遇措置が実施されている(次頁表2)。こうした政策的

優位性もあり、タッチパネル製造世界 大手の宸鴻

科技(TPK)をはじめ、既に 300 社以上の台湾企業が

平潭に進出しているという1。

台湾企業向けの投資の受け皿

平潭ではビジネス中心区、港湾経貿区など4つ

の地域に分けて開発が進められる計画となってい

る。このうち台湾企業、また個人による平潭への投

資・創業の受け皿として、整備が進んでいるのが平

潭南西部の港湾経貿区の「台湾創業園」である。園

内ではオフィスやビジネスセンターが入居可能なビ

ル4棟が 14 年末に竣工、供用開始予定となってお

り、管理委員会では同園にハイテク産業、現代サー

ビス業関連の企業誘致を見込んでいるほか、優遇

政策の下で台湾の大学生が創業可能な「平潭台湾

大学生創業基地」も設立され、平潭における創業・

就業モデル基地とする計画だ。

このほか、台湾製品を主体とした大規模商業施

設として、14 年6月、建築面積 16 万 m2 の巨大ショ

ッピングモール、「小額商品取引市場」がオープンし

ている。ここでは、台湾原産の商品に対して、一人

6,000 元/日まで、関税・輸入増値税・消費税が免除さ

れるとあって、約 120 店舗の賃貸契約はほぼ締結

済み、うち 70 店舗はすでに営業・販売を開始してい

る。台湾産生鮮食品の出店業者によれば、商品検

査、税関登記、通関手続きなども簡便化され、1~

2日程度で輸入品を店頭で販売できるようだ。

平潭の可能性

平潭では外資投資に対しネガティブリスト管理方式

が導入されており、外資参入障壁の低減が図られて

いる。また上述した企業所得税をはじめとする各種優

1 宸鴻科技はタッチパネル関連製品の製造・研究開発拠点

設置のため 13 年に進出。登録資本金 1.5 億米ドル、投資総

額 30 億人民元で、14 年1月より稼動開始した。

科技文教区科技文教区

レジャー区レジャー区

ビジネス中心区ビジネス中心区

港湾経貿区港湾経貿区

港湾経貿区港湾経貿区

台湾海峡

台湾海峡

海壇海峡

海壇海峡

福州市へ

平潭海峡平潭海峡大橋大橋

フェリーターミナルフェリーターミナル空港建設予定地空港建設予定地

台湾へ

平潭平潭

科技文教区科技文教区

レジャー区レジャー区

ビジネス中心区ビジネス中心区

港湾経貿区港湾経貿区

港湾経貿区港湾経貿区

台湾海峡

台湾海峡

海壇海峡

海壇海峡

福州市へ

平潭海峡平潭海峡大橋大橋

フェリーターミナルフェリーターミナル空港建設予定地空港建設予定地

台湾へ

科技文教区科技文教区

レジャー区レジャー区

ビジネス中心区ビジネス中心区

港湾経貿区港湾経貿区

港湾経貿区港湾経貿区

台湾海峡

台湾海峡

海壇海峡

海壇海峡

福州市へ

平潭海峡平潭海峡大橋大橋

フェリーターミナルフェリーターミナル空港建設予定地空港建設予定地

台湾へ

平潭平潭

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Oct. 2014 | 10

South China - Asia Business Report Vol.36

遇政策は、一部を除き、台湾企業(台湾に投資した日

系企業を含む)のみならず、香港・マカオやその他の

外資企業進出にも適用される。

平潭管理委員会によると、平潭は税関の特殊監督

管理地域としては も自由度の高い総合保税区を超

える緩和・優遇措置を付与された新たな税関特別監

督管理モデルとして発展させる計画という。また、こう

した優遇政策を 大限、企業に享受してもらうことに

よって、平潭を福建省における台湾との窓口としてだ

けではなく、台湾企業が集積している長江デルタ、珠

江デルタ、内陸部の経済圏と台湾との窓口としても機

能させたいとしている。

平潭は中長期的に、中台両岸による「共同計画、

共同開発、共同経営、共同管理、共同受益」という

新たな管理モデルの実現を目指すとしている。平

潭が両岸経済の緊密化をさらに推し進めるプラット

ホームとなるのか、また企業による平潭の活用が

いかに進んでいくのか、引き続き注目したい。

【表2】 主な優遇政策

項目 内容概要

企業

所得税

ハイテク製造業、サービス業、農業・海洋産業、生態・環境保護産業、公共施設管理業の

5 分野、計 127 項目を対象に 20 年まで 15%優遇税率を適用(財税[2014]26 号)。

増値税・

消費税

中国一般地域⇔平潭については、一部の例外を除き輸出入扱いされ、増値税・消費

税の還付可能。区内での売買は、当該税の徴収を免除(財税[2014]51 号)。

関税・増値税 生産に関連する部材・機械設備等の海外→平潭の輸入は増値税・消費税免税。

個人

所得税

台湾居民に対し、大陸と台湾における個人所得税の差額について補填。

先進的製造業、現代サービス業等を対象に、企業の高級管理職および専門技術職

の年間個人所得税納税額が 5 万元以上の場合、地方財政収入部分について 5 年間

(初 2 年 80%、後 3 年 60%上限)補填。

財政

政策

営業税 平潭登記の台湾-平潭間の海運業、保険業、アウトソーシング、現代物流業を対象

に営業税免除。

税関

政策 貨物

14 年 7 月 15 日より正式に「一線緩和・二線規制・客貨分離・分類管理」管理モデルに

よる中国 大の税関特殊監督管理地域として運営開始。中央政府が付与した免税・

保税・税金還付、選択性徴税(注 1)などの優遇措置を享受可能。

非銀行機関 中台合弁証券会社、中台合弁ファンド会社の設立可能。

融資 区内台湾企業より人民元建債券の発行可能。

外貨管理 外債枠は前年度純資産の 2 倍あるいは投注差の金額が多い方を利用可能。

人民元クロスボーダーローンは外貨と同様、発生額ではなく残高管理可能。

金融

政策

資本金元転 資本金は実際の経営ニーズに合わせ 100%まで人民元への換金が可能(注 2)。

産業

参入

ネガティブ

リスト管理

上海自由貿易区に続き国内で2番目にネガティブリスト管理制度を導入(14年6月)。

リストに掲載されていない分野への外商投資は登記備案となる。

(注1) 保税貨物を中国国内(区外)に販売する際、部材、完成品、半製品など実際の貨物の状況に基づいて、企業が選択

的に輸入関税を支払うことを可能とする制度。平潭のほかでは、横琴で同制度が導入されている。

(注2) 同規定発表同日 14 年 8 月 4 日、平潭区進出企業が約 200 万元の資本金元転に成功。

(資料) 税関総署・国家税務総局・平潭政府ウェブサイト、管理委員会ヒアリング等。

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Oct. 2014 | 11

タイの現状:クーデターの勃発から国家平和維持

評議会による統治

タイでは昨年のデモから現在まで、政情不安が

続いています。今年5月にはクーデターが発生し、

軍と警察により構成される国家平和秩序評議会

(National Council for Peace and Order:NCPO)が

国家行政の全権を掌握すると宣言しました。今後

は 10 月に暫定内閣を発足、来年内に再選挙とい

う方針が打ち出されています。

一方で、タイは日系企業にとって主要な投資先

でもあります。現在バンコク日本人商工会議所に

登録している日系企業は 1,500 社を超え、これは

上海に次いで世界第2位の規模になります。今後

は 、 2015 年 の ASEAN 経 済 共 同 体 ( ASEAN

Economic Community:AEC)発足に向け、経済お

よび物流の中心として、さらに重要な役割を担う

べく発展していくことが期待されています。

タイ税務への影響

1.法人税

タイでは税法上、法人税率は 30%とされていま

す。ただし、暫定措置により、12 年は 23%、13 年

以降現在までは 20%に低減されています。これ

は外国からの直接投資を拡大させるとともに、タ

イ企業の国際競争力の強化を図ることを期待した

ものと言えます。

この暫定措置による法人税の低減については、

当初 14 年 12 月 31 日に終了する事業年度までと

されていましたが、先日 NCPO は当該措置を1年

間延長し、15 年 12 月末までとすることを公表しま

した。現在の政権下での必要以上の混乱を避け

ようとする意図も感じられますが、毎年、変更が

続いていた法人税について今年度、大きな変更

がないことは一つの安心点だと思われます。

2.源泉税

タイにおいては源泉徴収制度(源泉税)が広く

採用されているのが特徴です。通常は所得の獲

得側(サービスを提供し、報酬を得た企業)が税

金を申告・納付しますが、タイにおける源泉税とい

うのは、所得の支払い側(サービスを受け、報酬

を支払う企業)が、支払い時に一定額を徴収し、

税務当局に支払う制度です。日本では、給与につ

いて採用されている源泉徴収制度をイメージして

いただければよいかと思います。

ポイントは支払い側に徴収および納税義務が

あるという点です。支払い側は、翌月7日までに

徴収した源泉税を納付しなければなりません。こ

れは税務当局からすれば、とても有効な税金の

徴収手段と考えられます。各社の年度末(決算)

【Thailand】

現現状状のの軍軍政政下下ににおおけけるる タタイイのの税税務務・・会会計計

金井 健一 フェアコンサルティング・タイランド

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South China - Asia Business Report Vol.36

を待たず、毎月一定額を事前徴収でき、さらに所

得の獲得側でなく支払い側から徴収することがで

きるからです。従ってタイの税務当局は、当該源

泉税の徴収・申告については、非常に厳格にチェ

ックを行います。税務調査においても厳しく確認さ

れることが多いポイントといえます。

【図表1】源泉税の対象となる取引

(1)タイ国内取引

取引内容 税率(源泉徴収率)

借入金利息 1%

広告料 2%

役務収益に係る所得 3%

ロイヤルティー 3%

コミッション 3%

賃貸料 5%

配当金 10%

(2)海外取引(国外送金)

取引内容 税率(源泉徴収率)*

配当金 10%

借入金利息 15%

ロイヤルティー 15%

賃貸料 15%

源泉税の対象となるのは、すべての取引でなく、

役務収益や利息、配当金といった一部の取引に

限られます(図表1参照)。一般の物品売買取引

は対象とはなりません。よって企業としては、①対

象となる取引は何か、②徴収率、③徴収漏れ・遅

延はないか――といった点に注意が必要です。

現在の政情下においては、税収の減少および

緊急的な資金拠出により政府の資金不足がうわ

さされ、税務調査が厳しくなっている現状もありま

す。上記の源泉税についても、納付漏れ・ミスは

ペナルティーの対象となりますので、しっかりとし

た対応が一層重要となっています。リスクを感じ

る場合には、税務デューデリジェンス等により専

門家による事前レビューを受けるのも一つの方法

かと思います。

* 海外取引に係る源泉徴収については、各国との租税条約の内容により別途減免されている可能性がありますのでご注意ください。

3.付加価値税(VAT)

タイには付加価値税(VAT)があります。VAT は、

日本の消費税に該当し、タイ国内における物品販

売、サービス提供および輸入取引について課され

ます。税法上の税率は 10%となっていますが、

1998 年に発生したタイ通貨危機以降、14 年9月

末まで7%に引き下げられています。タイ国民の

生活負担の軽減が目的とされています。

この7%への引き下げの期限は 14 年9月末ま

でとなっていたため、10 月以降の対応について注

目されていました。日本においても消費税が8%

に引き上げられたように、VAT/消費税について

は各国において増額傾向にあります。また特に現

状では税収確保のために従来の10%に戻すので

はないかとも言われていました。一方で、VAT は

国民の消費生活に対しダイレクトに影響を与える

ため政府も変更には慎重です。結果として、

NCPOは現状を変更せず、7%のまま15年9月末

まで1年間据え置くことを公表しました。来年に選

挙を控える状況下では、VAT 引き上げは実施し

にくかったものと考えられます。

実務上では、VAT は適正価格との関係で指摘

を受けることがしばしばあります。タイには、“取引

はマーケット価格で”という税務の大前提がありま

す。VAT も当然、マーケット価格を基準に算出さ

れる必要があります。例えば、廉価譲渡した場合

には、適切な理由がある場合を除き VAT はマー

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 13

ケット価格に基づき算出するように指摘されます。

すなわちマーケット価格と廉価譲渡価格との差額

について VAT が追徴課税されます。また廃棄/除

却の際にも注意が必要です。廃棄/除却する場合

には、事前に税務当局に連絡をし、当局もしくは

指定業者等立ち合いの下、実施するのがよいで

しょう。

VAT については、源泉税と同様に月次申告・納

付であることが実務上、大きな負担となります。翌

月 15 日までに Output VAT(仮受 VAT)と Input

VAT(仮払 VAT)を集計し、差額を申告・納付しま

す。タイではインボイス主義を採用しているため、

申告のためにはすべて正式な Tax Invoice の入手

が必要となります。この Tax Invoice には入手漏れ

や、記載ミス等が生じることもしばしばあります。

特にタイ語で記載される Tax Invoice は日本人に

は確認することができないことが多く、しっかりとし

た社内管理体制の構築が重要となります。

先述の通り、現在の環境下では、税務調査が

厳しく行われています。特に外国企業に対する税

務当局の摘発は強化されています。一方で税務

調査においては、税務当局担当官の思い込みに

よる不適切な指摘もしばしば生じています。した

がって、指摘を受けた場合にはそれをすべて鵜呑

みにせず、まず専門家へ相談することをお勧めし

ます。

タイ会計への影響

タイには2つの会計基準が存在します。一つは

タイ証券市場に上場している企業や金融機関等

公的説明責任を有する企業が採用する Thai

Financial Reporting Standards(TFRS)とそれ以外

の 企 業 が 採 用 す る Thai Financial Reporting

Standards for Non-Publicly Accountable

Entities(TFRS for NPAEs)です(図表2)。TFRS は

日本の会計基準と同様に国際会計基準(IFRS)と

のコンバージェンスが進められています。TFRS

for NPAEs はその簡易版となっています。会計基

準の変更・整備についてはタイ会計職連盟(タイ

の公認会計士協会)主導で進められているため、

政権の影響はほぼ受けないと考えてよいでしょ

う。

タイの会計基準については、従来より運用面で

の課題が残されています。実務上は各企業にお

いては帳簿作成にあたり税務基準を重視し、特に

TFRS for NPAEs は実質的には従っていない場合

も多いと言えます。タイでは会計士による監査が

必須となっていますが、監査の質には相当のバラ

ツキがあり、監査法人も特に TFRS for NPAEsの

適用については指導しないケースもあります。タ

イ会計士による監査証明があるからといって、内

【図表2】タイの会計基準

会計基準 対象 特徴

Thai Financial Reporting Standards

(TFRS)

公開会社、金融機関等、公的

説明責任を有する会社

基本的に国際会計基準(IFRS)と同

内容

Thai Financial Reporting Standards

for Non-Publicly Accountable

Entities(TFRS for NPAEs)

上記会社以外 TFRS の簡易版

(一部の基準について任意適用可)

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 14

容がすべて適切かというと疑問があるケースもし

ばしば見受けられます。タイ企業の実態をしっか

りと把握する必要がある場合には、必要に応じ別

途、改めてデューデリジェンス等の調査の実施を

検討するのがよいと思います。

タイにおいては、毎年税務・会計に関し変更が

行われておりましたが、現在の軍政下においては

大きな変更はないものと考えられます。一方で、

来年以降は、タイ投資恩恵(BOI 恩恵)制度の改定

も含め大きな改定が行われる可能性があります。

特に、来年は AEC への影響も踏まえての変更と

なりますので、動向については注意しておく必要

があるでしょう。

※次回は第 40 号に掲載します。

大手監査法人国際部にてグローバル企業の監査業務

に従事後、コンサルティング会社にて国際ビジネス部

長を歴任。ASEAN 各国において日系企業が抱える諸

問題に対する支援業務を実施。特に、海外子会社にお

ける管理体制構築には定評がある。現在バンコクに

て、進出スキームの検討や現地での会計税務サポート

および業務展開に対するアドバイスを行っている。

金井 健一 (かない けんいち)

Fair Consulting (Thailand)

フェアコンサルティング タイランド

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South China - Asia Business Report Vol.36

【Vietnam】

法人税法改正に伴う事業拡張と

税優遇に関する議論 谷中 靖久 KPMG ベトナム

1. はじめに

ベトナムでは 2014 年1月1日に改正法人税法

が施行されている。これに伴い、法人税法の政令

である Decree 218/2013/ND-CP(以下、Decree

218 ) が 13 年 11 月 26 日 に 、 通 達 で あ る

Circular78/2014/TT-BCT(以下、Circular 78)が

14 年6月 18 日に発行され、Decree 218 は 14 年2

月 15 日に、Circular 78 は 14 年8月2日からそれ

ぞれ発効している。Circular 78 は 13 年 12 月 31

日まで適用されていた旧法人税法通達 Circular

123/ 2012/TT-BTC(以下 Circular 123)を置き換

えるものである。

旧法の Circular 123 や現行法の Decree 218 お

よび Circular78 には事業拡張と税優遇について

規定されているが、Circular 123 と Decree 218 お

よび Circular 78 では記載が異なる。税優遇適用

の可否は企業のキャッシュ・フローに大きな影響

を与えるものであり、本稿では主に Circular 123 と

Circular78 の記載をまとめ、相違点と今後、発生

するであろう論点・問題点について記載する。

2. 税優遇の基本的な考え方

ベトナムでは税優遇はベトナム財政省が発行

する法規制に基づいて決定される。

税優遇は原則として財政省が定めた事業分野

や企業の所在する地域に対する「新規」の投資事

業に対して付与される。例えばDecree 219で定め

られた社会的・経済的に「特別に」困難な地域に

対する新規投資事業に対しては、本来 10%の基

礎税率について 15 年間、減免措置(4年間の免

税、その後9年間の 50%減税)が付与される。

こうした税優遇の適用の可否や適切な税優遇

については、企業が法規制に基づいて自ら判断

し、申告・納税しなければならない。税務調査時

に企業が税優遇を享受できる条件を満たしてい

ないと判断され、企業が適用できることを証明で

きない場合、税務当局は過去にさかのぼって追

徴を課し、法規制に基づく罰金や利息を課すこと

ができる。

このようにベトナム税法規制では、原則として

企業の「新規」投資事業に対して税優遇を付与し

ているため、新規投資の定義や、事業拡張時の

適用可否について議論が生じるきっかけになって

いる。

3. Circular 123 における事業拡張と税優遇の

記載と問題点

a) Circular 123 の事業拡張と税優遇の記載

Circular 123 では、新規投資事業の定義を特段

定めておらず、事業拡張から生じた課税所得に対

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South China - Asia Business Report Vol.36

しては、税優遇は付与されないと規定していた。

すなわち、09 年以降に事業を開始した企業が、

新しい製造ライン、規模の拡大、新しい技術の導

入、生産性の向上などの投資を行った場合、その

ような事業拡張から生じた課税所得については

税優遇を享受できず、標準税率が適用されると規

定されていた。

これは、拡張投資は新規投資事業ではないので、

事業拡張から生じた課税所得については税優遇は

享受できないという考えに基づく決定である。

b) Circular 123 の適用時に生じた問題点

上述の通り、Circular 123 では事業拡張から生

じた課税所得に対しては税優遇が付与されないと

規定されていたが、拡張投資の定義が曖昧であ

ったこと、客観的な判断指標がないことから多くの

混乱・批判をもたらす結果になった。

特に製造業においては、当初投資を決定した

際に計画した投資規模に売上発生初年度から達

することはほとんどなく、まずは当初の需要に応

じて投資を行って操業を開始し、仕損率の低下な

ど製造状態が安定し、更なる需要が見込める場

合に追加投資を行って事業を拡張していくのが通

常である。そのため新規投資時に確保した敷地

には工場を拡張する余地があったり、工場内に製

造ラインを増設する余地のあることが多い。

特に既存の工場内における追加投資は企業に

とって当初の投資決定時、すなわち新規投資時

に予定されていることも多く、また計画として具体

化していなくとも、将来の拡張投資の余地を見込

んで敷地を確保し、工場を建設していることも多

い。このような場合、企業にとっては拡張投資と

はいえども新規投資時に予定されていたものとし

て税優遇の対象となると判断することも十分生じ

る余地がある。

さらに拡張投資が行われたかどうかを客観的

な指標から判断することは非常に難しく、投資ライ

センス上の資本金や総投資額の増加、投資ライ

センスに記載がある場合は企業の製造能力の増

加、更には財務諸表上の固定資産額が増加した

り、新工場の建設などの状況が生じれば事業拡

張が行われたと判断される可能性がある。

ただし上記の状況は例えば単なる固定資産の

取替(取替投資)を行っても生じることもあり、また

上述のとおり生産ラインの増強が当初から予定さ

れていたものだとすると企業にとってはこれを通

常、事業拡張と考えないことも多い。一方で製造

業についての知識がない税務当局は固定資産額

や製造能力が増加していれば一律に事業拡張と

みなすことも多く、企業との間で大きな論点となっ

てきた。

また拡張投資に税優遇を付与しないという状況

は進出企業によるベトナムへの追加投資を抑える

誘因ともなるため、外国投資を増やすことを一つの

目的として税優遇を付与しているベトナム政府の基

本方針と反するものとして困惑を生んできた。

4. Circular 78 の記載

以上の経緯を踏まえ、14 年8月に Circular 78

が発行され、Circular 123 において問題点や批判

を受けた事業拡張と税優遇に関する主な記載は

以下のように変更されている。

Oct. 2014 | 16

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South China - Asia Business Report Vol.36

a) 新規投資事業の定義における事業拡張の記載

Circular 78 では新規投資事業に関する定義が

記載されており、その中で既存の事業の投資ライ

センスが修正された場合において、税優遇が享

受できる条件に変更がない場合には、修正ある

いは追加された活動から生じた課税所得につい

ても、既存の税優遇を継続適用できる、あるいは

事業拡張により税優遇を享受できる要件を満た

す場合には事業拡張の税優遇を享受できるとし

ている。

b) 事業拡張に対する税優遇の記載

Decree 218 において税優遇が付与されている

事業や地域で生産規模の拡大、生産能力の増大

や生産技術の向上等で事業が拡張した場合、既

存事業の税優遇を拡張部分についても享受する

か、同様の事業あるいは地域で新規投資事業に

ついて享受できる税優遇(基礎税率の優遇を除

く)を享受するか選択適用できるとしている。そし

て事業拡張の要件として、以下の3つのうちいず

れかを満たす必要がある。

1) 拡張事業への投資が完了し、事業を開

始した後、Decree 218 に規定された税優

遇を享受できる分野への固定資産の追

加取得額が少なくとも 200 億 VND に達す

ること、あるいは社会的・経済的に困難あ

るいは社会的・経済的に“特別”に困難な

地域に投資する事業について、固定資産

の追加取得額が 低でも 100 億 VND に

達すること

2) 追加の固定資産取得額が 20%以上増加

すること

3) 投資前と比べて技術研究リポートに記載

された生産能力について 20%以上の向

上が認められること

一方で、Circular 78 では、Decree 218 において

税優遇が付与されている事業や地域でないもの

の、(過去の税法規制により)税優遇を享受してい

る既存の事業が事業の拡張を行った場合、事業

拡張から生じた課税所得について税優遇は享受

できないとしている。また事業拡張部分について

既存の税優遇を継続適用する場合には、事業拡

張部分について Decree 218 において税優遇が付

与されている事業や地域であることが必要である

と記載されている。

更に、税優遇に関する記載で、税優遇を享受

する課税所得と税優遇を享受しない課税所得を

分けられない場合、それぞれの事業の売上を基

準に按分するとの記載があるにもかかわらず、事

業拡張と税優遇の記載では、固定資産取得額基

準あるいは総投資額(資本金と長期借入金の合

計)基準のいずれかを選択適用して按分すると記

載されている。

c) 想定される問題点

1) 事業拡張の要件の曖昧さ

事業拡張の要件として、「投資が完了」、「追

加」あるいは「投資前と比べて」というものが要

件になっているが、いつの時点から投資が始ま

り、いつ投資が完了したのか、追加投資や投資

前と比べてというのはいつの時点と比較するの

か、という基準が明確ではない。この点は投資

ライセンスが修正された時点が基準になるもの

と思われるが、投資ライセンスのどの部分が修

Oct. 2014 | 17

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 18

正された場合に基準となるのかが不明で、また

投資ライセンスが修正されない場合には要件

を満たさない可能性がある。

2) 新規投資事業の記載と事業拡張と税優遇

の規制の整合性

新規事業の記載では、投資ライセンスが修正

されても「税優遇が享受できる条件に変更がな

い場合」、既存の税優遇が享受できると記載され

ている。一方、Decree 218で規定されていない事

業や地域で事業拡張が生じた場合、事業拡張に

対しては税優遇が享受できないとある。

「税優遇が享受できる条件に変更がない場

合」が明確でないため、特に事業拡張との関連

で、どのような場合に新規投資事業(の延長)と

して既存の税優遇を継続適用することができ、

投資企業の利益が保護されるかが明らかでは

ない。

3) 投資ライセンスが修正されない場合の新規

投資事業

投資ライセンスが修正されなくとも生産ライン

の増設など追加投資が行われることがあるが、

このような場合にも「税優遇が享受できる条件

に変更がない場合」として既存の税優遇を享受

できるかどうかが明確ではない。

4) 課税所得の按分方法

事業拡張部分について税優遇を享受するこ

とができず、拡張部分の課税所得を算出できな

い場合、何らかの基準を用いて課税所得を按

分する必要があるが、その場合に固定資産取

得額基準、総投資額基準以外に、原則として

の売上基準を用いることができるかどうか明ら

かではない。また総投資額に変化がない場合、

総投資額基準を用いれば事業拡張部分の課

税所得をゼロとすることができるが、その場合

に総投資額基準の適用が否定される可能性が

ある。

5. まとめ

事業拡張に対する税優遇について、現行の

Circular 78 は、旧法の Circular 123 に比べると、

一定の条件をもとに事業拡張に税優遇を付与し

たり、新規投資事業の一部として既存の税優遇

の継続適用を認めるなど、投資側の企業に配慮

した法規制となっている。一方で、なお法規制が

明確ではないために不明点が多く、企業が適切

に判断するために十分な法規制と言えないのも

事実である。税優遇の適用はこれを税務当局に

否定されるとキャッシュ・フローに大きなインパクト

を与える。また企業毎に状況が異なるため、必要

に応じて会計事務所に相談をするなどして、適切

な解釈・判断を行う必要がある。

※次回は第 39 号に掲載します。

谷中 靖久 (たになか やすひさ)

公認会計士

KPMG ベトナム

大阪市立大法学部卒。2003 年 10 月に 朝日監査法人

(現有限責任 あずさ監査法人)東京事務所入所。日

本国内において主にソフトウェアメーカー、製造業等の

会計監査(米国及び日本国会計基準)に従事。2011

年 7 月より KPMG ハノイ事務所に赴任し、現地の日系

企業に対する投資、会計・税務、法務、人事等のアド

バイスを提供している。

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Oct. 2014 | 19

South China - Asia Business Report Vol.36

【Malaysia】

ママレレーーシシアアににおおけけるる移移転転価価格格税税制制 平川 和真 SCS Global Consulting (M) Sdn. Bhd.

マレーシア内国歳入省(The Malaysian Inland

Revenue Board、以下“MIRB”)は、移転価格の適切

性およびその文書化を納税者への税務調査の重

要項目に位置づけています。

1.移転価格とは

移転価格とは、関係会社間における取引価格を

言います。独立企業間における取引価格は取引当

事者間で、需要と供給のバランスに基づく市場原理

に従い決定されます。一方、関係会社間の取引価

格は、関係会社間における力バランスや利益バラ

ンスを考慮して恣意的に決定することが可能となる

ため、常に市場原理を反映しているとは言えません。

関係会社間取引で恣意的に移転価格を決定するこ

とができる場合にどのような影響がでるか、具体的

に、下記の例に基づき考えてみます。

マレーシア法人から日本法人への販売価格であ

る移転価格が 80 の場合(Case1)、法人税額は、マ

レーシア法人で 10、日本法人で8、グループ全体で

18 となります。その結果、税引後利益は、マレーシ

ア法人で 30、日本法人で 12、グループ全体で 42 と

なります。

一方、移転価格が60の場合(Case2)、法人税額

は、マレーシア法人で5、日本法人で 16、グループ

全体で 21 となります。その結果、税引後利益は、マ

レーシア法人で 15、日本法人で 24、グループ全体

で 39 となります。

【例】 前提:マレーシア法人が外部から 40 で仕入れた商品を関係会社

である日本法人に販売の上、日本法人が外部へ 100 で販売する つまり、関係会社間の移転価

格を動かすことによって、各国で

納める法人税額のみならず、各

社利益、グループ利益にも影響

を与えることが出来てしまいます。

このような移転価格を利用した法

人税操作、利益操作を防止する

ために制定されているルールが

移転価格税制と呼ばれるもので

す。

24税引後利益15税引後利益

16法人税額(40%)5法人税額(25%)

40税引前利益20税引前利益

60原価(移転価格)40原価

100売上高60売上高(移転価格)

Case 2(移転価格が60の場合)Case 2(移転価格が60の場合)

12税引後利益30税引後利益

8法人税額(40%)10法人税額(25%)

20税引前利益40税引前利益

80原価(移転価格)40原価

100売上高80売上高(移転価格)

Case 1(移転価格が80の場合)Case 1(移転価格が80の場合)

販売100仕入40

日日 本本マレーシアマレーシア

24税引後利益15税引後利益

16法人税額(40%)5法人税額(25%)

40税引前利益20税引前利益

60原価(移転価格)40原価

100売上高60売上高(移転価格)

Case 2(移転価格が60の場合)Case 2(移転価格が60の場合)

12税引後利益30税引後利益

8法人税額(40%)10法人税額(25%)

20税引前利益40税引前利益

80原価(移転価格)40原価

100売上高80売上高(移転価格)

Case 1(移転価格が80の場合)Case 1(移転価格が80の場合)

販売100仕入40

日日 本本マレーシアマレーシア

移転価格移転価格マレーシア法人マレーシア法人 日本法人日本法人

2.マレーシアの移転価格税制

上述の通り、移転価格の設定

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South China - Asia Business Report Vol.36

金額が法人税額に直接的な影響を与えることから、

MIRB は移転価格の適切性を重点確認項目として

います。

その根拠法令として、以前は租税回避防止の規

定である所得税法第 140 条(Income Tax Act 1967,

Section 140)を移転価格に対しても適用していまし

たが、その内容を明確にするため、2003 年に移転

価 格 税 制 の ガ イ ド ラ イ ン (Transfer Pricing

Guidelines)を公表しました。そして、当ガイドライン

の根拠法令としての位置づけを明確にするため、

所得税法第 140 条 A(Income Tax Act 1967, Section

140A)として、関係会社間取引については独立企業

間価格に基づいて課税を行う権利をMIRBに与える

旨を規定し、09 年1月より施行しています。さらに

12 年には、移転価格税制ルール(Income Tax

(Transfer Pricing) Rules 2012)及び、移転価格税制

の改正ガイドライン(Transfer Pricing Guidelines

2012)が公表され、ともに 09 年1月に溯って適用さ

れています。

これらの法令、ルール、ガイドラインは、関係会

社間(クロスボーダーのみならず、マレーシア国内

法人同士も対象)で行われる商品売買、サービス

提供等の取引を移転価格税制の対象としており、

関係会社間取引を行う企業に対し、移転価格の設

定方法、必要条件、整備しておくべき記録や書類に

ついて指針を与えるものとなっています。

当ガイドラインに定められた基本原則は、すべて

の関係会社間取引は、独立企業間価格で実行され

るべきというものです。そして、独立企業間価格と

は、当該取引が同一環境もしくは類似環境におい

て独立した企業間で行われた場合に設定される価

格を言います。それにより、移転価格に恣意性が介

入することを防止しています。

3.移転価格文書の作成、保管

納税者は、移転価格が適切に設定されているこ

とを証明するため、上述の法令、ルール、ガイドライ

ンに基づき、移転価格文書を準備し、保管しておく

必要があります。関係会社間取引に関する契約書

を作成し、その中で取引金額やその他の取引条件

を合意しておくということももちろん重要ですが、移

転価格税制において求められているものは、その

契約書に記載されている取引金額(移転価格)が

適切に設定されているということを合理的に立証す

る文書です。つまり、取引契約書を作成したのみで

は、税務上求められる移転価格の文書化を行った

ことにはならないことに注意が必要です。

ガイドラインによると、移転価格文書は、主に以

下の内容を含んでいることが求められます。

1. グループ間資本関係図を含む組織図

2. グループ各社の財務内容

3. 事業内容、業界・市場の動向

4. 関係会社間取引の詳細

5. 実行された取引の概要

6. 価格設定方針

7. 価格設定方針に影響する前提条件等

8. 比較対照性、機能・リスク分析

9. 移転価格算定方法の選定 – 独立価格比準

法、原価基準法、再販売価格基準法、取引

単位営業利益法、利益分割法

10. 選定された移転価格算定方法の適用

11. その他移転価格分析に用いられたすべての

情報

Oct. 2014 | 20

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 21

4.移転価格に関する調査及び申告

14 年に入り、MIRB は多国籍企業に対して、移転

価格文書が適切に整備、保管されているかどうか

を確認する Form MNE を積極的に発行しています。

Form MNE の 中 に は 、 「 Transfer pricing

documentation prepared for the relevant year(移転

価格文書が関連する年度で作成されています

か?)」との質問が含まれており、Yes/No で端的に

回答する必要があります。

当該フォームを受け取った場合には、原則として

30 日以内に MIRB に回答を提出する必要がありま

す。仮に納税者が移転価格文書を適切に整備して

いない場合(上記質問に No で回答した場合)、

MIRB は当該納税者に対し税務調査を行うものと考

えられます。

マレーシアでの税務調査の対象期間は原則とし

て過去5年間とされているため、現時点で税務調査

を行う場合、09 年から 13 年までの5年間を対象とし

て、移転価格の適切性が確認されることとなります

(14 年の税務申告が完了している場合は、10 年か

ら 14 年の5年間となります)。また、移転価格の税

務調査の結果、税額調整が行われた場合には、追

徴税額に対し下記のペナルティーが課されることに

なります。

内容 ペナルティー

移転価格文書を作成していなかっ

た場合

35%

作成していた移転価格文書がガイ

ドラインに沿っていなかった場合

25%

加えて、14 年の法人税申告(14 年内に終了する

会計年度 1を対象)から、申告フォームに移転価格

の文書化を行っているかというForm MNEと同様の

質問事項が追加されており、Yes/Noで端的に回答

しなければならなくなりました。そのため、マレーシ

ア法人が関係会社間取引を行っている場合には、

遅くても 14 年の法人税申告を行うまでに移転価格

の文書化が必須と言えます。

5.まとめ

MIRB が移転価格の税務調査を納税者に行うこ

とを決定した後では、移転価格文書の整備を行う

時間は非常に限られています。関係会社間取引を

行っている場合は、MIRB に税務調査対象に選定さ

れる前、もしくは 14 年の法人税申告前に、移転価

格文書を適切に整備しておくことが重要です。

※次回は第 38 号に掲載します。

1 例:2013 年 4 月~2014 年 3 月、2014 年 1 月~12 月など。

平川 和真 (ひらかわ かずま)

公認会計士(日本)

SCS Global Consulting (M)

Sdn. Bhd.

1982 年生まれ。早稲田大学商学部卒業。2005 年より優

成監査法人にて、法定監査、IPO 支援業務、財務コンサ

ルティング等に従事。2012 年に SCS Global に入社後、

マレーシアを拠点とし、主に日系企業に対し、進出コン

サルティング、国際税務、クロスボーダー組織再編、

M&A 等の業務を手がけている。

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Oct. 2014 | 22

South China - Asia Business Report Vol.36

【India】 インドの税制 第 50 回

仲仲介介ササーービビススににかかかかるる ササーービビスス税税のの改改正正点点

~~22001144 年年イインンドド予予算算案案よよりり~~

山﨑 恵美 KPMG インド

2014 年7月発表のインド予算案では間接税に

も多くの改正が盛り込まれました。今回は間接税

のうち、サービス税、特に 14 年 10 月 1 日以降適

用される、仲介サービス(コミッションビジネス)に

関する改正に重点を置いてご説明いたします。

サービス税は税金負担者と納税者が異なる間

接税のひとつです。1994 年に導入後、課税対象

は年々拡大の一途をたどり、12 年には大幅な改

正が行われて広く一般のサービスに課税されるこ

ととなりました。現在は基本税率 12%、それに教

育目的税(Education Cess)が3%上乗せされ、実

効税率は 12.36%となっています。

サービス税が課される基本的な条件のひとつ

として、『サービスの提供地が課税区域内である』

という条件があります。この課税区域の内外判定

を行うのが Place of Provision of Service Rules、

いわゆる POPS ルールです。このルールでサービ

スが提供された地を判定し、その地が課税区域

内であれば課税、課税区域外であれば非課税あ

るいは免税となります。

POPS ルールは以下のように規定されています

が、Rule 4 から Rule 12 に該当しなかった場合は

Rule 3 の原則に戻る、複数適用される場合には

後者が優先するというような規定になっています。

なお、括弧内の日本語コメントは参考であり、詳

細は条文をご参照ください。

Rule 3: Place of provision generally(サービス

受益者の所在地をサービス提供地とす

る。)

Rule 4: Place of provision of performance

based services (修理や倉庫保管など、

物を扱うサービスはそのサービスが行

われた地をサービス提供地とする。)

Rule 5: Place of provision of services relating

to immovable property(不動産に直接

的に関係するサービスは不動産の所

在地をサービス提供地とする。)

Rule 6: Place of provision of services relating

to events(会議や展示会、結婚式など

はそのイベントの会場をサービス提供

地とする。)

Rule 7: Place of provision of services provided

at more than one location(課税区域を

含む複数の場所でサービスが提供され

る場合、 もサービス提供割合の高い

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South China - Asia Business Report Vol.36

場所をサービス提供地とする。ルール 7

はルール 4、5、6 よりも優先される。)

Rule 8: Place of provision of services where

provider and recipient are located in

taxable territory(サービス提供者とサ

ービス受益者がいずれも課税区域内に

いる場合には、サービス提供地は課税

区域内であると判定する。ルール 8 は

ルール 4、5、6、7 よりも優先される。例

えばハリアナ州の法人がラジャスタン

州の法人に対して国外のイベント開催

のサービスを提供する場合などが想定

される。)

Rule 9: Place of provision of specified services

(仲介サービスを含む特定の4種のサ

ービスの場合はサービス提供者の所在

地をサービス提供地とする。)

Rule 10: Place of provision of goods

transportation services(郵送・クーリエ

を除く物品の輸送サービスは物品の送

付先をサービス提供地とする。)

Rule 11: Place of provision of passenger

transportation service(旅客の輸送サ

ービスは旅客の出発地をサービス提供

地とする。)

Rule 12: Place of provision of services provided

on board a conveyance (旅客輸送中に

提供されるサービスついては、 初の

出発地をサービス提供地とする。)

今改正で注目されるのは Rule 9 です。Rule 9 で

は「Intermediary services(仲介者、仲裁者、代理

人等のサービス)」という文言が含まれており、こ

の Intermediary に該当すればサービス提供者の

所在地で課税区域の内外判定を行うという規定

になっています。この Intermediary は『ブローカー

やエージェント等、その名前を問わず、二者間の

サービス(これを主たるサービスという)の提供を

アレンジまたはファシリテートする者であるが、主

たるサービスそのものを提供する者は含まない』

と定義されていました。14 年改正では、従来から

規定されていた『二者間のサービスの提供』と並

列 す る か た ち で 、 『 物 品 提 供 』 と い う 文 言 が

Intermediary の定義に挿入されることとなりました。

これにより、物品の売り手と買い手の間に入り、

アレンジまたはファシリテートするサービスは、

Rule 9 の適用を受け、サービス提供者の所在地

で課税区域の内外判定を受けることとなりまし

た。

この改正が影響する代表的な例として、日本の

親会社がインドの顧客に商品を輸出販売しており、

その売買取引にインド子会社が関与し、親会社か

らコミッションを受け取っているようなパターンが

想定されます。

この場合、改正前はもともと物品販売のアレン

ジまたはファシリテートは Intermediary service に

は該当しておりませんでしたので、原則の Rule 3

に基づいてサービス提供地を判断しました。サー

ビスの提供を受けている、すなわち物品の売り手

である親会社は日本にありますので、各種諸条

件を満たした上で、輸出免税の扱いを受けること

ができました。

Oct. 2014 | 23

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 24

ところが、改正後は物品販売のアレンジまたは

ファシリテートは Intermediary service に該当しま

す。よって Rule 9 に従い、サービス提供者である

インド子会社が所在する場所をサービス提供地と

判断、輸出免税の扱いは受けられなくなります。

そのため、コミッション相当額にサービス税率を乗

じた額が、サービス受益者である日本親会社の

追加負担となります。サービス税は間接税ですの

で、コミッションの受け手であるインド子会社がサ

ービス税を納付する義務を負います(図参照)。

今回の改正では遅延利息の利率も変更され、

納付漏れの場合には 大年利 30%の遅延利息

がかかる可能性があります。コミッションビジネス

がある場合には、サービス税課税対象になるか

どうか、専門家のアドバイスも受けながら、契約

書の見直しや取引実態の再確認をすることをお

勧めいたします。

※次回は第 38 号に掲載します。

ABCABC日本本社日本本社

(サービス受益者かつ物品の売り手)(サービス受益者かつ物品の売り手)

ABCABCインド社インド社

(サービス提供者)(サービス提供者)

在インド顧客在インド顧客(物品の買い手)(物品の買い手)

サービス提供地

コミッション支払い

仲介業務のインボイス発行

ABC日本本社の物品販売仲介

物品提供

ABCABC日本本社日本本社

(サービス受益者かつ物品の売り手)(サービス受益者かつ物品の売り手)

ABCABCインド社インド社

(サービス提供者)(サービス提供者)

在インド顧客在インド顧客(物品の買い手)(物品の買い手)

サービス提供地

コミッション支払い

仲介業務のインボイス発行

ABC日本本社の物品販売仲介

物品提供

ABCABC日本本社日本本社

(サービス受益者かつ物品の売り手)(サービス受益者かつ物品の売り手)

ABCABCインド社インド社

(サービス提供者)(サービス提供者)

在インド顧客在インド顧客(物品の買い手)(物品の買い手)

サービス提供地

コミッション支払い

+サービス税負担

仲介業務のインボイス発行

ABC日本本社の物品販売仲介

物品提供

ABCABC日本本社日本本社

(サービス受益者かつ物品の売り手)(サービス受益者かつ物品の売り手)

ABCABCインド社インド社

(サービス提供者)(サービス提供者)

在インド顧客在インド顧客(物品の買い手)(物品の買い手)

サービス提供地

コミッション支払い

+サービス税負担

仲介業務のインボイス発行

ABC日本本社の物品販売仲介

物品提供

【2014年9月30日まで】 【2014年10月1日より】

インド

インド国外

山﨑 恵美

(やまざき えみ)

KPMG インド

(デリー)

マネジャー

日本国公認会計士

2007 年 4 月あずさ監査法人東京事務所入所。日本国

内において、主にソフトウェアメーカー(米国会計基準及

び日本国会計基準)、製造業等の会計監査に従事。12

年 2 月から米国ミシガン大学ビジネススクールに留学。

13 年 2 月から 4 月までインディアンスクールオブビジネ

スに交換留学。13 年 7 月 MBA 取得。14 年 4 月より

KPMG インドデリー事務所に赴任。

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Oct. 2014 | 25

South China - Asia Business Report Vol.36

【China】 解説・中国ビジネス法務 第 15 回

上上海海自自由由貿貿易易区区のの最最新新動動向向

湯浅 紀佳 森・濱田松本法律事務所

一 はじめに 二 経緯

2013 年9月 29 日に「中国(上海)自由貿易試験

区」(以下「上海自由貿易区」という)が正式に設立

してから、本稿作成時である 14 年9月時点で、ちょ

うど1年経過したことになります。人民元自由化を

含む金融自由化やサービス業の開放をうたって大

きな期待をもって迎えられた上海自由貿易区です

が、14 年6月末時点で、上海自由貿易区に新しく設

立された会社が1万 445 社あり、そのうち外資系企

業は 1,245 社あります。登録資本は累計で 73 億米

ドルを超えています。外資系企業のうち、国・地域

別にみると、新規設立の外資系企業数の上位 10 カ

国・地域は、香港(492 社)、米国(113 社)、台湾

(110 社)、シンガポール、日本、カナダ、韓国、オー

ストラリア、バージン諸島、ドイツの順で、日本は5

位となっております1。

まず、はじめに、上海自由貿易区設立の経緯に

ついて、簡単に振り返ります。

国務院は 13 年7月3日、上海市が提出した上海

外高橋保税区等4つの税関特殊監督管理地域に

おいて上海自由貿易区を設立する提案について認

可することを公表しました。その後、同年8月 30 日、

第 12 期全国代表大会常務委員会第4回会議にお

いて、「中国(上海)自由貿易試験区において関連

法律規定の行政審査認可を一時的に調整すること

を国務院に授権することに関する決定」が可決され、

当該授権を受けて、同年9月 18 日に、国務院が

「中国(上海)自由貿易試験区全体方案」(13 年9月

18日公布、同年10月1日施行)(国発〔2013〕38号)

(以下「全体方案」という)を公布し、同年9月 29 日、

上海自由貿易区が正式に設立されました。全体方

案に基づいて、13 年のうちに中央行政レベルから

地方レベルまで各種の規定が公布され、上海自由

貿易区の全体像が形成されました。

以下、本稿では1年間の実績に鑑みて、上海自

由貿易区がどのように変化したか、そして、上海自

由貿易区に進出することの実際上のメリットおよび

デメリットについて検討していきます。 三 上海自由貿易区の概要

上海自由貿易区の開始時に注目されていたメリ

ットとしては、以下のような点が挙げられます。 1 人民網の記事:

http://51fayan.people.com.cn/n/2014/0707/c172459-2524

9120.html 1.開放される業務 Jetroの記事:

http://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/biznews/53b6422564

960 全体方案によれば、上海自由貿易区内で設立す

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 26

る企業に対し、一部のサービス業分野(商業貿易

サービス、文化サービス、専門業サービス等)を更

に開放するとし(全体方案「(二)2.」)、別紙では開

放を拡大する6業種 18 業務が示されました。当該

18 業務の内容は表1のとおりです。

上記の 18 業務のうち、外商投資に関するものは、

「外商投資産業指導目録(2011 年改正)」(以下

「2011 年目録」という)またはその他の規定におい

て、外商投資に対して何らかの制限を設けていた

分野です。まず、金融サービスについては、全体方

案において、人民元の自由化・金利の市場化・人民

元クロスボーダー取引の自由化などがうたわれ、

大きく注目されました。また、外商独資国際船舶管

理企業の設立や、医療機構の設立も明記されまし

た。更に、付加価値電信業務やゲーム機の生産・

販売の開放をうたった点も注目されました。

2.会社設立関連手続きの簡易化

全体方案では、上海自由貿易区における行政管

理体制改革を目指し、会社設立関連の手続き簡易

化がうたわれました。

(1)外商投資に対するネガティブリスト管理

従来、中国の関連規定2によれば、中国における

2 「外商投資プロジェクト審査確認および届出管理規則」第

3 条、「外商投資の方向を指導する規定」第 12 条等

外商投資について、外商投資プロジェクトは国家発

展改革部門における審査確認または届出手続きが、

外商投資企業の設立等は商務部門における審査

認可手続きが、それぞれ必要でした。全体方案に

よれば、上海市政府は、外商投資分野ネガティブリ

スト(以下「2013 年ネガティブリスト」という)を作成し、

上海自由貿易区内で設立される外商投資企業に

ついて、①2013 年ネガティブリストに含まれる分野

は、従来どおり審査確認または届出手続き・審査認

可手続きが必要であるが、②2013 年ネガティブリス

トに含まれない分野は、内資・外資一致の原則に

基づき上海市による届出手続きのみに改めまし

た。

2013 年ネガティブリストと 2011 年目録を比べると、

基本的には、従来外国資本の参入に特別な制限

(外資の投資比率、独資の可否等)がない業種(例

えば 2011 年目録の許可類)が 2013 年ネガティブリ

ストからはずされ、手続きが大幅に簡易化されたの

に対し、従来特別な制限がある業種については、

従来どおり、審査確認または届出手続き・審査認可

手続きが必要となっています(次頁表2)。

【表1】 開放が拡大する 18 業務

金融サービス 銀行サービス、専門健康医療保険、ファイナンスリース、

航運サービス 遠洋貨物運輸、国際船舶管理

商業貿易サービス 付加価値電信業務、ゲーム機・遊戯機の販売およびサービス、

専門サービス 法律等専門サービス、信用調査、旅行業、人材仲介サービス、投資管理、工事設計、建築

文化サービス 演出ブローカー、娯楽施設の開設等文化サービス

社会サービス 教育研修・職業技能研修、医療等社会サービス

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(2)設立手続きの簡易化

更に、上海自由貿易区では、審査認可などが不

要になるだけでなく、実際の設立手続きフローが簡

易化されました。上海市人民政府が 13 年9月 29 日

に公布した「上海自由貿易区外商投資企業届出管

理規則」によれば、上海自由貿易区内でネガティブ

リスト以外の外商投資企業を設立する場合、企業

名称の事前審査確認後、上海自由貿易区の外商

投資受理窓口プラットホームにアクセスして、オンラ

インで関連事項を記入して届出の申請を行い、管

理委員会は1営業日以内に届出を行いオンライン

で投資者(または外商投資企業)に届出証書を送

付するとされました3。

3 中国(上海)自由貿易試験区外商投資企業届出管理規

則第7条

(3)登録資本制度の緩和と年度検査の廃止

一般的に中国では、会社設立の際は、発起人が

引き受けた登録資本額のみならず、実際に払い込

まれた資本も登記し、かつ営業許可証の記載も必

須事項でした。また、登録資本金については、会社

の種類ごとに、有限責任会社は3万元、一人有限

責任会社は 10 万元、更に株式会社は 500 万元な

どの法定 低登録資本金が規定され、かつ登録資

本金の支払期限なども法定されていました。この点、

国家工商行政管理局が 13 年9月 26 日に公布した

「上海自由貿易区の建設を支持する国家工商行政

管理局の若干意見」では、上海自由貿易区におい

ては、実際に払い込まれた資本の登記は不要とな

り、法定 低登録資本金も廃止され、登録資本金

の支払期限も廃止されました。かかる制度により、

上海自由貿易区内では、会社設立が区外に比べ

て容易になりました。

【表2】 2013 年 ネガティブリスト

奨励類 奨励類のうち、外国資本の参入に対して一定の制限(合弁・合作に限定または中

国側の持分支配が必要)がある項目(石油、天然ガスの開発等)すべてを含む

制限類

① 2011 年目録によれば、全ての付加価値電信業務において、外商投資の割合

は 50%を超えてはならない。本リストによれば、電信業務を制限するとし、さ

らに付加価値電信業務のうち、アプリストア業務(原文は「应用商店」)を除く

情報サービス業務、オンラインデータ処理およびトランザクション業務等にお

ける外商投資割合は 50%を超えてはならない(ただし、電子商務業務に投資

する場合は55%を超えてはならない)と細かく規定しているが、その他の付加

価値電信業務(例えば、コールセンター業務)については明言していないた

め、上海自由貿易区内における付加価値電信業務の外商投資に関する制限

は、今後の実務運用に注意する必要がある

② 2011 年目録における娯楽施設の経営(合弁・合作に限る)を除外した

③ 前記①および②以外の制限類のすべてを含む

2011 年目録

との対応関係

禁止類 禁止類のすべてを含む

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また、上海自由貿易区では、同意見により、企業

年度検査が廃止され、年度報告公示制度に移行し、

市場主体信用情報公示システムにより、年度報告

を工商行政管理部門に送付し、かつ当該報告を公

示すれば足りることになり、工商行政管理部門によ

る検査は不要となりました。

四 上海自由貿易区の 新動向

1.開放された業務

(1)金融業

金融業については、全体方案で開放するとうた

われたとおり、その後 13 年 12 月2日に中国人民銀

行から「金融による上海自由貿易区建設の支持に

関する意見」(以下「銀行意見」という)が公布されま

した。銀行意見の主な内容は①自由貿易口座の導

入、②資本取引の自由化、③クロスボーダー人民

元決済、④金利の自由化、⑤外貨管理の高度化と

なっております。①の自由貿易口座は一種のオフ

ショア口座と言えます。従来、中国においては、非

居住者のオフショア口座の開設は認められていま

したが、居住者による中国国外の銀行口座へ資金

を自由に移動できるオフショア口座の開設は認めら

れていませんでした。今後、上海自由貿易区内に

自由貿易口座を開設することにより、上海自由貿

易区の区内居住者および区外居住者のいずれも、

それぞれ上海自由貿易区内の銀行で自由貿易口

座を開設し、そこを通じて、中国国外の口座、他の

上海自由貿易区内の自由貿易口座、上海自由貿

易区外の非居住者口座との間で、資金を自由に振

り替え、口座内の資金を中国国外への投資・融資

に使用することができるようになりました。ただし、

自由貿易口座と中国国内の上海自由貿易区外の

銀行口座との資金移動は、クロスボーダー業務とし

て取り扱われることになります。

また、中国人民銀行上海本部は、14 年2月 20 日

に「上海自由貿易区における人民元クロスボーダ

ー使用の拡大を支援することに関する通知」(以下

「22 号通知」という)を公布しました。人民元オフショ

アローンに関して、従前は「投注差モデル」といわ

れ、外商投資企業の外債は投資総額と登録資本

の差額(投注差)を超えてはならないとされていまし

た。22 号通知では、上海自由貿易区において設立

された外商投資企業が国外から人民元資金を借り

入れる場合には、投注差に関わらず、中国人民銀

行上海本部が全国における貸付コントロールの必

要性に基づいて柔軟に調整する範囲で決められる

こととなり、従来よりも借入枠が拡大されています。

また、国家外貨管理局上海分局は 14 年2月 28

日に「上海自由貿易区の建設を支持する外貨管理

実施細則の印刷配布に関する通知」(以下「26号通

知」という)を公布しました。これは、全体方案にお

いて示された外貨管理改革を実施するための通知

です。同通知では外貨管理に関するさまざまな自

由化が図られましたが、注目すべき点の一つには、

上海自由貿易区内の外貨資本金が、銀行による審

査確認なしで任意に人民元転することができるよう

になったという点があります。また、対外担保につ

いても、従来、事前に外貨管理局の審査認可を受

ける必要がありましたが、審査認可なしに、上海自

由貿易区内の企業は対外担保を設定できることに

なりました(ただし、対外担保の登記や履行時の審

査確認などの手続きは残されています)。また、多

国籍企業の外貨資金集中管理が認められ、上海

自由貿易区内の企業は、上海自由貿易区内に開

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設された国内外貨資金主要口座で経常貿易外貨

資金の集中決済ができるほか、グループ企業の資

本金・外債等を集中して管理することができるよう

になりました。

以上のように、上海自由貿易区内の金融の自由

化は、この1年間で具体的に進んでいると評価でき、

それを反映するように、金融機関の進出も盛んで、

14 年5月末時点で、合計 2,297 社、全体の 24%に

相当する企業が金融関係機関となっております。ま

た、外資系金融機関の出張所の設置も相次いでお

り、既に 23 社4が出張所を設置しています。そのう

ち、日本の大手銀行3行も含まれています。数字か

らみると、上海自由貿易区は順調に発展し、多くの

企業、特に金融業およびサービス業にとって、魅力

的な場所となっているように思われます。

(2)付加価値電信業務

「外商投資電信企業管理規定」(国務院 08 年9

月 10 日改正、同日施行)第6条は、「付加価値電信

業務(基礎電信業務におけるポケットベル業務を含

む)を行う外商投資電信企業の外国側投資者の企

業における出資比率は、 終的に 50%を超えては

ならない。」と規定しています。この点、全体方案に

おいて、上海自由貿易区では付加価値電信業務を

開放するとうたわれましたが、13 年ネガティブリスト

からみれば、経営性 E コマース以外は外資比率が

50%を超えてはならないという規制は変わっておら

ず、あまり開放がないとも思われていました。この

点について、工業情報化部と上海人民政府が 14

4 http://finance.ifeng.com/a/20140730/12827857_0.shtml

http://www.ftzsino.com/cn/information/20140625/MTQW

MZY2MJCZMJQ.html

http://shtb.mofcom.gov.cn/article/shangwxw/zonghsw/201

406/20140600613776.shtml

年1月6日に公布した「上海自由貿易区対外増値

電信業務の更なる開放に関する意見」(以下「電信

意見」という)においては、付加価値電信業務につ

いて、上海自由貿易区内における付加価値電信業

務の外資規制に関する特別優遇政策を規定しまし

た。具体的には、以下のとおりです。

① 「情報サービス業務」(ただし「アプリケーション

ストア業務」に限る)、「保存転送類業務」、「呼

出センター業務」、「国内マルチ通信サービス

業務」、「インターネット接続サービス業務」に

ついて、外資出資比率が 50%を超えることを

認めるとされました。電信意見の条文上は、

100%外資による出資が可能か否かは明確に

されていませんが、一般論として中国工業信

息化部に確認したところ、区内において、上記

業務について 100%外資による出資も可能で

あるとの回答を得ました。

② 「国内 IP-VPN 業務」を外資に開放するが、外

資出資比率は 50%を超えてはならないとされ

ました。外資出資比率について、「外商投資電

信企業管理規定」の規定と同様であるため、

本意見で新たな優遇政策が規定されていない

ようにも見えます。しかし、実務上は外商投資

企業が国内 IP-VPN 業務の営業許可を取得す

ることは非常に困難ですので、本意見におい

て当該業務について「開放する」と明言してい

ることからすると、区内においては、当該業務

の許可をより容易に取得できるよう運用される

ことが予測されます。

③ 「オンラインデータ処理およびトランザクション

処理業務」についての、外資出資比率は 55%

を超えないものとされました。

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South China - Asia Business Report Vol.36

なお、電信意見に基づいて、付加価値電信業務

に従事する企業は、その登録住所およびサービス

施設を区内に設立しなければならず、上記付加価

値電信業務の内、「インターネット接続サービス業

務」のサービス範囲は区内に限られますが、その

他の業務のサービス範囲は中国全土とすることが

できます。

上記のとおり、付加価値電信業務についても、こ

の1年で法令上も開放措置が示されたといえます。

しかしながら、本稿作成時において、当局は付加価

値電信業務に対する厳格な審査姿勢を変えておら

ず、認可された外資系の付加価値電信業務企業は

米大手スーパーチェーンのウォルマートが出資する

1号店の1社のみとなっています。

(3)病院

全体方案により、外資独資での病院設立が認め

られるとされました。しかしながら、14年7月25日に

国家衛生計画生育委員会と商務部が公布した「外

資独資病院設立試行業務に関する通知」によれば、

中国の7つの省で外資の全額出資による病院設立

を試験的に認められることになりました。今後も、こ

の流れは続くと思われ、外資独資病院を患者が近

くにいない上海自由貿易区に設立する必要性は少

なくなるものと考えます。

2.会社設立関連手続きの簡易化

(1)2014 年ネガティブリスト

14 年6月 30 日、2013 年ネガティブリストが改訂さ

れました。2014 年ネガティブリストでは、ネガティブ

リストに含まれる分野を 2013 年版の 190 項目から

139項目に減らし、一部の項目については内容を調

整しています。しかし、これらの改訂は、項目の統

合や他の法令と整合性をとるためのものと解される

ものが多く、全体としては、2014 年ネガティブリスト

で大きく開放されたとはいえない印象です。注目す

べき改訂点としては、2013 年ネガティブリストでは、

ネット販売について「ネット販売への投資を制限す

る」と記載されていましたが、2014 年ネガティブリス

トでは「ネット販売への投資を制限する(一般商品

のオンライン販売を除く)」と修正された点がありま

す。これによれば、国が特別に販売を規制する商

品以外であれば、外商投資企業でもネット販売を行

うことが許容される可能性があります。

(2)設立手続きの簡易化

上海自由貿易区管理委員会に問い合わせたとこ

ろ、ネガティブリスト以外の分野における外商投資

については、現状、 短4日で営業許可証を取得

できるとのことでした。従来の手続きでは、工商局

での企業名称の仮登記、商務委員会に対する認可

(批准)、工商局に対する会社登記の申請・営業許

可証の発行、組織コードの登録、税務局・税関等で

の登録など各政府機関での個別の手続きが必要

で、すべて完成するのに、1~3カ月かかっていまし

たので、この点は上海自由貿易区の大きなメリット

となっていると考えます。

(3)登録資本制度の緩和

登録資本制度の緩和については、会社法改正と

それに伴う各種行政法規の改正が行われた結果、

上海自由貿易区外においても同様の制度が認めら

れることとなりました。そこで、この点は、上海自由

貿易区のメリットではなくなったと考えます。

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(4)年度検査の廃止

年度検査の廃止についても、(3)と同様に、会

社法改正とそれに伴う各種行政法規の改正が行わ

れた結果、上海自由貿易区外においても同様の制

度が認められることとなりました。そこで、この点は、

上海自由貿易区のメリットではなくなったと考えま

す。

五 まとめ

上海自由貿易区が開設して1年がたち、その間、

中国の上海自由貿易区外に適用される法令が変

わりました。一番大きな変化は会社法改正とそれに

伴う各種行政法規の改正で、その結果、会社法に

関連する部分である登録資本金や年度検査などの

手続きの簡易化などは、上海自由貿易区における

大きなメリットではなくなりました。

しかしながら、まだ外資規制が強い業務、特に付

加価値電信業務や金融業務などにとっては、上海

自由貿易区内で行われている開放政策はやはり非

常に魅力的ですので、今後の展開に注目する必要

があると考えています。

※ 次回は第 38 号に掲載します。

【編注】 本稿は 9 月 10 日時点で執筆されたものです。

1998 年東大法学部卒。2003 年弁護士登録。10 年ミ

シガン大学ロースクール卒。11 年ニューヨーク州弁

護士登録。05 年森・濱田松本法律事務所入所。上海

および香港での執務経験を活かし、対中直接投資、

M&A、中国企業の日本での IPO 案件等のさまざまな

中国関連業務、その他アジア各国に対する直接投

資や M&A 案件、およびインバウンド・アウトバウンド

の IPO 案件などクロスボーダー案件に積極的に取り

組んでいる。2013 年より北京オフィス執務。

湯浅 紀佳 (ゆあさ のりか)

森・濱田松本法律事務所

弁護士

(日本、米国ニューヨーク州)

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South China - Asia Business Report Vol.36

2014 年6月 17 日、国家発展および改革委員会

(以下「発改委」という)は、新たに「外商投資項目

の認可および届出管理弁法」(以下「本管理弁法」

という)を公布・施行し、同時に 04 年 10 月9日に公

布・施行した「外商投資項目の認可暫定管理弁法」

(以下「2004 年管理弁法」という)を廃止した。ここで

は、2004 年管理弁法との比較分析を行い、本管理

弁法の要点ならびに外商投資項目にかかわる新た

な変化およびその影響を解説する。

1、背景

本管理弁法では、13 年12 月2日に国務院が公布し

た「政府認可投資項目目録(2013 年)」(以下、「2013

年版認可目録」という)を執行するため、2004 年管理

弁法に対し相応の改正が行われた。その主な目的は

政府機能の転換を促進させ、法に基づく行政を堅持し、

政府部門による外商投資項目の認可、届出管理およ

びその管理責任を規範化することにあり、外商投資項

目の実行中・実行後に対する監督を主要管理形式1と

する等の具体的な規定を制定した。

2、本管理弁法の主な改正内容に関する分析

(1)全面認可制から限定認可および届出管理の二

1 主要管理形式とは、政府部門が相応業務に対して採用す

る主な管理・監督方法を指す。本管理弁法では、外商投資

項目の管理において、それまで項目の審査・認可段階に重

点を置いていた管理形式から項目の実行中・実行後の段階

に重点を置く管理形式へ転換した。

元管理体制に転換

本管理弁法と 2004 年管理弁法の も異なる点

は、外商投資項目の管理方法が、全面認可制から

限定認可および届出管理の二元管理体制に転換

したことである。本管理弁法第2条では、認可を要

する外商投資項目の範囲および認可担当機関を

明確に規定した。

① 「外商投資産業指導目録」の内、中国側による支

配(相対支配2を含む)を要件とする投資総額(増

資を含む)3億米ドル(以下、ドル)以上の奨励類

項目、投資総額(増資を含む)5,000 万ドル以上

の制限類項目(不動産を含まない)については、

発改委が認可を行う。

② 「外商投資産業指導目録」制限類の内、不動

産項目および投資総額(増資を含む)が 5,000

万ドル以下のその他の制限類項目は、省級政

府が認可を行う。「外商投資産業指導目録」の

内、中国側による支配(相対支配を含む)を要

件とする投資総額(増資を含む)3億ドル以下

の奨励類項目は、地方政府が認可を行う。

③ 前2項目以外で「2013年版認可目録」第1~11

項に列する外商投資項目に属すものは、

「2013 年版認可目録」第1~11 項の規定に基

【China】

「「外外商商投投資資項項目目のの認認可可おおよよびび

届届出出管管理理弁弁法法」」のの新新傾傾向向解解説説 潘 立冬、楊 金海 敬海法律事務所

2 相対支配とは、保有する持分が 50%に満たないが、最大

株主である場合を指す。

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South China - Asia Business Report Vol.36

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づき、相応の政府主管部門または省級政府、

地方政府が認可を行う。

以下に認可部門の例を挙げる。

本管理弁法は、外商投資項目に対して「限定認

可」方式を採用している。即ち、要認可項目を明確

に限定し、その他の項目はすべて届出制度を実施

する。従来の要認可外商投資項目の範囲に比べ、

本管理弁法ではその範囲を大幅に縮小し、発改委

が認可を行う外商投資項目の敷居を高め、省級お

よび地方政府により大きな認可権を与えた。具体

的には、主に以下3点の変化が挙げられる。

1点目は、認可を要する奨励類項目を中国側に

よる支配を要件とする項目に縮小した点である。

2004 年暫定弁法では、中国側による支配を要件と

するか否かにかかわらず、すべての奨励類項目は

概して発改委の認可を得なければならなかったが、

本管理弁法は奨励類項目の認可権限に対し実質

的な改正を行った。本管理弁法では地方政府によ

り大きな認可権を与えるため、発改委の認可を要

する奨励類項目の金額基準を 2004 年管理弁法の

1億ドルから3億ドルに引き上げる一方、省級政府

に対し、中国側による支配を要件とする投資総額

が3億ドル以下の奨励類項目に対する認可権を地

方の各級政府に委譲することを許可した。

2点目は、「外商投資産業指導目録」制限類の内、

外商投資不動産項目に関して、投資総額が 5,000

万ドルを超えるか否かにかかわらず、すべて省級

政府が認可を行うとした点である(2004 年管理弁法

では、総投資額 5,000 万ドル以上の制限類外商投

資項目は発改委、5,000 万ドル以下は省級発改委

が認可を行った)。

3点目は、本管理弁法第4条に列記する認可項

目を除くその他の外商投資項目は、地方政府投資

主管部署に届出を行うとした点である。即ち、今後

すべての許可類外商投資項目は、投資額の如何に

かかわらず認可管理から届出管理に変更される。

(2)外商投資項目の届出管理業務を下級部門

に委譲

発改委は一部の外商投資項目に対する認可事

項のみを担当するものとし、関連投資項目の届出

業務を省級政府から地方の各級政府投資主管部

門に委譲することを許可し、関連外商投資項目の

届出業務の更なる利便化を図った。ただし、注意す

べき点は、外商投資項目の届出はこれまでと同様

に国家関連法律・法規、発展計画、産業政策、参

入基準、「外商投資産業指導目録」、「中西部地区

外商投資優勢産業目録」等の規定に合致しなけれ

ばならないため、必然的に届出が受理されるとは

<エネルギー項目にかかわる発電所項目の場合>

– 原子力発電所:国務院

– 主要河口上への建設項目:国務院投資主管部門

– 風力発電所およびその他の項目:地方政府

<交通運送にかかわる道路建設項目の場合>

– 国家高速道路網項目:国務院投資主管部門

– 国家高速道路網以外の幹線項目:省級政府

– 地方高速道路項目:省級政府(国家認可の計画

基準に基づく。)

– その他の項目:地方政府

<レアアース、鉄鉱石、有色金属鉱山の開発にかか

わる原材料項目の場合>

– 資源埋蔵量が5,000万トン以上の鉄鉱開発項目:

国務院投資主管部門

– レアアース鉱山開発項目:国務院業種管理部門

– その他の項目:省級政府

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South China - Asia Business Report Vol.36

Oct. 2014 | 34

限らない。届出が認められない項目に対し、地方投

資主管部門は7営業日以内に書面意見を発行し、

その理由を説明しなければならない。

(3)本管理弁法適用範囲の拡大

本管理弁法は中外合弁、中外提携、外商独資、

外商投資パートナー、外商による国内企業買収合

併、外商投資企業の増資および再投資項目等の

各種外商投資項目に適用される。2004 年管理弁法

に比べ、外商投資パートナーおよび外商投資企業

の再投資の2項目が新しく追加されている。ただし、

「中外合弁経営企業法」、「中外提携経営企業法」、

「外資企業法」の関連規定によると、中外合弁、中

外提携、外商独資に採用する会社組織形式は有

限責任会社であり、株式有限会社は含まれないた

め、上述の外商投資項目範囲に外商投資株式有

限会社項目は含まれない。

(4)認可または届出済み項目の変更

本管理弁法第 21 条によると、認可・届出済みの

項目について投資者または持分、項目所在地、項

目の主要な建設内容に変更が生じる場合、元の認

可機関で変更を申請しなければならない。本管理

弁法では、2004 年管理弁法の第 18 条第4項に規

定する「投資総額が認可済み投資額より 20%以上

上回る場合、元の認可機関で変更申請手続きを行

う。」という規定を廃止した。

3、まとめ

本管理弁法 大の特徴は、外商投資の円滑化

を図るために外商投資項目の認可および届出の条

件を大幅に縮小・簡潔化し、外商投資項目の管理

体制を全面認可制から限定認可および届出管理に

よる二元管理体制に変更した点である。参入管理

面では、外商投資項目の国民待遇を試行し、かつ、

外商投資項目の市場見通し・経済効果・技術方案

等の事項の審査を廃止し、企業の経営自主権およ

び投資決定権を尊重し承認することとした。既に中

国で実施段階または実施計画段階にある外商投

資項目にとって、本管理弁法の施行は政府主管部

門による認可の獲得または届出の受理の可能性を

高め、外商企業が関連分野へ投資を行う良い機会

となるだろう。

※次回は第 38 号に掲載します。

潘 立冬

パートナー弁護士

ニューヨーク州弁護士

中山大学法学部卒、同大学院法学研究科修了(国際法

専攻)、1998 年弁護士登録。米セントルイス•ワシントン大

ロースクール修了(保険法、銀行商事法、会社法等を専

攻)。商法、海商・海事、国際貿易、中国商取引等を得意

分野とし、中国における著作権、商標登録等の知的財産

保護戦略、保険・金融分野に関する法的アドバイス、また

外資企業の中国法人設立、労働契約、就業規則の作

成、労使紛争の解決、仲裁・訴訟に多数従事している。

敬海法律事務所WANG JING & CO. Law Firm敬海法律事務所

WANG JING & CO. Law Firm

楊 金海

弁護士

黒龍江省鶏西大学日本語学科、及び中山大学法学

部卒業。日系企業にて計 17 年間、法務・人事業務に

従事。国家司法試験合格後、2011 年より敬海法律事

務所に勤務。日本語能力と長年に渡る日系企業での

勤務経験を活かし、労務管理、社内規則制度確立、

労働紛争解決、会社法実務、契約書起草・確認等の

リーガルサービスを華南地区の日系企業を対象に提

供している。

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Oct. 2014 | 35

South China - Asia Business Report Vol.36

【Hong Kong】

オオフフシショョアア所所得得のの取取りり扱扱いい

~~AAddvvaannccee RRuulliinngg CCaassee NNoo..5544 のの考考察察~~

SCS Global Consulting (Hong Kong) Ltd

者の参考となる実務指針を公表している。直近で

は 12 年7月に公表された DIPN21 号(改訂版)が IRD

の基本的なスタンスを示すものとして参考になるも

のと思われる。以下、その概要を解説する。

2014 年2月 28 日、香港税務当局(Inland Revenue

Department、以下IRD)は、13 年 10 月 11 日に発行

した裁定事案をAdvance Ruling Case No.54として公

表した1。その内容は従来のIRDのオフショア所得に

対するスタンスを、より厳しいものにすることを示す

内容になっている。本リポートでは従来のオフショア

所得に関する一般的な内容を解説するとともに、

Advance Ruling Case No.54 におけるIRDの判断を

考察する。

2.DIPN21 号(改訂版)における事業活動の認定

DIPN21 号(改訂版)における香港内での事業活

動の認定は、以下の通り要約できる。なお本リポー

トでは、来料加工貿易に代表される製造業に関す

るオフショア所得の解説については割愛するものと

する。 1.オフショア所得とは?

まず始めに、香港での課税ルールの特徴として、

香港で納税義務が生じるのは香港内の事業活動

により発生した所得(香港に源泉のある所得)につ

いてのみであり、それ以外については課税しないと

いう点が挙げられる。この「それ以外」という部分、

すなわち香港外での事業活動により発生した所得

がオフショア所得と呼ばれるものであり、オフショア

所得と認定されれば、納税者の香港内での居住/

非居住に関わらず課税されない。

① 貿易業

販売および購買契約がともに香港外で行われ

た場合、その取引から生じた所得はオフショア

所得となる。なお売買契約は事業活動の認定

場所についての重要な要因ではあるが、判断

には所得を生み出すすべての活動を考慮する

必要がある。

販売および購買契約のいずれか一方でも香港

内で行われた場合、その取引から生じた所得

はオフショア所得とならない。

問題は何をもって香港内での事業活動があった

か否かとするか、という点であるが、現在のところ

明確なルールがなく、過去にさまざまな訴訟が行わ

れてきた。これらの過去の訴訟を受け、IRD は納税 顧客が香港企業(海外企業の香港購買拠点を

含む)の場合、通常は香港内で契約があったと

考えられる。購入先が香港企業である場合も 1 原文:http://www.ird.gov.hk/eng/ppr/advance54.htm

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South China - Asia Business Report Vol.36

同様である。

売買契約締結にあたって香港外への出張を要

求するようなものではなく、香港からの電話や

FAX その他の手段で行われる場合にも、香港

内での事業活動によるものと認定されると考え

られる。

従業員または代理人が海外へ出張し、香港外

で売買契約の交渉および締結を行った場合、

香港外での事業活動と認定される。ただし IRD

はその従業員または代理人の旅程やホテル、

経費の詳細を要求すると考えられる。仮に海

外の代理人が契約を代行した場合には、代理

店契約やその他の証明が必要になる。

② サービス(役務提供)業

サービス業に関しては、その役務が提供され

た場所が事業活動場所の判断になる。香港内

でサービス提供を行った場合、その役務によっ

て生じた所得は香港で課税対象となる。

日系企業含め、三国間貿易の拠点としてリイン

ボイス機能を香港拠点が有するケースは多く見ら

れる。この点上記の DIPN21 号における考え方に従

えば、香港拠点では単にインボイスを発行するだけ

で契約等はすべて香港外で行われているような場

合、その取引から生じた所得はオフショア所得と認

定され、香港では課税されないと考えられる。

一方で、リインボイス拠点が香港内で何らかの役

務提供を行っており、それによってコミッション収益

や利益を得ている場合には、役務提供場所が香港

である以上、香港での課税対象なる。この点、

DIPN21 号においても「リインボイス拠点の所得が

貿易業としての所得なのかサービス業としての所

得なのか分類することはできない」と明記されてお

り、諸般の状況を考慮して個別に対応せざるを得な

いということになる。

3.Advance Ruling Case No.54 について

ここまで DIPN21 号の基本的な考え方について解

説してきたが、14 年2月 28 日に公表された

Advance Ruling Case No.54 によれば、従来の IRD

のスタンスより広い範囲で香港での課税が生じる

可能性があることを示している。Advance Ruling

Case No.54 に示された事例は次頁の取引概要図

の通りである。

取引全体の中で、香港における納税主体である

Company Z は主に以下の業務を行う。

製造拠点への代金支払いおよび顧客からの

入金処理を行うため、香港の銀行口座を維持

管理する。

Company C の保証のもと、銀行融資を受け

る。銀行書類はCompany CのDirector(香港居

住者)がサインする。

海外支店が作成した請求書および輸出関係

書類一式のコピーを、交渉および債権回収の

ために事務所に保管する。

香港で会計スタッフおよび事務スタッフを採用

し、銀行信用状(L/C)の処理および書類の銀

行への提示といった業務を行う予定である。

上記の通り、Company Z は直接顧客との契約交

渉および締結は行わず、契約後の販売取引実務に

ついても海外の支店を通じて行っている。貿易業に

関する DIPN21 号の基本的な考え方に従えば、香

Oct. 2014 | 36

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South China - Asia Business Report Vol.36

港で Company Z が貿易取引により獲得した所得は

オフショア所得と認定され、香港内での課税はない

と思える。

しかし結論として、IRD は本件において Company

Z の所得については香港での課税対象となるとして

いる。理由は以下の通りである。

貿易業とは販売および購買契約の効力を発生

させることにあると考えられるが、この効力発

生のためには、「注文を受ける」ということ以上

のものが含まれている。貿易支援を銀行から

受けることは、売買契約の効力を発生させるた

めであると理解するべきである。

銀行信用状(LC)の発行や買掛債務に関する

交渉および決済を行うことは、貿易業務の重

要な部分である。これらは実務上、商業的な観

点から無視することはできない。

Company Z は香港にて銀行口座を維持管理し、

融資を受ける交渉を銀行と行っている。また

Company CのDirectorによってサインされた銀

行書類を取り扱い、貿易取引の決済に効力を

持たせている。また会社の活動によってグル

ープとしてより低コストで貿易融資を受けること

が可能になっており、これらの行為は香港での

所得を獲得することを可能にしている。

この IRD による判断は、販売および購買契約が

実質的に香港で行われているかどうかという点を

重視した、従来の考え方を逸脱したものになってい

ると言える。

4.まとめ

Advance Ruling は特定の事例に対して適用され

たものであり法的拘束力のあるものではない。ただ

しこの事例を IRD が公表したということは、IRD のオ

フショア所得に対する考え方がより厳しくなったこと

を納税者にアピールする意図があると考えられる。

上述したようにオフショア所得の認定には総合的に

状 況 を 勘 案

す る 必 要 が

あるため、今

回 の 発 表 を

踏まえてより

慎 重 な 判 断

が 求 め ら れ

ることになる

と言える。

■取引概要図

Company ZCompany Z Company CCompany C

Company FCompany F 海外支店海外支店 ZZ

顧 客顧顧 客客

海外事務所 D海外事務所海外事務所 DD

海外事務所 E海外事務所海外事務所 EE

海外製造 D1海外製造海外製造 D1D1

海外製造 D2海外製造海外製造 D2D2

海外製造 E海外製造海外製造 EE

海海 外外

香香 港港

ZZははAA((AA国)と国)とBB((BB国)の共同出資会社国)の共同出資会社

ZZの役員はすべて香港非居住者の役員はすべて香港非居住者

AAととBBは衣料品業界におけるパートナーで、は衣料品業界におけるパートナーで、CCに対してに対して5050%ずつ出資%ずつ出資

DDととEEははCCの海外製造子会社の海外製造子会社

FFははAAのの100100%子会社%子会社

ZZははDDととEEに海外事務所を保有に海外事務所を保有

ZZは香港オフィスをは香港オフィスをCCとシェアし、会計事務とシェアし、会計事務所を通じて香港に登記住所有り所を通じて香港に登記住所有り

⑥⑥ 製造拠点への支払い、顧客製造拠点への支払い、顧客からの入金はからの入金はZZが管理するが管理する

香港の銀行口座から実施香港の銀行口座から実施

①① 顧客と交渉、契約締結後、顧客と交渉、契約締結後、支店支店ZZに紹介に紹介

②② 支店支店ZZが顧客からが顧客から

発注書を回収、発注書を回収、

売上確認売上確認

③③ 支店支店ZZから海外から海外

製造拠点に発注製造拠点に発注

④④ DD、、EEが製造モニが製造モニ

タリング、出荷スタリング、出荷スケジュール調整ケジュール調整

⑤⑤ 製品は(香港を経由せず)直接顧客に送付製品は(香港を経由せず)直接顧客に送付

Company ZCompany Z Company CCompany C

Company FCompany F 海外支店海外支店 ZZ

顧 客顧顧 客客

海外事務所 D海外事務所海外事務所 DD

海外事務所 E海外事務所海外事務所 EE

海外製造 D1海外製造海外製造 D1D1

海外製造 D2海外製造海外製造 D2D2

海外製造 E海外製造海外製造 EE

海海 外外

香香 港港

ZZははAA((AA国)と国)とBB((BB国)の共同出資会社国)の共同出資会社

ZZの役員はすべて香港非居住者の役員はすべて香港非居住者

AAととBBは衣料品業界におけるパートナーで、は衣料品業界におけるパートナーで、CCに対してに対して5050%ずつ出資%ずつ出資

DDととEEははCCの海外製造子会社の海外製造子会社

FFははAAのの100100%子会社%子会社

ZZははDDととEEに海外事務所を保有に海外事務所を保有

ZZは香港オフィスをは香港オフィスをCCとシェアし、会計事務とシェアし、会計事務所を通じて香港に登記住所有り所を通じて香港に登記住所有り

⑥⑥ 製造拠点への支払い、顧客製造拠点への支払い、顧客からの入金はからの入金はZZが管理するが管理する

香港の銀行口座から実施香港の銀行口座から実施

①① 顧客と交渉、契約締結後、顧客と交渉、契約締結後、支店支店ZZに紹介に紹介

②② 支店支店ZZが顧客からが顧客から

発注書を回収、発注書を回収、

売上確認売上確認

③③ 支店支店ZZから海外から海外

製造拠点に発注製造拠点に発注

④④ DD、、EEが製造モニが製造モニ

タリング、出荷スタリング、出荷スケジュール調整ケジュール調整

⑤⑤ 製品は(香港を経由せず)直接顧客に送付製品は(香港を経由せず)直接顧客に送付

※次回は第 38

号 に 掲 載 し ま

す。

Oct. 2014 | 37

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Oct. 2014 | 38

South China - Asia Business Report Vol.36

アアジジアア経経済済概概況況 ~~輸輸出出主主導導でで、、緩緩ややかかなな経経済済成成長長をを維維持持~~

宮嶋 貴之 みずほ総合研究所

2014 年2Q の成長率は総じて加速

14 年2Q(4~6月)期を振り返ると、アジアでは輸

出を起点に景気が加速した国が多かった(図表1)。

中国の成長率は、前期から小幅に加速した。輸出

が持ち直したほか、景気対策効果により固定資産投

資も加速した。NIEs では、台湾は輸出の好調から加

速した。一方、韓国、シンガポール、香港は減速した。

韓国は輸出の増勢を維持する一方、セウォル号事故

による自粛ムードから個人消費が減少した。

ASEAN5をみると、マレーシア、フィリピン、ベトナ

ムは輸出の堅調などにより加速した。政情不安が続

いていたタイでも、軍事クーデター後のマインド改善

などにより、景気は底打ちした。一方、インドネシア

は未加工鉱石輸出規制の影響や内需の低調により

減速した。インドは、政府消費、総固定資本形成が

2期ぶりにプラスに転じたことで前期から加速、9期

ぶりに+5%台後半の高い伸び率となった。

図表1 実質 GDP 成長率

(前年比年率%)

(年) 2013 2014

(月) 1~3 4~6 10~12 1~3 4~67~9

韓国 2.5 4.1 4.4 3.6 3.8 2.0

台湾 ▲2.2 3.8 0.1 7.6 2.5 3.9

香港 2.1 2.1 3.1 3.7 1.1 ▲0.6

シンガポール 1.9 10.2 0.7 6.9 1.8 0.1

タイ ▲4.9 0.9 5.5 0.1 ▲7.3 3.5

マレーシア ▲1.2 6.8 7.1 7.6 3.4 7.5

フィリピン 9.5 5.4 5.0 6.4 5.9 7.7

(参考)オーストラリア 1.4 3.0 2.8 3.4 4.3 2.0

(前年比%)

中国 7.7 7.5 7.8 7.7 7.4 7.5

インドネシア 6.0 5.8 5.6 5.7 5.2 5.1

ベトナム 4.8 5.0 5.5 6.0 5.1 5.3

インド 4.4 4.7 5.2 4.6 4.6 5.7

(資料)各国統計

輸出持ち直しの一方、内需の増勢は強くない

輸出が持ち直した一方で、アジアの内需の増勢

はそれほど強くない。この要因として、下記3点が

考えられる。第1に、ASEAN、インドを中心に緊縮

的な政策運営が継続されているためである。地政

学リスクの高まりがもたらす原油高な

どによる先行きのインフレ懸念に加え、

米国金融緩和の出口戦略に伴う潜在

的な資金流出リスクへの備えが背景

にある。緊縮的な政策運営もあって、

アジアの経常収支やインフレはおおむ

ね改善傾向にある。これにより、為替

レートは他の新興国と比べて総じて安

定的に推移する一方で(図表2)、内需

が抑制される状況は続いている。第2

図表2 アジア・新興国の為替レート

75

80

85

90

95

100

105

110

1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1

アルゼンチン ペソ トルコ リラ

南アフリカ ランド ロシア ルーブル

ブラジル レアル

(2013/12/18=100)

(月/日)

75

80

85

90

95

100

105

110

1/1 2/1 3/1 4/1 5/1 6/1 7/1 8/1

インドネシア ルピア マレーシア リンギ

韓国ウォン フィリピン ペソ

インド ルピー

(2013/12/18=100)

(月/日) (注) 数値が大きいほど通貨高を表す。 8 月 29 日までの値。 対米ドルレート。

(資料)Bloomberg

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South China - Asia Business Report Vol.36

15 年にかけて、アジアは緩やかな成長を維持 に、輸出は持ち直したとはいえ、そのテンポは緩や

かで、生産や内需への波及効果が大きくないため

である。先進国向けの輸出が増加する一方、中国

など新興国向けの輸出は伸び悩んでいる。第3に、

韓国やタイでは、個別要因(セウォル号事故、政治

混乱)による内需下押しがあったためである。

14 年後半から 15 年を展望すると、アジア経済

は緩やかな成長を維持するとみられる。米国を中

心に先進国経済の回復が続くことで輸出の増加傾

向は続き、外需依存度の高い NIEs は景気拡大基

調を維持しよう。

一方、ASEAN、インドとは対照的に、中国ではイン

フラ投資の執行加速などの景気支援策が実施され、

投資を中心に内需が下支えされた。ただし、景気支援

策は構造改革に資する分野への効率的な財政資金

投入や小規模・零細企業などに対象を絞った選択的

金融緩和の実施にとどまっており、今後も大規模な景

気刺激策を実施する意図はないとみられる。

中国は 14 年後半にかけてやや加速するだろう。米

国向けを中心に輸出増加が続き、インフラ投資など景

気支援策による下支えも続くと見込まれる。ただし 15

年は、景気支援策の効果が剥落すること、生産能力過

剰問題の重石が残ることを背景に、投資が緩やかな

減速傾向をたどることで成長率は鈍化するだろう。

なお、不動産投資については、住宅開発投資の

先行指標である住宅販売面積に足元で下げ止まり

の兆しがみられることから、15 年前半に底打ちする

と考えられる。ただし、地方都市の住宅在庫は依然、

高水準にあり、不動産市場の調整が長引くリスクに

は引き続き注視が必要だ(図表3)。

図表3 中国の住宅在庫面積(対取引面積比)

0

5

10

15

20

25

11/01 12/01 13/01 14/01

(月)

(年/月)

10都市

2級都市

1級都市

(注)当月の在庫面積÷直近 3 カ月の月平均取引面積。1 級都市

(北京、上海、広州、深圳)と 2 級都市(杭州、南京、青島、蘇州、

寧波、厦門)の合計 10 都市のデータ。 (資料)WIND

図表4 アジアの政策金利

2.8

3.0

3.2

3.4

3.6

3.8

4.0

6.0

6.2

6.4

6.6

6.8

7.0

7.2

7.4

7.6

7.8

8.0

8.2

13/01 13/04 13/07 13/10 14/01 14/04 14/07

インド(左目盛)

インドネシア(左目盛)

マレーシア(右目盛)

フィリピン(右目盛)

(%)

(年/月末)

(%)

(資料)各国統計、CEIC Data

一方、ASEAN5では、インフレ圧力や潜在的な資本

流出リスクの抑制に向けた緊縮的な政策運営が続く見

込みである。インドネシアに続いて、インフレ懸念が高

まっていたマレーシア、フィリピンは、7月に約3年ぶり

の利上げを実施した(図表4)。このため、14 年後半か

ら 15 年にかけて、内需の盛り上がりに欠ける展開とな

る国が多いだろう。なお、タイの 15 年通年の成長率は、

高いゲタをはくことで前年から加速するものの、景気

の実態は減速基調で推移するとみられる。

インドの景気回復は緩やかにとどまるだろう。輸出

が回復するものの、14 年2Q の成長率を押し上げた

政府消費や公共投資を含む総固定資本形成は、政府

の財政再建により高い伸びが維持される見込みは低

い。また、天候不順などによるインフレリスクを強く警

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South China - Asia Business Report Vol.36

戒する中央銀行も金融引き締めスタンスを維持すると

みられ、設備投資など民需の停滞も続くだろう。

政治情勢に注視が必要

インドやインドネシア、タイ、ベトナム、香港では、

以上のシナリオに対するリスク要因として、政治情

勢が景気や市場に影響を及ぼす可能性があり、注

視が必要である。

インドでは、モディ新首相が下院の過半数という

安定基盤を活かして財政再建や民間投資促進など

に向けた改革を断行するとの期待は大きい。しかし、

新政権の勢力は上院や州政府では少数派にとどま

るため、上院と地方政府の権限が大きい投資促進

策の実施には時間を擁するだろう。現段階では、改

革実行ペースについては慎重にみるべきだ。

インドネシアでは、次期大統領のジョコ氏の政策

公約の中に未加工鉱石輸出規制の継続など景気

に悪影響を及ぼすものも含まれており、10 月の大

統領就任後、そうした公約が実行に移されるかに

注目が集まる。また、与党連合の議席割合は約4

割に過ぎず、今後の政権基盤強化に向けた他党と

の連立協議や政党再編の動向も、改革の実行力

に影響を及ぼすことが予想される。

両国とも、選挙結果による改革期待先行で海外

マネーが流入していることから、新政権の改革が市

場の期待ほど進捗しなければ、資金が逆流して通

貨や株価が下落圧力にさらされる懸念がある。

タイでは 15 年中に予定される民政移管を前に、

選挙制度などの改革が議論される中で、タクシン派

が反発を強めて大規模デモを実施して民政化が遅

れる可能性がある。その場合、米国や EU との関係

悪化から国際的評価が失墜して、資金流出懸念が

高まる可能性もあろう。

ベトナムでは、領有権争いが発生している南シナ

海での中国の石油掘削が7月に終了したが、8月

に中国政府が同地域での灯台設置計画を発表して

おり、再び対中関係が悪化して通貨下落圧力が強

まるリスクは残るだろう。

香港では、17 年に実施予定の行政長官選挙を

巡って、7月1日に民主派が反中デモを実施する

など対中関係が悪化している。8月 31 日には、中

国が選挙制度の変更方針を発表したが、香港・民

主派から「事実上親中派しか立候補できない」と

の批判を招いている。今後、香港政府により選挙

制度改革案が策定され、来年からは議会審議が

行われる予定だが、その過程で政治混乱が激化

すれば、景気に悪影響が及ぶリスクがある。

図表5 アジア経済見通し総括表 (単位:%)

2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年

(実績) (実績) (実績) (予測) (予測)

アジア 7.6 6.1 6.1 6.1 6.1

中国 9.3 7.7 7.7 7.5 7.3

NIES 4.2 2.0 2.8 3.4 3.4

韓国 3.7 2.3 3.0 3.6 3.7

台湾 4.2 1.5 2.1 3.5 3.2

香港 4.8 1.5 2.9 2.0 1.9

シンガポール 6.1 2.5 3.9 3.5 3.8

ASEAN5 4.5 6.2 5.2 4.6 5.1

インドネシア 6.5 6.3 5.8 5.1 5.2

タイ 0.1 6.5 2.9 1.0 4.1以上の点を踏まえ、14 年の実質 GDP 成長率は、

中国が+7.5%、NIEs が+3.4%、ASEAN5が+

4.6%、インドが+5.0%、15 年は中国が+7.3%、

NIEs が+3.4%、ASEAN5が+5.1%、インドが+

5.1%と予測した(図表5)。

マレーシア 5.2 5.6 4.7 5.8 4.7

フィリピン 3.7 6.8 7.2 6.2 6.3

ベトナム 6.2 5.3 5.4 5.6 5.7

インド 7.7 4.8 4.7 5.0 5.1

(参考) オーストラリア 2.6 3.7 2.4 3.1 2.6(注)実質 GDP 成長率(前年比)。平均値は IMF による 12 年 GDP シ

ェア(購買力平価ベース)により計算。

(資料)各国統計、みずほ総合研究所

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South China - Asia Business Report Vol.36

Back Issues

2013 年 12 月発行 第 28 号 2014 年 5 月発行 第 32 号

・ 中国(上海)自由貿易試験区への期待 ・ 中国の消費者向け金融業界の現状と展望 ・ 消費市場としての新興国の可能性 ~カンボジア~ ・ ベトナムにおける販社展開の留意点 ・ India: インドの税制 [46]2013 年新会社法~企業の社

会的責任(CSR)~ ・ India:インドの税制 [48]インドの不正事例とその対応策 ・ Vietnam:女性労働者のための労働法および効果的な

社内施策 ・ Vietnam: ベトナムにおける IT 企業設立の 概要と実務上の留意点 ・ China:解説・中国ビジネス法務 [13]登録資本制度改革を

含む行政法規の改正~中国の会社法改正に伴って~ ・ China: 解説・中国ビジネス法務 [11] 「中国(上海)自由貿易試験区銀行業監督管理関連問題に関する通知」 ・ Hong Kong:香港新会社条例の施行

・ China: 「中華人民共和国企業破産法の適用の若干問題に関する規定(二)」の解説

・ Hong Kong:日本企業による香港上場~近時のアップデート ・ アジア経済情報: インドネシア

・ アジア経済情報: マレーシア 2014 年 6 月発行 第 33 号

2014 年 1/2 月発行 第 29 号 ・ ミャンマー・ティラワ SEZ の 新状況 ・ 2014 年香港賃金動向 ・ ASEAN に対する期待と懸念を交錯させる日本企業~

2014 年2月アジアビジネスアンケート調査結果~ ・ 2013 年為替市場の回顧と 14 年の見通し~ドル円およびオフショア人民元を中心に~ ・ 貿易決済におけるリスクとヘッジ手法

・ India: インドビジネス 新情報[8] 新会社法~13 年9月付で適用されたセクションの概観~

・ India:インドビジネス 新情報 [10]インド新会社法における監査人に関連する規定

・ Vietnam: 移転価格税制の概要と移転価格税務調査の現況

・ Vietnam:プロジェクトオフィスのライセンス申請手続き、取引通貨および会計・税務(後編)

・ China: 中国ビジネス法律講座[44] 「深圳市社会医療保険弁法」の修正および在深圳日系企業への影響

・ Malaysia/Singapore:マレーシアおよびシンガポールにおける GST 新動向

・ Hong Kong: 国際税務講座[29] 平成 26 年度税制改正大綱

・ China:中国ビジネス法律講座 [45]労務派遣新規定による外資企業への影響およびその対応策

・ アジア経済情報:アジア経済概況~2014 年は多くの国が輸出主導で加速、中国など一部は減速~

・ Hong Kong:進出事例から見る香港の活用方法 ・ アジア経済情報:台湾

2014 年 3 月発行 第 30 号 2014 年 7/8 月発行 第 34 号

・ オフショア人民元建て債券市場の新たな展開 ・ 2014 年上期為替市場の回顧と 14 年下期の見通し~ドル円およびオフショア人民元を中心に ・ ラオスの可能性~タイ・プラスワンの潜在力を探る~

・ ハラルビジネスについて~マレーシアにおけるハラル食品の事例より~

・ 深圳市の都市再開発に伴う企業の移転 ・ India: インドの税制 [49]インド新会社法:企業の社会

的責任(CSR)~施行後の改定を中心として~ ・ 前海湾保税港区の活用~「一日游」から「前店後倉」まで~ ・ India: インドの税制[47] インド赤字会社制度および新

会社法による改正の影響 ・ Vietnam: ベトナムにおける外国人労働者に関する通達 ・ Indonesia: インドネシアの新外資比率規制

・ Vietnam: ベトナムにおける税務調査の概要とそのリスク ・ China: 解説・中国ビジネス法務 [14]中国独禁法の簡易手続き開始 ・ China: 解説・中国ビジネス法務[12] 国務院による政

府が審査確認を行う投資プロジェクト目録(2013 年版)の発布に関する通知

・ China: 中国からの海外送金と回収の実務 ・ China: 近似商標使用による商業権侵害の判定基準

・ China: 新「中華人民共和国商標法」の解説 2014 年 9 月発行 第 35 号

2014 年 4 月発行 第 31 号 ・ チャイナ・プラスワンと北ベトナム~調達リスク対策が喫緊の課題に~ ・ 高齢化社会に挑む中国 ~広州市の介護現場から~

・ グループ企業間連携による中国関連ファイナンスの 適化 ・ 進化する香港~中国のゲートウェーからアジアのゲートウェーへ~ ・ ベトナムに向かう中国企業の現状

・ India: インドビジネス 新情報[9]インド新会社法における休眠会社の論点

・ India: インドビジネス 新情報 [11]2014 年度インド予算案~直接税に関する変更点~

・ Vietnam: プロジェクトオフィスのライセンス申請手続き、取引通貨および会計・税務(前編)

・ Vietnam: 物流分野の現地法人設立に関する法令と実務上の留意点

・ Singapore:シンガポール 2014 年度財政予算案~税制改正を中心に~

・ Singapore/Malaysia: シンガポールおよびマレーシアにおける個人情報保護法

・ China: 中国における合法的リストラ ・ Malaysia: マレーシアの GST と外国企業への影響 ・ Hong Kong: 国際税務講座[30] 2014/15 年度香港財政

予算案 ・ China: ストライキの原因分析および法的対応 ・ Taiwan: 台湾における配当源泉税の改正

バックナンバーのご用命は、巻末記載の連絡先もしくは営業担当者まで、お気軽にお申し付けください。

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