(国研) 自動車ヒューマンファクター研究セン … 1...

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18/02/19 1 自動運転時代のHMI課題 (国研)産業技術総合研究所 自動車ヒューマンファクター研究センター 赤松 幹之 n 計器・車載表示器の位置(視認性) n 車載機器によるディストラクション n 自動運転のヒューマンファクター 自動車のHMIの課題

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18/02/19

1

自動運転時代のHMIの課題

(国研)産業技術総合研究所自動車ヒューマンファクター研究センター

赤松 幹之

n  計器・車載表示器の位置(視認性)

n  車載機器によるディストラクション

n  自動運転のヒューマンファクター

自動車のHMIの課題

18/02/19

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人間工学的エビデンス B. Atsumi et al: Study of meter cluster location for visibility performance, JSAE

Review, Vol.20, p. 369-374 (1999)

センターメータ

プリウス1997  ビスタアルデオ 1998 ヴィッツ 1999

表示の配置の考慮事項

図3-199 遠近切り替え時の水晶体調節

. 012

d d

/ H 267 46 85 E: ( 8D8 : 0 8D8 :

/ ) 89 ( 89

S o i

S o i

u d / 3E

S

S

h y u d GGG u d GGGG u d

l m

S /u d / , 3E

)(

,

)(

,

-

(

,

)

S /u d / - 3E

S /u d / . 3E

P b dasc

r

u d / 3Eu d / , 3E

t l d z e

運転席からメータ部

運転席からセンターコンソール

運転席からルームミラー

助手席からセンターコンソール

助手席からルームミラー

上90度

右90度

図3-203 ドライバの前方視野と視野角との関係

シートベルト・リマインダ図3-205 視距離と環境照度の違いによる年代別視力の比較

(一社)自動車技術会自動車技術ハンドブック:人間工学編 より

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3

前方視界要件:ECE-R125

下方4°

5.1.3項:遮蔽物があってはならない

V2

下方1°

下方4°

エリアS ウィンドスクリーン

5.1.3.2項:ステアリングおよび計器盤による遮蔽はエリアSの

20%を超えないこと

1,500mm

V2

HUDの課題

5

7

9

11

13

15

17

19

21

Eye p o in t (V 2 )下方1 °の上部 Eye p o in t (V 2 )下方1 °の下部

煩わし い

T.Sato,M.Akamatsu,Drivingsimulatorstudyofdriverbehaviorwhileusinghead-updisplay,ProceedingsofSIGGRAPHAsia2015

眼球停留時間(sec)

煩わしさ感

18/02/19

4

視界を妨げる要素

•  ウィンドウ歪み•  メータ・ナビディスプレイへの太陽光反射•  対向車のヘッドライトのまぶしさ•  内装造形のウィンドウへの映り込み•  内装加飾の反射への太陽光反射によるまぶしさ•  前面窓ガラス内側へのインパネ造形の映り込み

カーナビ等の車載機器への注視

時計

スピードメータ

ラジオ音量調節

ラジオ選局

エアコン 温度調節

エアコン モード変更

1.0 2.0 1回当りの視認時間(sec)

urban highway

視認回数 5

0

0.5

1.0

1.5

2.0

1 2 3 4 6 7 8 9

1回

当り

の視

認時

間(se

c)

ナビ画面への視認時間 従来機器への視認時間

8

18/02/19

5

車載機器への総視認時間と運転への不安感

操作回数(総視認時間:sec)

官能

評価

前を見ている時と一緒でふらついていない

少しふらついたと思うが安全の許容範囲と思う

かなりふらついて車線を外れたと思う1

2

3

4

5

2(3.5)

3(6.0)

4(8.8)

5(11.0)

6(13.2)

平均

標準偏差

9

運転タスク

車載機器操作タスク

運転と車載機器操作のタスク切換え

time

運転パフォーマンス成績(ex車両の振らつき)

改善

悪化

10

18/02/19

6

・視界を強制的に遮断した条件下で,対象機器を操作

1.5秒 1.5秒 1.5秒 1.5秒

1.5秒 1.5秒 1.5秒 1.5秒

操作

① ② ③ ④

操作時間

TSOT (Total Shutter Open Time)

操作に要した視認時間

= 1.5×5 = 7.5 (秒)

総視認時間8秒は、視覚遮断法でのベンチテストで5回のシャッター開放と同等: JAMAガイドラインver3.0 TSOT=7.5秒で規定

VisualDistraction計測のためのOcclusion法(ISO16673)

1.5秒

運転(道路前方)に相当

車載機器操作に相当

11

車載機器ヒューマンインタフェースの考慮事項

ディスプレイ:ディスプレイサイズ, 文字サイズ(JISS0032)、コントラスト、視認性、音量、聴取性(高齢者特性 http://scdb.db.aist.go.jp/)

ディスプレイ位置:視野角(JAMA:30度以内)情報量:短時間で読取れるような表示(2秒以内、JAMA:

文字数30以内)発話の長さは数単語までタスクの複雑さ:タスクは20秒以内に収まるように (AAM),

総視認時間は8秒以内に(JAMA).    タスク終了感を持たせる(チャンク化)

操作:目を離し易い操作フィードバック(音や振動)    ×楽しいアナログ的なフィードバックは目が離せない 12

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7

現状での一般的な自動運転レベルの考え方(SAEJ3016,2016Sept)

•  レベル1:加減速制御(ACC/全車速ACC/自動緊急ブレーキ)あるいは

操舵制御(LKS)をシステムが行う。•  レベル2:加減速制御と操舵制御を同時に(統合して)システムが行う。

ドライバはシステムの出来ないことは全て遂行。–  システムによる走行が安全であるかを常時確認(状況認知:SituationAwareness)–  システムが適切に作動しているかを常時確認(システム監視)

•  レベル3:ある条件下では、システムが運転タスクを全て行う。その条

件が満たされなくなるときには、ドライバに運転タスクを依頼する。–  ドライバはシステム作動中は、運転タスクに寄与する必要はない–  自動から手動へのシステムからの依頼は、十分な時間的余裕があるものとする。

•  レベル4:ある条件下では、システムが運転タスクを全て行う。ドライ

バが運転タスクを取って代わる必要はない。•  レベル5:全ての条件下で、システムが運転タスクを全て行う。技術的

には人が乗車する必要はない

社会

自動運転車両

ドライバ・人

自動運転システム

他の交通参加者

3 3

自動運転の3つのヒューマンファクターの課題l  ドライバは自動運転システムを理解できるかl  ドライバは自動運転から手動による運転を引き継げるかl  自動運転車は他の交通参加者とのコミュニケーション

18/02/19

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製品名称

Pro-Pilot,Auto-Pilot,DrivePilot

AutomationSurprise!•  走行している車両は検知:赤信号で停車中の車は見えない•  曲率の大きいカーブの先行車は補足できない•  赤信号、一時停止標識は見えていない。

え!減速しない

の?

え!減速しない

の?

自動運転が・・・

ドライバがどのようにシステムを理解するか自動的に加減速してくれるシステム

なんだ!

•  システムの機能や状態(技術者視点)=f(センサ・データベース・制御アルゴリズム・制御特性)

LIDARの特性:くぼみは分からない:固い・柔かいは分からない:歩行者が分かるのか白線検知の画像センサ能力

いつの3次元地図DB?

どれぐらいゆったり制御するの?

どれぐらい速く反応するの?

大減速度は?

•  ユーザのシステムの機能の理解= g(マスコミ・広告・HMI・使用体験)

システムのイメージ

システムの作動状況の理解

システム挙動の体験

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完全

手動

運転

に対

する

ドラ

イバ

の準

備状

時間

Level2自動運転使用時のドライバ状態

Level3自動運転使用時のドライバ状態

完全手動運転時のドライバ状態

ドライバ状態維持のためのHMI

ドライバ状態遷移のためのHMI

ドライバ状態確認のためのHMI

Level2とLevel3のモード遷移比較とHMI

TOR:TakeOverRequestRtI:RequestToIntervene

自動運転中のドライバ状態(SIP-adusHumanFactor)

20

30

40

50

60

常に⼿動運転 ⾃動⾛⾏

負荷なし

⾃動⾛⾏

+1back

⾃動⾛⾏

+2back

5

10

15

20

25

30

35

常に⼿動運転 ⾃動⾛⾏

負荷なし

⾃動⾛⾏

+1back

⾃動⾛⾏

+2back

手動 なし 低 ⾼認知タスク (N-back)

認知的負荷

瞬き頻度 (times/min)自動運転

サッケード頻度 (times/min)20

40

60

80

100

常に⼿動運転 ⾃動⾛⾏

負荷なし

⾃動⾛⾏

+SuRT易

⾃動⾛⾏

+SuRT難

5

10

15

20

25

30

35

常に⼿動運転 ⾃動⾛⾏

負荷なし

⾃動⾛⾏

+SuRT易

⾃動⾛⾏

+SuRT難

脇⾒タスク (SuRT)

視覚・運動負荷

前⽅視認割合 (%)

サッケード頻度 (times/min)

脇⾒タスク (SuRT)手動 なし 低 ⾼自動運転

認知タスク (N-back)

手動 なし 低 ⾼自動運転

手動 なし 低 ⾼自動運転

脇⾒

認知負荷

Stationary vehicle

回避操作開始

Subject’s vehicle

TOR

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自動運転システムのヒューマンインタフェース技術として

解決すべきこと

•  覚醒度維持–  覚醒度モニタ–  覚醒化・覚醒度維持HMI

•  状況認識支援HMI–  状況表示(周りの車等がどこにいるのか)HMI–  手動への移行時の必要なところへの注意の誘導

•  手動運転への切り替えHMI

自動車運転におけるコミュニケーション・シグナル

•  公式なコミュニケーション・シグナル–  ウィンカー、ブレーキ・ランプ

•  非公式なコミュニケーション・シグナル–  パッシング、ハザードランプ–  車両の車線内位置・挙動–  通常とは異なる加減速度、車間距離–  ハンドジェスチャー、アイコンタクト

交通流は明確なルールとして規定しきれない•  優先の定義:何m離れている車・歩行者まで優先させるべきか•  (どうせ停まるのだから、渋滞しているから)非優先車に譲る

•  行きたいの?行きたくないの?/ 私がいること分かっている?さっさと行って!

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11

21

実路上での信号なし横断歩道での車両挙動と横断行動 (SIP-adus HumanFactor)

B: V

eloc

ity (k

m/h

)

Distance to pedestrian (m)

● B: Started braking / Driver’s decision to yield 〇 Pedestrian : Started crossing

Miscommunication (Pedestrian did not cross)

信号なし 横断歩道

B

左から右に横断 右から左に横断 横断開始せず

•  距離5-15mで、速度は0-15km/h

ドライバ:ブレーキ開始:譲る意図の発現歩行者:横断開始

012345678910

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

非高齢者

高齢者

学童

ライト ライト ライト 先ライト

5km/h 10km/h 15km/h 25km/h→5km/h

25km/h→

10km/h

25km/h→

15km/h

25km/h→

15km/h

25km/h→

15km/h

一定速 減速

認識回数

譲られていると認識 譲られていないと認識

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閉鎖道路での横断判断実験 (SIP-adus HumanFactor)

•  一定速度だと、ごく遅い時(5km/h)なら譲られていると判断. •  明確に減速していると譲られていると判断. •  パッシングライトがあると早めに判断される.

一定速度 減速

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ユーザにとって価値があるのか?-安全と環境負荷低減以外に-

l プラスの側面Ø  高齢者、障害者などの弱者の自立したモビリティ

Ø  移動中での仕事の生産性や効率化、プライバシの確保

Ø  長距離移動をもっと快適で楽しく

l 本当にプラスにできるか? Ø  高齢者や弱者が新しいテクノロジーが使えるか

Ø  車両走行中に運転以外のことをすると車酔いに

Ø  主体的に運転できることの楽しさと誇りが失われる

n  計器・車載表示器の位置(視認性)ü  どこにでもディスプレイを置けば良いものではないü  視角だけでなく、調節も。立体視も?

n  車載機器によるディストラクションü  得られる情報量と視認時間

n  自動運転のヒューマンファクターü  状況認識、システム状態認識支援ü  ドライバ状態コントロールü  外向けHMI

まとめ

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n  電子ディスプレイの動向ü  大画面・どこにでもディスプレイü  高精細ü  立体

おわりに