位相空間論 (2011年1月29日) 10月7日

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位相空間論 (2011 1 29 ) 10 7 1. (X, d X ), (Y,d Y ) する き、 X × Y (x 1 ,y 1 ), (x 2 ,y 2 ) 対して d 1 ((x 1 ,y 1 ), (x 2 ,y 2 )) = (d X (x 1 ,x 2 )) 2 +(d Y (y 1 ,y 2 )) 2 , d 2 ((x 1 ,y 1 ), (x 2 ,y 2 )) = d X (x 1 ,x 2 )+ d Y (y 1 ,y 2 ) める。 (a) (X × Y,d 1 ), (X × Y,d 2 ) いずれ すこ せ。 ヒント : d 1 (d X (x i ,x i+1 ),d Y (y i ,y i+1 )) R 2 ,i =1, 2 R 2 すれ る。 (b) よう (X, d X ), (Y,d Y ) に対して p, q X ×Y に対して、 c 1 d 1 (p, q ) d 2 (p, q ) c 2 d 1 (p, q ) つよう c 1 ,c 2 めよ。 解答 (a). 、対 いずれ d 2 d X ,d Y から したがう。これらについて する。( ぜこ れらが するこ d 1 すに ξ i =(d X (x i ,x i+1 ),d Y (y i ,y i+1 )) R 2 おき、 ように すれ よい。 d 1 ((x 1 ,y 1 ), (x 3 ,y 3 )) = (d X (x 1 ,x 3 )) 2 +(d Y (y 1 ,y 3 )) 2 (d X (x 1 ,x 2 )+ d X (x 2 ,x 3 )) 2 +(d Y (y 1 ,y 2 )+ d Y (y 2 ,y 3 )) 2 = |ξ 1 + ξ 2 |≤|ξ 1 | + |ξ 2 | = d 1 ((x 1 ,y 1 ), (x 2 ,y 2 )) + d 1 ((x 2 ,y 2 ), (x 3 ,y 3 )). ちろん d X ,d Y R 2 による。 (b). a, b 0 して、 a 2 + b 2 (a + b) 2 2(a 2 + b 2 ) りたつから、 c 1 =1,c 2 = 2 して つこ かる。 2. 体を R + す。 F : R + R が凹 ある する。つま り、 t [0, 1], x, y R + に対して F (tx + (1 t)y) tF (x) + (1 t)F (y) (1) たす する。さらに、F F (x)=0 x =0 する。 1

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位相空間論 (2011年1月29日)

10月7日1. (X, dX), (Y, dY )を距離空間とするとき、直積X × Y 上の点 (x1, y1), (x2, y2)に対して

d1((x1, y1), (x2, y2)) =√(dX(x1, x2))2 + (dY (y1, y2))2,

d2((x1, y1), (x2, y2)) = dX(x1, x2) + dY (y1, y2)

と定める。

(a) (X × Y, d1), (X × Y, d2)はいずれも距離空間をなすことを示せ。

ヒント : d1の方は (dX(xi, xi+1), dY (yi, yi+1)) ∈ R2, i = 1, 2にR2の三角不等式を適用すれば計算の手間が減る。

(b) どのような距離空間 (X, dX), (Y, dY )に対しても、任意の二点p, q ∈ X×Yに対して、 c1d1(p, q) ≤ d2(p, q) ≤ c2d1(p, q)が成り立つような定数 c1, c2を具体的に求めよ。

解答

(a). 正値性、対称性はいずれの場合も自明。d2 の三角不等式も dX , dY の三角不等式から直接したがう。これらについての形式的な解答は省略する。(なぜこれらが自明かは必ず自分の頭で理解すること) d1 の三角不等式を示すにはξi = (dX(xi, xi+1), dY (yi, yi+1)) ∈ R2とおき、次のように評価すればよい。

d1((x1, y1), (x3, y3)) =√

(dX(x1, x3))2 + (dY (y1, y3))2

≤√

(dX(x1, x2) + dX(x2, x3))2 + (dY (y1, y2) + dY (y2, y3))2

= |ξ1 + ξ2| ≤ |ξ1|+ |ξ2| = d1((x1, y1), (x2, y2)) + d1((x2, y2), (x3, y3)).

もちろん最初の不等式は dX , dY の、最後の不等式はR2の、三角不等式による。

(b). a, b ≥ 0に関して、a2+b2 ≤ (a+b)2 ≤ 2(a2+b2)がなりたつから、 c1 = 1, c2 =√2に関して問題の不等式が成り立つことが分かる。

2. 非負の実数全体をR+で表す。関数 F : R+ → Rが凹関数であるとする。つまり、任意の t ∈ [0, 1], x, y ∈ R+に対して

F (tx+ (1− t)y) ≥ tF (x) + (1− t)F (y) (1)

満たすものとする。さらに、F は単調非減少で、 F (x) = 0となるのは x = 0

の場合に限るものとする。

1

(a) (X, d)を距離空間とするとき、(X,F d)も距離空間となることを示せ。ただし F d(x, y) = F (d(x, y))とする。

ヒント : 0 < a ≤ bのとき、不等式

F (a+ b)− F (b)

a≤ F (a)− F (0)

a

を示せば十分であることに注意。

(b) f, g, hをR+上の凹関数とし、さらに hは常に正の値を取ると仮定する。このとき、 φ(x) = min(f(x), g(x)), ψ(x) = −1/h(x)で定められる関数φ, ψもそれぞれR+上の凹関数であることを示せ。

(c) (X, d)を距離空間とするとき、

d1(x, y) = min(d(x, y), 1), d2(x, y) =d(x, y)

d(x, y) + 1

で定められる距離 d1, d2に対しても、 (X, d1), (X, d2)は距離空間をなすことを示せ。

解答

(a). F dの正値性は F (x) = 0となるのが x = 0に限ることと F の単調性から F

が非負の値をとることから分かる。対称性は自明だろう。あとは三角不等式を示せばよい。 0 ≤ x < y < zに関する(幾何的には直ちに了解される)不等式

F (y)− F (x)

y − x≥ F (z)− F (x)

z − x≥ F (z)− F (y)

z − y(2)

に注意する。これは不等式 (1)において t = (y − x)/(z − x), x = z, y = x

としたときに得られる関係を書き換えたに過ぎない。0 < a < bであるとき、x = a, y = b, z = a+ bあるいは x = 0, y = a, z = bとし、式 (2)の最左辺と最右辺のみを見ると

F (a)

a≥ F (b)− F (a)

b− a≥ F (a+ b)− F (b)

a

を得る。したがって、0 ≤ a, bのとき、 F (a + b) ≤ F (a) + F (b)が成り立つ。(a = 0の場合はこの不等式は自明であり、 a = bの場合は式 (2)においてz = a + b, y = a = b, x = 0とすればよい。)したがって、dの三角不等式と F

の単調性から F dの三角不等式

F (d(p, r)) ≤ F (d(p, q) + d(q, r)) ≤ F (d(p, q)) + F (d(q, r))

がしたがう。

2

(b). φ(x) = min(f(x), g(x))については t ∈ [0, 1], x, y ∈ R+ に対して、例えばφ(tx+ (1− t)y) = f(tx+ (1− t)y)であるとすると、f の凹性から

φ(tx+ (1− t)y) ≥ tf(x) + (1− t)f(y) ≥ tφ(x) + (1− t)φ(y)

である。もちろんもう一方のケースでは gの凹性を用いることにより φが凹関数であることがしたがう。一方、ψについては直接計算して得られる不等式

(th(x)+(1−t)h(y))((1−t)h(x)+th(y)) = t(1−t)(h(x)−h(y))2+h(x)h(y) ≥ h(x)h(y)

に注意して、不等式 (1)の逆数を取った不等式を組み合わせると

1

h(tx+ (1− t)y)≤ 1

th(x) + (1− t)h(y)≤ t

h(x)+

1− t

h(y)

が得られる。これは ψ = −1/hについての定義不等式 (1)と同値である。

(c). 一次関数は凹関数であるから、(b)よりF1(x) = min(x, 1), F0(x) = −1/(x+1)

は凹関数、したがって F2(x) = x/(x+ 1) = 1− 1/(x+ 1)も凹関数。F1, F2とも単調非減少で F∗(x) = 0となるのは x = 0に限ることは簡単に確かめられる。したがって、(a)から結論を得る。

3

10月14日1. 距離空間 (X, d)の相異なる二点 x, yに対して、d(x,m) = d(y,m) = d(x, y)/2

を満たす点m ∈ X を x, yの中点という。円周 S = R/Zに講義で定めた距離ρ([x], [y]) = inf |ξ − η|; ξ ∈ [x], η ∈ [y]を与えて距離空間とみなす。

(a) S上の二点 x, yに対して中点が複数存在するのはどのような場合か。

(b) 円周 Sからユークリッド空間RN への写像 f で任意の x, y ∈ Sについて|f(x)− f(y)| = ρ(x, y)を満たすものは存在しないことを示せ。Sの代わりに単位球面 Sn ⊂ Rn+1 (n > 0)を考え、「単位ベクトルのなす角」θで距離を与える場合にも同じ結論を証明せよ。

解答

(a). 同値類 [y]は区間 I = [x − 12, x + 1

2)上にただ一つの代表元 y0を持ち、ρを実

現している。(つまり ρ([x], [y]) = |x − y0|) x, y0 の Rにおける中点 z0 ∈ I

は Sにおける [x], [y]の中点 (の一つ)mの代表元である。実際、ρ([x], [y])/2 =

ρ(m, [x])であるから、 Sの三角不等式から ρ(m, [x]) ≥ ρ([x], [y])/2であるが、ρ(m, [x]) ≤ |y0 − z0| = ρ([x], [y])/2から中点の定義の等式が得られる。もしもう一つの中点m′が存在するならば、I に属するm′のただ一つの代表元はz1 = x− (z0 − x)(つまり xに対して、z0と対称の位置にある)で与えられる。ある [y]の代表元 y1に対して、ρ([y],m′) = |y1 − z1| = ρ([x], [y])/2となるはずだが、y0, z0, x, z1の大小関係から y1 6∈ Iである。このとき、

ρ([x], [y])/2 = |y1 − z1| ≥ 1/2− |x− z1| ≥ ρ([x], [y])/2

である。この不等式は y1 = x + 12の場合にのみ等式が成り立つ。つまり、

ρ([x], [y]) = 1/2の場合に限り複数の中点が存在する。

(b). ユークリッド空間の二点 p, qはただ一つの中点 (p+ q)/2を持つ。(実際、mがp, qの中点ならば、 0 = |p − m|2 − |q − m|2 = (p − q, p + q − 2m)であり、|p−m|2 = |p+q

2−m+ p−q

2|2 = |p+q

2−m|2+ |p−q

2|2から、m = (p+q)/2でなけれ

ばならない) f : S → RNが距離を保つならば、(つまり |f(x)− f(y)| = ρ(x, y)

を満たすならば) x, y ∈ Sの中点をmとするとき、f(m)は f(x), f(y)のただ一つの中点と一致する。したがって、 x, yが二つの異なる中点m,m′を持てば、f(m) = f(m′)となり、距離を保つ写像 fの単射性に反するので、(a)から(S, ρ)については結論が従う。この議論は複数の中点をもつ点 x, yの組が存在する場合にはいつでも適用可能である。問いの後半の (Sn, θ)の場合には北極N(0, . . . , 0, 1)と南極 S(0, . . . , 0,−1)の距離が θ(N,S) = πで与えられるので、任意の赤道上の点 (最後の座標成分が xn+1 = 0を満たす点)が中点であることに注意すれば、n > 0の仮定の下で、赤道上に複数の点が存在することにより結論が導かれる。

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2. (a) (X, dX), (Y, dY )を距離空間とする。連続写像 f, g : X → Y に対してx ∈ X; f(x) = g(x)はXの閉集合であることを示せ。

r > 0, p = (x, y) ∈ R2に対して、 Br(x, y) = q ∈ R2; |q − p| < rとする。

(b) ∪α∈RB1(α, 0)と ∪α∈QB1(α, 0)は同じ開集合であることを示せ。

(c) ∪α∈RB1(α, 0)は閉集合だが、 ∪α∈QB1(α, 0)はそうではないことを示せ。

解答

(a). f(x) 6= g(x)となる x ∈ Xに対して、 y ∈ BXr (x) ⇒ f(y) 6= g(y)が成り立つよ

うな r > 0の存在を示せばよい。f, gの連続性から dY (f(x), g(x)) = 2ε > 0に対して r > 0で y ∈ BX

r (x) ⇒ f(y) ∈ BYε (f(x)), g(y) ∈ BY

ε (g(x))を満たすものがとれる。しかし、εの選び方と三角不等式から BY

ε (f(x)) ∩BYε (g(x)) = ∅

なので、冒頭に述べた rの存在が従う。

(b). ともに開円板の和集合なので、開集合であることは明らか。 ∪α∈QB1(α, 0) ⊂∪α∈RB1(α, 0)は自明なので、逆の包含関係さえ示せばよい。ある実数 αに対して、 (x, y) ∈ B1(α, 0)であるならば、r = 1 − |(x − α, y)| > 0であるが、|α− n| < rとなる有理数 nが存在する。三角不等式から (x, y) ∈ B1(n, 0)であるから逆の包含関係が示された。

(c). ∪α∈RB1(α, 0)は集合 S = (x, y) ∈ R2; |y| ≤ 1と一致しているので閉集合。実際、ユークリッド距離の定義から (x, y) ∈ B1(α, 0)ならば、明らかに |y| ≤ 1

であるし、逆に (x, y) ∈ Sならば (x, y) ∈ B1(x, 0)であることも分かる。一方、(x, y) ∈ Sに対して、Br(x, y)は (b)の開集合の点を含むから、とくに Sの点は A = ∪α∈QB1(α, 0)の触点であるが、xが無理数ならば (x, 1) ∈ Sは定義から Aの点ではない。したがって、Aは閉集合でない。

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10月21日1. 距離空間 (X, d)の部分集合Aを部分距離空間とみなす。

(a) Aの部分集合Ωについて、Ωが Aの開集合であることとある (X, d)の開集合 U により Ω = A ∩ U と表されることは同値であることを示せ。

(b) Aが (X, d)の開集合であるとき、Aの開集合Ωは (X, d)の開集合であることを確認せよ。また、この主張の3つの「開集合」を全て「閉集合」に置き換えた主張も正しいことを確認せよ。

(c) Aが (X, d)の閉集合でないとき、Aの閉集合は (X, d)の閉集合になる場合もならない場合もあることを例を挙げて示せ。

解答

(a). ΩがAの開集合であるとすると、定義から任意の x ∈ Ωに対して、BArx(x) =

BXrx(x) ∩ A ⊂ Ωとなるように rx > 0が取れる。従って、

Ω = ∪x∈ΩBArx(x) = ∪x∈Ω(B

Xrx(x) ∩ A) = (∪x∈ΩB

Xrx(x)) ∩ A

である。つまり U = ∪x∈ΩBXrx(x)とすれば、 Ω = A ∩ U となるXの開集合 U

が得られる。逆を示すには x ∈ Ω = A ∩ U なる点に対して、U が Xの開集合であることからBX

r (x) ⊂ U なる r > 0が存在することに注意すればよい。実際BA

r (x) = BXr (x) ∩ A ⊂ U ∩ A = ΩであるからΩはAの開集合となる。

(b). 二つの開集合の交わりは開集合だから、開集合に関する主張は前の問いからすぐに従う。閉集合に関する主張は前の問いを用いて、 Aの閉集合、つまり開集合の補集合がA \ U = A ∩ (X \ U)とXの閉集合X \ U との交わりで書けることに注意すればよい。

(c). (X, d)としてユークリッド空間 (Rn, dRn)をとる。A = B1(0)は閉集合でない。このとき、K1 = B1/2(0)は Aの閉集合でもあり、Xの閉集合でもある。しかし、K2 = B1(1, 0, . . . , 0)∩AはAの閉集合だが、Xの閉集合ではない。(例えば、(1, 0, . . . , 0)はK2のXにおける触点だが、K2には含まれない)

2. 実ベクトル空間 V 上の関数 V 3 x 7→ ‖x‖ ∈ R+が次の三つの条件を満たすとき、‖ · ‖を V 上のノルムという。

(i) 任意の x ∈ V に対して ‖x‖ ≥ 0であり、 ‖x‖ = 0ならば x = 0。

(ii) 任意の a ∈ R, x ∈ V に対して ‖ax‖ = |a|‖x‖。

(iii) 任意の x, y ∈ V に対して ‖x+ y‖ ≤ ‖x‖+ ‖y‖。

(a) V 上のノルム ‖ · ‖に対して、d(x, y) = ‖x− y‖とおくと (V, d)は距離空間をなすことを示せ。

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(b) ‖ · ‖を Rn上のノルムとし、 | · |で Rn上のユークリッドノルムを表す。任意の x ∈ Rnに対して、‖x‖ ≤ C|x|が成り立つような定数 C > 0の存在を示し、関数 f(x) = ‖x‖はRn上のユークリッド距離に関して連続であることを確かめよ。

(c) Rn上のノルムが (a)の距離により定める位相はノルムによらずユークリッド距離による位相と等しいことを示せ。

ヒント : 適当な定数 C ′に対して、(b)と逆向きの不等式 |x| ≤ C ′‖x‖が成り立つことを示せばよい。ユークリッド距離に関する単位球面の点列コンパクト性を用いよ。

解答

(a). (i)から、正値性はよい。 dの対称性も (ii)において a = −1とすればよい。三角不等式は (iii)から従う。

(b). Rnの標準基底を用いて、x = (x1, . . . , xn) = x1e1+ · · ·+xnenと書けば、(ii)と(iii)から ‖x‖ ≤ |x1|‖e1‖+ · · ·+ |xn|‖en‖であるが、 v = (|x1|, . . . , |xn|), w =

(‖e1‖, . . . , ‖en‖) ∈ Rnにシュワルツの不等式を適用すれば、‖x‖ ≤ |w||x|を得るのでC = |w|に対して結論の不等式が成り立つ。また (iii)とこの不等式から

|f(x)− f(y)| ≤ ‖x− y‖ ≤ C|x− y|

となり f はユークリッド距離に関して(リプシッツ)連続関数。

(c). ユークリッド単位球面 Sの点列コンパクト性と連続性から f は S上で最小値mをとるが、 (i)から f は S上で正の値を取るので、mも正である。したがって、x 6= 0に対して、(ii)から

0 < m ≤ f(x

|x|) = ‖ x

|x|‖ =

‖x‖|x|

が従う。つまり、定数をC ′ = m−1と選べばヒントの不等式が従う。ユークリッド距離 d1、ノルム ‖ · ‖による距離 d2の定める位相が一致していることを見るには (b)とヒントの不等式から Bd1

r (p) ⊂ Bd2Cr(p), B

d2r (p) ⊂ Bd1

C′r(p)なる r近傍の包含関係が導かれることに注意すればよい。

7

10月28日1. (a) 実数列S = ai∞i=1は厳密に単調増加であるとする。(つまり、ai < ai+1)

SをRの部分集合と考えてユークリッド距離により(部分)距離空間とみなすとき、 Sが完備距離空間であることと limi→∞ ai = ∞であることは同値であることを示せ。

(b) Xを無限集合とする。X上の距離で完備なものと非完備なものをそれぞれ一つずつ与えよ。

ヒント : いずれもつまらない距離を考えよ。

解答

(a). limi→∞ ai = ∞であるとすると、有界区間 I との交わり S ∩ I は有限個の点 b1, . . . , bk しか含まない。S のコーシー列 xiiは定義からある有界区間 I

に含まれるとしてよいから、これら有限個の Sの点からなる点列である。ε =mini6=j |bi−bj|として、コーシー列の定義から十分大きな i, jについて |xi−xj| ≤ε/2であることに注意すれば、iが十分大きいとき xi = xi+1 = . . . と i以降同じ点を取ることが分かり、とくに xiiが収束列であることが従う。逆に aiが上に有界ならば、 a = limi→∞ aiと収束し、単調性が厳密なので、ai < aとなる。Rの収束列 aiは Sのコーシー列となるが、Rにおける極限 aが Sに属さないので、Sの収束列ではない。

(b). X上の距離を

d(x1, x2) =

1 if x1 6= x2

0 if x1 = x2

とすれば (X, d)が距離空間となることは自明である。異なる二点が距離 1だけ離れているので (a)と同じ理由で、コーシー列 xiは十分大きな iに対して、x∞ := xi = xi+1 = . . . となり、x∞に収束する。非完備なものを作るには、Xの可算無限点列 S = yi∞i=1を取り、

d(x1, x2) =

| 1m− 1

n| if x1 = ym, x2 = yn ∈ S

0 if x1 = x2

1 otherwise

とする。(X, d)が距離空間をなすことは容易に確認できる。実際三角不等式d(x1, x3) ≤ d(x1, x2) + d(x2, x3)は x1, x2, x3 ∈ Sの場合Rの三角不等式に帰着し、常に d(x1, x3) ≤ 1であることに注意すると、他の場合は自明な不等式となる。このとき、yiはコーシー列であるが、収束列でない。実際、X \ Sの点と Sの点は距離 1だけ離れているので、極限 y∞が存在するならば、y∞ ∈ S

でなければならないが、y∞ = ymとすれば、d(yi, y∞) → 1/mとなるので収束に反する。

8

2. G ⊂ Z2を二次元整数ベクトルの集合とする。このとき、 R2上の関係 ∼をx ∼ y ⇐⇒ x− y ∈ Gで定義する。

(a) Gがベクトルの和と差について閉じていることは関係∼が同値関係であるための必要十分条件であることを示せ。またこのとき、

ρ([x], [y]) = inf |ξ − η|; ξ ∈ [x], η ∈ [y]

で与えられる距離により (R2/ ∼, ρ)は距離空間をなすことを確かめよ。

以下ではGは (a)の条件を満たしているものとする。 (a)の距離空間 (R2/ ∼, ρ)について以下の問いに答えよ。

(b) (R2/ ∼, ρ)は完備距離空間であることを示せ。ヒント : π : R2 → R2/ ∼を自然な射影とするとき、 πを例えばBR2

1/4(x)

に制限すると距離を保つ写像となることをまず確かめよ。

(c) Gが実ベクトル空間 R2を生成することは (R2/ ∼, ρ)が点列コンパクトであるための必要十分条件であることを示せ。

解答

(a). (空でない)Gが差について閉じていれば、g ∈ Gならば 0 = g − g ∈ G、−g = 0 − g ∈ Gであることに注意。したがって x − x = 0 ∈ Gから反射律、x−y ∈ G =⇒ y−x = −(x−y) ∈ Gから対称律が従う。推移律は和について閉じていることからx−y ∈ G, y−z ∈ G =⇒ x−z = (x−y)+(y−z) ∈ Gに注意すればよい。逆を示すには、g1, g2 ∈ Gに対して、x1 = g1+ g2, x2 = g1, x3 = 0

とおくと x1 ∼ x2, x2 ∼ x3だから推移律により、x1 ∼ x3、つまり g1 + g2 ∈ G

を得るので、和について閉じている。対称律を用いれば、 −g2 ∈ G、したがって g1 − g2 ∈ G、が従うので差について閉じていることも分かる。 (R2/ ∼, ρ)が距離空間であることを確かめるには G = Z2の場合に講義で行った議論と全く同じ議論をすればよい。

(b). p = (p1, p2) ∈ R2、I = (p1 − 1/2, p1 + 1/2)× (p2 − 1/2, p2 + 1/2)とするとき、R2/ ∼の同値類はIにたかだか一つしか代表元を含まない。とくに、q ∈ BR2

1/2(p)

とすると、|q− p| = ρ([p], [q]) = ρ(π(p), π(q))と距離 ρを実現する。BR2

1/4(p)の二点 x, yは |x− y| < 1/2を満たすので、とくに、 ρ(π(x), π(y)) = |x− y|である。また ρの定義から ρ([x], [p]) < 1/4を満たす同値類 [x]は |x0 − p| < 1/4となる代表元 x0を含む。したがって、 πをBR2

1/4(p)に制限すると等長写像 (距離を保つ全単射)

f = π|BR2

1/4(p)

: BR2

1/4(p) → BR2/∼1/4 (π(p))

が得られる。xiiが R2/ ∼のコーシー列ならば定義からある p ∈ R2が存在して十分大きな iについて xi ∈ B

R2/∼1/4 (π(p))が成り立つ。このとき、上の等長

9

写像 f を用いて代表元をとり、yi = f−1(xi)とすると、 yiはR2のコーシー列となるが、R2の完備性から yi → y∞と収束する。このとき、πは連続なので、xi = π(yi)も π(y∞)に収束する。

(c). Gが基底g1, g2を含んでいるとする。このとき、K = ag1 + bg2 ∈ R2; a, b ∈ [0, 1]とすると、任意の [x] ∈ R2/ ∼はKに属する代表元を含む。またKは有界閉集合 [0, 1] × [0, 1]の線型同型による像であるから、点列コンパクトであることに注意して、R2/ ∼の任意の点列 xiiに対して、π(yi) = xiとなるようにyi ∈ Kを選ぶと、yiは収束部分列 yiαを含むことが分かる。 πは連続なので、xiα = π(yiα)も収束部分列となる。逆に、 Gが基底を含まないならば、Gの張る線型部分空間 Lは R2とは異なる。同値類 [0]は Lの元からなるので、Lに直交するR2の単位ベクトルを vとすると、ρ([av], [0]) ≥ |a|である。したがって例えば、 xn = [nv]とすると ρ(xn, [0]) → ∞となり、xnnは収束部分列を持たない。

10

11月4日1.

∑∞i=1 |ai|2 <∞を満たす実数列A = ai∞i=1全体のなす集合を l2で表す。A ∈ l2

に対して、

‖A‖2 =

√√√√ ∞∑i=1

|ai|2 (3)

と定め、B = bi∞i=1に対して、 A−B = ai − bi∞i=1と書くことにする。

(a) A,B ∈ l2 であるときは A − B ∈ l2 であることを示し、 d2(A,B) =

‖A−B‖2とおくとき、 (l2, d2)は距離空間をなすことを示せ。

(b) l2の部分集合を

R∞ =ai∞i=1 ∈ l2; 自然数N が存在して i > N =⇒ ai = 0

で定める。R∞は (l2, d2)の稠密部分集合であることを示せ。

(c) (l2, d2)の完備性を示せ。

解答

(a). シュワルツの不等式からN によらず、

(fN(A,B))2 :=N∑i=1

|ai − bi|2 ≤ 2N∑i=1

|ai|2 + |bi|2 ≤ 2‖A‖22 + 2‖B‖22

であるから、N → ∞とするとA − B ∈ l2が従う。d2の正値性、対称性は明らか。RN の三角不等式から fN(A,C) ≤ fN(A,B) + fN(B,C)なので、再びN → ∞の極限を取って d2の三角不等式も従う。

(b). A = ai ∈ l2 とする。このとき、∑∞

i=1 |ai|2 < ∞なので、ε > 0に対してある N が存在して、

∑∞i=N |ai|2 ≤ εである。したがって、 i < N のと

き、bi = ai、i ≥ N のとき、bi = 0とすると、 B = bi∞i=1 ∈ R∞であり、d2(A,B)2 =

∑∞i=N |ai|2 ≤ εとなるから、R∞の稠密性が従う。

(c). l2のコーシー列 Ajj の収束を示せばよい。 Aj = ajii ∈ l2とする。Aj がコーシー列だから、 ε > 0に対して十分大きな j < kを選ぶと i ≤ N に対して、

|aji − aki |2 ≤N∑i=1

|aji − aki |2 ≤ (d2(Aj, Ak))2 < ε (4)

である。式 (4)の最左辺と最右辺を見ると任意の iについて、ajij は実コーシー列であることが分かるので Rの完備性から各項の極限 a∞i = limj→∞ aji の存在が分かる。極限の数列をA∞ = a∞i iとする。次に式 (4)において k → ∞

11

の極限を取ると十分大きな jに対して∑N

i=1 |aji − a∞i |2 ≤ εが分かる。さらに

N → ∞とすると∞∑i=1

|aji − a∞i |2 ≤ ε (5)

が従う。とくにAj −A∞ ∈ l2であるから、 (a)によりAj ∈ l2から A∞ ∈ l2が従う。式 (5)は l2における収束Aj → A∞の定義そのものであるから Ajが l2

の収束列であることが従う。

2. (X, dX), (Y, dY )を距離空間とする。φ : (X, dX) → (Y, dY )が位相同型写像であり、しかも φ, φ−1が一様連続であるとき、φを一様位相同型写像といい、このとき (X, dX)と (Y, dY )は一様位相同型であるという。

(a) 完備距離空間と一様位相同型な距離空間もまた完備であることを確かめよ。また、距離空間 (X, dX)と (Y, dY )が一様位相同型であるとき、それぞれの完備化 (X, dX)と (Y , dY )も一様位相同型であることを確かめよ。

R2とR2の単位開円板Dはいずれもユークリッド距離により距離空間とみなす。また単位球面 S2 ⊂ R3から一点N を除いた空間 S2 \ NはR3の部分距離空間とみなす。

(b) R2 と S2 \ N、R2 と Dの間にそれぞれ具体的に位相同型写像を構成せよ。

(c) R2、D、S2 \ Nはどの二つも一様位相同型ではないことを示せ。

解答

(a). φ : (X, dX) → (Y, dY )が一様位相同型であるとする。(X, dX)が完備距離空間であるとき、Y のコーシー列 yiiを一様連続写像φ−1で写して得られる Xの点列 φ−1(yi)iはコーシー列である。(X, dX)の完備性から φ−1(yi)iは収束列であるが、これを連続写像 φで写して得られる元の点列 yiiは収束列である。したがって、(Y, dY )も完備であることが従う。完備化に関する結論を見るには講義で証明した次の写像の拡張定理を用いる「距離空間 (Z, dZ)の稠密部分集合 Z0上で定義された完備距離空間 (W,dW )への一様連続写像 f0 : Z0 → W

はZ上の一様連続写像 f : Z → W に一意的に拡張する。」

X0, Y0をそれぞれ、X, Y の稠密部分集合で、X,Y と等長的なものとする。一様位相同型 φ : X → Y は一様位相同型 ψ : X0 → Y0を導くが、写像の拡張定理により、ψは一様連続な F : X → Y に拡張し、同様に逆写像 ψ−1も一様連続なG : Y → Xに拡張する。F G,G F はそれぞれ稠密部分集合X0, Y0に恒等写像 idX0 , idY0を導くので、拡張の一意性から F G = idX , G F = idY

となる。つまり、一様連続写像 F,Gは互いに逆写像となる全単射である。したがって、一様位相同型写像 F により (X, dX)と (Y , dY )は一様位相同型。

12

(b). 位相同型 φ : R2 → S2 \ Nは例えば立体射影を用いて、

φ(x, y) = (2x

1 + x2 + y2,

2y

1 + x2 + y2,x2 + y2 − 1

1 + x2 + y2) ∈ S2 \ N ⊂ R3

で与えることができる。この具体的な表示から φが連続であることは明らかで、逆写像も具体的に φ−1(x, y, z) = (x/(1− z), y(1− z))と表示すればこちらの連続性もすぐに分かる。位相同型 ψ : D → R2を構成するには例えば

ψ(x, y) = (x

1−√x2 + y2

,y

1−√x2 + y2

)

とすればよい。(原点から距離 rの点は原点から距離 r/(1 − r)の点に写される)逆写像も ψ−1(x, y) = (x/(1+

√x2 + y2), y/(1+

√x2 + y2))で具体的に与

えられるので、ψ, ψ−1の連続性は明らか。

(c). (a)によれば完備距離空間 R2と一様位相同型な距離空間は完備であるはずだが、D,S2 \ Nはいずれもユークリッド空間の閉集合でない部分集合をの部分距離空間とみなしているのでR2と一様位相同型ではない。 S2 \ NとD

が一様位相同型でないことを見る。これらの空間はいずれもユークリッド空間の部分集合だから、完備化は閉包を取ることによりユークリッド空間の閉集合 S2, Dで与えられ、 S2 \ N, Dはそれぞれ稠密部分集合として含まれている。一様位相同型写像 φ : S2 \ N → Dが存在すれば、(a)の議論によりこれらの完備化の間の一様位相同型 φ : S2 → Dに拡張する。したがって、φはS2 \ Nの補集合と Dの補集合、つまり NとD \Dの間に全単射を導くことになるが、 D \Dは一点からなる集合でないので矛盾。

13

11月11日1. Xは (二点以上を含む)集合とする。

(a) Xの相異なる有限個の部分集合 F0, . . . , Fkが ∅ = F0 ⊂ F1 ⊂ · · · ⊂ Fk =

X を満たすように与えられている。このとき、部分集合族O = Fiki=0

はX 上の位相であることを示せ。また位相Oに関するX 上の連続関数はすべて定数関数であることを示せ。

(b) X上の位相O′は(X自身と ∅を含めて)ちょうど 4個の部分集合からなるものとする。定数関数以外にO′に関する連続関数が存在するとき、O′

はどのような位相か。具体的に O′を記述せよ。

(c) X 上の位相でちょうど 4個の部分集合からなるものが (b)の性質を持たないならば、 (a)のように与えられる位相であることを示せ。

解答

(a). Fiの包含関係から任意の添字集合 Iに対して、 a = maxi∈I i, b = mini∈I iとするとき、 ∪i∈IFi = Fa, ∩i∈IFi = Fbは明らかだろう。したがって、Oが位相であることはよい。(X,O)上の連続関数 f が定数関数でなければ、f(x) < f(y)

となる x, y ∈ X が存在する。 ε = (f(y) − f(x))/2とすると、開区間 I1 =

(f(x) − ε, f(x) + ε), I2 = (f(y) − ε, f(y) + ε)は交わらない。したがって、二つの空でない開集合 U1 = f−1(I1), U2 = f−1(I2)も交わらない。しかし、Oに属する空でない二つの部分集合は常に空でない交わりを持つのでこれは矛盾。

(b). A,Bを相異なるX の空でない真部分集合とし、 O′ = ∅, A,B,Xと書けているものとする。 (a)の議論から、A∩B = ∅でなければならない。 A∪BはA,Bを真に含む開集合であるからXと一致せざるをえない。つまり、BはA

の補集合でなければならない。したがって、O′はO′ = ∅, A,X \A,Xの形をしているはずで、このように与えられる部分集合族がX上の位相であることは簡単に確かめられる。実際、A ⊂ O′に対して、和集合 ∪U∈AU はX ∈ Aまたは A,X \ A ∈ Aの場合はXと一致し、そうでない場合はA ∈ AならばA、X \A ∈ AならばX \A、いずれでもなければ ∅と一致し、和集合に関する位相の公理が確かめられる。O′は補集合を取る操作について閉じているので同時に交わりに関する公理も確かめたことになる。また、A上で 1、X \ A上で 0となる関数を f とすると任意の部分集合 I ⊂ Rについて f−1(I) ∈ O′なのでとくに f は連続で、定数でない連続関数の存在も分かる。

(c). (b)と同じ記号を用いる。A∩B = ∅でないとすると、 A∩B = AかBでなければならない。前者ならばA ⊂ B後者ならばB ⊂ Aであるから結論を得る。

2. V を(有限次元とは限らない)ベクトル空間とし、V 上の内積 (, )V、つまり次の条件を満たす写像 V × V → Rが与えられているものとする。

14

(i) x ∈ V に対して、(x, x)V ≥ 0で (x, x)V = 0となるのは x = 0の場合に限る。

(ii) x, y ∈ V に対して、(x, y)V = (y, x)V。

(iii) x, y, z ∈ V, a, b ∈ Rに対して、 (x, ay + bz)V = a(x, y)V + b(x, z)V。

このとき、‖x‖ =√(x, x)V、d(x, y) = ‖x− y‖とおく。

(a) (V, d)は距離空間であることを確かめよ。

(V, d)の閉集合Kは凸集合であるとする。つまり、任意の二点x, y ∈ K, t ∈ [0, 1]

に対して、常に tx+ (1− t)y ∈ Kが成り立つものとする。 p ∈ V を固定して、ρ(x) = d(x, p)、a = infx∈K ρ(x)とおく。

(b) ε > 0、x, y ∈ Kとする。 ρ(x)2 ≤ a2 + ε2, ρ(y)2 ≤ a2 + ε2であるとき、d(x, y) ≤ 2εであることを示せ。

ヒント : x, yを通る V の直線上の点 tx+ (1− t)yで ρ2は tの二次式で与えられ、Kの凸性から、x, yを結ぶ線分上では a ≤ ρである。

(c) (V, d)が完備距離空間であるとき、ρ(x) = aとなる x ∈ Kが存在することを示せ。

解答

(a). dの正値性は内積の最初の性質から、対称性は他の性質からの直接の帰結である。三角不等式はユークリッド空間の場合と全く同様に示すことができる。t ∈ R, x, y ∈ V に対して、内積の性質を用いて

0 ≤ ‖tx+ y‖2 = t2‖x‖2 + 2t(x, y)V + ‖y‖2

と展開し、この二次式の判別式を見ればシュワルツの不等式 |(x, y)V | ≤ ‖x‖‖y‖が従う。シュワルツの不等式から (‖x‖ + ‖y‖)2 − ‖x + y‖2 ≥ 0を得て、三角不等式が従う。

(b). z(t) = tx+ (1− t)y = y + t(x− y)とする。直接計算して、

ρ(z(t))2 = ‖z(t)− p‖2 = t2‖x− y‖2 + 2t(y − p, x− y) + ‖y − p‖2

である。Kの凸性から t ∈ [0, 1]においては z(t) ∈ Kであり、 t = 0, 1では仮定から ρ2 ≤ a2 + ε2であり、二次関数 ρ(z(t))2は凸関数だから、t ∈ [0, 1]では

a2 ≤ ρ(z(t))2 ≤ a2 + ε2 (6)

が成り立つ。(x 6= yと仮定してよいので) s = t‖x− y‖とおくと、適当な係数 b, cに対して f(s) := ρ(z(t))2 = s2 +2bs+ c = (s+ b)2 + c− b2と書けるが、tの区間 [0, 1]に対応する sの区間 I = [0, ‖x − y‖]が放物線の軸 s = −bを含

15

む場合と含まない場合に分けて考える。 −b ∈ Iとする。式 (6)から I上ではf(s)− f(−b) ≤ ε2であるので、とくに I ⊂ [−ε− b,−b+ ε]である。これから結論の不等式が従う。−b 6∈ Iの場合、対称性から b > 0、つまり区間 Iは軸の右にあるものと仮定してよい。このとき、式 (6)から

ε2 ≥ ρ(z(1))2 − ρ(z(0))2 = ‖x− y‖2 + 2b‖x− y‖ ≥ ‖x− y‖2

となるのでやはり結論の不等式が(余裕で)成り立つ。

(c). 点列 xii ⊂ K を ρ(xi) → aとなるように選ぶ。このとき、(b)から xiiはコーシー列となる。Kは完備距離空間 (V, d)の閉集合なので、xiはあるKの点 xを極限とする収束列である。ρは三角不等式から連続関数なので、極限x ∈ Kで ρ(x) = aが成り立つ。

16

11月18日1. (X, d)をコンパクト距離空間とする。一点 p ∈ Xからの距離の最大値を ρ(p) =

maxx∈X d(p, x)とおく。

(a) 関数 ρはリプシッツ関数であることを示せ。

diamX = maxp∈X ρ(p), radX = minp∈X ρ(p)をそれぞれ (X, d)の直径、半径という。

(b) radX ≤ diamX ≤ 2 radXを示せ。

(c) R3の単位ベクトルのなす角 θを距離関数とする距離空間 (S2, θ)の直径と半径を求めよ。

(d) (S2, θ)上の一点をN とする。閉集合Xr = Br(N) ⊂ S2の(部分距離空間としての)直径、半径を求め、r ∈ (0, π]に対する比 radXr/ diamXrの挙動を調べよ。

解答

(a). p, q ∈ Xとする。コンパクト性と距離関数の連続性から ρ(p) = d(p, x)となるような x ∈ Xが存在する。このとき、ρの定義と三角不等式から

ρ(p)− d(p, q) = d(p, x)− d(p, q) ≤ d(q, x) ≤ ρ(q)

をうる。つまり、ρ(p)− ρ(q) ≤ d(p, q)。p, qの立場を入れ替えるとリプシッツ連続性 |ρ(p)− ρ(q)| ≤ d(p, q)を得る。

(b). radX ≤ diamXは定義から自明。一方、コンパクト性とρの連続性からρ(p) =

radX となる p ∈ X を選ぶと、任意の x, y ∈ X について d(x, y) ≤ d(x, p) +

d(p, y) ≤ 2 radXが成り立つ。したがって、定義からdiamX ≤ 2 radXが従う。

(c). 対称性からρが定数関数となることが分かるので、diam = radであり、diamS2 =

radS2 = πであることはすぐに分かる。

(d). r ≥ πの場合Xr = S2なので、この場合は直径、半径とも πである。r ≤ π/2

の場合を考える。 ρ(N) = rであるが、これが ρの最小値を与える。(実際 N

以外の点 P ∈ Xrを取るとN,P を通る大円は境界 ∂Xrと二点Q,Rで交わるが、例えば弧PQがNを含むならば、 θ(P,Q)は rより大きい。) Nを通る同じ大円上にある境界 ∂Xr上の 2点の距離は 2rであるから、(b)からこれが直径を与える。つまりこの場合 diamXr = 2r, radXr = rである。 π/2 ≤ r ≤ πの場合、例えば赤道上の二点 x,−xの距離を考えれば diamXr = πは明らかだろう。半径に関する考察は上とほぼ同様に radXr = r。(この場合例えばXrに含まれる弧 PQの長さが πを越える場合もある。このとき、θ(P,Q)は rより

17

小さいかもしれないが、弧 PQ上に θ(P, S) = πとなる点 Sが存在するから、ρ(N) = rが ρの最小を与えることには変わりない)したがって結論は

radXr =

r if 0 < r ≤ π,

π otherwise, diamXr =

2r if 0 < r ≤ π

2,

π otherwise,

radXr

diamXr

=

1/2 if 0 < r ≤ π

2,

r/π if π2≤ r ≤ π.

2. (X, d)を距離空間とする。Gを等長写像 (X, d) → (X, d)の空でない集合とし、合成を積として群をなすものとする。つまり、

φ, ψ ∈ G =⇒ ψ φ ∈ G, φ−1 ∈ G

を満たすものとする。X上に同値関係∼を

x ∼ y ⇐⇒あるφ ∈ Gが存在して y = φ(x).

により与えるとき、同値類 [x], [y] ∈ X/ ∼に対して、

ρ([x], [y]) := inf d(ξ, η); ξ ∈ [x], η ∈ [y]

と定める。

(a) ∼が同値関係であることと (X/ ∼, ρ)が ρ([x], [y]) = 0 =⇒ [x] = [y]以外の距離空間の公理を満たすことを確かめよ。

(b) (X/ ∼, ρ)が距離空間をなすならば、∼に関する任意の同値類は (X, d)の閉集合であることを示せ。

(c) (X, d)がコンパクトで、∼に関する任意の同値類が (X, d)の閉集合であるならば (X/ ∼, ρ)は距離空間をなすことを示せ。

解答

(a). ∼が反射律を満たすことは φ, ψ ∈ Gに対して、恒等写像 idX = φ φ−1 がGに属することから x ∼ id(x) = xにより従う。対称律は φ−1 ∈ Gから、x ∼ y = φ(x) ⇒ y ∼ x = φ−1(y)が従う。推移律は ψ φ ∈ Gから x ∼ y =

φ(x), y ∼ z = ψ(y) ⇒ x ∼ z = ψ φ(x)と従う。距離空間の公理に関してはρ([x], [y]) ≥ 0と対称性は定義から自明。三角不等式を示すには任意に ε > 0を取ると、infの定義から、 ρ([x], [y]) ≥ d(ξ, η) − ε, ρ([y], [z]) ≥ d(η′, ζ) − εとなるように ξ ∈ [x], η, η′ ∈ [y], ζ ∈ [z]を選ぶことができる。定義により適当な φ ∈ Gに対して、η′ = φ(η)であるから、φが等長写像であることに注意して、 d(η′, ζ) = d(φ(η), ζ) = d(η, φ−1(ζ))であり、φ−1(ζ) ∈ [z]である。つまりη′, ζを η, φ−1(ζ)に取り直して、最初から η = η′であると仮定してよい。このとき、dの三角不等式から

ρ([x], [y]) + ρ([y], [z]) ≥ d(ξ, η) + d(η, ζ)− 2ε ≥ d(ξ, ζ)− 2ε ≥ ρ([x], [z])− 2ε

を得る。ε > 0は任意であったから ρの三角不等式を得る。

18

(b). もしある同値類 [x]が閉集合でなければ [x]の触点yで [x]に属さないものがある。このとき、触点の定義から infξ∈[x] d(ξ, y) = 0であるが、これは ρ([x], [y]) = 0

を意味するので、(X, ρ)は距離空間をなさない。

(c). 同値類 [x], [y]がコンパクト距離空間の閉集合ならばこれらの部分距離空間もやはりコンパクトである。したがって、ξ ∈ [x]を固定するとき、コンパクト空間[y]上の連続関数 [y] 3 η 7→ d(ξ, η)はある点 η0 ∈ [y]で最小値 f(ξ)を取る。さらに、13.(a)と同様に三角不等式 f(ξ′) ≤ d(ξ′, η0) ≤ d(ξ′, ξ) + f(ξ)から、f(ξ)は連続でコンパクト空間 [x]上で最小値を取る。したがって、 ρ([x], [y])の inf

は適当な ξ ∈ [x], η ∈ [y]に対して実現するので、ρ([x], [y]) = 0 ⇒ [x] = [y]が従う。

19

11月25日1.

∑∞n=1 |an|2 <∞を満たす実数列 an∞n=1全体の集合 l2上に

d2(ann, bnn) :=

√√√√ ∞∑n=1

|an − bn|2

で距離を定めると (l2, d2)は完備距離空間をなす。

(a) (l2, d2)の単位閉球体B1(0)は(部分距離空間として)コンパクトでないことを示せ。ただし、0 ∈ l2は全ての項が 0である実数列を表す。

(b) l2の部分集合

X =

an∞n=1 ∈ l2;

∞∑n=1

n2|an|2 <∞

は (l2, d2)の閉集合ではないことを示せ。

ヒント : Xが稠密部分集合であることを見ればよい。

(c) l2の部分集合

Y =

an∞n=1 ∈ l2;

∞∑n=1

n2|an|2 ≤ 1

はコンパクトであることを示せ。

ヒント : ann ∈ Y の各項は |an| ≤ 1/nを満たすことと∑

n 1/n2 < ∞

に注意して、 Y が全有界な閉集合であることを示せばよい。他のやり方としては対角線論法を適用して直接点列コンパクト性を示す方法もある。

解答

(a). δijをクロネッカーのデルタとする。つまり、 δjj = 1、j 6= nのとき、δjn = 0とおく。このとき、Aj = δjnn ∈ l2とすると、l2の点列 Ajjは d2(0, A

j) = 1

を満たし、 B1(0)の点列となる。しかし j 6= kのとき、 d2(Aj, Ak) =

√2であ

るから、Ajのいかなる部分列も収束部分列とはならない。したがって、B1(0)

は点列コンパクトでない。

(b). A = ann ∈ l2が十分大きな nに対して、an = 0を満たしているならば、明らかにA ∈ Xであるが、そのような数列全体R∞は l2の稠密部分集合であるので、Xもそうである。一方 1/nn 6∈ Xであるから、 Xは閉集合ではない。

(c). YN = ann ∈ Y ; an = 0 if n > Nとすると、明らかに YN はRN の有界閉集合 KN =

(x1, . . . , xN) ∈ RN ;

∑Nn=1 n

2x2n ≤ 1と等長的であるからコ

ンパクトである。A = ann ∈ Y に対して、 n ≤ Nならば、a′n = an、 n > N

20

ならば a′n = 0と定めると、 AN = a′nn ∈ YN であり、ヒントの不等式に注意すると

d2(A,AN)2 =

∞∑n=N+1

|an|2 ≤∞∑

n=N+1

1

n2

が分かる。したがって級数∑

n 1/n2 の収束に注意すると、ε > 0に対して、

N を十分大きくとるとき、A ∈ Y によらず (*) d2(A,AN) ≤ ε/2となることが分かる。また YN はコンパクトだから YN 上に有限個の点からなる ε/2-net

Z を選ぶことができるが、不等式 (*)から Z は Y の ε-netでもあるので、 Y

が全有界であることが従う。Y が閉集合であることを見るには、補集合が開集合であることを見ればよい。A = ann ∈ l2が

∑∞n=1 n

2a2n > 1(左辺は∞でもよい)を満たしているならば、適当な ε > 0と十分大きな N に対して、F (a1, . . . , aN) :=

∑Nn=1 n

2a2n ≥ 1 + εである。このとき、 B = bnn ∈ Bl2

δ (A)

ならば、 (b1, . . . , bN) ∈ BRN

δ (a1, . . . , aN)だから、F をRN上の関数とみなしたときの連続性から、εに対して、δ > 0を十分小さく選ぶと、F (b1, . . . , bN) > 1

である。とくにB 6∈ Y となり補集合が開集合であることが従う。

2. (X,O)をコンパクト位相空間、X 上の連続関数全体のなす集合を C(X)とする。このとき、f, g ∈ C(X)に対して、

d∞(f, g) := maxx∈X

|f(x)− g(x)|

と定める。

(a) (C(X), d∞)は完備距離空間をなすことを確かめよ。

(b) X が無限集合で、位相OがX 上のある距離によって与えられているとき、(C(X), d∞)の単位閉球体 B1(0)は (部分距離空間として)コンパクトではないことを示せ。ただし、0 ∈ C(X)は定数関数 0を表す。

(c) Xが無限集合だが、(C(X), d∞)の単位閉球体 B1(0)がコンパクトとなるような (X,O)の例を与えよ。

解答

(a). まず (C(X), d∞)が距離空間をなすことを確かめる。対称性と d∞(f, g) ≥ 0は自明、最大値が実現することから d∞(f, g) = 0は f = gを導く。三角不等式も各点 x ∈ Xで |f(x)− h(x)| ≤ |f(x)− g(x)|+ |g(x)− h(x)|が成り立つことから従う。完備性もXが距離空間の場合と全く同様である。まず連続関数列fiの一様収束極限 f が連続であることを見る。 ε > 0を任意に固定して、f のx ∈ X における連続性を見る。一様収束の定義から十分大きなN に対して、supy∈X |f(y) − fN(y)| ≤ ε/3であるが、fN の連続性から、xの適当な近傍 U

が存在して、 y ∈ U ならば |fN(x) − fN(y)| ≤ ε/3である。このとき、y ∈ U

ならば

|f(x)−f(y)| ≤ |f(x)−fN(x)|+|fN(x)−fN(y)|+|fN(y)−f(y)| ≤ε

3+ε

3+ε

3= ε

21

となるので、fの連続性が従う。fi ∈ C(X)が d∞に関するコーシー列であるとき、任意のx ∈ Xに対して、 |fi(x)−fj(x)| ≤ d∞(fi, fj)であることから、各点での値は実コーシ列となるので各点収束極限 f∞が存在する。 ε > 0に対して、十分大きな iを取ると (j → ∞の極限をとり) xによらず、|fi(x)− f∞(x)| ≤ ε

であるから、 f∞は一様収束極限であり、連続。もちろん、この不等式は収束fi → f∞ ∈ (C(X), d∞)の定義そのものでもある。

(b). コンパクト距離空間 (X, d)の無限部分集合は集積点を持つ。したがって、X自身が無限集合ならば、 Xの集積点 p ∈ Xが存在する。このとき、X上の連続関数列を fn(x) = χn(d(p, x))で定める。ただし、χnは

χn(a) =

1 if a ≤ 1/n

2− na if 1/n ≤ a ≤ 2/n

0 otherwise

で定められる R上の連続関数である。定義から fn ∈ BC(X)1 (0)である。 pは

集積点なので、任意のmに対して、d(p, q) ≤ 1/mで pと異なる q ∈ X が存在する。とくに、 fm(q) = 1である。p 6= qなので nを十分大きくとると、2/n ≤ d(p, q)とできるが、このとき、fn(q) = 0である。つまり、任意のmに対して、Nが存在して、n > Nならば、 d∞(fm, fn) ≥ 1となる。したがって、

fnは収束部分列を持たない。とくに、BC(X)1 (0)はコンパクトでない。

(c). 無限集合X上に密着位相Oを与えれば、(X,O)上の連続関数は定数関数に限る。したがって、(C(X), d∞)は (R, dR)と等長的になるので、単位閉球体はコンパクト。

22

12月2日1. (X,OX), (Y,OY )を位相空間とする。またOX ,OY によりX × Y 上に定まる直積位相をOX ×OY とする。

(a) K1 ⊂ (X,OX), K2 ⊂ (Y,OY )がいずれも閉集合であるとき、K1×K2 ⊂X × Y もOX × OY に関して閉集合であることを確かめ、フレッシェ空間の直積はフレッシェ空間であることを導け。

(b) O′をX × Y 上の位相とする。射影

π1 : (X × Y,O′) 3 (x, y) 7→ x ∈ (X,OX),

π2 : (X × Y,O′) 3 (x, y) 7→ y ∈ (Y,OY )

がともに連続であるとき、O′は直積位相OX × OY よりも強い位相であることを確認せよ。

(c) OX ,OY がそれぞれX, Y 上の距離 dX , dY により定まる位相であるとき、X × Y 上の距離

dX×Y ((x1, y1), (x2, y2)) =√(dX(x1, x2))2 + (dY (y1, y2))2

により定まる位相は直積位相OX ×OY と一致することを示せ。

解答

(a). K1 ×K2の補集合は (X \K1 × Y ) ∪ (X × Y \K2)であるが、直積位相の定義からこれはOX ×OY の開基の元 X \K1 × Y,X × Y \K2の和集合なので開集合。したがって、K1×K2は閉集合となる。とくに、一点 x ∈ X, y ∈ Y からなる集合が閉集合ならば、X × Y の一点からなる部分集合 (x, y) = x × yは閉集合となり、最後の主張も従う。

(b). X,Y の開集合U, V を取るとき、射影の連続性から π−11 (U) = U ×Y, π−1

2 (V ) =

X × V はいずれもO′の開集合。したがって、U × V = U × Y ∩X × V ∈ O′

となるので、OX ×OY ⊂ O′が従う。

(c). dX×Y により定まる位相をO′とする。このとき、

dX(π1((x1, y1)), π1((x2, y2))) = dX(x1, x2) ≤ dX×Y ((x1, y1), (x2, y2))

から射影π1は連続、同様にπ2も連続なので (b)から OX×OY ⊂ O′が従う。逆の包含関係を示すには、BdX×Y

r (p1, p2)r>0が一点p = (p1, p2)のO′に関する基本開近傍系であることと BdX

r/√2(p1)×BdY

r/√2(p2) ⊂ B

dX×Yr (p1, p2)であることに注

意する。U ∈ O′は適当な r(p1, p2) > 0に対して、U = ∪(p1,p2)∈UBdX×Y

r(p1,p2)(p1, p2)

と書けるから上の注意から U ∈ OX ×OY である。

2. (a) コンパクト距離空間は第二可算公理を満たすことを示せ。

23

(b) 位相空間 (X,O)が可算個のコンパクト部分集合の族 Ki∞i=1 の和集合X = ∪∞

i=1Kiで書けているとき、(X,O)を σ-コンパクトという。σ-コンパクト距離空間は第二可算公理を満たすことを示せ。

(c)∑∞

i=1 |ai|2 <∞を満たす実数列全体のなす集合 l2を距離

d2(ai∞i=1, bi∞i=1) =

√√√√ ∞∑i=1

|ai − bi|2

で距離空間とみなしたものは第二可算公理を満たすことを示せ。

ヒント : いずれも (X,O)の可算濃度を持つ部分集合の可算族 Ai∞i=1で∪∞

i=1Aiが稠密であるようなものを構成すれば (X,O)の可分性が従うことに注意すればよい。

解答

(a). (X, d)をコンパクト距離空間とすると、全有界性から n ∈ Nごとに (X, d)の有限 1/n-net an1 , . . . , anknを取ることができる。このとき、A = ani n∈N, 1≤i≤kn

はN×N(の部分集合)からXへの写像の像なのでたかだか可算濃度を持つ。1/n-netの定義から任意の x ∈ X, r > 0に対して、 Br(x) ∩ A 6= ∅であるから、Aは稠密である。したがって (X, d)は可分、したがって第二可算公理を満たす。

(b). (X, d)を σ-コンパクト距離空間とし、X = ∪∞i=1Kiとコンパクト部分距離空

間Kiの和集合で書けているものとすると、Kiは (a)から可分なので、Kiの可算稠密部分集合 Ai = xijj∈N ⊂ Kiを選ぶことができる。 A = ∪∞

i=1Ai =

xiji,j∈N ⊂ XはXの可算稠密部分集合であるから、Xは可分。

(c). l2の部分集合を

RN =aii ∈ l2; ai = 0 if i > N

, R∞ = ∪∞

N=1RN

Q∞ = aii ∈ R∞; ai ∈ Q for any i , QN = Q∞ ∩ RN

とおく。QN は明らかに可算部分集合だから、 Q∞ = ∪∞N=1QN もそうであ

る。R∞は l2の稠密部分集合であるから、任意の A ∈ l2と ε > 0に対して、d2(AN , A) < ε/2となるN ∈ N, AN ∈ RN が存在する。一方、QN ⊂ RN はRN

の稠密部分集合なので d2(BN , AN) < ε/2となるBN ∈ QN が存在する。つまり d2(A,BN) < εとなるBN ∈ Q∞の存在が分かったので、可算部分集合Q∞

は稠密。したがって、l2は可分である。

24

12月9日1. n次直交行列全体を

O(n) :=g ∈Mn(R); tgg = E

で表す。O(n)上にはMn(R) = Rn2

のユークリッド距離による位相の相対位相Oを与える。

(a) O(n)が行列の積に関して群をなすことを確かめ、この群の演算と位相Oに対して位相群になることを確かめよ。

(b) (O(n),O)はコンパクトであることを確かめよ。

解答

(a). g, h ∈ O(n)に対して、t(gh)gh = thtggh = Eであるから、 O(n)は積に関して閉じている。また、g−1 = tgであるが、 E = gg−1 = gtg = tg−1g−1となり、g−1 ∈ O(n)も分かる。したがって、O(n)はこれらの演算により閉じていて、行列積は結合則を満たすので群をなす。あとはこれらの演算がO(n)の位相に関して連続であることを確かめればよい。位相の定義の仕方からO(n)×O(n)

上の直積位相は Mn(R) ×Mn(R)の直積位相の相対位相であることに注意する。Mn(R)×Mn(R) = Rn2 ×Rn2

の直積位相はR2n2のユークリッド位相と一

致しているので、積の連続性は行列成分に関する連続性と同値である。積 gh

の成分は g, hの成分の多項式で書けるので連続である。g 7→ g−1の連続性はtg = g−1であることに注意すればよい。

(b). O(n)の定義式 tgg = Eは成分に関するn(n+1)/2個の等式∑n

i=1 gijgik = δjkと同値。等式の左辺は成分の多項式でとくにMn上の連続関数なので、O(n) ⊂Mn

は閉集合。また、j = kの場合∑

i g2ij = 1であるから、 O(n) ⊂ Mnは有界で

あることも分かる。したがって、Mn = Rn2の有界閉集合なので、O(n)はコ

ンパクト。

2. A = R2 \ (0, 0)とする。 a1, a2 ∈ Aに対して、

a1 ∼ a2 ⇐⇒ある整数 nについて a2 = ena1

と定めることにより、A上の同値関係∼を定める。

(a) [a1], [a2] ∈ A/ ∼に対して、

ρ([a1], [a2]) = infξ∈[a1],η∈[a2]

|ξ − η|

とすると、常に ρ([a1], [a2]) = 0であることを確かめよ。

25

A上のユークリッド距離により定める位相と同値関係∼により、A/ ∼に商位相Oを与える。また、φ : R2 → Aを

φ : R2 3 (τ, θ) → (eτ cos 2πθ, eτ sin 2πθ) ∈ A

で定める。

(b) 写像 ψ : R2/Z2 3 [(τ, θ)] 7→ [φ(τ, θ)] ∈ A/ ∼が代表元のとり方によらず矛盾なく定義されることを確かめよ。また ψは全単射であることを確かめよ。

(c) R2/Z2にもユークリッド距離によるR2の位相と自然な射影R2 → R2/Z2

により商位相O′を与える。このとき、ψは (R2/Z2,O′)から (A/ ∼,O)

への位相同型写像であることを確かめよ。

解答

(a). e−na1 ∈ [a1], e−na2 ∈ [a2]に対して、 |e−na1 − e−na2| = e−n|a1 − a2|であるが、

n→ ∞とするとき、右辺は 0に収束するので、結論が従う。

(b). (n,m) ∈ Z2に対して、 φ(τ + n, θ +m) = enφ(τ, θ)であるから ξ1 − ξ2 ∈ Z2

ならば、φ(ξ1) ∼ φ(ξ2)となり、代表元のとり方によらず ψ が定義されることが分かる。 ψ(τ, θ) = ψ(τ ′, θ′)ならば、ある n ∈ Zについて、 φ(τ, θ) =

enφ(τ ′, θ′)である。したがって、ベクトルの長さを比較することにより、 eτ =

eτ′+n, (cos 2πθ, sin 2πθ) = (cos 2πθ′, sin 2πθ′)から (τ, θ)− (τ ′, θ′) ∈ Z2が従い、単射性が分かる。全射性は Aの任意の元 ξが適当な θ ∈ Rと τ = ln |ξ|により、 (eτ cos 2πθ, eτ sin 2πθ)と書けることに注意すればよい。

(c). 自然な射影を π1 : R2 → R2/Z2, π2 : A → A/ ∼とする。ψの連続性は φの連続性から従う。U ∈ Oに対して、ψ−1(U) ∈ O′であることを示せばよいが、これは商位相O′の定義から π−1

1 (ψ−1(U))がR2の開集合であることと同値である。π2φ = ψπ1から π−1

1 (ψ−1(U)) = φ−1(π−12 (U))で、商位相Oの定義から

π−12 (U)がAの開集合だから、結局 φの連続性から結論が従う。ψ−1の連続性を見るには、φ, π2が開写像であることを示せば十分。実際、もしそうならばπ2φも開写像で、 V ∈ O′に対して、商位相の定義から π−1

1 (V )は R2の開集合で、ψ(V ) = ψπ1(π

−11 (V )) = π2φ(π

−11 (V ))が開集合であることが従い、ψが

開写像であることが分かる。 φが開写像であることは具体的に分かる。実際、r < π/2ならば、区間の像 φ([τ − r, τ + r]× [θ − r, θ + r])は p = φ(τ, θ)を中心とする半径 ρ < min(eτ+r − eτ , eτ − eτ−r, eτ sin r)の開球体 Bρ(p)を含むことに注意すればよい。π2が開写像であることを見るにはAの開集合Ωに対して、π2(Ω) ∈ O、すなわち、π−1

2 (π2(Ω))が Aの開集合であることを見ればよい。 π−1

2 (π2Ω)は Ωの点と ∼に関して同値な点全体のなす集合であるが、相似変換 fk : A 3 x 7→ ekx ∈ Aは位相同型写像だから、 π−1

2 (π2Ω) = ∪k∈Zfk(Ω)

は開集合の和集合となり結論が従う。

26

1月6日1. 単位球面 Sn ⊂ Rn+1と閉区間 [−1, 1]にはユークリッド空間の標準的位相による相対位相が与えられているものとする。 (x1, t1), (x2, t2) ∈ Sn × [−1, 1]に対して、

(x1, t1) ∼ (x2, t2) ⇐⇒ t1 = t2 = ±1または (x1, t1) = (x2, t2)が成り立つ。

により Sn × [−1, 1]上の同値関係∼を定める。 [(x, t)]で (x, t) ∈ Sn × [−1, 1]

で代表される同値類を表す。さらに Sn × [−1, 1]の直積位相と自然な射影 π :

Sn × [−1, 1] 3 (x, t) 7→ [(x, t)] ∈ Sn × [−1, 1]/ ∼によりX = Sn × [−1, 1]/ ∼上に商位相Oを与える。このとき、x = (x0, . . . , xn) ∈ Sn, t ∈ [−1, 1]に対して写像 f : X → Sn+1を

f([(x, t)]) = (√1− t2x0, . . . ,

√1− t2xn, t)

で定める。

(a) ∼が同値関係であることと (X,O)がコンパクト位相空間であることを確かめよ。

(b) f : X → Sn+1が代表元のとり方によらず矛盾なく定義された連続全単射であることを確かめよ。

(c) f : X → Sn+1が閉写像であることを示し、f が位相同型写像であることを導け。

解答

(a). 反射律、対称律は自明。推移律を見るには (x1, t1) ∼ (x2, t2) ∼ (x3, t3)であるとき、t1 = t2 = t3であることに注意する。このとき、t1 = t2 6= ±1ならば、x1 = x2 = x3も従うので推移律を得る。Sn, [−1, 1]はいずれもその位相についてコンパクトなので、直積空間 Sn × [−1, 1]もそうである。πは商位相の定義から連続なのでその像X = π(Sn × [−1, 1])はコンパクト。

(b). 代表元のとり方によらないことは t1 = t2 = ±1 のとき、 f([(x1, t1)]) =

f([(x2, t2)]) = (0, . . . , 0, t1 = t2)であることに注意すればよい。単射性はf([(x1, t1)]) =

f([(x2, t2)])のとき、t1 = t2 であり、t1 = t2 6= ±1ならば、√1− t2 6= 0

から x1 = x2 が従うことに注意すればよい。P = (y0, . . . , yn, t) ∈ Sn+1 に対して t 6= ±1ならば、f([(y/

√1− t2, t)]) = P であり、 t = ±1ならば、

f([(0, t)]) = P = (0, . . . , 0, t)であることから全射性も従う。連続性を見るにはf : Sn× [−1, 1] → Sn+1を fと同じ式で定義するとき、f = f πとなるようなf として f が定義されていることに注意する。Sn, [−1, 1]の位相がユークリッド空間の相対位相で与えられているので、Sn× [−1, 1]の直積位相も Rn+1×Rの相対位相と一致している。従って fの定義式は座標成分に関して連続である

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が、これは今考えている位相に関する連続性と同じことである。f の連続性から Sn+1の開集合U に対して、 f

−1(U) = π−1(f−1(U))は開集合だが、これは

X上の商位相の定義から f−1(U) ∈ Oであることと同値であるので、f の連続性が従う。

(c). X はコンパクトなので、その閉集合K もコンパクト。このことから f(K) ⊂Sn+1はコンパクトとなる。とくにf(K)はRn+2の有界閉集合となるので、f(K)

はSn+1の閉集合となり、fが閉写像であることが分かる。これから逆写像 f−1

の連続性が従うので f は位相同型写像。

2. (a) (X,OX)を位相空間とする。 (X,OX)が連結であることと (X,OX)から任意の離散位相空間への連続写像が定値写像に限ることは同値であることを示せ。

(b) 連結位相空間 (X,OX), (Y,OY )の直積空間 (X × Y,OX ×OY )は連結であることを示せ。

解答

(a). (X,OX)が連結とする。離散位相空間 (Y,OY )への連続写像 f : X → Y による、一点 p ∈ Y のなす閉かつ開集合 pの逆像 f−1(p)は空集合かXと一致しなければならない。このことから f(X)は一点からなるので、f が定値であることが従う。一方、(X,OX)が連結でなければ、X の閉かつ開集合 U で空でもXでもないものが存在する。二点からなる離散位相空間 0, 1への写像f で開集合U 上で 0、開集合X \U 上で 1を取る関数は連続で定値写像でないので逆も従う。

(b). W ⊂ X × Y を空でない閉集合かつ開集合とし、 p = (x0, y0) ∈ W とする。直積位相の定義から開集合W は U × V (U ∈ OX , V ∈ OY )の形の集合の和集合であるから、部分集合X × y0 ⊂ X × Y とX の点を同一視するとき、W ∩X×y0はXの開集合となり、補集合を考えることによりW ∩X×y0はXの閉集合であることも分かる。したがってXの連結性から X×y0 ⊂ W

が従う。 p ∈ X × y0に対して同じ議論を今度は Y の連結性を用いて適用すると、任意の x ∈ Xに対して、x × Y ⊂ W が従うので結局W = X × Y が従う。

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1月13日1. (X,OX)を位相空間、 (Y,OY )をハウスドルフ空間とする。直積X × Y 上には直積位相OX ×OY を与える。

(a) f : X → Y が連続ならば、F : X 3 x 7→ (x, f(x)) ∈ X × Y も連続であることを確かめよ。F の像 F (X) ⊂ X × Y を f のグラフという。

(b) f : X → Y が連続ならば、f のグラフはX × Y の閉集合であることを示せ。

(c) 連続写像 φ : Y → Y の固定点集合 y ∈ Y ; φ(y) = yは Y の閉集合であることを示せ。

解答

(a). U ∈ OX , V ∈ OY に対して、 F−1(U × V ) = U ∩ f−1(V )であるから、U × V

の逆像は開集合。直積位相の定義からこれは F の連続性を示している。

(b). X × Y \ F (X)が開集合であることを示す。(x, y) 6∈ F (X)、つまり、y 6= f(x)

に対して、Y のハウスドルフ性から yの近傍U と f(x)の近傍 V でU ∩ V = ∅なるものが存在する。このとき、f−1(V )×U は (x, y)の近傍だが、定義から、F (X)と交わらない。

(c). X = Y, f = φとして前の問いを適用。恒等写像 idY のグラフ∆は (b)から閉集合。固定点集合はF−1(∆)と書けるが、(a)から F は連続なので固定点集合も閉集合。

2. (X,OX)をハウスドルフ空間とする。 X に新しく一点∞を付け加えた集合Y = X∪∞を考える。(Xの部分集合はY の部分集合とみなして) (X,OX)

の全てのコンパクト部分集合Kの補集合 Y \Kと (X,OX)の全ての開集合からなる Y の部分集合族をOY とする。

(a) (Y,OY )が位相空間をなすことを示せ。

(b) (X,OX)の任意の点がコンパクトな近傍を持つとき、 (X,OX)は局所コンパクトであるという。 (X,OX)の局所コンパクト性と (Y,OY )のハウスドルフ性は同値であることを示せ。

(c) (Y,OY )がコンパクトであることを示せ。

解答

(a). Xのハウスドルフ性からXのコンパクト部分集合はXの閉集合なので、「(*)V ∈OY に対してX\V は常にXの閉集合である」ことを注意しておく。Uii ⊂ OY

が全て∞を含まない集合の族ならばU = ∪iUi ∈ OX ⊂ OY であることが分かる。そうでないとするとある Uiの補集合K がX のコンパクト部分集合であ

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る。このとき上の注意から U の補集合 Y \ U = X \ U ⊂ Kは Xのコンパクト部分集合Kの閉集合なので、やはりXのコンパクト部分集合である。したがって、この場合もU ∈ OY が従う。二つのU1, U2 ∈ OY に対して、もしいずれかが∞を含まなければ、上の注意から U1 ∩ U2 ∈ OX ⊂ OY。一方、U1, U2

がいずれも∞を含めば、 X \ (U1 ∩U2) = X \U1 ∪X \U2は二つのXのコンパクト部分集合の和集合、やはりコンパクトなので U1 ∩ U2 ∈ OY が従う。これらから、OY は位相の公理を満たすことが分かる。

(b). Xはハウスドルフなので、 OY の定義により Y のハウスドルフ性を調べるには、∞とx ∈ Xが近傍で分離されるかを調べれば十分だが、局所コンパクト性を仮定するならば、xのXにおけるコンパクト近傍Kが存在し、N∞ = X \Kは ∞の近傍となる。したがって x,∞はそれぞれの近傍K,N∞により分離されることが分かる。逆に Y のハウスドルフ性を仮定すれば、任意の x ∈ Xと∞はそれぞれの(Y における)開近傍Ux, U∞で分離される。 UxはXにおける開近傍でもあることに注意。このとき、 Ux ⊂ Y \U∞となるが、OY の定義から Y \ U∞はX のコンパクト集合であり、Ux ∈ OX を含むので、xのコンパクト近傍である。

(c). コンパクト性を示すにはまず、Y の開被覆Uiに対して、∞ ∈ Uaとなる i = a

が存在することに注意する。K = Y \ Ua = X \ Uaは Xのコンパクト集合だが、注意 (*)から Vi = Ui ∩ X はX の開集合なので、Vii6=aは(OX に対して)Kの開被覆をなす。したがって、その有限部分被覆 Vi1 , . . . , Vikを選べば、Ua, Ui1 , . . . , Uik が Uiの有限部分被覆となる。

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1月20日1. Xを集合とする。空集合 ∅、X自身およびXの有限部分集合の補集合からなるXの部分集合族をOとする。

(a) OはX上の位相であることを確認せよ。

(b) 位相空間 (X,O)のコンパクト性を調べよ。

(c) X が有限集合である場合とそうでない場合に場合分けして、位相空間(X,O)の連結性を調べよ。

解答

(a). 定義によりX, ∅ ∈ Oである。また、開集合族 Uiiに空集合以外の開集合 Ui

が含まれていれば、和集合 U = ∪iUiの補集合 X \ U はX \ Uiの部分集合なので有限集合である。また、二つの開集合U, V のいずれも空集合でなければ、和集合U ∪ V の交わりU ∩ V の補集合 (X \ U) ∪ (X \ V )も有限集合である。これらから結論をうる。

(b). 開被覆Uiiは空でない開集合Uiを含んでいる。有限集合X\Uiの各点p1, . . . , pkに対して、pα ∈ Uiα となるような iαを選べば、Ui, Ui1 , . . . , Uik は有限部分被覆をなす。

(c). 空でない開集合U, V が与えられたとき、U ∩V の補集合は有限集合である。したがって、 Xが有限集合でなければ、U ∩ V が空集合になることはない。したがって、この場合は連結である。一方、X が有限集合であるならば、定義より全てのXの部分集合が開集合、つまり位相Oは離散位相であるから、Xが二点以上を含めば連結ではない。

2. (X,OX), (Y,OY )を位相空間とする。 f : X → Y を連続写像とし、任意のコンパクト部分集合C ⊂ Y の逆像 f−1(C) ⊂ Xがコンパクトであるとする。

(a) 標準的な位相が与えられた Rについての連続写像 φ : R → Rで、ある閉集合K の φによる像 φ(K)が閉集合とならないような φ,K の例をあげよ。

(b) X の閉集合K と Y のコンパクト部分集合 C に対して、 C ∩ f(K)は Y

のコンパクト部分集合であることを確かめよ。

(c) (Y,OY )が局所コンパクトハウスドルフ空間であるとき、 fは閉写像であることを示せ。

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解答

(a). たとえば、f(x) = exとすると閉集合K = Rの像は (0,∞)なる開区間となり、閉集合にならない。

(b). 仮定から f−1(C)∩Kはコンパクト空間 f−1(C)の閉集合なのでコンパクト。したがって、f(K) ∩C = f(f−1(C) ∩K)はその連続写像 f による像なのでコンパクト。

(c). K の像 f(K)の補集合が開集合であることを示す。局所コンパクト性を用いて y 6∈ f(K)のコンパクト近傍N を取る。(b)から f(K) ∩N はハウスドルフ空間 Y のコンパクト部分集合なので閉集合。したがって、U = N \ f(K) =

N \ (f(K) ∩N)は yの近傍である。U は f(K)と交わらないので結論をうる。

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