月刊現代ギター - 2015年8月号

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Page 1: 月刊現代ギター - 2015年8月号

現代

ギタ

ー 

昭和

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49巻

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株式会社 現代ギター社 

(本体 1,200 円 + 税)定価 1,296 円

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【修正日】 2015/07/08_04:18  【出力日】 2015/07/08_04:19

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10 特 集

ギターの“オカズ”をカッコよくキメよう!:古川忠義53 第 2 特集 シューベルトとギター:河村逸平

CONCERT PHOTO REPORT

18 コンサート・フォトレポート 鈴木大介 & 村治奏一 猪居 謙 & 猪居亜美 大柴 拓イロセプテット 井上 景、花岡和生、田中孝子 大島富士子(S)&松尾俊介 柴崎建司 & 山内 淳 GAG フェスティバル GLC40 周年記念記念パーティー

REPORT

41 アリカンテ大学マスターズコース46 第 23回山陰ギターコンクール48 第 26回みちのくギター合奏フェスティバル50 第 10 回シニアギターコンクール/チャンピ   オン大会

INTERVIEW

24 松尾俊介32 Jiro's Bar ~濱田滋郎対談〔29〕  秋岡 陽(フェリス女学院大学学長・音楽学者)

58 カニサレス60 ルペン・パレホ

READING / ESSAY / LECTURE

28 愛器を語る[77]     猪居 謙(アントニウス・ミュラー)36 ポインツ・オブ・ギターテクニック[17]     荘村清志67 オールド・ポップス・コレクション〔17〕    Mr.サマータイム(フュガン) (たしまみちを)

INFORMATION

62 新譜案内64 外盤案内66 新刊案内70 めもらんだむ92 今月の見どころ聴きどころ94 イベント&コンサートガイド98 コンクール・インフォメーション

ENSEMBLE

90 アンサンブルの広場

SCORE

113 今月の楽譜解説114 北方のテルプシコーレOp.147(ジュリアーニ)119 3 つの日本の歌より~荒城の月   (瀧 廉太郎~佐藤弘和)122 夜空ノムコウ(川村結花~岡崎 誠)126 アランブラの娘(タレガ~古川忠義)

V o l . 49 N o . 8 A u g u s t2015 N o . 620 August

村治奏一&鈴木大介

●表紙 松尾俊介●写真提供 ベルウッド・レコード

71 ポピュラー・ヒット・レパートリー〔29〕       水彩の月(秦 基博)      (小関佳宏)74 あなたの街の~ギター教室紹介〔5〕75 Etude Pub ~ギター・ベーシック・レパートリー     完全攻略〔5〕           (坂場圭介)78 アンサンブルに聴く巨匠の名技〔5〕                    (朝川 博)80 a tempo 日記〔65〕(渡辺和彦)82 セゴビアとパキータ〔53〕      (A.エスカンデ/訳:坪川真理子)86 レパートリー充実講座〔245〕(藤井眞吾)    24 の漸進的な小品集 Op.44 ③(ソル)

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Page 3: 月刊現代ギター - 2015年8月号

10 Gendai Guitar

古川忠義

ギターの“オカズ”をカッコよくキメよう!~“音楽の味付け”で演奏は劇的に変わる~

●はじめに 毎日のご飯のオカズは皆さんの腕の見せどころですね。プロの料理人の技をどうやって自分のものにしようか、どちらの奥さまも、そして料理好きな男性も研究していることでしょう。最近は TV の料理も多いですから、皆さん切磋琢磨して、食べるだけの私は非常に助かっています。 さて、その“オカズ”ですが、肉、魚、野菜、果物などの食材によって、また和、洋、中華、イタリアン、スペイン風、韓国風などなど、無数に料理方法があります。今回、お話させていただく音楽のオカズも同じで、日本風、クラシック風、ロック風、カントリー風など、無数にアレンジできます。その一つ一つはスペース的に不可能ですが、素材に応じた基本的な味付けの仕方をご紹介します。例題の楽曲を参考にしていただきながら、サウンド体験の数を増やしていただければと思います。要はそのサウンドを知っているか、経験したことがあるかという事です。では、さっそく体感していきましょう!

●“サビ”をドラマティックに演出 皆さん、よくご存知の〈オーラ・リー〉冒頭の 4 小節です(譜例1)。コードの進行はオーソドックスな形で 1度メイジャー、2 度マイナー、5 度セブン、1 度メイジャーです。オカズは四角でかこった部分です。ごくありきたりの簡単なオカズを入れてみました。これをちょっとひねったのが譜例2です。メロディーは変わりませんがコード進行が違います。1 小節目の 3 拍目をわざと半音下のメジャーコード(B)にしました。2 小節目は Dm ではなく D7 にしました。そして、お決まりのコード進行Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ、いわゆるドミナントモーションを 3 小節目から入れて 4 小節目の C に落ち着く音を C の 4 度、Csus4から C に戻しています。こうしたコード進行はポップスやジャズシーンではめずらしくもなく、当たり前に使われています。このコードに対してアルペジョを付けるだけで簡単にオシャレなオカズが出来上がります。何回もサウンド体感してください。そして、このサウンドが当たり前に聴こえてきたら、他の曲の同じようなシーンで

大阪府出身。幼少の頃よりクラシック・ギターの英才教育を受け、15 歳にしてデビュー・リサイタルを開催する。1978 年に京都芸術大学卒業後、日本演奏家連盟新人演奏会で優勝。その後はジャンルを問わずに何でも完璧にこなす。1990 年ベンチャーズのメンバー、ノーキー・エドワーズの日本コンサート・ツアーにもゲスト出演、クラシックにおいてもベルリン・フィル首席チェロ奏者・エバーハルト・フィンケとも共演。日本クラウン(株)より 2枚のシングルCDを出し、1999 年にはファースト・アルバム『テネシー・ムーン』を発売。自身で講師を務めるスクール「テディーズギター・ギター教室」を主宰するなど、ギターの楽しみも広く教えている。2010 年には得度を受け、浄土真宗本願寺源僧侶となる。法名「釈蓮楽」。坊主ギタリストとしても活躍している。現代ギター社より曲集『ソロギターのためのベンチャーズ名曲集(GG544)』『ギター伴奏でキメる ! 永遠のヒットソング集(GG559)』を発売。好評を得ている。

特集

Tadayoshi Furukawa (ギタリスト)

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Page 4: 月刊現代ギター - 2015年8月号

18 Gendai Guitar

近代ギター二重奏曲の至宝と言える、C =テデスコ《平均律ギター曲集》の全曲演奏に鈴木大介と村治奏一が挑戦した。プレスティ&ラゴヤに献呈されたこの曲集は、バッハの《平均律クラヴィーア集》から着想を得た作品であり、24 の全ての調にわたって前奏曲とフーガを配し、計 48 曲によって構成される長大な傑作である。24 調全てが網羅されている訳であるから当然、ギターでは通常は使われない難易度の高い調性も含まれており、二人の演奏者には高度な技術力と音楽性、デュオ・ワークが要求されるが、それに加えて全曲を弾き切るだけの気力・体力も必要となる。コンサートは演奏者の意向により、2 回の休憩を挟んだ三部構成で進められ、第一部で第 1 番~第 8 番、第二部で第 9 番~第 16 番、第三部で第 17 番~第 24 番が演奏された。共演機会も多く互いの手の内を知り尽くしている鈴木と村治だけに、第一部から寸分の躊躇も見せることなく抜群のコンビネーションで弾き進めていく。実演を耳にしてみると、1 曲 1 曲に C =テデスコらしい様々なアイディア、ある種の諧謔性や高度な対位法的書法が織り込まれており、聴き手をまったく

飽きさせることがない。鈴木&村治の演奏も優れた楽曲を際立たせる見事なものであり、特に最初の休憩を挟んだ第二部以降は驚異的な集中力と推進力によって聴衆を作品世界へグイグイと引き寄せていった。3 時間にわたる演奏会の最後、第 24 番のフーガを弾き終えた瞬間に訪れた静寂とそれに続く万雷の拍手は、当夜のコンサートにおいて、演奏者と聴衆とがこの大作を主客の別なく完全に共有し得たことの表われであろう。ぜひ、再演を期待したい。プログラム:平均律ギター曲集~ 2 台のギターのための 24の前奏曲とフーガ Op.199(C =テデスコ)[第 1 番ト短調、第 2 番ニ長調、第 3 番イ短調、第 4 番ホ長調、第 5 番ロ短調、第 6 番嬰へ長調、第 7 番嬰ハ短調、第 8 番変イ長調、第 9 番変ホ短調、第 10 番変ロ長調、第 11 番へ短調、第 12 番ハ長調、第 13 番ト長調、第 14 番ニ短調、第 15 番イ長調、第 16 番ホ短調、第 17 番ロ長調、第 18 番嬰へ短調、第 19 番嬰ハ長調、第 20 番嬰ト短調、第 21 番変ホ長調、第 22 番ロ短調、第 23 番ヘ長調、第 24 番ハ短調]

[5 月 22 日/東京・GG サロン]

×D a i su ke S u zu ki

鈴木大介S o i ch i M u r a j i

村治奏一

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Page 5: 月刊現代ギター - 2015年8月号

24 Gendai Guitar

●『トリアエラ~ローラン・ディアンス作品集』

――今回のアルバムはディアンス作品集ということですね。オール・ディアンスという CD は、これまで意外になかったように思いますが?松尾 本人以外では、エレナ・パパンドレウが作っていますね。確か 2005 年のアルバムだったと思います。日本人では多分、僕が初めてじゃないでしょうか。――なぜ、ディアンスにしようと思ったのですか?松尾 僕は今年でデビュー 10 周年なんですが、この 10年でギターに対する見方というのが徐々に変わってきているところでして。デビューの頃は、タレガやセゴビアなどの、いわゆるスパニッシュギターの伝統とは、少し距離を置いた所から演奏活動をスタートさせた感じでした。ギターらしくないと言うか、伝統的なギター書法とは全く異なる音楽、難解で複雑な現代音楽やピアノから半ば強引に譜面を起こしたものだとか、演奏に困難を伴うものも沢山手掛けたんですね。そういうものをやっていくうちに、「ギターがギターらしく鳴る」ということが、実はどれくらいのアドバンテージであるのかが、10 年活動してきて、やっと分かり始めたっていうのがあるんです。――「ギターらしく鳴る」のが、ディアンスだった訳でしょうか?松尾 前作のバッハでは、賛否両論分かれる、とんでもない変則調弦もやったんですけども(笑)、変則調弦の

バッハにしても、実はある程度まではノーマルチューニングでも弾けてしまうんです。ただこれが、ギターがギターらしく余裕を持って鳴るかというと、そうとは言えなくて、その頃から「純粋にギターのために書かれた、ギターが喜ぶであろう音楽を取り上げたい」という思いが強まってきて、「じゃあ、何を選ぼうか」と考えた時に、まずディアンスが浮かんだんです。――ギター的ということで、タレガなどは考えなかったですか?松尾 選択肢の中にはタレガやリョベート、ジュリアーニもありました。今、僕は地域創造という団体にいまして、全国各地の小学校に赴いて演奏をする機会が多いんですが〈アランブラの想い出〉や〈禁じられた遊び〉を弾いても子供たちは知らない。でも現代音楽、例えばブローウェルの〈タラントス〉なんかを弾くと突然色めき立つんです。反応するんですね。で、子供たちが一番喜ぶのがディアンスの曲なんです。彼らは僕の足元で聴いているんですが、ディアンスを弾くと「オォー!」と声が出るんです。僕自身も少年時代には〈タンゴ・アン・スカイ〉や〈リブラ・ソナチネ〉に熱狂しましたし、そうした経験も踏まえて、やはり取り上げるならディアンスだろうと思いました。それから、パリに留学していた頃の想い出なんですが、ギター科の仲間と一緒にセーヌ河の岸辺に遊びに行って、誰かがギターを持ってきたのでワインを飲みながら交替で弾いて遊んだことがあったんです。周りの人は誰も聴いてはいなかったんですが、

Shunsuke Matsuo

 ニューアルバム「トリアエラ~ローラン・ディアンス作品集」発売!!

6 月 24 日 現代ギター社インタビュアー:渡辺弘文

松尾俊介◎プロフィール1979 年京都生まれ。パリ国立高等音楽院ギター科を首席で卒業。東京国際ギターコンクールやアントニー国際ギターコンクールなど内外 で 受 賞 歴 を 持 つ。NHK-FM 名曲リサイタル、ベオグラード国際ギターアートフェスティバル、サラエボの冬、ヨンジュ国際ギターフェスティバル、東京オペラシティ「B → C」に出演するなど多彩な演奏活動を展開している。CD

『Varie1』、『Varie4/Ponce Guitar Works』、『ギターが奏でるバッハの世界』をリリースし、いずれも専門誌で特選盤に選ばれるなど高評を得ている。平成 24 年/ 25 年度地域創造登録アーティスト。http://shunsukematsuo.com

cover story

松尾俊介

2015 年 6 月 24 日 現代ギター社インタビューア:渡邊弘文

活きた音楽、リアルさにこだわった、 攻めの衝撃を、間近に感じて欲しい……

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28 Gendai Guitar

写真:木田新一

愛器を語る

 ◆アントニ ス・ ラー(2010)

Ken Inoi4 歳よりギタリストである父・猪居信之に師事しギターを始め、11 歳よる福田進一にも師事する。また 12 歳よりピアノ、ソルフェージュを勝間恵子に学ぶ。ドイツ、ワイマールの国立フランツ・リスト音楽大学において T. ミュラー = ぺリングに師事し、2013 年に同大学大学院修士課程修了。これまでに 2006 年ギター音楽大賞グランプリ(第 1 位)大阪府知事杯、知事賞、2013 年コブレンツ国際ギターコンクール(ドイツ)J. ロドリーゴ作品最優秀演奏賞、2014 年 J.K. メルツ国際ギターコンクール(スロバキア)並びに台湾国際ギターコンクールにおいて第 2 位など数多くの国内外のコンクールで受賞。2015 年 3 月に福田進一プロデュース、ギター・ディスカバリー・シリーズ第 2 弾『ソナタ・ジョコーサ』

(MM-3045) で CD デビュー。写真:木田新一

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Page 7: 月刊現代ギター - 2015年8月号

文・河村逸平(かわむら・いっぺい)

河村逸平●プロフィール早稲田大学卒業。第 45 回九州ギター音楽コンクール第 2 位、第 24 回 GLC 学生ギターコンクール第 2 位。2001 年には台湾人ギタリスト蘇孟風と台湾にてコンサートツアーを行ない好評を博す。その後、ウィーン国立音楽大学ギター科にて学ぶ。2004 年第 1 ディプロマ取得。また、ピアニストとして 2006 年 7 月にハンガリーにて開催されたウィーン宮廷歌手ソーナ・ガザリアン女史の講習会において通訳、伴奏者を務める。その他ウィーンにて数々のコンサートに伴奏者として出演。現在国内で伴奏者、コレペティトゥアとして活動中。近年は指揮活動も開始し、数々のオペラで副指揮者として公演を支えている。ギターを福田進一、鈴木大介、高田元太郎、松永一文の各氏に師事。指揮を星出 豊氏に師事。

●ビーダーマイヤー時代のウィーン

 シューベルトとギターを語る上で、まず述べたいのはその時代背景だ。まずは彼が活躍した、いわゆる「ビーダーマイヤー」と言われる時代について簡単に言及したいと思う。 「ビーダーマイヤー」とは、一般にウィーン会議(1814-15)から 1848 年革命までの、政治的には比較的平穏な時代に新しく力をつけてきた中産階級の文化を指す代名詞である。1800 年前後、対ナポレオン戦争にオーストリア帝国は多大な労力を費やし、また貴族たちは帝国協力のため散財も余儀なくされた。このような状況、またイギリスに端を発した産業革命の波の影響も重なり、中産階級の台頭とともに貴族支配政治の影が薄れ始めていく。 そんな激動のウィーンであったが、宰相メッテルニヒによる自由主義への抑圧などの暗い面もある中、数多くの演奏会、オペラ、サロンコンサートが催され、アマチュア音楽家たちもかなり増え、音楽界においては黄金期と言っても過言ではない時代を迎えていた。 A.M. ハンスンによる『音楽都市ウィーン』(Musical Life in Biedermeier Vienna)の中より、1833 年刊行のハンス・ノルマンのペンネームで有名なアントン・ヨハン・グロース = ホッフィンガーによる「ありのままのウィーン」(Wien wie es ist)※註 1)の当時の様子を如実に伝えている以下の言葉を紹介したいと思う。

 「……さらに、アマチュア音楽家は無数にいる。どの家族も、そのうちの一人はアマチュアの音楽家と言っても良いくらいだ。裕福な家には、かならずピアノがあり、狭い間取りのアパートでは、よく滑稽な情景が目にされる。同居者は、練習をしたい時間を見はからって、たがいに約束を取り付けなければならない。ひとつの建物内で、1 階ではヴァイオリンを、2 階ではピアノ、3 階ではフルートを演奏し、4 階ではギターに合わせて歌を歌い、おまけに、中庭では、盲人がクラリネットを吹いて奮闘している、という光景が終始見られる……」 このようなアマチュア音楽家の増加は「家庭音楽」

(Haus Musik)の分野の発展に多大な影響を与えた(「危険思想」から目をそらす意味でも政府から奨励された)。 そして、歌曲が盛んに作られ、歌われるようになっていったのは不思議ではない。その中で大きな役割を担ったのが「ギター」である。さきほどのノルマンの描写からも分かるように、当時ギターは歌の伴奏楽器として大変重要な位置を占めていた。もちろんこの時代、ピアノの普及も大変進んでいたが、やはりそれでもギターの普及率には及ばなかったことは想像出来る。 少し話は逸れるが、このような時代に、シューベルトの歌曲の中で、当時〈魔王〉と並んで特に有名で親しまれていたものがある。それは、後に作曲されるピアノの名曲〈さすらい人幻想曲〉(D760)に引用されたことでも有名な〈さすらい人〉(Der Wanderer D493[D489])※註2)で

第二特集

シューベルトとギター~ 19 世紀ビーダーマイヤー時代のギター事情~

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………※註 1) A.M. ハンスンによる文献目録の中には 'Wien wie es ist' と書いてあるが、これは出版が 1837 年と 1847 年であり、1833 年に出版されたのは「ありのままのオーストリア」(Österreich, wie es ist)である。どちらの本を参照にしたのかは原書を確認出来ておらず不明(1833年出版の Wien wie es ist も存在する可能性があるが、出版を確認出来ず)。

フランツ・シューベルト(1797-1828)

Gendai Guitar 53

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