月刊現代ギター - 2016年1月号

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TRANSCRIPT

特集 女性ギタリストの系譜24 女性ギタリストという存在:富川勝智27 世界の女性ギタリスト名鑑37 二つの愛情物語:手塚健旨

CONCERT PHOTO REPORT

44 コンサート・フォトレポート ジュディカエル・ペロワ レオナルド・ブラーボ&坪川真理子 ウラディーミル・ゴルバッチ 今村泰典(Lt)〔共演〕鈴木美登里(S) 河野智美 福田進一、鈴木大介、大萩康司、朴葵姫 朴葵姫、松田弦、岡本拓也、徳永真一郎 森田綾乃〔共演〕松本寛子(Fl) 第 10 回記念GEN記念コンサート 竹内太郎

REPORT

72 第 33回スペインギター音楽コンクール76 第 27回日本ギター合奏フェスティバル80 第 58回弦楽器フェア

INTERVIEW

41 福田進一52 Jiro'sBar ~濱田滋郎対談[34]    錦織健(テノール歌手)

65 ホプキンソン・スミス68 パブロ・マルケス

READING / ESSAY / LECTURE

56 愛器を語る[82]    竹内太郎(マーシャル/ 5コース・バロックギター)60 ポインツ・オブ・ギターテクニック[22]    堀井義則86 オールド・ポップス・コレクション〔22〕   かくれんぼ(大瀧詠一) (たしまみちを)88 あなたの街の~ギター教室紹介〔10〕

INFORMATION

23 懸賞付きアンケート81 新譜案内82 外盤案内84 新刊案内96 めもらんだむ97 コンクール・インフォメーション110 今月の見どころ聴きどころ112 イベント&コンサートガイド

ENSEMBLE

108 アンサンブルの広場

SCORE

129 今月の楽譜解説130 バードランドの子守歌(シアリング~啼鵬)134 チェントーネ・ディ・ソナタ第 1番(パガニー   ニ)138 北方のテルプシコーレOp.147-14,15,16     (ジュリアーニ)141 CAT'SEYE(杏里~岡崎誠)144 グレイ・トーン(冨山詩曜)

Vol.50 No.1 January2016 No.625 January

        ジュディカエル・ペロワ

●表紙 福田進一●写真YayoiArimoto

89 ポピュラー・ヒット・レパートリー〔34〕    ダンシング・クイーン(アバ)   (小関佳宏)92 EtudePub ~ギター・ベーシック・レパートリー     完全攻略〔10〕          (坂場圭介)98 アンサンブルに聴く巨匠の名技〔10〕                    (朝川博)100 atempo 日記〔70〕(渡辺和彦)102 レパートリー充実講座〔250〕(岩崎慎一)      マドローニョス(M=トローバ)

106 ロンドン便り〔72〕(ワシリー・サバ/訳:関塚亮司)

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24 Gendai Guitar

富川勝智(ギタリスト)北海道札幌生まれ。上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業。ギターを佐藤佳樹、手塚健旨に師事する。その後スペインに渡り、ホセ・ルイス・ゴンサレス、アレックス・ガロベーに師事。帰国後、精力的に演奏活動を行なうとともに、ヤマハやシンコーミュージックなどの出版物への編曲や教本執筆なども行なう。クラシックギター(モダンギター)に加え、オリジナル 19 世紀ギターやテルツギターなども使用したコンサートも行ない、可能性を広げている。ダラス国際ギターフェスティバルをはじめとする海外の著名フェスティバルへも招聘され、著名国際ギターコンクールの審査員も務める。音楽史への造詣も深く、ギター専門誌に連載を行なう。楽曲解説や奏法解説を多数執筆。

「現代ギター」誌への寄稿やワークショップの講師などギター史研究家としても精力的に執筆活動をしている。東京渋谷にある「富川ギター教室」を主宰し、後進の指導にもあたっている。正しい身体技法の理解に基づいた技術伝授と西洋音楽の表現法についての深い知識によって、多くの優れた門下を育てている。洗足学園音楽大学クラシックギター科講師。公益社団法人日本ギター連盟理事。ギターリーダーズクラブ正会員。日本音楽表現学会会員。

特集

女性ギタリストの系譜

イダ・プレスティ(1937)

女性ギタリストという存在――――――――――――――

現在のギター界では女性ギタリストの活躍が目立つ。演奏活動においても、教授活動の場においても、その実力は男性と比べてもまったく遜色がない。例えば、あなたのCD棚から任意のCDを数枚取り出して、ブラインドテストをしてみてほしい。演奏能力や表現力において男性と女性のギタリストで何か差があるのだろうか?……そこに「男らしさ」とか「女らしさ」といった一般化した特徴を見出すことが出来るだろうか? もちろん外見による雰囲気の違いをイメージ戦略として用いる奏者もいるし、興行主の方もそれを利用するのは古今東西変わらない。だが、しっかりと演奏内容や活動内容だけに注目すれば、そこに「女性らしい」要素を見出すことは不可能である。あるのは実力の差だけである。だが、女性音楽家が実力だけで勝負できない時代もあった。時代の価値観(女性観)によってその才能が正しく認められなかったこともあった。以下、時代をおって「女性ギタリストの系譜」を見ていくが、時代ごとに女性音楽家がどのように扱われてきたのか、どのような場で活躍していたのかも合わせて概観していく。時代風潮によってその才能を正当に評価されなかった女性ギタリストの存在があったことも知ってもらいたい。

●図像の中にあるギター 古くから、ギターと女性をモチーフとした絵は多数描かれてきた。17 世紀頃から女性とその優美なフォルムのギターという楽器はいわば「曲線美のアイコン」であった。古代ギリシャの竪琴との関連をもつギターという楽器は、まさに画家にとって格好のモチーフであった。だが、優れた女性奏者がいたとしても、音楽史に名を残し

ている作曲家や演奏者は教会音楽や宮廷文化の世界で活躍していた男性音楽家に限られていた。 この傾向は 18 世紀バロック期においても続く。王宮文化が華やかであった時代であり、上流階級の子女の嗜みとして音楽が学ばれていた。バロック期においては音楽は庶民のものではなかった。王族や貴族の世界では、ダンスや音楽の素養が出世するためには必要であった。宮廷の中にはギタリストやリュート奏者がおり、貴族たちの耳を楽しませ、上流階級の子弟の音楽教育にもあたったのである。その中には傑出した女性音楽家の名も多数残っている。ギター音楽を愛好した上流階級夫人の名も多数残っている。例えば、ドミンゴ・プラトのギター辞典(1934 年出版)にはアンヌ・ジュヌヴィエール・デ・ブルボン=コンデという王族の女性がギタリストとして紹介されている。彼女の肖像画も残されており、優美な姿でバロックギターを構えている(写真 1)。とは言っても、現在のように大きなホールで演奏会を行ない収入を得るという意味でのプロはいなかった。器楽演奏はあくまでも上級階級の嗜みや教養のひとつであり、もちろん楽器演奏を極めた人もいたが、現在のような演奏や教授活動で生計をたてていた女性奏者は皆無である。写真1:アンヌ・ジュヌヴィエール・デ・ブルボン=コンデの肖像(1731

年、ジャン=マルク・ナティエ作)

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世界の女性ギタリスト名鑑Antigoni Goni

【プロフィール】深い芸術的感性と色彩感に溢れた絶妙なサウンドにより、国際的評価も高いギリシャのギタリスト。エヴァンゲロス・アッシマコプーロス、ジョン・ミルズ、ジュリアン・ブリーム、シャロン・イズビン、オスカー・ギリアら名だたる巨匠にギターを師事し、1995 年にはGFA国際ギターコンクールに優勝、以後、ヨーロッパ、北米、中南米、アジアでリサイタルを開催、カーネギー・ワイル・ホール、ウィグモア・ホール、ボリショイ劇場等、世界の主要ホールに出演した。現在では、世界の主要なギターフェスティバルやコンクールに招かれ、演奏・マスタークラスを行なっている。教育者としては、ジュリアード音楽院プレ・カレッジのギター科創設者であり、コロンビア大学で 10年間に渡って教鞭を執った。2005 年にベルギーのブリュッセル王立音楽院ギター科教授に就任、2015 年には同音楽院よりその功績を讃え表彰された。2007 年よりイタリア・トスカーナでサマーワークショップを開講。英国王立音楽アカデミー会員、彼女の国際的活躍に対し同アカデミーより名誉准教授号が授与された他、1990 年にはジュリアン・ブリーム賞を故ダイアナ妃より授与された。NAXOSとKOCHレーベルよりCDをリリース、「詩的で豊かな表情とエキサイティングなテクニック」と評され、彼女のアルバムは、カナダの音楽学者エンリック・ロビーシャウトが選んだ「クラシックギター Top 100」にも選出されている。また、オーガスタ・リード・トーマス、セルジオ・アサド、デュージャン・ボグダノヴィチら多数の作曲家が彼女へ作品を献呈している。サマーワークショップ http://www.volterraguitar.org ブリュッセル王立音楽院 http://www.kb.be

アンティゴーニ・ゴーニ(ギリシャ)

【ディスコグラフィー】●【ソロ】「Laureate Series」(1998)/「Barrios:Guitar Music, Vol.1」(2001)/「John Duarte:Guitar Music」(2001)/●【アンソロジー】「Spanish Guitar: Timeless Collection」(2002)/●【室内楽】「Songs And Dances From The New Village」[ローラ・ギルバート (Ft)](2007)

【最新盤】 Hymn to the muse(ミューズへの讃歌) [2016 年春発売予定]http://www.timespanrecordings.co.uk[収録曲]Psi Pi Sigma(S. アサド)/ Eridos(シルバーマン)/ 3 songs from Gioconda's smile(ハジダキス~ペラモ)/ 2 Epita� i(テオドラキス)/Hymn to the muse(ボグダノヴィチ)/ 4 Greek miniatures(ウルクズノフ) ※すべてアンティゴーニ・ゴーニへ献呈。初演も彼女。15 年間に渡る作曲家たちとのコラボレーションを集大成したアルバム。収録曲のすべてが古代から現在に至るまでのギリシャの文化や伝統に触発された作品である。

【日本の若いギタリストへのメッセージ】しっかりと地に足を付けつつも、理想へと向かって進んでください。決して諦めないで!

【使用ギター】ホセ・ルイス・ロマニリョス(1999)、アンドレア・タッキ(2013)、使用弦:ガリ(Galli)

ウェブサイト http://www.antigonigoni.com/ Facebook https://www.facebook.com/AntigoniGoni/?ref=hl 

【プロフィール】母方が代々ゲルボスという姓をもつ名門音楽家の流れを汲み、マリア・エステルはその第 8代目にあたる。オランダからスペインにやってきた第 1代は、カルロス 1世の聖歌隊に入り、その後の長い音楽家系の基盤を築いた。この名家を引き継ぐマリア・エステルはセビーリャに生れ、4歳で同地のロペ・デ・ベガ劇場でデビュー。11歳でスペイン国営放送局主催の音楽コンクールで優勝し、12歳の時に巨匠アンドレス・セゴビアにその演奏を讃えられた。アンドレス・セゴビア国際ギターコンクール他、国内外での国際コンクールでの優勝・入賞多数。1994 年アンダルシア音楽賞、また、“フリアン・アルカス”のCDで音楽誌『リズム』より特別音楽賞を受賞。1998 年にはセビーリャ音楽協会より、音楽家生活 25周年(銀婚式)を表彰される。2002 年にセビーリャのサンタ・イサベル・デ・フングリア王立アカデミーの会員に任命され、最近では、バレンシア音楽堂にて芸術文化功労賞を受賞し、2012 年末にはリナーレス市のアンドレス・セゴビア財団より、アンドレス・セゴビア賞のメダルを授与されている。日本には、1988 年からのツアーが毎年恒

María Esther Guzmánマリア・エステル・グスマン(スペイン)

例になっており、これまでに1枚のレコード、27枚のCD、3本のビデオ、DVD「レイエンダ~伝説~」など多数。2015 年、自身の編曲による楽譜集を多数出版、好評発売中。現在はヨーロッパ、アメリカ、アジアの主要ホールにてソロ演奏、また各国の主要オーケストラとの共演、フルート、オルガン、ヴァイオリンとの共演を活発に行なっている。またサン・フランシスコ音楽院にて教鞭を執り、海外でも多くのマスタークラスを行なっている。

ウェブサイト https://www.mariaestherguzman.eu 

【使用ギター】◎アルカンヘル・フェルナンデス(2007、2011)、サントス・エルナンデス(1934)[※ レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサが〈アランフエス協奏曲〉初演時に使用したギター]

Gendai Guitar 27

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Gendai Guitar 41

●「音の旅」を振り返って――還暦を迎えられたということですが、これについて感慨深いものはありますか?福田 僕はその~、自分が還暦を迎えたからと言ってね、取り立ててどうこうと言うことはないし、何かが急に変わるとも思っていません。有難いことに、毎年恒例の現代ギター社主催のニューイヤーコンサートを「還暦記念」として開催してくださる訳だけれど、自分としては、還暦を謳って何かをしようとは考えていませんでした。――そうですか(笑)。こうしたインタビューの場合は、よく「これまでの演奏活動を振り返ってみてどうですか?」とお尋ねするんですが、やはりパリ国際ギターコンクールでの優勝は大きかったのでしょうか?福田 うん、そうですよね。2016 年はパリ国際ギターコンクールから 35 年目になるんですよ。“パリコン”はもう無くなってしまいましたし、今となっては伝説のコンクールとなっていますが、僕が優勝したのが 1981 年なので、それから 35 年ということですね。今年はそういう節目でもあります。当時のギターの演奏というのは、今の時代とは全然違いましたし、ヨーロッパではギターが一番盛り上がっていた時代でした。そういう時期に優勝出来たのは非常にラッキーだったと思います。――あの頃の方が熱かったですか?

福田 1980 年、81 年、82 年あたりというのは、クラシックギターにおける豊饒の季節と言うか、ギター界の一つのクライマックスだったと思います。パリ国際は当時の世界最高峰のギターコンクールであった訳で、そこで優勝出来たことは、やっぱり大きいことですよね。――あの頃のパリコンは、凄い人が並んでいますね。福田 コンクールと同時に「ギター週間」みたいなものが開催されていて、アサド兄弟がパリ・デビューして、次の日にはバルエコが弾く、今考えると凄いメンバーがゲストとして出演していた。う~ん、懐かしいですね。――現代ギター社との付き合いは、その頃からですか?福田 その前から『現代ギター』のためにレポートは幾つか書いていました。1979 年のジョン・ウィリアムスのマスタークラスのレポートなどを書いたと思います。まだ僕は全く無名だったし、当時の河野 賢社長にね、「どこの馬の骨だか分からない」と言われました(笑)。でも、それから凄く仲良くなりました。――新作の初演や作品委嘱も数多く手がけられていますが、その中で特に印象に残っている曲はありますか?福田 ブローウェル〈ギターのための HIKA(悲歌)~イン・メモリアム・トオル・タケミツ〉には想い入れがありますね。現代ギター社からブローウェルに作品委嘱が出来ないかと持ち掛けられて、「じゃあ僕が間に入っ

「音の旅」は続く……2015 年 11 月 19 日 現代ギター社インタビューア:渡邊弘文

福田進一Shin-ichi Fukuda 60th AnniversaryShin-ichi Fukuda 60th Anniversary

福田進一©Yayoi Arimoto

040-42:福田進一インタビュー.indd 41 2015/12/10 15:51:21

44 Gendai Guitar

イーストエンド国際ギター・フェスティバルは、今年 2016年から会場を東京都江東区に新築された豊洲シビックセンターホールに替えて、秋と冬の2回開催することになった。その先駆けと、豊洲シビックセンターホールのオープン記念イベントを兼ねて、フランスから“怪物”ジュディカル・ペロワを招いてリサイタルが開催された。この会場は豊洲駅に隣接し、広いステージの背面からはガラス越しに東京湾をまたぐアクアラインの夜景が望める。客席数 300 で響きも良く、ギターに好適なホールがまた一つ増えたことは喜ばしい。ペロワは平然とバッハの組曲から弾き始める。難曲に挑む、という緊張感はなく、単音から徐々に声部が増えていってもまったく乱れることなく、完璧なポリフォニーを構築してい

く。曲間も調弦なしで適度な間合いをとって次の楽章に進む(もちろん、調弦の必要がなかったからだが)。生の演奏で、「組曲」を一つの作品として聴けることは初めての経験であった。続く曲目のいずれも、驚異的な演奏技術と指揮者のごとき表現力で、聴く者を圧倒させた。プログラム:リュート組曲第 2 番 BWV997(バッハ)、ブラジル民謡組曲(ヴィラ=ロボス)、ハンガリーの主題による幻想曲(ドゥベツ)、エキノクス(武満 徹)、左手のための前奏曲(スクリャービン)、郷愁のショーロ(ヴィラ=ロボス)、ソナタ第 3 番(ポンセ)、カタルーニャ、セビーリャ(アルベニス)

[2015 年 10 月 30 日/東京・豊洲シビックセンターホール]

ジュディカエル・ペロワJudicael Perroy

写真:東 昭年

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──以前、錦織さんにこの対談シリーズに出ていただいたのは、7 年前(2008 年 6 月号)になりますが、実は 2回出て頂くというのは滅多にないことなんです。それが実現したのは、最近、錦織さんがクラシックギターの演習にますます熱を入れていらっしゃるという話が伝わってきたからでして(笑)。錦織 いえいえ、それほど練習はしていませんが、最近この GG ショップで素晴らしいギターを買わせていただいたんです。──何か名器をお買いになられたとか?錦織 イタリア製の楽器なんですけれども、実はそれまで使っていた楽器を落として壊してしまいまして、それを修理するついでに「いい楽器があったら紹介してほしい」ということを荘村(清志)さんを通じて現代ギター社さんにお願いしたんです。今回、その楽器を買わせていただいたおかげで、またギターを楽しんで弾くことができています。

──以前は「『カルカッシギター教本』からまたやり直しだ」とおっしゃっていましたが。錦織 実はカルカッシには戻らなくて……結局、またジャカジャカやっています。基礎をあまりやらずに人前で弾くようになったので、ショーアップすることばかりを覚えてしまって、申し訳ない限りです(笑)。──コンサートなど人前でギターをお弾きになることは多いんですか?錦織 私の場合、歌いながらなので“演奏だけ”というのはないんです。ステージで弾く場合は、座って落ち着いてというわけにはいかなくて、歩き回りながら弾いています。──「セビーリャの理髪師」なんか演奏なさるんですか?錦織 オペラで演奏しましたね。少しアレンジして、我流で変えてしまったところもありますけど、その時はたまたまプロギタリストの方がお聴きになられていて「あんな卑怯なワザがあったのか!」と言われてしまいま

No.34写真 宮島折恵

52 Gendai Guitar

錦織 健Ken Nishikiori(テノール歌手)

国立音楽大学卒業。文化庁オペラ研究所第 5 期修了。文化庁在外研修員としてミラノに、また五島記念文化財団の留学生としてウィーンに留学。第17 回ジロー・オペラ賞新人賞、第 4 回グローバル東 敦子賞、第 1 回五島記念文化賞新人賞、第 6回モービル音楽賞邦楽部門奨励賞受賞。1986年『メリー・ウィドウ』カミーユ役でデビュー、以降『こうもり』アルフレード、『魔笛』タミーノ、『セビーリャの理髪師』マルマヴィーヴァ伯爵、『ドン・ジョヴァンニ』ドン・オッターヴィオ、『椿姫』アルフレード役の他、三木 稔〈静と義経〉や三枝成彰〈忠臣蔵〉といった邦人作品にも意欲的に出演し、好評を博している。また、ベートーヴェン『ミサ・ソレムニス』『交響曲第 9 番』、ヘンデル『メサイア』等のソリストとして高い評価を受け、親しみやすいトークを交えたリサイタルでも多くのファンを魅了している。2002 年からはオペラ・プロデュースも始め、2015年 2~3月には第6弾モーツァルト作曲〈後宮からの逃走〉も手掛けた。

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写真:木田新一

愛器を語る

竹内太郎 ◆マーシャル(パリ)作5コース・バロックギター

(1760-80 頃 )

Taro Takeuchi京都生まれ。立教大学法学部卒業後、ロンドン市奨学金を得て英国ギルドホール音楽院に留学。リュート、アーリーギター、および通奏低音をナイジェル・ノース氏に師事。1997 年から 1 年間、文化庁在外派遣芸術家としてバッハおよび 17、8 世紀のギター音楽の演奏研究を行なう。1998 年からイギリスに定住し、本格的に海外での活動を行なっている。1998 年度ワルシャワ・ショパン音楽院招聘教授。通奏低音奏者として、これまでにベルリンフィルハーモニー、英国王立オペラハウス、ナイジェル・ケネディ、サイモン・ラトル、レイチェル・ポッジャーなどと共演。CD / DVD など多数。ソロ CD としては『フォリアス!』『ギターの世紀』『アフェットーソ』『可愛いナンシー』などがある。古楽器とその奏法に関する記事/論文も多い。英国リュート協会(LS)前理事、日本リュート・アーリーギター協会(LGS)ディレクター公式 HP:http://tarolute.crane.gr.jp/。 写真:木田新一

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