小児喘息...【主訴】発熱、喘鳴...

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小児喘息

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Page 1: 小児喘息...【主訴】発熱、喘鳴 【現病歴】近医にて気管支喘息と診断され、オノンドライシロップの定 期内服と、発作時はメプチンとインタールの吸入でコントロールして

小児喘息

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【主訴】発熱、喘鳴

【現病歴】近医にて気管支喘息と診断され、オノンドライシロップの定

期内服と、発作時はメプチンとインタールの吸入でコントロールして

いた。9/4朝、起床後より咳嗽を認め、メプチンとインタールの吸入を

しても効果がなかった。夜になり喘鳴が出現し、入眠困難となった。

9/5、症状軽快しないため再度吸入を行うも改善を認めず、当科外来

を受診した。

【家族歴】父:アトピー、花粉症

【既往歴】気管支喘息

【使用薬剤】オノンドライシロップ、発作時はメプチン+インタール吸入

【症例】4歳男児

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【入院時現症】

身長 102.0cm, 体重 17.0kg, Kaup指数16.3

体温 38.4℃ 血圧 90/42mmHg 脈拍 146/min ・整 呼吸数 42/min

SpO2 94-5%(ra)

頭頸部:咽頭発赤+、頸部リンパ節腫大なし

胸部:wheeze +、陥没呼吸+、心音異常なし

腹部:平坦・軟、肝脾腫大なし

皮膚:明らかな皮疹なし、末梢冷感なし

【症例】4歳男児

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検査結果

【血算】

WBC 11500 /μl

St 2.0 %

Seg 79.5 %

Lym 11.0 %

Eos 2.4 %

Baso 0.3 %

Mono 3.9 %

RBC 485 万/μl

Hb 14.0 g/dl

Hct 38.9 %

Plt 20.2 万/μl

【尿定性】

蛋白 (±)

潜血 (ー)

白血球 (ー)

亜硝酸 (ー)

ケトン体 (ー)

ビリルビン (ー)

【一般生化】 TP 6.8 g/dl

Alb 4.5 g/dl

T-bil 0.4 mg/dl

ALT 24 IU/l

AST 10 IU/l

LDH 262 IU/l

CK 100 IU/l

BUN 11.6 mg/dl

Cr 0.41 mg/dl

UA 4.4 IU/l

Na 138 mEq/l

K 4.1 mEq/l

Cl 103 mEq/l

IgE 380 IU/ml

CRP 3.54 mg/dl

【ウイルス】

溶連菌 ー

アデノ ー

【血液ガス(vein)】

pH 7.397

pCO2 40.3 mmHg

pO2 39.6 mmHg

HCO3 24.2 mmol/l

BE -0.6 mmol/l

tCO2 25.5 mmol/l

tHb 14.8 g/dl

Hct 44 %

O2Hb 72.7 %

COHb 1.6 %

MetHb 0.3 %

HHb 25.4 %

sO2 74.2 %

O2CAP 20.2 ml/dl

ctO2 15.1 ml/dl

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臨床経過

Day1 Day4

入院

退院

メプチン0.1ml + インタール2ml

プロタノール 17A

オノンドライシロップ 7mg/kg

SBT/ABPC 150mg/kg/day

CAM 13.5mg/kg/day

34

36

38

40

42 体温

mPSL 1mg/kg/dose×3

90

92

94

96

98

100

SpO2(ra)

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定義

発作性、反復性に起こる気道狭窄によって、喘鳴や呼気延長、呼吸困難を繰り返す疾患。

これらの臨床症状は自然ないし治療により軽快、消失する。

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成因と病態

環境因子

アレルゲン 感染 受動喫煙 大気汚染

遺伝因子

気道炎症 気道過敏性

リモデリング

誘発・悪化因子

アレルゲン 気候 感染 運動 受動喫煙 心理要因 大気汚染

気流制限 喘息症状

気管支平滑筋収縮 気道粘膜浮腫 気道分泌亢進

喘鳴 呼気延長 呼吸困難

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疫学

• 1980年から2000年にかけ、小学生の有病率は2倍に増加

• 全体の3/4が2歳までに初回発作を経験する

幼稚園 小学生 中学生 高校生

男(期間有病率) 23.1% 15.6% 9.7% 8.5%

女(期間有病率) 16.6% 11.4% 9.4% 8.2%

重症発作 1.8% 1.3% 1.9% 1.9%

アレルギー疾患との合併率

35.3% 33.5% 33.1%

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喘息死

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危険因子

1. 生体因子

1. アレルギー素因と遺伝子

2. 気道過敏性

3. 性差

2. 環境因子 1. アレルゲン

2. 呼吸器感染

3. 大気汚染

4. 受動喫煙

5. 食品、食品添加物

6. 寄生虫感染

7. 運動

8. 気象

9. 薬物

10. 激しい感情表現、ストレス

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症状・理学所見

• 喘鳴、胸が重い感じ、咳、痰、呼吸困難

・発作的に発症し、特に夜〜早朝にかけて多い

・季節的変動がある

・アレルゲンや刺激物質の吸入、冷気、天候の変化、

ストレス、運動、感染などが発症の契機となる

• 呼気性狭窄音、呼気延長、陥没呼吸、努力呼吸

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検査

気道炎症 気道過敏性

リモデリング

気流制限 喘息症状

呼気NO

喀痰細胞診 気道過敏性試験

・運動負荷

・アセチルコリン吸入

・メサコリン吸入

胸部X-p

血液ガス

フローボリューム曲線

ピークフロー

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呼気NO濃度測定・喀痰細胞診

• 気道粘膜の好酸球浸潤・気管支肺胞洗浄液中の好酸球数と相関し、気道炎症の指標となる

• 20ppb未満では好酸球性の気道炎症である可能性が低く、ステロイドの効果が期待できない

• 35ppb以上ではステロイドの効果が期待できる

• 喀痰中の細胞数が20%以上なら喘息が疑われる

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気道過敏性検査

基準1秒量

1mg/mL未満で

過敏性あり

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呼吸機能検査

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血液検査、レントゲン検査

• 血清総IgE値の増加、抗原特異的IgE陽性

• 好酸球数高値

• CO2の貯留

• 肺の過膨張、滴状心、横隔膜の平坦化

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鑑別 • 先天異常、発達異常に基づく喘鳴

大血管奇形

先天性心疾患

気道の解剖学的異常

喉頭、気管、気管支軟化症

繊毛運動機能異常

• 感染症に基づく喘鳴

鼻炎・副鼻腔炎

クループ

気管支炎

細気管支炎

肺炎

気管支拡張症

肺結核

• その他

過敏性肺炎

気管支内異物

心因性咳嗽

声帯機能異常

気管、気管支の圧迫

肺浮腫

cystic fibrosis

サルコイドーシス

肺塞栓症

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発作強度

• 乳幼児期に喘鳴の既往がある群の60%は6歳の時点で喘鳴が消失する。

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発作強度2

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重症度分類

重症度 症状程度ならびに頻度

間欠型 ・年に数回、季節性に咳嗽、軽度喘鳴が出現する。

・時に呼吸困難を伴うこともあるが、β2刺激薬の頓用で短期間で症状は改善し、持続しない。

軽症持続型 ・咳嗽、軽度喘鳴が1回/月以上、1回/週未満

・時に呼吸困難を伴うが、持続は短く、日常生活が障害されることは尐ない。

中等症持続型 ・咳嗽、喘鳴が1回/週以上。毎日は持続しない。

・時に中・大発作となり、日常生活が障害されることがある。

重症持続型 ・咳嗽、軽度喘鳴が毎日持続する。

・週に1-2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が障害される。

最重症持続型 ・重症持続型に相当する治療を行っていても症状が持続する。

・しばしば夜間の中・大発作で時間外受診し、入退院を繰り返し、日常生活が制限される。

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治療のポイント

• 発作治療薬(レリーバー)

短時間作用型気管支拡張薬

ステロイド薬の短期増量

• 長期管理薬(コントローラー)

抗炎症薬

長時間作用型気管支拡張薬

コントローラーにより慢性の気道炎症を良好にコントロールする

ことを主眼とし、発作時にはレリーバーの使用により急性増悪を

軽減・治療し、患者の重症度に応じて良好な長期管理を行う。

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急性期管理

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急性期管理

SABA

15-30分後に効果判定、

20-30分間隔で3回まで反復可

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急性期管理

mPSL 0.5-1.0mg/kg/dose

30分以上かけ点滴静注

6-12時間毎に反復

できる限り短期間で中止する

漸減の必要はない

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急性期管理

0.2mg/kg(1-5mg)を生理食塩水500mLに溶解し吸入

心電図でHR、心拍数をモニター

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急性期管理

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気管挿管の適応基準

①呼吸状態が改善しないにもかかわらず、呼吸音の低下、

喘鳴の減弱が認められる。

②意識状態が悪化し、傾眠~昏睡状態になる。

③十分な酸素を投与してもPaO2が60mmHg未満である。

④PaCO2が65mmHg以上、または1時間に5mmHg以上上昇する。

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急性増悪の合併症 Air leak 症候群

気道閉塞による局所的な気道・肺胞内圧の上昇

→皮下気腫・縦隔気腫。気胸は稀

胸痛・咳嗽・皮下の腫脹、背部への放散痛

縦隔気腫ではHamman’s sign、皮下気腫では圧雪感、圧痛、気胸では患側の呼吸音減弱、打診で鼓音を呈する。

機序

症状

理学所見

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急性増悪の合併症 Air leak 症候群2

胸部X線撮影

喘息の治療を優先し、肺胞内圧、気道内圧を低下させて自然吸収を期待する。間欠的陽圧呼吸は気腫を増悪させ、人工呼吸管理中には緊張性気胸のリスクがある。

気胸が高度の場合は胸腔穿刺による脱気や持続吸引を行う。

診断

治療

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急性増悪の合併症 無気肺・肺虚脱

気管支の狭窄や粘膜浮腫、分泌物貯留などによる気管支内腔の閉塞によって肺の含気が減少、消失した状態。

無症状で胸部X線によって偶然発見されることもある。 呼吸困難、胸痛、乾性咳嗽、発作強度に相当する以上の低酸素血症、チアノーゼなど。

機序

症状

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急性増悪の合併症 無気肺・肺虚脱2

胸部X線、CTによる。

右肺中葉に起こることが多く、正面像で心陰影右第2弓のシルエットサインとして認められる。

喘息発作の改善を図ることが優先。 体位ドレナージ、理学療法、去痰薬なども考慮。

診断

治療

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長期管理の目標

1.症状のコントロール

・β2刺激薬の頻用が減尐、または必要がない

・昼夜を通じて症状がない

2.呼吸機能の正常化

・ピークフロー(PEF)やスパイログラムがほぼ正常で安定

・気道過敏性が改善し、運動や冷気による症状誘発がない

3.QOLの改善

・スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる

・治療に伴う副作用がみられない

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長期管理

治療ステップ1 治療ステップ2 治療ステップ3 治療ステップ4

基本治療

・発作の強度に応じた薬物療法

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

And/or

・DSCG

・吸入ステロイド薬(中用量)

・吸入ステロイド薬(高用量)

追加治療

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

And/or

・DSCG

・吸入ステロイド薬(低用量)

・ロイコトリエン受容体拮抗薬

・長時間作用型β2刺激薬

・長時間作用型β2刺激薬

・テオフィリン徐放製剤

間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型

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ロイコトリエン拮抗薬(LTRA)

• 急性増悪や慢性炎症に関与する、LTC4, LTD4, LTE4の作用を遮断

• 好酸球性炎症や気道リモデリングの抑制効果を有する

• 呼吸器ウイルス感染に関連する症状の悪化を抑制

• 発作症状の軽減、呼吸機能の改善などの効果は使用開始1-2週間で認められる

• ステロイド薬の減量効果

• 副作用は発疹、下痢・腹痛、肝機能障害など

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クロモグロク酸ナトリウム(DSCG)

• マスト細胞からの化学伝達物質遊離を抑制

• アレルギー性、神経原性炎症反応を抑制

• 発症早期の使用が有用で、症状の抑制や呼吸機能の改善、併用薬の減量などの臨床効果

• 前投与により冷気や運動によって誘発される気道収縮も予防できる

• 中等症以上の小児に対する効果は弱く、ステップ1-2までの使用が推奨される

• 副作用は発疹、咽喉頭への刺激感や咳の誘発、発疹など

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吸入ステロイド薬(ICS)

• 直接気道に到達して炎症を抑制

• 全身性の副作用が殆ど無い

• 症状の消失、呼吸機能の改善、QOLの向上などの臨床効果

• 使用中断による再燃が多い

• 小児喘息の寛解率を上昇させるエビデンスはない

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β 2刺激薬の是非

• β受容体のdown regulationによる効果の減弱

• Th2細胞活性化による気道過敏性の亢進

• 低酸素化では、心血管系のβ受容体感受性が増加し負担増

• 連用による喘息の悪化、死亡率の増加

• ステロイドはβ2受容体の合成を促進

• β2刺激薬はステロイド受容体を活性化し、核内への移動を促進

→併用することで、それぞれの単独使用より治癒率が向上し、悪化リスク減尐

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まとめ

• 気管支喘息は、発作性、反復性に起こる気道狭窄によって、喘鳴や呼気延長、呼吸困難を繰り返す疾患

• 治療の目標は症状、呼吸機能、QOLを正常に保ち、健常人と変わらない日常生活を送れること

• 治療は急性期管理、長期管理に大きく分けられる

• 急性期管理のキードラッグはSABA、ICS

• 長期管理のキードラッグはLTRA、ICS

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病型分類

アトピー型:外来抗原に特異的なIgE抗体を証明しうるもの。

非アトピー型:証明できないもの。

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アミノフィリン

• キサンチン誘導体.強力な気管支拡張作用を持つ

• 血中濃度の治療域は8-15μg/kg

• 濃度依存性に副作用(痙攣など)の発現頻度が増加する

• 血中濃度をモニターし、10μg/mLを目標に設定

• 発熱、ウイルス感染などに伴い血中濃度が上昇することに注意

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アミノフィリン 投与量

• キサンチン誘導体、強力な気管支拡張作用を持つ

• 血中濃度の治療域は8-15μg/kg

• 濃度依存性に副作用(痙攣など)の発現頻度が増加

• 血中濃度10μg/mLを目安に設定する

• 発熱、ウイルス感染などに伴い血中濃度が上昇する

初期投与 維持量

6ヶ月-1歳 3-4mg/kgを30分かけdiv

0.4mg/kg/hr

1歳-2歳 0.8mg/kg/hr

2歳-15歳 4-5mg/kgを30分かけdiv

0.8mg/kg/hr

15歳以上 0.6mg/kg/hr

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投与が推奨されない例

1) 痙攣既往者、中枢神経系疾患合併例

2) テオフィリン血中濃度の測定ができない施設における、下記の患者

①アミノフィリンやテオフィリン製剤による副作用の既往

②テオフィリン徐放製剤を定期的に内服中で、血中濃度が15μg/mL以上に維持されている患者

③テオフィリン製剤の使用状況を性格に把握できない患者

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β 2刺激薬の是非

• ステロイドと併用しても喀痰の好酸球数は増加したまま

• ステロイド投与により呼気中NOは低下するが、β刺激薬併用はこれを抑制する

→必ず十分量のステロイドと併用し、長期間の投与は避ける