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口腔ケアでいい歯いきいき いつまでも健康な生活を! 2014/1/19  区民のための健康講座 東京都中野区歯科医師会 篠田純  shinodashika.or.tv

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東京都中野区歯科医師会で2014/1/19に行われた区民のための「お口の健康講座」。口腔ケアについて篠田歯科・篠田純が解説

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口腔ケアでいい歯いきいき いつまでも健康な生活を!

2014/1/19  区民のための健康講座 東京都中野区歯科医師会 篠田純 

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出典

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財団法人 8020推進財団発行 財団法人8020推進財団102-0073 東京都千代田区九段北4-1-20 新歯科医師会館内TEL(03)3512-8020 FAX(03)3511-7088http://www.8020zaidan.or.jp/

制作協力・販売 株式会社社会保険研究所101-8522 東京都千代田区内神田2-4-6 WTC内神田ビルTEL(03)3252-7901(代) FAX(03)3252-7977

平成12年12月1日に歯科に関係のある各種団体、企業の協力のもと、厚生労働大臣の認可を得て設立された財団です。財団の事業は、8020運動の推進はもとより、口腔と全身との関係に関する情報の収集・提供・調査研究などを主な柱としています。

21世紀における国民健康づくり運動として、8020運動を国民運動として発展させていくために活動しています。8020運動の達成は、国民と歯科保健医療関係者が一緒になって実現していくものです。8020の実現に向けての運動は、国民の生活文化に積極的にかかわりをもち、今後の高齢社会に対応する新たな価値観をつくり得る保健文化活動、あるいは生活文化運動として発展していくことを期待しています。

8020に関する研究、口腔と全身との関係に関する研究の最先端の情報を収集し、発信していきます。

こ う       く う

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8020運動とは• 8020運動とは、平成元年から厚生労働省と日本歯科医師会が始めた「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。

• 20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物を噛みくだくことができ、おいしく食べら れるといわれています。

2

「老人保健法に基づく 歯の健康教育、歯の健康相談の担当者となったら」榊原悠紀田郎編集より 〈(株)ヒョウロン・パブリッシャーズ〉

 8020運動とは、平成元年から厚生労働省と日本歯科医師会が始めた「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物を噛みくだくことができ、おいしく食べられるといわれています。  実際に、80歳を超えて20本以上の歯がある人は、毎日元気に過ごしていることが広く知られるようになり、8020の大切さが認められてきています。

●自分の歯が20本残っていなくても  歯を抜けたままにせず、義歯(入れ歯)を入れることにより、かなり噛む力が回復できます。  仮に歯が1本もなくても、義歯を入れることにより、口の機能がかなり維持でき、食べたり話したりして生活を楽しむことができるのです。  口の構造、歯の役割、口の役割を理解し、どのようにしたら8020を達成できるかを知っておくことが大切です。

【8020達成者の割合】

【おいしく噛めるために必要な歯の本数】

年 齢

75~79歳 80~84歳

80歳(推定値)

一人平均現在歯数(本) 20歯以上を有する者の割合(%) 平成5年 6.72 5.14 5.93

平成11年 9.01 7.41 8.21

平成5年 10.00 11.70 10.85

平成11年 17.50 13.00 15.25

平成11年歯科疾患実態調査(厚生労働省)より

フランスパン 酢ダコ

かまぼこ

うどん

バナナ

ナスの煮付け

おこわ 豚肉(薄切り)

れんこん

せんべい

きんぴらごぼう

スルメイカ

たくあん

堅焼きせんべい 0~5歯

6~17歯

18~28歯

1

 食べることは、生きるということです。  自分の歯で、毎日食事をおいしく食べることは心と体の健康を保ち、QOL(生活の質)を高め、人生をより一層豊かなものにしてくれます。  しかし、歯の状態がよくないと、栄養の摂取がうまくいかなくなり、活力が出なくなります。動物も歯を失って食べられなくなると生きていけなくなり、それは「死」を意味します。

 ゆっくりとよく噛むことによってあごや歯ぐきが鍛えられ丈夫になります。また、唾液の分泌がよくなり、胃や腸での消化・吸収を高めます。  健康でいきいきとした生活を送るには、何よりも噛める歯をいつまでも保つことが大切です。

●健康寿命は口のケアから  これからの日本の目標は、健康寿命の延伸です。健康寿命とは、健康で明るく元気に生活する期間、つまり寝たきりや痴呆にならない期間のことです。  そのためには、歯と口をケアし、歯の寿命を延ばすことが大切です。8020運動を続けていくことによって、歯の寿命を延ばし、健康寿命を延ばすことが可能です。

か だ

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食べることは、生きること• 自分の歯で、毎日食事をおいしく食べることは心と体の健康を保ち、生活 の質を高め、人生をより一層豊かなものにしてくれます。

• しかし、歯の状態がよくないと、栄養の摂取がうまくいかなくなり、活力が出なくなります。

• 健康でいきいきとした生活を送るには、何よりも噛める歯をいつまでも保つことが 大切です。

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「老人保健法に基づく 歯の健康教育、歯の健康相談の担当者となったら」榊原悠紀田郎編集より 〈(株)ヒョウロン・パブリッシャーズ〉

 8020運動とは、平成元年から厚生労働省と日本歯科医師会が始めた「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。20本以上の歯があれば、ほとんどの食べ物を噛みくだくことができ、おいしく食べられるといわれています。  実際に、80歳を超えて20本以上の歯がある人は、毎日元気に過ごしていることが広く知られるようになり、8020の大切さが認められてきています。

●自分の歯が20本残っていなくても  歯を抜けたままにせず、義歯(入れ歯)を入れることにより、かなり噛む力が回復できます。  仮に歯が1本もなくても、義歯を入れることにより、口の機能がかなり維持でき、食べたり話したりして生活を楽しむことができるのです。  口の構造、歯の役割、口の役割を理解し、どのようにしたら8020を達成できるかを知っておくことが大切です。

【8020達成者の割合】

【おいしく噛めるために必要な歯の本数】

年 齢

75~79歳 80~84歳

80歳(推定値)

一人平均現在歯数(本) 20歯以上を有する者の割合(%) 平成5年 6.72 5.14 5.93

平成11年 9.01 7.41 8.21

平成5年 10.00 11.70 10.85

平成11年 17.50 13.00 15.25

平成11年歯科疾患実態調査(厚生労働省)より

フランスパン 酢ダコ

かまぼこ

うどん

バナナ

ナスの煮付け

おこわ 豚肉(薄切り)

れんこん

せんべい

きんぴらごぼう

スルメイカ

たくあん

堅焼きせんべい 0~5歯

6~17歯

18~28歯

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 食べることは、生きるということです。  自分の歯で、毎日食事をおいしく食べることは心と体の健康を保ち、QOL(生活の質)を高め、人生をより一層豊かなものにしてくれます。  しかし、歯の状態がよくないと、栄養の摂取がうまくいかなくなり、活力が出なくなります。動物も歯を失って食べられなくなると生きていけなくなり、それは「死」を意味します。

 ゆっくりとよく噛むことによってあごや歯ぐきが鍛えられ丈夫になります。また、唾液の分泌がよくなり、胃や腸での消化・吸収を高めます。  健康でいきいきとした生活を送るには、何よりも噛める歯をいつまでも保つことが大切です。

●健康寿命は口のケアから  これからの日本の目標は、健康寿命の延伸です。健康寿命とは、健康で明るく元気に生活する期間、つまり寝たきりや痴呆にならない期間のことです。  そのためには、歯と口をケアし、歯の寿命を延ばすことが大切です。8020運動を続けていくことによって、歯の寿命を延ばし、健康寿命を延ばすことが可能です。

か だ

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歯を失う2大原因は むし歯と歯周病

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 歯を失う2大原因は、むし歯と歯周病です。歯周病は年齢とともに悪化し、40歳以降、急速に歯が失われる原因となります。また、高齢者になるとむし歯で歯を失う人も増加していきます。  歯周病はむし歯と違い痛みがなく、気づいたときには症状がかなり進んでいることが多いので注意が必要です。  むし歯や歯周病の予防には、歯垢(プラーク)や歯石をきれいに取り除く必要があります。また、喫煙、糖分の摂り過ぎ、ストレスなどの生活習慣の改善や年に2~3回の定期健診が大切です。 【年代別の歯を失う原因】

出典:2001年 森田ら 改変

016~259~15 26~35 36~45 46~55 56~65 66~75 76~85 86~93(歳)

50

100

むし歯の発生原因 むし歯は、口の中の細菌、糖分の摂取、歯の質や唾液の性質が複雑にからみ合って発生します。 ●むし歯菌  歯垢が住みか ●糖分  むし歯菌も甘いものが大好き ●歯の質  栄養のバランスが悪いとエナメル質が弱くなる

歯周病の発生原因 歯と歯ぐきの境目に歯垢・歯石がたまると、その中にいる歯周病菌が歯ぐきに炎症を引き起こします。さらにそこにさまざまな要因が加わると歯ぐきの出血や腫れが続き、ついには歯が抜けてしまいます。 ●細菌因子  歯周病菌をかかえこむ歯垢が原因 ●環境因子  喫煙、ストレス、不規則な生活などの生活習慣 ●老化や遺伝的要因  老化や遺伝などに加え、糖尿病や肥満、骨粗し ょう症など

(%)

むし歯

外傷、 矯正、 その他

歯周病

■ガムと歯の健康  ガムは、眠気覚ましやストレスを和らげるのに役立ちます。また、口の中をすっきりとさせる消臭効果のほか、噛むことで唾液の分泌が促進され、歯垢を取り除くなどの効果があります。  また、天然の甘味料でむし歯の原因となる酸をつくらないことで知られる「キシリトール」など、歯を丈夫で健康にする成分が含まれているガムもあります。

し こう

3

 口は、体の玄関であるだけでなく、健康の玄関でもあります。そして、歯は食べ物を噛みくだき、食道や胃の中に送り込む(嚥下)働きをしています。このほかにも人が生きていくために大切な役割を担っています。こうしたさまざまな歯や口の役割を維持していくためには、普段から歯と口のケアをしっかりと行っていく必要があります。

1)食べること 食べることは、栄養の摂取ばかりではなく、味わう喜びをとおして、生きる意欲につながります。 2)話すこと 歯は、はっきり発音するためにもきわめて重要な働きをしています。歯が1本なくなっただけでも、声が漏れ、聞きづらくなります。 3)脳への刺激 よく噛むと、覚醒をうながします。また、脳を刺激し、血液の循環がよくなり、脳の細胞の働きが活発になります。 4)殺菌作用や免疫物質を含んだ唾液の役割 唾液は、消化作用、食べ物を飲み込む手助けをはじめ、口の中の自浄作用、殺菌作用、粘膜の保護、味わうことを助けるなど、いろいろな働きをもっています。よく噛むことによって唾液の分泌が活発になります。 5)平衡感覚を保つ しっかりした歯とその噛み合わせは、体のバランスを保つために大変重要な役割を果たします。噛み合わせやあごの安定は、歩行の安定にもつながるといわれています。 6)ストレスの発散 食べることによってストレスの発散につながります。歌ったり、笑ったりすることもストレスの発散になりますが、これらも口を積極的に使う行動です。 7)表情をつくる 歯と口の働きで忘れてはならないのが、表情をつくることです。前歯が1本なくなっただけでも、顔全体のイメージは大きく変わってしまいます。また、義歯を入れないでおくと頬がやせてきて、やつれた顔に映ることがあります。

歯や口の大切な役割

えん げ

虫歯と歯周病に注意しましょう!• 歯を失う2大原因は、むし歯と歯周病です。

• 歯周病は年齢とともに悪化し、40歳以降、急速に歯が失われる原因となります。

• また、高齢者になるとむし歯で歯を失う人も増加していきます。

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 歯を失う2大原因は、むし歯と歯周病です。歯周病は年齢とともに悪化し、40歳以降、急速に歯が失われる原因となります。また、高齢者になるとむし歯で歯を失う人も増加していきます。  歯周病はむし歯と違い痛みがなく、気づいたときには症状がかなり進んでいることが多いので注意が必要です。  むし歯や歯周病の予防には、歯垢(プラーク)や歯石をきれいに取り除く必要があります。また、喫煙、糖分の摂り過ぎ、ストレスなどの生活習慣の改善や年に2~3回の定期健診が大切です。 【年代別の歯を失う原因】

出典:2001年 森田ら 改変

016~259~15 26~35 36~45 46~55 56~65 66~75 76~85 86~93(歳)

50

100

むし歯の発生原因 むし歯は、口の中の細菌、糖分の摂取、歯の質や唾液の性質が複雑にからみ合って発生します。 ●むし歯菌  歯垢が住みか ●糖分  むし歯菌も甘いものが大好き ●歯の質  栄養のバランスが悪いとエナメル質が弱くなる

歯周病の発生原因 歯と歯ぐきの境目に歯垢・歯石がたまると、その中にいる歯周病菌が歯ぐきに炎症を引き起こします。さらにそこにさまざまな要因が加わると歯ぐきの出血や腫れが続き、ついには歯が抜けてしまいます。 ●細菌因子  歯周病菌をかかえこむ歯垢が原因 ●環境因子  喫煙、ストレス、不規則な生活などの生活習慣 ●老化や遺伝的要因  老化や遺伝などに加え、糖尿病や肥満、骨粗し ょう症など

(%)

むし歯

外傷、 矯正、 その他

歯周病

■ガムと歯の健康  ガムは、眠気覚ましやストレスを和らげるのに役立ちます。また、口の中をすっきりとさせる消臭効果のほか、噛むことで唾液の分泌が促進され、歯垢を取り除くなどの効果があります。  また、天然の甘味料でむし歯の原因となる酸をつくらないことで知られる「キシリトール」など、歯を丈夫で健康にする成分が含まれているガムもあります。

し こう

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 口は、体の玄関であるだけでなく、健康の玄関でもあります。そして、歯は食べ物を噛みくだき、食道や胃の中に送り込む(嚥下)働きをしています。このほかにも人が生きていくために大切な役割を担っています。こうしたさまざまな歯や口の役割を維持していくためには、普段から歯と口のケアをしっかりと行っていく必要があります。

1)食べること 食べることは、栄養の摂取ばかりではなく、味わう喜びをとおして、生きる意欲につながります。 2)話すこと 歯は、はっきり発音するためにもきわめて重要な働きをしています。歯が1本なくなっただけでも、声が漏れ、聞きづらくなります。 3)脳への刺激 よく噛むと、覚醒をうながします。また、脳を刺激し、血液の循環がよくなり、脳の細胞の働きが活発になります。 4)殺菌作用や免疫物質を含んだ唾液の役割 唾液は、消化作用、食べ物を飲み込む手助けをはじめ、口の中の自浄作用、殺菌作用、粘膜の保護、味わうことを助けるなど、いろいろな働きをもっています。よく噛むことによって唾液の分泌が活発になります。 5)平衡感覚を保つ しっかりした歯とその噛み合わせは、体のバランスを保つために大変重要な役割を果たします。噛み合わせやあごの安定は、歩行の安定にもつながるといわれています。 6)ストレスの発散 食べることによってストレスの発散につながります。歌ったり、笑ったりすることもストレスの発散になりますが、これらも口を積極的に使う行動です。 7)表情をつくる 歯と口の働きで忘れてはならないのが、表情をつくることです。前歯が1本なくなっただけでも、顔全体のイメージは大きく変わってしまいます。また、義歯を入れないでおくと頬がやせてきて、やつれた顔に映ることがあります。

歯や口の大切な役割

えん げ

虫歯と歯周病に注意しましょう!• 歯周病はむし歯と違い痛みがなく、気づいたときには症状がかなり進んでいることが多いので注意が必要です。

• むし歯や歯周病の予防には、歯垢(プラーク)や歯石をきれいに取り除く必要があります。

• また、喫煙、糖分の 摂り過ぎ、ストレスなどの生活習慣の改善や年に2~3回の定期健診が大切です。

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虫歯に注意しましょう!

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虫歯に注意しましょう!

唾液が少なくなると虫歯になりやすくなる

歯ぐきが後退した根元(象牙質)は虫歯に なりやすい→フッ素の応用

上手な歯みがきで虫歯菌を撃退しましょう!

砂糖の入った飲料のダラダラ飲みはダメ!

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虫歯に注意しましょう!

唾液が少なくなると虫歯になりやすくなる

歯ぐきが後退した根元(象牙質)は虫歯に なりやすい→フッ素の応用

上手な歯みがきで虫歯菌を撃退しましょう!

砂糖の入った飲料のダラダラ飲みはダメ!

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虫歯予防にはフッ素が効果的!【フッ素入り歯みがきペースト】  

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【フッ素ジェル】 !

 通常の歯みがきをした後、フッ素ジェルを歯面全体に塗りひろげていただき、そのままお口はゆすがないでいただきます。寝る前に使っていただくのが効果的です。

虫歯予防にはフッ素が効果的!

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歯周病に注意しましょう!

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歯周病に注意しましょう!

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ブラッシングの重要ポイント ①歯と歯ぐきの境目、歯と歯の間②奥歯の後ろ側、奥歯の噛み合う面③前歯の裏側

予防には欠かせないセルフケアと

プロフェッショナルケア

歯と歯ぐきの境目

歯ブラシの当て方

みがき残しが多いところ

歯の外側 前歯の裏側

16 17

正しいケアで歯周病はこわくない

あなたは大丈夫?歯周病セルフチェック

 歯周病は、早く見つければ、ていねいな歯みがきで治ることもあります。次のようなチェックで早めに対処しましょう。

歯周病セルフチェック次の項目の当てはまるものに、チェックしてみてください。

□歯ぐきに赤く腫れた部分がある。

□ 口臭がなんとなく気になる。

□ 歯ぐきがやせてきたみたい。

□ 歯と歯の間にものがつまりやすい。

□ 歯をみがいたあと、歯ブラシに血がついたり、すすいだ水に血が混じること

がある。

□ 歯と歯の間の歯ぐきが、鋭角的な三角形ではなく、おむすび形になっている

部分がある。

□ ときどき、歯が浮いたような感じがする。

□ 指でさわってみて、少しグラつく歯がある。

□ 歯ぐきから膿が出たことがある。

〈判定〉チェックがない場合これからもきちんと歯みがきを心がけ、少なくとも1年に1回は歯科健診を受けましょう。

チェックが1~2個の場合歯周病の可能性があります。まず、歯みがきのしかたを見直しましょう。念のため、かかりつけの歯科医院で、歯周病でないかどうか、歯みがきがきちんとできているか、確認してもらったほうがよいでしょう。

チェックが3~5個以上の場合初期あるいは中等度歯周炎以上に歯周病が進行しているおそれがあります。早めに歯科医師に相談しましょう。

 歯周病予防にも治療中のケアとしても欠かせないのが、歯垢を取り除くために歯をきちんとみがくセルフケア。一般的なみがき方のポイントを紹介しますが、あなたに合った方法を歯科医師や歯科衛生士にアドバイスしてもらうとよいでしょう。

歯みがきがセルフケアの基本

 どんなにていねいにみがいていても、残ってしまう汚れがあるもの。歯周病を防ぐには1年に1~2回は歯科医師にチェック(健診)してもらいましょう。かかりつけ歯科医を決め、定期的に診察を受けておくと、歯ぐきのちょっとした変化にも気づいてもらいやすくなります。 最近は「PMTC」(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)という、専門的な歯のクリーニングを行っている歯科医師も増えています。自分では取り除けない歯周ポケットの歯垢(プラーク)や歯石などを除去したり、歯垢をつきにくくするために歯の表面を滑らかにしたりします。

かかりつけ歯科医は「歯の健康」サポーター

■ブラッシングのコツ ●力を入れすぎず、痛くない程度に小刻みに動かしてみがく。●1本の歯の全ての面を細かくみがく。●みがく順番を決めて、一巡するようにみがくとみがき残しが防げる。● 歯ブラシの角度を変えて、いろいろな歯の面にきちんと毛先が当たるように工夫する。

 歯周病予防には、歯みがきなどのセルフケアに加え、歯科医師や歯科衛生士など、専門家のサポートも欠かせません。

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口腔ケアはセルフケアと プロフェッショナルケアが基本です

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◆食べる意欲の改 善 ◆栄養状態の改善 ◆認知機能の維持・ 回復(痴ほう予防) ◆誤嚥性肺炎のリ スクの回避

◆歯科治療◆器質的  口腔ケア ◆機能的  口腔ケア

 口腔ケアの基本は、自分自身で行う毎日のケア(セルフケア)と歯科医師・歯科衛生士による口腔清掃についてのアドバイス、専門的歯面清掃および口腔機能に対するリハビリテーション(プロフェッショナルケア)です。  また、要介護者ではこれらのケアに加えて、介護職や看護職によるケアが大切になります。

セルフケア ●適切な歯ブラシや歯間清掃用具を選択し、すみずみまできれいに清掃する ●むし歯を引き起こす甘味食品の量を制限し、栄養バランスのとれた食事をよく噛んで食べる ●全身のリラクゼーションを心がけ、顔面、口腔をよく動かし、摂食・嚥下のための良好な口腔機能を保つ ●フッ化物入り歯みがき剤を使用し、むし歯予防に役立たせる ●定期的に歯科健診を受ける プロフェッショナルケア(専門的口腔ケア) ●むし歯、歯周病の状況を診て、全身状態、口腔内の状況に合った 適切な口腔清掃のアドバイス ●日常的には清掃できない部位の専門的歯面清掃 ●口腔機能の維持、回復を図る機能的口腔ケア ●食介護への支援 ●フッ化物洗口など、予防に関係する薬剤の紹介と正しい使い方の指導

◆口腔清掃の自立 度低下 ◆口渇・味覚異常 ◆摂食困難 ◆認知機能の低下 ◆生活機能の低下・ 要介護状態

生活の自立・生きる意欲の向上

【口腔ケアの主な効果】

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 歯と口のケアは、むし歯や歯周病予防のためだけでなく、全身の健康を守るためにとても大切です。  口腔ケアを必要としている人は、身体機能の低下に加え、多くの場合摂食・嚥下障害など何らかの口腔機能の低下がみられ、器質面だけでなく機能面からのケアが欠かせません。口腔ケアは、口腔内の歯や粘膜、舌などの汚れを取り除く器質的口腔ケアと口腔機能の維持・回復を目的とした機能的口腔ケアから成り立っています。この2つが、うまく組み合わされることで、口腔ケアの効果がさらに高まります。

うがい

歯みがき

義歯の清掃

粘膜・舌の清掃

リラクゼーション(脱感作)

口腔周囲筋の運動訓練

咳嗽訓練(せき払い訓練)

嚥下促通訓練

発音・構音訓練

口腔清掃 (器質的口腔ケア)

口腔機能回復 (機能的口腔ケア)

1)むし歯、歯周病の予防 2)口臭の予防 3)味覚の改善 4)唾液分泌の促進 5)誤嚥性肺炎の予防 6)会話などのコミュニケーションの改善 7)生活のリズムを整える 8)口腔機能の維持・回復につながる

口腔ケアには、次のような目的があります。

がい そう

ご えん

口腔ケア

せっ しょく

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プロフェッショナルケア (歯科医院でのケア)

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プロフェッショナルケア (歯科医院でのケア)

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プロフェッショナルケア (歯科医院でのケア)

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プロフェッショナルケア (歯科医院でのケア)

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セルフケア (ご自宅でのお手入れ)

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セルフケア(ご自宅でのお手入れ)

8

舌のケアは、口臭予防に効果的です。 舌の清掃は、忘れられがちですが、細菌の繁殖を抑制するのに有効なケアです。

洗口剤は、抗菌剤を含むものを用いるとブラッシングがうまくできないときやブラッシング後の口腔内の細菌の繁殖を抑制する効果があります。 また、口臭予防にも効果が認められます。

歯間部清掃用器具(歯間ブラシ等)は、清掃効果を高めます。 歯間ブラシは、歯ブラシでは届きにくく、むし歯や歯周病が進行しやすい歯と歯の間の歯垢を効率よく除去します。

■舌の清掃

■洗口剤による口腔清掃

■歯間ブラシ

出典:EBMに基づいた口腔ケアのために 医歯薬出版株式会社

写真提供:府中市民医療センター

7

●歯垢のたまりやすいところ   ①歯と歯の間   ②歯と歯ぐきの境目   ③奥歯の噛み合わせ   ④凹凸しているところ   ⑤背の低い歯

 口腔清掃には、ブラッシング以外にもいくつかの方法があります。歯だけでなく舌や口腔粘膜も含め、ていねいにすみずみまでしっかり清掃しましょう。効果的な清掃の方法や清掃器具の選択については、気軽に歯科医師・歯科衛生士にたずねましょう。

歯ブラシが通らない歯と歯の間に付着している歯垢をかき出します。 歯と歯の間をゆっくりと前後させます。

歯の間に隠れている歯垢や強固に付着している歯垢を除去するのに効果的です。

■デンタルフロス

■電動歯ブラシ

■歯ブラシによる歯垢(プラーク)コントロール

歯と歯の間で、少しすき間のあるところなどに通します。 歯と歯の間にブラシ部分を直角に入れ、歯ぐきを傷つけ

ないように2~3回前後させます。 すき間に合った歯間ブラシを選びましょう。

■歯間ブラシ

毛先をきちんとあててみがく

軽い力でみがく

小刻みに動かしてみがく

●内側のあて方

●下の奥歯の裏側のあて方

※口の中を観察し、歯ブラシの毛先を上手に使って、自分に合ったみがき方を工夫しましょう。

●外側のあて方 ●歯と歯肉の境目のあて方

45°

歯ブラシのあて方

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舌のケアは、口臭予防に効果的です。 舌の清掃は、忘れられがちですが、細菌の繁殖を抑制するのに有効なケアです。

洗口剤は、抗菌剤を含むものを用いるとブラッシングがうまくできないときやブラッシング後の口腔内の細菌の繁殖を抑制する効果があります。 また、口臭予防にも効果が認められます。

歯間部清掃用器具(歯間ブラシ等)は、清掃効果を高めます。 歯間ブラシは、歯ブラシでは届きにくく、むし歯や歯周病が進行しやすい歯と歯の間の歯垢を効率よく除去します。

■舌の清掃

■洗口剤による口腔清掃

■歯間ブラシ

出典:EBMに基づいた口腔ケアのために 医歯薬出版株式会社

写真提供:府中市民医療センター

7

●歯垢のたまりやすいところ   ①歯と歯の間   ②歯と歯ぐきの境目   ③奥歯の噛み合わせ   ④凹凸しているところ   ⑤背の低い歯

 口腔清掃には、ブラッシング以外にもいくつかの方法があります。歯だけでなく舌や口腔粘膜も含め、ていねいにすみずみまでしっかり清掃しましょう。効果的な清掃の方法や清掃器具の選択については、気軽に歯科医師・歯科衛生士にたずねましょう。

歯ブラシが通らない歯と歯の間に付着している歯垢をかき出します。 歯と歯の間をゆっくりと前後させます。

歯の間に隠れている歯垢や強固に付着している歯垢を除去するのに効果的です。

■デンタルフロス

■電動歯ブラシ

■歯ブラシによる歯垢(プラーク)コントロール

歯と歯の間で、少しすき間のあるところなどに通します。 歯と歯の間にブラシ部分を直角に入れ、歯ぐきを傷つけ

ないように2~3回前後させます。 すき間に合った歯間ブラシを選びましょう。

■歯間ブラシ

毛先をきちんとあててみがく

軽い力でみがく

小刻みに動かしてみがく

●内側のあて方

●下の奥歯の裏側のあて方

※口の中を観察し、歯ブラシの毛先を上手に使って、自分に合ったみがき方を工夫しましょう。

●外側のあて方 ●歯と歯肉の境目のあて方

45°

歯ブラシのあて方

セルフケア(ご自宅でのお手入れ)

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セルフケア(ご自宅でのお手入れ)

8

舌のケアは、口臭予防に効果的です。 舌の清掃は、忘れられがちですが、細菌の繁殖を抑制するのに有効なケアです。

洗口剤は、抗菌剤を含むものを用いるとブラッシングがうまくできないときやブラッシング後の口腔内の細菌の繁殖を抑制する効果があります。 また、口臭予防にも効果が認められます。

歯間部清掃用器具(歯間ブラシ等)は、清掃効果を高めます。 歯間ブラシは、歯ブラシでは届きにくく、むし歯や歯周病が進行しやすい歯と歯の間の歯垢を効率よく除去します。

■舌の清掃

■洗口剤による口腔清掃

■歯間ブラシ

出典:EBMに基づいた口腔ケアのために 医歯薬出版株式会社

写真提供:府中市民医療センター

7

●歯垢のたまりやすいところ   ①歯と歯の間   ②歯と歯ぐきの境目   ③奥歯の噛み合わせ   ④凹凸しているところ   ⑤背の低い歯

 口腔清掃には、ブラッシング以外にもいくつかの方法があります。歯だけでなく舌や口腔粘膜も含め、ていねいにすみずみまでしっかり清掃しましょう。効果的な清掃の方法や清掃器具の選択については、気軽に歯科医師・歯科衛生士にたずねましょう。

歯ブラシが通らない歯と歯の間に付着している歯垢をかき出します。 歯と歯の間をゆっくりと前後させます。

歯の間に隠れている歯垢や強固に付着している歯垢を除去するのに効果的です。

■デンタルフロス

■電動歯ブラシ

■歯ブラシによる歯垢(プラーク)コントロール

歯と歯の間で、少しすき間のあるところなどに通します。 歯と歯の間にブラシ部分を直角に入れ、歯ぐきを傷つけ

ないように2~3回前後させます。 すき間に合った歯間ブラシを選びましょう。

■歯間ブラシ

毛先をきちんとあててみがく

軽い力でみがく

小刻みに動かしてみがく

●内側のあて方

●下の奥歯の裏側のあて方

※口の中を観察し、歯ブラシの毛先を上手に使って、自分に合ったみがき方を工夫しましょう。

●外側のあて方 ●歯と歯肉の境目のあて方

45°

歯ブラシのあて方

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機能的口腔ケア

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機能的口腔ケアで口の働きを保つ

10

■唾液腺マッサージ

■舌のストレッチ

加齢により分泌能力が低下したり、内服薬などの影響で口が渇きやすくなります。 マッサージをして、唾液の分泌をうながしましょう。

舌の動きがスムーズになると、食べ物を咀嚼したり飲み込んだりする動きはもちろん、 発音や唾液の分泌も促進されます。

口を開けたまま舌を前方に突き出す

親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5か所ぐらいを順番に押す(各5回ずつ)。

できるだけ舌を前に出して、舌の可動範囲をひろげましょう。

舌で左右の口の両端をなめるように動かします。これによって、動きにリズムが生まれます。

舌を上あごにつけます。食べ物を上あごでおしつぶす練習になります。

唇をしっかり閉じる練習です。唇の筋肉を整えることにより、食べこぼしを防ぎ、飲み込みを助けてくれます。

人差し指から小指までの4本の指を頬にあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって回す(10回)。

両手の親指をそろえ、あごの真下から手をつきあげるようにゆっくりグーっと押す(10回)。

口を大きく開けて舌を上あごにつける

口を開けたまま舌を左右に出す

口を開けて舌先で唇をなめる

舌下腺 舌下腺への刺激

顎下腺

顎下腺への刺激

耳下腺

耳下腺への刺激

(写真:静岡県在住・秋元さん 100歳) 出典:デンタルハイジーン 2004年5月 医歯薬出版株式会社

がく か せん

ぜっか せん

じ か せん

9

■口腔機能の保持・回復のための体操

■顔面体操

●ゆったりとした姿勢で背筋をのばして行います

●深呼吸しながら首の運動

手はお腹に

首を左右に傾ける 左右横を向く 大きく回す

鼻から息を大きく吸い込み 口をすぼめて大きくゆっくり吐く

口のまわりの筋肉を運動させたり刺激を加え、機能低下を抑え、 食べこぼしなどを防止します。

口を横に引く 唇を突き出す 頬を膨らます

●個人個人にあったペースで  リズミカルに行いましょう

息を吸い込む 声を出す

 口のまわりの筋肉を動かすことで、舌がよく動くようになり、唾液の分泌が促されます。口腔機能を保持し回復させるための体操は、咀嚼、嚥下、発音などの機能の衰えを防ぎ、また、脳への適度な刺激で顔の表情も豊かになります。安全においしく食べるためには、食前に行う機能的口腔ケアはとても大切です。

そ  しゃく

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口腔機能を高める 体操をしてみましょう!

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機能的口腔ケアで口の働きを保つ

10

■唾液腺マッサージ

■舌のストレッチ

加齢により分泌能力が低下したり、内服薬などの影響で口が渇きやすくなります。 マッサージをして、唾液の分泌をうながしましょう。

舌の動きがスムーズになると、食べ物を咀嚼したり飲み込んだりする動きはもちろん、 発音や唾液の分泌も促進されます。

口を開けたまま舌を前方に突き出す

親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5か所ぐらいを順番に押す(各5回ずつ)。

できるだけ舌を前に出して、舌の可動範囲をひろげましょう。

舌で左右の口の両端をなめるように動かします。これによって、動きにリズムが生まれます。

舌を上あごにつけます。食べ物を上あごでおしつぶす練習になります。

唇をしっかり閉じる練習です。唇の筋肉を整えることにより、食べこぼしを防ぎ、飲み込みを助けてくれます。

人差し指から小指までの4本の指を頬にあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって回す(10回)。

両手の親指をそろえ、あごの真下から手をつきあげるようにゆっくりグーっと押す(10回)。

口を大きく開けて舌を上あごにつける

口を開けたまま舌を左右に出す

口を開けて舌先で唇をなめる

舌下腺 舌下腺への刺激

顎下腺

顎下腺への刺激

耳下腺

耳下腺への刺激

(写真:静岡県在住・秋元さん 100歳) 出典:デンタルハイジーン 2004年5月 医歯薬出版株式会社

がく か せん

ぜっか せん

じ か せん

9

■口腔機能の保持・回復のための体操

■顔面体操

●ゆったりとした姿勢で背筋をのばして行います

●深呼吸しながら首の運動

手はお腹に

首を左右に傾ける 左右横を向く 大きく回す

鼻から息を大きく吸い込み 口をすぼめて大きくゆっくり吐く

口のまわりの筋肉を運動させたり刺激を加え、機能低下を抑え、 食べこぼしなどを防止します。

口を横に引く 唇を突き出す 頬を膨らます

●個人個人にあったペースで  リズミカルに行いましょう

息を吸い込む 声を出す

 口のまわりの筋肉を動かすことで、舌がよく動くようになり、唾液の分泌が促されます。口腔機能を保持し回復させるための体操は、咀嚼、嚥下、発音などの機能の衰えを防ぎ、また、脳への適度な刺激で顔の表情も豊かになります。安全においしく食べるためには、食前に行う機能的口腔ケアはとても大切です。

そ  しゃく

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機能的口腔ケアで口の働きを保つ

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機能的口腔ケアで口の働きを保つ

10

■唾液腺マッサージ

■舌のストレッチ

加齢により分泌能力が低下したり、内服薬などの影響で口が渇きやすくなります。 マッサージをして、唾液の分泌をうながしましょう。

舌の動きがスムーズになると、食べ物を咀嚼したり飲み込んだりする動きはもちろん、 発音や唾液の分泌も促進されます。

口を開けたまま舌を前方に突き出す

親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5か所ぐらいを順番に押す(各5回ずつ)。

できるだけ舌を前に出して、舌の可動範囲をひろげましょう。

舌で左右の口の両端をなめるように動かします。これによって、動きにリズムが生まれます。

舌を上あごにつけます。食べ物を上あごでおしつぶす練習になります。

唇をしっかり閉じる練習です。唇の筋肉を整えることにより、食べこぼしを防ぎ、飲み込みを助けてくれます。

人差し指から小指までの4本の指を頬にあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって回す(10回)。

両手の親指をそろえ、あごの真下から手をつきあげるようにゆっくりグーっと押す(10回)。

口を大きく開けて舌を上あごにつける

口を開けたまま舌を左右に出す

口を開けて舌先で唇をなめる

舌下腺 舌下腺への刺激

顎下腺

顎下腺への刺激

耳下腺

耳下腺への刺激

(写真:静岡県在住・秋元さん 100歳) 出典:デンタルハイジーン 2004年5月 医歯薬出版株式会社

がく か せん

ぜっか せん

じ か せん

9

■口腔機能の保持・回復のための体操

■顔面体操

●ゆったりとした姿勢で背筋をのばして行います

●深呼吸しながら首の運動

手はお腹に

首を左右に傾ける 左右横を向く 大きく回す

鼻から息を大きく吸い込み 口をすぼめて大きくゆっくり吐く

口のまわりの筋肉を運動させたり刺激を加え、機能低下を抑え、 食べこぼしなどを防止します。

口を横に引く 唇を突き出す 頬を膨らます

●個人個人にあったペースで  リズミカルに行いましょう

息を吸い込む 声を出す

 口のまわりの筋肉を動かすことで、舌がよく動くようになり、唾液の分泌が促されます。口腔機能を保持し回復させるための体操は、咀嚼、嚥下、発音などの機能の衰えを防ぎ、また、脳への適度な刺激で顔の表情も豊かになります。安全においしく食べるためには、食前に行う機能的口腔ケアはとても大切です。

そ  しゃく

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機能的口腔ケアで口の働きを保つ

10

■唾液腺マッサージ

■舌のストレッチ

加齢により分泌能力が低下したり、内服薬などの影響で口が渇きやすくなります。 マッサージをして、唾液の分泌をうながしましょう。

舌の動きがスムーズになると、食べ物を咀嚼したり飲み込んだりする動きはもちろん、 発音や唾液の分泌も促進されます。

口を開けたまま舌を前方に突き出す

親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5か所ぐらいを順番に押す(各5回ずつ)。

できるだけ舌を前に出して、舌の可動範囲をひろげましょう。

舌で左右の口の両端をなめるように動かします。これによって、動きにリズムが生まれます。

舌を上あごにつけます。食べ物を上あごでおしつぶす練習になります。

唇をしっかり閉じる練習です。唇の筋肉を整えることにより、食べこぼしを防ぎ、飲み込みを助けてくれます。

人差し指から小指までの4本の指を頬にあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって回す(10回)。

両手の親指をそろえ、あごの真下から手をつきあげるようにゆっくりグーっと押す(10回)。

口を大きく開けて舌を上あごにつける

口を開けたまま舌を左右に出す

口を開けて舌先で唇をなめる

舌下腺 舌下腺への刺激

顎下腺

顎下腺への刺激

耳下腺

耳下腺への刺激

(写真:静岡県在住・秋元さん 100歳) 出典:デンタルハイジーン 2004年5月 医歯薬出版株式会社

がく か せん

ぜっか せん

じ か せん

9

■口腔機能の保持・回復のための体操

■顔面体操

●ゆったりとした姿勢で背筋をのばして行います

●深呼吸しながら首の運動

手はお腹に

首を左右に傾ける 左右横を向く 大きく回す

鼻から息を大きく吸い込み 口をすぼめて大きくゆっくり吐く

口のまわりの筋肉を運動させたり刺激を加え、機能低下を抑え、 食べこぼしなどを防止します。

口を横に引く 唇を突き出す 頬を膨らます

●個人個人にあったペースで  リズミカルに行いましょう

息を吸い込む 声を出す

 口のまわりの筋肉を動かすことで、舌がよく動くようになり、唾液の分泌が促されます。口腔機能を保持し回復させるための体操は、咀嚼、嚥下、発音などの機能の衰えを防ぎ、また、脳への適度な刺激で顔の表情も豊かになります。安全においしく食べるためには、食前に行う機能的口腔ケアはとても大切です。

そ  しゃく

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口腔ケアで誤嚥性肺炎を予防

12

血清アルブミンの推移 4.2 4.1 4 3.9 3.8 3.7 3.6 3.5

介入1年前 介入8ヶ月後 介入時

Albumin(g/dl)

0 1 2 3 4 5105

106

107

口腔ケアを実施した

口腔ケアを実施しなかった

期間(月)

平均生菌数

誤嚥性肺炎のメカニズムを考えたときに、さまざまな口腔ケアの予防効果が期待できます。

①器質的口腔ケアにより、  口腔と咽頭の細菌数が減少する。

口腔ケアを実施した場合では、総細菌数は調査期間中減少し続け、5ヶ月目には開始前の約1/10となった。

弘田克彦ら、プロフェッショナル・オーラル・ヘルス・ケアを受けた高齢者の咽頭細菌数の変動、日老医誌、34、1997.より引用改変

 老人ホームでは、潜在的に低栄養(血清アルブミン値が、3.5g/dl以下)の人が、30~40%前後いるといわれています。その多くが口腔の機能に問題があることが、最近の研究で示唆されています。介護予防の取り組みのひとつとして、歯科医師や歯科衛生士が、口腔機能の低下を起こしつつある人に対し、義歯を調整することなどにより口腔機能を引き出し、栄養状態が改善するということが、明らかになってきました。

②継続した口腔ケアによって、要介護 高齢者の嚥下するまでの時間が短 縮し、誤嚥の予防につながる。

③機能的口腔ケアによって、舌や口 唇などの口腔機能が改善し、食べ る量が増え、栄養状態の改善が図 られる。これにより、免疫能の向上 につながる。

菊谷武ら、介護老人福祉施設における利用者の口腔機能が栄養改善に与える影 響、日老医誌、第41巻第4号別刷、2004より引用改変

嚥下機能に対する気質的口腔ケアの効果 25 20 15 10 5 0

2baseline 4 6 8 10 20 30 (日)

pg/ml

◆ ◆

◆ ◆ ◆

  ● 口腔ケアを実施した人  ◆ 口腔ケアを実施しなかった人

口腔ケアによって嚥下反射を促す物質であるサブサタンスP(SP)の増加と嚥下するまでの時間(LTSR)の短縮が認められた

Yoshino, A. et al : Daily Oral Care and Risk Factors for Pneumonia among Elderly Nursing Home Patients JAMA 2001.より引用改変

● ● ●

● ●

● ● ●

● SP

LTSR

専門的口腔ケアを実施した場合と 実施しなかった場合の咽頭部総細菌数の変化

(秒)

いん とう

11

 介護予防とは、高齢者が介護を必要とする状態になるのを防いだり、現在介護を必要としている状態がこれ以上悪化しないようにすることをいいます。気道感染は、加齢とともに呼吸が浅くなり酸素を十分取り込めなくなって病気に対する抵抗力が低下し、気道(空気の通る道)にウイルスや細菌が入ることで起こりやすくなります。口腔ケアは気道感染予防の中心に位置づけられています。  また、口腔機能を高める口腔ケアにより栄養状態の指標のひとつである血清アルブミン値の改善が期待できることが、平成15年度の厚生労働科学研究でも明らかにされています。

 実際に口腔ケアを実施した人たちと口腔ケアを実施しなかった人たちを比べると、肺炎の発生率はおよそ40%減少させる効果がありました。

 高齢者における気道感染の主な疾患として誤嚥性肺炎があげられます。誤嚥性肺炎とは、口腔内の唾液や細菌が誤って気道に入り込むことで起きる肺炎です。誤嚥は特に夜間に起こりやすく、誤嚥を起こしても「むせ」などの自覚症状がないことがあります。これを繰り返すと誤嚥性肺炎を起こします(不顕性誤嚥)。また、胃の内容物が嘔吐により気道に入った場合にも誤嚥性肺炎が起こることがあります。

食前、食後の口腔ケアと食事中の誤嚥防止が大切です。  特に要介護高齢者において口腔衛生状態を良好に保つことにより、QOL(生活の質)を著しく低下させる不顕性誤嚥による肺炎を予防することが報告され、介護予防という視点からも注目されています。

■誤嚥性肺炎のメカニズム

■口腔ケアで老人の肺炎予防

脳血管障害

の低下

(日常生活動作)

ADL

免疫能低下

咳反射低下

嚥下反射低下

不顕性誤嚥 誤

嚥性肺炎

10

0

20(%) 2

年間の肺炎発生率

口腔ケアを実施 しなかった人たち

口腔ケアを実施 した人たち

19%

11%

佐々木英忠ら、III主要疾患の歴史 11.誤嚥性肺炎、 日本内科学会雑誌創立100周年記念号第91巻第6号

2003より引用改変

ふ けん せい

おう と

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口腔がん

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口腔がんの出来る頻度・場所

• 口腔がんの発生頻度は全がんの内の約 1% 程度ですが、死亡率が高く40%の方が亡くなっているため、早期発見・早期治療が必要とされ ています。

• 最も発生頻度が高いのが舌がんで、口腔がんの約半数を占め、次いで歯肉がん、頬粘膜がん、 口底がんと続きます。

 口内炎も腫れ・しこり・接触痛があり、初期の

口腔がんの特徴と似ていて、見分けることは困難

です。

 目安として、2週間経っても症状が治らない場

合は、かかりつけの歯科医院もしくは専門施設で

相談することをお勧めします。

 外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)

があります。がんの悪性度や進行度合いなどを考

慮してこれらを単独あるいは組み合わせて最良の

治療方法を選びます。

 早期がんに対しては外科手術あるいは放射線治

療が、進行したがんに対しては外科手術が選ばれ

ます。しかし、口腔は構音、咀嚼、嚥下などの機

能面だけでなく、整容的な面でもQOL(生活の質)

に深く関与しているため、がんの治癒はもとより、

機能と容姿をいかに障害しないかを考慮して治療

します。

 頸部リンパ節への転移やそれらが疑われる場合

は、頸部リンパ節を含めて取り除く手術を行いま

す。また、広範囲な欠損部には再建術(人工物を使っ

たり、身体の他の部位から骨や軟組織を移植して

もとの状態に近づける手術)を併用します。

 がんと疑われる部分の一部を取って調べる組織

検査(局所麻酔をして一部を取る検査)とレント

ゲン、超音波、CT、MRI、PET などの画像検査

があります。

 組織検査はがんの有無だけでなく、がんの種類

や性質なども診断することができます。

 画像検査は、がんの範囲や転移の有無などの進

行度合いを調べます。

 これらの結果をふまえて治療の計画を立ててい

きます。

口腔がんの治療法

口腔がんの診断法

口内炎との見分け方

口腔がんの種類

口底がん

舌がん 下顎歯肉がん

上顎歯肉がん頬粘膜がん

口蓋 

上顎歯肉 

頬粘膜

下顎歯肉

口底

口唇

口蓋がん

《 口腔がんのできる所 》

《 口腔がん症例写真 》

資料:東京医科歯科大学顎口腔外科   臨床統計(2001年~2012年)

舌55%

下顎歯肉15%

頬粘膜11%

上顎歯肉8%

口底8%

口蓋・その他 3%

 口腔がんには、舌に発生する舌がん、上顎と下顎

の歯肉に発生する歯肉がん、舌と下顎歯肉の間(口

底)に発生する口底がん、頬の内側に発生する頬粘

膜がん、口の中の天井部分に発生する口蓋がん、上

下の口唇に発生する口唇がんがあります。口腔がん

の多くは口腔の粘膜に発生しますが、唾液をつくる

組織から発生する唾液腺がんもあります。

 この中で最も発生頻度が高いのが舌がんで、口腔

 日本における口腔・咽頭がんの年間罹患患者数

は、1975年には 2,500 人程度でしたが、2006年に

は12,500人を超え、2015年には15,000人を超える

ことが予想されています。口腔がんの発生頻度は全

がん中の約 1% 程度ですが、口腔がんは高齢者に多

く、わが国では人口の高齢化に伴い今後も増加する

と予測されています。

 また死亡率が高く、40%の方が亡くなっている事

から、より一層の早期発見・早期治療が必要とされ

ています。口腔がん罹患の男女比は、およそ3:2 と

男性に多く、好発年齢は60 歳代です。

口腔がんは、死亡率の高いがんです

がんの約半数を占め、次いで歯肉がん、頬粘膜がん、

口底がんと続きます。がんの恐ろしいところは、違う

場所へ飛び火(転移)を起こすことです。口腔がんでは、

首のリンパ節(頸部リンパ節)に最も高い確率で転移

を起こします。

資料:国立がん研究センターがん対策情報センター

(予測値)

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口内炎との見分け方

• 初期の口腔がんは腫れ、しこり、接触痛など口内炎と似た症状があります。

• このため目安として、2週間経っても症状が治らない場合は、かかりつけの歯科医院もしくは専門施設で 相談することをお勧めします。

 口内炎も腫れ・しこり・接触痛があり、初期の

口腔がんの特徴と似ていて、見分けることは困難

です。

 目安として、2週間経っても症状が治らない場

合は、かかりつけの歯科医院もしくは専門施設で

相談することをお勧めします。

 外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)

があります。がんの悪性度や進行度合いなどを考

慮してこれらを単独あるいは組み合わせて最良の

治療方法を選びます。

 早期がんに対しては外科手術あるいは放射線治

療が、進行したがんに対しては外科手術が選ばれ

ます。しかし、口腔は構音、咀嚼、嚥下などの機

能面だけでなく、整容的な面でもQOL(生活の質)

に深く関与しているため、がんの治癒はもとより、

機能と容姿をいかに障害しないかを考慮して治療

します。

 頸部リンパ節への転移やそれらが疑われる場合

は、頸部リンパ節を含めて取り除く手術を行いま

す。また、広範囲な欠損部には再建術(人工物を使っ

たり、身体の他の部位から骨や軟組織を移植して

もとの状態に近づける手術)を併用します。

 がんと疑われる部分の一部を取って調べる組織

検査(局所麻酔をして一部を取る検査)とレント

ゲン、超音波、CT、MRI、PET などの画像検査

があります。

 組織検査はがんの有無だけでなく、がんの種類

や性質なども診断することができます。

 画像検査は、がんの範囲や転移の有無などの進

行度合いを調べます。

 これらの結果をふまえて治療の計画を立ててい

きます。

口腔がんの治療法

口腔がんの診断法

口内炎との見分け方

口腔がんの種類

口底がん

舌がん 下顎歯肉がん

上顎歯肉がん頬粘膜がん

口蓋 

上顎歯肉 

頬粘膜

下顎歯肉

口底

口唇

口蓋がん

《 口腔がんのできる所 》

《 口腔がん症例写真 》

資料:東京医科歯科大学顎口腔外科   臨床統計(2001年~2012年)

舌55%

下顎歯肉15%

頬粘膜11%

上顎歯肉8%

口底8%

口蓋・その他 3%

 口腔がんには、舌に発生する舌がん、上顎と下顎

の歯肉に発生する歯肉がん、舌と下顎歯肉の間(口

底)に発生する口底がん、頬の内側に発生する頬粘

膜がん、口の中の天井部分に発生する口蓋がん、上

下の口唇に発生する口唇がんがあります。口腔がん

の多くは口腔の粘膜に発生しますが、唾液をつくる

組織から発生する唾液腺がんもあります。

 この中で最も発生頻度が高いのが舌がんで、口腔

 日本における口腔・咽頭がんの年間罹患患者数

は、1975年には 2,500 人程度でしたが、2006年に

は12,500人を超え、2015年には15,000人を超える

ことが予想されています。口腔がんの発生頻度は全

がん中の約 1% 程度ですが、口腔がんは高齢者に多

く、わが国では人口の高齢化に伴い今後も増加する

と予測されています。

 また死亡率が高く、40%の方が亡くなっている事

から、より一層の早期発見・早期治療が必要とされ

ています。口腔がん罹患の男女比は、およそ3:2 と

男性に多く、好発年齢は60 歳代です。

口腔がんは、死亡率の高いがんです

がんの約半数を占め、次いで歯肉がん、頬粘膜がん、

口底がんと続きます。がんの恐ろしいところは、違う

場所へ飛び火(転移)を起こすことです。口腔がんでは、

首のリンパ節(頸部リンパ節)に最も高い確率で転移

を起こします。

資料:国立がん研究センターがん対策情報センター

(予測値)

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 口内炎も腫れ・しこり・接触痛があり、初期の

口腔がんの特徴と似ていて、見分けることは困難

です。

 目安として、2週間経っても症状が治らない場

合は、かかりつけの歯科医院もしくは専門施設で

相談することをお勧めします。

 外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤)

があります。がんの悪性度や進行度合いなどを考

慮してこれらを単独あるいは組み合わせて最良の

治療方法を選びます。

 早期がんに対しては外科手術あるいは放射線治

療が、進行したがんに対しては外科手術が選ばれ

ます。しかし、口腔は構音、咀嚼、嚥下などの機

能面だけでなく、整容的な面でもQOL(生活の質)

に深く関与しているため、がんの治癒はもとより、

機能と容姿をいかに障害しないかを考慮して治療

します。

 頸部リンパ節への転移やそれらが疑われる場合

は、頸部リンパ節を含めて取り除く手術を行いま

す。また、広範囲な欠損部には再建術(人工物を使っ

たり、身体の他の部位から骨や軟組織を移植して

もとの状態に近づける手術)を併用します。

 がんと疑われる部分の一部を取って調べる組織

検査(局所麻酔をして一部を取る検査)とレント

ゲン、超音波、CT、MRI、PET などの画像検査

があります。

 組織検査はがんの有無だけでなく、がんの種類

や性質なども診断することができます。

 画像検査は、がんの範囲や転移の有無などの進

行度合いを調べます。

 これらの結果をふまえて治療の計画を立ててい

きます。

口腔がんの治療法

口腔がんの診断法

口内炎との見分け方

口腔がんの種類

口底がん

舌がん 下顎歯肉がん

上顎歯肉がん頬粘膜がん

口蓋 

上顎歯肉 

頬粘膜

下顎歯肉

口底

口唇

口蓋がん

《 口腔がんのできる所 》

《 口腔がん症例写真 》

資料:東京医科歯科大学顎口腔外科   臨床統計(2001年~2012年)

舌55%

下顎歯肉15%

頬粘膜11%

上顎歯肉8%

口底8%

口蓋・その他 3%

 口腔がんには、舌に発生する舌がん、上顎と下顎

の歯肉に発生する歯肉がん、舌と下顎歯肉の間(口

底)に発生する口底がん、頬の内側に発生する頬粘

膜がん、口の中の天井部分に発生する口蓋がん、上

下の口唇に発生する口唇がんがあります。口腔がん

の多くは口腔の粘膜に発生しますが、唾液をつくる

組織から発生する唾液腺がんもあります。

 この中で最も発生頻度が高いのが舌がんで、口腔

 日本における口腔・咽頭がんの年間罹患患者数

は、1975年には 2,500 人程度でしたが、2006年に

は12,500人を超え、2015年には15,000人を超える

ことが予想されています。口腔がんの発生頻度は全

がん中の約 1% 程度ですが、口腔がんは高齢者に多

く、わが国では人口の高齢化に伴い今後も増加する

と予測されています。

 また死亡率が高く、40%の方が亡くなっている事

から、より一層の早期発見・早期治療が必要とされ

ています。口腔がん罹患の男女比は、およそ3:2 と

男性に多く、好発年齢は60 歳代です。

口腔がんは、死亡率の高いがんです

がんの約半数を占め、次いで歯肉がん、頬粘膜がん、

口底がんと続きます。がんの恐ろしいところは、違う

場所へ飛び火(転移)を起こすことです。口腔がんでは、

首のリンパ節(頸部リンパ節)に最も高い確率で転移

を起こします。

資料:国立がん研究センターがん対策情報センター

(予測値)

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口腔がんにならないために• 不適合義歯を直す

• むし歯や詰め物が脱離したままの鋭利な歯を治療する

• 喫煙しない(受動喫煙も含む)

• アルコールは摂り過ぎない

• 野菜やくだものなどバランスの良い食事をとるように心がける

• 熱い食べ物は避ける、辛い物もほどほどに

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酸蝕症

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 酸によって 歯の表面が溶けたり欠けたりして、むし歯や知覚過敏などを引き起こしやすくなるのが「酸蝕症」です。 近年は食生活の変化により、清涼飲料水など酸性 の強い食品を習慣的に摂取する傾向があり、酸蝕症の患者さんが増加しています。

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7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23時

pH5.5

中 性pH7.0

アルカリ性

酸 性 朝食 昼食 おやつおやつ 夕食

1日の唾液pH値の変化

酸蝕症の症状

酸蝕症の原因

酸蝕症の予防と再石灰化

pH

7.06.0

4.0

2.0

中性

歯の再石灰化歯が溶ける

日本の伝統的な食べ物や調味料は、エナメル質臨界pH 5.5に近い値を示しています。

エナメル質臨界pH5.5

 人間の身体の中で、最も硬

い歯の表面のエナメル質。し

かし、「酸」に弱いという弱点

を持っています。酸によって

歯の表面が溶けたり欠けたり

して、むし歯や知覚過敏など

を引き起こしやすくなるのが「酸蝕症」です。

 近年は食生活の変化により、清涼飲料水など酸性

の強い食品を習慣的に摂取する傾向があり、酸蝕症

の患者さんが増加しています。食後すぐに、乱暴な

歯みがきを続けていると、歯の摩耗を増長させます。

 「酸」によって、エナメル質が溶けて象牙質が露出

すると、さまざまな症状を引き起こします。むし歯

や知覚過敏の一因でもあり、次の症状があれば注意

が必要です。

 酸蝕症に罹る主な原因は、酸性の

強い食品の多量摂取、逆流性食道炎、

拒食症、薬剤(ビタミン剤)などが

あります。最近マスコミでも取り上

げられていますが、酸性の強い食品

を日常的に摂取していることが主た

る問題になっています。

歯の尖端が透明になるエナメル質が変化して、尖端が透明化する現象。硬度が低くなり、歯が欠けやすくなります。

冷たいものがしみるエナメル質が溶けて象牙質が露出すると、知覚過敏になります。

詰め物がとれる詰め物のまわりのエナメル質が溶け出し、むし歯の原因になります

① 若年層を中心とする、酸性の  強い清涼飲料水の過剰摂取② 健康食品として黒酢などの酢  や柑橘類の過剰摂取③ 逆流性食道炎などの胃酸

⑤ 就寝直前の飲食

④ 間食が増え、口の中が常に  酸性の状態

 酸蝕症の予防は、酸性が強い食品の過剰摂取を控える

ことが大切です。そして、お茶や水などの中性飲料で口

をすすぐことをお勧めします。また、日頃からよく噛ん

で食べたり、デンタルガムを噛むことで唾液の分泌が促

され、歯の再石灰化が進みます。一時的に溶けた歯はす

ぐに戻り、酸蝕症になるのを防ぎます。病気が原因の場

合は、かかりつけの歯科医にご相談下さい。

① 酸性の強い食品の過剰な摂取は控えましょう

③ よく噛んで食べましょう。1口 30 回噛むと唾液  の分泌が増え、歯の再石灰化が促進します

② ダラダラ飲みはなるべく控えましょう。

④ 正しい歯みがきの方法を身につけましょう

よく噛んで食べるダラダラ飲みを控える 正しい歯みがき

さん  しょく しょう

歯が溶ける時間

再石灰化の時間

酸蝕症からくるむし歯

(資料提供:北迫勇一先生)

(写真提供:北迫勇一先生)

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1 酸性の強い食品の過剰な摂取は控えましょう !2 ダラダラ飲みはなるべく控えましょう。 !3 よく噛んで食べましょう。1口 30 回噛むと唾液 の分泌が増え、歯の再石灰化が促進します

7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23時

pH5.5

中 性pH7.0

アルカリ性

酸 性 朝食 昼食 おやつおやつ 夕食

1日の唾液pH値の変化

酸蝕症の症状

酸蝕症の原因

酸蝕症の予防と再石灰化

pH

7.06.0

4.0

2.0

中性

歯の再石灰化歯が溶ける

日本の伝統的な食べ物や調味料は、エナメル質臨界pH 5.5に近い値を示しています。

エナメル質臨界pH5.5

 人間の身体の中で、最も硬

い歯の表面のエナメル質。し

かし、「酸」に弱いという弱点

を持っています。酸によって

歯の表面が溶けたり欠けたり

して、むし歯や知覚過敏など

を引き起こしやすくなるのが「酸蝕症」です。

 近年は食生活の変化により、清涼飲料水など酸性

の強い食品を習慣的に摂取する傾向があり、酸蝕症

の患者さんが増加しています。食後すぐに、乱暴な

歯みがきを続けていると、歯の摩耗を増長させます。

 「酸」によって、エナメル質が溶けて象牙質が露出

すると、さまざまな症状を引き起こします。むし歯

や知覚過敏の一因でもあり、次の症状があれば注意

が必要です。

 酸蝕症に罹る主な原因は、酸性の

強い食品の多量摂取、逆流性食道炎、

拒食症、薬剤(ビタミン剤)などが

あります。最近マスコミでも取り上

げられていますが、酸性の強い食品

を日常的に摂取していることが主た

る問題になっています。

歯の尖端が透明になるエナメル質が変化して、尖端が透明化する現象。硬度が低くなり、歯が欠けやすくなります。

冷たいものがしみるエナメル質が溶けて象牙質が露出すると、知覚過敏になります。

詰め物がとれる詰め物のまわりのエナメル質が溶け出し、むし歯の原因になります

① 若年層を中心とする、酸性の  強い清涼飲料水の過剰摂取② 健康食品として黒酢などの酢  や柑橘類の過剰摂取③ 逆流性食道炎などの胃酸

⑤ 就寝直前の飲食

④ 間食が増え、口の中が常に  酸性の状態

 酸蝕症の予防は、酸性が強い食品の過剰摂取を控える

ことが大切です。そして、お茶や水などの中性飲料で口

をすすぐことをお勧めします。また、日頃からよく噛ん

で食べたり、デンタルガムを噛むことで唾液の分泌が促

され、歯の再石灰化が進みます。一時的に溶けた歯はす

ぐに戻り、酸蝕症になるのを防ぎます。病気が原因の場

合は、かかりつけの歯科医にご相談下さい。

① 酸性の強い食品の過剰な摂取は控えましょう

③ よく噛んで食べましょう。1口 30 回噛むと唾液  の分泌が増え、歯の再石灰化が促進します

② ダラダラ飲みはなるべく控えましょう。

④ 正しい歯みがきの方法を身につけましょう

よく噛んで食べるダラダラ飲みを控える 正しい歯みがき

さん  しょく しょう

歯が溶ける時間

再石灰化の時間

酸蝕症からくるむし歯

(資料提供:北迫勇一先生)

(写真提供:北迫勇一先生)

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義歯で生活の質の向上を目指そう!

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 口腔のリハビリテーションを行い、義歯を適切に調整することにより、顔の表情や食形態が改善し、 豊かな食生活を送ることができます。

ケア開始前後の表情と食形態の変化

ケア開始前の食事〈粥・刻み食〉 ケア開始後の食事〈常食〉 出典:EBMに基づいた口腔ケアのために 医歯薬出版株式会社

●義歯用ブラシや歯ブラシでこする。 ●洗浄剤で洗う。

義歯を外してくまなくしっかりこすり洗いしてください。

義歯を清潔に保つために洗浄剤の使用が効果的です。

義歯もほうっておくと汚れ、病気の原因となったり義歯の機能が低下したりします。 日々の手入れが大切です。

13

 多くの歯を失ったとしても、義歯を入れることにより、口の機能を維持できます。義歯を装着する目的には、  ①咀嚼(食べ物を噛む)できるようにする  ②発声を明りょうにする  ③顔貌(顔のつくり)を整える などがあります。義歯を装着し咀嚼機能を維持することは健全な食生活を送ることにつながり、栄養の摂取だけでなくQOL(生活の質)の向上にもつながります。

 適切な義歯を入れて噛み合わせや歯並びを回復させることで、高齢者のADL(日常生活動作)を高め、QOL(生活の質)を確保できるようになります。  ①咀嚼能力の維持・向上   食べられる物が増え、家族と同じメニューでの楽しい食事や友人達との会食もできるようになる  ②身体的・精神的健康状態を維持   積極的に社会活動に参加できることで、閉じこもり予防になる  ③嚥下機能の維持   誤嚥性肺炎の予防になる  ④身体の平衡の向上   歩行周期を安定・短縮させ、歩幅・歩行速度が増し転倒予防になる

 義歯はデリケートな人工臓器です。毎日の手入れと定期的に歯科医師に診てもらうことが大切です。  噛み合わせの悪い義歯を長期間使用していると、不自然な噛み方になり、あごの位置や関節の位置が変化することがあります。義歯と顎堤(義歯の乗る部分)の間にすき間がある場合は、義歯を調整したり、新しく義歯をつくり直したり、常に自分の口に合ったものにしましょう。  義歯を使う前に十分、口の機能(舌、口唇、頬の機能)を高めておきましょう。義歯を入れた後も、食べられるようになるまでしっかり歯科医師に診てもらいましょう。

【注意点】 ①正しい義歯の着脱方法について歯科医師の指導を受けましょう。 ②義歯が合わない、噛むと痛い場合などは、無理に使用せず歯科医師に相談しましょう。 ③義歯は流水下でブラシで洗浄し、就寝時は専用の義歯洗浄剤に浸しましょう。

がく てい

がん ぼう

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健康寿命はお口のケアから

• 健康寿命とは、健康で 明るく元気に生活する期間、つまり寝たきりや痴呆にならない期間のことです。

• 健康寿命を長くするために、歯と口をケアし、歯の寿命を延ばしましょう!

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自己紹介

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篠田 純 shinodashika.or.tv

略歴 !平成6年3月 東京医科歯科大学歯学部卒業 !平成6年4月 医療法人社団歯周会西堀歯科勤務 !平成12年10月 日本歯周病学会 歯周病専門医認定 !平成17年8月 医療法人社団歯周会西堀歯科退職 !平成17年10月 東京都中野区東中野にて篠田歯科開業

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初診

歯周病治療後

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初診

歯周病治療後