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1 1 はじめに 本県では,水郷筑波地域において,地域の特性を活かした「回遊性のあるサイクリング」を テーマに,サイクリングを核に,豊かな自然や歴史的・文化的資産など様々な地域資源を結 びつけ,東京圏からの優れたアクセス性を活かしながら,誰もが多様にサイクリングを楽しむ ことができる,日本一のサイクリング環境の構築を目指している。 その一環で,当地域の将来の姿や実施施策,それぞれの役割などを定め,行政だけでな く,民間事業者や大学,NPO,地域住民などの様々な主体が参加しやすい環境をつくると ともに,これらの主体が一体となって取り組んでいくための指針として,平成 28 年 6 月に「水 郷筑波サイクリング環境整備総合計画」(以下,総合計画)を策定した。 総合計画では,基本方針のひとつとして,「快適で安全・安心にサイクリングができる環境 の整備」を掲げており,地域内を様々な形で回遊できるよう,多彩なサイクリングコースを設 定するとともに,コースの安全性向上や案内標識・拠点施設などを統一的に整備することに より,誰もが快適で安全・安心にサイクリングができる環境の構築を図ることとしている。 そこで,本県では,サイクリング環境の整備に関して,県や国,市町村,地域住民や企業 等の様々な主体の活用を想定し,統一的な考え方や基準を取りまとめた「水郷筑波サイクリ ング環境整備事業自転車走行環境整備ガイドライン」(以下,「水郷筑波サイクリング環境整 備ガイドライン」または「本ガイドライン」)を策定した。 なお,本ガイドラインの策定にあたっては,「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライ ン(平成 28 年 7 月)」(以下,国のガイドライン)等を踏まえて考え方を取りまとめているが,今 後,「安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会(国土交通省・警察 庁)」(以下,国の検討委員会)における最新の動向や法制度の改正のほか,当地域の自転 車利用者の状況等を踏まえ,本ガイドラインを適宜,改定していくこととする。また,整備の効 果及び評価,改善については「水郷筑波サイクリング環境整備事業推進検討会」等で検討 していくこととする。 本ガイドラインは,つくば霞ヶ浦りんりんロードに適用するものとし,その他の道路の整備 については別途定めるガイドライン等によるものとする。

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Page 1: 01 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン( …4-1.pdf1 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン 2 ガイドラインの概要 1 はじめに

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

1 はじめに

本県では,水郷筑波地域において,地域の特性を活かした「回遊性のあるサイクリング」を

テーマに,サイクリングを核に,豊かな自然や歴史的・文化的資産など様々な地域資源を結

びつけ,東京圏からの優れたアクセス性を活かしながら,誰もが多様にサイクリングを楽しむ

ことができる,日本一のサイクリング環境の構築を目指している。

その一環で,当地域の将来の姿や実施施策,それぞれの役割などを定め,行政だけでな

く,民間事業者や大学,NPO,地域住民などの様々な主体が参加しやすい環境をつくると

ともに,これらの主体が一体となって取り組んでいくための指針として,平成 28 年 6 月に「水

郷筑波サイクリング環境整備総合計画」(以下,総合計画)を策定した。

総合計画では,基本方針のひとつとして,「快適で安全・安心にサイクリングができる環境

の整備」を掲げており,地域内を様々な形で回遊できるよう,多彩なサイクリングコースを設

定するとともに,コースの安全性向上や案内標識・拠点施設などを統一的に整備することに

より,誰もが快適で安全・安心にサイクリングができる環境の構築を図ることとしている。

そこで,本県では,サイクリング環境の整備に関して,県や国,市町村,地域住民や企業

等の様々な主体の活用を想定し,統一的な考え方や基準を取りまとめた「水郷筑波サイクリ

ング環境整備事業自転車走行環境整備ガイドライン」(以下,「水郷筑波サイクリング環境整

備ガイドライン」または「本ガイドライン」)を策定した。

なお,本ガイドラインの策定にあたっては,「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライ

ン(平成 28 年 7 月)」(以下,国のガイドライン)等を踏まえて考え方を取りまとめているが,今

後,「安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会(国土交通省・警察

庁)」(以下,国の検討委員会)における最新の動向や法制度の改正のほか,当地域の自転

車利用者の状況等を踏まえ,本ガイドラインを適宜,改定していくこととする。また,整備の効

果及び評価,改善については「水郷筑波サイクリング環境整備事業推進検討会」等で検討

していくこととする。

※ 本ガイドラインは,つくば霞ヶ浦りんりんロードに適用するものとし,その他の道路の整備

については別途定めるガイドライン等によるものとする。

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

2 ガイドラインの概要

【本章の概要】

本章では,ガイドラインの全体構成と適用範囲を提示し,ガイドラインが担う役割について

記載する。

本章の構成は,以下の通りである。

2.1 ガイドラインの位置づけと目的

本節では,上位計画である「水郷筑波サイクリング環境整備総合計画」における本ガイド

ラインの位置付け及び策定の目的について記載する。

2.2 ガイドラインの適用範囲

本節では,ガイドラインの適用範囲として,対象とするサイクリングコースの全体像につい

て記載する。

2.3 ガイドラインの方針

本節では,ガイドラインの基本方針と段階整備の考え方について記載する。

2.4 参考図書・基準等

本節では,本ガイドラインを参照するにあたり,参考となる図書・基準等を記載する。

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

ガイドラインの位置づけと目的

本県では,水郷筑波地域において,地域の特性を活かした「回遊性のあるサイクリング」をテーマに,サ

イクリングを核に,豊かな自然や歴史的・文化的資産など様々な地域資源を結びつけ,東京圏からの優れ

たアクセス性を活かしながら,誰もが多様にサイクリングを楽しむことができる,日本一のサイクリング環境の

構築を目指している。

本ガイドラインは,総合計画に位置付けられている「取組 1.地域内走行空間の回遊性・走行性の向上」

及び「取組 2.走行空間の安全性の向上」,「取組 3.案内標識等の整備」,「取組 4.拠点施設・休憩施設の

充実」の実現にあたり,具体的な整備に関わる基本的な考え方や仕様等を定め,各事業者・実施主体のサ

イクリング環境整備の方針を示すものである。

図 2-1 本ガイドラインの位置付け

「水郷筑波サイクリング環境整備総合計画 (平成 28 年 6 月)」

取組1. 地域内走行空間の回遊性・走行性の向上

取組2. 走行空間の安全性の向上

取組3. 案内標識等の整備

取組4. 拠点施設・休憩施設の充実

取組5. 外国人等の様々な人々を受け入れるサイクリング環境の構築

取組6. 手軽にサイクリングを楽しんでもらえる体制の構築

取組7. サイクリングに関する情報提供の充実

取組8. 地域資源と連携したサービスの充実

取組9. 駅や空港等からのアクセス性の向上

取組10. ルールを学ぶ機会の充実

取組11. トレーニング等による利用の機会の創出

取組12. 地域におけるサイクリングの促進

取組13. サイクリングコースのブランドイメージ向上

取組14. サイクリングイベントの充実

取組15. 地域におけるプロモーション・情報発信力の向上

水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

1 はじめに

2 ガイドラインの概要

3 デザインの基本的な考え方

4 自転車走行空間の整備

5 案内標識等の整備

6 拠点施設の整備

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

ガイドラインの適用範囲

本ガイドラインでは,総合計画で設定したつくば霞ヶ浦りんりんロードを対象とする。

つくば霞ヶ浦りんりんロードは,平成 28 年 4 月に県道認定を受けた桜川土浦潮来自転車道線(岩瀬駅

前(桜川市)~水郷北斎公園(潮来市),延長 81.3km)を含み,霞ヶ浦湖岸道路を一体のものとした総延長

約 180km のサイクリングコースのことである。

なお,今後,北浦や筑波山周辺地域にもサイクリングコースの整備を進めていくことが想定されるため,

本ガイドラインは,鹿嶋市・神栖市・鉾田市の延伸区間にも適用することとする。サイクリングコースが拡張し

た際には,本ガイドラインを改定するとともに,本ガイドラインの適用範囲を拡張するものとする。

図 2-2 つくば霞ヶ浦りんりんロード

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

ガイドラインの方針

2.3.1 基本方針

前述した目的を踏まえ,利用者の満足度を意識した整備を実現するために,以下の方針に基づき

整備を進める。

1.趣旨と使い方を明示したハード整備の基準となる指針の整理

2.関係自治体・民間等が共有できる基本方針の設定

3.統一的なデザインによるサイクリング環境の価値向上

4.利用者の満足度を高めるための拠点施設の充実

サイクリング環境の整備にあたっては,国の検討委員会における最新の動向を踏まえるとともに,「案

内標識等の整備」と「拠点施設の整備」については,利用者の満足度を意識して,以下の方針に基づ

き,取組を実施する。

図 2-3 サイクリング環境の構築に向けた基本方針

・ ビギナーや当地域を初めて訪れたサイクリストであっても,安全に安心してサイク

リングを楽しむことができるよう,コース案内や注意喚起のための案内標識等の充

実に取り組む

・ 案内標識等については,外国人も含めたすべての人に伝わるよう,多言語化やルー

ルがひと目で分かるユニバーサルデザインへの対応に取り組む

案内標識等の整備

・ 安心してサイクリングを楽しんでもらうため,一定規模の駐車場を有した施設や鉄

道駅等の拠点施設を中心として,サイクリストのニーズを満たす高い水準の機能を

持つ施設を整備する

・ 既存施設の機能充実を図るとともに,理想的な間隔となるように拠点施設を配置す

拠点施設の整備

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

2.3.2 段階整備の考え方

「誰もが多様にサイクリングを楽しむことができる,日本一のサイクリング環境の構築」を実現するため

には,効果的なものから先行的に着手し,着実に整備を進めていくことが重要となる。

そこで,サイクリング環境の構築にあたり,整備の熟度を示すレベルを定め,段階的に整備を行って

いくものとする。

図 2-4 段階整備のフロー図

2.3.3 維持管理の考え方

維持管理については,職員による巡視を定期的に行い,自転車走行環境の保全維持に努めることと

する。

レベル 1 分かりやすくしっかり道案内

・ 利用者がコースを迷わずにサイクリングを楽しむことができるように,コース案内の案内

標識等を設置する。

レベル 2 安全で快適に走行できる環境づくり

・ 利用者の安全性を確保するために,正しい通行位置の案内・危険箇所での注意喚起

の警戒・指示標識等を設置する。

・ 利用者が快適にサイクリングを楽しむために,観光・拠点施設への案内標識等を設置

する。

レベル 3 日本一のサイクリング環境を目指した整備

・ サイクリングコースのさらなる充実を図るために,案内・指示・警戒に関する全ての標識

等の整備を進める。

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

参考図書・基準等

本節では,本ガイドラインを作成するにあたり,参考とした図書や基準等を記載する。

(1) 関連法令

自転車走行環境を整備する上で,関連する法令を以下の一覧表に示す。

道路法は,道路網の整備を図るため,道路に関して路線の指定及び認定,管理,構造,保全,費用

の負担区分等に関する事項を定めている。

道路構造令は,道路法第 30 条の規定に基づき,道路の新設または改築する場合における,幅員,

線形,勾配といった道路構造の一般的な技術基準を定めている。

表 2-1 関連法令

基準等の名称 発行 道路法 (昭和 27 年 6 月 10 日 法律第 180 号)

改正:平成 23 年 12 月 14 日 法律第 122 号 道路法施行令 (昭和 27 年 12 月 4 日 政令第 479 号)

改正:平成 28 年2月 17 日 政令第 43 号 道路構造令 (昭和 45 年 10 月 29 日 政令第 320 号)

改正:平成 23 年 12月 26 日 政令第 424 号 道路交通法 (昭和 35 年 6 月 25 日 法律第 105 号)

改正:平成 27 年 9 月 30 日 法律第 76 号 道路標識,区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正する命令

平成 26 年 4 月 1 日施行 国土交通省 道路局

図 2-5 道路法と道路構造令の関係

出典:自転車利用環境整備ガイドブック(平成 19 年 10 月,国土交通省・警察庁)

注)上図における道路構造令は国道を対象としたものであり,県道及び市町村道の構造の技術的基準について

は,道路構造令を参酌し,各自治体が条例で定めるものである(次頁参照)

・ 道路法第30条において,道路の構造の技術的基準は,道路の種

類ごとに政令で定めると規定されている。

道 路 法

・ 道路構造令は,道路を新設し,又は改築する場合における 道路

の構造の一般的な技術基準を定めている。

道 路 構 造 令

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

(2) 関連条例

各地方自治体においては,「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関

係法律の整備に関する法律」(第一次一括法:平成 23 年 5 月 2 日公布,第二次一括法:平成 23 年

8 月 30 日公布)を受け,平成 25 年 3 月 31 日までに,都道府県道および市町村道の構造の技術

的基準について,道路構造令を参酌し,条例で定めている。

茨城県及び関連市町村の条例を以下に示す。なお,条例の詳細は参考資料に記載している。

表 2-2 関連条例

自治体 基準等の名称 発行 茨城県 道路法に基づき県道の構造の技術的基準等を定め

る条例 平成 24 年 12 月 27 日 茨城県条例第 80 号

土浦市 土浦市市道の構造の技術的基準等を定める条例 平成 25 年 3 月 27 日 土浦市条例第 20 号

石岡市 石岡市市道の構造の技術的基準等を定める条例 平成 25 年 3 月 21 日 石岡市条例第 28 号

つくば市 つくば市が管理する道路の構造の技術的基準等を定める条例

平成 25 年 3 月 22 日 つくば市条例第 18 号

鹿嶋市 鹿嶋市道路の構造の技術的基準等を定める条例 平成 24 年 12 月 18 日 鹿嶋市条例第 34 号

潮来市 潮来市道路構造等に関する条例 平成 25 年 3 月 25 日 潮来市条例第 9 号

稲敷市 稲敷市道の構造の技術的基準を定める条例 平成 25 年 3 月 29 日 稲敷市条例第 3 号

かすみがうら市 かすみがうら市道路の構造の技術的基準等に関する条例

平成 25 年 3 月 28 日 かすみがうら市条例第 8 号

桜川市 桜川市が管理する市道の構造の技術的基準等を定める条例

平成 25 年 3 月 14 日 桜川市条例第 4 号

神栖市 神栖市市道の構造の技術的基準を定める条例 平成 24 年 12 月 21 日 神栖市条例第 34 号

行方市 行方市市道の構造の技術的基準を定める条例 平成 25 年 3 月 6 日 行方市条例第 19 号

鉾田市 鉾田市市道の構造の技術的基準等を定める条例 平成 25 年 3 月 15 日 鉾田市条例第 6 号

小美玉市 小美玉市道路構造条例 平成 25 年 3 月 26 日 小美玉市条例第 5 号

美浦村 美浦村村道の構造の技術的基準を定める条例 平成 25 年 3 月 21 日 美浦村条例第 9 号

阿見町 阿見町町道の構造の技術的基準に関する条例 平成 25 年 3 月 26 日 阿見町条例第 12 号

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

(3) 参考図書

本ガイドラインを作成するにあたり,以下に示す図書を参考とした。

表 2-3 参考図書

基準等の名称 発行 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン 平成 28 年 7 月

国土交通省 道路局 警察庁 交通局

「自転車ネットワーク計画策定の早期進展」と「安全な自転車通行空間の早期確保」に向けた提言

平成 28 年 3 月 安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会(国土交通省)

自転車利用環境整備ガイドブック 平成 19 年 10 月 国土交通省 道路局地方道・環境課

自転車道等の設計基準解説 昭和 49 年 10 月 (社)日本道路協会

道路構造令の解説と運用 平成 16 年 2 月 (社)日本道路協会

移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準を定める省令

平成 18 年 12 月 19 日 国土交通省第 116 号

改訂版 道路の移動等円滑化整備ガイドライン 平成 20 年 2 月 (財)国土技術センター

道路標識設置基準・同解説 昭和 62 年 1 月 (社)交通工学研究会

路面表示設置の手引き 平成 10 年 5 月 (社)交通工学研究会

法定外表示等の設置指針について(通達) 平成 26 年 1 月 28 日 警察庁 交通局

設計要領第四集 休憩施設設計要領 平成 17 年 10 月 東日本高速道路株式会社

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2 ガイドラインの概要 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

(4) 「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(平成 28 年 7 月)」

平成 24 年 11 月に策定した「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」は,「自転車は「車両」

であり車道通行が大原則」という観点に基づき,自転車通行空間として重要な路線を対象とした面的な

自転車ネットワーク計画の作成方法や,交通状況に応じて,歩行者,自転車,自動車が適切に分離さ

れた空間整備のための自転車通行空間設計の考え方等について提示したものである。

しかし,全国的に自転車ネットワークの計画策定が進まなかったため,安全で快適な自転車利用環

境を早期に創出するために,「安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会」が平

成 26 年 12 月に開催した。平成 28 年 3 月に,同検討委員会は,早期に安全で快適な自転車利用環

境創出を促進する上で特に重要と考えられる「自転車ネットワーク計画策定の早期進展」と,「安全な

自転車通行空間の早期確保」に向けた方策について,国のガイドラインの内容を見直すべき事項等に

ついて提言を行い,平成 28 年 7 月に国のガイドラインの改訂版が策定された。

なお,国のガイドラインで示されている案内標識等の仕様と本ガイドラインの仕様の適用範囲につい

ては,p35 に記載している。

図 2-6 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインの改定のポイント

出典:安全で快適な自転車利用環境創出ガイドラインの一部改定について(平成 28 年 7 月,国土交通省)

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3 デザインの基本的な考え方 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

3 デザインの基本的な考え方

【本章の概要】

本章では,水郷筑波地域の特徴を踏まえ,サイクリング環境整備を進める上でのデザイン

コンセプトを記載する。

本章の構成は,以下の通りである。

3.1 水郷筑波地域の特徴

本節では,水郷筑波地域の特徴を記載する。

3.2 デザインコンセプト

本節では,デザインコンセプトを記載するとともに,視覚デザインのポイントについて概要

を記載する。

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3 デザインの基本的な考え方 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

茨城県及び水郷筑波地域の特徴

水郷筑波地域は,古くから信仰の山として栄えてきた筑波山や,国内第 2 位の面積を誇る湖である

霞ヶ浦を中心とした豊かな自然や美しい景観,さらには,鹿島神宮や常陸風土記の丘などの歴史的・

文化的資産や,桜川のサクラ,潮来のアヤメなど,数多くの地域資源を有している。霞ヶ浦では,遊覧

船などのクルージングのほか,秋には観光帆引き船が運航され,冬には多くの渡り鳥が飛来するなど,

季節ごとに多様な風景を楽しむことができる。

さらに,当地域では,肥沃な大地に田園風景が広がり,特にメロン,レンコンは全国一の生産量など

を誇るとともに,果樹園では,梨やイチゴなどの果物狩りも楽しむことができる。

図 3-1 水郷筑波地域(左上:霞ヶ浦,右上:ハス田,左下:筑波山,右下:鹿島神宮)

出典:茨城県ホームページ,観光いばらき(茨城県公式観光情報サイト)

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3 デザインの基本的な考え方 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

デザインコンセプト

デザインの背景にあるコンセプト及び視覚デザインのポイントを以下に示す。

図 3-2 デザインコンセプトについて

○ 視覚デザインの背景にあるコンセプト

・ 肥沃な大地と筑波山。大きな湖。開けた空。おおらかでオープンな土地柄を表現し,コースに一

貫したアイデンティティを付与する。

・ 大地については,サイン盤面や路面表示のデザインに直接的に図案化されていないが,

下の黄色線は黄金の大地をあらわし,上の黄色線は,光を象徴している。

・ また,空の広がりを表現することで,開けた大地を連想させることも意識している。

・ そして,サインそのものがランドスケープの一部になり,地域のアイデンティティとなることを

目指している。

○ 茨城県及び水郷筑波地域の特徴

・ 筑波山や霞ヶ浦を中心とした豊かな自然や美しい景観,さらには,鹿島神宮や常陸風土記の丘

などの歴史的・文化的資産や,桜川のサクラ,潮来のアヤメなど,数多くの地域資源を有してお

り,季節ごとに多様な風景を楽しむことができる。

・ 肥沃な大地に田園風景が広がり,特にメロン,レンコンは全国一の生産量などを誇るとともに,果

樹園では,梨やイチゴなどの果物狩りも楽しむことができる。

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3 デザインの基本的な考え方 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

図 3-3 視覚デザインのポイントについて

【参考】 用語解説

用語 意味 ピクトグラム 絵文字 タイポグラフィ 文字の書体や配列のデザイン

出典:三省堂 Web Dictionary

○ 視覚デザインのポイント

【色】

・ 色はブルーの面に明るいイエローの差し色を用いる。

・ ブルーは霞ヶ浦の水面と広く大きな空,イエローはそこに降り注ぐ光やサイクリングのエネルギー

を表現している。

・ ブルーは自転車の路面マーキングの基本色であり,イエローとのコンビネーションで視認性を高

めている。いばらきの景観にマッチした配色で一貫性のあるアイデンティティを形成する。

・ 注意喚起の標識には赤を用いる。

【矢羽根】

・ 国のガイドラインにおける標準形の矢羽根(全長 150cm, 全幅 75cm,角度 1:1.6)に,10cm 幅の

イエローのラインを上下に加えるデザインである。生活道路やスペースが限られた場所への施工

用の縮小形にも上下に 5cm のイエローラインを加える。このブルー&イエローの矢羽根は,当サ

イクリングコースのシンボルとも言える役割を果たす。

【ピクトグラムと標識】

・ 自転車のピクトグラムは,米国 National Park Service のピクトグラムをベースに,頭を小さく,手足

を細くカスタマイズした。

・ 基本的には,サインの文字が左から右に流れることから,右向きのピクトグラムを用いることを統

一している。ただし,自転車ピクトグラムだけ左向き,正面(背面),右向きを用意し,左折,右折,

直進などの矢印と組み合わせて使用することで,サイクリストが直感的に進行方向を判断できる

よう工夫している。

・ その他のピクトグラムは日本で一般的に用いられているデザインを踏襲しつつ,「釣り人注意」な

ど当サイクリングコース特有のニーズに答えるものを追加している。

【タイポグラフィ】

・ 和文書体は可読性の高い見出しゴシック体を使用。欧文書体はアメリカの交通標識に用いられ

る Interstate を 使 用 す る 。 Interstate は 文 字 幅 が 非 常 に 狭 い Compressed , や や 狭 い

Condenced,そして通常の幅の Regular という 3 種類の文字幅と文字の太さから選択することが

でき,限られたスペースを有効に活用した可読性の高いサインのデザインが可能である。

・ インバウンド客のニーズに応えるため,「注意」などの基本的な文言は 5 ヶ国語(日本語,英語,

タイ語,中国語,韓国語)で表示する。それにピクトグラムを組み合わせることで,効果的な情報

伝達を行う。

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4 自転車走行空間の整備 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

4 自転車走行空間の整備

【本章の概要】

本章では,つくば霞ヶ浦りんりんロードの自転車走行空間の整備について,安全性を向

上させるための整備方針を記載する。

本章の構成は,以下の通りである。

4.1 自転車走行空間の整備方針

本節では,自転車走行空間の整備を進めるにあたり,つくば霞ヶ浦りんりんロードにおけ

る既存の走行空間を整理した結果を記載する。

4.2 自転車走行空間の整備基準

本節では,つくば霞ヶ浦りんりんロードのうち,一般道路区間及びつくばりんりんロードを

対象に,自転車走行空間の整備手法について概要を記載する。

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4 自転車走行空間の整備 水郷筑波サイクリング環境整備ガイドライン

自転車走行空間の整備方針

○ 多様な人々が共有する道路空間の中で,サイクリストがより安全に安心して走行することができ

るよう,安全対策や走行性,接続性の改善等,快適な自転車走行空間の整備に取り組む

総合計画 「取組1.地域内走行空間の回遊性・走行性の向上」

総合計画 「取組2.走行空間の安全性の向上」

4.1.1 既存の自転車走行空間

つくば霞ヶ浦りんりんロードにおける既存の自転車走行空間を以下に示す。

表 4-1 既存の自転車走行空間

自転車走行空間のタイプ 現況写真 延長

自転車歩行者専用道路 等

つくばりんりんロード

39.4km

霞ヶ浦湖岸道路の 一部区間

11.7km

自転車と自動車を混在通行とする道路(車

道混在)

つくばりんりんロードの 一部区間

1.8km

霞ヶ浦湖岸道路の 一部区間

115.0km

市街地ほか

8.3km

合 計 176.2km

※ 上表 4-1 中の延長は,平成28年 9 月末時点の延長を記載している