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国際貿易と投資 No.120 ◆ 1 コロナ禍と対中依存リスク 要約 中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、まさに、 グローバリゼーション時代のパンデミック(世界的大流行)となった。きわ めて短い期間で世界経済を恐怖のどん底に陥れて、世界経済秩序を一変させ るほどの威力を発揮している。 パンデミックの影響は、発生当初は、中国国内に感染が拡大して、中国に 集約されている製造業の供給網が寸断され、それが世界的に生産活動を停滞 させるサプライチェーン・ショック(生産・供給ショック)が懸念された。 次に欧米に感染が広がり、都市封鎖が実施されると投資・消費が冷え込む 需要ショックが起きた。生産と需要のショックの影響として次の3点が指摘 できる。 第1は中国成長に対する見方の変化である。閉鎖されていた工場が、いち 早く再開しても、需要ショックで世界の消費・投資が減退すれば、中国経済 がこれまでの成長路線に復帰することは難しい。 第2は世界経済の停滞が長期化し、中国の巨大な生産力が過剰生産問題を 招くと貿易摩擦が激化し、世界貿易の保護主義化に拍車をかける。 第3は、中国を世界の工場として、サプライチェーンのハブとするリスク が、医療品の入手困難によって、世界的に共有されている。過度な対中貿易 依存度を見直す動きが出てくる。パンデミックが起きても、中国に左右され 1 コロナ禍と対中依存リスク ~中国をサプライチェーンのハブにしたのが賢い 選択だったか~ 大木 博巳 Hiromi Oki (一財)国際貿易投資研究所 研究主幹 http://www.iti.or.jp/

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Page 1: 1 コロナ禍と対中依存リスク - ITI国際貿易と投資 No.120 1 コロナ禍と対中依存リスク 要約 中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、まさに、

国際貿易と投資 No.120 ◆ 1

コロナ禍と対中依存リスク

要約 中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、まさに、グローバリゼーション時代のパンデミック(世界的大流行)となった。きわめて短い期間で世界経済を恐怖のどん底に陥れて、世界経済秩序を一変させるほどの威力を発揮している。 パンデミックの影響は、発生当初は、中国国内に感染が拡大して、中国に集約されている製造業の供給網が寸断され、それが世界的に生産活動を停滞させるサプライチェーン・ショック(生産・供給ショック)が懸念された。 次に欧米に感染が広がり、都市封鎖が実施されると投資・消費が冷え込む需要ショックが起きた。生産と需要のショックの影響として次の3点が指摘できる。 第1は中国成長に対する見方の変化である。閉鎖されていた工場が、いち早く再開しても、需要ショックで世界の消費・投資が減退すれば、中国経済がこれまでの成長路線に復帰することは難しい。 第2は世界経済の停滞が長期化し、中国の巨大な生産力が過剰生産問題を招くと貿易摩擦が激化し、世界貿易の保護主義化に拍車をかける。 第3は、中国を世界の工場として、サプライチェーンのハブとするリスクが、医療品の入手困難によって、世界的に共有されている。過度な対中貿易依存度を見直す動きが出てくる。パンデミックが起きても、中国に左右され

1 コロナ禍と対中依存リスク~中国をサプライチェーンのハブにしたのが賢い 選択だったか~

  大木 博巳 Hiromi Oki

(一財)国際貿易投資研究所 研究主幹

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2 ◆ 国際貿易と投資 No.120

ないサプライチェーンつくりが進む。 コロナ禍によって、世界の工場として、サプライチェーンのハブとなっていた中国の役割が大きく変わるものとなろう。

1. グローバリゼーション時代のパンデミック(世界的大流行)

 中国で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、まさに、グローバリゼーション時代のパンデミック(世界的大流行)となった。きわめて短い期間で世界経済を恐怖のどん底に陥れて、世界経済秩序を一変させるほどの威力を発揮している。 パンデミックの影響は、発生当初は、中国国内に感染が拡大して、中国に集約されている製造業の供給網が寸断され、それが世界的に生産活動の停滞をもたらすサプライチェーン・ショック(生産・供給ショック)が懸念された。 次に、2020年3月に入り感染が欧米に広がり、その抑止に向けた都市封鎖が実施されると、生産活動の中止による、失業者の急増、さらに投資・消費が冷え込む需要ショックが深刻化した。 中国では、中国の2020年1-3月期の国内総生産(GDP)成長率は、前年同期比6.8%減、統計公表が始まって以来の大幅なマイナスとなった。中国鉱工業生産は1~2月に前年比13%減少したが3月には、同1%減と大幅に持ち直した。しかし、個人消費が回復している様子はほとんど見当たらない。小売売上高は前年比16%近い落ち込みとなり、1~2月の20%減からわずかに改善したにすぎない。とりわけ懸念されているのは、消費とサービスの回復がままならないことである。 米経済も、瞬時に、巨大な需要ショックをもたらした。FRB(米連邦準備制度理事会)が4月15日に公表した米地区連銀経済報告によれば、米経済は新型コロナウイルスの封じ込めに向けた措置により、過去数週間で急激な悪化局面に入った。ビジネスが営業停止や人員削減の実施を余儀なくされたことが背景にある。米経済の少なくとも4分の1が稼働しておらず、これだ

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 3

コロナ禍と対中依存リスク

け大規模にビジネスが停止した例は過去にない。予想では、今後数カ月に1,440万人の雇用が削減され、2月に3.5%と50年ぶり低水準だった失業率は、6月に過去最高の13%まで上昇する。2020年4-6月期の米国のGDP成長率は、年率で25%と大幅に縮小すると悲観的である。3月の調査の予想では0.1%のマイナス成長であったか、激烈な悪化となった。  中国は新型コロナの感染が国内に拡大した2020年1月に国内工場を閉鎖し、世界にサプライチェーンショックが走った。日本国内では中国からの自動車部品を調達できず生産を停止した。アップルはiPhoneの調達に懸念が出た。さらに、感染が欧米に広がり、世界的にマスク等の医療品不足が深刻化した。欧米をはじめとして世界がアパレルやスマートフォンなどの消費財のみならず生命に関わる医療品までもが、中国の生産に過度に依存しているリスクを認識させられた。新型コロナによって認識を新たにしたことは、中国をサプライチェーンのハブにしたことが賢い選択だったかどうかである。 本稿は、新型コロナ発生当初に懸念された「生産・供給ショック」とその後の「需要ショック」が、2001年のWHO加盟後のわずか10年たらずで、世界の工場として、サプライチェーンのハブとなった中国に与える影響について論じる。

2. 中国自動車産業の供給ショックと需要ショック

2.1. 武漢の自動車工場の再開 中国は2020年1月23日に、世界で最初に新型コロナウイルスの感染が拡大した湖北省の省都・武漢市全域に出入りを禁止する「封城」(都市封鎖)を実施した。武漢市の人口は、1,100万人、過去に前例がない、最大数の隔離であった。後に封鎖区域は人口5,800万人の湖北省全域に拡大された(習近平国家主席が全力で対策すべしと重要指示を発表した。)。4月8日に市外への移動制限が解除されるまで、武漢では移動が制限された。 封鎖によって大きな影響を受けた産業が自動車産業である。武漢には、国有3大自動車メーカーの一つ、東風汽車の拠点(本社)がある。東風汽車

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は、フランスのルノー、プジョー・シトロエン、日本のホンダ、日産、米国の GMと合弁企業を設立し、多数の組立工場を持つ注1。武漢に進出している日系企業、79 社のうち自動車関連産業が半分弱を占めている。 武漢の自動車生産台数は都市別でみて中国第6位(2016年)、自動車産業は市全体の工業生産額や二次産業の雇用者数のそれぞれ約 2 割を占めている注2。中でも、ホンダは武漢に3つの工場を構え、その生産能力は合計60万台、中国における生産能力の約半分を占める主力拠点である。GMの武漢工場は中国における生産の19%を占めている。また、日産自動車と東風汽車との合弁会社である東風日産の工場も湖北省にある。 武漢の自動車工場は、春節(旧正月)休暇入りした2020年1月下旬から稼働を休止した。春節休暇明けの2月3日には再開予定であったが、湖北省政府は感染拡大を受けて再開時期をたびたび延期させ、工場内での感染拡大を防ぐため、操業再開を2月10日以降にするよう通達を出した。しかし、感染症の勢いが止まらなかったことから、再開予定を2月下旬に延期させたが、これもさらに延びて、3月11日以降にようやく一部生産を再開にこぎつけた。 日系企業では、ホンダが3月11日、日産自動車が3月13日から操業を開始したが、当初の工場の稼働率は1~2割程度とフル生産までほど遠かった注3。従業員の確保や中国当局からの移動の制約などがネックとなり、全面稼働までに至っていなかった注4。広東省など湖北省以外にある日系自動車メーカーの工場は2月中旬以降から順次再開していた。広州本田の4工場が通常稼働に復帰したのは、3月末であった。 中国商務省は、外国投資を維持させるため、外国企業の生産再開を支援するための施策をリストアップするよう地方政府に指示した。同省によると、3月30日時点で8,000社以上の外国企業のうち67%が、生産能力の70%以上を回復させたとしている注5。

2.2. 中国製自動車部品調達への影響 新型コロナ危機の初期段階で、世界の自動車メーカーが懸念したことは、中国工場の操業停止によって、欧米工場向けの中国製部品が確保できるかど

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コロナ禍と対中依存リスク

うかであった。実際、中国で工場が閉鎖されていた2月後半~3月上旬、中国からの部品調達が滞って、日本国内での新車生産に影響が出た。まず、日産が、2月10日に九州工場の生産を一部休止せざるを得ない状況になったと発表した。グループの日産車体でも、2月後半~3月上旬に九州の2工場で延べ8日間、生産を止めた。日産は、九州や関東の工場で数日間の生産調整を実施したが、特に九州地域ではコスト面での優位性や距離的な近さを理由に中国製部品が使用され、燃料タンクやアルミホイール、エアバッグなど約20点が調達に懸念があるリスク部品になっている注6。 日産に続きトヨタ、ホンダ、マツダなどにも中国製素材・部品の欠品の影響が出始めた。ホンダは、3月上旬に、国内2工場で一部車種を減産した。 日系自動車メーカーが中国内で生産する完成車は基本的に中国市場向けであるが、自動車部品サプライヤーが中国で生産している部品は、日本などで生産する完成車にも多く使用されている。2019年に、日本は海外から約9,000億円分の自動車部品を輸入したが、そのうちの3,300億円、約37%が中国からの輸入であった。中国から輸入されている品目は、シート生地やシートベルト、カーペットなど内装材、エアバッグ用の布、燃料ホース、ホース類の締め付け金具、ペダル類、樹脂製のブラケット、排気管など、走行性能や機能には直接的に影響がない部品が中心であったが、次第にエンジン、トランスミッション、駆動系の部品でも中国製を採用する例が増えている注7。 日本の対中自動車部品輸入は、リーマンショック前から増加し始め(図1)、リーマンショック後に急増し、対中自動車部品輸入依存度も上昇した(図2)。ただし、ここ数年間の対中自動車部品輸入の伸び率は、2000年代前半と比べて大きく鈍化している(図3)。対中輸入依存度も40%を目前に横ばいで推移しており、ピークに達しているようにみえる。 また、日本の自動車部品の対中輸入依存度を韓国、ドイツ、米国と比較すると、日本と韓国が依存度を高めているが、韓国は2013年をピークに下落している。また、米国、ドイツも輸入依存度は上昇しているが、日本ほど過度に中国に依存度してない。日本が突出している(図4)。

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図 1 日本の自動車部品輸入

注:自動車部品:車体(HS8707)、部品・附属品(HS8708)、自動車用エンジン(HS8407.31-34)資料:日本貿易統計

図 2 日本の自動車部品輸入(国別シェア)

資料:日本貿易統計

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

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2005

2006

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2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

(100万ドル)

中国 米国 ASEAN10 EU28

国名 日本業種 ⾃動⾞部品

port 相手国 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018輸入 中国 0.1 0.1 0.1 0.2 0.2 0.2 0.3 0.5 0.7 1.1 1.5 1.8 1.3 1.9 2.0 2.5 2.8 3.0 3.0 3.2 3.4 3.7

米国 0.8 0.7 0.7 1.1 1.0 1.3 1.1 0.7 0.6 0.8 0.6 0.8 0.3 0.5 0.6 0.7 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.8ASEAN10 0.2 0.2 0.2 0.3 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 1.0 1.3 0.8 1.3 1.2 1.5 1.5 1.7 1.6 1.7 1.8 2.0EU28 0.6 0.5 0.5 0.5 0.5 0.7 1.0 1.4 1.4 1.5 1.8 2.1 1.3 1.4 1.4 1.5 1.4 1.5 1.2 1.2 1.3 1.4その他 0.3 0.3 0.3 0.4 0.4 0.4 0.6 0.6 0.7 0.7 0.8 0.9 0.6 0.8 1.0 1.1 1.1 1.3 1.3 1.6 1.7 1.7世界 1.9 1.8 1.9 2.4 2.4 3.0 3.4 3.8 4.1 4.9 5.8 6.9 4.3 6.0 6.1 7.2 7.4 8.1 7.8 8.3 8.9 9.6

図2 日本の⾃動⾞部品輸⼊(国別シェア)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

日本

米国

ASEAN10

EU28

その他

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コロナ禍と対中依存リスク

図 3 日本の自動車部品輸入(対中国)

資料:日本貿易統計

図 4 日本・米国・ドイツ・韓国の自動車部品輸入に占める中国のシェア推移

資料:各国貿易統計

-40.0-30.0-20.0-10.00.010.020.030.040.050.060.070.0

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

(%)(100万ドル)

輸入額(左軸) 前年⽐(右軸)

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

(%)

日本 米国 ドイツ 韓国

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2.3. 中国の自動車部品輸出 他方、中国の自動車部品輸出は、リーマンショック後に、一段と自動車部品の輸出が加速化している(図5)。これは、中国の自動車市場の拡大に伴い外資系メーカーの生産台数が拡大し、これに伴い部品サプライヤーの輸出も拡大していることや中国地場企業の輸出競争力が高まったことなどが要因として指摘できる。 自動車部品輸出の主な仕向け地は、米国、EU、日本である。ただし傾向的には、中国の自動車部品輸出に占める日米欧のシェアは低下している(図6)。 中国の自動車部品輸出を地域(税関別)別にみると、華東地域の輸出が過半を占めている(図7)、華南地域は伸び悩んでいる一方で内陸部の輸出はまだ、小さい。日本向け輸出は、華南、華東地域が主な輸出地域である。内陸部の自動車部品輸出は、武漢が最大であるが、主な輸出先はEUである。

図 5 中国の自動車部品輸出・輸入額

資料:中国貿易統計

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

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2007

2008

2009

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2011

2012

2013

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2018

(100万ドル)

輸出 輸入

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 9

コロナ禍と対中依存リスク

図 6 中国の自動車部品輸出(相手国別シェア)

資料:中国貿易統計

図 7 中国の自動車部品輸出(地域別)

資料:中国貿易統計

0.05.0

10.015.020.025.030.035.040.045.050.0

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

(%)

日本 韓国 ドイツ 米国

2001:ITバブル崩壊

2008︓リーマンショック

2016︓チャイナショック

2018︓⽶中貿易戦争

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

(100万ドル)

華東 華南 内陸部

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2.4. 中国の自動車需要を破壊 新型コロナが中国の自動車産業に与えたショックは、自動車需要の破壊である。2020年1-3月期の中国の自動車販売台数は、前年同期比42%減の370万台に落ち込んだ(中国汽車工業協会(CAAM)2020年4月10日発表)。これで、中国自動車販売は、2018年から7四半期連続の減少となった。中国国内の自動車販売は、3月に感染状況が落ち着きを見せ始めて、需要も上向き始めていたが、3月の販売台数は前年同月比43%減の143万台であった。2月の同79%減少よりは改善した。 2020年1-3月期のメーカー別自動車販売の減少率は、ダイムラーとトヨタがそれぞれ20%と22%の減少、日産は40%減、GMは43%減と外資系メーカーの間で明暗が分かれた。不振を極めたのが中国地場メーカーであった。吉利汽車、長城汽車 、比亜迪(BYD)の中国勢はそれぞれ43%、47%、48%の減少となった。中国地場メーカーの販売減が、特に深刻となった理由として、外国メーカーと比べて顧客層の所得水準が低く、このため景気悪化の影響を受けやすいためと指摘されている注8。 中国の自動車販売は、2020年には販売増に転じるとの期待があった。しかし、新型コロナが中国の自動車需要を破壊し、一層の落ち込みを招いた。2020年の通年の販売は13~15%の販売減が予測され、増加に転じるのは21年と見込まれている。

2.5. 日本の対中自動車部品輸出 中国の自動車販売の低迷は、日本やドイツ、韓国などの対中自動車部品輸出に影響する。中国の自動車生産に占める外資系自動車メーカーの存在感は大きく、自動車部品の4分の1近くを輸入品に依存している注9。中国の自動車部品輸入は、リーマンショック以降、中国の自動車生産の拡大に伴い、増加基調を続けていた。2016年に落ち込んだがすぐに回復している。中国の自動車販売が前年比減となった2018年以降も輸入は増加基調にある。 中国の自動車部品輸入は、地域(税関)別にみると、2018年で華東が75億ドル、東北が79億ドル、内陸部が64億ドル、華南が55億ドルと地域格差が縮

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 11

コロナ禍と対中依存リスク

小している。ここ数年間、自動車生産台数が急増している内陸部で自動車部品輸入が大きく拡大している(表1)。内陸部の輸入は、重慶、成都、長沙、武漢の順で輸入額が大きい。輸入先は、日本が内陸部の自動車部品輸入の約過半を占めている(表2)。内陸部における日本メーカーの自動車生産が拡大していることを反映したものであろう。 日本の対中自動車部品輸出は、2012年から2015年まで対中輸出は前年比マイナスが続いていた。2016年から前年比増に転じた(図8)。中国の自動車販売が鈍化し始めた2018年でも日本の輸出は伸びている。

表 1 中国の自動車部品輸入(単位:100 万ドル)

注:一帯一路53:ASEANとインドを含む。資料:中国貿易統計

 日本の自動車部品輸出に占める中国は、2009年に米国と並び、2011年までほぼ米国と同じ規模の輸出であったが、2012年から落ち込んだ。2018年に、再び対米輸出と同じ水準に回復した(図9)。

日本日本日本日本 韓国韓国韓国韓国

ASEANASEANASEANASEAN

10101010

2000200020002000 華東 18 419 32 14 17 1 1 929

華南 23 13 365 343 13 9 9 416

内陸部 2 101 223 219 4 0 2 329

華北 40 23 46 34 12 0 0 111

東北 3 368 122 117 5 0 0 495

計計計計 87878787 924924924924 789789789789 727727727727 51515151 11111111 13131313 2,2802,2802,2802,280

2010201020102010 華東 300 2,282 2,426 1,415 844 101 122 5,299

華南 45 486 3,107 3,010 32 50 54 3,693

内陸部 141 559 1,569 1,460 39 66 72 2,289

華北 134 1,184 2,994 1,498 1,481 6 16 4,358

東北 35 3,298 1,261 1,154 96 2 43 4,707

計計計計 655655655655 7,8087,8087,8087,808 11,35711,35711,35711,357 8,5378,5378,5378,537 2,4922,4922,4922,492 225225225225 306306306306 20,34620,34620,34620,346

2018201820182018 華東 969 3,114 2,749 1,647 769 247 322 7,529

華南 421 892 3,951 3,297 54 553 573 5,577

内陸部 336 1,233 2,332 2,025 162 131 145 4,166

華北 307 3,407 2,598 1,342 1,220 17 41 6,415

東北 157 5,955 1,515 1,167 124 196 287 7,999

計計計計 2,1902,1902,1902,190 14,60014,60014,60014,600 13,14613,14613,14613,146 9,4789,4789,4789,478 2,3292,3292,3292,329 1,1451,1451,1451,145 1,3681,3681,3681,368 31,68631,68631,68631,686

地域地域地域地域年年年年 EU28EU28EU28EU28 RCEPRCEPRCEPRCEP

一帯一路一帯一路一帯一路一帯一路

53535353

世界世界世界世界米国米国米国米国

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12 ◆ 国際貿易と投資 No.120

表 2 内陸部の自動車部品輸入(国・地域別)(単位:100 万ドル)

資料:中国貿易統計

図 8 日本の自動車部品輸出(対中国)

資料:日本貿易統計

日本日本日本日本 中国中国中国中国 韓国韓国韓国韓国 ASEAN10 ASEAN10 ASEAN10 ASEAN10

鄭州 2 160 141 81 1 0 59 59 323

重慶 51 145 598 554 0 38 4 7 976

成都 12 475 431 426 1 2 1 2 938

西安 14 9 0 0 0 0 0 0 28

合肥 0 42 24 0 0 0 24 24 67

武漢 82 88 513 460 0 23 23 30 700

長沙 139 82 496 481 0 14 1 1 724

南昌 18 166 40 18 0 3 18 21 239

計計計計 336336336336 1,2331,2331,2331,233 2,3322,3322,3322,332 2,0252,0252,0252,025 3333 162162162162 131131131131 145145145145 4,1664,1664,1664,166

世界計世界計世界計世界計税関税関税関税関 米国米国米国米国 EU28 EU28 EU28 EU28 RCEP RCEP RCEP RCEP

一帯一路一帯一路一帯一路一帯一路

53535353

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

(100万ドル)

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 13

コロナ禍と対中依存リスク

図 9 日本の自動車部品輸出(国・地域別)

  資料:日本貿易統計

 2.6. 供給・需要ショックの今後の影響 今後の影響としては、第1に中国自動車市場からの外系メーカーの撤退が予想される。 中国の新車市場は、2020年も前年比減、3年連続で減少する見通しである。また、自動車産業の過剰生産能力も深刻化している。 冬の時代を迎えた中国の自動車市場でのは販売不振に耐え切れず、中国市場から撤退する外資系企業が出てきている。2018年9月にはスズキが長安汽車との合弁を解消して四輪車のビジネスから撤退している。2020年4月には、ルノーが販売不振により、中国の東風汽車との合弁事業から撤退すると発表した注10。 米国のフォードも、この10年間に、中国事業の拡大に数十億ドルをつぎ込んできたが、販売低迷から抜け出せていない。フォードの販売減少のスピードや落ち込み幅は中国市場の中でも際立っており、苦境にある注11。中国の自動車販売が縮小している中で、中国地場企業の追い上げや自動車のEV化で競争が激化している。中国の自動車市場は、淘汰の時代を迎えている。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

(100万ドル)

中国 米国 ASEAN10 EU28

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14 ◆ 国際貿易と投資 No.120

 第2は、中国自動車販売の低迷が、欧米自動車メーカーが進めるリストラやEV戦略に与える影響である。欧米市場が苦境の中で、中国市場の存在感は大きく、米ゼネラル・モーターズや独フォルクスワーゲンなどの中国市場に売り上げを大きく依存している企業にとっては、中国販売の回復は不可欠となっている。特に、VWは欧州市場で巨額な損失を計上し、EV化を中国市場での利益を前提として立てている。中国市場の停滞は、欧州メーカーのEV戦略の見直しを迫るものとなろう。 第3が、中国、米国をはじめとする世界的な新車販売の低迷が続けば、自動車生産の調整(減産)に追い込まれることである。日本企業は、市場悪化に伴う国内外の生産調整に対するこれまでの行動を踏まえると、生産調整は日本国内で減産、海外生産は維持・拡大となろう。日本と中国の新車市場の今後の成長を考慮すれば、日本からの輸出を現地生産で代替し現地企業の採算性を維持する。中国からの調達は、ASEAN拠点に代替されることが予想できよう。

第3節 巨大恐竜のようなアップルの中国生産体制

3.1. 中国の内陸部のIT機器産業の興隆 新型コロナの発生で認識を新たにしたことは、中国内陸部におけるIT産業の発展ぶりである。中国内陸部のIT機器輸出額は、2018年で約1,500憶ドル、中国のIT機器輸出に占めシェアは、2010年では、わずか1.8%に過ぎなかったのが、20%を占めるまでに成長している(図10、11)。中国内陸部のIT機器輸出は、リーマンショック後に急増し、なお拡大中である。 中国のIT機器輸出は、華南の電子部品や映像機器、音響機器などの消費財輸出から始まり、WTO加盟後にノートパソコンの集積地となった華東が華南を追い上げた、リーマンショック後には華東から内陸部にIT産業の移転が進み、内陸部が台頭している。 内陸部のIT機器輸出は、コンピュータ周辺機器、通信機器(携帯電話)、集積回路が3大品目である(表3)。コンピュータ周辺機器は重慶、成都、通信機器(携帯電話)は鄭州、集積回路は西安、成都などが主要拠点

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 15

コロナ禍と対中依存リスク

である。これらの都市の輸出に占めるIT機器の比率は、鄭州では90.8%、重慶は80.9%、成都が84.5%、西安が91.0%と輸出構造はITモノカルチャーになっている(表4、5)。  図 10 中国の IT 機器輸出(地域別)

資料:中国貿易統計

 図 11 中国の IT 機器輸出シェア(地域別)

資料:中国貿易統計

2001:2001:2001:2001:

ITITITITバブル崩壊バブル崩壊バブル崩壊バブル崩壊

2016201620162016:チャイナショック:チャイナショック:チャイナショック:チャイナショック

2008:2008:2008:2008:

リーマンショックリーマンショックリーマンショックリーマンショック

2018:2018:2018:2018:米中貿易戦争米中貿易戦争米中貿易戦争米中貿易戦争

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

(100万ドル)

華東 華南 内陸部

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

(%)

華東 華南 内陸部

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16 ◆ 国際貿易と投資 No.120

表 3 中国の IT 輸出(地域別)2018 年(単位:100 万ドル)

資料:中国貿易統計

表 4 内陸部の IT 輸出(主要税関別、総額に占めるシェア)2018 年(単位:%)

資料:中国貿易統計

季報120号エクセル.xlsx--表3̲中国のIT輸出(地域別)

業種業種業種業種 華南華南華南華南 華東華東華東華東 華北華北華北華北 東北東北東北東北 内陸部内陸部内陸部内陸部 計計計計

コンピュータ・周辺機器 36,319 58,029 3,248 41 56,236 153,874

記憶装置 4,291 7,996 49 1 5,190 17,527

コンピュータ部品 11,681 23,434 1,238 51 8,638 45,043

デジタル複合機 3,778 1,721 503 0 950 6,953

通信機器 123,271 57,069 10,523 191 51,363 242,417

基地局 2,170 80 11 0 71 2,333

携帯電話 62,975 27,956 6,872 25 43,682 141,510

送受信・変換・再生装置 22,009 16,808 727 47 2,668 42,259

半導体等電子部品類 23,299 56,661 5,667 3,548 24,593 113,768

電子管・半導体等 7,387 17,234 2,947 229 1,313 29,111

集積回路 15,912 39,427 2,719 3,319 23,280 84,658

その他の電気・電子部品 59,867 29,952 5,449 1,165 3,877 100,309

映像機器類 28,253 14,229 2,742 605 2,768 48,596

デジタルカメラ 5,549 4,123 294 31 697 10,693

テレビ受像機(液晶・プラズマ含) 11,977 3,570 1,640 197 699 18,085

音響機器 857 232 7 1 25 1,122

計測器・計器類 12,596 11,884 2,851 807 1,049 29,186

IT部品IT部品IT部品IT部品 95,02395,02395,02395,023 110,988110,988110,988110,988 12,46812,46812,46812,468 4,8134,8134,8134,813 37,19037,19037,19037,190 260,482260,482260,482260,482

IT最終財IT最終財IT最終財IT最終財 206,569206,569206,569206,569 144,197144,197144,197144,197 19,97619,97619,97619,976 1,6611,6611,6611,661 112,438112,438112,438112,438 484,842484,842484,842484,842

IT計IT計IT計IT計 301,593301,593301,593301,593 255,186255,186255,186255,186 32,44432,44432,44432,444 6,4746,4746,4746,474 149,628149,628149,628149,628 745,324745,324745,324745,324

季報120号エクセル.xlsx--表4~5̲内陸部のIT輸出

コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ

・周辺機器・周辺機器・周辺機器・周辺機器

携帯電話携帯電話携帯電話携帯電話

半導体等 半導体等 半導体等 半導体等

電子部品類電子部品類電子部品類電子部品類

鄭州 90.8 0.1 86.6 0.1 100.0

重慶 80.9 61.8 1.9 4.9 100.0

成都 84.5 51.8 0.7 25.4 100.0

西安 91.0 19.1 0.2 44.1 100.0

合肥 46.9 36.1 2.3 4.8 100.0

武漢 37.0 2.2 13.4 3.1 100.0

税関名税関名税関名税関名 IT計IT計IT計IT計 総額総額総額総額

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 17

コロナ禍と対中依存リスク

表 5 内陸部の IT 輸出(主要税関別)2018 年(単位:100 万ドル)

資料:中国貿易統計

3.2. 鉄の3角関係 中国内陸部でIT機器の輸出が急増した背景には、中国政府が仕掛けた内陸部の経済発展計画と外資系企業誘致政策がある。中国におけるIT機器産業の発展は、沿海部に生産拠点を構えた台湾系EMS(エレクトロニクス製造サービス企業)が輸出を拡大させたことが貢献している。そのビジネスモデルは、欧米のブランド品企業が生産委託(OEMなど)し、EMSは割安で豊富な労働力を抱えた中国で生産して輸出するというもので、台湾受注・中国生産方式と呼ばれていた。中国政府の役割は、インフラの整備など投資基盤の改善・強化である。 しかし、中国生産は、2007年前後から沿海部で労働者を確保することが難しくなり、賃金も高騰する一方で、元高が進んで中国の輸出競争力に陰りが出始めた。労働法改正により企業の社会保険負担が重くなるなど投資環境も悪化していた。 このため、沿海部を輸出拠点とする中国生産に限界を感じ外資系企業は、中国沿海部以外にもう一つ生産拠点を確保するチャイナ+1を模索し始めた。中国のIT機器輸出の最大手、台湾系の製造専門企業(EMS)、フォックスコンもそのような企業の一つであった。フォックスコンも、当時、北部

季報120号エクセル.xlsx--表4~5̲内陸部のIT輸出

コンピュータ コンピュータ コンピュータ コンピュータ

・周辺機器・周辺機器・周辺機器・周辺機器

携帯電話携帯電話携帯電話携帯電話

半導体等 半導体等 半導体等 半導体等

電子部品類電子部品類電子部品類電子部品類

鄭州 38,932 36 37,136 46 42,875

重慶 34,770 26,582 830 2,120 42,999

成都 31,618 19,392 262 9,521 37,424

西安 23,030 4,844 47 11,161 25,317

合肥 6,018 4,635 290 617 12,831

武漢 5,138 305 1,860 433 13,881

税関名税関名税関名税関名 IT計IT計IT計IT計 総額総額総額総額

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18 ◆ 国際貿易と投資 No.120

ベトナムへの進出を検討していた注12。 ところが、リーマンショックで風向きが変化した。沿海部の産業高度化と内陸部の産業振興を推進していた中国は、チャイナ+1の1(ワン)を中国内陸部にする開発プロジェクトを強力に推進し始めた。例えば、中国は、2010年に河南省・鄭州市の農地を買い取り、25万人の従業員を収容するフォックスコンの生産複合施設を数カ月以内で建設した。さらに中国は、フォックスコンの求人募集をオンラインに掲載するなどし、人員確保にも協力した注13。フォックスコンはそこを、アップルのiPhone製造の拠点とした。フォックスコンの工場がある鄭州空港経済区は、この10年間にアップル製携帯電話8億台超を世界に出荷しており、2019年にはその半数近くを生産した。 フォックスコンを軸としてアップル、中国政府は、互いに依存しあう鉄の3角形関係を構築している。フォックスコンとアップルは、2001年に、アップルの携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」を製造する数少ないメーカーの1社となり関係を深めていった。iPhoneを製造するメーカーとして早い段階から選定され、2007年に生産を開始した。アップルは、製品の供給をフォックスコンに全面的に委託することで、新製品開発やマーケティングに専念できる。他方、中国はフォックスコンを同国最大の民間雇用主として、アップルを新テクノロジーのサプライヤーの教育係として当てにするようになった。

3.3. 脱中国の可能性 アップルの中国依存は、トランプ関税でもびくともしなかった。アップルのクックCEOがドナルド・トランプ米大統領を説得し、iPhoneを追加関税から除外させ、深刻なダメージを回避したからである。ところが、今回の新型コロナは、アップルの中国におけるサプライチェーンに異常をきたした。アップルのサプライヤー上位200社のうち2社が武漢に拠点を置き、その工場再開の10日間の遅れがiPhone全体の生産計画にどのような影響を及ぼすのか、予測が難しい状況をもたらした。一方で、武漢から北へ約500キロ離れた河南省鄭州市はフォックスコンのiPhone工場では、厳しい検疫措置と

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 19

コロナ禍と対中依存リスク

戦っていた。アップルも中国にサプライチェーンのハブを据えるリスクを現実のものとして認識しているようである注14。 それではアップルはiPhoneのグローバルサプライチェーンにおける最終組み立てを中国から他の地域に移管させる可能性はあるのか。アップルが中国依存からか離れられない理由の一つは、アップルの製品が300万人を超える中国の間接従業員の労働力に頼っていることである。iPhoneの組み立て工程において彼らの多くは微小なネジや薄いプリント基板を手作業で取り付ける。これに匹敵する単純労働者や熟練作業員を見つけるのは至難の業であるという。 しかし、サムスン電子はスマートフォンの生産を中国からベトナム、インドに移管している。サムスン電子が中国から撤退した理由は、中国の労働コストの上昇、中国のスマートフォン市場におけるサムスン電子の販売不振、韓国のHAADミサイルの配備決定を公表して以降における中国の報復措置(限韓令)の影響等が指摘されている。サムスン電子の中国ビジネスは半導体などの部材にシフトしている。 アップルの中国依存は、急激には、他地域への生産移管は難しいが、中長期的には、脱中国生産が進むものと考える。中国地場企業の台頭によるスマートフォン市場のコモディティ化や中国市場での販売シェア低下、中国の賃金の高騰、米中貿易戦争の激化などがその要因である。すでに、中国で巨大な生産体制を構築して、部品調達から組み立てまでのサプライチェーンの、歯車がひとたび狂えば、生産の損失リスクは大きい状況にある。脱中国は、必然である。

4. 中国のコロナ外交

4.1. コロナウイルスに対する「人民の闘い」 2020年4月初め、新型コロナウイルスの感染が中国ではすでに収束に向かい、成都市では、混雑したレストランで若者たちが火鍋を囲んで、隔離措置の解除を祝っていた。一方、そこから7,500マイル(約1万2,000キロ)離れた

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20 ◆ 国際貿易と投資 No.120

ニューヨーク市のタイムズ・スクエアでは、人通りが途絶えていた。新型コロナウイルスの感染が中国から欧米に拡大し始めると、世界的にマスクなどの医療品の需要が急増し、供給不足に陥った。イタリアから日本に至るまで多くの国の病院では、マスクや消毒液などの在庫が消えたという。病院から盗み出してそれを転売する犯罪が増加し、密輸品の横行、だまされて架空の医療品の購入等医療用品をめぐる犯罪が増えた。深刻な問題は、ウイルス感染の疑いがある患者に対応しなければならない医療現場で起きていた。最も需要が高い医療用マスク、「N95防護マスク」が入手困難となっていた注15。 マスク不足の理由は、中国にある。2020年2月初め、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しんだ中国は、習近平国家主席が、新型コロナウイルスに対する「人民の闘い」を宣言した。闘いの一つとして、中国当局は、国内の製造工場から医療用マスクの増産を指示した。 中国は、国が戦時に行うように、重要な供給品の不足を補うべく国中の製造機械を動員した。中国石油化工(シノペック)は2020年2月7日に、マスク生産装置を確保し、生産ラインを11本設定中であることを明らかにした。台湾の鴻海(ホンハイ)傘下の富士康科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)は、深センでマスクの試験生産を開始した。ゼネラル・モーターズの中国合弁企業は、1日に少なくとも170万枚を生産するため14本の製造ラインを設置する等、2020年2月に続々と大増生産計画が発表された。また、中国に工場のある外資系マスクメーカーは、生産工程を地元政府に握られ、マスクの輸出を阻止していたようである注16。これらは、通常なら世界中の病院に供給されるものであった。これで、世界中の病院は必需品を切り詰めることを強いられた。一方で、中国は世界の医療用マスク生産能力が、新型コロナウイルスの感染が広がる前の50%から85%(2020年3月)に拡大した注17。

4.2. 中国のマスク輸出 中国のマスク(HS630790)輸出額は、2019年で544億ドル、最近20年間でみて中国のマスク輸出は、拡大基調にある(図1)。中国のマスク輸出は、

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 21

コロナ禍と対中依存リスク

リーマンショック時の2008年と比べて2019年の2.8倍増と拡大している。一方、米国、日本をはじめとして世界各国は対中マスク輸入依存度を高めている。2019年で米国のマスク輸入に占める中国のシェアは71.7%、日本は76.7%、韓国は68.2%、台湾が74.3%と過度に中国に依存している。欧州でもドイツが45.0%、英国が51.3%と高い。2020年には、対中輸入依存度の一層の拡大が見込まれる。

図 12 中国のマスク輸出(HS630790)

資料:中国貿易統計

表 6 中国のマスク(HS630790)国別輸出シェア(上位 10か国)

(単位:%)

資料:中国貿易統計

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2000

2001

2002

2003

2004

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2012

2013

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2015

2016

2017

2018

2019

(100万ドル)

相手国 相手国 相手国 相手国 2010201020102010 2015201520152015 2019201920192019

1 米国 43.0 40.0 39.2

2 日本 13.1 11.5 10.1

3 英国 4.6 4.3 4.8

4 ドイツ 5.5 4.6 4.8

5 オランダ 3.1 2.8 3.4

6 韓国 1.4 3.4 2.9

7 カナダ 2.3 2.6 2.7

8 豪州 2.1 2.4 2.6

9 フランス 2.5 2.1 2.1

10 香港 1.7 2.4 2.1

世界計 世界計 世界計 世界計 100.0100.0100.0100.0 100.0100.0100.0100.0 100.0100.0100.0100.0

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22 ◆ 国際貿易と投資 No.120

表 7 主要国のマスク(HS630790)輸入に占める中国のシェア(単位:%)

資料:中国貿易統計

4.3. コロナを利用する中国 2020年3月26日夜、20か国・地域(G20)首脳は、テレビ会議を急遽開催した。習近平国家主席は、国内でのウイルス拡散抑制に多大な犠牲を払ったが、今後は他の諸国の対応を支援すると語った。それは、中国が、世界のリーダーとしての地位確保の取り組みを強化する手段として、この感染症の世界的流行をより声高に、より積極的に活用しようとするコロナ外交の宣言であった注18。 中国が依然ウイルス拡散の中心だった2月初め、EUや米国は、中国に計30トンの医療器具を寄付した。しかし、中国での感染が収まり始めた3月になると、立場が逆転して、中国が医療品の支援を大規模に始めた。 例えば・ 中国の国営メディアの報道や政府、企業の声明を調べた結果、3月中の2

週間に中国の政府機関、企業、慈善団体が2,600万枚以上のマスク、230万セットの検査キットなどを計89か国に寄贈したことが分かった。中国外務省は3月31日、同国からコロナウイルス関連の支援を受けた国が120か国に達したことを明らかにした。

国名 国名 国名 国名 2010201020102010 2015201520152015 2018201820182018 2019201920192019

米国 70.4 73.5 72.6 71.7

日本 84.2 80.3 78.4 76.7

韓国 62.6 66.9 68.5 68.2

台湾 64.4 73.8 74.4 74.3

タイ 28.9 32.9 38.7 37.0

インドネシア 22.0 45.1 58.2 58.1

マレーシア 53.7 56.5 67.2 74.9

インド 40.1 48.9 50.1 53.5

ドイツ 39.7 45.3 44.0 45.0

英国 48.7 52.4 50.2 51.3

メキシコ 41.5 46.1 48.3 50.4

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国際貿易と投資 No.120 ◆ 23

コロナ禍と対中依存リスク

・ 電子商取引大手アリババグループの創業者、ジャック・マー(馬雲)氏の関連の慈善団体は、1,400万枚を超えるマスクを寄付した。その中には、マー氏が50万個の検査キットとともに上海からテネシー州メンフィスに送った100万枚のマスクも含まれる。

・ 中国の通信機器大手ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)は、スペイン、チェコ、イタリア、ポーランド、アイルランドを含むEU加盟国に何百万枚ものマスクを寄付した。

・ 新型コロナウイルスの感染が拡大しているイタリアに3月18日、中国の医師300人で構成される専門家チームが到着した。同国政府は新型コロナウイルスの発生源から友好的な支援国への転換を図ろうとしている。

 中国からの支援は、当初イタリアなどで特に注目を集めていた。3月上旬時点で、イタリアのマスク支援要請に応えたEU加盟国はなかったからである。ドイツはイタリアへの医療用品の輸送を一時的に停止した注19。イタリアがEUに失望していた時に、中国からイタリアのオペラの歌詞が印刷された箱に詰められた何百万枚ものマスクが届いた。WSJ紙によれば、イタリアの中国研究家でカトリック系新聞のコラムニストであるフランチェスコ・シシ氏は「米国はリーダーシップを発揮していないし、欧州は存在しない。ここ何十年かで初めて、西側の存在が失われた」と指摘。「こうした空白の中で、中国が見本を示している。彼らはそこにいるし、助けになる」と述べた注20。 ウォルター・ラッセル・ミードはWSJ紙への寄稿で、中国が自国の世界的な地位を強化するため、コロナ危機を利用しようと望んでいる兆候が存在するとして、中国は世界中の政府との間で安全保障、経済、政治面での関係強化の機会を得ることができると指摘している注21。

4.5. 中国のオウンゴール ところが、中国のコロナ外交に、様々な問題が起きた。 第1は、中国製の医療品に粗悪品が多く、受け取り拒否するケースが多発したことである。中国当局はマスクなどの医療物資を援助した国は127か国

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に達するとアピールしていたが、オランダやスペイン、フィンランドなどで粗悪品が大量に見つかる問題が発生した。オランダ当局は中国製のマスク数万枚を品質基準に満たないとしてリコールし、スペインは検査キットを不良品として返品した注22。 第2は、医療品市場はワイルド・ウエストの世界になってしまったことである。買い手は、中国企業以外の他の選択肢もないため、中国企業の言いなりであったという。中国企業は、必死になって医療備品を調達しようとする買い手に対して「中国の工場は、買い手候補が殺到する現状を好機ととらえ、取引条件を一方的に決めたり、全額前払いを要求したり」等注23、相手の足元につけこむ対応をした。中国企業のビヘイビアに対する不信感が増幅された注24。 第3は、中国が医療品の輸出規制を導入したことである。2020年4月導入された新規制について中国当局は、輸出向け医療品の品質確保や、国内で必要とされる物資が国外へ出荷されるのを防ぐ狙いがあると説明していた。規制の導入によって、在中国の米企業からの輸出が制限された。ウォール・ストリート・ジャーナルは、医療機器メーカーの米パーキンエルマーは、新規制で義務付けられた認定がないため、蘇州市の工場から新型コロナ検査キット140万個を出荷できずにいるなどの事例を指摘している注25。 フィナンシャル・タイムズ(FT)は、新型コロナ危機に乗じて国際的な立場を高めようとしている中国政府のコロナ外交は、逆に手ひどいオウンゴールを喫することが続いているとして、中国製品に対す信頼性が著しく低下するとともに、中国政府への信頼感も損ねることになった。その結果は、米国をはじめ世界各国の政府に中国を自国の供給網から外そうとする動きを加速させることにつながると指摘している注26。世界を敵に回しても、中国国民のナショナリズムを大いに強化することを良しとする背景には、中国の国内政治状況があるというのがFT紙の見方である。

1月23日 中国当局、感染が拡大した湖北省武漢市を事実上、封鎖 下旬 多くの中国企業がマスク生産に乗り出す 

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コロナ禍と対中依存リスク

 中国当局、国内生産するマスクの大半を国内出荷するよう指導 3月10日 習近平国家主席、武漢入りして「基本的に抑え込んだ」と発言 後半 中国当局、国内生産のマスクの海外輸出にも力を入れ始める  マスクの輸出先から品質面でクレーム相次ぐ 4月 中国当局、輸出するマスクの管理を強化出所:日本経済新聞 2020年4月18日付

5. 中国をハブとするサプライチェーンは変わる

 新型コロナの発生は、まさに、誰もが予想すらしなかったことが起きるブラックスワンとなっている。WTO加盟後のわずか10年足らずで世界の工場として、サプライチェーンのハブの地位を築いた中国にも今回のブラックスワンの影響は避けられない。 第1は中国の経済成長への影響である。閉鎖されていた工場がいち早く再開して、中国経済が再び動き出した。しかし、これによって、中国経済がこれまでの成長路線に復帰したわけではない注27。需要ショックによって欧米経済の停滞が続けば、中国だけがいい思いをすることは出来ない。中国経済の立直りも緩やかで、これまでの高成長も覚束ない。 第2は米中の貿易摩擦の激化である。新型コロナは、今秋の米大統領選挙にも影響を及ぼす。米大統領選の結果次第では、保護主義が強まり、米中の緊張が激化する。これに世界需要の縮小によって、中国の巨大な過剰生産力が加わり貿易摩擦が一層激化する。 第3は、コロナ禍後の世界経済で内需の低迷が続けば、中国で300万人を雇用するアップルのような供給体制が、今後、持続可能かどうか問われることになろう。 中国を世界の工場として、サプライチェーンのハブとするリスクが、今回の医療品の入手困難によって、世界的に共有されている。過度に対中貿易に依存するリスクを避ける動きが強まり、中国からの撤退あるいはチャイナ+1が本格化する。パンデミックが起きても、中国の影響を避けることができ

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るサプライチェーン体制つくりに向けて動き出すことになろう。

注1 「新型肺炎で自動車業界ピンチ、武漢に生産拠点多数~中国に生産工場を置く自動車産業

に低迷の危機」WSJ 2020年1月29日 2 Economic Monitor Apr27, 2018 No.2018-019  https://www.itochu.co.jp/ja/economic_monitor/report/2018pdf3 「ホンダ、中国・武漢の工場一部再開~11日から順次」日本経済新聞電子版 2020年3月10日 4 近岡 裕「新型肺炎、ホンダと日産で工場動かず」日経クロステック 2020年2月27日5 「外国企業に秋波を送る中国、景気悪化に予防線」WSJ 2020 4月12日 6 「ホンダと日産、中国で全工場再開も拭えぬ不安」2020年3月15日 toyokeizai.net/7 「新型コロナで激震、中国で悲鳴上げる日系自動車メーカーの窮状」CAR and DRIVER:

総合自動車情報誌 2020年3月30日 https://diamond.jp/articles/-/233113?page=3  8 「中国自動車販売、1-3月期は過去最大の落ち込み~コロナが需要破壊」WSJ 2020年4月

11日 9 「日産ホンダの生産9割減の衝撃、新型コロナで日系自動車各社2月の中国販売は大幅

減」製造マネジメントニュース 2020年03月31日 https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2003/31/news045.html

10 「ルノー、武漢合弁から撤退」日本経済新聞 2020年4月14日11 「中国の自動車販売急減で欧米勢に広がる衝撃」日本経済新聞 電子版 2019年7月29日

FT「「フォード撤退」説が浮き彫りにする、中国の自動車市場の現状」2019年08月12日 12 大木博巳「ベトナムに吹く台湾企業旋風」ジェトロセンサー 2008年6月13 「アップルに三重苦、関税・販売減・新型コロナ」WSJ 2020年3月3日 14 「アップルの中国依存、コロナウイルスで試練」WSJ 2020年2月7日15 「マスクの世界需給ひっ迫、中国が大量確保」WSJ 2020年2月7日16 「中国、マスク増産へ総力戦 自動車や石油も動員」WSJ 2020年2月10日 17 「世界一の富裕国、なぜマスクが手に入らないのか」WSJ 2020年4月2日18 「コロナ禍で世界に「指導力」誇示する中国」WSJ 2020年4月2日19 「中国、新型コロナでイタリア支援 宣伝・外交の要素も」WSJ 2020年3月19日 20 「コロナ禍で世界に「指導力」誇示する中国」WSJ 2020年4月2日 21 「コロナ禍を利用する中国の深謀」WSJ 2020年3月17日22 「中国、マスク輸出外交にほころび、粗悪品多く許可制導入、流通滞れば不足に拍車」日

本経済新聞 朝刊 2020年4月18日 23 「中国医療品に殺到の欧米、待ち受ける「無法地帯」」WSJ 2020年4月24日24 「英国政府は中国の民間企業2社に約22億円を支払い抗体検査キットを200万個購入した

が、検査キットは欠陥品だった」 https://nytimes.com/2020/04/16/world/europe/coronavirus-antibody-test-uk.html25 「中国の新輸出規制、医療物資の対米輸出の妨げに」WSJ 2020年4月17日 26 FT「自滅した中国コロナ外交」 日本経済新聞 2020年4月24日 27 「中国の経済活動、再開するも立ち上がりは遅い」WSJ 2020年3月27日  

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