1.0 以前から2.0 へ~ 中野円佳...0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0...
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日本企業のダイバーシティ ~1.0以前から2.0へ~
中野円佳
女性活用ジャーナリスト/研究者 株式会社チェンジウェーブ
マイノリティの最大派閥である女性(いわんやほかの属性をや)の活躍を阻む状況とは
「ダイバーシティ1.0」以前の日本企業の状況
1 WILL、SKILL、NETWORKが足りない 2 ライフイベントの壁「育休世代のジレンマ」
①仕事をする気満々だった人が辞めやすい 男なみ就活でハード職場に
自分よりさらに忙しい夫と結婚
マミートラックでやりがいを失ってしまう
②残った人は意欲を冷却せざるをえない 就活ではじめから充実した仕事をあきらめる
時短勤務を可能な限り続ける
管理職には「なりたくない」と言う
「育休世代」とは:2000年前後の法改正などを経て女性総合職が増え、育休を取るのが「当たり前」になっ
てから総合職正社員として就職した世代。
WILLの不足 ・男性より「社会的に」自信がない(成功恐怖) ・ライフイベントへの不安などで意欲が冷却しやすい
SKILLの不足 ・「統計的差別」「無意識の偏見」などで、 成長機会を与えられていない /公平に評価されていない NETWORKの不足 ・少数派ゆえに声をあげづらい ・師弟関係やスポンサーが不在で情報が入りにくい
結婚・出産前からこの二極化を見て 転職するケースも
女性には自信がない? 女性がリスクを取らないというのは社会的に作られた性差 タンザニアのマサイ族(父系)とインドのカーシ族(母系)では結果が反対になる GENDER DIFFERENCES IN COMPETITION: EVIDENCE FROM A MATRILINEAL AND A PATRIARCHAL SOCIETY URI GNEEZY, KENNETH L. LEONARD, AND JOHN A. LIST (2009) https://pdfs.semanticscholar.org/289a/2f2f9c4664b05570fc24d0aa1245a6ab6c8b.pdf
(参考)女性はなぜ昇進できないのか 女性は正当に評価されているか? 同じ履歴書でジョン、ジェニファーと名前を変えるだけで提示される年収額は4000ドル違う。 Science faculty’s subtle gender biases favor male students Corinne A. Moss-Racusina,b, John F. Dovidiob, Victoria L. Brescollc, Mark J. Grahama,d, and Jo Handelsmana,(2012) http://www.pnas.org/content/109/41/16474.full.pdf+htm
バイアスが1%紛れ込んで昇進確率をランダムに当てていくと8回目には65:35になる Male-Female Differences:A Computer Simulation Richard F. Martell David M. Lane Cynthia Emrich (1996) http://www.ruf.rice.edu/~lane/papers/male_female.pdf ※ギンカ・トーゲル『女性が管理職になったら読む本』の図を参照
女性 男性
バイアスなし 1%のバイアス
第8層(10人)
第7層(40人)
第6層(75人)
第5層(100人)
第4層(150人)
第3層(200人)
第8層(350人)
第8層(500人)
50% 50%
50% 50%
50% 50%
50% 50%
50% 50%
50% 50%
50% 50%
50% 50%
65% 35%
61% 39%
57% 43%
54% 46%
52% 48%
52% 48%
50% 50%
47% 53%
能力・適正
採用可能性
指導したいかどうか
ジェニファー ジョン
3.3 4.0
年収提示額
2.9 3.8
4.0 4.7
26,508 30,238
25,000
1 2 3 4 5
26,000 27,000 28,000 29,000 30,000
(7段階評価)
(ドル)
0.60.811.21.41.61.82
0.0
20.0
40.0
60.0
80.0
100.0
4年制大学への女性の進学率(%) 大卒女子の就職率(%) 出生率
バブル崩壊 リーマンショック
個性重視教育
家庭科共修
WLB
就職 30代 進学
就職 30代 進学
就職 30代 進学
均等法世代
育休世代
団塊Jr (72年生)
均等法施行(86年)
1.57ショック
均等法改正(99年) 育児・介護休業法改正(01年)
卵子老化 自己分析 自己実現
※1995年入社の総合職 20年で86%離職
※2005年入社の総合職 10年で59%離職
DINKS キャリアウーマン
(参考)均等法世代~育休世代の時代背景
学校基本調査、人口動態調査より
「平成26年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況」より
「女性」向けの育児休業・短時間勤務の充実
Diversity1.0 「両立支援」で企業がした事と、その帰結
問題 対策
評価と報酬の明確化 量:短期的報酬 質・能力:長期的昇進に反映
「休むため」の両立支援から 「働くため」の両立支援へ
企業内保育所、「保育の質」の確保も合わせて
配偶者手当からシッター、家事代行など実費への補助
男性の育児・介護への支援・理解
・本人のマミートラックとキャリア断絶 ・周囲の不公平感 ・夫婦の家事育児分担の偏り
Cf) 「時短の罠」3パターン ① 定時まで働きたくない
子どもとの時間と天秤、意欲冷却スパイラル
② 本当は定時までなら働いてもいい 解除した途端、残業が降りかかる /週1回くらい余裕が必要
③ 実際は定時まで働いている 周りが残業ありきで申し訳ないので 給料を自ら引き下げる
メンバーシップ型:時間・場所・職務の限定なし
Diversity1.0 (参考)職場と家庭の悪循環
夫/パートナー 上司 同僚 ママ社員
不満 増える
ママ社員
意欲冷却 家事育児負担の妻へ
の偏り
夫婦の 所得格差
拡大 男性の 育児に対する
風当たり
能力に かかわらず 評価を 下げる
女性の意識改革、女性管理職目標の設定
Diversity1.0 「女性活躍推進」で企業がした事と、その帰結
働き方や評価などの根本的な「意欲冷却」要因を除外しないと、モチベーションやロイヤリティが長続きしない
全員対象の働き方改革、 男性側の意識改革
育成をする、 スポンサーをつける
管理職に引き上げても、育てずフォローせずでは、スキルが追いつかない、孤立する、「逆差別」と批判される
特殊な環境ではなく 重要なプロジェクトに 権限移譲をして支える
女性チームや女性専用指定席の設置で「多様性」がなく、限定的な成功体験にしかならない
問題 対策
Diversity Inclusion
Innovation ×
Sustainablity
多様な人材がいない 多様な人材がいる
多様な人材が 個性を発揮している
組織の状況
同質的な人事登用 ・新卒で女性少数採用 ・マイノリティが少ない、 活躍できていない
・異なる事を嫌う風土があり、変化に対する葛藤がある。 ・マイノリティが発言し辛い
WILL,SKILL,NETWORK が足りない
・社員全員が個性を生かす環境がある ・リスクを指摘できる風土がある
マイノリティがキャリアアップ ・管理職および役員になっている
・モチベーションが上がる ・業績が上がる ・新しいアイデアがうまれる ・組織が活性化される ・内部統制が取れている
Diversity2.0 目指すべきD&Iの状態とは 属性・働き方・価値観・経験などが多様であるメンバーが 組織の目指すべきビジョンを共有している 新しいアイデアや異なる意見を出しやすい雰囲気がある その結果、 個々人の能力や意欲が存分に発揮されている 組織には 変化への対応力やリスクに備える力、 知と知が結合してイノベーションや変革を起こす力がある
Diversity2.0 (参考)D&Iのネクストステージに必要な観点 ①ダイバーシティは属性だけじゃダメ:属性の軸・経験の多様性を増やす ②インクルージョンが大事:多様な個がいても同質化しては意味がない
※タスク型(経験、能力、価値観など)のダイバーシティは組織パフォーマンスにプラスの効果をもたらす デモグラフィ型(属性)のダイバーシティは組織パフォーマンスにプラスの影響をもたらさないか、むしろマイナスの影響をもたらす “THE ROLE OF CONTEXT IN WORK TEAM DIVERSITY RESEARCH: A META-ANALYTIC REVIEW” APARNA JOSHI HYUNTAK ROH University of Illinois at Urbana-Champaign (2009) “The Effects of Team Diversity on Team Outcomes: A Meta-Analytic Review ofTeam Demography” Sujin K. Horwitz and Irwin B. Horwitz(2007) ※「意見を言いやすい」「助けを求められる」などの心理的安全がパフォーマンスにつながる ”Inclusive Leadership and Employee Involvement in Creative Tasks in the Workplace: The Mediating Role of Psychological Safety“Carmeli, Abraham; Reiter-Palmon, Roni; and Ziv, Enbal (2010)
組織内フォルトライン(断層)ができる →マイノリティが発言しづらい
属性の軸、経験の多様性を増やす →様々なアイデアが出てきやすくなる
Diversity2.0 超えるべき4つの壁
① 社会:働き方の多様性を受け容れる
② 組織:無意識バイアスを認める
③ 管理職:異なる意見がでてくる環境を作る
④ 個人:自分の中の多様な軸をはぐくむ
全員対象のノー残業、リモートワーク 相互理解と成果と報酬の明確化
公平な評価とは何かを見直す、マイノリティのハンディキャップを穴埋めする
インクルージョンを促すリーダーシップの醸成とスピークアップによる成功体験
副業、プロボノ、家庭、地域、転職経験・・・多様な経験を持ち、生かす