12 手指関節疾患に対する機能向上を...12 キーワード 顔写真 3.78×3.24...

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12 キーワード 顔写真 3.78×3.24 手指関節疾患は疼痛や腫脹、拘縮などが生じ、日常生活に支障をきたす疾患である。その治 療は矯正用装具と保護用装具に二分される。矯正用装具は矯正や牽引の効果は報告されている が、矯正方向が一定なので関節面を傷つける可能性がある。この欠点を解決するために指関 節における牽引と他動運動を取り入れた矯正用装具 を考案することで、可動域の制限や疼痛要 因に応じたアプローチが可能となる。従来よりも治療期間の短縮、早期に完治し生活の質の向 上に大きく貢献 できる。 1)本研究の新規性と独自性 人工筋で矯正する為、矯正力や速度も調整可能牽引と矯正を同時に行うことが可能 ダーツスロー運動(図1)を装具に取り入れる 手関節は主に手根中央関節(以下C-L関節)と橈骨手根関節(以下R-L関節)に分けられる。拘縮 手ではC-Lの可動範囲が減少するといわれる。ダーツスロー運動(背橈屈位から掌尺屈位)は C-L関節に効果的(Werner FW,2004)、牽引はR-L関節に効果的(立矢宏,2015)と述べており、 牽引もしく はダーツスロー運動が選択できる機能を取り入れ、これまでになかった制限因子に 対して 焦点化したアプローチを行うことが可能。 ③一つの装具で多種多様な患者に装着できる 本装具は、図2のように、手関節および前腕は 伸縮性のある素材で作成するため症例に応じて 変更が可能である。そのため、一つの装具で様 々な対象者が装着可能となる。 2)事業化等 日本整形外科学会2012年の整形外科疾患患者調査では、1,442施設84,544例で調査した結 果、上肢は全体の26.2%。上肢の中でも手関節・手は52.7%。診断分類では、変性疾患およ び拘縮が整形疾患の中でも全体の63.9%と最も多い。家庭内で行えるリハビリとして装具療法 の重要度は極めて高い。しかし各装具には様々な問題点があり、先行研究で開発したスプリン トの問題点を修正 した装具の 事業化が大いに期待できる。 手指関節疾患に対する機能向上を 目的とした新しいスプリント 岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科生体情報科学 教授 久雄 関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 助教 中山 ダイヤ工業株式会社 開発部門 小川 和徳 概要(新規性・独自性・事業化等) 研究概要図(図3) 1 )手関節牽引装具の開発(平成30年度): 2 )装具が健常者に及ぼす影響を評価する(平成31年度): 3 )項目評価:血流阻害率、防御反射、疼痛、牽引評価(平成31年度) 4)項目評価:関節可動域、握力、Mayo wrist score、疼痛、Purdue pegboard test(平成31年度) 1. ダーツスロー 2. 完成イメージ 伸縮性素材 手指関節疾患、牽引、動的スプリント、ダーツスロー運動、ハンドセラピィ 判定 ⾎流 防御反射 疼痛 牽引効果 健常者に実施 問題有 平成31年度 問題無し 再評臨床仮手節牽引装具の開牽引⽅法 ⼈⼯筋の配列位 置の検討 ダーツスロー運動 素材の検討 牽引および矯正可 能な⼈⼯筋の選択 ⼈⼯筋⾁の選定 平成30年度 手関節牽引装具の基盤 図3. 研究概要図

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Page 1: 12 手指関節疾患に対する機能向上を...12 キーワード 顔写真 3.78×3.24 手指関節疾患は疼痛や腫脹、拘縮などが生じ、日常生活に支障をきたす疾患である。その治

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キーワード

顔写真3.78×3.24

手指関節疾患は疼痛や腫脹、拘縮などが生じ、日常生活に支障をきたす疾患である。その治療は矯正用装具と保護用装具に二分される。矯正用装具は矯正や牽引の効果は報告されているが、矯正方向が一定なので関節面を傷つける可能性がある。この欠点を解決するために手指関節における牽引と他動運動を取り入れた矯正用装具を考案することで、可動域の制限や疼痛要因に応じたアプローチが可能となる。従来よりも治療期間の短縮、早期に完治し生活の質の向上に大きく貢献できる。1)本研究の新規性と独自性①人工筋で矯正する為、矯正力や速度も調整可能。牽引と矯正を同時に行うことが可能②ダーツスロー運動(図1)を装具に取り入れる

手関節は主に手根中央関節(以下C-L関節)と橈骨手根関節(以下R-L関節)に分けられる。拘縮手ではC-Lの可動範囲が減少するといわれる。ダーツスロー運動(背橈屈位から掌尺屈位)はC-L関節に効果的(Werner FW,2004)、牽引はR-L関節に効果的(立矢宏,2015)と述べており、牽引もしくはダーツスロー運動が選択できる機能を取り入れ、これまでになかった制限因子に対して焦点化したアプローチを行うことが可能。③一つの装具で多種多様な患者に装着できる

本装具は、図2のように、手関節および前腕は伸縮性のある素材で作成するため症例に応じて変更が可能である。そのため、一つの装具で様々な対象者が装着可能となる。2)事業化等日本整形外科学会2012年の整形外科疾患患者調査では、1,442施設84,544例で調査した結

果、上肢は全体の26.2%。上肢の中でも手関節・手は52.7%。診断分類では、変性疾患および拘縮が整形疾患の中でも全体の63.9%と最も多い。家庭内で行えるリハビリとして装具療法の重要度は極めて高い。しかし各装具には様々な問題点があり、先行研究で開発したスプリントの問題点を修正した装具の事業化が大いに期待できる。

手指関節疾患に対する機能向上を目的とした新しいスプリント

岡山大学 大学院ヘルスシステム統合科学研究科生体情報科学教授 岡 久雄関西福祉科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科助教 中山 淳ダイヤ工業株式会社 開発部門 小川 和徳

概要(新規性・独自性・事業化等)

研究概要図(図3)

1 )手関節牽引装具の開発(平成30年度):2 )装具が健常者に及ぼす影響を評価する(平成31年度):3 )項目評価:血流阻害率、防御反射、疼痛、牽引評価(平成31年度)4 )項目評価:関節可動域、握力、Mayo wrist score、疼痛、Purdue pegboard test(平成31年度)

図1.ダーツスロー 図2.完成イメージ

伸縮性素材

手指関節疾患、牽引、動的スプリント、ダーツスロー運動、ハンドセラピィ

評価判定

⾎流 防御反射 疼痛 牽引効果

健常者に実施

問題有

平成31年度

問題無し再評価 臨床応用

仮手関節牽引装具の開発

牽引⽅法

⼈⼯筋の配列位置の検討

ダーツスロー運動

素材の検討

牽引および矯正可能な⼈⼯筋の選択

⼈⼯筋⾁の選定

平成30年度 手関節牽引装具の基盤

図3. 研究概要図