平成19年度第2回農林水産技術会議評価専門委員会...

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平成19年度第2回農林水産技術会議評価専門委員会 議事録 農林水産省農林水産技術会議事務局 1.日時:平成20年3月12日(月)14:02~16:52 2.場所:農林水産技術会議委員室 午後2時02分 開会 ○事務局 若干、遅れておられる委員の方がおられますけれども、定刻でございますので、 ただ今より平成19年度第2回評価専門委員会を開催いたします。 開会に当たりまして、農林水産技術会議事務局小栗研究総務官からご挨拶申し上げま す。 ○研究総務官 皆さん、こんにちは。研究総務官の小栗と申します。本日は年度末のお忙 しい中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、皆様方におかれまして は、日頃から農林水産研究の推進にご理解とご協力をいただいているところでございます。 改めて御礼を申し上げたいと思います。 この評価専門委員会は今年度2回目でございますが、この度委員の改選も行いまして、 従来は主に農学の各分野の先生方にお集まりいただいていたわけでございますけれども、 今回から新たに生産部門、普及、あるいは報道とか広い分野の有識者の委員にも加わって いただきました。また、その他、交代の時期を迎えました先生もございまして、全体の委 員の約半数の方が新任の委員で、また改めてこのメンバーでよろしくお願いをしたいと思 います。それぞれのお立場なり、ご経験を踏まえまして、率直なご意見をいただければと 思っているところでございます。 それで、本日は委託プロジェクト研究課題の中間評価と事後評価ということで、あらか じめお配り申しております自己評価をお示しした上でご審議をいただくわけでございます が、ともしますと自己評価は身内に甘くなるのではないかというようなことがあるのかな いのか、ないつもりでございますけれども、そういった点も念頭に置きながら皆様方の適 切なご評価をいただければと思っております。また、単にいい/悪い、○/×ということ だけではなくて、今後の研究の推進に役立てていただけますように、このプロジェクト研 究というのは、まさに農林水産施策研究を進める上でのメインのプロジェクトになってお りますので、今後ともよりよい方向に研究が進めていけますように、そういった意味での ご意見もいただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは、審議に入ります前に、本年2月8日付で専門委員の任免がござい ましたので、評価専門委員会委員及び技術会議事務局につきまして、時間節約のため私 から手短にご紹介をさせていただきます。 まずは、農林水産技術会議よりご出席いただいている2名の委員をご紹介いたします。 どうぞ着席のままでお待ちください。 1

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平成19年度第2回農林水産技術会議評価専門委員会 議事録

農林水産省農林水産技術会議事務局

1.日時:平成20年3月12日(月)14:02~16:52

2.場所:農林水産技術会議委員室

午後2時02分 開会

○事務局 若干、遅れておられる委員の方がおられますけれども、定刻でございますので、

ただ今より平成19年度第2回評価専門委員会を開催いたします。

開会に当たりまして、農林水産技術会議事務局小栗研究総務官からご挨拶申し上げま

す。

○研究総務官 皆さん、こんにちは。研究総務官の小栗と申します。本日は年度末のお忙

しい中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、皆様方におかれまして

は、日頃から農林水産研究の推進にご理解とご協力をいただいているところでございます。

改めて御礼を申し上げたいと思います。

この評価専門委員会は今年度2回目でございますが、この度委員の改選も行いまして、

従来は主に農学の各分野の先生方にお集まりいただいていたわけでございますけれども、

今回から新たに生産部門、普及、あるいは報道とか広い分野の有識者の委員にも加わって

いただきました。また、その他、交代の時期を迎えました先生もございまして、全体の委

員の約半数の方が新任の委員で、また改めてこのメンバーでよろしくお願いをしたいと思

います。それぞれのお立場なり、ご経験を踏まえまして、率直なご意見をいただければと

思っているところでございます。

それで、本日は委託プロジェクト研究課題の中間評価と事後評価ということで、あらか

じめお配り申しております自己評価をお示しした上でご審議をいただくわけでございます

が、ともしますと自己評価は身内に甘くなるのではないかというようなことがあるのかな

いのか、ないつもりでございますけれども、そういった点も念頭に置きながら皆様方の適

切なご評価をいただければと思っております。また、単にいい/悪い、○/×ということ

だけではなくて、今後の研究の推進に役立てていただけますように、このプロジェクト研

究というのは、まさに農林水産施策研究を進める上でのメインのプロジェクトになってお

りますので、今後ともよりよい方向に研究が進めていけますように、そういった意味での

ご意見もいただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 それでは、審議に入ります前に、本年2月8日付で専門委員の任免がござい

ましたので、評価専門委員会委員及び技術会議事務局につきまして、時間節約のため私

から手短にご紹介をさせていただきます。

まずは、農林水産技術会議よりご出席いただいている2名の委員をご紹介いたします。

どうぞ着席のままでお待ちください。

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A委員でございます。

それから、B委員でございます。

次に、専門委員をご紹介いたします。専門委員であり、当委員会の座長をお務めいた

だくC委員でございます。C委員におかれましては、先般、評価専門委員会議議事運営規

則第2条の規定に基づきまして、農林水産技術会議会長の指名により、本委員会の座長を

引き受けていただくことになりました。ここにご報告させていただきます。

続きまして、座席順に専門委員をご紹介申し上げます。

新たに委員をお願いしたD委員でございます。

それから、同じく新たに委員をお願いいたしましたE委員でございます。

それから、継続して委員をお願いしておりますF委員でございます。

新たに委員をお願いいたしましたG委員でございます。

新たに委員をお願いいたしましたH委員でございます。

それから、新たに委員をお願いいたしましたI委員でございます。

それから、継続して委員をお願いしておりますJ委員でございます。

それから、新たに委員をお願いいたしましたK委員でございます。

本日、評価専門委員11名全員にご出席をいただいており、議事運営規則第3条の規

定により本委員会は成立してございます。

続きまして、技術会議事務局、こちらも座席順に紹介させていただきます。

横田技術安全課長でございますが、所要ございまして、ただいま田中補佐が着席して

おります。

続きまして、引地研究開発課長でございます。

大谷研究開発企画官でございます。

門脇研究開発企画官でございます。

それから、長谷部首席研究開発企画官でございます。

冒頭、ごあいさつ申し上げました小栗研究総務官でございます。

細田技術政策課長でございます。

中谷研究開発企画官でございます。

それから、須賀国際研究課長は遅れておりますが、後ほど報告のときに参ると思いま

す。

それから、新井先端産業技術開発課長でございます。

それから、私、本日司会を務めます重倉でございます、どうぞよろしくお願いいたし

ます。

それでは、審議に移らせていただきますので、座長、どうぞよろしくお願いいたしま

す。

○座長 先般、技術会議会長より、評価専門委員会の座長の指名を受けました。手なれた

審議運営ができるかどうか自信ありませんが、精一杯やらせていただきます。私が座長を

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すると、いずれの会議でも時間が長引いてしまいます。雰囲気が気楽になるので、皆さん

意見をたくさん出していただき、会議が長引いてしまうという欠点があります。前回の金

濱座長は非常に手際よく時間内にピシッと終わらせていましたので、私も見習っていきた

いと思います。

それから、審議に移る前に評価専門委員会議事運営規則第2条に規定される、座長代理

の指名をさせていただきたいと思います。I委員にお願いしたいと思いますが、よろしい

でしょうか。

(異議なし)

○座長 それでは、私が出られないときにはI委員に座長をお願いするということで、進

めさせていただきたいと思います。

では、まず事務局から、配付資料について説明をしていただきたいと思います。よろし

くお願いします。

○事務局 それでは、本日の配付資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料につ

きましては、一番上に配付資料一覧を用意しております。不足がございましたら、事務局

にお申しつけいただければと思います。資料のうち、資料2-1及び2-2につきまして

は事前に送付させていただきましたが、各プロジェクト間の比較や省内幹部との議論など

も経て、一部プロジェクトの担当課長が自己評価結果を若干厳し目に変更しておりまして、

資料2-1が差しかえとなっております。また、資料2-2でございますが、内容は変わ

っておりませんが、ページの順序を見やすくするために調整を行っておりまして、結果と

してページ番号が変更になっております。本日配付の資料をお使いいただきますよう、お

願いいたします。

配布資料につきましては以上でございます。

○座長 本日は、審議事項としましてプロジェクト研究課題6課題、これは中間評価にな

ります。それから、5課題につきましては事後評価ということになりますので、大体会議

は4時20分終了を目途に進めたいと思います。ご協力をお願いいたします。

なお、本委員会は、議事要旨及び資料を公表することになっておりますので、ご承知お

きいただければと思います。

では、まず評価方法について、事務局より説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、本日の配付資料のうち一番下についております参考資料をご覧いた

だければと思います。この資料の3ページ目から評価指針を載せてございます。その説明

は大変くどくなりますので省略させていただきまして、これを研究プロジェクトの流れで

見たものを、資料の1ページ目に用意させていただいております。

参考資料の1ページをご覧いただければと思います。研究制度や各研究プロジェクト

は、その事業を企画いたしまして予算を要求し、その研究の事業体制を構築し、事業を展

開し、成果を取りまとめます。そうした管理まで含めて一つの事業として捉えております。

プロジェクトの予算要求前には、事前評価を行っております。昨年7月に開催されました

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今年度の当委員会第1回の会合では、平成20年度に開始するプロジェクトについて、こ

の事前評価を行ったところでございます。プロジェクトが始まりますと、原則として2年

目の終了時に中間評価を行い、またプロジェクトの終了時に事後評価を行っております。

これらの評価は、研究機関や研究チームがよく働いたかどうかということではございませ

んで、予算を投入し、それぞれのやり方で研究を行い、またその研究を管理し、そしてそ

の結果として何が達成されたのかということを評価するものでございます。

この評価検証等の欄の一番上にございます、農林水産研究の重点目標の検証でござい

ますが、こちらは22年の次期計画策定に向け、計画自体の総合的な評価を行う予定にし

ておりまして、それに向けて昨年度から進捗状況を事務局でチェックしており、その結果

を研究プロジェクトの企画にも使っているということを示したものでございます。

また、一番下の追跡調査は、プロジェクトが終了し、事後評価も終わったものについ

て、5年間にわたって成果が普及していく様子を追跡するもので、評価の一種でございま

す。本日は、これら2件につきましても、後ほど報告させていただくつもりでございます。

この図で、左側真中に「実施課題の公募等」というものがございます。農水省の研究

プロジェクトは本年度から継続プロジェクトを含め、企画競争方式の公募により実施者を

決めておるところでございます。その意味で、今回の中間事後評価は公募により実施者が

決まったプロジェクトの初めての評価でございます。

また同様に、次の箱に「運営委員会での運営管理」がございます。運営委員会による

運営は、制度的には既に整備済みでございましたが、実際にその開発した技術のユーザー

である行政部局等も含めた運営委員会により事業の運営管理がなされ、必要に応じてプロ

ジェクトを構成する研究課題を見直すというスタイルが、実際にそういうプロジェクトが

中間・事後評価にまで至ったのも今回が初めてでございます。これらの公募や運営委員会

による運営管理といった点も含め、ご評価をいただければと思っております。

本日行います中間・事後評価について、もう少し詳しく説明させていただきたいと思

います。

2ページでございますが、委託プロジェクトの担当課が自己評価を行っております。

研究チームがプロジェクトの中の大課題ごとに評価資料を作成し、担当課はこれを参考に

しつつ、プロジェクトの自己評価を実施します。そして、これを運営委員会あるいは外部

専門家の意見も聞きつつ、自己評価を決定するというプロセスをとっております。

自己評価でございますが、この中間評価も事後評価も四つの評価項目からできており

まして、当評価専門委員会の評価と同じ評価基準に基づいて行っております。評価基準は

実施要領で定めていまして、この参考資料の16、17ページについておりますが、本日

この後、評価をいただきますときにこの部分を使うことが多ございますので、こちらは資

料2-3にも一枚紙として用意してございます。2-3の表側が中間評価、裏側が事後評

価の評価基準でございます。これを使いながら自己評価の妥当性を検討し、必要に応じて

修正していただきます。これによって、技術会議という外部機関による外部評価を行った

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扱いといたします。運営委員会や外部専門家は各研究プロジェクトの内容に近しく、ピア

レビュー的な面がございます。他方、当評価専門委員会は各プロジェクトを客観視し、こ

の研究に予算、人員を投入したのが妥当だったかどうか、得られた成果は十分か、体制や

研究計画に改善の余地はないかといった点について、プロジェクトにはかかわっていない

立場から評価いただき、自己評価が妥当なものになっているかどうかを見ていただきます。

また、いただいた評価結果に応じまして、今後の委託プロジェクトの企画を改善して

まいりますので、どうか客観的かつ厳格な評価であると同時に、具体的でよいところを伸

ばし、悪いところを改めることができるよう、建設的な評価をいただきますようよろしく

お願いいたします。

評価結果でございますが、3月25日に予定されております技術会議に報告し、また

そこで反映方針も議論する予定でございます。評価結果は公表いたしますし、さらに政策

評価法に基づき総務省に報告いたします。そして、要約されたものが総務省から国会に報

告されるということになっておりまして、したがいまして、評価は国民や第三者に対して

も説明できるものとなるよう、ご留意いただければと思います。

後に本日の会議の進め方についてご説明をいたします。

各課題ごとに担当課から3分程度の説明の後、7分程度質疑を行う予定でございます。

そこで自己評価に対する意見を集約させていただきます。その際用いますのが、資料2-

1の自己評価と資料2-2の評価資料でございます。

この7分の質疑で、恐らく評価項目ごとの評価ランクまでおおむね同意できる、イメ

ージできる状況になるのではないかと思っております。異なる意見があった場合も、この

段階では無理にまとめず、先に次のプロジェクトの評価へ進みまして、中間評価6件、個

別の説明と質疑が終わりましてから、6件まとめて個別の質疑で残った点の検討、そして

さらにそれぞれの総括評価結果についていかがするか、改善すべき点など指摘すべき事項

はあるかといった議論を行っていただきます。同様にして、事後評価5件もお願いいたし

ます。

このように、他のプロジェクトと並べて評価をすることで、相場観を持った評価を行

いやすくすることができるのではないかと考えております。

もっとも、こうした方法をとりましても、先ほど座長からもご指摘ございましたが、

各評価項目の具体的な修正文、総括評価結果の文章を一字一句完成させるということの上

では議論が百出し、時間が足りなくなるかもしれません。その場合は、いただきましたご

意見をもとに事務局で評価結果案を作成いたしまして、各委員にメール等で確認し、評価

専門委員会の評価結果とできるのではないかと考えておるところでございます。

以上が今日の流れかと考えております。

○座長 一気呵成に説明されたので、なかなか全体を理解できないところがあるかと思い

ます。要するに、技術会議の委託プロジェクトにつきまして、この評価専門委員会で評価

するということですけれども、これらの課題につきましては、事前にプロジェクトの研究

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運営委員会あるいはその担当課含めて、それぞれ内部で厳しい議論をして、一応技術会議

としての評価を下しています。技術会議が下した評価が妥当かどうかということを、この

場で検討することになります。すなわち、技術会議の自己評価がきちんと行われているか

どうかを専門家の皆様方の立場で、評価いただいて議論をしていきたいと思います。もち

ろん、技術会議の自己評価がこの審議の中で覆ることもあるでしょうし、そのまま妥当と

いう場合もあると思います。事前に資料2-1が配られておりますので、それに基づいて

論議をしていきたいと思います。

それから、本日の議論の中では、できるだけ良い/悪い(A/B)という判定だけで

なくて、特に中間評価に関しましては、これからどのようなところを強化して研究をして

いったらいいのかというところも含めて、注文やアドバイスをいただきたいと思います。

それから、事後評価の課題につきましては、どういう取り扱いをこれからしていくの

かも含めて論議をしていただければと思います。先ほど重倉さんからも出ましたように、

字句の修正を含めて一字一句やっていたら、時間が足りませんので、これについては皆様

の意見を反映しながら、事務局と私の方で検討するという形で進める場合もありますので、

ご了承いただきたいと思います。そのときには、メールで皆様の意見をお聞きして、 終

的な意見をまとめていきますので、よろしくお願いしたします。

大体、こういう進め方でよろしいでしょうか。

(なし)

○座長 よろしいでしょうか。それでは、議事に入りたいと思います。

まず、中間評価の課題について評価を行っていきたいと思います。全部で6課題ありま

すので、大体説明を3分程度でしていただいて7分程度質疑を行います。なお,質疑が不

十分な場合は、 後に総合的に検討を行うという形で進めたいと思いますので、よろしく

お願いいたします。それでは、説明をよろしくお願いします。

○研究開発課長 研究開発課長の引地でございます。私からは、6課題のうち5課題説明

させていただきたいと思います。3分以内で努力したいと思いますので、よろしくお願い

いたします。

では、1ページ目でございます。低コストで質のよい加工・業務用農産物の安定供給

技術の開発ということでございます。事業費が24億6,000万円、うち執行額9億9,

000万円、これは18年から22年までの5カ年間の事業でございます。

課題の概要でございますが、加工用・業務用の農産物の供給については、輸入農産物

に遅れをとっているということでございまして、国産農産物をいかにこの加工・業務用に

仕向けていくかということが、この研究のねらいでございます。そのため、畑作物、例え

ばバレイショとかカンショですとか、あと野菜、トマト等、お米に至るまで、輸入品に対

して優位性が発揮できるような高品質な加工・業務用農産物の品種の選定ですとか、生産

技術を開発するというものでございます。

目標でございますが、アウトカム目標は文字どおり国産農産物の供給過程を通じて自

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給率の向上を図っていくのだということでございます。

研究目標につきましては、(1)の加工・業務用向けの品種開発とか、生産・流通技

術でございまして、野菜であれば品種の開発はもちろんでございますが、栽培技術ですと

か、あるいは鮮度保持技術等をこの研究を通じて開発する。大豆でありますと、豆腐適性

に合ったような品種の開発ですとか、お米であれば中食用の冷めても硬くなくおいしいお

米ですとか、あるいは米粉の利用についての研究などを行うこととしております。

さて、1の研究目標の達成ですが、各品目とも当初の目標に向かってある程度順調に

進捗し、一部普及にはもう移行してもございます。しかしながら、一方で進捗のおくれた

課題もございますし、また実用化という視点で成果の受け渡しがやや難しいというものも

ございまして、現時点ではBという評価をしております。

3ページ目の研究の効果の明確性ということでございますが、加工・業務実需者の国

産農産物へのニーズ、これが今十分対応できていないということで、これを何とかする、

国産農産物の供給拡大を図るということは、ひいては食料自給率の向上にもつながります

し、農政の大きな課題に貢献するというふうに考えております。評価ランクをAにしてお

ります。

研究の推進方法の妥当性でございますが、これまでの研究内容の実務を見てみますと、

中ほどに書いてございますように、実用化研究との連携が十分に構築できていないような

基礎研究が一部にあるということ。あるいは一品目一研究課題であり、プロジェクトとし

てのシナジー効果というのがちょっと薄いのではないかというような課題もございます。

それから、加工・業務用ということですが、生食用需要との仕分けがやや不明確だという

ような問題がありまして、その辺について研究者側と行政側、実需者側と話し合いをして

いるのですが、若干ミスマッチを起こして入るというふうな問題点が散見されます。そう

いうこと等を通じて見ますれば、評価としてはやや低いBと判断をしております。

社会・情勢の変化への研究の必要性は、申すまでのことなく、昨今の輸入品の急増に

伴い、食料原料の安全性の問題に対する関心も非常に高まっております。やはり国産志向

ということもございまして、加工・業務用需要のこうした国内農産物の供給というのは非

常に重要だというふうに認識しておりまして、本プロジェクトの重要性はそういう意味で

は高いということで、Aという評価を下しました。

以上でございます。

○座長 どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様から意見あるいはご質問

を含めて、よろしくお願いいたします。

○F委員 このプロジェクトの研究の必要性、あるいは効果の明確性に関しては、 初か

ら議論されているようによくわかるわけですけれども、実際やってみるとうまくいってい

ない、あるいはそのマッチングがうまくいかない中で、これは野菜、大豆、畑作等の全部

がうまくいっていないのか。研究推進方法の妥当性に関しても、マッチングすなわち受託

研究と認識の共有性がとられていないという点において、もう少し詳細に評価を行なって、

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終的なアウトカム、今の時点でどういうアウトカムが予測されるのかということを明確

にしないと、この単にBというランクを打っておられるだけでは、透明性が現れてこない

のではないかと思います。

ですから、もう少し野菜のところで、何とかうまくいっているものもあるのだとおっ

しゃるのであれば、うまくいっているものをもう少し明確にしながら、シナジーが出ない

というのであれば、うまくいっているところを事例に挙げて、そのシナジーを出す、ある

いは手法に関してその妥当性を図っていくということが、B評価を踏まえて次のAに展開

できると考えるわけですけれども、その辺の具体性というのはあるのですか。

○研究開発課長 加工需要の、2ページ目の目標達成のところを見ていただきますと、野

菜、大豆、畑作物、それぞれについてかなり品種面でもいいものを出しておりますし、そ

れから加工適性に対しての解明というのも、例えば野菜ですと、農業新技術2008にお

いて、大々的に普及をしようとしているものなのですが、単為結果性ナスの「あのみの

り」ですね。これは20年度から種子を供給することとしており、非常に期待の高いもの

でございますし、大豆の「なごみまる」もそうということで。委員のお話があったように、

かなりいいものも出している一方で、一部にそうでないものもあるということで、総じて

そうなのかということでは、私は「そうではない」というふうに理解しております。とい

うことで、20年度からは、研究課題を絞って実現化していくということが重要ではない

かと考えております。

以上でございます。

○F委員 おっしゃることはよく分かるわけですが、言うなら、そのBランクからAラン

クに上げる施策が必要である。その中で全部がうまくいくとは限らないわけですから、皆、

次のステップでは 終的にAにするというのであれば、うまくいくものは抽出しながらさ

らに促進する、あるいはうまくいかないものはうまくいったものとの連携をどうするかと

いうようなことを明確に指摘して書く必要があるのではないかと思います。そうしないと、

今の状態でもこのBがAになるのかというような観点がやはり見えてこないというところ

で、別にここでBの評価が云々ということではなくて、次に行くことがやはり大切だと考

えております。少しその辺を明確にされておくのが、評価ではないかと思います。

○座長 現状で十分に成果が得られていない課題については,今後の研究の展開と成果の

可能性にまで踏み込んで評価をすべきだという建設的な意見だと思います。他の委員の意

見はいかがですか。

○A委員 しかし、だめなものは切るという勇気も必要ですよね。ですから、やはり後半

に行く時に、これはもう資金投入してもだめだという見極めをして、切るものは切ってい

くべきです。一生懸命上げよう、上げようと言っても、どうしても上がらないものもある

わけですから、相当の見極めの上進めていく必要があると思います。

○E委員 この研究に取り組む体制がどうなのかというところがこの評価書ではなかなか

読み取れないので、参考資料を見てみましたが、応用研究のところなので、課題をざっと

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見てみますと、共同研究機関が相当細かく多数書いてあります。この共同研究機関とチー

ムリーダーのいる機関との役割が、それぞれそのテーマによって違うと思いますけれども、

この種の実用研究であれば、うまくいっていない中でリーダーをやっているところと共同

研究機関の役割がどうだったかということを、一度評価をしてみる必要がある。

ひょっとしたら、これは憶測でしかございませんけれども、もっと共同研究機関が、

現場に近いところ、あるいは商業化に近いところが前に出て重要な役割を果たすことで、

実用化の道がつけられる可能性があるのではないかという視点での検討をされたらいいの

ではないかと話を聞いて思いました。ここは後にお任せいたしますけれども、そのような

視点でのチェックをしたらいかがかと思います。

○座長 今、重要な指摘が3人の委員の方から出ました。F委員からは、もう少しきちん

と原因究明をして将来につながる分析をすることの重要性が,A委員からは、課題の絞り

込みをきちんとやっておくべきことを,それからE委員からは、プロジェクトリーダーと

その他の研究実施者との関係に関する体制がうまく機能しているのかという点を含めて評

価したらどうかという意見であったと思います。

この課題につきましては、まだまだ他に意見があると思いますが、総合討議でまた論議

をしたいと思いますので、次の課題の説明をよろしくお願いします。

○研究開発課長 5ページ目でございます。粗飼料多給による日本型家畜飼養技術の開発

ということで、事業費26億4,000万円、うち執行額10億5,000万円。これも

5カ年事業で22年度までです。

課題の概要といたしましては、粗飼料の栄養価を示すTDNというのがあるのですが、

その生産効率を高めるような品種の開発なり、その栽培技術、あるいは省力的に飼料作物

を収穫、効率的に流通させるような技術等を確立して、要は飼料自給率を高めていくとい

うふうなねらいで行っている研究でございます。

研究の中身でございますが、目標は、まずその自給飼料の生産量あるいは質というもの

を高めるのだという、ここにTDN増産技術と書いていますが、これは牛のえさの栄養価

でございます。これを高めるのだという技術でございまして、多収品種の開発とか安定生

産技術ということでございます。

それから、今度は実際に牛に食べさせるときの技術ということで、(2)にございます

ような給与技術の開発ということでございます。

それから、牛を放牧するときの技術ということで(3)でございます。

それらを合わせまして、地域における先導技術の実証と経営評価ということを、この研

究の中で実施しております。

目標達成ですが、この飼料の開発につきましては、たとえばイネではTDN含有の非常

に高い「タチアオバ」という品種を開発しておりますし、とうもろこしなどでは九州で二

期作用の品種が開発されております。さらに北海道でも、とうもろこしの品種で「ぱぴり

か」という品種、根釧地域という非常に寒いところで従来は余り育成できなかったんです

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けれども、そこでも生産できるような画期的なとうもろこしを生産したという実績を持っ

ております。そのほか、発酵粗飼料の生産技術等々も一定の成果を得ているところでござ

います。この研究についても多岐にわたっておりますが、おおむね順調に推移していると

考えてございます。評価ランクはAにしております。

それから、2の効果の明確性でございますが、その粗飼料、飼料のTDN増産技術なり、

あるいは給与技術なり放牧技術というのは、畜産における低コスト生産に向けた非常に大

きなウエートを占める分野でございます。あわせて飼料増産というのは、国内の食料自給

率を高めるのに非常に有効でございますので、そういった行政施策という面でも、これは

効果が期待される仕事であるというふうに考えております。

研究の推進でございますが、プロジェクトの運営委員会を設置し、行政ニーズ、研究シ

ーズ、それぞれいろいろ議論をしながらこの研究を進めているところでございますが、そ

の中で、12課題ほどですが廃止し、さらに24課題の計画を逐次見直しつつ、この研究

を進めているところでございます。

研究の必要性でございますが、とうもろこしや小麦、大豆、いわゆる輸入穀物が非常に

今高騰しております。そういう中で、国内での粗飼料の生産というのは、非常に重要でご

ざいまして、研究の成果を早く出して、社会の要請、経済の要請にこたえていきたいとい

う意味では、非常に重要だと考えております。評価ランクをSとしております。

以上でございます。

○座長 どうもありがとうございました。では、委員の皆様方、意見をよろしくお願いい

たします。

○F委員 後にイネゲノムの話が出てまいりますね。イネゲノムは、大変高い評価をこ

こでおつけになっておられるわけですが、ここで開発されてきた飼料イネのTDN含量の

高いものが、イネゲノムの研究成果として、その遺伝子組換え技術ではなくてイネゲノム

の方を大変強調されて、違う委員会で大変高く評価されたのですね。育種において、いわ

ゆるバイオマーカーをうまく利用しながら、育種の速度をスピードアップするのだという

形でイネゲノムは評価されているわけですね。

そういう形で、例えば研究推進方法の妥当性において、そういうシナジーが出ている

かどうか。特徴的なイネゲノムサイエンスという強い分野を持っていて、イネの育種、あ

るいはそれに関連した小麦とかの育種にかなり利用は効くと思うのですが、そういうこと

が推進方法の中に出てこないというのは、そういうシナジーがないのか。 も農林水産省

で全部Sをつけておられる分野があるにもかかわらず、そことのシナジーがなくて、いい

ものを育種するんだという考え方はいかがなものか。全体からしてそういうことをやって

いるのであれば、もっと明確にお書きになった方がいいんじゃないでしょうか。

○座長 それについてはいかがでしょうか。

○研究開発企画官 このプロジェクトのプログラムオフィサーをしております中谷でござ

います。今のF委員のご指摘でございますが、まさにイネゲノムの成果はマーカーなり何

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なりというところではイネ育種に使われておりまして、これら多収品種の育成というのは

イネゲノムの成果と、それからかつて、随分前ですけれども超多収というプロジェクトを

やっておりましたところの素材とのマッチングというところで達成されたものでございま

すし、それから単にそのイネの育種だけではなくて、この中で例えば耐湿性のとうもろこ

しの育種というふうなものもやっておりますが、それもやはりそのイネゲノムで開発した

ようなマーカー選抜といったような技術を使って進めておりますので。その記述はしてお

りませんが、もちろんイネゲノムの成果は十二分にここで活用をさせていただいておりま

す。

○F委員 その必要性が重要であるという観点からしたら、私はそういうことをきっちり

書かれた評価が上がってくる、あるいは課題とのシナジーもここでちゃんと出して、その

成果がここに生きているんだということを書いた方が、我々にとってはものすごくわかり

やすいのではないかと思ったので、今申し上げたわけです。

○座長 F委員の意見は評価書の書き方のアドバイスですので,実際に行っている研究内

容を盛り込んで評価をしていくという意味で、後ほど検討したいと思います。

他に委員の皆様の意見をお願いいたします。

(なし)

○座長 よろしいでしょうか。それでは第3課題の説明をお願いいたします。

○研究開発課長 では、9ページでございます。地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の

評価と高度対策技術の開発でございます。総事業費19億円、うち執行額5億円で平成2

2年度までの5カ年度研究でございます。

課題の概要でございますが、地球温暖化が農林水産業に与える影響について、将来の予

測を含めて、その評価するための炭素循環モデルというものを開発するということが、ま

ずあります。その上で農林水産業における、その温暖化の対策としての技術を開発しよう

というものでございます。

研究の目標でございますが、(1)にございますように、まずは炭素循環の解明という

ことでございまして、そのためのメカニズムを解明した上でモデル、循環モデルを構築す

るという仕事が一つ。

二つ目は、その上でまずモデル、あるいはモニタリング等を通じて、農業とか森林生態

系、水産業にどのような影響が及んでいるのかということを把握するということ。さらに、

そういった温暖化に伴う環境変動、それに対して例えば温室効果ガスの排出を削減するよ

うな技術、あるいは炭素吸収源機能を生かすような技術、というものをこの3本柱で研究

を進めております。

2の達成関係でございますが、森林、農地、海洋の藻場、それぞれについて循環モデル

のプロトタイプを開発しております。また、モニタリングによるデータの蓄積ですとか、

あるいはその中で炭素の代謝、あるいは炭素の固定に関する知見を相当集積してございま

す。そういうようなことで、総じてこの成果が順調に出ているというふうに考えておりま

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す。評価ランクAとしております。

それから10ページ目でございますが、効果の明確性ということでございます。京都議

定書次期枠組み交渉が迫っているわけでございますが、その際、二酸化炭素の吸収見込量

の算定ですとか、温室効果ガスインベントリーなどを報告書に反映させるために、その算

定方法をどうするかという、その開発が求められております。

一方で、その現場での暑熱対策に対する技術の開発なども非常に重要となっております。

そういった中で、これまでの研究というのはどちらかというとかなり基礎的な研究が多

ございまして、まだ実用化というところまではなかなか行っていない部分もございます。

今後とも学術論文等を作成しまして、海外等にどんどん発信していく予定でございますが、

現段階ではその辺がやや明確じゃないということで、Bと評価しております。

研究の妥当性ということにつきましては、プロジェクト、運営委員会でこれまた行政側

と研究側と綿密な連携をとって進めているところでございます。

また体制の面では、農林水産省のみならず、関係省庁と連携しながらこの仕事は進めて

いるところでございます。いずれにしても、農林水産省としても地球温暖化のための総合

戦略を打ち立てながら、それに対応する研究を実施しているところでございますし、評価

ランクはAとさせていただきました。

それから、研究の必要性ということでございますが、19年度に、取りまとめられたI

PCC第4次報告で、地球温暖化によりその影響が非常に深刻になっているというのが出

ております。また、我が国でも特に西南暖地を中心に高温障害が実際にもう既に出ておる

という意味で、これの克服ということは非常に重要でございますし、グローバルな視点で

もこういった基礎研究、あるいはそれに引き続く実用研究というのは、社会の要請にこた

え得る非常に重要な研究と考えておりまして、Aと評価いたしました。

以上でございます。

○座長 どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様の意見をお願いします。

○I委員 まだ出たてで大変恐縮ですけれども、私はこの研究は非常に重要だと思うんで

すよね。特に敢えてマイクとらせていただいたのは、4番でその評価がAになっていると

いうところが、むしろ私は危機に感ずるぐらいでして。ただ、問題点は非常に難しいと思

うのですが、私の大学でも、環境のこういう問題は非常に重視してプロジェクト進めてい

るわけですけれども、一つは、アウトカムのところが今のお話の中でもあったように非常

に難しいところがある。即その技術に結びつくかというと、非常に難しいところがある。

一方、モニタリングとかモデリング、これは非常に日本の技術が優れていますね。

一つご提案ですが、やはりこれは大事なプロジェクトですので、中間の段階でまず科学

論文として海外に発信していくことに1行割かれてますけど、私はサイエンティストの端

くれとして、農林水産省でやられるこういう類の研究で、やはりサイエンティフィックな

論文を重視することが本当に必要なのか。むしろ納税者にわかるようなビジョンを、ゴア

副大統領がやられたように、農林水産省がすべての省庁に対してリーダーシップを握るよ

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うなビジョンを納税者がわかるようにしてほしいですね。環境だけれども、実は農林水産

省だね、森林を持ち、水田を持ちですね。常日頃非常に感じているのですけれども、大学

の総長と話すときでも、キャンパスが東京都で一番電気は使い、炭酸ガスは一番出してお

り、非常に罪を重ねているわけですね。その中で、どうやって社会に対して大学の必要性

を主張するかと考えたときに、やはり一番わかりやすい方法というのはあるはずで、そこ

を考えると、そのサイエンティフィックな論文のこの1行を工夫したいですね。

それから、総合討論でできればと思うんですけれども、こういうプロジェクトこそ、た

こ壺じゃなくて、これだけのお金使うわけで、他のプロジェクトとの関連についてあから

さまに書かれたらいかがかなと感じたので、お話しさせていただきました。

○座長 回答をお願いいたします。

○研究開発企画官 このプロジェクトのプログラムオフィサーをしております大谷と申し

ます。科学論文につきましては、実はあと2年後ぐらいから次期の温暖化の枠組みの交渉

が始まるときに、我が国の固有のデータというのが非常に少ないというのが行政側の非常

な危惧です。その場合には、やはり科学的な裏づけのあるデータがセットでないとなかな

か交渉ができないというので、今強く要請されております。恥ずかしい話ですけれども、

この3月の研究運営に関する会議をした際に、そのあたりのことが初めて研究者側にもよ

く伝わったし、研究者側からは行政側に、そうは言ってもモニタリングして1年ですし、

おかしなデータは出せないというような話が出て、やっと非常にスムーズなコミュニケー

ションができたと思っております。

それで、今後はその行政と研究とが密接に連携して、科学論文なら科学論文、あるいは

データをどこか別の場所に出すなら出すというような調整をしたいと考えております。

○I委員 科学論文と、私はちょっと語弊のある言い方をしたかもしれません。私が申し

たかったのは、やはりサイエンティフィックな裏づけのある研究成果というのは、もちろ

ん大事だということは十分理解しておりますけれども、それが一般にわかる、ビジョンと

して、国として、外国に訴えるようなデータにしていただけると、非常にありがたいと感

じております。

○B委員 今のやりとりをお聞きしていて、確かに私もそのとおりだと思います。ただ、

企画官がおっしゃったように、やはり科学論文がないと他の国と戦えない。今後ますます

科学的データを用いて国際会議の場で戦うことが多くなります。他の国のデータばかり使

っているような現状というのは余りよくないので、どんどんきちんとしたデータを論文化

していただきたい。

今、I委員がおっしゃったことは、この問題だけに限らないですよ。技術会議がやって

いるすばらしい成果が、なかなか国民に届いていないということがあるのです。この現状

をどうしたら改善できるか、それ自身が研究課題になるんじゃないかな。どうやったらそ

れがもっとスピーディーに、しかも正確にわかりやすく伝えられるかというのは、これか

ら工夫する必要があると思います。今、論ずることじゃないかもしれませんけれども、大

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切なことだと思います。

○D委員 今の議論を聞いていて思ったのですが、タイトルが「地球温暖化が農林水産業

に及ぼす影響」ということで受身になっているんですけれども、私は発想が逆でもいいの

かと思っていまして。例えば森林とか水田があるがゆえに、地球温暖化が日本ではこれだ

けいい状態になっているという評価もあり得る。こういったところが、農林水産業が日本

におけるどういう産業かというプレゼンスを高めることになるのではないか。これは非常

に納税者に対してはわかりやすい説明になると思いますので、こういった数値も出てくる

といいなと思いました。

以上です。

○A委員 先ほどの企画官とI委員のお話に関係してお話します。水田からのメタン発生

の問題が10年ぐらい前にIPCCで議論されました。そのときにIPCCの原案はメタ

ンの発生量をアメリカのルイジアナや南部の湿田から出るメタンで計算していました。し

かし世界の 90%以上のコメを生産している日本を含めたアジアの水田は、ある時期水田

から水を抜き空気を入れて好気性にしながら生育させるので、メタン発生量が少ないとい

う精密な実験データが当時農業環境研究所にあったわけですね。それを持っていって、I

PCCでメタン発生量をきちっと直せたわけです。ですからやはり私はきちんとしたデー

タは、やはり農林水産省の研究としては地味だけど積み重ねていく姿勢が大事だろうと思

いますね。

○座長 この問題はやり出すときりがなくなるぐらいの、非常に大きな問題を抱えており

ます。やはり研究機関としては,研究成果をきちんと論文として発表して、科学的に裏づ

けられたデータを現実問題の解決に出していくことが大切です。

また,それと同時にいかに国民にわかるように研究成果をPRしていって、この地球温

暖化問題に対して、農林水産省としてどういった取り組みをしているかを発信していくこ

とが重要です。

○B委員 D委員がおっしゃったことはかなり重要なことです。現在の研究とは別に、

「農林水産業が地球温暖化に及ぼす影響の評価と行動、対策技術の開発研究」を立てるお

つもりならば、これはこのままにしてもう一つ立てられます。しかし現在の研究において、

例えば土壌が炭素の吸収源としてこれから非常に重要な役割を演ずる可能性についての研

究など、今いろいろなことをやっていますね。それらの研究は現在のタイトルではどうか

なという感じは私もしました。

○研究開発企画官 これ、実は先生のおっしゃる二つのご指摘に関連して、モニタリング

をしたり、その解析をしたりして発生量をきちっと確かめる研究と、温暖化によっていか

に農林水産業が影響を受けて、それに対してどう対応するかという研究を、平成20年度

から予算的に強化する予定です。そういう意味では、二つ研究課題が一緒に入ることにな

ります。ただ、情報を発信する際には、データをうまく使って発信していきたいと思いま

す。例えば、このタイトルのまま発信する必要はないわけでして、農林水産業は環境にい

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い影響を与えるというようなスタイルで、その成果を発表するということに、少し気をつ

けていきたいと思っております。

○座長 また後ほど論議があれば行いますので,論議を進めたいと思います。では、次の

課題の説明をお願いします。

○研究開発課長 次の課題、13ページでございます。課題名、安全で信頼性、機能性が

高い食品・農産物供給のための評価・管理技術の開発でございますが、総事業費25億円、

うち執行額15億円、これも22年までの研究でございます。

概要でございますが、その目標のところの、研究目標のところを見ていただいた方がよ

ろしいかと思います。三つから構成されておりまして、一つは食品の安全を確保するため

の評価・管理技術の開発ということで、要は生産現場や食品の製造現場で起きるような危

害要因です。例えばサルモネラとか食中毒の菌ですとか、その他カドニウムとか、そうい

ったものの危害要因をなくすための技術ということで、まずもって危害要因の検知とか制

御技術を開発するということ、あわせて、その精度管理のシステムもここで研究しており

ます。

2番目が表示の信頼性を高め、確保するための判別技術の開発というのをやっており

ます。すなわち原産地とか、生産履歴とか品種とか、そういったものの判別技術、要は偽

装防止技術と言った方がよろしいかと思います。そのほか、農産物の機能性の解明という

ことを行っております。

達成関係でございますが、食品の安全を確保するための管理技術につきましては、例

えば主要な食中毒菌やカビ毒を対象として、その制御技術というのが開発されております。

例えば、非常に簡易な検出キットとか検出器を開発しております。

それから食品表示の信頼性につきましては、たくさんの食品・農産物についてのDN

A判別とか産地判別等の技術を開発し、それがもう既に実用化されているところでござい

ます。

そのほか、食品農産物の機能性解析技術として、その評価系を確立したところでござ

いまして、おおむね順調に成果が上がっておりますので、評価はAとしております。

それから、14ページ目でございますが、社会経済に及ぼす効果の明確性ということ

でございます。繰り返しになるかもしれませんが、(1)にございますように、食中毒の

検出方法とか検出キットは既に食品加工業者への導入の今準備段階にございまして、社会

でも実際に応用される段階に来ているということ。それから、標準化のシステムにつきま

しては、国際基準設定に活用される見込みであるということ。

(2)のその判別技術につきましては、もうご案内のとおり消費者の表示の信頼の確

保。あるいは、一方で生産者の育成者権の保護という面でも非常に重要でございまして、

これはもう既にマニュアル、いちご、たまねぎ、お米等々マニュアルが公表されておりま

す。それで実用化がされているということでございます。むしろ新しい分野という意味で

は、この機能性解析ということでございまして、ニュートリゲノミクスという技術を使い

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まして、その食品や食品成分が人の体内に入ったときに与える影響について、網羅的に解

析する技術の基礎的な研究を行っているところでございます。評価はAといたしました。

研究の妥当性につきましては、運営委員会等でいろいろ議論しながら進めております。

なお、この目標にございます1、2、3のその研究開発のうち、(1)の食品の安全

を確保するという、要するに危害要因の管理システムにつきましては別立てにいたしまし

て、平成20年度から新しいプロジェクトとしてこれを立ち上げております。ここに書い

てございますように、食品・農産物の安全に関する研究をフードチェーン全体にわたる研

究ということで、新規プロジェクトとして生産・流通・加工工程における体系的な危害要

因の特性解明とリスク低減技術の開発ということで、別に新しく立てて取り組むこととし

ております。

社会・経済、諸情勢への変化を踏まえた研究の必要性ということでございますが、ご

案内のとおり食品の偽装が社会問題化しているわけでございますが、こういった面もござ

います。この種の研究というのは、非常に重要だと考えております。評価ランクをAとい

たしました。

以上でございます。

○座長 いかがでしょうか、ご意見をお願いいたします。

○F委員 今ご説明にあった、この食品の安全を確保するための評価技術、あるいはその

標準化の問題は大変よくやられて、それなりの成果を出されている。この1、2に関して

は大変私は高く評価して、評価ランクは 後経済性を踏まえた現実を考えるとAではなく

て、私はSだと思うのですけれども。問題は3ですよね。機能性食品の開発の中で、これ

は社会的ニーズがものすごく高くて、我々食品メーカーも大変期待度が高いところですけ

ども、農林水産省のここのニュートリゲノミクス等を活用してという観点において、全体

のいわゆる産業育成あるいは新しい市場開発の中で、農林水産省がどういう位置づけをな

さろうとしているのか。例えばニュートリゲノミクス、トキシコゲノミクスで考えたら、

安全性という分野でマイクロアレイを使うということですけれども、世界はもっと機能性

の高いものをやっていこうとする中で、ニュートリゲノミクスだけなんていうことはもう

今では陳腐なわけですね。もっと先端をプッシュした形、あるいはそこから出てきたデー

タを持ってきて、産業あるいは地域振興等を考え、人の評価を含めて体系化をしていかな

ければならない。そうしないといわゆる産業振興も、企業にとってもメリットがないし、

地域の新しい新規素材の開発にもつながらない。

それが今、全部ここの部門だけ中途半端になっているのではないかと。この研究開発

の全体の位置づけですよね。もちろんこれは農林水産省だけの問題ではなくて、他の省庁

との関係もあるのでしょうけれども、これを本当にどうお考えになっているのか。そうい

う観点からすると、ここだけはもうB評価すらないのではないかという気もするんですけ

ど、それはどうお考えになっているのですか。これは食品会社で、毎日この辺で苦労して

おりますので、大変きつい発言になって申しわけありませんが。

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○研究開発企画官 これも私がプログラムオフィサーやっておりますのでお答えいたしま

す。確かに委員おっしゃるようなところはございました。そういう背景がございますので、

実はこの、今回の中間評価を受けまして、かなり考え方を整理させていただいております。

それは、まず機能性成分を分析するというところから始まりまして、もちろん細胞レベル、

動物レベル、その前にはニュートリゲノミクスがありますけれども、それからヒト試験に

向かう一連のところの評価方法を体系的に研究するように整理し直すということで、今ま

での課題で要らないものは全部外すというような形で整理しております。

それからもう一つは、農水系統の独立行政法人の中に機能性評価センターというのが

ございますけれども、そこでは今申し上げましたように、分析法から、ニュートリゲノミ

クス、この場合のニュートリゲノミクスというのはニュートリトキシコゲノミクスという

概念を含みますけれども、動物試験、それからヒトの試験のお手伝いまでサポートすると

いう観点で活動を始めております。

ただ、一つ一つの機能性成分を深く追求するというのは、もう国の研究所あるいはこ

ういうプロジェクトでは無理ではないかというのが、大きな方向だと考えております。

○F委員 多分ご存じだと思いますけど、ヨーロッパには、オランダにフルバレーという

センター、拠点があるわけですね。そこでいわゆるそのニュートリゲノミクス、あるいは

ベーシックな基盤構築をやって、広くその新しいカテゴリーの産業を育成しようと。我々

はそういうことを農林水産省、あるいは食品総合研究所に期待をするわけですけれども、

この研究の行き着くゴールは、その産業育成の中で全体のどの部分を役割として担おうと

しているのかというのが私どもに見えない。いわゆるフードバレーのように、産・官・学

を連携しながら、食品総合研究所の中に拠点を持って、日本型フードバレーをつくって、

今のような特保ではなくて、もっと素材を生かした活発な活動と産業支援、あるいは生産

者支援のセンターになろうとはされないのですか。

私どもは皆それを期待しているにもかかわらず、そのマッチングがなかなかうまくいか

ない。これこそ産学連携の中での議論がもうちょっと深められて、この見通しをどこへ持

っていくかというのを、ぜひ私は農林水産省に頑張っていただきたい。他の省庁で、厚生

省なんかもう全然薬だけでだめでしょう。もう農林水産省がこの素材を扱う、あるいは食

の安全、機能性の安全を頑張れるのであったら、もっと大きなビジョンを描いてやってい

ただかないと、食品メーカーというのは研究開発力において大変強くはないのですよね。

そういう意味で、私どもが大変期待しているところの分野であるということをぜひお考え

いただいて、何かいい施策を出していただければと思います。

○研究開発企画官 先生がおっしゃるように、研究者レベルではもちろんそういう大きな

位置づけになりたいということは考えておりますけれども、やはりその出口のところで、

今のところ、我が国では機能性を言ったとたんに特保の問題と絡んできますので、そのあ

たりの対応に悩んでおりますが、一つの方向として、生鮮食品の成分表示の問題だとか、

少しずつ少しずつ全体を前進させていきたいと考えております。

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○座長 その他の委員の皆様ご意見よろしいでしょうか。

この問題は、研究のビジョンに関わる重要な問題ですね。産官学連携研究における研

究体制の構築の在り方,さらにはそうしたプロジェクトで研究がどのようにリーダーシッ

プをとって推進するかが大切です。まだ研究は2年目ですので,新しいフードバレーをど

うつくるかというところも含めて、今後の軌道修正方向を検討していただけたらと思いま

す。

では、次の課題の説明をお願いします。

○研究開発課長 17ページでございます。土壌微生物相の解明による土壌生物性の解析

技術の開発ということでございまして、総事業費6億1,000万円、うち執行額2億8,

000万円でございます。22年までの研究でございます。

課題の概要でございますが、eDNAは土壌より直接抽出して得たDNAということ

です。この解析手法を取り入れて、その土壌の微生物の多様性を調査する手法を開発し、

それをベースに作物の生産性と土壌の微生物の多様性、土壌の生物性と申しましょうか、

それとの関連を解析すると。ゆくゆくはそれをベースにして、作物生産性を上げていくと

いうねらいでございます。

研究目標は、eDNAを用いた土壌微生物相の解析手法のまず開発と標準化というの

が一つございます。その上で、2番目に作物生産と土壌生物相との関連性を解明をし、土

壌生物の多様性の評価手法もあわせて開発すると。これは非常に多岐にわたるデータでご

ざいますので、これらのデータベースを構築し、それを利用する技術というものをあわせ

て開発するということでございます。

進捗状況でございますが、土壌微生物相の解析のため、ここにPCR-DGGE法と

いう手法を取り入れまして、eDNAの標準解析手法を解析します。それをマニュアル化

して提供しているということと、データベースを構築いたしましたという意味で、ほぼ計

画通りにこの研究は進んでいると考えております。評価ランクAでございます。

次のページの効果でございますが、本研究ではeDNA解析に基づく土壌の生物性の

評価手法が開発されたということになりますと、今まではどちらかというと土壌の理化学

性と申しましょうか、そういうことでの評価だったんですが、それに加えて生物的な評価

ということで、土壌診断法の高度化というのが期待されるということでございます。あわ

せて、今日、我が国の農業も持続的・環境保全的農業の推進ということが大きな課題にな

っておりますので、そういった意味でもこの研究成果が出れば、その効果の明確性は高い

というふうに考えております。Aランクにいたしました。

それから、研究の妥当性につきましては、これもプロジェクト運営委員会等で、いろ

いろな行政ニーズやら研究シーズと議論を交わしながら、検討、研究を進めているところ

でございます。

後、4番目の必要性でございますが、実は平成18年に有機農業の推進に関する法

律、有機農業に関する法律が施行されまして、有機農業関係者からの土づくりにおける土

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壌生物のその科学的な評価というものを求められているという状況にございます。あわせ

て、先ほど温暖化の話があったわけでございますけれども、土壌中の、特に窒素の代謝機

能、遺伝子の解明等を通じて、温室効果ガスである一酸化二窒素の農耕地土壌からの発生

の抑制にもこの研究が応用できるんではないかという期待を持っておりますし、ある意味

そういった面でもこの必要性があるんではないかということで、Aという評価をいたしま

した。

以上でございます。

○座長 では、委員の皆様のご意見をお願いいたします。

○E委員 ちょっと質問させていただきたいのですが、この手法で土壌の生物的な状態が

こうだというデータベースつくって判定ができたとして、それを改良する手法というのは

同時に開発されているんですか。

○研究開発企画官 同時にやっております。ただ、 初の2年間はもちろん検出してどう

だということですけども、同時に少しずつ始めておりまして、後半の方はそちらも同時に

やるということになります。

○E委員 私、たまたま土壌肥料関係の仕事が長かったものですから、非常に興味を持っ

て読んだのですけれども、極めて基礎技術に当たる部分だと思います。この中に、土壌診

断法の確立とかという実用の世界の言葉がちらほら入ってくるのですが、事前に送られて

きた今回の資料を読みまして、すべてこの研究がワンパターンで、時代的な背景もあって

ものすごく出口を意識しなければいけないことで書かれているのですけれども、やはり基

礎研究と実用化、応用研究とを少し書き方を分けてもいいのではないだろうかと思います。

ここの部分の土壌のeDNAのデータベースをつくっていくというのは時間のかかる

話ですし、特に2の研究が社会経済に及ぼす効果の明確性の 後のところで、我が国の持

続的・環境保全的農業の推進に大きく資するものであるでいいと思うんですよ。その後、

より効果の明確性は高いと判断されるというような、基礎研究で余り迎合するようなこと

ではなくて、基礎研究は基礎研究で時間はかかるんだということの姿勢をもっと明確に主

張してやる研究はあってもいいし、そのことは余り迎合しないで明確に主張してもいいん

ではないかなと思って、ここの部分を読みました。以上でございます。

○座長 このご指摘に対する回答をお願いいたします。

○研究開発企画官 実はE委員のような委員ばかりだと、非常にありがたいというのが正

直なところでございます。確かにこの研究は、メタゲノム全般に言えますけれども、まだ

本当に使えるのかというようなところも含めまして、まだ走りながら方向を修正するとい

うところがございます。ただ、やはり農水省の中での研究ですので、必ず遠くにでも出口

が見えないといけないということで、こういうふうに書かせていただいているところでご

ざいます。

○A委員 eゲノムなんですけどね。もう10年以上も前から言われていて、エコシステ

ム全体を見ていくというのは非常に大極的に押えられるので面白いと思ってきました。実

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際に10年たって今、これは一体何がわかる手法かというところは見えているのですか。

見えていないのですか。 eDNAを採ることによってその中の微生物相がかなりはっき

りわかるのか、ぼやっとしかわからないのか。あるいは、トータルのDNAを見るわけで

すから、どこから来ているかという情報が分かるのですか。普通、ゲノム解析の場合、イ

ネでも微生物でも、生物に特有のDNAの配列を見ていきますよね。これはもうトータル、

もう全部混ぜちゃってそこから測ってくるわけですね。だから、出てくる結果はうまく実

験して、うまく解析したとすると何がわかるのですか。

○研究開発企画官 今回のプロジェクトですと、線虫を含む微生物の大まかな種類と多様

性がわかります。ただ、もちろん皆さんご存じのように、抽出法によって随分違ってまい

りますが、ただそのあたりは一年目にチェックいたしまして、標準的な方法でこれから積

み重ねていくという方針でおります。

○I委員 たまたま環境微生物学をやっております関係で非常に興味があるのですが、基

本的に土壌中の微生物でわかっているものは、一般的には外国の情報などからも1%とか

2%しかわかっていないということですよね。それから、培養できないものが大半である

という可能性が高いわけですね。ですから、このeDNAの研究は非常に重要だと思うん

ですね。この2番の作物生産との関連のところに関しては、やはりeDNAの研究だけで

もかなり膨大な、この程度の予算でいいのかというような部分もあると思います。それで、

本当に中途半端にやるならばもったいないので、やはりきちっとやれば一つのオーダーが

違ってくるのではないかという気もします。

それからもう一つ、その作物生産等のところは、 後の22年度に向けて、そこのとこ

ろは絞られた方がよろしいかなと。やはり先ほど委員がおっしゃったようにこのままでは

難しいですね。ただ、非常に重要な部分なので、むしろここは絞られた方が落としどころ

としては非常にいい方向に行くかなという気がします。

○研究開発企画官 先生のおっしゃった、培養できない菌の問題というのはもうすべての

微生物に共通する問題です。非常に本質的だというふうに認識しておりますし、作物生産

については少し絞る方向で検討していきたいと思います。

○座長 他にご意見よろしいでしょうか。今、いろいろな角度から意見が出されましたけ

れども、余りに研究の出口を意識して、本来の基礎的な分析がおろそかにならないように

してください。また、研究成果の応用は応用で、きちんとした戦略を持って推進する必要

があると思います。

○J委員 すみません、まったくの素人でちょっと教えていただきたいんですけれども。

この2番のところに、土壌の理化学性とあわせて云々というところがあるのですけれども、

このデータベースの中にはそういうeDNAのデータベースと、その理化学性というのも

含められるのでしょうか。多分、理化学的な性質と、それから微生物というのは相関が強

いと思うのですけど。

○研究開発企画官 ちょっとそこまで確認しておりませんが、後でご返事したいと思いま

20

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す。

失礼いたしました。微生物と土壌のデータは一緒に入れているそうです。

○座長 次お願いいたします。

○技術安全課長補佐 すみません、ちょっとばたばたしておりまして、何度も出入りして

申しわけございません。6番目の、遺伝子組換え生物の産業利用における安全性確保総合

研究についてでございます。この研究プロジェクト、実は行政政策的な色彩が非常に強い

プロジェクトでございまして、そういう形で進めさせていただいております。

今、世界で、2006年で遺伝子組換え作物の栽培面積1億ヘクタールを超えまして、

どんどん増えている状態にございます。日本にも相当量が油飼料、あるいは油の原料とし

て大量に輸入されている現状にございます。ある意味で国民生活にとって不可欠で、これ

がもし今なくなったらお肉が食べられないですし、清涼飲料なんか飲めなくなる、そうい

う状況にございます。

海外でいろいろ開発研究が進む中で、日本国内でもきっちりと開発を進めるべきとい

うことがございまして、技術会議事務局の方では本年度この遺伝子組換えの開発戦略とい

うものを、まさに今日お見えのA委員やE委員に入っていただいて検討してきたわけでご

ざいます。その中で一つの目玉といたしまして、5年以内に実際に使えるような新しいも

のをつくるということがございます。5年以外にやはりつくるとなると、やはりそこはシ

ーズがどうしても既にあるものになりまして、一つの目玉といたしまして、飼料用イネの

ようなものを現在検討している状況にございます。

こういったもの、国内開発のもの、あるいは外から入ってくるものについて、安心して

使っていただく。そのために、やはり安全性に関する知見の集積ですとか、あるいはちゃ

んとした流通段階でちゃんと選択の権利を保障していかなくてはいけないということがご

ざいまして、当然、そこには検出技術ですとか、あるいは生物的封じ込めとここには書い

てあるんですが、日本の農地、非常にモザイク状に土地利用が進んでおりまして、当然こ

れの中で一つつくると交雑の問題が必ず出てまいります。交雑の問題をいかにクリアする

かというのが、一つの大きな重要な課題になっています。始めまして、ことしで2年目の

課題になっております。この2年間やってきた中で、非常に大きな成果がこれは出ており

ます。

一つは閉花性のイネというのを発見いたしました。イネ、もうみんな委員の先生ご存

じだと思うんですが、基本的に自殖性でございまして、雨が降って花が開かなくても、ち

ゃんと種は実ります。なぜかと、自殖性ですので花が開かなくても中で自分の花粉でちゃ

んと種をつけることができる、そういう性質でございます。それが開かない系統というの

を、これはミュータント、突然変異体の中から選抜して見つけてまいりました。当然、こ

れは非常に今後、特に今後日本で開発されていくGM作物、特にイネ中心になりますので、

非常に重要な成果だと考えております。

あるいは、花粉をつくらなくする技術ですね。あるいは、花粉に遺伝子が行かないよ

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うに、葉緑体への検出導入というのもイネで成功してきた形になっておりまして、外部委

員の先生からもここはSだろうということで、Sの評価をいただいたところでございます。

それから、研究が社会・経済等に及ぼす効果の明確性のところでもAという評価をいた

だきました。

それから、研究推進の妥当性につきましては、このプロジェクトは当然、行政的な施策

非常に強いものですから、省内の各関係部局に集まっていただいて、いろいろその、年大

体2カ月に一度ぐらい運営委員会開きまして、そこでいろいろ意見も出し合ってきまして、

全部で今54課題走っているんですが、そのうちの4分の1に当たります14課題につい

て、6課題についてはちょっと進捗このまま進めてもうまくないだろうということで終わ

りにいたしまして、今年度、8課題については担当者を入れかえ研究の方向性を大幅に見

直すということで、今年度整理いたしました。そういう意味で、Aだろうというふうに

我々の方では考えております。

それから、ここの資料の2-2の方にもございますが、100ページ過ぎたところあた

りがうちの方の研究になるんですが、私の手持ちでは103ページあたりになるんですが、

こういった研究成果を集めてまいりまして、ただ外に向けて何も発信しないというのはよ

くある話ですが、それではいけないと。年に1回、外に向けてプレスリリースを主要な成

果をまとめて出しております。そういう形で去年から整理して走って、今年も閉花性です

とか、あるいは花粉の自動カウンターをつくりました。そういうものを紹介させていただ

いている状況にございます。

後の4番の社会・経済の諸情勢の変化を踏まえた研究の必要性ですが、当然、検出技

術ですとか、交雑防止技術というのは非常に公益性が高いということで、これもSという

評価を外部委員の先生からいただいたところでございます。

自己評価は以上になっております。

○座長 よろしいでしょうか。ご意見をお願いいたします。

○J委員 読ませていただいて、ベーシックな研究なので、ちょっと私にも理解できる範

囲かなと思いました。イネの閉花受粉性の突然変異体というのは非常に面白いものだと思

うのですけれども、もう一つ挙げられているアブラナ科作物で花粉をつくらないというの

があるのですが、アブラナ科の代表だとベーシックサイエンスでよく使われているシロイ

ヌナズナがありますよね。その中で、優性のミュータント、変異体というのはかなりたく

さんとられていると思うんですけれども、そういう知見を応用されているということです

か。

○技術安全課長補佐 先ほど紹介いたしました、プレスリリースの中にも確か入れておる

んですが。これは何をいたしましたかといいますと、アブラナ科のいわゆる野菜なんかが

多いわけですが、こういうものの中のそのアブラナ科が持っている遺伝子の中で、たんぱ

く質分解酵素ですとか、あらゆる分解酵素がございまして、こういうものを特異的に発現

させることによって花粉を作らなくすると。そこに、同時にいろいろな遺伝子を入れれば、

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それと同時に入れることができれば、当然それは遺伝的にも連鎖というのですけれども、

同じ挙動を示しましたので、それでちゃんとスクリーニングもできるし、そういうものが

使える、野菜ですので種をとらなくてもいいということを想定して、こういう研究も進め

ているという状況にございます。

○J委員 ちょっと気になったのは、案外と農林水産省の方はイネ中心というところもあ

って、そのシロイヌナズナはベーシックサイエンスで用いられている、ああいうシロイヌ

ナズナのデータというのは物すごくたくさんあるんですけれども、そういうのをもっとも

っと利用されるといいのかなと思います。

○座長 これで6課題すべて中間評価の検討をしたわけですが、特に全体を通じて何かご

意見があればお願いします。

○K委員 それぞれの研究対象のテーマは、それぞれ 近の情勢に対応したテーマとして

非常に面白いと思っております。大体の研究期間は3年から5年が多いようですが、 近

は農林水産業をめぐる情勢がいろいろな形で動いておりまして、例えばこの 初の低コス

トで質の良い加工・業務用農産物という研究では、対象作物がこれでいいのかどうか。さ

らにはその中で、例えば水稲は、 近の世界的な穀物のいろいろな意味での需要が広がっ

ておりますけれども、その場合に小麦の代替原料としての米はどうなんだというようなこ

となど高次的な関心事にどう対応していくかということ。その場合には水田の力をどう使

っていくのかとか、いろいろあると思います。

それからまた、同時に農林水産業の機能、これはいろいろあろうかと思いますけれど

も、昔からこの農林水産省は多面的機能ということをよく言っております。その中では、

何といっても一番大きいのが環境面での貢献で、これは食料を生産すると同時に、今現在

も世界で関心の高い環境に対する貢献について、どうPRしていくか。

それから、研究自体のスピードが相当求められている気がいたします。非常に集中的、

それから規模も拡大的な状況で、私は今は政府として対応していく時期であると思います。

ですから単純に3、4年前からの流れの関係で考えていくべきではないぐらいの緊急性が

全般的に来ているということでございます。

それから、その点ではさらに需給の関係が出てまいります。需給は非常にキーワード

的なものですので、そういった言葉もいろいろなところへ出していく必要があるのかなと

いうことであります。そういった一般的な世間の関心には迎合すると言っては何でござい

ますけれども、それでもそういったこともちゃんと踏まえて対応しているという姿勢をい

ろいろ出していくということがこれ大事だろうと思いますので、その辺のニュアンスある

いは視点からも、ご説明の中に先ほどから出ているようですが、例えばタイトル名から微

妙に修正をされたらいいかなと。

それから、安全性の関係では、三つ目の信頼、機能性が高い食品・農産物供給のため

の評価・管理技術の開発という研究でございますが、これは国産と輸入農産物の関係とそ

の差別化ということを、やはり消費者の皆さんも非常に意識しておりますし、生産サイド、

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生産農家の方もそういったことを希望しています。そういった視点をどう酌み取っていけ

るような研究をするのかということ。

それから、私は遺伝子組換えの関係は、これはもう研究者の間ではけりがついている

のかどうかわからないのですけれども、消費者等への理解をどう促進をしていくか。先ほ

ど、1年に一度その発表をしているということでありましたけれども、私はその程度では

何年たってもとても進まないような感じがしております。この遺伝子組換え作物について

の理解やら疑念やら、そういったものをどう具体的に、年限も多少かけて中長期的に考え

ながら、解きほぐしていくのかということを一つ考えられたらいいのではないかというこ

とでございます。

以上です。

○座長 どうもありがとうございました。何か回答がありますか。

○研究開発企画官 今いただきましたコメントの 初の部分でございますが、もちろんこ

のプロジェクトですね、期間内に対象作物なり、あるいは課題なりが普遍かということは、

決してそういう固定的な運営はいたしておりません。例えば、私が担当しておりました

初の加工関係のプロジェクト、それからえさ関係のプロジェクトでございますが、例えば

加工関係では新たにパプリカでありますとか、業界からの要望が強い対象作物をつけ加え

たり、あるいは飼料関係のプロジェクトで、これ当初はサイレージ用ということで、イネ

にしてもホールクロップサイレージというところに絞ってやっておったわけでございます

が、昨今の情勢の変化を受けて、飼料米についても取り組むというモディファイは続けて

おりますので。それが十分かどうかというのはあるとは思いますけれども、できるだけス

ピーディーにその状況に合わせて、決してプロジェクトは固定的には運営しておらないと

いうふうに考えております。

○A委員 飼料米の話が今ちょっと出ましたけれども、この粗飼料多給によるというのは、

これはこれでいいんですが、日本の食料自給率を下げている飼料は、粗飼料よりはどちら

かといったら濃厚飼料でとうもろこしのグレインの部分なんだと思うんですね。グレイン

は日本の統計にはゼロとしか出てこないからほとんどつくっていないわけです。グレイン

を日本でつくるという非常にチャレンジングだけど、そういうテーマも農林水産省でやっ

てほしいなと思うんですよ。

なぜそういうことを言うかというと、私が今関係している帯広畜産大学なのですが、

昨年は夏が非常に暑くて、大学の圃場でとうもろこしのグレインがきちんとできているん

ですね。それで今、十勝の農家は新しくレリーズされた種だと言ってましたが、登熟期間

が短くて、北海道できちんと実ができるものを栽培始めたようです。去年は大学の圃場で

やったのでも、ちゃんとそのグレインがとれている。それから、今年はそういうことなら

240ヘクタールある圃場に一度大規模にやってみたらどうかと、私は非常に強く勧めて

います。温暖化でもって北の方が温度が上がっているというようなアドバンテージを利用

しながらでも、やはりグレインをとるというような研究も必要じゃないかと思うんですが、

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その辺どうですか。

○研究開発企画官 確かにA委員ご指摘のとおり、グレインというのはチャレンジングで、

ある意味研究者にとっても魅力的な課題ではないかというふうに思います。それで、この

プロジェクト、粗飼料のプロジェクトの中で直接というわけではございませんが、先日来、

畜草研の草地関係の研究者とディスカッションしておりまして、その中では従来、とうも

ろこしの育種の方向というのは、やはり消化性を考えて、茎葉重点、雌穂水はおまけとい

ったような方向で育種を進めてきたわけでございますが、その方向転換をするというふう

にかじを切ってございます。ですので、あくまでやはりサイレージ用という考え方ではご

ざいますけれども、実を重視する方向に育種の方向を少し変えるということで、今進めて

おるところでございます。

○A委員 やるのも大事だけれども、とうもろこしの育種はどちらかというと、世界的に

民間の方がぐっと進んでいるわけですよね。だから、メキシコのCYMMIT(国際トウ

モロコシ・小麦改良センター)やアメリカにはパイオニアハイブリッドなどもあるので、

何でも我々がゼロから始めるんじゃなく、いいものがあるならばそれを使いながらでもや

る度量が必要かという気もしますね。

○研究開発企画官 はい、ご指摘のとおりだと私も思っております。それで、特にこの粗

飼料プロジェクトの中で取り組んでいるとうもろこし育種は、やはり田んぼでつくれる。

これはパイオニアもやらないでしょうし、それから恐らくCYMMITも課題としては挙

げないと思います。

それからもう一つ、なかなかやはり外国産のとうもろこし品種では対応できない。特に

根釧地域の、あそこに合うものはなかなか外国産でもございませんので、その辺を主なタ

ーゲットに進めておるというところでございます。

○A委員 研究の進め方について、ちょっと伺いたいんです。 初のご説明で運営委員会

を比較的 近つくってやり始めているという話だったと思うんです。今日幾つか聞いた研

究がありましたが、これを横に並べて見たときに、運営委員会の間にどういう差異がある

のか、あるいは、どういう運営委員会がうまくいっていて、どういう運営委員会がうまく

いっていないのか。そこら辺比較してみるとどうなのかなと、ちょっと伺いたいと思いま

す。

○研究開発企画官 私、先ほど申し上げましたように、 初の加工・業務用というプロジ

ェクトと、それらその次の粗飼料というプロジェクトのプログラムオフィサー担当してお

りますが、運営委員会は基本的には関係の行政の方々、それから関係の学術関係者、それ

から関係の業界の方々と、基本的には構成はそんなに変わらないと思います。もちろん、

基礎型のプロジェクトは違うと思いますけれども。ただ、その運営委員会の議論のやりや

すさ、やりにくさという点ではかなり差がございます。

端的に申し上げまして、加工プロジェクトの場合は、やはりイネ、大豆、畑作物、そ

れから野菜というふうに並んでおりまして、それぞれ、もちろん業界の方来ていただいて

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いるんですが、全部についてコメントできる運営委員、外部委員の方はちょっとやはり少

し少ないというかですね。もちろん野菜については、野菜の関連の運営委員の方が大変有

益なコメントをしてくださるんですけれども、全体についてなかなか、その全体のマネジ

メントについてコメントをいただけるという機会は少なかったように思います。

一方で、えさのプロジェクトは、これはやはり出口が一本でえさをつくるというとこ

ろですので、もちろんいろいろな立場から、飼料作物の関係、あるいは畜産そのものの関

係の方々に運営委員に来ていただいておりますが、それについてはやはり出口が一つです

ので、非常にディスカッションはしやすかったという印象を私は抱いております。ちょっ

とお答えになっているかどうか、わかりませんけれども。

○H委員 今回、この中間評価を見せていただきまして、すごく幅広く多様なものと、密

に研究しているものがあることを感じました。皆さんの評価と同じようなこともあります

が、 初の低コストとか、あるいは2番目の粗飼料関係では、実際に現場の農家の方と接

していて、現地農業者、加工業者、豆腐業者と話し合いをしていく中で、これは現地の段

階で一部普及しつつあるということを感じていました。あるいは、もう全くの研究段階、

学術の論文の段階、研究段階でというような、別の面の研究がここ同時並行でありました

ので、ちょっと頭の切りかえを要するところがありました。

評価の段階では、非常に盛りだくさんの中でもう少し評価が、BのところをAに上げて

もいいのではないかなというようなことも感じました。農業者に接する仕事をしている私

としては現実に普及される、身近な試験研究を高く評価したいと思います。

環境問題については、もうここ10年ぐらいから農業は環境に悪いんだ、負荷を与えて

いるという考えが現場の中では強くて、やはり有機農業をここでは取り上げてますけれど

も、それはごく一部の農業者であり、多くの野菜生産農家が土壌消毒等を行い土壌中の良

い菌悪い菌をゼロにして、作物を育てています。その中で、いかに環境を考えた農業に取

り組んでいくかという研究があってもいいのではないかなと思います。

○座長 ありがとうございました。審議予定時間をかなりオーバーしてしまって申しわけ

ありませんでした。次に,この場でただいまご報告いただきました6課題について評価委

員会としての評価を下したいと思います。一応、私の方で技術会議の評価と本日の委員の

皆様の意見に基づき、評価専門員会としての評価を提案をさせていただきたいと思います。

まず、第1課題、「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定生産技術の開発」の

評価に関しては,評価Bにしたいと思います。ただし、この課題につきましてはF委員の

方からも出ましたように、今後の研究の方向性をきちんと提起した上でBを付けるのが妥

当だと思います。

第2課題の「粗飼料多給による日本型家畜飼養技術の開発」につきましては非常に優れ

た成果も出ていますので評価Aにしたいと思います。

第3課題、「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対策技術の開発」に

つきましては、社会・経済的な問題に関する研究成果が不十分であるのでBという評価も

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ありましたが、全体的に研究成果も出ていますし、研究推進も妥当で研究の必要性も高い

ということで、評価Aにしたいと思います。

それから4番目の「安全で信頼性、機能性が高い食品・農産物供給のための評価・管

理技術の開発」につきましては,非常にすばらしい成果が出て評価Sにも匹敵するぐらい

重要な成果が出ています。しかし,その一方で研究成果の産業化のところではなかなかう

まく進んでいないという意見もありましたが,評価Aにしたいと思います。

5番目の「土壌微生物相の解明による土壌生物性の解析技術の開発」、この研究につ

きましては基礎研究と応用研究面での成果の妥当性に関する論議はありましたが、基礎的

にも非常に重要な研究であり,研究成果も出ています。応用につきましては,今後どのよ

うに進めていくかと言う点で問題が指摘されましたが,評価としましてはAとしたいと思

います。

第6課題、「遺伝子組換え生物の産業利用における安全性確保総合研究」につきまし

ては非常に有意義な成果が出ており,社会的なニーズも高いということで、S評価にした

いと思います。いかがでしょうか。

もちろん、この評価につきましては、評価委員会として単にA、B、Cをつけるだけ

ではなくてコメントを付けて評価しますので,本日の皆さんの意見を入れて評価を行いま

す。特に異論がなければ次の課題へ進ませてもらいますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○座長 では、次の5つの研究課題の事後評価を行います。これは平成19年度末に研究

が終了する課題でございます。これも同じように3分で報告、7分質疑という形で進めた

いと思います。

では、説明をお願いします。

○研究開発課長 牛海綿状脳症、いわゆるBSEでございますが、BSE及び人獣共通感

染症の制圧のための技術開発ということでございます。総事業費43億円ございます。

仕事の内容につきましては、目標のところを見ていただきますとわかりやすいと思いま

すが、一つはBSE等動物プリオン病の制圧のための技術開発ということ。BSE関係で

は、まずその病原体でございますプリオン蛋白質の構造とか機能とか、基礎的な機構の解

明でございます。病原体の解明でございます。2番目がBSEの診断法の高度化、迅速化

を図ると。生前診断のためのマーカーを開発する。三つ目は異常プリオンの蛋白質の不活

化技術。これはわかりやすく言うと、今肉骨粉というものが今焼却されておりまして、こ

れを不活化することができないかという技術でございます。

それから、人獣共通感染症の制圧ということで、いろいろ人獣共通感染症はあるわけで

すが、高病原性鳥インフルエンザなどの診断技術の研究をしております。

たくさんの研究成果が挙がっておりますが、26ページを開いていただきますと、2

6ページのトップにBSE関係で特筆すべきものは、異常プリオン、非常に小さい病原体

でございますけれども、この検出は容易ではない。この検出を、いわゆる増殖技術を使っ

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て、PMCA法と称してますが、感度を上げて検出したいと。例えば通常のバイオアッセ

イ法の10万倍ぐらいの感度で検出可能でございます。これは何に使うかというと、ねら

いは発症前の牛の血液の中にそのプリオンが混入している可能性がある。それは通常であ

ればそれ検出できないんですけれども、検出精度を上げることによってそのプリオンを検

出し、結果的に生前診断をねらうということでございます。

それから、プリオンに感染したかどうかというのは、バイオアッセイやっているので

すが、通常のマウスを使いますと200日から300日ぐらいかかりました。これを遺伝

子組換えマウスで改良いたしまして、現在75日間ぐらいで発症するというマウスを開発

したというのがございます。そのほか、実際の牛にプリオンを感染させた実験なども行っ

ております。

それから、人獣共通の関係でいいますと、インフルエンザは型がいろいろございまし

て、亜型というのを判定しなくてはいけない。これ数日かかっていましたが、これを数時

間で判定するような技術を開発したと。この病気は蔓延速度が非常に速いですから、でき

るだけ早くその亜型を判定するという技術が求められています。結構、特筆すべき基礎研

究、あるいは応用に結びつく研究もあったということでございます。

残念ながら不活化技術の方は、試験管内のその不活化はできるんですが、実際の肉骨

粉の不活化となるとこれはかなり難しくて、まだちょっと遠いかなというような感じがい

たします。

それから、効果の明確性につきましては、この一連のBSEの研究がリスク管理のた

めに非常に基礎的な知見、あるいは情報を提供してくれたという意味では、ねらいという

のははっきりしているということでございますし、一方で鳥インフルエンザについても、

今、世界的流行が危惧されております新型インフルエンザ等の防発のためにも、鳥の段階

できっちり抑えていくための知見が得られていると。特に鳥の場合は、羽毛のところにそ

のウイルスがいるということがわかりまして、これが感染経路の究明のためには非常に有

効な知見だったということです。

それから、研究推進方法の妥当性につきましては、基礎的な研究と実用的な研究があ

る意味混在したプロジェクトになっておりました。そういうこともありまして、BSEの

研究一つとっても、いろいろな切り口での研究をしたということで課題が多かったという

こともございます。そうしますと、そのプロジェクト間の 終成果というところにいきま

すと、やや問題があったんじゃないかという感じがしておりまして、これはBという評価

をしております。

研究の意義につきましては、リスク管理措置という観点から、BSEの基礎的研究、

実用的な研究は非常に重要であるというふうに考え、実際にそういったリスク管理のため

に多くの知見を得たという意味では、この研究成果の意義はあったものと考えております。

評価ランクをAにしております。

以上でございます。

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○座長 それでは、委員の皆様のご意見をお願いいたします。

○F委員 この説明に対して、論理的に少しわからないところがあるのですけれども。成

果としては高度分析技術が開発され、不活性化の技術、生体でも検出できる方法が確立さ

れ、あるいはかなり少量で分析する技術が確立されてくれば、治療は大変難しいと考える

と、予防という概念から、この判定法の標準化が結構でき上がっていると思うのですが。

なぜそういうことが、この妥当性Bの中で出てきたのかということと、この高度に解析す

る技術の普及性、もっと手軽にできるのかどうかということを含めて、この研究も絞られ

た範囲で行なわれた中にこういうふうな評価法ができたわけですが、これをものすごくハ

ンドリングのいい方法に継続して改良していく予定はあるのですか。

あるのであれば、この推進方法の妥当性の中で、暗中模索でやっていろいろあったか

ら、一部その不合理なところもあったということが理解できるわけですが、この次の段階

をどうお考えになるのでしょうか。

○研究開発課長 まず、みんな悪いのか、みんないいのかという話で言えば、この種の研

究もたくさんの課題については特筆すべき研究成果も出たし、そうでないものも混在しち

ゃったよねというのが一つあります。その上で、課題数が非常に多くて取り組んだんです

が、今後は成果の継続、基礎的な研究もかなりありますので、これを絞って研究をしてい

きたいと考えております。継続すべきものは継続するという考え方で組み立てています。

そのときに、委員がおっしゃったように、つまびらかに私申し上げられないんですけれど

も、かなり絞って課題を設定をしてやっているところでございます。

そういうことから、Bとしたのはかなり欲ばった課題の設定をしてしまって、同じ研究

費というか資源を投入するに当たって、もう少しきちっと絞って、体制を絞って、あるい

は途中で見直してやれば、もっと効果が出たのではないかという、ややそういう反省も含

めてBに付したということでございます。

○F委員 私、なぜ言うかといいますと、BSEの問題、鳥インフルエンザの問題、こう

いうふうに一つの時代変遷の中で新しく出てくる食の問題における予期しない世界が出て

くるわけですね。これを先端技術とうまく組み合わせながら、いわゆる標準評価法をつく

り、あるいは高度分析表が開発されると。ですから、これをぜひBSE、あるいはそれが

生きて、インフルエンザのところにも生きていると思うのですが、こういうふうな中で精

査して、この推進方法の中でも是非考えていただきたい。次の問題が出てこないことを祈

りますけれども、必ず出てくる可能性が高いとするならば、ここはすごく謙虚に考えられ

ているんではないか。ですから、その中で一部大変な成果はあって、それが将来に生きる

というふうなことを考えると、別にここのところだけBにしたというのはいかがかと。

○B委員 私はBでいいと思っているんです。といいますのは、43億円の予算を有

効に用いて、確かに優れた研究成果を出していますけれども、たまたま昨日、技術会議の

ホームページを見ていたら、技術会議のデューティが明記されていました。技術会議の役

割は研究をうまくコーディネートすることであると書かれています。この研究では、BS

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Eだけでなくサルモネラからリステリア、どんどんどんどん課題広げていっていますよね。

この研究課題においてサルモネラやリステリアまでやる必要があったのかどうかというの

はちょっと疑問があります。鳥インフルエンザはやるべきなんだと思うんですけれども。

全体としてコーディネーションがうまくいっていなかったんじゃないかという恐れがどう

してもありますね。だからこれはBにしておいた方が良いのではないかということです。

ただ、問題は今後どうするのかです。これは恐らく独法の動物衛生の研究所が中心になっ

て、広く全国にいろいろな研究者を集めておられるんでしょう。全体の体制をどうつくっ

ていくかというのは重要で、今後どうするかをきちんと考えられた方がいいような気がい

たします。

○研究開発課長 はい、今後検討いたします。

○K委員 研究が19年度で終了ということですが、実際はこの高病原性鳥インフルエン

ザの問題というのは、アジア等で非常に大変だと思っております。後ろの方に、養鶏場に

おける防疫措置においては作業者の感染防止対策が必須であると出ておりますけども、真

っ先にこの病気に罹患しかねないのが、畜産農家等の生産現場の皆さんでございますので、

そこら辺の関係等について、やはりそういった問題に対する恐怖感を早く払拭するような

関係の研究を、まだ不十分でしたらまだまだこれから研究を進めていただきたい。そうい

ったところのことが、マスコミ等でも今改めて非常に関心を持っておりますので、引き続

き対応願えたらと思っています。

○座長 この課題は本年度で一応終了になりますが,こうした突発的な問題が発生した場

合に,いかにして早急に解決していくかが大切です。そのための研究のコーディネートの

あり方については今後十分に詰めていく必要があります。この点について分析していただ

いて、次期の課題につなげてほしいと思います。

では、次に2番目の課題の説明をお願いいたします。

○研究開発課長 それでは、次の課題でございます。安全・安心な畜産物生産技術の開発

ということで、総事業費4億円でございまして、17年から19年の3カ年でございます。

このプロジェクトは、要は今、畜産物生産をするときに、えさに抗菌性飼料添加物あるい

は動物性医薬品というのを使っておるわけでございますが、これはなるべく少なくしたい

ということでございます。そのときに、家畜の本来持っている免疫機能を生かしながら、

そういう効果を発揮できないかと。その際の飼料、及び飼料添加物というのを開発したい

ということ。

それから、薬剤を投与したときの特定の部位、例えば臓器とか組織に効果的にあるいは

選択的に作用するような薬剤、これドラックデリバリーシステム、薬剤運搬システムです

けれども、その方が非常に効果的なわけですから、この技術を開発する。さらに乳牛とい

うのは非常に今能力が高くて、たくさんの乳を出すわけですが、逆に乳牛に対して大変な

ストレスをかけている。ならば、泌乳 高ピークに牛に対して負担をかけないようにすれ

ば、牛の健康にも良い訳で、そのための生体メカニズムを解明しようと、こういう仕事で

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ございます。

成果といたしましては、免疫機能を亢進するような乳酸菌を哺乳期の子牛に与えたとこ

ろ、非常にいい結果を出したこと。あるいは、牛の乳房炎といって、乳を出すと乳房が炎

症を起こす病気がございます。これを治すための有効な鼻腔に摂取するワクチンを実用化

できるようなものも開発しました。ただ、実証試験については十分に行われなかった面も

ございます。経営評価という面でもまだ課題を残しておりますので、全体としてはBとい

う評価をいたしました。

それから2番目、30ページでございますが、効果の明確性ということでございますが、

これは今、目的で申し上げたようなことをねらいとして研究開発を進めたのですが、先ほ

ど申しましたように実用化件数がやや少ないということもありまして、全体としてはBと

いう評価をいたしました。

さらに、推進方法の妥当性。これは民間企業あるいは大学、公立試験所、そして独法と

連携を踏みながらやってきたというところはよかったのですが、研究者と実証する研究者

との連携が少しうまくいっていない面もあるということなどもあって、課題間にやや優劣

の差ができたと。それから、成果の資金の配分にも、やや重点化に問題があったのではな

いかとの反省があり、これもBというふうにしました。

それから、研究成果の意義については、もう薬剤を少なくするというのは消費者ニーズ

でもございますし、社会的要請は高いということでAといたしました。

以上でございます。

○座長 では、委員の皆様の意見をお願いします。

○F委員 この課題は、期待される成果としては大変高いんですが、課題を設定するとき

に、こんな軟弱な課題といいますか、 後は乳酸菌で、リポソームでDDS云々というの

が、初期に設定するときに議論にならなかったのか。こういう特徴のない、医学とか食品

の中で広く言われているものを何か家畜にちょっと試したというような程度の課題であっ

て、課題を設定するときに本当にそのアウトカムを目指して十分議論された課題なのかと、

私はこれを見たときに思ったのですが、その辺はどうなのか。課題設定の時点から、かな

り問題があったのではないか。きつい言い方しますけれども、そう思えて仕方がないので

すが。

○研究開発企画官 そういう意味では、委員のご指摘のとおりだと思います。確かに飼料

としては、乳酸発酵させる、いわゆるプロバイオテックスですよね。これを畜産に応用す

るというのは、視点としてはそれなりに新しかったんではないかというふうには思います

が。それからDDSは、もちろんいわゆる人間の方の世界ではかなり進展しておりますの

で、ちょっとその辺のところの外部のいわゆる畜産なり農学外の情報収集というところに

甘い点があったんではないかなということは感じます。

ただ、ここにも書いてございますように、ここの部分で私比較的誇れるのは、やはり

プロバイオテックスのところで、それがエコフィードといったような形で、養豚のリキッ

31

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ドフィーディングという、かなり実用に近いというか、既に先ほどご紹介ありましたけれ

ども、農業新技術2008といったようなところに選ばれるような技術も生み出しており

ますので。当初の設定が、志に比べて精査が足りなかったというところは反省すべき点と

してやはりあると思いますが、その中で一生懸命やっている部分は確かにあったというふ

うには私は考えております。

○F委員 世界的にも議論の対象で、その辺についての関係から、こういう成果が出てい

ると。しかし、それが議論の中で、初期の目的に達した手法なのかどうか。抗菌剤を入れ

なくても云々という世界で、かなりクリアできるという話なのかというのは、試したとい

うことは悪いとは思っていないし、成果が出たということはある程度理解できるわけです

けど。それともう一つ、何かこれに迫るような課題にチャレンジしても、あるいはその中

から一部、次につながる成果が出てもよかったような気がします。

○I委員 今のご意見に私もおおむね賛成なのですが、意義があるのかという点を一つご

質問させていただきたいところです。

それから、昨今のアメリカなどでのニュースでもありますように、いわゆる飲料水に大

量な抗生物質とか成長ホルモンが流れ出ているというのがありますよね。そういうことか

ら考えると、この成果の部分が、人用医薬品使用量2.5倍にまで削減したというのは、

当初の目標から比べてどの程度だったのか。つまりもっと削減することをねらっていて、

そこまで至らなかったのか。どのくらい減ったのか。その辺、もしデータがございました

ら、お伺いしたいと思います。というのは、先のご質問も非常にうなずけるところで、3

年というのはちょっと短かったかなと思います。次の展開は何か考えておられるのかどう

か。そういうことを含めて、できればそれをお伺いできればと思います。私は、書き方に

よってはかなりインパクトのある研究だったはずだと思うんです。それが先ほどの委員か

らお話があるように、落としどころは結局今ひとつもったいないかなという気がしており

ます。

○E委員 中間自己評価のときにも思ったんですけど、やるべき基礎研究と現場への適用

技術を混在させてしまっているところがあるのではないかと。せっつかれていることはわ

かるんですが、試験というのは設定する際に、やはり基礎研究で徹底的にやることできち

んと仕分けをして、現場への適用技術のところは、ひょっとしたらローカルな研究機関や

農場にお任せする、あるいは共同研究という形を明確にして、現場での研究のウエートを

高くして、余り技術会議の方でしゃしゃり出ないとか、ちょっと言葉が悪いんですけど、

そういうような切り分けをした方がいいのではないかなという印象でございます。

○研究開発企画官 まず、現在、私ども技術会議事務局では、基礎型とそれから開発型と

いう部分は明確に分けて、プロジェクトのマネジメントをしようと思っております。今年

度から実際にそういう方針で進めておりますが、このプロジェクトを立てたときには、ま

だそういう明確な方針はございませんでした。ですので、これ中身的にはご指摘のように

基礎研究が必要な部分と、それから開発研究をどんどん進める部分というのが混在はして

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おります。その辺は、当時のプロジェクトの立案の欠陥であったんではないかというふう

に思います。

ただ、そうは申しましても、では、旗幟鮮明にして、これを開発型と基礎型に分けると

いうことを考えますと、このプロジェクト自体はやはり明確に開発型であると、私どもは

考えました。

それで、先ほどF委員からご指摘ありましたように、まだシーズの熟成なり、それから

シーズに関する情報収集なりというのが、やはり不足しておったということが考えられま

して。それで当初、5年計画でスタートしたものでございますが、開発型のアウトカムを

目指す研究としてはちょっと到達しないのではないかということで、3年に短縮して、幾

つかはアウトカムにつながる成果は得られておりますけれども、その基礎的なデータをあ

る意味積み重ねると。で、次につなげるといったようなところで、3年間で終了するとい

う運営をしたわけでございます。

それから、先ほど2.5倍というお話ございましたけれども、これは試験場の中のデー

タでございまして、現場実証のデータではございません。

○座長 このプロジェクトの評価は、なかなか難しいと思いますが,研究のシーズをきち

んと分析して、どういう研究戦略目標を設定して,何をいつまでに何処まで達成するかと

いう研究戦略のロードマップの描き方に問題があるのではないかと思います。

では、ちょっと時間がオーバーしていますので,次の課題の説明をお願いします。

○研究開発課長 33ページでございます。農林水産生態系における有害化学物質の総合

管理技術の開発ということでございます。総事業費18億9,000万円、15年から1

9年まででございます。

この研究の概要は、カドミウムとかダイオキシン、あるいはドリン系農薬等のいわゆる

有害化学物質について農林水産生態系においてどういう状況になっているか、動態の把握

ですとか生態系への影響の評価、さらにはバイオレメディエーション等を活用してその分

解・無毒化ということをねらいとする研究開発でございます。

研究目標につきましては、1としてまず動態の解明、2番目に影響評価とリスク評価法

の開発、3番目に有害化学物質の分解あるいは無毒化、さらには農作物可食部への移行抑

制技術等々をねらいとした研究を実施しております。

研究の達成関係でございますが、例えばカドミウムの汚染の水田を対象に、実用的な

ファイトレメディエーション、植物を用いた汚染土壌の浄化と申しましょうか、その技術

を確立したということ。あるいは、化学洗浄法もあわせて開発したということ。さらに、

なかなか分解しにくい農薬について、複合微生物による分解技術の開発等で効果があった

ということでございます。研究成果につきましては、原著論文でも150以上公表してま

すし、また化学洗浄法については実用化されております。

それと2番目、34ページでございますが、効果の明確性ということでございますが、

化学洗浄法なりファイトレメディエーションによる汚染水田、土壌の修復技術というのは、

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もう既にこの技術そのものが農水省の助成事業の一技術として採用され、現場に普及しつ

つあるということ。さらにディルドリンの残留基準につきましては、この研究で得られた

成果が国際的にも評価されているというふうな状況でございますので、全体としてこの評

価についてはAといたしました。

推進の妥当性につきましては、民間も積極的な参画し一緒にやっております。また、

現地検討会などを毎年開催し、また現場での展示あるいは行政部局とのやりとりも割と積

極的に行ってきた研究であろうかと考えております。そういう意味でAという、非常に連

携よく研究が進められたのではないかと考えております。Aと評しております。

研究成果の意義でございますが、基礎的な研究分野ではDDT分解系の構築などにお

いて、国際的にトップレベルの成果として認められているということ、一方カドミウムや

ドリン類による汚染については、得られた研究成果が現場にも普及しつつあります。それ

から、リスク評価・低減にかかわる多くの成果が、実際の行政部局の施策立案にもかなり

使われて貢献しているという意味で、研究成果の意義は大きかったと理解しております。

評価ランクはAとしております。

以上でございます。

○座長 委員の皆様方、ご意見をお願いいたします。

(なし)

○座長 よろしいでしょうか。

では、次の課題に進ませていただきます。第4課題の説明をお願いいたします。

○国際研究課長 それでは、国際研究課長の須賀でございます。どうぞよろしくお願いい

たします。

次は、地球規模水循環変動が食料生産に及ぼす影響の評価と対策シナリオの策定という

研究課題でございます。

アジア地域では、モンスーン気候や人間活動に由来する水循環の変動がコメ生産に大き

な影響を与えておりますので、メコン川流域というコメの主要産地を対象といたしまして、

水資源がコメ生産に及ぼす影響を分析し、水と食料の統合モデルを開発して、そこから得

られる水循環変動がもたらす影響や緩和策の有効性を比較して、対策シナリオをつくろう

というものでございます。本年度で5年間のプロジェクトの期間が終了いたします。

具体的な研究の目標といたしましては、大きく四つに分かれますが、水循環変動モニ

タリング、これは衛星データを用いての森林分布の把握や降雨流出過程のモニタリング等

を行いまして、森林流域の水資源保存量を推定いたしました。それと、2番目に水循環と

食料生産の相互影響評価ということで、タイの東北部を対象といたしまして、イネの生

育・収量モデルを用いての影響評価を行いました。3番目に、農業用水と水循環変動の相

互影響評価。そして、 後に水循環変動の影響を 小化するためのシナリオの策定を行い

ました。

具体的な評価にまいりますが、研究目標の達成度等でございます。いろいろな各種のモ

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デルを開発しまして、しかもそれを統合いたしまして、AFFRC技術会議の水-食料統

合モデルと名づけましたが、それを開発いたしました。このモデルは従来のモデルに比べ

て非常に精度が高くて、コメの生産と水管理、さらには政策のシナリオを結びつけるよう

な総合的なモデルになったんではないかなと、私たちは評価をしております。水循環変動

がコメの生産量や価格に及ぼす影響評価が可能となりまして、各国で行う政策立案に寄与

するような対策シナリオも策定できたと思っております。論文も68本という多数の公表

成果をプロジェクト期間で得ておりまして、国際ワークショップを3回行っております。

こういう情報発信にも大分努めまして、研究目標の達成度は高いのではないかなと考えま

して、ここの部分は評価をAとさせていただきました。

次に、研究が社会・経済等に及ぼす効果の明確性でございますが、水供給の変動が生産

量に及ぼす影響を量的に評価して、その生産量の増減がその年や翌年以降の価格、在庫と

か、いろいろなものにどの程度影響を与え、変化をさせるかを予測するような、そんなよ

うなモデルを用いた分析によりまして、政策提言に結びつくいろいろな知見が得られたと

思っております。各国の、あるいは貿易国の行政部局において、食料需給の平準化に関連

するような施策の立案に活用できるということが期待されます。ただ、割合その社会経済

的に及ぼす効果というのが、余り直接的に自明のものではないのかなということもありま

して、評価はBとさせていただいております。

研究推進方法の妥当性でございますが、これはいろいろな各チームのリーダーからなる

リーダー会議を2カ月に1回ごとに開催して進行管理を行いましたし、また組織横断的な

データ連絡会議やモデル連絡会議というのも随時行っておりました。そういうプロセスを

経て、プロジェクトの一体的な推進が図られたと思っております。推進会議を通じまして、

外部有識者4名による評価も毎年度行いまして、結果的にこういった進行管理の徹底によ

って課題間の緊密な連携が図られ、プロジェクトで得られた多くの成果が一つのモデルに

集約できたということで、評価はAとしております。

研究成果の意義でございますが、今まで十分なデータが得られていなかった地域の気象

等のデータが整備されまして、対象流域の水循環過程や水収支が明らかになったこと、こ

れがまず第一の成果でございますが、そういうことを通じまして地域的な影響予測の精度

が大きく向上されたと。これらは東南アジア、メコンデルタの地域を対象として研究いた

しましたし、各地域によっていろいろな事情が違うんですが、この手法というのは他の地

域を対象とする研究にも応用は可能であろうと思われます。そういう意味で、今後の地球

規模での影響評価に寄与するものだと思っております。本研究の成果は関係国での食糧確

保、なかんずく日本にとっても食糧確保に資すると思いますし、我が国が行う経済協力の

施策にも貢献するものとして、研究成果の意義は高いということで評価はAといたしまし

た。

以上でございます。

○座長 では、委員の皆様のご意見、ご質問をお願いいたします。

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○I委員 水の問題は非常に重要だと思うので、興味深い研究だと思うんですが、その割

には自己評価のところだけではなくて、参考資料のところが余りに淡白であると思います。

私からするとこの特定の地域だということは十分理解しておりますが、もしそうであるな

らば、例えば前の研究のところにありましたように、オープンにしたデータに対するアク

セス数とかそういうものが多ければ、それなりにインパクトがあると思いますし、それか

らアジア地域における農業に大きく貢献するはずだと思うので、その辺が今ひとつ伝わっ

てこない。折角5年研究されているので、その辺の情報が淡白過ぎではないか。この水の

問題は本当に重要な問題だと考えれば、研究成果の意義があるんであれば、社会経済等に

及ぼす効果の明確性は私はAであるべきだと思いますし、そこはこういう問題の場合は結

構連動するかなと個人的には感じているんですが、いかがでしょうか。

○国際研究課長 その社会・経済的なところというのは、余り内部の事情をこういう場所

で言及するのもなんですが、私個人としてはAにしてもいいのかなという気もいたします

が、いろいろな横並びとかあって、重倉さんあたりがそこら辺事情は一番詳しくご存じな

んだろうと思います。

あと、その成果に関しましては、確かにご指摘のようなところはございますが、国際

ワークショップを3回開いたと申し上げましたが、これで関係者、関係国の人たち海外か

らも来てもらいまして、およそ直接的に役立つような分野、国の人たちにはデータを共有

して役立てていこうということはやっておりました。

○D委員 興味深い研究ありがとうございました。全体的にもわたる点で、2点コメント

させていただきます。

論文等の輩出という点で、いろいろな研究分野たくさん出ているんですけれども、知的

財産をやっている私の立場からすると、特許出願とか海外出願が1個も出てこない。この

後のゲノムが出てくるかなと期待するところなんですが、そういった意味で、論文だけが

成果ではないということと、あと対策シナリオを作成されたことを、後発開発国でも使え

るようなソフトにしてあげるとかしたらどうか。そういうことをすれば社会経済的な効果

を明確に訴えられるのではないかというふうに考えました。だから、1点目は全体的に知

的財産化するという発想が割とまだ薄いなというところが指摘したいところです。

2点目ですけれども、効果の主張に数字が少ないということで、これは全体的に言える

のですが、ニーズがどうだかというのがわからないときに、達成率と言われたって評価が

出るわけではない。こういった意味で、もっと数字を多様化して説明をしないと、国民に

は全くわからないというところが全体を通じて感じるところです。厳しいことを言います

が、非常にいい研究をされていますので、もう少し出し方を変えられたら、もっとアピー

ルされると思います。特にキットの開発という、PCR-DGGE法で土壌の微生物の標

準解析手法とか開発されたのであれば、こういったものもキット化されて後進国に提供す

るとかして、そうすれば日本の農産物も外に出ていけるチャンスにつながるかもしれない

ので、ぜひ知的財産を生かしていただければというのが感想です。

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○座長 この課題に限ってのことでありませんが知財の問題に関して重要な指摘をいただ

きました。これからは,研究成果をどのように知財化していくかが課題になると思います。

この研究に関して言えば、やはりどういう研究成果を関連国に出せるかが重要です。単純

な予測結果のデータだけではなくて,開発したモデルをパッケージ化して、それぞれの国

で操作できるようにデータベースと連動して使うとか、そういう工夫が必要になるという

気がします。

よろしいでしょうか。

(なし)

○座長 では、 終課題の説明をお願いいたします。

○先端産業技術研究課長 お疲れのところですが、 後ですのでよろしくおつき合いくだ

さい。

後の課題ですけれども、これはイネゲノムの解読の成果を次のステップにつなげよう

というポストイネゲノムの研究になるわけです。

この研究は、研究目標のところをご覧いただきたいと思いますけれども、複数のプロ

ジェクトが相互に連携しながら同時に並行的に進められているという性格のものでござい

ますが、大きく分けまして四つのパーツからなっております。

一つは、(1)にありますようにリサーチツールですね、研究材料の整備を図るとい

うもの。それから(2)にありますように、遺伝子の機能解明を図るというもの。それか

ら(3)にありますように、マーカー育種で実際に作物づくりを始めてみようというもの。

それから(4)にありますように、イネ以外のものについても研究を進めていこうという

ものから成り立っているところであります。

研究成果についてでございますけれども、ちょっと簡単にわかりやすくしたものを資

料2-2の評価資料の200ページ以下に入れておりますので、ちょっとこちらの方をご

らんいただきたいと思います。この研究は、今申し上げましたほとんどが基礎基盤の研究

になりますので、その成果の評価に当たりましては、国内の 先端の植物科学者の皆様か

らピアレビューという形で評価を受けております。

まず、200ページでございます。これは成果を数字でちょっとあらわしてみたもの

ですが、4番目の○から下が研究材料の整備の成果でございますけれども、特定の遺伝子

と形質との関係を調べるために必須でありますイネ変異系統の作出ですとか、特定の形質

の発現に複数の遺伝子が関連していることを突きとめますQTLのために必要なマイクロ

アレイといった、そういったものの整備をしております。これは我が国の植物ゲノム研究

の基盤となっているものでございまして、これだけの規模の、5万系統ですとかこういう

ものですけれども、これだけの規模で、しかも使いやすさを追求したものというのは世界

にも例がなくて、アメリカ、中国などにおきましても、この日本での手法というものをま

ねて整備が始まっているという段階にあると。そういう意味では、トップランナーだとい

うふうに思っているところであります。

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次に遺伝子機能の解明でございますけれども、19年3月現在の数字でございます。

この1年間でまたふえていると思いますけど、ちょっと1年に1回しか把握していません

ので、19年3月末現在で書いておりますけれども、100個の遺伝子機能を解明いたし

まして、そのうちの70につきまして、先ほど生越先生のお話にありましたように特許取

得出願につなげているところでございますし、このほか、下から2番目の○にありますよ

うに、手法プログラムにつきましても26の手法プログラムについて特許取得出願をして

いるところでございます。また、マイクロアレイにつきましても開発いたしまして、我が

国の植物学研究者の用に供しまして、ヒトゲノムでもマイクロアレイをつくってますけれ

ども、聞くところによるとヒトゲノムのマイクロアレイの10倍ぐらいの利活用が図られ

ているということを聞いているところでございます。

続きまして201ページでございますけれども、では具体的にどのような機能を解明

したのかということでございます。書いてありますように、ちょっとこれは行政サイドの

ニーズに照らしたものでございますけれども、多収性ですとかバイオマス量の増加ですと

か、環境ストレス耐性ですとか、そういったものに役立ちます機能が解明されているとこ

ろでございます。

ここでちょっと注目していただきたいのが、この研究成果が掲載されている雑誌でご

ざいます。サイエンスですとかネイチャーですとか、プラント・セルといった世界の一流

の雑誌、こういったところに結構掲載がされておりまして、国際的なこれらのトップ誌に

掲載された我が国の植物分野の研究のうちの3分の1が、このプロジェクトから出ている

成果だということでございます。中には、右側の生理機能の真ん中にありますジベレリン

反応のサイエンスの2003年というところにあります研究につきましては、サイエンス

誌のブレイクスルー・オブ・ザ・イヤーに選ばれまして、品種改良にとって重要なステッ

プとなるものというふうな評価をつけて公表されているというものでございます。

このように、本研究の肝であります遺伝子機能の解明におきましては、非常に高い評

価を世界的に頂いているというものでございます。

一方で実用開発であります品種開発、それを次のページ、202ページに入れており

ます。こちらの方は、実はこのプロジェクトは平成10年から始まっているものの、この

実用化の方については17年からのプロジェクトになっています。17年から21年度ま

での予定でプロジェクトを立ち上げたわけでありますけれども、この成果が既に出ている

ものがこんな感じになっているわけであります。これまで10年程度かかっていた品種改

良を3年程度に短縮して行うことができたということで、品種登録まで至った、①のよう

に短稈コシのように品種登録まで至っているものも出ているなどですね、一部で21年の

目標に対して19年末段階で成果出ているというものもあるところであります。

現在の品種改良の主流もマーカー育種になっているところでありまして、これらの成

果、大分蓄積されていますので、今後、一気に画期的な品種ができてくるんではないかと

いうふうに思っているところでありまして、先ほどF委員の方からありましたように、次

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のゲノムプロジェクトにつながるものの成果になっているというふうに思うところであり

ます。

それで、こちらの方の資料に戻っていただきまして、次に42ページをお開きいただ

きたいと思いますけれども、そういうこともありますので、研究成果としてはSという評

価をつけております。

次に、社会・経済に及ぼす効果の明確性ということでございますけれども、これは成

果からすればSでもいいんですが、評価の中で43ページの上の方ですか、「また」とい

うところで書いてありますように、プロジェクトの研究成果そのものは大変優れたもので

あるわけですが、その一般への普及といいますか、こんなすごい成果が出ているというこ

とが十分普及されていなかったという面があるんじゃないかと。これは研究サイドという

よりも、我々技術会議の事務局サイドの問題でもあるわけですけれども、そういった反省

点も踏まえまして、また、それからこれらの成果が実際に実用品種につながってくるのは

これからだということもありますので、Aという評価にしております。

後に研究推進方法でございますけれども、本プロジェクト、今申しましたように複

数のテーマが並立して進んでいるものでありますけれども、それぞれのプロジェクトリー

ダー同士が定期的に、あるいはアドホックに連携を取り合って、また相互の研究成果・研

究材料を利用し合うことによって成果が上がってきたものというふうに評価されます。

また一時的に、3番の(4)でありますが、研究支援のところでありますが、一時的

に人手や試料など投入する必要が生じた場合に、研究支援体制が講じられていたというこ

とでございます。特に若手の研究者が、研究をするときにどうしても壁にぶち当たること

があると思いますけれども、そういったものをベテランの研究者が支援するといったサポ

ート体制が図られていたということもありまして、また一方で新たな知見が得られるたび

に研究見直しを行って、打ち切りあるいは手法を変えるといったことをやってきた結果、

これらの成果が上がってきたのではないかというふうに評価されたと思われまして、評価

ランクSとつけてございます。

以上のような感じで、トータルといたしましてはいい成果が出ているんではないかと

いうことでSランクということにしているところでございます。

以上でございます。

○座長 では、委員の皆様からコメント意見をよろしくお願いします。

○F委員 今、新井課長がおっしゃったとおり、これは大変高い評価のし得る、ヒトゲノ

ムサイエンスと対比できる成果だというように思います。前々から育種というような新し

いカテゴリー、しかもそれでしっかり実績が出ているというような中で問題ないわけです

が、これからこれをどう広げて、イネをはじめ他の植物に、シロイヌナズナの研究とあわ

せてどう活用していくかというような中で、私はこれだけの成果をお出しになったのだか

ら、次のステップ、いわゆるポストゲノムの世界の中で明確に課題を設定しながら、社会

貢献のできるプロジェクトにしていただきたい。特にバイオマスの世界があり、いろいろ

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な課題がある中で、この基盤技術は絶対に生かせるはずなんで、次のいろいろな展開の中

でバイオマス、あるいはバイオ燃料の世界の中でも、農林水産省が中心になって強いリー

ダーシップを持ってやっていただくことに、この研究は 大限に生かせることと思います

ので、ぜひ期待しておりますので、頑張っていただきたい。

○先端産業技術研究課長 F委員はよくご承知なので、あえてコメントすることありませ

んが、20年度から新しいプロジェクトを立ち上げますので、またよろしくお願い申し上

げます。

○座長 以上で、事後評価対象課題、5課題の審議を行いました。ここで全体を通しての

意見、また事後評価のあり方を含めて、何かご意見があればお伺いしたいと思います。

○F委員 いわゆる課題が終わったと、よく国の中でも議論されるわけですが、課題を採

択するときには一生懸命なのですけれども、終わった後、それをどう次に展開し、どう生

かすかというようなことが、いわゆる納税者にとっては大変重要なところであって、お金

を注ぎ込んだのだから、期間が終わったから終わりではなくて、成果の出ていないものは

先ほどから議論があるように精査して、どうやって継続して実績を挙げていくかというよ

うなことをぜひ考えていただき、いわゆる継続性のある研究で大きく社会還元できるよう

な方向に向けて、またお考えいただければと思います。

○座長 よろしいでしょうか。それでは、事後評価の5課題につきまして、この評価専門

委員会としての評価を提案したいと思います。

まず、第1課題の「牛海綿状脳症及び人獣共通感染症の制圧のための技術開発」につき

ましては総括評価をAにしたいと思います。

それから第2課題の「安全安心な畜産物生産技術の開発」ですが、これにつきまして

はかなり論議がされたところでありまして、この課題につきましては,優れた成果が出る

一方で,成果が不十分な課題もあり,全体として当初予定された成果が出なかったのでは

ないかという論議もありました。そのため,この課題の評価はBとさせていただき,課題

の設定と取り組み方法、それからプロジェクトの管理のあり方について,十分検討してい

ただくという注文をつけさせていただきます。

それから第3課題「農林水産生態系における有害化学物質の総合管理技術の開発」に

つきましては、総括評価はAにしたいと思います。

それから第4課題「地球規模水循環変動が食料生産に及ぼす影響の評価と対策シナリ

オの策定」につきましても重要な研究成果が出て、途上国等に技術移転できる可能性があ

る成果であるということでAにしたいと思います。

それから5番目の「有用遺伝子活用のためのイネゲノム研究・ゲノム育種による効率

的品種育成技術の開発」につきましては、皆さん非常に優れた成果が実現できたと高い評

価を下していますのでSで評価をしたいと思います。

以上が5課題の評価ですが,F委員から意見がありましたように,終了課題につきま

してはこれですべて終わりという形にするのではなくて,やはりこれだけ税金を投入して

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研究を実施しましたので,この成果を生かして次の課題につなげていって欲しいと思いま

す。特に問題点があった場合は,これを克服して次の課題の計画に生かしてもらいたいと

思います。

○I委員 F委員からも 初にお話があったと思うのですけれども、イネゲノムの業績を

どういうふうに飼料の研究等に使っていけるか。こういうところも終了課題の次の課題で、

実用上、開発上どういうふうに生かされるかというのは非常に重要だと感じています。そ

の評価書を拝見したのですが、評価書というのは今大学でも苦しい思いでやっているとこ

ろで、研究の担当として私も非常につらいところなのですが。

一つご提案ですけれども、横断的な研究成果の利用という欄が、恐らくあるといいか

なと思いました。これは大学の科研費でも同じですが、それがあるとあっちでも、こっち

でも金をとっているというように逆に誤解されがちなのですが、それだけの高い評価を得

ている研究成果というのは、こちらの基礎研究はこちらの応用あるいは開発に役立ってい

るという部分も高く評価されていいのではないかと私は感じています。

その理由は、例えば先ほどはイネゲノムのインパクトファクターに圧倒されましたけ

れども、そういう意味では実はSではなくてAの可能性があるんではないかと個人的には

感じています。というのは、私はアグリ・インパクトファクターを主張している人間でし

て、インパクトファクターというのはメディカルサイエンスの人たちに操られているとい

う、そういうところがございます。是非アグリ・インパクトファクターというのがいつか

早くできるといいなと個人的には感じております。自分の論文が評価されているのは、や

はりアクセス数だと思いますし、自分の論文が他人の高いアクセス数のジャーナルに載っ

たからといって、自分の論文が評価されているわけじゃないわけですよね。そういうこと

を考えると、余りインパクトファクターとかジャーナルの名前を前面に出すより、むしろ

農林水産省が研究された成果がアメリカで新聞に出るとか、どこかの企業でそれを採用す

るとか、そういうことの方がずっと重要で、それをどうやってデータベース化して評価に

つなげるかということも非常に大きなプロジェクトではないかと感じております。 後の

農林水産省のある意味看板の課題で、業績を拝見してちょっと感じたので、時間を延ばす

結果となりましたが、非常に高く評価した上でのコメントとしていただきたいと思います。

○座長 今のI委員の指摘は、非常に重要であると思います。研究成果がいかに他分野で

活用されていくか、専門を横断した研究成果の活用という評価の視点をどう考えるかとい

う問題です。

また,うちの大学でも論議しているのですが,農学分野のインパクトファクター,すな

わちアグリ・インパクトファクターをどう作り上げるかという意見があります。これは,

大学、農水を含めて、これからのテーマになってくるという気がしています。

これから、この研究成果の中間成果と事後成果につきまして、今日の皆様の意見をもと

に 終的な評価をつけたいと思います。評価の内容につきましては,技術会議と私の方で

文章を含めて検討して、委員の皆様にメールでお流しして、修正意見をいただくという形

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で確定したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

やはり私が座長をやると、会議が延びてしまいましたが,本日の審議事項は全て終了し

ましたので、今後の手続等について事務局より説明をお願いします。

○事務局 どうもありがとうございました。11課題に関しまして評価意見をいただきま

した。総括評価ランクにつきましては、今、明確に座長からまとめていただきましたし、

また総括評価の文言につきましては、私どもで本日いただいた意見をもとに作成したいと

思っております。また、念のためでございますが、個別の評価項目につきまして、自己評

価書に書き込みました評価ランク、各委員からは一部異論もございましたが、当委員会と

して修正をするほどのご意見ではなかったと思いますので、それらの指摘を指摘として盛

り込み、あるいは場合によっては若干省略させていただくものもあるかと思いますが、そ

うした記述をいたしまして、委員の皆様にメールで紹介をさせていただきたいと考えてお

るところでございます。短期間で確認をお願いすることになろうかと思いますが、25日

の農林水産技術会議に評価結果を報告したい、また31日までに総務省に提出したいとい

う事情もございますので、どうぞご協力をよろしくお願いしたいと思っております。

この後の手続に関しましては以上でございます。

○座長 次に追跡調査の内容説明を手短にお願いします。

○事務局 一気呵成ではなく、はしょってご説明します。

本日、評価方法のところでご説明いたしました研究基本計画の検証、競争的資金による

研究の課題評価や追跡調査につきましては資料3のとおりでございますので、これを報告

申し上げる次第でございます。研究基本計画の検証、競争的資金の課題評価のうちの高度

化事業の部分、これらにつきましては1月15日の技術会議に報告してございます。また、

追跡調査は昨年11月20日の技術会議に報告し公表しておりまして、現時点で公表され

ていないものは指定試験事業の評価結果だけでございます。本来、技術会議報告とあわせ

て当評価専門委員会にも報告したかったのでございますが、会合を1回も開かずにいきな

り新委員に資料だけお届けするということは失礼と考えまして、本日報告させていただく

次第でございます。ご了解をいただければありがたいと思います。資料を後ほどご覧いた

だきまして、ご質問などありましたら、どうぞ事務局までお問い合わせいただければと思

います。

資料3については以上でございます。

○座長 これで全ての審議は終了しました。

以上で本日の審議はすべて終了しましたので、議事進行は事務局の方にお返しします。

よろしくお願いします。

○事務局 座長、議事進行どうもありがとうございました。冒頭、座長からご説明ありま

したとおり、本日の会議につきましては、議事要旨及び資料を公表させていただきます。

議事要旨につきましては、事務局で作成次第、皆様にチェックしていただき、その後イン

ターネットで公表とさせていただきます。

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以上でございますが、何か総務官ございますか。

○研究総務官 大変有意義なご意見をたくさんいただき、ありがとうございました。

午後4時52分 閉会

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