アウトカムと推奨文について20151104 1

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アウトカムの重要性と推奨文作成について

2015/11/04

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湯浅秀道相原先生のブログ・ Facebook を改変

診療ガイドライン中級編2

Mind2014 マニュアル p162 推奨文草案の例を使って、推奨文作成のポイントを勉強します。

本スライドは、例は Minds を使用しますが、考え方は、 Minds2014 に従わず、 GRADEアプローチ・ IOM などの、一般的な考えに従います。

Minds2014 による推奨文作成に関しては、本スライドでは、言及しません。

Mind2014 マニュアル p162 推奨文草案の例80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、総死亡率低下、 ADL 保持、脳出血防止を考慮した場合、 6 時間以内の rt-PA 投与は勧められるか?

Minds2014 では、以下の推奨文の草案となっておりますが、これの説明は行いません。

80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、総死亡率低下、 ADL 保持、脳出血防止を考慮した場合、 6 時間以内の rt-PA 投与を提案する。

以降のスライドで記載しているアウトカムの重要性とエデンスの質は、 Minds2014 とは異なります。採用論文は、「 3 時間を越えた」という点で、若干の非直接性があります。

メタ分析の結果

6 か月後の総死亡率: RR 1.01(0.91-

1.13)治療効果なし

6 か月後の依存性: RR 0.93(0.82-1.06)

1 週間以内の脳出血: RR 4.43(2.07-

9.48)

中等度

高い

重大

重大

アウトカム:効果推定値 確信性 重要性

治療効果なし、 6 か月後の ADL ・自立性  mRS 0-2  これに対して、パネリストでアウトカムの相対的な重要性の判断が異なる。

「 1 週間という短期に、脳出血例の多くが死亡するという害( NNH 17, 95%CI:14-22 )が増える」ことの確信性は高い。

各アウトカムの効果指標に相対効果を使った比較

図は、相原先生ブログより

6 か月後の依存性:とりあえず、重要とした場合の図です。”6 か月後の依存性”は重大なアウトカムではないため評価対象外です。

一般に推奨の方向や強さを考える際には、ベースラインを考慮した”絶対効果”を使って比較検討しますが、”相対効果”も図にしてみました。

各アウトカムの効果指標に絶対効果( 1000 人当たりの効果)を使った比較1

6 か月後の依存性:とりあえず、重要とした場合の図です。”6 か月後の依存性”は重大なアウトカムではないため評価対象外です

図は、相原先生ブログより

各アウトカムの効果指標に絶対効果( 1000 人当たりの効果)を使った比較2

6 か月後の依存性:とりあえず、重大とした場合の図です。6 か月後の依存性のアウトカムの価値観や、害の閾値により imprecision の評価が異なってくるが、とりあえず、 Low とした。

図は、相原先生ブログより

推奨度 定義 患者にとって 臨床医にとって

強い推奨1: ↑↑ ・ ↓↓

「~を推奨する( recommend )」 または 「臨床医は~すべきである( should )」

方向:~する推奨する recommend…~しないことを推奨する recommend against…

介入による望ま し い 効 果(利益)が望ましくない効果 ( 害 ・ 負担・コスト)を上回る、または下回る確信が強い。

その状況下にあるほぼ全員が、推奨される行動を希望し、希望しない人がごくわずかである。

ほぼ全員 (most individuals) が推奨される介入を受けるべきである。ガイドラインに準じた推奨を遵守しているかどうかは、医療の質の基準やパフォーマンス指標としても利用できる。個人の価値観や好みに一致した意思決定を支援するためのフォーマルな意思決定支援は不要だろう。

弱い推奨2: ↑ ?  ・  ?↓

「~を提案する( suggest )」 または 「臨床医は~かもしれない( might )」「条件付きで推奨」

方向:~する提案する suggest…~しないことを提案する suggest against…

介入による望ま し い 効 果(利益)が望ましくない効果 ( 害 ・ 負担・コスト)を上回る、または下回る確信が弱い

その状況下にある人の多くが提案される行動を希望するが、希望しない人も多い。

推奨される行動を提案し、患者が意思決定できるよう支援することは、医療の質の基準やパフォーマンス指標として利用できるだろう。意思決定支援は、患者が自身の価値観や好みに基づいて意思決定を行うのにおそらく有用だろう。エビデンスやエビデンスの要約を各自で吟味し、患者の意思決定に影響するような要因を話し合うために準備する。

ここで、推奨度の定義をしっかりと復習!

診療ガイドラインパネル会議で想定される検討

パネル会議1:重大なアウトカムが「 6 か月後の総死亡率」・「 1 週間以内の脳出血」で、「 6 か月後の依存性」を重要とした。

この場合は、最も多いであろう患者の価値観を、普通に想定した一般的なパネル会議だと思われる。一般的に、死亡と重篤な害のアウトカムを重大と考え、ADL などを重要と考えるだろう(死んだら、 ADL も何もないので、まず、死に直結するアウトカムを重大とする)。総死亡と脳出血に置く価値観は、脳出血のほとんどが死亡するということから、同じレベルであろうと判断することになると想定した。

パネル会議2: ADL が低い生存を望ましくない、と考えるパネリストが多い。議論する時間が長ければ長いほど、この意見が主流となることが多いようである。

2-1 : 「 6 か月後の依存性」も重大と考えるが、さすがに「 6 か月後の総死亡率」・    「 1 週間以内の脳出血」のが、重みが大きいと考える場合は、想定されるだろう。

2-2 :3つのアウトカムに置く価値観が同じ場合、と考えるパネリストが多い。どうしても、     ADL が低い生存に対して嫌悪感がある医療消費者がいたりすると、強い意見が    だされることがある。この場合になることは少ないだろう。

2-3 : 「 6 か月後の総死亡率」・「 1 週間以内の脳出血」より、「 6 か月後の依存性」    に価値観を持つ場合は、ほとんどないと想定される。

パネル会議3:アルテプラーゼ (rt-PA) で劇的に治った経験を持つ専門医のパネリスト         が、使用しないことの推奨に対して、強く反対する場合もあるだろう。

パネル会議1:重大なアウトカムが「 6 か月後の総死亡率」・「 1 週間以内の脳出血」で、「 6 か月後の依存性」を

重要とした。

点推定値からは、総死亡は 1000 人あたり 2 人増加し、脳出血(ほとんどが死亡)は 1000 人あたり 51 人増加することを示しており、介入を推奨しないという判定になると思います。害の閾値を、この 51 人として議論を進めます。

一方、総死亡の信頼区間の下限からは、 1000 人あたり 21 人減少という望ましい効果があり得ますが、点推定値の害の閾値としての脳出血 51 人 /1000 人(図中 赤色の縦点線)を下回っており、”推奨しない”という評価は変わらないでしょう。

図は、相原先生ブログより

パネル会議1:重大なアウトカムが「 6 か月後の総死亡率」・「 1 週間以内の脳出血」で、「 6 か月後の依存性」を

重要とした。点推定値からは、総死亡は 1000 人あたり 2 人増加し、脳出血(ほとんどが死亡)は 1000 人あたり 51 人増加することを示しており、「利益ほぼなし・害多い」です。

想定される推奨文:

80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、アルテプラーゼを使用しないことを推奨する。(高い質のエビデンスに基づく強い推奨反対 : GRADE 1A )

パネル会議 2-1 : 「 6 か月後の依存性」も重大と考えるが、さすがに「 6 か月後の総死亡率」・ 「 1 週間以内の脳出血」のが、重みが大きい(たとえば約 5倍)と考える場合

1. 依存性の効果が最小ならば(信頼区間の下限): 37 人悪化 /1000 人のため、全てのアウトカムが望ましくない方向であり、推奨反対となるでしょう。

2. 死亡や脳出血の価値が依存性の” 5倍”と想定:死亡と脳出血死亡の重みは、それぞれ 10 人と 255 人となり、推奨反対の決断はさらには強いものとなるでしょう。

3. 依存性の効果が最大ならば(信頼区間の上限): 1000 人あたり 111 人も減少するという効果(青色の縦点線)を考えたとしても、死亡に置かれる価値(依存性の 5倍= 10 人増加)と脳出血に置かれる価値(依存性の 5倍=255 人)をあわせた 265 人より少ないため、デメリットがメリットを上待っていると考えられる。 図は、相原先生ブログより

パネル会議 2-1 : 「 6 か月後の依存性」も重大と考えるが、さすがに「 6 か月後の総死亡率」・ 「 1 週間以内の脳出血」のが、重みが大きい(たとえば約 5倍)と考える場合

1. 依存性の効果が最小ならば(信頼区間の下限): ADL の利益が少しあるが、害が大きい。

2. 死亡や脳出血の価値が依存性の” 5倍”と想定: ADL の利益が少しあるが、害がかなり大きい。

3. 依存性の効果が最大ならば(信頼区間の上限): ADL の利益があるが、それでもまだ害のが大きい。

想定される推奨文:

80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、かつ、 6 か月後の ADL 改善にも価値観を置く患者であっても、アルテプラーゼを使用しないことを提案する。(低い質のエビデンスに基づく弱い推奨反対 : GRADE 2C )

パネル会議 2-2 : 「 6 か月後の依存性」と「 6 か月後の総死亡率」・ 「 1 週間以内の脳出血」の重要度が同じと考え

る場合

1. いくら依存性が点推定値から、 1000 人あたり 43 人のメリットがあっても、総死亡は 1000 人あたり 2 人増加し、脳出血(ほとんどが死亡)は 1000 人あたり51 人増加(総計 53 人・これをデメリットの閾値と考えた場合)することから、”推奨しない“となるでしょう。また、総死亡と脳出血に置く価値観は、脳出血のほとんどが死亡するということから、同じレベルであろうと判断しています。

2. 依存性の効果が最大(信頼区間の上限)とまで、 ADL を重要視するならば:1000 人にあたり 111 人減少(図中、青色の縦点線)は、望ましくない効果(死亡と脳出血)の 53 人を上回っています。しかし、ここで注意が必要です。依存性の信頼区間の下限と上限の間 (37-111) に、デメリットと考える閾値( 53人 /1000 人)があることを示し、この場合は、不精確さを理由にグレードダウンする必要があります(先ほどの、パネル会議 2-1 の場合は、依存性の 5倍としたので、 265 人となっており、 37 -111 の区間外だった)。よって、全体的なエビデンスの質は、「極めて低」となるかもしれません。注:信頼区間の幅は、 RR などと違い、図のそのままで考えない。

図は、相原先生ブログより

Very lowの場合もある

パネル会議 2-2 : 「 6 か月後の依存性」と「 6 か月後の総死亡率」・ 「 1 週間以内の脳出血」の重要度が同じと考え

る場合2. 依存性の効果が最大(信頼区間の上限)とまで、 ADL を重要視するならば:

1000 人にあたり 111 人減少(図中、青色の縦点線)は、望ましくない効果(死亡と脳出血)の 53 人を上回っています。

想定される推奨文:

80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、 6 か月後の ADL 改善に、かなり大きな価値観を置く患者には、アルテプラーゼを使用することを提案する。(極めて低い質のエビデンスに基づく弱い推奨 : GRADE 2D )

パネル会議3:アルテプラーゼ (rt-PA) で劇的に治った経験を持つ専門医のパネリストが、使用しないことの推奨に対し

て、強く反対する場合もあるだろう。

1. 依存性の効果が最大(信頼区間の上限)とまで、 ADL を重要視するならば(パネル会議 2-2-2 と同じ): 1000 人にあたり 111 人減少(図中、青色の縦点線)は、望ましくない効果(死亡と脳出血)の 53 人を上回っています。しかし、ここで注意が必要です。依存性の信頼区間の下限と上限の間 (37-111) に、デメリットと考える閾値( 53 人 /1000 人)があることを示し、この場合は、不精確さを理由にグレードダウンする必要があります。よって、全体的なエビデンスの質は、「極めて低」となるでしょう。注:信頼区間の幅は、 RR などと違い、図のそのままで考えない。

2. 強く反対するパネリストが、 1-2名の場合:パネル会議1で作成して、 remarkに、その反対意見を記入。 図は、相原先生ブログより

パネル会議3:アルテプラーゼ (rt-PA) で劇的に治った経験を持つ専門医のパネリストが、使用しないことの推奨に対し

て、強く反対する場合もあるだろう。

2. 強く反対するパネリストが、 1-2名の場合:パネル会議1で作成して、 remarkに、その反対意見を記入。

想定される推奨文:

80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、アルテプラーゼを使用しないことを推奨する。(高い質のエビデンスに基づく強い推奨反対 : GRADE 1A )

Remark :アルテプラーゼ (rt-PA) で劇的に治った経験を持つ専門医が、場合によっては、使用することもあるとの反対意見であった。今後、この臨床報告を積み重ねていくこととなった。

「アルテプラーゼを使ってはいけない」のか? に対して「急性脳梗塞患者にはアルテプラーゼの治療を使わないことを提案する。」とすると、アルテプラーゼが使えなくなるという反論が、模擬パネル会議で、必ず起ります。また、実際に、推奨文を公開すると、他の部分をまったく読まず、推奨文の「使用しないこと」のみを見て(強くも弱くも関係ない)、「アルテプラーゼを使ってはいけない」との反論が起ります。

推奨文:1. 80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、

アルテプラーゼを使用しないことを推奨する。( GRADE 1A )さすがに、反論する人は少ないが、保険で適応症となっている限り、必ずある。

特に、パネル会議とは違って、やはり、 ADL の改善に重きを置いたり、アルテプラーゼで劇的に改善した症例経験のある専門医からの反論があるだろう(信頼区間という幅があるのだから、 “よく使っている、効いている”と主張する専門医もいれば、“よく使ったが、ほとんどが効かなかった”と主張する専門医もいると想像するのは、容易であろう)。

「かなりの麻痺が残り、寝たきりで意識障害もあるようになりそう」というアウトカムに大きな価値観を置く患者や家族に対しては、”この診療ガイドラインにおける推奨は、別の価値観をもとに作成しているので、そのまま推奨を適用することはできない”という説明になり、医療提供者と患者側の shared decision making にまかせる最終決定になるだけです。

よって、「診療カイドラインは、医師の裁量権を否定するものではないので、使う場合は、診療カイドラインでは使わないとされているが、使う理由を患者に十分に説明して、同意を得られれば、使うことを否定するものではない。」と説明するしかないであろう。

「アルテプラーゼを使ってはいけない」のか? に対して

推奨文:2. 80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、

かつ、 6 か月後の ADL 改善にも価値観を置く患者であっても、アルテプラーゼを使用しないことを提案する。( GRADE 2C )

反論する人は、多いと思われる。

「エビデンスの確信性が低」のため、「今後の研究によって効果推定値に対する確信性に重要な影響がおよぶ可能性が非常に高く,推定値が変わる可能性が高い」ことと、「弱い推奨」というものの定義そのもの、「従う人もいれば、従わない人もいるだろう、と想定した」という説明が必要になるが、そもそも、そんな説明をしても、聞き入れない者も多いのが現実である。

推奨文が長くなるし、何を推奨しているか不明瞭になるが、現在の本邦の現状では、「急性虚血性脳卒中においてアルテプラーゼを使用する場合もあるが、診療ガイドラインパネル会議では、 6 か月後の ADL 改善より1週間以内の脳出血死亡に大きな価値観を置く患者には、アルテプラーゼを使用しないことを提案するが多数決で多かった。」などのような、推奨文でないと、誤解が多いかもしれない。

このことも含めて、診療ガイドラインのエビデンスの確信性や推奨度が、各学会で異なり、世界の標準から外れることが、日本の医療の発展に寄与しないことは明らかであろう。医療関係者は、医療のプロだから、正しい定義を、学んで欲しい。

「アルテプラーゼを必ず使わないといけない」のか? に対して

推奨文:2. 80 歳未満の発症後 3 時間を越えた急性脳梗塞患者に対して、

6 か月後の ADL 改善に、かなり大きな価値観を置く患者には、アルテプラーゼを使用することを提案する。( GRADE 2D )

反論する人は、少ないと思われる。

というか、「アルテプラーゼを必ず使わないといけない」と誤解する人はほとんどいない。逆の、パターンだと誤解するのに、こちらのパターンは、ほぼ誤解がない。

たとえ、エビデンスの確信性が、極めて低でも、こちらのが受け入れられるし、保険で適応症である場合には、特に反論がほとんどない。

ここまで学び、最も重要ポイントは?

推奨文作成の時に、このような議論になり、パネル会議が紛糾しないように、事前にアンケートを行うかパネル会議を開いておき、これらの問題( CQ とアウトカム)について、十分に議論しておくことがポイントと言える。