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C型肝炎ウイルスが消えても 発がん予備軍 打田佐和子 大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 市民公開講座 健康セミナー 大阪肝炎デー 2017. 7. 30.

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  • C型肝炎ウイルスが消えても 発がん予備軍

    打田佐和子 大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学

    市民公開講座 健康セミナー 大阪肝炎デー 2017. 7. 30.

  • 1. C型慢性肝炎とは

    2. C型慢性肝炎の治療

    3. C型肝炎ウイルスが消えても肝がん予備軍

    本日のおはなし

  • C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)が肝臓に感染し続けて、炎症を起こす疾患である。

    HCVの感染によって、肝細胞の破壊と再生が繰り返されるため、徐々に肝臓の細胞や遺伝子がダメージを受けて、肝硬変や肝がんを発症しやすくなる。

    C型慢性肝炎には自覚症状がほとんどない。黄疸などの症状が出現した場合は、肝硬変などの病態が進行している可能性がある。

    肝硬変や肝細胞がん(HCC)への進展を防ぐためには、抗ウイルス治療によるHCVの排除が必要である。

    C型慢性肝炎とは

  • 肝硬変

    正常な肝臓

    自然に治癒

    約30%

    約70%

    慢性肝炎 肝がん

    C型肝炎ウイルスへの感染

    急性肝炎 30~40% 7%

    C型肝炎ウイルスに感染した約70%の方が、慢性肝炎になる。 C型慢性肝炎の30~40%の方は、約20年で肝硬変となり、さらに肝硬変の患者さんにおいて年率7%の頻度で肝がんが合併すると言われている。

    C型肝炎の自然経過

  • 日本肝癌研究会. 第19回全国原発性肝癌追跡調査報告(2006~2007), 2014より作図

    (20,850例)

    肝がんの原因

    HCV抗体陽性例 (C型肝炎ウイルス検査)

    HBs抗原陽性例 (B型肝炎ウイルス検査)

    その他

    64.7%

    20.2%

    15.1%

    C型肝炎と肝がん

  • 101万人 ~151万人

    C型肝炎と診断されている方、あるいはご本人が気づかないうちにC型肝炎ウイルスに感染している方の合計。

    日本におけるC型肝炎ウイルス感染者の推計

    田中純子. 厚生労働省 第13回肝炎対策推進協議会資料, 2015より作図

  • 田中純子. 厚生労働省 第13回肝炎対策推進協議会資料, 2015より作図

    わが国の未治療のC型肝炎患者さんは 最大で75万人と推測される

  • C型肝炎ウイルスは血液を介して感染する。 主な原因は、感染している人の血液を用いた輸血、血液製剤、ウイルスで汚染した注射器の使用など。 その他、消毒をしない器具を用いた刺青やピアスも原因となる。

    注射器の使いまわし 刺青 ピアスの穴をあける 輸血や血液製剤

    C型肝炎の主な感染経路

    http://1.bp.blogspot.com/-bvWw4BzdiFQ/VETTQg13H3I/AAAAAAAAomw/htrg8-lG0VU/s800/sick_chuusya.pnghttp://1.bp.blogspot.com/-yQ5PzpoCShI/VbnQmvVd_fI/AAAAAAAAwC8/i8_x34PNGZE/s800/accessory_earing_woman.png

  • HCV抗体検査 ウイルス感染の有無

    HCV RNA検査 ウイルス感染持続の有無

    Yes 抗体あり

    治療方針決定のために、 ウイルス量・HCV遺伝子型を判定

    ウイルス量/遺伝子型 を測定

    Yes C型慢性肝炎と診断

    No ウイルスが排除され、肝炎治癒

    No HCV感染なし

    C型慢性肝炎の診断は血液検査と画像検査によって行う。 持続する肝機能異常がある場合、C型慢性肝炎を疑い、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体検査を行う。

    C型肝炎はどうやって検査・診断される? ~血液検査と画像検査~

    肝線維化の進展度の判定 病期の進展度予測 発がん可能性の評価

    超音波検査など 画像検査

  • C型慢性肝炎は、自覚症状がなくても肝硬変や肝がんに進展することがあります。

    C型肝炎ウイルスの感染の有無を知るには、まずHCV抗体検査を受けましょう。

    まとめ1

  • 1. C型慢性肝炎とは

    2. C型慢性肝炎の治療

    3. C型肝炎ウイルスが消えても肝がん予備軍

    本日のおはなし

  • C型慢性肝炎治療はなぜ必要?

    1.肝硬変への進展を防ぐ

    2.肝がんを防ぐ

    痛くもしんどくもないのに(自覚症状ないのに)

  • 福田和人. 肝炎診療バイブル. 改訂3版,メディカ出版,pp70-75,2015より改変

    C型肝炎における肝がん発症に関連する因子 ・肝硬変 ・高齢 ・男性 ・常習飲酒歴 ・血清ALTの高値(組織学的活動性) ・糖尿病、肥満(高インスリン血症) ・鉄蓄積、酸化ストレス

    肝がんになりやすい方の特徴

  • C型肝炎ウイルスを標的とした 薬剤の開発

    Direct Acting Antivirals (DAA)

    直接作用型抗ウイルス剤

    C型肝炎ウイルスは消せます!

  • C型肝炎ウイルス蛋白に対してDAAが作用する場所

    NS2 NS3/4A NS4B NS5A NS5B

    遺伝子の複製

    ウイルス粒子形成に関わる領域

    NS5A阻害剤 プロテアーゼ阻害剤 ポリメラーゼ阻害剤

    ウイルス遺伝子複製に関わる領域

    ポリメラーゼ複合体

    遺伝子複製の中心的な役割を果たす

    ポリメラーゼ

    <ウイルス粒子形成> <遺伝子複製> 働き

    C型肝炎ウイルス 蛋白

    DAA

    エンベロープ

    カプシド

    Asselah T, et al. Liver Int 33(Suppl 1): 93-104, 2013 を参考に作成

    DAA

    http://4.bp.blogspot.com/-iQ7CUthzPg8/UdYhKuwNgrI/AAAAAAAAV5k/o0tEGbK-PwI/s594/tatemono_koujou.png

  • C型慢性肝炎治療(ジェノタイプ1型)の変遷

    1992 2001 2003 2011 2014 2015※

    インターフェロン による治療が開始

    DAAが登場。インターフェロン との併用治療が開始

    DAA1剤のみの 治療が登場

    注射剤 飲み薬

    治療効果 ~100%

    治療期間

    型肝炎の治療は、

    進歩し続けています

    C

    24週~48週 ~12週

    剤形

    ※:2015年以降も、DAAのみの新たな治療が登場しています。

    C型肝炎治療とその進歩

  • (人)

    IFNベース

    IFNフリー

    2

    108 127 114

    147

    95 102

    53

    92 66

    196

    307

    347

    28

    IFNベース IFNフリー

    当院における抗HCV療法導入数の推移

    (年)

    Graph1

    20042004

    20052005

    20062006

    20072007

    20082008

    20092009

    20102010

    20112011

    20122012

    20132013

    20142014

    20152015

    20162016

    20172017

    総数

    2

    0

    108

    0

    127

    0

    114

    0

    147

    0

    95

    0

    102

    0

    53

    0

    92

    0

    66

    0

    129

    67

    20

    287

    0

    344

    0

    28

    Sheet1

    列120042005200620072008200920102011201220132014201520162017

    総数2108127114147951025392661292000

    00000000006728734428

    分類 3

    分類 4

  • 当院におけるDAA治療の成績

    治療A 治療B 治療C 治療D

  • Asahina Y, et al. Hepatology 52(2): 518-527, 2010より作図

    C型肝炎ウイルス(HCV)を排除できた方と 排除できなかった方の肝細胞がん発症率の比較

    65歳未満の場合

    期間(年)

    65歳以上の場合

    期間(年) 0 5 10 15

    0

    10

    20

    30 肝細胞がんの累積発症率

    (%)

    0 5 10 15

    0

    10

    20

    30 肝細胞がんの累積発症率

    (%)

    HCVを排除した方(121例)

    HCVが残っている方(376例) HCVを排除した方(565例)

    HCVが残っている方(980例)

    HCVを排除すると肝がんの発症率は低下します

  • 厚生労働省. 都道府県における肝炎検査後肝疾患診療体制に関するガイドラインを基に作成

    患者さん

    専門医

    かかりつけ医

    研修

    受診・診療

    紹介・返事

    受診・診療

    一般的に、C型慢性肝炎の治療はかかりつけ医と肝炎治療の専門医が連携して 進めます。 治療を希望する場合は、かかりつけ医に相談することで、お住まいの地域の専門医を紹介してもらうことができます。

    • 定期的な検査 • 日常的な処置 • 専門医療機関の紹介

    • 診断と治療方針の決定 • 抗ウイルス療法 • 肝がんの高リスクの判定と 早期診断

    かかりつけ医と専門医による治療の連携

  • 肝硬変や肝がんへの進展を予防するためには、C型肝炎ウイルスの排除が必要です。

    C型肝炎ウイルスは、DAAで排除できます。

    かかりつけ医や肝疾患相談センターに相談し、肝臓専門医を受診して、あなたにあった治療をうけましょう。

    まとめ2

  • 1. C型慢性肝炎とは

    2. C型慢性肝炎の治療

    3. C型肝炎ウイルスが消えても発がん予備軍

    本日のおはなし

  • C型肝炎ウイルスが消えれば、 肝臓病は完治したのでしょうか?

  • IFN治療を受けたC型慢性肝疾患患者 1124例

    HCV排除 373例 HCV非排除 751例

    平均観察期間 66ヵ月

    HCC 13例 (3.5%)

    HCC 61例 (8.1%)

    Kobayashi S. Liver Int. 2007

    HCV排除後の肝細胞癌

  • (月) 0 24 48 72 96 120 144 168 192

    IFN治療 終了

    HCV排除後の肝細胞癌

    5年以上経過しての肝発癌もある 大阪市大データ

  • DAA治療後早期の肝発癌

    大阪市大データ

  • 発癌しても早期発見すれば根治的な治療が可能です

  • ウイルスが排除できても、肝がん発症の可能性がゼロになったわけではありません。 定期的に検査し、肝がんが発症していないか、経過を観察する必要があります。 治療終了後も、主治医の指示どおりの定期的な通院が必要です。

    まとめ3

    C型肝炎ウイルスが消えても�発がん予備軍本日のおはなしC型慢性肝炎とはC型肝炎の自然経過C型肝炎と肝がんスライド番号 6わが国の未治療のC型肝炎患者さんは�最大で75万人と推測されるスライド番号 8スライド番号 9まとめ1本日のおはなしC型慢性肝炎治療はなぜ必要?スライド番号 13スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16スライド番号 17スライド番号 18スライド番号 19スライド番号 20まとめ2本日のおはなしスライド番号 23HCV排除後の肝細胞癌HCV排除後の肝細胞癌DAA治療後早期の肝発癌発癌しても早期発見すれば根治的な治療が可能ですまとめ3