平成26年5月22日 高松赤十字病院 モーニングセミ …¡€...難治性itp...
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出血の部位と性状
浅部・深部
性状
深部出血
(皮下・筋肉内
・関節内)
浅部出血
(皮膚・粘膜)
部位
異常 血管・血小板系 凝固系 線溶系
点状出血
小斑状出血
圧迫止血が有効
大斑状出血 後出血
点状出血:petechiae(petechiaの複数形)
血球の分化
抗体産生細胞(形質細胞) 成熟B細胞
抗原
Bリンパ球前駆細胞
NK/Tリンパ細胞前駆細胞
リンパ球系幹細胞
Tリンパ球
ナチュラルキラーリンパ球
リンパ系細胞
骨髄系細胞
骨髄 血管
好酸性多核球
好中性多核球
好塩基性多核球
前骨髄球
骨髄芽球
単球
単芽球
巨核芽球
前赤芽球
血小板
赤血球
顆 粒 球 系
骨髄系幹細胞
(リンパ球系を除く)
巨核球
骨髄腔
栄養動脈
栄養静脈
静脈洞
中心静脈
中心動脈
多潜能造血幹細胞
正染性赤芽球
骨髄
TPO(トロンボポエチン)
末梢血
造血
幹細胞
骨髄
リンパ球 数年
Tリンパ球
Bリンパ球
ナチュラル
キラー細胞
網赤血球1日
赤血球120日
顆粒球2~3日
(好中球)
単球2~3日
血小板10日
複製
主として肝臓で産生されるサイトカイン。産生コントロールの仕組みは不明。
血小板減少の分類
1、血小板産生低下 骨髄巨核球低形成 (再生不良性貧血、骨髄がん腫症、薬剤性)
無効血小板造血 (巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群)
遺伝性血小板減少症
2、血小板破壊亢進 免疫学的機序
自己免疫 (ITP、HIT、その他)
同種免疫
非免疫学的機序 (DIC、TTP、HUS)
3、偽性血小板減少症
出典:血液専門医テキスト(日本血液学会編)
【症例 偽性血小板減少症】 女性
【主訴】 血小板減少のため紹介された
【現病歴】 アレルギー性鼻炎のため近医に通院。2013年2月ごろには、血小板数が7万程度であったのが、6月の採血では2.5万に著減していたため、当院に紹介された。明らかな出血傾向は認めていない。
【検査結果】
WBC
RBC
Hb
Ht
PLT
RET
RET
IPF
4900
461 x 104
14.7
41.5
5.8 x 104
1.2
5.5
22.4
(0.5-4.8)
/μl
/μl g/dl %
/μl %
/μl %
形態コメント
血小板凝集
12.5↓
3.0↓
ng/105
U/ml
PAIgG
HP IgG
検査所見
(クエン酸採血) WBC
RBC
Hb
Ht
PLT
4600
449 x 104
14.4
40.4
17.2 x 104
/μl
/μl g/dl %
/μl
EDTA採血による末梢血像
採血後、時間経過と共に血小板の測定値が低下します。
(EDTA依存性偽性血小板減少症) 血小板数:採血直後生血17.2万、EDTA加血5分後7.8万、
15分後5.2万
血小板減少の分類
1、血小板産生低下 骨髄巨核球低形成 (再生不良性貧血、骨髄がん腫症、薬剤性)
無効血小板造血 (巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群)
遺伝性血小板減少症
2、血小板破壊亢進 免疫学的機序
自己免疫 (ITP、HIT、その他)
同種免疫
非免疫学的機序 (DIC、TTP、HUS)
3、偽性血小板減少症
出典:血液専門医テキスト(日本血液学会編)
【症例 骨髄がん腫症・急性リンパ性白血病】 男性
【主訴】 食欲不振
【現病歴】 2013年3月中旬より、発熱・鼻出血・倦怠感を自覚。
当院内科を受診した。緊急検査にて、急性白血病が疑われた
ため、血液内科に紹介され入院。(主治医:福本医師) 【既往歴】 特記事項なし
【内服歴】 特記事項なし
【入院時現症】意識清明、血圧120/64、表在リンパ節触知せず、
心音:純、呼吸音:清、腹部は平坦で脾腫なし。
入院時骨髄穿刺(腸骨) 0
0
0
0
0
0
0
1.0
95.4
%
%
%
%
%
%
%
%
%
幼若好酸球
成熟好酸球
好塩基球
単球
リンパ球
形質細胞
マクロファージ
赤芽球
芽球
有核細胞数
巨核球数
骨髄芽球
前骨髄球
骨髄球
後骨髄球
環状核球
分節核球
63.5万
94
0
0
3.2
0.2
0
0.2
/μl
/μl
%
%
%
%
%
%
骨髄は過形成
芽球は、核網が繊細で、大小不同。
核小体を有していて、一部は核・細胞
質に空胞を有する。
CD10、19、20陽性、TdT陽性。
染色体:add(1)(q32),add(9)(p22)
臨床経過
2013.3 4 5 6 7 8 9 10
WB
C
地
固
め
2
寛
解
導
入
地
固
め
1
移
植
前
治
療
地
固
め
3
地
固
め
4
非血縁者間同種骨髄移植
ドナー情報
非血縁(骨髄バンク) 血液型:主/副不一致
(患者A+:ドナーB+) HLA:6/6一致
生着:day15
退院後、移植外来受診時の検査所見 6.0
0.83
19
16
187
142
2.9
104
mg/dl mg/dl IU/L
lIU/L
IU/L
mEq/L
mEq/L
mEq/L
BUN
CRE
AST
ALT
LDH
Na
K
Cl
WBC
NEU
LYM
MONO
EOS
BASO
RBC
Hb
Ht
PLT
RET
RET
IPF
5700
86.5
8.0
3.5
1.5
0.5
239 x 104
8.4
24.1
9.3 x 104
0.9
2.2
4.5
(0.5-4.8)
/μl
%
%
%
%
%
/μl g/dl %
/μl %
/μl %
血小板減少の分類
1、血小板産生低下 骨髄巨核球低形成 (再生不良性貧血、骨髄がん腫症、薬剤性)
無効血小板造血 (巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群)
遺伝性血小板減少症
2、血小板破壊亢進 免疫学的機序
自己免疫 (ITP、HIT、その他)
同種免疫
非免疫学的機序 (DIC、TTP、HUS)
3、偽性血小板減少症
出典:血液専門医テキスト(日本血液学会編)
骨髄:過形成
腫瘍細胞は、無い
骨髄:低形成 骨髄:過形成
腫瘍(白血病)細胞
原疾患を治すしかない
血小板減少の分類
1、血小板産生低下 骨髄巨核球低形成 (再生不良性貧血、骨髄がん腫症、薬剤性)
無効血小板造血 (巨赤芽球性貧血、骨髄異形成症候群)
遺伝性血小板減少症
2、血小板破壊亢進 免疫学的機序
自己免疫 (ITP、HIT、その他)
同種免疫
非免疫学的機序 (DIC、TTP、HUS)
3、偽性血小板減少症
出典:血液専門医テキスト(日本血液学会編)
特発性血小板減少性紫斑病 他の基礎疾患や薬剤などの原因が明らかではないにもかかわらず、
血小板の破壊が亢進し血小板減少をきたす後天性の疾患。欧米では、
免疫性、あるいは、自己免疫性という表現が用いられることが多い。
急性ITP 慢性ITP
好発年齢 2~5歳 20~40、60~80
性差(男:女) 1:1 1:3 1:1
好発時期 冬~春 特になし
発症様式 急性発症 発症時期不明
発症時期が明確
先行事象 ウイルス感染症 なし
予防接種
出血症状 強い 症状を欠く場合もある
経過 6ヶ月以内に寛解 慢性に経過し6ヶ月以上
診断
慢性ITPの診断基準(案) 1、血小板減少<10万
2、末梢血塗抹標本は正常
3、以下のうち3項目以上
貧血なし
白血球減少なし
抗GpⅡbⅢa抗体産生B細胞
血小板関連抗GpⅡbⅢa抗体
網血小板比率の増加
トロンボポエチンは軽度上昇
4、免疫性血小板減少を除外できる
(SLE、リンパ増殖性疾患、HIV感染症など)
いまだに他の疾患の除外診断が主体であり、案である!
PAIgG:血小板関連抗体
• Platelet-associated IgG
• 「抗血小板抗体」とは違う
• ITPの90%以上で陽性(感受性が高い)
• 血小板減少時にも非特異的に高値
• 陰性的中率が高い(陰性ならITPでない)
• ITPの診断的意義は少ない
IPF:幼若血小板(網血小板に相当) • 網赤血球に相当するできたばかりの血小板
• 血小板産生の指標
• 血小板産生回復期、特発性血小板減少性紫斑病で増加する
• 網赤血球をオーダー すると測定される。
慢性ITPの診断基準(案) 1、血小板減少<10万
2、末梢血塗抹標本は正常
3、以下のうち3項目
貧血なし
白血球減少なし
網血小板比率の増加
トロンボポエチンは軽度上昇
4、免疫性血小板減少を除外できる
ITP治療ガイドライン案
H. pyloriの
除菌
●血小板数3万/μL以上、かつ
重篤な出血傾向のない場合: 無治療経過観察
血小板数
2万/μL以下
あるいは
重篤な出血傾向
2nd line 治療
ITPの
確定診断
ステロイド
摘脾
難治性ITP
に対する治療
TPO受容体作動薬
ロミプレート
レボレード
抗CD20抗体
リツキサン
●緊急に治療が必要な場合
IVIG、血小板輸血、ステロイドパルス
無効
無効
HP陽性
【症例】 男性
【主訴】 血便
【現病歴】 2013年10月、排便時の便が黒褐色であるため、血便と考えて
当院消化器内科を受診した。大腸内視鏡が予定されたが、高度
の下痢に伴い脱水症となり緊急入院となった。血小板数も著明
に低下しており、血液内科に転科となった。
【既往歴】 特記事項なし
【内服歴】 なし
【入院時現症】 意識清明、貧血、皮膚には明らかな出血傾向なし。
入院時検査所見 6.1
3.1
13.4
0.96
0.3
16
11
221
179
141
3.4
106
76.6
70.5
g/d
g/dl mg/dl mg/dl mg/dl IU/L
lIU/L
IU/L
IU/L
mEq/L
mEq/L
mEq/L
ng/105
U/ml
TP
ALB
BUN
CRE
T-Bil
AST
ALT
ALP
LDH
Na
K
Cl
PAIgG
HP IgG
WBC
NEU
LYM
MONO
EOS
BASO
RBC
Hb
Ht
PLT
RET
RET
IPF
6000
75.5
21.0
1.5
2.0
0.0
264 x 104
8.1
24.3
0.3 x 104
2.2
5.8
11.1
(0.5-4.8)
/μl
%
%
%
%
%
/μl g/dl %
/μl %
/μl %
入院時骨髄穿刺 0.4
1.0
0.2
2.8
17.8
0.6
0.2
0.4
20.2
0.6
%
%
%
%
%
%
%
%
%
%
幼若好酸球
成熟好酸球
好塩基球
単球
リンパ球
形質細胞
マクロファージ
塩基性赤芽球
多染性赤芽球
正染性赤芽球
有核細胞数
巨核球数
骨髄芽球
前骨髄球
骨髄球
後骨髄球
環状核球
分節核球
15000
16
1.4
0.6
8.8
5.4
7.4
31.8
/μl
/μl
%
%
%
%
%
%
骨髄は正形成
小型巨核球および単核巨核球を認めた
臨床経過
10/18 20 22 24 26 28 30 11/2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 12/2 4 6
Plt
100
10
1
0.1
HP除菌 PSL
Eltrombopag (レボレード)
Gグロ
ブリン
摘脾?
下血
血小板輸血
入院
ガイドラインの全ての治療手段を駆使した一例
プレショック
トロンボポエチン受容体作動薬 巨核球に対する造血因子であるTPO(トロンボポエチン)の
レセプターを刺激する低分子化合物(TPO-RA) romiplostim(注射製剤) eltrombopag(経口薬) 有効率80%
長期的な安全性は未確立(骨髄異常誘導の可能性) 妊婦への安全性は確立されていない
TPO-RA投与後に中止できる可能性がある(6%程度) 自己免疫疾患なのになぜ効くの?
→ITPでは、TPOが増えていない
例えば、鉄欠乏性貧血では、単に鉄分が不足しているから造血能が低下する
のではなく、ヘムとグロビンの均衡を維持するための転写因子Bach1の活性化
が生じることが報告されている。(EHA2013:Best 6 abstracts)ITPでも、自己
免疫に続発して細胞内シグナルレベルでの異常が生じている可能性がある。
Heparin起因性血小板減少症
• すべての医療者が「いつか起こる副作用」として銘記すべき
• 診断基準は確立していないが、①血小板数がheparin投与中または投与後に前値の50%以下、または10万以下に低下、②他に血小板数の低下をきたす原因がない、③血清学的にHIT抗体が検出される、こと。
輸血における有害事象
血球が原因(血球上の抗原を含む) 血液型不一致輸血による溶血 TACO 血漿が原因(タンパク・抗体) ショック・アナフィラキシー TRALI 混入病原体が原因(ウイルス・細菌) 輸血後肝炎 HIV感染症 など
【症例】 再生不良性貧血 男性
【主訴】 消化管出血
【現病歴】2012年7月に血小板減少のため当科に紹介された。骨髄は低形成であり、再生不良性貧血と診断された。輸血などの支持療法を行っていた。2013年4月、中央処置室にて血小板輸血中に急に呼吸困難を訴えた。SPO2<80%となり、輸血関連急性肺障害(TRALI )と診断。酸素・ヒドロコルチゾン投与してHCUに入室、陽圧換気を行い、数時間後に回復した。
輸血関連急性肺障害(TRALI )
検査所見 6.3
3.7
19.3
0.72
0.9
29
33
212
g/d
g/dl mg/dl mg/dl mg/dl IU/L
IU/L
IU/L
TP
ALB
BUN
CRE
T-Bil
AST
ALT
LDH
WBC
NEU
LYM
MONO
EOS
BASO
RBC
Hb
Ht
PLT
800
12.0
85.0
3.0
0.0
0.0
200 x 104
6.0
16.7
0.1 x 104
/μl
%
%
%
%
%
/μl g/dl %
/μl
怖いのは血小板ではなく、血漿
• 血小板表面には血液型に関する糖タンパクは発現していない
• 血小板製剤は、血漿に浮遊して供給される
• 血漿は、各種抗体(抗A抗体・抗B抗体・抗HLA抗体など)や抗原となりうるタンパクを含む
• 当院では、ペーパークロスマッチではなく、輸血前にクロスマッチを行っている
血小板輸血による細菌感染症(G群レンサ球菌血症)を来たした骨髄異形成症候群
症例 男性 現病歴:骨髄異形成症候群(RA)による汎血球減少のため輸血依存となっていた。出血傾向のため、外来にて血小板輸血を受け、帰宅途中に呼吸困難・胸部圧迫感・悪寒を自覚したため救急外来を受診。受診時の体温は37.5℃であり、CRPも陰性であったが、以前経験した菌血症の症状と一致していたため、重症感染症の初期と判断されて、入院となった。
救急外来受診時検査所見 WBC 1400/mm3
My 1.0%
Mm 0.5%
St 13.5%
Seg 64.5%
Ly 14.5%
Mon 6.0%
RBC 261 万
Hb 8.1g/dl
Plt 3.3 万
TP 6.3g/dl
ALB 3.6g/dl
T-Bil 0.8mg/dl
AST 31 IU/l
ALT 37 IU/l
LDH 256IU/l
CRP 0.32mg/dl
入院後経過 経過:患者は過去にも菌血症を経験しており、自覚症状が同様であったことより菌血症が疑われ、血液培養とカルバペネム系広域抗菌薬(MEPM)が投与された。夜間には、悪寒・戦慄を伴う40℃の発熱を認め、経験したことがない高度の倦怠感を自覚。翌日、血液培養が陽性となり、グラム染色にてレンサ球菌が推定された。発熱が持続していたことより、菌の同定と感受性検査の結果を待たずにペニシリンGに変更、これにより速やかに解熱した。
入院後経過
血小板輸血
第15病日
退院
第1病日 第2病日
MEPM0.5gx3
38
40
37
36
39
血液培養(2セット)レンサ球菌
自覚症状:倦怠感
体温
CRP(mg/dl) 0.39 5.29 6.60
第3病日 第4病日 第10病日
PCG400万Ux4
LVFX
細菌検査 材料:静脈血(2セット)
塗抹結果:レンサ球菌
培養同定:Streptococcus. Spp 1+
感受性結果
ABPC <0.25 S
PCG <0.125 S
ABPC/SBT <8
CEZ <8 R
CTM <8
IPM/CS <4 R ABK =16
CLDM <0.25 S
MINO =8 VCM <1 S FOM <32 LVFX <1 S
血液センターでの検査結果 血液培養(2箇所)
Streptococcus dysgalactiae ssp. equisimilis★
血小板製剤(残余血) 同上★
血小板製剤(パイロットチューブ)残なし
同一採血番号の血漿 無菌
★:遺伝子型別検査
差異は認められなかった。
輸血用血小板製剤に細菌が混入してしまうと、常温で保存されるため増殖のリスクが高くなる。このような菌血症では、
①大量の細菌が輸血されることにより急激に発症するため通常の血液疾患でよく経験する菌血症とは臨床経過が異なること、
②血液内科ではあまり経験しない細菌が原因であることが多く、有効な抗菌薬が異なる、
ため、迅速かつ適切な対応が必要である。