平成30年度第9回金属資源セミナー ニッケルの需給...
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ニッケルの需給動向
平成30年度第9回金属資源セミナー
2019年3月26日
金属企画部調査課 柴原理沙
目次
1. 2018年ニッケル価格・在庫動向
2. 鉱石生産・輸出入動向
3. 需給動向（プライマリーニッケル・中間原料）
4. 需要用途別動向（ステンレス、電池）
5. 企業ごとの動向
6. まとめ―今後の注目ポイント
１
1. 2018年ニッケル価格・在庫動向
露・Norilsk社への米国による制裁懸念・在庫減等を受け上昇後下落傾向に 米中貿易摩擦の激化に対する懸念が主な下落要因
米中貿易摩擦に対する懸念
LME:ロンドン金属取引所（London Metal Exchange）SHFE:上海先物取引所（Shanghai Futures Exchange）
（出典：Bloombergデータより作成）２
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LME価格と在庫（LME/SHFE）推移（2018年1月～2019年3月22日）
LME在庫 SHFE在庫 LME価格
(純分千t)(US$/t)
2018年最高値15,750US$/t(6月7日)
2018年最安値10,595US$/t(12月31日)
米中貿易摩擦に対する懸念
1. 2018年ニッケル価格・在庫動向 ーLME在庫
2018年、在庫の減少が顕著だったLME指定倉庫
倉庫 2018年1月2日
2019年3月22日
マレーシア・ジョホール
約182千t 約69千t
台湾・高雄 約53千t 約29千t
蘭・ロッテルダム
約52千t 約34千t
種別では2018年始比カソード約56%減、ブリケット約47%減 アジア圏での在庫減少が顕著 → 中国・欧州の投機筋がEV需要見込んで在庫確保
62%減
45%減
35%減
Class1ニッケル形状別の用途
●ブリケット：ステンレス・合金用。硫酸ニッケル製造にも用いられる●カソード：ステンレス・合金用●ペレット：ニッケルめっき原料。
（出典：Bloombergデータより作成）
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LMEニッケル在庫（2018年1月～2019年3月22日）
ブリケット カソード ペレット
2018年始：約367千t
2019年3月22日：約185千t
（純分千t）
2. 鉱石生産・輸出入動向 ー鉱石生産量
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2014 2015 2016 2017 2018
鉱石生産量推移
インドネシア フィリピン ニューカレドニア ロシア カナダ 豪州 その他
（純分千t）
2018年鉱石生産量は前年比8.9%増の2,345千t インドネシアで鉱石生産量前年比70.7%増加
（出典：INSG Monthly Bulletin No.2 February 2019）
INSG：国際ニッケル研究会（International Nickel Study Group）
４
2. 鉱石生産・輸出入動向 ーインドネシア
2014年鉱石禁輸→2017年低品位ニッケル鉱石輸出解禁以降、鉱石生産量増加 2018年は主に中国に鉱石輸出（グロス量19百万t） 今後の注目は輸出量が増えるかどうか → 生産量の増加分が国内消費の可能性
（出典：INSG）
件数 企業名（一部）
NPI・FeNi製錬所 8件 PT Virtue Dragon Nickel Industry(中国・徳龍)他
ニッケル化合物工場
1件 PT Broly Nickel Industry(青山集団、Shanghai Decent)
ステンレス工場 2件 PT Indonesia TsingshanStainless Steel(青山集団、阪和興業JV)他
2017年1月以降稼働した製錬所等
（出典：各種報道よりJOGMEC作成）
（出典：TDM）
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インドネシア鉱石・精鉱輸出量推移
中国 ウクライナ 日本
（グロス量百万t）
５NPI：ニッケル銑鉄（Nickel Pig Iron）
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2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018
インドネシア鉱石生産量推移（純分千t）
2. 鉱石生産・輸出入動向 ーフィリピン
2018年鉱石生産量は前年比ほぼ横ばい、輸出量は減少 フィリピン政府による環境規制の動向に注目
●新規露天掘り鉱山の開発禁止は継続中●生産量に応じて鉱山採掘面積を制限する法令施行
●2019年ニッケル鉱石輸出量が鉱山開発規制策の影響で最大20%減少の可能性あり（フィリピンニッケル産業協会（PNIA））
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フィリピン鉱石生産量推移（純分千t）
（出典：TDM）
（出典：INSG）
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2016 2017 2018
フィリピン鉱石・精鉱輸出量推移
中国 日本 香港 その他
（グロス量百万t）
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日本の鉱石輸入量推移
ニューカレドニア フィリピン インドネシア グアテマラ
（グロス量千t）
2.鉱石生産・輸出入動向 ー日本の鉱石輸入
ニューカレドニアからの輸入が前年比約20%増加 2018年インドネシアからの輸入は55,000t（グロス量）
（出典：財務省貿易統計）７
インドネシア55,000t
（参考）生産フロー図・ニッケル製品分類
（図表出典：JOGMEC金属資源レポート18_01_vol.48）
プライマリーニッケル：製精錬所の生産物で、消費者がそのまま使える形態のもの。Class1／Class2／Chemicalsに大別される
ニッケル製品までの生産フロー プライマリーニッケル分類表
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Class1
Class2
3. 需給動向 ープライマリーニッケル需給バランス
2018年の供給不足幅は前年と比較して拡大 2019年はインドネシアでニッケル銑鉄（NPI）生産増等を背景に供給不足幅
は縮小すると予測
（出典：INSG）９
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(115)(128)
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2014 2015 2016 2017 2018 2019予測
プライマリーニッケル需給バランス（INSG）（純分千t）
3. 需給動向 ープライマリーニッケル生産と消費
2018年生産量は前年比6.2%増の2,205千t、消費量は前年比6.4%増の2,333千t インドネシアにおける生産量増加が顕著
（出典：INSG） 10（出典：INSG）
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2014 2015 2016 2017 2018
プライマリーニッケル生産量
中国 インドネシア 日本 ロシア カナダ その他
（純分千t）
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2014 2015 2016 2017 2018
プライマリーニッケル消費量
中国 日本 米国 韓国 その他
（純分千t）
3. 需給動向 ー中間原料生産推移
中間原料：マット、ミックスサルファイド（MS）等。Class1ニッケル、硫酸ニッケルの原料となる
中間原料生産量は減少傾向 → プライマリーニッケル生産量増加は主にNPI・フェロニッケルのClass2の増加の影響が大きい
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2014 2015 2016 2017 2018
中間原料生産量推移
インドネシア 豪州 パプアニューギニア
フィリピン フィンランド その他
（純分千t）
（出典：INSG）
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2014 2015 2016 2017 2018
プライマリーニッケル生産量（前掲）
中国 インドネシア 日本 ロシア カナダ その他
（純分千t）
Class1
Class2
3. 需給動向 ーインドネシアの中間原料プロジェクト
プロジェクト 企業 予定生産量（年間）
稼働開始予定
Pomalaa 住友金属鉱山、PT Vale Indonesia
MS：40千t（ニッケル量） 2019年度中にDFS終了予定→投資の可否決定
Huayou 華友コバルト子会社他 MHP：60千t（ニッケル量）（二段階に分けて生産）
操業開始時期：不明
Obi Harita Group、NingboLygend
ニッケル量：37千tコバルト量：5千t
2020年までに工事完了予定
QMB 青山集団、GEM、CATL、阪和興業
ニッケル量：50千tコバルト量：4千t
2020年4月
（MS=Mixed Sulphide。中間原料の一つ）（MHP＝Mixed Hydroxide Precipitate。中間原料の一つ）
インドネシアにおいて検討中の主な中間原料生産プロジェクト
電池向けの需要増加見込みを背景に複数のプロジェクトの建設計画が発表 中間原料→Class1ニッケル・硫酸ニッケルの生産量増加に期待 一方、HPALプロジェクトは生産が立ち上がるまでに時間がかかる傾向にある
12（出典：各社HP、報道情報を基に作成）
ステンレス48%
めっき5%
電池 30%
4. 需要用途別動向
（出典：Wood Mackenzie社2019年2月発表資料を基に作成）
2018年時点でニッケル需要に占めるステンレス鋼の割合は約7割 2040年には電池向け需要が約3割に達する見込み
非鉄合金・特殊鋼 11%
13
2040年＝4,030千t
非鉄合金・特殊鋼14%
めっき6%
ステンレス68%
2018年＝2,310千t
2018年ニッケル用途別需要 2040年ニッケル用途別需要（予測）
電池 5%
その他7%
その他6%
4. 需要用途別動向①ステンレス鋼
ステンレス鋼生産量は年々増加傾向、アジアが約77%を占める 中国・青山集団が2017年にインドネシアにおけるステンレス鋼生産開始 ステンレスの種類別の生産推移にも注目が必要
（出典：CRU） 14
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2014 2015 2016 2017 2018
ステンレス鋼生産量推移
中国 インド インドネシアその他アジア 欧州 米州アフリカ 中南米
（純分千t）
51百万t
アジア
●200系（オーステナイト/Cr-Ni-Mn系）
：ニッケル節減型（3～5％程）
【ステンレス鋼の種類】
●300系（オーステナイト/Cr-Ni系）
：ニッケル6～8%程
●400系（フェライト/マルテンサイト系）
：ニッケルは含まれない
ステンレス鋼生産種類別割合（2017年）
300系
200系400系
（出典：Macquarie社資料よりJOGMEC作成）
4. 需要用途別動向②電池向け 電池向けニッケル需要量の各社予測はばらつきがある 2025年で約160～400千t、2030年で約410～680千tと幅がある EV普及状況・正極材の動向次第で電池向けに必要なニッケル量は変わり、見通し
は難しい
（調査会社３社による予測を基にJOGMEC作成）
（Ni量千t）
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2025年 2030年
調査会社3社による電池向けニッケル需要量予測
＝3社平均値
4. 需要用途別動向②電池向け -硫酸ニッケル
リチウムイオン電池の原料となる硫酸ニッケルの生産量は2021年で100千t程と予測 インドネシアでの中間原料生産が増えれば硫酸ニッケル生産増にも影響
16（出典：INSGデータを基にJOGMEC作成）
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硫酸ニッケル生産量（中間原料由来）予測（Ni量千t） 電池向けニッケル需要160千tとすると…
？
5. 企業ごとの動向
Norilsk Nickel社 2018年ニッケル生産量：219千t 2019年は220～225千tの生産を予定【主なトピック】2018年10月、独・BASF社とEV電池材料にかかる戦略的パートナーシップ締結
Vale 2018年（Q3まで）ニッケル生産量：
180.6千t（前年同期比14.0%減）【主なトピック】2018年12月、VNC（ニューカレドニア）に500mUS$の投資計画
BHP【主なトピック】Nickel Westプロジェクト内のKwinana精錬所で2019年度末に電池向け硫酸ニッケル生産開始予定（生産量100千t/年）。硫酸コバルトも製造される見込み。
Glencore 2018年ニッケル生産量：123.8千t 操業する豪・Murrin Murrin鉱山では
2018年ニッケル35.5千t（前年比4%増）、コバルト2.9千t（前年比7%増）を生産
ニッケル生産各社はEV電池向け需要増加を見込みニッケル事業への投資を拡大
（出典：各社アニュアルレポート、JOGMEC ニュースフラッシュより作成） 17
6. まとめ ー今後の注目ポイント
●Class2ニッケル生産は増加、Class1は？2019年はプライマリーニッケル供給不足幅縮小の見込みも、Class2ニッケルの供給増がメイン。ステンレス向けClass1がClass2で代替されれば電池向けの原料が増加の可能性も
●インドネシア＝ニッケル需給の鍵を握る・主に中国企業によってNPI製錬所、ステンレス工場、中間原
料生産プロジェクトが立ち上がる・大統領選挙（4月17日）が予定、2022年鉱石禁輸の可能性を
含めた鉱業政策の動向は？
●需要＝ステンレスと電池のニッケル使用量に注目・ステンレス：アジアでの生産増が見込まれるが、系統別の
ステンレス生産推移への注目が必要・電池向け：長期的な見通しは不透明。EV普及が進めばニッケル需要全体への影響大 18
ご清聴ありがとうございました
JOGMEC 金属企画部調査課