31p1-am076 血清アルブミン によるフ トイン血中 正...

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31P1-am076 血清アルブミンによるフトイン血中度補正の必要◯瀬1 ,山本 和1 ,野内 裕紀 1 野 賢1 田 1 井 啓 1 1 ,久1 本 1 野 1 平井 1 1 神戸大病院薬) 【背景】フェニトイン(Pht)は、蛋白結合率が高いため、血清アルブミン値(Alb)よる血中濃度補正が必要であることが知られている。しかし、Pht 血中濃度を報告 する際、 Alb による補正を行なうか否かは施設によって様々であり、統一した見解 はなく、副作用との関連を実証した報告も少ない。そこで、当院の Pht 使用患者に おける Alb ならびに副作用発現状況を調査し、解析したので報告する。 【方法】過去 1 年間(2010/4/302011/3/31)に、Pht の血中濃度測定を行った低アル ブミン血症(Alb3.7 g/dL)の入院患者(透析患者を除く)を対象に、電子カルテより Alb、補正前血中濃度(C0)、副作用(眼振、傾眠、肝障害、幻覚)を調査した。さらに、 間々田らが報告した補正式(C=C0/0.9×(Alb/4.4)+0.1)により補正後血中濃度(C)を算 出し、Alb における影響をレトロスペクティブに調査した。 【結果と考察】対象 42 例のうち、副作用が認められた患者は 8 (19.1%)であった。 副作用発現群( 発現群) 及び副作用非発現群( 非発現群) において、C0 は発現群で 13.92±5.02 g/mL、非発現群で 11.18±6.95 g/mL であり、C においては発現群で 21.14±6.66 g/mL、非発現群で 17.53±10.83 g/mL と発現群において 20 g/mL を超 える高値を示した。このことから、低アルブミン血症の患者においては Pht 血中濃 度をより低く概算している可能性が示唆された。さらに、C0 が治療域であるにも かかわらず、C 20 g/mL 以上を示した患者は 42 例中 15 (35.7%)であり、その うち 6 (14.3%)で副作用が認められ、発現群の 75%を占めた。以上より、低アル ブミン血症の患者において補正後に中毒域に達する場合は、実測値だけでなく補 正値も考慮し、モニタリングしていくことが望ましいと考えられる。

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31P1-am076血清アルブミン値によるフェニトイン血中濃度補正の必要性◯瀬戸 崇光1,山本 和宏1,野々内 裕紀1,星野 賢悟1,宇田 篤史1,向井 啓1,山下 和彦 1,久米 学1,槇本 博雄1,平野 剛 1,平井 みどり1(1神戸大病院薬)

【背景】フェニトイン(Pht)は、蛋白結合率が高いため、血清アルブミン値(Alb)による血中濃度補正が必要であることが知られている。しかし、Pht血中濃度を報告する際、Albによる補正を行なうか否かは施設によって様々であり、統一した見解はなく、副作用との関連を実証した報告も少ない。そこで、当院の Pht使用患者における Albならびに副作用発現状況を調査し、解析したので報告する。 【方法】過去 1年間(2010/4/30~2011/3/31)に、Phtの血中濃度測定を行った低アルブミン血症(Alb<3.7 g/dL)の入院患者(透析患者を除く)を対象に、電子カルテよりAlb、補正前血中濃度(C0)、副作用(眼振、傾眠、肝障害、幻覚)を調査した。さらに、間々田らが報告した補正式(C=C0/0.9×(Alb/4.4)+0.1)により補正後血中濃度(C)を算出し、Albにおける影響をレトロスペクティブに調査した。 【結果と考察】対象 42例のうち、副作用が認められた患者は 8例(19.1%)であった。副作用発現群(発現群)及び副作用非発現群(非発現群)において、C0 は発現群で13.92±5.02 g/mL、非発現群で 11.18±6.95 g/mL であり、C においては発現群で21.14±6.66 g/mL、非発現群で 17.53±10.83 g/mLと発現群において 20 g/mLを超える高値を示した。このことから、低アルブミン血症の患者においては Pht血中濃度をより低く概算している可能性が示唆された。さらに、C0 が治療域であるにもかかわらず、Cが 20 g/mL以上を示した患者は 42例中 15例(35.7%)であり、そのうち 6例(14.3%)で副作用が認められ、発現群の 75%を占めた。以上より、低アルブミン血症の患者において補正後に中毒域に達する場合は、実測値だけでなく補正値も考慮し、モニタリングしていくことが望ましいと考えられる。