424 植物防疫第51巻第9号(1997年) (venturi) )の新発生 'レい...

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424 第 51 巻 第9号 (1997 年) 日 本におけるカーネーシ ョ ンハモ グ リ パエ (Liriomyzα dianthicolα (VENTURI) ) の新発生 さき あけ しま しゅん いち ハモグリパエには多くの農業害虫が含まれ (SPE:CEI九 1973) , その内のい く つかの種は人為的な移動に よ っ て 位界中の広い地域に分布を拡大し, 出作物に大き な被害 を及ぽしている (MI"KENBERG, 1988 ; TROUVE et al., 1993) 。 近年日本国内でも, 侵入害虫で薬剤抵抗性の発 達したマメハモグリパエ ( Lil'iomyza 11幼Lii BUllGESS) の発生 と 被害が各地で問題 に な っ て い る (西東, 1992)。 1996 年に, 北海道内の花き栽培段家でカーネ ーショ ンがきわめて高密度にハモグリパエの寄生を受けるとい う 事態が発生 し た 。 囲内では, カーネ ー シ ョ ン に寄生す るハモグリパエの報告がなかったことから発生地を調査 すると共に, 加害していた幼虫を採集, 飼育して成虫を 得た。 その結果, 本種は圏内では分布の報告のなかった カーネーションハモグリノてエ ( Liriomyza dianlhicola (VENTUl lI) ) である とが判明した (岩 崎, 1996 ; I\\f\,f\KI , 投稿中)。 こ れ ま で本種の発生地が ヨ ー ロ ッ パ の一部に限られていたことから, 本種の北海道内に おけ る発生は, 圏外から苗などに付着して侵入した個体群に 由来する ものである可能性が示唆された。 本種の形態および生態に関しては, O (1949, 2) に よ る 詳細 な 報 告 が あ る 。 一方, それ以降は本種 によ る重大な加害事例はわずかな報告 (uNGENS, 1966 ; PfNZES, 1983) に限られ, 本種の生態や防除に関する知 見は少ない。 また, 囲内においても, 発生を確認した 1996 年秋の加害状況は激 しか っ た も のの, 発生確認以 降わずかな調査しか行われていないため, 周年経過を含 む本種の詳細な発生状況は不明である。 しかし, 本穏が これまでハモグリパ を 扱 っ た ほ と ん ど の 解説持で詳 し く紹介されていないこと, また圏内の他地域においても 既 に 発生 し て い る か今後発生 す る 可能性が あ る こ と か ら, 本稿では, 本種の形態的な特徴に加え, ヨーロッパ における報告と国内の発生地での調査, 栽培者ーか ら の 間 A Newly Recorded Pest, Lirioza diaJ/lhicola ( V ENTUll I ) in .lapan. ßy Akeo [WASAKI and Syun'ichi MIS I I I�l八 (キーワー ド : カーネーシ ョ ン, カーネ ーショ ンハモグ リ パエ, 佼入虫, 形態, 生態) き取りによって得られた知見について紹介する。 I 形態, 分類上の位置 学名 Lir i 旬omyμzα diαηiol (VTU民 1 成虫 (図) 体 長 約 1 . 5� 1 . 9 mm, 麹長1.2mm(♂)� 1.7mm (♀)。 色彩はおおむねマメハモグリパエ ナスハモグリ パエな ど同属の他種 と 同じ : 頭部は大部分黄色, 胸部背 面は光沢のない灰黒色, 側面は大部分黄色で一部黒斑を 伴う。 腹部は大部分黒色で, 第 2�6 背板 の 側縁 お よ び 後縁は黄色。 胸lの腿節は黄色で基部を主体に黒色部を伴 う。 節お よ びふ 節は暗褐色。 触角第3節の先端は尖 る。 胸部背面の中剛毛は 2 列で, わずかに 2, 3 本が生 じるのみである。 麹 は m-m 脈 を 欠 き 前縁脈が R4+5 1派 末端と Ml+2 W�末端の間で途切れる。 lmm 図ー1 A カーネーションハモグリパエ, 雌 成 虫 左 {I! IJj窃, ß, C マメハモグリパエ (B 頭部側面, C 麹) (阪) 28

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424 植 物 防 疫 第 51 巻 第 9 号 (1997 年)

日 本におけるカーネーシ ョ ンハ モ グ リ パエ (Liriomyzα dianthicolα

(VENTURI) ) の新発生ゆ岩一山水

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立道海'レい斗イ

さ き あ け お

崎 暁 生し ま し ゅ ん い ち

島 俊

は じ め に

ハ モ グ リ パ エ に は 多 く の 農業害虫が含 ま れ (SPE:-ICEI九

1 973) , そ の 内 の い く つ か の種 は 人 為 的 な 移動 に よ っ て

位界中 の 広 い地域 に 分布 を拡大 し , 出作物 に 大 き な被害

を 及 ぽ し て い る (MI"KENBERG, 1 988 ; TROUVE et al . , 1993) 。 近年 日 本国 内 で も , 侵入害虫 で薬剤抵抗性 の発

達 し た マ メ ハ モ グ リ パエ (Lil'iomyza 11幼Lii BUllGESS)

の発生 と 被害が各地で問題 に な っ て い る (西東, 1992 ) 。

1996 年 に , 北 海 道 内 の 花 き 栽培段家 で カ ー ネ ー シ ョ

ン が き わ め て 高密度 に ハ モ グ リ パエ の寄生 を 受 け る と い

う 事態が発生 し た 。 囲 内 で は , カ ー ネ ー シ ョ ン に寄生す

る ハ モ グ リ パエ の報告がな か っ た こ と か ら 発生地 を調査

す る と 共 に , 加害 し て い た 幼虫 を採集, 飼育 し て成虫 を

得た。 そ の結果, 本種 は 圏 内 で は分布の報告の な か っ た

カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ ノ て エ (Liriomyza dianlhicola

(VENTUllI) ) で あ る こ と が 判 明 し た (岩 崎, 1 996 ;

I\\ f\,f\KI, 投 稿 中 ) 。 こ れ ま で本種の発生地が ヨ ー ロ ッ パ

の一部 に 限 ら れて い た こ と か ら , 本種の北海道内 に お け

る 発生 は , 圏外か ら 苗な ど に 付着 し て侵入 し た個体群に

由来す る も の で あ る 可能性が示唆 さ れた 。

本種の形態お よ び生態 に 関 し て は, Of\州�I川川11'ド削'0引0αL川 ( 1949,

l凹95臼2) に よ る 詳細 な報告があ る 。 一方, そ れ以降 は本種

に よ る 重大 な加害事例 は わ ずか な報告 ( I-IEuNGENS, 1966 ;

PfNZES, 1983) に 限 ら れ, 本種の 生 態 や 防除 に 関 す る 知

見 は 少 な い。 ま た , 囲 内 に お い て も , 発生 を 確認 し た

1996 年秋の加害状況 は 激 し か っ た も の の, 発生確認以

降わずか な調査 し か行われて い な い た め, 周年経過 を 含

む本種の詳細 な発生状況 は不明であ る 。 し か し , 本穏が

こ れ ま でハ モ グ リ パエ を扱 っ た ほ と ん ど の解説持で詳 し

く 紹介 さ れて い な い こ と , ま た 圏 内 の他地域 に お い て も

既 に 発生 し て い る か今後発生 す る 可能性が あ る こ と か

ら , 本稿では, 本種の形態的 な特徴 に 加 え , ヨ ー ロ ッ パ

に お け る 報告 と 国内 の発生地での調査, 栽培者ーか ら の間

A Newly Recorded Pest, Liriomyza diaJ/lhicola (VENTU ll I ) i n .lapan. ß y Akeo [WASAKI and Syun'ichi MIZUSI I I �l八

( キ ー ワ ー ド : カ ー ネ ー シ ョ ン, カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ パエ,佼入lli虫, 形態, 生態)

き 取 り に よ っ て 得 ら れた 知見 に つ い て 紹介す る 。

I 形態, 分類上の位置

学名 Lir i旬omyμzα diαηt幼hiμcηolaどαZ (VE臥NTU民1 成 虫 ( 図一寸1)

体 長 約 1 . 5� 1 . 9 mm, 麹 長 1 . 2 mm ( ♂ ) � 1 . 7 mm

( ♀ ) 。 色彩 は お お む ねマ メ ハ モ グ リ パエ , ナ ス ハ モ グ リ

パエ な ど同属の他種 と 同 じ : 頭部は大部分黄色, 胸部背

面 は光沢の な い灰黒色, 側面 は大部分黄色で一部黒斑 を

伴 う 。 腹部 は大部分黒色 で, 第 2�6 背板 の 側縁 お よ び

後縁 は黄色。 胸lの腿節 は黄色で基部 を 主体 に黒色部 を伴

う 。 !臣 節 お よ び ふ 節 は 暗褐色。 触 角 第 3 節 の 先端 は 尖

る 。 胸部背面 の 中 剛毛 は 2 列 で, わ ず か に 2, 3 本 が生

じ る の み で あ る 。 麹 は m-m 脈 を 欠 き 前 縁 脈 が R4+5 1派

末端 と M l +2 W�末端の 間 で途切れ る 。

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一ヨヨ

図 ー 1 A カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ パエ, 雌成虫左{I!IJj窃,ß, C マ メ ハ モ グ リ パエ ( B 頭部側面, C 麹)(阪医J)

一一一 28

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日 本 に お け る カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ パエ (LiTiomyza dianlhicola (V ENTUIH) ) の新発生 425

2 �� だ 円形, 半透明 の ゼ、 リ ー 状 で あ る 。 大 き さ は 0 . 12 x

0 . 25 mm (C!MIPOLlNI, 1952) 。 同 属 の 他種 同 様, 成 虫 が

葉 に 聞 け た 穴 の 内 側 に 産 み付 け ら れ る 。

3 幼 虫

淡黄色の ウ ジ で, 3 齢幼 虫 の 体長 は 約 2 . 7 mm。 前部

気 門 に は 6 個, 後 部 気 門 に は 3 個 の 気 門 小 孔 を 持 つ

(C!MIPOLlNI, 1952) (図 2) 。

4 踊 ( 囲踊)長 さ 2 mm 程度, 俵状で, 褐色 を呈す る 。 総体的な外

観 は 同属 の 他穫 と 同 じ であ る 。 後部気門の下方, )江門の

側上方 に左右 I 対, お の お の 2 個 の小 さ な 肉質突起 を持

つ (図 3) 。 こ の よ う な小突起 は , 同 属 の 民業害虫 で は

認め ら れ な い。

5 イ也種 と の識別 点

成虫 で は , m-m 脈 を 欠 く こ と で同属の他筏 と の 識別

は 容易 で あ る ( 図 ー 1 ) 。 こ の 特徴 は, Lirionη'za 属 の 中

では特異 で あ り , ご く 少数の穏 に の み知 ら れ る 。 日 本産

の同属の種 に は, 同様の特徴 を 持 つ も の は知 ら れて い な

い。 他 の 属 で は, ナ モ グ リ パ エ ( Ch1'Omatomyia hor­

licola (GOUREAU) ) を は じ め と す る Ch1'Omatomyia 属や

Phylomyza 属 な ど の種が m-m 脈 を 欠 く 。 ナ モ グ リ ノ fエ

は花 き 類 を 含 む 多 く の栽培植物 に 寄生 す る が, 体が全体

に灰黒色であ る こ と か ら , カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ パエ

と の識別 は容易 であ る 。

図 ー 2 Lin'o問yzo },扇段業害虫 3 種の四�TIの後官官気門A : カ ー ネ ー シ ョ ンハ モ グ リ ノ f エ , B : ナ スハ モ グ

リ パ エ , C マ メ ハ モ グ リ パ エ (原図) スケ ー ノレ :O . O l mm

図 - 3 カ ー ネ ー シ ョ ンハ モ グ リ パエ図面ji尾端

A : 後而, B : :左側蘭 (原図)

幼虫お よ び踊 (囲腕) で は , 後部気門 の 気門小孔が 3

個でそ の 内 の一つがか ぎ鈎状 に 下 方 に 伸 びな い こ と (図

-2) , 後部気門 の 下 方 に 左右各 2 個 の 肉 質突起が存在す

る 点 (図-3) で識別 で き る 。

上述の よ う に , 日 本 で は カ ー ネ ー シ ョ ン に 寄生す る ハ

モ グ リ パエ は こ れ ま で記録 さ れて い な い。 カ ー ネ ー シ ョ

ン の 葉 に も ぐ る 害虫 と し て は, 他 に ハ ナ パエ 科の ハ コ ベ

ハ ナ パ エ <Delia echiηata (SËGuv) ) が あ る が, 老齢幼

虫の体長が 6 mm 程度 と 比較的大 き い こ と に加 え , 葉の

幅い っ ぱい に 広が る 大 き な 白色 の 潜葉痕 を 形成 し , 成長

し た 後 に は成長点付近 に 侵入 し て 茎 の 内 部 を 食害す る た

め, 両者 を 混 同 す る 可能性 は 低 い 。

6 近縁種

近縁種 は Li1^ionりza gyjJsojJhilae BEIGER が知 ら れ る の

み で あ る 。 L. gyþsoþhilae は, ポー ラ ン ド の 山 間部 か ら

記録 さ れた種であ り , カ ー ネ ー シ ョ ン と 同 じ ナ デ シ コ 科

の カ ス ミ ソ ウ 属 ( Cyþso.ρhila) に 寄生 す る こ と が報告 さ

れて い る ( BEIGEll, 1 972 ; SI'ENCER, 1990) 。

E 分 布

カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ パ エ は, 1949 年 に イ タ リ ア

で記載 さ れた 。 こ れ ま で に 報告 さ れ て い る 発生地 は表ー 1

お よ び図-4 の と お り であ る 。 フ ラ ン ス の Nice, Antib白

な どでは常発 し て い る も の の, ヨ ー ロ ッ パ に お い て も 本

種 の 発 生 は 特 定 の 地域 に 限 ら れ て い る (MAllTINEZ, 私

信) 。 特筆 す べ き 点 は , こ れ ま での 本 種 の 発 生 に 関 す る

報告が, す べ て栽培 カ ー ネ ー シ ョ ン か ら の も の に 限 ら れ

る こ と で あ る 。 な お, 1983 年 に イ タ リ ア か ら コ ロ ン ビ

ア に i愉送 さ れた カ ー ネ ー シ ョ ン の切 り 花 に 本種が多数寄

生 し て い た 事例があ り , こ の切 り 花 は 検疫段階です べ て

焼却処分 さ れた (SI'ENCER, 1984) 。

本種は, ヨ ー ロ ッ パで も 分布が限 ら れて , ア ジ ア か ら

は報告がな い こ と か ら , 日 本 に も と も と 分布 し て い た 可

能性 は低い。 む し ろ 苗 に 寄生 し た 状態で, ヨ ー ロ ッ パか

ら 侵入 し た も の であ る 疑 い が強い。 事実, 発生地の農家

は こ れ ま でに ヨ ー ロ ッ パ産 の 苗 を導入, 栽培 し て い た と

の こ と であ る 。 カ ー ネ ー シ ョ ン の 苗 は , フ ラ ン ス , イ タ

リ ア , オ ラ ン ダ, ド イ ツ , イ ス ラ エ jレ, ア メ リ カ な ど数

多 く の固か ら 輸入 さ れ て い る 。 発生地で は こ れ ま で複数

の国か ら 苗 を 導入 し て い る こ と か ら , 本種の侵入元 を 特

定 す る に は至 っ て い な い。

皿 寄主植物, 生態 な ど

1 寄主植物こ れ ま で に知 ら れ て い る 本種 の寄主植物 は栽培カ ー ネ

一一一 29 一一一

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426 植 物 防 疫 第51巻 第9号(1997年)

表 - 1 カ ー ネー シ ョ ンハモ グ リ パエの発生地

国 名イ タ リ ア

ギ リ シ ャフ ラ ンス

スペイ ンベルギー

ハ ンガ リ ー

地 名 出 典Toscana VENTURI ( 1949) Province of Genova SËGuv (1951) Vintimille Napoli Iraclion Nice Antibes

Aalst area

Budapesta,

MARTINEZ (私信)MARTINEZ (私信)MARTINEZ (私信)D' AGUILAR et al. (1957) MARTINEZ (私信)SI'ENCER ( 1984) HEUNGENS ( 1966) SPENCER ( 1966) SPENCER ( 1966) PËNZES (1983)

旧ユーゴス ラ ビア Split,Dalmatia SI'ENCER ( 1966) 岩崎(1996)日本 北海道

0) : 販売さ れて いた カ ーネー シ ョ ンに寄生していた も の.

図 - 4 カ ーネ ー シ ョ ンハモ グ リ パエの ヨ ー ロ ッ パにおける発生地

・ : 発生地点, 0 : 発生地点が不明 (スペイ ン)

ー シ ョ ン (Dianthus caη'ophyllus L. , ナ デ シ コ 科) だ け

で あ り , 野生寄主 は 不 明 で あ る (SPENCER, 1990) 0 1996

年 に 本種が多発 し た ハ ウ ス 内 でカ ー ネ ー シ ョ ン に 隣接 し

て 栽培 さ れ て い た カ ス ミ ソ ウ ( Gyþsophila 仰niculata

L., ナ デ シ コ 科) へ の 寄生 は認 め ら れな か っ た。 日 本産

の Dianthus 属 で あ る 野生 ナ デ シ コ 類 に対す る 本種の寄

生の可否 は不明で あ る が, 本種の野外 に お け る 定着の可

能性 を検討す る 上で重要であ る 。

2 潜孔習性

幼虫 は葉の裏側 を主体に, 不規則な線状潜孔 を形成す

る 。 糞の粒 は 潜孔の側縁 に 断続 し な が ら 連 な る 。 潜孔 は

カ ス ミ ソ ウ に形成 さ れた ナ ス ハ モ グ リ パエ の も の と よ く

似て い る 。 老熟幼虫 は潜孔の末端 に 弧状の切れ 目 を 聞 け

て脱出 し , 土 中 で煽化す る 。 し ば し ば潜孔末端の脱出孔

や 葉 や 茎 の 表面 に 付着 し た ま ま 煽化 し て い る も の が あ

る 。 寄生 は下位葉 に 多 い が, 多発生条件下で は上位葉 に

も 高率 で寄生 し , 1996 年秋 に 調査 し た 多発生ハ ウ ス で

は, 上位 4 節 の 葉 の 寄生葉率 が 96% に 達 し た 。 ま た ,

こ のハ ウ ス で は, 茎 に も 高い頻度 で寄生が認 め ら れた 。

茎 へ の 寄 生 は , OAMPOLIN I ( 1949) に よ っ て も 報告 さ れ

て お り , 本種の潜孔習性の特徴の よ う で あ る 。 多発生条

件下 に お け る 本種の上位葉への高 い 寄生率 は, 類似条件

での カ ス ミ ソ ウ に お げ る ナ ス ハ モ グ リ パエ の そ れ を上回

る も の であ っ た 。 た だ し, こ の傾向が本種の持つ生態的

な特徴 と , 下位葉や茎数が少 な い と い う カ ー ネ ー シ ョ ン

の持つ形態的な性質の, いずれに起因す る も の で あ る の

か は 明 ら か で は な い。

3 生態

イ タ リ ア で は, 本種 は 4 月 か ら 10 月 に か け て 少 な く

と も 7 世代 を 経過 す る (OAMPOLIN I , 1949) 。 ハ ン ガ リ ー

では, 温室内 で の 主 な加害期間 は 5 月 か ら 11 月 上旬 で,

そ の 間多 く の世代 を経過 し , 1 世代 の所要 日 数 は 21�33

日 であ っ た (PËNZES, 1983) 。 越冬 は蛸で行わ れ る 。 し か

し休眠の有無 は 明 ら かで は な い。 MARTINEZ (私信) は,

本種が北海道の よ う な寒冷地では, 特 に 積雪下で は越冬

で き な い の で は な い か と 推測 し て い る 。

成虫 の発生消長 は, 黄色の粘着 ト ラ ッ プに よ っ て容易

に把握す る こ と がで き る (PËNZES, 1983) 。 北海道内の発

生地の加温越冬栽培ハ ウ ス (1 月 下旬 よ り 加温強化) に

設置 し た 黄色粘着 ト ラ ッ プへの成虫の捕獲 は , 設置 を 開

始 し た 11 月 5 日 以降 2 月 14 日 ま で皆無だ っ た 。 初 め て

捕獲 さ れた 2 月 15 日 以降の成虫の 日 当 た り 捕獲数 は , 3

月 20�26 日 に 1 回 目 の ピ ー ク を 迎 え , 次 い で 4 月 17 日

以降に再び増加 し た (図-5) 。 こ の こ と か ら , ヨ ー ロ ツ

パでの報告 と 同様, 本種 は 30 日 程度 で 1 世代 を 経過 し

た も の と 思わ れ る 。

4 カ ー ネ ー シ ョ ン の被害

幼虫 は一葉 に し ば し ば 6�8 頭 も ぐ る こ と が あ る 。 激

し い寄生加害 を 受 け た場合, カ ー ネ ー シ ョ ン の花数が減

少 し た り , 花色が鈍 っ た り , 花 も ち し な く な る 。 葉や茎

に 被 害 の 目 立 つ も の は 商 品 価 値 が 著 し く 低 下 す る

(OAMI'OLIN I , 1949) 。 カ ー ネ ー シ ョ ン は, 通常葉 を 残 し た

ま ま の状態で商品 と す る た め, 上位葉への被害 は商品価

値に大 き く 影響す る 。 ま た , 茎 に潜孔が残 っ た場合, 商

品価値 へ の 影響 は避 け ら れ な い。 1996 年秋 に 調 査 し た

多発生ハ ウ ス では, 上位葉や茎への高密度 の寄生に よ っ

て , 採花可能 な す べ て の茎の商品価値が損 な わ れた 。

5 天敵

国外で は , OAMPOLIN I ( 1949) , GRENOUILLET et al . ( 1993)

に よ り , Chη'sonotomyia formosa (WESTW脚) , D幼少hs

一一一 30 一一一

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日 本 に お け る カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ パエ (Lirio川yza dianll!ico/a (VEl':TURI) ) の新発生 427

日 20 , • 当 1 "り誘 10 ←…ー 一 一一.. . . _ _ . _ -殺頭 5 t 数 。 |

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5

1 I 1 2 4 月

図 - 5 加ìlilt越冬ノ、 ウ スに お け る カ ー ネ ー シ ョ ンハ モ グ リパエ 成虫の策ー色粘着 ト ラ ッ プ に よ る 誘殺消長 (A)

と , ハ ウ ス内の 1 l�2 月 の最高, 最低地刊誌 (8)

IS,αea (WALI<ER ) , ChηIsochmis 0γbicularis (NEES) ( ヒ メコ パ チ 科) , Halticoþtent circulus (W ALI<EI<) ( コ ガ ネ コ

パ チ 科) が 報 告 さ れ て い る 。 圏 内 で は, Halticoþtent

circulus (W ALKER) の 寄生が確認 さ れた (北海道大学,

池田英司氏同定) 。 防除か ら 日 数 の 経過 し て い な か っ た

1996 年 9 月 お よ び 10 月 に 採集 し た 幼虫 へ の寄生は皆無

だ っ た が, 防|徐中止後の周年 1 1 月 29 日 に ハ ウ ス 内 の床

土 中 か ら 採集 し た 婦 の寄生率 は 32 . 5% に 上 り , 寄 生蜂

が本種の密度抑制要因 に な り 得 る こ と が示唆 さ れた。

W 発生経過 と分布拡大の可能性

本種の発生が認め ら れて い る の は, 北海道内 の数戸の

栽培農家 だ け であ る 。 発生確認後, 北海道病害虫防除所

が行 っ た北海道内 の栽培地帯での調査で は, 新た な発生

地は見い だ さ れず, 現在判明 し て い る 限 り では , 発生は

ご く 狭 い地域の少数の農家 に 限 ら れて い る 。

発生農家 の 話 で は , 1990 年 こ ろ か ら カ ー ネ ー シ ョ ン

の 葉 に 本種 に よ る も の と 思わ れ る 被害が生 じ て い た よ う

で, 本種 は こ の 当 時か ら 発生 し て い た 可能性があ る 。 発

生地で は , 冬季に加温す る 加温越冬ハ ウ ス と , 加混せず

に 春以降苗 を 定植す る 無加温ノ 、 ゥ ス があ る 。 加温越冬ノ 、

ウ ス で 1997 年 の 春 以 降 も 本種の発生 が認 め ら れ る こ と

か ら , 発生地で本種が定着 し て い る こ と は 明 ら か で あ

る 。 1996 年 1 1 月 か ら 97 年 2 月 に か け て の 加温越冬ハ

ウ ス 内 の 日 当 た り 最高, 最低地 視 は 図-5 の と お り で あ

り , こ の期間 の最低地混 は 4 _ 70Cで あ っ た 。 ま た , 最低

地温が 7 . 20C以下 と な る 期間 は, 12 月 20 日 か ら 1 月 17

日 に わ た っ た こ と か ら , 本 種 の �南 は 約 1 か 月 間, 7 . 20C

以下の温度条件下で生存可能で あ る と 考 え ら れた。 無加

温ハ ウ ス での越冬の有無 は未確認であ る 。

本種の寄主植物 が カ ー ネ ー シ ョ ン に [浪 ら れ る こ と か

国 外 (母 株) ト一一「

輸 入 |

泊殖 ・ 前生産 取 次 ぎ二白内種融証二一γ 一二二一J

苗の移動 は な い

図 - 6 カ ー ネ ー シ ョ ンの輸入菌の供給体制

ら , 切 り 花 カ ー ネ ー シ ョ ン に寄生 し た 状態で消費者の手

に 渡 っ た 後 に 本種が寄生可能 な植物 に た ど り 着 く 可能性

は 低 い も の と 思わ れ る 。 図 6 に , カ ー ネ ー シ ョ ン の輸

入茄の供給体制 を 示 し た 。 切 り 花 カ ー ネ ー シ ョ ン は , す

べ て 挿芽 に よ る 栄養繁殖に よ り 増殖 し て お り , 国外か ら

輸入 し た 苗 を 種苗会社で増殖 し て か ら 個 々 の生産者 に 販

売す る のが主流であ る 。 一方, 圏 内 の種苗会社が輸入苗

の取次の み を行 う こ と も あ り , ご く 一部 だが生産者が国

外産の苗 を直後入手す る ケ ー ス も あ る 。 生産地で は , 輸

入 苗 に [授 ら ず, 共同育苗や生産者間の 苗 の 移動 は ほ と ん

ど な い か, ご く わ ずか で あ る 。 し た が っ て , 本種が種苗

会社の育苗施設で発生 し た り , 新 た に侵入 す る 場合 を 除

い て , 本種が圏内 で急速 に発 生拡大 す る 可能性 は低 い も

の と 思わ れ る 。 現在判明 し て い る 発生地域 に つ い て も ,

栽培農家が隣接せ ず点在す る よ う に位置 し て い る こ と か

ら , 本種 の栽培者間 の 移動 も ほ と ん ど な い と 考 え ら れ

る 。 な お , こ れ ま で カ ー ネ ー シ ョ ン 苗 の輸入時の検査で

本種が検出 さ れた 事例 は な い (横浜植物防疫所) 。

V 防 除

本穫の防除 に 関 す る 知見 は , き わ め て 少 な し ハ ン ガ

リ ー で成虫 に 対 し て シペJレ メ ト リ ン 剤, 若齢幼虫 に 対 し

て オ キ サ ミ ル剤が有効だ っ た と す る 報告 が あ る の み で あ

る (PtNZES, 1983) 。 北海道 内 の 発生地で は, 1996 年 に は

被害が 目 立 ち 始 め て か ら 数種の殺虫 剤 に よ る 防除 を 繰 り

返 し た に も かかわ ら ず, 秋 に は上述の よ う な激 し い被害

を 生 じ る に 至 っ た 。 し か し, こ の こ と を も っ て 本種がマ

メ ハ モ グ リ パエ の よ う に 薬 剤 に対す る 感受性 を低下 さ せ

て い る と 判 断 す る の は 早計だ ろ う 。 1997 年 に は, 加温

越冬ハ ウ ス に お い て成虫の発生 が確認 さ れ て か ら 防除 を

開始す る こ と に よ り , 4 月 下旬�5 月 上旬 の採花期 に は,

商品価値 に 影響 の あ る よ う な 被 害 は 認 め ら れ な か っ た

(竹井, 私信) 。 ま た , ヨ ー ロ ッ パ に お い て も 本種 に つ い

一一一 31 一一一

Page 5: 424 植物防疫第51巻第9号(1997年) (VENTURI) )の新発生 'レい ...jppa.or.jp/archive/pdf/51_09_28.pdf424 植物防疫第51巻第9号(1997年) 日本におけるカーネーションハモグリパエ(Liriomyzαdianthicolα

428 植 物 防 疫 第51巻 第9号(1997年)

て薬剤抵抗性が報告 さ れた 事例 は な い。

薬剤散布以外の 防除法や留意点 な ど に つ い て は, マ メ

ハ モ グ リ パエ に つ い て西東 (1992) が提案 し て お り , こ

れ を適用 す る こ と がで き る だ ろ う 。 特に, 植物残澄の処

理, 改植時のァ定期間の放置, 他作物の栽培な ど は , カ

ー ネ ー シ ョ ン の み を寄主植物 と す る 本種 を 防除す る 上で

は有効な手段であ る こ と が期待 さ れ る 。 ま た , 未発生地

では, 苗 を 定植す る 際 に , 幼虫 に よ る 寄生がな い こ と を

確認す る こ と は本種の侵入 を 未然 に 防 ぐ 上 で重要 で あ

る 。

Liriomyza 属害虫の冬季, 低温条件での生存率 に つ い

て は, MILLER et al . (1985) , LAREW et al . ( 1986) (L. trifolii) や MAC∞NALD et al . ( 1993) (L. huidobrensis)

の報告が あ る 。 圏 内 で も , 1995 年 に 北海道南部 の 上磯

町, 七飯町で発生 し た マ メ ハ モ グ リ パエ が, 冬季の ビニ

ルハ ウ ス の被覆除去 に よ っ て 翌年 に は発生が皆無 に な っ

た (水越, 私信) 。 カ ー ネ ー シ ョ ン ハ モ グ リ パエ の低温

下 に お け る 生存 に つ い て は未検討で あ る が, 本種の発生

地が ヨ ー ロ ッ パの比較的南方 に 限 ら れ る こ と か ら , 寒冷

地の無加温ハ ウ ス や露地では本種の生存率が低い こ と が

期待 さ れ, ピニ ルハ ウ ス では, 冬季の被覆除去 に よ っ て

本種の根絶 を比較的容易 に 行 え る 可能性が あ る 。

お わ り に

冒頭で も 述べた が, カ ー ネ ー シ ョ ンハ モ グ リ パエ は 圏

内 で発見 さ れて か ら 日 が浅い こ と か ら , 圏 内 に お げ る 発

生状況 に つ い て の情報が限 ら れ る の が現状であ る 。 今後

本種が, 発生地で ど の よ う な害虫 と し て の位置づ げ を さ

れて い く の か, 北海道以外の地域で発生す る の か と い っ

た こ と も , 現時点では不明であ る 。 本種が今後広い地域

に 定着す る の であ れ ば, 生活史等 を 明 ら か に し , 的確な

防除 に よ っ て 本種 を ヨ ー ロ ッ パ に お け る の と 同様マ イ ナ

ー害虫 に す る こ と が望 ま れ る 。 ま た , 発生地が現在判明

し て い る 地域 に 限 ら れ る の で あ れ ば, 早急に対策 を講 じ

て本種 を 根絶す る こ と が理想的であ ろ う 。

北海道農政部花田勉総括専門技術員, 空知西部地区農

業改良普及セ ン タ ー竹井伸氏 に は, 本種の発生 に つ い て

の情報 を提供 い た だ き , 調査 に 際 し て ご協力 を い た だ い

た 。 北海道立花 ・ 野菜技術セ ン タ 一川名淳ニ主任専門技

術員 に は カ ー ネ ー シ ョ ン苗の供給体制 に つ い て ご教示 い

た だ い た 。 1. N. R . A . ( フ ラ ン ス ) の M. MARTlNEZ 氏 に

は本種発見当初か ら 種々 の ご協力 を い た だ い た 。 記 し て

感謝の意を表す る 。

引 用 文 献1 ) BEIGER, M. ( 1972) : Polskie Pismo ent. 42 ( 1 ) ・

121�130. 2) CIAMI勺LlNI , M. ( 1949) : Redia 34 : 289�301 . 3) 一一一一一 ( 1952) : ib id . 37 : 69� 120 4) GRENOUlLLET, C. et al . ( 1993) : “Liriomyza" Col1oque

sur les mouches mineuses des plantes cultiv邑esMontpellier, 24-25-26 Mars 1993 : 143� 156.

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18) VENTURI, F. ( 1949) : Redia 34 : 161�164.

_..._--一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一._.・一一 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-新 刊 紹 介

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(吉田孝ニ)

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