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6.フェージング伝搬路 無線信号の数式表現 フェージングの伝播路のモデル化 学習内容

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6.フェージング伝搬路

無線信号の数式表現フェージングの伝播路のモデル化

学習内容

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6.1 レイリーフェージング

建物

建物

端末移動方向

屋外伝播路モデル(セルラ等)

端末は移動しながら、様々な方向からの信号を受信する。

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反射波によって起こるドップラー周波数シフト

fc : 搬送波周波数

i

v[m/s]

cos cosi d i c ivf f fc

反射波

6.1.1 ドップラー周波数シフト

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6.1.2 信号の複素表現

( ) ( ) cos(2 ( ))T cs t g t f t t 変調:正弦波の振幅や位相を変化させる

cos sinje j オイラーの公式より

cos Re[ ]je 即ち

( ) ( )Re[exp{ (2 ( ))}]T cs t g t j f t t

2( )( ) Re[ ( ) ]cj f tj tTs t g t e e

ここを詳しく考える

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6.1.3 複素包絡線

( )( ) j tg t e をベクトルで考える。

Re

Im

1

1( )j te

( )t

( )( ) ( )j tg t e m t

( ) cos ( )g t t

( )sin ( )g t t

振幅と位相の両方の情報を含んでいる

複素包絡線

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送信信号

( ) Re[ ( )exp( 2 )]T cs t m t j f t

反射波

( ) Re[ ( ) exp{ 2 ( )c s }o ]i d iR icA fs t m t j f t

振幅変動(減衰) ドップラー周波数シフト 遅延

6.1.4 信号の反射

端末が移動しているので、ドップラー周波数シフトが発生する。反射により、振幅変動・時間遅延が発生する。

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受信信号は、多数の反射波の合成波

( ) Re ( )exp{ 2 ( )c s }oR ci

i d i iA fs t m t j f t

Re[ ( ) ( ) exp( 2 )]i ci

c t m t j f t

反射波による変動分

Re (exp( 2 c )exp( 2os ) )cd i ii

i m t fA j tf t j

6.1.5 受信信号

反射波による変動分を で表す。( )ic t

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( ) Re[ ( ) ( ) exp( 2 )]R i ci

s t c t m t j f t

6.1.6 フェージングチャネル

( ) Re[ ( ) ( ) exp( 2 )]R cs t c t m t j f t

( ) ( )ii

c t c t

と表すと

全反射波による変動

と表すことができる。次にこの物理的意味を考える。

フェージングを受けた受信信号は、簡単に

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( )Ts t ( )Rs t

( ) ( ) ( )I Qc t c t jc t

( ) cos(2 cos )I i d i ii

c t A f t

( ) sin(2 cos )Q i d i ii

c t A f t

フェージングチャネル

6.1.7 フェージングチャネルのモデル

と表す

乗算

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多くの伝送路では、マルチパス数は非常に大

cI(t)、cQ(t)は正規分布(ガウス分布)

中央極限定理の適用

6.1.8 中央極限定理

中央極限定理

ランダムな変数の集合体全体の分布は、変数の個数が増えるに連れてガウス分布に近づく

1個 2個 3個

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6.1.9 ガウス分布

2

2

1 ( )( ) exp22

x xp x

p(x)

xx

確率密度関数p(x)が平均値 x と分散 で完全に定義できる分布

中央極限定理により、多くの現象(雑音等)がガウス分布で表される。

ガウス分布の重要性

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6.1.10 レイリーフェージングの影響

Re

Im

( )t

( ) ( ) ( )I Qc t c t c t

( )Ic t

( )Qc t

フェージングチャネル

( )r t

実際は、信号の振幅や位相に情報を乗せて通信するのでフェージングにより受信信号の振幅や位相の受ける影響がが重要となる

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結合確率密度関数

22

2 2

2 2

2 2

( , ) ( ) ( )

1 1exp exp2 22 2

1 exp2 2

I Q I Q

QI

I Q

p c c p c p c

cc

c c

6.1.11 振幅・位相の確率分布

を使う

注: は独立なガウス分布,I Qc c

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:振幅特性

:位相特性

( )( ) ( ) ( ) ( ) j tI Qc t c t jc t r t e

2 2( ) ( ) ( )I Qr t c t c t

1 ( )( ) tan

( )Q

I

c tt

c t

と書ける

極座標表示でフェージングチャネルは

( , ), ( ), ( )I Q I Qp c c p c p c は既知

( ), ( )p r p 最終的に知りたいのは、

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( , ) ( , )I Qp c c q r の変数変換が必要

公式: ( ) ( )( ) ( )

( , ) ( , )( ) ( )( ) ( )

I I

I QQ Q

c t c tr t t

q r p c cc t c tr t t

ヤコビアン

( ) ( , )I Qr t p c c

( ) ( ) cos ( )( ) ( ) sin ( )

I

Q

c t r t tc t r t t

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2 2

0 0

1( , ) exp2 2

I Qc cq r r

b b

従って、

2

0 0

exp2 2

r rb b

公式:

( ) ( , )p x p x y dy

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2 2

0 00

1( ) exp2 2

rq r r db b

2

0 0

exp2

r rb b

2

0 00

1( ) exp2 2

rq r drb b

2

0 0

1 1exp2 2 2

rrb

・・・・・・・・・・・・振幅特性

・・・・位相特性

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レイリー分布

p(x)

xa√

2

( ) exp2

x xp xa a

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見通し内通信(Line of sight : LOS)では、受信信号には反射波以外に送信アンテナからの直接波が含まれる。

受信信号=直接波+反射、散乱、拡散波

基地局

移動局

6.2 ライスフェージング

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直接波

反射、散乱、回折波

( ) Re[ ( ) exp{ 2 ( cos ) }]R dir c d dirs t A m t j f f t

Re ( )exp{ 2 ( cos ) }i c d i ii

A m t j f f t

( ) Re[ ( ) ( ) exp( 2 )]R cs t c t m t j f t

6.2.1 受信信号

レイリーフェージング同様、信号成分とフェージングによる変動を分離すると

と表現できる。

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フェージング変動成分は、直接波が含まれているため

となる。このとき、確率密度関数はレイリーフェージングと異なり

( ) exp( 2 cos ) ( ) ( )dir d d I Qc t A j f t c t jc t

2 2 2 cos( , ) exp2 2

dir dir

rand rand

r A A rrp rb b

rとは独立でない

6.2.2 ライスフェージングのp.d.f.

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p(r)

r/

直接波小(レイリー分布)

直接波大(ガウス分布)

仲上-ライス分布

6.2.3 ライス分布

r/の割合により、分布の形が変化する

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6.3 周波数選択性フェージング

伝送される信号の帯域が広くなるにつれて各到来波の遅延時間差がシンボル長と同程度になってくる(TVのゴーストも遅延波が原因)

近年のデジタル通信高速化・広帯域化の進行により、フラットフェージングから周波数選択性フェージング環境の通信へ。

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直接波

遅延波(時間差:i)i

,ki kiA

0 0( ) Re ( )exp{ 2 ( cos ) }R ki i c d ki ki

i ks t A m t j f f t j

0Re { ( ) ( ) ( )}exp( 2 )i i c

ic t t m t j f t

時間遅延

6.3.1 受信信号

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1( )

0t

t

f(t)00

tt

1( )

0t

tt

t

f(t)

6.3.2 デルタ関数

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( ) Re { ( , ) ( ) exp( 2 )R cs t c t m t j f t

0( , ) ( ) ( )i i

ic t c t t

0( ) exp( 2 cos )i ki d ki ki

kc t A j f t j

遅延プロファイル

6.3.3 周波数選択性フェージングチャネル

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6.3.4 遅延プロファイル

伝播路の遅延波特性を表すもので遅延時間対受信電力の関係

受信電力

遅延時間

直接波

反射波

1 2 30

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伝送路モデル

( )Ts t ( )Rs t

( )h t

周波数特性

周波数

振幅

1/

6.3.5 伝送路特性

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周波数

振幅

送信信号のスペクトラム1B

周波数

振幅

受信信号のスペクトラム(歪み)

伝送路のスペクトラム

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6.3.6 時間波形で見た影響

(広帯域)送信信号

遅延信号

受信信号 歪み

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6.3.7 周波数選択性フェージング対策

マルチキャリア伝送技術(例:OFDMなど)

伝送路による歪みを受けない程度に伝送速度を落とし、それを補償するため複数のキャリアを用いて伝送する>フラットフェージングチャネルとみなされる

周波数

振幅 電力の増減(歪ではない)