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― 第 6 章 ― モチベーションの維持

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Page 1: ― 第6章 - Hokkaido68 第6章 モチベーションの維持 ―導入期のポイント― ① トレーニングによって日常生活が改善することを具体例を用いて説明する

― 第6章 ―

モチベーションの維持

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第6章 モチベーションの維持

■ モチベーションの維持

この事業を効果的なものとするためには、参加者の主体的な取り組みが不可欠で、参加者自身に明確な目的を持たせ、モチベーションを高い状態で維持する必要がある。「観察」、「声かけ」、「グループワーク」等によって、参加者のニーズ把握を十分に

行い、参加者の意見を活かして事業運営を行うなど、受け身的とならないための工夫が必要である。高齢者であってもトレーニングによって体力が向上することは、種々の研究で明ら

かである。しかしながら、トレーニングを中断するともとに戻るため、廃用症候を防ぎ生活機能を維持するうえで、トレーニングを生涯継続する必要がある。この事業においても、3か月にわたるトレーニングで確実な体力向上が期待できるが、獲得した体力を維持するためには、参加者自身による継続が必要である。

この章では、参加者がモチベーションを高く保ちながら主体的に参加継続するための、支援のポイントについて述べる。

体力レベルの変化に応じたモチベーション維持

毎日の生活に運動習慣を組み込む時期

体力向上に 合わせたメニュー

無理 させない

事業への 参加呼びかけ

楽しさ 自信

自己効力感 励まし

発展期

維持期

導入期

毎日の生活に

運動習慣を

組み込む時期

励まし

仲間

活動の場

自発的 運動継続

トレーニング期間

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第 6

第6章 モチベーションの維持

■ 事業への参加呼びかけ時のモチベーション喚起

一般に高齢になると次第に活動の機会が少なくなり体力が低下するが、体力や生活機能の低下は徐々に起こるため、本人はあまり問題とは捉えていない。そのため、広報等でトレーニング事業への参加を広く呼びかけても、応募するのはもともと運動習慣がある者に限られ、体力が低下している者の応募を得るのは難しい。トレーニング効果が高いと考えられる体力低下者への参加呼びかけにあたっては、

次のことに留意し、個別に対応する必要がある。

■ トレーニング開始当初(導入期)のモチベーション

事業開始当初は、お互いに初対面の場合が多く、緊張した面持ちの参加者が多い。また、体力の低下した参加者の場合、トレーニングが続けられるかどうか不安を持っていることが多い。体力がある者にとっては、導入期の低負荷で行われるトレーニングでは、体力向上

を実感できない。導入期の関わりによっては、その後の脱落の原因となる場合もあり、重要な時期である。

以上のことから、導入期はなるべく多くの参加者が楽しく不安なく参加できるよう、次のことに留意して支援を行う。

留   意   事   項

① 事業担当側がマニュアル等をよく読み、トレーニング効果について正しく理解し、信念をもって説明する。

② 参加勧奨にあたり、体力が低下していることが原因で起こっている日常生活の不都合を、個別に十分アセスメントする。

③ トレーニングによって改善される事項を具体的に本人に提示し、本人の望みと一致するかどうかを十分確認する。

④ トレーニングメニューは無理なく実践できるものであることを説明する。

⑤ 参加を無理にお願いすると受け身的となるので避ける。なるべくオープンな質問を行い、参加者自身が「自分のためにトレーニングしたい」と発言できるよう配慮する。

⑥ トレーニングでQOLが向上した身近な例を紹介する。

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第6章 モチベーションの維持

―導入期のポイント―

① トレーニングによって日常生活が改善することを具体例を用いて説明する

② 体力の低下した参加者でも無理なく継続できるよう休憩時間を十分とる

③ 初期には負荷を小さくして、正しいフォームを覚えることに重点を置く

④ 体力に合わせてグループを構成し、体力への不安や気遣いを少なくする

⑤ 前回より改善した点を必ず見つけ励まし自信をつけさせる

⑥ 3か月間の見通しを示し、「なんとかやれそうだ」という気持ちにさせる

⑦ 参加者が自分の体力の変化を実感できるよう記録を工夫し、本人にわかり

やすく示す

⑧ 参加者間の緊張をほぐす意味で、レクリエーションの要素も加味する

⑨ 支援者の笑顔(支援者が楽しくないと参加者は楽しめない)

―維持期のポイント―

① これまでできなかったメニューができるようになったり、できる回数が増

えるなど、体力の向上していることを意図して褒め、自信をつけさせる

② 無理してけがをすると、トレーニングが継続できなくなったり、体力に対

する自信を失うので、冷静に負荷を調整するよう働きかける

③ 日常生活においても変化が実感できる時期なので、よく聞き出すように心

がける

■ 維持期のモチベーション

トレーニングも中盤になると正しいフォームが身に付き、参加者自身が体力の向上を実感できるため、最もモチベーションの高い時期といえる。一方、自己の体力に対する過信から無理をしやすい時期でもある。この時期は、日に日に体力が向上するため、適正な負荷調整によりトレーニングを

継続することが、モチベーションの維持に必要である。この時期に留意すべきことは次のとおりである。

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第 6

第6章 モチベーションの維持

―発展期のポイント―

① モデル市町村の報告では、参加者は家庭においても自主的に運動を行って

おり、家庭でも十分継続は可能である

② 家庭における生活リズムを十分把握し、無理なく日課として運動習慣を組

み込めるよう支援する

③ 家庭においては、身近に支援者がいない中で運動が行われることを考慮し、

家庭での運動状況を十分に把握し、より安全面に配慮した運動習慣を定着

させる

■ 発展期のモチベーション

トレーニングも終盤になると、顕著な体力向上は望めなくなり安定期をむかえるが、参加者にとっては最後の踏ん張り時期であり、モチベーションが比較的高く維持される時期である。ただし、これまで獲得した体力を再び低下させないためには、事業が終了した後の

運動継続が重要であり、そのための準備が必要な時期でもある。事業終了後は、定期的に集まることはできなくなり、家庭での運動となることを考

えると、支援にあたっては次の事項について留意する必要がある。

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第6章 モチベーションの維持

―事業終了後のポイント―

① 事業終盤において再度参加目的を確認し、体力の向上を意識させ、今後の

運動継続の必要性を本人の口から発言させる

② 参加者とともに、無理なく家庭でも継続できる運動メニューを確認する

③ 運動を中断したくなる場合を例示し、あらかじめ対処法を伝える

④ トレーニング期間を通して自主グループの形成を促し、仲間を確保する

⑤ 運動を継続するための場についての積極的な情報の提供や、会場の確保を

行う

⑥ 運動をやめた時から、再び体力が低下し以前の状況に戻ることを具体的に

個別に伝える

⑦ 事業終了後も、定期的に運動継続の状況を確認し、必要な助言を行うため

に、フォローアップ教室等を開催する

⑧ トレーニングの場の開放日を設け、仲間とともにトレーニングを継続でき

る場を確保する

■ 事業終了後のモチベーション

事業実施期間中は、定期的に集まる機会があり、多少受け身的であっても運動は継続される。しかしながら、事業終了後はそのような場もなくなり本人の意志次第となる。事業終了後も運動が継続されるためには、次の事項について留意する必要がある。

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― 第7章 ―

トレーニングの管理

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第7章 トレーニングの管理

1 トレーニングメニューの工夫

当該メニューを実施するにあたり、理学療法士等が関節可動域制限、筋力低下等でメニューをこなすことが困難であると判断した者については、実施可能な代替メニューを作成し導入する。代替メニューの作成に関しては、対象者の身体状況により異なるため、理学療法士に

作成から初期指導を依頼するとともに、指導者は力のいれ具合や可動域等を十分理解したうえで、対象者を指導していくことが必要である。また、できるだけ他の参加者と一連の種目を行う中で取り入れられるようなメニュー

(ひとりだけ別の場所で実施することのないように。)作りに配慮する。

トレーニングの継続意欲を高めるためのレクリエーションの導入は、参加者の良好な人間関係の形成にも有効であり、短時間の導入、特にトレーニング開始時期に導入することは意義がある。

2 疲れへの対応

運動習慣のない者が運動を開始した場合、しばらくは疲れやすい状態が続くことがある。特にトレーニング開始時期、負荷の変更を行った時は筋疲労、筋肉痛が出現しやすい。開始前の問診等で疲れを確認し、負荷の軽減も考慮する。

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第 7

第7章 トレーニングの管理

3 痛みへの対応

高齢者は、慢性的な整形外科的疾患を持っていることが多い。特に、腰痛、膝痛、肩痛などは運動によって悪化する危険もある。痛みの主な原因として次のものがあげられる。

また、痛みも疲労と同様、トレーニング終了後に出現することもあるため、開始前には前回終了後に体調の変化があったかどうか確認し、適切な対処をとることにより運動による悪化を防ぐことができる。痛みを誘発しないために特に以下の点に配慮する。

① もともと持つ症状から起こる痛み

② 筋肉痛

③ ストレッチや誤ったフォームによって生じる痛み

④ 心因性の痛み

⑤ 過大な負荷やセット数によって生ずる痛み(オーバーワーク)

① ストレッチで反動をつけることは避ける

② 急激な負荷の変更も避ける

③ 痛みが出現した場合、そのメニューを痛みが軽減するまで中止するこ

とも必要

④ 痛みの原因が上記であげたどの原因にあたるか検討する

⑤ 痛みが出現しやすい部位としては、腰部、膝部、肩部が多い

⑥ 膝の変形がある人や、膝痛の既往のある者は、特に膝立ちの運動は避

けることも必要

⑦ 痛みがトレーニング中、出現した際には、痛みを生ずる該当種目は中

止する

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おわりに

高齢者が住み慣れた地域で、安心して暮らし続けるためには、様々な面から社会全体で支援することが大切であるとともに、高齢者自らが、心身機能の低下を防ぎ、健康で生き生きとした在宅生活を続けるための「介護予防」に取り組んでいくことが必要となる。

本マニュアルが提案する「高齢者体力向上トレーニング」は、高齢者の廃用症候を防ぎ、日常生活での活動性を維持・向上させるためのひとつの手法であるが、地域でこれを実践するために、主催者側には、介護予防への正しい理解や目的意識が求められ、参加する側にも継続への意欲等が期待される。閉じこもりがちな高齢者、虚弱な高齢者を、主催者側のサポートによって事業参加へと導き、継続支援することは容易ではなく、マニュアルを手にした現場の担当者の多くが、真に介護予防の必要な方々への働きかけの難しさに、日々苦労されていることと思う。しかし、多くの高齢者が望む、「可能な限り在宅で、自分らしい暮らしを送りたい」と

いう願いを形あるものとするためには「介護予防」の具体的手段によって、各人の生活機能の維持・向上を図ることが、非常に重要な意義を持つ。

今後、各地域で「介護予防」の前向きな取り組みが進められるよう期待するとともに、このマニュアルが、各地の担当者を側面から支援するものとなることを切に願うものである。

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1 目的及び事業内容等

■ トレーニングプログラムの作成 ■

① 異なる筋力トレーニングの方法(トレーニングマシンを使用する場合と、使用

しない場合)による機能訓練をモデル市町村で実施。

② 上記の実施結果から、トレーニングの方法の違いによる効果の検証を行う。

③ マシンを使用しない効果的な筋力トレーニングプログラムや評価指標等に関す

るマニュアルの作成

■ トレーニングプログラム等の普及啓発 ■

マシンを使用しない筋力トレーニング及び評価指標等の普及促進を図るため、シ

ンポジウムを開催する。

1 目 的

要援護高齢者の日常生活行為に必要な能力の維持向上等に効果のある筋力トレーニングを通して、高齢者が要介護状態になることを防ぐとともに、要介護者を減じようとする市町村の取り組みを支援する。

2 事業内容

高齢者向け筋力トレーニングとして、マシンを使用しないより身近な方法で実施が可能な訓練プログラムを作成するとともに、その効果を検証し、プログラムの市町村等における普及促進を図るため、次の事業を実施。

3 検討委員会の設置

本事業を実施するため、検討委員会を設置し、検討委員会は次の業務を行う。

(1)高齢者に適したトレーニング手法及びその効果について専門的な見地からの評価・検討を行い、マニュアルを作成する。

(2)シンポジウムの効果的な実施についての検討を行う。

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氏    名

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第 2

2 検討委員会等の構成

(検討委員会)

所       属

社団法人 北海道医師会 常任理事

社団法人 北海道理学療法士会 副会長

社団法人 北海道作業療法士会

社団法人 北海道看護協会 理事

社団法人 北海道総合在宅ケア事業団 機能訓練指導部長

北海道保健福祉部高齢者保健福祉課 課長

北海道保健福祉部高齢者保健福祉課 医療参事

西 家   仙

太 田   誠

栄   志津江

斉 藤 幸 代

岡 田しげひこ

野 村   了

粟 井 是 臣

委 員 長

副委員長

備  考

氏    名

(ワーキンググループ)

所       属

財団法人 札幌市健康づくり事業団総務課指導係長(健康運動指導士)

名寄市保健福祉部保健福祉課在宅介護支援センター係長

奈井江町おもいやり課保健介護係 保健師係長

上富良野町保健福祉課 課長補佐

芽室町住民福祉部保健福祉課 在宅支援係長

北海道倶知安保健所 所長

北海道苫小牧保健所 所長

北海道上川保健所健康推進課 理学療法士

北海道保健福祉部高齢者保健福祉課 医療参事

佐 竹 恵 治

大 石 正 子

村 井 由美子

田 中 利 幸

中 川 ゆかり

竹 内 U 男

山 本 長 史

本 川   亮

粟 井 是 臣

モデル市町村

モデル市町村

モデル市町村

モデル市町村

座    長

備  考

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3 事業経過

区    分 年 月 日 場  所 内     容

第1回検討委員会 15. 7.11 道庁

第1回ワーキング会議 15. 7.30 道庁別館

事前研修 15. 8. 7 上富良野町

事前研修 15. 8.20~21 名寄市

実地研修 15. 8.26 上富良野町

実施状況把握等

実地研修及び状況把握

実地研修及び状況把握

実地研修及び状況把握

実施状況把握

実施状況把握

第2回ワーキング会議

15. 9. 8

15.10. 8

15.10.28

15.10.29

15.10.31

15.11.19

15.12.12

奈井江町

名寄市

上富良野町

名寄市

上富良野町

名寄市

道庁別館西棟

第2回検討委員会

シンポジウム

16. 2. 9

16. 3.25

かでる2.7

かでる2.7

・事業概要について

・事業の具体的推進方策について

・ワーキンググループの設置について

・事業概要について

・第1回検討委員会協議結果について

・役割と今後の作業内容について

・モデル市町村との協議

・モデル事業実施手順

・トレーニング指導方法の説明

(事務局)

・モデル事業実施手順

・トレーニング指導方法の説明

(粟井:WG 事務局)

・第1回トレーニング(体力測定等)

・プログラムの再確認及び実技

(事務局)

・実施状況把握

・個別プログラムについて (事務局)

・実施状況把握

・実践研修 (事務局)

・実施状況把握及び実地研修

(ワーキング)

・実施状況把握及び実地研修

(ワーキング)

・実施状況把握及び打合せ

(ワーキング・事務局)

・実施状況把握及び打合せ

(ワーキング・事務局)

・モデル事業実施結果

・マニュアルの作成について

・モデル事業実施結果概要について

・マニュアルの構成について

・シンポジウムの概要について

・講演~国立長寿医療センター研究所 

生活機能賦活研究部部長 大川弥生氏

・事業背景、趣旨説明

・パネルディスカッション

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第 2

4 シンポジウムの概要

開催目的:体力向上トレーニングの実践手法の紹介等を通じて、事業の普及促進を図る

開催日時:平成16年3月25日(木)~26日(金)

開催場所:かでる2.7(札幌市中央区北2条西7丁目)

参集範囲:行政関係者(支庁、保健所、市町村等)施設等職員、関係団体、その他介護予防に関心のある一般住民

開催内容:

〈1日目〉○基調講演  「生活機能(WHO・ICF)向上にむけた介護予防事業-メニュー中心から個別性(生活・人生)重視へ-」

国立長寿医療センター研究所生活機能賦活研究部部長 大川弥生氏

○行政説明   高齢者体力向上トレーニング普及促進事業の趣旨及び背景

○パネルディスカッション 「介護予防の充実~高齢者体力向上トレーニングの普及に向けて~」

〈2日目〉○高齢者体力向上トレーニングの実技講習~ストレッチ・軽運動・バランス運動・筋力トレーニング・クールダウン~

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モデル市町村事業実施報告

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〈高齢者体力向上トレーニング実施自治体〉

モデル自治体となったのは名寄市、上富良野町、奈井江町、芽室町の4市町である。名寄市と上富良野町はマシンを使用せず、ダンベルやペットボトル等の手軽な道具を用いた筋力等トレーニングプログラムにより、奈井江町と芽室町は筋力トレーニングマシンを使用したプログラムにより、3か月間のトレーニングを実施した。

北海道保健福祉部高齢者保健福祉課 医療参事 粟井 是臣

〈対 象 者〉

4市町とも、要支援・要介護者および虚弱者を含めた高齢者を対象としているが、対象年齢や対象要件の設定が各市町毎に若干異なる。募集は広報掲載、個人通知および保健師による個別勧奨によった。

名寄市

○原則65歳以上の高齢者○「要支援」「非該当」で、サービス利用のない者もしくは同程度の者○民生委員アンケートで閉じこもりの者○日常の見守りの必要な者○体力づくり、閉じこもり予防の必要な者

○65~80歳の高齢者○継続してトレーニングに参加できる者○足のふらつき、姿勢の悪さ等、自覚症状のある者

○原則65歳以上の高齢者

○「要介護1」「要支援」「非該当」の者

○保健指導医が運動事業の必要性を認めた者

○60歳以上の高齢者○特に身体機能の低下を認める者

上富良野町 奈井江町 芽室町

5 高齢者体力向上トレーニング普及促進事業モデル市町村事業実施報告【総括】

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モデル市町村事業実施報告

〈方 法〉

1)非マシン群・マシン群のプログラム概要

高齢者体力向上トレーニングは、マシンを使用する自治体(以下マシン群と略す)およびマシンを使用せず、ダンベルやセラバンド等の器具を用いて実施する自治体(以下非マシン群と略す)ともに、週2回の頻度で約3か月間の実施期間とした。名寄市は会場確保が困難なため、週1回は自宅でホームトレーニングを実施することで、週2回のトレーニング頻度を維持した。一回のトレーニング時間は90~100分間であり、ストレッチング、軽運動、バランストレー

ニング、筋力トレーニング、クールダウンから構成されるプログラムメニューを実施する。

ストレッチング

軽運動

バランストレーニング

筋力トレーニング

クールダウン

胸部のストレッチ

肩のストレッチ

首のストレッチ

腰背部のストレッチ

大腿部のストレッチ

そけい部のストレッチ

臀部のストレッチ

下腿部のストレッチ

腹筋運動

四つん這い片手片足上げ

ヒップリフト

ニーリング

ニーベントウォーク

レッグエクステンション

カーフレイズ

トゥレイズ

スクワット

アブダクション

チェストプレス

ロープーリー

レッグフレクション

カール

シュラッグ

ストレッチ

各10秒~30秒

1~2回

各動作を

5秒間保持し

2~3回

5~10分間

適  宣

各10回×

2~3セット

なし

なし

なし

なし

ダンベル

重錘バンド

セラバンド

など

同左

同左

同左

同左

リカンベントスクワット

(別名 ホリゾンタルレ

ッグプレス)

レッグエクステンション

ローイング

ヒップアブダクション

(奈井江町のみ実施)

チェストプレス

(芽室町のみ実施)

同左

同左

同左

同左

トレーニン

グマシン

同左

同左

同左

同左

同左

非マシン群プログラム

メニュー 回数 使用器具 メニュー 回数 使用器具

マシン群プログラム

2)評価指標

実施前後における評価項目として、バーセルインデックス、SF-36、老研式活動能力指標(名寄市、上富良野町、芽室町のみ実施)、個別アンケート、体力測定(握力、開眼片足立ち、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、Timed up & go、10m最大歩行速度)を調査した。

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3)トレーニングスケジュール及び経過

【名寄市】

ストレッチ

軽運動

バランス

筋トレ

1セット 2セット 3セット

セット数

負荷

追加メニュー

ホームトレーニング

導入準備 第1期 導入期 第3期 発  展  期 評価第2期 維  持  期

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21

9/3 9/10 9/17 ホームT 9/24 ホームT 10/1 ホームT 10/8 ホームT 10/15 ホームT 10/22 ホームT 10/29 ホームT 11/5 ホームT 11/12 ホームT 11/19 ホームT 11/26

開  催  回  数

月    日

備    考

※略字について   *ホームT~ホームトレーニング  *D~ダンベル  *B~重錘バンド

D:500~1000gB:500~1000g

レッグフレクション・カールシュラッグ

ダンベルを使用する種目(チェストプレス・カール)については、自費でダンベルを購入または、ペットボトル、重錘をバンド代用で実施。

D:500~2000gB:500~1000g

Borg指数負荷設定

負荷増

ストレッチ:8種目筋トレ  :6種目(追加メニュー含)

重錘バンドセラバンド

(ホームトレーニングで重錘バンド、セラバンド使用)

ストレッチ:8種目筋トレ  :10種目(1~2セット)

【上富良野町】

ストレッチ

軽運動

バランス

筋トレ

2セット

セット数

負荷

追加メニュー

導入準備 第1期 導入期 第3期 発  展  期 評価第2期 維  持  期

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

8/26 8/29 9/2 9/5 9/9 9/12 9/16 9/19 9/24 9/26 9/30 10/3 10/6 10/10 10/14 10/17 10/21 10/23 10/28 10/31 11/4 11/7 11/11 11/14

開  催  回  数

月    日

備    考

500~1㎏

1セット

【マシン群】 ※奈井江町の例

ストレッチ

バランス

筋トレ

1 2セット数

負荷

トレーニング内容

導入準備 第1期 導 入 期 第3期 発  展  期第2期 維  持  期

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

6/23 6/27 6/30 7/4 7/7 7/11 7/14 7/18 7/25 7/28 8/1 8/4 8/8 8/11 8/18 8/22 8/25 8/29 9/1 9/5 9/8 9/12 9/19 9/22

開  催  回  数

月    日

備    考

(500g) (500~700g) (600~1.5㎏) (600~2㎏)

カール

1RMテスト負荷設定 (必要に応じて負荷の増減)

※負荷はペットボトル、玄米、タイツを用いた。 ※(19日)一部の参加者はレッグエクステンションのみ3セット実施

筋トレ種目合間にレクリエーション実施

筋トレ種目・レッグプレス・レッグエクステンション

筋トレ種目・レッグプレス ・レッグエクステンション ・ヒップアブダクション ・ローイング※バランス・軽運動を筋トレ種目の合間に実施している。

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モデル市町村事業実施報告

4)トレーニング内容

非マシン群及びマシン群ともに、約3ヶ月間のおおまかなスケジュールは共通である。トレーニング前後に体力測定を含む評価項目を測定し、理学療法士等により関節の疼痛の有無、可動域、ADL等のアセスメントを行い個人毎の心身の機能を把握した。最初の1か月間は導入期とし、ストレッチ、軽運動、バランス運動、筋力トレーニングの正

しいフォームの習得及び筋や関節をトレーニングに順応させることを重視した。次の約1ヶ月(維持期)においては、個人毎の適正な筋力負荷量を設定して、本格的な筋力強化をセット法により実施し、最後の1か月(発展期)には、筋力強化を継続しながら柔軟性及びバランス能力の改善を通し、生活動作の機能向上を図るというスケジュールである。最適負荷量の設定方法は非マシン群がBorg指数により、マシン群はリカンベントスクワット

のみ1RMテストを実施し、他の3種目の負荷は非マシン群と同様にBorg指数により決定した。また、非マシン群では個人の能力に応じて、筋力トレーニング基本7種目に加えてレッグフ

レクション、カール、シュラッグの3種目を追加実施した。

各市町の内容は基本的には共通だが、地域事情等により、それぞれ異なる特色をもって実施した。名寄市では会場確保の都合により、週1回は自宅でのトレーニングを行い、記録表や保健師のチェック、助言により、継続管理の工夫を図った。上富良野町はダンベルや重錘バンド等の既製の用具を使用せず、負荷は小石等を詰めたペットボトルや玄米入りのダンベル等、手作りの用具を使用した。奈井江町は比較的健常なグループと虚弱者のグループを分け、2部構成で実施した。芽室町はストレッチの効果を見込める高齢者向けリズム体操を導入した。

区 分

非  マ  シ  ン

マ   シ   ン

自治体

名 寄 市

上富良野町

芽 室 町

ストレッチ(7種)

(10~15分)

バランス、軽運動(5種)

(10~15分)

筋トレ(基本7種/選択3種)

(50分)

クールダウン(適宜)

(5~10分)

○ グループ分けなし(全員で一斉に実施)

○ 開始1か月目からは2セット→3セットに増量。床から椅子、立位へとトレーニングメニュー順の組み替えを行い、効率的な時間配分を行う。

○ 週1回はホームトレーニング実施~会館で行うメニューと同程度の内容を個人の状況に合わせ実施。記録表による管理。

○ セット間に短時間の休憩

ダンベル

重錘バンド

セラバンド

ダンベル

(ペットボトル/玄米)

チューブ(タイツ)

リカンベントスクワット

ヒップアブダクション

レッグエクステンション

ローイング

リカンベントスクワット

レッグエクステンション

チェストプレス

ローイング

※高齢者向けトレーニングマシンによる各種目については資料編を参照。

○ 2グループで実施(比較的元気:やや弱の、2分割)

○ ペットボトル(500~2000g)、玄米入りダンベル等、手作り用具使用

○ 筋トレ合間のレクにより、交流や継続性維持を図る。(初期~中期)

○ 適宜休憩を挟み、同一種目を連続2セット実施(椅子→床→椅子。効率的時間配分)

○ 午前(元気)、午後(虚弱)の2部構成。(=2グループ)

○ 中盤から立位、歩行、昇降、ボールまたぎ等の個別訓練導入。

○ セット間はマシンから降りずその場で休憩。1分程の休憩後、続けてトレーニング

○ 4、5名のグループごとにマシン使用。(マシン使用の関係上、主として体型に応じた区分け。)

○ 準備運動として“高齢者向けリズム体操”実施(音楽に合わせ一斉実施)

○ 筋トレの間にグループ単位のバランス、柔軟体操を実施。

○ セット間休憩の間に、各自の判断でダンベル等を使用。休憩後、同じマシンで2セット目実施。

10回

3セット

10回

2セット

10回

2セット

10回

2セット

ト  レ  ー  ニ  ン  グ

内            容

セット数用  具

各市町別の具体的実施内容基    本

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86

〈結 果〉

1)各市町の事業結果の概要

※1 「虚弱者」として、以下の項目に一つ以上該当する者と定義した①要支援又は要介護1の者 ・ ②歩行速度が80m/分未満の者③老研式活動能力指標上位5項目(IADL)で1つでも「いいえ」がある者④本人が自覚している心身の諸状況等から、市町村が虚弱と判断した者

※2 「90分」は、実質トレーニング時間 ・ ※3 保険料 ・ ※4 健診、保険料

各市町ともにトレーニングのプログラムを完了できなかった、いわゆる脱落者が若干名、発生した。主な理由はトレーニングとは無関係の骨折、鬱状態による閉じこもり、腰痛の悪化、最終測

定日のみの欠席などであったが、4市町全体ではプログラム完了者の割合は9割を超えた。平均出席率も各市町ともに8割を越え、参加者の多くがトレーニングを継続できたという結果であった。平均年齢は名寄市が最も高く76歳で、芽室町が最も低く68歳であったが、各市町とも後期高齢者の多くがプログラムを完了している。また、比較的健常者の参加が多い芽室町を除き、送迎の体制が整えられていた。事業1回当たりの従事者は4~6名であり、虚弱者の参加もしくは全体の参加者数が多い名

寄市や上富良野町において、多くの従事者を必要とした。

区   分

非  マ  シ  ン

マ   シ   ン

自 治 体

実施期間等

実施場所

総参加者数

脱落者

脱落の主な理由

最終人数

平均出席回数

平均年齢

※1虚弱(要支・要介1)

募集方法

参加者要件

多い症状

膝・腰痛等

膝の痛み

歩行不安定

必要に応じ実施

必要に応じ実施

必要に応じ実施

歩行不安定

歩行不安定

歩行不安定

膝・腰痛

歩行不安定

虚弱者に多い症状

参 加 費

送   迎

事前健診

従事職員数/1回

従事職種内訳

保健師等

PT

健康運動指導士

事務職など

ボランティア

名 寄 市

上富良野町

芽 室 町

H15.9.3

~11.26

全13回

週1回/90分

市立会館(あかしあ福祉会館)

17

29

12

28

3

14

男 3女 11

27

男 3女 24

11

男 5女 6

26

男 11女 15

12

20

21

21

76 有5~6

41~2

0 1 8

有1500円(※3)

無料

3000円(※4)

4~6

2~3

1 01~2

1~2

有 4 4 1

保健師兼務

0 0

有 4 21~2

1 1 0

69

73

68

7(2)

無料

6(1)

5(1)

5(1)

2

1

2

公民館

町保健センター

総合体育館

H15.8.26

~11.14

全24回

週2回/90分(※2)

火・金

H15.6.23

~9.22

全22回

週2回/90分

月・金

H15.9.2

~11.25

全25回

週2回/90分

火・金

○原則65歳以上

○「要支援」「非該当」でサービス利用のない者、又は同程度とされる者

○民生委員アンケートで閉じこもりの者、日常に見守りの必要な者

○その他体力づくり、閉じこもり予防の必要な者

○65~80歳程度

○継続して運動に参加できる者

○足のふらつき、姿勢の悪さ等、自覚症状のある者

○原則65歳以上

○「要介護1」「要支援」「非該当」

○保健指導医(町立病院院長)が運動事業の必要性を認めた者

○60歳以上

○特に身体機能の低下の見られる者

○骨折 1名

○うつによる閉じこもり

(要支援1名)

○全体の9割

欠席 1名

○最終測定日

欠席 2名

○腰痛悪化

(虚弱者)

○最終測定日

欠席 2名

○個別勧奨

○広報掲載

○個別勧奨

(虚弱者)

○広報掲載

○個別勧奨

(虚弱者)

○個人通知

○広報掲載

○新聞掲載

○個別勧奨

(虚弱者)

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87

モデル市町村事業実施報告

トレーニング実施前後における調査項目の結果で、最も明らかな変化を示した項目が4市町ともに体力測定であった。非マシン群、マシン群を問わず、握力、開眼片足立ち、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、Timed up & go 、最大歩行速度のいずれかの項目で統計学的に有意な改善を示した。ADLについてはトレーニングの実施前後で変化はなかった。生活機能自立度を反映する老

研式活動能力指標については、調査を実施した名寄市、上富良野町、芽室町の3市町全てにおいて若干の改善を認めた。主観的健康観の指標であるSF-36についても、いくつかの項目に統計学的に有意な改善を

認めたが、体力測定項目のような著しい変化は示さなかった。身体機能評価に比べ主観的指標であるSF-36が明らかな変化を認めなかった理由として、下位尺度の素点の範囲が狭く、客体数が少ない場合には得点の変動が生じやすいことなどが考えられる。個別アンケート結果においては非マシン群、マシン群ともに、歩行時の安定性の確保、歩行

距離や腰痛の改善、運動意欲の向上など身体及び精神面におけるトレーニング効果を示す内容が多く認められた。こうしたものも含め、虚弱高齢者を対象としたトレーニング効果を測定する場合の評価指標の検討が今後も求められる。

2)調査項目の結果概要

区分

非  マ  シ  ン

マ   シ   ン

名 寄 市

上富良野町

芽 室 町

不変

(100→100)

不変

(95~100)

不変

(85~100)

不変

(100→100)

○2、3年前からO脚気味だったが改善(74歳女)

○身体のふらつきが改善(85歳女)

○使い慣れない筋を使うことにより、運動しようという意欲向上。(85歳男)

○当初は継続に不安があったが、3か月は早かった。(73歳女)

いずれの項目も有意な改善は認められなかった。

「身体の痛み」に有意な改善が認められた

「身体機能」に有意な改善が認められた

長座位体前屈

ファンクショナルリーチ

最大歩行速度

有 意 な 改善 が 認 められた

有 意 な 改善 が 認 められた

有 意 な 改善 が 認 められた

有 意 な 改善 が 認 められた

握力

ファンクショナルリーチ

Timed Up&Go

最大歩行速度

TimedUp&Go

最大歩行速度

長座位体前屈

最大歩行速度

○調理時、腕に力を入れることが可能に(72歳女)

○腰痛による痛み止めを服用していたが、使用回数が軽減(70歳女)

○関節の動きが軽くなった印象がある(67歳女)

○家で横になっている頻度が減少

○手すりに頼っていた階段昇降が手すり不要に

○まっすぐ歩くことが困難だったが改善

○以前よりも歩く距離が増加

○自分の身体の弱い所がわかった(60歳女)

○運動に自主的に取り組もうという気に(64歳男)

○身体を動かす前にストレッチが大切という認識ができた(69歳男)

平均

11.0→11.3

平均

12.5→12.3

実施せず

平均

11.8→12

満点で不変

の者3名

満点で不変

の者13名

満点で不変

の者9名

結  果  デ  ー  タ  概  要

パーセルインデックス 老研式活動能力指標 体力測定 SF-36

(生活機能自立度の推移把握)

個別アンケート

(身体機能の推移把握) (主観的健康観の推移把握) (個人的感想等随時把握)(ADLの推移把握)

有 意 な 改善 が 認 められた

身体機能

日常役割機能

活 力

日常役割機能(精神)

心の健康

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3)身体機能評価結果

非マシン群、マシン群ともに、握力、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、Timed up& go、最大歩行速度のいずれかの項目で有意な改善を認めた。非マシン群の名寄市では長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、最大歩行速度の3項目、上富良野町では握力、ファンクショナルリーチ、Timed up & go、最大歩行速度の4項目に改善を認めた。又、マシン群の奈井江町ではTimed up & go、最大歩行速度の2項目、芽室町では長座位体前屈、最大歩行速度の2項目に改善を認めた。最大歩行速度は4市町全てにおいて改善が認められた。

〔1〕非マシン群(自治体別)

区分

握力(㎏)

開眼片足立ち(秒)

長座位体前屈(㎝)

Fリーチ(㎝)

Timed Up & Go(秒)

最大歩行速度(秒)

24.0 ±  6.15

26.0 ± 37.22

33.9 ±  8.74

28.0 ±  5.25

6.7 ±  2.17

7.3 ±  2.67

24.6 ±  5.98

41.3 ± 47.97

39.4 ±  8.25

33.3 ±  6.06

7.1 ±  2.37

6.5 ±  2.36

14

14

14

14

14

14

NS

NS

**

**

**

26.2 ±  7.28

62.5 ± 60.38

41.5 ±  6.54

32.6 ±  7.14

6.1 ±  1.23

5.4 ±  1.34

29.1 ±  7.20

74.5 ± 72.63

42.7 ±  6.49

39.4 ±  6.90

5.4 ±  0.83

4.5 ±  0.88

27

27

27

27

27

27

***

NS

NS

***

**

**

①名寄市:14名(男3、女11)平均76.4歳 ②上富良野町:27名(男3、女24)平均69.2歳

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

*P<0.05**P<0.01***P<0.001

〔2〕マシン群(自治体別)

区分

握力(㎏)

開眼片足立ち(秒)

長座位体前屈(㎝)

Fリーチ(㎝)

Timed Up & Go(秒)

最大歩行速度(秒)

27.2 ±  7.23

9.1 ± 17.27

28.3 ±  9.61

30.9 ±  8.57

9.5 ±  5.83

8.3 ±  4.49

27.6 ±  5.91

14.9 ± 18.89

31.1 ±  8.71

31.1 ±  6.26

8.3 ±  4.62

7.8 ±  4.34

11

11

11

11

11

11

NS

NS

NS

NS

**

29.9 ±  9.35

44.9 ± 27.21

39.6 ±  9.41

42.3 ±  6.70

5.4 ±  1.73

4.3 ±  1.09

30.8 ± 10.02

50.9 ± 26.48

43.2 ±  8.81

42.4 ±  5.58

5.0 ±  0.99

3.5 ±  0.60

26

26

26

26

26

26

NS

NS

**

NS

NS

***

③奈井江町:11名(男5、女6)平均73.5歳 ④芽室町:26名(男11、女15)平均68.0歳

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

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モデル市町村事業実施報告

握  力 実施前 実施後

0名寄市(N=14) 上富良野町(N=27) 奈井江町(N=11) 芽室町(N=26)

24.0 24.626.2

29.129.9 30.8

27.2 27.6

5

10

15

25

35

20

30

(kg)

***

 *P<0.05 **P<0.01 ***P<0.001

長座位体前屈 実施前 実施後

0名寄市(N=14) 上富良野町(N=27) 奈井江町(N=11) 芽室町(N=26)

33.9

39.441.5 42.7 39.6

43.2

28.331.1

10

20

40

50

30

(kg)

** **

 *P<0.05 **P<0.01 ***P<0.001

Timed up& go 実施前 実施後

0名寄市(N=14) 上富良野町(N=27) 奈井江町(N=11) 芽室町(N=26)

6.77.1

6.15.4 5.4

5.0

9.5

8.3

2

4

6

10

14

8

12

(kg)

* ** *

 *P<0.05 **P<0.01 ***P<0.001

開眼片足立ち 実施前 実施後

0名寄市(N=14) 上富良野町(N=27) 奈井江町(N=11) 芽室町(N=26)

26.0

41.3

62.5

74.5

44.9

50.9

9.114.9

30

10

20

40

60

80

50

70

(kg)

 *P<0.05 **P<0.01 ***P<0.001

ファンクショナルリーチ 実施前 実施後

0名寄市(N=14) 上富良野町(N=27) 奈井江町(N=11) 芽室町(N=26)

28.0

33.3 32.6

39.4

42.3 42.4

30.9 31.1

5

15

10

20

30

50

40

45

25

35

(kg)

*** **

 *P<0.05 **P<0.01 ***P<0.001

最大歩行速度 実施前 実施後

0名寄市(N=14) 上富良野町(N=27) 奈井江町(N=11) 芽室町(N=26)

7.36.5

5.44.5 4.3

3.5

8.3 7.8

2

4

8

14

6

12

10

(kg)

** ** ** ***

 *P<0.05 **P<0.01 ***P<0.001

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90

4)SF-36の結果

主観的健康観の指標であるSF-36は名寄市ではいくつかの項目で向上しているが統計学的に有意な変化は認められなかった。上富良野町は身体機能、日常役割機能(身体)、活力、日常役割機能(精神)、心の健康の5項目において、統計学的に有意な向上が認められた。奈井江町は身体の痛み、芽室町は身体機能において有意な変化を認めた。

〔1〕非マシン群(自治体別)

区分

身体機能(PF)

日常役割機能(RP)

身体の痛み(BP)

全体的健康観(GH)

活力(VT)

社会生活機能(SF)

日常役割機能(精神)(RE)

心の健康(MH)

67.1 ± 25.47

73.2 ± 38.56

55.4 ± 17.65

50.6 ± 14.62

60.7 ± 20.18

91.1 ± 12.43

71.4 ± 46.88

69.4 ± 15.02

73.2 ± 18.36

55.4 ± 44.05

58.2 ± 26.46

57.7 ± 16.55

72.5 ± 21.01

91.1 ± 14.23

64.3 ± 49.72

78.6 ± 17.58

14

14

14

14

14

14

14

14

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

83.0 ± 14.14

87.0 ± 28.81

71.5 ± 21.82

62.8 ± 17.53

73.8 ± 15.83

86.0 ± 25.62

76.0 ± 40.65

78.6 ± 17.85

88.1 ± 10.30

96.3 ± 15.04

78.5 ± 19.23

63.7 ± 21.38

80.7 ± 14.26

93.1 ± 11.14

100.0 ±  0.00

89.0 ± 12.82

27

27

27

27

27

27

27

27

NS

NS

NS

**

**

①名寄市:14名(男3、女11)平均76.4歳 ②上富良野町:27名(男3、女24)平均69.2歳

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

*P<0.05**P<0.01***P<0.001

区分

身体機能(PF)

日常役割機能(RP)

身体の痛み(BP)

全体的健康観(GH)

活力(VT)

社会生活機能(SF)

日常役割機能(精神)(RE)

心の健康(MH)

65.0 ± 25.30

77.3 ± 32.51

61.1 ± 14.06

54.7 ± 21.09

61.4 ± 18.45

83.0 ± 25.17

72.7 ± 46.71

78.2 ± 14.01

69.5 ± 30.70

63.6 ± 43.82

75.3 ± 19.14

55.1 ± 16.84

72.3 ± 15.39

94.3 ±  8.59

75.8 ± 42.40

78.2 ± 14.35

11

11

11

11

11

11

11

11

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

75.2 ± 21.79

71.2 ± 38.53

69.9 ± 17.14

60.8 ± 17.96

69.6 ± 20.10

91.3 ± 15.32

79.5 ± 32.76

81.8 ± 14.50

80.8 ± 18.75

77.9 ± 31.88

72.8 ± 21.54

65.5 ± 15.21

74.8 ± 17.06

94.2 ± 12.36

83.3 ± 36.82

83.2 ± 15.35

26

26

26

26

26

26

26

26

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

③奈井江町:11名(男5、女6)平均73.5歳 ④芽室町:26名(男11、女15)平均68.0歳

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

〔2〕マシン群(自治体別)

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91

モデル市町村事業実施報告

1)非マシン群トレーニング手法の評価及び有効性

《考   察》

高齢者向けに開発されたトレーニング機器を使用した運動機能の向上に資する包括的トレーニングについては、既に一定の効果が検証されており、「高齢者筋力向上トレーニング事業」として、市町村の介護予防事業のメニューに位置づけられているところである。

一方、こうしたトレーニングマシンではなく、比較的手軽で身近なダンベルやバンド等による筋力トレーニングを含む、包括的体力向上トレーニング(以下、非マシン筋トレと略す。)でも、今回のモデル事業を通じて、その有効性が確認されたと思われる。特に、身体機能の評価の指標となる体力測定では、非マシン群は、握力、開眼片足立ち、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、最大歩行速度の5項目、マシン群はそのうち3項目に対して、統計学的に有意な改善項目が認められた。又、要介護状態のハイリスクグループである要支援及び要介護1を含む虚弱高齢者のみについても、握力、ファンクショナルリーチ、最大歩行速度の3項目で統計学的に有意な改善を認めた。名寄市では虚弱者の改善が著しく、開眼片足立ち、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、最大歩行速度の4項目の改善を認めた。これらのデータから、非マシン筋トレは虚弱者においても有効なトレーニング手法であることが示唆された。

また、主観的健康観の指標である「SF-36」は、各市町毎の分析では客体数の影響により身体機能の変化に比べて改善の程度が明白ではなかったが、名寄市と上富良野町をグループとした非マシン群では、参加者全体の分析では身体機能、活力、日常役割機能(精神)、心の健康の4項目で、虚弱者のみの分析でも活力、心の健康の2項目で改善を認め、非マシン筋トレが身体機能に関する効果だけではなく、健康関連のQOLについても改善をもたらすことがわかった。一方、体力や活力及び心の健康の明らかな改善の程度に比べ、、生活機能自立度の指標であ

る「老研式活動能力指標」や「SF-36」における日常役割機能が改善されなかったことから、介護予防の達成のためにはトレーニングで獲得された能力を生活機能の向上につなげられるよう、生きがいづくり、社会参加、健康づくりなどの様々な取り組みを展開する必要性も示唆される。

その他の点では、名寄市の参加者の平均年齢が76歳であり、名寄市及び上富良野町ともに、後期高齢者や要支援・要介護者が参加していることから、非マシン筋トレはマシン筋トレと同様に虚弱高齢者に十分、適用できるプログラムと考えられる。さらに、トレーニング完了者の割合や平均出席率が高いことや、個別アンケートの内容からも、トレーニング自体を楽しむとともに運動意欲が向上しつつある傾向がうかがえ、モチベーションの持続を含め、非マシン筋トレが虚弱高齢者を含めた多くの高齢者に受け入れやすいこともわかった。

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92

①非マシン群とマシン群の比較 ~身体機能~

ア.比較1(全員)

握力(㎏)

開眼片足立ち(秒)

長座位体前屈(㎝)

Fリーチ(㎝)

Timed up& go(秒)

最大歩行速度(秒)

25.4 ±  6.92

50.0 ± 55.91

38.8 ±  8.15

31.0 ±  6.85

6.3 ± 1.62

6.3 ±  2.08

27.6 ±  7.07

62.9 ± 66.37

41.5 ±  7.21

37.3 ±  7.17

6.0 ±  1.72

5.2 ±  1.79

41

41

41

41

41

41

***

**

***

NS

***

29.1 ±  8.77

34.3 ± 29.54

36.2 ± 10.69

38.9 ±  8.94

6.6 ±  3.90

5.4 ±  3.14

29.8 ±  9.03

40.2 ± 29.39

39.6 ± 10.32

39.0 ±  7.74

5.9 ±  2.99

4.8 ±  3.09

37

37

37

37

37

37

NS

NS

**

NS

**

***

①非マシン群(名寄市:14名 上富良野町:27名) ②マシン群(奈井江町:11名 芽室町:26名)

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

*P<0.05**P<0.01***P<0.001

イ.比較2(虚弱者のみ)

握力(㎏)

開眼片足立ち(秒)

長座位体前屈(㎝)

Fリーチ(㎝)

Timed up& go(秒)

最大歩行速度(秒)

22.7 ±  6.75

27.2 ± 32.80

36.5 ±  8.40

27.5 ±  6.48

7.7 ±  2.20

7.7 ±  2.83

24.3 ±  6.15

31.4 ± 30.98

40.0 ±  6.38

33.7 ±  7.90

7.2 ±  2.53

6.4 ±  2.55

13

13

13

13

13

13

NS

NS

***

NS

30.7 ±  6.82

7.0 ±  7.60

26.4 ± 11.45

33.3 ± 10.34

10.8 ±  5.75

8.8 ±  4.53

31.4 ± 5.16

7.4 ± 8.67

29.6 ± 9.41

32.9 ± 7.28

9.1 ± 4.40

7.6 ± 4.88

10

10

10

10

10

10

NS

NS

NS

NS

**

①非マシン群(名寄市:7名 上富良野町:6名) ②マシン群(奈井江町:5名 芽室町:5名)

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

ウ.比較3(名寄市における虚弱者の変化)

名寄市では、虚弱者の実施前後の変化が顕著であった。

名寄市体力測定結果( 虚 弱 者 ) 実 施 前 実 施 後

握 力(kg) 開眼片足立ち(秒) 長座位体前屈(cm) Fリーチ(cm) Timed up & go(秒) 最大歩行速度(秒)

23.4 24 .4

16 .6

35 .3

31 .5

40 .2

26 .5

32 .0

7 .7 8 .0 8 .4 7 .4

* * *

  * P<0.05  ** P<0.01 *** P<0.001

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93

モデル市町村事業実施報告

②非マシン群とマシン群の比較 ~SF-36の変化~

ア.比較1(全員)

区分

身体機能(PF)

日常役割機能(RP)

身体の痛み(BP)

全体的健康観(GH)

活力(VT)

社会生活機能(SF)

日常役割機能(精神)(RE)

心の健康(MH)

77.8 ± 20.03

81.1 ± 32.49

65.7 ± 21.61

57.4 ± 17.13

68.4 ± 18.08

86.6 ± 22.08

73.2 ± 42.31

74.5 ± 17.15

83.0 ± 15.16

82.3 ± 34.12

71.6 ± 23.73

61.7 ± 19.86

77.9 ± 17.07

92.4 ± 12.14

87.8 ± 33.13

85.5 ± 15.25

41

41

41

41

41

41

41

41

NS

NS

NS

**

NS

72.2 ± 23.02

73.0 ± 36.50

67.3 ± 16.60

59.0 ± 18.85

67.2 ± 19.74

88.9 ± 18.82

77.5 ± 36.90

80.8 ± 14.26

77.4 ± 23.08

73.6 ± 35.82

73.5 ± 20.62

62.4 ± 16.21

74.1 ± 16.41

94.3 ± 11.26

81.1 ± 38.12

81.7 ± 15.04

37

37

37

37

37

37

37

37

NS

NS

NS

NS

NS

①非マシン群(名寄市:14名 上富良野町:27名) ②マシン群(奈井江町:11名 芽室町:26名)

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

*P<0.05**P<0.01***P<0.001

区分

身体機能(PF)

日常役割機能(RP)

身体の痛み(BP)

全体的健康観(GH)

活力(VT)

社会生活機能(SF)

日常役割機能(精神)(RE)

心の健康(MH)

68.5 ± 20.65

76.9 ± 29.69

55.7 ± 17.23

48.8 ± 15.21

60.8 ± 19.77

86.5 ± 21.32

61.5 ± 46.84

70.2 ± 18.08

73.1 ± 18.88

71.2 ± 40.63

67.4 ± 23.25

55.8 ± 19.41

77.3 ± 21.95

85.6 ± 15.18

76.9 ± 43.85

83.1 ± 18.49

13

13

13

13

13

13

13

13

NS

NS

NS

NS

NS

NS

49.5 ± 23.74

50.0 ± 42.49

66.9 ± 15.31

40.6 ± 14.52

56.0 ± 17.45

87.5 ± 21.25

60.0 ± 46.61

76.0 ± 16.65

57.5 ± 28.60

67.5 ± 42.57

77.3 ± 23.99

46.4 ± 12.51

66.0 ± 20.52

93.8 ± 10.62

70.0 ± 42.89

77.2 ± 16.66

10

10

10

10

10

10

10

10

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

①非マシン群(名寄市:7名 上富良野町:6名) ②マシン群(奈井江町:5名 芽室町:5名)

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率実施前

(M±SD)実施後

(M±SD) N 有意確率

イ.比較2(虚弱者のみ)

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94

2)非マシン筋トレとマシン筋トレの比較

〔負 荷〕

非マシン筋トレもマシン筋トレも、構成はストレッチ、軽運動、バランス運動、筋力トレーニングからなり、高負荷低回数のセット法による筋力強化のみを目指すのではなく、柔軟性、バランス及び筋力を改善することにより、日常生活動作の機能向上を期待するものであるという点で共通している。両者の基本的な相違点は筋力トレーニングをダンベルやバンド等を用いて行うか、マシンを使用するかの点であるが、この点から、両者それぞれの特徴が導き出される。マシン筋トレは負荷設定を微調整することが容易であり、又、自重に耐えられない虚弱者に対しても、適切な負荷を設定することが可能である。一方、非マシン筋トレでは、ダンベルやバンド等の種類を変えることにより適当な負荷を設定することは比較的容易だが、スクワットなど、自重がかかりやすいトレーニング種目では、自重よりも更に軽い負荷を適当とする要介護者に対しては、手を使って負荷を減らすなどの工夫が必要になる。

〔トレーニング種目〕

筋力トレーニングの種目については、非マシン筋トレの方がより多くの種目を取り入れることが容易である。即ち、対象とする筋を刺激する筋トレ種目は今回の事業で使用した種目数より、現実には他にも多くのメニューが存在するが、必要に応じて様々な種目を採択することは容易である。一方、マシン筋トレでは、高齢者向けのマシンの種類が一般向けのマシンに比べて少なく、スペースやコストの点を踏まえると、現実には必要最小限の種類のマシンにより対応することになる。つまり、用具類のコストの点から考えると、非マシン筋トレでは、参加者各自にダンベルや

バンド等を用意することは可能と思われるが、マシン筋トレの場合はマシンの種類毎に1台ずつの整備にとどまることが通常であるため、参加者数の制限が生ずる可能性があるとともに参加者が一斉に同一種目を行うことは難しくなる。このため、奈井江町や芽室町のマシン筋トレにおいては、トレーニングの合間に柔軟体操や

バランス運動等を行うなどの工夫をしている。

〔従事者〕

マンパワーについてであるが、医師、理学療法士、保健師、健康運動指導士等の関わりが必要であることは、非マシン筋トレとマシン筋トレに共通しており、一回の事業に必要な従事者数は非マシン筋トレとマシン筋トレの違いというよりもむしろ、参加者の状態により決定されると思われる。実際、要介護者を含む虚弱者の参加が多い名寄市や奈井江町では、比較的、健常な高齢者の参加が多い上富良野町や芽室町よりも、参加者一人に要する従事者数は多かった。マンパワーの必要数については、虚弱の程度や虚弱者の全参加者に占める割合によって異なり、一概に言えないが、モデル4市町の事業結果を踏まえると、参加者10名に対する必要従事者数は、参加者が比較的元気な高齢者で占められる場合は2~3名であり、参加者に要介護者を含む虚弱者が入る場合は4~6名となり、虚弱者の参加にあたっては、より多くの従事者を必要としている。また、従事者の、事前の研修は非マシン筋トレ及びマシン筋トレともに大切である。今回の

非マシン筋トレを実施するにあたり、スタッフは延べ3日間の研修を受講した。内容は介護予防の基本的な考え方、体力向上トレーニングの概要、体力測定を含む評価の意義及び実施方法、リスク管理、準備・募集・運営方法、非マシン筋トレの実技演習等からなる。研修の受講は、異なる職種間やボランティアとの間の目的と実践方法の共有を可能とし、円滑な事業展開に大きく寄与すると思われる。研修の中では、体力向上トレーニングに関する質疑応答を徹底し、

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95

モデル市町村事業実施報告

疑問や参加者の不測の状態変化への対応方法等、実務的対応の修得を図るべきであることは言うまでもない。

区  分

対象者の年齢

有効性(体力)

有効性(QOL)

コンプライアンス

虚弱者への適応

種目(プログラム)

負荷調整

費用

参加可能人数

マンパワー(参加10名あたり)

専門職の参画の必要性

研修の必要性

送迎体制

後期高齢者を含む幅広い年齢層

きわめて有効(虚弱者に、より顕著)

有効だが一部項目は未改善

高い

要介護者に対しても対応可能

実施可能な種目数が多い

一部の種目に対しては工夫を要する

安価

多数の参加が可能

2~6名の従事者数を要する

定期的な関わりを要する

必要

確保が望ましい

同左

同左

同左

同左

同左

実施種目は限られる

負荷の微調整が容易

比較的効果

マシンの整備台数による

同左

同左

同左

同左

非 マ シ ン 筋 ト レ マ シ ン 筋 ト レ

3)体力向上トレーニングの課題

今回のモデル事業の結果では、非マシン筋トレにおいても筋力・バランス能力・柔軟性等の体力の向上を通じ、歩行能力を中心とした身体機能の改善が認められ、体力向上トレーニングが介護予防の極めて有効な一手法であることが検証されたが、一方、いくつかの課題もあると思われる。

身体機能の著しい改善に比べ、「SF-36」や「老研式活動能力指標」による主観的健康観や生活機能自立度は若干の改善を認めたものの、身体機能のそれには及ばなかった。このことから、身体機能の改善は、日常生活全般の機能の改善及び主観的な活力の向上には貢献するが、高齢者の生活機能の全般にわたる向上を図るうえでは、積極的な社会参加を促すための種々の施策を併せて展開する必要性が示唆された。

また、体力向上トレーニングが真に必要な対象者を、確実に事業に参加させるための手法の充実が大切である。市町村では、トレーニングニーズのある対象者を要介護認定や基本健康診査の結果から把握したり、在宅介護支援センターや健康づくりに係わる町内会等からの情報をもとに、ある程度確定できると思われるが、対象者が確実に事業に参加するためには、これらに加え、送迎体制の確保が必須である。要介護者や要支援者などのより虚弱な高齢者が必要に応じて送迎を受けられることが事業を実施する際の条件である。

次に、終了後の問題であるが、3か月が終了した後のトレーニングの継続は大きな課題である。本プログラムの修了者の個別アンケートから、事業終了後もトレーニングを継続したいという希望も多く、また、定期的なトレーニングを継続しなければ、再び、筋力をはじめ身体機能は低下する事実を踏まえると、修了者がトレーニングを継続できる環境確保の工夫が必要である。例えば、トレーニングの会場の開放日を設定し、自主的な運動を支援したり、修了者に対し

て、定期的に体力等の評価を行ったり、トレーニングのための助言を行うことも考えられる。また、名寄市のようにホームトレーニングを行う方法も有用と思われるが、その際には定期

的に体力等の評価および技術的助言や、必要に応じトレーニング事業への再参加ができるような工夫も求められる。さらには、修了者を中心にトレーニングクラブなどの自主組織の形成を

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96

市町村が支援することも検討の余地があると思われる。今後、具体的なトレーニングの実践にあたっては、負荷の大きさや運動量を個人毎に設定す

ることに加え、対象者に最適なプログラムの“パッケージ”を提供できることが望ましく、そのためには、個人の心身の状況に応じた、より個別性に配慮した高齢者体力向上トレーニングプログラムの開発が必要とされる。

1)廃用症候の予防

《ま と め》

高齢期においては、廃用症候を防ぎ、介護予防を図ることが極めて重要である。ただし、そのためには、廃用症候に至る身体機能の低下の根本的な原因をまずは把握しなければならない。体力向上トレーニングは廃用症候を予防し生活機能の向上を図るための有効な手段と考えられるが、対象者によっては筋トレが最も優先度の高い介護予防メニューとは限らない場合がある。例えば、身体疾患の治療や鬱病および鬱状態の改善もしくは閉じこもりを防ぐために、積極

的な社会参加を促すサービスが筋トレに優先されなければならない場合もある。対象者に十分なアセスメントを行い、本プログラムの対象として適当であることを確認した

うえで事業を実施するというステップがあって初めて、体力向上トレーニングが廃用症候を予防し、より効果の高い介護予防へとつながることとなると思われる。

2)高齢者福祉の推進

介護予防事業は介護保険制度と並んで高齢者福祉を推進する手段として重要な役割を担っている。介護予防事業は市町村を実施主体とするメニュー事業であり、市町村の実情や特性を踏まえたうえで効果的なメニューを組み立てる必要がある。現在、市町村では介護予防に係わる多くのメニューが展開されているが限られた財源で対象者により適したメニューが提供されることが重要である。また、介護保険制度においては、要支援および要介護1の者が年々増加し、これらの者の状

態の改善が極めて重要な課題となっている。要介護者の機能低下の多くは立ち上がりや歩行機能の低下から始まることが知られており、その意味からも歩行能力の改善に極めて効果が高い体力向上トレーニングは要介護1や要支援を含む虚弱者に有効な対策となり得る。本事業は一定の研修の受講及びマニュアルの活用並びに適宜の専門職の参画により、殆どの

市町村において円滑な実施が可能であり、費用対効果も高いと思われる。非マシン筋トレとマシン筋トレを組み合わせて実施することも有効と思われる。

今後、より多くの地域で、高齢者の「体力向上」の意義が認識され、自治体職員やボランティア等の協力体制の下、他のサービスとの組み合わせ等も視野に入れた、本プログラムへの積極的な取り組みが進み、高齢者のQOLの維持・向上に向けた効果的な介護予防が展開されることを期待する。

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モデル市町村事業実施報告

1.参加者の状況

事業の修了者14名の内訳は女性11名・男性3名で、70代後半以上の後期高齢者が半数以上を占めた。虚弱者は7名で、うち要介護1、要支援の者が各1名、その他の虚弱者も歩行に不安のある者が多く見られた。以下に、7名の虚弱者(うち1名は、事業途中で脱落。)の状況を示す。

2.ホームトレーニングの実施

名寄市では、週2回のうち1回は参加者が各自自宅でトレーニングを行う、いわゆる「ホームトレーニング」の形式をとった。各自のホームトレーニング継続を主催者がいかに支援し、週2回のペースを維持するかが本事業の重要なポイントとなったが、毎回記録表を作成するなどの対応をとった結果、参加者の継続意欲も保たれ、下記のような比較的高い実施率となった。

NO 性別 年齢老研式上位5項目いずれかひとつでも「いいえ」がある

歩行速度80M/分未満

介護度 その他個別状況

1

2

3

4

5

6

7

85

68

73

77

77

84

70

○(要支援)

○(要介1)

腰しびれ

左片麻痺

歩行時に注意必要

膝、腰痛

下肢しびれ

頚部脊椎症

週1回

ホームトレーニング 週当たり実施回数別の人数

週2回

週3回

週1回未満

7

4

21

Ⅰ 【名寄市】 北海道苫小牧保健所長 山本 長史

6 高齢者体力向上トレーニング モデル事業の結果考察

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3.結  果

(1)身体機能評価~体力測定~

握力と開眼片足立ちについては、トレーニング実施前後で有意な差は見られなかった。握力については、トレーニング種

目の中に特に握力を強化する種目が入っていないためと思われる。また、実施前後の平均値を比べると向上しているが、14名中改善した人としなかった人は半数ずつであった。開眼片足立ちは、全体の平均値は

良くなっていたが、統計的には有意な結果にならなかった。これは10秒も立てない人から2分以上立っていられる人もいて、開眼片足立ち時間の個人差が大きかったためと思われる。長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、Timed up & go、最大歩行速度についてはトレーニング実施前後で有意な差があった。長座位体前屈とファンクショナルリーチはともに、14名中12名が改善していた。ファンクショナルリーチについては、男性(平均年齢78才)は30.5cmが35.5cmに、女性(平

均年齢75.9才)は27.3cmが32.7cmと男女とも約5cmのばせるようになっていた。Timed up&goは、実施後の方が有意に遅くなるという結果で、14名中10名が遅くなってい

た。体力測定は、実施前実施後ともに同じ人が測定しているので、測定者による偏りは考えられない。そのため遅くなったことに対する理由は必ずしも明確ではないが、参加者は実施前に比べて

リラックスしていて、緊張感がなかったことや、膝痛等で遅くなった人がいたことなどが理由として考えられる。最大歩行速度につい

ては、実施後1名遅くなったが、遅くなった時間は0.09秒とわずかであった。歩行速度が速くなると、転倒する高齢者は少なくなるといわれており、筋力トレーニングが転倒予防にも有効であると思われた。

<参考> 体力測定結果(虚弱者7名のみによる分析) 実施前 実施後

握 力(kg) 開眼片足立ち(秒) 長座位体前屈(cm) Fリーチ(cm) Timed up&Go(秒) 最大歩行速度(秒)

23.424.4

16.6

35.3

31.5

26.5

32.0

7.7 8.0 8.4 7.4

* * *

 *P<0.05 **P<0.01 ***P<0.001

■名寄市:14名(男3、女11)平均76.4歳

握力(kg)

開眼片足立ち(秒)

長座位体前屈(cm)

Fリーチ(cm)

Timed up & go(秒)

最大歩行速度(秒)

24.0 ±  6.15

26.0 ± 37.22

33.9 ±  8.74

28.0 ±  5.25

6.7 ±  2.17

7.3 ±  2.67

24.6 ±  5.98

41.3 ± 47.97

39.4 ±  8.25

33.3 ±  6.06

7.1 ±  2.37

6.5 ±  2.36

14

14

14

14

14

14

NS

NS

**

**

**

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率

*P<0.05**P<0.01

***P<0.001

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モデル市町村事業実施報告

(2)健康度評価~SF-36~

トレーニング実施前後で有意な差は認められなかった。これは結果のバラツキが大きかったことと対象人数が少ないことによる影響もあったと思われる。8つの下位尺度のうち、PF(身体機能)、BP(体の痛み)、GH(全体的健康感)、VT

(活力)、MH(こころの健康)については実施後の方が良くなっていた。一方RP(日常役割機能(身体))とRE(日常役割機能(精神))の2つは実施後の方が悪くなっていた。この2項目については素点として取りうる得点範囲が狭いため、尺度得点の変動が大きく、実施前に0だったが実施後100になった人がいる一方、実施前に100の人が0になるなど、回答の少しの変化が得点に大きく反映されるなどの偶然変動の影響が避けられなかったため、実施後の方が悪いという結果になったと考えられるまたSF(社会生活機能)につい

ては、参加者を個別にみると実施前後で点数は変わっていたが、平均点では同じであった。

(3)その他の評価

①老研式活動能力指標の結果全体の平均点は、11.0が11.3点と若干良くなった。個々でみると14名中5名良くなり、逆に2

名悪くなった。性別に見ると男性3名の平均点は実施前の11.7点が12点に、女性11名の平均点は10.8点が11.1

点に増加した。

②バーセルインデックスの結果バーセルインデックスについては、1名の方が実施前と後の両方で入浴が部分介助又は不可

能と答えた以外は満点で、全員実施前後で全く同様の結果であった。

区   分

身体機能(PF)

日常役割機能(RP)

身体の痛み(BP)

全体的健康観(GH)

活力(VT)

社会生活機能(SF)

日常役割機能(精神)(RE)

心の健康(MH)

67.1 ± 25.47

73.2 ± 38.56

55.4 ± 17.65

50.6 ± 14.62

60.7 ± 20.18

91.1 ± 12.43

71.4 ± 46.88

69.4 ± 15.02

73.2 ± 18.36

55.4 ± 44.05

58.2 ± 26.46

57.7 ± 16.55

72.5 ± 21.01

91.1 ± 14.23

64.3 ± 49.72

78.6 ± 17.58

14

14

14

14

14

14

14

14

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率

*P<0.05**P<0.01

***P<0.001

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100

4.考 察

バーセルインデックスではいずれの項目も高い得点が維持され、実施前後で同じ結果であっても、身体機能評価や老研式活動能力指標の変化が見られた。しかし、身体機能評価、SF-36と老研式活動能力指標の間に明瞭な関係は認められなかった。名寄市は集合トレーニングが週1回と、週1回以上は自宅トレーニングで、全12週行うとい

うスケジュールで実施した。集合トレーニングは週1回のためか出席率は良く、欠席が多かった人でも全13回中9回(69.2%)出席していた。自宅でのホームトレーニングは、ストレッチ→ 軽運動 → バランス運動 → 筋力トレーニング(1~2セット)という流れで、週1回以上行っていた(2~3回行った人が多かった)。

道具としては、会場が町内会の集会場でマットがないため、個人用のストレッチマットを使用していた。おもりには主として1kgのダンベルが使用され、上富良野町に比べると比較的軽い負荷を使用していた。スタッフも8名くらいおり、参加者当たりの人数では上富良野町と比べると多くなっていた。これは虚弱高齢者が多いことへの配慮もあると思われる。「1 23 ・・」というかけ声も、参加者全員で声を出しており、雰囲気は良いような感じを受けた。また、会場に「元気会 みんな集まって5歳若返り」という看板があったのと、滑り止めのついたおそろいの靴下をはいていたのが印象に残った。参加者のアンケート結果では、「ふらつきがなくなった。」「身体が軽くなった。」「また参加

したい。」「楽しかった。」「みんなに会えてうれしかった。」など良い感想がほとんどで、「週一回集まるので出来る。」「終了するのは寂しい。」という感想もあった。スタッフの感想は、「最初閉じこもり傾向の人に声をかけ、3か月も来てくれるか心配だっ

たし、ふらつきも多かったが、ふらつきもなくなった。」「当初半信半疑で来ていた。自分から参加する人ではなかったので、心配していたが、自分で目標をもって行っていた。楽しく参加し、明るくなり、仲間意識も出てきた。」と肯定的であった。

今後の課題としては、「パークゴルフにもいけない高齢者や、多受診高齢者へも広げていきたいという印象を持っている。この教室参加者はすごく明るくなっている。」「この事業に参加している人は元気になっているが、この事業に参加しない人をどうするか。」「膝痛の人へは低負荷のマシンを使用してのトレーニングが必要ではないか。」「出てこない人の対応をどうするかが課題である。」など対象者の拡大を課題と考えている人が多かった。そのための解決方法として、「来年度以降は、ボランティアと町職員などで広めていきたい。」「来年度は違うところでの開催を考えている。」などを検討していた。

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101

モデル市町村事業実施報告

はじめに

上富良野町では、平成14年度より高齢者を対象に、介護予防事業として「健康体操事業」を実施していた。平成15年度も同様に継続する予定であったが、より効果的な事業展開及び客観的な事業評価を期待して、これまでの事業に新たな内容を組み込み「元気はつらつ塾」を行った。既存の「健康体操事業」においては、閉じこもり予防を主な目的とし、レクリエーションや

簡単な体操を行ったことで一定の効果をあげていたが、体力向上という観点での検討が十分ではなかったため、漠然と事業の効果を感じていたにもかかわらず、それを客観的に把握することが困難であり、手応えが不十分であった。今回、道庁をはじめとした各分野の専門家による支援の基で、「元気はつらつ塾」が実施で

きたことで、科学的根拠に基づいた系統的なトレーニングが可能となった。参加者の喜ぶ様子からその効果を実感するとともに、客観的な測定値から高齢者の体力は有意に向上していた。ここでは、上富良野町における経過及び結果について報告する。

1.参加者の状況

参加者の募集は、町の広報誌による公募を行うとともに、日頃の保健活動から得られた情報を基に、虚弱と考えられた高齢者に対して個別に勧奨を行った。その結果29名の参加が得られた。(最後まで

終了した者は27名)60歳代後半から70歳代前半の参加が多く、虚弱者は6名が参加した。虚弱者の内訳は、1名が「要支援」で、5名が「自立」であるものの歩行不安定者であった。参加者の約9割は女性であった。

2.「元気はつらつ塾」の概要

平成15年8月26日から11月14日までの約3か月間、週2回の頻度で24回開催された。トレーニング内容の概略については、上半身トレーニングについては、5回目まで低負荷で

行い、その後15回目まで個人の能力に合わせ負荷調整を行い、その後、ほぼ安定した負荷でトレーニングを継続した。下半身トレーニングについては、11回目までは負荷をかけずに行い、15回目くらいまで個人

の能力に合わせ負荷の調整を行い、その後、ほぼ安定した負荷でトレーニングを継続した。「元気はつらつ塾」には毎回20名前後が出席した。全参加者29名のうち、24回コースの全て

参加者の年齢

75歳以上 4名

(内虚弱2名)

60-64歳 4名

(内虚弱1名)

70-64歳 6名

(内虚弱3名)

65-69歳 13名

(男性3名、女性24名)

Ⅱ 【上富良野町】 北海道倶知安保健所長 竹内 U男

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102

を出席したのは3名のみであったが、平均出席回数は20.3回で、最も出席回数が少なかった者でも14回出席しており、ほとんどの参加者に対して十分なトレーニングが実施できた。なお、中途脱落者はいなかった。(29名中、2名は最終測定日に欠席した。)事業開始当初は、単調で地味なトレーニングに継続参加する者は少ないのではないかと心配

していたが、多くの参加者から「次の教室まで待ち遠しい」という声が聞こえるなど、参加を楽しみにしている様子が伺えた。今回、運動効果が十分期待できるトレーニングを行ったことで、結果的に体力が顕著に向上

し、それを自覚できた参加者が更なる効果を期待して、主体的かつ積極的に参加したためと考えられる。

第1回

5回

11回

15回

24回

カール チェスト

レッグ エクステンション

(8/26) (9/9)

負荷個別調整期 (500~1500g)

安定期~終盤 (1000~2000g)

安定期~終盤 (0~2000g)

負荷個別調整期 (0~1500g)

低負荷期 (一律500g)

無負荷期

(9/30) (10/14) (11/14)

26名 (11/14)

27名 (10/17)

16名 (10/23)

19名 (10/10)

25名 (8/26)

参加者数の 推移

3.参加者の客観的な変化

前報告(88~89ページ参照)で述べたように、トレーニングマシンを使用した地区及び使用しなかった地区の何れにおいても、有意な体力向上が観察された。上富良野町は、トレーニングマシンを使用せずに事業を行った地域であったが、Timed up & go、ファンクショナル・リーチ、握力、最大歩行速度において、有意な改善が見られており、動的バランス、筋力及び歩行安定性が向上したと考えられた。

Timed up & go(秒) ファンクショナル・リーチ(cm)

6.1 ±1.2 5.4

±0.8

26.2 ±7.3

29.1 ±7.2

指導前

指導前

指導後

指導後

62.5 ±60.8

74.5 ±72.6

指導前 指導後

握力(kg)

開眼片足立ち(秒)

32.6 ±7.1

39.4 ±6.9

41.5 ±6.5

42.7 ±6.5

指導前

指導前

指導後

指導後

5.4 ±1.3 4.5

±0.9指導前

指導後

長座位体前屈(cm)

最大歩行速度(秒)

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103

モデル市町村事業実施報告

4.参加者が主観的に感じた変化

参加者がトレーニングを継続的に実施するためには、前述の客観的な体力向上だけでは不十分であり、体力向上の結果、生活の質(QOL)が向上していることを、生活の中で参加者自身が実感していることが大切である。

そこで、上富良野町では事業の終盤に、主観的な体調の変化に関するアンケート調査を行った。参加者の8割近くが、身体の動きが良くなったり、身体の調子が良くなったことを自覚していた。具体的には、「歩行」、「イスの立ち座り」、

「階段の上り下り」の改善を自覚する者が多く、下半身の安定を重視したトレーニングプログラムの成果が、日常生活の中でも自覚されていたことが伺える。体力向上に付随して、「食べ物がおいし

い(14名)」、「気持ちが前向き(13名)」、「眠れる(11名)」など、ほとんどの参加者において、自覚的な健康度が向上していた。

5.参加者の自主的トレーニングの取り組み

この事業おいては、プログラムに従って3か月間トレーニングを行うことで、確実に体力向上が期待できるが、一旦獲得した体力であっても、事業終了後の自主的な継続がなければ、次第に体力が低下した状態に戻ってしまう。上富良野町の場合、マシンを使わないト

レーニングメニューであり、プログラムの多くは家庭でも実施可能なもので、参加者の意欲次第で十分継続可能であると考えられたので、その把握のためアンケート調査を行った。

教室期間中は、特に家庭でのトレーニングは指示しなかったが、8割の参加者が自宅でもトレーニングを行っていた。また、教室終了後も8割の参加者が「続ける」と回答していた。このことから、多くの参加者がトレーニングの意義を正しく理解し、自分なりのメリットを自覚して主体的に教室に参加していたことが伺える。また、教

0% 20% 40% 60% 80% 100%

トレーニングを始める前の3か月前と比較して 今の状態をどのように感じていますか?

良くなった 20名(74.1%)

良くなった 21名(77.8%)

どちらとも いえない

どちらとも いえない

身体の調子

身体の動き

身体の動きが良くなった具体例

ふたを開けるのが 楽になった 6名

玄関での靴の 脱ぎはきが 楽になった 6名

階段の上り下りが 楽になった 8名

イスの立ち座りが 楽になった 8名

歩行が楽になった 11名

今後やってみたい運動の具体例

筋トレ(自主活動) 12名

楽しめる 軽運動 11名

友人に 筋トレを教える

2名

高齢者対象の 運動の手伝い

3名

パークゴルフ 5名

教室期間中の 自宅でのトレーニング

教室終了後の 自宅でのトレーニング

自宅でのトレーニング実施について

0% 20% 40% 60% 80% 100%

行った  22名(81.5%)

続ける  22名(81.5%)

行わな かった

続け ない

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104

参加者に見られた変化と 支援のポイント

受け身的参加期 トレーニング効果の実感期 主体的参加期

トレーニング要素 レクリエーション要素

室終了後に自主サークルが形成され、継続の場ができた。しかしながら、個人の努力だけでトレーニングを継続することは、困難な場合も考えられる

ため、教室終了後のフォローアップを行う等、事後の支援方法について今後の検討を要する。

6.参加者のモチベーション維持に向けた工夫

この事業に参加した29名は、概ね意欲的であったが、「要支援」等で体力に自信がない者の中には、参加にあたっての不安を訴える者もいた。また、トレーニング開始当初は、長期に及ぶトレーニングの目的を正しく理解していない者、参加者間の体力の差で継続参加に自信を失う者や物足りなく思う者、単調なトレーニングに楽しさを見いだせない者等が次第に参加しなくなるのではないかと心配し、教室運営にあたっては以下に示すようないくつかの工夫を行った。逆に中盤以降はレクリエーション的な内容に物足りなく感じる参加者が増え、より高い運動

効果が期待できる内容が求められるようになった。

トレーニングにより参加者自身が変化を自覚できる教室の運営にあたっては、参加者の観察を十分に行い、参加者のニーズを敏感に察知し、ニーズに応じたプログラムを組むことが大切であると考えられた。

1)教室初期における工夫①休憩を多くすることで、体力の低下した者でも無理なく参加できるよう配慮した。②レクリエーションの要素を多く取り入れ、参加者の緊張をほぐし、楽しく継続できるよう配慮した。③年齢及び身体機能を考慮して4グループに分け、体力に応じたトレーニングを行った。

2)教室全般での工夫①教室中盤以降、身体機能の向上を自覚した参加者が増え、より高いレベルのトレーニングが求められたため、随時トレーニングメニューを改善した。②運動時や休憩時に声かけを頻繁に行い、参加者のニーズ把握に努めた。③個人記録票を工夫し、参加者が自らの変化を自覚できるようにした。

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105

モデル市町村事業実施報告

1.初回評価による参加者の状況

参加者の身体機能を生命予後や健康予後との相関の最も高い最大歩行速度から見ると、参加12名中、30~50m/分が5名(41.7%)、110m/分以上が6名(50%)であり、明らかなニ峰性を示している。平均的な高齢者の最大歩行速度(100~120m/分)から推察すると、参加者は虚弱高齢者と元気高齢者の身体機能の異なる集団より形成されているといえる。これは集客手段の違いから生まれた結果であり、前者は保健師からの個別勧奨による参加、後者は広報誌、または口コミによる参加である。

2.結 果

<脱 落>12名のうち11名が3ヶ月間のプログラムを完了した。脱落は1名であり、理由は下記のと

おりである。

<出席回数>全24回のトレーニングにおける脱落を除く出席回数は、平均22.2回で22回の度数が最も高

く、出席率は92.4%と非常に高い結果であった。

度数

0

1

2

3

4

0 20 40 60 80 100 120 140 160最大歩行速度m/分

平均=86.3

標準偏差=40.74

有効数=12

度数

0

1

2

3

4

5

6

20 21 22 23 24 25出席回数

平均=22.2

標準偏差=1.08

有効数=11

ID

12

理 由

第2期に腰痛を訴え、その後、内科疾患が判明し入院した。

Ⅲ 【奈井江町】 財団法人札幌市健康づくり事業団総務課指導係長(健康運動指導士) 佐竹 恵治

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<身体機能の変化>最大歩行速度、Timed up & goに有意な改善を認めた。開眼片足立ち時間、長座位体前屈は改善傾向を示し、ファンクショナルリーチ、握力は変化が認められなかった。また、体力測定の項目ではないが、第2期開始時と第3期終了時に行った最大挙上筋力測定(1RMテスト)に有意な改善が認められた。

区    分

握力(kg)

開眼片足立ち(秒)

長座位体前屈(cm)

Fリーチ(cm)

TimedUp&Go(秒)

最大歩行速度(秒)

最大挙上筋力(レッグプレスkg)

27.2 ±  7.23

9.1 ± 17.27

28.3 ±  9.61

30.9 ±  8.57

9.5 ±  5.83

8.3 ±  4.49

90.9 ± 25.48

27.6 ±  5.91

14.9 ± 18.89

31.1 ±  8.71

31.1 ±  6.26

8.3 ±  4.62

7.8 ±  4.34

114.6 ± 29.45

11

11

11

11

11

11

11

NS

NS

NS

NS

**

**

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率

*P<0.05**P<0.01

***P<0.001

<健康関連QOLの変化>健康関連QOLの指標であるSF-36においては、からだの痛みに有意な改善を認めた。

社会生活機能、活力はスコアの増加傾向を示し、日常役割機能〈身体〉は減少傾向を示した。その他の項目は変化が認められなかった。

区    分

身体機能(PF)

日常役割機能(RP)

身体の痛み(BP)

全体的健康観(GH)

活力(VT)

社会生活機能(SF)

日常役割機能(精神)(RE)

心の健康(MH)

65.0 ± 25.30

77.3 ± 32.51

61.1 ± 14.06

54.7 ± 21.09

61.4 ± 18.45

83.0 ± 25.17

72.7 ± 46.71

78.2 ± 14.01

69.5 ± 30.70

63.6 ± 43.82

75.3 ± 19.14

55.1 ± 16.84

72.3 ± 15.39

94.3 ±  8.59

75.8 ± 42.40

78.2 ± 14.35

11

11

11

11

11

11

11

11

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率

*P<0.05**P<0.01

***P<0.001

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モデル市町村事業実施報告

3.考 察

高齢者の身体機能を高める目的の筋力トレーニング事業は、筋力、バランス、柔軟性といった体力の諸要素を全般的に向上させる傾向が確認された。特に、起居動作や歩行能力を調べるTimed up & goテストと最大歩行速度テストにおいて有意な改善が認められたことは、ADLの向上につながったばかりか、閉じこもり傾向にあった人が改善される(4名中3名が改善=終了時のアンケートより)などQOLを改善する効果もあると考えられる。身体機能の低下は閉じこもりを形成する重大なファクターであり、特に下肢筋力の果たす

役割は大きい。本事業では下肢筋力の指標である1RMテスト(レッグプレス)に著名な向上が認められており、そのことが行動を喚起し、閉じこもり傾向の改善につながったのではないかと考えられる。また、健康関連QOLの指標であるSF-36では、からだの痛みに有意な改善を認め、社

会生活機能、活力に改善傾向が認められたことから心理的にも良い影響をおよぼすことが示された。

脱落は極めて少なく(1/12名)、また、脱落を除く出席率(92.4%)も高いことから高齢者が受け入れやすい事業であるといえる。このことは継続にも現れている。事業終了後は定期的に施設を開放しているが、継続は極めて良好である(10/11名継続)。その理由としては、①事業期間中に参加者がトレーニングの効果を実感した、②開放日時を設定している(週2回)、③(本事業と同様に)虚弱者の送迎を行っている、④指導スタッフ(保健師、理学療法士)が継続的に携わっていることが考えられる。本事業参加者が長期間にわたりトレーニングを継続することにより高齢者特有の廃用症候の予防が図られることを考えると、本事業は要介護状態を予防するうえで効果的な事業であるといえる。参加者は、保健師からの個別勧奨と広報誌により募集を行った結果、虚弱高齢者と元気高

齢者の身体機能の異なるグループ構成となり、両者を分けてトレーニングを実施することができた。

介護予防の重点対象者は軽度要介護者を含めた虚弱高齢者であることを踏まえると、関係機関等との連携を図り、適確に対象者を抽出し事業参加を促すシステムの構築が必要不可欠であろう。

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1.初回評価による参加者の状況

参加者の身体機能を生命予後や健康予後との相関の最も高い最大歩行速度から見ると、平均値が148.5m/分であった。平均的な高齢者の最大歩行速度(100~120m/分)から推察すると、本事業参加者は平均を大きく上回る身体機能を有する対象であるといえる。

2.結 果

<脱 落>29名のうち26名が3か月間のプログラムを完了した。脱落は3名であり、理由は下記のと

おりである。

<出席回数>全19回のトレーニングにおける脱落を除く出席回数は、平均17.1回で18回の度数が最も高

く、出席率は89.9%と非常に高い結果であった。

度数

0123

7

456

8910

60 80 100 120 140 160 180 200 220最大歩行速度m/分

平均=148.5

標準偏差=25.79

有効数=29

度数

0

1

2

3

7

4

5

6

8

9

10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20出席回数

平均=17.1

標準偏差=2.13

有効数=26

ID

6

18

23

理 由

事業後期に持病の腰痛が発症した。

仕事の都合により通えなくなった。

事業開始直後に主治医より参加を見合わせるよう言われた。

Ⅳ 【芽室町】 財団法人札幌市健康づくり事業団総務課指導係長(健康運動指導士) 佐竹 恵治

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モデル市町村事業実施報告

<身体機能の変化>最大歩行速度、長座位体前屈に有意な改善を認めた。Timed up & go、開眼片足立ち時間は改善傾向を示し、ファンクショナルリーチ、握力は変化が認められなかった。

区    分

握力(kg)

開眼片足立ち(秒)

長座位体前屈(cm)

Fリーチ(cm)

TimedUp&Go(秒)

最大歩行速度(秒)

29.9 ±  9.35

44.9 ± 27.21

39.6 ±  9.41

42.3 ±  6.70

5.4 ±  1.73

4.3 ±  1.09

30.8 ± 10.02

50.9 ± 26.48

43.2 ±  8.81

42.4 ±  5.58

5.0 ±  0.99

3.5 ±  0.60

26

26

26

26

26

26

NS

NS

**

NS

NS

***

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率

*P<0.05**P<0.01

***P<0.001

<健康関連QOLの変化>【SF-36】身体機能に有意な改善を認めた。その他の項目については全般的に改善傾向を示したもの

の、有意な改善は認められなかった。

【老研式活動能力指標】地域で自立した生活を営む上で必要となる活動能力として、Basic ADLよりも上位水準に

ある活動能力を測定するための老研式活動能力指標においては変化が認められなかった。

区    分

身体機能(PF)

日常役割機能(RP)

身体の痛み(BP)

全体的健康観(GH)

活力(VT)

社会生活機能(SF)

日常役割機能(精神)(RE)

心の健康(MH)

75.2 ± 21.79

71.2 ± 38.53

69.9 ± 17.14

60.8 ± 17.96

69.6 ± 20.10

91.3 ± 15.32

79.5 ± 32.76

81.8 ± 14.50

80.8 ± 18.75

77.9 ± 31.88

72.8 ± 21.54

65.5 ± 15.21

74.8 ± 17.06

94.2 ± 12.36

83.3 ± 36.82

83.2 ± 15.35

26

26

26

26

26

26

26

26

NS

NS

NS

NS

NS

NS

NS

実施前(M±SD)

実施後(M±SD) N 有意

確率

*P<0.05**P<0.01

***P<0.001

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3.考 察

高齢者の身体機能を高める目的の筋力トレーニング事業は、柔軟性、バランス、移動能力といった体力の諸要素を全般的に向上させる傾向が確認された。また、健康関連QOLの指標であるSF-36では、身体機能に有意な改善を認め、その他

の項目においても改善傾向が認められたことから心理的にも良い影響をおよぼすことが示された。脱落は極めて少なく(3/29名)、また、脱落を除く出席率(89.9%)も高いことから高齢者

が受け入れやすい事業であるといえる。事業終了後は週2回のトレーニング日を設けて運動指導員(毎回)と保健師(週1回)が対応しており、参加人数は毎回15名程度と良好である。

募集は広報誌、新聞広告、および保健師からの個別勧奨により行い、個別勧奨によって参加した4名以外は広報誌などによる参加であった。高齢者の運動事業において、条件を設けずに(比較的広く一般向けに)参加募集した場合、元気な人ほど参加を希望しやすく虚弱者の取り込みには不向きであると考えられるが、これについて、高齢者の身体機能を最も反映している最大歩行速度と自立生活の活動能力を調べる老研式活動能力指標から本事業参加者を判断すると、最大歩行速度の初回平均値148.5m/分、老研式活動能力指標の同値11.8点(13点満点)の「元気に自立生活を送っている人達」であり、この考えを支持する結果であった。したがって、本町の対象者定義にある「身体機能低下の見られる者」は殆ど取り込めなか

ったことになり、今回の募集にあたっての課題としては以下の点があげられる。① 対象者の属性により集客の手法を明確にする。② 具体的な対象条件を明記する。③ 対象者の掘り起こしに必要なネットワークを組織する。

高齢者の大半は元気高齢者であることを考えると、元気な時から長期的視野に立った介護予防を推し進めることの意義は大きいものの、今後に向けては虚弱者や要介護高齢者の取り込みを検討するとともに、対象者の属性により事業の枠組みを整理することが必要である。

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112

身体状況チェック票

氏名                    性 別   男・女

生年月日 (大正・昭和) 年  月  日 ( 歳)

(※各設問の回答状況に応じ、市町村において、主治医の意見書の要否、事業参加の可否を判定する。)

1 最近6か月以内に「心臓発作」及び「脳卒中発作」を起こした。 はい いいえ

2 急性の肝機能障害または、慢性のウイルス性肝炎の活動期である。 はい いいえ

3 糖尿病があり、

過去に低血糖発作を起こしたことがある。 はい いいえ

空腹時血糖が200mg/dl以上である。 はい いいえ

網膜症・腎症などを合併している。 はい いいえ

4 血圧値が収縮期血圧180mmHg以上、または、拡張期血圧110mmHg以上である。

はい いいえ

5 脳血管性痴呆やアルツハイマー型痴呆があり、事業参加が不可能と思われる。

(面接者の判断で可) はい いいえ

6 何らかの心臓病がある。 はい いいえ

7 急性期の整形外科的疼痛及び神経症状がある。 はい いいえ

8 骨粗鬆症でかつ、圧迫骨折の既往がある。 はい いいえ

【判定結果】

①( )参加できる 血圧     /

②( )主治医の意見が必要 ①以外の場合、その理由

③( )参加できない

面接者職・氏名

「介護予防筋力トレーニング指導者研修マニュアル」(特定非営利活動法人地域ケア政策ネットワーク発行)から一部改変引用

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113

資 料 編

意  見  書

貴院にて治療中の下記の方より、当(市・町・村)が主催する、高齢者体力向上トレーニン

グに参加の申し込みがありました。

つきましては、本トレーニングに参加が可能か否かについてご教示賜りますようお願いいた

します。

氏  名

生年月日 (大正・昭和) 年  月  日 ( 歳)

住  所

1 治療中の疾患について

(1)

(2)

(3)

2 参加可否について

参加可 ・ 参加不可

※ 参加における留意点

平成  年  月  日

医療機関名

担当医氏名

(主治医の意見書)

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114

問  診  票

氏 名

下記のアンケートで該当するものを○で囲み、( )内には記入してください。

1.あなたの家族構成について教えてください。

(1) ひとり暮らし  (2) 高齢者世帯  (3) その他( )

2.現在、病気で治療(服薬を含め。)をしていますか。 はい ・ いいえ

※「はい」とお答えの方

(1)病症

(2)病院名  ( )

(3)体で気になることはありますか。

3.今までに次の病気や症状がありましたか。 はい ・ いいえ

4. あなたは今まで病気や手術、けがなどで入院したことがありますか。

はい ・ いいえ

※「はい」とお答えの方 (内容:                     )

記入年月日 年  月  日

・高血圧症 ・高脂血症 ・脳血管障害 ・狭心症 ・心筋梗塞

・糖尿病  ・肝臓病  ・腎臓病   ・貧血  ・喘息

・膝、腰痛

・その他( )

・高血圧症 ・高脂血症 ・脳血管障害 ・狭心症 ・心筋梗塞

・糖尿病  ・肝臓病  ・腎臓病   ・貧血  ・喘息

・膝、腰痛

・その他( )

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115

資 料 編

5.現在、次の症状がありますか。 はい ・ いいえ

6.足腰、膝の痛みにより歩行に不自由を感じますか。 はい ・ いいえ

7.この1年間で転倒したことがありますか。 はい ・ いいえ

8.歩行中、つまずきや滑ったりすることがありますか。 はい ・ いいえ

9.肩痛や肩こりはありますか。 はい ・ いいえ

10.ひとりで外出することができますか。 はい ・ いいえ

※ 外を歩く時間は1日でどのくらいですか。( 時間   分)

11.家族や親戚に会うことが多いですか。 はい ・ いいえ

12.友人や近所の方に会うことが多いですか。 はい ・ いいえ

13.普段、家の中で過ごすことが多いですか。 はい ・ いいえ

14.人の集まるところに出ることが億劫に感じますか。 はい ・ いいえ

その他、気になっていることがあれば自由に記入願います。

・頭痛  ・めまい ・耳鳴り ・不眠  ・息切れ ・せき

・のどの渇き    ・動悸、脈の乱れ  ・下痢、便秘

・残尿感      ・疲れやすい    ・肩腕手の痛み

・足腰の痛み    ・膝の痛み     ・むくみ

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体 力 測 定 記 録 用 紙

氏名: 身長: . cm 体重  . kg

( ):   ( )

種    目

握 力 (右・左)

開眼片足立ち (右・左)

長座位体前屈

ファンクショナルリーチ

Timed up & Go

10m最大歩行速度

. kg

分    秒

. cm

. cm

. kg

分    秒

. cm

. cm

1回目 2回目

測定日トレーニング前・後(いずれかに○印)

年  月  日

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ぜんぜんむずかしくない

すこし

むずかしい

とても

むずかしい

(ア)激しい運動

~ 一生けんめい走る、重い物を持ち上げる、激しいスポーツをするなど ~1 2 3

1 2 3

1 2 3

(イ)適度の活動

~ 家や庭の掃除、1~2時間散歩するなど ~

(ウ)少し重い物を持ち上げたり、運んだりする

~ 買い物袋などを持つなど ~

(エ)階段を数階上までのぼる。

(オ)階段を一階上までのぼる。

(カ)体を前に曲げる、ひざまずく、かがむ

(キ)1キロメートル以上歩く

(ク)数百メートルくらい歩く

(ケ)百メートルくらい歩く

(コ)自分でお風呂に入ったり、着替えたりする

117

資 料 編

SF-36 質 問 紙

問1 あなたの健康状態について (一番良く当てはまるものに○印をつけてください。)

問2 1年前と比べて、現在の健康状態はいかがですか。

(一番よくあてはまるものにひとつだけ○印をつけてください。)

問3 以下の質問は、日常よく行われている活動です。あなたは健康上の理由で、こうした活動をすることがむずかしいと感じますか。むずかしいとすればどのくらいですか。(ア~コまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけてください。)

記入年月日

氏   名

年  月  日

1 最高に良い     2 とても良い   3 良い

4 あまり良くない   5 良くない

1 1年前より、はるかに良い 2 1年前よりは、やや良い

3 1年前とほぼ同じ     4 1年前ほど、良くない

5 1年前より、はるかに悪い

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118

問4 過去1か月に仕事やふだんの活動をしたときに、身体的な理由で次のような問題がありましたか。(ア~エまでのそれぞれの質問については、「はい」「いいえ」のどちらかに○をつけてください)

問5 過去1か月間に、仕事やふだんの活動をしたときに、心理的な理由(例えば、気分が落ちこんだり不安を感じたりしたために)、次のような問題がありましたか。(ア~ウまでのそれぞれの質問については、「はい」「いいえ」のどちらかに○をつけてください)

問6 過去1か月間に、家族、友人、近所の人、その他の仲間とのふだんのつき合いが、身体的あるいは心理的な理由で、どのくらいさまたげられましたか。(一番よくあてはまるものに○印をつけてください)

問7 過去1か月間に、体の痛みをどのくらい感じましたか。(一番よくあてはまるものに○印をつけてください)

問8 過去1か月間に、いつもの仕事(家事をふくみます)が痛みのために、どのくらいさまたげられましたか。(一番よくあてはまるものに○印をつけてください)

いいえは い

(エ)仕事やふだんの活動をすることがむずかしかった

~例えば、いつもより努力を必要としたなど~1 2

(ア)仕事やふだんの活動をする時間をへらした

(イ)仕事やふだんの活動が思ったほど、できなかった

(ウ)仕事やふだんの活動の内容によっては、できないものがあった

1 ぜんぜんさまたげられなかった  2 わずかに、さまたげられた  3 すこし、さまたげられた 

4 かなり、さまたげられた     5 非常に、さまたげられた

1 ぜんぜんさまたげられなかった  2 わずかに、さまたげられた  3 すこし、さまたげられた

4 かなり、さまたげられた     5 非常に、さまたげられた

1 ぜんぜんなかった  2 かすかな痛み  3 軽い痛み

4 中くらいの痛み   5 強い痛み    6 非常に激しい痛み

いいえは い

(ア)仕事やふだんの活動をする時間をへらした

(イ)仕事やふだんの活動が思ったほど、できなかった

(ウ)仕事やふだんの活動がいつもほど、集中してできなかった

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資 料 編

問9 次にあげるのは、過去1か月間に、あなたがどのように感じたかについての質問です。(ア~ケまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけてください。)

問10 過去1か月間に、友人や親戚を訪ねるなど、人とのつき合いをする時間が、身体的あるいは心理的な理由でどのくらいさまたげられましたか。(一番よくあてはまるものに○印をつけてください)

問11 次にあげた各項目は、どのくらいあなたにあてはまりますか。(ア~エまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけてください。)

・調査票は「サンプル」と透かしの入ったものをご使用ください。

(透かしの入った調査票は「SF-36 日本語版マニュアル」に掲載されているものをお使いください。又

は下記のHPから入手できます。)

・SF-36の活用に関するお問合せ先は

禁無断複製・使用 SF-36の使用には使用申請が必要です。申請に関しては、専用HPをご覧下さい。http://www.in-hope.jp問合せ先:特定非営利活動法人 健康医療評価研究機構TEL:075-211-5656 FAX:075-211-4762 E-mail:sf-36@i-hope.jp

いつもほとんど

いつもたびたび ときどき まれに

ぜんぜん

ない

(ウ)どうにもならないくらい、気分が落ちこんでい

ましたか1 2 3 4 5 6

(ア)元気いっぱいでしたか

(イ)かなり神経質でしたか

(エ)落ちついていて、おだやかな気分でしたか

(オ)活力(エネルギー)にあふれていましたか

(カ)落ちこんで、ゆううつな気分でしたか

(キ)疲れはてていましたか

(ク)楽しい気分でしたか

(ケ)疲れを感じましたか

1 いつも  2 ほとんどいつも  3 ときどき

4 まれに  5 ぜんぜんない

まったく

そのとおり

ほぼ

あてはまる

なんとも

言えない

ほとんどあてはまらない

ぜんぜんあてはまらない

(ア)私は他の人と比べて、病気になりやすいと思う

(イ)私は人並みに健康である

(ウ)私の健康は、悪くなるような気がする

(エ)私の健康状態は非常に悪い

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老研式活動能力指標質問紙

年  月  日

毎日の生活について伺います。以下の質問のそれぞれについて、「はい」か「いいえ」のい

ずれかに○をつけてください。

〈手段的自立〉

問1 バスや電車を使って1人で外出できますか。 はい  ・  いいえ

問2 日用品の買物ができますか。 はい  ・  いいえ

問3 自分で食事の用意ができますか。 はい  ・  いいえ 

問4 請求書の支払いができますか。 はい  ・  いいえ

問5 銀行預金・郵便貯金の出し入れができますか。 はい  ・  いいえ

〈知的能動性〉

問6 年金などの書類が書けますか。 はい  ・  いいえ

問7 新聞を読んでいますか。 はい  ・  いいえ 

問8 本や雑誌を読んでいますか。 はい  ・  いいえ

問9 健康についての記事や番組に関心がありますか。 はい  ・  いいえ

〈社会的役割〉

問10 友達の家を訪ねることがありますか。 はい  ・  いいえ

問11 家族や友達の相談にのることがありますか。 はい  ・  いいえ

問12 病人を見舞うことができますか。 はい  ・  いいえ

問13 若い人に自分から話しかけることがありますか。 はい  ・  いいえ

記入年月日

氏   名

年  月  日

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資 料 編

バーセルインデックス 改訂版

1.摂食

2.更衣

上衣

自立

10

5

5

0

5

14

10

10

15

6

4

15

5

10

5

3

2

5

5

7

3

2

10

5

0

0

0

△2

0

00

0

0

0

0

0

0

0

要介助

下衣

義肢・装具

アプローチ洗体

5.尿失禁

8.トイレ

移乗

(車いす)

10.階段昇降

後始末・

衣服処理

歩行

9.

7.移乗

3.整容

4.入浴

6.便失禁

10:reach内に食物をおけば摂食できる。自助具を使

ってもよい。適当な時間内に食べ終わる。

5:時間がかかりすぎる。半分以上自分で食べられる。

こぼす量が多い。

5:自立(ブラジャーを含まない)。ひもを結ぶ。

3:半分以上適当な時間内で可。結ぶことができない。

5:靴、靴下を含む(ガードルを除く)。

2:上位と同様。例:ズボンははけるが靴下不可。

0:自立or適用なし。

洗面、歯磨き、ひげそり、くし、化粧etc。髪を

編むを除く。

シャワーを使用するまでの移動。浴槽への出入り。

シャワーのみ。スポンジでの洗体のみも可。

10:失禁なし。SCIでは自己導尿できる。尿集器の着

脱管理ができること。

5:時に失敗。bed panの使用トイレに行くのが間に

合わない。deviceの使用に介助要。

10:失禁なし。座薬、浣腸の使用可。

5:時に失敗。 〃   に介助要。

5:安全にW/Cでbedにアプローチし、移乗する。必

要ならW/Cの位置を変えbedからW/Cに乗り移

る。

7:bed上で臥位←→坐位可。移乗は要監視or少しの

介助要

6:安全にトイレでトランスファーできる。手すり、

その他安定したものを使用してよい。

3:要監視or少し介助要。

4:衣服の上げ下げ。服を汚さない。ペーパーを使用

する。bed panを使用しても、その管理ができれ

ば可。

2:要監視or上の一部に介助要

15:50m歩行可。義肢・装具・松葉杖・杖・歩行器

(車輪なし)の使用可。rolling walker使用不可。

10:上記のいずれかに介助、指導を要す。少しの介助

で少なくとも50m歩けること。

(歩行できない場合)

5:少なくとも50m駆動可。角を曲がる、向きを変え

る、bed・トイレへのアプローチができる。

10:介助なく階段昇降できる。手すり・杖・松葉杖の

使用ok。

5:要監視or少しの介助要。

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あてはまら

ない

なんとも

言えないあてはまる

(ア)何でも積極的に取り組みたいと思う

(イ)世の中の動きやニュースに興味がある

(ウ)興味をもって打ち込めるものがある

(エ)自分はおしゃれをするのが好き

(オ)保健や福祉の制度やサービスを1つ以上知っている

122

個 別 ア ン ケ ー ト(例)

氏名               記入年月日   年  月  日

1 一日中家の外には出ず、家の中で過ごすことが多いですか。 はい  いいえ

2 普段、買物や散歩、通院などで外出する頻度はどれくらいですか。

3 友人、近所の人あるいは別居家族や親戚と会っておしゃべりする頻度はどれくらいですか。

4 外出するにあたっては、どなたかの介助が必要ですか。 はい  いいえ

5 健康管理についてご質問します。(一番良く当てはまるものに○印をつけてください。)

6 関心と意欲についてご質問します。

(一番良く当てはまるものに○印をつけてください。)

あてはまら

ない

なんとも

言えないあてはまる

(ア)規則正しい生活をしている

(イ)お茶などの水分をよく飲むようにしている

(ウ)バランスのよい食事を心がけている

(エ)かかりつけ医が決まっている

(オ)定期的に健康診断を受けるようにしている

1 毎日1回以上     2 2~3日に1回程度

3 1週間に1回程度   4 ほとんど外出しない

1 2~3日に1回程度  2 1週間に1回程度

3 1か月に1回程度   4 ほとんどない

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資 料 編

あてはまら

ない

なんとも

言えないあてはまる

(ア)身体を動かすのが好きだ

(イ)よく散歩する

(ウ)1日1回は外出する

(エ)家の中での役割がある

(オ)スポーツ、習い事、クラブ活動をしている

あてはまら

ない

なんとも

言えないあてはまる

(ア)気軽に話し合える仲間がいる

(イ)世代を超えた仲間がいる

(ウ)近所の人と気軽にあいさつや立ち話をする

(エ)地域の行事や集まりには積極的に参加する

(オ)ボランティア活動をしている

7 活動についてご質問します。

(一番良く当てはまるものに○印をつけてください。)

8 社会参加についてご質問します。

(一番良く当てはまるものに○印をつけてください。)

9 現在、身体のどこかに痛いところがありますか。(痛いところに○印をつけてください。)

10 このトレーニングに参加することで一番期待することを自由にお書きください。

手 肘 肩 首 腰 膝 足 その他

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FIM(機能的自立評価法)

機能的自立度評価法

Functional Independence Measure (FIM)

7 完全自立(時間、安全性)

6 修正自立(補助具使用)

部分介助

5 監視

4 最小介助(患者自身:75%以上)

3 中等度介助(50%以上)

完全介助

2 最大介助(25%以上)

1 全介助(25%未満)

セルフケア

A.食事

B.整容

C.入浴

D.更衣(上半身)

E.更衣(下半身)

F.トイレ動作

排泄コントロール

G.排尿

H.排便

移乗

I .ベッド

J.トイレ

K.風呂、シャワー

移動

L.歩行、車椅子

M.階段

コミュニケーション

N.理解

O.表出

社会的認知

P.社会的交流

Q.問題解決

R.記憶

入院時 退院時 フォローアップ

合計

注意:空欄は残さないこと。リスクのために検査不能の場合はレベル1とする。

スプーンなど

風呂

シャワー

歩行

車椅子

聴覚

視覚

音声

非音声

介助者なし

介助者あり

レ ベ ル

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資 料 編

自覚的運動強度(Borg指数質問紙)

20

19

18

17

16

15

14

13

12

11

10

9

8

7

6

非常にきつい

かなりきつい

きつい

ややきつい

楽である

かなり楽である

非常に楽である

体全体が苦しい

無理・100%と差がない若干言葉が出る程度・息が詰まる

どこまで続くか不安頑張るのみ

何とか頑張れる・汗びっしょり

いつまでも続く、充実感がある汗が出る

汗が出るか出ないかフォームが気になる・物足りない

楽しく気持ちよいが、まるで物足りない

印欄 強度の感じ方 その他の感覚

※ 下の表で自分の運動後の感覚に○印をつけてください。

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126

ホームトレーニング用紙

■実施経過 (いずれかに○印をし、筋力トレーニングは回数も記入)

■ホームトレーニングを実施した感想

※選択種目

ストレッチ

筋力トレーニング

首部

腰背部

胸部

肩部

臀部

下腿部

大腿部

そけい部

レッグエクステンション

カーフレイズ

アブダクション

チェストプレス

トウレイズ

スクワット

ロープーリー

カール※

シュラッグ※

レッグフレクション※

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できない

できた

できた

できた

できた

できた

できた

できた

できた

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

できた ( 回)

実施年月日   年  月  日

氏   名

■担当者意見

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資 料 編

実施内容及び留意事項

トレーニング経過記録票

実施日時

参加人員

プログラム

■ストレッチ

■軽運動

■バ ラ ン ストレーニング

■筋力トレーニング

■クールダウン

虚弱高齢者の状態につ

いての特記事項

全体の評価及び課題

内  容 (実施種目等)

比較的元気な高齢者 虚弱者高齢者

年  月  日( ) 時  分~   時  分

名(比較的元気な高齢者  名 虚弱者高齢者  名)

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高齢者向けトレーニングマシン (写真:奈井江町提供)

立上がりや階段昇降に必要な筋力の

強化目 的

【リカンベントスクワット】

作用筋大殿筋・ハムストリング

大腿四頭筋・下腿三頭筋

膝への負担の軽減・歩行安定目 的

【レッグエクステンション】

作用筋 大腿四頭筋。特に内側広筋

体幹支持の安定を図る目 的

【ローイング】

作用筋 広背筋

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資 料 編

歩行時のふらつき解消目 的

【ヒップアブダクション】

作用筋 中殿筋

起立動作等の補助機能を高める目 的

【チェストプレス】

作用筋 大胸筋、上腕三頭筋