今年の改正分野を知っておこう 租税法 高田講師レ...
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公認会計士
今年の改正分野を知っておこう
租税法
高田講師レジュメ
EL179190 0 0 0 5 1 2 1 7 9 1 9 5
2016.11.27(日)会計士講座イベントレジュメ:租税法
1
今年の改正分野を知っておこう(租税法) 1、改正について
改正 試験範囲の改正 法人税法:組織再編成に係る所得の計算が試験範囲に追加。 税制改正 下記の通り。
2、改正分野の概要(各税目ごと。) 以下、主な税制改正点をピックアップしたものであり、詳細については 2017 年本試験向け論文
テキストに記載されています。その旨ご了承のうえ、ご確認をお願いします。 税目 項目 税制改正の内容
法人税法
法人税率 (大規模法人)法人税率の引き下げ 23.9%→23.4% 減価償却 定額法は建物のみならず H28.4.1 以後取得の建物附属設備及び構築物も
中小企業者等の少額減価償却資産の特例→対象法人の見直し 特別償却及びその他
の特別控除 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の即時償却の廃止等 生産性向上設備等を取得した場合の特別償却及び特別控除の内容の改正 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の特別控除(旧:雇用者の
数が増加した場合の特別控除)の内容及び雇用者給与等支給額が増加した
場合の特別控除との重複適用可(要件あり) 雇用者給与等支給額が増加した場合の特別控除と特定の地域において雇
用者の数が増加した場合の特別控除(旧:雇用者の数が増加した場合の特
別控除)との重複適用可(要件あり) 寄附金 認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の特別控除
(いわゆる企業版ふるさと納税)の創設 外国税額控除 国外源泉所得の範囲等:考え方の総合主義→帰属主義への変更による改正
繰越欠損金 欠損金の控除限度額の引き下げ 欠損金控除前の所得の金額の 100 分の 65 相当額→100 分の 60 相当額
役員の範囲及び給与 役員給与の損金不算入額の計算で届出が不要となる事前確定届出給与→
特定譲渡制限付株式を対価とする費用(による給与等)の追加 当該費用の帰属事業年度の特例の追加
外国法人の法人税 外国法人の所得の範囲:考え方の総合主義→帰属主義への変更による改正
2016.11.27(日)会計士講座イベントレジュメ:租税法
2
税目 項目 税制改正の内容
所得税法
各種所得
公社債→更に特定公社債等・一般の公社債に分類 利子所得等の課税方式等→特定公社債等の利子等については申告不
要もしくは申告分離課税の選択可 なお、一般の公社債は源泉分離課税維持のまま 無記名の公社債の利子等の帰属に関する特則の廃止 給与所得控除額の上限額の引き下げ 給与所得者の特定支出の控除の改正 通勤手当非課税限度額の改正 譲渡所得等の課税方式等→特定公社債等の譲渡所得等については非
課税の対象から除外 非課税口座内少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得の非課税
措置(NISA)の限度額の変更 国外転出の譲渡所得の改正は依然続いている形
損益通算
上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除 →国外転出する場合の譲渡所得等の特例等にかかるものも含む 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の範囲の拡充等
→当該損益通算の対象に特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等
が加えられる 納付税額 住宅借入金等特別控除→非居住者の取得も含む(要件あり)
税目 項目 税制改正の内容
消費税法
課税の対象 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直し 事業者向け電気通信利用役務の提供(リバースチャージ)に係る内外
判定基準の見直し(平成 29 年 1 月 1 日以後)
納税義務 納税義務の免除の特例→高額特定資産を取得した場合の納税義務の免
除の特例の追加
第33章 組織再編税制
平成29年度本試験より試験範囲となった組織再編税制について学習します。
法人が経営の合理化を図るため、組織再編成が行われることがあります。
組織再編成により資産等の移転を行った場合には、法人税法上、原則として
時価で譲渡したものとして取り扱われますが、これでは、企業の組織再編成を
妨げることになるため、一定の要件を満たす場合には、譲渡損益に対する課税
の繰延べがなされます。これらの要件をしっかりと押さえてください。
〈学習内容〉
第1節 組織再編税制
MEMO
第1節 組織再編税制 ● 33-1
第1節 組織再編税制
目 次
1 概要
2 合併
3 分割
4 現物出資
5 株式交換・株式移転
学習の指針
組織再編税制について学習します。法人の組織再編成の形態と共に,形態に応
じて置かれている規定についてしっかりと押さえ,税務調整ができるようにして
ください。
1 概要
⑴ 概要
組織再編成とは、法人の合併、分割*、現物分配、現物出資、株式交換、
株式移転がある。
* 分割は、分割型分割と分社型分割に区分される。
組
織
再
編
成
合 併
分 割 分 割 型 分 割
分 社 型 分 割
現 物 出 資
現 物 分 配
株 式 交 換
株 式 移 転
なお、上記のうち現物分配については、便宜上、グループ法人税制のとこ
ろでみていくこととする。
⑵ 趣旨
法人が経営の合理化を図るため、合併等の組織再編成が行われることがあ
る。
組織再編成により資産等の移転を行った場合には、法人税法上、原則とし
て、時価による譲渡として取り扱われ、譲渡損益を認識することとなる。
しかし、これでは企業の組織再編成を妨げることになるため、一定の要件
を満たす場合は、特例として、簿価による移転として取り扱われ、課税の繰
延べがなされる。
なお、前者の場合を「非適格」といい、後者の場合を「適格」という。
33-2 ● 第33章 組織再編税制
① 非適格の場合の課税関係
移転資産の譲渡損益課税の対象者
(移転する側の法人) みなし配当課税の対象者
被合併法人 被合併法人の株主
分割法人 分割法人の株主(分割型分割の場合のみ)
現物出資法人 ――――――
※ 株式交換及び株式移転については、その株式交換又は株式移転により
株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人の資産等の移転は行われな
いため、譲渡損益課税は生じず、また、みなし配当課税も生じない。た
だし、非適格の場合は、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人に
おいて評価損益課税が適用される。
② 非適格と適格との差異
区 分 譲渡損益課税の有無 備 考
非 適 格
(原則) あ り。
移転資産等に対する支配が継続して
おらず、移転を行った法人の従前の
課税関係は移転を受けた法人に継続
させない。
適 格
(特例) な し。
移転資産等に対する支配が継続され、
移転を行った法人の従前の課税関係
は移転を受けた法人に継続させる。
⑶ 合併
① 意義
合併とは、会社法等の規定により、2以上の会社が合体して1つの会社
になることをいう。合併には吸収合併と新設合併があるが、現実の合併は
ほとんどが吸収合併である。
(合併前)
(合併後)
A社株主 B社株主 A社株主
A社株主(旧B社株主)
2)
A社
(合併法人)
1) B社
(被合併法人 A 社
1)合併による資産・負債の移転(その対価としてB社に対してA社株式
の発行)
2)B社からB社株主に対してA社株式の交付
(B社株主は、B社株式を譲渡し、その対価としてA社株式を取得する。)
吸収合併
第1節 組織再編税制 ● 33-3
② 適格・非適格の判定(法法2十二の八、法令4の3①②③④)
被合併法人の株主に合併法人株式以外の
資産が交付されない。
YES 100%の持株
関係がある場
合の合併
YES
適
格
NO
50%超の持株
関係がある場
合の合併
YES 大部分の従業
者の引継ぎ
かつ
主要な事業の
引継ぎ
YES
NO
YES NO
NO
共同事業要
件を満たし
ている。
非 適 格非適格
NO
※ 合併親法人株式が交付される場合については、省略する(以後同
じ。)。
適格・非適格の判定
(注1) 株式以外の資産が交付されないもの
合併による資産等の移転に伴い、金銭等が交付されるものについて
は、単なる資産等の売却以外の何ものでもない。よって、資産等の引
継ぎの意味を持つ適格には該当しない。
なお、金銭等が交付されるものをすべて適格に該当しないこととす
ると、円滑な組織再編成に支障をきたす恐れがあるため、例外として
次の金銭等の交付については、認められている。
1)通常の配当金
2)合併に反対する株主からの株式買取請求に基づく買取に際してその株
主に交付する金銭等
(注2) 適格無対価合併
100%持株関係(直接持株関係に限る。)にある法人間の合併の場合
等には、株主(100%持株関係の場合は、合併法人が100%被合併法人
の株式を有していることになる。)に対し、合併の対価として合併法人
の株式を交付しないときにおいても、省略された取引として、それに
よって非適格とはされない。これは、合併法人自身に合併法人の株式
を交付したとしても、100%持株関係に変動はないためである。
(注3) 共同事業要件
持株関係が強くない企業間においても、企業グループを超えた組織
再編成が行われる実態が考慮され、次の要件をすべて満たす場合には、
適格と認められる。
1)事業の相互関連性があること。
2)事業規模の割合が約5倍を超えないこと。
3)被合併法人の従業者の約80%以上が合併後に合併法人の事業に従事す
る見込みであること。
4)被合併事業が合併後に合併法人において引き続き営まれる見込みで
あること。 など
33-4 ● 第33章 組織再編税制
③ 取扱い(法法62、62の2①)
1)原則(非適格合併の場合、100%グループ内のものを除く。)
合併により合併法人に移転をした資産及び負債は、その合併時の価額
による譲渡をしたものとし、その譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額
は、被合併法人の 後事業年度(被合併法人の合併の日の前日の属する
事業年度をいう。)の益金の額又は損金の額に算入する。
この場合においては、被合併法人は、合併法人から新株等(合併法人
がその合併により交付したその合併法人株式その他の資産をいう。)をそ
の合併時の価額により取得し、直ちにその新株等をその被合併法人の株
主等に交付したものとする。
区 分 取 扱 い
被 合 併 法 人
移転資産等を時価により譲渡したものとして譲渡損益の計
上をしなければならない。
(100%グループ内のものについては、一定の調整をする。)
合 併 法 人移転資産等を時価により取得する。
(100%グループ内のものについては、一定の調整をする。)
被合併法人の
株 主 等
みなし配当 交付金銭等の額が資本金等の額を超え
る場合には、みなし配当を認識する。
譲渡損益
合 併 法 人
株 式 の み
交 付
有価証券の譲渡損益を繰り延べる(簿価
引継ぎ)。
上 記 以 外 有価証券の譲渡損益を計上する。
非適格合併の場合の課税関係
合併法人は利益積立金額を引き継がない。なお、被合併法人の株主はみな
し配当を認識することとなる。
第1節 組織再編税制 ● 33-5
2)特例(適格合併の場合)
適格合併により合併法人に移転をした資産及び負債は、 後事業年度
終了時の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、被合併法人の各事業
年度の所得の金額を計算する。
この場合においては、被合併法人は、合併法人からその合併法人株式
をその被合併法人の純資産価額に相当する金額により取得し、直ちにそ
の株式をその被合併法人の株主等に交付したものとして考える(無対価
の場合を除く。)。
∴ 課税の繰延べ
区 分 取 扱 い
被 合 併 法 人 移転資産等は帳簿価額により引き継ぐものとして譲渡損益の
計上を繰り延べる。
合 併 法 人 移転資産等を帳簿価額により受け入れる。
被合併法人の株
主 等
みなし配当 なし(被合併法人の利益積立金額は合併法
人に引き継がれる。)。
譲渡損益
(合併法人株式
の み 交 付 )
有価証券の譲渡損益を繰り延べる(簿価引
継ぎ)。
適格合併の場合の課税関係
合併法人は利益積立金額を引き継ぐ。なお、被合併法人の株主はみなし配
当を認識しないこととなる。
33-6 ● 第33章 組織再編税制
<具体例>
~非適格合併~
⑴ 被合併法人
B社
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
資本金 50
利益積立金額 50
① 合併による資産・負債の移転(時価譲渡)をし、A社株式を取得する。
(負 債)100 (資 産)200
(A社株式)150 (譲 渡 益) 50 → 利益積立金額を構成する。
② B社株主に対して、A社株式を交付する。
(資 本 金) 50 (A社株式)150
みなし配当 ←(利益積立金額)100*
* 本来であれば法人税等の課税後の金額となるが、便宜上考慮しない。
⑵ 合併法人
合併による資産・負債の移転を受け(時価による取得)、A社株式を交付
する。
(資 産)250 (負 債)100
(資 本 金) 50 → 法人が決定した資本金
(資本金等の額)100 → 差額は資本金等の額となる。
⑶ B社株主(金銭交付のないケース)
A社株式の交付を受ける(B社株式の合併直前の帳簿価額は50とする。)。
(A社株式)150* (B社株式) 50
(みなし配当)100
* A社株式の取得価額は「旧簿価+みなし配当の額」となる。
※ 資本金の額も資本金等の額の一部であるが、説明の便宜上、資本金は独
立した勘定科目で示している。
第1節 組織再編税制 ● 33-7
<具体例>
~適格合併~
⑴ 被合併法人
B社
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
資本金 50
利益積立金額 50
① 合併による資産・負債の移転(帳簿価額による引継ぎ)をし、A社株式
を取得する。
( 負 債) 100 ( 資 産) 200
( A社株式) 50
合併法人に引継ぎ ← ( 利益積立金額) 50
② B社株主に対して、A社株式を交付する。
( 資 本 金) 50 ( A社株式) 50
⑵ 合併法人
合併による資産・負債の移転を受け(帳簿価額による受入れ)、A社株式
を交付する。
( 資 産) 200 ( 負 債) 100
( 資 本 金) 50 → 法人が決定した資本金
( 利益積立金額) 50 → 被合併法人からの引継ぎ
⑶ B社株主
A社株式の交付を受ける(B社株式の合併直前の帳簿価額は50とする。)。
( A社株式) 50 ( B社株式) 50
33-8 ● 第33章 組織再編税制
1)
2)
3)
1)
2)
3)
⑷ 分割
① 分割の意義
分割とは、会社の一部門を切り離し、他の会社(新設を含む。)に包括的
に承継(移転)させることをいう。
なお、法人税法においては、分割を「分割型分割」と「分社型分割」に
区分して定義している。
② 分割型分割の意義(法法2十二の九)
その分割の日において分割法人が交付を受ける分割対価資産(分割によ
り分割承継法人によって交付されるその分割承継法人の株式(出資を含
む。)その他の資産をいう。)のすべてがその分割法人の株主等に交付され
る場合等のその分割をいう。
(分割前)
(分割後)
B社株主
A社及びB社の株主となる
B 社
A 社
(分割承継法人)
B 社
(分割法人)(分割法人)
1)分割による資産・負債の移転
2)移転した資産・負債の対価としてA社株式を発行
3)B社からB社株主に対して、A社株式の交付
(B社株主は、B社株式の一部を譲渡し、その対価としてA社株式を取
得する。)
分割型分割(間接交付型)
(分割前)
(分割後)
B社株主
A社及びB社の株主となる
B 社
A 社
(分割承継法人)
B 社
(分割法人)(分割法人)
1)分割による資産・負債の移転
2)移転した資産・負債の対価としてA社株式を発行
3)A社からB社株主に対して、A社株式の交付
分割型分割(直接交付型)
第1節 組織再編税制 ● 33-9
③ 分社型分割の意義(法法2十二の十)
分割の日において分割対価資産が分割法人の株主等に交付されない場合
等のその分割をいう。
(分割前)
(分割後)
C社株主
C社株主
C 社
C 社
(分割法人)
1) (分割法人)
1)分割による資産・負債の移転
2)D社株式の交付 2) D 社 (分割承継法人)
旧商法における会社分割は、人
的分割(法人税法における分割
型分割)と物的分割(法人税法
における分社型分割)の2つが
規定されていた。
会社法(平成18年5月1日施行)
における会社分割は、物的分割
のみが規定されている。会社法
では、人的分割は物的分割の実
施後に分割会社(分割法人)が
交付を受ける分割承継会社(分
割承継法人)の株式を分割会社
の株主に剰余金の配当として交
付することとなる。
なお、分割型分割に係る剰余金
の配当は、法人税法第23条の受
取配当等の益金不算入における
剰余金の配当の範囲から除かれ
ている。ただし、法人税法第24
条の配当等の額とみなす金額に
おいてその取扱いが示されてお
り、一定の場合にはみなし配当
となり、受取配当等の益金不算
入の対象となる。
33-10 ● 第33章 組織再編税制
④ 適格又は非適格の判定(法法2十二の十一、法令4の3⑤⑥⑦⑧)
分割対価資産として、分割承継法人の株式以外
の資産が交付されないもの。なお、分割型分割
においては、その株式が持株割合に応じて交付
されるものに限る。
YES100%の持株関
係がある場合の
分割
YES
適
格
NO
50%超の持株
関係がある場
合の分割
YES主要な資産等の引継ぎ
かつ 大部分の従事者の引継ぎ
かつ 分割事業の引継ぎ
YES
NO
YES NO NO
共同事業要
件を満たし
ている。
非 適 格
非適格
NO
※ 分割承継親法人株式が交付される場合については、省略する(以後同じ。)。
適格・非適格の判定
(注1) 株式以外の資産が交付されないもの
分割による資産等の移転に伴い、金銭等が交付されるものについて
は、単なる資産等の売却以外の何ものでもない。よって、資産等の引
継ぎの意味を持つ適格には該当しない。
(注2) 適格無対価分割
100%持株関係(直接持株関係に限る。)にある法人間の分割の場合
等には、株主(100%持株関係の場合は、分割承継法人が100%分割法
人の株式を有していることになる。)に対し、分割の対価として分割承
継法人の株式を交付しないときにおいても、省略された取引として、
それによって非適格とはされない。
これは、分割承継法人自身に対して分割承継法人の株式を交付した
としても、100%持株関係に変動はないためである。
(注3) 共同事業要件
持株関係が強くない企業間においても、企業グループを超えた組織
再編成が行われる実態が考慮され、次の要件をすべて満たす場合には、
適格と認められる。
1)事業の相互関連性があること。
2)事業規模の割合がおおむね5倍を超えないこと。
3)分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転すること。
4)分割事業に係る従業者のおおむね80%以上が分割後に分割承継法人
の事業に従事する見込みであること。
5)分割事業が分割後に分割承継法人において引き続き営まれる見込み
であること。 など
⑤ 分割型分割の取扱い(法法62①、62の2②③、法令123の3②)
1)原則(非適格分割型分割の場合)
分割型分割により分割承継法人に移転をした資産及び負債は、その分
第1節 組織再編税制 ● 33-11
割時の価額による譲渡をしたものとし、その譲渡に係る譲渡利益額又は
譲渡損失額は、分割法人の分割の日の属する事業年度の益金の額又は損
金の額に算入する。
区 分 取 扱 い
分 割 法 人
移転資産等を時価により譲渡したものとして譲渡損益の計上
をしなければならない。
(100%グループ内のものについては、一定の調整をする。)
分割承継法人
移転資産等を時価により取得したものとする。
(合併とは異なり、100%グループ内のものについて一定の調
整をしない。)
分 割 法 人 の
株 主 等
みなし配当 交付金銭等の額が資本金等の額を超え
る場合には、みなし配当を認識する。
譲渡損益
分割承継法
人の株式の
み 交 付
有価証券の譲渡損益を繰り延べる(簿価
引継ぎ)。
上記以外 有価証券の譲渡損益を計上する。
非適格分割型分割の場合の課税関係
分割承継法人は利益積立金額を引き継がない。なお、分割法人の株主はみ
なし配当を認識することとなる。
33-12 ● 第33章 組織再編税制
2)特例(適格分割型分割の場合)
適格分割型分割により分割承継法人に移転をした資産及び負債は、分
割前事業年度終了時の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、分割法
人の各事業年度の所得の金額を計算する。
∴ 課税の繰延べ
区 分 取 扱 い
分 割 法 人 移転資産等は帳簿価額により引き継ぐものとして譲渡損益の計
上を繰り延べる。
分割承継法人 移転資産等を帳簿価額により受け入れる。
分割法人の株
主 等
みなし配当 なし(分割法人の利益積立金額は分割承継
法人に引き継がれる。)。
譲渡損益(分割承
継法人の株式のみ
交付)
有価証券の譲渡損益を繰り延べる(簿価引
継ぎ)。
適格分割型分割の場合の課税関係
分割承継法人は利益積立金額を引き継ぐ。なお、分割法人の株主はみなし
配当を認識しないこととなる。
第1節 組織再編税制 ● 33-13
<具体例>
~非適格分割型分割~
⑴ 分割法人
B社
資 産
(含み益100)
上記のうち分割事業に
係るもの
資 産 200
(含み益 50)
400 負 債
上記のうち分割事業に
係るもの 100
200
資本金
利益積立金額
100
100
① 分割事業に係る資産・負債の移転(時価譲渡)をし、A社株式を取得す
る。
( 負 債) 100 ( 資 産) 200
( A社株式) 150 ( 譲 渡 益) 50 → 利益積立金額を構成する。
② B社株主に対して、A社株式を交付する。
( 資本金等の額) 50 ( A社株式) 150
みなし配当 ← ( 利益積立金額) 100*
* 本来であれば法人税等の課税後の金額となるが、便宜上考慮しない。
分割後のB社
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
資本金 50
利益積立金額 50*
* 100 + 50 -100= 50
分割前 譲渡益 みなし配当
⑵ 分割承継法人
分割による資産・負債の移転を受け(時価による取得)、A社株式を交付
する。
( 資 産 ) 250 ( 負 債) 100
( 資 本 金) 50 → 法人が決定した資本金
( 資本金等の額) 100 → 差額は資本金等の額となる。
⑶ B社株主(金銭交付のないケース)
A社株式の交付を受ける(B社株式の分割対応分の帳簿価額は50とする。)。
( A社株式 ) 150* ( B社株式) 50
( みなし配当) 100
* A社株式の取得価額は「旧簿価+みなし配当の額」となる。
33-14 ● 第33章 組織再編税制
<具体例>
~適格分割型分割~
⑴ 分割法人
B社
資 産
(含み益100)
上記のうち分割事業に
係るもの
資 産 200
(含み益 50)
400 負 債
上記のうち分割事業に
係るもの 100
200
資本金
利益積立金額
100
100
① 分割事業に係る資産・負債の移転(帳簿価額による引継ぎ)をし、A社
株式を取得する。
(負 債) 100 (資 産) 200
(A社株式) 50
分割承継法人に引継ぎ ←(利益積立金額) 50
② B社株主に対して、A社株式を交付する。
(資本金等の額) 50 (A社株式) 50
分割後のB社
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
資本金 50
利益積立金額 50*
* 100 - 50 = 50 分割前 引継ぎ
⑵ 分割承継法人
分割による資産・負債の移転を受け(帳簿価額による受入れ)、A社株式を
交付する。
(資 産) 200 (負 債) 100
(資 本 金) 50 → 法人が決定した資本金
(利益積立金額) 50 → 分割法人からの引継ぎ
⑶ B社株主
A社株式の交付を受ける(B社株式の分割対応分の帳簿価額は50とする。)。
(A社株式) 50 (B社株式) 50
第1節 組織再編税制 ● 33-15
⑥ 分社型分割の取扱い(法法62①、62の3)
1)原則(非適格分社型分割の場合)
分社型分割により分割承継法人に移転をした資産及び負債は、その分
割時の価額による譲渡をしたものとし、その譲渡に係る譲渡利益額又は
譲渡損失額は、分割法人の分割の日の属する事業年度の益金の額又は損
金の額に算入する。
区 分 取 扱 い
分 割 法 人
移転資産等を時価により譲渡したものとして譲渡損益の計上
をしなければならない。
(100%グループ内のものについては、一定の調整をする。)
分割承継法人
移転資産等を時価により取得したものとする。
(合併とは異なり、100%グループ内のものについて一定の調
整をしない。)
非適格分社型分割の場合の課税関係
2)特例(適格分社型分割の場合)
適格分社型分割により分割承継法人に移転をした資産及び負債は、そ
の分割直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、分割法人の各事業
年度の所得の金額を計算する。
∴ 課税の繰延べ
区 分 取 扱 い
分 割 法 人 移転資産等は帳簿価額により譲渡したものとして譲渡損益の
計上を繰り延べる。
分割承継法人 移転資産等を帳簿価額により取得したものとする。
適格分社型分割の場合の課税関係
分社型分割の場合は、適格・非適格にかかわらず、分割承継法人は利益積
立金額を引き継がない。
33-16 ● 第33章 組織再編税制
<具体例>
~非適格分社型分割~
⑴ 分割法人
C社
資 産
(含み益100)
上記のうち分割事業に
係るもの
資 産 200
(含み益 50)
400 負 債
上記のうち分割事業に
係るもの 100
200
資本金
利益積立金額
100
100
分割事業に係る資産・負債の移転(時価譲渡)をし、D社株式を取得する。
( 負 債) 100 (資 産) 200
( D社株式) 150 (譲 渡 益) 50 → 利益積立金額を構成する。
分割後のC社(事業年度終了時)
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
D社株式 150 資本金 100
利益積立金額 150*
* 100 + 50 = 150(本来であれば法人税等の課税後の金額になるが、便宣上考慮しない。) 分割前 譲渡益
⑵ 分割承継法人
分割による資産・負債の移転を受け(時価による取得)、D社株式を交付
する。
( 資 産) 250 (負 債) 100
(資 本 金) 100 → 法人が決定した資本金
(資本金等の額) 50 → 差額は資本金等の額となる。
⑶ C社株主
分社型分割の場合は、分割法人の株主等に課税関係は生じない。
第1節 組織再編税制 ● 33-17
<具体例>
~適格分社型分割~
⑴ 分割法人
C社
資 産
(含み益100)
上記のうち分割事業に
係るもの
資 産 200
(含み益 50)
400 負 債
上記のうち分割事業に
係るもの 100
200
資本金
利益積立金額
100
100
分割事業に係る資産・負債の移転(帳簿価額による譲渡)をし、D社株式
を取得する。
( 負 債) 100 ( 資 産) 200
( D社株式) 100
分割後のC社
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
D社株式 100 資本金 100
利益積立金額 100
⑵ 分割承継法人
分割による資産・負債の移転を受け(帳簿価額による取得)、D社株式を
交付する。
( 資 産) 200 ( 負 債) 100
( 資 本 金) 100 → 法人が決定した資本金
⑶ C社株主
分社型分割の場合は、分割法人の株主等に課税関係は生じない。
33-18 ● 第33章 組織再編税制
⑸ 現物出資
① 概要
現物出資とは、法人が金銭以外の資産をもってする出資をいう。
なお、前述した「分社型分割」と類似しているため、ほぼ同様の取扱い
となっている。
(現物出資前)
(現物出資後)
C社株主
C社株主
C 社
C 社
(現物出資法人) 1)
(現物出資法人)
1)現物出資による資産・負債の移転 2)D社株式の交付 2) D 社
(被現物出資法人)
現物出資
第1節 組織再編税制 ● 33-19
② 適格又は非適格の判定(法法2十二の十四、法令4の3⑫⑬⑭)
現物出資法人に被現物出資法人の株式以外の資
産が交付されない。
YES 100%の持株関係
がある場合の
現 物 出 資
YES
適
格
NO
50%超の持
株関係があ
る場合の現
物出資
YES主要な資産等の引継ぎ かつ
大部分の従業者の引継ぎ
かつ 現物出資事業の引継ぎ
YES
NO
YES NO
NO
共同事業要
件を満たし
ている。
非 適 格
非適格
NO
適格・非適格の判定
(注1) 株式以外の資産が交付されないもの
現物出資による資産等の移転に伴い、金銭等が交付されるものにつ
いては、単なる資産等の売却以外の何ものでもない。よって、資産等
の引継ぎの意味を持つ適格には該当しない。
(注2) 共同事業要件
持株関係が強くない企業間においても、企業グループを超えた組織
再編成が行われる実態が考慮され、次の要件をすべて満たす場合には、
適格と認められる。
1)事業の相互関連性があること。
2)事業規模の割合がおおむね5倍を超えないこと。
3)現物出資事業に係る主要な資産及び負債が被現物出資法人に移転す
ること。
4)現物出資事業に係る従業者のおおむね80%以上が現物出資後に被現
物出資法人の事業に従事する見込みであること。
5)現物出資事業が現物出資後に被現物出資法人において引き続き営ま
れる見込みであること。
など
33-20 ● 第33章 組織再編税制
③ 取扱い
1)原則(非適格現物出資の場合)(法法22)
現物出資による資産・負債の移転は、会計上、原則として現物出資時
の価額による譲渡として取り扱われる。税務上においても、原則として
現物出資時の価額による譲渡として取り扱われる。
区 分 取 扱 い
現物出資法人
移転資産等を時価により譲渡したものとして譲渡損益の計上
をしなければならない。
(100%グループ内のものについては、一定の調整をする。)
被現物出資法人
移転資産等を時価により取得したものとする。
(合併とは異なり、100%グループ内のものについて一定の調
整をしない。)
非適格現物出資の場合の課税関係
2)特例(適格現物出資の場合)(法法62の4①)
適格現物出資により被現物出資法人に移転をした資産及び負債は、そ
の現物出資直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、現物出資法人
の各事業年度の所得の金額を計算する。
∴ 課税の繰延べ
区 分 取 扱 い
現物出資法人 移転資産等は帳簿価額により譲渡したものとして譲渡損益の
計上を繰り延べる。
被現物出資法人 移転資産等を帳簿価額により取得したものとする。
適格現物出資の場合の課税関係
現物出資の場合は、適格・非適格にかかわらず、被現物出資法人は利益積
立金額を引き継がない。
第1節 組織再編税制 ● 33-21
<具体例>
~非適格現物出資~
⑴ 現物出資法人
C社
資 産
(含み益100)
上記のうち現物出資に
係るもの
資 産 200
(含み益 50)
400 負 債
上記のうち現物出資に
係るもの 100
200
資本金
利益積立金額
100
100
現物出資に係る資産・負債の移転(時価譲渡)をし、D社株式を取得する。
( 負 債) 100 ( 資 産) 200
( D社株式) 150 ( 譲 渡 益) 50 → 利益積立金額を構成する。
現物出資後のC社(事業年度終了時)
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
D社株式 150 資本金 100
利益積立金額 150*
* 100 + 50 = 150(本来であれば法人税等の課税後の金額となるが、便宜上考慮しない。) 出資前 譲渡益
⑵ 被現物出資法人
現物出資による資産・負債の移転を受け(時価による取得)、D社株式を
交付する。
( 資 産 ) 250 ( 負 債) 100
( 資 本 金) 100 → 法人が決定した資本金
( 資本金等の額) 50 → 差額は資本金等の額となる。
⑶ C社株主
現物出資の場合は、現物出資法人の株主等に課税関係は生じない。
33-22 ● 第33章 組織再編税制
<具体例>
~適格現物出資~
⑴ 現物出資法人
C社
資 産
(含み益100)
上記のうち現物出資に
係るもの
資 産 200
(含み益 50)
400 負 債
上記のうち現物出資に
係るもの 100
200
資本金
利益積立金額
100
100
現物出資に係る資産・負債の移転(帳簿価額による譲渡)をし、D社株式
を取得する。
(負 債) 100 (資 産) 200
(D社株式) 100
現物出資後のC社
資 産 200 負 債 100
(含み益 50)
D社株式 100 資本金 100
利益積立金額 100
⑵ 被現物出資法人
現物出資による資産・負債の移転を受け(帳簿価額による取得)、D社株
式を交付する。
(資 産) 200 (負 債) 100
(資 本 金) 100 → 法人が決定した資本金
⑶ C社株主
現物出資の場合は、現物出資法人の株主等に課税関係は生じない。
第1節 組織再編税制 ● 33-23
⑹ 株式交換
① 概要
株式交換とは、すでに存在している会社同士が、完全親子関係を創設す
る制度である。株式交換を行う場合には、まず、完全子会社となる会社の
株主が保有するその会社の株式は、株式交換の日に完全親会社となる会社
に移転することになる。次に、完全子会社となる会社の株主は、完全親会
社となる会社の発行する新株の割当を受け、株式交換の日に完全親会社と
なる会社の株主となる。このように、他の会社の株主と株式交換を行うこ
とにより、その会社との間で完全親子会社関係を作ることができる。
税務上は、株式交換完全親会社を株式交換完全親法人という。また、株式
交換完全子会社を株式交換完全子法人という。
〈株式交換前〉
S社株主 P社株主
S 社 P 社
〈株式交換後〉
P社株主
(旧S社株主)
S社株式と
P社株式を交換 P社株主
S 社 100%所有
P 社
株式交換
33-24 ● 第33章 組織再編税制
② 適格又は非適格の判定(法法2十二の十六、法令4の3⑮⑯⑰⑱)
株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親
法人の株式以外の資産が交付されない。
YES 同一の者によ
る100%の持株
関 係 が あ る
場 合 の
株 式 交 換
YES
適
格
50%超の持株
関係がある場
合の株式交換
YES大部分の従業者が引
き続き従事
かつ
主要な事業が引き続
き営まれる。
YES
NO
YES NO
NO
共同事業要件
を満たしてい
る。
非 適 格
非適格
NO
※ 株式交換完全支配親法人株式が交付される場合については、省略する(以
後同じ。)。
適格・非適格の判定
(注1) 株式以外の資産が交付されないもの
株式交換に伴い、金銭等が交付されるものについては、間接的に行
われる資産等の売却以外の何ものでもない。よって、資産等の引継ぎ
の意味を持つ適格には該当しない。なお、金銭等が交付されるものを
すべて適格に該当しないこととすると、円滑な組織再編成に支障をき
たす恐れがあるため、例外として次の金銭等の交付については、認め
られている。
1)通常の配当金
2)株式交換に反対する株主からの株式買取請求に基づく買取に際して
その株主に交付する金銭等
(注2) 適格無対価株式交換
一の者が株式交換完全子法人及び株式交換完全親法人の発行済株
式等の100%を保有する関係(直接持株関係に限る。)の場合等には、
株主(100%持株関係の場合は、一の者が100%株式交換完全親法人の
株式を有していることになる。)に対し、株式交換の対価として株式交
換完全親法人の株式を交付しないときにおいても、省略された取引と
して、それによって非適格とはされることはない。
(注3) 共同事業要件
持株関係が強くない企業間においても、企業グループを超えた組織
再編成が行われる実態が考慮され、次の要件をすべて満たす場合には、
適格と認められる。
1)事業の相互関連性があること。
2)事業規模の割合がおおむね5倍を超えないこと。
3)株式交換完全子法人の従業者のおおむね80%以上が株式交換後に株
式交換完全子法人の事業に引き続き従事する見込みであること。
NO
第1節 組織再編税制 ● 33-25
4)株式交換完全子法人の子法人事業が株式交換後に株式交換完全子法
人において引き続き営まれる見込みであること。
5)株式交換後に株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株
式等の全部を保有する関係が継続することが見込まれること。 など
③ 取扱い
1)原則(非適格株式交換の場合)(法法61の2①⑧、62の9、法令119①
八、二十六)
株式交換については、合併などの場合と異なり、株式交換完全子法人
の資産及び負債が株式交換完全親法人に移転することはないが、非適格
合併などの場合の取扱いに合わせるため、株式交換完全子法人の有する
資産及び負債について時価評価をし、その評価損益を株式交換完全子法
人の各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。
また、株式交換完全親法人は、その株式交換により取得した株式交換
完全子法人株式を時価により受け入れることとなる。
株式交換完全子法人の株主については、適格又は非適格で取扱いが異
なるのではなく、その株主がその株式交換に際し、株式交換完全親法人
株式以外の資産の交付を受けたか受けていないかによりその取扱いが異
なる。株式交換完全親法人株式以外の資産の交付を受けた場合には、株
式交換完全子法人株式を時価により譲渡したものとして譲渡損益の計上
をしなければならないが、株式交換完全親法人株式以外の資産の交付を
受けていない場合には、投資の継続性が認められるため、譲渡損益は繰
り延べられる。
区 分 取 扱 い
株式交換完全子法人
資産及び負債について時価評価をし、評価損益の計上
をしなければならない(株式交換完全親法人と完全支
配関係があった場合を除く。)。
株式交換完全親法人 株式交換完全子法人株式を時価により取得したものと
する。
株式交換完全子法人の
株 主 等
譲渡損益
株式交換完全親
法人の株式のみ
交 付
有価証券の譲渡損益を繰り延
べる(簿価引継ぎ)。
上 記 以 外有価証券の譲渡損益を計上す
る。
非適格株式交換の場合の課税関係
33-26 ● 第33章 組織再編税制
2)特例(適格株式交換の場合)(法法61の2①⑧、法令119①八、九)
適格株式交換の場合は、株式交換完全子法人の有する資産及び負債に
ついて時価評価を行わない。これは、適格合併などの場合は譲渡損益を
計上しないのと同様の取扱いとするためである。
また、株式交換完全親法人は、その株式交換により取得した株式交換
完全子法人株式について、株式交換完全子法人の株主が有していたその
株式交換完全子法人株式のその株式交換直前の帳簿価額(株式交換完全
子法人の株主が50人以上の場合には、株式交換完全子法人の簿価純資産
価額)により受け入れることとなる。
株式交換完全子法人の株主については、その株主がその株式交換に際
し、株式交換完全親法人株式以外の資産の交付を受けていないため、譲
渡損益は繰り延べられる。
∴ 課税の繰延べ
区 分 取 扱 い
株式交換完全子法人 資産及び負債について、時価評価をしない。
株式交換完全親法人
(非適格であっても株式
交換完全親法人と株式交
換完全子法人との間に完
全支配関係がある場合を
含む。)
株式交換完全子法人株式について、株式交換完全子法
人の株主が有していたその株式交換完全子法人株式
のその株式交換直前の帳簿価額(株式交換完全子法人
の株主が50人以上の場合には、株式交換完全子法人の
簿価純資産価額)により受け入れる。
株式交換完全子法人の
株 主 等
譲渡損益
(株式交換完全親法
人株式のみ交付)
有価証券の譲渡損益を繰り延
べる(簿価引継ぎ)。
適格株式交換の場合の課税関係
第1節 組織再編税制 ● 33-27
⑺ 株式移転
① 概要
株式移転とは、完全親会社となるべき会社を新設する制度である。新た
な会社の設立を要する点で株式交換と異なる。株式移転を行うと、まず、
完全子会社となる会社の株主が保有するその会社の株式は、株式移転によ
り設立される完全親会社となる会社に移転する。次に、完全子会社となる
会社の株主は、完全親会社となる会社から株式の割り当てを受け、株式移
転の日に完全親会社となる会社の株主となる。このように、株式移転を行
うことにより、その会社は新設される会社の完全子会社となり完全親子会
社関係を作ることができる。
税務上は、株式移転完全親会社を株式移転完全親法人という。また、株式
移転完全子会社を株式移転完全子法人という。
〈株式移転前〉
S社株主
S 社
〈株式移転後〉
P社株主
(旧S社株主)
①S社株式を移転
②P社株式を交付
①
② 〈新 設〉
S 社 100%所有
P 社
株式移転
33-28 ● 第33章 組織再編税制
② 適格又は非適格の判定(法法2十二の十七、法令4の3⑲⑳㉑㉒)
株式移転完全子法人の株主に株式移転完全親法
人の株式以外の資産が交付されない。
YES 同一の者によ
る100%の持
株関係がある
場 合 の
株 式 移 転
YES
適
格
50%超の持
株関係があ
る場合の株
式移転
YES 大部分の従業者が引き
続き従事
かつ
主要な事業が引き続き
営まれる。
YES
NO
YES NO
NO
共同事業要
件を満たし
ている。
非 適 格
非適格
NO
適格・非適格の判定
(注1) 株式以外の資産が交付されないもの
株式移転に伴い、金銭等が交付されるものについては、間接的に行
われる資産等の売却以外の何ものでもない。よって、資産等の引継ぎ
の意味を持つ適格には該当しない。
なお、金銭等が交付されるものをすべて適格に該当しないこととす
ると、円滑な組織再編成に支障をきたす恐れがあるため、例外として
「株式移転に反対する株主からの株式買取請求に基づく買取に際して
その株主に交付する金銭等の交付」については、認められている(株
式以外の資産の範囲から除かれている。)。
(注2) 共同事業要件
持株関係が強くない企業間においても、企業グループを超えた組織
再編成が行われる実態が考慮され、次の要件をすべて満たす場合には、
適格と認められる。
1)事業の相互関連性があること。
2)事業規模の割合がおおむね5倍を超えないこと。
3)株式移転完全子法人の従業者のおおむね80%以上が株式移転後に株
式移転完全子法人の事業に引き続き従事する見込みであること。
4)株式移転完全子法人の事業が株式交換後に株式移転完全子法人にお
いて引き続き営まれる見込みであること。
5)株式移転後に株式移転完全親法人が株式移転完全子法人の発行済株
式等の全部を保有する関係が継続することが見込まれること。 など
NO
第1節 組織再編税制 ● 33-29
③ 取扱い
株式交換の場合と同じ取扱いとなる。株式交換の場合の取扱いにおける
「株式交換」を「株式移転」と読み替えること。
※ 株式交換及び株式移転については、これ以後「株式交換等」という。
<具体例>
~非適格株式交換等(金銭交付がある場合)~
⑴ 株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人(P社)の場合
時価 ←( S社株式) 160 (現 金) 10
(資 本 金) 50 → 法人が決定した資本金
(資本金等の額) 100 → 差額は資本金等の額となる。
⑵ 株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人(S社)の株主の場合
P社株式及び現金10の交付を受ける(S社株式の帳簿価額は70とする。)。
時価 ← ( P社株式) 150 ( S社株式) 70
( 現 金) 10 ( 譲 渡 益) 90
<具体例>
~適格株式交換等~
⑴ 株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人(P社)の場合
(S社株式の帳簿価額は70とする。)
簿価 ←( S社株式) 70 ( 資 本 金) 50 →法人が決定した資本金
( 資本金等の額) 20 →差額は資本金等の額となる。
⑵ 株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人(S社)の株主の場合
P社株式の交付を受ける。
( P社株式) 70 ( S社株式) 70
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EL17919
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