財務省職員のキャリアパス...19 財務省職員のキャリアパス 20...

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17 財務省職員のキャリアパス 18

【係員】財務省職員として必要な知識・ノウハウを学ぶ。

【係長】係のマネジメントを行い、政策立案のサポートを行う。

キャリアパス 係長/留学 課長補佐国税局/財務局/税関係員 課長企画官

係長と係員の一日

09:30

登 庁

国内外の新聞やニュースに目を通す。調査を担当している国の税制に関する情報をいち早く入手し、これからの日本の税制の検討に資するような情報を局内へ発信する。

10:00 

調査業務

各人が担当国の税制について調査を行う。資料作成にあたっては各国の税制を共有し、日本の税制のあり方についても考える。

12:00

昼 食

カレーを食べに虎ノ門周辺へ。おいしいインドカレーを食べながら、業務の話だけでなく休日の話等で盛り上がる。

14:00

政府税制調査会

政府税制調査会は、今後の税制の在り方を学者の先生や有識者の方々に議論していただく場。係で作成した資料が使用され、議論の話題になることも多々あるため、バックベンチにて参加。

20:00

夕 食

外国調査係では、定期的に珍しい外国料理を食べに行く。昨年はシンガポール料理やエジプト料理をテーマに。今日はオーストラリア料理のお店へ!

林 良樹Yoshiki HAYASHI

[平成27年入省]

主税局調査課係長

竹谷 里咲Risa TAKEYA

[平成30年入省]

主税局調査課係員

インタビュー係長×係員

財務省職員のキャリアパス2財務省の職員は、約2年ごとに様々な部局を経験し、キャリアアップしていきます。それぞれのステージで各々の職員がどのような役割を任され、どのようなことを考えているのかを紹介します。

第  部

16:00

調査業務

作成した資料について課長補佐に相談。各々が担当国について責任を持って調査した内容を説明する。その後、資料をもとに、外国税制について各税制担当の部署へ報告。

林 私の所属する主税局調査課外国係の主な仕事は、将来の日本の税制の在り方のヒントとするために、外国税制について調査し、主税局内や政府税制調査会の場で報告を行うことです。課長補佐も含めて7人の体制で世界中の各国税制をカバーしています。外国税制について調査するときには、常に、日本の税制はどうなっているのか、またどうあるべきなのかという視点を持つようにしています。また外国税制の調査以外にも、日中財務対話の税制部分や税制改正要望への対応、OECD内の税制部会の対応等、外国税制に関することは幅広く業務内容に含まれます。最近は、欧米諸国の年金に係る税制の調査や、日本には導入されていない諸外国の砂糖税やロボット税の議論についても調査を行っております。

竹谷 私は、フランスの税制の調査を担当しています。業務としては、所得税関係の案件であれば税制一課、地方税関係の案件であれば総務省というように、関係課や関係省庁と協力しながら、フランスの税制についての資料作成や、日本として海外当局や在京大使館に向けて発信する資料の作成等があります。フランス税制の主担当は私なので、財務省内で誰よりもフランス税制に詳しくなれるよう、責

任感を持って業務に取り組みながら、社会人としての素養を培っています。

林 係員のときは、とにかく自分の目の前の仕事をこなしていくことだけで精一杯でした。特に、入省1年目は、どのようなイベントがいつ起こるのかも把握できておらず、毎日必死に仕事をしていました。ただ、先輩や上司がいつもフォローをしてくださり、楽しみながら食らいついていた記憶があります。係長になると、自分の仕事をこなすことも大切ですが、それ以上に係全体のスケジュールを把握し、係として仕事を成功させられるよう努めることが大切です。外国係では、例えば消費税担当の税制二課から依頼を受けて欧州諸国の消費税制を調査する等、主税局内の他課から依頼を受けて調査を始めることが多いですが、竹谷さんには、外国係の窓口として、スムーズな情報交換をしてもらっています。またフランスの税制の年度改正等、入省してから半年でフランス税制の調査を一通り行ってくれたことから、財務省の中で一番フランス税制に詳しい人材になったと思います。

竹谷 林係長には、自分が担当している案件について、進捗状況の報告や、係全体としての業務状況の相談をしています。林係長はいつも的確なアドバイスをくださるので、調査に行き詰った時に何度も助けられました。係員の仕事は、税制資料の更新等、細かい業務もあり大変ですが、資料は時に国会に提出され、多くの人の目に触れ

ることもあるため、一つ一つ責任を持って取り組むことの大切さを学びました。

竹谷 国会でも議論になったフランスの少子化対策について、大臣からの指示の下、調査を行いました。フランスでは1946年にド・ゴール政権の時代に少子化対策を念頭に置いた税制改革が行われており、現在に至るまで各種施策による少子化対策が講じられています。私はフランス担当として、それらの制度やその成立背景等を調査し、林係長にアドバイスをいただきながら、説明資料の作成に尽力しました。林係長にはこれと平行して、カウンターパートである主計局調査課との情報共有や、主税局全体のスケジュールを把握している総務課との幹部への説明のための日程調整といった面からも、この案件に携わっていただきました。係長と両輪で大臣へのご説明に向け準備をし最終的には大臣室で、大臣や省内幹部が私の作成資料を元に日本の少子化対策について議論している様子を見て、係長と一緒にやり遂げた達成感を得ました。

林 外国係は、7人のメンバー中4人が女性で、平均年齢は20代と、とても若く明るいパワフルな職場で、困ったらすぐに上司に相談できる環境です。調査を行う担当の国が全員に割り振られており、みんなで和気あいあいと各国の税制について議論しています。そして毎月、海外料理のお店で親睦会を開き、リフレッシュしています。最近は、銀座にあるマルタ料理のお店でランチをしまし

た。また主税局全体(200人程)でも、年に数回、ボーリング大会やマラソン大会が開催され、関係を深める機会に溢れています。

林 私は民間に勤めるのか公務員になるのか、また公務員だとしてもどこの役所で勤めるのか、最後の最後まで迷いました。財務省で働くことを決めたのは、税制や財政という観点から、社会保障や義務教育制度等この国の素晴らしい制度を将来の子供たちにも伝えたいと心から思えたからです。また官庁訪問を通じて財務省の先輩職員と一緒に働きたいと強く思ったからです。どこで何をして働くか、迷うことも多いと思いますが、皆さまが財務省を選び、一緒に働けることを楽しみにしています!

竹谷 私が財務省に決めた理由として最も大きかったのが、それまでお会いした財務省職員の方々が、非常に魅力的で、そのような方々と一緒に働きたいと思ったことです。財務省で働き始めてもうすぐ1年が経ちますが、今も入省時に抱いていた感情は変わっていません。私はまだまだ先輩方には及びませんが、私が憧れる先輩方に少しでも近づけるように、日々頑張りたいと思います。「人」という点からも、財務省に興味を持っていただけると嬉しいです!

係員と係長の違いについて教えてください。また、林係長から見て、竹谷係員がこの1年で成長したと感じるところを教えてください。

お二人の現在のお仕事について教えてください。

係員から見て、係長はどのような存在ですか? 職場の雰囲気について教えてください。

就職活動中の学生へメッセージをお願いします!この一年で一番思い出に残っている仕事について教えてください。

19 財務省職員のキャリアパス 20

地方の国税局・財務局・税関で財務省行政の現場を学ぶ。

キャリアパス 係長/留学 課長補佐国税局/財務局/税関係員 課長企画官

【留学】語学の修得とともに、海外の大学院で修士レベルの勉強をする。

キャリアパス 係長/留学 課長補佐国税局/財務局/税関係員 課長企画官

に興味深かったのが、議論に際し、互いの主張が噛み合わないことがあり、原因を探ってみると、前提としている理念、社会背景が全く異なることが多々あったということです。このようなことを意識しながら、政策の立案・施行にあたることは、国際化の波に巻き込まれていく日本で働く行政官として非常に重要なことだと思います。

 2年目の現在はドイツの語学学校に通っており、そこで起業家や哲学者等の幅広い背景を持っている人々と共に学ぶことを通じて日々新しい知見を得ています。また、ここでの生活は日々新しい洞察を与えてくれます。例えば、ドイツでは、日本と同様の“おもてなし”を経験できないことがよくあります。ただ同時にそれが、労働者の負担を軽減しているという面も強く、一見独立していると思われる二つの議論が強く結びついているということに気づかされました。

 財務省で働くに際しては、財政・金融についてのみならず、それを通じて、社会全体をどうより良くしていくかを日々考える必要があります。そのためには、様々な経験を通じて、色々な知識を蓄えるとともに、常識にとらわれず、新しい考え方に敏感である必要があります。そして、財務省にはそのような経験をする機会がふんだんにあります。日本をより良くしたいという信念を持っている皆さんはぜひ財務省の門を叩いてみてください。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。

 主税局で税制改革に、総務省で予算執行に携わる中で、財政事情が厳しく、歳入増の手段が限られる中で、政策の効率化が重要であると痛感したこと、国際化の波に巻き込まれていく中で、日本のあり方について改めて客観的に考えたいと思ったことから、英独での留学を希望しました。

 1年目は、イギリスの国際色豊かな大学で、幅広い国出身の留学生と、日々財政・経済・社会等について議論する日々を過ごしました。特

改めて「日本の社会のために微力を尽くしたい」という思いを強くしています。言葉にすると陳腐に聞こえてしまうかも知れませんが、私が財務省の門を叩いたときの初心です。日本の外に一歩踏み出すことで新たにしたこの志を胸に、留学で得た学びを実践していくことが今から楽しみでなりません。

 

 私は現在、米国の大学院で経済学を学んでいます。日本国債の入札・発行事務(マーケット関連政策)、国税局における税務調査、経済・財政の定量分析等、財務省での5年間の職場経験を通じて、「マクロ経済へ多分に影響を与え得る政策の立案・実行を担う以上、経済・金融分野に精通する必要がある」と痛感したためです。学問的な知識だけあっても行政実務に長じるわけではありませんが、精緻な学問上の議論の蓄積を踏まえようとすることは、エビデンスをしっかり評価した上で政策に臨むために重要な姿勢でしょう。特に、各省庁の政策に対する予算査定や国の根本の仕組みである税制の企画等を担当する財務省の職員であれば、これを忘れてはならないと思います。 留学は、忙殺されがちな通常業務から離れてこうした専門性を身に付ける絶好の機会です。また、実際に働いた経験があることで何を学びたいかがはっきりしているため、学部の学生時分より目的意識を高く持って取り組むことができています。

 多様なバックグラウンドを持つクラスメイトと話す中で気付いていなかった自分の一面を指摘されたり、大学院の講義で(今まで自分が良いと思っていた)日本の経済・財政政策が批判的に扱われたりする等、留学生活ではいろんな場面で価値観を揺さぶられ、自分に問いかける機会が多くあります。けれども、そうした毎日の中で

小林 千鶴Chizuru KOBAYASHI

[平成24年入省]

平成 24 年 主税局調査課平成 26 年 札幌国税局平成 27 年 総務省情報流通行政局 情報通信作品振興課平成 29 年 留学(英・UCL)

留学(独・ゲーテインスティテュート)

留学の経験を通じて

国税の現場×企業の現場

  現在、仙台国税局において、法人税・消費税の税務調査を行っています。毎週のように東北各県の企業を訪問して、役員や従業員から業務の実態を伺い、工場見学や帳簿調査を通じて、納税額に誤りがないか確認しています。もし誤りがあれば、追加納税を求めます。 自分の指摘で税額が決まるという、まさに税の最前線の仕事です。

 税務調査で企業を訪ねると、経済のありのままの姿を肌で感じます。複雑な税制に困惑する地方銀行、震

災後の復興需要が収束して仕事が激減した建設業者、外国人労働者の受け入れに試行錯誤する水産加工業者。それぞれの現場には、税制に限らない様々な課題があり、同時に、納めた税金の使い道に対する期待の声がありました。 霞が関の視点だけでは、良い政策を作ることはできません。多様な現場を想起し、真に望ましい制度・予算を考える。国税局での経験は、今後の自分にとって大きな糧になると思います。

適正・公平な課税を目指して

現場を知り、期待に応え

セカイとジブン

 世界観の一つとして、「セカイ」はヒトとモノで構成されていると考えることができるかもしれません。そのヒト・モノが国境を跨ぐとき、何かしらの形で必ず、税関の影響を受けることとなります。関所たる税関は、ヒト・モノから適正に税金を徴収し、薬物等の流入を阻止し、そして同時に円滑な入出国、通関に取り組んでいます。「セカイ」がギュッと縮まっていく現代のなかで、税関はとてつもなく大きなミッションを背負っています。

 名古屋税関での毎日は、実際に空港にて旅客の荷物を検査したり、薬物を密輸した疑いのある人物の身辺を内偵したり、全てが刺激的です。財務省に入省するまで税関や関税について何も知らなかった私。私が得たものはただの新しい見識ではなく、昔から持ち続けていた社会への志や問題意識を、これまでとは違う角度で捉える新しい視点です。

ヒトとモノ 自らの原点を捉える新しい視点

税 関

渡邊 慧Kei WATANABE

[平成28年入省]

中部空港税関支署統括監視官(旅具取締部門担当)付監視官 兼調査部統括審理官(検察第2部門担当)付

平成 28 年 関税局関税課

制度運用の最前線から

  国際局で2年間勤務したのち、福岡財務支局に着任しました。財務局は、財務省と各地域を繋ぐ存在です。具体的な業務は、国家予算の執行調査や国有財産の管理から、金融機関の検査・監督、地域経済の動向把握まで多岐に亘ります。 地域との距離が近い財務局でなければわからない実情があります。金融検査や経済調査では、企業の方々との対話を通じ、企業や地域の現状や課題を把握するとともに、国が定めた制度の実際の運用における難しさや、当然のことですが、実体経

済は机上の議論通りには進まないことを改めて実感させられます。 霞が関で決められたことを、実際にどう機能させ、効果を発揮させるのか。その最前線に立つ現場での経験は、制度の企画・立案の局面で不可欠なものです。

 財務省での業務は、企業や人々の活動に広く関わります。幅広い視野を持ち、この国の根幹を支える仕事を担いたいと思う皆さんをお待ちしております。

地域の現状を知り、制度と実態の乖離を知る

皆さんへ

財務局

藤音 眞生子Maoko FUJIOTO

[平成28年入省]

福岡財務支局理財部 金融証券検査官

平成 28 年 国際局国際機構課

これからの行政官に求められるもの

実践につながる学びを求めて

揺さぶられる価値観、それでも変わらぬ思い

ドイツを通じて日本を考える

皆さんへ

留学(米・イェール大)

一歩外へ踏み出し「足らざるを知る」

熊倉 誠和Masakazu KUMAKURA

[平成25年入省]

平成 25 年 理財局国債企画課平成 26 年 理財局国債業務課平成 27 年 福岡国税局平成 28 年 財務総合政策研究所総務研究部

国税局

末松 智之Tomoyuki SUEMATSU

[平成28年入省]

仙台国税局 国税調査官

平成 28 年 関税局関税課

21 財務省職員のキャリアパス 22

小池 孝英Takahide KOIKE

[平成21年入省]

国際局地域協力課(国際調整室) 課長補佐

思いもよらない世界だが、全てはつながっている

学生へのメッセージ

 思いもよらない世界が広がった。私が財務省での約10年間のキャリアを振り返って、初めに浮かんだ言葉です。皆が安心して暮らせる日本を作りたい、そのような漠然とした思いだけを抱いて財務省の門戸を叩いた私にとって、英国で4年間生活し、そのうち2年間を英国政府職員として働くなど想像だにしていませんでした。そして、安心して暮らせる日本を作りたいという思いは、時には、日本の中長期の経済政策を形作り、時には、外国政府と交渉しながら国際金融の安定に取り組む等、自分自身が想像もしなかった形で実を結んでいきます。 そして、思いもよらない世界は、全てがつながってい

る。留学で学んだ経済学は国内・国外のエコノミストとしての仕事に直結し、英国政府のエコノミストとして携わったEU離脱には、2年後に日本の財務省の立場で携わることとなる。これまでの仕事や経験が、全て次のステップを切り開くための糧となっています。 これから、どのような世界につながっていくのか。そんなワクワクした思いを抱きながら、現在の仕事に邁進しています。学生の皆さんも、財務省の門戸を叩いてもらえれば、きっと自分自身も想像できないような経験や機会が待っていると思います。

H I S T O R Y

【課長補佐】行政の最前線で政策の企画・立案の中心的役割を務める。

キャリアパス 係長/留学 課長補佐国税局/財務局/税関係員 課長企画官

財務省で働くとは、国の政策に携わるとは

 財務省で働くとは、国の政策に携わるとはどういうことなのか。そんなことを考えながら入省した最初の部署は主税局調査課であり、主に外国税制の調査を担当しました。その調査を通じて感じたことは、税制にはそれぞれの国の「思い」が込められているということ。日本もまた然り。そして、その「あるべき税制」の形は、時代や社会が変われ

ば変化していく。入省当時の私がやっていたことは地道な調査かもしれませんが、それが課内で、局内で、そして政府全体で議論され、毎年度の税制改正等につながっていく。なるほど政策に携わるのは面白いな、と感じることができた2年半でした。

2009年主税局調査課

考え方の「軸」作り

 主税局の後、高松国税局での経験を経て、英国で2年間留学する機会を得ました。政策にその国や政府の思いが反映されるのであれば、私自身も考え方の軸を作らなくてはいけない。その軸として選択したのが経済学でした。ウォーリック大学で経済学修士を取り、オックスフォード大学の経済学博士課程(PRS)に進みました。やはり、必要性

に駆られるときは、目の色を変えて勉強するものです。この留学時代の勉強が、今でも考え方の基礎になっています。もう一つ、留学時代の大きな財産は、英国や世界各国の人々との交流。主税局で税制を通じて感じた各国の文化や思いが、肌感覚を持って理解できるようになりました。

2012年留学

中長期の課題を形に

 英国の経済政策に携わった後は、日本の経済政策。総合政策課は、各省・各課と連携しながら財務省の経済政策をとりまとめる要であり、私も課長補佐として、消費税増税分の使途を変更し、社会保障や教育に係る重要施策を実施することを定めた「新しい経済政策パッケージ」等、大きな政策の転換点に関わることが出来ました。また、経済政策と緻密な経済分析は表裏一体のもの。マクロ経済の各分野を分析しながら、少子高齢化に関わる諸課題に対応するにはどうしたら

いいのか、デフレを克服するにはどうしたらよいのか、といった課題を真剣に考える日々でした。更に、このような調査・分析を有効に政策に反映させるための土台作り、具体的にはEBPMの推進や統計改革に取り組んだのもこの時期です。また、財務省の政策課題をよりアカデミックかつ中長期的な視点で分析するのが財務総合政策研究所での仕事。英国財務省での経験を活かし、大学とも連携しながら、中長期の経済・財政予測や様々なシナリオ分析に取り組みました。

2016年総合政策課、財務総合政策研究所

BREXIT Part II、国際経済・金融の安定のための対話

 日本の経済政策に携わった後は、再び国際的な舞台。英国財務省の立場でEU離脱を決めた国民投票に関わりましたが、今度は、日本の財務省の立場からEU離脱への対応を統括する立場となりました。また、世界経済のリスクは英国のEU離脱だけに留まりません。米中間を始めとした貿易の緊張が高まり、欧州でもその統一性が危ぶまれる政治的リスクが増加しています。このような中、世界経済のリスクを軽減するには、各国の状況をより良く理解し、対話をすることが重要です。国際調整室の課長補佐として、各国の情報収集・分析を行うと同時に、大臣級を含む様々なバイの対話を実施しています。また、2019年は日本がG20議長国の年。このように不安定な時期だからこそ、日本が議長国として国際金融の安定・協調に寄与する役割は大きなものがあります。各国の財務・金融当局と

繰り返し対話を持ちながら、G20諸国が同じ方向に向かっていけるように日々努力をしています。

2018年国際局地域協力課(国際調整室)

BREXIT Part I、エコノミストとしての経験

 英国での2年間の留学に続き、英国財務省での2年間の勤務。その中で、私はエコノミストとして、予算に付属する5年間の経済・財政予測、財政リスクモデルの構築等に携わり、まさに留学時代の勉強がそのまま仕事に活きた瞬間でした。そして、何よりも印象に残っているのが、EU離脱を問う国民投票。英国財務省は、国民投票の前にEU離脱

の影響を国民に示すペーパーを発出することを決め、私はそのプロジェクト・チームの一員として、将来不安の定量的な分析やその執筆を担当しました。このペーパーは内外から大きな反響を呼びましたが、結果的にはEU離脱が決定。私も国民投票と期を同じくして、任期を終えて帰国することとなりました。

2014年英国財務省

2014年英国財務省

2012年留学

2009年主税局調査課

2016年総合政策課、財務総合政策研究所

2018年国際局地域協力課(国際調整室)

23 財務省職員のキャリアパス 24

佐野 美波Minami SANO

[平成10年入省]

理財局国有財産企画課 政府出資室長

昨日も今日も、明日のために 学生へのメッセージ

 たくさんの人の役に立ちたい。いま生きている人だけでなく、未来に生きる人のことまで考えたい。そのような気持ちが活かせる現場が財務省にはあります。 国が資金を集めてインフラやサービスを提供するシステムは、これまで多くの人が手入れをしながら受け継いできたものです。テクノロジーや国際情勢、地球環境等が大きく変化する中でも、未来を生きる人の日常を守るために、このシステムの根幹、財政を有効に機能させる。そのために日々政策をアップデートしていくのが、我々、そして次世代の財務省職員の役割です。 大きな組織の中で本当に自分がやりたいことができ

るのか、不安な方もいるかと思います。財務省では財政という軸を持ちつつ、様々な経験を積むことで視野を広げながら、自らの「やりたいこと」についての考えを深めていくことができます。ばらばらに見えていた経験が、後から見ればつながっていたとわかること。悩みつつ蒔いた種が、自分の手を離れた後に多くの人の手で大きく育っていたのを知ること。このような、ここで働いていてよかったと思える瞬間が財務省にはあります。 これからの未来を切り拓く皆さんが財務省に興味を持って、足を運んでくださるのを楽しみにしています。

H I S T O R Y

【企画官】重要事項についての企画・立案に携わる。

キャリアパス 係長/留学 課長補佐国税局/財務局/税関係員 課長企画官

危機とサミットとフランス語1998年国際金融局総務課

転向と力学と名人芸

 係員・係長の間は国際関係の業務をしてきました。国際交渉の前には国内で様々な駆け引きが行われるので、国内のことに興味が高まっていた矢先に、農水省に出向することになりました。思わぬ国内転向に驚きましたが、農政の歴史、改革への熱い思いに触れる2年間

になりました。色々な場に出入りさせてもらう中で、人や組織の力学を生々しく知ることもできました。上司は難しい場面での説明や文章の修正で名人芸を発揮される方で、ふと思い出すと懐かしくなります。

2004年農水省出向

悩みと期限と誰かの希望

 納税者のお金と将来世代が背負う借金の形で調達するお金。この貴重な財源を何にどう使うべきなのか、主査は様々なことについて自分で見聞きし、悩み、提案し、決断していかなければなりません。予算ができない年はない、と言われます。困難も生じ、色々悩むけれど、皆でどうにか知恵を絞って期限までには必ず終わる。しかし一方で、予算で行う事

業はあらゆる人にどこまでも手を伸ばしていくようなものでもあり、効果は時を越えて広がっていきます。国立の最先端トレーニング施設を使えるのは限られたスポーツ選手だけですが、彼らが本番で見せる姿は人々の記憶に残り、心の支えとなるでしょう。担当した様々な事業が、何かの形で誰かの希望になっていることを願わずにはいられません。

2009年主計局主査

命と日常と新しい世界

 出産と育児のために1年半弱にわたり休業しました。毎日きちんと遊んで食べて寝ることを必要としている命の誕生で、生活は大きく変わり、普通の日常の大切さを改めて感じました。仕事からは完全に離れていましたが、様々な分野への関心が広がり、新しい世界を知るこ

とができました。また、たくさんの方々のおかげで休業前も復帰後も、自分や子供の健康状態に合わせながらやりがいのある仕事をすることができました。

2013年育休

株と世界と未来の幸せ

 政府が過去に税金等を使って出資した特殊会社の株式について、国民共有の財産として、価値を最大化するよう管理しています。このため、ガバナンスの潮流も踏まえつつ、会社と対話し議決権を行使します。また、売却すべき株は会社や市場の状況をよく見極めながら売却するため、いつも世界の様々な動きに目配りしています。 政府が日本郵政や東京メトロの株を売却して得る収入は、東日本

大震災からの復興財源になります。売却された株を買う人にとっては、その株は将来にわたり価値を生む大事な資産です。また、民営化された企業が創造する新たな価値自体が人々の生活の役に立つとともに、配当は株主に還元されます。色々な未来の幸せにつながる売却にしていきたいと思っています。

2018年理財局国有財産企画課 政府出資室長

家と挑戦と返すお金

 財投債で調達した資金等を原資に、公的な機関に対する融資や出資を行う財政投融資制度を運営する部署で、各機関からの要求を審査していました。融資した資金は、さらにそれぞれの機関が行うインフラ整備や融資等に使われ、人々の生活に届いていきます。家のローンの借りやすさと、将来返せなくなるリスクのバランスをどう見るか。一度事業に失敗した人が再び挑戦するためのお金はどのように貸すのがいいのか。「将来誰かに返すお金をいま貸し出す責任」を真剣に考えることになりました。

2006年理財局計画官補佐

2006年理財局計画官補佐

2004年農水省出向

1998年国際金融局総務課

2009年主計局主査

2018年理財局国有財産企画課 政府出資室長

2013年育休

 アジア通貨危機の影響が大きく残る時期で、より強いシステムを作るためにIMFやサミット準備の場で各国から様々な提案が行われていました。総務課では情報の流れ方や意思決定の速さを知りました。1年生係員が行う情報

の収集、要約、伝達も、広い意味でそれを支えるインフラの一つです。また、国際機構課では日本としての対応の検討に関わることができました。ここでフランスの対応に興味を惹かれたことが、後のフランス留学につながりました。

25 財務省職員のキャリアパス 26

中島 朗洋Akihiro NAKASHIMA

[平成5年入省]

主計局主計官(文部科学係担当)

おばあちゃんの千円札 学生へのメッセージ

 「申し訳ないねぇ。使うこともないから、少しだけど持っていっておくれ。」 二十年近く前の青森県高齢福祉保険課長の在任中、国民健康保険料の収納実態の調査に出かけました。大きな家に住み、大型乗用車を何台も有しているにもかかわらず、悪びれることのない滞納者がいる中、暗く狭いアパートの一室に一人暮らしのおばあちゃんを訪ねました。冒頭のように遅滞を詫びながら、古びた巾着から一枚しかないお札を差し出してくれるおばあちゃん。受け取って良いのだろうか・・・ためらいの後、市の担当者ときれいに折りたたまれた千円札を受け取ったことを、つい

昨日のことのように覚えています。 この出来事は、二十年近くたった今でも、私の予算査定の原点です。苦しい中でも保険料や税を納めてくれる一人ひとりがいるからこそ、多くの人の健康や福祉を支えることができています。こうしたことを続けていくためには、納税という痛みを負っている皆さんに納得いただける予算の使い方をしなければなりません。「あのおばあちゃんから千円札を受け取ることができる予算査定をしているだろうか。」そんなことを考えている財務省をちょっと覗いてやるかなぁ、と思ってもらえると嬉しいです。

H I S T O R Y

2005年主計局主査

2001年青森県出向

1993年大臣官房文書課

2013年麻生財務大臣秘書官

2017年主計局主計官(現在)

【課長】所掌事務の政策立案の責任を担う。

キャリアパス 係長/留学 課長補佐国税局/財務局/税関係員 課長企画官

き姿を描きます。相手省からの要求に対して、そのあるべき姿を基に「この課題の方を優先して解決すべきではないか」「その課題を解決するためには、こうした施策の方が効果的ではないか」「将来的な悪影響を避けるためにはこうすべきではないか」といった提案をしていきます。その結果、年末の予算決定までの間、相手省に納得してもらって要求を修正してもらうこともあれば、自分が描いたあるべき姿を修正し増額査定をすることもあります。もちろん、専門家としての知識は相手

省にかなうわけがありません。でも、主計局内の横の情報・連携があること、そして何よりも、いわば「納税者の代弁者」あるいは借金を背負わされる「将来世代の代弁者」としての視点があることに主査の存在意義があります。このように、分野や時間を越えた想像力を働かせて、描いたあるべき姿を実現するための仕組みを相手省と一緒になって作っていくことが主査の仕事なのです。

法令案を通して見える世界

 法令審査官補として、省内各局が作成する法令改正案が意図したとおりの効力を発揮できるかどうかをチェックするのが仕事でした。1年目は国際局の担当。例えば、発展途上国の人々のことを考えながら、ODAのため

の公文書を財政当局の観点からチェック。2年目は主税局の担当。阪神・淡路大震災の被災者支援といった税制の特例を設ける法令案のチェック。法令案を通して日本中・世界中の人々 の今を見ることのできる業務でした。

1993年大臣官房文書課

行政の最前線から見える世界

 1、2年目は高齢福祉保険課長として、介護保険、医療保険、高齢者福祉の県内の司令塔役。介護保険や医療保険は、それ自体で給付と負担のバランスが必要な小さな財政です。給付と負担のバランスについて、県内67の市町村にアドバイスしたり、県民の皆さんの理解を得たりするのが

仕事でした。3、4年目は財政課長として、毎年の予算編成や県議会との調整が仕事。8,200億円の県予算を5年間で7,200億円にまで絞り込む「財政改革プラン」の策定が一番の仕事でした。県民の皆さんや県議会の先生方の理解を得られるまで何度も説明して回ったことを思い出します。

2001年青森県出向 大臣の背中越しに見える世界

 秘書官は、省内各局による大臣説明に付き添ったり、大臣の指示を省内各局につないだり、予算案・法案を審議する国会や国益をかけたG20・G7等の国際会議で大臣を真後ろからサポートしたりする黒子的な仕事をしています。そうした中で、例えば国会審議では、議員の先生方からの質問に応じて答弁のための詳細な参考データや材料を大

臣に差し出して審議が円滑に進むようサポートするわけですが、自分が大臣の立場にあればどのように答えるかということを常に考えながら行動する必要があります。政治と行政の接点にあって、どのようにすれば自分たちの話に耳を傾けてもらえるのかといったことを体感できる仕事でした。

2013年麻生財務大臣秘書官

原点はおばあちゃんの千円札

 文部科学係担当主計官としてお預かりしている予算は5.3兆円。日本の教育予算や科学技術予算は主要先進国より少ないというのが一般的な印象ではないかと思います。そして、日本の教育や研究の水準は主要先進国に劣っているので予算を増やすべきだとの主張があります。でも、その印象は絶対の事実なのでしょうか、その主張通りにすべきなのでしょうか。例えば、子供一人当たりで見た教育予算や、研究開発減税も含めて見た科学技術に対する公的な支援は、

主要先進国と比べて遜色ないと言えます。それなのに、予算の「量」が少ないと言えるのか。もっと効果的な「使い方」ができるのではないか。こうした分析と処方箋を提示して、国会議員の先生や大学の学長さん、文部科学省の幹部といった皆さんと議論しながら、理解を得ていきます。もちろん、なかなか理解を得られず悩んだり迷ったりする時もあります。そんな時、戻って考える原点は、今でもあのおばあちゃんの千円札です。

2017年主計局主計官(現在)

分野や時間を越えて想像する世界

 公共事業係、文部科学係、企画係を経験しましたが、公共事業係では、空港や港湾の担当として、例えば、港湾施設の有効活用のためのスーパー中枢港湾制度の具体化やその後の埠頭公社改革につながる議論をしました。道路の担当としては、半世紀続いた道路特定財源の一般財源化や総事業費1.2兆円の東京外環道の事業化が主な仕事でした。文部科学係では、初めての「教育振興基本計画」の策定という大きな仕事がありました。予算額や教員数といった投入量の目標ではなく、どういう子供を育てるかという教育の成果を目標に設定してもらうよう議論しました。企画係で

は、二度の当初予算と三度の補正予算のとりまとめを担当。特に、2011年度予算の成立直前に発災した東日本大震災に対処するための補正予算編成時の危機感は印象に残るものでした。 「主査」と聞くと予算削減が仕事と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。まず、6月頃に主査として異動してくると、すぐに担当分野のことを勉強し始めます。現場を見たり、関係者の話を聞いたり、書籍や論文を読んだり、あらゆる手段を使って、必死に勉強します。そして、相手省から予算要求が出てくる8月末までに、自分なりに担当分野のあるべ

2005年主計局主査

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