「看護倫理」本日の研修内容 • 押さえておきたい倫理の知識 •...

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消化器内視鏡看護セミナー(金沢市)

「看護倫理」

~医療現場で人としての尊厳を守るケア~

平成28年6月26日(日)

長谷川美栄子

(医療法人 東札幌病院)

本日の研修内容

• 押さえておきたい倫理の知識

• 臨床倫理とは

• 倫理教育のポイント(やさしい看護の実践)

• 医療や看護を受ける高齢者の尊厳を守るために

• 東札幌病院の組織文化

• コミュニケーション、インフォームド・コンセント

• 意思決定のプロセス

押さえておきたい倫理の知識

倫理に関するキーワード

• 日本国憲法

• 医師法

• 保健師助産師看護師法

• 生命倫理

• ヘルシンキ宣言

• リスボン宣言

• インフォームド・コンセント

• アドボカシー

• 終末期医療

• がん告知

• 医療倫理

• 臨床倫理

• 看護倫理

• 看護者の倫理綱領

など

生命倫理

1970年頃アメリカで作られたバイオエシックス(bioethics)という概念を日

本に導入する際に当てられた訳語。バイオエシックスは、バイオテクノロジーの発展により生命の意味が揺らぎ始めたことから、新たな倫理を構築しようとする運動として始まった。

ヘルシンキ宣言

第二次大戦におけるナチスの人体実験の反省により作成された「ニュルンベルク綱領」を受け、

1964年ヘルシンキで開かれた世界医師会第18回総会で採択されたヘルシンキ宣言「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」が契機となり、医学における倫理的な領域が世界の医療者たちに意識されるようになった。医学の発達に伴い幾度か改定され、現在では宣言が守る対象がヒトのみならず、ヒト由来の臓器、組織、細胞、遺伝子、診療情報までも含む。

リスボン宣言

1981年、ポルトガルのリスボンで開催された34回世界医師会総会で、患者の権利を謳った「患者の権利宣言」が採択された。

この中に「自己決定権」が掲げられ、その後の医療に大きな変革をもたらした。

その流れはQOLの考え方に強く影響し、QOL、

本人の意思、自己決定は、人間の権利であるという論理につながっていった。

医療倫理

広い意味では、医療従事者と患者との関係を中心として、医学研究、医療技術、診療、保健、疾病予防、ケアなど広範囲の医療の領域に関わる実践倫理や社会規範を意味する。医療倫理の原則とは、医療活動に際して医療従事者がとるべき行動や姿勢に関する倫理原則のことである。

(与益、無加害、自律尊重、正義・公平)

倫理委員会

研究審査委員会(Research Review Board:RRB)

ヘルシンキ宣言の流れにより大学医学部、医科大学、医学研究機関、医療機関に 設置。

臨床倫理委員会(Clinical Ethics Committee:CEC)

基本的人権擁護の思想によるQOLの考え方を根拠にしている。リスボン宣言の具現化。

ナイチンゲールの倫理観

「人と争わないこと。人の心を傷つけるようなことを口にしないこと。自分が不愉快だからといって他人まで不愉快に巻き込まないこと。なぜなら、争いというものは、軽率な言葉とか、きわどい冗談、荒々しい命令とか、そういったごく些細なことがもとで生じるものだからです。このようなことにも気を使えないで、どうして人を預かることができるでしょうか。」

日本国憲法に定められている国民の権利

第11条

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。

第25条

すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

看護者の倫理綱領日本看護協会2003

人々は、人間としての尊厳を維持し、健康で幸福で

あることを願っている。看護は、このような人間の普

遍的なニーズに応え、人々の健康な生活の実現に

貢献することを使命としている。

第1条:看護者は、人間の生命、人間としての尊厳および権利を尊重する。

第6条:看護者は、対象となる人々への看護が阻害されている時や危険にさらされているときは、人々を保護し安全を確保する。

「看護倫理は看護の質そのものを左右します」

日本看護倫理学会設立趣意より

看護倫理はむずかしいものではなく

すべての看護活動に倫理的側面が

あることを意識することから始まる

看護倫理:科学的基盤に立ち、看護者として患者にとって 善いこと、正しいことを行なう

日本看護倫理学会設立趣旨

• なぜ看護倫理なのか

医療倫理で取り上げられる問題は、医師に焦点があてられており、看護師が直面する拘束・抑制などの問題や、高齢者の療養の場をめぐる問題などは、ほとんど顧みられない限界がある。さらに、患者の身近にいる看護師だからこそ気づくことも多い。これらのことから、看護師という立場の強みを生かし独自に探求する必要性がある。

高田早苗 日本看護倫理学会前理事長

看護は身体を扱う

• 患者の身体を見る、診る、観る、看る

• 患者の身体の動き、働きを支える、助ける

• 患者に触れる

• ナースの五感を駆使して患者の身体に働きかける

*「身体を扱う」ことが許容され、援助と受け止められるには ⇒ 看護としての一貫した目的、確かな技術と解釈、わかりやすい説明ややりとりによる共同行為であること

臨床倫理とは

臨床倫理とは

原則や規則を重視しながらも「今、ここにいる患者にとって何が最善か、何がなされなければならないか」を医療者と患者・家族とで合意し、決定するプロセスが臨床倫理である。したがって物事の善悪の判断などをすることではない。

生命倫理と臨床倫理との異なる点

生命倫理:

「人間の命は地球よりも重い」という考え方

どういう状況にあっても人の命は長らえさせることが優先

*臨床の場では、必ずしもその考え方があてはまらない。

それぞれに固有の人生があり、独自の生き方がある

臨床倫理:

原則や規則を重視しながらも、「今ここにいる患者にとって

何が最善か、何がなされなければならないか」を医療者と

患者・家族とで合意し、決定するプロセス

参考:山田みつぎ 講演資料

医療における倫理原則

• 患者の利益になるようにせよ(善行原則)

(beneficence)

• 患者に害を与えるな(無危害原則)

(non-maleficence)

• 患者の自律を尊重せよ(自律尊重原則)

(respect for autonomy)

• 正義・公平を保て(正義原則)

(justice/equality)

ビーチャム(Beauchamp,Tom L.)チルドレス(Childress,James F.)

倫理原則を超えるもの

人間的な温かさや感受性は、規則や原則を超える。

「他者の感情や関心、態度が道徳的に重要な問題となっている時には、常に規則や原則は、人間的な温かさや感受性ほどには、何をなすべきかということを私達に気づかせてはくれないようである。」

ビーチャム(Beauchamp, Tom L.)

倫理と価値観

「患者は、かけがえのない存在であると理解して、その人に関わっていかなければならない。そのためには、患者の価値観、信条、好みに配慮して、その人にふさわしいケアを、どのようにつくっていくかが大切だ。」

ビーチャム(Beauchamp, Tom L.)

その人の人生は、その人しか生きられないということを尊重する。

個々の価値観を最も理解できるのはナース

ナースは、患者個々の生活の営みを整えることに専門性が期待されている。

1人ひとり異なる生活の営みを、そばにいて最もわかっているのはナースである。

日々変化する患者の状況に応じて、日常生活に関すること、食事の選択、清潔、ADLな

どについて、ナースが主体的に判断する力をつけたい。

医療者の倫理的姿勢

(社会の仕組みになったケア) 清水哲郎

1.人間尊重(相手を人間として尊重する)

相手を人間として尊重しつつ、コミュニケー

ションを通して活動を進める。

2.与益(相手の益になるように)

相手にとってできるだけ益になるように、害にならないようにする。

3.社会的視点での適切さ

自分たちがしようとしている医療・看護活動を

社会全体を見渡す視点に立ってチェックして、

適切であるようにする。

看護師が臨床で直面することの多い臨床倫理問題 (日本看護協会)

• 十分なケアを提供することができないこと

• 医師の治療方針に関すること

• 終末期医療に関すること

• インフォームド・コンセントに関すること

• 患者の自己決定に関すること

• 守秘義務に関すること

• 安全確保と拘束のジレンマ

• 家族への支援に関すること

• 医師との関係に関すること

• 医療従事者の態度や発言に関すること

• 臓器移植などの先端医療に関すること

倫理についての教育のポイント(やさしい看護の実践)

医療は

• 「医療行為の目的」

⇒ QOL

• 「医療行為のプロセス」⇒ インフォームド・コンセント

• 医療は患者(および家族)と医療者(チーム)

との共同行為

看護師に求められる倫理的な感性

知識や技術に加えて、医療・看護行為が患者

や家族にとって人間として尊重されているか、

意思決定が尊重されているか、結果として不

利益になっていないかということについて敏感

であること。

いつでも、どこでも、誰にでも、やさしい看護を実践する

今の医療現場は、在院日数の短縮化、患者の重症

化、高齢化、人々の価値観の多様化の中にある。

私達は、様々な状態にある人々と向き合いながら、

少しでも苦痛が和らぎ、安楽に生活できるように日

常生活を整えるケアを実践している。時間に追わ

れながらケアをする時に「これでいいのかな?」「あ

れ、何か変だな?」と感じる中に倫理的問題が含ま

れていることがある。いつでも、どこでも、誰に対し

ても、相手を尊重した看護ができることが大切。

傍らにいるということ

• 患者・家族にそっと寄り添い孤独にしない

• コミュニケーションは聞き手に決定権がある

• コミュニケーションには二つの形がある

(お互いに向き合う形、共に同じ方向に向かう形)

• 終末期を迎えた人は、特に傍らにいてくれる人、共に同じ方向を見ようとしてくれる人が必要

立ち止まって考えてみること

• 「これでよいのか」「なぜ?」

• 「この患者さんは治療方針に納得しているのかな?」

• 「この処置は本当に患者さんのためになっているのかな?」

• 「先輩のやり方本当に正しいのかな?」

• 「医師は事実と違うことを話しているけど・・

• 「家族と本人の望んでいることが違う」

参考:日本看護協会公式ホームページ「看護倫理」

医療や看護を受ける高齢者の尊厳を守るために

医療や看護を受ける高齢者が置かれた状況

• 身体機能が衰え他者の助けが必要になることから自尊心が低下しやすい。

• 意思疎通が困難になりやすい。

• 治療や療養場所の意思決定について、本人よりも家族の同意が優先されやすい。

• 人の手を借りるため、我慢や遠慮をしがち。

• 医療者は、安全を優先させがち。

• 医療者は治療優先のため、一時的に尊厳が損なわれても仕方がないと考えがち。

日本看護倫理学会「医療や看護を受ける高齢者の尊厳を守るためのガイドライン」より

高齢者の尊厳を守ることにつながる日々の看護

• 高齢者が安心して考え、希望を述べることが可能な環境を作る。

• 高齢者のそれまでの日常が少しでも継続できるようにする。

• 高齢者の尊厳を守るため、高めるための行動をとる。

• 高齢者の尊厳をチーム全体で守ることができるように調整する。

日本看護倫理学会 「医療や看護を受ける高齢者の尊厳を守るためのガイドライン」より

「両手にミトンをして縛って欲しい」と言う家族

転院してきた60代の統合失調症をもつ肺癌の

女性の家族は、「患者は今までもカテーテルを

自己抜去したことがある。カテーテルは生命を

守る大切なものなので、両手にミトンをして紐で

縛って欲しい。」と強く要望した。前医でもそうし

ており、家族はそれが何より安全なことだと思っ

ていた。

「両手にミトンをして縛って欲しい」と言う家族

家族の強い要望であっても、両手を抑制されることは

人として尊重される行為ではなく、逆に抑制されること

で自由が奪われるため、ミトンや紐を解こうとする動き

が活発になり安楽が保たれない状況だった。

家族に対して、抑制をしないで安全を守る方法として、

カテーテル類はパジャマの袖や裾を通して、できるだけ

患者の目に触れないようにして、ナースの訪室を多くす

ることを提案した。患者は抑制から開放され、両手の不

随意な動きもなくなった。

身体拘束はなぜ問題か?

身体拘束はなぜ問題なのか。そもそも人間は自由を求める存在である。自由ほどQOLを高めるものはない。看護の目標は、自由度を拡大することである。日本国憲法に定められているように、身体拘束は基本的人権や人間の尊厳を守ることを妨げる行為であることが大きな問題なのである。

日本看護倫理学会「身体拘束予防ガイドライン」より

身体拘束が行われている現状

危険と思われる症状がある時、安全を守ると

いう理由で身体拘束が行われている。

・せん妄

・転倒・転落の危険性が高い

・チューブを抜いてしまう

・攻撃的な行為がある

・ケアに抵抗する

・大声で叫ぶ

・オムツをはずしたり衣類を脱いでしまう

危険と思われる症状には患者の理由がある

医療者が危険だと思う患者の状況の裏側に

は、必ずその人の理由があり、ケアをする側

の関わり方や環境に問題があることも少なく

ない。患者が感じている「不快」な思いの原

因をアセスメントし、症状に応じたケアを検討

することが大切である。

身体行動制限に関するポリシー

医療法人東札幌病院においては、医療を受ける患者の自

由度をできる限り拡大すること、すなわちQOLを向上させる

ことを基盤においている。したがって、患者の身体行動制限

をしないことを原則としているが、それは常に患者のQOLを

重視しなが事故防止に努める職員のたゆまぬケアによって

支えられている。しかし、時には患者の身体の安全を守るた

めに、やむを得ずナースコールマットやベッドの4点柵など

を使用することもある。実施にあたっては、患者および家族

の理解と承諾を得ることを前提とする。

(医療法人東札幌病院 身体行動制限に関するポリシーとその適応 抜粋)

東札幌病院の組織文化

医療法人東札幌病院 2009年増改築しました

医療法人 東札幌病院

・1983年ホスピスケアを標榜して開設 33年目を迎える。

・現病床数 243床(うち緩和ケア病棟58床)

・入院患者の80 %以上はがん患者。

(進行・再発・末期がんが多い)

・年間約700人を看取る。

・2009年増築し、緩和ケア病棟増床。

ブレストケアセンター開設。リニヤックの導入。

がん専門病院として承認された。

・入院基本料 7対1

東札幌病院の理念と基本方針

「医療の本質はやさしさにある」この実践が最もよく遂行される形態が緩和医療であり、ホスピスはその象徴である。

・患者さんのQOLを尊重した医療

・チーム医療

・根治的医療~終末期医療までの総合医療

・施設~在宅までの総合的な医療*理念そのものが倫理的

「やさしさ」とはコミュニケーションを大切にすること

やさしい言葉や、気遣いや、笑顔や、ささやかな振

舞いが、人を幸せな気分にさせる。

それが人と人が触れ合う意味、すなわちコミュニケ

ーションである。必ずしも意見を主張したり、議論す

ることばかりがコミュニケーションではない。

(医療法人東札幌病院 石谷邦彦理事長 講義より)

東札幌病院臨床倫理委員会

目的:個別な事例の倫理的検討や職員に対する

倫理的教育を行なう。

多職種による委員の構成:

医師2名、看護師4名、

医療ソーシャルワーカー

ボランティアコーディネーター

作業療法士

事務職員

外部委員

臨床倫理委員会で検討された主な事例(1994年~現在)

・インフォームドコンセント(手術前の説明について)

・自殺をした患者についての振り返り

・自己の判断能力がなく代理人がいない場合の治療方針決定について

・ALS患者の人工呼吸器装着に関して

・安楽死を希望する患者の難渋する症状コントロールについて

・セデーションの是非と時期について

・治療方針に関して

・蘇生に関して

臨床倫理委員会の活動

• インフォームド・コンセントのガイドライン作成

• セデーションのガイドライン作成

• 患者の権利に関する規定の作成

• 情報開示のガイドライン作成

• がんの終末期に心肺蘇生を試みないこと(DNR)

ガイドライン作成

• 臨床倫理検討シートの普及と定着

• 医の倫理セミナーの開催

• 臨床倫理セミナー(事例検討会)の開催

「医の倫理セミナー」のテーマ

• 「終末期医療の意思決定プロセスに関するガイドライン」をめぐって

• 臨床死生学と臨床倫理学

• 終末期医療に関する諸ガイドライン

• 終末期の方針決定ーガイドライン作成に向けて

• 臨死期におけるケアー終末期ガイドライン作成へ向けた事例検討

• 老年医学会のガイドライン~生物学的な生命と物語られるいのち

・ 輸血を拒否する患者

・ 臨床現場のコミュニケーションー臨床倫理の視点から

・ 人間の尊厳とは何かー尊厳療法(dignity therapy)・尊厳死等の理解

・ 口から食べられなくなった時に

東札幌病院・看護部の理念

・ペーシェントからパースンへの挑戦

~自由度を拡大しよう~

ホスピス・緩和ケアの最終目標

患者とその家族にとってできる限り良好な

クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を実現させる

ことである。 (WHO)

ホスピスケアは倫理と人権に支えられている

そもそも医学・医療は

そもそも医学・医療は、初めから

①生物学

②精神・心理学

③社会学

④哲学・倫理学

が統合されたものであったはず。しかし、1950年代以降

科学の進歩に伴う華々しい生物学的医学の進歩により、他

の3領域が置き去りにされてきた感がある。20世紀末から

改めて4領域が統合された医学・医療のあり方が求められ

ている。緩和医療はそのシンボル。

緩和ケアの基本的要件と目標

基本的要件

・チームアプローチ

・ケアを実施する適切な空間

・スタッフの人間性の成熟

目標

・苦痛症状の緩和

・心理的ケア~良好なコミュニケーション

・家族のサポート

チーム医療

開院以来、多職種によるラウンドテーブル型

のチーム医療を実践してきた。

・多職種による合同カンファランス

・院長回診(多職種が参加)

・ボランティアとの協働

・連絡会議(1回/月)による情報共有

・院内全体の諸会議・委員会

・多職種間で共有できる記録

チーム医療の意味

• 「それぞれの専門職が専門性を発揮し、患者・家族の最善について話し合い、合意形成しつつ医療を進めていくこと。」

• チーム医療の本質とは、チームメンバーが高い専門性と自由度と自律性をもって実践すること。

チーム医療の鍵

• 自分自身の専門性は何か

• 自己の専門性の向上

• 充分な情報交換によりケアの目標を共有

• 互いの専門性に対する理解と尊重

• チームメンバーのオープンさ

自分とは異なるチームメンバーの専門性や役割を知り、敬意をもって協働すること

コミュニケーション

インフォームド・コンセント

コミュニケーション

・ 傾聴と説明が基盤。

・ 誠意をつくしたコミュニケーションの継続が、

患者・家族の意思決定を支える。

・ 生命の存続に不可欠な物理的要素

空気、水、食べ物

そしてコミュニケーション

*顔を合わせたコミュニケーションの重要性

プロフェッショナルのコミュニケーション

「Communication as the Bridge to Hope and Healing in Cancer Care」

コミュニケーション、それはがん医療における希望と癒しへの橋渡し

(Friedrich Stiefel)

看護師と医師が直面する臨床倫理問題の相違点

「医師は還元主義(生命現象はすべて物理学的、科学的に説明できるとする考え方)による治療に焦点を置くように教育を受けている。看護の規範は、全体論であり、これによってケアリングに焦点を置くように教育されている。」

アニタ・タージアン(Tarzian,Anita J)

ナイチンゲールの看護の全体論

「看護は、生きた身体(Living bodies)と生きた心(Living minds)と、心身一体の表す感情(feeling of body and mind)とに働きかけるのである。」

インフォームド・コンセントとは

1.インフォームド・コンセントは患者が医療者に与え、医療者が患者からえるもの

インフォームド・コンセントの基本は患者主体のもの。医療者は病気の状態と治療法についての専門的な知識・技術、そして経験がある。

患者や家族は、医学的情報だけでなく、自分の人生の事情や計画をも考えてこれからどう生きたいかを考えている。

2.患者・家族と医療者との情報には

非対称性というが一種のバリアがある。

患者が適切な意思決定をする時に情報は重

要。自分の身体に何が起きていて、どのよう

な治療をすることが最も良いのかという情報

が必要 。しかし、素人である患者には充分に

理解できないこともある。専門家と患者の情

報には一種のバリアがある。

告知・インフォームド・コンセントにおけるナースの役割

• 同席の意味を明確にして、患者・家族に伝える

• 事前に医師の説明内容を把握しておく

• 「告知したくない」家族の恐れや不安の理解とケア、粘り強い話し合い

• 共にやっていくパートナーになることを伝える

• 質問しやすい場つくり

• ICはプロセス、1回で理解し選択することを求めない

• 難易度により同席するナースを考慮する

意思決定のプロセス

生物学的生命と物語られるいのち

① 医療者は患者や家族に、エビデンスに基づく医学的情報中心の(生物学的) 説明を行う。

② 目下の意思決定・選択に関係する限りにおいて、患者の人生の事情や考え、気持ちを理解しようとし、患者側に聞くという姿勢。

③ その人しか生きられない固有の人生を尊重する治療の在り方を大事にするプロセスを踏む。

④ 決定は両者が共同で行う「合意を目指すコミュニケーション」が大切。

意思決定を支える

1. 医療者の意見は絶対に正しく、患者が納得しないのは知識がなくて間違っているからだという固定的な考え方でなく、医療者も変わるかも知れないという柔軟性を持っていれば、両者でよりよい道を見出していくことができる。

2. 医師、看護師、MSWなどで協働してチームで対応する。

愛という名による支配・抱え込み

一般的に家族は 、

・相手のために犠牲をいとわない

しかし、

・本人の意思を尊重することを軽視する。

(よいと思ったことを勝手にやる)

・本人の克服する力を過少評価する。

(保護しようとして抱え込む・・・)

・家族のために本人に犠牲を求めることもある。

アドボケートとしての看護師

アドボカシー (Advocacy)

アドボケート(Advocate)

語源 「傍らへと呼び出された者」

擁護者 、弁護者、代弁者

患者の自律や自己決定を尊重することを基盤において、その時々の揺れ動く感情や思いを受け止めながら、相手に向き合い、寄り添うことが相手をかけがえのない人間として尊重することであり、アドボケーターとしての看護師はそのキーパーソンである

理念を共有するしくみ(東札幌病院の理念~倫理的)

• 合同カンファランス(臨床倫理検討シート)

• 管理者研修

• 医の倫理セミナー、緩和ケアセミナー

• 新採用者オリエンテーション

• 看護部卒後研修、院内研修

• 申し送りやミーティング

• 朝礼・全体会

• 病棟会議

• 看護課長・主任研修

• 看護部長への毎日の報告

東札幌病院の看護~患者さんにもスタッフにもホスピスケアマインドで

• どんな人にもあたたかくおもてなし

• いいところ探し、できるところ探し

• 看護できない人はいない

• 「わかりません」「できません」「だめです」は禁句

• ここにきてよかった

• プラス思考で行こう!

倫理的行動の4つの要素

1.倫理的感受性(Moral Sensitivity):臨床倫理問題が生じていることに気づく力

2.倫理的推論(Moral Reasoning):倫理的に問題である理由を説明できる力

3.態度表明(Commitment):様々な障害を乗り越えて、倫理的に行動しよ

うとする力~看護職としてとるべき行動の決定

4.実現(Implement):倫理的行為を遂行することのできる力

Waithe,M.E.の文献をもとに高田早苗作成

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