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2017年4月
ASEANをめぐる環境変化と
新たな成長戦略シナリオ
グローバル製造業コンサルティング部
上級コンサルタント 岩垂 好彦
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み
目次
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本日の要旨
2014年を境に、ASAENを取り巻く環境は大きく変化した。2000年代初頭から続いた「出来すぎた繁栄」の時代は終わった
ASEANの主要国であるタイ、インドネシアは構造調整に入り、日本企業の対応も後手に回っている
一方で、ベトナムとフィリピンは堅調に成長し、インドもASEANのサプライチェーンに加わりつつある
タイでは「成熟化」の時代に入り、現地の実情を踏まえた経営・事業体制の構築と、各国内だけでは解けない問題への対処が必要になっている
グローバルで最適な体制を構築し、新たな成長戦略を実現していくことがグローバル本社に求められている
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み
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• 自動車、二輪、日用品など内需向け中心に集積を形成
• 広大な国内にサプライチェーンを構築
• 地方分権を進めており、首都以外の地域の発展も期待できる
注1)AEC:ASEAN経済共同体注2)RHQ:Regional Headquarters
出所)有識者インタビュー、各国産業発展計画よりNRI作成
インドネシア
1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
AEC域内の経済成長を牽引することを期待されたタイ、インドネシアは、経済の構造調整に入っている
タイ
• タイ+1戦略で労働集約型工程を周辺国に展開、タイ国内は高付加価値化
• R&D、RHQなど高度な機能の立地集積
• エレキ分野はベトナム、フィリピンへ
AEC発足(2015年末)以降の生産拠点・市場の展望(2014年2月時点)
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設備投資の誘発資源需要の増加
先進国の資本財需要の誘発
金融の行き過ぎを背景にした住宅・消費ブーム
中国の参入による世界的な供給力の急激な拡大
資源価格の上昇と設備投資ブーム
1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
ASEAN経済を取り巻く環境は、2014年に大きな転換期を迎えた
5
2000年代のグローバル経済の「出来すぎた繁栄」が終わった
2000年代の3つの成長エンジンとそれぞれの終末
2009年サブプライムローン問題
リーマンショック
2014年中国の投資主導による成長からの転換~「新常態」へ
2014年
8月頃より下落の一途へ
出所)長井滋人「世界経済の展望と課題-新興国のバランスシート調整-」(『証券アナリストジャーナル』2016年6月号)を参考にNRI作成
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
インドでは2014年にモディ政権が誕生し、翌年にはインドの経済成長率が「新常態」に入った中国を上回るようになった
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2014~15年は、中国とインド両国経済の歴史的、象徴的な転換期となった
0.0
2.0
4.0
6.0
8.0
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12.0
14.0
16.0
中国 インド
(%)
中国とインドの経済成長率の推移と予測
(年)
注)2015年以降はIMFによる推定・予測値出所)IMF, World Economic Outlook, April 2016よりNRI作成
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Make in India⇩
製造業の輸出振興
バランスシート調整
⇩余剰製品の輸出圧力
中国・インドの狭間で、タイ・インドネシアの産業競争力は相対的に低下
非関税障壁で国内保護アンチダンピングセーフガード強制規格資本規制・・・
タイ、インドネシアは、非関税障壁で保護主義化している
出所)ヒアリング等よりNRI作成
中国における部品の内製化により輸出減少
1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
中国経済の減速、インドの台頭、資源価格の低迷などでタイ、インドネシアは防戦一方にまわっている
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
ASEANの中でも、特にタイ、インドネシアは市場の伸びが鈍化している
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ASEAN主要国における自動車販売台数の対前年比伸び率推移
とりわけ自動車市場では、政府の政策と実需とが乖離してしまったこともあり、その傾向が顕著に現れている
-60.0%
-40.0%
-20.0%
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
I II III IV I II III IV I II III IV I
2013年 2014年 2015年 2016
年
タイ インドネシア フィリピン ベトナム インド
出所)マークラインズデータよりNRI作成
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
タイ、インドネシアが停滞する一方で、ベトナム、インド、フィリピンは堅調に成長している
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FTAなどを契機に欧米市場へのアクセスが改善したことなどから、投資受け入れも活発化し、コスト優位性も生かして成長。結果として内需も好調に推移
• インド• 巨大な国内市場• 製造業・輸出振興(Make in India)• 産業人材育成(Skill in India)• 日本工業団地• 産業回廊・港湾整備
• ベトナム• TPP参加、EUとのFTA
• 海外からの投資ラッシュ• 高いコスト競争力• 産業人材育成• インフラ・工業団地整備• 国内市場の成長
• フィリピン• 米国、EUとの通商条約• 国内市場の成長• 安定的な労働賃金• 優秀なエンジニア(IT等)• マニラ南北成長回廊整備• 製造業振興に向けた政策
ベトナム、インド、フィリピン経済好調の主な要因
インド ベトナム フィリピン
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
ベトナム、インド、フィリピンを含めた分業体制とサプライチェーン構築の有効性が高まっている
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スービック港
バタンガス港
マニラ港
モーラミャイン港
カイメップ・チーバイ港
ダナン港
ダウェイ港
エンノール港
チェンナイ港
クリシュナパトナム港
ブンタウ港
ティラワ港
ハード、ソフト両面でのインフラ整備が進み、インドシナ半島とフィリピン及びインドとの物流ネットワークの連結性も高まる見込み
フィリピンからインドまでを結ぶ産業・交通インフラネットワーク
出所)ASEANハイウェイその他各種計画、構想等よりNRI作成
チェンナイ=ベンガルール産業回廊(CBIC)
東西回廊南部経済回廊
マニラ首都圏南北基幹成長回廊
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み
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2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題
転換期を迎えたASEANにおいて、これまでの戦略・経営では、乗り越えがたい課題に直面している
タイ、インドネシアの事業が上手く回らない要因は、ASEAN経済環境の悪化や社会インフラの遅れだけでなく、日本企業の機能・体制の構造的な問題にある
国の政策に追随するだけでなく、市場ニーズを把握したうえでの事業展開
市場が成熟化する中で、伸びる部分とそうでない部分を見極めた投資の判断
労働コストの下方硬直性
労働力不足に伴う人材確保、リテンション
進出先国の内需の減退や、内政上の問題などに起因する環境変化への対応
拠点の位置づけ、役割の方向転換
課 題 具体的内容
①市場ニーズの的確な把握と経営判断
②労働コスト上昇・労働力不足への対応
③拠点内で解決できない問題への対応
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2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ①市場ニーズの的確な把握と経営判断
タイでは、社会の成熟化、経済成長の鈍化、政策と市場ニーズの乖離など、現地の市場は読みにくくなっている
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右肩上がりの成長や、「ボリュームゾーン」の成長などを前提とした市場理解、政策を追随する形での生産投資では、市場の実態に合わない時代に
タイの社会経済の成熟化と市場の変化
一極集中を前提とした経済発展
晩婚化・少子化
都市部における高学歴化
政策と市場ニーズの乖離
嗜好・価値観の多様化
総需要の伸びは緩やかに低下方向へ
都市部に購買力の高い市場の形成
地域間格差所得格差
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2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ①市場ニーズの的確な把握と経営判断
タイの自動車産業は、政府の政策に対応してきた結果、需要の先食いで稼働率の低下に悩まされている
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10%
20%
30%
40%
50%
60%
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0
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2010 2011 2012 2013 2014 2015 ~2019
生産能力 生産台数 稼働率(万台)
出所)マークラインズ、TAIAデータ等よりNRI作成
タイの自動車市場(生産能力・生産台数・稼働率)
First Car Buyer政策
洪水
台数
稼働率
(年)
Gap
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1.93
2.092.05
2.13
1.75
1.86
2.53
1.99
2.33
2.07
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.2
2.4
2.6
2.8
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202
8
203
0
インド インドネシア フィリピン タイ ベトナム
(年)
2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ②労働コスト上昇・労働力不足への対応
タイでは生産年齢人口はピークに近づき、労働賃金は高止まりしている
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人口ボーナス指数の推移と予測
注)人口ボーナス指数:生産年齢人口(15歳~65歳)を従属人口(年少者や高齢者)で割った指数出所)国連人口局データよりNRI作成
生産年齢人口(ピーク)
ワーカー人件費(首都、2015年)
失業率
タイ 2017年頃 369ドル 0.9%
インドネシア 2060年頃 263ドル 6.2%
ベトナム 2015年 173ドル 2.4%
フィリピン 2080年以降 267ドル 6.3%
インド 2050年以降 381ドル 4.9%
各国の労働供給状況
注)ワーカー人件費:一般工職1ヶ月分の賃金出所)国連人口局、JETRO、IMF、インド政府データよりNRI作成
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2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ②労働コスト上昇・労働力不足への対応
タイ+1戦略には期待がかかるものの、タイ周辺国は生産性向上に手間取り、展開速度は低下している
16
周辺国の工業団地は、タイとの国境付近の農村、漁村などにつくられたものが多い
周辺国、特に国境付近では産業人材(ワーカー)育成が進んでいない
タイ側も国境付近にSEZ整備の計画だが、日本企業には人気がない
ここ1年程度の間では、タイにおけるFA化が急速に進んでいる
出所)主な工業団地のロケーションよりNRI作成
バンコク
バベット
サワナケットヤンゴン
ソンクラー
ムクダハーン
ヴィエンチャンノンカイ
サケオ
コッコンシアヌークヴィル
トラート
ターク
プノンペン
タイ国内タイ国外
タイ周辺国の主な工業団地立地地域
※FA:Factory Automation
※SEZ:Special Economic Zone(経済特区)
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優秀な人材を確保できている企業はまだよいが、業種によっては、有名なグローバル企業ですら、もう何年も人材確保に苦労している例もある
本社から地域統括拠点化を求められても、そもそもそのような人材や体制が整えられないようなケースもある
2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ②労働コスト上昇・労働力不足への対応
既存の拠点と体制を前提としたままでは対応できない閉塞感にとらわれている企業もある
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※現地日系自動車メーカへのヒアリングより
自動車産業は給与水準もよく、優秀な人材が集まっているようだが、それ以外では難しい。泰日工業大学も、優秀な人材から自動車産業に就職しているのではないだろうか
※現地日系電気電子メーカへのヒアリングより
「地域の統括的拠点として位置づける」が本社の方針だが、タイ人エンジニアは周辺他国に赴任することを嫌がったり、簡単に辞めてしまったりする
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2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ②労働コスト上昇・労働力不足への対応
タイに設計開発拠点を設置したものの、開発力が高まらず、コストも下がらないため撤退を検討した企業もある
18
R&Dも、現地調達に合わせた設計変更と生産支援以上に成果を出すのはハードルが高い
商品企画コンセプト
意匠デザイン基本設計
3D図面化部分設計設計変更
シミュレーション
現地調達
試験検査シミュレーション
生産支援
本社の開発の工数が増えているが、基本設計などは任せられず、分担できる業務が限られている
優秀な人材はコストがかかるし、任せられる業務量や業務範囲が限られていて、コストメリットが出ていない
かろうじて出来ているのは、現地調達のための設計変更と生産支援ぐらいか・・・
出所)現地日系企業R&D拠点へのヒアリングよりNRI作成
タイにおける設計開発拠点の運営上の課題
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2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ③拠点内で解決できない問題への対応
インドネシアでは、経済構造改革に向けた政策も一筋縄ではいかず、内需頼みだけでは行き詰まり感がある
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国内市場を見込んで進出・投資をしたものの、内需が期待したほど伸びない中で、閉塞感を感じている企業もある
投資誘致によって産業多角化国内の需要を
まかなえない産業構造
鉱物資源の輸出不振
インフラ不足
国内産業保護
消費の停滞インフレ
インフラ整備の執行遅延
インドネシア経済の課題と政策上の矛盾
補助金削減によりインフラ整備資金の捻出
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2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題 ③拠点内で解決できない問題への対応
内需向けから輸出拠点化を目指しても、対象市場での販路開拓や他の輸出拠点との調整ができなければ難しい
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出所)トヨタプレスリリース(2014年3月26日)、PT Isuzu Astra Motor Indonesia社長コメント(『Jakarta Post』2015年3月10日掲載)よりNRI作成
いすゞ
商用トラックをアジア、アフリカ、南米向けに輸出トヨタ(TMMIN)
乗用車(ヴィオス)をアジア、中近東に輸出MPV(イノーバ他)を中南米、アフリカに輸出
インドネシアを輸出拠点として活用している事例
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1.2014年を境に転換期を迎えたASEAN経済
2.日本企業がタイ、インドネシアで直面する経営課題
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み
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3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み
ASEAN事業を再構築するためには、グローバル本社主導の改革が必要である
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①市場ニーズの的確な把握と経営判断
現地の政策や日本側の事情に左右されず、現地の実情に合わせた経営判断を行う体制整備
成熟化・多様化する市場に対応した、きめ細かいマーケティングの実施
②労働コスト上昇・労働力不足への対応
労働のコストと生産性のバランスのとれた拠点配置の、ASEAN+インド大での構築
③拠点内で解決できない問題への対応
事業部や個別国に閉じない全社最適の視点で、市場と調達・生産・物流拠点をグローバルに配置する必要がある
課 題 日本企業に求められる取り組み
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冷蔵庫BU
(日本)
洗濯機BU
(日本)
・・・
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み ①市場ニーズの的確な把握と経営判断
日本側の事情に左右されず、現地の実情に合わせた経営判断を行う体制整備が求められる
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パナソニック・アプライアンス社は、現地完結経営によって中進国のまま成熟化する市場や、今後伸びる市場への対応を柔軟に実現しようとしている
出所)パナソニック・アプライアンス社へのインタビューよりNRI作成
アジア・太平洋地域での家電事業統括会社(2015年設置)
ASEANにおける「事業戦略」、「マーケティング」、「生活研究」、「商品デザイン」などを日本から機能移管
商品企画(日本)
マーケティング統括(シンガポール)
製造拠点(ASEAN各国)
販売体制(ASEAN各国)
マレーシアで経営判断•ボリュームゾーン重視から中~上位層重視へ
•ベトナム、フィリピンなどこれから伸びる市場での販売拡大
従来
パナソニック・アプライアンス・アジアパシフィック社(PAPAP社)
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3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み ②労働コスト上昇・労働力不足への対応
コスト優位性や市場特性、現地人材リソースの適性などを見極めて、最適な拠点配置を行う必要がある
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パナソニック・アプライアンス社は、直近ではベトナムを、冷蔵庫、洗濯機のASEAN共通モデル開発・製造拠点として強化してきた
全自動洗濯機
高級冷蔵庫
TV・エアコン(スプリット型)
ローカル市場向け製品
設計開発
地域統括拠点(PAPAP社)
ベトナム
冷蔵庫、洗濯機のASEAN共通モデル開発・製造拠点
マレーシア
エアコン、TVの生産拠点15年以上のR&Dの経験・蓄積
出所)2002年、2004年、2010年、2011年に実施したパナソニック・アプライアンス社へのインタビューよりNRI作成
大型白物工場及び設計・統括機能の立地場所
ベトナム
マレーシア
ベトナム
冷蔵庫、洗濯機開発・製造拠点
タイ
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立地・人材要件
事例
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み ②労働コスト上昇・労働力不足への対応
設計開発の中でも、労働集約的業務をベトナム、インド、フィリピンなどに集約することでコストメリットを実現している
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設計開発の現地化は、目的を明確化して立地場所を選定する必要がある
設計業務において生産性の高いインドも視野に入れるべき
ベトナム(CAE)日産テクノ: 自動車設計
旭化成: 自動車樹脂部品設計
デンソー: 自動車部品設計 等
フィリピン(CAE)三菱重工、日立造船、日揮、川崎重工、IHI 他: いずれもプラント設計
伊藤製作所: 金型設計等
各国で多数設置インド日産: 自動車設計
ESOによるVE、設計O/S
基本設計業務(新興国モデル等)
の分散化
設計・開発上の労働集約的業務のオフショア化
社内オフショア アウトソーシング
現地調達・生産支援に関わる業務
高度な技術人材
生産拠点との連携CAD/CAMやCAEに習熟したエンジニア 生産拠点の近く
タイトヨタ、ホンダ 等
マレーシアパナソニック: エアコン
ダイキン: エアコン 等
ベトナムパナソニック: 白物等
フィリピン富士通テン:オーディオ等
設計開発の目的と立地要件・事例
出所)各社公開情報、インタビュー等よりNRI作成
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3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み ③拠点内で解決できない問題への対応
インドをASEANのサプライチェーンに組み込み、輸出拠点化する企業も徐々に増え始めている
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インドは内需を目的に進出する企業が多いが、国内販売の難しさや通貨ポジションなどを踏まえると、むしろ輸出に適しているともいえる
ホンダ
• エンジン部品• 鍛造部品• トランスミッション部品
三菱ふそう(ダイムラー)
• FUSOブランドの大型・中型トラック
出所)現地インタビュー、三菱ふそうプレスリリース(2013年5月23日)よりNRI作成
自動車部品メーカ
• 鍛造部品• トランスミッション部品
インドからASEANへのサプライチェーンの事例
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インドネシア生産性の高まらない中南米への輸出拠点化
ベトナムTPP等を生かした欧米輸出拠点化
アフリカへの製品輸出
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み ③拠点内で解決できない問題への対応
グローバル・バリューチェーンが飽和するなか、拠点配置のポートフォリオ再構築は、グローバル本社の役割である
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どの市場にどこからアプローチするのかが重要。わずかな関税の差が、全体では大きなコストダウンにもつながるため、全体を見渡した設計が必要になる
主要市場とそこに対する輸出拠点の役割分担例
自動車(小型車)、工作機械等の欧州輸出
トルコ欧州との関税同盟/統一規格中央アジアとの民族的つながり旧オスマン帝国との関係
インド=ASEAN部品・製品の相互供給
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B to Cでコーポレートブランドを構築しB to B事業にも活用
3.ASEAN事業の再構築に向けて必要な取り組み ③拠点内で解決できない問題への対応
オムロンは、ものづくりやSCMなどの共通機能について事業部に横串を通した活動を、本社主導でグローバルに展開している
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事業部門を越えて共通化できる機能は本社主導で、かつ、地域ごとに展開することで、全社・各地域に最適な事業運営を目指している
オムロンのグローバルでのタテ・ヨコ経営
米国
オランダ
中国
シンガポール
日本
インド
ブラジル
地域本社
GHQ
事業部門
事業部門
事業部門
事業部門
ブランド構築
グローバルものづくり革新
グローバルビジネスプロセス&IT革新 • 生産・開発・品質人財育成• 品質統括、品質革新推進• 環境統括、Ecoものづくり推進• 原価企画、開発購買、生産設計、PDM
• 革新的生産要素技術、自動化技術、超精密金型・工法・技術革新
• 開発力強化、開発支援技術
ものづくり革新の横串機能
出所)オムロンIR資料、岡田浩「オムロンの将来を見据えたCAE戦略」(2016年5月講演資料)等を参考にNRI作成
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まとめ
2014年を境にASEAN経済は転換期に入った
タイ、インドネシア経済が、構造的な問題を解決するまでには、一定の期間を要すると見込まれる
しかし、広域的なインフラ整備、ベトナム、インド、フィリピンなどの活力が加わり、戦略選択の幅は広がっている
既存の各国の拠点は、その拠点の範囲内で解決の糸口を探しているが、広域的な視点を持てば、解が見つかる可能性がある
グローバル本社が主導することで、グローバル全体での最適解を見出していくことが求められている
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株式会社野村総合研究所
グローバル製造業コンサルティング部
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