施策2 地域福祉を支えるひとづくり · 2019-09-30 ·...
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「住民一人ひとりが住みよいまちづくり」の実現を目指し、地域福祉を推進して
いくためには、地域住民の一人ひとりがその担い手であると自覚し、福祉に対する
正しい理解と深い認識を持つことが必要です。
また、多様化・複合化する福祉ニーズに対応するため、福祉サービスを提供する
専門的な知識、技能を有する人材の養成・確保を図るとともに、これまでの福祉サ
ービスの中心的な担い手である社会福祉協議会、民生委員・児童委員、ボランティ
アやNPO等に加え、高齢者や障害者の社会参加の促進、地域を構成する一員であ
る民間企業によるボランティア活動の推進等も求められています。
「地域全体で地域を支える」気運を醸成し、多様な地域福祉の担い手の自発的な
参加を促すため、「ひとづくり」に取り組みます。
施策2
地域福祉を支えるひとづくり
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《背景》
■ 福祉教育の重要性
・ 生活困窮者の増加や社会的孤立等の今日的な課題の解決に向けては、地域住民の
福祉意識を高めていくための「学び」が必要不可欠であるとして、社会的包摂のた
めの福祉教育の重要性が指摘されています。
・ 本県では、教育関係者、市民活動支援団体、社会福祉協議会等で組織される「と
ちぎ福祉教育研究会」において、福祉教育についての研究・協議やセミナーの開催
等の取組が行われています。
・ 募金活動など、それぞれの特色を生かした福祉活動に取り組んでいる学校もあり
ます。
■ 人権尊重理念の理解促進
・ 福祉文化の醸成を図るためには、人権尊重の理念について深い理解と認識を持つ
ことも重要であり、県では、「栃木県人権施策推進基本計画」に基づき、各種人権推
進施策に取り組んでいます。
《地域で求められる取組》
■ 「地域全体で地域を支える」気運の醸成
・ 「地域全体で地域を支える」気運の醸成を図り、地域住民の地域福祉活動への積
極的な参加を促進するには、子どもから大人まで気軽に参加できる子ども会や自治
会等の奉仕活動や社会福祉施設への訪問等、地域住民が地域福祉の課題を学び、自
らの問題としてともに考える機会・場の創出が必要です。
■ 多様な機関との連携
・ 若年層から現役世代、高齢者など、どの世帯・対象に対しても、福祉教育を提供
できるよう、関係行政機関や企業、民間団体等が連携し、家庭・学校・地域社会・
職場等あらゆる場と機会を通じ、効果的な福祉教育の推進に取り組むことが必要です。
■ 様々な場面における学ぶ機会の提供
・ 教育委員会や生涯学習関連団体と連携し、夏休み期間中の放課後児童クラブ等の
行事や子ども会の活動、公民館の活用等を図って、地域福祉について学ぶことので
きる機会を提供することが必要です。
■ 雇用者の福祉に関する理解促進
・ 障害者や高齢者等の雇用拡大・促進を図るためには、雇用者側がそれぞれの特性
を十分に理解・把握しておくことが重要であり、雇用者の福祉に関する理解の促進
が必要とされています。
(1) 福祉文化の醸成
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《県の施策》
● 福祉教育の担い手となる人材の養成
・ 福祉教育推進セミナーの開催等により、地域において福祉教育の担い手となる人
材の養成を支援します。
● 地域福祉について学ぶ機会の拡充
・ 各種講習会やセミナー等において、地域福祉をテーマとして取り上げ、地域福祉
について学ぶ機会の拡充に努めます。
・ 中学校・高校へ出向く「出前講座」の実施により、中学生・高校生が地域福祉に
ついて学ぶことのできる機会を提供します。
・ 認知症や障害などにより、支援を必要としている人や、その人を支える家族を温
かく見守り、地域全体で支援することができるよう、地域住民における認知症、障
害等についての正しい理解促進を図ります。
● 人権意識の啓発
・ 県民が人権に関する様々な問題について正しく理解し、人権尊重意識の高揚が図
られるよう、イベントや講演会等の開催、啓発資料の作成・配布とともに、様々な
媒体を活用した啓発事業を行います。
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さくら市社会福祉協議会では、東北福祉大学と連携し、災害が起きた
ときに、「いかに被害を減らせるか、冷静に対処できるか」を運動会形式
にして楽しみながら学ぶという、『減災運動会』を開催しています。減災
とは、「災害時の被害を低減させる」ことです。
この事業は小学生を対象としており、開催にあたっては地元の行政区
長(自治会長)・民生委員・老人クラブの方々、高校生のボランティアに
も協力をいただいています。
平成 27年 11月に開催された第5回『減災運動会』では、さくら清修
高校の生徒とともに、東北福祉大学の学生が考案したプログラムを実施
しました。
種目の一つ「災害時借り物競走」では、2人一組でスタートし、ヘル
メットをかぶって軍手をつけ、リュックを背負い、床に置かれた様々な
物の中から避難生活において必要な物を選択してリュックに入れ、目隠
しをしたお年寄りの手を引いて避難所に誘導し、ゴールとなる競技であ
り、災害時に慌てず行動するための心構えが学べるようになっています。
その他、「減災○×クイズ」、「車いす避難リレー」の種目等を通して、
福祉の視点を踏まえた災害時の行動についての知識と、災害に備えてお
くことの大切さを学ぶことができる取組としています。
楽しく災害について学ぶ 『減災運動会』
さくら市社会福祉協議会
事例4
『減災運動会』は、競技を通じて地域の人々がお互いに助け合い、協
力しながら“楽しく”「減災」について学び、災害時において冷静に対処
できるよう、日ごろから備えておくことの大切さを伝えることを目的に
開催されています。
福祉教育の観点からも、地域、学校、社会福祉協議会が連携し、子ど
もたちに福祉について学ぶ機会を提供し、災害に対する意識とともに福
祉に対する意識も高めていくことができる、とても効果的な取組と考え
られます。
ポイント
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【『減災運動会』での一コマ】
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《背景》
■ 県民の社会貢献活動に対する関心
・ 平成 26年度に実施した県政世論調査の結果によると、県民のうち、社会貢献活動
に対する関心を示している人は半数を超えています。
・ 社会貢献活動に参加しない理由として、「自分の自由になる時間がない」、「活動を
はじめるきっかけがない」、「活動に関する情報がないため、どうしたら活動できる
のかわからない」等の理由が挙げられています。
■ ボランティア活動の活発化
・ 東日本大震災をはじめとする大規模災害の発生を通じて、地域住民によるボラン
ティアの重要性が改めて認識されています。
・ 特に、本県にも大きな被害をもたらした平成 27年9月関東・東北豪雨災害におい
ては、県・市町社会福祉協議会を中心に、県内外、個人や企業等を問わず、積極的
にボランティア活動が展開されました。
《地域で求められる取組》
■ ボランティア活動の普及・啓発
・ 地域において、ボランティア活動に関する情報や活動の有益性等についてPRし、
ボランティア活動を普及・啓発するための取組が必要とされています。
・ 若年層から現役世代、高齢者等、すべての地域住民によるボランティア活動への
積極的な参加を促進するため、教育委員会や民間企業、NPO、自治会等と連携し、
ボランティア活動を体験できる機会の拡充を図ることが必要です。
・ 市町においては、地域におけるボランティア活動の活発化を図るため、ニーズと
ボランティアへの参加を希望する人とを適切にマッチングし、コーディネートでき
る人材の育成に向けた取組が求められています。
■ 地域福祉の担い手の活動支援
・ 社会福祉協議会や福祉関係相談窓口、NPO等の職員や民生委員・児童委員等は、
それぞれの能力を高め、地域福祉の担い手として中心的な役割を果たすことが求め
られています。
・ 中心的な担い手は、地域における課題・ニーズを早期に発見し、受け止め、地域
資源(人・情報・場所など)をつなぎ、解決や対応等に結びつける役割を適切に果
たすことが求められています。
・ 市町には、市町社会福祉協議会等と連携し、地域住民をはじめとする地域福祉を
担う人材の発掘・養成・確保・活動支援に向けた取組や担い手同士がつながり、交
流して活躍できる場の提供が求められています。
(2) 地域住民等による社会貢献活動の充実
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■ 民間企業等の地域福祉活動への参加促進
・ 民間企業等も地域を構成する一員として、地域福祉活動への参加が求められてお
り、ボランティア活動リーダー等活動の核となる人材の養成等が必要とされています。
・ 民間企業等の地域福祉活動実践例を広く紹介するなど、その他の企業が地域福祉
活動へ参加する動機付けとし、主体的な関わりを促進することも必要となっています。
・ 民間企業等が社会貢献活動の一環として寄附により、地域福祉のための取組に参
加できるよう、寄附に関する様々な情報を提供していくことが必要です。
《県の施策》
● ボランティア活動の普及・啓発
・ 地域福祉活動への住民参加を促進するため、ボランティア活動への参加を体験で
きる機会の提供・拡充を図ります。
・ ボランティア活動の経験がない人にもボランティア活動やNPO活動の意義等に
ついて広く周知したり、NPOの交流を促進するため、「とちぎボランティアNPO
センター(愛称:ぽ・ぽ・ら)」の活用を促進するとともに、市町におけるボランテ
ィア活動をはじめとする社会貢献活動を支援する拠点の整備を促します。
● ボランティアコーディネーターの配置促進
・ ボランティア活動と地域をつなぐネットワークを構築し、ニーズとボランティア
への参加を希望する人とのマッチング機能を強化するため、市町におけるボランテ
ィアコーディネーターの配置を促進します。
・ 災害発生時に設置する災害ボランティアセンターの円滑な設置運営等を支援する
ため、市町社会福祉協議会の職員等を対象にした、災害時のボランティアコーディ
ネート能力を習得するための研修会を開催します。
● 新たな担い手の参加促進
・ 「とちぎ生涯現役シニア応援センター(愛称:ぷらっと)」を運営し、高齢者の積
極的な社会貢献活動への参加等を促進します。
・ 若者や女性の社会貢献活動を促進するため、NPO等とのマッチングイベントの
開催や、女性を対象としたボランティア体験講座等の取組を実施します。
● 民間企業等の社会貢献活動の促進
・ 民間企業等による社会貢献活動を促進するため、ボランティア活動の核となる人
材を養成するための研修等を実施します。
・ 社会貢献活動の一環として、寄附による地域福祉活動への参加を促進するため、
県の栃木県地域福祉基金や県社会福祉協議会の栃木県地域福祉振興基金(栃の実基
金)の周知に努めるとともに、共同募金活動等に協力します。
・ 商工団体が行うコミュニティビジネスに関する情報提供、各種相談の実施及び創
業・運営に関する支援を行います。
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● 協働による社会貢献活動の促進
・ 企業やNPOとの協働の取組を促進するため、様々な機会を通じて普及・啓発活
動に取り組みます。
・ 特に、毎年 11月を「とちぎ県民協働推進月間」と定め、社会貢献活動や協働に関
する、普及・啓発活動に集中的に取り組みます。
【数値目標】 (単位:%)
年度
項目 H27 H28 H29 H30 H31 H32
ボランティアコー
ディネーターの市
町配置率 64 ※ 72 80 88 96 100
※ 平成 27年4月1日現在
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《背景》
■ 良質な福祉サービスの提供
・ 限られた人材で良質な福祉サービスを提供していくことが求められていますが、
人口減少の進行に伴い、生産年齢人口も同様に減少していく中で、福祉人材の急激
な増加が見込めない状況にあります。
■ 介護人材需給推計の状況
・ 高齢化の進展、要支援・要介護認定者の増加や介護期間の長期化等が要因となり、
今後、ますます介護サービスの需要が増大することが見込まれています。
・ 厚生労働省が平成 27年6月に公表した介護人材需給推計では、本県において平成
37 年(2025 年)に約 6,800 人の介護人材が不足すると推計されています。
■ 魅力ある職場づくりの推進
・ 福祉の現場においては、ハードな職務、勤務環境にもかかわらず、平均賃金は他
産業と比較して低い等の理由から定着率が低い状況にあり、人材の確保のみならず、
その定着も課題となっているため、魅力ある職場づくりを推進することが急務とな
っています。
《地域で求められる取組》
■ 福祉人材の確保
・ 福祉人材を安定的・継続的に確保するためには、福祉職への参入を促進するとと
もに、既存の職員が定着するしくみを構築し、資質の向上のために、育成を支える
環境を整備していくといった3つの観点からの取組が必要と考えられます。
■ 介護職員初任者研修等の恒常的な開催
・ 介護職の新たな担い手を育成するため、介護職員初任者研修等が地域で恒常的に
開かれているという環境を創り出すことも必要であり、市町が、地域の社会福祉法
人等と連携し、開催していくことも有効な取組と考えられます。
■ 有資格離職者の就業促進
・ 福祉に携わる資格を有しながら、その業務に従事していない潜在的有資格者も多
くいるとされており、こうした有資格者の就業を促進する取組が必要とされています。
■ 職能団体等との連携
・ 福祉人材は地域で確保するという観点に立ち、市町が主体となって職能団体等と
連携し、地域内の介護サービス事業所又は保育所の職員等に対して定期的な研修会
や交流会を開催することが、人材の定着に向けた取組として効果的と考えられます。
(3) 福祉人材の養成・確保及び質の向上
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■ 人材育成に向けた研修体制の整備
・ 事業所においては、労働条件の改善やキャリアに応じた給与体系、人材育成に向
けた研修体制の整備等に積極的に取り組むことにより、魅力ある職場づくりに努め
る必要があります。
■ 専門職同士の交流・連携の促進
・ 「地域包括ケアシステム」の実現等に向け、医療・介護等の専門職それぞれが持
つ知識・技術等を生かし、連携・協力体制の一層の拡充が求められています。
・ 地域包括支援センター等による地域ケア会議、市町や市町社会福祉協議会等が開
催する各種セミナー等、専門職同士の交流・連携を図る場の創出・提供も必要です。
《県の施策》
● 県内養成機関・事業所等に対する支援
・ 専門性の高い保健・医療・福祉従事者の養成を推進するため、各種県内養成機関
の支援等を行います。
・ 「栃木県介護職員人材育成指針」の内容について広く普及を図り、事業所等にお
ける介護職員の資質の向上に向けた取組を支援・促進します。
・ 施設・事業所職員が、就労年数や職域階層等に応じた知識や技術等を修得し、ス
キルアップを図るための研修等を実施する団体に対し、その費用を助成します。
・ 社会福祉施設経営への専門的な支援と社会福祉施設における労働環境の改善に資
するため、県社会福祉協議会による福祉施設経営指導事業の実施を支援します。
● 介護人材の参入促進・定着及び資質の向上に向けた取組
・ 福祉分野への新たな人材や潜在的有資格者の就業促進や関係職員の資質の向上、
定着支援を図るための各種取組を「福祉人材・研修センター」において実施すると
ともに、地域医療介護総合確保基金等を活用して、介護職員の処遇改善に向けた取
組を促進します。
・ 中学生・高校生を対象に、介護の仕事の大切さと魅力を伝えるための出前講座を
実施し、介護の仕事に対する理解促進を図ります。
・ 介護職員のモチベーションアップと仲間同士の交流を深めて連帯感を醸成し、職
場での定着率の向上を図るため、「介護職員合同入職式」を実施します。
● 医療介護総合確保推進法に基づく各種取組
・ 介護人材の緊急的な確保のため、「地域における医療及び介護を総合的に確保する
ための基本的な方針」に基づき介護人材の確保を図る各種事業を実施します。
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合同入職式の様子 先輩職員との交流会の様子
知事メッセージの内容
栃木県では、新たに介護の職場に就職された方々を対象に、栃木県介護職
員合同入職式を開催しています。
入職式では、知事からの激励のメッセージを送るとともに、先輩職員との
交流の場を提供することにより、介護職員のモチべーションアップと仲間同
士の交流を深めて連帯感を醸成し、職場での定着率の向上を図ることとして
います。
介護職員合同入職式
介護の仕事は、長く人生の苦労を経てきた方々のより良い生活を
支える大切な仕事です。
あなたのサービスを喜んでくださる方や、あなたの笑顔に幸せを
もらっている方がたくさんいらっしゃいます。
とちぎで暮らし、長生きして良かったと思える社会の実現に向け
て、これからも自信と誇りを持って、歩んでいってください。
あなたのこれからの御活躍を心から期待しています。
平成27年5月29日
栃木県知事 福田 富一
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