第4章 台湾の輸入検疫・通関手続 · -50 - 第4章...

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50第4章 台湾の輸入検疫・通関手続 ◎ 本章のポイント 本章では、実際に農林水産物・食品が国際輸送を経て、台湾の港に到着してからの検 疫・通関手続きについて説明する。本来、輸入検疫・通関手続は、台湾側の輸入者が手 配または自ら行う。ただし、この情報を輸出者側が知っておくことは、円滑な貿易のた めにも必要であるし、第1~3章で提起した日本側輸出者がやらなければならないこと の理解にも役立つ。 日本の輸出者は、この章を参照して、日本側で用意しなければならない書類や手続の 重要性を再確認していただきたい。 本章は以下の 2 つで構成されている Ⅰ.輸入検疫・検査手続 Ⅱ.輸入通関 Ⅰ.輸入検疫・検査手続 ここでは、現地での検疫手続を品目ごとに解説し、そこで必要とされる書類、所要 時間などを明確にしている。 動植物の輸入検疫、食品衛生検査、食品表示ラベルの審査は、台湾の行政院農業動 植物検疫局および行政院衛生署が管理・実施している。参考のため主要動植物検疫所 と食品衛生検査所の支局の住所と電話番号を示している。 Ⅱ.輸入通関 ここでは、台湾の通関制度と流れを紹介している。納付税・費用システムもここで 確認できる。これらを参照して輸入コストを把握してほしい。 通関手続を行う際の担当部署などについても記しておく。

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Page 1: 第4章 台湾の輸入検疫・通関手続 · -50 - 第4章 台湾の輸入検疫・通関手続 本章のポイント 本章では、実際に農林水産物・食品が国際輸送を経て、台湾の港に到着してからの検

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第4章 台湾の輸入検疫・通関手続

◎ 本章のポイント

本章では、実際に農林水産物・食品が国際輸送を経て、台湾の港に到着してからの検

疫・通関手続きについて説明する。本来、輸入検疫・通関手続は、台湾側の輸入者が手

配または自ら行う。ただし、この情報を輸出者側が知っておくことは、円滑な貿易のた

めにも必要であるし、第1~3章で提起した日本側輸出者がやらなければならないこと

の理解にも役立つ。

日本の輸出者は、この章を参照して、日本側で用意しなければならない書類や手続の

重要性を再確認していただきたい。

本章は以下の 2 つで構成されている

Ⅰ.輸入検疫・検査手続

Ⅱ.輸入通関

Ⅰ.輸入検疫・検査手続

ここでは、現地での検疫手続を品目ごとに解説し、そこで必要とされる書類、所要

時間などを明確にしている。

動植物の輸入検疫、食品衛生検査、食品表示ラベルの審査は、台湾の行政院農業動

植物検疫局および行政院衛生署が管理・実施している。参考のため主要動植物検疫所

と食品衛生検査所の支局の住所と電話番号を示している。

Ⅱ.輸入通関

ここでは、台湾の通関制度と流れを紹介している。納付税・費用システムもここで

確認できる。これらを参照して輸入コストを把握してほしい。

通関手続を行う際の担当部署などについても記しておく。

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Ⅰ.輸入検疫・検査手続 台湾で産品を輸入する際に、生きている動物および繁殖用植物以外に、人間の口に入れ

るものついては、原則①検疫と②衛生検査を受けなければならない。検疫は、行政院農業

委員会動植物検疫局が主管で、各地方分局(新竹、高雄、台中、基隆)が実際の検疫業務

を行う。 衛生検査は、行政院衛生署が主管で、その委託業者である経済部標準検査局が実際に行

う(【表4-1】)。衛生検査は、書類検査と現物検査の 2 段階に分けている。ただし現物

検査は全輸入品に対して行うのではなく、無作為抽出で行われる。2005 年の実績によると

輸入申請件数の 5~6%は現物検査を受けていた。94%以上の輸入申請件数は書類検査のみ

で通過する。

【表4-1】台湾の主要動植物検疫所・食品衛生検査所

所名 電話番号 住所

行政院農業委員会 02-2381-2991 台北市南海路 37 号

行政院農業委員会

動植物検疫局 02-2343-1401 台北市重慶南路 2 段 51 号 9F

行政院農業委員会農糧署 02-23937231

049-2332380

台北市杭州南路1段 15 号

南投県南投市光華路8号

新竹分局 03-398-2663 桃園県中正国際機場航勤北路 25 号

高雄分局 07-536-0070 高雄市海邊路 31 号 1F

台中分局 04-2266-0188 台中市復興路二段 78 号 7F

基隆分局 02-2424-7363 基隆市中正区義二路 88 号 2F

行政院衛生署 02-2321-0151 台北市愛国東路 100 号

経済部標準検査局 02-2343-1700 台北市済南路 4 号

【図4-1】台湾の地図

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1.生きている動物(水生物を含む)の輸入検疫・衛生検査 台湾は、生きている動物の輸入に対して、輸入者が行政院農業委員会動植物検疫局から

『輸入同意書』または『輸入検疫条件函』を取得することを規定している。ただし桂魚、

鱒魚、鯰魚、鲈魚、鯉魚の 5 種の魚および稚魚以外は、不要である。 輸入にあたって、輸入者はまず隔離検疫場を確保する必要がある。また、事前に台湾で

取得した『輸入同意書』、『輸入検疫条件書』、『隔離場所許可書』および日本側が発行した

『動物検疫証明書』の正本を持って申請することになる(【表4-2】)。

【表4-2】生きている動物(水生物を含む)の輸入検疫手続の流れ

業務の流れ 管轄官庁 必要とする書類及び審査内容 所要費用

・現場検査で合格となった場合は『検疫証明書』が発行される

・現場検査で不合格となった場合は、積み戻すまたは焼却あるいは観察

・隔離検疫場所での検疫も合格した場合は、『輸入動物検疫証明書』が発行される

・不合格の場合は積み戻すまたは焼却

・『輸入同意書』または『輸入検疫条件函』(行政院農業委員会動物検疫局発行) ※ただし一部の魚と稚魚を除き、魚介類は不要・『隔離場所許可書』(動植物防疫検疫局発行、ただし、水産動物およびその産品の場合は不要)・日本の『動物検疫証明証』(正本)・税関輸入申告書・船または航空会社の貨物を引き渡す証明書

輸入港の動植物防疫検疫局検疫站※輸入港は基本として基隆、新竹、台中、高雄)

・検疫費用は、該当検疫物のCIF価格の0.01%で徴収される・ただし正常営業時間外は追加料金徴収(空港)

輸入時の検疫申請

検疫

輸入港現場検疫

合格不合格

隔離検疫

結果

合格の場合

不合格の場合

受理

コンピュータ登録、費用徴収

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2.動物産品の輸入検疫・衛生検査 (1)検疫対象

動物産品はすべて輸入検疫と衛生検査を受ける必要がある。

(2)検疫手続と衛生検査 輸入する際に、検疫と衛生検査の 2 段階を経なければならない。 検疫は、行政院農業委員会動植物検疫局が行う。検疫が終了した段階で、さらに食品衛

生検査が行われる。衛生検査は、経済部標準検査局が行う。衛生検査の基準は、①残留農

薬、②GAP、HACCP、施設登録など生産方法が一致しているかどうか、③個別品目の規

格に一致しているかどうかである。 検疫は当日で完了するが、衛生検査は、現物検査の無作為抽出に該当しなければ、書類

検査のみで、当日通過する。ただし現物検査の無作為抽出に該当した場合は、通常検査期

間は 5~6 日間である【表4-3】)。

【表4-3】動物産品の輸入検疫手続の流れ

業務の流れ 管轄機関 必要とする書類および審査内容 所要日数

・『先行放行通知書』 (衛生検査が済んでいない場合)

①書類検査のみの場合は当日 通過②現物検査に該当する場合 ・ 原則5-6日 ・ただし問題がある場合さ  らに時間延長

原則として当日中

・行政院農業委 員会動植物防 疫検疫局・経済部標準検 査局

1.日本が発行する『動物検疫証明書』 ・中文または英文で記入する ・製造工場の名称と住所 ・製品品名、数量、重量および製造期日 ・包含する動物性成分原料の動物種別 ・検疫証明書発行期日、場所、機関名称および  発行する検査者の氏名と押印 2.『輸入申請証明書』 3.船会社または航空会社の貨物受領書  (コピー) 4.税関通関申告書のコピー 5.パッキングリスト

行政院農業委員会動植物防疫検疫局 ・合格の場合

  『輸入動物検疫証明書』が発行される・不合格の場合  積み戻すまたは焼却

経済部標準検査局

・GAP、HACCP、施設登録など・規格・表示ラベル・合格の場合は、『輸入食品検験証明』・不合格の場合は、追加処理により条件をクリア できれば『輸入食品検験証明』が発行される

輸入際の検疫・衛生検査申請

受理

現場検査

燻蒸消毒

検疫実施

衛生検査

合格の場合不合格の場合

輸入通関

合格の場合不合格の場合

書類検査

現物検査

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(3)所要費用 台湾の港湾の営業時間は 8:30~17:30 であり、24 時間検疫・通関体制ではない。空

港は 24 時間体制である。 港湾の営業時間内(8:30~17:30)に行う検疫・検査費用は CIF 価格の 0.1%である。

空港の 24 時間検疫・検査を利用する場合は、時間外追加費用が必要となる(【表4-4】)。

【表4-4】輸入検疫・衛生検査所要費用

曜日 時間 費用

8:30~17:30 CIF 価格の 0.1%

6:00~8:30 17:30~22:00

200 元/件の追加費用

月曜日~金曜日

22:00~6:00(翌日) 2,000 元/件の追加費用

土日曜日・祭日 6:00~22:00 1,000 元/件の追加費用

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3.水産物の輸入検疫・衛生検査 (1)輸入検疫・衛生検査対象 生鮮・冷凍・冷蔵水産物が対象となる。

(2)所要書類 輸入者は、事前に以下の書類を用意して、検疫・衛生検査申請手続を行う。

①『動物検疫証明書』(日本側の発行) ②『検査申請書』 ③『輸入食品基本資料報告書』など

(3)手続 輸入する際に、検疫と衛生検査の 2 段階を経なければならない。 検疫は、行政院農業委員会動植物検疫局が行う。検疫が終了した段階で、食品衛生検査

が行われる。衛生検査は、経済部標準検査局が行う。衛生検査の基準は、①残留農薬、②

GAP、HACCP、施設登録など生産方法が一致しているかどうか、③個別品目の規格に一

致しているのかどうかである。 検疫は当日で完了するが、衛生検査は現物検査の無作為抽出に該当しなければ、書類検

査のみで、当日通過する。ただし現物検査の無作為抽出に該当した場合は、通常検査期間

は 5~6 日間である。 生鮮水産物と冷凍・冷蔵水産物では賞味期限が異なるので、以下で現物検査の無作為抽

出に該当した場合の検疫・検査手順を説明する。

1)生鮮水産物 生鮮水産物の場合は、賞味期限の関係から、経済部標準検査局は、まず書類を検査し、

書類の問題がなければ、輸入者に『食品輸入査験証明書』を発行する。輸入業者は『食品

輸入査験証明書』を持って通関する。通関が許可されたら販売できる。ただし、書類検査

後の現物検査により、衛生上の問題が見つかった場合、経済部標準検査局は販売を差し止

める。または販売が完了している場合は、次回の輸入に対して、書類検査ができなくなる

(P.56【表4-5】)。

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【表4-5】生鮮水産物の検疫・衛生検査の流れ

業務の流れ 管轄機関 必要とする書類および審査内容 所要日数

衛生検査は以下の2段階で行われる①書類検査②現物検査

・書類検査で合格した場合 『食品輸入査験証明書』が発行され、通関手続に 進む

・書類検査後の現物検査で不合格となった場合、 販売は差し止められる

経済部標準検査局

・書類検査は1日・現物検査は原則5~6日、 問題があった場合はさら に時間延長

・原則当日完了

・行政院農業委 員会動植物防 疫検疫局・経済部標準検 査局

1.日本が発行する『動物検疫証明書』2.『検査申請書』(通関用)3.『輸入食品基本資料報告書』など

行政院農業委員会所属支局

・疫病検査 ・合格の場合は衛生検査に進む ・不合格の場合は焼却または返送される

輸入際の検疫・衛生検査申請

受理

検疫実施

衛生検査

合格の場合 不合格の場合

販売

合格の場合

不合格の場合

書類検査

現物検査

不合格の場合合格の場合

輸入通関

販売差し止め

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2)冷凍・冷蔵水産物 冷凍・冷蔵水産物の場合は、生鮮より賞味期間が長いため、通常書類検査と現物検査が

行われたあと、通関が行われる。ただし、輸入港に適切な低温・冷蔵倉庫を確保できない

場合で、低温・冷蔵保管が必要とされる水産品については、経済部標準検査局は、輸入者

に『先行放行通知書』を発行する。輸入業者が『先行放行通知書』を持って通関する。通

関が許可されたら、食品を輸入者の保管倉庫に搬入する。ただしこの時点では、経済部標

準検査局の衛生検査がまだ済んでいないため、販売はできない(【表4-6】)。 経済部標準検査局が現物検査を行い、問題がなければ『輸入食品検験証明』が発行され

る。『輸入食品検験証明』が発行された時点で、初めて販売することができる。

【表4-6】冷凍・冷蔵水産物の検疫・衛生検査の流れ

(1)所要費用 台湾の港湾は 24 時間検疫・通関体制となっていない。ただし空港は 24 時間体制となっ

ている。港湾の営業時間内(8:30~17:30)に行う検疫・検査費用は CIF 価格の 0.1%である。空港の 24 時間検疫・検査を利用する場合は、時間外追加費用が必要となる(P.54【表4-4】)。

業務の流れ 管轄機関 必要とする書類および審査内容 所要日数

・書類検査は1日・現物検査は原則5~6日、 問題があった場合はさら に時間延長

衛生検査は以下の2段階で行われる①書類検査②現物検査

◆輸入港倉庫で保管する場合 書類検査、現物検査を受けてから、『輸入食品検験証 明』が発行され、通関手続へと進む◆輸入者倉庫で保管する場合 書類検査完了後、『先行放行通知書』が発行される。輸 入者は当該通知書を持って通関手続を完成させてから、 貨物を輸入者の低温倉庫に搬入する。現場検査が済んで から『輸入食品検験証明』を受け、初めて販売できる

・原則当日完了

・行政院農業委 員会動植物防 疫検疫局・経済部標準検 査局

1.日本が発行する『動物検疫証明書』2.『検査申請書』(通関用)3.『輸入食品基本資料報告書』など

行政院農業委員会所属支局

・疫病検査 ・合格の場合は衛生検査に進む ・不合格の場合は焼却または返送される

経済部標準検査局

輸入際の検疫・衛生検査申請

受理

検疫実施

衛生検査

輸入者倉庫搬入

販売

合格の場合

不合格の場合

書類検査

現物検査

輸入港倉庫で保管する場合

輸入通関

現物検査

輸入者倉庫で保管する場合

輸入通関

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4.生鮮植物の検疫 (1)検疫対象

生果実および野菜、苔藓類、栽培用の植物(苗、穂、葉、枝)、球根類および種子(食用

種子を除く)などを含む植物が対象となる。

(2)検疫手続 台湾の輸入業者は、『輸入植物検疫報験申請書』に、日本国政府が発行した『植物検疫証

明書』の正本を添付して検疫申請を行う。また種子、雑草などは、『輸入同意書』の添付も

必要である。 検疫にかかる所要日数は通常 48 時間である。ただし、輸出する前に、日本側で取得す

る『植物検疫証明書』に「燻蒸済み」または「○○害虫が付随していない」といった記載

があれば、検疫処理がもっと早くなる。 平日(月~土曜日)の検疫・検査費用は CIF 価格の 0.1%である。祝日・祭日の場合は、

特別費用が加算される。 輸入検疫にあたって、検疫局が残留農薬、病害虫や放射能に汚染されているかなどの検

査を行う。安全許容量を超えている場合は、不合格となる。ただし、病害虫である場合は、

再度消毒を施し駆除する措置がとられる。 検疫を経て、問題がなければ、検疫局から『輸入許可証』(Import Certificate)の交付

を受け、その後経済部標準検査局の衛生検査を受ける。合格すれば、『輸入食品検験証明』

が発行される。そして通関手続となる。 有害植物、病害虫が付着した植物や土壌、土壌が付着した植物などについては輸入禁止

となっている。必要であれば、事前に輸入許可を取得しなければならない(P.59【表4-

7】)。

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【表4-7】生鮮植物の輸入検疫手続の流れ

業務の流れ 主管機関 必要とする書類および検査内容 費用/所要日数

・『輸入植物検疫報験申請書』・『輸入植物検疫申告書』・日本が発行した『植物検疫証明書』・『輸入同意書』または『検疫条件函』 (一部の植物および繁殖用植物の場合)

・GAP、HACCP、施設登録など・規格・表示ラベル・合格の場合は『輸入食品検験証明』が発行される・不合格の場合は積戻すか焼却される

検査は約48時間

検査・検疫費は、CIFの0.1%となる。祝日・祭日の場合は特別費用が加算される

・原則5~6日・ただし問題がある場合、さらに時間延長

・経済部標準検査局

・行政院農業委員会動植物防疫検疫局の各支局

・疫病検査・放射能汚染、残留農薬検査 以上行政農業委員会の規定安全容量を超える場 合、不合格となる※ただし、病害虫の場合は、再度消毒を施し駆除し た後、安全確認されたら、合格証明証である『輸入 許可証』が発行される※輸出前に燻蒸済みといった証明を行うと、輸入検 疫処理が早くなる

輸入際の検疫・衛生検査申請

検査実施

合格の場合不合格の場合

書類検査

現場検査

検疫処理

再消毒廃棄

衛生検査

合格の場合不合格の場合

輸入通関

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5.加工食品の輸入・衛生検査 (1)検疫対象

台湾行政院衛生署の規定により、食品とは人の飲食または噛むに供するものである。冷

凍・冷蔵水産物、加工食品などを含む。

(2)所要資料 食品を輸入しようとした場合は、輸入者は、事前に以下の書類を用意しなければならな

い。 ①『動植物検疫証明書』

・動物性食品はすべて必要である(ただし缶詰を除く) ・植物性食品の場合は、その加工程度によって『植物検疫証明書』の提出する場合

がある。必要かどうかの確認は、行政院農業委員会植物検疫局に問い合わせる。 ②『検査申請書』

輸入しようとする食品の名称、生産国名を記入する。 ③『輸入食品基本資料報告書』

④健康食品(サプリメント)の場合は、行政衛生署の許可文書が必要となる。

(3)手続 『輸入食品査験弁法』によると、食品輸入時に、検疫と衛生検査の 2 つの段階を経なけ

ればならない。 検疫は、行政院農業委員会動植物検疫局が行う。検疫が終了した段階で、食品衛生検査

が行われる。衛生検査は、経済部標準検査局が行う。衛生検査の基準は、①残留農薬、②

GAP、HACCP、施設登録など生産方法に一致しているかどうか、③個別品目の規格に一

致しているかどうかである(P.61【表4-8】)。 衛生検査は、現物検査の無作為抽出に該当しなければ、書類検査のみで、当日通過する。

ただし現物検査の無作為抽出に該当する場合は、通常検査に要する期間は 5~6 日間であ

る。このため、輸入港に、適切な低温・冷蔵倉庫を確保できない場合、低温・冷蔵保管が

必要とされる食品について、経済部標準検査局は、輸入者に『先行放行通知書』を発行す

る。輸入業者が『先行放行通知書』を持って通関する。通関が許可されたら、食品を輸入

者の保管倉庫に搬入される。ただしこの時点では、経済部標準検査局の衛生検査が済んで

いないため、販売はできない。 経済部標準検査局が現物検査を行い、問題がなければ『輸入食品検験証明』が発行され

る。『輸入食品検験証明』が発行された時点で、初めて販売することができる。

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【表4-8】食品輸入検疫・検査手続の流れ

(4)所要費用 台湾の港湾は 24 時間検疫・通関体制となっていない。ただし空港は 24 時間体制となっ

ている。 港湾の営業時間内(8:30~17:30)に行い、検疫・検査費用は CIF 価格の 0.1%であ

る。 空港の 24 時間検疫・検査を利用する場合は、時間外追加費用が必要になる。

輸入検疫・衛生検査フロー 主管機関 必要とする書類及び審査内容 所要日数

・行政院農業委員会の所属支局・経済部標準検査局

・日本の『動植物検疫証明書』(一部の植物性産品は不要)・『検査申請書』(通関用)・『輸入食品基本資料報告書』・健康食品の場合は、行政衛生署の許可文書必要

・衛生検査は主に①書類検査、②現物検査の2段階。・検査主要内容:農薬残留/GAP/HACCP/施設登録/規格/表示ラベルなど

◆輸入港倉庫で保管する場合 書類検査、現物検査を受けてから、『輸入食品検験証明』が発行され、通関手続きへと進み◆輸入者倉庫で保管する場合 書類検査完了後、『先行放行通知書』が発行される。輸入者は当該通知書を持って通関手続きを完成させてから、貨物を輸入者の低温倉庫に搬入する。現物検査が済んでから『輸入食品検験証明』を受け、初めて販売できる

・現物検査は原則5~6日、問題があった場合はさらに時間延長

行政院農業委員会の所属支局

・原則当日中・疫病検査を行う・合格の場合は、衛生検査に進み・不合格の場合は返却、積み戻し

経済部標準検査局

輸入際の検疫・衛生検査申請

検疫

合格の場合

輸入者倉庫で保管する場合

衛生検査

輸入港倉庫で保管する場合

不合格の場合

輸入通関

販売

書類検査

現物検査

輸入通関輸入者倉庫搬入

現物検査

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6.輸入食品の表示ラベル審査・管理内容 (1)適用範囲 食品ラベルとは、容器または包装を用いる食品・食品添加物、および食品用洗浄剤はそ

の容器または包装に、中国語で明確に表示するものである。 表示方法は、『商品表示法』に従うべきであるが、ただし、その他の法律に比較して、そ

の他の法律がより厳格な規定が設けている場合は、その法律の方が重視される。

(2)表示内容 レベル表示は、一般的に以下のような表示内容が義務付けられている。ただし、輸入後

に、輸入した状態のままでは販売されず、その他の加工が施されたり、小分け包装し直さ

れたり、販売される食品については、中国語で表示しなくてよい。

【表4-9】ラベルの表示内容 【図4-1】ラベルサンプル

また、栄養成分の表示が義務付けられるようになってきている。ただしすぐにすべての

品目に求められるのではなく、毎年行政衛生署が新しい該当する品目を行政衛生署のホー

ムページにて公布する。輸出者は栄養成分表示を正しく表示しなければならない。 表示ラベルは、食品の輸入衛生検査の時点で、経済部標準検査局が審査する。表示ラベ

ルがなければ輸入できない。

・品名 ・内容物名称および重量、容量または数量

・食品添加物の名称 ・販売会社名、電話番号、住所、 ・輸入者名称、電話番号、住所 ・消費期限、製造年月日、保存期限 ・その他行政で指定された表記事項

栄養成分表示 熱カロリー、たんぱく質、脂肪等々

の項目

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Ⅱ.輸入通関 輸入検疫が終了してから、輸入通関という手順に入る。ここで台湾の輸入通関体制と手

続を紹介する。

【表4-10】台湾の主要税関

1.通関制度と手続

台湾では、輸入業者は、自家通関よりも代理通関の形式をとるのが、一般的である。代

理通関は、①専門通関業者、②物流業者の兼業の 2 つのパターンがある。

専門通関業者または物流業者の兼業通関にしろ、日本と同じように、現在コンピュータ

もよる EDI 通関が主要方式である。ただし、実際にはコンピュータ申告により受付される

と通関書類を提出し税関職員が審査する形式であり、日本のように申告してコンピュータ

により結果が即時に回答されるまでには至っていない。 書類審査が通り、関税等を納付すれば引取りが可能となるが、税関審査は動植物検疫や

食品衛生関係のチェックが済んでいることが前提となる。また、引取りの際には貨物検査

(書類と貨物との照合)が行われるのが原則である。 通関時間は、通常は通関申告してから 1 日で済む。通関業務は、法律で規定されている。

方法にもよるが実際の運用では、かなり恣意的に行われることもある。通関は 1 週間かか

る場合もあれば、半日で通関できる場合もある。品目によって対応が違う。例えば、日本

のやまいもは台湾では独占販売状況にある。この検疫・通関はどちらかといえばスムーズ

に行われる(【表4-10】、P.64【図4-2】)。

関税局名称 住所 電話番号

台北税関(空港) 中正機場郵局第 111 号信箱 03-383-304(24 時間対応)

基隆税関 基隆市港西街 6 号 02-2420-2951

高雄税関 高雄市鼓山区捷興一街 3 号 07-561-3251

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【図4-2】輸入通関の流れ

輸入者

通関業者 物流業者のオンライン申請

ペーパーによる申請 オンラインによる申請

税関職員受付

検査

EDI 通関場合書類補足

税関 EDI 通関システム

関税計算

納税

輸入許可

貨物引取り

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2.納付税および費用の仕組み (1)関税の仕組み 産品を輸入する際には、関税が課される。関税の計算は、課税価格に関税率を掛けて算

出されるものである。 台湾の場合は、課税価格は CIF(Construction Industry Federation)価格(商品価格+運

賃+保険料)となる。 つまり、関税=CIF×関税率

1)課税価格 課税価格は、売主から買主に発行された商品仕入書(インボイス)に記載される。また、

貨物価格に課せられる従価税と重量等の数量に課せられる従量税の2種類があるが、商品

によって両方適用される場合には高いほうが採用される。ただしほとんどの場合、従価税

が適用される。 2)関税率 貨物をどの関税率に分類するかは、日本も含め世界的に共通なものであり、税関コード

分類である Harmonized System(HS 分類)に基づいている。 2002 年 1 月の WTO 加盟により、台湾の関税率は、概ね 7.5%から 35%の範囲となって

いる。ただし、ココヤシ・なし・ぶんたん・バナナ・パイナップル・マンゴー・かきなど

9 項目については、国内産業保護を目的とする関税割当があり、割当外の場合は 60%から

184%の高税率が適用される。今後も現地の産業保護といった観点から、これらの品目は

引き続き高い関税を維持すると考えられる。

(2)その他の税と費用 関税以外に、一般的に貿易開拓サービス費、営業税、などのその他の税関徴収規定手数

料が徴収される。また、産品によって課税項目が異なる。例えば、飲料品の場合は、貨物

税が課される。タバコおよび酒の場合は、健康福利付加税が課される(P.66【表4-11】)。

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【表4-11】輸入時に納付する税金・費用

内容・定義 税率 税収計算

従価税で課税される輸入貨物について、その課税対象価格は、当該輸入貨物の取引価格を計算根拠とする

品目ごとに異なる CIF×関税税率

貿易開拓サービス費 0.0415% 関税課税対象価格×0.0415%

貨物税 農産物・食品は飲料品のみが対象 品目ごとに異なる (関税課税対象価格+輸入関税)×当該貨物税税率

健康福利付加税・輸入タバコ及び酒が対象・課税基礎単位:重量・容量

成分含量によって異なる

営業税 5%(関税課税対象価格+輸入関税)×5%

税関徴収規定手数料

税名・費用名称

関税

輸出入運搬具および輸出入貨物に対する特別サービスおよび各項証明の審査発行に対し、税関徴収規定手数料規定に従って別途手数料を徴収する