第4章 中国の輸入検疫・通関手続 - maff.go.jp...-54- 第4章...

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54第4章 中国の輸入検疫・通関手続 ◎ 本章のポイント 本章は、実際に産品が国際輸送を経て、中国の港に到着してからの検疫・通関手続の 紹介である。本来、輸入検疫・通関手続は、中国側の輸入者が手配または自ら行う。た だし、この情報を輸出者側が知っておくことは、円滑な貿易のためにも必要であるし、 第1、2、3章で提起した日本側輸出者がやらなければならないことの理解にも役立つ。 日本の輸出者は、この章を参照して、日本側で用意しなければならない書類や手続の 重要性を再確認することができる。 本章は以下の 2 つで構成されている。 Ⅰ.輸入検疫・検査手続 Ⅱ.輸入通関 Ⅰ.輸入検疫・検査手続 ここでは、現地での検疫手続を品目ごとに解説し、そこで必要とされる書類、所要 時間などを明確にしている。 生きている動物(水生動物を含む)は、輸入隔離期間が設けられており、輸入でき るまで 1 ヵ月以上かかるため、実際の輸入は難しい。また食品の輸入は、すべて『衛 生証明書』が必要であり、また食品ラベルの取得は申請から許可まで約 2 ヵ月かかる ことは理解しておくべきである。 動植物の輸入検疫、食品衛生検査、食品表示ラベルの審査は、中国検験検疫局によ って行われるため、検験検疫局の支局の電話番号と住所を示している。 Ⅱ.輸入通関 ここでは、農林水産物・食品の特性(生鮮・賞味期限などの制限)を考慮し、港湾 到着前に輸入申告を可能とする「予備申告制度」を紹介している。 通関手続を行う際の担当部署、必要書類、所要時間などについて示している。 輸入の際に、必要とされる納付税および費用についても示している。これらを参照し て、輸入コストを把握できる。

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Page 1: 第4章 中国の輸入検疫・通関手続 - maff.go.jp...-54- 第4章 中国の輸入検疫・通関手続 本章のポイント 本章は、実際に産品が国際輸送を経て、中国の港に到着してからの検疫・通関手続の

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第4章 中国の輸入検疫・通関手続

◎ 本章のポイント

本章は、実際に産品が国際輸送を経て、中国の港に到着してからの検疫・通関手続の

紹介である。本来、輸入検疫・通関手続は、中国側の輸入者が手配または自ら行う。た

だし、この情報を輸出者側が知っておくことは、円滑な貿易のためにも必要であるし、

第1、2、3章で提起した日本側輸出者がやらなければならないことの理解にも役立つ。

日本の輸出者は、この章を参照して、日本側で用意しなければならない書類や手続の

重要性を再確認することができる。

本章は以下の 2 つで構成されている。

Ⅰ.輸入検疫・検査手続

Ⅱ.輸入通関

Ⅰ.輸入検疫・検査手続

ここでは、現地での検疫手続を品目ごとに解説し、そこで必要とされる書類、所要

時間などを明確にしている。

生きている動物(水生動物を含む)は、輸入隔離期間が設けられており、輸入でき

るまで 1 ヵ月以上かかるため、実際の輸入は難しい。また食品の輸入は、すべて『衛

生証明書』が必要であり、また食品ラベルの取得は申請から許可まで約 2 ヵ月かかる

ことは理解しておくべきである。

動植物の輸入検疫、食品衛生検査、食品表示ラベルの審査は、中国検験検疫局によ

って行われるため、検験検疫局の支局の電話番号と住所を示している。

Ⅱ.輸入通関

ここでは、農林水産物・食品の特性(生鮮・賞味期限などの制限)を考慮し、港湾

到着前に輸入申告を可能とする「予備申告制度」を紹介している。

通関手続を行う際の担当部署、必要書類、所要時間などについて示している。

輸入の際に、必要とされる納付税および費用についても示している。これらを参照し

て、輸入コストを把握できる。

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Ⅰ.輸入検疫・検査手続

1.輸入検疫・衛生検査が必要

中国で農林水産物・食品を輸入する際には、動植物検疫、商品検査、衛生検査という『三

検』を受けなければならない。これらの業務は検験検疫局が実施する。(【図4-1】、【表

4-1】)。

【図4-1】中国検験検疫局の分布

【表4-1】中国の主要検疫所リスト

地区 所名 電話番号 住所

北京 国家質量監督検験検疫総局 010-8226-2114 北京市海淀区馬甸東路 9 号 北京 北京出入境検験検疫局 010-5861-9042 北京市朝阳区甜水园街 6 号 天津 天津出入境検験検疫局 022-2813-7041 天津市経済技術開発区第二大街兆発新村 8 号 上海 上海出入境検験検疫局 021-6854-9999 上海市閔行区金都路 3688 号輔楼 3 楼 広東 広東出入境検験検疫局 020-3829-0073 広州市珠江新城花城大道 66 号 江蘇 江蘇出入境検験検疫局 025-2345-333 南京市中華路 99 号 湖北 湖北出入境検験検疫局 027-8749-2150 武漢市漢口万松园路 3 号 深圳 深圳出入境検験検疫局 0755-8339-1247 深圳市福田区福強路 1011 号検験検疫大厦 珠海 珠海出入境検験検疫局 0756-333-4253 珠海市九洲大道東中国検験検疫大楼 吉林 吉林出入境検験検疫局 0439-521-3905 臨江市火東站西側 海南 海南出入境検験検疫局 0898-6863-3811 海口市海秀西路 165 号 陜西 陜西出入境検験検疫局 029-8536-5700 西安市含光北路 10 号 四川 四川出入境検験検疫局 028-8299-8395 成都市一環路南四段 28 号

吉林出入境検験検疫局

海南出入境検験検疫局

広東出入境検験検疫局

四川出入境検験検疫局

陜西出入境検験検疫局

江蘇出入境検験検疫局

上海出入境検験検疫局

天津出入境検験検疫局

北京出入境検験検疫局

湖北出入境検験検疫局

深せん出入境検験検疫局

珠海出入境検験検疫局

国家質量監督検験検疫総局

吉林出入境検験検疫局

海南出入境検験検疫局

広東出入境検験検疫局

四川出入境検験検疫局

陜西出入境検験検疫局

江蘇出入境検験検疫局

上海出入境検験検疫局

天津出入境検験検疫局

北京出入境検験検疫局

湖北出入境検験検疫局

深せん出入境検験検疫局

珠海出入境検験検疫局

国家質量監督検験検疫総局

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2.『検疫許可証』の取得

検疫許可証制度は、中国の農業、林業、畜業、漁業の生産者保護、疾病防疫、生態系保

護、消費者保護のため、外来有害生物のリスク低減を目的に、検疫許可証管理に該当する

品目(P.17【表1-9】を参照)に対する審査制度である。 検疫許可証申請を行う企業は、輸入しようとする産品に合わせて、『中華人民共和国進境

動植物検疫許可証申請表』、企業法人営業免許などの資料を用いて、検験検疫局に申請手続

を行う(P.57【図4-2】)。

【表4-2】『検疫許可証』取得タイミング

品目 申請時期

動物および動物産品 貿易輸入契約を締結する前、輸入する 15 日前までに

生鮮果実類 貿易輸入契約を締結する 7 日前までに

申請資料が正しく記入されており、資料がすべて揃えば、5 営業日目に初審結果が出る。 初審に合格すれば、 終の許可機関である国家質量監督検験検疫総局は、初審を行った

検験検疫局から報告資料を受け取り、30 営業日以内に結果を出す。合格すれば、『検疫許

可証』が発行される。 また『行政許可法』の実施によって、2004 年 4 月 1 日から検疫審査許可手続費用が無

料となった。 『検疫許可証』の有効期間は 3 ヵ月または一時輸入に適用される。生きている動物以外

では、全ての『検疫許可証』は、年度(中国の年度末は 12 月である)を越えて使用する

ことはできない。ただし、中国に輸入後、加工してから再輸出する肉類については、年度

単位で発行されることがある。 検疫許可証の内容は、できるだけ貿易契約書に盛り込んだほうがよい。取得した検疫許

可証については、以下の状況となった場合は無効とされ、新たに申請しなければならない。 (1)実際に輸入された産品が、申請したものと異なるか、または輸入数量が輸入許可

数量の 5%を超えていた場合 (2)輸出国または地域を変更した場合 (3)輸入港および中国港までの輸送経路を変更した場合 (4)生産・加工・使用目的・保存内容を変更した場合 (5)有効期間が切れた場合 (6)許可輸入数量に達した場合 (7)国家法律による輸入禁止といった公告が発行された場合 (8)その他審査許可の規定・内容に違反した行為があった場合

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【図4-2】動物検疫許可証の審査手順

申請者の資格

初審機関許可機関・所要日数

動物または動物遺伝物資輸入の場合

・『中華人民共和国進境動植物検疫許可証申請表』・申請企業の企業法人営業免許証のコピー

使用地直属検験検疫局

輸入後定めた企業・場所において生産、加工、保存する動物産品

・『中華人民共和国進境動植物検疫許可証申請表』・申請企業の企業法人営業免許証のコピー・申請企業と指定して企業の契約※分割して輸入する場合は、1回目の『検疫許可証』を添付する

輸入港所属検験検疫局及び目的地検験検疫局

輸入後定めた企業・場所に生産、加工、保存する必要がない動物産品。たとえば、動物性飼料、添加物など

・『中華人民共和国進境動植物検疫許可証申請表』・申請企業の企業法人営業免許証のコピー・動物性飼料の場合は、中国農業部が発行した『産品登録証』のコピー※分割して輸入する場合は、1回目の『検疫許可証』を添付する

禁止輸入製品で、科学研究など特殊な需要の場合『進出境動植物検疫法第5条第1款』

・書面申請(数量、用途、輸入方式、輸入後の防疫措置)・科学研究の立案報告・関連主管部門が批准した立案証明文書・『中華人民共和国進境動植物検疫許可証申請表』

『検疫許可証』

・国家質量監督検験検疫総局

※初審機関からの資料を受け取ってから30日営業日以内

・『検疫許可証申請未獲批准通知単』

輸入港所属検験検疫局

申請

・書類を受け付けてから、5営業日で初審結果が出る・『進境動物臨時隔離検疫場許可証』※検疫管理が必要な輸入動植物は、場合によって、生産加工保管企業の審査報告書が必要

審査・許可

申請用書類

・独立法人資格・貿易契約または協議を締結している企業

初審所要日数と結果

・申請資料返却

審査結果

合格

不合格

合格

不合格

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3.生きている動物の輸入検疫

1)適用範囲 2006 年 4 月現在、日本から輸入できるのは馬のみである。

2)手続(【図4-3】) 生きている馬およびその遺伝物質の輸入の際は、隔離が必要である。輸入者は、まず検

験検疫局に隔離検疫場申請を行い、『進出境動物臨時隔離検疫場許可証』を取得しなければ

ならない。 輸入業者が輸入検疫手続を行う際には、検疫申請書以外に日本の農林水産省などの監督

機関が発行した『動物検疫証明書』、中国検疫局が発行した『動植物検疫許可証』を提出し

なければならない。書類が完全に揃えば、1 営業日で結果が出る。 輸入港に到着してから隔離検疫が課されるため、実際に取引ができるまでには 1 ヵ月以

上かかると考えたほうがよい。

【図4-3】馬および動物遺伝物質の輸入検疫手続の流れ

手続の流れ 管轄機関 必要とする書類および審査内容 所要日数

・『入境貨物報検単』・貿易契約書((品名、規格、数量、重量、価格の審査)・『進境動植物検疫許可証』・『検疫証明証』(日本農林水産省などの関連官庁機関が発行)

・輸送証明書、日本関連官庁が発行したの『検疫証明書』・活禽に対して臨床検疫・証書の確認

・合格の場合は『入境貨物通関単』が発行される・不合格の場合は、返送または処分される

ただし輸入動物遺伝物質の場合は「動物遺伝物質管理方法」による

30日間

『活禽の中国輸入検疫及び衛生条件』(日中間協定)に基づいて検査

30日隔離期間内で行われる

・『検験検疫証明書』(陰性の場合)

・処理(陽性の場合、『中華人民共和国動植物検疫法』およびその実施条例に基づく)

1営業日

5営業日

輸入港検疫所動検処

輸入時の検疫申請

検査

輸入港現場検疫

合格の場合

不合格の場合

隔離検疫

試験室検疫

結果

合格の場合

不合格の場合

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4.生きている水生動物の輸入検疫

1)適用範囲 魚(魚卵、稚魚)、えび、かに、貝(両棲動物、爬虫類動物)などを含む活水生動物であ

る。

2)手続(P.60【図4-4】) 生きている動物の輸入検疫と同様に、中国側の輸入者は、輸入前に輸入検疫のための臨

時隔離場所の申請を行う。 輸入者は、検疫申請書以外に、日本の農林水産省などの監督機関が発行した『動物検疫

証明書』、中国検疫局が発行した『動植物検疫許可証』を提出しなければならない。書類が

完全であれば、7 営業日で結果が出る。 書類検査、臨床検査などを経て、問題がなければ通関許可書(『入境貨物通関単』)が発

行され、通関となる。貨物が通関されてから、さらに約 30 日間の隔離検疫が課される。

隔離検疫期間中に、サンプル抽出検査などが行われ、検査結果が陰性であれば、『入境貨物

検験検疫証明書』が発行される。この『入境貨物検験検疫証明書』は、 終市場販売に必

要とされる書類であるから、大切に保管する必要がある。一方、陽性であれば、『入境貨物

検験検疫処理通知単』が発行され、返送または観察機関に収容される。 以上のように、船舶が到着してから 終的に市場販売するのに必要な『入境貨物検験検

疫証明書』が発行されるまで、40 日はかかると考えたほうがよい。こうした条件から、活

水生動物の輸入は難しいと考えられる。

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【図4-4】活水生動物の輸入検疫手続の流れ

検疫フロー 管轄機関 必要とする書類および審査内容 所要日数

・『入境貨物報検単』(貿易契約内容と照合)・貿易契約書(品名、規格、数量、重量、価格の審査)・『進境動植物検疫許可証』・『動物検疫証明書』(日本農林水産省などの関連官庁機関が発行)

・合格の場合は『入境貨物通関単』を発行・不合格の場合は返送または焼却、観察とされる

税関

臨時隔離検疫場で隔離検疫

『進出境動物、動物産品検疫サンプル抽出管理方法及びそのサンプル標準に関する通知』に基づいてサンプル抽出

『活禽の中国輸入検疫及び衛生条件』(日中間協定)に基づいて検疫

・『入境貨物検験検疫証明書』(陰性の場合)

・『入境貨物検験検疫処理通知単』(陽性の場合)返送または観察とされる

・輸送送り状の確認(発送人、受取人、品名、数量、重量、包装種類及び数量)、『入境貨物報検単』の記載と同様・輸送方式、線路の確認 『進境動植物検疫許可証』の記載と同様でなければならない・『動物衛生証書』(日本農林水産省の証明)・臨床検査・包装の種類、数量、死亡の有無など

30日間

7営業日

検疫局動検処水生動物科

検疫局動検処水生動物科

輸入時の検疫申請

検査

現場検疫

合格の場合

不合格の場合

隔離検疫

結果

合格の場合

不合格の場合

通関

サンプル抽出

サンプルの処理

サンプルの検疫

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5.動物性産品および水産品の輸入検疫・衛生検査

1)適用範囲

各種動物性産品、水産品を含む。

2)手続(P.62【図4-5】) 中国で食用畜産物の販売、生産、加工、在庫保管を行おうとする企業は、輸入食肉産品

を取扱う獣医衛生基本条件を整えなければならない。検疫局の動物検疫処が輸入者に対し

て資料審査、現地検査を行い、条件を満たした保管冷蔵倉庫、および加工工場に対して認

定登録を行う。つまり輸入者は、規定に定められた衛生条件に一致した物流施設を整える

ことが必要となる。 輸入する際には、輸入検疫が行われる。輸入者は、検疫申請書とともに、検疫局に対し

て輸出国である日本の農林水産省などの監督機関が発行した『動物検疫証明書』、『原産地

証明書』、中国検疫局が発行した『動植物検疫許可証』を提出しなければならない。すべて

の必要書類を揃え申請すれば、5~13 営業日で判定が出る。ただし、実験室検査が求めら

れる場合は、さらに 5~10 営業日がかかる。 検査結果が合格であれば、検疫局から『衛生証書』または『入境貨物検験検疫証明書』

が発行される。

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【図4-5】動物性産品および水産品の輸入検疫手続の流れ

業務の流れ 管轄機関 必要とする書類および審査内容 所要日数

・貿易契約書または協議書・領収書・送り状、受領書・梱包明細・『検疫証明書』の正本 (日本の農林水産省などの関連官庁機関が発行)・『原産地証明書』・『中国進境動植物検疫許可証』など

・『入境貨物調離通知単』※輸入港検疫局から受け取る

・貨物と申請書記入の相違有無、包装検査、腐敗変質の 有無など

・産品の色、光沢、粘度、弾力性、組織状態、臭いなど

・理化指標、微生物指標

『進境動植物検疫許可証』を発行した際に、定めた加工工場での生産・保存について検疫監督を行なう

検査必要期間は普通の場合5~13営業日

実験室検査が必要場合はさらに5~10営業日延長合格の場合

  『衛生証書』あるいは『入境貨物検験検疫証明』不合格の場合  『検験証書』(積戻し用、返品用)あるいは  『入境検験検疫処理通知書』(廃棄処分用)

輸入港検疫局動検処産品科

申請事前準備

検験検疫申請

検査実施

現場検査

官能検査

実験室検査

検査結果通知

合格の場合

不合格の場合

検疫監督管理

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6.生鮮植物(野菜・果物など)およびその産品の輸入検疫 1)適用範囲 ・糧食・果物などの植物およびその産品

・種子、苗木およびその他繁殖材料 ただし、現在日本から中国へ輸出できる果物は、りんごとなしのみである。

2)輸入検疫手続(P.64【図4-6】) 輸入者は、『入境貨物報検単』(『検疫申請書』)とともに、検疫局に対して日本の農林水

産省などの監督機関が発行した『植物検疫証明書』の原本、『原産地証明書』、『衛生証明書』、

さらに中国の検疫許可証管理品目(P.17【表1-9】)に該当した場合は、中国検疫局が発

行した『進境動植物検疫許可証』を提出しなければならない。 種子、苗木およびその他繁殖材料の場合は、輸入者が事前に取得した『引進林木種子苗

木和其他繁殖材料検疫審批単』(林業部の発行)を提出する(天然土壌が付いていてはなら

ない)。 書類検査を経て試験室検査が必要とされる場合、主な検査内容は次のとおりである。 ・サンプルの抽出検査で有害生物有無を確認 ・安全衛生検験(繁殖材料除外) ・品質検験

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【図4-6】生鮮植物(野菜・果物など)およびその産品の輸入検疫手続の流れ

業務の流れ 管轄機関 必要とする書類および検査内容

・『入境貨物報検単』(『検疫申請書』)・『進境動植物検疫許可証』の原本 (果物、糧食など国家質量監督検験検疫総局の許可が必要とする植物または植物の産品の場合)・日本国政府機関が発行した『植物検疫証明書』(原本)・『原産地証明書』・品質証書(糧食などの場合)・『衛生証明書』(糧食、果物の場合)・貿易契約書などの貿易関係資料・輸送受領書あるいはパッキングリスト・代理報検委託書(代理検疫の場合)・その他の書類

書類の審査(各種書類の一致性)

・輸入港検疫局・目的地検疫局

輸入される植物に対して、積卸し荷役、輸送、保管、加工過程で監督管理が行われる

合格の場合  『入境貨物検験検疫証明』、『衛生証書』あるいはは『検験証書』不合格の場合  『植物検疫証書』あるいは『検験検疫処理通知書』(有害生物が発見された場合)  『入境検験検疫処理通知書』(安全衛生検験不合格の場合)  『検試証書』(品質検査不合格の場合)

・輸送道具、外装の検査・貨物の検査(腐敗、異臭、土壌など)・植物性包装材料、敷物は中国の進境植物検疫の 要求に達しているのかの検査・サンプル検査

入港検験検疫局(ただし、大量バラ貨物、腐敗しやすい貨物以外のものついては、到着目的地検疫局で検疫手続きも可能)

申請事前準備

輸入際の検疫申請

検査

現場検査

実験室検査

結果

合格の場合

不合格の場合

検疫監督管理

申請受理

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7.加工食品の輸入・衛生検査

1)適用範囲 輸入食品(飲料、酒類、糖類を含む)、食品添加物、食品容器、包装材料、食品製造器具

および設備が対象となる。中国の輸入食品は 22 類に大きく分けられ、20,000 種類にわた

っている。国家出入境検験局は、輸入食品の衛生、品質、監督管理を行なっている。

2)手続(P.66【図4-7】) 輸入者は、輸入する前に、輸入食品の品質証書、『原産地証明書』、『衛生証明書』、農薬

および燻蒸剤、添加物使用証明書(以上、日本国内輸出者による提供)を用いて、検疫局

に衛生検査申請を行う。 また、包装済みで、そのまま販売される食品については、事前に中国語表示ラベルの準

備が必要とされる。表示ラベルは、『食品標簽通用標準』(『食品表示ラベル通用標準』)に

従って表示しなければならない。輸入前に検疫局にてその認可証書『進出口食品標簽審核

証書』を取得する(手続は次項『輸入食品の標示ラベル審査・管理内容』を参照)。 衛生検査は、通関前の書類審査と通関時の現物検査の 2 段階に分けて行われる。書類審

査に問題がなければ、『衛生検験放行通知単』という合格通知書が発行され、輸入通関が開

始される。 現場検査は通関と同時に行われる。保税上屋などで実施されるのが普通である。検査の

結果に異常がなければ、『衛生証書』という書類は発行される。『衛生証書』を受領した貨

物のみ国内で販売できる。

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【図4-7】輸入加工食品の衛生検査手続の流れ

業務の流れ 管轄機関 必要とする書類および審査内容

・品質証書・原産地証明証・衛生証明書・農薬及び薫製剤、添加剤使用証明書・其の他必要とする書類※包装食品の場合、事前に中国語の表示ラベルおよび『進出口食品標簽審 核証書』の提出

・提供された輸入食品表示ラベル『進出口食品標簽審核証書』と 衛生検査する提出した表示ラベルとは一致しているかどうかを 確認

・合格の場合は『衛生検験放行通知単』が発行される

・書類検査合格の場合は、通関手続に入り、同時に現場検査が行 われる・通関手続は「第4章Ⅱ.輸入通関」を参照

・現物検査は、現場衛生学調査と衛生監督が行われる

・試験室検査となった場合は以下のような業務が行われる ・サンプル抽出 ・中国の食品衛生標準及び衛生要求に、日本の食品衛生状況を参  照し、貨物の輸送状況、保管状況及び現場監督状況によって試  験項目を確定し、試験室で検査を行なう

・合格の場合は『衛生証書』が発行される

・不合格の場合は返却、焼却及び他の処理

・不合格の場合は、積み戻すまたは書類を補足する

検験検疫所

資料準備

衛生検査申請

書類審査

合格の場合

不合格の場合

現物検査

試験室検査

検査場搬入

検査結果

合格の場合

不合格の場合

通関手続現場検査

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8.輸入食品の表示ラベル審査・管理内容

1)手続および管理部署 中国は輸入食品の表示ラベルについて審査制度をとっており、事前に『輸出入食品ラベ

ル審査証書』の取得が必要である。その審査標準は国家標準として定められている。(P.68【図4-8】)

国家出入境検験検疫局が輸出入食品表示ラベルの管理にあたっており、食品ラベルの審

査、許可、証明証の発行を行う。

1)所要費用 表示ラベル審査費用(許可証を含む)は、国家改革委員会、財政部が発行した『輸出入

検験検疫費用徴収方法』に基づき、1ラベル当たり 300 元(約 4,500 円、1元=15 円で

換算)となる。

3)取得所要時間 表示ラベルの許可取得にあたっては、初審機関が受領した日から、すべての審査が終了

し許可証が発行されるまでに、約 2 ヵ月かかる。

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【図4-8】輸入食品表示ラベル申請手続の流れ

業務の流れ 管轄機関 必要とする書類および審査内容 所要日数

・『食品標簽審核申請書』・食品レベル設計説明および使用に適切な説明資料・食品ラベルに提示されている内容の説明資料・食品ラベルの見本7枚(正式中国語の表示)、または見本の 提供ができない場合、代表的な写真を提供・生産メーカーおよび販売業者の営業ライセンス・日本における販売証明資料または原産地証明・その他の資料・実物サンプルの用意(ラベル検査に使用される)

輸入者所在地検験検疫局が国家検験検疫総局に以下のものを添付して発行許可を申請・許可申請書・初審記録・表示ラベルのサンプル・其の他資料

・輸入者所在地検験検疫局 から国家検験検疫総局に 送付する日数は約10日間

中国の法律・法規及び標準に基づいて審核する。主な内容は以下のとおり・サンプル検査・栄養成分の検査・機能の検査・表示ラベルの形式、設計、内容品質説明の正確性の審査

・合格の場合は『進出口食品標簽審核証書』が発行される

・不合格の場合は『進出口食品標簽審核不合格通知単』が発行さ れる

・合格した表示ラベルに対して国家検験検疫総局が公布する

輸入者所在地検験検疫局

・検験検疫局は以下の業務を行う・『進出口食品標簽審核受理決定書』を申請者に発行・『食品標簽審核検測送様通知単』(サンプル送付通知書)を 申請者に送付・表示ラベルの形式、設計、内容品質の説明を受け・費用の指示・審査を行う

・資料が不備の場合、5 営業日内に申請者に通 知。通知がなければ、 受理するとして見なす・トータルで約1カ月

国家検験検疫総局

・約20営業日

申請書類の準備

ラベル申請・受領

初審審査

初審結果

発行許可申請

実験室検査

合格の場合

不合格の場合

公布

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Ⅱ.輸入通関

中国の法律は粗く、たとえば税関関係の法律を例にとると、日本では関税法、通関業法

などの法律、施行令、施行規則などが策定され、『関税六法』といった本や通達集などを読

むと通関のことはほぼわかるのに対して、中国は関税法と輸出入関税条例しかなく、条例、

弁法(方法)・規則・通知がばらばらに出されて、体系的にまとまっているとは言い難い。

【図4-9】中国の税関分布

満州里税関

税関総局

★   天津税関

  ●

  ●

  石家庄税関●

 太原税関

呼和浩特税関

    ●

銀川税関

   ●

西安税関

  ●

  蘭州税関

  ●

西寧税関

   ●

ラサ税関

   ●

昆明税関

貴陽税関

  ●

重慶税関

成都税関

    ●

鄭州税関

南寧税関

   ●

  ●

湛江

税関

  ●

海口税関

江門

税関

   ●

 ●

拱北

税関

深? 税関

 黄浦

 税関

 ●

広州

税関

● ●汕頭税関

●厦門税関

●福州税関

●寧波税関

杭州税関●

●南昌税関長沙税関

  ●

●武漢税関

●上海税関

南京税関

●合肥税関

  ●

●青島税関

大連税関

瀋陽税関

●長春税関

ハルビン税関

 ●

ウルムチ税関

    ●

長沙税関

深セン税関

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1.予備審査制度の利用

中国は日本と同じように、貨物が港に到着する前に通関を始めることができるような予

備審査制度を導入している。予備審査制度とは、輸入申告前に予め税関の輸入審査を済ま

せておくことにより、輸入申告を行った際には即許可となるなど、貨物の引取りを早く行

うことができる制度である。 鮮度を重視する農林水産物・食品は、この制度を活用することが望ましい。

2.通関は輸入港で行うのか、目的地で行うのか

通関場所を輸入港とするか、輸入者所在地の 寄り税関指定場所とするかを決めなけれ

ばならない。 輸入所在地の 寄り税関で通関を行う場合は、貨物を輸入港から指定場まで保税輸送す

る必要がある。 中国の税関は、保税制度を悪用した密輸入を防ぐために、保税輸送貨物に対して厳格な

管理監督を行っている。これは主に保税輸送申請手続に反映されている。 【図4-10】のように、輸入者の所在地 寄り税関で保税輸送許可を取得することが

必要となる。さらに到着港での保税輸送申請も必要である。このため手続は煩雑で、時間

と手間がかかる。貨物到着港の税関で通関する場合は、保税輸送申請のような手続が不要、

本通関手続となる。 農林水産物・食品の輸入通関は、検疫手続も考慮すると、貨物が到着する港や空港で行

うことを薦める。

【図4-10】保税輸送の手続

輸入者 通関しようとする税関 (輸入者所在地税関)

貨物到着港の税関

① 輸入通関用関係書類を提出し、保税輸送

を申請する

② 審査を経て、「関封書」が引渡される

③ 発送地(到着港)税関に「関封書」および

保税輸送申請書を提出する

④ 保税輸送の許可を受け、保税輸送を行う

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3.通関手続

中国の輸入通関は税関への申告、税関審査、納税、許可の4つの段階を経て行われる。

(P.72【図4-11】、P.73【図4-12】) 通関申請を行うためには、①基本書類、②特殊書類、③予備書類が必要であり、輸出者、

輸入者によって事前に準備されなければならない。 ①基本書類とは、輸入する商品および商品の輸送資料である。 ②特殊書類とは、関係法律が規定する証明書である。たとえば関税割当証明書、動植物検

疫関係の検疫許可証、衛生証明書などがある。 ③予備書類とは、税関が必要な場合に審査用に使う書類である。たとえば、貿易契約書、

原産地証明証、工商営業許可証などである。 また、一般的には税関審査は、ヤードなど税関の指定した監管場にて行われる。ただし

産品の性質により、指定した監管場以外で検査を行うこともある。 船舶または航空機が到着したら、貨物は監管倉庫へ搬入される。国際輸送を行うフォワ

ーダー企業は、輸入者に到着案内を行う。輸入者は、衛生検疫などの検疫手続を検験検疫

所に申請し、通関に必要とする動植物検疫、食品衛生書を取得する。 検疫手続が完了した後、通関業者に依頼して、税関に対し輸入申告を行う。税関は、輸

入申告に対して、書類、貨物審査を行う。問題がなければ納税書が発行され、定められた

税額を税関が指定した銀行口座に振り込むと、 終の通関許可となる。通関された産品は

輸入者によって引き取られるか、または通関業者の手配で輸入者が指定した場所まで配達

される。 ただし、一部の動植物については、その後に指定した監督場所で検験検疫所の隔離検疫

を受けなければならない。規定した検疫期間が経過して問題がなければ、検験検疫所から

『衛生証明書』または『入境貨物検験検疫証明証』が発行され、初めて販売できることに

なる。

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【図4-11】輸入検疫・通関手続の流れ

業務の流れ 業務主体 必要とする書類または検査内容 所要日数

輸入者またはその代理人フォワーダー

・『到着通知書』を受け取る・通関準備(自家通関の場合)・『通関委託書』(専門通関の場合)

1日

代理通関業者または入力代理業者 『報関単』(輸入申告書)

輸入業者または代理通関業者

・『報関単』・輸入許可書など(輸入制限品目の場合)・梱包明細、伝票など・貨物引渡証書・商品検査、動植物検疫、食品衛生書など・貿易契約書など税関が要求する書類

輸入業者または代理通関業者

輸入業者が手配した物流業者または輸入業務を代行したフォワーダー

「第4章Ⅰ.輸入検疫・検査手続」を参照

1日または2日

1日

「第4章Ⅰ.輸入検疫・検査手続」を参照

税関

・全量検査、サンプル検査、外形検査など・輸入しようとする産品の内容、原産地、 貨物情況、数量、単価など・密輸入の有無・関税率の確定など

船会社などのキャリア

船舶到着

CFS、CYまたは空港内監管倉庫へ搬入

輸入者に到着案内

税関端末へのEDI入力

税関へ申告

税関審査

検疫手続

納税書交付

納税後許可

監督管理

配送または取引

通関手続

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【図4-12】通関の流れ

4.通関はなぜ遅れるのか

中国では、輸入通関は時間がかかるといわれることが多い。税関にヒアリングしたとこ

ろ、書類の受領から実際に通関にかかる時間は 1~2 日程度である。通関時間がかかるの

は、主に以下の原因が考えられる。

輸出者、輸入者

データインプット業者 税関データセンター

電子自動審査通過 税関職員検査 差し戻し

審査合格 保留 差し戻し

関係資料提出

関係職員協議現場通関

資格審査

書類審査

現物検査

税徴収

輸出入許可

輸出者、輸入者

データインプット業者 税関データセンター

電子自動審査通過 税関職員検査 差し戻し

審査合格 保留 差し戻し

関係資料提出

関係職員協議現場通関

資格審査

書類審査

現物検査

税徴収

輸出入許可

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1)物理的な原因 ・書類不備により受理されるまでに時間を要する。 ・データの不一致、たとえば、B/L と梱包明細書(パッキングリストをいう)の総重量

不一致など ・輸入検査待ち 2)人的な原因

通関担当職員の経験不足ならびに極めて非効率な業務処理 5.納付税および費用の仕組み

中国では貨物輸入時に、免税品目を除き、関税および輸入環節税を納めなければならな

い(P.75【表4-3】)。 本来、輸入環節税は、商品が輸入されてから国内流通販売のため、国家税務局が徴収す

るものであるが、中国は徴税の効率化・省力化を図るため、通関の段階で、税関が国家税

務局に代わって、関税とともに輸入環節税を徴収している。 関税は、『中華人民共和国関税条例』および『中華人民共和国海関進出口税則』に規定さ

れた税率により徴収を行う。税率は、優遇税率と普通税率に分かれている。日本は同じ

WTO 加盟国であるため、優遇税率が適用される。たとえば、現在、りんご、なしが 10%、

オレンジの関税率が 11%、みかん類が 12%である。 関税は CIF(Cost Insurance and Freight)価格に関税率をかけることによって算出され

る。計算基礎数字となる CIF とは、申告する産品の価格に、海上保険料および海上輸送費

用を加えたものである。また、農林水産物、食用植物油などの関税は、2006 年の水準では

平均 15.2%となっている。 進口環節税とは、輸入貨物を国内流通させるため、税関で事前に他の徴税部門に代わっ

て税金を徴収することをいう。進口環節税は、増値税、消費税からなる。 増値税は、日本の消費税に近いものである。品目によって 5%、8%、13%、17%が課さ

れる。 消費税は、日本で言えば 1989 年に廃止された物品税に近いものである。特定の品目に

対して徴収するものである。 税関監管手続費用とは、輸入減税貨物、免税対象品目または保税貨物に対して、税関が

徴収する監督管理手続の費用である。 また、輸入産品は、中国元以外の外貨で売買される場合は、輸入申告する際に、中国税

関により『納税証』が交付された日に、国家為替管理部門が公布した『人民幣為替表』(『人

民幣外・ 牌価表』)によって人民幣に換算することとなる。

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【表4-3】輸入時に納付する税金・費用

出所:『国際貨物与通関』、ヒアリング

徴収機関 税率 税収計算

税関WTO加盟合意により、2010年には、全品目単純平均税率を9.8%に引き下げ

 CIF価格×関税率

増値税輸入商品はすべて徴収される。基本税率は13%

 CIF価格+関税+消費税)×税率

消費税

・特定の品目から消費税を徴収される。(たとえば煙草、酒、飲料品、クリームなど)・3%~45%までの15段階税率

・従価税の場合 CIF価格+関税/(1-消費税税率)・従量税の場合 消費数量×消費税の単位税額

税関・主に1%、1.5%、3%の3種類がある

・免税貨物 CIF×手続費率・税率減免貨物 CIF×(1-減免税率/法定税率)×手続費率・免税比例減免貨物 CIF×減免比例×手続費率

国家税務局

税関監管手続費用

税名・費用名称

関税

進口環節税(輸入環節税)