第5節 中学校国語 - wakayama-edc.big-u.jp ·...

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- 74 - 第5節 中学校国語 出題のねらい及び工夫 ①「話すこと・聞くこと」においては、日常的にカタカナ語を使用することについての話合い、防 災をテーマにしたインタビューを題材にして、 その内容や話し方・聞き方の工夫等を聞き取るも のなどを出題した。 ②「書くこと」においては、文章とイラストを関連づけて自分の考えを論述する力、自らの立場を 明確にし、根拠を挙げて自分の考えを論述する力をみることをねらいとした。 ③「読むこと」においては、文脈の中における語句の意味をとらえて読む問題、文章の展開に即し て内容をとらえて読む問題、 登場人物の心情をおさえて読む問題を出題した。 )」 言語事項 においては これまでの県学力診断テスト及び 特定の課題に関する調査 国語 調査結果(国立教育政策研究所 平成18年7月)から課題のあった問題を出題し、改善状況の把 握及び今後の指導改善に生かすことをねらいとした。出題内容は、 漢字の読み・書き、 文の成分 (修飾・被修飾の関係 、慣用句、部首、単語の性質、筆順の理解等である。さらに、本年度は、 熟語の成り立ち、文語の仮名遣いの理解等をみるものを出題した。 設定正答率からみた分析・考察 (1)設問ごとの設定正答率との比較 問題数 設定正答率を上回る 設定正答率と同程度 小計 設定正答率を下回る と考えられるもの と考えられるもの と考えられるもの (a) (b) (a)+(b) (c) 第1学年 29 8 6 14 15 第2学年 32 5 7 12 20 、「 、「 以下 設定正答率を上回ると考えられるもの を( ) 設定正答率と同程度と考えられるもの a を( ) 「設定正答率を下回ると考えられるもの」を( )とする。 b c 分析・考察 第1学年については全調査問題29問のうち、(a)と(b)の合計は14問であり、(c)は15問である。 第2学年については全調査問題32問のうち、(a)と(b)の合計は12問であり、(c)は20問である。こ のことから、学習指導要領の目標、内容に照らした学習の実現状況について、第1学年・第2学年 ともに(c)が半数を超え、概ね良好と言えない状況である。 (2)内容領域別及び評価の観点別にみた設定正答率との比較 小計 学年・内容領域 問題数 (a) (b) (c) (a)+(b) 1年話すこと・聞くこと (0) (0) (0) (0) (0) 3 3 0 3 0 小5・6年 書くこと (0) (0) (0) (0) (0) 2 0 0 0 2 第1学年 小5・6年 読むこと (0) (0) (0) (0) (0) 1 0 1 1 0 8 (1) 2 2 4 4 (1) 1年 読むこと (0) (0) (0) 第1学年 第2学年 (a) (b) (c)

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- 74 -

第5節 中学校国語

1 出題のねらい及び工夫

①「話すこと・聞くこと」においては、日常的にカタカナ語を使用することについての話合い、防

災をテーマにしたインタビューを題材にして、 その内容や話し方・聞き方の工夫等を聞き取るも

のなどを出題した。

②「書くこと」においては、文章とイラストを関連づけて自分の考えを論述する力、自らの立場を

明確にし、根拠を挙げて自分の考えを論述する力をみることをねらいとした。

③「読むこと」においては、文脈の中における語句の意味をとらえて読む問題、文章の展開に即し

て内容をとらえて読む問題、 登場人物の心情をおさえて読む問題を出題した。

「 」 、 「 ( )」④ 言語事項 においては これまでの県学力診断テスト及び 特定の課題に関する調査 国語

調査結果(国立教育政策研究所 平成18年7月)から課題のあった問題を出題し、改善状況の把

握及び今後の指導改善に生かすことをねらいとした。出題内容は、 漢字の読み・書き、 文の成分

(修飾・被修飾の関係 、慣用句、部首、単語の性質、筆順の理解等である。さらに、本年度は、)

熟語の成り立ち、文語の仮名遣いの理解等をみるものを出題した。

2 設定正答率からみた分析・考察

(1)設問ごとの設定正答率との比較

問題数 設定正答率を上回る 設定正答率と同程度 小計 設定正答率を下回る

と考えられるもの と考えられるもの と考えられるもの

(a) (b) (a)+(b) (c)

第1学年 29 8 6 14 15

第2学年 32 5 7 12 20

、「 」 、「 」※ 以下 設定正答率を上回ると考えられるもの を( ) 設定正答率と同程度と考えられるものaを( ) 「設定正答率を下回ると考えられるもの」を( )とする。b c、

分析・考察

第1学年については全調査問題29問のうち、(a)と(b)の合計は14問であり、(c)は15問である。

第2学年については全調査問題32問のうち、(a)と(b)の合計は12問であり、(c)は20問である。こ

のことから、学習指導要領の目標、内容に照らした学習の実現状況について、第1学年・第2学年

ともに(c)が半数を超え、概ね良好と言えない状況である。

(2)内容領域別及び評価の観点別にみた設定正答率との比較

小計学年・内容領域 問題数 (a) (b) (c)

(a)+(b)

1年話すこと・聞くこと (0) (0) (0) (0) (0)3 3 0 3 0

小5・6年 書くこと (0) (0) (0) (0) (0)2 0 0 0 2

第1学年 小5・6年 読むこと (0) (0) (0) (0) (0)1 0 1 1 0

8 (1) 2 2 4 4 (1)1年 読むこと (0) (0) (0)

第1学年 第2学年

(a)

(b)

(c)

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小3・4年 言語事項 (0) (0) (0) (0) (0)1 0 0 0 1

小5・6年 言語事項 (0) (0) (0) (0) (0)2 1 0 1 1

12 (3) 2 (1) 3 5 (1) 7 (2)1年 言語事項 (0)

(0) (0) (0) (0) (0)2・3年話すこと・聞くこと 3 3 0 3 0

2・3年 書くこと (0) (0) (0) (0) (0)2 0 0 0 2

1年 読むこと (0) (0) (0) (0) (0)2 0 1 1 1

9 1 3 4 5 (1)第2学年 2・3年 読むこと (1) (0) (0) (0)

小5・6年 言語事項 (0) (0) (0) (0) (0)1 0 1 1 0

2 (2) 0 1 (1) 1 (1) 1 (1)1年 言語事項 (0)

13 (1) 1 1 2 11 (1)2・3年 言語事項 (0) (0) (0)

※( )付き数字は、複数の内容領域を含む問題のうち、従たる内容領域として設定されている問題

数を表す。

小計評価の観点 問題数 (a) (b) (c)

(a)+(b)

国語への関心・意欲・態度 0 (5) 0 (3) 0 (0) 0 (3) 0 (2)

話す・聞く能力 3 (0) 3 (0) 0 (0) 3 (0) 0 (0)

書く能力 2 (0) 0 (0) 0 (0) 0 (0) 2 (0)第1学年

読む能力 9 (1) 2 (0) 3 (0) 5 (0) 4 (1)

15 (3) 3 (1) 3 (0) 6 (1) 9 (2)言語についての知識・理解・技能

国語への関心・意欲・態度 0 (5) 0 (3) 0 (0) 0 (3) 0 (2)

話す・聞く能力 3 (0) 3 (0) 0 (0) 3 (0) 0 (0)

書く能力 2 (0) 0 (0) 0 (0) 0 (0) 2 (0)第2学年

読む能力 11 (1) 1 (0) 4 (0) 5 (0) 6 (1)

16 (3) 1 (0) 3 (1) 4 (1) 12 (2)言語についての知識・理解・技能

※( )付き数字は、複数の評価の観点が設定されている問題のうち、従たる観点として設定されて

いる問題数を表す。

第1学年

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1年 話すこと・聞くこと

小5・6年 書くこと

小5・6年 読むこと

1年 読むこと

小3・4年 言語事項

小5・6年 言語事項

1年 言語事項

第2学年

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2・3年 話すこと・聞くこと

2・3年 書くこと

1年 読むこと

2・3年 読むこと

小5・6年 言語事項

1年 言語事項

2・3年 言語事項

(a)

(b)

(c)

第1学年

0% 20% 40% 60% 80% 100%

国語への関心・意欲・態度

話す・聞く能力

書く能力

読む能力

言語についての知識・理解・技能

第2学年

0% 20% 40% 60% 80% 100%

国語への関心・意欲・態度

話す・聞く能力

書く能力

読む能力

言語についての知識・理解・技能

(a)

(b)

(c)

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分析・考察

「話す・聞く能力」については、第1・2学年ともにすべて(a)であり、概ね良好と言える。

「読む能力」については、第1学年において、(a)+(b)が問題数の半数以上を占め、概ね良好と言え

るものの、第2学年においては(c)が半数を超え、概ね良好とは言えない状況である。

「書く能力 「言語についての知識・理解・技能」については、第1・2学年ともに(c)が問題数の」

半数を超え、概ね良好とは言えない状況にある。

【 第1学年 】

○「話す・聞く能力」については、話の内容や効

果的な話し方の工夫を聞き取る力をみる問題を

出題した。3問とも設定正答率を上回り十分な

状況である。これまでも「話す・聞く能力」に

ついては、他の領域に比べ、正答率が高い状況

にあるものの、今後も新学習指導要領に示され

ている第1学年「話すこと・聞くこと」の能力

を育成するために、日常生活の中の話題につい

て、対話や討論などの言語活動を意図的・計画

的に取り入れていくことが必要である。

○「書く能力」については、平成17年度から平成19年度まで、非連続型テキストをもとにして、2段

落構成で、根拠を挙げて自分の考えを141~200字で書く力をみる問題を出題している。

本年度は、 文章(連続型テキスト)とイラスト(非連続型テキスト)からわかったことを関連づ

けて、条件に即して自分の考えを書く力をみる問題を出題した。

過去4年間の「書く能力」をみる問題の構成・記述に関する正答率・無解答率については以下の

とおりである。「書くこと」の問題5(6)①②の正答率は、構成52.8%、

正答率(%) 無解答率 記述39.3%であり、無解答率は、約24%である。複数のテキ実施年度

構成 記述 (%) ストから必要な情報を読み取り、読み取ったことを関連づけ

平成17年度 66.8 64.4 約13 て自分の考えを書くことに課題がみられる。多様な資料から

平成18年度 67.1 62.8 約14 必要な情報を読み取ったうえ、目的や意図に応じて書く事柄

平成19年度 64.2 58.9 約15 を収集し、伝えたい事実や事柄について、根拠を明確にして

平成20年度 52.8 39.3 約24 自分の考えや気持ちを書く指導の充実が求められる。

○「読む能力」については、9問中( )と( )が5問、( )は4問であり、概ね良好である。a b c文学的文章の登場人物の心情をおさえて読む問題4(3)の正答率82.4%については、平成19年度

73.0%に比べて改善されており、正答率は3年連続で上昇している。

。 、本年度出題した文学的文章4問すべてが(a)または(b)となっている 文学的文章を読むためには

文章の中の時間的、空間的な場面の展開、登場人物の心情や行動、情景描写などに注意して読み進

める指導が必要である。

説明的文章については、本年度出題した5問中(b)が1問、(c)が4問であり、課題がみられる。

文章の構成や展開をとらえて読む問題5(1)については、依然として正答率は低く、 課題がみられ

。 、 。る 文章の構成や展開をとらえて読む問題の過去5年間の正答率については 以下のとおりである

平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度

正答率(%) 21.1 39.0 出題なし 42.9 49.9

文章の構成や展開をとらえるためには、段落ごとに内容をとらえたり、段落相互の関係を正しく

押さえたりしながら、さらに大きな意味のまとまりごとに、文章全体における役割をとらえさせる

指導が必要である。

( ) 、 「 」文章の展開を確かめながら要旨をとらえる問題5 5 の正答率40.3%は 本年度の 読むこと

の問題の中で最も正答率が低くなっている。要約したり要旨をとらえたりするためには、目的や必

要に応じて大切な情報を選択し整理する指導が必要である。

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【第2学年】

○「話す・聞く能力」については、話の内容

やインタビューにおける話し手の工夫を聞

。き取ることをねらいとした問題を出題した

3問とも80%以上の正答率であり、十分な

。 、状況である 過去の診断テストにおいても

平成17年度を除いて同様の結果である。新

学習指導要領第2学年言語活動例で示され

ているように、社会生活の中の話題につい

て説明や発表をしたり、それらを聞いて意

見を述べたりして言語活動の充実を図って

いく必要がある。

○「書く能力」については、本年度は文章をもとにした学習場面を設定したうえで、自らの立場を明

らかにして論述する力をみる問題を出題した。4年間の「書く能力」をみる問題の構成・記述に関

する正答率・無解答率については以下のとおりである。

正答率(%) 無解答率 「書くこと」の問題5(6)①②の正答率は、構成52.7%、実施年度

構成 記述 (%) 記述53.1%であり、無解答率は、約19%である。これまでと

平成17年度 58.5 50.7 比較して無解答率については改善がみられるものの、根拠を

平成18年度 60.9 54.4 約22 挙げて自分の考えを書く力、与えられた条件に即して書く力

平成19年度 55.9 64.0 約26 について課題がみられる 「書く能力」を高めるため 「話。 、

平成20年度 52.7 53.1 約19 すこと・聞くこと 「読むこと 「書くこと」との関連を図」 」

り、義務教育9年間の系統性を重視した学習が必要である。

○「読む能力」について、11問中(a)と(b)が5問、(c)は6問であり、概ね良好と言えない状況にあ

る。

文学的文章の「読む能力」については、5問中(a)と(b)が3問、(c)が2問であり、(c)は、文脈

の中における語句の意味をとらえて読む問題と文章の展開の仕方を的確にとらえて読む問題であ

る。文章の展開の仕方を的確にとらえて読む問題4(2)の正答率が51.2%、無解答率10.6%であ

。 、 ( ) 、 、る また 同観点の問題4 5 は 文章中から二十字以内で抜き出して記述する問題であったが

正答率は76.8%と比較的高いものの、無解答率が15.9%と高く、課題がみられる。文章の内容理解

のために、叙述に即して展開をおさえて読み取ることに課題がみられる。それとともに記述式に対

する抵抗感をとりのぞく指導も求められる。

登場人物の心情を読み取る問題4(3)(4)は、2問とも(b)であり、1学年同様概ね良好と言え

る。今後も引き続き、登場人物の言葉や行動が話の展開や文章に表れているものの見方や考え方に

ついて、知識や体験と関連づけて自分の考えを書かせたり、述べさせたりする指導が必要である。

説明的文章の「読む能力」については、6問中(b)が2問、(c)は4問であり、課題がみられる。

論理の展開の仕方を的確にとらえて読む問題5(2)(3)(4)の正答率が60.2%、34.2%、44.1%と

低い。特に、文章の展開に即して内容を要約する問題5(5)Bの正答率が26.5%、無解答率が

31.5%と課題がみられる。新学習指導要領で示されている「読むこと」の指導過程を意識した指導

の工夫が望まれる。複数の情報を吟味しながら、自分の考えをまとめていく学習を行うなど、様々

な角度から情報を活用する力を育てていく必要がある。

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3 言語事項にかかる前年度までの類似問題との比較・分析・考察

(1)前回の出題との比較

《 下の表における凡例 》

前回まで県学力診断テストの出題より正答率が

:上昇したもの :下降したもの

△:5ポイント以上上昇したもの ▼:5ポイント以上下降したもの

★:[(2)本年度正答率の低かった問題と経年類似問題との比較]で解説しているもの

内 容 出 題 比較学 正答率( )%年 H20 前回(年度)

漢字の読み 「救済」の読み 54.7 (c) 57.0(H16)

漢字の読み 「善い」の読み 78.2 (a) 73.3(H19)

漢字の読み 「額(ひたい 」の読み 79.6 (a) 73.8(H18) △)

漢字の書き 「かいらん(回覧 」の書き 43.1 (c) 45.3(H18))

第 漢字の書き 「えいせい(衛星 」の書き 45.4 (c) 47.2(H16))

1 漢字の書き 「そなえて(備えて 」の書き 61.1 (c) 54.4(H16) △)

学 漢字の書き 「けわしい(険しい 」の書き 61.3 (b) 52.1(H18) △)

年 部首名 「独」の部首名 58.2 (c) 52.2(H18) △

同訓異字 「おさめる(納める 」の同訓異字 76.1 (b) 77.6(H17))

慣用句 「目を見張る」を選択して文を完成 ★ 39.0 (c) 47.5(H18) ▼

語句の理解 「おびただしい」を選択して文を完成 58.3 (c) 68.2(H16) ▼

37.9 (c) 33.9(H16)文の成分(修飾・ 「一日中、僕は図書室で本を読んだ」で

被修飾の関係) 下線部の被修飾語を見つける ★

漢字の読み 「賃金」の読み 64.9 (c) 64.3(H16)

漢字の読み 「趣」の読み 46.5 (c) 42.7(H19)

漢字の読み 「奮い」の読み 64.5 (c) 70.6(H18) ▼

第 漢字の書き 「かいぜん(改善 」の書き 45.4 (c) 42.2(H19))

2 漢字の書き 「こきょう(故郷 」の書き 50.9 (c) 49.1(H18))

学 漢字の書き 「きびしい(厳しい 」の書き 61.3 (c) 62.3(H18))

年 漢字の書き 「すます(済ます 」の書き 51.8 (c) 49.6(H18))

漢字の筆順 「区」の筆順 ★ 26.4 (c) 29.6(H17)

36.2 (c) 33.2(H16)文の成分(修飾・ 「ふわふわと空から白い雪が降る」で

被修飾の関係) 下線部の被修飾語を見つける ★

第1学年では、漢字の読み書きと部首名に関する4問が前回と比較して5ポイント以上高くなって

おり、改善がみられる。一方、慣用句と語句の理解についての2問は、5ポイント以上低くなってい

る。設定正答率との比較では、前回より正答率が上昇した問題のなかにも 「十分でない状況(c)」、

が多くみられるなど、依然として課題が残る。

第2学年では、前回より大きな改善はみられない。漢字の書き取りでは、4問中2問で無解答率が

非常に高い状況にある( 済ます」34.4% 「改善」29.4% 。設定正答率との比較では、9問すべて「 、 )

が「十分でない状況(c)」となっている。

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(2)本年度特に正答率の低かった問題と経年類似問題との比較

第1学年では、正しい慣用句

を選択、第2学年では使われて

いる慣用句の意味を選択する形

式で出題した(H20の第2学年

のみ出題傾向が異なる 。)

出題年度によって正答率に大

きな開きがあるのは、日常生活

での使用頻度などに起因してい

ると考えられる。H20の第2学

年では 「波・水・心・手」の、

、中から選択する形式であったが

「波」の誤答が目立った。

下線部の漢字を選択肢から選

ぶ形式で出題した。H20は、正

答率が特に低くなっているが、

「紀行」という言葉に触れる機

会の少なさが、今回の結果につ

。ながっているものと考えられる

過去4年間とも低い正答率と

なっている。H20はH17・H19

に続き「 」部について出題し

たが、いずれも正答率は30%未

満と低くなっており、改善傾向

はみられない。

第1学年、第2学年とも下線

部が係る被修飾語を選択形式で

答える設問であり、すべて連用

修飾語に関するものである。H

20は前回出題時よりやや改善さ

れているものの、依然として正

答率は低い。第2学年のH19と

畳語を使った他の年度を比較す

ると、約20ポイントの差がみら

れる。H20の誤答例でみると、

「雪が」を選択しているものが

多く 「雪」と「ふわふわ」を、

関連させたことによるものと考

えられる。

ア 慣用句【第1学年 39.0%、第2学年 24.3%】

学年 年度 出 題 正答率(%)

第 H18 47.5妹のピアノの上達に目を見張る。

H19 93.81 ぼくは、その出来事を聞いて、あやうく腰をぬか

すところだった。学

年 H20 39.0妹のピアノの上達に目を見張る。

H16 95.8約束を守ることができ、正男は胸をなでおろした。

第 H17 84.1母はいつも妹の肩を持つ。

2 H18 79.0いよいよ明日は発表会だと思うと胸がおどる。

54.0学H19

新たに開発された製品の性能には、目を見張るも

のがある。年

H20 24.3会場は水を打ったように静かだ。

エ 文の成分(修飾・被修飾の関係)【第1学年 37.9% 第2学年 36.2%】

学年 年度 出 題 正答率(%)

H16 33.9第

一日中、 ぼくは 図書館で 本を 読んだ。

H17 45.01

まもなく、 次の 電車が ホームに 着く。

H18 62.0学

ようやく、 ぼくは 山の 頂上に たどりついた。

H19 56.3年

やっと かれは 目的の 本を 見つけた。

H20 37.9一日中、 ぼくは 図書館で 本を 読んだ。

H16 33.2第

ふわふわと 空から 白い 雪が 降る。

H17 34.72

ゴロゴロと 頭の 上で かみなりが 鳴った。

H18 31.8学

ぽつぽつと 灰色の 空から 雨が 降ってきた。

H19 52.3年

ついに 長く 待ちつづけた 時が おとずれた。

H20 36.2ふわふわと 空から 白い 雪が 降る。

イ 同音異義語【第1学年 39.1%】

学年 年度 出 題 正答率(%)

H18 私の祖父は後世に名を残した。 83.2

H19 校庭を市民に開放する。 82.3

H20 有名な作家の紀行文を読む。 39.1

第1学年

ウ 漢字の筆順【第2学年 26.4%】

学年 年度 出 題 正答率(%)

第 H17 「区」 29.6

2 H18 「書」 51.7

年 H19 「医」 22.6

年 H20 「区」 26.4

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- 80 -

(3)過去5年間の漢字の読み書きに関する正答率

県学力診断テスト及び「特定の課題に関する調査(国語 」調査結果より)

各学年で過去5年間に出題された漢

字の読み書きについて、正答率が高か

ったもの( 読み」は90%以上 「書「 、

き」は70%以上のもの)を表にした。

読み書きともに 「痛い」・「並ぶ」、

など日常生活によく使われるものや

「宇宙」・「圧力」など他教科の学習

場面でよく使われる漢字の正答率が高

くなっている。

各学年で過去5年間に出題された漢

字の読み書きについて、正答率が低か

ったもの( 読み」は60%以下 「書「 、

き」は50%以下のもの)を表にした。

H20は、前回までに課題がみられる

漢字を中心に出題したが、正答率は依

然として低い状況である。また 「取、

捨」・「功績」・「展望」など、熟語と

しての使用頻度が少ないと考えられる

語の正答率が低くなっている。

H20の誤答例について、読みの問題

では、①音の読み間違い【 救済」を「

「きゅうざい 、②音訓の読み間違」】

い【 趣(おもむき 」を「しゅ 】な「 ) 」

。 、どがみられた 書きの問題については

①同音異字による間違い【 回覧」を「

「 」「 」、「 」 「 」】、会覧 ・ 開覧 衛星 を 衛生

【「 」「 」②部分的な字形の間違い 衛 の

部を「 】などがみられた。漢字の」

使用頻度や覚えやすさなどを把握し、

それらの実態に応じた指導の工夫が必

要である。

○正答率の高かった漢字

漢字 出 題 年度正答率(%)

痛 98.8 H17足が痛い。

第 遺産 98.5 H17世界遺産に登録された。

1 届 98.1 H16手紙を届ける。

学 破 96.5 H17紙を破る。

年 模様 94.1 H17花の模様を入れる。

読 険 94.0 H16あの山は険しい。

絹 90.2 H19絹の着物を着る。

招待 97.7 H16友人をパーティーに招待する。

み 模型 96.7 H17船の模型を作る。

第 留守 96.5 H17家を留守にする。

2 駆 95.7 H16勢いよく駆けていく。

学 刻 95.3 H16思い出を胸に刻みこむ。

年 眺 95.1 H18眺めがいい場所。

操作 94.5 H18機械を操作する。

抱 93.0 H17大きな問題を抱える。

第 宇宙 84.6 H19うちゅうへの旅行にあこがれる。

1 並 79.7 H17二列にならぶ。

書 学 興味 78.5 H16花にきょうみをもっている。

年 難 71.3 H17むずかしい問題が残った。

第 圧力 92.2 H16上からあつりょくを加える。

き 2 捨 79.4 H17ごみをすてないでください。

学 責任 75.5 H17自分のせきにんを果たす。

年 営 71.1 H17食料品店をいとなむ。

○正答率の低かった漢字

漢字 出 題 年度正答率(%)

第 取捨 36.7 H16資料を取捨する。

1 改行 42.8 H18改行して、文を書き加える。

読 学 救済 54.7 H20困っている人を救済する。

年 救済 57.0 H16困っている人を救済する。

第 趣 42.7 H19しっとりとした趣のある庭。

み 2 趣 46.5 H20しっとりとした趣のある庭。

学 取捨 47.6 H20資料を取捨する。

年 前途 58.5 H19希望にみちた前途。

19.8 H19功績かがやかしいこうせきを残した人

をほめたたえる。

第 注 31.0 H16コップに水をそそぐ。

1 回覧 43.1 H20「お知らせ」をかいらんする。

学 留守 43.7 H18仕事で、自宅をるすにする。

書 年 回覧 45.3 H18「お知らせ」をかいらんする。

衛星 45.4 H20えいせい放送の番組をみる。

衛星 47.2 H16えいせい放送の番組をみる。

き 展望 22.9 H19てんぼう台にのぼる。

第 改善 42.2 H19生活をかいぜんする。

2 改善 45.4 H20生活をかいぜんする。

学 故郷 47.4 H16生まれ育ったこきょうに帰る。

年 故郷 49.1 H18こきょうがとてもなつかしい。

疑 49.4 H19うたがいを晴らす。

済 49.6 H18宿題をすます。

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4 課題と改善の方向

(1) 正答率の低い問題にみられる誤答例とその分析結果

ア〔言語事項〕

第1学年 3(1 (慣用句の意味や用法についての問題))

妹のピアノの上達に3(1)イ

( 目をこらす 目を引く 目を見張る 目をさます 。1 2 3 4 )

今回の結果

内容領域 評価の観点 設定正答率 正答率

1年「言語事項」 ◎言語についての知識・理解・技能 60.0% 39.0%

主な誤答例 分析・考察、指導のポイント

目をこらす 「こらす」の意味を理解しないままに、他に適切なものを選択できずに選ん1

だと考えられる。

目を引く 「人の注意をひきつける」という意味で選択したものと考えられる。2

目をさます 「はっとする」というイメージや日常的に使用する語であるために選択した4

ものと考えられる。

、 の誤答は少なかった。2 4

事象や行為などを表す多様な語句について理解を深めるためには、語彙や

文章の中の語に関心をもたせる指導が大切である。分からない語があったり

言葉の使い方に疑問を感じたりしたときに、辞書を引いて意味や用法を確か

めるという習慣を身に付けさせるような指導が必要である。

第2学年 3(7 (文の成分(修飾・被修飾の関係について)の問題))

次の の文中の 線部は、どの文節を修飾していますか。 ~ の中から一3(7) 1 4

つ選び、その番号を書きなさい。

ふわふわと 空から 白い 雪が 降る。

1 2 3 4

今回の結果

内容領域 評価の観点 設定正答率 正答率

2・3年「言語事項」 ◎言語についての知識・理解・技能 60.0% 36.2%

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主な誤答例 分析・考察、指導のポイント

雪が 「ふわふわと」が連用修飾語の副詞であるにもかかわらず、雪そのものの3

状態を表していることから「雪が」の を選んだものと考えられる。3

文の成分「修飾・被修飾の関係」については、過去の課題を受けて、 経年

類似問題として出題しているが、 依然として課題がみられる。

文の成分の学習は、文章の読解力や表現力を支える基礎として重要な役割

を担っている。

文章の内容を理解するためには、それぞれの文の中での語句の役割や、語

句相互の関係に気をつけて、文がどのように組み立てられているかを理解さ

せることが大切である 「主語・述語の関係」や「修飾・被修飾の関係」な。

ど、小学校・中学校と段階的・系統的に指導することが重要である。学習場

面では、適切な例文を示すことが理解を促すうえで効果的である。単純な文

から徐々に修飾語を増やし、修飾語と被修飾語が離れた位置にある文につい

ても理解させたい。

《 指導の具体例 》

学習目標‥‥「文の成分」修飾・被修飾の関係(連用修飾語)を理解する。

指導事例Ⅰ‥連用修飾語を増やしながら文の成分について理解させる。

①修飾語を一つ含んだ文を文節に区切らせる。

②主語・述語の関係を理解させる。

③徐々に連用修飾語を増やした文で修飾・被修飾の関係(連用修飾語)を理解

させる。

例文 1 彼は ゆっくり 歩いた。

2 彼は ゆっくり 大またで 歩いた。

3 彼は ゆっくり 大またで しゃべりながら 歩いた。

4 休憩中 彼は ゆっくり 大またで しゃべりながら 歩いた。

指導事例Ⅱ‥連体修飾語との比較で連用修飾語を理解させる。

①初めに述語を見つけさせる。

②述語に対応する主語を見つけさせる。

③述語の直前にその他の文節を移動させて、意味がつながれば連用修飾語と判

断させる (つながらない場合、連用修飾語とは判断できない )。 。

例文 昨日 私は ゆっくり となりの 公園を 歩いた。

×

*留意点・・・例文については、文節ごとにカードに書いておく。

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イ〔読むこと〕

第2学年 5(3 (書き手の論理の展開の仕方を的確にとらえて読む問題))

文章中、②現代人の野菜不足 とありますが、筆者は、成人が一日にとるべき5(3)

野菜の目標量と実際の量にはどれくらいの差があると述べていますか。

今回の結果

内容領域 評価の観点 設定正答率 正答率

2・3年 読むこと ◎読む能力 70.0% 34.2%「 」

主な誤答例 分析

①「成人で三五〇グラム以上である ①②③…設問の「どれくらいの差があると述べられていま

が、実際は二五〇グラム」 すか 」という部分の「差」の意味がとらえられていない。

②250グラム ための誤答であると考えられる。

③350グラム

④ 一日の野菜の摂取量の目標値は ④…問題文から文をそのまま抜き出しただけで、読み取っ「 、

成人で三五〇グラム以上~二五〇 た情報を条件に即して活用できていない。

グラムに過ぎません」

⑤無解答 ⑤…問題文の内容や設問の意図が理解できていない。

第2学年 5(5)B (文章の展開に即して内容をとらえて要約する問題)

文章中、④キュウリがキュウリらしく生きられない不幸が、結果として人間にとって5(5)

も不幸な出来事となったのです とありますが、このように書いた理由を次のように

表にまとめました。後の 、 の問いに答えなさい。A B

反応への対応と

Bそれにともなう

変化

空欄Bにはどのような内容が入りますか。文章中のことばを用いて四十字以上五十字B

以内でまとめて書きなさい (句読点も一字に数える )。 。

今回の結果

内容領域 評価の観点 設定正答率 正答率

1年「読むこと」 ◎読む能力 60.0% 26.5%

主な誤答例 分析

①「ブルームの出ないキュウリ ①②…「反応への対応とそれにともなう変化」という部分を、2

を作る技術が開発された」 つの観点としてとらえられていないためと考えられる。

②「見た目を変えたことが、キ

ュウリの味まで変えた」

③「漬け物には適さない」 ③…この文を含む段落の要旨は「消費者のニーズに合わせて技術

、 、 」が開発され そのことによって 見た目も味も変わってしまった

ということになる。表題の「それにともなう変化」の部分のみに

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注目し、具体的な現象をとらえたものと考えられる。

④「農薬をたくさん使わなけれ ④…すぐ後に「皮肉な結果」として農薬のことがあげられている

ばならなくなった」 ことから、表全体の組み立てを理解できていないための誤りだと

考えられる。

⑤字数の過不足 ⑤⑥…設問に示されている条件が読み取れていない。表現力不足

⑥無解答 のために適切に答えられないという2点が原因として考えられ

る。

、「 」⑥…記述式問題に取り組む意欲の低さや苦手意識等 書くこと

への抵抗感のあらわれと考えられる。

【考察・指導のポイント】

第1・2学年ともに『読むこと』の「説明的文章」については、設定正答率を下回っている問

題が多い。特に、書き手の論理の展開の仕方を的確にとらえる問題、文章の展開に即して内容を

とらえて要約する問題に課題がみられる。

「説明的文章」の読み取りでは、文章全体の内容を把握せずに単語や一文だけで判断してしま

ったり、叙述の関連を考えずに答えたりしていることが考えられる。

指導にあたっては、着目した叙述の意味を文章全体の様々な記述と関連させながら考えさせた

り、表現にこめられた書き手の目的や意図を考えたりさせる読むことの指導を通して、文章全体

の展開を正確に把握し、文章の要旨をとらえる学習を計画的に行うことが必要である。

さらに、生徒が主体的に作品を評価・批評する言語活動を取り入れて、文章に表されている書

き手のものの見方や考え方を自分の考えと対比したり置き換えたりして、読み手が自分の問題と

してとらえる学習場面を意図的に設定していくことが必要である。

文章の展開に即して内容をとらえて要約する指導については、段落及び文章のキーワードや中

心となる事柄をとらえさせることで、要約力や記述力を高める指導が必要である。新学習指導要

、 、 、 、領で示されている言語活動例をもとに 例えば 新聞やパンフレット 発表のための資料を作成

編集すること等、多様な学習活動と関連させることも大切である。

基礎的な言語能力・言語技術の習得とともに語感を磨き、語彙を豊かにさせるための指導の工

夫が重要であり、習得した知識・技能を活用させる場を適切に取り入れ、より実践的な指導が求

められる。

指導の具体例 》《

【教材 「考えるイルカ」 (村山 司 著:東京書籍2年)】

学習目標…書き手の論理の展開の仕方を的確にとらえ、内容の理解や自分の表現に役立てる。

「説明的文章」の読むことを段階的に学習させることによって、ものの見方や考え方を深めさ

せていく。

学習活動

①段落構成や展開をつかむ。

②全体の構成を考えながら段落ごとのキーワードやキーセンテンスを見つける。

③文章全体と部分との関係、例示の効果などを考え、要約する。

④文章に表れている考え方について、文章に書かれていることを基にして知識や体験と関

連づけて自分の考えをまとめる。

本や新聞、インターネットを活用して得られた情報と文章とを比較する等の学習活動

も効果的である。

*学習活動において、次のようなワークシートを取り入れる。

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5 無解答率の高い問題の分析・考察及び指導事例

第1学年 5(6)(根拠を挙げて、自分の考えを書く問題)

今回の結果

内容領域 評価の観点 設定正答率 正答率 無解答率

70.0% 39.3% 24.2%小5・6年 ◎書く能力

「書くこと」 ○読む能力

本 文5

文章中、④自然を支配するのではなくて、自然と共に生きる とありますが、この文章を(6)

読んだあと、あなたは 「川をとりまく自然と人間」をテーマにクラスで発表することにな、

りました。図書館で調べたところ、下のようなイラストを見つけました。文章とイラストを

使って、あなたが発表するとき、どのようなことを発表しますか。その内容を次の点に注意

して書きなさい。

イラスト省略

注意する点

①・八行以上、十行以内(一四一字以上、二〇〇字以内)で書くこと。

・二段落構成とすること。

②・第一段落には、文章からわかったこととイラストからわかったことを書くこと。

・第二段落には、第一段落で取り上げたことをもとにして、あなたが考えたことや伝えた

いと思ったことを書くこと。

【 分析・考察 】

この問題の正答率は39.3%と低く、無解答率については24.2%と高く、課題がみられる。 誤答

となった例としては、文章とイラストの両方の内容に触れて書く条件をイラストのみに触れて書

いたために誤答となった場合が多かった。

この問題の無解答率が高いことについては、まず、生徒の書くことへの抵抗感や不慣れさが大

きく関連していると思われる。また、文章やイラストなどから読み取ったことを基に、自分の考

えをもち、それをさらに文章化することについて、課題があるものと考えられる。

《 改善の方向と指導のねらい 》

、 。書くという表現に対して 生徒の抵抗感を軽減することが指導の前提として非常に重要である

そのため、日頃から書く活動を繰り返し学習活動の中に取り入れていくことや、興味・関心をも

って取り組める課題を与えるようにしたい。

また、国語科として、文章を書かせるための基礎的な技能面の指導を、具体的に取り入れなが

ら日々の学習活動の中で行っていくことも必要である。さらに、生徒が自らの「書く」能力につ

いてメタ認知し、課題意識をもって書かせることで、より効果的に指導することができる。

複数の文章やイラストを扱う場合、それぞれの内容を読み取るだけでなく、比較・分類するこ

とで新たに気付くことができるということ、また、さらにそれを自分の考えに取り入れ、活用す

ることができるように、日々の学習活動の中で指導することが重要である。

《 指導の具体例 》

①他教科における言語活動の充実のための指導との関連について

、 、 、新学習指導要領では 国語科だけでなく すべての教科で言語活動の充実が重視されており

他教科においても、今まで以上に「書く」学習活動が多く取り入れられるものと考える。そこ

、 、 「 」 、で 国語科として これまで以上に 書く ための基礎的な技能を定着させる指導が求められ

他教科の指導とどのように連携するかが重要である。

その一つの取組として、下記のような、自己評価表を国語科だけでなく、他教科の「書く」

指導にも活用する方法である 「書く」ための基礎的な技能について、文章を書く前にどの技。

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能について特に注意して書

くのかを課題としてもたせ

たり、自分が書いた文章を、

それぞれの基礎的な技能に

ついて自己評価することで、

書いた文章の内容だけでな

く、技能についても振り返

り、総合的に「書く」能力

の向上を図る取組である。

②文章の構成や展開、表現の特徴について自分の考えをもつことの指導

○「少年の日の思い出 (ヘルマン・ヘッセ 著 東京書籍・光村図書1年)」

学習目標‥‥僕が自分のちょうを粉々に押しつぶしてしまった結末について、作品の内容や表

現を基に、自分の考えをまとめることができる。

指導事項‥‥①つぶれたちょうをめぐる僕とエーミールの様子や、僕の心情について読み取ら

せる。

②僕が自分のちょうを粉々に押しつぶしてしまった結末について考えさせる。

(発問:僕がちょうを一つ一つ取り出し、指で粉々に押しつぶしてしまう

終わり方でよかったと思いますか。それはなぜですか。文章にもとづ

いて、考えと理由を説明しましょう )… 熟考・評価の発問。

・自分の意見をワークシートに書かせる。

③グループに分かれ、グループディスカッションを行わせる。

④グループの意見を全体で交流させる。

⑤意見交流を振り返って、もう一度自分の考えをワークシートにまとめさせる。

上記の指導事項において、特に②の熟考・評価となる課題について、日頃から「書く」活動

を取り入れていくことが非常に有効であると考える。また、書いたものをグループや学級全体

で交流し、さらにもう一度自分の考えに生かす指導は、個人の考えをさらに広げたり 「書く」、

ことに抵抗感のある生徒も、他の人の意見を参考に書くことができるので、個人で「書く」よ

りも学習への取組が意欲的になるものと考える。

◇詳細は「PISA型読解力向上のための実践指導資料集」※ ~ 参照P45 48

※「PISA型読解力向上のための実践指導資料集 (和歌山県教育委員会 平成20年3月発行)」

には、本課題について、指導方法の具体例が多数掲載されており、有効活用されたい。