助産学専攻科における客観的臨床能力試験の評価 ~...

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51 茨城県立医療大学紀要  第 23 巻 A   S   V   P   I   Volume 23 連絡先:長岡由紀子 〒 300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見 4669-2 茨城県立医療大学助産学専攻科 電 話:029-840-2136 Email: [email protected] 要旨 【目的】 本 学 助 産 学 専 攻 科 で は 臨 地 実 習 開 始 前 に 客 観 的 臨 床 能 力 試 験(Objective Structured Clinical Examination;OSCE)を実施している。本研究の目的は学生からの振り返りをもとに,臨地実習前 OSCE の有 用性を明らかにする事と,より効果的な OSCE のための改善点を見いだす事である。 【方法】 同意の得られた専攻科生 10 名を対象に,OSCE 終了後に質問紙調査を , 実習終了後にグループインタビュー 調査を実施した。OSCE では「分娩介助技術」と「新生児ケア」に関する 2 課題を実施した。いずれの調査も教 員が倫理的配慮に留意しながら実施した。調査の実施にあたり本学の研究倫理審査委員会での承認を得た。 【結果】質問紙調査では,課題の難易度は,2 課題ともに「普通」,OSCE 評価者からのフィードバックは「効果的」 との振り返りを得た。実施時期・回数は, 10 名全員が「今のままでよい」と回答した。内容や方法については, 「課 題の明確化」や模擬患者を活用するなどの「臨場感のある場面設定」を求める意見があった。 インタビューの結果,臨地実習前 OSCE の良かった点について【実践で活かされた】【主体的に学ぶ姿勢が身に ついた】【新しい自分に出会えた】等の5カテゴリが抽出できた。  【結論】学生にとっての OSCE の有用性が確認できた一方で,実施内容や方法に関しては具体的な改善点が明らか になった。 キーワード : 助産学教育 , 客観的臨床能力試験(OSCE), 評価 長岡由紀子 1) ,島田智織 1) ,西出弘美 1) 1) 茨城県立医療大学 助産学専攻科 報 告 助産学専攻科における客観的臨床能力試験の評価  ~学生からの振り返りをもとに~ 助産学教育における客観的臨床能力試験の評価 Ⅰ.はじめに 助産師の業務は,以前までは「助産」すなわち分 娩介助が中心であったが,近年では不妊や性感染 症,性暴力,思春期や更年期女性の健康問題への支 援など女性の生涯にわたる健康を支える専門職とし ての活動など,多岐にわたっている。そのため助産 師にはこれまで以上に高い専門性と実践能力が求め られており,その実践能力に関しては日本助産学会 1) や国際助産師連盟(International Confederation of Midwives ; ICM) 2) により明文化されている。 日本の助産学教育においては助産師教育課程を持 つ教育機関が構成する全国助産師教育協議会作成の 「助産師教育におけるミニマムリクワイアメンツ」 3) や厚生労働省医政局看護課から示された「助産師に 求められる実践能力」「卒業時の到達目標と到達度」 4) などに,助産師基礎教育において教授すべき学 習内容が示されている。 このような背景から助産師基礎教育の充実は必須 となり,2011 年 4 月の「保健師助産師看護師法及 び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を 改正する法律」 5) により,助産師教育の修業年限は「6

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茨城県立医療大学紀要  第 23 巻A   S   V   P   I   Volume 23

連絡先:長岡由紀子    〒 300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見 4669-2 茨城県立医療大学助産学専攻科電 話:029-840-2136 Email: [email protected]

要旨【 目 的 】 本 学 助 産 学 専 攻 科 で は 臨 地 実 習 開 始 前 に 客 観 的 臨 床 能 力 試 験(Objective Structured Clinical

Examination;OSCE)を実施している。本研究の目的は学生からの振り返りをもとに,臨地実習前 OSCE の有用性を明らかにする事と,より効果的な OSCE のための改善点を見いだす事である。

【方法】同意の得られた専攻科生 10 名を対象に,OSCE 終了後に質問紙調査を , 実習終了後にグループインタビュー調査を実施した。OSCE では「分娩介助技術」と「新生児ケア」に関する 2 課題を実施した。いずれの調査も教員が倫理的配慮に留意しながら実施した。調査の実施にあたり本学の研究倫理審査委員会での承認を得た。

【結果】質問紙調査では,課題の難易度は,2 課題ともに「普通」,OSCE 評価者からのフィードバックは「効果的」との振り返りを得た。実施時期・回数は,10 名全員が「今のままでよい」と回答した。内容や方法については,「課題の明確化」や模擬患者を活用するなどの「臨場感のある場面設定」を求める意見があった。

 インタビューの結果,臨地実習前 OSCE の良かった点について【実践で活かされた】【主体的に学ぶ姿勢が身についた】【新しい自分に出会えた】等の 5 カテゴリが抽出できた。 

【結論】学生にとっての OSCE の有用性が確認できた一方で,実施内容や方法に関しては具体的な改善点が明らかになった。

  キーワード : 助産学教育 , 客観的臨床能力試験(OSCE), 評価

長岡由紀子1),島田智織1),西出弘美1)

1)茨城県立医療大学 助産学専攻科

報 告

助産学専攻科における客観的臨床能力試験の評価 ~学生からの振り返りをもとに~

助産学教育における客観的臨床能力試験の評価

Ⅰ.はじめに

 助産師の業務は,以前までは「助産」すなわち分娩介助が中心であったが,近年では不妊や性感染症,性暴力,思春期や更年期女性の健康問題への支援など女性の生涯にわたる健康を支える専門職としての活動など,多岐にわたっている。そのため助産師にはこれまで以上に高い専門性と実践能力が求められており,その実践能力に関しては日本助産学会1)や国際助産師連盟(International Confederation of Midwives ; ICM)2)により明文化されている。

 日本の助産学教育においては助産師教育課程を持つ教育機関が構成する全国助産師教育協議会作成の

「助産師教育におけるミニマムリクワイアメンツ」3)

や厚生労働省医政局看護課から示された「助産師に求められる実践能力」「卒業時の到達目標と到達度」4)などに,助産師基礎教育において教授すべき学習内容が示されている。 このような背景から助産師基礎教育の充実は必須となり,2011 年 4 月の「保健師助産師看護師法及び看護師等の人材確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」5)により,助産師教育の修業年限は「6

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か月以上」から「1 年以上」に延長された。 本学の助産師基礎教育は,1997 年の大学開学以来,学士課程での統合カリキュラム(選抜制)のもとで行われていたが,より質の高い医療専門職業人の育成を目指し,2014 年に大学専攻科での助産学教育に移行した。 専攻科での教育はアクティブ・ラーニングを主体とし,問題解決型学習,チーム基盤型学習,グループディスカッション等を通じて学生の能動的な学習を促している。また教育評価の方法として客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination ; 以下 OSCE と称する)を取り入れている。 OSCE は,ペーパーテストなどで測定することのできない個人の技能などの精神運動領域や態度・習慣など情意領域の評価方法であるため,臨地実習前に必要な学生の能力を査定する方法として有用であることが知られている。助産学実習の中で最も多くの時間を割き,診断力と実践力が要求されるのは「助産」すなわち分娩介助を伴う実習である。そのため学生が助産師基礎教育において課せられている 10例の分娩介助を経験するためには,実習前に学生として必要な態度・技能・知識・問題解決能力を身に着けておく必要がある。そのため本学では実習の準備として効果的と考えらえる OSCE を臨地実習前に導入した。 近年,OSCE は医学や看護学教育に取り入れられており,その成果も多数報告されているが助産学基

礎教育機関での取り組み 7)8)9)の報告はまだ少ない。専攻科では開設初年度に OSCE を開始した。本学では 2004 年より全国に先駆けて学部教育でのOSCE を実施しており,専攻科教員はそこでの経験をもとに助産学 OSCE を構築した。OSCE トライアルを経て 3 年が経過した今回,カリキュラム評価の一環として学生に対して OSCE に関する調査を行うことで,OSCE の有用性と,より効果的なOSCE のための改善点を見いだしたいと考えた。

Ⅱ.研究目的

 助産学専攻科における臨地実習前の客観的臨床能力試験(OSCE)について,学生からの振り返りをもとに,OSCE の有用性を明らかにする事と,より効果的な OSCE のための改善点を見いだす事である。

Ⅲ.OSCEの概要

1.助産学専攻科の年間カリキュラムと OSCE の位置づけ 専攻科の年間カリキュラムは図 1 に示す通りである。OSCE は前期演習科目の「助産診断・技術学Ⅲ

(助産技術)」の総括的評価として , さらに後期の臨地実習(助産学実習Ⅱ・Ⅲ)前の形成的評価として位置付け,1 年次の 8 月に実施している。

図1 助産学専攻科の年間カリキュラム

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53助産学教育における客観的臨床能力試験の評価

表1 OSCE の実施概要(2016 年度の場合)

表2 客観的臨床能力試験の事前課題 (2016 年度の場合)

2.OSCE の概要1)実施概要 2016 年度 OSCE の実施概要を表 1 に示す。2)事前オリエンテーション オリエンテーションは OSCE 試験の約 1 週間前に実施し,OSCE 概要の説明と事前課題の提示を行った。3)OSCE課題と実施 OSCE 課題は「分娩介助技術」と出生直後の「新生児ケア」とし,これに関連する各 10 課題(計 20 題)を事前課題とした(表 2)。 OSCE 試験では事前課題の中から各 1 課題を本課題として提示した。 2016 年度の「分娩介助技術」課題は,分娩台上の産婦の「外陰部の消毒」を 10 分間で実施すること, 出生時直後の「新生児ケア」は,出生直後の新生児

の「胎外適応レベルの観察」を 5 分間で実施することであった。 なお全ての課題は「助産診断・技術学Ⅲ(助産技術)」で既習の助産技術であった。4)フィードバック フィードバックは 2 段階で実施した。 個人フィードバックは各 OSCE 試験の実施直後,試験室内で 2 分間実施した。方法は最初に学生の自己評価の発言を促し,次に OSCE 評価者が良い点と改善点を具体的にコメントした。 全体フィードバックは全ての OSCE 試験終了後に学生全員に対して OSCE 評価者が実施した。5)OSCE評価者 OSCE 評価者は,専攻科教員であり,OSCE に関連する演習科目および実習科目の担当も兼ねていた。

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Ⅳ.研究方法

1.対象者 助産学専攻科 OSCE を受験した 10 名の学生のうち,調査協力の得られたもの(10 名)。

2.調査方法調査 1:質問紙調査1)実施時期:平成 28 年 8 月2)協力依頼方法 事前オリエンテーションの際,学生に対して調査者である教員から調査概要を口頭および文書にて説明した。質問紙には学生の自己評価の記載を含んでいたため,記名式とし,調査協力の可否に関わらず学生全員に配布した。そのため質問紙への回答内容を今回の調査目的で利用する事に関して同意書を作成し,署名を持って同意を得た。3)データ収集方法 質問紙は,OSCE 試験後の全体フィードバック終了後に教員が配布し , 留め置き法にて回収した。4)質問項目と回答形式(1) OSCE 課題の達成度に関する自己評価 回答形式は『90 点台』『80 点台』『70 点台』『60 点台』

『60 点未満』の 5 段階とした。(2) OSCE 課題の難易度 回答形式は『とても簡単』『やや簡単』『普通』『やや難しい』『とても難しい』の 5 段階とした。(3) OSCE 評価者からのフィードバックの有用性 回答形式は『とても長い』『やや長い』『適切』『やや短い』『とても短い』の 5 段階とした。(4) 課題の実施時間 回答形式は『とても効果的』『やや効果的』『普通』

『あまり効果的でない』『全く効果的でない』の 5 段階とした。(5) 自己学習時間と学習方法(自由記載)

調査 2:インタビュー調査 OSCE の有用性に関する調査には,フォーカスグループインタビュー(以下,「FGI」)を用いた。理由は,OSCE の良かった点を明らかにするという調査目的が探索的であることとグループダイナミクスを活用することで学生の潜在的な意見を引き出すことができると考えたためである。

1)実施時期:平成 29 年 2 月2)協力依頼方法 OSCE 受験者に対し,調査実施 1 週間前に調査協力依頼用のポスターを掲示して協力者を募った。協力者にはインタビューの概要を口頭および文書にて説明し,文書への署名を持って研究への同意を得た。3)FGI の手順 インタビューは協力者である学生の都合に合わせて日時を設定し,プライバシーが確保できる演習室内で実施した。 協力者は 10 名であったため,1グループで実施した。理由は,FGI では 1 グループあたり最低 6 人以上の対象者が必要とされている 10)ためである。インタビューの司会進行は教員が実施し,記録は研究協力者が担当した。協力者には No1 ~ 10 までの数字の名札を付けてもらい,インタビュー中は番号で呼称した。内容は全員の承諾を得て IC レコーダに録音した。 なお,インタビューの司会を教員が担当したことで学生への強制力が働くことへの配慮や,回答バイアスを回避する工夫として,実施時期は成績判定等に影響しない修了判定後とした。(4) インタビュー内容 Q1. 臨地実習前 OSCE を実施して良かった点 Q2. 実習前 OSCE に関する要望,意見等

3.分析方法 質問紙への回答は統計的に分析し,自由記載の内容は質的に分析した。 インタビュー内容は逐語録を作成した。それぞれの問いに対し , 回答を表現していると思われる発言内容に着目し,文脈単位,記録単位に分けた後,サブカテゴリとカテゴリに分類した。分析結果は研究者間で合意に達するまで協議した。

4.倫理的配慮 研究対象者には,調査の目的と方法,内容,プライバシーと匿名性の秘匿,参加は自由意志であること,途中辞退の自由,調査への不参加による不利益を被らないことについて説明した。今回の調査では教員が OSCE 評価者と調査者を兼ねていたため , 調査協力の有無が OSCE 試験や臨地実習の成績に影響しないこと等について,質問紙調査およびインタ

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55助産学教育における客観的臨床能力試験の評価

表3 OSCE に向けての自己学習方法 (質問紙調査の結果より)

表4 臨地実習前 OSCE の良かった点について

ビューの実施前に文書および口頭で説明し,署名にて同意を得た。 本研究は茨城県立医療大学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号 718)。

Ⅴ.結果

1.協力者の背景 調査 1.2 ともに 10 名から研究協力を得た。看護基礎教育時代の OSCE 経験の有無は「あり」5 名,「なし」5 名であった。

2.質問紙調査の結果1)OSCE課題の達成度に関する自己評価 「分娩介助技術」課題(以下 ,「分娩介助技術」)の自己評価は 100 点満点中「60 点台」と評価した学生が 5 名,「70 点台」が 3 名,「90 点台」が 1 名であった。OSCE 評価者による得点率平均は 76.0であった。 出生直後の「新生児ケア」課題(以下 ,「新生児ケア」)の自己評価は「60 点台」と評価した学生が

3 名,「70 点台」が 7 名で ,OSCE 評価者による得点率平均は 68.9 であった。2)課題の難易度, 「分娩介助技術」の難易度は ,「普通」9 名 ,「やや簡単」1 名であった。 「新生児ケア」の難易度は ,10 名全員が「普通」と回答した。3)フィードバックの有用性 「分娩介助技術」のフィードバックは「普通」1 名 ,

「やや効果的」2 名 ,「とても効果的」7 名であった。 「新生児ケア」も「普通」1 名 ,「やや効果的」2 名 ,

「とても効果的」7 名であった。4)各課題の実施時間 「分娩介助技術」の実施時間(10 分)は「適切」7 名 ,

「やや長い」1 名 ,「長い」1 名であった。  「新生児ケア」(5 分)は 10 名全員が「適切」と回答した。5)OSCE前の自己学習について OSCE に向けた技術演習の回数は平均 6 回で , 総時間数の平均は 50.0 時間であった。 自己学習方法は表 3 に示す通りである。

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3.フォーカスグループインタビューの結果 インタビュー時間は約 60 分間であった。

1)臨地実習前OSCEの良かった点について 臨地実習を終えた学生に実習前 OSCE について振り返ってもらい,学生が「良かった」と感じた語りからカテゴリとサブカテゴリを抽出した。結果を表 4 に示す。 分析の結果,良かった点には【実践で活かされた】

【主体的に学ぶ姿勢が身についた】【新しい自分に出会えた】【仲間と学ぶことに意義があった】【緊張感への準備ができた】の 5 カテゴリと 37 サブカテゴリが抽出できた。 以下に分析結果を示す。【】はカテゴリ,《》はサブカテゴリを示す。「」は特徴的な語りの言葉をそのまま示す。【実践で活かされた】 このカテゴリは《練習したことはスムーズにできた》,《練習して良かったと実感できた》,《工夫しながら学習したことが役立った》の 3 つのサブカテゴリが抽出された。 学生は OSCE の自己学習(演習)で獲得した技術が臨床で実践できた際に《練習したことはスムーズにできた》と感じ,《練習して良かったという実感》を得ていた。また自己学習では質問を出し合ったり手順書を作成するなど工夫しながら学だことが実践で活かされた時に《工夫しながら練習したことが役立った》と感じていた。 「出生直後の新生児のケアは(OSCEで自己学習したのと同じだったので),実際のベビーでもスムーズにできたと実感しています。」 「実習ではご家族に赤ちゃんを見てもらいながら『ここはこうで,何センチで , 正常です。』と説明しながら行いました。それは練習でも行っていたので実習でもできました。」【主体的に学ぶ姿勢が身についた】 このカテゴリは《必要な学習は何かを考えた》《課題から様々な状況を想定した》の 2 サブカテゴリが抽出された。 学生達はオリエンテーションで提示された OSCE

の課題名を見て《課題から様々な状況を想定した》うえで,実践するのに《必要な学習は何かを考えた》と語っていた。 「(分娩介助の事前課題名を見て)分娩介助のときにパートナーの方がいたらどうわかりやすく言おうかとか考えて練習していた。」 「(課題名を見て )どこを観察しなければいけないのかとか項目を確認しながら練習していた。」【新しい自分に出会えた】 《自分の弱点に気づけた》《プレッシャーを感じる自分に気づけた》の 2 サブカテゴリが抽出された。 「OSCE があったからこそ,自分はここが弱い,こうなったらすごく緊張してしまってミスが出やすいってことが分かった。」 「評価者の前で何かすることはプレッシャーになることに気づけた。」【仲間との学びに意味があった】 《仲間がいることで安心できた》《仲間との学びを通して連帯感が高まった》《仲間と学んだことで視野が広がった》の 3 サブカテゴリが抽出された。 学生たちはOSCEに向けた自己学習を一緒に行ったことで《仲間がいることで安心できた》,《仲間との学びを通して連帯感が高まった》と感じていた。また意見交換しながら自己学習を進めることで《仲間と学んだことで視野が広がった》と感じていた。 「実習施設ごとにやり方も違うとは聞いていたんですけど,やっぱり基本は一緒だろうからって(中略)皆で練習する時間っていうのは安心感とかやる気に繋がったと思います。」 「皆と話しながらやることで,こういう視点もあるんだとか色んな考え方があるってことがわかった。」【緊張感への準備ができた】 《緊張する場面で落ち着くことの必要性が意識できた》《緊張する場面のシミュレーションができた》の 2 サブカテゴリが抽出された。 多くの学生が OSCE はとても緊張したと語った。そのうえで《緊張する場面で落ち着くことの必要性が意識できた》とし,実習場面はもっと緊張するだろうと捉え OSCE を受験したことで《緊張する場面のシミュレーションができた》と感じていた。

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57 表 5. OSCEの運営に関する感想・要望・意見

オリエンテーション 動画や写真を使った説明があれば,初めての学生にもイメージし

やすい(2)

課題文

課題文はもっと詳しいほうが良い(2)

課題文にやらなくて良いことの指示も書いてほしい

課題文に「(産婦シミュレータに)話しかけながら実施して下さい」

とあれば人形であっても話しかけたと思う(2)

課題文は「通常は 1分計測するところを 30秒でよい」など変則的

な指示ではないほうがよい

ステーションの設定・物品

産婦シミュレータでなく模擬患者だったら声掛けしたと思う(3)

OSCE 試験で使用したモデルは授業内演習では使用しなかったもの

だったので驚いた(3)

自己学習の時は布製モデルを使用したので清拭はせず,OSCE は別

の模型だったので「実際に拭くんだ」と驚いた

フィードバック

実施直後のフィードバックで,「できている点」,「できていない点」

のコメントがもらえたのが良かった(2)

(フィードバックの時点で)点数や評価項目も知りたかった(2)

評価者の振る舞い

実施中,評価者の反応が気になった(3)

評価者が気になって,いつもならできることをミスした

視界の中で評価者がペンを動かすのが気になった(2)

成績・評価 OSCE前の練習中の様子も評価に入れてもらえるとよい(2)

合否に対するプレッシャーが強かった(2)

不合格でも救済措置/再テストがあることを強調してもらえれば,

気持ちが楽にいられたのでは(3)

到達度評価 OSCEについて ないほうが良い(8)

・実習後だと施設によってやり方違うので混乱する

・試験だと緊張するので,普段の実習場面を見てもらうほうが良い

あってもよい(2)

・国家試験の後なら就職に向けて準備ができる

その他 練習用の消耗品(手袋,綿花など)がたくさんあるとよい

助産学教育における客観的臨床能力試験の評価

表5 OSCE の運営に関する感想・要望・意見

 「OSCEの試験を通して , 緊張しながらやることで度胸がついた気がします。」 「緊張しながらやることで,(中略)落ち着いて見せなきゃというところで意識するということができた。」2)臨地実習前OSCEに関する感想・要望・意見(表 5)

Ⅵ.考察

1.実習前 OSCE の評価と課題 OSCE の実施方法について,学生に調査を行ったことで以下のような評価と課題を得た。1)事前オリエンテーション オリエンテーションでは資料配布を行ったが,これに対し「動画や写真を使った説明があるほうがイメージしやすいので良い。」という要望が挙げられた。OSCE 受験者 10 名のうち未経験者が半数を占めており,未経験者にとって OSCE は口頭説明と

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資料配布だけではイメージしにくかったようである。そこで次年度からはオリエンテーションの際に動画や写真などの視聴覚教材を活用し,OSCE をイメージできるような工夫が必要である。2)OSCEステーションの設定 数名の学生が「(「分娩介助技術」は)OSCE では演習とは異なるモデルが使用されていたので驚いた。」「自己学習では布製の模型を使っていたので実際に消毒(清拭)をしていなかったので戸惑った。」と述べていた。学生にとって使用したことのないモデルを試験で使用することは驚きや戸惑いの原因となる。そこで授業内演習の際にはそれぞれのモデルの使用法を熟知してもらうこと,演習においては

「(技術を)したことにする」のではなく「実際に行ってみる」ことを徹底する必要がある。 「新生児ケア」は,学生は分娩台上の母親(シミュレータ)が見つめる中で,児の観察を実施するという設定であった。授業内演習の際には「新生児へのケアを実施する際は産婦や家族に説明を行う」と指導しており,学生達も助産師-産婦など役割を決め,ロールプレイ形式で産婦役に声がけをしながら練習を重ねていた。しかし OSCE 試験の際に産婦へ声掛けをする学生は少なく,この理由について多くの学生が「産婦さんが実際の人(模擬患者 ; Simulated Patient 以下,「SP」)だったら声掛けしたと思う。」と語っていた。自己学習では実施できても試験になるとできなくなるのは緊張感の影響もあるが , 産婦シミュレータでは臨床の臨場感が不足していたようである。村本 11)は OSCE の効果を高めるためには臨場感の演出を作り出すことが必要と述べている。SP では担えない課題もあるが,今後はより効果的な活用を検討していきたい。3)OSCE課題の実施時間 実施時間は課題ごとに 5 分あるいは 10 分と設定した。看護 OSCE に関する国内文献をレビューした小西 12)によると,学生一人当たりの試験時間は7 ~ 15 分としているところが多い。5 分という時間内で実施できる助産技術は限られており,さらに 2課題だけで学生の臨床能力を評価することが妥当かどうかは今後の検討課題としたい。4)OSCEの位置づけ 本学の OSCE は前期演習科目の総括的評価と同時に臨地実習前の形成的評価の 2 側面を持つ。本

学と同様に OSCE を科目評価に位置付けている教育機関には,各単元の演習が終了するごとに OSCEを実施している例 13)もある。学生からは OSCE は現行の時期(前期終了時,8 月上旬)でよいとのことであったが,仮に OSCE を科目の総括的よりも実習前の形成的評価に重点を置く場合,夏季休暇前が妥当かどうかは専攻科のカリキュラム全体と教育効果の 2 側面から OSCE の位置づけを検討していく必要がある。5)フィードバック 個人フィードバックは OSCE 終了時の質問紙調査でも概ね好評であり,FGI でも「『できている点』と『できていない点』のコメントをもらえたのが良かった。」と語られていた。フィードバックの方法はどこが良くてどこが良くなかったのか,受験者に具体的に示すことで良い部分が強化され,悪い部分を修正しやすくなる 14)とされている。本学では OSCE 評価者が良い点と改善点を具体的にコメントするよう心掛けていた。学生の自尊心を傷つけないかかわりや強化すべき点を明確に伝えたことでフィードバックが有用だったと学生は認識していたと考えられる。6)OSCE評価者について 学生からは OSCE 中の評価者の反応が気になったという意見が挙がった。これは教員が OSCE 評価者であったことが一因と考えられる。 OSCE は試験であるため評価が前提ではあるが,それを意識し過ぎると緊張感が高まり本来の実力が発揮できない可能性がある。そのため,OSCE 評価者は学生の視界に入らない立ち位置を工夫するなど,学生が OSCE に集中できるようステーションの設定を検討する必要がある。 先行研究によると OSCE 評価者は教員以外にSP15)や看護職 16)が担う場合もある。本学においても学生の臨床能力を評価する上で実践の場にいる臨床助産師の活用を検討していきたい。7)評価・成績について 多くの学生が「合否に対するプレッシャーが強かった。」と語っていた。評価が気になって本来の実力が発揮できない状況は好ましくないが,一方で合否判定の有無が学習者の内発的動機づけになると思われる。OSCE は形成的評価の意味合いもあるため再試験を実施したが,不合格者の救済措置ばかり

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59助産学教育における客観的臨床能力試験の評価

を強調せず OSCE の真の目的を理解してもらえるよう周知が必要である。  2.学生にとっての実習前 OSCE の有用性 9週間の分娩介助実習を終了し,OSCEを振り返った学生たちは「練習したことは実践でも生かされた。」と語っていた。実習前 OSCE は形成的評価を目的としているため当然の結果である。 ここ数年,専攻科に進学してくる学生の中には母性看護学実習で出産見学を経験していないものが増加傾向にある。背景には,出産件数の減少や実習施設確保の困難さがある。2015 年の厚生労働省医政局看護課通知により,母性看護学実習は実習施設の確保が困難である現状があるため,臨地実習の一部を学内演習に置き換えることが可能となった。これにより妊産婦や新生児のケアを全く行うことなく学生が助産師教育機関に入学することが予測され助産師教育のレディネスの低下が危惧されている 17)。出産を見学していない学生が分娩介助を実施することは技術的にも精神的にもハードルが高いため,臨地実習前に一定水準の助産技術を獲得しておく必要がある。その点において OSCE を通じて助産技術を身に着けておくことは有用であるといえる。 しかし,むしろ OSCE の有用性は学生同士が互いに話し合い,学び合うことで視野を広げていくなどの協調学習を実践していたことではないだろうか。小河 18)は協調学習の考え方の基礎には「一人ひとりのわかり方は多様だ」という学習観がある。このわかり方の多様性を生かすことで,一人ひとりに , 自分なりの,自分しか持っていない,だからこそ次の学び方につながる「わかりかた」が可能になる。その場限りではなくポータブルに再利用できる知識の構築であるとしている。学生達が自然発生的にこのようなグループ学習を行えていたのは,本学では入学当初からアクティブ・ラーニングを積極的に取り入れていることが一因であろう。さらに協調学習を主体とした学びのプロセスで得た安心感や連帯感の高まりは,その後の実習を乗り越えていく原動力となっていたと思われる。 OSCE 試験を振り返り,数名の学生が「プレッシャーを感じる自分」「焦って慌てる自分」など「新しい自分」「知らなかった自分」に出会ったと語っていた。バーンズ 19)は看護師がリフレクションす

ることによって知識と技術は向上し,さらには自信につながると述べている。また東 20)はリフレクションによって得られるものとして,学習ニーズが明確になることや専門家としての成長を挙げている。 学生は,「焦って慌てる自分」に出会い,臨地実習で慌てないためにはどのような準備をしたらよいのか,焦りが生じた時はどのような行動をとれば良いのかなど OSCE の経験から気づかされたといえよう。試験というストレスフルな体験を通じて自らを振り返り,実習に向けての課題を見いだす機会となった点においても実習前 OSCE は有用であったといえる。 多くの学生が OSCE で経験した緊張感は実習にむけての心の準備となったと捉えていた。このことは,多賀 21)が実習前に OSCE を体験することは学生に臨床現場をイメージした緊張感を与え,責任感に裏付けされた技術や態度の習得に有効であると述べていることと同様である。  以上のことから実習前 OSCE は獲得した能力を実践で活かすことができるという点に有用性があるのは他ならないが,OSCE 試験に向けた学習のプロセスで協調学習を行い,リフレクションしながら経験したこと感じたことこそが OSCE がもたらした有用性と考えられた。 次年度以降の OSCE の運営にあたり,学生からの評価を反映することで,学生達の能動的な学習が促進されるような仕組み作りやリフレクションのスキルアップなど OSCE のプロセスを大切にできる教育的なかかわりを強化していく必要がある。

研究の限界

 本調査は,教員が OSCE 評価者,OSCE 関連科目の責任者,調査者を兼ねていたため,学生の回答にバイアスが生じている可能性がある。

結論

1.OSCE について,学生からは課題の難易度は 2課題ともに「普通」,OSCE 評価者からのフィードバックは「効果的」との振り返りを得た。また実施

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時期・回数も 10 名全員が「今のままでよい」とのことであったが,更なる教育効果の向上のためにはカリキュラム全体との関係から OSCE の位置づけを再考する必要性が示された。2.OSCE の具体的な実施方法については,オリエンテーションの工夫や試験に即した形式での学内演習の工夫 , 模擬患者を活用した臨場感のある場面設定などを求める意見が挙げられた。これらのことから今後の改善点に関する示唆が得られた。3.臨地実習前 OSCE の良かった点として【実践で活かされた】【主体的に学ぶ姿勢が身についた】【新しい自分に出会えた】【仲間と学ぶことに意義があった】【緊張感への準備ができた】の 5 カテゴリと 37サブカテゴリが抽出できた。

謝辞

 本調査にご協力頂いた学生の皆様に深く感謝申し上げます。

文献

1)日本助産学会 将来の助産婦のあり方委員会報告. 日本の助産婦が持つべき実践能力と責任範囲. 助産婦 . 日本助産婦会出版部 . 1999, 53(4), 30-40.

2)国際助産師連盟(International Confederation of Midwives : ICM)著.日本看護協会・日本助産師会・日本助産学会訳 . 基本的助産業務に必須な能力.2012.

3)全国助産師教育協議会編.助産師教育におけるミニマムリクワイアメンツ Vol.2 2012 年度改訂版 . 全国助産師教育協議会 https://www.zenjomid.org/(参照 2017/09/20)

4)助産師教育ワーキンググループ報告「助産師に求められる実践能力と卒業時の到達目標と到達度」厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000teyj-att/2r9852000000tf1q.pdf(参照 2017/09/20)

5)厚生労働省 . 保健師助産師看護師法及び看 護 師 等 の 人 材 確 保 の 促 進 に 関 す る 法 律

の 一 部 を 改 正 す る 法 律 に つ い て( 通 知 ).http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1282483_1454.html(参照 2017/09/20)

6)文部科学省 . 学校教育法(昭和二十二年三月 二 十 九 日 法 律 第 二 十 六 号 )http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1317990.htm(参照 2017/09/20)

7)岡山真理,中西伸子,五十嵐稔子,森兼眞理,山名香奈美,脇田満里子.修士課程における助産師教育の客観的臨床能力試験 (OSCE) の検討- 修了前に OSCE を行う意義と効果的な実施方法について . 奈良県母性衛生学会雑誌 . 2016, 29, 29-31.

8)岡山真理,森兼眞理,山名香奈美 , 五十嵐稔子,中西伸子,脇田満里子.修士課程における助産師教育での修了前客観的臨床能力試験 (OSCE)を受験する学生の行動に影響を与える要因と効果的な修了前 OSCE の検討 . 奈良県立医科大学医学部看護学科紀要 . 2015, 11, 67-76.

9)山本真由美,渡邉由加利,山内まゆみ,多賀昌江,大渕一博,鈴木ちひろ,宮崎みち子,中村惠子.助産学の客観的臨床能力試験を受験した助産学専攻科生の評価 . SCU Journal of Design & Nursing.2013, 7(1), 61-66.

10)安梅勅江 . ヒューマン・サービスにおけるグループインタビュー法―科学的根拠に基づく質的研究法の展開―. 医歯薬出版株式会社 . 2001.

11)大滝純司. OSCE の理論と実際 . 篠原出版新社 . 2007.

12)小西美里 . 日本の看護教育における OSCE の現状と課題に関する文献レビュー . 上武大学看護学部紀要 . 2013, 8(1), 1-8.

13)玉城清子,賀数いづみ,井上松代,西平朋子,下中壽美,前田和子.助産技術教育へ OSCE(客観的臨床能力試験)の導入.沖縄県立看護大学紀要.2008, 9, 21-27.

14)前掲書 11)15)前掲書9)16)高橋由紀,浅川和美,沼口知恵子,黒田暢子,

伊藤香世子,近藤智恵,市村久美子.全領域の教員参加による OSCE 実施の評価―看護系大学生の認識から見た OSCE の意義 . 茨城県立医療大学紀要.2009, 14, 1-10.

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17)公益社団法人全国助産師教育協議会.『助産師教育の質の保障 , 助産師養成数の確保』に関する要望書 [H28.12.16] http://www.zenjomid.org/activities/img/20161220_kourou.pdf ( 参照 2017/09/20)

18)小河園子 . 協調学習とは何か―理念とその実践 . UNICOR JOURNAL AUTUMN. 2011, 4-7.

19)サラ バーンズ , クリス バルマン . 看護における反省的実践―専門的プラクティショナーの成

長 . 田村由美,中田康夫,津田紀子監訳.ゆみる出版.2005.

20)東めぐみ . 看護リフレクション入門―経験から学び新たな看護を創造する. ライフサポート社. 2009.

21)多賀昌江,樋之津淳子,福島眞里,太田晴美 . 学生からみた客観的臨床能力試験 (OSCE) トライアルの意義 . SCU Journal of Design & Nursing. 2009, 3(1), 27-34.

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Evaluation of Objective Structured Clinical Examinations in the Graduate Program in Midwifery: Retrospective View from Graduate Students’ Perspective

Yukiko Nagaoka1), Chiori Shimada1), Hiromi Nishide1)

   1) Ibaraki Prefectural University of Health Sciences Graduate Program in Midwifery

Abstract

Purpose: The Graduate Program in Midwifery holds Objective Structured Clinical Examinations (OSCE) prior to the commencement of clinical training. The objective of this study was to take a retrospective view from the graduate students’ perspective in order to delineate the utility of holding OSCE prior to clinical training as well as identify any improvements to make OSCE more effective.Methods: A questionnaire was given to the 10 graduate students, from whom consent had been obtained, immediately after the OSCE, and group interviews were conducted after the students’ clinical training. OSCE tested two subjects: “delivery assistance skills” and “neonatal care immediately after birth.” Both the questionnaire and interviews were conducted by faculty while being mindful of ethical considerations. Approval of the University’s Ethics Review Board was received prior to implementation.Results: The results showed that students rated the difficulty of both subjects as “average,” and the feedback provided by evaluators as “effective.” All 10 graduate students responded that the OSCE timing and frequency “were satisfactory as they are.” As for content and method, students asked that “subjects be specified” and “more clinically realistic situations created” including the use of simulated patients. From the interviews after clinical training, five categories were deduced in which to classify positive findings regarding OSCE prior to clinical training. These included the “student was able to make good use of his/her skills in practice,” “student acquired a mental outlook toward learning independently,” and “student was able to encounter himself/herself anew.”Conclusions: The study confirmed the utility of OSCE for graduate students, and specific points were identified to improve OSCE content and method.

  Key Words: Midwifery Education, Objective Structured Clinical Examination, Evaluations